説明

回転電機及びそれを用いた電動パワーステアリング装置

【課題】
突極磁極間の巻線の接続数を減少させ、渡りが短く、小型軽量,高効率の集中巻永久磁石回転電機、及びそれを用いた電動パワーステアリング装置を提供する。
【解決手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、所定間隔に配列された永久磁石磁極と、前記永久磁石磁極からなる永久磁石界磁部と、所定間隔に配列されたM個の突極磁極と、前記突極磁極に集中的に巻回され、且つ多相接続された電機子巻線と、前記電気子巻線を有する電機子とを少なくとも有し、前記永久磁石界磁の移動位置に応じて前記電機子巻線へ流す電流を制御し、前記永久磁石界磁にトルクを発生するために、前記永久磁石磁極の極数であるPと前記突極磁極の極数Mは、(2/3)M<P<(4/3)M(但しM≠P)の関係にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に係り、特に、車両用であり、ステアリング機構をアシストまたは駆動するための電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃費低減,操作性向上のために、自動車内の操作装置,駆動装置等の電動化が進められている。常時、駆動エネルギーを消費する従来の油圧を用いた方式より必要なときのみ駆動エネルギーを消費する電動システムの方式が採用される方向にある。例えば、空気量を制御するスロットルアクチュエータ,制動力を制御するブレーキ装置,ステアリング機構をアシストするまたは駆動するパワーステアリング装置,変速機の変速制御を行う自動変速装置等が代表的なものである。これらに使用される回転電機は、従来、直流機が主に使用されていたが、小型化の観点から集中巻永久磁石回転電機が使用されようとしている。
【0003】
この種の集中巻永久磁石回転電機においては、搭載スペースの観点から小型軽量であること、高負荷での運転時間の確保のために高効率であること、操作性向上のためにコギングトルクの小さいことなどが要求される。
【0004】
この要求を満たすように、回転電機の構造は、永久磁石,集中巻,分割鉄心が採用され、永久磁石の極数と突極磁極数の適切な選択等によって実現できる。この種の集中巻永久磁石回転電機の公知技術として、特開昭62−110468号,特開2003−250254号に開示がある。
【0005】
これらの公知技術によれば、集中巻によりエンドコイル長が短縮でき、かつ、永久磁石の極数と突極磁極数を適切に選択することにより、コギングトルクおよび、磁石渦電流の低減をさせ、操作性のよい集中巻永久磁石回転電機にすることができることが開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭62−110468号公報
【特許文献2】特開2003−250254号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の公知技術によれば、ある程度の小型軽量化,高効率化、また、コギングトルクの小さい集中巻永久磁石回転電機を実現できるが、集中巻電機子巻線の接続については従来の各突極磁極が電機子巻線ごと、あるいは、各相に属する巻線ごとにあるので、接続点数が依然、多いままであり、よりいっそうの小型軽量化,高効率化を困難にする等の課題がある。
【0008】
本発明は、これらの課題を解決するための電機子巻線の巻線接続に関するもので、その目的は、渡り線が短く、それによって小型軽量,高効率化を達成できる集中巻永久磁石回転電機、及びそれを用いた小型軽量,操作性のよい電動パワーステアリング装置の提供である。
【0009】
また、本発明の他の目的は、集中巻永久磁石回転電機に係わり、特に、突極磁極間の巻線の接続数を減少させ、渡りが短く,小型軽量,高効率の集中巻永久磁石回転電機、及びそれを用いた電動パワーステアリング装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、所定間隔に配列された永久磁石磁極と、前記永久磁石磁極からなる永久磁石界磁部と、所定間隔に配列されたM個の突極磁極と、前記突極磁極に集中的に巻回され、且つ多相接続された電機子巻線と、前記電気子巻線を有する電機子とを少なくとも有し、前記永久磁石界磁の移動位置に応じて前記電機子巻線へ流す電流を制御し、前記永久磁石界磁にトルクを発生するために、前記永久磁石磁極の極数であるPと前記突極磁極の極数Mは、(2/3)M<P<(4/3)M(但しM≠P)の関係にあることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明では、前記電機子巻線のうち1つの相の巻線を巻回し、連続的に他の相の巻線を巻回した前記電機子巻線を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、隣り合う電機子巻線間の周方向間隔を同相となるところでは短く、異相となるところでは長くなるように巻回した電機子巻線を有することを特徴とする。
【0013】
また、前記電機子巻線の半径方向の巻線厚みを半径方向位置で変えた電機子巻線を有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の集中巻永久磁石回転電機は、電動パワーステアリング装置に適用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本実施の形態によれば、突極磁極間の巻線の接続数を減少させ、渡りが短く、小型軽量,高効率の集中巻永久磁石回転電機、及びそれを用いた電動パワーステアリング装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照し、説明する。
【0017】
(第1実施例)
以下に、本発明の第1の実施例を示す。
【0018】
図1は、本発明による集中巻永久磁石回転電機の突極磁極と電機子巻線とを展開した接続を示す一実施例である。
【0019】
図2は、集中巻永久磁石回転電機を軸方向に対して垂直に見た断面図である。
【0020】
図3は、本発明の集中巻永久磁石回転電機の軸方向に沿った断面図である。
【0021】
図1〜図3を同時に参照して説明する。
【0022】
図1は、特に、突極磁極42と電機子巻線5とを周方向に展開し、その巻線の接続を示したものである。ここでは、本発明の効果を最も特徴的に適用できる一実施例として、集中巻固定子の突極磁極数は9,永久磁石回転子の極数は10の例で説明する。これを回転電機に示したものが図2となる。
【0023】
図3において、集中巻永久磁石回転電機1は、固定子2と、回転子3と、エンドブラケット9とを含み構成される。
【0024】
固定子2は、固定子鉄心4と電機子巻線5とを含み構成される。ここで、固定子鉄心4は、円環状の固定子ヨーク部41と突極磁極42とからなり、突極磁極42と突極磁極
42との間には、電機子巻線5を収納するスロット43が設けられている。
【0025】
一方、回転子3は、1磁極間隔に着磁された永久磁石6,磁性体からなる回転子鉄心7とシャフト8とを含み構成される。また、回転子3は、回転子鉄心7に嵌挿したシャフト8を介して、エンドブラケット9に嵌挿したベアリング10にて回転可能に保持される構成である。
【0026】
ここでは、固定子鉄心4の外周にフレームが無い構成で示したが、必要によってはフレームを用いてもよい。
【0027】
回転子3のシャフト8上には、回転子3の位置を検出する磁極位置検出器PS,位置検出器Eが備えられている。ここで、電機子巻線5のU相にはU1+,U2-,U3+が、V相にはV1+,V2-,V3+が、W相にはW1+,W2-,W3+がそれぞれ配置される。
【0028】
なお、添字の1は電機子巻線番号、+,−は電機子巻線5の巻き方向を示すものである。また、本実施例の場合は、3相巻線で、回転子の極数に合わせて一相当たり3突極の例を示した。
【0029】
本発明が対象とする集中巻永久磁石回転電機1は1相に属する電機子巻線5のうち、永久磁石回転子に対する位相が少なくとも一つは異なる配置となる構成に特徴がある。たとえば、U相ではU1+,U2-,U3+、V相ではV1+,V2-,V3+、W相ではW1+,W2-,
W3+のうち、永久磁石回転子に対する位相が少なくとも一つは異なる配置となっている。図1または図2から、U相においてはU1+とU2-間では電気角で180+20、U1+と
U3+の電機子巻線5間では電気角で40度の位相差を有するものである。
【0030】
ちなみに、本発明の集中巻永久磁石回転電機では、コギングトルクの1回転あたりの脈動数は90,巻線係数0.946 である。これに対して、例えば、産業界で多く使用されている集中巻固定子で突極磁極数が9、永久磁石回転子の極数が6の集中巻永久磁石回転電機の場合、コギングトルクの1回転あたりの脈動数は18、巻線係数0.866 である。両者を比較すると、本発明の集中巻永久磁石回転電機ではコギングトルクの1回転あたりの脈動数は高く、巻線係数は高くなるので、コギングトルクは同一条件では1回転あたりの脈動数に反して小さくなり、またトルクもほぼ巻線係数に応じて大きくなるので低コギングトルク,小型軽量,高効率のモータであることがわかる。このような構成は、自動車用のアクチュエータ、例えば、電動パワーステアリングに好適な回転電機である。
【0031】
図3において、永久磁石回転子3は位置を検出する磁極位置検出器PS,位置検出器Eによって検出された回転子位置に応じて、電機子巻線5に3相の電流を加えることによって回転磁界を発生させる。この回転磁界と回転子3の永久磁石界磁の間に磁気的な吸引,反発力を発生させて連続的な回転力を発生させるものである。ここで、電流の位相を適切に選択することによって最大のトルクで運転することが可能である。
【0032】
ここで、固定子鉄心4を構成する固定子ヨーク部41と突極磁極42とはそれぞれ図示のように個別に分割されているものとする。更に固定子ヨーク部41は必要に応じて周方向に複数に分割する構成でも可能である。このように分割鉄心を使用することによって電機子巻線5を整列に巻回でき、高占積率の巻線とすることで集中巻永久磁石回転電機を小型軽量化することができる。
【0033】
次に、図1によって本発明の要部の説明を行う。集中巻永久磁石回転電機1の固定子2の突極磁極42は周方向にそれぞれU相巻線U1+,U2-,U3+、V相巻線V1+,V2-,
V3+、W相巻線W1+,W2-,W3+が配列されている。
【0034】
図1の9個の電機子巻線の接続法は、例えば、図示したデルタ結線にできる。自動車用の集中巻永久磁石回転電機では、駆動電源がバッテリであるために、12Vと低い。従ってスター結線に比較してデルタ結線では電機子巻線5の端子電圧が√3倍増加することができる。それによって同一出力では相電流を小さくできるために電機子巻線の径を小さくすることができる。なお、バッテリ電圧をより高電圧のものにした場合は、スター結線でもよく、また、スター結線とデルタ結線を組み合わせてもよい。
【0035】
先のデルタ結線の実施例では、巻線作業をし易くすることができ、スロット内における電機子巻線の占積率を向上させることができる。これによって高効率の集中巻永久磁石回転電機1を提供できる。
【0036】
図1において、巻線作業は、1本の線によって、U相巻線U1+,U2-,U3+、V相巻線V1+,V2-,V3+、W相巻線W1+,W2-,W3+の順で図示のように連続的に巻回される。ここで、集中巻永久磁石回転電機1の引き出し線部であるVU,UW,WVは図示のように形つけられて外部との接続を容易にすることができる。ここで、引き出し線部である
VU,UW,WVの構成はそれぞれ導電性から構成されたモータ引き出し端子に巻線を巻き付けた後、モータ引き出し端子を巻線に圧着して接続する方法でもよい。
【0037】
以上の構成によれば、すべての電機子巻線5は隣り合う巻線間の接続ですむために巻線間隔も短くできる。また、各突極磁極の電機子巻線5をすべて切り離して接続すると1相当たり6カ所で、3相では18カ所となるのに対して、本発明では、UW,WV間が1カ所、VU間から2カ所の計4カ所の接続で済み、接続箇所を大幅に低減でき、電工作業を大幅に低減することができる。これは、接続部に起因する抵抗損失を大幅に低減することができて効率向上をもたらすことができる。
【0038】
また、固定子2の組み立て法として、電機子巻線5を最初に1本の電線から連続巻きとして円形状にU相巻線U1+,U2-,U3+、V相巻線V1+,V2-,V3+、W相巻線W1+,
W2-,W3+の順で作り、それを円形に整形固着した後、突極磁極42をそれぞれの電機子巻線5に挿入し、さらに電機子巻線5と突極磁極42全体とを固定子ヨーク部41に挿入して固定子2を製作することも可能である。
【0039】
この場合には、部品点数の少ないコイル製作を予め行うことによってコイルの製作精度は向上し、これによってたとえば、円形電線に外部から圧力をかけて若干潰して制作することも可能になり、電機子巻線5の占積率は向上し、高効率のモータとすることができる。
【0040】
この場合には、たとえば、電機子巻線5には熱融着巻線を使用することで一層その効果を上げることができる。例えば、圧着しながら熱を加えて固定させることによって電機子巻線5の占積率を向上させることができる。さらに、一つのスロット43の中に異なる相の巻線が混在する電機子巻線5の境に相関絶縁紙を配置すれば、成型圧力を高めることができ、一層、高占積率にすることが可能になる。
【0041】
以上の実施例について、電機子巻線5間の周方向間隔を一定として構成したが、同一の相に属する電機子巻線間(例えばU相巻線U1+とU2-間、U2-とU3+間、V相巻線V1+とV2-、V2-とV3+間、W相巻線W1+とW2-、W2-とW3+間)の電位差は小さいので周方向の間隔を短くすることが可能であり、相隣り合う電機子巻線5間が異なる相(例えばU3+とV1+、V3+とW1+、W3+とU1+間)の間では電位差が大きいので周方向の間隔をながくすることが信頼性を高めつつ、回転電機のトルク密度を高めることができる利点がある。
【0042】
さらに、電機子巻線5間が異なる相の間では相間の絶縁を施すことによってさらに信頼性を向上した構成とすることが可能である。
【0043】
以上、本発明の実施例での構造は集中巻固定子で突極磁極数は9,永久磁石回転子の極数は8の例で示したが、これに限定されるものでなく、突極磁極数はM、永久磁石回転子の極数はPとするとM:P=3n:3n±1(nは正の整数)の構成の集中巻永久磁石回転電機にも適用可能である。例えば、同一の固定子で永久磁石の固定子を8とすることも可能である
【0044】
(第2実施例)
図4,図5に本発明の集中巻永久磁石回転電機の他の実施例を示す。
【0045】
ここでは、本発明の効果を特徴的に適用できる一実施例として、集中巻固定子で突極磁極数は12,永久磁石回転子の極数は10の例で説明する。
【0046】
図4において、電機子巻線5のU相にはU1+,U1-,U2+,U2-、V相にはV1+,V1-,V2+,V2-、W相にはW1+,W1-,W2+,W2-が図示のごとくそれぞれ配置される。また、本実施例の場合は、回転子の極数に合わせて一相当たり4突極となる。
【0047】
上記の構成では、U相の場合、電機子巻線U1+とU1-間では180−30、U1+とU2+では電気角で30度、U1+とU2-間では180度と位相が異なり、図1と同様、1相に属する電機子巻線の位相が少なくとも一つは永久磁石回転子に対して異なる配置を有する集中巻永久磁石回転電機である。従って、この構成もコギングトルクの低減、電機子巻線5の巻線係数の増加が期待できる集中巻永久磁石回転電機である。
【0048】
ちなみに、図示したように、本実施例の構成における集中巻永久磁石回転電機では、コギングトルクの1回転あたりの脈動数は60、巻線係数0.933 となる。これに対して、例えば産業界で広く使用されている集中巻固定子で突極磁極数は12、永久磁石回転子の極数は8の集中巻永久磁石回転電機の場合、コギングトルクの1回転あたりの脈動数は24、巻線係数0.866 となる。比較すると本実施例の構成のほうがコギングトルクの1回転あたりの脈動数は高く、巻線係数は高くなる、または、高くすることができる。コギングトルクは同一条件では1回転あたりの脈動数に反比例して小さくなり、またトルクもほぼ巻線係数に応じて大きくなるので、低コギングトルク,小型軽量,高効率のモータを実現できる。
【0049】
次に、図4,図5によって本発明の要部の説明を行う。
【0050】
集中巻永久磁石回転電機1の固定子2の突極磁極42は周方向にそれぞれU相巻線U1+,U1-、W相巻線W2-,W2+、V相巻線V1+,V1-、U相巻線U2-,U2+、W相巻線にはW1+,W1-、V相巻線V2-,V2+の順に配置される。
【0051】
図5の12個の電機子巻線の接続法は図示のようにデルタ結線で示す。前述のように自動車用の集中巻永久磁石回転電機では駆動電源がバッテリで12Vと低い。従ってスター結線に比較してデルタ結線では電機子巻線5の端子電圧が√3倍増加することができる。それによって同一出力では相電流を小さくできるために電機子巻線の径を小さくすることができる。このことは巻線作業をし易くすることができ、スロット内における電機子巻線の占積率を向上させることができる。これによって高効率の集中巻永久磁石回転電機1を提供できる。
【0052】
図5において、巻線作業は、1本の線によって、U相巻線U1+,U1-、W相巻線W2-,W2+、V相巻線V1+,V1-、U相巻線U2-,U2+、W相巻線にはW1+,W1-、V相巻線
V2-,V2+の順で図示のように連続的に巻回することができる。ここで、集中巻永久磁石回転電機1の引き出し線部であるVU,UW,WVへの各線の接続は接続板11を利用して行うことによって達成できる。
【0053】
導電性の材料(例えば銅)によって円環上に作られた接続板11を電機子巻線5の軸方向に配置し、その外周部に電機子巻線5への接続を可能にする接続部(図示せず)をもうけることによって達成できる。図中、下部の渡り線がそれを示す。このようにすることで各相とも図中の接続図で示すようにU相巻線U1+,U1-とU2-,U2+、V相巻線V1+,
V1-とV2-,V2+、W相巻線にはW1+,W1-とW2-,W2+とを並列に配置することができる。
【0054】
本実施例の構成では、各相2つの並列回路を有するために1本あたりの電機子巻線5の導体径を下げることができ(例えばφ2→φ1.4 )、従って巻線作業を楽にできることによって電機子巻線5のスロット43内における占積率を高め、より小型軽量,高効率のモータとすることができる。
【0055】
ここで、引き出し線部であるVU,UW,WVの構成はそれぞれ導電性から構成されたモータ引き出し端子に巻線を巻き付けた後、巻線を圧着して接続する方法も考えられる。
【0056】
以上の構成によれば、すべての電機子巻線5は隣り合う巻線間の接続ですむために巻線間隔も短くできる。また、各突極磁極の電機子巻線5をすべて切り離して接続すると1相当たり8カ所で、3相では24カ所となるのに対して、本発明では、各相とも2カ所ずつで計6カ所の接続で済む。これによって、接続箇所を大幅に低減でき、電工作業を大幅に低減することができる。これは、接続部に起因する抵抗損失を大幅に低減することができて効率向上をもたらすことができる。
【0057】
また、固定子2の組み立て法として、電機子巻線5を最初に1本の電線から連続巻きとして円形状にU相巻線U1+,U1-、W相巻線W2-,W2+、V相巻線V1+,V1-、U相巻線U2-,U2+、W相巻線にはW1+,W1-、V相巻線V2-,V2+の順で作り、それを円形に整形固着した後、突極磁極42をそれぞれの電機子巻線5に挿入し、さらに電機子巻線5と突極磁極42全体とを固定子ヨーク部41に挿入して固定子2を製作することも可能である。
【0058】
この場合にも、部品点数の少ないコイル製作を予め行うことによってコイルの製作精度は向上し、これによってたとえば、円形電線に外部から圧力をかけて若干潰して制作することにより、電機子巻線5の占積率は向上し、高効率のモータとすることができる。
【0059】
また、電機子巻線5には熱融着巻線を使用することで一層その効果を上げることができる。さらに、一つのスロット43の中に異なる相の巻線が混在する電機子巻線5の境に相関絶縁紙を配置することによって成型圧力を高めることができ、一層、高占積率を向上させることが可能になる。
【0060】
なお、バッテリ電圧が12Vであるために、本実施例では、デルタ結線を並列に接続するようにしたが、より高いバッテリ電圧であれば、デルタ結線とスター結線との組み合わせやスター結線の並列接続であってもよい。
【0061】
(第3実施例)
図6に本発明の集中巻永久磁石回転電機の他の実施例を示す。
【0062】
ここでは、図4に示した、集中巻固定子で突極磁極数は12、永久磁石回転子の極数は10の例をスター結線にした例を示す。
【0063】
図6において、巻線作業は、1本の線によって、U相巻線U1+,U1-、W相巻線W2-,W2+を連続で接続する。またV相巻線V1+,V1-、U相巻線U2-,U2+を連続で接続する。さらにW相巻線にはW1+,W1-、V相巻線V2-,V2+を連続で接続する。ここで、集中巻永久磁石回転電機1の引き出し線部であるU,V,Wへの各線の接続は接続板11を利用して行う。
【0064】
導電性の材料(例えば銅)によって円環上に作られた接続板11を軸方向に配置し、その外周部に電機子巻線5への接続を可能にする接続部をもうけることによって達成できる。図中、下部の渡り線がそれを示す。このようにすることで各相とも図中の接続図で示すようにU相巻線U1+,U1-とU2-,U2+、V相巻線V1+,V1-とV2-,V2+、W相巻線にはW1+,W1-とW2-,W2+とを並列にかつスター結線が配置することができる。
【0065】
ここで、図5の実施例と異なり、接続板11は中性点の接続板が図示のように必要になる。
【0066】
以上の構成によれば、各突極磁極の電機子巻線5をすべて切り離して接続すると1相当たり8カ所で、3相で24カ所となるのに対して、本発明では、各相とも3カ所ずつで計9カ所の接続で済む。これによって、接続箇所を大幅に低減でき、電工作業を大幅に低減することができる。これは、接続部に起因する抵抗損失を大幅に低減することができて効率向上をもたらすことができる。
【0067】
以上の効果は、電機子巻線5のうち1つの相の巻線を行った後、連続的に他の相に属する電機子巻線5を巻回することによって達成できる。
【0068】
以上、本実施例の構造は、集中巻固定子で突極磁極数は12、永久磁石回転子の極数は10の例で示したが、これに限定されるものでなく、突極磁極数はM、永久磁石回転子の極数はPとするとM:P=6n:6n±2(nは正の整数)の構成の集中巻永久磁石回転電機にも適用可能である。
【0069】
なお、本発明の集中巻永久磁石回転電機1として、以上の構造に限定されるものではなく、例えば、図1と異なる永久磁石極数,突極磁極数を有する集中巻永久磁石回転電機でも良いことは言うまでもない。
【0070】
図7にさらに一層トルク密度の向上が期待できる電機子巻線5の構成を示す。ここでは電機子巻線5の半径方向の厚さを外周側で小さく、内周側で大きくした構成を示す。電機子巻線を図示のように1列に配置する場合、電機子スロット43の形状に合わせると、電機子巻線5の周方向長さは内径側で短く、外形側で長くなる。一方、温度均一化のために導体の電流密度を合わせる、つまり、導体の面積を一定にすると電機子巻線5は半径方向の厚さh1,h2,h3,h4,h5,h6はh1<h2<h3<h4<h5<h6になればよい。この実現はたとえば、巻線の半径方向の位置に応じて電機子巻線を半径方向に潰す工程を入れることによって可能である。内周側を巻く位置と外周側を巻く位置で電機子巻線5にかける力を変えることによってその厚さを調整することができる。
【0071】
さらに上記は次の方法によっても実現できる。
【0072】
例えば丸線で1列に巻回した後、電機子巻線5の突極磁極42と周方向反対側にあて板を傾斜をつけて配置し、半径方向上部より電機子巻線5に圧力とかけることによって電機子巻線5を図示の形状に変形させることができる。本発明の内容は電機子巻線5の外周側の厚さを内周側の厚さより小さくすることによって達成できるが、図示したような内側から外側に向って厚み又は偏平率が変化する形状、特に薄くなる、偏平率が大きくなるような形状の場合には最適に達成できる。
【0073】
また、図7では、周方向1列の巻線配置で示したが、これによらず、複数列の配置でも達成でき、また、丸線を基本としたが、平角線を基調としても同様な効果が得られることは当然である。
【0074】
図8は本発明の実施の形態による電動パワーステアリング装置のブロック構成図である。
【0075】
電動パワーステアリング装置100においては、ドライバのハンドル101の操作はステアリングシャフト102,トルクセンサ103を介してコントローラ105に感知され、これに基づいてバッテリ106,コントローラ105,集中巻永久磁石回転電機1,減速機104によってラックアンドピニオンギヤ107を介してタイヤ108にトルクを発生し、ドライバの操作のアシストを行う。
【0076】
これによってタイヤ108を所望の運転方向に向けることができる。
【0077】
ここで、本発明では、コギングトルクの小さい、小型軽量,高効率の集中巻永久磁石回転電機を用いることによって、操作性の良い、コンパクトな電動パワーステアリング装置を提供できる。
【0078】
以上は電動パワーステアリング装置について説明したが、特に自動車に使用される集中巻永久磁石回転電機のうち、特に減速機,集中巻永久磁石回転電機を用いて位置決めしようする装置、例えば電動スロットル装置,自動変速機装置,電動ブレーキ装置等は本発明の集中巻永久磁石回転電機を使用することによって位置決め精度の向上によるシステム性能の向上,システムの小型軽量化等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の集中巻永久磁石回転電機の実施例。
【図2】本発明の集中巻永久磁石回転電機の実施例。
【図3】本発明の集中巻永久磁石回転電機の断面図。
【図4】本発明の集中巻永久磁石回転電機の他の実施例。
【図5】本発明の集中巻永久磁石回転電機の他の実施例。
【図6】本発明の集中巻永久磁石回転電機の他の実施例。
【図7】本発明の集中巻永久磁石回転電機の他の実施例。
【図8】本発明の集中巻永久磁石回転電機を搭載した電動パワーステアリング装置。
【符号の説明】
【0080】
1…集中巻永久磁石回転電機、2…固定子、3…回転子、4…固定子鉄心、5…電機子巻線、6…永久磁石、7…回転子鉄心、8…シャフト、9…エンドブラケット、10…ベアリング、11…接続板、41…固定子ヨーク部、42…突極磁極、43…スロット、
100…電動パワーステアリング装置、101…ハンドル、102…ステアリングシャフト、103…トルクセンサ、104…減速機、105…コントローラ、106…バッテリ、107…ラックアンドピニオンギヤ、108…タイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定間隔に配列された永久磁石磁極と、前記永久磁石磁極からなる永久磁石界磁部と、所定間隔に配列されたM個の突極磁極と、前記突極磁極に集中的に巻回され、且つ、多相接続された電機子巻線と、前記電気子巻線を有する電機子とを少なくとも有し、前記永久磁石界磁の移動位置に応じて前記電機子巻線へ流す電流を制御し、前記永久磁石界磁にトルクを発生するために、前記永久磁石磁極の極数であるPと前記突極磁極の極数Mは、
(2/3)M<P<(4/3)M(但しM≠P)の関係にあることを特徴とする集中巻永久磁石回転電機。
【請求項2】
請求項1において、前記電機子巻線のうち1つの相の巻線を巻回し、連続的に他の相の巻線を巻回した前記電機子巻線を有することを特徴とする集中巻永久磁石回転電機。
【請求項3】
請求項1において、隣り合う前記電機子巻線間の周方向間隔が同相となるところでは短く、異相となるところでは長くなるように巻回した電機子巻線を有することを特徴とする集中巻永久磁石回転電機。
【請求項4】
請求項1において、前記電機子巻線の半径方向の巻線厚みを半径方向位置で変えた電機子巻線を有することを特徴とする集中巻永久磁石回転電機。
【請求項5】
請求項1において、前記永久磁石の磁極数Pと前記突極磁の極数Mとの関係は3n:
3n±1(nは正の整数)であることを特徴とする集中巻永久磁石回転電機。
【請求項6】
請求項1において、前記永久磁石の磁極数Pと前記突極磁の極数Mとの関係は6n:
6n±2(nは正の整数)であることを特徴とする集中巻永久磁石回転電機。
【請求項7】
請求項1において、前記電機子巻線はデルタ結線であることを特徴とする集中巻永久磁石回転電機。
【請求項8】
請求項3において、前記異相となって接する電機子巻線間に相間絶縁を施したことを特徴とする集中巻永久磁石回転電機。
【請求項9】
車両用のステアリング機構をアシスト又は駆動するステアリング装置であって、
所定間隔に配列された永久磁石磁極と、前記永久磁石磁極からなる永久磁石界磁部と、所定間隔に配列されたM個の突極磁極と、前記突極磁極に集中的に巻回され、且つ、多相接続された電機子巻線と、前記電気子巻線を有する電機子とを少なくとも有し、前記永久磁石磁極の極数であるPと前記突極磁極の極数Mは、(2/3)M<P<(4/3)M(但しM≠P)の関係を満たす集中巻永久磁石回転電機と、
前記永久磁石界磁の移動位置に応じて前記電機子巻線へ流す電流を制御する制御部とを有し、
前記永久磁石界磁にトルクを発生させてステアリングを駆動又はアシストすることを特徴とするステアリング装置。
【請求項10】
請求項9において、前記集中巻永久磁石回転電機は、前記電機子巻線のうち1つの相の巻線を巻回し、連続的に他の相の巻線を巻回した前記電機子巻線を有することを特徴とするステアリング装置。
【請求項11】
請求項9において、前記集中巻永久磁石回転電機は、隣り合う前記電機子巻線間の周方向間隔が同相となるところでは短く、異相となるところでは長くなるように巻回した電機子巻線を有することを特徴とするステアリング装置。
【請求項12】
請求項9において、前記集中巻永久磁石回転電機は、前記電機子巻線の半径方向の巻線厚みを半径方向位置で変えた電機子巻線を有することを特徴とするステアリング装置。
【請求項13】
請求項9において、前記集中巻永久磁石回転電機は、前記永久磁石の磁極数Pと前記突極磁の極数Mとの関係が3n:3n±1(nは正の整数)であることを特徴とするステアリング装置。
【請求項14】
請求項9において、前記集中巻永久磁石回転電機は、前記永久磁石の磁極数Pと前記突極磁の極数Mとの関係が6n:6n±2(nは正の整数)であることを特徴とするステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−191757(P2006−191757A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1994(P2005−1994)
【出願日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】