説明

固形物捕集装置および固形物捕集方法

【課題】簡単な構造で、かつ固形物の捕集効率を低下させることなく、排ガスの導入部での固形物の析出を抑制する。
【解決手段】固形物捕集装置は、固形物を含有する排ガスが導入される容器2と、容器2内に設置されたフィルターと、容器2を冷却する冷却器5とを有する。容器2にはガス導入口が開口し、そのガス導入口にガス導入管3が接続されている。ガス導入管3は、容器2との接続側端部30が、内管部31と外管部32とを有する二重管構造とされる。内管部31と外管部32との隙間の大きさCは、2.5mmより大きく、かつ40mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造装置や液晶製造装置等から排出される排ガスから固形物を除去するのに用いられる固形物捕集装置、およびその固形物捕集装置を用いた固形物捕集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスでは種々のガスが用いられており、反応生成物である固形物を含有する排ガスが発生する。例えば、アルミニウムのエッチング工程では、三塩化ホウ素を使用したエッチングが行われ、その際、塩化アルミニウムおよびホウ素が反応生成物として生成される。また、液晶デバイスの製造においては、CVD工程でフルオロケイ酸アンモニウム粉体が反応生成物として生成される。半導体製造プロセスで発生した排ガスは、固形物が除去され、さらに吸着等によって有害成分が除去されて無害化された後、大気中に放出される。この一連の処理工程において、排ガスから固形物を除去するのに固形物捕集装置が用いられる。
【0003】
従来、この種の固形物捕集装置として、ガス導入管およびガス排出管が接続された容器内にフィルターユニットを収納し、このフィルターユニットに固形物を捕集させることによって排ガスから固形物を除去する装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。容器は20〜50℃程度に冷却されており、冷却された容器内に排ガスが導入されることで、排ガス中に含まれる固形物が析出し、フィルターに捕集される。そして、フィルターによって固形物が除去された排ガスは、排出管から排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−140538号公報
【特許文献2】実用新案登録第3027369号公報
【特許文献3】実用新案登録第3034732号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の固形物捕集装置では、排ガスからの固形物の捕集処理を続けていくと、排ガスに含まれる固形物(例えば塩化アルミニウム)によって、排ガスの導入部が閉塞されてしまうという問題があった。導入部の閉塞は、導入部で排ガスが冷却されることによって、導入部内に固形物が析出し、これが次第に堆積することによって生じる。
【0006】
導入部が閉塞されないようにするためには、導入部を定期的に清掃し、導入部に堆積した固形物を除去すればよい。しかし、導入部を清掃するためには、排ガスの供給源である半導体製造装置等の稼働を停止する必要があり、半導体製造装置等の稼働効率を低下させる結果を招く。また、導入部での固形物の析出を防止するため、導入部をヒータ等で加熱することも行われているが、必要以上に加温されたガスを容器内に導入すると、容器内で固形物が析出しにくくなり、結果的に固形物の捕集効率が低下する。
【0007】
本発明は、簡単な構造で、かつ固形物の捕集効率を低下させることなく、排ガスの導入部で固形物が析出しにくい固形物捕集装置、および該固形物捕集装置を用いた固形物捕集方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明の固形物捕集装置は、固形物を含有する排ガスから前記固形物を除去するために、前記排ガスから固形物を析出させて捕集する固形物捕集装置であって、
排ガスの導入部および排出部を備えた容器と、
前記容器内で固形物を析出させるために前記容器を冷却する冷却器と、
前記容器内で析出した固形物を捕集するために、前記容器内での前記導入路から前記排出路までの排ガスの経路中に配置されたフィルターと、
を有し、
前記導入部は、内管部と外管部とを有し前記内管部を通って排ガスが前記容器内に導入されるように構成された二重管構造とされ、前記内管部と前記外管部との隙間の大きさが、2.5mmより大きく、かつ40mm以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の固形物捕集装置において容器はガス導入口を有し、導入部は、ガス導入口に接続されたガス導入管の前記容器との接続側端部であってもよい。
【0010】
また、導入部および排出部は容器の上部に位置していることが好ましく、この場合、冷却器は容器の側面に取り付けられていてもよい。さらに、冷却器が容器の側面に取り付けられている場合、容器内での排ガスの冷却を効率的に行なえるようにするために、容器内に設置され、導入部から容器内に導入された排ガスが、冷却器が取り付けられた容器の側面に沿って流れるように、容器内での排ガスの流れを案内する仕切り板を有することが好ましい。
【0011】
また、フィルターは、容器の内部で排出部と接続された構成とすることができる。フィルターはバグフィルターであることが好ましく、この場合、バグフィルターは、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレンまたはクロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体から作られていることが好ましい。
【0012】
本発明の固形物捕集方法は、上記本発明の固形物捕集装置を用いて、固形物を含有する排ガスから前記固形物を捕集する固形物捕集方法であって、
前記固形物捕集装置の導入部の内管部から容器内へ前記排ガスを導入する工程と、
前記容器内に導入された排ガスから前記固形物を析出させる工程と、
析出した前記固形物を、前記容器内に配置されたフィルターに捕集する工程と、
前記固形物が捕集された排ガスを、前記固形物捕集装置の排出部から排出する工程と、
を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排ガスの導入部を内管部と外管部とを有する二重管構造とし、かつ、内管部と外管部との隙間の大きさを規定することにより、導入部での固形物の析出が抑制されるので、析出した固形物による導入部の閉塞を極めて生じにくくすることができる。しかも、導入部での固形物の析出を抑制するために導入部を必要以上に加温する必要はないので、固形物の捕集効率は低下しない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による固形物捕集装置の概略断面図である。
【図2】図1に示す固形物捕集装置の、ガス導入管の容器との接続部の構造を示す拡大断面図である。
【図3】本発明におけるガス導入部の他の例を示す、二重管構造とされたガス導入管の接続側端部の断面図である。
【図4】本発明におけるガス導入部のさらに他の例を示す、容器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1を参照すると、半導体製造装置や液晶製造装置等から排出される排ガスが導入され、導入された排ガス中に含まれる固形物を除去して排出するための、容器2と、ガス導入管3と、ガス排出管4と、冷却器5と、フィルター7とを有する、本発明の一実施形態による固形物捕集装置1が示されている。
【0016】
固形物捕集装置1が処理の対象とする排ガスとは、半導体製造装置または液晶製造装置等から排出されるエッチング排ガスを示し、例えば、フッ化水素、サルファーテトラフルオライド、テトラフルオロシラン、ジフルオロスルホキサイド等のフッ素化合物ガス;塩素、塩化水素、三塩化ホウ素、テトラクロロシラン等の塩素化合物ガス;臭化水素、三臭化ホウ素等の臭素化合物が挙げられる。なお、これらのドライエッチング排ガスは、例えば、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスで希釈されていてもよい。
【0017】
固形物は、上記の排ガス中に反応生成物として含有されているものであり、排ガスと同伴して半導体製造装置等から排出される。そのような固形物としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化チタン、塩化タングステン等の金属塩化物;フッ化タンタル、フッ化チタン等の金属フッ化物;ホウ酸等のホウ素化合物;二酸化ケイ素等の金属酸化物;水酸化アルミニウム等の金属水酸化物が挙げられる。
【0018】
容器2は、ガス導入管3が接続された導入口およびガス排出管4が接続された排出口を除いて排ガスを気密に保持できる構造を有していれば任意の構造のものであってよい。容器2の形状は、特に限定されず、例えば、円筒形、三角筒形、四角筒形、六角筒形等が挙げられ、好ましくは四角筒形のものを使用できる。本実施形態では四角筒形の容器2とし、その下部に移動用のキャスター8を備えている。導入口および排出口は容器2の上面に設けられており、それぞれにガス導入管3およびガス排出管4が気密に接続されている。
【0019】
容器2の容量は、排ガスの導入量や固形物捕集装置1の設置スペース等に応じて任意の容量とすることができるが、実用性を考慮すると、好ましくは10×103〜500×103cm3、より好ましくは20×103〜300×103cm3とすることができる。また、容器2の材料は、導入される排ガスによって劣化し難い、特に、酸に対して腐食し難い性質を有する材料を好ましく使用できる。このような材料として、例えば、インコネル、ハステロイ、ステンレス鋼等が挙げられる。また、市販されている一般規格の材料では、例えば、SUS304、SUS316等を使用することができる。
【0020】
冷却器5は、容器2の側面に取り付けられており、容器2自身を冷却することで、ガス導入管3を通って容器2内に導入された排ガスを、容器2内で固形物が析出するのに十分な温度まで冷却する。容器2内に導入される排ガスの温度は、通常、60〜120℃であり、その排ガスが20〜50℃程度まで冷却されることによって、排ガス中に含まれている固形物が析出する。また、容器2内に導入された排ガスをより効率よく冷却するために、容器2の導入口は冷却器5が配置される側面の近傍に設けられており、これによりガス導入管3は、冷却器5が配置される側面の近傍に接続されている。
【0021】
容器2内で排ガスをその温度まで冷却するためには、冷却器5としては、容器2をその温度よりも低い温度、例えば40℃以下、に冷却できるものであれば、冷却方式等は特に限定されない。種々の冷却方式の中でも、工業的な実用性を考慮すると、水(工業用水でもよい)を流通させることによって冷却を行う水冷式の冷却器5を用いることが好ましい。水冷式の冷却器5を用いる場合、冷却器5内での水流速度は、要求される冷却能力、すなわち容器2の容量や導入される排ガスの温度等に応じて適宜設定されるが、好ましくは1×103〜10×103cm3/min.、より好ましくは2×103〜5×103cm3/min.である。
【0022】
フィルター7は、ガス導入管3を通じて容器2内に導入された排ガスがガス排出管4から排出されるまでの排ガスの経路中に配置されるように容器2の内部に設置され、容器2内で析出した、排ガスに含まれる固形物を捕集する。本実施形態では、筒形に形成された複数本のフィルター7を、その長手方向が容器2の長手方向と平行になるように互いに間隔をあけて並列に配置し、それぞれの内部空間を容器2の排出口と連通させる適宜のガス流路が形成された支持部材9を介して、容器2の上端部に支持した構成としている。これにより、フィルター7は容器2の内部でガス排出管4と接続され、ガス導入管3から容器2内に導入された排ガスは、フィルター7を通過し、支持部材9のガス流路を介してガス排出管4へ導かれ、容器2外へ排出される。そして、容器2内に導入された排ガスがフィルター7に達するまでの間に析出した固形物がフィルター7に捕集される。
【0023】
フィルター7としては、排ガスに含まれている固形物を捕集できるものであれば任意のフィルターを用いることができ、中でもバグフィルターを好ましく用いることができる。バグフィルターは、円筒状に形成された織布または不織布製の濾布である。バグフィルターの素材としては、固形物の目詰まりが少なく、また、酸性ガスやハロゲンガス等による耐腐食性に優れるものが好ましく使用され、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレンまたはクロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体等が挙げられる。これらの中でも特に、テフロン(登録商標)を好ましく使用できる。
【0024】
フィルター7の目開きは、捕集する固形物の大きさにもよるが、好ましくは10〜100μm、より好ましくは20〜50μmである。また、フィルター7の口径(直径)は、排ガスの導入量および排ガス中に含有される固形物の量にもよるが、好ましくは30〜300mm、より好ましくは50〜100mmである。
【0025】
フィルター7の数は、排ガスの導入量および排ガス中に含有される固形物の量に応じて1本であってもよいし複数本であってもよいが、長期間にわたった連続稼働を可能とするためには複数本とすることが好ましい。複数本のフィルター7を設置する場合、好ましくは4〜30本、より好ましくは4〜15本、特に好ましくは4〜9本である。
【0026】
フィルター7の長さは、容器2内に配置することができる長さであれば特に制限はない。ただし、本実施形態のようにフィルター7の長手方向を容器2の長手方向と平行として容器2の上端部にフィルター7を支持した場合は、フィルター全体を固形物の補足に有効に利用するために、フィルター7が容器2の底面に接触しない長さであることが望ましい。
【0027】
次に、図2を参照して、ガス導入管3の容器2との接続部における構造を説明する。
【0028】
ガス導入管3は、その下端部が容器2の上面に形成されたガス導入口に挿入されることによって容器2と気密に接続されている。ガス導入管3の下端部、すなわち容器2との接続側端部30は、内管部31と外管部32とを有する二重管構造となっている。内管部31は、ガス導入管3の接続側端部30を除く部分を延長した管状部分として形成されている。外管部32は、排ガスが内管部31のみを通過して容器2内に導入されるように、内管部31の外周面から半径方向外側に広がって、容器2内への開口端に向かって内管部31と同心状に延びる管状部分として形成されており、ガス導入管3は、接続側端部30の外管部32が容器2に支持されることによって容器2と気密に接続されている。
【0029】
内管部31の外周面と外管部32の内周面との間には、ガス導入管3の全周にわたって隙間が形成されている。少なくとも容器2内でのガス導入管3の開口端での隙間の大きさC(内管部31の外周面と外管部32の内周面との間の距離)は、2.5〜40mmであり、好ましくは5〜30mm、より好ましくは7.5〜30mm、特に好ましくは7.5〜25mmである。
【0030】
以上のように構成された本実施形態の固形物捕集装置1によれば、半導体製造装置等からの排ガスは、ガス導入管3を通って容器2内へ導入される。排ガスの温度は一般に60〜120℃程度であるが、容器2が冷却器5で冷却されていることによって、容器2内で20〜50℃に冷却され、排ガスに含まれている固形物が析出する。析出した固形物は、フィルター7を通過してガス排出管4より容器2の外部へ排出される排ガスの流れの中で、フィルター7によって捕集され、これによって、固形物が除去された排ガスがガス排出管4から排出される。
【0031】
ここで、容器2の側面に取り付けられた冷却器5は、容器2自身を冷却することによって容器2内に導入された排ガスを冷却する。よって、ガス導入管3は、容器2と接続された接続側端部30が容器2と同様に冷却されており、従来の構造ではこの部分で固形物の一部が析出しガス導入管を詰まらせる結果を招いていた。
【0032】
ところが本実施形態では、ガス導入管3は接続側端部30が二重管構造となっており、その外管部32が容器2に支持され、排ガスが通過する内管部31は外管部32との間で隙間を隔てて存在するように構成されている。そのため、内管部31と外管部32との間の隙間は一種の断熱層として機能し、内管部31の温度低下が抑制される。その結果、内管部31で排ガスに含まれている固形物が殆ど析出しなくなり、析出した固形物による内管部31の詰まりが極めて生じにくくなる。
【0033】
ここで重要なのは、内管部31と外管部32との隙間の大きさCが上記の範囲を満たしていることである。この隙間の大きさCが小さすぎると、隙間が断熱層として十分に機能せず、内管部31が温度低下し易くなる。一方、隙間の大きさCが大きすぎると、導入される排ガスの冷却効果が徐々に低下し、固形物の捕集効率も低下する。
【0034】
また、内管部31と外管部32との隙間の機能をより効果的に発揮できるようにするため、上記の範囲の大きさCを有している隙間の、容器2内でのガス導入管3の開口端からガス導入管3に沿った長さは、50mm以上であることが好ましい。この長さが短すぎると、外管部31による十分な効果が得られにくくなる。一方、この隙間の長さの上限は、特に限定されないが、あまりにも長すぎると装置全体の大型化を招くので、実用的な範囲では、300mm以下であることが好ましい。
【0035】
さらに、内管部31の詰まりが生じにくくなることによって、ガス導入管3の清掃頻度も少なくて済み、固形物捕集装置1を長期間にわたって連続して稼働することができるようになる。しかも、容器2は従来と同様に冷却できるので、固形物の捕集効率が低下することはない。上記の効果は、ガス導入管3の一部を二重管構造とした極めて簡単な構成で達成でき、ガス導入管3の温度を調整するための複雑な制御装置等は不要である。
【0036】
外管部32は、冷却器5で冷却されている容器2に接触しており、内管部31に比べて温度が低くなりやすい傾向がある。よって、外管部32と内管部31との間の空間に排ガスが入ると、外管部32の内面に固形物が析出する場合がある。しかし、本実施形態では、外管部32と内管部31との間の空間は、ガス導入管3の開口端と反対側の端部が閉鎖された行き止まり構造となっているため、外管部32と内管部31との間の空間での気体の流れは殆どなく、容器2内に導入された排ガスが外管部32と内管部31との間の空間に入ることは殆どない。
【0037】
仮に、排ガスが外管部32と内管部31との間の空間に入り、そこで冷却されることによって外管部31の内面に固形物が析出したとしても、排ガスは内管部31内のみを通過して容器2内へ導入されるので、内管部31から容器2への排ガスの流れには影響を及ぼさない。
【0038】
なお、本発明においては必須の構成ではないが、容器2との接続部でのガス導入管3の放熱による、ガス導入管3内での固形物の析出をより抑制するために、容器2との接続部においてガス導入管3の外周に保温部材あるいは保温用ヒータを巻き付けておいてもよい。
【0039】
以上のようにして、ガス導入管3を通る排ガスは、ガス導入管3内では殆ど固形物を析出させることなく、ガス導入管3を通過した後、容器2内で冷却される。排ガスを容器2内でより効果的に冷却できるようにするために、本実施形態では、容器2の内部に、容器2の上壁に固定されそこから底部に向かって延びる仕切り6を設置している。仕切り6は、ガス導入管3から容器2内に導入された排ガスが、図1に示すように、容器2の冷却器5が取り付けられた側面に沿って下向きに流れた後、容器2の底部でUターンしてフィルター7に到達するように、容器2内での排ガスの流れを案内する。具体的には、仕切り板6は、容器2内の空間を、ガス導入管3が接続された部位および冷却器5が取り付けられた側面を含む第1の空間と、ガス排出管4が接続された部位およびフィルター7を含み、容器2の底部で第1の空間と連通する第2の空間とに分け、かつ第1の空間と第2の空間とが容器2の下部で連通するように設置されている。
【0040】
仕切り板6の、容器2への固定端からの長さは、容器2の内部空間高さの50〜95%であることが好ましく、より好ましくは70〜95%、さらに好ましくは80〜90%である。仕切り板6の長さを容器2の内部空間高さの50%以上とすることで、容器2内に導入された排ガスを、フィルター7に到達するまでの間に所定温度まで効率よく冷却することができる。一方、容器2内に導入された排ガスは、仕切り板6に沿って流れる間でも冷却され、排ガスに含まれる固形物の一部はフィルター7に到達する前に析出して容器2の底部に析出する場合がある。そこで、仕切り板6の長さを容器2の内部空間高さの95%以下とすることで、析出した固形物が容器2の底部に堆積しても所定期間、第1空間から第2空間までのガス流を確保することができる。
【0041】
このように、容器2内に導入された排ガスが、冷却器5が取り付けられた側面に沿って流れた後、フィルター7に到達するように仕切り板6を設置することで、排ガスはフィルター7に到達する前に十分に冷却されるので、フィルター7による固形物の捕集をより効果的に行うことができる。
【0042】
以上、本発明について代表的な実施形態を例に挙げて説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0043】
例えば、ガス導入管3の外管部32の形状について、図2では、容器2と接している側の端部と反対側の端部がテーパー状に形成された例を示した。しかし、図3に示すように、外管部32を一定の直径とすることもできる。
【0044】
また、上述した実施形態では、内管部31と外管部32とを有する排ガスの導入部をガス導入管3の接続側端部30で構成した例を示した。しかし、導入部は、例えば図4に示すように、容器を容器本体21と蓋22とを有する複数の部材で構成し、この蓋22に、内管部22aおよび外管部22bを有する二重管構造を導入部として形成することもできる。
【実施例】
【0045】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0046】
(実施例1)
図1および図2に示す構成を有する固形物捕集装置1を、液晶用アルミニウム基板のエッチング工程において、エッチング装置の後段に排ガス処理装置として設置し、エッチング装置から排出される、三塩化アルミニウムを主成分とする固形物を含むドライエッチング排ガスから固形物を捕集した。
【0047】
容器2は、ステンレス(SUS304)製で、容量は150×103cm3とした。ガス導入管3は、接続側端部30での内管部31の外径を50mm、外管部32の内径を70.3mmとしたものを用いた。よって、内管部31と外管部32との間の隙間の大きさCは10.15mmであった。また、エッチング装置と固形物捕集装置1とを接続する配管は、配管内での固形物の堆積を防止するため、100℃に加熱した。
【0048】
フィルター7は、テフロン(登録商標)製のバグフィルターを用いた。フィルター7は、容器2内に9本設置し、それぞれ目開きが20〜50μm、直径が80mmであった。冷却器5は、冷却水循環方式のものを用い、冷却水の流量は1000cm3/min.とした。冷却水としては工場内の工業用水を使用し、その温度は常温であった。
【0049】
固形物捕集装置1へは、100×103cm3/min.の流量で排ガスを供給し、固形物捕集装置1による固形物の捕集処理を繰り返した。排ガスの総供給量が4320m3となった段階で、固形物の捕集量は15〜20kgであった。また、捕集期間は23〜30日であった。固形物の捕集処理の間、固形物捕集装置1においては、ガス導入管3および容器2内での析出した固形物による閉塞は発生せず、圧力損失が少なく、安全かつ安定して固形物を捕集できた。
【0050】
(比較例1)
ガス導入管3の接続側端部30における外管部32の内径を55mmとし、それによって内管部31と外管部32との間の隙間の大きさCを2.5mmとした以外は実施例1と同様に構成した固形物捕集装置1を用い、実施例1と同じ条件で固形物の捕集を行った。その結果、固形物の捕集量が12kg、捕集期間が15日の段階で、内管部31において固形物による閉塞が生じた。内管部31に析出した固形物を分析したところ、95%以上が塩化アルミニウムであった。これは、エッチング装置から固形物捕集装置1に供給された排ガスに含まれている固形物であると考えられる。
【符号の説明】
【0051】
1 固形物捕集装置
2 容器
3 ガス導入管
4 ガス排出管
5 冷却器
6 仕切り板
7 フィルター
21 容器本体
22 蓋
31 内管部
32 外管部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形物を含有する排ガスから前記固形物を除去するために、前記排ガスから固形物を析出させて捕集する固形物捕集装置であって、
排ガスの導入部および排出部を備えた容器と、
前記容器内で固形物を析出させるために前記容器を冷却する冷却器と、
前記容器内で析出した固形物を捕集するために、前記容器内での前記導入路から前記排出路までの排ガスの経路中に配置されたフィルターと、
を有し、
前記導入部は、内管部と外管部とを有し前記内管部を通って排ガスが前記容器内に導入されるように構成された二重管構造とされ、前記内管部と前記外管部との隙間の大きさが、2.5mmより大きく、かつ40mm以下であることを特徴とする固形物捕集装置。
【請求項2】
前記容器はガス導入口を有し、前記導入部は、前記ガス導入口に接続されたガス導入管の前記容器との接続側端部である、請求項1に記載の固形物捕集装置。
【請求項3】
前記導入部および排出部は前記容器の上部に位置している、請求項1または2に記載の固形物捕集装置。
【請求項4】
前記冷却器は前記容器の側面に取り付けられている、請求項3に記載の固形物捕集装置。
【請求項5】
前記容器内に設置され、前記導入部から前記容器内に導入された排ガスが、前記冷却器が取り付けられた前記容器の側面に沿って流れるように、前記容器内での排ガスの流れを案内する仕切り板をさらに有する、請求項4に記載の固形物捕集装置。
【請求項6】
前記フィルターは、前記容器の内部で前記排出部と接続されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の固形物捕集装置。
【請求項7】
前記フィルターはバグフィルターである、請求項1から6のいずれか1項に記載の固形物捕集装置。
【請求項8】
前記バグフィルターは、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレンまたはクロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体から作られている、請求項7に記載の固形物捕集装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の固形物捕集装置を用いて、固形物を含有する排ガスから前記固形物を捕集する固形物捕集方法であって、
前記固形物捕集装置の導入部の内管部から容器内へ前記排ガスを導入する工程と、
前記容器内に導入された排ガスから前記固形物を析出させる工程と、
析出した前記固形物を、前記容器内に配置されたフィルターに捕集する工程と、
前記固形物が捕集された排ガスを、前記固形物捕集装置の排出部から排出する工程と、
を有する固形物捕集方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−162438(P2010−162438A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4806(P2009−4806)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】