説明

合成樹脂成形品及び合成樹脂成形品の製造方法及び合成樹脂成形品を製造する金型装置

【課題】 表面層、裏面層の各厚みが所定の厚みとなって表面の外観が低下せず、安価で高品質の合成樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 厚み方向の略中間に位置する界面層シート1の表面側に第1の合成樹脂組成物2が、裏面側に第2の合成樹脂組成物3が同時に注入されて形成されることで成形された合成樹脂成形品4である。第1の合成樹脂組成物2よりなる表面層5と、第2の合成樹脂組成物3よりなる裏面層6と、表面層5と裏面層6との界面に設けられて表面層5及び裏面層6と一体となった界面層シート1の3層構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂成形品及び合成樹脂成形品の製造方法及び合成樹脂成形品を製造する金型装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のシステムキッチンのカウンターや化粧カウンター等のカウンターとして人造大理石が使用されている。このような人造大理石のカウンターのような合成樹脂成形品は一層で構成されている。ところが、人造大理石のカウンターのように表面が大理石の模様の外観を呈するような表面側が化粧面となった合成樹脂成形品の場合、大理石調の模様、深み等を現出するにはコストの高い合成樹脂組成物を使用して成形しなければならず、このため、従来のように合成樹脂成形品全体を一層で形成すると使用する合成樹脂組成物のコストが高くなってしまうという問題がある。
【0003】
そこで、表面層に大理石調の模様、深み等を現出するにはコストの高い合成樹脂組成物を使い、裏面層に大理石調の模様、深み等を現出する必要のない安価な合成樹脂組成物を使用して2層構造の合成樹脂成形品を製造することが考えられる。
【0004】
一方、2層構造の合成樹脂成形品を製造する一般的な製造方法として従来から特許文献1等が知られている。
【0005】
この特許文献1に示された従来例にあっては、上面型と第1下面型とを型締めすることで形成されるキャビティに第1の合成樹脂組成物を注入して第1層を成形し、第1下面型を離型すると共に、第1層を上面型に密着させたまま第2下面型を型締めして、上面型と第2下面型との間に形成されるキャビティに第2の合成樹脂組成物を注入して第1層に密着する第2層を形成するという方法で、第1層と第2層とが密着した2層構造の合成樹脂成形品を製造するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−162171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に示された従来例にあっては、第1層を形成した後、第1層に重複するように第2層を形成するので、製造に時間がかかり、また、上面型と第1下面型の他に第2下面型を必要とし、合成樹脂成形品を製造する金型装置が複雑でコストが高くなるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明者は、製造時間を短縮することと金型装置を簡略化する目的で、金型に表面側ノズルと裏面側ノズルとを設け、表面側ノズルから第1の合成樹脂組成物キャビティ内に注入すると共に、裏面側ノズルから第2の合成樹脂組成物を上記第1の合成樹脂組成物の注入と同時にキャビティ内に注入して、第1の合成樹脂組成物からなる表面層と第2の合成樹脂組成物からなる裏面層とが厚み方向に一体化した合成樹脂成形品を製造することを考えた。
【0009】
しかしながら、このようなやり方では、第1の合成樹脂組成物と第2の合成樹脂組成物が一部混じりあったり、あるいは第1の合成樹脂組成物が第2の合成樹脂組成物に喰い込んだり、あるいは、第2の合成樹脂組成物が第1の合成樹脂組成物に喰い込んだりする。このため、表層部の厚みを一定の厚みに確保できず、場合によっては裏面層を形成する第2の合成樹脂組成物が表面近くに位置したり、あるいは表面に露出し、表面の外観が低下してしまうという問題があることが判明した。
【0010】
本発明は上記の問題点に鑑みて発明したもので、表面層、裏面層の各厚みが所定の厚みとなって表面の外観が低下せず、安価で高品質の合成樹脂組成物を提供すること、及び、このような安価で高品質の合成樹脂組成物を簡単且つ短時間で製造できる合成樹脂成形品の製造方法、及び、合成樹脂成形品を製造する金型装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の合成樹脂成形品は、厚み方向の略中間に位置する界面層シート1の表面側に第1の合成樹脂組成物2が、裏面側に第2の合成樹脂組成物3が同時に注入されて形成されることで構成された合成樹脂成形品4である。本発明の特徴は、第1の合成樹脂組成物2よりなる表面層5と、第2の合成樹脂組成物3よりなる裏面層6と、表面層5と裏面層6との界面に設けられて表面層5及び裏面層6と一体となった界面層シート1との3層構造となっていることである。
【0012】
このような構成とすることで、表面が化粧面となるように表面層5を成形するための第1の合成樹脂組成物2としてコストの高い材料を使用し、裏面は化粧面とする必要がないので、裏面層6を成形するための第2の合成樹脂組成物3として上記第1の合成樹脂組成物2よりもコストの低い材料を使用することが可能となる。しかも、合成樹脂成形品4は、厚み方向の略中間に位置する界面層シート1の表面側に第1の合成樹脂組成物2が、裏面側に第2の合成樹脂組成物3が同時に注入されて形成されることで構成されたものであるから、第1の合成樹脂組成物2と第2の合成樹脂組成物3を同時に注入して成形しても、界面層シート1の厚み方向の略中間に位置する存在により表面層5、裏面層6の各厚みが所定の厚みとなる層構成の合成樹脂成形品4を提供できる。このように、表面層5の厚みが所定の厚みとなる層構成のもののであるから、表面の外観が低下しない。
【0013】
また、本発明の合成樹脂成形品4の製造方法は、界面層シート1の表面側に第1の合成樹脂組成物2を注入すると共に界面層シート1の裏面側に第2の合成樹脂組成物3を上記第1の合成樹脂組成物2の注入と同時に注入して第1の合成樹脂組成物2よりなる表面層5と、第2の合成樹脂組成物3よりなる裏面層6と、表面層5と裏面層6との界面に設けられて表面層5及び裏面層6と一体となった界面層シート1とで構成された合成樹脂成形品4を製造することを特徴とするものである。
【0014】
このように、界面層シート1の表面側と裏面側にそれぞれ第1の合成樹脂組成物2と第2の合成樹脂組成物3とを同時に注入するので、界面層シート1の表面側に表面層5が一体に積層され且つ界面層シート1の裏面側に裏面層6が一体に積層された3層構造の合成樹脂成形品4の製造時間を短縮できる。
【0015】
また、合成樹脂成形品4を製造する金型装置7は、金型8に型閉めした際に形成されるキャビティ9内を表面側キャビティ部10と裏面側キャビティ部11とに仕切るための界面層シート1を保持するシート保持手段12を設け、金型8に表面側キャビティ部10に第1の合成樹脂組成物2を注入するための表面側ノズル13と、裏面側キャビティ部11に第2の合成樹脂組成物3を注入するための裏面側ノズル14とを設けて成ることを特徴とするものである。
【0016】
このような構成とすることで、キャビティ9内に第1の合成樹脂組成物2と第2の合成樹脂組成物3とを同時に注入することで表面層5、界面層シート1、裏面層6が積層一体化した3層構造の合成樹脂成形品4を形成するための金型装置7を提供できる。
【0017】
また、シート保持手段12に設けた支持プレート15がキャビティ9内に突入し、表面側ノズル13と裏面側ノズル14とが上記支持プレート15を介して互いに対向する位置に設けられて、表面側ノズル13からの第1の合成樹脂組成物2の注入方向及び裏面側ノズル14からの第2の合成樹脂組成物3の注入方向がそれぞれ支持プレート15側に向いていることが好ましい。
【0018】
このような構成とすることで、表面側ノズル13から注入された第1の合成樹脂組成物2が支持プレート15に当たって向きを変えて表面側キャビティ部10内を界面層シート1の表面に沿いながら流れ、また、裏面側ノズル14から注入された第2の合成樹脂組成物3が支持プレート15に当たって向きを変えて裏面側キャビティ部11内を界面層シート1の裏面に沿いながら流れる。これにより、表面側ノズル13から注入された第1の合成樹脂組成物2の注入圧により界面層シート1の変形が抑制されると共に、裏面側ノズル14から注入された第2の合成樹脂組成物3の注入圧により界面層シート1の変形が抑制され、表面層5、裏面層6の各厚みが所定の厚みとなるように成形できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、厚み方向の略中間に位置する界面層シートを設けることで、界面層シートの表面側に第1の合成樹脂組成物が、裏面側に第2の合成樹脂組成物を同時に注入して合成樹脂組成物を形成したものであるにもかかわらず、表面層、裏面層の各厚みが所定の厚みとなった合成樹脂組成物を構成できる。このように表面層の厚みが所定の厚みとなるので、化粧面となる表面層の外観が低下せず高品質となり、しかも、裏面層としては表面層のように化粧面とする必要でないので、安価となる。
【0020】
しかも、本発明の製造方向及び装置においては、上記のような安価で高品質の合成樹脂組成物を簡単且つ短時間で製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の合成樹脂成形品の断面図である。
【図2】同上の合成樹脂成形品を製造するための金型装置の支持プレートを設けた部分の断面図である。
【図3】同上の支持プレートを設けた部分以外の部分の断面図である。
【図4】同上の金型装置を用いて成形している状態を示す断面図である。
【図5】同上の型開き状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0023】
本発明の合成樹脂成形品4としては、例えば、人造大理石カウンターを例示することができる。
【0024】
合成樹脂成形品4は、図1に示すように、第1の合成樹脂組成物2よりなる表面層5と、第2の合成樹脂組成物3よりなる裏面層6と、表面層5と裏面層6との界面に設けられて表面層5及び裏面層6と一体となった界面層シート1との3層構造となっている。
【0025】
図2乃至図5には上記本発明の合成樹脂成形品4を製造するための金型装置7が示してある。
【0026】
金型装置7は、固定型16と、可動型17と、サイド型18とで金型8を構成し、該金型8に界面層シート1の外周端部を保持するためのシート保持手段12を設け、更に、固定型16に第1の合成樹脂組成物2を注入するための表面側ノズル13を設けると共に、可動型17に第2の合成樹脂組成物3を注入するための裏面側ノズル14を設けて構成してある。
【0027】
固定型16の可動型17と対向する面には第1の凹部19が設けてあり、固定型16の可動型17と対向する面の第1の凹部19の周囲の部分が図3に示すように固定型側保持部20となっている。この固定型側保持部20の周方向の一部が凹んでいて図2のようにプレート挿入凹所21となっている。このプレート挿入凹所21は第1の凹部19の周囲が矩形状をしている場合、矩形状の一辺がプレート挿入凹所21となっていたり、あるいは、矩形状の一辺の辺方向の一部がプレート挿入凹所21となっていたりする。もちろん、第1の凹部19の周囲が矩形状をしていない場合、第1の凹部19の周囲の一部にプレート挿入凹所21を形成する。
【0028】
可動型17の固定型16と対向する面には上記第1の凹部19に対応した第2の凹部22が設けてあり、固定型16の可動型17と対向する面の第2の凹部22の周囲の部分が可動型側保持部23となっている。上記可動型17は固定型16に対して可動自在となっており、可動型17を固定型16側に移動して型締めすることで、第1の凹部19と第2の凹部22よりなるキャビティ9が形成されるようになっている。
【0029】
サイド型18は固定型16に対して可動型17の移動方向と直交する方向に移動自在に取付けてあり、サイド型18の先端に可動型17の移動方向と直交する方向が平面となった板状の支持プレート15が設けてある。該支持プレート15はサイド型18を型締め方向に移動させることで、プレート挿入凹所21に挿入され、前部が第1の凹部22の開口に沿って第1の凹部22内に突出すると共に後部がプレート挿入凹所21内にぴったりと嵌め込まれる。
【0030】
上記支持プレート15の前部の第1の凹部22の開口に沿って第1の凹部22内に突出する部分が注入圧受け部24となっている。また、支持プレート15の後部をプレート挿入凹所21内に嵌め込んだ状態で該支持プレート15の後部の可動型17と対向する面は固定型16の固定型側保持部20と面一となっていてこの部分がサイド型側保持部25となっている。
【0031】
上記第1の凹部22の周囲の固定型側保持部20とサイド型側保持部25は、第2の凹部22の周囲の可動型側保持部23と対向しており、本実施形態においては、上記固定型側保持部20、サイド型側保持部25、可動型側保持部23により界面層シート1の外周端部を保持するためのシート保持手段12を構成している。
【0032】
つまり、固定型16に対してサイド型18を型締めした状態で、凹部22を塞ぐように界面層シート1を配置し、該界面層シート1の外周部を凹部22の周囲である固定型側保持部20とサイド型側保持部25に支持させる。この状態で可動型17を型締めすることで、図2、図3に示すように、可動型側保持部23で界面層シート1を押圧し、固定型側保持部20及びサイド型側保持部25と、可動型側保持部23とで界面層シート1の外周部を挟持して保持するようになっている。この型締め状態で界面層シート1の外周端部付近の一部が支持プレート15の注入圧受け部24の可動型17に対向する面に当接支持される。
【0033】
上記のように型締め状態で界面層シート1の外周部を支持することで、型締めにより形成されるキャビティ9内が界面層シート1により表面側キャビティ部10と裏面側キャビティ部11とに仕切られることになる。
【0034】
固定型16には表面側キャビティ部10に第1の合成樹脂組成物2を注入するための表面側ノズル13が設けてあり、可動型17には裏面側キャビティ部11に第2の合成樹脂組成物3を注入するための裏面側ノズル14が設けてある。
【0035】
表面側ノズル13と裏面側ノズル14は支持プレート15を介して互いに対向する位置に設けてあり、表面側ノズル13からの第1の合成樹脂組成物2の注入方向及び裏面側ノズル14からの第2の合成樹脂組成物3の注入方向がそれぞれ支持プレート15側に向いている。
【0036】
固定型16、可動型17の表面側ノズル13、裏面側ノズル14を設けた部分と反対側の端部にはベントノズル(図示せず)を設けて、脱気できるようにしてある。
【0037】
表面層5を形成するための第1の合成樹脂組成物2は例えば柄材を混入したビニルエステル樹脂を主剤とする組成物が使用され、裏面層6を形成するための第2の合成樹脂組成物3は柄材を混入しないビニルエステル樹脂を主剤とする組成物が使用される。
【0038】
人造大理石カウンターを製造する場合の柄材入りの第1の合成樹脂組成物2としては、例えば顔料を混入したビニルエステル樹脂を主剤とする組成物でシートを作り、このシートを小さく破断することで、柄材を形成し、このようにして得た柄材をビニルエステル樹脂を主剤とする組成物に混入することで第1の合成樹脂組成物2を得るものである。したがって、混入する柄材を上記のように特別に製造する必要があるため、柄材を混入しない第2の合成樹脂組成物2に比べコストが高くなる。
【0039】
上記した金型装置7を用いて型締めして、図2、図3に示すようにシート保持手段12により保持した界面層シート1によりキャビティ9を表面側キャビティ部10と裏面側キャビティ部11に仕切った状態で、図4のように、表面側ノズル13から第1の合成樹脂組成物2を表面側キャビティ部10に注入すると共に、上記第1の合成樹脂組成物2の注入と同時に裏面側ノズル14から第2の合成樹脂組成物3を裏面側キャビティ部11に注入することに特徴がある。
【0040】
このように、第1の合成樹脂組成物2と第2の合成樹脂組成物3とを同時に注入して界面層シート1の表面側に表面層5を形成すると共に界面層シート1の裏面側に裏面層6を形成することで、第1の合成樹脂組成物2の注入と第2の合成樹脂組成物3の注入に時間差を設ける従来に比べて単一の金型装置7を用いて短時間で合成樹脂成形品4を製造することができる。
【0041】
ここで、本発明においては、表面側ノズル13と裏面側ノズル14とが上記支持プレート15を介して互いに対向する位置に設けられて、表面側ノズル13からの第1の合成樹脂組成物2の注入方向及び裏面側ノズル14からの第2の合成樹脂組成物3の注入方向がそれぞれ支持プレート15側に向いているので、表面側ノズル13から注入された第1の合成樹脂組成物2は、図4の矢印のように支持プレート15の注入圧受け部24に当たって向きを変えて表面側キャビティ部10内を界面層シート1の表面に沿いながら流れる。また、裏面側ノズル14から注入された第2の合成樹脂組成物は、図4の矢印のように界面層シート1を介して注入圧受け部24に当たって向きを変えて裏面側キャビティ部11内を界面層シート1の裏面に沿いながら流れる。
【0042】
このように、表面側ノズル13から注入された第1の合成樹脂組成物2の注入圧、裏面側ノズル14から注入された第2の合成樹脂組成物3の注入圧を注入圧受け部24で受けて界面層シート1に沿うように流れを方向転換することで、表面側ノズル13から注入される第1の合成樹脂組成物2、裏面側ノズル14から注入される第2の合成樹脂組成物3の注入圧による界面層シート1の変形が抑制される。この結果、第1の合成樹脂組成物2により形成される表面層5、第2の合成樹脂組成物3により形成される裏面層6の各厚みが所定の厚みとなるように合成樹脂成形品4を成形できることになる。
【0043】
上記のようにして、第1の合成樹脂組成物2、第2の合成樹脂組成物3を注入し、第1の合成樹脂組成物2、第2の合成樹脂組成物3を硬化させて、第1の合成樹脂組成物2よりなる表面層5と、第2の合成樹脂組成物3よりなる裏面層6と、表面層5と裏面層6との界面に設けられて表面層5及び裏面層6と一体となった界面層シート1との3層構造の合成樹脂成形品4を形成する。その後、可動型17を型開きすると共にサイド型18をスライドさせて図5のようにし、この型開き状態で、合成樹脂成形品4を固定型16から脱型する。
【0044】
なお、上記のようにして製造した合成樹脂成形品4は、外周に界面層シート1の外周端部のシート保持手段12により保持により保持された部分が突出し、更に、合成樹脂成形品4の外周部の一部に支持プレート15を抜くことにより生じる図5に示す溝26が生じるので、この界面層シート1の外周端部の外方に突出した部分及び溝26部分は切断除去することで、完成された合成樹脂成形品4とする。
【0045】
なお、柄材を混入した第1の合成樹脂組成物2、柄材を混入しない第2の合成樹脂組成物3として上記例ではビニルエステル樹脂を主剤としている例で説明したが、これにのみ限定されず、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、発泡ウレタン樹脂等種々採用することができる。
【0046】
また、界面層シート1としては、例えば、アクリルシート、ポリエステルシート、不織布、ガラスマット等が挙げることができる。ここで、界面層シート1として、不織布やガラスマットのように合成樹脂組成物が浸透する性質をもったものを用いた場合、表面側キャビティ部10に注入された第1の合成樹脂組成物2が界面層シート1に浸透すると共に、裏面側キャビティ部11に充填した第2の合成樹脂組成物3が界面層シート1に浸透し、界面層シート1内で第1の合成樹脂組成物2と第2の合成樹脂組成物3とが一体に結合するので、界面層シート1を介して積層する表面層5と裏面層6とがより強固に一体化させることになる。
【0047】
また、界面層シート1として合成樹脂組成物が浸透しないものを用いた場合、界面層シート1を介して第2の合成樹脂組成物3が表面側キャビティ部10内に浸入して表面層5における第1の合成樹脂組成物2の厚みが部分的に薄くなる箇所が生じたりせず、表面層5の外観の低下が生じたりすることがないようにできる。また、界面層シート1を介して第1の合成樹脂組成物2が裏面側キャビティ部11内に浸入することによる材料費のコストアップを防止できる。
【符号の説明】
【0048】
1 界面層シート
2 第1の合成樹脂組成物
3 第2の合成樹脂組成物
4 合成樹脂成形品
5 表面層
6 裏面層
7 金型装置
8 金型
9 キャビティ
10 表面側キャビティ部
11 裏面側キャビティ部
12 シート保持手段
13 表面側ノズル
14 裏面側ノズル
15 支持プレート



【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向の略中間に位置する界面層シートの表面側に第1の合成樹脂組成物が、裏面側に第2の合成樹脂組成物が同時に注入されて形成されることで構成された合成樹脂成形品であって、第1の合成樹脂組成物よりなる表面層と、第2の合成樹脂組成物よりなる裏面層と、表面層と裏面層との界面に設けられて表面層及び裏面層と一体となった界面層シートとの3層構造と成っていることを特徴とする合成樹脂成形品。
【請求項2】
界面層シートの表面側に第1の合成樹脂組成物を注入すると共に界面層シートの裏面側に第2の合成樹脂組成物を上記第1の合成樹脂組成物の注入と同時に注入して第1の合成樹脂組成物よりなる表面層と、第2の合成樹脂組成物よりなる裏面層と、表面層と裏面層との界面に設けられて表面層及び裏面層と一体となった界面層シートとで構成された合成樹脂成形品を製造することを特徴とする合成樹脂成形品の製造方法。
【請求項3】
金型に型閉めした際に形成されるキャビティ内を表面側キャビティ部と裏面側キャビティ部とに仕切るための界面層シートを保持するシート保持手段を設け、金型に表面側キャビティ部に第1の合成樹脂組成物を注入するための表面側ノズルと、裏面側キャビティ部に第2の合成樹脂組成物を注入するための裏面側ノズルとを設けて成ることを特徴とする合成樹脂成形品を製造する金型装置。
【請求項4】
シート保持手段に設けた支持プレートがキャビティ内に突入し、表面側ノズルと裏面側ノズルとが上記支持プレートを介して互いに対向する位置に設けられて、表面側ノズルからの第1の合成樹脂組成物の注入方向及び裏面側ノズルからの第2の合成樹脂組成物の注入方向がそれぞれ支持プレート側に向いていることを特徴とする請求項3記載の合成樹脂成形品を製造する金型装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−173116(P2010−173116A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15968(P2009−15968)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】