説明

吸着装置および液滴吐出装置

【課題】ワークの裏面の擦り傷を防止し、また、静電気の発生を抑制する吸着装置および液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】平坦面10aを有しワークを吸着する吸着穴11が設けられたステージ10と、ステージ10の吸着穴11に接続され負圧を発生させる減圧ポンプ15と、環状の無終端となる多孔質ベルト21が駆動ローラー25と従動ローラー26とに掛け渡されたベルト駆動装置20と、を備え、駆動ローラー25と従動ローラー26との間にステージ10が配置され、ワークの搬送方向と同じ方向に多孔質ベルト21が駆動可能であり、多孔質ベルト21がステージ10に吸着され、多孔質ベルト21を介してワークがステージ10に吸着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着装置および液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、長尺のフィルム状シートを搬送しながら各種処理や加工を行う装置が知られている。
例えば、特許文献1にはフィルム状のTAB(Tape Automated Bonding)テープを搬送し、ステージが多孔質板で形成された吸着装置にTABテープを吸着させて固定し、液滴吐出ヘッドから機能液をTABテープに吐出して配線パターンを描画する描画装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−48998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のような構成の装置において、TABテープなどのフィルムを搬送する際に、吸着装置の多孔質板とフィルムの裏面とが接触して、フィルムの裏面に擦り傷が発生することがある。また、多孔質板とフィルムとの摩擦により静電気が発生してフィルムが帯電し、周囲のごみなどの異物がフィルムに付着する問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0006】
[適用例1]本適用例にかかる吸着装置は、平坦面を有しワークを吸着する吸着穴が設けられたステージと、前記ステージの前記吸着穴に接続され負圧を発生させる負圧発生部と、前記ステージの前記平坦面の上方を覆う多孔質シートで形成されたベルトが移動可能に設けられたベルト駆動装置と、を備え、前記ベルトが前記ステージに吸着され、前記ベルトを介して前記ワークが前記ステージに吸着されることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ステージの平坦面の上方を覆う多孔質シートで形成されたベルトがステージに吸着され、ベルトを介してワークがステージに吸着される。
そして、ワークの搬送は多孔質シートで形成された移動可能なベルトと共に吸着された状態で搬送できるためワークの裏面に擦り傷が発生することがない。
さらに、このワークの搬送において、直接接触するワークとベルトの間で擦れが生じないため、静電気の発生を抑え周囲のごみなどの異物がワークに付着するのを防止することができる。
【0008】
[適用例2]上記適用例にかかる吸着装置において、前記ベルト駆動装置は、環状の無終端となる前記ベルトと、前記ベルトを駆動する駆動ローラーと、前記駆動ローラーと水平位置に設けられ、前記ベルトの駆動により回転する従動ローラーと、を有し、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとの間に前記ステージが配置され、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに前記ベルトが掛け渡されて前記ワークの搬送方向と同じ方向に前記ベルトが駆動可能であることが望ましい。
【0009】
この構成によれば、駆動ローラーと従動ローラーとの間にステージが配置され、環状の無終端となるベルトが駆動ローラーと従動ローラーとに掛け渡されてワークの搬送方向と同じ方向にベルトが駆動可能である。
このようにすれば、ワークの搬送方向とベルトの搬送方向を容易に同じ方向に構成することができ、吸着装置を小型化することができる。
【0010】
[適用例3]上記適用例にかかる吸着装置において、前記駆動ローラーおよび前記従動ローラーにスプロケットが設けられ、前記ベルトに前記スプロケットの歯と係合するスプロケット穴が形成されていることが望ましい。
【0011】
この構成によれば、駆動ローラーおよび従動ローラーにスプロケットが設けられ、ベルトにスプロケットの歯と係合するスプロケット穴が形成されていることから、駆動ローラーおよび従動ローラーとベルトの間の滑りを防止して確実にベルトを駆動させることができる。
【0012】
[適用例4]上記適用例にかかる吸着装置において、前記駆動ローラーおよび前記従動ローラーの表面にローラー吸着穴が設けられ、前記ローラー吸着穴から前記ベルトが吸着されることが望ましい。
【0013】
この構成によれば、駆動ローラーおよび従動ローラーの表面にローラー吸着穴が設けられ、ローラー吸着穴からベルトが吸着されることから、駆動ローラーおよび従動ローラーとベルトの間の滑りを防止して確実にベルトを駆動させることができる。
【0014】
[適用例5]本適用例にかかる液滴吐出装置は、ワークをロール・ツウ・ロール方式で搬送する搬送装置と、液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、を備え、前記吸着装置に吸着された前記ワークに対して前記液滴吐出ヘッドから液滴を吐出することを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、上述した吸着装置を液滴吐出装置に備えているため、ロール・ツウ・ロール方式で搬送されたワークを確実にステージ上で吸着および搬送ができ、ワーク裏面の擦り傷やワークの帯電を防止する液滴吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態における吸着装置の構成を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図。
【図2】第1の実施形態にかかるステージの構成を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図。
【図3】第1の実施形態における吸着装置の動作を示す説明図。
【図4】第1の実施形態の吸着装置における変形例の構成を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略断面図、(c)は駆動ローラーの概略断面図。
【図5】第2の実施形態にかかる液滴吐出装置の構成を示す模式図。
【図6】第2の実施形態にかかる液滴吐出ヘッドの構成を示す概略断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の寸法の割合を適宜変更している。
(第1の実施形態)
【0018】
図1は本実施形態における吸着装置の構成を示し、図1(a)は概略平面図、図1(b)は同図(a)のA−A断線に沿う概略断面図である。図2はステージの構成を示し、図2(a)は概略平面図、図2(b)は同図(a)のB−B断線に沿う概略断面図である。
【0019】
吸着装置1は、ワークを吸着するステージ10と、負圧発生部としての減圧ポンプ15と、ベルト駆動装置20と、を備えている。
ステージ10は、図2に示すように板状に形成され、表面が平坦である平坦面10aを一面に有し、この平坦面10aに定ピッチで配置された吸着穴11が設けられている。この各吸着穴11はステージ10の内部において、キャビティーが形成された空間部12に連通している。そして、この空間部12はステージ10の端面に形成された吸引口13に連通している。
【0020】
そして、図1に示すように、吸引口13には中空のチューブ14が接続され、チューブ14の先には負圧発生部としての減圧ポンプ15が接続されている。
このようにして、減圧ポンプ15を作動させることでチューブ14を介してステージ10内の空間部12が減圧状態となり、大気と連通した吸着穴11から吸引が行われ、ステージ10の平坦面10aにてワークなどを吸着することができる。
なお、ステージ10は金属、セラミックス、樹脂、石材などの材料にて形成されている。
【0021】
ベルト駆動装置20は、多孔質ベルト21と、駆動ローラー25と、従動ローラー26と、を備えている。駆動ローラー25と従動ローラー26とは水平に配置され、駆動ローラー25と従動ローラー26とに多孔質ベルト21が掛け渡されている。
多孔質ベルト21は、多くの微細な穴を有する多孔質シートから形成され、環状の無終端となる平ベルト状に形成されている。例えば、多孔質シートは超高分子量ポリエチレンを材料とし、厚み0.1〜0.5mm、気孔率30%、動摩擦係数0.1、であり、帯電防止処理が施されたものが採用されている。
【0022】
駆動ローラー25にはモーターなどの動力源が接続され、駆動ローラー25の両端には多孔質ベルト21の幅に沿って、スプロケット27が取り付けられている。従動ローラー26は多孔質ベルト21の駆動により回転するように構成され、従動ローラー26の両端にもスプロケット27が取り付けられている。
そして、多孔質ベルト21の両側端の全周に駆動ローラー25および従動ローラー26に取り付けられたスプロケット27の歯に係合するスプロケット穴22が設けられている。なお、駆動ローラー25および従動ローラー26は金属などの剛性の高い材料で形成されている。
【0023】
ベルト駆動装置20は駆動ローラー25が駆動することで、駆動ローラー25のスプロケット27の歯と多孔質ベルト21のスプロケット穴22が係合して多孔質ベルト21を送り出す。また、従動ローラー26のスプロケット27の歯と多孔質ベルト21のスプロケット穴22が係合しており、多孔質ベルト21の動きに同期して従動ローラー26が回転する。
このように、各ローラーのスプロケットの歯と多孔質ベルト21のスプロケット穴22が係合して多孔質ベルト21が駆動されるため、各ローラーとの滑りなどがなく確実に多孔質ベルト21を駆動させることができる。
【0024】
そして、吸着装置1は駆動ローラー25と従動ローラー26との間にステージ10が配置され、ステージ10の上方を覆うように多孔質ベルト21が設けられている。
ステージ10は多孔質ベルト21を吸着できるように、近接して配置されている。また、ステージ10において多孔質ベルト21を吸着しながら多孔質ベルト21を駆動できるように吸着力と駆動力の力関係が設定されている。
また、ステージ10は多孔質シートで形成された多孔質ベルト21を吸着しているときには、ステージ10の上方では多孔質ベルト21の微細な穴から吸引が行われ、ワークなどの吸着が可能である。
【0025】
次に、本実施形態の吸着装置1の動作について説明する。
図3は吸着装置の動作を示す説明図である。図3は、吸着装置1と吸着装置1の上方にワークWを供給する搬送装置40の一部を表している。搬送装置40はロール・ツウ・ロールの搬送方式である。
ワークWは長尺のフィルムが用いられ、例えば、厚み50μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムなどが搬送ローラー43c,43dなどにより搬送される。搬送装置40の搬送と吸着装置1の駆動ローラー25の動きとは同期がとられている。そして、吸着装置1は、吸着装置1の多孔質ベルト21とワークWの裏面とが接し、ワークWの搬送方向と多孔質ベルト21の移動方向が同じ方向となるように配置されている。
【0026】
まず、搬送装置40およびベルト駆動装置20の動きが止まった状態で、負圧発生部の減圧ポンプが稼動して、ステージ10の吸着穴11より多孔質ベルト21が吸引されてステージ10の平坦面に沿って吸着される。
そして、ステージ10の上方に供給されているワークWが多孔質ベルト21を介してステージ10に吸引される。吸引されたワークWはステージ10の平坦面に倣って、平坦に保持される。
【0027】
例えば、上記のようにワークWがステージ10上に多孔質ベルト21を介して保持された状態でワークWの表面に印刷などの処理が施される。そして、ステージ10上のワークWの処理が終了すると、ワークWを搬送する。このとき、吸着装置1がワークWを吸着しながらワークWの搬送が行われる。つまり、ステージ10の上方を通過するワークWは多孔質ベルト21に吸着された状態で移動していく。このように、ステージ10の上方を搬送されるワークWの裏面は他の部分と擦れることがなく搬送される。
【0028】
また、上記ではワークWを吸着装置1が吸着して、ステージ10上でワークWを停止して処理を行う場合について説明したが、ワークWを搬送しながらワークWに処理を施すこともできる。つまり、吸着装置1がワークWを吸着してワークWの搬送を行いながら各種の処理を行っても良い。このようにすれば、ステージ10の上方を通過するワークWは多孔質ベルト21に吸着された状態で移動して行き、ワークWの裏面は他の部分と擦れることがなく搬送される。
【0029】
以上のように、本実施形態の吸着装置1は、ステージ10の平坦面10aの上方を覆う多孔質シートで形成された多孔質ベルト21がステージ10に吸着され、多孔質ベルト21を介してワークWがステージ10に吸着される。このため、例えば厚みの薄いワークWの場合、吸引時にワークWが吸着穴11に沿ってへこむことがない。
また、ワークWの搬送は移動可能な多孔質ベルト21と共に吸着された状態で搬送できるためワークWの裏面に擦り傷が発生することがない。
さらに、このワークWの搬送において、直接接触するワークWと多孔質ベルト21の間で擦れが生じないため、静電気の発生を抑え周囲のごみなどの異物がワークWに付着するのを防止することができる。
【0030】
また、吸着装置1は、駆動ローラー25と従動ローラー26との間にステージ10が配置され、環状の無終端となる多孔質ベルト21が駆動ローラー25と従動ローラー26とに掛け渡されてワークWの搬送方向と同じ方向に多孔質ベルト21が駆動可能である。
このようにすれば、ワークWの搬送方向と多孔質ベルト21の搬送方向を容易に同じ方向に構成することができ、吸着装置1を小型化することができる。
【0031】
なお、上記においてワークは長尺のフィルムとしたが、個別の形状のワークであっても本吸着装置の利用が可能であり、この場合、ステージの吸着範囲内であれば何処にでも吸着することができる。
また、多孔質ベルトを定期的に交換することでステージ上の清浄を容易に保つことができ、吸着装置のメンテナンス性が良い。
(変形例)
【0032】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
本変形例では、ベルト駆動装置の構成が第1の実施形態とは異なる。このため、第1の実施形態と同じ構成要素については同符号を付し、説明を省略する。
図4は変形例における吸着装置の構成を示し、図4(a)は概略平面図、図4(b)は同図(a)のC−C断線に沿う概略断面図、図4(c)は駆動ローラーの概略断面図である。
【0033】
吸着装置2は、ワークを吸着するステージ10と、負圧発生部としての減圧ポンプ15,45と、ベルト駆動装置30と、を備えている。
ベルト駆動装置30は、多孔質ベルト31と、駆動ローラー35と、従動ローラー36と、を備えている。駆動ローラー35と従動ローラー36とは水平に配置され、駆動ローラー35と従動ローラー36とに多孔質ベルト31が掛け渡されている。
多孔質ベルト31は、多くの微細な穴を有する多孔質シートから形成され、環状の無終端となる平ベルト状に形成されている。
【0034】
駆動ローラー35にはモーターなどの動力源が接続され、駆動ローラー35の駆動を可能にしている。
駆動ローラー35は内部に中空部35aを有し、この中空部35aに連通する複数のローラー吸着穴37が設けられている。ローラー吸着穴37は多孔質ベルト31の幅方向に列をなして形成され、駆動ローラー35の周上に複数列設けられている(図3(c)参照)。
従動ローラー36は多孔質ベルト31の駆動により回転するように構成され、従動ローラー36も駆動ローラー35と同様に、内部に中空部36aを有し、この中空部36aに連通する複数のローラー吸着穴38が設けられている。
なお、駆動ローラー35および従動ローラー36は金属などの剛性の高い材料で形成されている。
【0035】
そして、駆動ローラー35および従動ローラー36には、それぞれの中空部35a,36aを吸引する負圧発生部としての減圧ポンプ45が接続されている。
なお減圧ポンプ45は、ステージに接続された減圧ポンプ15と共通化しても良い。
【0036】
駆動ローラー35はモーターなどの動力源により駆動され、多孔質ベルト31を駆動する。従動ローラー36は掛け渡された多孔質ベルト31が駆動されることで摩擦により回転する。多孔質ベルト31は駆動ローラー35と従動ローラー36に多孔質ベルト31の摩擦が消滅しない弛みの無い様に掛け渡されている。
そして、駆動ローラー35および従動ローラー36に形成されたローラー吸着穴37,38から多孔質ベルト31を吸着しながら多孔質ベルト31を駆動している。このようにすることで、多孔質ベルト31と各ローラーとの滑りなどがなく確実に多孔質ベルト31を駆動させることができる。
【0037】
そして、駆動ローラー35と従動ローラー36との間にステージ10が配置され、ステージ10の上方を覆うように多孔質ベルト31が設けられている。
ステージ10は多孔質ベルト31を吸着できるように、近接して配置されている。また、ステージ10において多孔質ベルト31を吸着しながら多孔質ベルト31を駆動できるように吸着力と駆動力の力関係が設定されている。
また、ステージ10は多孔質シートで形成された多孔質ベルト31を吸着しているときには、ステージ10の上方では多孔質ベルト31の微細な穴から吸引が行われワークなどの吸着が可能である。
【0038】
以上のような、吸着装置2の構成においても、ステージ10上に多孔質ベルト31を介してワークを吸着でき、さらに、ワークは多孔質ベルト31に吸着された状態で移動が可能で第1の実施形態と同様な効果を得ることができる。
(第2の実施形態)
【0039】
次に、第2の実施形態として吸着装置を備えた液滴吐出装置について説明する。本実施形態では紫外線硬化型インクを用い、インクジェット方式にてインク(液滴)をワークに吐出して描画を行う液滴吐出装置を例にとり説明する。
図5は本実施形態の液滴吐出装置の構成を示す模式図である。
【0040】
液滴吐出装置5は、吸着装置1と、搬送装置40と、液滴吐出ヘッド50と、紫外光照射ユニット47と、を備えている。
搬送装置40はロール・ツウ・ロール方式の搬送装置であり、フィルム状のワークWが巻かれワークWを供給する給材ローラー41と、処理されたワークWを巻き取って除材する除材ローラー42と、給材ローラー41と除材ローラー42との間においてワークWの搬送を行う搬送ローラー43a〜43fと、を有している。
【0041】
そして、搬送装置40の中間位置の搬送ローラー43cと搬送ローラー43dとの間には、吸着装置1が配置されている。
吸着装置1は図1で説明したように、吸着穴を有するステージ10を覆うように多孔質ベルト21が、駆動ローラー25と従動ローラー26の間に掛け渡されている。
【0042】
ステージ10の上方には紫外線硬化型インクを液滴としてワークWに吐出する液滴吐出ヘッド50が配置されている。また、ワークWに吐出された紫外線硬化型インクに紫外光を照射して硬化させる紫外光照射ユニット47がステージ10より下流側に設けられている。
なお、ワークWは厚み50μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムやポリカーボネートフィルムが用いられる。
【0043】
次に液滴吐出ヘッド50の構成について説明する。
図6は液滴吐出ヘッドの構成を示す概略断面斜視図である。
液滴吐出ヘッド50は、ノズルプレート56に複数のノズル55を備え、それぞれのノズル55の開口に連通する圧力室53、圧力室53の一壁面を構成する振動板52、振動板52を変形させるPZTなどの圧電素子51、各圧力室53にインクなどの液状体を送り込む共通インク室54を有している。
【0044】
振動板52は、弾性変形可能な薄板から構成され、圧電素子51の先端に当接している。このような構成により、圧電素子51が収縮して、振動板52が上方に撓んで圧力室53が膨張すると、共通インク室54の液状体が圧力室53に流れ込む。所定時間の経過後に、圧電素子51が伸長して、振動板52が元に戻って圧力室53が収縮すると、圧力室53の液状体が圧縮されて、ノズル55の開口から液滴が吐出する。このとき、液滴吐出ヘッド50に形成されている多数のノズル55のうち、いずれから液滴を吐出するかによってワークに所定の文字、マークや画像などの描画が可能である。
【0045】
以上の構成の液滴吐出装置5において、ステージ10の上方にワークWが搬送され、ステージ10の吸着穴から多孔質ベルト21が吸引され、さらにワークWが多孔質ベルト21を介してステージ10に吸引される。このようにして、ワークWがステージ10に平坦に保持される。
そして、液滴吐出ヘッド50が搬送方向(主走査方向)に動き、液滴を吐出してワークWに描画を行う。また、必要に応じてワークWの幅方向(副走査方向)に動いて改行して描画を行う。所定の描画が終了すると、吸着装置1がワークWを吸着しながらワークWの搬送が行われる。つまり、ステージ10の上方を通過するワークWは多孔質ベルト21に吸着された状態で移動していく。液滴が吐出されたワークWの部分は紫外光照射ユニット47により紫外光が照射されてインクの硬化が行われる。
【0046】
また、ワークWの搬送によりステージ10の上方には液滴の吐出前のワークWが吸着装置1に吸着されており、続いて液滴吐出ヘッド50から液滴がワークWに吐出される。
このような動作が繰り返されて、ワークWに連続して液滴を吐出することが可能である。なお、このようにワークWをステージ10上で吸着固定し、液滴吐出ヘッド50を走査させて描画する方法に加え、液滴吐出ヘッド50を固定し、ワークWを搬送させながら描画する方法の2通りの描画方法が可能である。
【0047】
以上、本実施形態の液滴吐出装置5は、多孔質ベルト21を介してワークWがステージ10に吸着されるため、厚みの薄いワークWの場合、吸引時にワークWが吸着穴11に沿ってへこむことがない。このためワークWに変形がなく、精度の高い描画が可能となる。
また、ワークWの搬送は移動可能な多孔質ベルト21と共に吸着された状態で搬送できるためワークWの裏面に擦り傷が発生することがない。
さらに、このワークWの搬送において、直接接触するワークWと多孔質ベルト21の間において、擦れが生じないため、静電気の発生を抑え周囲のごみなどの異物がワークWに付着するのを防止することができる。
このように、第1の実施形態で説明した吸着装置1を液滴吐出装置5に備えているため、ロール・ツウ・ロール方式で搬送されたワークWを確実にステージ10上で吸着および搬送ができ、ワークWの裏面の擦り傷やワークWの帯電を防止する液滴吐出装置5を提供することができる。
【0048】
なお、液滴吐出装置に用いるインクとして紫外線硬化型インクに限らず、ホットメルトタイプのインクなど他のインクを用いても良い。
【符号の説明】
【0049】
1,2…吸着装置、5…液滴吐出装置、10…ステージ、10a…平坦面、11…吸着穴、12…空間部、13…吸引口、14…チューブ、15…負圧発生部としての減圧ポンプ、20…ベルト駆動装置、21…多孔質ベルト、22…スプロケット穴、25…駆動ローラー、26…従動ローラー、27…スプロケット、30…ベルト駆動装置、31…多孔質ベルト、35…駆動ローラー、36…従動ローラー、37,38…ローラー吸着穴、40…搬送装置、41…給材ローラー、42…除材ローラー、43a〜43f…搬送ローラー、45…負圧発生部としての減圧ポンプ、47…紫外光照射ユニット、50…液滴吐出ヘッド、51…圧電素子、52…振動板、53…圧力室、54…共通インク室、55…ノズル、56…ノズルプレート、W…ワーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦面を有しワークを吸着する吸着穴が設けられたステージと、
前記ステージの前記吸着穴に接続され負圧を発生させる負圧発生部と、
前記ステージの前記平坦面の上方を覆う多孔質シートで形成されたベルトが移動可能に設けられたベルト駆動装置と、を備え、
前記ベルトが前記ステージに吸着され、前記ベルトを介して前記ワークが前記ステージに吸着されることを特徴とする吸着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着装置において、
前記ベルト駆動装置は、
環状の無終端となる前記ベルトと、
前記ベルトを駆動する駆動ローラーと、
前記駆動ローラーと水平位置に設けられ、前記ベルトの駆動により回転する従動ローラーと、を有し、
前記駆動ローラーと前記従動ローラーとの間に前記ステージが配置され、前記駆動ローラーと前記従動ローラーとに前記ベルトが掛け渡されて前記ワークの搬送方向と同じ方向に前記ベルトが駆動可能であることを特徴とする吸着装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の吸着装置において、
前記駆動ローラーおよび前記従動ローラーにスプロケットが設けられ、
前記ベルトに前記スプロケットの歯と係合するスプロケット穴が形成されていることを特徴とする吸着装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の吸着装置において、
前記駆動ローラーおよび前記従動ローラーの表面にローラー吸着穴が設けられ、前記ローラー吸着穴から前記ベルトが吸着されることを特徴とする吸着装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の吸着装置と、
ワークをロール・ツウ・ロール方式で搬送する搬送装置と、
液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、を備え、
前記吸着装置に吸着された前記ワークに対して前記液滴吐出ヘッドから液滴を吐出することを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−194297(P2011−194297A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62079(P2010−62079)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】