説明

固体電池スタック

【課題】集合電池に均一な拘束圧を付与して活物質の欠落を防止すると共に、高出力化・高容量化が可能な固体電解質二次電池スタックを提供する。
【解決手段】固体電解質層を介して積層された正極シートおよび負極シートの積層体が軸心の周りに捲回されて発電部10とされ、該発電部10の断面形状が六角形状とされるとともに、該発電部10は複数束ねられて筐体20内に収容されて固体電解質二次電池スタックとなる。発電部10の側面は可撓性フィルムにより覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は角型固体電池のスタック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の観点から、低公害車としての電気自動車やハイブリッド自動車等に適用するべく、高性能な二次電池が必要とされている。また、二次電池の高出力化及び高容量化に伴って、安全性の向上も一層要求されている。
【0003】
二次電池は、正極及び負極と、これらの間に配置される電解質とが備えられた発電部における電気化学反応によって、外部に電気エネルギーが取り出し可能とされる。電解質層は、非水系の液体電解質又は固体電解質によって構成されており、このうち、特に固体電解質を用いた場合、当該固体電解質が本質的に不燃であるため、安全性の向上を図り易い。
【0004】
一方、二次電池の高出力化及び高容量化には、発電部自体の構成を工夫し、発電部のエネルギー密度を増大させることが有効である。例えば、特許文献1に記載されているように、正負極及び固体電解質層を有する帯状の積層体を基板に捲回して捲回体とすることによって、エネルギー密度が増大された発電部が得られるものと考えられる。捲回体の形態としては、この他特許文献2や特許文献3に記載されたような形態も考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−319449号公報
【特許文献2】特開平9−266012号公報
【特許文献3】特開2001−236996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、二次電池をさらに高出力化、高容量化させるには、複数の発電部をスタックとすることが考えられるが、特許文献1〜3に係る発電部(単電池)については、発電部(単電池)をスタックとすることについて考慮されていない。また、上記のような捲回された発電部は、活物質と電解質との接触界面を増大させるとともに、負極、電解質及び正極の接触界面について密着性を向上させるために、発電部に拘束圧を付与する必要がある。しかしながら、特許文献1に係る発電部においては、圧力を加えた際、曲率が小さい部分に応力が集中し、曲率の大きな端部には均一に応力を付与することができず、活物質等の欠落や発電性能の低下を生じさせる虞があった。特に、捲回量(巻き数)を多くした場合、折り返し部分が円弧状となって、圧力が適切に付与できずに電池として機能しないような部分が増加する虞があった。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、活物質の欠落を防止でき、均一な拘束圧を付与することが可能な固体電池スタックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
本発明は、活物質及び固体電解質を含む積層体が捲回されて発電部とされ、当該発電部の断面形状が六角形状とされ、当該発電部が複数束ねられて筐体内に収容されている、固体電池スタックである。
【0009】
本発明において、「活物質及び固体電解質を含む積層体」とは、正負極活物質や固体電解質が含まれて充放電反応を生じさせることが可能な積層体であれば特に限定されるものではなく、モノポーラ型であってもバイポーラ型であってもよい。例えば、シート状の正負極層(正負極シート)と固体電解質層とが積層されてなる積層体とすることができる。
【0010】
本発明において、積層体が軸芯に捲回されて発電部とされていることが好ましい。発電部をより容易且つ適切に形成することができ、各発電部に、より適切に均一な拘束圧を付与可能な形態とすることができるためである。
【0011】
本発明において、軸芯の断面形状が六角形状とされていることが好ましい。発電部の断面形状を容易に六角形状とすることができ、且つ、固体電池スタックにおいて、各発電部に、より適切に均一な拘束圧を付与することができるためである。
【0012】
本発明において、複数の発電部が、最密となるように束ねられていることが好ましい。発電部間の隙間を減少させることで、固体電池スタックにおいて、各発電部に、より適切に均一な拘束圧を付与することができるためである。
【0013】
本発明において、隣り合う発電部の間に可塑性フィルムを介在させてなる固体電池スタックとすることが好ましい。「可塑性フィルム」とは、従来のラミネートフィルム(アルミニウムと樹脂との積層フィルム)を用いることもできるが、より柔軟性、弾力性に富むものを用いることが好ましく、低密度のポリカーボネート、ポリエチレンやポリスチレン等の高分子材料からなるフィルムとすることが好ましい。可塑性フィルムを介在させることで、発電部間を適切に絶縁でき、且つ、拘束圧を付与した際、可塑性フィルムにより応力分散を生じさせ、発電部により均一に拘束圧を付与することができる。
【0014】
本発明において、筐体により、複数束ねられた発電部が拘束されていることが好ましい。拘束圧を付与するための部材を別途用意する必要がなく、且つ、拘束圧を付与したままスタックを収納することができ、発電部内の密着性が良好となって電池性能を向上させることができるためである。また、筐体によって発電部を拘束することで、複数束ねられた発電部の外周から内側に向かって均一に拘束圧を付与することができる。
【0015】
本発明において、発電部の軸芯の長手方向両端部に、端部集電体が設けられていることが好ましい。発電部内部で発生した電気エネルギーを発電部の端部で集約して集電することができるため、スタックの構成を簡略化することができ、活物質の欠落等を抑制しつつ容易に集電可能な構造とすることができるためである。
【0016】
本発明において、発電部に流体圧力が付与されていてもよい。ここに、「流体圧力」とは、筐体内に収容されている流体による圧力であり、流体としては、液体や気体、或いはゲル等を例示することができる。「流体圧力が付与され」とは、例えば、筐体を密閉容器とし、且つ、筐体外部から筐体内部に流体を封入することによって、筐体内の圧力を高め、これによって、発電部に流体圧力が付与される形態を挙げることができる。このようにすることで、発電部に等方的で均一な拘束圧力を付与することができる。
【0017】
尚、本発明は、活物質及び固体電解質を含む積層体が軸芯の周りに捲回されて発電部とされ、当該発電部が角柱形状とされ、当該発電部が複数束ねられて筐体内に収容されるとともに、前記発電部に流体圧力が付与されている固体電池スタックとしてもよい。ここに「角柱形状」とは、断面形状が多角形状とされた発電部をいい、三角柱、四角柱又は六角柱であることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、積層体を捲回して発電部を構成し、発電部の断面形状を六角形状とし、且つ、複数の発電部を束ねて筐体内に収納して固体電池スタックを構成しているため、発電部間の面同士で拘束圧力を働かせることができ、発電部の一部に応力集中が生じることを抑制できる。従って、活物質の欠落を防止でき、均一な拘束圧を付与することが可能な固体電池スタックを提供することができる。また、筐体内部の流体圧力により複数の発電部をそれぞれ拘束する場合であっても、活物質の欠落を防止できるとともに、発電部に均一な拘束圧力を働かせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の固体電池スタックの一形態を概略的に示す外観斜視図である。
【図2】図1の固体電池スタックの内部構造を説明するための概略図である。
【図3】本発明の固体電池スタックの製造工程の一例を説明するための概略図である。
【図4】本発明の固体電池スタックの製造工程の一例を説明するための概略図である。
【図5】本発明の固体電池スタックの製造工程の一例を説明するための概略図である。
【図6】本発明の固体電池スタックの製造工程の一例を説明するための概略図である。
【図7】本発明の固体電池スタックにおける、発電部同士の接続形態(並列接続)を説明するための概略図である。
【図8】本発明の固体電池スタックにおける、発電部同士の接続形態(直列接続)を説明するための概略図である。
【図9】本発明の固体電池スタックにおける、発電部同士の接続形態(並列接続と直列接続)を説明するための概略図である。
【図10】筐体内部の流体圧力により、複数の発電部に拘束圧力を付与する場合における固体電池スタックの一形態を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を、リチウム全固体電池に適用した場合を中心に説明する。ただし、本発明は、この形態に限定されるものではなく、その他固体電池に適用することができる。
【0021】
図1は、一実施形態に係る本発明の固定電池スタック100を概略的に示す外観斜視図である。図2は、一実施形態に係る本発明の固体電池スタック100の内部構造を概略的に示す図である。図2(A)は、図1にII(A)‐II(A)で示された矢視断面図であり、図2(B)は、図2(A)に係る内部構造の一部を拡大して示した図である。図1、2に示されるように、固体電池スタック100は、断面形状が六角形状とされた発電部10が、複数束ねられた状態で筐体20内に収容されている。
【0022】
<発電部10>
図2(A)、(B)に示されるように、発電部10は、活物質及び固体電解質を含む積層体1が軸芯5の周りに捲回されてなるものである。また、固体電池スタック100において、隣接する発電部10、10、…の間(発電部10の軸方向に沿った側面)には、可塑性フィルム6が介在している。さらに、発電部10の両端部(軸方向両端部)には、端部集電体7、8(図4(B)参照)がそれぞれ設けられており、発電部10の内部で発生した電気エネルギーを端部に集電可能とされている。
【0023】
(積層体1)
積層体1には活物質及び固体電解質が含まれている。具体的には、例えば、電極層(正極層、負極層)及び固体電解質層を備えることにより、内部で電気化学反応を生じさせることができるような形態とされている。電極層には、少なくとも活物質及び固体電解質が含まれており、固体電解質層には少なくとも固体電解質が含まれている。また、積層体1は、軸芯5に捲回することができるような形状、大きさとされている。
【0024】
積層体1に含まれる活物質としては、特に限定されるものではないが、例えば固体電池スタック100をリチウム固体電池とする場合、LiCoO、LiNiO、Li1+xNi1/3Mn1/3Co1/3、LiMn、Li1+xMn2−x−y(MはAl、Mg、Co、Fe、Ni、Znのいずれか)で表される異種元素置換Li−Mnスピネル、LiTiO、LiMPO(MはFe、Mn、Co、Niのいずれか)、V、MoO、TiS、グラファイト、ハードカーボン等の炭素材料、LiCoN、LiSi、リチウム金属又はリチウム合金(LiM、MはSn、Si、Al、Ge、Sb、P等のいずれか)、リチウム貯蔵性金属間化合物(MgM、MはSn、Ge、Sbのいずれか、或いは、NSb、NはIn、Cu、Mnのいずれか)や、これらの誘導体等を用いることができる。ここで、正極活物質と負極活物質には明確な区別はなく、2種類の化合物の充放電電位を比較して貴な電位を示すものを正極層に、卑な電位を示すものを負極層に用いて、任意の電圧のリチウム固体電池(発電部10)を構成することができる。
【0025】
積層体1に含まれる固体電解質としては、特に限定されるものではないが、例えば固体電池スタック100をリチウム固体電池とする場合、LiO−B−P、LiO−SiO、LiO−B−ZnO等の酸化物系非晶質固体電解質、LiS−SiS、LiI−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiS−B、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiPO−LiS−SiS、LiI−LiS−P、LiI−LiPO−P、LiS−P等の硫化物系非晶質固体電解質、或いは、LiI、LiI−Al、LiN、LiN−LiI−LiOH等や、Li1.3Al0.3Ti0.7(PO、Li1+x+yTi2−xSi3−y12(AはAl又はGa、0≦x≦0.4、0<y≦0.6)、[(B1/2Li1/21−z]TiO(BはLa、Pr、Nd、Smのいずれか、CはSr又はBa、0≦z≦0.5)、LiLaTa12、LiLaZr12、LiBaLaTa12、LiPO(4−3/2w)(w<1)、Li3.6Si0.60.4等の結晶質酸化物・酸窒化物を用いることができる。
【0026】
積層体1には、上記活物質や固体電解質の他、任意に導電助剤や結着剤等が含まれていてもよい。導電助剤としては、固体電池に用いられ得るものを特に限定されることなく用いることができ、例えば、アセチレンブラック等の炭素材料を用いることが好ましい。結着剤についても、固体電池に用いられ得るものを特に限定されることなく用いることができ、例えば、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂やスチレンブタジエンゴム(SBR)等のゴム性状樹脂等を用いることが好ましい。
【0027】
積層体1の正極層、負極層は、上記の活物質や固体電解質等を備えて構成される。これら電極層に含まれる各物質の混合比については、固体電池スタック100を適切に作動可能な比率であれば、特に限定されるものではない。例えば、質量比で、活物質:電解質:導電助剤:結着剤=99〜40:1〜50:0〜5:0〜5の混合比となるようにして、電極層を形成すればよい。また、正極層や負極層は、後述する正極集電体や負極集電体上に、適切に形成されていれば、厚みや形状等は特に限定されるものではない。例えば、5〜500μm程度の厚みとすることができる。正極層及び負極層は、活物質等を含むペーストを正極集電体、負極集電体上にドクターブレード等によって塗布・乾燥することにより、或いは、粉体状の活物質等をプレス成型することにより、形成・作製することができる。
【0028】
正極集電体や負極集電体としては、固体電池スタックの正極集電体又は負極集電体として適用できる集電体であればその材質等は特に限定されるものではなく、金属箔や金属メッシュ、金属蒸着フィルム等を用いることができる。例えば、固体電池スタック100をリチウム固体電池とする場合、Cu、Ni、Al、V、Au、Pt、Mg、Fe、Ti、Co、Zn、Ge、In、ステンレス鋼等の金属箔やメッシュ、或いは、ポリアミド、ポリイミド、PET、PPS、ポリプロピレンなどのフィルムやガラス、シリコン板等の上に上記金属を蒸着したもの等を用いることができる。正極集電体及び負極集電体の厚みや大きさは特に限定されるものではない。例えば、5〜500μm程度の厚みとすることができる。尚、後述するように発電部10の端部となる部分に、端部集電体7、8(図4(B)参照)が取り付けられ、当該端部集電体7、8が正極集電体又は負極集電体とそれぞれ接続される。
【0029】
積層体1の固体電解質層は、上記の固体電解質と任意に結着剤とを備えて構成される。固体電解質層に含まれる上記各物質の混合比については、固体電池スタック100を適切に作動可能な比率であれば、特に限定されるものではない。例えば、質量比で、電解質:結着剤=100〜70:0〜30の混合比となるようにして、固体電解質層を形成すればよい。固体電解質層は、積層体1を捲回によって発電部10とした場合において、正極層及び負極層の間に適切に設けられ、正極層と負極層との間のイオン伝導に寄与することができる形態であれば、厚みや形状等は特に限定されるものではない。例えば、0.1〜500μm程度の厚みとすることができる。電解質層は、固体電解質等を含むペーストを正極層或いは負極層上にドクターブレード等によって塗布・乾燥することにより、或いは、粉体状の固体電解質等をプレス成型することにより、形成・作製することができる。
【0030】
このように、積層体1は、活物質及び固体電解質を含んでなる。積層体1は、軸芯5に捲回されて発電部10とされた場合において、充放電可能な形態とされるものであればよく、モノポーラ型、バイポーラ型のいずれであってもよい。すなわち、正極集電体上の正極層と、負極集電体上の負極層との間に、固体電解質層が介在するように積層されてなる要素を含んだ形態や、集電体の表裏に正極層及び負極層がそれぞれ形成され、当該正極層又は負極層の上に固体電解質層が積層されてなる要素を含んだ形態等とすることができる。積層体1の各層の積層数については、特に限定されるものではない。また、積層体1が、柔軟性のある樹脂シート等によって保持されていてもよい。
【0031】
(軸芯5)
軸芯5は、積層体1を捲回する際の捲回芯として用いられる。軸芯5の形状、大きさは、積層体1の捲回芯として用いられ得る形状、大きさであれば特に限定されるものではないが、積層体1を捲回する際、発電部10の断面形状を最密充填可能な形状(特に、六角形状)とし、且つ、発電部10を拘束する際、拘束圧をより均一に付与可能とする観点からは、最密充填可能な角柱形状とすることが好ましい。具体的には、六角柱、四角柱、或いは三角柱状のものを用いることが好ましく、特に図2に示されるような六角柱状のものを用いることが好ましい。また、軸芯5の材質は、上記捲回芯として機能し得る材質であれば特に限定されるものではないが、熱伝導性の高い材料により構成することで、電池作動時に発生する熱エネルギーを外部に効率よく放出することができ、好ましい。熱伝導性の高い材料の具体例としては、アルミニウム、銅、チタン等の金属材料、炭素材料、或いはこれらと樹脂等とを含むコンポジット等を挙げることができる。尚、熱伝導性が高い材料を用いた場合、当該材料が電気伝導性を有する場合があり、この場合は、製造時や電池作動時において、集電体等と接触して短絡することを防ぐため、軸芯6の表面に、絶縁性材料によりコーティングを施すことが好ましい。
【0032】
発電部10は、上述したような軸芯5に、積層体1を捲回することにより構成されている。図1、2に示されるように、発電部10は断面形状が六角形状であり、すなわち、六角柱となるように構成されている。このような発電部10は、複数束ねられた状態で筐体20の内部側に配置される。
【0033】
<筐体20>
筐体20は、複数束ねられた発電部10、10、…を収納可能なものであればよいが、特に、図1、2に示されるように、複数束ねられた発電部10、10、…の外周面(軸方向に沿った外周面)に沿って、発電部10、10、…と接触するように設け得る形態とすることが好ましい。このようにすることで、固体電池スタック100の漏電や物理的破壊を防ぐパッケージとして機能することはもちろん、さらに、束ねられた発電部10、10、…に拘束圧を付与するための拘束板としても機能させることができる。この場合、筐体20は、高強度且つ弾性を有する材料からなることが好ましく、具体的には、ABSやアルミニウム合金、ステンレス鋼等の、金属や樹脂からなることが好ましい。筐体20の厚みは特に限定されるものではないが、拘束板として機能させる場合は、厚みを0.1〜10mm程度とすることが好ましい。尚、図1においては、筐体20は発電部10の両端部側が解放とされており、発電部10、10、…の端部集電体7、8(図4(B)参照)が露出した形態とされているが、拘束圧をさらに高めたい場合や、等方的な圧力を発電部に付与したい場合は、筐体20を密閉ケースとし、油圧によって内部圧力を制御するような形態としてもよい。或いは、ゲル、気体などを筐体20内に封入して、筐体20内の発電部10、10、…に圧力を付与するような形態であってもよい。この場合は、筐体20に液体や気体を封入可能な封入弁と、異常内圧を解放可能とする排圧弁とを備える形態とすることが好ましい。密閉系の固体電池スタックについては後述する。
【0034】
また、図1、2に示されるように、複数の発電部10、10、…が最密となるように束ねられて、筐体20に収納されていることが好ましい。このようにすることで、隣接する発電部10、10、…間の隙間を減少させることができ、各発電部10、10、…に、より適切に均一な拘束圧を付与することができる。
【0035】
(可塑性フィルム6)
また、図2(B)に示されるように、隣接する発電部10、10、…間には、可塑性フィルム6を設けることが好ましい。可塑性フィルム6を設けることで、発電部10、10、…間の不要な電気接触を容易に防ぐことができ、且つ、圧力分散によって、発電部10、10、…に対して、筐体20からの拘束圧或いは油圧等による拘束圧を一様に伝えることができる。可塑性フィルム6は、従来のラミネートフィルム(樹脂層間にアルミニウムが積層されてなる積層フィルム)を用いることもできるが、より柔軟性、弾力性に富むものを用いることが好ましい。具体的には、低密度のポリカーボネート、ポリエチレンやポリスチレン等の高分子材料からなるフィルムを用いることが好ましい。可塑性フィルム6の厚みについては特に限定されるものではないが、上記機能を好適に発揮する観点からは、5〜100μmとすることが好ましい。
【0036】
(端部集電体7、8)
端部集電体7、8(端部集電体8については、図1において見えていない。)は、発電部10の両端部(軸方向両端部)にそれぞれ設けられる集電体であり、端部集電体7は発電部10の正極集電体と接続され、端部集電体8は発電部10の負極集電体と接続されている。端部集電体7、8の材質や厚みについては、特に限定されるものではなく、上記した正負極集電体と同様とすることができる。また、図1において、端部集電体7、8は六角形状とされているが、隣接する発電部10と不要に接触することを避けるため、発電部10の断面六角形状よりも小さく形成されていることが好ましい。ただし、後述するように、隣接する端部集電体7、7、又は、端部集電体8、8、或いは端部集電体7、8同士において、互いに対応する形状の凹部や凸部を設けることで、端部集電体同士を接続することもでき、これにより、発電部10、10、…同士を直列或いは並列接続することができる。
【0037】
<固体電池スタック100>
本発明に係る固体電池スタック100は、上記のような構成を備えてなる。固体電池スタック100は、例えば下記のようにして製造することができる。図3〜図6に、固体電池スタック100の製造工程の一例を示した。
【0038】
(発電部10の作製)
発電部10は、上述したように、軸芯5と、積層体1とを用意し、軸芯5に積層体1を捲回することによって作製される。図3は、積層体1と軸芯5の具体例を示す図である。図3(A)は、軸芯5に積層体1が捲回される様子を概略的に示す図であり、図3(B)は、図3(A)に点線で示される領域IIIBにおける、積層体1の端部構成を概略的に示す図であり、また、図3(C)は、図3(A)の矢印IIICで示される方向から見た積層体1の正面概略図である。
【0039】
図3(A)〜(C)に示されるように、積層体1は、正極シート2、固体電解質層4、及び負極シート3がこの順に積層されてなる、帯状の積層体である。正極シート2は、上述の正極集電体及び正極層からなり、負極シート3は、上述の負極集電体及び負極層からなる。軸芯5は、六角柱状の棒状部材である。また、図3(B)に示されるように、積層体1は、軸芯5の長手方向一端側となる部分において、長さXの分だけ負極シート3(特に負極シート3の負極集電体)がずらされて構成されている。また、明確に図示してはいないが、積層体1は、軸芯5の長手方向他端側において、正極シート2(特に正極シート2の正極集電体)についても長さXの分だけずらされて構成されている。このようにすることで、積層体1を軸芯5に捲回して発電部とした場合、発電部10の両端部で適切に集電を行うことが可能となる。長さXについては、例えば10〜500mm程度とすることができる。
【0040】
図3(A)に示されるように、軸芯5に積層体1を捲回すると、図4(A)のような発電部10を作製することができる。軸芯5に積層体1を捲回する方法としては、積層体1の一端を軸芯5に留めて公知の捲回装置を用いて捲回する形態等、発電部10を適切に構成可能なものであれば特に限定されるものではない。発電部10は、断面形状が六角形状、すなわち、六角柱とされ、スタックとした場合に最密に束ねることができる形態とされる。
【0041】
(可塑性フィルム6及び端部集電体7、8の配設)
発電部10を作製した後は、図4(B)に示されるように、発電部10の側面(軸方向に沿った側面)が可塑性フィルム6により覆われる。また、発電部10の端部側(軸方向端部側)には、端部集電体7、8がそれぞれ設けられる。端部集電体7は、上記のようにずらせて設けた正極シート2に接続され、端部集電体8は、上記のようにずらせて設けた負極シート3に接続され、これにより、発電部10の一端と他端とで、正極の集電と負極の集電とが可能な形態とされる。可塑性フィルム6の被覆方法や、端部集電体7、8と正負極集電体との接続方法については、特に限定されるものではない。
【0042】
(スタック化)
このように可塑性フィルム6により側面を被覆するとともに、両端部に端部集電体7、8を設けた発電部10(図5(A))を複数作製する。これらは、図5(B)に示されるように、最密となるように束ねられる。発電部10、10、…の数については特に限定されるものではない。
【0043】
そして、図6(A)又は図6(B)に示されるように、複数束ねられた発電部10、10、…は、外周面(軸方向に沿った外側面)が筐体20により覆われ、拘束されることにより、拘束圧が付与される。例えば図6(A)のような、発電部10、10、…の外周形状と対応する形状の凹凸板20a〜20dによって、4方向から発電部10、10、…を拘束しつつ筐体20を形成することができ、或いは、図6(B)のような、発電部10、10の外周形状と対応する形状の凹凸板20e、20fによって、2方向から発電部10、10、…を拘束しつつ筐体20を形成することもできる。隣接する凹凸板の端部は、互いに固定され、一つの筐体20が構成される。
【0044】
上記のような製造工程を経て、図1、2に示されるような固体電池スタック100を製造することができる。
【0045】
固体電池スタック100においては、束ねられた発電部10、10、…同士を、端部集電体7、8を介して互いに電気的に接続することが可能である。固体電池スタック100における端部の集電形態について、さらに詳述する。
【0046】
図7は、発電部10、10、10について、端部集電体7、8を介して並列に接続する場合の形態例を示す図である。図7(A)は発電部10、10、10の端部集電形態に係る構成を概略的に示し、図7(B)は、図7(A)に矢印VII(B)で示される方向から見た発電部10、10、10における電気の流れを示している。図7(A)に示されるように、発電部10、10、10を並列に接続する場合にあっては、発電部10、10、10の一端側が正極、他端側が負極となるように、発電部10、10、10を束ね、当該一端側において隣接する端部集電体7、7、7同士を接続し、且つ、当該他端側において隣接する端部集電体8、8、8同士を接続する。これにより、図7(B)に示されるように、発電部10、10、10を並列に接続することができる。
【0047】
図8は、発電部10、10、10について、端部集電体7、8を介して直列に接続する場合の形態例を示す図である。図8(A)は発電部10、10、10の端部集電形態に係る構成を概略的に示し、図8(B)は図8(A)に矢印VIII(B)で示される方向から見た発電部10、10、10における電気の流れを示している。図8(A)に示されるように、発電部10、10、10を直列に接続する場合にあっては、発電部10、10、10の一端側及び他端側において、正極及び負極が交互に隣接するように、発電部10、10、10を束ねる。そして、発電部10、10の一端側に設けられた端部集電体7bと隣接する端部集電体8cとを接続し、他端側に設けられた端部集電体7aと隣接する端部集電体8bとを接続する。また、一端側の端部集電体8aと隣接する端部集電体7bとについては接続せず、他端側の端部集電体8bと端部集電体7cとについても接続しない。これにより、図8(B)に示されるように、電気流れが端部集電体8a、7a、8b、7b、8c、7cとなるように、発電部10、10、10を直列に接続することができる。
【0048】
図9は、発電部10、10、…について、端部集電体7、8を介して直列及び並列に接続する場合の形態例を示す図である。図9(A)は発電部10、10、10の一端に係る端部集電形態を概略的に示し、図9(B)は図9(A)に矢印IX(B)で示される方向から見た発電部10、10、…における電気の流れを示している。図9(A)に示されるように、発電部10、10、…を4段×3列に束ねてスタックとした場合、直列及び並列に接続するためには、発電部10、10、…の一端側及び他端側において、段方向に対して、正極及び負極が交互に隣接するように、且つ、列方向に対して、正極が連続して隣接し、或いは負極が連続して隣接するように、発電部10、10、…を束ねる。そして、一端側において、紙面下から数えて1段目の正極を互いに接続し、且つ、1段目の正極と上方向に隣接する2段目の負極とをそれぞれ接続する。また、紙面下から数えて4段目の負極を互いに接続し、且つ、4段目の負極と下方向に隣接する3段目の正極とをそれぞれ接続する。一方、他端側において、紙面下から数えて2段目の正極と上方向に隣接する3段目の負極とをそれぞれ接続する。これにより、図9(B)に示されるように、束ねられた発電部10、10、…の列方向に直列接続され、最上段及び最下段において並列接続された固体電池スタックとすることができる。
【0049】
尚、固体電池スタックにおいて、発電部の形態は四角柱や三角柱状のものも考えられる。発電部を四角柱や三角柱状にした場合、曲率の大きな角部において、圧力を均一に付与できない場合があるが、例えば、図10に示されるような形態とすれば発電部に圧力を均一に付与することができる。図10(A)は、密閉型固体電池スタックの外観を、図10(B)は図10(A)にX(B)‐X(B)で示される矢視断面を、それぞれ概略に示している。図10に示されるように発電部を例えば四角柱状に形成し、且つ、複数の発電部を筐体(密閉ケース)に収納し、発電部間に液体や気体或いはゲル(封入流体)を満たし、液圧やガス圧等によって各発電部に圧力が付与されているような形態とする。このようにすることで、各発電部について、等方的で均一な拘束圧力を付与することができる。
【0050】
図10の形態(液圧又はガス圧による拘束)においては、電極ターミナルが設けられた蓋にパッキンを使用して密閉ケースの開閉を行うものとしている。また、電池ケース内の発電部において、直列に接続された発電部数が偶数の場合(すなわち、スタックの正極と負極とを電池ケースの一端側に集約可能な形態)であれば、容易に電極ターミナルへと配線を集約することができる。さらに、液圧又はガス圧をかけるための封入弁、或いは内部が何らかの理由で昇圧した場合の排圧弁については、電池ケースのいずれに設置してもよい。一方、軸芯に熱伝導体を使用し、側面方向(軸と直交する方向)は積層体と絶縁を保ちつつ、端部を放熱板と接触させることで、効率的に放熱を行うことができる。側面方向の絶縁については、上記したように、軸芯の表面に絶縁コーティングを施す等が例示される。或いは、軸芯を中空として冷媒を流すことも有効である。この場合は、軸芯の端部集電体の中央に孔を設け、且つ、孔を介して端部集電体と軸芯とが接触しないように絶縁することが必要である。
【0051】
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う固体電池スタックもまた本発明の技術範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【0052】
例えば、上記説明においては、積層体1が正極シート2及び負極シート3と、これらの間に介在する固体電解質層4とが積層されてなるものとして説明したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。例えば、図3に示される積層体1に替えて、集電箔の両面に正極層及び負極層がそれぞれ形成され、且つ、正極層或いは負極層の上に固体電解質層が形成されているような、バイポーラ積層体を用いることもできる。
【0053】
また、上記説明においては、発電部10の端部に六角形状の端部集電体7、8が設けられるものとして説明したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。端部集電体7、8の形状は円形やその他形状であってもよい。また、端部集電体7、8を設けず、軸芯の一端において積層体の正極集電体を突出させ、他端において負極集電体を突出させて、且つ、配線等を用いて発電部10、10、…同士を接続するような形態であってもよい。ただし、発電部10、10、…間の接続を容易とし、構成を簡易化することで活物質の滑落や拘束圧の偏りを抑制し、信頼性の高い固体電池スタック100とする観点からは、端部集電体7、8が設けられた発電部10を用いて固体電池スタック100を構成することが好ましい。
【0054】
また、上記説明においては、発電部10の側面が可塑性フィルム6により覆われる形態について説明したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。発電部10の側面に樹脂コーティング等を施してもよい。ただし、固体電池スタック100の製造をより容易とし、且つ、発電部10、10、…間に均一な厚みを有する可塑性フィルム6を設けることで、拘束圧付与の際、偏りなく応力分散を生じさせ得る形態とする観点からは、可塑性フィルム6により、発電部10の側面を覆う形態とすることが好ましい。
【0055】
また、図10に係る上記説明においては、四角柱状の発電部が複数収納されてなる固体電池スタックについて説明したが、密閉側の固体電池スタックにおいて、三角柱や六角柱の発電部10を複数束ねた形態としてもよい。すなわち、本発明は、筐体20から発電部10、10、…へと直接拘束圧が付与される形態に限定されるものではなく、また、発電部10、10が最密に束ねられた形態に限定されるものでもない。ただし、固体電池スタック100の構成を簡易化する観点からは、筐体20から発電部10、10、…へと直接拘束圧が付与される形態とすることが好ましく、また、発電部10、10が六角柱状とされて最密に束ねられた形態とすることが好ましい。
【0056】
また、上記説明においては、積層体を軸芯に捲回して発電部を構成する者として説明したが、本発明は係る形態に限定されるものではない。軸芯を用いず、積層体を単に捲回して発電部を構成してもよい。ただし、より容易且つ適切に発電部を構成するとともに、より適切に均一な拘束圧を付与可能な形態とする観点からは、軸芯を用いて発電部を構成することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る固体電池スタックは、携帯機器等の小型電源から、電気自動車、ハイブリッド車等の大型電源まで、様々な産業分野において好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 積層体
2 正極シート(正極層、正極集電体)
3 負極シート(負極層、負極集電体)
4 固体電解質層
5 軸芯
6 可塑性フィルム
7、8 端部集電体
10 発電部
20 筐体
100 固体電池スタック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活物質及び固体電解質を含む積層体が捲回されて発電部とされ、前記発電部の断面形状が六角形状とされるとともに、前記発電部が複数束ねられて筐体内に収容されている、固体電池スタック。
【請求項2】
前記積層体が軸芯に捲回されて前記発電部とされている、請求項1に記載の固体電池。
【請求項3】
前記軸芯の断面形状が六角形状とされている、請求項2に記載の固体電池スタック。
【請求項4】
複数の前記発電部が、最密となるように束ねられている、請求項1〜3のいずれかに記載の固体電池スタック。
【請求項5】
隣り合う前記発電部の間に可塑性フィルムを介在させてなる、請求項1〜4のいずれかに記載の固体電池スタック。
【請求項6】
前記筐体により、前記複数束ねられた発電部が拘束されている、請求項1〜5のいずれかに記載の固体電池スタック。
【請求項7】
前記発電部の前記軸芯の長手方向両端部に、端部集電体が設けられている、請求項2に記載の固体電池スタック。
【請求項8】
前記発電部に流体圧力が付与されている、請求項1〜7のいずれかに記載の固体電池スタック。
【請求項9】
活物質及び固体電解質を含む積層体が軸芯の周りに捲回されて発電部とされ、前記発電部が角柱形状とされ、前記発電部が複数束ねられて筐体内に収容されるとともに、前記発電部に流体圧力が付与されている固体電池スタック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−146169(P2011−146169A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4279(P2010−4279)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】