説明

合金の分別方法及びそれを用いた分別システム

合金成分又は合金種別ごとに迅速な分別が可能な金属および合金の分別方法および分別システムを提供することを目的とする。本発明の合金分別方法は、合金種別不明の金属又は合金から成る分別試料に、その表面の一部に高エネルギービームを照射して溶融させて冷却することにより溶融痕を形成し、該溶融痕及び/又はその周辺部の形態に基づいて識別し、分別する。本発明の分別方法によれば、常に高い精度で合金を分別でき、迅速な分別が可能である。本発明の分別システムは、分別試料の金属表面に所定出力で所定時間に高エネルギービームを照射する照射装置と、照射後に金属表面の溶融痕とその周辺部の画像を撮影する撮像装置と、画像データを表示する表示装置と、を含む。本発明の分別システムは、上記の分別方法を実現するので、合金種別を、容易かつ迅速に分別でき、さらに分別精度を高く保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、種別不明な合金を部分的に熱して溶融し、溶融痕およびその周辺部の外観により分別する方法であり、特に、アルミニウム合金及び鋼を合金種類ごとに分別可能とした分別方法に関する。
【背景技術】
近年、アルミニウム合金の展伸材が、その優れた機械的性質により、自動車部品、電気部品、建築部材、日用器具などの広範囲に多量に利用されており、使用後は廃棄物として回収されている。
アルミニウム展伸材は、新地金とスクラップとに種々の合金添加元素を加えることにより所要組成に溶製されているが、新地金の精製には膨大なエネルギーを消費するので、環境保護とコストダウンの観点から、アルミニウム展伸材の廃材を展伸材用スクラップに再利用することが望まれている。そのためには、アルミニウム展伸材の廃棄物を、アルミ合金規格1000系から7000系の7種別に分別する必要がある。成分不明の合金は、鋳造用アルミニウム合金の原料にされていた。
従来から、金属の分別方法として、磁気選別や比重差を用いた分別により、鉄系、アルミニウム系などの大きな分別が行われているが、アルミニウム系の中でのさらに細かい分別は、人の目視により、合金の形状、表面色や表面状態などによる分別であり、分別精度が低く、また、分別者ごとの精度差も大きく、実質上は不可能であった。
そこで、特開平10−328620号には、アルミニウム展伸材を正確に分別する方法としては、アルミニウム合金の表面を、苛性化合物や酸などの化学的処理により着色して、その色の違いにより7種類に分別可能な分別方法が提案されている。
しかし、上記の化学的処理による分別方法は、1つの試料を識別するのに要する時間が長いので、多量の廃棄アルミニウム合金を分別するには適さない。また、この方法は、化学薬品を使用するために、環境に悪影響を及ぼす惧れがあり、溶液を無害化処理する必要があった。
また、アルミニウム系合金以外でも、従来法では合金種類別の細かい分別が困難な金属材料があり、例えば非磁性のオーステナイト系ステンレス鋼は、磁気選別による分別が不可能であり、また、合金種類ごとに分別可能な分別方法も提案されていない。
【発明の開示】
本発明は、合金成分又は合金種別ごとに迅速な分別が可能な金属および合金の分別方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、合金成分又は合金種別ごとに迅速な分別が可能な金属および合金の分別システムを提供することを目的とする。
本発明の合金分別方法は、合金種別不明の金属又は合金から成る分別試料に、その表面の一部に高エネルギービームを照射して溶融させて冷却することにより溶融痕を形成し、該溶融痕及び/又はその周辺部の形態に基づいて分別試料を分別する。
詳しくは、この分別方法では、複数の合金表面の溶融痕及びその周辺部の外観から、溶融痕の寸法、表面光沢や表面の平坦度などの特徴部分を識別パラメータとして抽出し、それらを比較して合金を分別するものである。
本発明の分別方法は、識別パラメータにより分別基準を設けるので、常に高い分別精度を保つことができ、分別精度のばらつきを除去することができる。分別された合金は、同じ種別の合金の溶製の際にスクラップとして配合することができる。
本発明の分別方法は、迅速な識別が可能であるので、大量の金属の分別処理に適しており、また、薬品を使用しないので、環境を汚染することがない。
本発明は、上記の分別方法を利用して、合金種別不明の分別試料を分別するシステムであって、該システムは、分別試料の金属表面に所定出力で所定時間に高エネルギービームを照射する照射装置と、照射後に金属表面の溶融痕とその周辺部の画像を撮影する撮像装置と、画像データを表示する表示装置と、を含む。
本発明の分別システムは、上記の分別方法を実現するので、合金種別を、容易かつ迅速に分別でき、さらに分別精度を高く保つことができる。
本発明の分別方法は、合金種別不明の分別試料の表面に高エネルギービームの溶融痕及びその周辺部の形態に基づいて分別するので、短時間で精度よく分別することができる。
さらに、合金種別ごとに予め設定した標準識別パラメータと、分別試料の溶融痕及びその周辺部と、を比較することにより、パラメータにより合金種別ないし合金成分を推定し分別できて、分別した後に成分を調べる必要がないので、再利用までの手間数を減らしてコストを減らすことができる。
合金種別ごとの標準パターンを設定すると、分別試料の溶融痕及びその周辺部の形態を、複数の識別パラメータと対比するのが簡便容易になり、分別が迅速且つ容易になる。
標準識別パラメータを、合金種別の既知の金属及び合金の標準試料の溶融痕やその周辺部の形態を標準試料間で対比して抽出すれば、各合金種別で特徴のある識別パラメータの選択がしやすく、分別に適した標準識別パラメータを得ることができる。
溶融痕及びその周辺部の識別パラメータとして、寸法や色調など合金ごとの差異が顕著に現れるパラメータを含むと、分別が容易になり、また、分別誤差を減らして分別精度を高くすることができる。
本発明の分別方法は、アルミニウム、アルミニウム合金、及びステンレス鋼などの金属及び合金を分別するのに利用することができる。各種別に特化した標準識別パラメータにより容易に分別ができる。例えば、アルミニウム展伸材の原料中のスクラップに利用することができ、製造時の電力消費を押さえて、アルミニウム展伸材のコストを下げることができる。
金属片に照射する高エネルギービームは、レーザ、アーク又はプラズマであると、ビームを収束させるのが容易なので、剪断されて小片になった廃棄合金片の表面に溶融痕を形成することができる。また、これらのビームは、出力および照射時間の制御がしやすいので、溶融痕の形成過程を自動化する場合にも適している。
本発明の分別システムは、高エネルギービーム照射装置と、撮像装置と、画像の表示装置と、を含むので、上記の分別方法を用いた、迅速かつ精度の高い分別を行うことができる。
本発明の分別システムは、さらに、溶融痕の画像データから識別パラメータを抽出し、該識別パラメータを標準識別パラメータと対比して合金種別を識別することが可能なコンピュータを含むと、自動分別することができるので、分別時間を短縮し、分別精度を一定に保つことができ、また、人手に依らずに分別することができる。
また、本発明の方法およびシステムでは、コンピュータに、予め金属種別毎の標準パターンを設定して、分別試料の溶融痕画像の実測パターンと対比できるようにすることができ、複数の識別パラメータを標準試料パラメータと対比することができるので、迅速で精度の高い分別を行うことができる。
本発明の分別システムで用いる照射装置がレーザ発生装置にすることができ、照射出力および照射時間の制御が容易でコンピュータ制御も可能であるので、溶融痕形成を自動化することができる。
本発明の分別システムで用いる照射装置がアーク発生装置にすることができ、照射出力および照射時間の制御が容易でコンピュータ制御も可能であるので、溶融痕形成を自動化することができる。
本発明の分別システムで用いる照射装置が、プラズマ発生装置にすることができ、照射出力および照射時間の制御が容易でコンピュータ制御も可能であるので、溶融痕形成を自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
図1A〜図1Gは、本発明の実施形態にかかるレーザ照射により形成されたアルミニウム溶融痕の標準パターンを示している。
図2A〜図2Gは、本発明の実施形態にかかるアーク照射により形成されたアルミニウム溶融痕の標準パターンを示している。
図3A〜図3Eは、本発明の実施形態にかかるレーザ照射により形成された純鉄およびステンレス鋼の溶融痕の標準パターンを示している。
図4は、本発明の実施形態にかかる分別システムの高エネルギービーム照射装置を示している。
図5は、本発明の実施形態にかかる分別システムの撮像装置を示している。
図6は、AA1050の溶融痕の輝度分布を3次元で表示したグラフである。
図7は、本発明の実施形態にかかる分別システムを用いた分別のブロック図である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明は、合金種別不明の金属および合金に高エネルギービームを照射して溶融痕を形成し、該溶融痕及びその周辺部の形態により分別するものである。
本発明の分別方法では、合金種別ごとに予め設定された溶融痕やその周辺部の標準識別パラメータと、分別試料の溶融痕やその周辺部の形態と、を対比して、試料の合金種別を識別しながら分別するのが好ましく、分別後に合金成分を調べて合金種別を特定する手間を省くことができる。
標準識別パラメータは、予め、合金種別の既知の金属及び合金の標準試料にその表面の一部に高エネルギービームを照射して溶融させて冷却することにより溶融痕を形成し、溶融痕及び/又はその周辺部の形態を標準試料間で対比して抽出することができる。このように抽出された標準識別パラメータは、合金種別ごとに特殊化されるので、識別パラメータの組合わせにより種別不明の合金を分別する指標として適切である。
本発明の分別方法では、標準試料の溶融痕およびその周辺部から抽出した標準識別パラメータをパターン化した標準パターンを作成して、その標準パターンと試料の溶融痕及びその周辺部の形態とを対比するのが好ましい。標準パターンを用いることにより、視覚的な対比が容易になので識別に要する時間が短くでき、また、標準パターンに含まれる複数の標準識別パラメータの対比が容易なので、分別精度を高くすることができる。
溶融痕の形態は、高エネルギービームの種類と、照射条件(出力、パワー密度、照射時間)によって大きく異なるので、抽出される識別パラメータ及びパターンも高エネルギービームの種類と照射条件とで異なることがある。よって、標準識別パラメータや標準パターンの標準データを用いて分別を行う場合には、分別試料には、標準データ作成時と同種の高エネルギービームを用い、同一の照射条件によって溶融痕を形成することにより、精度のよい分別を行うことができる。
本発明の分別方法は、溶融痕の識別パラメータとして、溶融痕の寸法、皮膜、光沢、平坦度、表面割れ、色調、及び輝度を利用することができる。
パラメータとしての溶融痕の寸法は、溶融部の面積や直径であり、合金の熱伝導度と融点に依存するので、熱的性質に顕著な違いのある合金種別の分別に適している。
皮膜のパラメータは、主として溶融痕の表面の酸化皮膜の有無とその性状をいうが、この酸化皮膜は、溶融前から金属表面を覆っているものと、溶融時の熱により新たに形成されたものが含まれる。
パラメータの光沢とは、光沢の有無をいうが、溶融部の金属がそのまま冷却したときや、金属表面を覆っていた酸化皮膜が溶融時に凝集や蒸発によって部分的又は全面的に除去されて、金属面が露出したときに、反射光沢を呈することを指す。これは、試料を形成する合金の酸化物の生成と耐熱性に依存している。
色調とは、溶融痕表面の色変化であり、例えば、新たな酸化皮膜の形成による着色や、合金中の成分の析出による着色がある。この識別パラメータには、複数の色調が交互に現れて、縞状の模様となる形態を含む。これらの色調は、合金の酸化皮膜の成分に依存している。
また、溶融痕の平坦度は、表面の平坦な程度を指すが、この識別パラメータには、溶融痕表面に複数の凸凹が形成されて波打ったようになるウェービングや、中央部のすりばち状の陥没などの形態を含む。この識別パラメータは、溶融物の蒸発及び冷却時の熱収縮によって発生する。
溶融痕の表面割れは、クラックであり、溶融物の冷却時の熱収縮によって発生する。この識別パラメータには、クラックの有無、クラックの数、長さ、クラックの形成される位置、例えば溶融痕中央部に発生するなど、があり、さらに、クラックの形成方向、例えば溶融痕中央部から半径方向に発生する、などの情報を含む。
また、輝度は、光を反射した溶融痕の輝度を示す。
本発明の分別方法は、溶融痕周辺部の識別パラメータとして、溶融痕周辺の蒸着物、表面割れ、色調、及び輝度を利用することができる。
周辺部の蒸着物は、溶融部で蒸発した合金成分の付着により起こり、合金成分に低沸点成分を含む合金で確認される。この識別パラメータには、蒸着の有無、蒸着範囲、蒸着物の色、蒸着物の状態、例えば薄くまだらに付着したなど、の情報を含む。
周辺部の表面割れ、クラックは、周辺部の加熱冷却に伴う膨張収縮によって発生したり、溶融痕で発生したクラックの伝播により発生する。
周辺部の色調は、新たに形成された酸化皮膜による着色であり、その範囲は、溶融時に熱の影響を受けたことを示す。この識別パラメータは、合金の熱伝導度や合金の耐熱性、耐酸化性に依存している。
これらの識別パラメータは、合金の物性、例えば合金の熱伝導度、耐熱性、耐酸化性など、に関係したものか、合金成分に依存して発現するものなので、分別の指標とするのに適している。
溶融痕形成に用いる高エネルギービームとは、エネルギーの細い流れの束であり、例えば、レーザ、アーク又はプラズマなどのビームを用いるのが好ましく、これらの高エネルギービームは、金属表面上の微小部分に焦点を絞りやすく、金属小片に溶融痕を形成することができる。
本発明の分別方法は、アルミニウムとその合金及びステンレス鋼の分別に適している。アルミニウム合金やステンレス鋼は、種別ごとの外観が類似しているが、合金成分や物性が異なるので、本発明の分別方法によってそれぞれの合金種別ごとの分別を容易に行うことができる。
本発明の分別方法では、分別する金属片が、その表面に塗装や汚れなどの表面付着物がある場合には、溶融痕の形成前に前処理を行い、付着物を除去するのが好ましい。前処理としては、例えば、高エネルギービームを用いる方法があり、金属の溶融が起こらず表面付着物が蒸発する程度の出力で、ビームを金属表面に照射して付着物を除去することができる。また、別の前処理には、グラインダで金属表面を研削して付着物を除去する方法がある。さらに別の前処理には、薬品の塗布、浸漬などにより化学的に付着物を除去する方法がある。
本発明の分別方法は、廃棄物中の合金を分別する以外にも、精錬又は圧延などされた展伸用素材に適用することができ、例えば、複数種類のアルミニウム合金素材を扱う工場等において、展伸前に合金種類の確認を行うのに使用すれば、異材の混入を防止し、使用する合金の誤使用を未然に防ぐことができる。
本発明の分別システムは、上記の分別方法を利用したシステムであり、分別試料の金属表面に所定出力で所定時間に高エネルギービームを照射する照射装置と、照射後に金属表面の溶融痕とその周辺部の画像を撮影する撮像装置と、画像データを表示する表示装置と、を含んでいる。
照射装置には、高エネルギービームとして、レーザビームを照射するレーザ源と光学系とを有するレーザ発生装置を用いることができる。
また、照射装置には、高エネルギービームとして、上記の金属表面に非消耗電極との間でアーク柱を形成するアーク発生装置を用いることもできる。
さらに、照射装置には、高エネルギービームとして、プラズマアークもしくはプラズマジェットを照射するプラズマトーチを備えたプラズマ発生装置を用いることもできる。
これらの照射装置は、合金表面に溶融部を形成する出力の高エネルギービームを照射でき、照射出力と照射時間が制御しやすいので、本発明のシステムに好ましく用いることができる。
撮像装置には、ビデオカメラやCCDカメラなどを用いて溶融痕とその周辺部の画像を撮影することができる。撮影した画像は、ディスプレイなどの表示装置に表示される。
本発明のシステムでは、分別試料を、手動により高エネルギービームの照射台に載置して、試料の表面に高エネルギービームを照射して溶融痕を形成する。溶融痕を形成した分別試料は、撮像装置の撮影台に移され、溶融痕およびその周囲が撮像装置により撮影されて、表示装置に表示される。
表示された溶融痕およびその周辺の画像を、合金種別ごとに予め設定された溶融痕とその周辺部の標準識別パラメータと対比して、試料の合金種別を識別して、分別する。
本発明のシステムでは、さらに、撮像装置から入力された画像データから識別パラメータを抽出し、該識別パラメータを上記標準識別パラメータと対比して合金種別を識別するコンピュータを含み、コンピュータからの合金種別識別データを表示装置に表示させることができる。コンピュータが識別作業を行うので、人が目視によって識別を行うのに比べて迅速に識別でき、識別精度を一定に保つことができる。
また、本発明のシステムでは、上記のコンピュータに合金種別ごとに予め溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータの標準パターンが設定しておくことができる。測定に際しては、コンピュータが、撮像装置から入力された実際の画像データと識別パラメータとにより画像をパターン化し、画像のパターンを上記標準パターンと対比して合金種別を識別し、合金種別識別データを表示装置に表示させることができる。コンピュータが識別作業を行うので、人が目視によって識別を行うのに比べて迅速に識別でき、識別精度を一定に保つことができ、また、複数の標準識別パラメータを含む標準パターンを用いるので、一回の対比作業で複数の識別パラメータの対比を行うことができる。
本発明のシステムでは、上記のコンピュータに、合金種別ごとに予め溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータの分布についての複数の基本分布データが格納しておくことができる。本発明においては、基本分布データとは、合金種別ごとの溶融痕から、撮像装置を通して画像を得て、その画像データの標準識別パラメータの平面分布を解析したデータを指す。例えば、輝度についての基本輝度分布データは、撮像装置からの画像データに多数の測定点を設定し、各測定点の輝度、すなわち光の強度の平面分布を測定して作成することができる。輝度の測定は、好ましくは、特定の発光スペクトルを有する特定の発光源を用いて溶融痕に照射して、特定の受光素子を含む撮像装置により撮像して、輝度分布を得るように行われる。例えば、蛍光灯と、モノクロCCDカメラとの組合せが利用できる。
次に、分別試料の溶融痕から比較分布データを作成するが、基本分布データと同様の発光源及び撮像装置を用いて行うのが好ましい。基本分布データと比較分布データを比較して、合金種別ごとに比較分布データと基本分布データとの差分の積算値を算出して、パターン誤差指数とする。
標準試料および分別試料の溶融痕は、各々の溶融痕の中央の位置に、これを測定中心点とするが、この測定中心点を一致させると合致しやすい。さらに、測定中心点を対称点として、互いの溶融痕を相対的に対称移動させて探査すると、さらに合致しやすくなる。そこで、分別の際には、標準試料および分別試料の溶融痕が最も合致した状態のパターン誤差指数、つまりパターン誤差指数が最小値になる比較状態のパターン誤差指数を用いるのが好ましい。最小のパターン誤差指数を分別指標値とする。
合金種別に応じて、例えば7種類の合金では、7つの基本分布データに分別試料の比較分布データを対比して、7つの分別指標値が得られる。分別試料の合金種別は、分別指標値が最も小さい基本分布データに対応する合金種別になるので、その合金種別に分別する。
分布パターンを用いた分別システムでは、コンピュータが識別作業を行うので、人が目視によって識別を行うのに比べて迅速に識別でき、識別精度を一定に保つことができ、また、複数の標準識別パラメータを含む標準パターンを用いることもできるので、一回の対比作業で複数の識別パラメータの対比を行うことができる。
本発明のシステムは、照射装置と撮像装置の代わりに、それらを組合わせて一体化した装置を含むようにして、システムを小型化することができる。
また、分別試料を照射装置や撮像装置に載置する代わりに、分別試料をベルトコンベア等で運搬しながら照射、撮影できるような照射装置と撮像装置を用いることにより、システムの自動化が可能である。
本発明のシステムの変形例としては、小型で持ち運び可能な照射装置と撮像装置を含んだ可搬型分別システムがあり、例えば、照射装置と撮像装置を切断前の大型の合金廃棄物の置かれた場所まで運んで、そこで溶融痕を形成し、撮像することができる。このシステムを用いることにより大型の廃棄物を切断前に分別できるので、切断後に分別する場合に比べて分別回数を大幅に減り、分別時間が短縮し、コストが削減される。
なお、高エネルギービームを照射して金属片の一部を加熱した後に放冷し、その間の加熱部及びその周囲の温度変化を測定することにより、合金を分別する方法がある。この分別方法では、識別パラメータとしては、加熱部の最高到達温度や、加熱部およびその周辺部の表面温度の経時変化のグラフなどを用いることができる。これらのパラメータは、合金の熱伝導度などの物性に依存して発現するので、合金ごとに特徴のある形態が現れやすく、分別の指標とするのに適している。また、この温度による分別方法を用いた分別システムによって、金属片の分別をすることもできる。
この温度による分別方法では、溶融痕を形成することなく分別することが可能で、例えば、金属表面を溶融できない比較的低いエネルギーのビームを用いて加熱して分別することができ、例えば、近赤外線、キセノンランプ又は半導体レーザなどの比較的取扱いが容易な光源を用いることができる。また、表面の温度測定には、例えば赤外線カメラを用いた非接触測定法などが適している。
【実施例1】
本実施例では、高エネルギービームにレーザを用いて、アルミニウム展伸材の試料に溶融痕を形成し、識別パラメータの抽出とパターンの作成を行った。
試料として、アルミニウム展伸材規格でAA1050、AA2024、AA3003、AA4343、AA5052、AA6063、AA7075の7種類を準備した。これらの試料は、厚さ6mmに展伸して使用した。
それぞれの試料は、パルスYAGレーザ(波長1060nm、パルス幅6.5ms)の照射台に載置され、マルチモード、ピーク出力7.5kW、スポット径1.0〜1.5mmに調整され、1パルスの照射により表面に溶融痕を形成した。その後、溶融痕をCCDカメラで撮影し、モニタに映して観察した。
溶融痕から抽出した識別パラメータの種類と、そのデータを表1に示す。

表1の溶融サイズでは、溶融痕のサイズを、大きい方から順に1〜5にコード化した。本実験のレーザ出力と照射時間の条件では、「1」とは、溶融痕の直径が2.5mm以上であり、「2」とは1.7〜2.0mm、「3」とは1.3〜1.6mm、「4」とは1.2mm以下である。
表1の皮膜形状では、1又は2にコード化した。「1」は、溶融痕全体が皮膜で覆われていることを示し、「2」は、溶融痕の中央部には皮膜が除去されていることを示す。
光沢、表面割れの有無についても、0又は1にコード化しており、「0」は無し、「1」は有りを示す。
表1の平坦度では、主にウェービングの有無をコード化しており、「0」は無し、「1」は有りを示す。
溶融痕から抽出したパラメータを用いて、図1に示すようなパターンを作成した。図1(A)がAA1050、図1(B)がAA2024、図1(C)がAA3003、図1(D)がAA4343、図1(E)がAA5052、図1(F)がAA6063、図1(G)がAA7075の溶融痕のパターンである。これらのパターンは、各合金成分系1000系〜7000系の標準パターンとした。図1の各溶融痕の寸法は、適宜拡大されており、実寸比とは異なっている。
溶融痕10表面の酸化被膜の状態は、AA1050、AA3003、AA5052では、溶融痕10の中央付近の酸化被膜30が除去されて金属光沢部25が観察され、その周囲に環状に酸化被膜30が残存するので、図1に示すように二重円状の溶融痕となる。また、AA2024、AA4343、AA6063、AA7075では、酸化被膜30が除去されずに表面全体を覆っているので、溶融痕10が一重円状となる。表面のクラック35は、AA2024、AA6063に現れ、表面に細かい皺が寄るウェービング40は、AA4343、AA7075の溶融痕10の表面全体に現れている。
また、AA7075は、溶融痕10の辺縁部に黒色の付着物45が確認されるが、これは7000系のアルミニウム合金に含まれる低沸点成分であるMgやZnが、溶融時に蒸着したものである。
各アルミニウム合金の識別パラメータ及びパターンは、区別容易な特徴を有しているので、合金種別不明のアルミニウム合金に溶融痕を形成して、図1の標準パターンを比較することにより、容易に7種類に分別することができる。
【実施例2】
本実施例は、高エネルギービームにアークを用いて、アルミニウム展伸材の試料に溶融痕を形成し、識別パラメータの抽出とパターンの作成を行った。
試料として、アルミニウム展伸材規格でAA1050、AA2024、AA3003、AA4343、AA5052、AA6063、AA7075の7種類を準備した。これらの試料は、厚さ6mmに展伸して使用した。
それぞれの試料は、アークの照射台に載置され、放電条件200A、スポット径5〜10mm、照射時間5sで合金表面に溶融痕を形成した。その後、溶融痕をCCDカメラで撮影し、モニタに映して観察した。
溶融痕から抽出した識別パラメータの種類と、そのデータを表2に示す。

表2の溶融サイズでは、溶融痕のサイズが大きい方から順に、1〜4にコード化した。本実験のアーク出力と照射時間の場合には、「1」とは、溶融痕の直径が14mm以上であることを示し、「2」とは12〜14mm、「3」とは10〜12mm、「4」とは10mm以下である。
表2の皮膜形状では、1又は2にコード化した。「1」は、溶融痕全体が皮膜で覆われていることを示し、「2」は、溶融痕の中央部には皮膜が除去されていることを示す。
光沢、表面割れの有無についても、0又は1にコード化しており、「0」は無し、「1」は有りを示す。
表2の平坦度とは、主に中央部の凹みであり、溶融痕の最も深い部分と非溶融痕の表面との深さ方向の差分によって、1又は2にコード化した。「1」とは、深さの差分が1.5mm未満を示し、「2」とは、深さの差分が1.5mm以上のことを示す。この差分は、顕微鏡の焦点位置の差から求めた。
熱影響部とは、溶融痕の周辺部の環状変色部の広さを、広い方から順に1〜3にコード化した。本実験のアーク出力と照射時間の場合には、「1」とは、熱影響部の環の幅が15mm以上であることを示し、「2」とは10〜15mm、「3」とは10mm以下である。
溶融痕から抽出したパラメータを用いて、図2に示すようなパターンを作成した。図2(A)がAA1050、図2(B)がAA2024、図2(C)がAA3003、図2(D)がAA4343、図2(E)がAA5052、図2(F)がAA6063、図2(G)がAA7075の溶融痕のパターンである。これらのパターンは、分別の際の標準パターンとすることができる。図2の各溶融痕の寸法は、適宜拡大されており、実寸比とは異なっている。
溶融痕10表面の酸化被膜30の状態は、AA3003では、溶融痕10の中央付近の酸化被膜30が除去されて金属光沢部25が観察され、その周囲に環状に酸化被膜30が残存するので、図2に示すように2重円状の溶融痕10となっている。また、AA1050、AA2024、AA4343、AA5052、AA6063、AA7075では、酸化被膜が除去されないので、溶融痕が1重円状として観察される。表面のクラック35は、AA2024、AA5052、AA7075に現れる。このクラック35は、溶融痕10の中央凹みが大きい場合に現れる傾向が見られた。
また、AA7075では、溶融痕10の辺縁部に黒色の付着物45が確認されるが、これは7000系のアルミニウム合金に含まれる低沸点成分であるMgやZnが、溶融時に蒸着したものである。
熱影響部20は、溶融痕10周囲の環状変色部であるが、A7075で最も広く、熱影響部20の直径は、溶融痕10の直径の約2.5倍程度である。次に広い熱影響部20が現れるのはA2024であり、熱影響部20の直径は、溶融痕10の直径の約2倍程度であり、他の合金では約1.2〜1.4倍と狭い。
各アルミニウム合金の識別パラメータ及びパターンは、区別容易な特徴を有しているので、種別不明のアルミニウム合金に溶融痕を形成して、図2の標準パターンを比較することにより、容易に7種類に分別することができる。
【実施例3】
本実施例では、高エネルギービームにレーザを用いて、鉄板およびステンレス鋼板の試料に溶融痕を形成し、識別パラメータの抽出とパターンの作成を行った。
試料として、純鉄と、ステンレスとしてJIS規格の、SUS304、SUS316及びSUS430と、YUS205(新日本製鐵株式会社のアルミニウム含有のフェライト系ステンレス鋼)の5種類を準備した。これらの試料は、厚さ1〜2mmに展伸して使用した。
それぞれの試料は、パルスYAGレーザ(波長1060nm、パルス幅6.5ms)の照射台に載置され、マルチモード、ピーク出力7.5kW、スポット径1.0〜1.5mmに調整され、1パルスの照射により表面に溶融痕を形成した。その後、溶融痕をCCDカメラで撮影し、モニタに映して観察した。
溶融痕から抽出した識別パラメータの種類と、そのデータを表3に示す。

溶融痕の色調は、中央部と辺縁部で異なることが多いので、表3のように、各部位の色調をそれぞれ独立の識別パラメータとした。また、溶融痕の輪郭の境界部の色調も別の識別パラメータとした。
溶融痕から抽出したパラメータを用いて、図3に示すようなパターンを作成した。図3(A)が純鉄、図3(B)がSUS304、図3(C)がSUS316、図3(D)がSUS430、図3(E)がYUS205の溶融痕のパターンである。これらのパターンは、鉄及び鋼の標準パターンとすることができる。図3の各溶融痕の寸法は、適宜拡大されており、実寸比とは異なっている。図中、Bは黒色部、Wは白色部、Gは灰色部、Oは橙色部、Mは金属光沢部であることを示す。
純鉄では、溶融部の中央から辺縁部近傍まで黒地に白の細かい同心円状の縞90が確認でき、SUS304とSUS430では、辺縁部に黒色の細い同心円状の縞90が確認できる。SUS316とYUS205では、溶融痕の辺縁部に、白や黄みの白などの明るい色調の環95が2〜3本現れる。
YUS205では、溶融痕の中央部と辺縁部との間に、多数の皺40が現れる。
純鉄および各ステンレス鋼は、それぞれの合金種別によって、溶融痕の色調に特徴があるので、合金種別不明のステンレス鋼に溶融部を形成して観察することにより、合金種類を容易に分別することができる。また、溶融痕表面の縞模様や帯状変色部によってステンレス鋼を分別することも可能である。
【実施例4】
本発明にかかる分別システムの構成例では、図4に示したレーザ用高エネルギービーム照射装置50と、図5に示した撮像装置55が備えられている。高エネルギービーム照射装置50には、レーザビーム70を発振するビーム発生装置65と、分別試料60を載置する照射台72が含まれる。
レーザビーム70は、分別試料60表面と垂直に照射してもよいが、好ましくは、分別試料60表面の法線方向から入射角θだけ傾けて照射する。入射角θの適正範囲は、分別する合金種別によって異なるが、アルミニウム合金の場合には、入射角θは、0〜60°が好ましい。60°以上になると、溶融痕が楕円形状になることがあり、自動化において問題が起こることがあるので、好ましくない。特に、入射角θが5〜30°であると、溶融痕がほぼ円形になり、合金種別ごとの標準識別パラメータの違いが大きくなり、分別精度を上げることができるので好ましい。
高エネルギービーム照射装置50は、レーザビーム70の焦点位置に分別試料60を配置してもよいが、好ましくは、焦点位置から距離dだけ離れた位置に配置する。焦点位置と分別試料とが距離dだけ離れることによって、合金種別ごとに溶融部分の寸法の差異が大きくなる傾向にあるので、分別精度を上げることができる。アルミニウム合金を用いて、焦点距離120mmのパルスYAGレーザの例では、距離dは、レーザビーム70の光源に近づく場合を正、離れる場合を負として、±15mmであるのが好ましい。
撮像装置55には、画像撮影用のCCDカメラ75と、CCDカメラ75に接続された画像出力用のコンピュータ80と、画像を表示するディスプレイ85含む。
本実施例では、図7に示す順に分別が行なわれる。溶融痕形成過程100で、分別試料60は、高エネルギービームの照射装置60の照射台72に載置され、レーザビーム70を照射して溶融痕10が形成される。
撮影過程110では、溶融痕10を形成した分別試料60は、撮影台77に載置されて、CCDカメラ75で溶融痕10の画像を撮影し、画像データは、コンピュータ80に送られ、ディスプレイ85に表示される。
パラメータ抽出過程120では、画像データから、コンピュータ80により識別パラメータの抽出が行なわれ、さらにコンピュータ80により、パターン作成過程130において、抽出された識別パラメータからパターンが作成される。対比過程140では、作成されたパターンが、予めコンピュータ80内に記憶されている標準パターンと比較され、合金種類が識別される。識別結果は、ディスプレイ85に表示される。
識別された分別試料は、分別過程150で同種の合金ごとに分別され、収集される。
【実施例5】
本発明にかかる分別システムを用いて、アルミニウム合金の分別性能の評価試験を行った。この試験は、輝度分布の差分の積算値により合金種別を自動分別する方法を用いた。
まず、合金種別が既知の標準金属片を図4の高エネルギービーム照射装置50の照射台72に載置して、入射角θ=10°で距離d=15mmに設定して溶融痕を形成した。高エネルギービームには、パルスYAGレーザを用いて、ピーク強度が7.5kWで、パルス幅が6.5msに設定して照射した。
次に、溶融痕を形成した試料片を、図5に示した撮像装置55に移動して、光源に環状蛍光灯(SHIMATEC AGS−102)を照射して、CCDカメラ75(TOKYO ELECTRONIC INDUSTRY Co.LTD CS8310B)によって溶融痕全体を撮影し、多数の測定点を設定して、最大輝度を示す測定点の強度を256として、他の測定点の相対強度を測定して、基本分布データとした。図6は、AA1050の基本分布データを3次元グラフで表現したものである。図6の2つの横軸は、被測定面における2つの直交する軸で、任意長さを表している。
基本分布データおよび比較分布データの測定点の数は、数が多いほど分別の精度が上がるが、1つの測定試料の分別に要する時間が長くなるので、分別精度と分別時間との兼ね合いにより、適切な個数を定めるのがよい。本実施例では、溶融痕のほぼ中央に測定中心点を設定して、測定中心から放射状に伸びて360等分する分割線と、測定中心点から10本の同心円状の分割円とを規定し、分割線と分割円との交点を測定点とした。
評価試験では、試料片60を図4の高エネルギービーム照射装置50の照射台72に載置して、入射角θ=10°で距離d=15mmに設定して溶融痕を形成した。高エネルギービームには、パルスYAGレーザを用いて、ピーク強度が7.5kWで、パルス幅が6.5msに設定して照射した。
次に、溶融痕を形成した試料片を、図5に示した撮像装置55に移動して、CCDカメラ75によって画像を取得した。画像は、画像解析ソフトをインストールしたコンピュータ80により、自動で溶融痕のほぼ中央を決定され、測定点が設定され、各測定点における輝度データが抽出されて比較輝度分布が得られる。
前もってコンピュータに格納されていた7種類の基本輝度分布のうちの1つと、比較輝度分布とを測定中心点を一致させた上で、全ての測定点を一致させて、各測定点の輝度の差分を算出した後に、全ての差分を積算して、パターン誤差指数を得た。その後、測定中心点を対称点として、基本輝度分布と比較輝度分布とを相対的に1°だけずらしてパターン誤差指数を取得することを繰り返し、360個のパターン誤差指数を取得した後に、最小のものを分別指標値とした。別の基本輝度分布に関しても、同様の操作を行って、分別指標値を得た。
各合金種別に対応した分別指標値を比較して、最も低い値を示した合金種別として、分別試料片を分別した。
この分別方法の精度を調べるために、7種類の合金種別から成るNo.1〜No.7の試料片についての分別指標値を測定し、分別結果と実際の合金種別とを比較して、表4に示した。表中の下線を付した値が、各試料片における最小の分別指標値である。

表4から判るように、分析結果と分析試料片の合金種別とが全て一致しており、アルミニウム展伸材を精度よく分別できることが明らかになった。
【産業上の利用の可能性】
本発明の分別方法は、アルミニウム合金等を合金種別ごとに精度よく分別できるので、複数種類のアルミニウム合金を使用する自動車をアルミニウム展伸材にリサイクルするのに利用することができる。



【図4】

【図5】

【図6】

【図7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
合金種別不明の金属又は合金から成る分別試料に、その表面の一部に高エネルギービームを照射して溶融させて冷却することにより溶融痕を形成し、溶融痕及び/又はその周辺部の形態に基づいて上記試料を分類し分別する金属及び合金の分別方法。
【請求項2】
合金種別ごとに溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータを予め設定することを含み、識別し分別する工程が、上記標準識別パラメータの当該形態と対比することを含む請求項1に記載の分別方法。
【請求項3】
合金種別ごとに溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータの標準パターンを予め設定することを含み、識別し分別する工程が、上記分別試料の当該形態と上記標準パターンとを対比することを含む請求項1に記載の分別方法。
【請求項4】
合金種別ごとに溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータの基準分布データを予め設定することを含み、識別し分別する工程が、上記分別試料の当該形態と上記分布データとを対比することを含む請求項1に記載の分別方法。
【請求項5】
上記標準識別パラメータが、予め、合金種別の既知の金属及び合金の標準試料にその表面の一部に高エネルギービームを照射して溶融させて冷却することにより溶融痕を形成し、溶融痕及び/又はその周辺部の形態を標準試料間で対比して抽出される請求項1ないし4のいずれかに記載の分別方法。
【請求項6】
識別パラメータが、溶融痕の寸法、皮膜、光沢、平坦度、表面割れ、色調、及び輝度の1つ又は2つ以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の分別方法。
【請求項7】
識別パラメータが、溶融痕周辺の蒸着物、表面割れ、色調、及び輝度の1つ又は2つ以上である請求項1ないし6のいずれかに記載の分別方法。
【請求項8】
高エネルギービームが、レーザ、アーク又はプラズマのいずれかである請求項1ないし7のいずれかに記載の分別方法。
【請求項9】
上記分別試料が、アルミニウムとその合金及び/又はステンレス鋼を含む1ないし8のいずれかに記載の合分別方法。
【請求項10】
合金種別不明の金属又は合金からなる分別試料表面を一部溶融して、該溶融痕及びその周辺部の形態に基づいて上記試料を分別するシステムであって、該システムは、
分別試料の金属表面に所定出力で所定時間に高エネルギービームを照射する照射装置と、
照射後に金属表面の溶融痕とその周辺部の画像を撮影する撮像装置と、
画像データを表示する表示装置と、
を含み、
合金種別ごとに予め設定された溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータと、上記表示装置に表示した上記試料の画像データと、を対比して、試料の合金種別を識別して、分別する金属および合金の分別システム。
【請求項11】
上記の合金分別システムは、さらに、撮像装置から入力された画像データから識別パラメータを抽出し、該識別パラメータを上記標準識別パラメータと対比して合金種別を識別するコンピュータを含み、コンピュータからの合金種別識別データを表示装置に表示するようにした請求項10に記載の分別システム。
【請求項12】
上記のコンピュータに、合金種別ごとに予め溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータの標準パターンが設定され、
該コンピュータが、撮像装置から入力された画像データと識別パラメータとにより画像をパターン化し、画像のパターンを上記標準パターンと対比して合金種別を識別し、合金種別識別データを表示装置に表示するようにした請求項11に記載の分別システム。
【請求項13】
上記のコンピュータに、合金種別ごとに予め溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータの分布についての複数の基本分布データが格納されており、
該コンピュータが、撮像装置から入力された画像データの溶融痕及び/又はその周辺部の標準識別パラメータの比較分布データと、上記基本分布データの各々と、を比較して、合金種別ごとに比較分布データと基本分布データとの差分の積算値を算出して、
分別試料は、差分の積算値が最も少ない合金種別と同一種別として分別する請求項11に記載の分別システム。
【請求項14】
照射装置が、高エネルギービームとして、レーザビームを照射するレーザ源と光学系とを有するレーザ発生装置である請求項9ないし13のいずれかに記載の分別システム。
【請求項15】
照射装置が、高エネルギービームとして、上記の金属表面に非消耗電極との間でアーク柱を形成するアーク発生装置である請求項9ないし13のいずれかに記載の分別システム。
【請求項16】
照射装置が、高エネルギービームとして、プラズマアークもしくはプラズマジェットを放射するプラズマトーチを備えたプラズマ発生装置である請求項9ないし13のいずれかに記載の分別システム。

【国際公開番号】WO2004/063744
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【発行日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−566284(P2004−566284)
【国際出願番号】PCT/JP2003/015634
【国際出願日】平成15年12月5日(2003.12.5)
【出願人】(801000061)財団法人大阪産業振興機構 (168)
【Fターム(参考)】