説明

回路接続材料及びそれを用いた回路板の製造方法、回路板

【課題】従来のエポキシ樹脂系よりも低温速硬化性に優れかつ、回路部材に対して良好な接着強度が得られる、電気・電子用の回路接続材料及びそれを用いた回路板の製造方法、回路板を提供する。
【解決手段】(1)シリコン変成ポリイミド樹脂、(2)ラジカル重合性物質、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤を必須成分とし、さらに導電性粒子を含み、(1)シリコン変成ポリイミド樹脂2〜75重量部、(2)ラジカル重合性物質30〜60重量部、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤0.1〜30重量部、(4)フィルム形成材0〜40重量部を含み、導電性粒子が接着剤成分に対して0.1〜30体積%が含まれる回路接続材料。対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に介在させ、加熱加圧して第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接着剤組成物と導電性粒子を用いた回路接続材料及びそれを用いた回路板の製造方法、回路板に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂系接着剤は、高い接着強さが得られ、耐水性や耐熱性に優れること等から、電気・電子、建築、自動車、航空機等の各種用途に多用されている。中でも一液型エポキシ樹脂系接着剤は、主剤と硬化剤との混合が不必要であり使用が簡便なことから、フィルム状、ペースト状、粉体状の形態で使用されている。この場合、エポキシ樹脂と硬化剤及び変性剤との多様な組み合わせにより、特定の性能を得ることが一般的である。(例えば、特開昭62−141083号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−141083号公報
【特許文献2】特開平11−97825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特開昭62−141083号公報に示されるフィルム状接着剤は、作業性に優れるものの、20秒程度の接続時間で140〜180℃程度の加熱、10秒では180〜210℃程度の加熱が必要であった。この理由は、短時間硬化性(速硬化性)と貯蔵安定性(保存性)の両立により良好な安定性を得ることを目的として、常温で不活性な触媒型硬化剤を用いているために、硬化に際して十分な反応が得られないためである。近年、精密電子機器の分野では、回路の高密度化が進んでおり、接続端子幅、接続端子間隔が極めて狭くなっている。このため、従来のエポキシ樹脂系を用いた回路接続材料の接続条件では、配線の脱落、剥離や位置ずれが生じるなどの問題があった。また、生産効率向上のために10秒以下で接続できる接続時間の短縮化が求められてきている。これらの要求を満たすためには、低温でしかも短時間で硬化することの出来る低温速硬化性の回路接続材料が必要不可欠となっている。(例えば、特開平11−97825号公報)。しかしながら、上記回路接続部材は接続する回路を構成する材料の種類により接着強度が異なるという問題があった。特に、回路端子を支持する基板がポリイミド樹脂等の有機絶縁物質やガラスの場合、または回路部材表面が窒化シリコン、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂でコーティング、もしくはこれらの樹脂が回路部材表面に付着していた場合、著しく接着強度が低下する問題があった。本発明の目的は、従来のエポキシ樹脂系よりも低温速硬化性に優れ、かつ、回路端子を支持する基板が有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種からなる回路部材及び表面が窒化シリコン、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着した回路部材に対して特に良好な接着強度が得られる、電気・電子用の回路接続材料及びそれを用いた回路板の製造方法、回路板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、〔1〕相対向する接続端子間に介在され、相対向する接続端子を加圧し加圧方向の接続端子間を電気的に接続する接続材料であって、(1)シリコン変成ポリイミド樹脂、(2)ラジカル重合性物質、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤を必須成分とし、(1)シリコン変成ポリイミド樹脂2〜75重量部、(2)ラジカル重合性物質30〜60重量部、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤0.1〜30重量部、(4)フィルム形成材0〜40重量部を含む回路接続材料である。
〔2〕(1)、(2)、(3)、(4)の成分とさらに(5)導電性粒子を必須成分とする上記〔1〕に記載の回路接続材料である。
〔3〕(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤が、室温(25℃)常圧下で24時間の開放放置後に20重量%以上の重量保持率を有する硬化剤である上記〔1〕または上記〔2〕に記載の回路接続材料である。
〔4〕(4)フィルム形成材が、ポリウレタン樹脂である上記〔1〕ないし上記〔3〕のいずれかに記載の回路接続材料である。
〔5〕(2)ラジカル重合性物質が、ウレタンアクリレートである上記〔1〕ないし上記〔4〕のいずれかに記載の回路接続材料である。
〔6〕さらに25℃での弾性率が0.1〜100MPaであるシリコーン微粒子を、上記(1)、(2)、(4)成分の合計100重量部に対し5〜200重量部含有する上記〔1〕ないし上記〔5〕のいずれかに記載の回路接続材料である。
また、本発明は、〔7〕第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に前記〔1〕ないし前記〔6〕のいずれかに記載の回路接続材料を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路板の製造方法である。
〔8〕少なくとも一方の接続端子の表面が金、銀、白金族の金属から選ばれる少なくとも一種で構成される上記〔7〕に記載の回路板の製造方法である。
〔9〕少なくとも一方の接続端子を支持する基板が有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種で構成される上記〔7〕または上記〔8〕に記載の回路板の製造方法である。
〔10〕少なくとも一方の回路部材表面が窒化シリコン、シリコーン化合物、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着している上記〔7〕ないし上記〔9〕のいずれかに記載の回路板の製造方法である。
また、本発明は、〔11〕上記〔7〕ないし上記〔10〕のいずれかに記載の回路板の製造方法で得られる回路板である。
【発明の効果】
【0006】
以上詳述したように本発明によれば、従来のエポキシ樹脂系よりも低温速硬化性に優れかつ可使時間を有し、回路腐食性が少ない電気・電子用の回路接続材料、それを用いた回路板の製造方法、回路板の提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に用いる(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物などの加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものであり、目的とする接続温度、接続時間、ポットライフ等により適宜選定されるが、高反応性とポットライフの点から、半減期10時間の温度が40℃以上、かつ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上かつ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物がさらに好ましい。接続時間を10秒以下とした場合、硬化剤の配合量は十分な反応率を得るためには、0.1〜30重量部とするのが好ましく1〜20重量部がより好ましい。硬化剤の配合量が0.1重量部未満では、十分な反応率を得ることができず良好な接着強度や小さな接続抵抗が得られにくくなる傾向にある。配合量が30重量部を超えると、回路接続材料の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、回路接続材料のポットライフが短くなる傾向にある。
【0008】
有機過酸化物としては、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシエステル類、パーオキシケタール類、ジアルキルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、シリルパーオキサイド類が挙げられる。ジアシルパーオキサイド類としては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニックパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0009】
パーオキシジカーボネート類としては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0010】
パーオキシエステル類としては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシべンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等を挙げることができる。
【0011】
パーオキシケタール類では、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0012】
ジアルキルパーオキサイド類では、α’,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0013】
ハイドロパーオキサイド類では、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0014】
シリルパーオキサイド類としては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0015】
また、回路部材の接続端子の腐食を抑えるために、硬化剤中に含有される塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましく、さらに、加熱分解後に発生する有機酸が少ないものがより好ましい。また、作製した回路接続材料の安定性が向上することから室温(25℃)常圧下で24時間の開放放置後に20重量%以上の重量保持率を有することが好ましい。これらは適宜混合して用いることができる。これらの遊離ラジカル発生剤は単独または混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いても良い。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0016】
本発明で用いる(1)シリコン変成ポリイミド樹脂は、酸二無水物とジアミンのどちらか一方または両方がシロキサン骨格を有しており、例えばテトラカルボン酸二無水物とシロキサン骨格を有するジアミンの付加反応により合成したポリアミック酸を加熱縮合させイミド化したものであり溶解性、フィルム形成性の点から、重量平均分子量は10000〜150000程度が好ましい。この時、酸二無水物とジアミンは溶剤への溶解性やラジカル重合性材料との相溶性の点から適宜選択され、多成分を混合して用いることもできる。
【0017】
本発明で使用する(4)フィルム形成材としては、ポリウレタン樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、フェノキシ樹脂等が挙げられる。これらは適宜併用して用いることができる。フィルム形成材とは、液状物を固形化し、構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取扱いが容易で、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械特性等を付与するものであり、通常の状態でフィルムとしての取扱いができるものである。また、フィルム形成材はラジカル重合性の官能基により変成されていても良い。
【0018】
本発明で用いるフィルム形成材のポリウレタン樹脂は、分子内に2個の水酸基を有するジオールと2個のイソシアネート基を有するジイソシアネートの反応により得られる樹脂であり、硬化時の応力緩和に優れ、極性を有するため接着性が向上する。ジオールとしては線状の末端水酸基を有するものであれば好ましく使用することができ、具体的には、ポリエチレンアジペート、ポリジエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリカプロラクトンポリオール、ポリヘキサメチレンカーボネート、シリコーンポリオール、アクリルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。これらは、単独でも、また、2種以上を併用することもできる。また多価アルコールを併用することもできる。ジイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独あるいは併用して用いても良い。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、10000〜1000000が好ましい。重量平均分子量が、10000未満では、回路接続材料の凝集力が低下し、十分な接着強度が得られにくくなる傾向にある。1000000を超えると混合性、流動性が悪くなる傾向にある。また、ジオールとジイソシアネートからポリウレタン樹脂を合成する際に、多価アルコール、アミン類、酸無水物等を配合し適宜反応させても良く、例えば酸無水物と反応させて得られるイミド基含有ポリウレタンは、接着性や耐熱性が向上するので好ましい。本発明で使用すると好ましいポリウレタン樹脂は、ラジカル重合性の官能基などによって変性されていても良く、ラジカル重合性の官能基で変性したものは耐熱性が向上するため好ましい。本発明で使用すると好ましいポリウレタン樹脂は、フローテスタ法での流動点が40〜140℃の範囲内であるものが好ましい。フローテスタ法での流動点は、フローテスタを用いて測定し、直径1mmのダイを用い、3MPaの圧力をかけて、昇温速度2℃/分で昇温した時のシリンダの動き始める温度である。本発明で使用すると好ましいポリウレタン樹脂は、このフローテスタ法での流動点が40〜140℃の範囲内で適用可能であり、50℃〜100℃であることがより好ましい。フローテスタ法での流動点が、40℃未満では、フィルム成形性、接着性に劣るようになり、140℃を超えると流動性が悪化し電気的接続に悪影響するようになる。
【0019】
本発明で使用する(2)ラジカル重合性物質は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質であり、アクリレート、メタクリレート、マレイミド化合物等が挙げられる。ラジカル重合性物質はモノマー、オリゴマーいずれの状態でも用いることが可能であり、モノマーとオリゴマーを併用することも可能である。アクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシメトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(アクリロキシポリエトキシ)フェニル〕プロパン、ジシクロペンテニルアクリレート、トリシクロデカニルアクリレート、トリス(アクリロイロキシエチル)イソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート、ウレタンアクリレート及びそれらに対応するメタクリレート等が挙げられる。これらは単独または併用して用いることができ、必要によっては、ハイドロキノン、メチルエーテルハイドロキノン類などの重合禁止剤を適宜用いてもよい。ジシクロペンタニル基および/またはトリシクロデカニル基および/またはトリアジン環を有する場合は、耐熱性が向上するので好ましい。また、リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質を上記ラジカル重合性物質と併用して用いた場合、金属等の無機物表面での接着強度が向上するので好ましい。
【0020】
リン酸エステル構造を有するラジカル重合性物質は、無水リン酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの反応物として得られる。具体的には、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アッシドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アッシドホスフェート等が挙げられる。これらは単独でも併用することもできる。ウレタンアクリレートは分子内に少なくとも1個以上のウレタン基を有するもので、例えばポリテトラメチレングリコールなどのポリオールとポリイシシアネート及び水酸基含有アクリル化合物の反応物として得られもので、接着性に優れるため好ましい。
【0021】
マレイミド化合物としては、分子中にマレイミド基を少なくとも2個以上含有するもので、例えば、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−m−トルイレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3’−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−3,3’−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパンなどを挙げることができる。
【0022】
本発明において、回路接続材料中の(1)シリコン変成ポリイミド樹脂、(2)ラジカル重合性物質、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤、(4)フィルム形成材について、(1)シリコン変成ポリイミド樹脂が、2〜75重量部、(2)ラジカル重合性物質が、30〜60重量部、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤が、0.1〜30重量部(4)フィルム形成材0〜40重量部とされ、そのなかで適宜決定される。また、シリコーン微粒子は(1)シリコン変成ポリイミド樹脂と(2)ラジカル重合性物質と(4)フィルム形成材の和を100重量部とした場合、5〜200重量部を配合するのが好ましく、そのなかで適宜決定される。
(1)シリコーン変性ポリイミド樹脂の配合量が2重量部未満では、回路接続材料の硬化時、熱負荷時等の応力緩和の効果に乏しく接着強度が低下する。また、75重量部を超えると、接続信頼性が低下する恐れがある。
(2)ラジカル重合性物質の配合量は、30重量部未満では、硬化後の回路接続材料の機械的強度が低下する傾向にあり、60重量部を超えると硬化前の回路接続材料のタック性が増し、取扱性に劣るようになる。
(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤の配合量が、0.1重量部未満では、前記したように十分な反応率を得ることができず良好な接着強度や小さな接続抵抗が得られにくくなる傾向にある。配合量が30重量部を超えると、回路接続材料の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、回路接続材料のポットライフが短くなる傾向にある。
また、(4)フィルム形成材の配合量が、40重量部を超えると回路接続材料の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したりする傾向にある。好ましくは1〜40重量部である。フィルム形成材は、(1)シリコーン変成ポリイミド樹脂、(2)ラジカル重合性物質、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤により、十分なフィルム形成ができれば、配合しないこともできる。さらに本発明の回路接続材料には、充填材、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤、難燃化剤、チキソトロピック剤、カップリング剤等を含有することもできる。
【0023】
充填材を含有した場合、接続信頼性等の向上が得られるので好ましい。充填材の最大径が導電性粒子の粒径未満であることが好ましく、5〜60体積%の範囲が好ましい。60体積%を超えると信頼性向上の効果が飽和する。カップリング剤としては、ビニル基、アクリル基、アミノ基、エポキシ基及びイソシアネート基含有物が、接着性の向上の点から好ましい。
【0024】
本発明の回路接続材料は導電性粒子がなくても、接続時に相対向する接続端子の直接接触により接続が得られるが、導電性粒子を含有した場合、より安定した接続が得られる。導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等があり、十分なポットライフを得るためには、表層はNi、Cuなどの遷移金属類ではなくAu、Ag、白金族の貴金属類が好ましく、Auがより好ましい。また、Niなどの遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等に前記した導通層を被覆等により形成し最外層に貴金属類を被覆したものが好ましい。プラスチックを核とした場合や熱溶融金属粒子の場合、加熱加圧により変形性を有するので接続時に接続端子との接触面積が増加し、接続端子等の厚みのばらつきを吸収し信頼性が向上するので好ましい。貴金族類の被覆層の厚みは良好な抵抗を得るためには、100Å以上が好ましい。しかし、Ni等の遷移金属の上に貴金属類の層を設ける場合では、貴金属類層の欠損や導電粒子の混合分散時に生じる貴金属類層の欠損等により生じる酸化還元作用で遊離ラジカルが発生しポットライフの低下を引き起こすため、300Å以上が好ましい。そして、厚くなるとそれらの効果が飽和してくるので最大1μmにするのが望ましいが制限するものではない。導電性粒子は、接着剤成分100体積に対して0.1〜30体積%の範囲で用途により使い分ける。過剰な導電性粒子による隣接回路の短絡等を防止するためには0.1〜10体積%とするのがより好ましい。また、本構成の回路接続材料を2層以上に分割し、遊離ラジカルを発生する硬化剤を含有する層と導電性粒子を含有する層に分離した場合、従来の高精細化可能の効果に加えて、ポットライフの向上が得られる。
【0025】
本発明の回路接続材料は、ICチップとチップ搭載基板との接着や電気回路相互の接着用のフィルム状接着剤としても有用である。すなわち、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子とを対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子との間に本発明の回路接続材料(フィルム状接着剤)を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させることができる。このような接続部材としては、半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、チップ搭載及び/またはレジスト処理が施されたプリント基板、TABテープにチップ搭載及びレジスト処理を施したTCP(テープキャリアパッケージ)、液晶パネルなどがある。接続部材の材質は、半導体チップ類のシリコーンやガリウム・ヒ素等や、ガラス、セラミックス、ポリイミド樹脂、ガラス・エポキシ樹脂複合体、プラスチック等がある。
【0026】
本発明の回路接続材料は、接続時に接着剤が溶融流動し相対向する接続端子の接続を得た後、硬化して接続を保持するものであり、接着剤の流動性は重要な因子である。厚み0.7mm、15mm×15mmのガラスを用いて、厚み35μm、5mm×5mmの回路接続材料をこのガラスに挟み、160℃、2MPa、10秒で加熱加圧を行った場合、初期の面積(A)と加熱加圧後の面積(B)を用いて表わされる流動性(B)/(A)の値は1.3〜3.0であることが好ましく、1.5〜2.5であることがより好ましい。1.3未満では流動性が悪く、良好な接続が得られず、3.0を超える場合は、気泡が発生しやすく信頼性に劣る。
【0027】
本発明の回路接続材料は、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温速度10℃/分の測定において、発熱反応の立ち上がり温度(Ta)が70〜110℃の範囲内で、ピーク温度(Tp)がTa+5〜30℃であり、かつ終了温度(Te)が160℃以下であることが好ましい。このようにすることにより、低温接続性、室温での保存安定性を両立することができる。
【0028】
本発明の回路接続材料は、硬化後の25℃での貯蔵弾性率100〜2000MPaが好ましく、300〜1500MPaがより好ましい。この場合、接続後の樹脂の内部応力を低減し、接着力の向上に有利であり、かつ、良好な導通特性が得られる。
【0029】
本発明の回路板の製造方法は、第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に前記の回路接続材料を介在させ、加熱加圧して前期対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる。接続端子を有する回路部材として、半導体チップのシリコン、ガリウム・ヒ素等、ガラス、セラミックス、ガラス・熱硬化性樹脂の複合材料、プラスチックフィルム、プラスチックシート等の絶縁基板に接着剤を介して導電性の金属箔を形成し接続端子を含めた回路を形成したもの、絶縁基板にめっきや蒸着で導電性の回路を形成したもの、あるいは、めっき触媒等の材料を塗布して導電性の回路を形成したものを例示することができ、TABテープ、FPC、PWB、ITO、接続パッドを有する半導体チップが代表的なものである。
【0030】
回路接続材料と接する導電性の接続端子は、銅やニッケル等の遷移金属であると酸化還元作用で遊離ラジカルを発生し、第一の接続端子に回路接続材料を仮接着し、一定時間放置するとラジカル重合が進行してしまい、接続材料が流動しにくくなり、位置合わせした第二の接続端子との本接続時に十分な電気的接続を行えなくなるおそれが生じる。そのため、少なくとも一方の接続端子の表面を金、銀、白金族の金属または錫から選ばれる少なくとも一種で構成することが好ましい。銅/ニッケル/金のように複数の金属を組み合わせ多層構成としても良い。さらに、本発明の回路板の製造方法においては、少なくとも一方の接続端子がプラスチック上に直接存在して構成されると好ましく、プラスチックがポリイミド樹脂であることが好ましい。プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂のフィルムやシートが挙げられ、これらを用いることにより回路板の厚みをより薄くし、しかも軽量化することができる。本発明の回路接続材料を使用することにより低温で接続が可能となるため、ガラス転移温度ないし融点が比較的低いプラスチックを使用することができ、経済的に優れた回路板を得ることができる。薄型、軽量化には接続部材となるプラスチックと導電材料の接続端子を接着剤で接着するよりも接着剤を使用しない接続端子がプラスチック上に直接存在して構成される回路部材であると好ましい。接着剤を用いないで銅箔等の金属箔上に直接樹脂溶液を一定厚さに形成するダイレクトコート法により得られた金属箔付ポリイミド樹脂が市販されており、好適に使用することができる。その他に押出機等から直接フィルム形状に押し出されたフィルムと金属箔を熱圧着したものも使用することができる。
【0031】
本発明においては、従来のエポキシ樹脂系よりも低温速硬化性に優れ、かつ、回路端子を支持する基板が有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種からなる回路部材及び表面が窒化シリコン、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着した回路部材に対して特に良好な接着強度が得られる、電気・電子用の回路接続材料及びそれを用いた回路板の製造方法、回路板の提供が可能となる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
(実施例1)
〔ポリイミド樹脂の合成〕
酸二無水物として、2,2−ビス(4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル)プロパン二無水物(26.1g)をシクロヘキサノン120gに溶解し、ジアミンとして2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン(14.4g)、1,3−ビス(3一アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(3.8g)をシクロヘキサノン120gに溶解した溶液を反応系の温度が50℃を超えないように調節しながら、酸二無水物溶液のフラスコ内に滴下し、滴下終了後さらに10時間攪拌した。次ぎに水分留管を取り付け、トルエン50gを加え120℃に昇温して8時間保持して、イミド化を行った。得られた溶液を室温まで冷却した後、メタノール中で再沈させ得られた沈降物を乾燥して重量平均分子量32000のポリイミド樹脂を得た。これをテトラヒドロフランに溶解して20重量%のポリイミド溶液Aを得た。
【0033】
ラジカル重合性物質としてジメチロールトリシクロデカンジアクリレートを用いた。フィルム形成材としてフェノキシ樹脂(PKHC;ユニオンカーバイド社製商品名、重量平均分子45000)を用いた。加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤としてラウロイルパーオキサイド(室温(25℃)常圧下で24時間の開放放置後の重量保持率97重量%)の20重量%DOP溶液を用いた。ポリスチレンを核とする粒子の表面に、厚み0.2μmのニッケル層を設け、このニッケル層の外側に、厚み0.04μmの金層を設け、平均粒径10μmの導電性粒子を作製した。固形重量比で前記で合成したシリコン変成ポリイミド樹脂A(固形分として)40g、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート39g、リン酸エステル型アクリレート(共栄社油脂株式会社製商品名;P2M)1g、フェノキシ樹脂20g、ラウロイルパーオキサイド5g(DOP(ジオクチルフタレート)溶液として25g)となるように配合し、さらに導電性粒子を3体積%配合分散させ、厚み80μmの片面を表面処理したPET(ポリエチレンテレフテレート)フィルムに塗工装置を用いて塗布し、70℃、10分の熱風乾燥により、接着剤層の厚みが35μmの回路接続材料を得た。
【0034】
(回路の接続)
ライン幅50μm、ピッチ100μm、厚み18μmの銅回路500本をポリイミドフィルム(厚み100μm)上に形成したフレキシブル回路板(2層FPC)及び、ポリイミドとポリイミドと銅箔を接着する接着剤及び厚み18μmの銅箔からなる3層構成で、ライン幅50μm、ピッチ100μmのフレキシブル回路板(3層FPC)と厚み1.1mmのガラス上にインジュウム−錫酸化物(ITO)を蒸着により形成したITO基板(表面抵抗;<20Ω/□)を上記回路接続材料(接着剤組成物)を用い160℃、3MPaで10秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続した。このとき、液状の接着剤組成物はITO基板上に塗布し、フィルム状接着剤組成物はあらかじめITO基板上に、接着剤組成物の接着面を貼り付けた後、70℃、0.5MPaで5秒間加熱加圧して仮接続し、その後、PETフィルムを剥離してもう一方のFPCと接続した。
【0035】
(実施例2)
〔ウレタンアクリレートの合成〕
平均分子量800のポリカプロラクトンジオール400重量部と、2−ヒドロキシプロピルアクリレート131重量部、触媒としてジブチル錫ジラウレート0.5重量部、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル1.0重量部を攪拌しながら50℃に加熱して混合した。次いでイソホロンジイソシアネート222重量部を滴下し更に攪拌しながら80℃に昇温してウレタン化反応を行った。NCOの反応率が99%以上になったことを確認後、反応温度を下げてウレタンアクリレートBを得た。
〔ポリウレタン樹脂の合成〕
平均分子量2000のポリブチレンアジペートジオール450重量部、平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール450重量部、1,4−ブチレングリコール100重量部を混合し、メチルエチルケトン4000重量部を加えて均一に混合した後、ジフェニルメタンジイソシアネート390重量部を加えて70℃にて反応し固形分20重量%で150ポイズ(25℃)のポリウレタン樹脂C溶液を得た。このポリウレタン樹脂の重量平均分子量は35万であり、フローテスタ法での流動点は80℃であった。実施例1で合成したシリコン変成ポリイミド樹脂A(固形分として)40g、前記で合成したウレタンアクリレートB39g、前記で合成したポリウレタン樹脂C(固形分として)20g、リン酸エステル型アクリレート1gとした以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得て、回路板を作製した。
【0036】
(実施例3)
〔シリコーン微粒子の合成〕
20℃でメチルトリメトキシシランを300rpmで攪拌したpH12のアルコール水溶液に添加し、加水分解、縮合させ25℃における弾性率8MPa、平均粒径2μmの球状粒子を得た。得られたシリコーン微粒子100重量部を重量比でトルエン/酢酸エチル=50/50の混合溶剤100重量部に分散した。実施例1で合成したシリコン変成ポリイミド樹脂A(固形分として)40g、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート39g、フェノキシ樹脂20g、リン酸エステル型アクリレート1g、前記で合成したシリコーン微粒子(固形分として)10gとした以外は、実施例1と同様にして回路接続材料を得て、回路板を製造した。
【0037】
(実施例4)
ITOガラスを表面にITO接続端子で配線が施されている液晶パネルとした他は実施例1と同様にして回路接続材料の厚みが15μmを用いた回路板を得た。
【0038】
(実施例5)
ITOガラスを、35μmの銅箔を有した積層基板をライン幅100μm、ピッチ200μmに銅回路をパターニングし、レジスト処理を施し銅箔表面に金メッキを施し作製したプリント基板(PWB)とした他は実施例1と同様にして回路接続材料の厚みが15μmを用いた回路板を得た。
【0039】
(比較例1)
フェノキシ樹脂(PKHC;ユニオンカーバイド社製商品名、重量平均分子量45000)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YL980;油化シェルエポキシ株式会社製商品名)、イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤(3941HP;旭化成工業株式会社製商品名)を用いて、フェノキシ樹脂/ビスフェノールA型エポキシ樹脂/イミダゾール系マイクロカプセル型硬化剤の固形重量比40/20/40とした他は、実施例1と同様にして回路接続材料を得て、回路板を作製した。
【0040】
(比較例2)
シリコン変成ポリイミド樹脂Aの代わりにフェノキシ樹脂(PKHC)を用いた他は、実施例1と同様にして回路接続材料を得て、回路板を作製した。
【0041】
上記実施例1〜4、比較例1、2で得られた回路接続材料及び回路板を用いて、接着力、接続抵抗、保存性、絶縁性、ポリウレタン樹脂の流動性、回路接続材料の流動性、硬化後の弾性率、DSC測定を測定、評価した。その結果を表1に示した。測定、評価方法は、下記のようにして行った。
(接着力の測定)
上述で得られた回路の接続体(回路板)を90度の方向に剥離速度50mm/分で、剥離し接着力を測定した。接着力は、回路板の作製初期と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に500時間保持した後に測定した。
(接続抵抗の測定)
上述の回路接続材料を用いて、上記で作製したライン幅100μm、ピッチ200μm、厚み18μmのSnメッキした銅回路を100本配置したフレキシブル回路板(FPC)とITOベタガラスを160℃、3MPaで10秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続した。この接続体の隣接回路間の抵抗値を、初期と、85℃、85%RHの高温高湿槽中に500時間保持した後にマルチメータで測定した。抵抗値は隣接回路間の抵抗50点の平均で示した。
【0042】
(保存性の評価)
得られた回路接続材料を30℃の恒温槽で30日間処理し、上記と同様にして回路の接続を行い保存性を評価した。
(絶縁性の評価)
得られた回路接続材料を用いて、ライン幅100μm、ピッチ200μm、厚み45μmの銅回路を交互に250本配置した櫛形回路を有するプリント基板とライン幅100μm、ピッチ200μm、厚み18μmの銅回路を500本有するフレキシブル回路板(FPC)を160℃、3MPaで10秒間加熱加圧して幅2mmにわたり接続した。この接続体の櫛形回路に100Vの電圧を印加し、85℃、85%RHの高温高湿試験500時間後の絶縁抵抗値を測定した。
【0043】
(ポリウレタン樹脂の流動点測定)
フローテスタ(株式会社島津製作所製、商品名CFT−100型)で直径1mmのダイを用い3MPaの圧力で2℃/分の昇温速度でシリンダの動き出す温度を測定し流動点とした。
(回路接続材料の流動性評価)
厚み35μm、5mm×5mmの回路接続材料を用い、これを厚み0.7mm、15mm×15mmのガラスに挟み、160℃、2MPa、10秒で加熱加圧を行った。初期の面積(A)と加熱加圧後の面積(B)を用いて流動性(B)/(A)の値を求め流動性とした。
(硬化後の弾性率)
回路接続材料を、160℃のオイル中に1分間浸漬して硬化させ、硬化したフィルムの貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置を用いて測定し(昇温速度5℃/分、10Hz)、25℃の弾性率を測定した。
(DSCの測定)
得られた回路接続材料を用いて、示差走査熱量計(DSC、TAインスツルメント社製商品名910型)を用いて10℃/分の測定において発熱反応の立ち上がり温度(Ta)、ピーク温度(Tp)、終了温度(Te)を求めた。
【0044】
【表1】

【0045】
いずれの実施例においても2層FPCの接着力の初期値は800〜1100N/m程度で、耐湿試験後においても900〜1200N/m程度と接着強度の著しい低下が無く良好な接着性を示した。比較例1は硬化反応が不十分で、比較例2はシリコン変成ポリイミド樹脂を用いていないため接着強度に200N/m程度と接着力が低かった。いずれの実施例においても3層FPCの接着力の初期値は1200〜1400N/m程度で、耐湿試験後においても1200〜1400N/m程度と接着強度の著しい低下が無く良好な接着性を示した。比較例1は硬化反応が不十分で、比較例2はシリコン変成ポリイミド樹脂を用いていないため接着強度に600N/m程度と接着力が低かった。実施例1で得られた回路接続材料は2層FPC、3層FPCのいづれにおいても初期の接続抵抗も低く、高温高湿試験後の抵抗の上昇もわずかであり、良好な接続信頼性を示した。また、実施例2、3、4、5、比較例2の回路接続材料も同様に良好な接続信頼性が得られた。これらに対して、比較例1は、硬化反応が不十分であるため接着状態が悪く、初期の接続抵抗が高くなった。保存性を接続抵抗で評価した結果,実施例1〜5では、30℃の恒温槽で30日間処理しない状態(初期)と処理した場合でほぼ同等の接続結果が得られた。絶縁抵抗は,実施例1〜5において、1.0×10Ω以上の良好な絶縁性が得られ絶縁性の低下は観察されなかった。流動性の測定結果、実施例1は1.9であり、実施例2についても2.2であった。実施例1の回路接続材料の硬化後の25℃での弾性率を測定したところ900MPaであった。実施例1の立ち上がり温度は89℃、ピーク温度は107℃、終了温度は148℃であった。実施例2の立ち上がり温度は92℃、ピーク温度は106℃、終了温度は150℃であった。これより、より低温で硬化することが示され、また、保存性の評価結果より保存性にも優れている。また、接続抵抗の測定において、銅回路にSnメッキしたものとしないものを準備し、実施例1で作製した回路接続材料を用い、実施例1と同様な条件でFPCに仮接続し、1日放置後に本接続し、接続抵抗を測定したところ、Snメッキされた場合の2.2Ω(2層FPC)、2.0Ω(3層FPC)に対し、Snメッキしてない銅表面が露出したものではそれぞれ5Ω(2層FPC)、4Ω(3層FPC)となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向する接続端子間に介在され、相対向する接続端子を加圧し加圧方向の接続端子間を電気的に接続する接続材料であって、
(1)シリコン変成ポリイミド樹脂、(2)ラジカル重合性物質、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤を必須成分とし、
(1)シリコン変成ポリイミド樹脂2〜75重量部、(2)ラジカル重合性物質30〜60重量部、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤0.1〜30重量部、(4)フィルム形成材0〜40重量部を含み、
少なくとも一方の接続端子を支持する基板が有機絶縁物質、ガラスから選ばれる少なくとも一種で構成される、接続端子間を接続する回路接続材料。
【請求項2】
相対向する接続端子間に介在され、相対向する接続端子を加圧し加圧方向の接続端子間を電気的に接続する接続材料であって、
(1)シリコン変成ポリイミド樹脂、(2)ラジカル重合性物質、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤を必須成分とし、(1)シリコン変成ポリイミド樹脂2〜75重量部、(2)ラジカル重合性物質30〜60重量部、(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤0.1〜30重量部、(4)フィルム形成材0〜40重量部を含み、
少なくとも一方の接続端子を有する回路部材表面が窒化シリコン、シリコーン化合物、ポリイミド樹脂から選ばれる少なくとも一種でコーティングもしくは付着している、接続端子間を接続する回路接続材料。
【請求項3】
(1)、(2)、(3)、(4)の成分とさらに(5)導電性粒子を必須成分とする請求項1または請求項2に記載の回路接続材料。
【請求項4】
(3)加熱により遊離ラジカルを発生する硬化剤が、室温(25℃)常圧下で24時間の開放放置後に20重量%以上の重量保持率を有する硬化剤である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の回路接続材料。
【請求項5】
(4)フィルム形成材が、ポリウレタン樹脂である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の回路接続材料。
【請求項6】
(2)ラジカル重合性物質が、ウレタンアクリレートである請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の回路接続材料。
【請求項7】
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の回路接続材料を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させる回路板の製造方法。
【請求項8】
少なくとも一方の接続端子の表面が金、銀、白金族の金属から選ばれる少なくとも一種で構成される請求項7に記載の回路板の製造方法。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載の回路板の製造方法で得られる回路板。

【公開番号】特開2010−212706(P2010−212706A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96169(P2010−96169)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【分割の表示】特願2000−399825(P2000−399825)の分割
【原出願日】平成12年12月28日(2000.12.28)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】