説明

回路装置の製造方法および樹脂封止装置

【課題】複数個の樹脂シートを一括してモールド金型に配置することを可能とする回路装置の製造方法およびそれに用いられる樹脂封止装置を提供する。
【解決手段】輸送装置36は、支持部41と、支持部41から両側方に伸びるアーム37と、アーム37の下端に設けられた吸着部38と、支持部41の上部に配置された筒状の収納部31とを備えている。輸送装置36は、載置台39に載置された複数の樹脂シート10を、モールド金型の所定位置に輸送する機能を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路装置の製造方法およびそれに用いる樹脂封止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子等の回路素子を樹脂封止する方法としては、ケース材の内部に回路素子を収納させる方法と、エポキシ樹脂等の封止樹脂により回路素子を樹脂封止する方法とがある。近年に於いては、生産性等の観点から樹脂封止による封止方法が多用されている。回路素子を樹脂封止する工程では、モールド金型のキャビティに回路素子等を収納させた後に、液状の封止樹脂をキャビティに注入して回路素子を樹脂封止している(例えば特許文献1)。
【0003】
図13(A)を参照して、上面に半導体素子204が固着されたアイランド202は、キャビティ214の内部に収納されている。また、ランナー218を経由してキャビティ214と連通するポッド220が下金型226に形成されており、このポッド220にはタブレット228が収納されている。
【0004】
上記した金型は、溶融温度以上に加熱されているので、ポッド220に収納されたタブレット228は徐々に溶融されて液状の封止樹脂となる。そして、プランジャー222で加圧された液状の封止樹脂は、ランナー218およびゲート216を経由してキャビティ214に供給され、半導体素子204およびアイランド202が封止樹脂により封止される。
【0005】
図13(B)に、製造された回路装置200を示す。封止樹脂208により、アイランド202、半導体素子204、金属細線206およびリード210が樹脂封止されている。また、耐圧および耐湿を確保するために、アイランド202の裏面も全面的に封止樹脂208により被覆されている。
【0006】
しかしながら、上記した封止方法では、アイランド202の下面が被覆されない場合があった。具体的には、図13(B)を参照して、半導体素子204から発生した熱をアイランド202および封止樹脂208を経由して良好に外部に放出させるためには、アイランド202の下面を被覆する封止樹脂208を薄くした方がよい。例えば、アイランド202の下面を被覆する封止樹脂208の厚みを0.5mm程度以下に薄くすると、装置全体の放熱性が向上される。しかしながら、図13(A)を参照して、このようにするためには、樹脂封止の工程に於いて、アイランド202の下面と下金型226の内壁との間隙を狭くする必要があり、この間隙に封止樹脂が充填されない恐れがある。封止樹脂が充填されない領域が発生すると、この領域がボイドとなり不良が発生する。
【0007】
このような問題を回避するための封止方法が下記特許文献2に記載されている。この文献の図3およびその説明箇所を参照すると、回路基板22の下面に配置された樹脂シート52を溶融させることにより、回路基板22を薄く樹脂封止することを可能としている。
【0008】
具体的には、先ず、樹脂材料を打錠加工した樹脂シート52を下金型44に配置し、この樹脂シート52の上面に回路基板22を載置している。そして、下金型44により加熱溶融された樹脂シート52により、回路基板22の下面が薄く被覆される。
【0009】
このように、樹脂シート52で回路基板22の下面を被覆することにより、ボイドを発生させることなく回路基板22の下面を樹脂封止することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平11−340257号公報
【特許文献2】特開2010−86993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献2に示された樹脂封止の方法では、1つのモールド金型に複数個のキャビティが設けられた場合、それぞれのキャビティ内の所定の箇所に樹脂シートを配置する必要があるので、樹脂シートの配置に多大な労力が必要とされる問題があった。更に、複数個の樹脂シートを正確な位置に一括して配置することが困難な問題もあった。
【0012】
本発明は上記した問題点を鑑みて成されたものであり、本発明の目的は、樹脂封止に用いられる樹脂シートを一括してモールド金型に配置することを可能とする回路装置の製造方法およびそれに用いられる樹脂封止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、モールド金型を用いて複数個の回路素子を個別に樹脂封止する回路装置の製造方法であり、回路素子を封止する封止樹脂の一部となる複数個の樹脂シートを載置台に載置して用意する工程と、前記各樹脂シートに対応した箇所に複数の吸着部を備えた輸送装置を用意し、前記吸着部で前記樹脂シートの表面を吸着して輸送した後に、第1金型の第1封止領域に前記樹脂シートを載置する工程と、樹脂封止される前記回路素子を、前記樹脂シートの上面に配置する工程と、前記第1封止領域に対応した箇所に第2封止領域を備えた第2金型を、前記第1金型と当接させ、前記第1封止領域および前記第2封止領域から成る封止領域に、前記樹脂シートおよび前記回路素子を収納する工程と、前記封止領域に注入される封止樹脂および溶融した前記樹脂シートにより、前記回路素子を樹脂封止する工程と、を備えることを特徴とする。
【0014】
更に本発明は、モールド金型を用いて複数の回路素子を封止樹脂で個別に樹脂封止する樹脂封止装置であり、複数の第1封止領域が設けられた第1金型と、前記第1封止領域と重なり合う部分に複数の第2封止領域が設けられた第2金型と、前記第1金型の前記第1封止領域に、前記封止樹脂の一部と成る樹脂シートを輸送する輸送装置と、を備え、前記輸送装置は、前記第1金型の各前記第1封止領域に対して、複数個の前記樹脂シートを同時に輸送する吸着部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数個の吸着部を備えた輸送装置により、複数個の樹脂シートを一括して、モールド金型の各封止領域に載置している。従って、複数個の樹脂シートが同時に所定領域に配置されるので、樹脂シートの輸送にかかる時間および労力が軽減される。
【0016】
更にまた、吸着部により樹脂シートの上面を吸着して輸送することにより、輸送の途中段階における樹脂シートの破損が抑制され、製造コストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の樹脂シートを示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は断面図であり、(C)は樹脂シートを加圧加工する状態を示す断面図である。
【図2】本発明の樹脂封止装置の一部である輸送装置および載置台を示す斜視図である。
【図3】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)および(B)は断面図である。
【図4】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)から(C)は断面図である。
【図5】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)および(C)は拡大された断面図である。
【図6】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)および(B)は断面図である。
【図7】本発明の回路装置の製造方法に製造される混成集積回路装置を示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は断面図である。
【図8】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は拡大された平面図であり、(C)は断面図である。
【図9】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)および(C)は拡大された断面図である。
【図10】本発明の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)および(B)は断面図である。
【図11】本発明の回路装置の製造方法により製造される回路装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図12】本発明の回路装置の製造方法により製造される混成集積回路装置が組み込まれる室外機を示す図であり、(A)は室外機を全体的に示す図であり、(B)は混成集積回路装置が組み込まれる部分を示す図である。
【図13】背景技術の回路装置の製造方法を示す図であり、(A)は樹脂封止工程を示す断面図であり、(B)は製造された回路装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施の形態>
本形態の樹脂封止装置を用いた回路装置の製造方法を図1から図6を参照して詳述する。本形態では、図2に示される輸送装置36(または装填装置)が備えられた樹脂封止装置を用いて、混成集積回路装置を製造する。
【0019】
先ず、樹脂シート10を製造する。
【0020】
図1(A)を参照して、本実施の形態の樹脂シート10は、熱硬化性樹脂を主成分とする粒状の粉末樹脂を加圧加工して成形されたものであり、シート状を呈している。樹脂シート10は、半導体素子等の回路素子を、モールド金型を用いて樹脂封止する際に用いられ、回路素子を封止する封止樹脂の一部分を構成する。
【0021】
本実施の形態の樹脂シート10は、様々なタイプの回路装置の樹脂封止に適用可能である。例えば、上面に多数の回路素子が配置された回路基板が樹脂封止される混成集積回路装置に可能である。回路基板としては、CuまたはAlを主成分とした金属基板、そして金属合金から成る金属基板であり、この金属基板の裏面を封止する場合に適用される。
【0022】
ここで、この混成集積回路装置の回路素子は、一般には、能動素子である複数の半導体素子、受動素子のチップ抵抗またはチップコンデンサを含む。
【0023】
更には、本形態の樹脂シート10は、半導体素子が実装されたアイランドが樹脂封止されるリードフレーム型の半導体装置に適用できる。これは、アイランドのサイズが大きく、一度のトランスファーモールドで裏面が封止しできない様な大きなものに適用できる。例えば、この場合のアイランドは、名刺サイズの1/4よりも大きなサイズのものである。アイランドが大きいため、そこには複数の半導体素子が実装されたり、前記能動素子や、受動素子が実装される場合もある。
【0024】
前述した混成集積回路装置に樹脂封止が適用される場合は、図5(A)を参照して、上面に多数個の回路素子が組み込まれた回路基板22が用意され、樹脂シート10は、前記回路基板22の下面と、下金型44との間に配置される。そして、図6(B)の様に、溶融した樹脂シート10から成る第2封止樹脂24Bにより、回路基板22の下面が薄く被覆される。この第2封止樹脂24Bは、ゲート54から注入される第1封止樹脂24Aと共に、回路素子および回路基板22を一体的に被覆する封止樹脂の一部を構成している。
【0025】
ここで一般のトランスファーモールドでは、一度に封止するため、基板の表と裏のフィラーの混入量は、ほぼ同一になる。しかし樹脂シート10を別途用意できるので、基板の表と裏の混入量を異ならせることができる。特に大電力を扱うようなもの、インバータ、車載等のHICは、金属基板の裏面のフィラーは、その量を高めて、放熱性を高めることができる。また表と裏のフィラーの材料も異ならすことができる。
【0026】
また、リードフレーム型の半導体装置に樹脂シート10が適用される場合は、図9(A)を参照して、半導体素子80が載置されるアイランド72の下面が、樹脂シート102により被覆される。
【0027】
樹脂シート10の平面的な大きさ(L1×L2)は、樹脂シート10が使用される回路装置の種類により異なる。例えば、図7に示されるような混成集積回路装置20の樹脂封止に適用される場合は、樹脂シート10のサイズは回路基板22と同等とされ、L1×L2=60mm×40mm程度である。また、図11に示されるような回路装置70の樹脂封止に適用される場合は、樹脂シート10の平面的なサイズはアイランド72と同等とされ、例えばL1×L2=10mm×10mm程度である。また下金型の上から見たキャビティティサイズと同等か、それよりも若干小さくても良い。
【0028】
図1(A)を参照して、樹脂シート10の厚みL3は、例えば0.1mm以上0.6mm以下である。樹脂シート10の厚みを0.6mm以下とすることで、図5(B)に示すように、溶融した樹脂シート10から成る第2封止樹脂24Bにより、回路基板22の裏面を薄く樹脂封止することができる。一方、樹脂シート10の厚みを0.1mm以上とすることで、樹脂シート10の剛性が一定以上に確保され、輸送段階における樹脂シート10の割れ等が抑制される。
【0029】
図1(B)は、樹脂シート10の一部を拡大して示す断面図である。この図を参照して、樹脂シート10は、多数の粒状の粉末樹脂18から構成されている。この粉末樹脂18は、フィラー等の添加剤が添加されたエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂から成り、各粉末樹脂18の直径は例えば1.0mm以下である。また混入率を高めるために、粒状と破砕状のフィラーを混合しても良い。更には、シリカ、アルミナまたはその混合等でも良い。
【0030】
更に、樹脂シート10では、粉末樹脂18の充填率(樹脂シート10全体の容積に対して粉末樹脂18が占める割合)は99%以上である。一般的な樹脂封止に使用されるタブレットの充填率が95%程度であることを考慮すると、本実施の形態の樹脂シート10における粉末樹脂18の充填率は非常に高い。この様に樹脂シート10の充填率を高くすることにより、樹脂シート10に含まれる空気量が極めて少なくなるので、樹脂シート10を溶融して形成される封止樹脂にボイドが形成されることが抑制される。
【0031】
図1(C)の断面図を参照して、上記した樹脂シート10の製造方法を説明する。
【0032】
先ず、粉末状の粉末樹脂18を用意する。具体的には、粉末状の熱硬化性樹脂、フィラーや離型剤等の材料を所定量計量した後に、混合機によりこれらの材料を混合する。更に、混合された材料を加熱して一体の状態にした後に破砕することにより、粉末状の樹脂材料が形成される。
【0033】
粉末樹脂18に混入されるフィラーの割合は、例えば70重量%以上90重量%以下である。そして、フィラーの種類としては、結晶シリカと破砕シリカの混合物が採用されているが、溶融シリカ、アルミナまたは窒化ケイ素が採用されても良い。更に、混入されるフィラーの平均粒径は、例えば、20μm以上30μm以下である。
【0034】
ここで、樹脂シート10に含まれるフィラーの種類及び量は、後述する第1封止樹脂24A(図6(B)参照)に含まれるフィラーと同様でも良いし異なっても良い。例えば、樹脂シート10に含まれるフィラーの材料として熱抵抗の低いアルミナを採用することにより、樹脂シート10から成る第2封止樹脂24Bの熱抵抗が低減される。このことで、トランジスタ等の回路素子が駆動することにより発生する熱を、回路基板22および第2封止樹脂24B(図6(B)参照)を経由して良好に外部に放出することができる。
【0035】
上記構成の粉末樹脂18は、金型を使用して加圧成型(打錠加工)することにより、シート状に成形される。具体的には、ステンレス等の金属から成る上金型14(第1打錠手段:打ちつける側)および下金型16(第2打錠手段:タブレットとして受ける側)から構成される金型を用いて打錠加工を行っている。下金型16は、上面が平坦面である台座21と、台座21の上面に載置された枠状の枠金型12から構成されている。上金型14は上下方向に可動であり、枠金型12の開口部と嵌合する形状を呈している。枠金型12の開口部の平面的なサイズは、成形される樹脂シート10のサイズと同等である。
【0036】
上記した組成の粉末樹脂18は、枠金型12の開口部に所定量収納されて平坦化される。次に、上金型14を下降させて所定の圧力を粉末樹脂18に対して与えることにより、粉末樹脂18を一体化させ、図1(A)に示す樹脂シート10が成形される。ここで、上金型14が樹脂粉末に与える圧力は、数十トン程度である。また、本工程は、金型を加熱することなく、常温の雰囲気下で行われる。
【0037】
ここで、図1(C)を参照して、粉末樹脂18を下金型16に供給する際に、粉末樹脂18の飛散を抑制する手段が設けられても良い。具体的には、下金型16の上面に残存する粉末樹脂18を吹き飛ばす為のブロワー等の送風手段と、この送風手段により吹き飛ばされた粉末樹脂18を捕獲する集塵機が設けられても良い。
【0038】
このようにすることで、残存した粉末樹脂18により下金型16の上面に傷がつくことが防止され、更には作業環境の悪化が抑制される。具体的には、粉末樹脂18は下金型16の上面を移動するスキージにより供給されるので、下金型16の上面に粉末樹脂18が残存すると、下金型16とスキージにより粉末樹脂が挟み込まれ、下金型16の上面に傷が発生する恐れがある。本形態では、下金型16の上面に残存した粉末樹脂18を送風手段により除去しているので、残存した粉末樹脂18に起因した傷の発生が抑止されている。
【0039】
また、本工程にて送風手段を用いることにより、製造される樹脂シート10の表面に付着した粉末樹脂も除去される。従って、図4を参照して、モールド用の下金型44に樹脂シート10を輸送しても、樹脂シート10と共に多量の粉末状の樹脂材料が下金型44に付着することが防止される。
【0040】
続いて、図2から図4を参照して、樹脂封止を行うモールド金型の所定の位置に、上記工程にて製造した樹脂シート10および回路素子を載置する工程について説明する。
【0041】
図2は、樹脂シートの輸送に用いられる輸送装置36および載置台39を示す図である。ここでは、載置台39の上面に配置された樹脂シート10を、輸送装置36で吸着する。
【0042】
載置台39は、アルミニウム等の金属板から成る。載置台39の上面の所定位置を矩形形状に窪ませて載置領域47が形成されている。この載置領域47の位置は、モールド金型に設けられるキャビティ46(封止領域:図5参照)の位置に対応している。更に、各載置領域47の平面視での大きさは、収納される樹脂シート10と同程度以上に形成される。このことにより、各載置領域47に樹脂シート10を収納することで、必要な個数の樹脂シート10を正確な位置に配置することが可能となる。
【0043】
アライメント部45は、載置台39の両端部付近を窪ませた領域であり、これらの位置は、輸送装置36に設けられる凸状のアライメント部43の位置と対応している。従って、載置台39に配置された樹脂シート10を輸送装置36で吸着する際に、輸送装置36を下降させると、輸送装置36に設けられた凸状のアライメント部43が、載置台39に設けられた凹状のアライメント部45に嵌合する。この結果、輸送装置36の各吸着部38が、載置台39の各載置領域47に収納された樹脂シート10の上面を吸着する。
【0044】
輸送装置36は、支持部41と、支持部41から両側方に伸びるアーム37と、アーム37の下端に設けられた吸着部38と、支持部41の上部に配置された筒状の収納部31とを備えている。輸送装置36は、載置台39に載置された複数の樹脂シート10を、モールド金型の所定位置に輸送する機能を備えている。
【0045】
支持部41は、アルミニウム等の金属を筐体形状に成形したものである。載置台39の各載置領域47に対応して、支持部41の両側面から側方にアーム37が導出されている。更に、アーム37はアルファベットの「L」の形状を有し、端部は下方を向くように成形されている。
【0046】
各アーム37の下端には、ゴム等の弾性体から成る吸着部38が備えられている。支持部41が各樹脂シート10を吸着する際には、アーム37の下端に取り付けられた吸着部38が、樹脂シート10の上面に接触する。
【0047】
各アーム37の内部には吸引の為の空気が流通する流通孔(流通路)が設けられており、各アーム37の流通孔(流通路)は、支持部41の内部を経由して外部のポンプと連通している。従って、ポンプによる吸引を行うことにより、各吸着部38に対して吸着力が与えられる。
【0048】
支持部41の上面には、円筒状の収納部31が配置されている。収納部31は、樹脂タブレットが収納される領域である。ここで、樹脂タブレットとは、図6(A)を参照して、樹脂封止の工程に於いてキャビティ46に注入される封止樹脂の材料と成る固形状の樹脂であり、樹脂シート10と同様の方法により製造される。
【0049】
支持部41の両端部付近の下面には、突起状のアライメント部43が設けられている。アライメント部43は、載置台39の凹状のアライメント部45に対応した位置および形状である。上記したように、支持部41のアライメント部43と、載置台39のアライメント部45とを嵌合させることにより、上記した位置合わせが行われる。
【0050】
ここでは、輸送装置36の支持部41の下面に凸状のアライメント部43を設け、載置台39に凹状のアライメント部45を設けているが、このアライメント部43、45の形状を入れ替えても良い。即ち、輸送装置36のアライメント部43の形状を凹状とし、載置台39の形状を凸状にしても良い。
【0051】
尚、樹脂シートを吸引するアームの部分と、タブレットの収納部31は、別体で形成されてもよい。一体であれば、樹脂シートとタブレットが一度に輸送でき、別体であれば、当然別々に行えばよい。しかしながら、一体であれば一度に処理できるので、効率的ではある。
【0052】
図3を参照して、輸送装置36により樹脂シート10を吸着する工程を説明する。
【0053】
先ず、図3(A)を参照して、輸送装置36は載置台39の上方に配置されている。また、輸送装置36が備える各アーム37の先端に取り付けられた吸着部38は、載置台39の各載置領域47に収納された樹脂シート10の中央部付近の上方に配置されている。そして、輸送装置36により樹脂シート10が輸送される間は、不図示のポンプが稼働することにより、吸着部38にて吸引が行われている。
【0054】
この状態で、輸送装置36を下方に移動させると、輸送装置36の吸着部38が樹脂シート10の上面に接触し、樹脂シート10が吸着される。上記したように、輸送装置36と載置台39とはアライメント部により位置合わせが行われているので、吸着部38は樹脂シート10の上面中央部付近を吸着する。
【0055】
図3(B)を参照して、次に、吸着部38が樹脂シート10の上面を吸着した後に、輸送装置36を上方に移動させる。ことにより、樹脂シート10は載置台39から離れて、輸送装置36により輸送される。その後、輸送装置36は、樹脂シート10を吸着部38で吸着した状態で、樹脂封止を行うモールド金型の上方まで移動する。
【0056】
本形態では、図2に示したように、輸送装置36には複数個(ここでは10個)の吸着部38が備えられているので、多数個の樹脂シート10を正確な位置で一括して輸送できる。更に、アライメント部43、45を用いることにより、輸送装置36の各吸着部38が、載置台39に載置された樹脂シート10の所定の位置を吸着する。従って、各樹脂シート10の相対的な位置関係を正確に保ちつつ輸送が行われる。
【0057】
図4(A)を参照して、次に、樹脂シート10を吸着部38にて吸着した状態の輸送装置36を、下金型44の上方まで移動させる。下金型44には、樹脂封止が行われる領域である第1封止領域46Aと、タブレット58が収納されるポッド50Aが設けられている。
【0058】
この状態で、図4(B)を参照して、輸送装置36を下降させることにより、樹脂シート10を、第1封止領域46Aの上面の中央部付近に載置する。更に、収納部31からタブレット58をポッド50Aに供給する。その後、輸送装置36の吸着部38に付与されている吸引力を解除した後に、輸送装置36を下金型44の上方から外部に移動させる。
【0059】
図4(C)を参照して、第1封止領域46Aに配置された樹脂シート10の上面に、回路基板22を載置する。ここでは、トランジスタ等の複数個の回路素子から成る混成集積回路が組み込まれた回路基板22が、樹脂シート10の上面に配置されている。
【0060】
また、下金型44は、樹脂シート10およびタブレット58に含まれる樹脂材料(エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂)が溶融する温度以上に加熱されている。従って、下金型44に樹脂シート10およびタブレット58を投入したら両者は溶融を始める。
【0061】
ここは、下金型は、加熱がとめられていて、溶融温度より低下していて、きちんと乗った後に加熱されても良い。
【0062】
図5および図6を参照して、次に、モールド用の金型40を用いて、回路基板22を樹脂封止する。本形態では、回路基板22の上面、側面および底面を封止樹脂で被覆する。
【0063】
図5(A)を参照して、先ず上金型42(第2金型)と下金型44(第1金型)とを当接させる。上記したように下金型44には第1封止領域46Aが形成されており、上金型42には第2封止領域46Bが設けられている。従って、上金型42と下金型44とを当接させることで、キャビティ46(封止領域)が形成される。
【0064】
アルミニウム等の金属から成る矩形形状の回路基板22の上面には、エッチングにより所定形状とされた導電パターンが形成されている。そして、導電パターンの所定の位置に、半導体素子等の多数の回路素子を固着して混成集積回路が形成されている。また、回路基板22の両端部付近にはリード27が固着されており、リード27は、上金型42および下金型44で狭持される。このことにより、キャビティ46の内部に於ける回路基板22の位置が固定される。
【0065】
図5(B)を参照して、この工程の初期段階に於いては、樹脂シート10は、粒状の熱硬化性樹脂が加圧加工された固体の状態である。また、金型40には不図示のヒータが装備されており、樹脂シート10が溶融して加熱硬化する温度(例えば170℃以上)に金型40は加熱されている。
【0066】
樹脂シート10の厚みT2は、製造される混成集積回路装置20にて回路基板22の下面を被覆する封止樹脂の厚み(図7(B)に示したT1)よりも厚く形成されている。具体的には、図7(B)に示した封止樹脂の厚みT1が0.1mm以上0.3mm以下の場合は、樹脂シート10の厚さT2は0.4mm以上0.6mm以下に設定される。
【0067】
一方、上記したように、キャビティ46の内部に於ける回路基板22の位置は、金型によりリード27が狭持されることで固定される。従って、リード27の形状および位置は、回路基板22の下面と下金型44の内壁上面との距離が、T1(図7(B)参照)となるように設定されている。
【0068】
このことから、下金型44に樹脂シート10と回路基板22とを重畳して載置して、金型40によりリード27を狭持するとリード27が弾性変形し、結果的に回路基板22の下面により樹脂シート10が下金型44に押しつけられて固定される。この図では、金型により狭持されることで、弾性変形したリード27の状態を示している。
【0069】
金型40は上記したように加熱されているので、時間の経過と共に樹脂シート10は溶融して軟化し、液状又は半固形状の樹脂シート10により回路基板22の下面は被覆される。
【0070】
図5(C)を参照して、上記したようにリード27は弾性変形した状態で金型に狭持されているので、樹脂シート10が軟化して支持力を失うと、リード27の形状が元に戻り、回路基板22が下方に沈み込む。そして、回路基板22の沈み込みと共に、軟化した樹脂シート10の一部分は回路基板22の下方から側方へ移動し、回路基板22の側面を被覆する。この様に、沈み込んだ回路基板22の下面を被覆する樹脂シート10の厚みT3は、例えば0.1mm以上0.3mm以下であり、図7(B)に示す封止樹脂の厚みT1と同等である。
【0071】
図6(A)を参照して、次に、キャビティ46に封止樹脂を注入する。具体的には、下金型44に設けたポッド50Aに投入されたたタブレット58を、プランジャー60にて加圧する。
【0072】
上記したように、金型は170℃程度以上に加熱されているので、ポッド50Aにタブレット58を投入すると、タブレット58は徐々に溶融する。溶融して液状または半固形状の状態となった封止樹脂がランナー48を流通してゲート54を通過した後に、キャビティ46に供給される。以下の説明では、ゲート54から供給される封止樹脂を第1封止樹脂24Aと称し、溶融した樹脂シート10から成る封止樹脂を第2封止樹脂24Bと称する。
【0073】
図6(B)を参照して、注入された液状の第1封止樹脂24Aは、キャビティ46に充填される。ここで、金型の温度は、第1封止樹脂24Aが加熱硬化する温度よりも高温となっているので、キャビティ46に充填された第1封止樹脂24Aは時間の経過と共に重合して硬化する。この図に示すように、樹脂シート10から成る第2封止樹脂24Bにより回路基板22の下面と側面の下部が被覆されている場合は、回路基板22の上面および側面の上部が第2封止樹脂24Bにより被覆される。
【0074】
ここで、樹脂シート10から成る第2封止樹脂24Bは、第1封止樹脂24Aがキャビティ46に注入された後にゲル化している。このようにすることで、第1封止樹脂24Aと第2封止樹脂24Bとが、液状の状態で混ざり合うので、両者が一体化して境界がなくなる。結果的に、この境界からの内部への水分の浸入が抑制され耐湿性が向上する。
【0075】
金型にて加熱することにより、第1封止樹脂24Aおよび第2封止樹脂24Bの両方が十分に重合して加熱硬化したら、上金型42と下金型44とを離間させ、成型品である混成集積回路装置を取り出す。その後に、エアベント56およびランナー48に充填された部分の封止樹脂を、封止樹脂24本体から分離する。
【0076】
以上の工程により、図7に示す混成集積回路装置20が製造される。
【0077】
図7を参照して、上記した樹脂シートが適用された混成集積回路装置20の構成を説明する。図7(A)は混成集積回路装置20の斜視図であり、図7(B)は図7(A)のX−X’線に於ける断面図である。
【0078】
混成集積回路装置20は、回路基板22の上面に、導電パターン26と回路素子から成る混成集積回路が構築され、この回路と接続されたリード27が外部に導出している。更に、回路基板22の上面に構築された混成集積回路、回路基板22の上面、側面および下面は、熱硬化性樹脂から成る封止樹脂24により一体的に被覆されている。
【0079】
回路基板22は、アルミニウムや銅等の金属から成る基板であり、具体的な大きさは、例えば縦×横×厚さ=61mm×42.5mm×1.5mm程度である。ここで、回路基板22の材料として金属以外が採用されても良く、例えば、セラミックや樹脂材料が回路基板22の材料として採用されても良い。
【0080】
絶縁層28は、回路基板22の表面全域を覆うように形成されている。絶縁層28は、フィラーが高充填されたエポキシ樹脂から成る。導電パターン26は厚みが50μm程度の銅等の金属膜から成り、所定の電気回路が実現されるように絶縁層28の表面に形成される。また、リード27が導出する辺に、導電パターン26からなるパッドが形成される。
【0081】
半導体素子30Aおよびチップ素子30Bの回路素子は、半田等の接合材を介して、導電パターン26の所定の箇所に固着されている。半導体素子30Aとしては、トランジスタ、LSIチップ、ダイオード等が採用される。ここでは、半導体素子30Aと導電パターン26とは、金属細線32を介して接続される。チップ素子30Bとしては、チップ抵抗やチップコンデンサ等が採用される。チップ素子30Bの両端の電極は、半田等の接合材を介して導電パターン26に固着されている。
【0082】
リード27は、回路基板22の周辺部に設けられたパッドに固着され、入力信号や出力信号が通過する外部接続端子として機能している。図7(B)を参照すると、回路基板22の対向する2つの辺に沿って多数個のリード27が設けられている。
【0083】
封止樹脂24は、熱硬化性樹脂を用いるトランスファーモールドにより形成される。図7(B)では、封止樹脂24により、導電パターン26、半導体素子30A、チップ素子30B、金属細線32が封止されている。そして、回路基板22の上面、側面および下面が封止樹脂24により被覆されている。封止樹脂24を構成する材料は、上記した樹脂シート10と同様である。
【0084】
図7(B)を参照して、封止樹脂24に関して更に説明する。封止樹脂24は、第1封止樹脂24Aと、第2封止樹脂24Bとから成る。紙面では、第1封止樹脂24Aと第2封止樹脂24Bとの境界が描かれているが、実際の回路装置では両者は一体化している。第1封止樹脂24Aは金型のキャビティに液状の樹脂を注入することで形成され、第2封止樹脂24Bは回路基板22の下面に配置された樹脂シートを溶融することで形成される。回路基板22の下面を被覆する第2封止樹脂24Bの厚みT1は、例えば0.1mm以上0.3mm以下であり非常に薄い。薄い第2封止樹脂24Bは熱抵抗も小さくなるので、半導体素子等の回路素子から放出された熱は、回路基板22および第2封止樹脂24Bを経由して良好に外部に放出される。
【0085】
ここで、第1封止樹脂24Aと第2封止樹脂24Bとの境界は、回路基板22の側面を被覆する部分に位置している。両者の境界部分は封止樹脂24の他の部分と比較すると、耐圧性および耐湿性に若干劣る。従って、この境界部分を回路基板22の下面に配置すること、封止樹脂24の下面がヒートシンクに密着した場合、境界部分を経由して回路基板22とヒートシンクとがショートする恐れがある。一方、回路基板22の側面は外部と接触する場合が少ないので、ショートする危険性が小さい。
【0086】
<第2の実施の形態>
図8から図10を参照して、他の回路装置の製造方法を説明する。本形態の回路装置の製造方法は、基本的には上記した第1の実施の形態と同様であり、リードフレーム型の回路装置を製造する点が相違する。また、金型への樹脂シートの輸送に関しても、第1の実施の形態で説明した輸送装置が適用される。
【0087】
図8を参照して、先ず、所定形状のリードフレーム120を用意し、リードフレーム120に形成された各ユニット124に半導体素子80を接続する。図8(A)はリードフレーム120を示す平面図であり、図8(B)はリードフレーム120に含まれるユニット124を示す平面図であり、図8(C)はユニット124の断面図である。
【0088】
図8(A)を参照して、リードフレーム120は、厚みが0.3mm程度の銅等の金属から成る金属板に対して、エッチング加工又はプレス加工を施すことにより、所定形状に形成されている。リードフレーム120には、複数個のブロック122が互いに離間して複数個配置されている。
【0089】
図8(B)を参照して、ブロック122の内部には、縦方向および横方向に連結部126、128が格子状に延在している。そして、連結部126、128により囲まれる領域の内部にユニット124が形成される。具体的には、連結部126、128から一体的にリード78がユニット124の内部に向かって延在している。そして、ユニット124の中央部付近に四角形形状のアイランド72が形成され、このアイランド72の4隅は吊りリード86を介して連結部126、128と連続している。ここで、アイランド72と連結部とを連結する連結手段としては、通常のリード78が採用されても良い。
【0090】
図8(C)を参照して、個々のユニット124に含まれるアイランド72の上面には半導体素子80が固着される。半導体素子80の上面に設けられた電極は、金属細線82を経由してリード78と接続される。
【0091】
図9を参照して、次に、上面に半導体素子80が固着されたアイランド72を金型90のキャビティ96の内部に収納させる。
【0092】
図9(A)を参照して、ここでは、樹脂シート102を下金型94の内壁下面に載置した後に、この樹脂シート102の上面にアイランド72を載置している。そして、上金型92と下金型94とを当接させることで、キャビティ96の内部にアイランド72が収納される。また、アイランド72から連続する吊りリード86は、上金型92と下金型94に狭持されて固定されている。この様に上下金型により吊りリード86が狭持されることにより、キャビティ96の内部におけるアイランド72の上下方向および左右方向の位置が固定されている。尚、この工程の初期段階に於いては、樹脂シート102は、粒状の樹脂材料が加圧加工された固体の状態である。また、金型90には不図示のヒータが装備されており、樹脂シート102が溶融して加熱硬化する温度(例えば170℃以上)に金型90は加熱されている。
【0093】
図9(B)を参照して、樹脂シート102の厚みT5は、製造される回路装置70に於いてアイランド72の下面を被覆する封止樹脂の厚み(11(B)に示すT4)よりも厚く形成されている。具体的には、図11(B)に示した封止樹脂の厚みT4が0.1mm以上0.3mm以下の場合は、樹脂シート102の厚さT5は0.5mm以上0.6mm以下に設定される。
【0094】
また、上記したように、キャビティ96の内部に於けるアイランド72の位置は、金型により吊りリード86が狭持されることで固定される。従って、吊りリード86の形状および位置は、アイランド72の下面と下金型94の内壁上面との距離が、T4(図11(B)参照)と成るように設定されている。このことから、下金型94に樹脂シート102とアイランド72とを重畳して載置して、金型90により吊りリード86を狭持すると、上金型92が上方から下方に押し曲げる応力により吊りリード86が弾性変形し、結果的にアイランド72の下面により樹脂シート102が下金型94に押しつけられて固定される。この図では、金型により狭持されることで、弾性変形した吊りリード86の状態を示している。また、変形していない状態の吊りリード86の形状を点線にて示している。
【0095】
金型90は加熱されているので、時間の経過と共に樹脂シート102は溶融して軟化し、液状又は半固形状の樹脂シート102によりアイランド72の下面は被覆される。
【0096】
図9(C)を参照して、上記したように吊りリード86は弾性変形した状態で金型に狭持されているので、樹脂シート102が軟化して支持力を失うと、吊りリード86の形状が元に戻り、アイランド72が下方に沈み込む。そして、アイランド72の沈み込みと共に、軟化した樹脂シート102の一部分はアイランド72の下方から側方へ移動し、アイランド72の側面の下端付近を被覆する。
【0097】
この様に、沈み込んだアイランド72の下面を被覆する樹脂シート102の厚みT6は、例えば0.1mm以上0.3mm以下であり、図11(B)に示す封止樹脂の厚みT4と同等である。また、ここでは、吊りリード86に隠れて見えないが、アイランド72の側面は樹脂シート102により被覆されている。
【0098】
ここで、上記説明では、アイランド72と樹脂シート102の平面視での大きさは同等とされていたが、樹脂シート102をアイランド72よりも大きく形成しても良い。このことにより、より安定して樹脂シート102でアイランド72を支持することが可能となる。更には、下金型94の下面全域を樹脂シート102により被覆しても良い。
【0099】
また、1つのユニットに複数個のアイランド72を設けても良い。この場合は、アイランド72毎に樹脂シート10を配置しても良いし、1つの大型な樹脂シート102で複数のアイランド72を支持しても良い。
【0100】
図10(A)を参照して、次に、キャビティ96に封止樹脂を注入する。具体的には、下金型94に設けたポッド100に、タブレット108を投入して加熱溶融した後に、プランジャー110にてタブレット108を加圧する。上記したように、金型は170℃程度以上に加熱されているので、ポッド100にタブレット108を投入すると、タブレット108は徐々に溶融する。溶融して液状または半固形状の状態となった封止樹脂がランナー98を流通してゲート104を通過した後に、キャビティ96に供給される。以下の説明では、ゲート104から供給される封止樹脂を第1封止樹脂74Aと称し、溶融した樹脂シート102から成る封止樹脂を第2封止樹脂74Bと称する。
【0101】
図10(B)を参照して、注入された液状の第1封止樹脂74Aは、キャビティ96に充填される。ここで、金型の温度は、第1封止樹脂74Aが加熱硬化する温度よりも高温となっているので、キャビティ96に充填された第1封止樹脂74Aは時間の経過と共に重合してゲル化(硬化)する。
【0102】
金型にて加熱することにより、第1封止樹脂74Aおよび第2封止樹脂74Bの両方が十分に重合して加熱硬化したら、上金型92と下金型94とを離間させ、成型品である回路装置を取り出す。
【0103】
図11を参照して、上記した回路装置の製造方法により製造される回路装置70の構成を説明する。図11(A)は回路装置70の平面図であり、図11(B)は断面図である。
【0104】
回路装置70は、半導体素子80と、半導体素子80が実装されるアイランド72と、金属細線82を経由して半導体素子80と接続されるリード78と、これらを一体的に樹脂封止する封止樹脂74とを備えている。
【0105】
半導体素子80は、例えば、上面に多数個の電極が形成されたIC、LSIまたはディスクリートのトランジスタであり、アイランド72の上面に固着されている。
【0106】
アイランド72は、回路装置70の中心部付近に四角形形状に形成され、上面に固着される半導体素子80よりも若干大きく形成される。例えば、上面に固着される半導体素子80のサイズが10mm×10mmであれば、アイランド72のサイズは12mm×12mm程度とされる。また、アイランド72の裏面は封止樹脂74により薄く被覆されている。更に、アイランド72の4隅から外側に向かって吊りリード86が延在している。
【0107】
リード78は、金属細線82を経由して半導体素子80の電極と接続され、一端が封止樹脂74から外部に露出している。ここでは、半導体素子80を囲むように多数個のリード78が配置されている。
【0108】
封止樹脂74は、熱硬化性樹脂を用いるトランスファーモールドにより形成される。図11(B)では、封止樹脂74により、半導体素子80、金属細線82、リード78の一部、アイランド72の側面および下面が封止樹脂74により被覆されている。
【0109】
図11(B)を参照して、封止樹脂74は、第1封止樹脂74Aと、第2封止樹脂74Bとから成る。紙面では、第1封止樹脂74Aと第2封止樹脂74Bとの境界が描かれているが、実際の回路装置では両者は一体化している。アイランド72の下面を被覆する第2封止樹脂74Bの厚みT4は、例えば0.1mm以上0.3mm以下であり非常に薄い。
【0110】
本形態に於いても、第1封止樹脂74Aと第2封止樹脂74Bとの境界は、アイランド72の側方に配置されており、このことにより耐圧性が確保される利点がある。
【0111】
<第3の実施の形態>
図12を参照して、上記した製造方法により製造される回路装置が組み込まれる室外機130の構成を説明する。ここでは、第1の実施の形態で説明した混成集積回路装置20(図7参照)が室外機130に組み込まれているが、第2の実施の形態で説明した回路装置70(図11参照)が組み込まれても良い。
【0112】
室外機130は、筐体131の内部に、凝縮器133と、ファン136と、圧縮機132と、混成集積回路装置20が主に内蔵されて構成されている。
【0113】
圧縮機132は、モーターの駆動力を用いて、アンモニア等の冷媒を圧縮させる機能を有する。そして、圧縮機132により圧縮された冷媒は凝縮器133に送られ、ファン136が風を凝縮器133に吹き付けることにより、凝縮器133内部の冷媒に含まれる熱が外部に放出される。更に、この冷媒は膨張された後に、室内にある蒸発器に送られて、室内の空気を冷却させる。
【0114】
ここでは、混成集積回路装置20は、圧縮機132またはファン136を駆動させるモーターの回転を制御する働きを有し、室外機130の内部に設けられた実装基板135に固着されている。
【0115】
図12(B)に混成集積回路装置20が取り付けられる構造を示す。ここでは、リード27が、実装基板135に差込実装されている。そして、混成集積回路装置20の裏面は、ヒートシンク134の平滑面に当接している。
【0116】
本形態では、樹脂シートを用いた製造方法により、混成集積回路装置20の下面を被覆する封止樹脂は極めて薄く形成されている。このことから、混成集積回路装置20に内蔵された回路素子が駆動することにより発生した熱は、回路基板および封止樹脂を経由して良好にヒートシンク134に伝導した後に外部に放出される。
【符号の説明】
【0117】
10 樹脂シート
12 枠金型
14 上金型
16 下金型
18 粉末樹脂
20 混成集積回路装置
22 回路基板
24 封止樹脂
24A 第1封止樹脂
24B 第2封止樹脂
26 導電パターン
27 リード
28 絶縁層
30A 半導体素子
30B チップ素子
31 収納部
32 金属細線
36 輸送装置
37 アーム
38 吸着部
39 載置台
40 金型
41 支持部
42 上金型
43 アライメント部
44 下金型
45 アライメント部
46 キャビティ
46A 第1封止領域
46B 第2封止領域
47 載置領域
48 ランナー
50A ポッド
54 ゲート
56 エアベント
58 タブレット
60 プランジャー
70 回路装置
72 アイランド
74 封止樹脂
74A 第1封止樹脂
74B 第2封止樹脂
78 リード
80 半導体素子
82 金属細線
86 吊りリード
90 金型
92 上金型
94 下金型
96 キャビティ
98 ランナー
100 ポッド
102 樹脂シート
104 ゲート
106 エアベント
108 タブレット
110 プランジャー
120 リードフレーム
122 ブロック
124 ユニット
126 連結部
128 連結部
130 室外機
131 筐体
132 圧縮機
133 凝縮器
134 ヒートシンク
135 実装基板
136 ファン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド金型を用いて複数個の回路素子を個別に樹脂封止する回路装置の製造方法であり、
回路素子を封止する封止樹脂の一部となる複数個の樹脂シートを載置台に載置して用意する工程と、
前記各樹脂シートに対応した箇所に複数の吸着部を備えた輸送装置を用意し、前記吸着部で前記樹脂シートの表面を吸着して輸送した後に、第1金型の第1封止領域に前記樹脂シートを載置する工程と、
樹脂封止される前記回路素子を、前記樹脂シートの上面に配置する工程と、
前記第1封止領域に対応した箇所に第2封止領域を備えた第2金型を、前記第1金型と当接させ、前記第1封止領域および前記第2封止領域から成る封止領域に、前記樹脂シートおよび前記回路素子を収納する工程と、
前記封止領域に注入される封止樹脂および溶融した前記樹脂シートにより、前記回路素子を樹脂封止する工程と、
を備えることを特徴とする回路装置の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂シートを載置する工程では、前記第1金型のポッドに前記輸送装置から樹脂タブレットが供給され、
前記樹脂封止する工程では、溶融された前記樹脂タブレットから成る前記封止樹脂を、前記封止領域に注入することを特徴とする請求項1に記載の回路装置の製造方法。
【請求項3】
前記回路素子を載置する工程では、複数個の前記回路素子が上面に固着された回路基板が、前記樹脂シートの上面に載置され、
前記樹脂封止する工程では、溶融した前記樹脂シートにより前記回路基板の下面を被覆することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路装置の製造方法。
【請求項4】
前記回路素子を載置する工程では、上面に前記回路素子が固着されたアイランドが、前記樹脂シートの上面に載置され、
前記樹脂封止する工程では、溶融した前記樹脂シートにより前記アイランドの下面を被覆することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の回路装置の製造方法。
【請求項5】
モールド金型を用いて複数の回路素子を封止樹脂で個別に樹脂封止する樹脂封止装置であり、
複数の第1封止領域が設けられた第1金型と、
前記第1封止領域と重なり合う部分に複数の第2封止領域が設けられた第2金型と、
前記第1金型の前記第1封止領域に、前記封止樹脂の一部と成る樹脂シートを輸送する輸送装置と、を備え、
前記輸送装置は、前記第1金型の各前記第1封止領域に対して、複数個の前記樹脂シートを同時に輸送する吸着部を備えることを特徴とする樹脂封止装置。
【請求項6】
前記輸送装置に吸着される前の前記樹脂シートが載置される載置台を更に備え、
前記載置台は、前記第1金型の前記第1封止領域に対応して、前記樹脂シートが載置される載置領域を備えることを特徴とする請求項5に記載の樹脂封止装置。
【請求項7】
前記輸送装置は、支持部と、前記支持部から側方に導出する複数個のアームとを更に備え、
前記吸着部は、前記アームの下端に設けられることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の樹脂封止装置。
【請求項8】
前記第1金型には、加熱溶融される前の樹脂タブレットが収納されるポッドが複数設けられ、
前記輸送装置の前記ポッドに対応した位置に、前記樹脂タブレットが収納して輸送される収納部が設けられることを特徴とする請求項5から請求項7の何れかに記載の樹脂封止装置。
【請求項9】
前記載置台に設けられた第1アライメント部と、前記輸送装置に設けられた第2アライメント部とを位置合わせすることにより、前記載置台の前記載置領域と、前記輸送装置の前記吸着部とを整合させることを特徴とする請求項6から請求項8の何れかに記載の樹脂封止装置。
【請求項10】
前記載置台の前記第1アライメント部は凹状の形状であり、
前記輸送装置の前記第2アライメント部は凸の形状であり、
前記第1アライメント部と前記第2アライメント部とを嵌合させることで、前記位置合わせを行うことを特徴とする請求項9に記載の樹脂封止装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−4435(P2012−4435A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139594(P2010−139594)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(311003743)オンセミコンダクター・トレーディング・リミテッド (166)
【Fターム(参考)】