回転機の制御装置、及び回転機の制御システム
【課題】チョッパ制御によって、電動機に接続されるコンデンサの電圧を高圧バッテリの電圧に対して所望に変換するに際し、コンデンサの電圧を電動機の制御によって要求される交流電圧とすることが困難なこと。
【解決手段】電動機に対する指令電圧Vuc,Vvc,Vwcをオフセット電圧Δにてオフセットしたものと、コンデンサの実際の電圧VCu、VCv、VCwとの差に基づき、フィードバック制御部68,80,92においてコンデンサ及び電動機側への電流の出力電流の基本値が算出される。フィードフォワード補正部70,82,94では、これを電動機の相電流iMu,iMv,iMwにてフィードフォワード補正することで、コンデンサ及び電動機側へ電流の出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出する。パルス幅算出部72,84,96では、これに基づきチョッパ制御のオン操作時間を算出する。
【解決手段】電動機に対する指令電圧Vuc,Vvc,Vwcをオフセット電圧Δにてオフセットしたものと、コンデンサの実際の電圧VCu、VCv、VCwとの差に基づき、フィードバック制御部68,80,92においてコンデンサ及び電動機側への電流の出力電流の基本値が算出される。フィードフォワード補正部70,82,94では、これを電動機の相電流iMu,iMv,iMwにてフィードフォワード補正することで、コンデンサ及び電動機側へ電流の出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出する。パルス幅算出部72,84,96では、これに基づきチョッパ制御のオン操作時間を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機に対する指令電圧とキャリアとの大小関係の比較に基づきインバータのスイッチング素子を操作することが周知である。これによれば、回転機の端子に、擬似的に正弦波形状の指令電圧を印加することができる。ただし、この場合には、インバータの出力電圧が2値的に激しく変動することに起因して、回転機の中性点電圧が大きく変動してコモンモードノイズが発生したり、サージが大きくなったりする等の不都合が生じる。
【0003】
そこで従来は、例えば下記特許文献1の図19等に見られるように、電源電圧に対してコンデンサの電圧を所望に変換するDCDCコンバータのコンデンサに3相回転機の各相の端子を接続することも提案されている。上記文献には、これによって、3相回転機の各相に正弦波形状の電圧が印加されるために、サージ電圧を抑制することができると記載されている。
【特許文献1】特開2006−136125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記文献記載の制御装置では、直流電圧を出力するDCDCコンバータの出力電圧を利用して、3相回転機に交流電圧を印加する提案がなされているのみである。しかし、DCDCコンバータは、直流電圧を出力するものであるが故に、回転機に印加する電圧を交流電圧としたり、回転機を流れる電流を交流電流としたり、更には回転機のトルクを急変させたりする場合には、3相回転機に所望の電圧を印加することが困難となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機に印加する電圧を好適に制御することのできる回転機の制御装置及び制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置において、前記回転機に対する指令電圧に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出する電流指令値算出手段と、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値に基づき、前記チョッパ制御を行うチョッパ制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記発明では、蓄電手段が回転機の端子に接続されるために、回転機の端子には、蓄電手段の電圧が印加される。このため、蓄電手段の電圧を指令電圧に基づき制御することが望まれる。ここで、上記発明では、蓄電手段及び回転機側への出力電流を算出するために、蓄電手段の電圧を指令電圧に基づき制御する上で要求される出力電流を把握することができ、ひいては、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて好適に制御することができる。このため、上記発明では、回転機に印加する電圧を好適に制御することができる。
【0009】
なお、「蓄電手段及び前記回転機側への出力電流」は、「電力変換回路のうちの蓄電手段以外の回路から該回路及び前記蓄電手段間への出力電流である」ことを特徴としてもよい。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出するに際し、前記蓄電手段に接続される回転機の端子に流れる電流を加味することを特徴とする。
【0011】
回転機の端子に流れる電流は、電力変換回路と回転機との間で授受される電流である。このため、この電流は、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて制御する上での外乱要因となる。この点、上記発明では、蓄電手段及び回転機側への出力電流の指令値を算出するに際し、回転機の端子に流れる電流を加味することで、上記外乱要因をフィードフォワード制御によって補償することができる。このため、蓄電手段の制御性を向上させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置において、前記回転機に対する指令電圧に応じて前記蓄電手段の電圧を制御すべく、前記電力変換回路及び回転機間での電荷の流出入量を把握しつつ、前記チョッパ制御を行うチョッパ制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて制御する際には、回転機及び電力変換回路間での電荷の流出入量が外乱要因となる。このため、たとえ蓄電手段の電圧を上昇させたい場合であっても、必ずしも蓄電手段及び回転機側に電荷を供給することがチョッパ制御に対して要求されるわけではなく、回転機の端子を流れる電流によっては、蓄電手段及び回転機側から電荷を引き抜くことがチョッパ制御に対して要求されることもある。上記発明では、この点に鑑み、電力変換回路及び回転機間での電荷の流出入量を把握することで、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて制御する上で適切な態様にてチョッパ制御を行うことができる。このため、上記発明では、回転機に印加する電圧を好適に制御することができる。
【0014】
なお、「前記電力変換回路及び前記回転機間での電荷の流出入量の把握は、前記回転機の端子を流れる電流に基づき行われる」ことが望ましい。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記回転機に対する指令電圧及び前記回転機の端子を流れる電流に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出する電流指令値算出手段を更に備え、前記チョッパ制御手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値に基づき、前記チョッパ制御を行うことを特徴とする。
【0016】
上記発明では、蓄電手段及び回転機側への出力電流を算出するために、蓄電手段の電圧を指令電圧に基づき制御する上で要求される出力電流を把握することができ、ひいては、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて好適に制御することができる。このため、上記発明では、回転機に印加する電圧を好適に制御することができる。
【0017】
なお、「蓄電手段及び前記回転機側への出力電流」は、「電力変換回路のうちの蓄電手段以外の回路から該回路及び前記蓄電手段間への出力電流である」ことを特徴としてもよい。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1、2又は4記載の発明において、前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段の電圧と前記指令電圧との差に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、上記差を上記出力電流の指令値を算出するための入力とすることで、蓄電手段の電圧を指令電圧に基づき制御する処理を、簡易且つ適切に行うことができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記指令電圧は、交流信号であり、前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段の両端電圧間の極性を不変に保つべく、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出するに際して用いられる前記差を、所定量増加又は減少させる処理を行うことを特徴とする。
【0021】
指令電圧が交流信号である場合、これを蓄電手段の電圧の目標値とすると、指令電圧の変化に伴って蓄電手段の両電極間の極性を周期的に反転させようとする制御が働く。しかし、電力変換回路によっては極性を反転させることができないものがあり、この場合、制御が破綻する。また、たとえ電力変換回路によって極性を反転させることができたとしても、この電圧の影響を受ける素子の信頼性の低下を招いたり、電力変換回路による電圧の変換処理が円滑に行えなくなったりするおそれがある。この点、上記発明では、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて変化させつつも極性を不変とするように制御することで、こうした問題を回避することができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1,2、4〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の所定期間における平均値を前記指令値に一致させるように前記チョッパ制御の態様を可変とすることを特徴とする。
【0023】
電力変換回路を流れる電流がチョッパ制御によって変動する場合、微視的なタイムスケールでは、蓄電手段及び回転機側への出力電流をその指令値とすることはできない。この点、上記発明では、蓄電手段及び回転機側への出力電流の所定期間における平均値を指令値とすることで、蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に一致させることができ、ひいては蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて制御することができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流の漸増操作及び漸減操作の繰り返し処理を行うものであって且つ、前記漸増操作及び漸減操作の一周期において前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の平均値を前記指令値に一致させるように前記漸増操作及び漸減操作の操作態様を可変設定することを特徴とする。
【0025】
電力変換回路の備えるコイルを流れる電流がチョッパ制御によって漸増及び漸減を繰り返す場合、微視的なタイムスケールでは、蓄電手段及び回転機側への出力電流をその指令値とすることはできない。この点、上記発明では、漸増及び漸減の一周期において蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値とすることで、極力短いタイムスケールで蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に一致させることができ、ひいては蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて好適に制御することができる。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン・オフ操作の一周期において前記蓄電手段及び回転機側への出力電流の平均値を前記指令値に一致させるように前記スイッチング素子の操作態様を可変とすることを特徴とする。
【0027】
チョッパ制御では、通常、スイッチング素子のオン・オフ操作に伴って電力変換回路を流れる電流が変動する。そしてこの場合には、蓄電手段及び回転機側への出力電流も変動する。このため、微視的なタイムスケールでは、蓄電手段及び回転機側への出力電流をその指令値とすることはできない。この点、上記発明では、オン・オフ操作の一周期において蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値とすることで、極力短いタイムスケールで蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に一致させることができ、ひいては蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて好適に制御することができる。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン時間を変更可能な操作量として且つ、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流量がゼロとなることで前記スイッチング素子をオフ操作からオン操作に切り替えることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、コイルを流れる電流がゼロとなる度にスイッチング素子がオン操作されることでコイルを流れる電流が増加する。このため、スイッチング素子のオン・オフの一周期においてコイルを流れる電流や蓄電手段を流れる電流を比較的簡易に算出することができる。更に、コイルを流れる電流がゼロとなることでスイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替えるために、この際のスイッチング損失を低減することもできる。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御を行うに際し、前記蓄電手段の電圧及び前記給電手段の電圧を加味することを特徴とする。
【0031】
チョッパ制御における電流の挙動は、蓄電手段の電圧や給電手段の電圧に依存する。上記発明では、この点に鑑み、これらを入力とすることで、チョッパ制御における電流の挙動を把握することができる。このため、蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に好適に制御することができる。
【0032】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御を行うに際し、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流の検出値を加味することを特徴とする。
【0033】
上記発明では、コイルを流れる電流の検出値に基づきチョッパ制御の電流の挙動を把握することができるため、蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に好適に制御することができる。
【0034】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記電力変換回路は、非絶縁型コンバータを備えて構成されることを特徴とする。
【0035】
上記発明では、非絶縁型コンバータを用いることで、電力変換回路を小型化することができる。なお、こうした非絶縁型コンバータとしては、下記の各請求項記載の構成としてもよい。
【0036】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記非絶縁型コンバータは、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、該スイッチング素子同士の接続点を前記蓄電手段に接続するコイルとを備えるバックコンバータであることを特徴とする。
【0037】
請求項15記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記非絶縁型コンバータは、前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、該スイッチング素子同士の接続点を前記給電手段に接続するコイルとを備えるブーストコンバータであることを特徴とする。
【0038】
請求項16記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記非絶縁型コンバータは、前記蓄電手段の一方の端子及び前記給電手段の一方の端子を接続する一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子間の接続点を前記蓄電手段の他方の端子及び前記給電手段の他方の端子に接続するコイルとを備えるバックブーストコンバータであることを特徴とする。
【0039】
請求項17記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記非絶縁型コンバータは、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子の接続点を前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子の接続点に接続するコイルとを備えるバックブースコンバータであることを特徴とする。
【0040】
請求項18記載の発明は、請求項1〜17のいずれか1項に記載の回転機の制御装置と、前記電力変換回路とを備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる回転機の制御装置をハイブリッド車の動力発生装置としての電動機の制御装置に適用した第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0042】
図1に、本実施形態の制御システムの全体構成を示す。
【0043】
電動機10は、ハイブリッド車の動力発生装置であり、ここでは、永久磁石同期モータ(PMSM)を例示している。電動機10は、電力変換回路としての3相コンバータ(TCV14)を介して、高圧バッテリ12に接続されている。ここで、高圧バッテリ12は、ニッケル水素蓄電池やリチウム蓄電池等の蓄電池である。
【0044】
上記TCV14は、電動機10の各相に接続される各別のDCDCコンバータを備えて構成され、各相に印加する電圧を連続的に調節することが可能なものである。詳しくは、本実施形態にかかるTCV14は、各相毎に、非反転形バックブーストコンバータを備えて構成されている。すなわち、U相については、上記高圧バッテリ12に並列接続されるスイッチング素子Sup1及びスイッチング素子Sun1の直接接続体と、電動機10のU相及びグランド間に接続されるコンデンサCuと、コンデンサCuに並列接続されるスイッチング素子Sup2及びスイッチング素子Sun2の直接接続体と、上記2つの直列接続体の接続点間を接続するコイルLuとを備えるDCDCコンバータを有する。ここで本実施形態では、スイッチング素子Sup1,Sun1,Sup2,Sun2として、パワーMOSFETを例示している。これら各スイッチング素子Sup1,Sun1,Sup2,Sun2には、ダイオードDup1,Dun1,Dup2,Dun2が並列接続されている。なお、並列接続されるダイオードDup1,Dun1,Dup2,Dun2は、パワーMOSFETなどのボディダイオードであってもよい。そして、TCV14は、V相、W相についても、同様の構成を有するDCDCコンバータを備えて構成されている。
【0045】
上記制御システムは、その内部の各種状態を検出するための手段として、次のものを備えている。まず、高圧バッテリ12の電圧を検出する電圧センサ20を備えている。またTCV14のU相部分については、コイルLuを流れる電流を検出する電流センサ22と、コンデンサCuの電圧を検出する電圧センサ24とを備えている。一方、TCV14のV相部分については、コイルLvを流れる電流を検出する電流センサ26と、コンデンサCvの電圧を検出する電圧センサ28とを備えている。また、TCV14のW相部分については、コイルLwを流れる電流を検出する電流センサ30と、コンデンサCwの電圧を検出する電圧センサ32とを備えている。更に、電動機10に関する状態としては、各相の電流を検出する電流センサ34,36,38を備えている。
【0046】
一方、制御装置40は、電動機10を制御対象とする制御装置であり、上記各種センサの検出値を取り込み、これらに基づき、TCV14を操作する。詳しくは、スイッチング素子Sup1、Sun2を操作する操作信号gu1、スイッチング素子Sun1,Sup2を操作する操作信号gu2、スイッチング素子Svp1、Svn2を操作する操作信号gv1、スイッチング素子Svn1,Svp2を操作する操作信号gv2、スイッチング素子Swp1、Swn2を操作する操作信号gw1、スイッチング素子Swn1,Swp2を操作する操作信号gw2を生成する。そして、これらを用いてチョッパ制御を行うことで、高圧バッテリ12の電圧を所望に変換して各コンデンサCu,Cv,Cwの電圧とする。
【0047】
図2に、本実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示す。なお、図2においては、TCV14を構成する3つのDCDCコンバータのうちの1つを示す。そして、図2においては、各素子の符号から相に対応するアルファベットを除いた符号を付する。すなわち例えば、スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1については、スイッチング素子Sp1と表記する。なお、図2においては、説明の便宜上、コンデンサC及びこれに接続される電動機10の端子間の電荷の流出入量が無視できるほど小さい場合を示す。
【0048】
まず初めに、図2(a)、図2(b)に基づき、コンデンサC及び電動機10側への電荷供給に際しての処理について説明する。図2(a)に示されるように、操作信号gu1の立ち上がりによって、スイッチング素子Sp1,Sn2がオン状態とされると、高圧バッテリ12、スイッチング素子Sp1、コイルL、及びスイッチング素子Sn2を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。その後、図2(b)に示されるように、操作信号gu1の立ち下がりによって、スイッチング素子Sp1,Sn2がオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL、ダイオードDp2、コンデンサC,及びダイオードDn1を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが充電される。
【0049】
次に、図2(c)、図2(d)に基づき、コンデンサC及び電動機10側からの電荷の引き抜き時に際しての処理について説明する。図2(c)に示されるように、操作信号gu2の立ち上がりによって、スイッチング素子Sp2,Sn1がオン状態とされると、コンデンサC、スイッチング素子Sp2、コイルL、及びスイッチング素子Sn1を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCの電荷が放出される。その後、図2(d)に示されるように、操作信号gu2の立ち下がりによって、スイッチング素子Sp2,Sn1がオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL,ダイオードDp1、高圧バッテリ12、及びダイオードDn2を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。
【0050】
このように、チョッパ制御によって、直流電源(高圧バッテリ12)の電圧を変換して出力することで、換言すればコンデンサCの電圧を調節することで、電動機10に印加する電圧値をアナログ値とすることができる。ただし、実際には、コンデンサC及び電動機10間での電荷の流出入に起因して、コンデンサCの電圧の上昇及び低下のそれぞれと、コンデンサC及び電動機10側への電荷の供給及び引き抜きとが1対1に対応しない。本実施形態では、こうした状況にあっても、コンデンサCの電圧を適切に制御することができるように、上記操作信号gu1,gu2,gv1,gv2,gw1,gw2を生成する。図3に、上記操作信号gu1,gu2,gv1,gv2,gw1,gw2の生成処理を示す。
【0051】
電動機10の各相の電流iMu,iMv,iMwは、2相変換部50に取り込まれる。これにより、2相変換部50では、これら3相の電流iMu,iMv,iMwを、回転2相座標系での電流であるd軸上の実電流idとq軸上の実電流iqとに変換する。一方、指令電流設定部52は、要求トルクに基づき、dq軸上の指令電流idc,iqcを設定する。偏差算出部54では、指令電流idcに対する実電流idの差を算出し、偏差算出部56では、指令電流iqcに対する実電流iqの差を算出する。指令電圧設定部58では、上記偏差算出部54,56の出力に基づき、dq軸上での指令電圧vdc、vqcを設定する。ここでは、基本的には、実電流idを指令電流idcにフィードバック制御することでd軸上の指令電圧vdcを設定し、実電流iqを指令電流iqcにフィードバック制御することでq軸上の指令電圧vqcを設定する。ここで、フィードバック制御としては、例えば比例積分制御とすればよい。ただし、本実施形態では、上記フィードバック制御に加えて、非干渉化制御をも行う。このため、指令電圧設定部58では、電動機10の回転速度ωを入力パラメータとしている。
【0052】
3相変換部60は、dq軸上の指令電圧vdc、vqcを、3相の指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに変換する。オフセット補正部62では、U相の指令電圧Vucに、オフセット電圧Δを加算する補正を行う。これは、指令電圧Vucがゼロボルトを振幅中心とする正弦波等の交流信号であるという条件下、コンデンサCuの電圧の極性を固定するためになされるものである。このようにオフセット電圧Δを加算する補正を行うことで、コンデンサCuの電圧は、図4に示されるように、オフセット電圧Δを振幅中心として変動するように制御されることとなる。なお、コンデンサCuの極性を固定するためには、オフセット電圧Δは、指令電圧Vucの振幅の最大値以上とすれば足りるが、本実施形態では、更に、振幅の最大値よりも規定電圧VLだけ高い電圧をオフセット電圧Δとしている。これは、チョッパ制御による電流の変化がコンデンサCuの電圧と高圧バッテリ12の電圧とによって定まることに鑑み、チョッパ制御の電流の変化速度を規定速度以上とするための設定である。
【0053】
先の図3において、オフセット補正された指令電圧Vucは、ガード処理部64に取り込まれる。ガード処理部64は、TCV14を構成する素子に定格を超えた電圧が印加されることを回避したり、コイルLuの飽和を回避したりすることを目的に設けられている。ガード処理部64の出力は、偏差算出部66に取り込まれる。偏差算出部66は、ガード処理部64の出力から電圧センサ24によって検出されるコンデンサCuの電圧VCuを減算する。偏差算出部66の出力は、フィードバック制御部68に取り込まれる。ここでは、比例制御がなされる。ここで、比例ゲインKは、コンデンサCuの容量と、コンデンサCuの電圧の要求変化速度とに基づき設定されるものである。フィードバック制御部68の出力は、フィードフォワード補正部70に取り込まれる。フィードフォワード補正部70では、フィードバック制御部68の出力にU相の電流iMuを加算することで、コンデンサCu及び電動機10側への出力指令値iCucを算出する。この出力指令値iCucは、コンデンサCuへの供給電流量と電動機10のU相への供給電流量との和の指令値となっている。そして、パルス幅算出部72では、出力指令値iCucや、電圧センサ20によって検出される高圧バッテリ12の電圧Vin、コンデンサCuの電圧VCuに基づき、コンデンサCu及び電動機10側への出力電流が出力指令値iCucとなるように、操作信号gu1,gu2を算出する。
【0054】
同様に、V相についても、指令電圧Vvcは、オフセット補正部74においてオフセット電圧Δにてオフセット補正された後、ガード処理部76にてガード処理が施される。そして、偏差算出部78においてはガード処理部76の出力からコンデンサCvの電圧VCuが減算され、フィードバック制御部80では、これに基づき、コンデンサCvの電圧VCuが指令電圧Vvcに基づきフィードバック制御される。そして、フィードフォワード補正部82にて、V相の電流iMvにてフィードバック制御部80の出力が補正されることで、コンデンサCv及び電動機10側への電流の出力指令値iCvcが算出される。そして、パルス幅算出部84では、出力指令値iCvcや、電圧センサ20によって検出される高圧バッテリ12の電圧、コンデンサCvの電圧VCuに基づき、コンデンサCv及び電動機10側への出力電流が出力指令値iCvcとなるように、操作信号gv1,gv2を算出する。
【0055】
同様に、W相についても、指令電圧Vwcは、オフセット補正部86においてオフセット電圧Δにてオフセット補正された後、ガード処理部88にてガード処理が施される。そして、偏差算出部90においてはガード処理部88の出力からコンデンサCwの電圧VCwが減算され、フィードバック制御部92では、これに基づき、コンデンサCwの電圧VCwが指令電圧Vwcに基づきフィードバック制御される。そして、フィードフォワード補正部94にて、W相の電流iMwにてフィードバック制御部92の出力が補正されることで、コンデンサCw及び電動機10側への電流の出力指令値iCwcが算出される。そして、パルス幅算出部96では、出力指令値iCwcや、電圧センサ20によって検出される高圧バッテリ12の電圧Vin、コンデンサCwの電圧VCwに基づき、コンデンサCw側への出力電流が出力指令値iCwcとなるように、操作信号gw1,gw2を算出する。
【0056】
次に、図5に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図5においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0057】
図5(a)は、コンデンサCu及び電動機10側への電荷供給時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tupは、スイッチング素子Sup1、Sun2のオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Sup1、Sun2がオン操作されると、先の図2(a)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流が漸増する。そして、オン時間tupが経過すると、スイッチング素子Sup1、Sun2がオフ操作されるために、先の図2(b)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sup1、Sun2を再度オン状態に切り替える。
【0058】
ここで、コンデンサCu及び電動機10側に電流が流れるのは、スイッチング素子Sup1、Sun2がオフ状態である期間であり且つ、漸減するものであるため、微視的なタイムスケールでは、この電流を出力指令値iCucとすることはできない。そこで本実施形態では、コンデンサCu及び電動機10側に出力される電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとする。そして、この所定期間を、スイッチング素子Sup1、Sun2のオン・オフ操作の一周期とする。図5(a)では、コンデンサCu及び電動機10側に供給される電荷量を、斜線部分の面積として示している。この面積がスイッチング素子Sup1、Sun2のオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくなるなら、コンデンサC及び電動機10側への実際の出力電流の一周期における平均値を、出力指令値iCucとすることができる。これは、オン時間tupを以下のように設定することで実現することができる。
【0059】
漸増及び漸減を繰り返しつつ流れるコイルLuのピーク電流Ipは、コイルLuのインダクタンスL、オン時間tup及び高圧バッテリ12の電圧Vinを用いて、以下の式にて表現される。
【0060】
Vin=L・Ip/tup …(c1)
また、このピーク電流Ipは、オフ時間toffと、コンデンサCuの電圧VCuとを用いて、以下の式にて表現される。
【0061】
VCu=L・Ip/toff …(c2)
上記の式(c1)、(c2)から、オン時間tupとオフ時間toffとの関係が下記の式(c3)となる。
【0062】
Vin/Vcu=toff/tup …(c3)
ここで、上記一周期におけるコンデンサCu及び電動機10側への供給電流の平均値は、下記の式(c4)にて表現される。
【0063】
Ip・toff/{2・(tup+toff)}
=tup・Vin・Vin/2・L・(Vin+VCu) …(c4)
これが、出力指令値iCucと等しいとすると、下記の式(c5)が得られる。
【0064】
tup=2・L・iCuc・(Vin+VCu)/(Vin・Vin) …(c5)
一方、図5(b)は、コンデンサCu及び電動機10側からの電荷の引き抜き時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tunは、スイッチング素子Sun1、Sup2のオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Sun1、Sup2がオン操作されると、先の図2(c)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流の絶対値が漸増する。ただし、コンデンサCの両電極のうちの電動機10との接続側へ流れる方向を電流の正の向きとしているために、図5(c)では、電流がゼロを下回って漸減すると記載している。そして、オン時間tunが経過すると、スイッチング素子Sun1、Sup2がオフ操作されるために、先の図2(d)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流の絶対値は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sun1、Sup2を再度オン状態に切り替える。
【0065】
ここでも、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとすべく、オン時間tunにおいてコンデンサCu及び電動機10側から引き抜かれる電荷量(斜線部分の面積)を、スイッチング素子Sun1、Sup2のオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくする。これは、オン時間tunを以下の式(c6)とすることで実現することができる。
【0066】
tun=2・L・(−iCuc)・(Vin+VCu)/(Vin・VCu) …(c6)
上記の式(c6)においては、コンデンサCu及び電動機10側に電流が流れる方向を正としているため、出力指令値iCucに「−1」を乗算することで、オン時間tunを正としている。上記の式(c5)及び式(c6)からわかるように、出力指令値iCucと、電圧Vin、VCuとを入力とすることで、オン時間tup,tunを算出することができる。ここで、オン時間tupを用いるか、オン時間tunを用いるかは、出力指令値iCucの符号によって定まる。
【0067】
図6に、本実施形態にかかるチョッパ制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図6においては、U相に関する処理のみを示すが、V相,W相についても同様の処理を行うことができる。
【0068】
この一連の処理では、まずステップS10において、電流センサ22によって検出される電流(コイルLuに流れる電流iLu)がゼロであるか否かを判断する。この処理は、スイッチング素子Sup1、Sun2又はスイッチング素子Sun1、Sup2をオフ状態からオン状態に切り替えるタイミングを判断するためのものである。そして、ゼロであると判断される場合には、オン状態への切り替えタイミングであることから、ステップS12に移行する。ステップS12においては、出力指令値iCucがゼロ以上であるか否かを判断する。この処理は、コンデンサCu及び電動機10側に電荷を供給すべく、スイッチング素子Sup1、Sun2をオン操作するか、コンデンサCu及び電動機10側から電荷を引き抜くべく、スイッチング素子Sun1、Sup2をオン操作するかを判断するものである。
【0069】
出力指令値iCucがゼロ以上である場合、ステップS14において、スイッチング素子Sup1、Sun2をオン操作すべく、操作信号gu1をターンオンする。続くステップS16においては、スイッチング素子Sup1、Sun2がオン状態とされる時間を計時するカウンタをインクリメントする。この処理は、カウンタの値が上記オン時間tup以上となるまで継続される(ステップS18)。そして、カウンタの値が上記オン時間tup以上となると(ステップS18:Yes)、ステップS20において、操作信号gu1をターンオフするとともに、カウンタをリセットする。
【0070】
一方、上記ステップS12において出力指令値iCucがゼロ未満と判断される場合、ステップS22において、スイッチング素子Sun1、Sup2をオン操作すべく、操作信号gu2をターンオンする。続くステップS24においては、スイッチング素子Sun1、Sup2がオン状態とされる時間を計時するカウンタをインクリメントする。この処理は、カウンタの値が上記オン時間tun以上となるまで継続される(ステップS26)。そして、カウンタの値が上記オン時間tun以上となると(ステップS26:Yes)、ステップS28において、操作信号gu2をターンオフするとともに、カウンタをリセットする。
【0071】
図7(a)に、上記処理によるコンデンサCu、Cv,Cwの電圧の制御結果を示す。図では、要求トルクを急変させることで電動機10の力行制御から回生制御へと切り替える場合におけるコンデンサCu、Cv,Cwの電圧(TCV14の出力電圧)の指令電圧Vuc、Vvc,Vwcへの追従性を示している。図示されるように、コンデンサCu、Cv,Cwの電圧は、指令電圧Vuc、Vvc,Vwc(正確には、これらをオフセット補正したもの)に好適に追従している。これに対し、図7(b)には、上記出力指令値iCucを算出せず、コンデンサCu、Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCwと指令電圧Vuc、Vvc,Vwc(正確にはこれらをオフセット補正したもの)との差に基づき、上記オン時間tup,tunを直接算出した場合を示す。この場合、コンデンサCu、Cv,Cwの電圧の指令電圧Vuc、Vvc,Vwcへの追従性が、本実施形態と比較して劣るものとなる。
【0072】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0073】
(1)電動機10に対する指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づき、コンデンサCu,Cv,Cw及び電動機10側への出力電流の指令値(出力指令値iCuc,iCvc,iCwc)を算出し、これに基づきチョッパ制御を行った。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づき制御する上で要求される出力電流を把握することができ、ひいては、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに応じて好適に制御することができる。
【0074】
(2)出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出するに際し、コンデンサCu,Cv,Cwに接続される電動機10の各相に流れる電流iMu,iMv,iMwを加味した。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに応じて制御する上での外乱要因を、フィードフォワード制御によって補償することができる。
【0075】
(3)コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCwと指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとの差に基づき、出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出した。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCwを指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに制御する処理を、簡易且つ適切に行うことができる。
【0076】
(4)コンデンサCu,Cv,Cwの両端電圧間の極性を不変に保つべく、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCwと指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとの差に基づき出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出するに先立ち、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcをオフセット補正した。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに応じて変化させつつも極性を不変とするように制御することができるため、コンデンサCu,Cv,Cwの極性を反転させることができない非反転形バックブーストコンバータを備えて構成されるTCV14による電圧の制御性を高く維持することができる。
【0077】
(5)チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン・オフ操作の一周期においてコンデンサCu,Cv,Cw側への出力電流の平均値を出力指令値iCuc,iCvc,iCwcに一致させるようにスイッチング素子の操作態様を可変とした。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに応じて好適に制御することができる。
【0078】
(6)チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン時間tup,tunを変更可能な操作量として且つ、TCV14の備えるコイルLu、Lv,Lwに流れる電流iLu,iLv,iLwがゼロとなることでスイッチング素子をオフ操作からオン操作に切り替えた。このように、コイルLu,Lv,Lwを流れる電流がゼロとなる度にオン操作に切り替えることで、オン・オフの一周期においてコイルLu,Lv,Lwを流れる電流やコンデンサCu,Cv,Cwを流れる電流を比較的簡易に算出することができる。更に、コイルLu,Lv,Lwを流れる電流がゼロとなることでスイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替えるために、この際のスイッチング損失を低減することもできる。
【0079】
(7)チョッパ制御を行うに際し、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCw及び高圧バッテリ12の電圧Vinを加味した。これにより、チョッパ制御における電流の挙動を把握することができるため、コンデンサCu,Cv,Cw側への出力電流を指令値に好適に制御することができる。
【0080】
(8)TCV14を、非絶縁型コンバータを備えて構成した。これにより、TCV14を小型化することができる。
【0081】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0082】
図8に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図8において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0083】
図示されるように、本実施形態では、DCDCコンバータとしてバックブーストコンバータを用いてTCV14を構成する。すなわち、U相においては、コンデンサCuと、高圧バッテリ12の正極端子をコンデンサCu及び電動機10のU相間の接続点に接続するスイッチング素子Su1及びスイッチング素子Su2の直接接続体と、スイッチング素子Su1及びスイッチング素子Su2の接続点をグランドに接続するコイルLuとを備えている。そして、このDCDCコンバータには、各スイッチング素子Su1,Su2に並列にダイオードDu1,Du2が並列接続されている。そして、TCV14は、V相、W相についても、同様の構成を有するDCDCコンバータを備えて構成されている。
【0084】
図9に、本実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示す。なお、図9においては、TCV14を構成する3つのDCDCコンバータのうちの1つを示す。そして、図9においては、各素子の符号から相に対応するアルファベットを除いた符号を付する。すなわち例えば、スイッチング素子Su1,Sv1,Sw1については、スイッチング素子S1と表記する。なお、図9においては、説明の便宜上、コンデンサC及びこれに接続される電動機10の端子間の電荷の流出入量が無視できるほど小さい場合を示す。
【0085】
まず初めに、図9(a)、図9(b)に基づき、コンデンサC及び電動機10側への電荷供給に際しての処理について説明する。図9(a)に示されるように、操作信号gu1の立ち上がりによって、スイッチング素子S1がオン操作されると、コンデンサC、コイルL、及びスイッチング素子S1を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが充電される。ただし、バックブーストコンバータにあっては、コンデンサCの極性を反転させる降圧処理がなされるために、これにより、コンデンサCの電圧の絶対値が低減される。その後、図9(b)に示されるように、操作信号gu1の立ち下がりによって、スイッチング素子S1がオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL、ダイオードD2、及び高圧バッテリ12を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。
【0086】
次に、図9(c)、図9(d)に基づき、コンデンサC及び電動機10側からの電荷の引き抜きに際しての処理について説明する。図9(c)に示されるように、操作信号gu2の立ち上がりによって、スイッチング素子S2がオン状態とされると、高圧バッテリ12、スイッチング素子S2、コイルLを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。その後、図9(d)に示されるように、操作信号gu2の立ち下がりによって、スイッチング素子S2がオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL,コンデンサC、及びダイオードD1を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCの電荷が放出される。換言すれば、コンデンサCは、負側で昇圧(正で降圧)される態様にて充電される。これにより、コンデンサCの電圧の絶対値を増大させることができる。
【0087】
このように、チョッパ制御によって、直流電源(高圧バッテリ12)の電圧を変換して出力することで、換言すればコンデンサCの電圧を調節することで、電動機10に印加する電圧値をアナログ値とすることができる。
【0088】
次に、図10に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図10においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0089】
図10(a)は、コンデンサCu及び電動機10側への電荷供給時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tupは、スイッチング素子Su1のオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Su1がオン操作されると、先の図9(a)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流が漸増する。そして、オン時間tupが経過すると、スイッチング素子Su1がオフ操作されるために、先の図9(b)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Su1を再度オン状態に切り替える。
【0090】
ここで、本実施形態においても、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとする。そして、この所定期間を、スイッチング素子Su1のオン・オフ操作の一周期とする。図10(a)では、この間にコンデンサCu及び電動機10側に供給される電荷量を、斜線部分の面積として示している。この面積がスイッチング素子Su1のオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくなるなら、コンデンサCu及び電動機側への実際の出力電流の一周期における平均値を、出力指令値iCucとすることができる。これは、オン時間tupを下記の式(c7)のように設定することで実現することができる。
【0091】
tup=2・L・iCuc・(Vin−VCu)/((−VCu)・Vin) …(c7)
なお、上記の式(c7)においては、コンデンサCuの両端子のうちの電動機10のU相との接続側の端子を正と定義しているために、コンデンサCuの電圧VCuに「−1」を乗算している。
【0092】
一方、図10(b)は、コンデンサCu及び電動機10側からの電荷引き抜き時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tunは、スイッチング素子Su2のオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Su2がオン操作されると、先の図9(c)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流の絶対値が漸増する。ただし、コンデンサCの両電極のうちの電動機10との接続側へ流れる方向を電流の正の向きとしているために、図10(b)では、電流がゼロを下回って漸減すると記載している。そして、オン時間tunが経過すると、スイッチング素子Su2がオフ操作されるために、先の図9(d)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流の絶対値は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Su2を再度オン状態に切り替える。
【0093】
ここでも、コンデンサCu及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとすべく、オン時間tunにおいてコンデンサCu及び電動機10側から引き抜かれる電荷量(斜線部分の面積)を、スイッチング素子Su2のオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくする。これは、オン時間tunを以下の式(c8)とすることで実現することができる。
【0094】
tun=2・L・(−iCuc)・(Vin−VCu)/(Vin・Vin) …(c8)
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果を得ることができる。
【0095】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
図11に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図11において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0097】
図示されるように、本実施形態では、DCDCコンバータとしてブーストコンバータを用いてTCV14を構成する。すなわち、U相においては、コンデンサCuと、コンデンサCuに並列接続されるスイッチング素子Sup及びスイッチング素子Sunの直接接続体と、スイッチング素子Sup及びスイッチング素子Sunの接続点を高圧バッテリ12の正極側に接続するコイルLuとを備えている。そして、このDCDCコンバータには、各スイッチング素子Sup,Sunに並列にダイオードDup,Dunが並列接続されている。そして、TCV14は、V相、W相についても、同様の構成を有するDCDCコンバータを備えて構成されている。
【0098】
図12に、本実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示す。なお、図12においては、TCV14を構成する3つのDCDCコンバータのうちの1つを示す。そして、図12においては、各素子の符号から相に対応するアルファベットを除いた符号を付する。すなわち例えば、スイッチング素子Sup,Svp、Swpについては、スイッチング素子Spと表記する。なお、図12においては、説明の便宜上、コンデンサC及びこれに接続される電動機10の端子間の電荷の流出入量が無視できるほど小さい場合を示す。
【0099】
まず初めに、図12(a)、図12(b)に基づき、コンデンサC及び電動機10側への電荷供給に際しての処理について説明する。図12(a)に示されるように、操作信号gu1の立ち上がりによって、スイッチング素子Snがオン操作されると、高圧バッテリ12、コイルL、及びスイッチング素子Snを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。その後、図12(b)に示されるように、操作信号gu1の立ち下がりによって、スイッチング素子Snがオフ状態とされると、コイルL、ダイオードDp、コンデンサC、及び高圧バッテリ12を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが充電される。
【0100】
次に、図12(c)、図12(d)に基づき、コンデンサC及び電動機10側からの電荷の引き抜きに際しての処理について説明する。図12(c)に示されるように、操作信号gu2の立ち上がりによって、スイッチング素子Spがオン状態とされると、コンデンサC、スイッチング素子Sp、コイルL,及び高圧バッテリ12を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCの電荷が引き抜かれる。その後、図12(d)に示されるように、操作信号gu2の立ち下がりによって、スイッチング素子Spがオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL,高圧バッテリ12、及びダイオードDnを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。
【0101】
このように、チョッパ制御によって、直流電源(高圧バッテリ12)の電圧を変換して出力することで、換言すればコンデンサCの電圧を調節することで、電動機10に印加する電圧値をアナログ値とすることができる。
【0102】
次に、図13に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図13においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0103】
図13(a)は、コンデンサCu及び電動機10側への電荷供給時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tupは、スイッチング素子Sunのオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Sunがオン操作されると、先の図12(a)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流が漸増する。そして、オン時間tupが経過すると、スイッチング素子Sunがオフ操作されるために、先の図12(b)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sunを再度オン状態に切り替える。
【0104】
ここで、本実施形態においても、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとする。そして、この所定期間を、スイッチング素子Sunのオン・オフ操作の一周期とする。図13(a)では、この間にコンデンサCu及び電動機10側に供給される電荷量を、斜線部分の面積として示している。この面積がスイッチング素子Sunのオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくなるなら、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の一周期における平均値を、出力指令値iCucとすることができる。これは、オン時間tupを下記の式(c9)のように設定することで実現することができる。
【0105】
tup=2・L・iCuc・VCu/(Vin・Vin) …(c9)
一方、図13(b)は、コンデンサCu及び電動機10側からの電荷引き抜き時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tunは、スイッチング素子Supのオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Supがオン操作されると、先の図12(c)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流の絶対値が漸増する。ただし、コンデンサCの両電極のうちの電動機10との接続側へ流れる方向を電流の正の向きとしているために、図13(b)では、電流がゼロを下回って漸減すると記載している。そして、オン時間tunが経過すると、スイッチング素子Supがオフ操作されるために、先の図12(d)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流の絶対値は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Supを再度オン状態に切り替える。
【0106】
ここでも、コンデンサCu及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとすべく、オン時間tunにおいてコンデンサCu及び電動機10側から引き抜かれる電荷量(斜線部分の面積)を、スイッチング素子Supのオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくする。これは、オン時間tunを以下の式(c10)とすることで実現することができる。
【0107】
tun=2・L・(−iCuc)・VCu/Vin・(VCu−Vin) …(c10)
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果を得ることができる。
【0108】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0109】
図14に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図14において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0110】
図示されるように、本実施形態では、DCDCコンバータとしてバックコンバータを用いてTCV14を構成する。すなわち、U相においては、コンデンサCuと、高圧バッテリ12に並列接続されるスイッチング素子Sup及びスイッチング素子Sunの直接接続体と、スイッチング素子Sup及びスイッチング素子Sunの接続点をコンデンサCu及び電動機10の端子(U相)の接続点に接続するコイルLuとを備えている。そして、このDCDCコンバータには、各スイッチング素子Sup,Sunに並列にダイオードDup,Dunが並列接続されている。そして、TCV14は、V相、W相についても、同様の構成を有するDCDCコンバータを備えて構成されている。
【0111】
図15に、本実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示す。なお、図15においては、TCV14を構成する3つのDCDCコンバータのうちの1つを示す。そして、図15においては、各素子の符号から相に対応するアルファベットを除いた符号を付する。すなわち例えば、スイッチング素子Sup,Svp、Swpについては、スイッチング素子Spと表記する。なお、図15においては、説明の便宜上、コンデンサC及びこれに接続される電動機10の端子間の電荷の流出入量が無視できるほど小さい場合を示す。
【0112】
まず初めに、図15(a)、図15(b)に基づき、コンデンサC及び電動機10側への電荷供給に際しての処理について説明する。図15(a)に示されるように、操作信号gu1の立ち上がりによって、スイッチング素子Spがオン操作されると、高圧バッテリ12、スイッチング素子Sp、コイルL、及びコンデンサCを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが充電される。その後、図15(b)に示されるように、操作信号gu1の立ち下がりによって、スイッチング素子Spがオフ状態とされると、コイルL、コンデンサC、及びダイオードDnを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが更に充電される。
【0113】
次に、図15(c)、図15(d)に基づき、コンデンサC及び電動機10側からの電荷の引き抜きに際しての処理について説明する。図15(c)に示されるように、操作信号gu2の立ち上がりによって、スイッチング素子Snがオン状態とされると、コンデンサC、コイルL,及びスイッチング素子Snを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCの電荷が引き抜かれる。その後、図15(d)に示されるように、操作信号gu2の立ち下がりによって、スイッチング素子Snがオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL,ダイオードDp、高圧バッテリ12、及びコンデンサCを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。
【0114】
このように、チョッパ制御によって、直流電源(高圧バッテリ12)の電圧を変換して出力することで、換言すればコンデンサCの電圧を調節することで、電動機10に印加する電圧値をアナログ値とすることができる。
【0115】
次に、図16に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図16においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0116】
図16(a)は、コンデンサCu及び電動機10側への電荷供給時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tupは、スイッチング素子Supのオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Supがオン操作されると、先の図15(a)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流が漸増する。そして、オン時間tupが経過すると、スイッチング素子Supがオフ操作されるために、先の図15(b)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Supを再度オン状態に切り替える。
【0117】
ここで、本実施形態においても、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定時間における平均値を、出力指令値iCucとする。そして、この所定時間を、スイッチング素子Supのオン・オフ操作の一周期とする。図15(a)では、この間にコンデンサCu及び電動機10側に供給される電荷量を、斜線部分の面積として示している。この面積がスイッチング素子Supのオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくなるなら、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の一周期における平均値を、出力指令値iCucとすることができる。これは、オン時間tupを下記の式(c11)のように設定することで実現することができる。
【0118】
tup=2・L・iCuc/(Vin−VCu) …(c11)
一方、図16(b)は、コンデンサCu及び電動機10側からの電荷の引き抜き時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tunは、スイッチング素子Sunのオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Sunがオン操作されると、先の図15(c)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流の絶対値が漸増する。ただし、コンデンサCの両電極のうちの電動機10との接続側へ流れる方向を電流の正の向きとしているために、図16(b)では、電流がゼロを下回って漸減すると記載している。そして、オン時間tunが経過すると、スイッチング素子Sunがオフ操作されるために、先の図15(d)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流の絶対値は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sunを再度オン状態に切り替える。
【0119】
ここでも、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定時間における平均値を、出力指令値iCucとすべく、スイッチング素子Sunのオン・オフの一周期においてコンデンサCu及び電動機10側から引き抜かれる電荷量(斜線部分の面積)を、スイッチング素子Sunのオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくする。これは、オン時間tunを以下の式(c11)とすることで実現することができる。
【0120】
tun=2・L・(−iCuc)/VCu …(c11)
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果を得ることができる。
【0121】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に、図面を参照しつつ説明する。
【0122】
上記第4の実施形態では、出力指令値iCuc,iCvc,iCwc、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCw、高圧バッテリ12の電圧Vin、及びコイルLu,Lv,Lwの電流iLu,iLv,iLwに基づき、スイッチング素子Sp,Snを操作した。これに対し、本実施形態では、出力指令値iCuc,iCvc,iCwc及びコイルLu,Lv,Lwの電流iLu,iLv,iLwに基づき、スイッチング素子Sp,Snを操作する。
【0123】
次に、図17に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図17においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0124】
図示されるように、本実施形態では、コイルLuの電流の絶対値がピーク電流Ipとなることで、スイッチング素子Sup,Sunをオン状態からオフ状態に切り替えて且つ、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sup,Sunをオフ状態からオン状態に切り替える。そして、ピーク電流Ipを、出力指令値iCucの「2」倍とする。これにより、利用する入力信号の数を低減しつつも、スイッチング素子Sup,Sunのオン・オフ操作の一周期におけるコンデンサC及び電動機10側への出力電荷量(斜線部分の面積)を、同一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくすることができる。
【0125】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0126】
・上記各実施形態では、コイルL(Lu,Lv,Lw)を流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sp1,Sp2,Sn1,Sn2,Sp,Sn,S1,S2をオフ操作からオン操作に切り替えたがこれに限らない。例えば、コイルLを流れる電流が規定電流まで低下することでオフ操作からオン操作へと切り替えてもよい。この場合、上記第1〜第4の実施形態におけるオン操作時間の算出処理が複雑となるものの、同様にしてオン操作時間を算出することはできる。更に、第5の実施形態を変形する場合については、出力指令値iCuc,iCvc,iCwcの2倍の値が、ピーク電流Ipから規定電流を減算した値となるようにすればよい。
【0127】
・コンデンサ電圧VCu,VCv,VCwのフィードバック制御手法としては、上記比例制御に限らない。例えば、比例積分制御や、比例積分微分制御等であってもよい。
【0128】
・コンデンサ電圧VCu,VCv,VCwの極性を不変とすべく、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとコンデンサ電圧VCu,VCv,VCwとの差ΔVを、所定量増加又は減少させる処理としては、オフセット電圧Δによる指令電圧Vuc,Vvc,Vwcのオフセット補正に限らない。例えば、上記差ΔVを算出する前に、コンデンサ電圧VCu,VCv,VCwを、オフセット電圧Δとは逆符号の量「−Δ」にて補正してもよい。また、これに代えて、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとコンデンサ電圧VCu,VCv,VCwとの差を算出した後、これにオフセット電圧Δを加算してもよい。
【0129】
・電動機10に対する指令電圧に基づく出力指令値iCuc,iCvc,iCwcの算出手法としては、上記指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとコンデンサ電圧VCu,VCv,VCwとの差に基づくものに限らない。例えば、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcの変化量がコンデンサCu,Cv,Cwに要求される電荷量と相関を有することに鑑み、この変化量に基づき算出してもよい。この場合であっても、現在の相電流iMu,iMv,iMwを加味するなら、電動機10の制御に際して力率を可変とする場合であっても、出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを適切に算出することができる。また、こうした開ループ制御としては、他にも例えば、現在の相電流iMu,iMv,iMwや、過去の出力指令値iCuc,iCvc,iCwc等と、コンデンサCu,Cv,Cwの容量とに基づき、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を算出しつつ、これが指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとなるようにフィードフォワード制御を行ってもよい。更に、フィードフォワード制御と、これをフィードバック補正するフィードバック制御とを併せ用いてもよい。
【0130】
・コンデンサCu,Cv、Cwを流れる電流としては、相電流iMu,iMv,iMwに限らず、例えば指令電流idc,iqcを3相変換することで得られる3相の指令電流であってもよい。
【0131】
・上記各実施形態では、いずれも電流センサ22,26,30を備えてその検出値を利用したが、これに限らない。例えば、上記コンデンサCu,Cv,Cwの電圧及び高圧バッテリVinの電圧に基づき算出される電流を利用してもよい。
【0132】
・指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとしては、dq軸上の指令電流idc,iqcに基づき算出されるものにも限らない。例えば電動機10の回転速度を指令値に制御する場合において、実際の回転速度と指令値との差に基づき算出されるものとしてもよい。
【0133】
・上記第1〜第4の実施形態において、各コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を検出する手段(電圧センサ24,28,32)を備える代わりに、電流センサ22、26、30の検出値に基づく電流の変化速度に基づき、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を検出してもよい。
【0134】
・指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づき上記出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出する電流指令値算出手段としては、電動機10の各相を流れる電流を直接のパラメータとするものに限らない。例えば、力率を固定する制御を行うなら、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに電動機10を流れる電流の位相情報が含まれるため、電動機10を流れる電流を直接の入力パラメータとすることなく、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づき出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出することもできる。一方、出力指令値iCuc,iCvc,iCwcに基づきチョッパ制御を行うことで、指令電圧Vuc,Vvc,VwcへのコンデンサCu,Cv,Cwの電圧の直接的なフィードバック制御を行う場合と比較して、コンデンサCu,Cv,Cwの電荷の調節を適切に行うことができる。
【0135】
・指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づきコンデンサCu,Cv,Cwの電圧を制御すべく、電動機10の端子を流れる電流に基づきTCV及び電動機10間での電荷の流出入量を把握しつつ、チョッパ制御を行うチョッパ制御手段としては、上記各実施形態やそれらの変形例で例示したものに限らない。例えば、先の図3に示した処理によれば、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcや、相電流iMu,iMv,iMw等を入力パラメータとすることで、チョッパ制御態様を設定するためのパラメータ(オン時間tup,tun)を算出することができることがわかる。このため、これら指令電圧Vuc,Vvc,Vwcや、相電流iMu,iMv,iMw等を入力パラメータとし、チョッパ制御態様を設定するためのパラメータを出力パラメータとするマップを作成することで、これを用いてマップ演算にてチョッパ制御を行ってもよい。
【0136】
・TCVとしては、上記実施形態で例示したものに限らない。例えば先の図1に示したものにおいて、スイッチング素子Sun1,Sun2,Svn1,Svn2,Swn1,Swn2に並列にコンデンサを接続するようにしてもよい。これにより、これらのターンオフ時の電力損失を低減することができる。
【0137】
・TCVとしては、電動機10の各相に接続される非絶縁型コンバータを備えるものに限らない。例えば、絶縁型のコンバータを備えるものであってもよい。
【0138】
・回転機としては、3相電動機に限らず、例えば単相電動機や5相電動機であってもよい。この場合、TCVに代えて、各相(端子)毎にDCDCコンバータを備える電力変換回路を用いればよい。また、電動機に限らず、発電機であってもよい。
【0139】
・上記実施形態では、ハイブリッド車の動力発生装置としての回転機にTCVを接続したがこれに限らず、電気自動車の回転機に接続してもよい。
【0140】
・更に、TCVとしては、車両の動力発生装置としての回転機に接続されるものに限らず、例えば空調装置に搭載される電動機に搭載されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるスイッチング操作態様を示す回路図。
【図3】同実施形態にかかるスイッチング操作信号の設定に関する処理を示すブロック図。
【図4】同実施形態にかかるコンデンサ電圧の制御手法を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかるスイッチング素子のオン時間の設定手法を説明するためのタイムチャート。
【図6】同実施形態にかかるスイッチング処理手順を示す流れ図。
【図7】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
【図8】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図9】同実施形態にかかるスイッチング操作態様を示す回路図。
【図10】同実施形態にかかるスイッチング素子のオン時間の設定手法を説明するためのタイムチャート。
【図11】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図12】同実施形態にかかるスイッチング操作態様を示す回路図。
【図13】同実施形態にかかるスイッチング素子のオン時間の設定手法を説明するためのタイムチャート。
【図14】第4の実施形態にかかるシステム構成図。
【図15】同実施形態にかかるスイッチング操作態様を示す回路図。
【図16】同実施形態にかかるスイッチング素子のオン時間の設定手法を説明するためのタイムチャート。
【図17】第5の実施形態にかかるスイッチング素子の操作態様を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0142】
10…電動機(回転機の一実施形態)、12…高圧バッテリ(給電手段の一実施形態)、14…TCV(電力変換回路の一実施形態)、40…制御装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機に対する指令電圧とキャリアとの大小関係の比較に基づきインバータのスイッチング素子を操作することが周知である。これによれば、回転機の端子に、擬似的に正弦波形状の指令電圧を印加することができる。ただし、この場合には、インバータの出力電圧が2値的に激しく変動することに起因して、回転機の中性点電圧が大きく変動してコモンモードノイズが発生したり、サージが大きくなったりする等の不都合が生じる。
【0003】
そこで従来は、例えば下記特許文献1の図19等に見られるように、電源電圧に対してコンデンサの電圧を所望に変換するDCDCコンバータのコンデンサに3相回転機の各相の端子を接続することも提案されている。上記文献には、これによって、3相回転機の各相に正弦波形状の電圧が印加されるために、サージ電圧を抑制することができると記載されている。
【特許文献1】特開2006−136125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記文献記載の制御装置では、直流電圧を出力するDCDCコンバータの出力電圧を利用して、3相回転機に交流電圧を印加する提案がなされているのみである。しかし、DCDCコンバータは、直流電圧を出力するものであるが故に、回転機に印加する電圧を交流電圧としたり、回転機を流れる電流を交流電流としたり、更には回転機のトルクを急変させたりする場合には、3相回転機に所望の電圧を印加することが困難となるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機に印加する電圧を好適に制御することのできる回転機の制御装置及び制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について記載する。
【0007】
請求項1記載の発明は、チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置において、前記回転機に対する指令電圧に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出する電流指令値算出手段と、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値に基づき、前記チョッパ制御を行うチョッパ制御手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記発明では、蓄電手段が回転機の端子に接続されるために、回転機の端子には、蓄電手段の電圧が印加される。このため、蓄電手段の電圧を指令電圧に基づき制御することが望まれる。ここで、上記発明では、蓄電手段及び回転機側への出力電流を算出するために、蓄電手段の電圧を指令電圧に基づき制御する上で要求される出力電流を把握することができ、ひいては、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて好適に制御することができる。このため、上記発明では、回転機に印加する電圧を好適に制御することができる。
【0009】
なお、「蓄電手段及び前記回転機側への出力電流」は、「電力変換回路のうちの蓄電手段以外の回路から該回路及び前記蓄電手段間への出力電流である」ことを特徴としてもよい。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出するに際し、前記蓄電手段に接続される回転機の端子に流れる電流を加味することを特徴とする。
【0011】
回転機の端子に流れる電流は、電力変換回路と回転機との間で授受される電流である。このため、この電流は、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて制御する上での外乱要因となる。この点、上記発明では、蓄電手段及び回転機側への出力電流の指令値を算出するに際し、回転機の端子に流れる電流を加味することで、上記外乱要因をフィードフォワード制御によって補償することができる。このため、蓄電手段の制御性を向上させることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置において、前記回転機に対する指令電圧に応じて前記蓄電手段の電圧を制御すべく、前記電力変換回路及び回転機間での電荷の流出入量を把握しつつ、前記チョッパ制御を行うチョッパ制御手段を備えることを特徴とする。
【0013】
蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて制御する際には、回転機及び電力変換回路間での電荷の流出入量が外乱要因となる。このため、たとえ蓄電手段の電圧を上昇させたい場合であっても、必ずしも蓄電手段及び回転機側に電荷を供給することがチョッパ制御に対して要求されるわけではなく、回転機の端子を流れる電流によっては、蓄電手段及び回転機側から電荷を引き抜くことがチョッパ制御に対して要求されることもある。上記発明では、この点に鑑み、電力変換回路及び回転機間での電荷の流出入量を把握することで、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて制御する上で適切な態様にてチョッパ制御を行うことができる。このため、上記発明では、回転機に印加する電圧を好適に制御することができる。
【0014】
なお、「前記電力変換回路及び前記回転機間での電荷の流出入量の把握は、前記回転機の端子を流れる電流に基づき行われる」ことが望ましい。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、前記回転機に対する指令電圧及び前記回転機の端子を流れる電流に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出する電流指令値算出手段を更に備え、前記チョッパ制御手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値に基づき、前記チョッパ制御を行うことを特徴とする。
【0016】
上記発明では、蓄電手段及び回転機側への出力電流を算出するために、蓄電手段の電圧を指令電圧に基づき制御する上で要求される出力電流を把握することができ、ひいては、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて好適に制御することができる。このため、上記発明では、回転機に印加する電圧を好適に制御することができる。
【0017】
なお、「蓄電手段及び前記回転機側への出力電流」は、「電力変換回路のうちの蓄電手段以外の回路から該回路及び前記蓄電手段間への出力電流である」ことを特徴としてもよい。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1、2又は4記載の発明において、前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段の電圧と前記指令電圧との差に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、上記差を上記出力電流の指令値を算出するための入力とすることで、蓄電手段の電圧を指令電圧に基づき制御する処理を、簡易且つ適切に行うことができる。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の発明において、前記指令電圧は、交流信号であり、前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段の両端電圧間の極性を不変に保つべく、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出するに際して用いられる前記差を、所定量増加又は減少させる処理を行うことを特徴とする。
【0021】
指令電圧が交流信号である場合、これを蓄電手段の電圧の目標値とすると、指令電圧の変化に伴って蓄電手段の両電極間の極性を周期的に反転させようとする制御が働く。しかし、電力変換回路によっては極性を反転させることができないものがあり、この場合、制御が破綻する。また、たとえ電力変換回路によって極性を反転させることができたとしても、この電圧の影響を受ける素子の信頼性の低下を招いたり、電力変換回路による電圧の変換処理が円滑に行えなくなったりするおそれがある。この点、上記発明では、蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて変化させつつも極性を不変とするように制御することで、こうした問題を回避することができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1,2、4〜6のいずれか1項に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の所定期間における平均値を前記指令値に一致させるように前記チョッパ制御の態様を可変とすることを特徴とする。
【0023】
電力変換回路を流れる電流がチョッパ制御によって変動する場合、微視的なタイムスケールでは、蓄電手段及び回転機側への出力電流をその指令値とすることはできない。この点、上記発明では、蓄電手段及び回転機側への出力電流の所定期間における平均値を指令値とすることで、蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に一致させることができ、ひいては蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて制御することができる。
【0024】
請求項8記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流の漸増操作及び漸減操作の繰り返し処理を行うものであって且つ、前記漸増操作及び漸減操作の一周期において前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の平均値を前記指令値に一致させるように前記漸増操作及び漸減操作の操作態様を可変設定することを特徴とする。
【0025】
電力変換回路の備えるコイルを流れる電流がチョッパ制御によって漸増及び漸減を繰り返す場合、微視的なタイムスケールでは、蓄電手段及び回転機側への出力電流をその指令値とすることはできない。この点、上記発明では、漸増及び漸減の一周期において蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値とすることで、極力短いタイムスケールで蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に一致させることができ、ひいては蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて好適に制御することができる。
【0026】
請求項9記載の発明は、請求項7に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン・オフ操作の一周期において前記蓄電手段及び回転機側への出力電流の平均値を前記指令値に一致させるように前記スイッチング素子の操作態様を可変とすることを特徴とする。
【0027】
チョッパ制御では、通常、スイッチング素子のオン・オフ操作に伴って電力変換回路を流れる電流が変動する。そしてこの場合には、蓄電手段及び回転機側への出力電流も変動する。このため、微視的なタイムスケールでは、蓄電手段及び回転機側への出力電流をその指令値とすることはできない。この点、上記発明では、オン・オフ操作の一周期において蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値とすることで、極力短いタイムスケールで蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に一致させることができ、ひいては蓄電手段の電圧を指令電圧に応じて好適に制御することができる。
【0028】
請求項10記載の発明は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン時間を変更可能な操作量として且つ、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流量がゼロとなることで前記スイッチング素子をオフ操作からオン操作に切り替えることを特徴とする。
【0029】
上記発明では、コイルを流れる電流がゼロとなる度にスイッチング素子がオン操作されることでコイルを流れる電流が増加する。このため、スイッチング素子のオン・オフの一周期においてコイルを流れる電流や蓄電手段を流れる電流を比較的簡易に算出することができる。更に、コイルを流れる電流がゼロとなることでスイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替えるために、この際のスイッチング損失を低減することもできる。
【0030】
請求項11記載の発明は、請求項1〜10のいずれか1項に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御を行うに際し、前記蓄電手段の電圧及び前記給電手段の電圧を加味することを特徴とする。
【0031】
チョッパ制御における電流の挙動は、蓄電手段の電圧や給電手段の電圧に依存する。上記発明では、この点に鑑み、これらを入力とすることで、チョッパ制御における電流の挙動を把握することができる。このため、蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に好適に制御することができる。
【0032】
請求項12記載の発明は、請求項1〜11のいずれか1項に記載の発明において、前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御を行うに際し、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流の検出値を加味することを特徴とする。
【0033】
上記発明では、コイルを流れる電流の検出値に基づきチョッパ制御の電流の挙動を把握することができるため、蓄電手段及び回転機側への出力電流を指令値に好適に制御することができる。
【0034】
請求項13記載の発明は、請求項1〜12のいずれか1項に記載の発明において、前記電力変換回路は、非絶縁型コンバータを備えて構成されることを特徴とする。
【0035】
上記発明では、非絶縁型コンバータを用いることで、電力変換回路を小型化することができる。なお、こうした非絶縁型コンバータとしては、下記の各請求項記載の構成としてもよい。
【0036】
請求項14記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記非絶縁型コンバータは、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、該スイッチング素子同士の接続点を前記蓄電手段に接続するコイルとを備えるバックコンバータであることを特徴とする。
【0037】
請求項15記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記非絶縁型コンバータは、前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、該スイッチング素子同士の接続点を前記給電手段に接続するコイルとを備えるブーストコンバータであることを特徴とする。
【0038】
請求項16記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記非絶縁型コンバータは、前記蓄電手段の一方の端子及び前記給電手段の一方の端子を接続する一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子間の接続点を前記蓄電手段の他方の端子及び前記給電手段の他方の端子に接続するコイルとを備えるバックブーストコンバータであることを特徴とする。
【0039】
請求項17記載の発明は、請求項13記載の発明において、前記非絶縁型コンバータは、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子の接続点を前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子の接続点に接続するコイルとを備えるバックブースコンバータであることを特徴とする。
【0040】
請求項18記載の発明は、請求項1〜17のいずれか1項に記載の回転機の制御装置と、前記電力変換回路とを備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
(第1の実施形態)
以下、本発明にかかる回転機の制御装置をハイブリッド車の動力発生装置としての電動機の制御装置に適用した第1の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0042】
図1に、本実施形態の制御システムの全体構成を示す。
【0043】
電動機10は、ハイブリッド車の動力発生装置であり、ここでは、永久磁石同期モータ(PMSM)を例示している。電動機10は、電力変換回路としての3相コンバータ(TCV14)を介して、高圧バッテリ12に接続されている。ここで、高圧バッテリ12は、ニッケル水素蓄電池やリチウム蓄電池等の蓄電池である。
【0044】
上記TCV14は、電動機10の各相に接続される各別のDCDCコンバータを備えて構成され、各相に印加する電圧を連続的に調節することが可能なものである。詳しくは、本実施形態にかかるTCV14は、各相毎に、非反転形バックブーストコンバータを備えて構成されている。すなわち、U相については、上記高圧バッテリ12に並列接続されるスイッチング素子Sup1及びスイッチング素子Sun1の直接接続体と、電動機10のU相及びグランド間に接続されるコンデンサCuと、コンデンサCuに並列接続されるスイッチング素子Sup2及びスイッチング素子Sun2の直接接続体と、上記2つの直列接続体の接続点間を接続するコイルLuとを備えるDCDCコンバータを有する。ここで本実施形態では、スイッチング素子Sup1,Sun1,Sup2,Sun2として、パワーMOSFETを例示している。これら各スイッチング素子Sup1,Sun1,Sup2,Sun2には、ダイオードDup1,Dun1,Dup2,Dun2が並列接続されている。なお、並列接続されるダイオードDup1,Dun1,Dup2,Dun2は、パワーMOSFETなどのボディダイオードであってもよい。そして、TCV14は、V相、W相についても、同様の構成を有するDCDCコンバータを備えて構成されている。
【0045】
上記制御システムは、その内部の各種状態を検出するための手段として、次のものを備えている。まず、高圧バッテリ12の電圧を検出する電圧センサ20を備えている。またTCV14のU相部分については、コイルLuを流れる電流を検出する電流センサ22と、コンデンサCuの電圧を検出する電圧センサ24とを備えている。一方、TCV14のV相部分については、コイルLvを流れる電流を検出する電流センサ26と、コンデンサCvの電圧を検出する電圧センサ28とを備えている。また、TCV14のW相部分については、コイルLwを流れる電流を検出する電流センサ30と、コンデンサCwの電圧を検出する電圧センサ32とを備えている。更に、電動機10に関する状態としては、各相の電流を検出する電流センサ34,36,38を備えている。
【0046】
一方、制御装置40は、電動機10を制御対象とする制御装置であり、上記各種センサの検出値を取り込み、これらに基づき、TCV14を操作する。詳しくは、スイッチング素子Sup1、Sun2を操作する操作信号gu1、スイッチング素子Sun1,Sup2を操作する操作信号gu2、スイッチング素子Svp1、Svn2を操作する操作信号gv1、スイッチング素子Svn1,Svp2を操作する操作信号gv2、スイッチング素子Swp1、Swn2を操作する操作信号gw1、スイッチング素子Swn1,Swp2を操作する操作信号gw2を生成する。そして、これらを用いてチョッパ制御を行うことで、高圧バッテリ12の電圧を所望に変換して各コンデンサCu,Cv,Cwの電圧とする。
【0047】
図2に、本実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示す。なお、図2においては、TCV14を構成する3つのDCDCコンバータのうちの1つを示す。そして、図2においては、各素子の符号から相に対応するアルファベットを除いた符号を付する。すなわち例えば、スイッチング素子Sup1,Svp1,Swp1については、スイッチング素子Sp1と表記する。なお、図2においては、説明の便宜上、コンデンサC及びこれに接続される電動機10の端子間の電荷の流出入量が無視できるほど小さい場合を示す。
【0048】
まず初めに、図2(a)、図2(b)に基づき、コンデンサC及び電動機10側への電荷供給に際しての処理について説明する。図2(a)に示されるように、操作信号gu1の立ち上がりによって、スイッチング素子Sp1,Sn2がオン状態とされると、高圧バッテリ12、スイッチング素子Sp1、コイルL、及びスイッチング素子Sn2を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。その後、図2(b)に示されるように、操作信号gu1の立ち下がりによって、スイッチング素子Sp1,Sn2がオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL、ダイオードDp2、コンデンサC,及びダイオードDn1を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが充電される。
【0049】
次に、図2(c)、図2(d)に基づき、コンデンサC及び電動機10側からの電荷の引き抜き時に際しての処理について説明する。図2(c)に示されるように、操作信号gu2の立ち上がりによって、スイッチング素子Sp2,Sn1がオン状態とされると、コンデンサC、スイッチング素子Sp2、コイルL、及びスイッチング素子Sn1を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCの電荷が放出される。その後、図2(d)に示されるように、操作信号gu2の立ち下がりによって、スイッチング素子Sp2,Sn1がオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL,ダイオードDp1、高圧バッテリ12、及びダイオードDn2を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。
【0050】
このように、チョッパ制御によって、直流電源(高圧バッテリ12)の電圧を変換して出力することで、換言すればコンデンサCの電圧を調節することで、電動機10に印加する電圧値をアナログ値とすることができる。ただし、実際には、コンデンサC及び電動機10間での電荷の流出入に起因して、コンデンサCの電圧の上昇及び低下のそれぞれと、コンデンサC及び電動機10側への電荷の供給及び引き抜きとが1対1に対応しない。本実施形態では、こうした状況にあっても、コンデンサCの電圧を適切に制御することができるように、上記操作信号gu1,gu2,gv1,gv2,gw1,gw2を生成する。図3に、上記操作信号gu1,gu2,gv1,gv2,gw1,gw2の生成処理を示す。
【0051】
電動機10の各相の電流iMu,iMv,iMwは、2相変換部50に取り込まれる。これにより、2相変換部50では、これら3相の電流iMu,iMv,iMwを、回転2相座標系での電流であるd軸上の実電流idとq軸上の実電流iqとに変換する。一方、指令電流設定部52は、要求トルクに基づき、dq軸上の指令電流idc,iqcを設定する。偏差算出部54では、指令電流idcに対する実電流idの差を算出し、偏差算出部56では、指令電流iqcに対する実電流iqの差を算出する。指令電圧設定部58では、上記偏差算出部54,56の出力に基づき、dq軸上での指令電圧vdc、vqcを設定する。ここでは、基本的には、実電流idを指令電流idcにフィードバック制御することでd軸上の指令電圧vdcを設定し、実電流iqを指令電流iqcにフィードバック制御することでq軸上の指令電圧vqcを設定する。ここで、フィードバック制御としては、例えば比例積分制御とすればよい。ただし、本実施形態では、上記フィードバック制御に加えて、非干渉化制御をも行う。このため、指令電圧設定部58では、電動機10の回転速度ωを入力パラメータとしている。
【0052】
3相変換部60は、dq軸上の指令電圧vdc、vqcを、3相の指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに変換する。オフセット補正部62では、U相の指令電圧Vucに、オフセット電圧Δを加算する補正を行う。これは、指令電圧Vucがゼロボルトを振幅中心とする正弦波等の交流信号であるという条件下、コンデンサCuの電圧の極性を固定するためになされるものである。このようにオフセット電圧Δを加算する補正を行うことで、コンデンサCuの電圧は、図4に示されるように、オフセット電圧Δを振幅中心として変動するように制御されることとなる。なお、コンデンサCuの極性を固定するためには、オフセット電圧Δは、指令電圧Vucの振幅の最大値以上とすれば足りるが、本実施形態では、更に、振幅の最大値よりも規定電圧VLだけ高い電圧をオフセット電圧Δとしている。これは、チョッパ制御による電流の変化がコンデンサCuの電圧と高圧バッテリ12の電圧とによって定まることに鑑み、チョッパ制御の電流の変化速度を規定速度以上とするための設定である。
【0053】
先の図3において、オフセット補正された指令電圧Vucは、ガード処理部64に取り込まれる。ガード処理部64は、TCV14を構成する素子に定格を超えた電圧が印加されることを回避したり、コイルLuの飽和を回避したりすることを目的に設けられている。ガード処理部64の出力は、偏差算出部66に取り込まれる。偏差算出部66は、ガード処理部64の出力から電圧センサ24によって検出されるコンデンサCuの電圧VCuを減算する。偏差算出部66の出力は、フィードバック制御部68に取り込まれる。ここでは、比例制御がなされる。ここで、比例ゲインKは、コンデンサCuの容量と、コンデンサCuの電圧の要求変化速度とに基づき設定されるものである。フィードバック制御部68の出力は、フィードフォワード補正部70に取り込まれる。フィードフォワード補正部70では、フィードバック制御部68の出力にU相の電流iMuを加算することで、コンデンサCu及び電動機10側への出力指令値iCucを算出する。この出力指令値iCucは、コンデンサCuへの供給電流量と電動機10のU相への供給電流量との和の指令値となっている。そして、パルス幅算出部72では、出力指令値iCucや、電圧センサ20によって検出される高圧バッテリ12の電圧Vin、コンデンサCuの電圧VCuに基づき、コンデンサCu及び電動機10側への出力電流が出力指令値iCucとなるように、操作信号gu1,gu2を算出する。
【0054】
同様に、V相についても、指令電圧Vvcは、オフセット補正部74においてオフセット電圧Δにてオフセット補正された後、ガード処理部76にてガード処理が施される。そして、偏差算出部78においてはガード処理部76の出力からコンデンサCvの電圧VCuが減算され、フィードバック制御部80では、これに基づき、コンデンサCvの電圧VCuが指令電圧Vvcに基づきフィードバック制御される。そして、フィードフォワード補正部82にて、V相の電流iMvにてフィードバック制御部80の出力が補正されることで、コンデンサCv及び電動機10側への電流の出力指令値iCvcが算出される。そして、パルス幅算出部84では、出力指令値iCvcや、電圧センサ20によって検出される高圧バッテリ12の電圧、コンデンサCvの電圧VCuに基づき、コンデンサCv及び電動機10側への出力電流が出力指令値iCvcとなるように、操作信号gv1,gv2を算出する。
【0055】
同様に、W相についても、指令電圧Vwcは、オフセット補正部86においてオフセット電圧Δにてオフセット補正された後、ガード処理部88にてガード処理が施される。そして、偏差算出部90においてはガード処理部88の出力からコンデンサCwの電圧VCwが減算され、フィードバック制御部92では、これに基づき、コンデンサCwの電圧VCwが指令電圧Vwcに基づきフィードバック制御される。そして、フィードフォワード補正部94にて、W相の電流iMwにてフィードバック制御部92の出力が補正されることで、コンデンサCw及び電動機10側への電流の出力指令値iCwcが算出される。そして、パルス幅算出部96では、出力指令値iCwcや、電圧センサ20によって検出される高圧バッテリ12の電圧Vin、コンデンサCwの電圧VCwに基づき、コンデンサCw側への出力電流が出力指令値iCwcとなるように、操作信号gw1,gw2を算出する。
【0056】
次に、図5に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図5においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0057】
図5(a)は、コンデンサCu及び電動機10側への電荷供給時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tupは、スイッチング素子Sup1、Sun2のオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Sup1、Sun2がオン操作されると、先の図2(a)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流が漸増する。そして、オン時間tupが経過すると、スイッチング素子Sup1、Sun2がオフ操作されるために、先の図2(b)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sup1、Sun2を再度オン状態に切り替える。
【0058】
ここで、コンデンサCu及び電動機10側に電流が流れるのは、スイッチング素子Sup1、Sun2がオフ状態である期間であり且つ、漸減するものであるため、微視的なタイムスケールでは、この電流を出力指令値iCucとすることはできない。そこで本実施形態では、コンデンサCu及び電動機10側に出力される電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとする。そして、この所定期間を、スイッチング素子Sup1、Sun2のオン・オフ操作の一周期とする。図5(a)では、コンデンサCu及び電動機10側に供給される電荷量を、斜線部分の面積として示している。この面積がスイッチング素子Sup1、Sun2のオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくなるなら、コンデンサC及び電動機10側への実際の出力電流の一周期における平均値を、出力指令値iCucとすることができる。これは、オン時間tupを以下のように設定することで実現することができる。
【0059】
漸増及び漸減を繰り返しつつ流れるコイルLuのピーク電流Ipは、コイルLuのインダクタンスL、オン時間tup及び高圧バッテリ12の電圧Vinを用いて、以下の式にて表現される。
【0060】
Vin=L・Ip/tup …(c1)
また、このピーク電流Ipは、オフ時間toffと、コンデンサCuの電圧VCuとを用いて、以下の式にて表現される。
【0061】
VCu=L・Ip/toff …(c2)
上記の式(c1)、(c2)から、オン時間tupとオフ時間toffとの関係が下記の式(c3)となる。
【0062】
Vin/Vcu=toff/tup …(c3)
ここで、上記一周期におけるコンデンサCu及び電動機10側への供給電流の平均値は、下記の式(c4)にて表現される。
【0063】
Ip・toff/{2・(tup+toff)}
=tup・Vin・Vin/2・L・(Vin+VCu) …(c4)
これが、出力指令値iCucと等しいとすると、下記の式(c5)が得られる。
【0064】
tup=2・L・iCuc・(Vin+VCu)/(Vin・Vin) …(c5)
一方、図5(b)は、コンデンサCu及び電動機10側からの電荷の引き抜き時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tunは、スイッチング素子Sun1、Sup2のオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Sun1、Sup2がオン操作されると、先の図2(c)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流の絶対値が漸増する。ただし、コンデンサCの両電極のうちの電動機10との接続側へ流れる方向を電流の正の向きとしているために、図5(c)では、電流がゼロを下回って漸減すると記載している。そして、オン時間tunが経過すると、スイッチング素子Sun1、Sup2がオフ操作されるために、先の図2(d)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流の絶対値は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sun1、Sup2を再度オン状態に切り替える。
【0065】
ここでも、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとすべく、オン時間tunにおいてコンデンサCu及び電動機10側から引き抜かれる電荷量(斜線部分の面積)を、スイッチング素子Sun1、Sup2のオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくする。これは、オン時間tunを以下の式(c6)とすることで実現することができる。
【0066】
tun=2・L・(−iCuc)・(Vin+VCu)/(Vin・VCu) …(c6)
上記の式(c6)においては、コンデンサCu及び電動機10側に電流が流れる方向を正としているため、出力指令値iCucに「−1」を乗算することで、オン時間tunを正としている。上記の式(c5)及び式(c6)からわかるように、出力指令値iCucと、電圧Vin、VCuとを入力とすることで、オン時間tup,tunを算出することができる。ここで、オン時間tupを用いるか、オン時間tunを用いるかは、出力指令値iCucの符号によって定まる。
【0067】
図6に、本実施形態にかかるチョッパ制御の処理手順を示す。この処理は、制御装置40によって、例えば所定周期で繰り返し実行される。なお、図6においては、U相に関する処理のみを示すが、V相,W相についても同様の処理を行うことができる。
【0068】
この一連の処理では、まずステップS10において、電流センサ22によって検出される電流(コイルLuに流れる電流iLu)がゼロであるか否かを判断する。この処理は、スイッチング素子Sup1、Sun2又はスイッチング素子Sun1、Sup2をオフ状態からオン状態に切り替えるタイミングを判断するためのものである。そして、ゼロであると判断される場合には、オン状態への切り替えタイミングであることから、ステップS12に移行する。ステップS12においては、出力指令値iCucがゼロ以上であるか否かを判断する。この処理は、コンデンサCu及び電動機10側に電荷を供給すべく、スイッチング素子Sup1、Sun2をオン操作するか、コンデンサCu及び電動機10側から電荷を引き抜くべく、スイッチング素子Sun1、Sup2をオン操作するかを判断するものである。
【0069】
出力指令値iCucがゼロ以上である場合、ステップS14において、スイッチング素子Sup1、Sun2をオン操作すべく、操作信号gu1をターンオンする。続くステップS16においては、スイッチング素子Sup1、Sun2がオン状態とされる時間を計時するカウンタをインクリメントする。この処理は、カウンタの値が上記オン時間tup以上となるまで継続される(ステップS18)。そして、カウンタの値が上記オン時間tup以上となると(ステップS18:Yes)、ステップS20において、操作信号gu1をターンオフするとともに、カウンタをリセットする。
【0070】
一方、上記ステップS12において出力指令値iCucがゼロ未満と判断される場合、ステップS22において、スイッチング素子Sun1、Sup2をオン操作すべく、操作信号gu2をターンオンする。続くステップS24においては、スイッチング素子Sun1、Sup2がオン状態とされる時間を計時するカウンタをインクリメントする。この処理は、カウンタの値が上記オン時間tun以上となるまで継続される(ステップS26)。そして、カウンタの値が上記オン時間tun以上となると(ステップS26:Yes)、ステップS28において、操作信号gu2をターンオフするとともに、カウンタをリセットする。
【0071】
図7(a)に、上記処理によるコンデンサCu、Cv,Cwの電圧の制御結果を示す。図では、要求トルクを急変させることで電動機10の力行制御から回生制御へと切り替える場合におけるコンデンサCu、Cv,Cwの電圧(TCV14の出力電圧)の指令電圧Vuc、Vvc,Vwcへの追従性を示している。図示されるように、コンデンサCu、Cv,Cwの電圧は、指令電圧Vuc、Vvc,Vwc(正確には、これらをオフセット補正したもの)に好適に追従している。これに対し、図7(b)には、上記出力指令値iCucを算出せず、コンデンサCu、Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCwと指令電圧Vuc、Vvc,Vwc(正確にはこれらをオフセット補正したもの)との差に基づき、上記オン時間tup,tunを直接算出した場合を示す。この場合、コンデンサCu、Cv,Cwの電圧の指令電圧Vuc、Vvc,Vwcへの追従性が、本実施形態と比較して劣るものとなる。
【0072】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の効果が得られるようになる。
【0073】
(1)電動機10に対する指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づき、コンデンサCu,Cv,Cw及び電動機10側への出力電流の指令値(出力指令値iCuc,iCvc,iCwc)を算出し、これに基づきチョッパ制御を行った。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づき制御する上で要求される出力電流を把握することができ、ひいては、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに応じて好適に制御することができる。
【0074】
(2)出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出するに際し、コンデンサCu,Cv,Cwに接続される電動機10の各相に流れる電流iMu,iMv,iMwを加味した。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに応じて制御する上での外乱要因を、フィードフォワード制御によって補償することができる。
【0075】
(3)コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCwと指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとの差に基づき、出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出した。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCwを指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに制御する処理を、簡易且つ適切に行うことができる。
【0076】
(4)コンデンサCu,Cv,Cwの両端電圧間の極性を不変に保つべく、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCwと指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとの差に基づき出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出するに先立ち、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcをオフセット補正した。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに応じて変化させつつも極性を不変とするように制御することができるため、コンデンサCu,Cv,Cwの極性を反転させることができない非反転形バックブーストコンバータを備えて構成されるTCV14による電圧の制御性を高く維持することができる。
【0077】
(5)チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン・オフ操作の一周期においてコンデンサCu,Cv,Cw側への出力電流の平均値を出力指令値iCuc,iCvc,iCwcに一致させるようにスイッチング素子の操作態様を可変とした。これにより、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに応じて好適に制御することができる。
【0078】
(6)チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン時間tup,tunを変更可能な操作量として且つ、TCV14の備えるコイルLu、Lv,Lwに流れる電流iLu,iLv,iLwがゼロとなることでスイッチング素子をオフ操作からオン操作に切り替えた。このように、コイルLu,Lv,Lwを流れる電流がゼロとなる度にオン操作に切り替えることで、オン・オフの一周期においてコイルLu,Lv,Lwを流れる電流やコンデンサCu,Cv,Cwを流れる電流を比較的簡易に算出することができる。更に、コイルLu,Lv,Lwを流れる電流がゼロとなることでスイッチング素子をオフ状態からオン状態に切り替えるために、この際のスイッチング損失を低減することもできる。
【0079】
(7)チョッパ制御を行うに際し、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCw及び高圧バッテリ12の電圧Vinを加味した。これにより、チョッパ制御における電流の挙動を把握することができるため、コンデンサCu,Cv,Cw側への出力電流を指令値に好適に制御することができる。
【0080】
(8)TCV14を、非絶縁型コンバータを備えて構成した。これにより、TCV14を小型化することができる。
【0081】
(第2の実施形態)
以下、第2の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0082】
図8に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図8において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0083】
図示されるように、本実施形態では、DCDCコンバータとしてバックブーストコンバータを用いてTCV14を構成する。すなわち、U相においては、コンデンサCuと、高圧バッテリ12の正極端子をコンデンサCu及び電動機10のU相間の接続点に接続するスイッチング素子Su1及びスイッチング素子Su2の直接接続体と、スイッチング素子Su1及びスイッチング素子Su2の接続点をグランドに接続するコイルLuとを備えている。そして、このDCDCコンバータには、各スイッチング素子Su1,Su2に並列にダイオードDu1,Du2が並列接続されている。そして、TCV14は、V相、W相についても、同様の構成を有するDCDCコンバータを備えて構成されている。
【0084】
図9に、本実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示す。なお、図9においては、TCV14を構成する3つのDCDCコンバータのうちの1つを示す。そして、図9においては、各素子の符号から相に対応するアルファベットを除いた符号を付する。すなわち例えば、スイッチング素子Su1,Sv1,Sw1については、スイッチング素子S1と表記する。なお、図9においては、説明の便宜上、コンデンサC及びこれに接続される電動機10の端子間の電荷の流出入量が無視できるほど小さい場合を示す。
【0085】
まず初めに、図9(a)、図9(b)に基づき、コンデンサC及び電動機10側への電荷供給に際しての処理について説明する。図9(a)に示されるように、操作信号gu1の立ち上がりによって、スイッチング素子S1がオン操作されると、コンデンサC、コイルL、及びスイッチング素子S1を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが充電される。ただし、バックブーストコンバータにあっては、コンデンサCの極性を反転させる降圧処理がなされるために、これにより、コンデンサCの電圧の絶対値が低減される。その後、図9(b)に示されるように、操作信号gu1の立ち下がりによって、スイッチング素子S1がオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL、ダイオードD2、及び高圧バッテリ12を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。
【0086】
次に、図9(c)、図9(d)に基づき、コンデンサC及び電動機10側からの電荷の引き抜きに際しての処理について説明する。図9(c)に示されるように、操作信号gu2の立ち上がりによって、スイッチング素子S2がオン状態とされると、高圧バッテリ12、スイッチング素子S2、コイルLを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。その後、図9(d)に示されるように、操作信号gu2の立ち下がりによって、スイッチング素子S2がオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL,コンデンサC、及びダイオードD1を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCの電荷が放出される。換言すれば、コンデンサCは、負側で昇圧(正で降圧)される態様にて充電される。これにより、コンデンサCの電圧の絶対値を増大させることができる。
【0087】
このように、チョッパ制御によって、直流電源(高圧バッテリ12)の電圧を変換して出力することで、換言すればコンデンサCの電圧を調節することで、電動機10に印加する電圧値をアナログ値とすることができる。
【0088】
次に、図10に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図10においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0089】
図10(a)は、コンデンサCu及び電動機10側への電荷供給時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tupは、スイッチング素子Su1のオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Su1がオン操作されると、先の図9(a)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流が漸増する。そして、オン時間tupが経過すると、スイッチング素子Su1がオフ操作されるために、先の図9(b)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Su1を再度オン状態に切り替える。
【0090】
ここで、本実施形態においても、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとする。そして、この所定期間を、スイッチング素子Su1のオン・オフ操作の一周期とする。図10(a)では、この間にコンデンサCu及び電動機10側に供給される電荷量を、斜線部分の面積として示している。この面積がスイッチング素子Su1のオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくなるなら、コンデンサCu及び電動機側への実際の出力電流の一周期における平均値を、出力指令値iCucとすることができる。これは、オン時間tupを下記の式(c7)のように設定することで実現することができる。
【0091】
tup=2・L・iCuc・(Vin−VCu)/((−VCu)・Vin) …(c7)
なお、上記の式(c7)においては、コンデンサCuの両端子のうちの電動機10のU相との接続側の端子を正と定義しているために、コンデンサCuの電圧VCuに「−1」を乗算している。
【0092】
一方、図10(b)は、コンデンサCu及び電動機10側からの電荷引き抜き時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tunは、スイッチング素子Su2のオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Su2がオン操作されると、先の図9(c)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流の絶対値が漸増する。ただし、コンデンサCの両電極のうちの電動機10との接続側へ流れる方向を電流の正の向きとしているために、図10(b)では、電流がゼロを下回って漸減すると記載している。そして、オン時間tunが経過すると、スイッチング素子Su2がオフ操作されるために、先の図9(d)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流の絶対値は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Su2を再度オン状態に切り替える。
【0093】
ここでも、コンデンサCu及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとすべく、オン時間tunにおいてコンデンサCu及び電動機10側から引き抜かれる電荷量(斜線部分の面積)を、スイッチング素子Su2のオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくする。これは、オン時間tunを以下の式(c8)とすることで実現することができる。
【0094】
tun=2・L・(−iCuc)・(Vin−VCu)/(Vin・Vin) …(c8)
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果を得ることができる。
【0095】
(第3の実施形態)
以下、第3の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0096】
図11に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図11において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0097】
図示されるように、本実施形態では、DCDCコンバータとしてブーストコンバータを用いてTCV14を構成する。すなわち、U相においては、コンデンサCuと、コンデンサCuに並列接続されるスイッチング素子Sup及びスイッチング素子Sunの直接接続体と、スイッチング素子Sup及びスイッチング素子Sunの接続点を高圧バッテリ12の正極側に接続するコイルLuとを備えている。そして、このDCDCコンバータには、各スイッチング素子Sup,Sunに並列にダイオードDup,Dunが並列接続されている。そして、TCV14は、V相、W相についても、同様の構成を有するDCDCコンバータを備えて構成されている。
【0098】
図12に、本実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示す。なお、図12においては、TCV14を構成する3つのDCDCコンバータのうちの1つを示す。そして、図12においては、各素子の符号から相に対応するアルファベットを除いた符号を付する。すなわち例えば、スイッチング素子Sup,Svp、Swpについては、スイッチング素子Spと表記する。なお、図12においては、説明の便宜上、コンデンサC及びこれに接続される電動機10の端子間の電荷の流出入量が無視できるほど小さい場合を示す。
【0099】
まず初めに、図12(a)、図12(b)に基づき、コンデンサC及び電動機10側への電荷供給に際しての処理について説明する。図12(a)に示されるように、操作信号gu1の立ち上がりによって、スイッチング素子Snがオン操作されると、高圧バッテリ12、コイルL、及びスイッチング素子Snを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。その後、図12(b)に示されるように、操作信号gu1の立ち下がりによって、スイッチング素子Snがオフ状態とされると、コイルL、ダイオードDp、コンデンサC、及び高圧バッテリ12を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが充電される。
【0100】
次に、図12(c)、図12(d)に基づき、コンデンサC及び電動機10側からの電荷の引き抜きに際しての処理について説明する。図12(c)に示されるように、操作信号gu2の立ち上がりによって、スイッチング素子Spがオン状態とされると、コンデンサC、スイッチング素子Sp、コイルL,及び高圧バッテリ12を備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCの電荷が引き抜かれる。その後、図12(d)に示されるように、操作信号gu2の立ち下がりによって、スイッチング素子Spがオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL,高圧バッテリ12、及びダイオードDnを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。
【0101】
このように、チョッパ制御によって、直流電源(高圧バッテリ12)の電圧を変換して出力することで、換言すればコンデンサCの電圧を調節することで、電動機10に印加する電圧値をアナログ値とすることができる。
【0102】
次に、図13に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図13においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0103】
図13(a)は、コンデンサCu及び電動機10側への電荷供給時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tupは、スイッチング素子Sunのオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Sunがオン操作されると、先の図12(a)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流が漸増する。そして、オン時間tupが経過すると、スイッチング素子Sunがオフ操作されるために、先の図12(b)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sunを再度オン状態に切り替える。
【0104】
ここで、本実施形態においても、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとする。そして、この所定期間を、スイッチング素子Sunのオン・オフ操作の一周期とする。図13(a)では、この間にコンデンサCu及び電動機10側に供給される電荷量を、斜線部分の面積として示している。この面積がスイッチング素子Sunのオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくなるなら、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の一周期における平均値を、出力指令値iCucとすることができる。これは、オン時間tupを下記の式(c9)のように設定することで実現することができる。
【0105】
tup=2・L・iCuc・VCu/(Vin・Vin) …(c9)
一方、図13(b)は、コンデンサCu及び電動機10側からの電荷引き抜き時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tunは、スイッチング素子Supのオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Supがオン操作されると、先の図12(c)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流の絶対値が漸増する。ただし、コンデンサCの両電極のうちの電動機10との接続側へ流れる方向を電流の正の向きとしているために、図13(b)では、電流がゼロを下回って漸減すると記載している。そして、オン時間tunが経過すると、スイッチング素子Supがオフ操作されるために、先の図12(d)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流の絶対値は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Supを再度オン状態に切り替える。
【0106】
ここでも、コンデンサCu及び電動機10側への出力電流の所定期間における平均値を、出力指令値iCucとすべく、オン時間tunにおいてコンデンサCu及び電動機10側から引き抜かれる電荷量(斜線部分の面積)を、スイッチング素子Supのオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくする。これは、オン時間tunを以下の式(c10)とすることで実現することができる。
【0107】
tun=2・L・(−iCuc)・VCu/Vin・(VCu−Vin) …(c10)
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果を得ることができる。
【0108】
(第4の実施形態)
以下、第4の実施形態について、先の第1の実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
【0109】
図14に、本実施形態にかかるシステム構成図を示す。なお、図14において、先の図1に示した部材と対応する部材については、便宜上同一の符号を付している。
【0110】
図示されるように、本実施形態では、DCDCコンバータとしてバックコンバータを用いてTCV14を構成する。すなわち、U相においては、コンデンサCuと、高圧バッテリ12に並列接続されるスイッチング素子Sup及びスイッチング素子Sunの直接接続体と、スイッチング素子Sup及びスイッチング素子Sunの接続点をコンデンサCu及び電動機10の端子(U相)の接続点に接続するコイルLuとを備えている。そして、このDCDCコンバータには、各スイッチング素子Sup,Sunに並列にダイオードDup,Dunが並列接続されている。そして、TCV14は、V相、W相についても、同様の構成を有するDCDCコンバータを備えて構成されている。
【0111】
図15に、本実施形態にかかるチョッパ制御の態様を示す。なお、図15においては、TCV14を構成する3つのDCDCコンバータのうちの1つを示す。そして、図15においては、各素子の符号から相に対応するアルファベットを除いた符号を付する。すなわち例えば、スイッチング素子Sup,Svp、Swpについては、スイッチング素子Spと表記する。なお、図15においては、説明の便宜上、コンデンサC及びこれに接続される電動機10の端子間の電荷の流出入量が無視できるほど小さい場合を示す。
【0112】
まず初めに、図15(a)、図15(b)に基づき、コンデンサC及び電動機10側への電荷供給に際しての処理について説明する。図15(a)に示されるように、操作信号gu1の立ち上がりによって、スイッチング素子Spがオン操作されると、高圧バッテリ12、スイッチング素子Sp、コイルL、及びコンデンサCを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが充電される。その後、図15(b)に示されるように、操作信号gu1の立ち下がりによって、スイッチング素子Spがオフ状態とされると、コイルL、コンデンサC、及びダイオードDnを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCが更に充電される。
【0113】
次に、図15(c)、図15(d)に基づき、コンデンサC及び電動機10側からの電荷の引き抜きに際しての処理について説明する。図15(c)に示されるように、操作信号gu2の立ち上がりによって、スイッチング素子Snがオン状態とされると、コンデンサC、コイルL,及びスイッチング素子Snを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。これにより、コンデンサCの電荷が引き抜かれる。その後、図15(d)に示されるように、操作信号gu2の立ち下がりによって、スイッチング素子Snがオフ状態とされると、コイルLの逆起電力によって、コイルL,ダイオードDp、高圧バッテリ12、及びコンデンサCを備えて構成される閉ループ回路に電流が流れる。
【0114】
このように、チョッパ制御によって、直流電源(高圧バッテリ12)の電圧を変換して出力することで、換言すればコンデンサCの電圧を調節することで、電動機10に印加する電圧値をアナログ値とすることができる。
【0115】
次に、図16に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図16においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0116】
図16(a)は、コンデンサCu及び電動機10側への電荷供給時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tupは、スイッチング素子Supのオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Supがオン操作されると、先の図15(a)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流が漸増する。そして、オン時間tupが経過すると、スイッチング素子Supがオフ操作されるために、先の図15(b)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Supを再度オン状態に切り替える。
【0117】
ここで、本実施形態においても、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定時間における平均値を、出力指令値iCucとする。そして、この所定時間を、スイッチング素子Supのオン・オフ操作の一周期とする。図15(a)では、この間にコンデンサCu及び電動機10側に供給される電荷量を、斜線部分の面積として示している。この面積がスイッチング素子Supのオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくなるなら、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の一周期における平均値を、出力指令値iCucとすることができる。これは、オン時間tupを下記の式(c11)のように設定することで実現することができる。
【0118】
tup=2・L・iCuc/(Vin−VCu) …(c11)
一方、図16(b)は、コンデンサCu及び電動機10側からの電荷の引き抜き時のコイルLuに流れる電流を示している。ここで、オン時間tunは、スイッチング素子Sunのオン時間を示している。図示されるように、スイッチング素子Sunがオン操作されると、先の図15(c)に示した回路部分に電流が流れることで、コイルLuに流れる電流の絶対値が漸増する。ただし、コンデンサCの両電極のうちの電動機10との接続側へ流れる方向を電流の正の向きとしているために、図16(b)では、電流がゼロを下回って漸減すると記載している。そして、オン時間tunが経過すると、スイッチング素子Sunがオフ操作されるために、先の図15(d)に示した回路部分に電流が流れ、コイルLuの電流の絶対値は漸減する。そして、本実施形態では、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sunを再度オン状態に切り替える。
【0119】
ここでも、コンデンサC及び電動機10側への出力電流の所定時間における平均値を、出力指令値iCucとすべく、スイッチング素子Sunのオン・オフの一周期においてコンデンサCu及び電動機10側から引き抜かれる電荷量(斜線部分の面積)を、スイッチング素子Sunのオン・オフの一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくする。これは、オン時間tunを以下の式(c11)とすることで実現することができる。
【0120】
tun=2・L・(−iCuc)/VCu …(c11)
以上説明した本実施形態によっても、先の第1の実施形態の上記各効果を得ることができる。
【0121】
(第5の実施形態)
以下、第5の実施形態について、先の第4の実施形態との相違点を中心に、図面を参照しつつ説明する。
【0122】
上記第4の実施形態では、出力指令値iCuc,iCvc,iCwc、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧VCu,VCv,VCw、高圧バッテリ12の電圧Vin、及びコイルLu,Lv,Lwの電流iLu,iLv,iLwに基づき、スイッチング素子Sp,Snを操作した。これに対し、本実施形態では、出力指令値iCuc,iCvc,iCwc及びコイルLu,Lv,Lwの電流iLu,iLv,iLwに基づき、スイッチング素子Sp,Snを操作する。
【0123】
次に、図17に基づき、パルス幅算出部72、84、96の処理について詳述する。なお、図17においては、U相のパルス幅算出部72の処理を例に記載し、V相のパルス幅算出部84、W相のパルス幅算出部96については、同様の処理のためその記載を割愛する。
【0124】
図示されるように、本実施形態では、コイルLuの電流の絶対値がピーク電流Ipとなることで、スイッチング素子Sup,Sunをオン状態からオフ状態に切り替えて且つ、コイルLuを流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sup,Sunをオフ状態からオン状態に切り替える。そして、ピーク電流Ipを、出力指令値iCucの「2」倍とする。これにより、利用する入力信号の数を低減しつつも、スイッチング素子Sup,Sunのオン・オフ操作の一周期におけるコンデンサC及び電動機10側への出力電荷量(斜線部分の面積)を、同一周期にわたる出力指令値iCucの積分値に等しくすることができる。
【0125】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0126】
・上記各実施形態では、コイルL(Lu,Lv,Lw)を流れる電流がゼロとなることで、スイッチング素子Sp1,Sp2,Sn1,Sn2,Sp,Sn,S1,S2をオフ操作からオン操作に切り替えたがこれに限らない。例えば、コイルLを流れる電流が規定電流まで低下することでオフ操作からオン操作へと切り替えてもよい。この場合、上記第1〜第4の実施形態におけるオン操作時間の算出処理が複雑となるものの、同様にしてオン操作時間を算出することはできる。更に、第5の実施形態を変形する場合については、出力指令値iCuc,iCvc,iCwcの2倍の値が、ピーク電流Ipから規定電流を減算した値となるようにすればよい。
【0127】
・コンデンサ電圧VCu,VCv,VCwのフィードバック制御手法としては、上記比例制御に限らない。例えば、比例積分制御や、比例積分微分制御等であってもよい。
【0128】
・コンデンサ電圧VCu,VCv,VCwの極性を不変とすべく、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとコンデンサ電圧VCu,VCv,VCwとの差ΔVを、所定量増加又は減少させる処理としては、オフセット電圧Δによる指令電圧Vuc,Vvc,Vwcのオフセット補正に限らない。例えば、上記差ΔVを算出する前に、コンデンサ電圧VCu,VCv,VCwを、オフセット電圧Δとは逆符号の量「−Δ」にて補正してもよい。また、これに代えて、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとコンデンサ電圧VCu,VCv,VCwとの差を算出した後、これにオフセット電圧Δを加算してもよい。
【0129】
・電動機10に対する指令電圧に基づく出力指令値iCuc,iCvc,iCwcの算出手法としては、上記指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとコンデンサ電圧VCu,VCv,VCwとの差に基づくものに限らない。例えば、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcの変化量がコンデンサCu,Cv,Cwに要求される電荷量と相関を有することに鑑み、この変化量に基づき算出してもよい。この場合であっても、現在の相電流iMu,iMv,iMwを加味するなら、電動機10の制御に際して力率を可変とする場合であっても、出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを適切に算出することができる。また、こうした開ループ制御としては、他にも例えば、現在の相電流iMu,iMv,iMwや、過去の出力指令値iCuc,iCvc,iCwc等と、コンデンサCu,Cv,Cwの容量とに基づき、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を算出しつつ、これが指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとなるようにフィードフォワード制御を行ってもよい。更に、フィードフォワード制御と、これをフィードバック補正するフィードバック制御とを併せ用いてもよい。
【0130】
・コンデンサCu,Cv、Cwを流れる電流としては、相電流iMu,iMv,iMwに限らず、例えば指令電流idc,iqcを3相変換することで得られる3相の指令電流であってもよい。
【0131】
・上記各実施形態では、いずれも電流センサ22,26,30を備えてその検出値を利用したが、これに限らない。例えば、上記コンデンサCu,Cv,Cwの電圧及び高圧バッテリVinの電圧に基づき算出される電流を利用してもよい。
【0132】
・指令電圧Vuc,Vvc,Vwcとしては、dq軸上の指令電流idc,iqcに基づき算出されるものにも限らない。例えば電動機10の回転速度を指令値に制御する場合において、実際の回転速度と指令値との差に基づき算出されるものとしてもよい。
【0133】
・上記第1〜第4の実施形態において、各コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を検出する手段(電圧センサ24,28,32)を備える代わりに、電流センサ22、26、30の検出値に基づく電流の変化速度に基づき、コンデンサCu,Cv,Cwの電圧を検出してもよい。
【0134】
・指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づき上記出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出する電流指令値算出手段としては、電動機10の各相を流れる電流を直接のパラメータとするものに限らない。例えば、力率を固定する制御を行うなら、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに電動機10を流れる電流の位相情報が含まれるため、電動機10を流れる電流を直接の入力パラメータとすることなく、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づき出力指令値iCuc,iCvc,iCwcを算出することもできる。一方、出力指令値iCuc,iCvc,iCwcに基づきチョッパ制御を行うことで、指令電圧Vuc,Vvc,VwcへのコンデンサCu,Cv,Cwの電圧の直接的なフィードバック制御を行う場合と比較して、コンデンサCu,Cv,Cwの電荷の調節を適切に行うことができる。
【0135】
・指令電圧Vuc,Vvc,Vwcに基づきコンデンサCu,Cv,Cwの電圧を制御すべく、電動機10の端子を流れる電流に基づきTCV及び電動機10間での電荷の流出入量を把握しつつ、チョッパ制御を行うチョッパ制御手段としては、上記各実施形態やそれらの変形例で例示したものに限らない。例えば、先の図3に示した処理によれば、指令電圧Vuc,Vvc,Vwcや、相電流iMu,iMv,iMw等を入力パラメータとすることで、チョッパ制御態様を設定するためのパラメータ(オン時間tup,tun)を算出することができることがわかる。このため、これら指令電圧Vuc,Vvc,Vwcや、相電流iMu,iMv,iMw等を入力パラメータとし、チョッパ制御態様を設定するためのパラメータを出力パラメータとするマップを作成することで、これを用いてマップ演算にてチョッパ制御を行ってもよい。
【0136】
・TCVとしては、上記実施形態で例示したものに限らない。例えば先の図1に示したものにおいて、スイッチング素子Sun1,Sun2,Svn1,Svn2,Swn1,Swn2に並列にコンデンサを接続するようにしてもよい。これにより、これらのターンオフ時の電力損失を低減することができる。
【0137】
・TCVとしては、電動機10の各相に接続される非絶縁型コンバータを備えるものに限らない。例えば、絶縁型のコンバータを備えるものであってもよい。
【0138】
・回転機としては、3相電動機に限らず、例えば単相電動機や5相電動機であってもよい。この場合、TCVに代えて、各相(端子)毎にDCDCコンバータを備える電力変換回路を用いればよい。また、電動機に限らず、発電機であってもよい。
【0139】
・上記実施形態では、ハイブリッド車の動力発生装置としての回転機にTCVを接続したがこれに限らず、電気自動車の回転機に接続してもよい。
【0140】
・更に、TCVとしては、車両の動力発生装置としての回転機に接続されるものに限らず、例えば空調装置に搭載される電動機に搭載されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】第1の実施形態にかかるシステム構成図。
【図2】同実施形態にかかるスイッチング操作態様を示す回路図。
【図3】同実施形態にかかるスイッチング操作信号の設定に関する処理を示すブロック図。
【図4】同実施形態にかかるコンデンサ電圧の制御手法を示すタイムチャート。
【図5】同実施形態にかかるスイッチング素子のオン時間の設定手法を説明するためのタイムチャート。
【図6】同実施形態にかかるスイッチング処理手順を示す流れ図。
【図7】同実施形態の効果を示すタイムチャート。
【図8】第2の実施形態にかかるシステム構成図。
【図9】同実施形態にかかるスイッチング操作態様を示す回路図。
【図10】同実施形態にかかるスイッチング素子のオン時間の設定手法を説明するためのタイムチャート。
【図11】第3の実施形態にかかるシステム構成図。
【図12】同実施形態にかかるスイッチング操作態様を示す回路図。
【図13】同実施形態にかかるスイッチング素子のオン時間の設定手法を説明するためのタイムチャート。
【図14】第4の実施形態にかかるシステム構成図。
【図15】同実施形態にかかるスイッチング操作態様を示す回路図。
【図16】同実施形態にかかるスイッチング素子のオン時間の設定手法を説明するためのタイムチャート。
【図17】第5の実施形態にかかるスイッチング素子の操作態様を示すタイムチャート。
【符号の説明】
【0142】
10…電動機(回転機の一実施形態)、12…高圧バッテリ(給電手段の一実施形態)、14…TCV(電力変換回路の一実施形態)、40…制御装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置において、
前記回転機に対する指令電圧に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出する電流指令値算出手段と、
前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値に基づき、前記チョッパ制御を行うチョッパ制御手段とを備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出するに際し、前記蓄電手段に接続される回転機の端子に流れる電流を加味することを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置において、
前記回転機に対する指令電圧に応じて前記蓄電手段の電圧を制御すべく、前記電力変換回路及び回転機間での電荷の流出入量を把握しつつ、前記チョッパ制御を行うチョッパ制御手段を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項4】
前記回転機に対する指令電圧及び前記回転機の端子を流れる電流に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出する電流指令値算出手段を更に備え、
前記チョッパ制御手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値に基づき、前記チョッパ制御を行うことを特徴とする請求項3記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段の電圧と前記指令電圧との差に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出することを特徴とする請求項1、2又は4記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記指令電圧は、交流信号であり、
前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段の両端電圧間の極性を不変に保つべく、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出するに際して用いられる前記差を、所定量増加又は減少させる処理を行うことを特徴とする請求項5記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記チョッパ制御手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の所定期間における平均値を前記指令値に一致させるように前記チョッパ制御の態様を可変とすることを特徴とする請求項1,2,4〜6のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項8】
前記チョッパ制御手段は、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流の漸増操作及び漸減操作の繰り返し処理を行うものであって且つ、前記漸増操作及び漸減操作の一周期において前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の平均値を前記指令値に一致させるように前記漸増操作及び漸減操作の操作態様を可変設定することを特徴とする請求項7に記載の回転機の制御装置。
【請求項9】
前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン・オフ操作の一周期において前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の平均値を前記指令値に一致させるように前記スイッチング素子の操作態様を可変とすることを特徴とする請求項7に記載の回転機の制御装置。
【請求項10】
前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン時間を変更可能な操作量として且つ、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流量がゼロとなることで前記スイッチング素子をオフ操作からオン操作に切り替えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項11】
前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御を行うに際し、前記蓄電手段の電圧及び前記給電手段の電圧を加味することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項12】
前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御を行うに際し、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流の検出値を加味することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項13】
前記電力変換回路は、非絶縁型コンバータを備えて構成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項14】
前記非絶縁型コンバータは、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、該スイッチング素子同士の接続点を前記蓄電手段に接続するコイルとを備えるバックコンバータであることを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項15】
前記非絶縁型コンバータは、前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、該スイッチング素子同士の接続点を前記給電手段に接続するコイルとを備えるブーストコンバータであることを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項16】
前記非絶縁型コンバータは、前記蓄電手段の一方の端子及び前記給電手段の一方の端子を接続する一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子間の接続点を前記蓄電手段の他方の端子及び前記給電手段の他方の端子に接続するコイルとを備えるバックブーストコンバータであることを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項17】
前記非絶縁型コンバータは、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子の接続点を前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子の接続点に接続するコイルとを備えるバックブースコンバータであることを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の回転機の制御装置と、
前記電力変換回路とを備えることを特徴とする回転機の制御システム。
【請求項1】
チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置において、
前記回転機に対する指令電圧に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出する電流指令値算出手段と、
前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値に基づき、前記チョッパ制御を行うチョッパ制御手段とを備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項2】
前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出するに際し、前記蓄電手段に接続される回転機の端子に流れる電流を加味することを特徴とする請求項1記載の回転機の制御装置。
【請求項3】
チョッパ制御によって蓄電手段の電圧を給電手段の電圧に対して所望に変換して且つ、前記蓄電手段に回転機の端子が接続される電力変換回路について、これを操作することで回転機を制御する回転機の制御装置において、
前記回転機に対する指令電圧に応じて前記蓄電手段の電圧を制御すべく、前記電力変換回路及び回転機間での電荷の流出入量を把握しつつ、前記チョッパ制御を行うチョッパ制御手段を備えることを特徴とする回転機の制御装置。
【請求項4】
前記回転機に対する指令電圧及び前記回転機の端子を流れる電流に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出する電流指令値算出手段を更に備え、
前記チョッパ制御手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値に基づき、前記チョッパ制御を行うことを特徴とする請求項3記載の回転機の制御装置。
【請求項5】
前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段の電圧と前記指令電圧との差に基づき、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出することを特徴とする請求項1、2又は4記載の回転機の制御装置。
【請求項6】
前記指令電圧は、交流信号であり、
前記電流指令値算出手段は、前記蓄電手段の両端電圧間の極性を不変に保つべく、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の指令値を算出するに際して用いられる前記差を、所定量増加又は減少させる処理を行うことを特徴とする請求項5記載の回転機の制御装置。
【請求項7】
前記チョッパ制御手段は、前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の所定期間における平均値を前記指令値に一致させるように前記チョッパ制御の態様を可変とすることを特徴とする請求項1,2,4〜6のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項8】
前記チョッパ制御手段は、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流の漸増操作及び漸減操作の繰り返し処理を行うものであって且つ、前記漸増操作及び漸減操作の一周期において前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の平均値を前記指令値に一致させるように前記漸増操作及び漸減操作の操作態様を可変設定することを特徴とする請求項7に記載の回転機の制御装置。
【請求項9】
前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン・オフ操作の一周期において前記蓄電手段及び前記回転機側への出力電流の平均値を前記指令値に一致させるように前記スイッチング素子の操作態様を可変とすることを特徴とする請求項7に記載の回転機の制御装置。
【請求項10】
前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御のためのスイッチング素子のオン時間を変更可能な操作量として且つ、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流量がゼロとなることで前記スイッチング素子をオフ操作からオン操作に切り替えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項11】
前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御を行うに際し、前記蓄電手段の電圧及び前記給電手段の電圧を加味することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項12】
前記チョッパ制御手段は、前記チョッパ制御を行うに際し、前記電力変換回路の備えるコイルに流れる電流の検出値を加味することを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項13】
前記電力変換回路は、非絶縁型コンバータを備えて構成されることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の回転機の制御装置。
【請求項14】
前記非絶縁型コンバータは、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、該スイッチング素子同士の接続点を前記蓄電手段に接続するコイルとを備えるバックコンバータであることを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項15】
前記非絶縁型コンバータは、前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、該スイッチング素子同士の接続点を前記給電手段に接続するコイルとを備えるブーストコンバータであることを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項16】
前記非絶縁型コンバータは、前記蓄電手段の一方の端子及び前記給電手段の一方の端子を接続する一対のスイッチング素子と、前記一対のスイッチング素子間の接続点を前記蓄電手段の他方の端子及び前記給電手段の他方の端子に接続するコイルとを備えるバックブーストコンバータであることを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項17】
前記非絶縁型コンバータは、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子と、前記給電手段に並列接続された一対のスイッチング素子の接続点を前記蓄電手段に並列接続された一対のスイッチング素子の接続点に接続するコイルとを備えるバックブースコンバータであることを特徴とする請求項13記載の回転機の制御装置。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項に記載の回転機の制御装置と、
前記電力変換回路とを備えることを特徴とする回転機の制御システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−194964(P2009−194964A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30825(P2008−30825)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]