説明

同期電動機の制御装置及び制御方法

【課題】駆動する永久磁石同期電動機が任意のモータであっても、弱め界磁制御と最大トルク制御との切り換えを安定して行うことができる同期電動機の制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧VmaxとPMモータ1の電気角速度ωeとを用いて弱め界磁制御用のd軸電流演算値を演算するd軸電流演算部12と、最大線間電圧VmaxとPMモータ1の電気角速度ωeとに基づいて、弱め界磁制御用のd軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかをd軸電流指令値Id*として出力させる弱め界磁制御切換部13とを設ける。また、d軸電流演算部12によって、最大線間電圧Vmaxと、PMモータ1の電気角速度と、PMモータ1のモータパラメータである逆起電力係数及びd軸インダクタンスとからd軸電流演算値を演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同期電動機の制御装置及び制御方法に関し、特に弱め界磁制御への切り換えを安定して行える同期電動機の制御装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石同期電動機を基底回転数以上の速度で制御する場合、d軸電流により永久磁石が発生する磁束を弱めて制御する弱め界磁制御への切り換えが行われている。弱め界磁制御への切り換えの判断は、基底回転数とモータ回転数との比較に基づいて行っていたが、直流電圧が大きく変動するような装置の場合、基底回転数以下の速度でインバータ出力電圧が飽和して制御不能となることがあった。
【0003】
そこで本出願人は、直流電圧が変動しても、弱め界磁制御と最大トルク制御との切り換えを安定して行うことができる技術を提案している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、直流電圧をリアルタイムで検出して、制御中の回転数に必要な直流電圧の演算値との比較により、弱め界磁制御を行うか、最大トルク制御を行うかの判断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−33097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1では、主回路部の入力仕様がバッテリを主とした直流電源である特定のモータを制御対象としており、主回路部の入力仕様が3相交流+ダイオード整流による直流電源である場合や任意のモータに対応することができないという課題があった。すなわち、特許文献1では、比較的安定したバッテリを直流電源としていたが、3相交流+ダイオード整流による直流電源では直流電圧が変動するため、弱め界磁制御への切り換えが不安定になってしまう。また、特許文献1では、特定のモータ用のテーブルデータを用いてd軸電流演算を行っているため、任意のモータに対応することができない。
【0006】
本発明の目的は、従来技術の上記課題を解決し、駆動する永久磁石同期電動機が任意のモータであっても、弱め界磁制御と最大トルク制御との切り換えを安定して行うことができる同期電動機の制御装置及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の同期電動機の制御装置は、3相交流をダイオード整流して得られた直流電圧を三相電圧指令値に基づいてインバータ回路で交流電圧に変換し、変換した交流電圧を同期電動機に供給して駆動する同期電動機の制御装置であって、前記同期電動機に流れる三相交流電流を回転座標上のd軸電流とq軸電流とに変換させる電流座標変換手段と、前記直流電圧を用いて最大線間電圧を演算する最大線間電圧演算手段と、該最大線間電圧演算手段によって演算された前記最大線間電圧と前記同期電動機の電気角速度とを用いて弱め界磁制御用のd軸電流演算値を演算するd軸電流演算手段と、前記最大線間電圧演算手段によって演算された前記最大線間電圧と前記同期電動機の前記電気角速度とに基づいて、前記d軸電流演算手段によって演算された弱め界磁制御用の前記d軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかをd軸電流指令値として出力させる弱め界磁制御切換手段と、供給されたモータ速度指令値と前記同期電動機のモータ角速度とを用いてq軸電流指令値を演算するq軸電流演算手段と、前記弱め界磁制御切換手段から出力される前記d軸電流指令値と前記電流座標変換手段によって変換された前記d軸電流との偏差に基づいてd軸電圧演算値を演算するd軸電圧演算手段と、前記q軸電流演算手段によって演算された前記q軸電流指令値と前記電流座標変換手段によって変換された前記q軸電流との偏差に基づいてq軸電圧演算値を演算するq軸電圧演算手段と、前記d軸電圧演算手段によって演算された前記d軸電圧演算値と前記q軸電圧演算手段によって演算された前記q軸電圧演算値とを前記三相電圧指令値に変換させる電圧指令値変換手段とを具備することを特徴とする。
さらに、本発明の同期電動機の制御装置において、前記d軸電流演算手段は、前記最大線間電圧演算手段によって演算された前記最大線間電圧と、前記同期電動機の前記電気角速度と、前記同期電動機のモータパラメータである逆起電力係数及びd軸インダクタンスとから前記d軸電流演算値を演算するようにしても良い。
さらに、本発明の同期電動機の制御装置において、前記弱め界磁制御切換手段は、前記同期電動機の前記電気角速度に基づいてモータ線間電圧を演算し、演算した前記モータ線間電圧と前記最大線間電圧演算手段によって演算された前記最大線間電圧との比較結果に基づいて、前記d軸電流演算手段によって演算された弱め界磁制御用の前記d軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかを選択してd軸電流指令値として出力させるようにしても良い。
さらに、本発明の同期電動機の制御装置において、前記d軸電圧演算手段及び前記q軸電圧演算手段によってそれぞれ演算された前記d軸電圧演算値及び前記q軸電圧演算値に基づくd軸電圧指令値及びq軸電圧指令値を合成ベクトルが所定の値以下になるようにリミットして出力させる電圧指令値制限手段を具備し、前記電圧指令値変換手段は、前記電圧指令値制限手段から出力される前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を前記三相電圧指令値に変換させるようにしても良い。
さらに、本発明の同期電動機の制御装置において、前記最大線間電圧演算手段は、前記直流電圧と前記インバータ回路の変調度とから前記最大線間電圧を演算するようにしても良い。
また、本発明の同期電動機の制御方法は、3相交流をダイオード整流して得られた直流電圧を三相電圧指令値に基づいてインバータ回路で交流電圧に変換し、変換した交流電圧を同期電動機に供給して駆動する同期電動機の制御方法であって、前記同期電動機に流れる三相交流電流を回転座標上のd軸電流とq軸電流とに変換し、前記直流電圧を用いて最大線間電圧を演算し、前記最大線間電圧と前記同期電動機の電気角速度とを用いて弱め界磁制御用のd軸電流演算値を演算し、前記最大線間電圧と前記同期電動機の電気角速度とに基づいて、弱め界磁制御用の前記d軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかをd軸電流指令値として出力し、供給されたモータ速度指令値と前記同期電動機のモータ角速度とを用いてq軸電流指令値を演算し、前記d軸電流指令値と前記d軸電流との偏差に基づいてd軸電圧演算値を演算し、前記q軸電流指令値と前記q軸電流との偏差に基づいてq軸電圧演算値を演算し、前記d軸電圧演算値と前記q軸電圧演算値とを前記三相電圧指令値に変換することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、最大線間電圧演算手段によって演算された最大線間電圧と同期電動機の電気角速度とを用いて弱め界磁制御用のd軸電流演算値を演算し、最大線間電圧と同期電動機の電気角速度とに基づいて、弱め界磁制御用の前記d軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかをd軸電流指令値として出力させるように構成することにより、駆動する永久磁石同期電動機が任意のモータであっても、永久磁石同期電動機のモータパラメータを設定するだけで、任意の永久磁石同期電動機に最適な弱め界磁制御におけるd軸電流指令値をリアルタイムに演算することが可能となる。また、弱め界磁制御と最大トルク制御とをスムーズに安定して切り換えを行うことができ、モータ定格速度の広範囲(例えば2倍程度)な可変速制御を実現することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る同期電動機の制御装置の実施の形態の回路構成を示す回路構成図である。
【図2】図1に示す弱め界磁制御切換部の制御ブロック図である。
【図3】図1に示す弱め界磁制御切換部における切り換え動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1に示す電圧指令値制限部におけるリミット処理を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施の形態は、同期電動機として永久磁石形同期電動機(以下、PMモータ1と称す)を駆動制御する制御装置であり、図1を参照すると、インバータ回路2と、U相電流センサ3u,W相電流センサ3wと、エンコーダ4と、制御部10とを備えている。電源は、3相交流+ダイオード整流による直流電源であり、三相交流電源5をダイオードブリッジ回路6により整流し、平滑コンデンサ7によりリップルを除去した直流電圧Vdcがインバータ回路2に供給され、インバータ回路2で可変電圧、可変周波数の三相交流を出力してPMモータ1に印加するように構成されている。
【0011】
インバータ回路2は、ブリッジ接続されたスイッチ素子Q1〜Q6から構成されている。スイッチ素子Q1〜Q6としては、NPNバイポーラトランジスタや、FET(Field Effect Transistor)を用いることもでき、また、トランジスタの代わりにIGBT(Insulated GateBipolor Transistor)や、サイリスタを用いることもできる。
【0012】
U相電流センサ3uは、PMモータ1のU相巻線に流れる電流の電流値を、W相電流センサ3wは、PMモータ1のW相巻線に流れる電流の電流値をそれぞれ検出するモータ電流検出手段である。なお、U相電流センサ3uとW相電流センサ3wとしては、コイルとホール素子とによって構成された電流センサや、シャント抵抗を用いることができる。
【0013】
エンコーダ4は、PMモータ1の回転によりパルス信号を出力する回転子位置検出手段である。エンコーダ4としては、スケールの変位を明暗信号に換えて光電測定する光学式のもの、多極着磁されたドラムの回転を磁気センサで検出する磁気式のもの、相対的な回転量のみを出力するインクリメンタル型のもの、絶対的な回転量を出力するアブソリュート型のものを用いることかできる。
【0014】
制御部10は、ベクトル制御に基づいてU相、V相、W相の各電圧指令値Vu* ,Vv* ,Vw* を生成し、生成した各電圧指令値Vu* ,Vv* ,Vw* をインバータ回路2に供給する電圧指令値供給手段である。制御部10は、最大線間電圧演算部11と、d軸電流演算部12と、弱め界磁制御切換部13と、d軸電流偏差演算部14と、d軸電流PI演算部15と、速度偏差演算部16と、速度PI演算部17と、q軸電流換算ゲイン調整部18と、q軸電流偏差演算部19と、q軸電流PI演算部20と、電圧指令値制限部21と、電圧指令値座標変換部22と、電流座標変換部23と、V相電流演算部24と、回転子位置速度演算部25と、PWMゲート信号生成器26とを備えている。
【0015】
最大線間電圧演算部11は、インバータ回路2に供給される直流電圧Vdcと、インバータ回路2の変調度kとに基づいて最大線間電圧Vmaxを演算し、求めた最大線間電圧Vmaxをd軸電流演算部12と弱め界磁制御切換部13と電圧指令値制限部21とに出力する。
【0016】
d軸電流演算部12は、最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧Vmaxと、回転子位置速度演算部25で求めた電気角速度ωeとに基づいてd軸電流演算値を演算し、求めたd軸電流演算値を弱め界磁制御切換部13に出力する。
【0017】
弱め界磁制御切換部13は、最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧Vmaxと、電気角速度ωeとに基づいて、弱め界磁制御を行うか最大トルク制御を行うかを判定し、判定結果に基づいて弱め界磁制御及び最大トルク制御のいずれか一方への切り換えを行う。弱め界磁制御切換部13は、弱め界磁制御を行うと判定した場合には、d軸電流演算部12によって演算されたd軸電流演算値を、最大トルク制御を行うと判定した場合には、任意のd軸電流設定値をそれぞれd軸電流指令値Id*として出力する。なお、最大トルク制御を行う場合、通常d軸電流設定値をゼロとするか、リラクタンストルクを利用できる場合はゼロ以外の設定を可能にしている。
【0018】
d軸電流偏差演算部14は、弱め界磁制御切換部13から出力されたd軸電流指令値Id*と、電流座標変換部23から出力されたd軸電流値Idとの差分をd軸電流偏差として演算する減算器である。
【0019】
d軸電流PI演算部15は、d軸電流偏差演算部14によって演算されたd軸電流偏差にPI演算(比例積分演算)を施し、電流座標変換部23から出力されたd軸電流値Idが、弱め界磁制御切換部13から出力されたd軸電流指令値Id*に一致するような電圧を指示するd軸電圧演算値Vdを演算する。
【0020】
速度偏差演算部16は、外部から供給されたモータ速度指令値ωm*と、回転子位置速度演算部25から出力されたモータ角速度ωmとの差分をモータ速度偏差として演算する減算器である。
【0021】
速度PI演算部17と、速度偏差演算部16によって演算されたモータ速度偏差にPI演算(比例積分演算)を施し、トルク指令値Tm*を演算し、求めたトルク指令値Tm*をq軸電流換算ゲイン調整部18に出力する。
【0022】
q軸電流換算ゲイン調整部18は、速度PI演算部17によって演算されたトルク指令値Tm*のゲイン調整を行うことで、q軸電流指令値Iq*を演算し、求めたq軸電流指令値Iq*をq軸電流偏差演算部19に出力する。
【0023】
q軸電流偏差演算部19は、q軸電流換算ゲイン調整部18から出力されたq軸電流指令値Iq*と、電流座標変換部23から出力されたq軸電流値Iqとの差分をq軸電流偏差として演算する減算器である。
【0024】
q軸電流PI演算部20は、q軸電流偏差演算部19によって演算されたq軸電流偏差にPI演算(比例積分演算)を施し、電流座標変換部23から出力されたq軸電流値Iqが、q軸電流換算ゲイン調整部18から出力されたq軸電流指令値Iq*に一致するような電圧を指示するq軸電圧演算値Vqを演算する。
【0025】
電圧指令値制限部21は、d軸電流PI演算部15及びq軸電流PI演算部20によってそれぞれ求められたd軸電圧演算値Vd及びq軸電圧演算値Vqに基づくd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を出力する回路であり、合成ベクトルが所定の値以下になるようにリミットしたd軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とを出力する。
【0026】
電圧指令値座標変換部22は、電圧指令値制限部21から出力されたd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、回転子位置速度演算部25が演算した電気角θeを用いて座標変換し、U相の電圧指令値Vu*、V相の電圧指令値Vv*、W相の電圧指令値Vw*をそれぞれ演算し、求めたU相の電圧指令値Vu*、V相の電圧指令値Vv*、W相の電圧指令値Vw*をPWMゲート信号生成器26に出力する。
【0027】
電流座標変換部23は、U相電流センサ3uによって検出されたU相の電流値Iuと、W相電流センサ3wによって検出されたW相の電流値Iwと、V相電流演算部24によって求められたV相の電流値Ivを、回転子位置速度演算部25によって求められた電気角θeに基づいて、PMモータ1の回転子と同期して回る回転座標系のd軸上のd軸電流値Id、q軸上のq軸電流値Iqに座標変換し、求めたd軸電流値Idをd軸電流偏差演算部14に、求めたq軸電流値Iqをq軸電流偏差演算部19にそれぞれ出力する。
【0028】
V相電流演算部24は、三相平衡条件の下で、U相電流センサ3uによって求められたU相の電流値Iuと、W相電流センサ3wによって求められたW相の電流値Iwとに基づいて、V相の電流値Ivを演算する減算器である。
【0029】
回転子位置速度演算部25は、エンコーダ4から出力されたパルス信号θmをカウントすることにより、PMモータ1の回転子の電気角θeと、PMモータ1の回転速度を示す電気角速度ωeとモータ角速度ωmとを演算し、求めた電気角θeを電圧指令値座標変換部22と電流座標変換部23とに出力すると共に、求めた電気角速度ωeをd軸電流演算部12と弱め界磁制御切換部13とに出力する。また、回転子位置速度演算部25は、求めたモータ角速度ωmを速度偏差演算部16に出力する。なお、電気角θe は、固定子の巻線軸、例えば、U相の巻線軸を基準軸として、その基準軸と回転子の回転子軸との回転角を表す。また、モータ角速度ωmは、PMモータ1の回転軸の実際の回転角速度である。
【0030】
PWMゲート信号生成器26は、電圧指令値座標変換部22から出力されたU相の電圧指令値Vu*、V相の電圧指令値Vv*、W相の電圧指令値Vw*に基づいて、インバータ回路2のスイッチ素子Q1〜Q6をオン/オフするインバータゲート信号を生成して、インバータ回路2を駆動する。
【0031】
次に制御部10の動作について説明する。
q軸電流指令値Iq*の演算動作は、まず、PMモータ1の速度制御を行うため、回転子位置はエンコーダ4により検出を行い、回転子位置速度演算部25において電気角速度ωeを演算する。次に、速度偏差演算部16において、供給されたモータ速度指令値ωm*と、回転子位置速度演算部25で求めたモータ角速度ωmとの差分をモータ速度偏差として演算する。次に、速度PI演算部17において、速度偏差演算部16で演算したモータ速度偏差にPI演算処理を施し、トルク指令値Tm*を演算する。次に、q軸電流換算ゲイン調整部18において、速度PI演算部17によって演算されたトルク指令値Tm*のゲイン調整を行うことで、q軸電流指令値Iq*を演算する。
【0032】
また、d軸電流指令値Id*の演算動作は、まず、最大線間電圧演算部11において、インバータ回路2に供給される直流電圧Vdcと、インバータ回路2の変調度kとに基づいて最大線間電圧Vmaxを演算する。次に、d軸電流演算部12において、最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧Vmaxと、回転子位置速度演算部25で求めた電気角速度ωeとに基づいてd軸電流演算値を求める。次に、弱め界磁制御切換部13において、最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧Vmaxと、電気角速度ωeとに基づいて、弱め界磁制御を行うか最大トルク制御を行うかを判定し、弱め界磁制御を行うと判定した場合には、任意のd軸電流設定値を、最大トルク制御を行うと判定した場合には、d軸電流演算部12によって演算されたd軸電流演算値をそれぞれd軸電流指令値Id*として出力する。
【0033】
さらに、三相交流の電圧指令値(U相の電圧指令値Vu*、V相の電圧指令値Vv*、W相の電圧指令値Vw*)の演算動作は、まず、U相電流センサ3uによって、PMモータ1のU相巻線に流れる電流の電流値をすると共に、W相電流センサ3wによって、PMモータ1のW相巻線に流れる電流の電流値を検出する。次に、V相電流演算部24によって、U相の電流値Iuと、W相の電流値Iwとに基づいて、V相の電流値Ivを演算する。次に、電流座標変換部23において、U相の電流値Iuと、W相の電流値Iwと、V相の電流値Ivを、回転子位置速度演算部25によって求められた電気角θeに基づいて、PMモータ1の回転子と同期して回る回転座標系のd軸上のd軸電流値Id、q軸上のq軸電流値Iqに座標変換する。次に、d軸電流偏差演算部14において、d軸電流指令値Id*と、d軸電流値Idとの差分をd軸電流偏差として演算すると共に、q軸電流偏差演算部19において、q軸電流指令値Iq*と、q軸電流値Iqとの差分をq軸電流偏差として演算する。次に、d軸電流PI演算部15において、演算されたd軸電流偏差にPI演算(比例積分演算)を施し、d軸電圧演算値Vdを演算すると共に、q軸電流PI演算部20において、演算されたq軸電流偏差にPI演算(比例積分演算)を施し、q軸電圧演算値Vqを演算する。次に、電圧指令値制限部21において、d軸電圧演算値Vd及びq軸電圧演算値Vqに基づくd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、合成ベクトルが所定の値以下になるようにリミットして出力する。次に、電圧指令値座標変換部22において、d軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*を、回転子位置速度演算部25が演算した電気角θeを用いて座標変換し、U相の電圧指令値Vu*、V相の電圧指令値Vv*、W相の電圧指令値Vw*をそれぞれ演算する。このようにして演算されたU相の電圧指令値Vu*、V相の電圧指令値Vv*、W相の電圧指令値Vw*に基づいて、PWMゲート信号生成器26は、インバータ回路2のスイッチ素子Q1〜Q6をオン/オフするインバータゲート信号を生成して、インバータ回路2を駆動する。
【0034】
次に、d軸電流演算部12の演算動作について詳細に説明する。
d軸電流演算部12では、PMモータ1の電圧方程式から、最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧Vmaxと、回転子位置速度演算部25で求めた電気角速度ωeと、PMモータ1のモータパラメータとを用いてd軸電流演算値を演算する。なお、d軸電流演算部12によって求められるd軸電流演算値は、弱め界磁制御を行う場合のd軸電流指令値Id*となる。
【0035】
Vd:d軸電圧(V)、Vq:q軸電圧(V)、id:d軸電流(A)、iq:q軸電流(A)、Ld:d軸インダクタンス(H)、Lq:q軸インダクタンス(H)、ωe:電気角速度(rad/s)、Ke:逆起電力係数(V/rad/s)とそれぞれすると、PMモータ1の電圧方程式は、以下に示す[数1]で表される。なお、式を簡略化するため、電機子抵抗による電圧降下は無視し、定常状態の条件から、電機子インダクタンスによる過渡項も無視した。
【0036】
【数1】

【0037】
このときPMモータ1の最大線間電圧をVmaxとすると、最大線間電圧Vmaxと、d軸電圧Vd及びq軸電圧Vqとの関係は、以下に示す[数2]で表される。
【0038】
【数2】

【0039】
ここで、[数2]に[数1]を代入すると、以下に示す[数3]の関係が導かれる。
【0040】
【数3】

【0041】
[数3]を展開してd軸電流idについて整理すると、d軸電流に関する2次方程式となるため、d軸電流について解くと[数4]と[数5]の関係が導かれる。
【0042】
【数4】

【0043】
【数5】

【0044】
弱め界磁制御を行うためのd軸電流idは、[数4]と[数5]のいずれを用いても求めることができるが、効率性を考えるとなるべくd軸電流idが小さい方が良いので、本実施の形態では[数4]の演算式を用いる。また、[数4]において、平方根の中の第1項と第2項を比較したところ、大抵の永久磁石同期電動機の場合、第1項に比べて第2項の方が小さい。そこで第2項を無視して0とすると[数4]は、以下に示す[数6]式に置きかえられる。
【0045】
【数6】

【0046】
従って、制御中において、最大線間電圧Vmax及び電気角速度ωeと、モータパラメータである逆起電力係数Ke及びd軸インダクタンスLdとにより、d軸電流演算値、すなわち弱め界磁制御を行う場合のd軸電流指令値Id*を演算して求めることができる。このようにモータパラメータである逆起電力係数Ke及びd軸インダクタンスLdが分かればd軸電流演算値の演算が可能になるため、どの様なPMモータ1を制御する場合にも適用することができ、PMモータ1毎にd軸電流指令値テーブルを用意する必要がなくなる。
【0047】
なお、本実施の形態では、演算の負担を考慮して、[数4]において平方根の中の第2項を無視して平方根の演算を回避したが、演算能力に余裕がある場合には、[数4]を演算してd軸電流演算値を求めても良い。この場合には、最大線間電圧Vmax及び電気角速度ωeと、モータパラメータである逆起電力係数Ke及びd軸インダクタンスLdとに加え、電流座標変換部23で求められるq軸電流値Iqと、モータパラメータであるq軸インダクタンスLqとにより、d軸電流演算値を演算して求めることができる。
【0048】
なお、最大線間電圧Vmaxは、最大線間電圧演算部11において、インバータ回路2に供給される直流電圧Vdcと、インバータ回路2の変調度kとから、以下に示す[数7]を用いて演算される。
【0049】
【数7】

【0050】
ここで、インバータ回路2の変調度kは、通常の変調方式では「1」となるが、二相変調などインバータの利用率を高める変調方式を使用している場合はその方式での変調度を設定することで、直流電圧がぎりぎりのところまで最大トルク制御で制御することができる。
【0051】
次に、弱め界磁制御切換部13の構成及び切り換え動作について図2及び図3を用いて詳細に説明する。
弱め界磁制御切換部13は、図2を参照すると、電流指令値設定部131と、スイッチ132と、d軸電流指令選択処理部133とを備えている。
【0052】
電流指令値設定部131は、外部からの設定入力によって、最大トルク制御時にd軸電流指令値Id*として出力される任意のd軸電流設定値を設定する電流指令値設定手段である。通常では、最大トルク制御領域においてd軸電流id=0の制御となるので任意のd軸電流設定値は「0」に設定されている。しかしながら、IPMモータ等の突極性のあるPMモータ1の場合には、d軸電流idを流した方が最大トルク且つ高効率となる場合もあるので、本実施の形態では、外部からの設定入力によってユーザが任意のd軸電流設定値を設定することができる構成を採用している。また、また突極性が明確でd軸インダクタンスとq軸インダクタンスが把握できている場合は、演算によりd軸電流指令を求めても良い。
【0053】
スイッチ132は、d軸電流指令値Id*として、電流指令値設定部131に設定されている任意のd軸電流設定値と、d軸電流演算部12で求められたd軸電流演算値とのいずれを出力するかを切り換える出力切り換え手段である。
【0054】
d軸電流指令選択処理部133は、最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧Vmaxと、電気角速度ωeとに基づいて、弱め界磁制御を行うか最大トルク制御を行うかを判定し、スイッチ132の切り換えを制御する。
【0055】
図3を参照すると、d軸電流指令選択処理部133は、まず、最大線間電圧演算部11によって求められた最大線間電圧Vmaxを読み込む(ステップS1)。次に、読み込んだ最大線間電圧Vmaxと、基準値とを比較し(ステップS2)、最大線間電圧Vmaxよりも基準値が小さい場合には、最大線間電圧Vmaxを基準値に変更させる(ステップS3)。なお、基準値はユーザが任意に設定できるように構成されている。これにより、直流電圧Vdcが大きく変動するような場合には、基準値を低めの値で設定することで、弱め界磁制御への切り換えがスムーズになり、直流電圧不足による制御不能状態に陥ることを防止することができる。
【0056】
次に、d軸電流指令選択処理部133は、回転子位置速度演算部25によって求められた電気角速度ωeと、モータパラメータである逆起電力係数Keを用いて、以下に示す[数8]でモータ線間電圧Eを演算する(ステップS4)。
【0057】
【数8】

【0058】
次に、d軸電流指令選択処理部133は、最大線間電圧Vmaxと、ステップS4で求めたモータ線間電圧Eとを比較し(ステップS5)、最大線間電圧Vmaxよりもモータ線間電圧Eが大きい場合には、弱め界磁制御領域と判断して、弱め界磁制御フラグWF_flg=1(弱め界磁制御)の設定を行う(ステップS6)。
【0059】
一方、ステップS5で最大線間電圧Vmaxよりもモータ線間電圧Eが小さい場合には、電気角速度ωeと定格電気角速度ωenの110%値との比較を行い(ステップS7)、電気角速度ωeが定格電気角速度ωenの110%値よりも高い場合には、まだ弱め界磁制御領域と判断し、ステップS6で弱め界磁制御フラグWF_flg=1(弱め界磁制御)の設定を行う。
【0060】
一方、ステップS7で電気角速度ωeが定格電気角速度ωenの110%値よりも低い場合には、最大トルク制御領域と判断し、弱め界磁制御フラグWF_flg=0(最大トルク制御)の設定を行う(ステップS8)。なお、ステップS7の判定基準は定格電気角速度ωenの110%に固定する必要はなく、任意の値で設定してかまわない。またこの値を設定することで弱め界磁制御と最大トルク制御の切り替えにヒステリシス特性を設けることが可能となる。
【0061】
次に、d軸電流指令選択処理部133は、弱め界磁制御フラグWF_flg=1か否かを判断する(ステップS9)。ステップS9でWF_flg=1(弱め界磁制御)の場合には、d軸電流指令選択処理部133は、スイッチ132をd軸電流演算部12側に切り換え、d軸電流演算部12によって演算されたd軸電流演算値をd軸電流指令値Id*として出力させる(ステップS10)。一方、ステップS9でWF_flg=0(最大トルク制御)の場合には、スイッチ132を電流指令値設定部131側に切り換え、電流指令値設定部131に設定されている任意のd軸電流設定値をd軸電流指令値Id*として出力させる(ステップS11)。なお、本実施の形態では、弱め界磁制御フラグWF_flgを設け、弱め界磁制御フラグWF_flgに応じて、弱め界磁制御と最大トルク制御とを切り換えるように構成されている。これにより、外部から弱め界磁制御フラグWF_flgを参照することで、弱め界磁制御と最大トルク制御とのどちらで制御しているかを簡単に把握することができる。
【0062】
次に、電圧指令値制限部21のリミット動作について図4を参照して詳細に説明する。
電圧指令値制限部21は、d軸電圧指令値Vd*とq軸電圧指令値Vq*とをリミットする場合に、図4に示すようなリミット円を用いたリミット処理を実行する。リミット円の値には、最大線間電圧演算部11によって求められる最大線間電圧Vmaxが用いられる。図4(a)に示すように、d軸電流PI演算部15によって求められたd軸電圧演算値Vdとq軸電流PI演算部20によって求められたq軸電圧演算値Vqとの合成ベクトルVrefがリミット円の範囲内にある場合、すなわち最大線間電圧Vmax以下である場合には、電圧指令値制限部21は、d軸電圧演算値Vd及びq軸電圧演算値Vqをリミットせずにそのままd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*として出力する。図4(b)に示すように、d軸電圧演算値Vdとq軸電圧演算値Vqとの合成ベクトルVrefがリミット円の範囲を越えた場合、すなわち最大線間電圧Vmaxを超えた場合には、電圧指令値制限部21は、リミット処理を実行する。リミット処理としては、d軸電圧演算値Vd及びq軸電圧演算値Vqに対して合成ベクトルVrefと最大線間電圧Vmaxとの比をそれぞれ乗算した値をd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq*として出力する。なお、リミット中はその前段にあるd軸電流PI演算部15とq軸電流PI演算部20の積分処理は停止させておく。このようにリミット処理を実行することで、仮に弱め界磁制御に切り換える前にインバータ出カ電圧が飽和しても、制御が不能に陥ることは無く、制御可能状態になった時に正常な制御に復帰する速度が速くなる。
【0063】
以上のように、本実施の形態によれば、最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧VmaxとPMモータ1の電気角速度ωeとを用いて弱め界磁制御用のd軸電流演算値を演算するd軸電流演算部12と、最大線間電圧VmaxとPMモータ1の電気角速度ωeとに基づいて、弱め界磁制御用のd軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかをd軸電流指令値Id*として出力させる弱め界磁制御切換部13とを設けることにより、駆動するPMモータ1が任意のモータであっても、PMモータ1のモータパラメータを設定するだけで、任意のPMモータ1に最適な弱め界磁制御におけるd軸電流指令値をリアルタイムに演算することが可能となる。また、弱め界磁制御と最大トルク制御とをスムーズに安定して切り換えを行うことができ、モータ定格速度の広範囲(例えば2倍程度)な可変速制御を実現することができるという効果を奏する。
【0064】
さらに、本実施の形態によれば、d軸電流演算部12によって、最大線間電圧演算部11によって演算された最大線間電圧Vmaxと、PMモータ1の電気角速度ωeと、PMモータ1のモータパラメータである逆起電力係数Ke及びd軸インダクタンスLdとからd軸電流演算値を演算することにより、d軸電流演算値の演算を簡略化することができ、d軸電流演算値をリアルタイムに演算することが可能となる。
【0065】
さらに、本実施の形態によれば、弱め界磁制御切換部13は、PMモータ1の電気角速度ωeに基づいてモータ線間電圧を演算し、演算したモータ線間電圧と最大線間電圧Vmaxとの比較結果に基づいて、弱め界磁制御用のd軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかを選択してd軸電流指令値として出力させることにより、弱め界磁制御と最大トルク制御とをスムーズに安定して切り換えを行うことができるという効果を奏する。
【0066】
さらに、本発明の同期電動機の制御装置において、d軸電圧演算値Vd及び前記q軸電圧演算値Vqに基づくd軸電圧指令値Vd*及びq軸電圧指令値Vq+を合成ベクトルが所定の値以下になるようにリミットして出力させる電圧指令値制限部21を設けることにより、仮に弱め界磁制御に切り換える前にインバータ出カ電圧が飽和しても、制御が不能に陥ることは無く、制御可能状態になった時に正常な制御に復帰する速度が速くなるという効果を奏する。
【0067】
さらに、本発明の同期電動機の制御装置において、最大線間電圧演算部において、直流電圧Vdcとインバータ回路2の変調度kとから最大線間電圧を演算することにより、変調度を設定することで、直流電圧がぎりぎりのところまで最大トルク制御で制御することができるという効果を奏する。
【0068】
以上、本発明を具体的な実施形態で説明したが、上記実施形態は一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更して実施できることは言うまでも無い。
【符号の説明】
【0069】
1 PMモータ
2 インバータ回路
3u U相電流センサ
3w W相電流センサ
4 エンコーダ
5 三相交流電源
6 ダイオードブリッジ回路
7 平滑コンデンサ
10 制御部
11 最大線間電圧演算部
12 d軸電流演算部
13 弱め界磁制御切換部
14 d軸電流偏差演算部
15 d軸電流PI演算部
16 速度偏差演算部
17 速度PI演算部
18 q軸電流換算ゲイン調整部
19 q軸電流偏差演算部
20 q軸電流PI演算部
21 電圧指令値制限部
22 電圧指令値座標変換部
23 電流座標変換部
24 V相電流演算部
25 回転子位置速度演算部
26 PWMゲート信号生成器
131 電流指令値設定部
132 スイッチ
133 d軸電流指令選択処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3相交流をダイオード整流して得られた直流電圧を三相電圧指令値に基づいてインバータ回路で交流電圧に変換し、変換した交流電圧を同期電動機に供給して駆動する同期電動機の制御装置であって、
前記同期電動機に流れる三相交流電流を回転座標上のd軸電流とq軸電流とに変換させる電流座標変換手段と、
前記直流電圧を用いて最大線間電圧を演算する最大線間電圧演算手段と、
該最大線間電圧演算手段によって演算された前記最大線間電圧と前記同期電動機の電気角速度とを用いて弱め界磁制御用のd軸電流演算値を演算するd軸電流演算手段と、
前記最大線間電圧演算手段によって演算された前記最大線間電圧と前記同期電動機の前記電気角速度とに基づいて、前記d軸電流演算手段によって演算された弱め界磁制御用の前記d軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかをd軸電流指令値として出力させる弱め界磁制御切換手段と、
供給されたモータ速度指令値と前記同期電動機のモータ角速度とを用いてq軸電流指令値を演算するq軸電流演算手段と、
前記弱め界磁制御切換手段から出力される前記d軸電流指令値と前記電流座標変換手段によって変換された前記d軸電流との偏差に基づいてd軸電圧演算値を演算するd軸電圧演算手段と、
前記q軸電流演算手段によって演算された前記q軸電流指令値と前記電流座標変換手段によって変換された前記q軸電流との偏差に基づいてq軸電圧演算値を演算するq軸電圧演算手段と、
前記d軸電圧演算手段によって演算された前記d軸電圧演算値と前記q軸電圧演算手段によって演算された前記q軸電圧演算値とを前記三相電圧指令値に変換させる電圧指令値変換手段とを具備することを特徴とする同期電動機の制御装置。
【請求項2】
前記d軸電流演算手段は、前記最大線間電圧演算手段によって演算された前記最大線間電圧と、前記同期電動機の前記電気角速度と、前記同期電動機のモータパラメータである逆起電力係数及びd軸インダクタンスとから前記d軸電流演算値を演算することを特徴とする請求項1記載の同期電動機の制御装置。
【請求項3】
前記弱め界磁制御切換手段は、前記同期電動機の前記電気角速度に基づいてモータ線間電圧を演算し、演算した前記モータ線間電圧と前記最大線間電圧演算手段によって演算された前記最大線間電圧との比較結果に基づいて、前記d軸電流演算手段によって演算された弱め界磁制御用の前記d軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかを選択してd軸電流指令値として出力させることを特徴とする請求項1又は2記載の同期電動機の制御装置。
【請求項4】
前記d軸電圧演算手段及び前記q軸電圧演算手段によってそれぞれ演算された前記d軸電圧演算値及び前記q軸電圧演算値に基づくd軸電圧指令値及びq軸電圧指令値を合成ベクトルが所定の値以下になるようにリミットして出力させる電圧指令値制限手段を具備し、
前記電圧指令値変換手段は、前記電圧指令値制限手段から出力される前記d軸電圧指令値及び前記q軸電圧指令値を前記三相電圧指令値に変換させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の同期電動機の制御装置。
【請求項5】
前記最大線間電圧演算手段は、前記直流電圧と前記インバータ回路の変調度とから前記最大線間電圧を演算することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の同期電動機の制御装置。
【請求項6】
3相交流をダイオード整流して得られた直流電圧を三相電圧指令値に基づいてインバータ回路で交流電圧に変換し、変換した交流電圧を同期電動機に供給して駆動する同期電動機の制御方法であって、
前記同期電動機に流れる三相交流電流を回転座標上のd軸電流とq軸電流とに変換し、
前記直流電圧を用いて最大線間電圧を演算し、
前記最大線間電圧と前記同期電動機の電気角速度とを用いて弱め界磁制御用のd軸電流演算値を演算し、
前記最大線間電圧と前記同期電動機の電気角速度とに基づいて、弱め界磁制御用の前記d軸電流演算値と最大トルク制御用のd軸電流設定値とのいずれかをd軸電流指令値として出力し、
供給されたモータ速度指令値と前記同期電動機のモータ角速度とを用いてq軸電流指令値を演算し、
前記d軸電流指令値と前記d軸電流との偏差に基づいてd軸電圧演算値を演算し、
前記q軸電流指令値と前記q軸電流との偏差に基づいてq軸電圧演算値を演算し、
前記d軸電圧演算値と前記q軸電圧演算値とを前記三相電圧指令値に変換することを特徴とする同期電動機の制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−78200(P2013−78200A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216385(P2011−216385)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【Fターム(参考)】