固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法。
【課題】機械産業、自動車産業などに用いられる高速切削工具及びダイ用材料に適用されて材料の機械的な特性、特に、硬度及び靭性を高められる固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法を提供する。
【解決手段】周期表4、5及び6族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはこれらの混合物を含む固溶体粉末であり、前期固溶体粉末のマイクロ構造は完全固溶相である固溶体粉末及びその焼結体であるセラミック。及びその製造方法。また、前記セラミックのコーティング方法。
【解決手段】周期表4、5及び6族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはこれらの混合物を含む固溶体粉末であり、前期固溶体粉末のマイクロ構造は完全固溶相である固溶体粉末及びその焼結体であるセラミック。及びその製造方法。また、前記セラミックのコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の機械製造などの機械産業、自動車産業などに用いられる高速切削工具及びダイ用材料に適用されて材料の機械的な特性、特に、硬度及び靱性を高められる固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、“ナノサイズ”とは、よく知られているように、100nm以下の寸法を意味する。
【0003】
この明細書および特許請求の範囲には、大文字 W,M1,M2・・及び小文字 w,m1,m2..が使用されている。小文字 w,m1,m2..は、意図的に、大文字 W,M1,M2・・に比べて相対的に少量の金属を表記するときに使われている。
【0004】
機械産業に必要な金属切削に用いられる切削工具または耐摩耗性工具として、WC系の硬質合金、種々のTiCまたはTi(CN)系のサーメット合金及び他のセラミックまたは高速鋼などが使われる。
【0005】
サーメットとは、セラミック金属複合物の焼結体を意味する。一般的に、サーメットは、TiC及びTi(CN)の硬質相とNi、Co、Feなどの金属結合相及び周期表のIV、V及びVI族の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物などの添加物を含む。
【0006】
すなわち、通常、サーメットは、TiCまたはTi(CN)に加えて、WC、NbC、TaC、Mo2Cなどの硬質セラミック粉末を前記セラミック粉末の結合のためのマトリクス相であるCo、Niなどの金属粉末と混合し、前記混合物を真空または水素の雰囲気下で焼結することにより製造される。
【0007】
チタン炭化物及びチタン炭窒化物は、様々な応用分野を有する、硬度に優れた物質である。 チタン炭化物は、高い硬度(ビッカース=3200kg/mm2)、高融点(3260℃)、高い化学的・熱的安定性、高い耐磨耗性及び他の炭化物に対する高い溶解性を有することから、WC−Co合金の代わりに、高速切削工具として用いられてきた。 しかしながら、TiC−Niサーメットシステムにおいて、TiC粒子の粗粒化は、不良な機械的特性を引き起こす。さらに、TiCを用いてサーメットを製造する場合、焼結に当たり、結合相金属としてのNiが液体金属として用いられる結果、WC−Coの結合に比べてぬれ角が大きくなり、TiCの早い粒子の成長が起こり、これは、サーメットの靱性の低下の問題を引き起こす。
【0008】
それにもかかわらず、1956年にフォード自動車社は、TiC−Mo2C−Niサーメットを大量生産した。前記サーメットの靱性はあまり高くなかったものの、前記サーメットは、精密な機械の加工のための高硬度工具用材料として、中削り及び仕上げ削りに用いられてきた。
【0009】
1960年代及び1970年代には、TiC−Niサーメットシステムの大きな弱点となる靱性を高めるために、TiC−Niサーメットに各種の成分を添加しようとする試みがあったが、これといった結果を得ることはできなかった。
【0010】
その中で、1970年代には、もっと安定した熱力学相を有するTi(C,N)を形成するために、TiNをTiCに添加しようとする試みが行われた。
【0011】
すなわち、Ti(C,N)は、TiCに比べてマイクロ微細構造を有しているため、化学的な安定性及び機械的な衝撃抵抗性に加えて、その靱性が高くなった。
【0012】
一方、靱性を高めるために、WC、Mo2C、TaC、NbCなど各種の添加炭化物が用いられてきており、現在では、Ti(C,N)−M1C−M2C−・・・−Ni/Coタイプの製品が市販されている。
【0013】
靱性を高めるために添加炭化物を適用するとき、通常のTiC系またはTi(C,N)系サーメット焼結体のマイクロ構造は硬質相のコア/リム構造として観測され、前記硬質相をNi、Coなどの結合相が取り囲んでいる。
【0014】
このような構造のコアは、焼結中に液化金属バインダ(Ni,Coなど)内で溶解されないTiCまたはTi(C,N)であり、前記コアは、高硬度を持つ構造を有する。
【0015】
逆に、前記コアを取り囲んでいるリム構造は、コア成分であるTiCまたはTi(CN)及び添加剤である炭化物の固溶体である[前記固溶体は、(Ti,M1,M2・・・)(C,N)のように表される]。
【0016】
リム構造は、硬度よりは高い靱性を有する。このため、TiCまたはTi(C,N)−Niなどの単純なサーメットが有する靱性の致命的な弱点を解決するために、リム構造がサーメットに提供されてきた。
しかしながら、サーメットコア/リム構造を有するサーメットは、依然としてWC−Co硬質合金の靱性よりも低い靱性を有するという問題があり、前記サーメットは、まだWC−Coに完全に代えられるものではない。
【0017】
さらに、コア及びリム相間の界面における応力変形は物性に否定的な影響を与え、機械の加工工程中に界面を通じてひび割れの伝播を促する。このため、住友や京セラなどのような日本の工具会社及びEUとNATOの研究者は、コア/リム構造を有さない単一相の均一な固溶体を生産するために多くの努力を遂行した。しかし、このような均一性を目指す多くの産業的な試みは、コア/リム構造を有さない単一相の均一な固溶体を提供することに失敗した。
【0018】
詳しくは、固溶相は焼結工程中に形成され、その形成される固溶相の量は焼結工程の時間及び温度によるが、これには、1400℃以上の高温と相対的に長時間が要されるために、従来の技術によれば、1300℃以下の低温及び相対的に短時間の還元及び炭化条件下でコア/リム構造を有さない均一な固溶相を得ることはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本発明は、従来の技術における上記のような問題を解決するためになされたものである。
【0020】
本発明の目的は、マイクロ構造としてコア/リム構造を有さない完全固溶相が得られることから、通常のサーメット(特に、TiCまたはTi(CN)などのサーメット)が有する高硬度による低靱性の問題が解決され、さらに、靱性に加えて硬度も一層高くなり、これにより、セラミックまたはサーメットを用いる材料の通常の機械的な物性を実質的にかなり増大させるに伴い、WC−Co硬質材料に代えて、高硬度及び高靱性を有する切削工具を製造可能にし、コア/リム構造を有さない完全固溶相が1300℃以下の低温及び相対的に短時間の還元及び炭化条件下でも得られることから、全体として工程の効率性を高められる、固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明によれば、周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはこれらの混合物を含む固溶体粉末であり、前記固溶体粉末のマイクロ構造は、完全固溶相を有する固溶体粉末が提供される。
【0022】
本発明による固溶体粉末において、前記固溶体粉末は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する。
【0023】
本発明による固溶体粉末において、Tiを除く他の成分の量は、5〜90重量%である。
【0024】
本発明による固溶体粉末において、Wの量は10〜90重量%である。
【0025】
本発明による固溶体粉末において、Wの量は10〜80重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に25重量%以下である。
【0026】
本発明による固溶体粉末において、Wの量は10〜80重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下である。
【0027】
本発明による固溶体粉末において、Wの量は30〜90重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下である。
【0028】
さらに、本発明において、前記固溶体粉末の焼結体であるセラミックが提供される。
【0029】
本発明によるセラミックにおいて、前記セラミックは、前記セラミックの表面上にTiC−Me、Ti(CN)−Me、(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層をさらに含み、前記強化コーティング層は、前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成される。
【0030】
さらに、本発明によれば、(i)周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはその混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、完全固溶相のマイクロ構造を有するサーメット粉末が提供される。
【0031】
本発明によるサーメット粉末において、前記サーメット粉末は、(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、完全固溶相のマイクロ構造を有するサーメット粉末である。
【0032】
本発明によるサーメット粉末において、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する。
【0033】
本発明によるサーメット粉末において、Wの量は10〜85重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下であり、Ni、Co及び/またはFeの結合相の量は30重量%以下である。
【0034】
本発明によるサーメット粉末において、Wの量は10〜60重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下であり、Ni、Co及び/またはFeの結合相の量は30重量%以下である。
【0035】
さらに、本発明によれば、前記サーメット粉末の焼結体であるサーメットが提供される。
【0036】
本発明によるサーメットにおいて、前記サーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni、Co、Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末及びいずれも100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するWC−Me、Mo2C−Me、TaC−Me、NbC−Me、ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のサーメット粉末の混合物の焼結体であり、前記焼結体は、TiCまたはTi(CN)のコアを有するサーメットである。
【0037】
本発明によるサーメットにおいて、前記サーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及び(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒及び完全固溶相を有するサーメット粉末の混合物の焼結体である。
【0038】
本発明によるサーメットにおいて、前記サーメットは、TiC、Ti(CN)、(Ti,M1,M2..)Cまたは(Ti,M1,M2..)(CN)の硬質相が前記サーメットの表面上だけにさらに含まれ、前記硬質相は、炉への窒素注入量及び/または炉への窒素注入時間を制御しながら前記サーメット粉末を焼結することにより形成される。
【0039】
本発明によるサーメットにおいて、前記サーメットは、前記サーメットの表面上にTiC,TiN、Ti(CN)、TiAlNまたはTiAlCrNの強化コーティング層の1以上の層を含み、前記強化コーティング層は、前記サーメット粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成される。
【0040】
さらに、本発明によれば、ナノサイズを有する周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と予定された組成で混合する段階(S1−1)と、前記混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含む固溶体粉末の製造方法が提供される。
本発明による方法において、前記(S1−1)段階は、前記混合物を粉砕する段階をさらに含む。
【0041】
さらに、本発明によれば、ミクロンサイズを有する周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と予定された組成で混合し、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階(S1−2)と、前記混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含む固溶体粉末の製造方法が提供される。
【0042】
さらに、本発明によれば、前記固溶体粉末を焼結する段階を含むセラミックの製造方法が提供される。
【0043】
本発明による方法において、前記方法は、TiC−Me,Ti(CN)−Me,(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feから選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層をセラミックの表面に形成する段階を含み、前記強化コーティング層は、前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成される。
【0044】
さらに、本発明によれば、(i)ナノサイズを有する、Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ナノサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合する段階(S1−3)と、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むサーメット粉末の製造方法が提供される。
【0045】
本発明による方法において、前記(S1−3)段階は、(i)ナノサイズを有する、Ni、Co及びFeから選ばれた少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ナノサイズを有する、周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合する段階を含む。
【0046】
本発明による方法において、前記(S1−3)段階は、前記(i),(ii)及び(iii)混合物を粉砕する段階をさらに含む。
【0047】
さらに、本発明によれば、(i)ミクロンサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ミクロンサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合し、前記(i),(ii)及び(iii)の混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階(S1−4)と、前記(i),(ii)及び(iii)の混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むサーメット粉末の製造方法が提供される。
【0048】
本発明による方法において、前記(S1−4)段階は、(i)ミクロンサイズを有する、Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ミクロンサイズを有する、周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合し、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階を含む。
【0049】
本発明による方法において、前記(S2)段階は、前記還元及び炭化に加えて、前記混合物を窒化する段階をさらに含む。
【0050】
本発明による方法において、前記(S2)段階は、前記還元及び炭化が1000ないし1300℃の温度及び3時間以下の条件下で、真空または水素、CH4、CO/CO2の雰囲気下で行われた後、窒化が窒素の雰囲気下で行われる。
【0051】
さらに、本発明によれば、前記サーメット粉末を焼結する段階を含むサーメットの製造方法が提供される。
【0052】
本発明による方法において、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及びいずれも100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するWC−Me、Mo2C−Me、TaC−Me、NbC−Me、ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のサーメット粉末の混合物が焼結される。
【0053】
本発明による方法において、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni、Co、Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である。)のサーメット粉末、及び(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒及び完全固溶相を有するサーメット粉末の混合物が焼結される。
【0054】
本発明による方法において、前記方法は、炉内への窒素注入時間及び/または炉内への窒素注入量を制御しながらサーメット粉末を焼結することにより、TiC、Ti(CN)、(Ti,M1,M2..)Cまたは(Ti,M1,M2..)(CN)の硬質相を前記サーメットの表面にのみ形成する段階をさらに含む。
【0055】
本発明による方法において、前記方法は、前記サーメット粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法によりTiC、TiN、Ti(CN)、TiAlNまたはTiAlCrNの強化コーティング層の1以上の層を前記サーメットの表面に形成する工程をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明において、“炭素源物質”とは、炭素粉末を除いて、他の物質に炭素を与えられる物質を意味し、アセトン、エタノール、ブタノール、4塩化炭素、4臭素化炭素、3塩化臭素化メタンなどを含む。
【0057】
本発明において、金属の酸化物に加えて、水酸化物、炭酸化物または水化物は、前記水酸化物、炭酸化物または水化物が酸化物のように容易に還元可能であるという点で、採用可能である。
【0058】
本発明によれば、固溶体粉末または前記固溶体粉末に加えて、結合相金属を含む凝集体であるサーメット粉末は、コア/リム構造を有さない完全固溶体相を提供することができ、これに従い製造されたサーメットの靱性を実質的にかなり高めることができる。
【0059】
さらに、好ましくは、前記固溶体粉末または前記サーメット粉末は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する。もちろん、前記固溶体粉末またはサーメット粉末の結晶粒径は、シェラー法(scherrer法)、 直線フィッティング方法及び最小自乗フィッティング方法などの分析方法に応じて異なる分析結果が得られる。しかし、本発明の方法の効率性の観点から、公知の分析方法を用いるいかなる場合にも、本発明に従い製造された前記固溶体粉末またはサーメット粉末の結晶粒径は、100nmを超えないことが好ましい。
【0060】
本発明によれば、前記固溶体粉末及びサーメット粉末を製造する方法は、それぞれ2段階を含む。
【0061】
固溶体粉末を製造する第1の段階は、ナノサイズを有する、周期表IV、V、VI族の成分からTiを含んで選ばれた金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と混合するか、あるいは、混合後に、必要に応じて前記混合物を粉砕すること(S1−1)を含む。
【0062】
または、前記固溶体粉末を製造する第1の段階は、ミクロンサイズを有する、周期表IV、V、VI族の成分からTiを含んで選ばれた金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と混合し、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕すること(S1−2)を含む。
【0063】
完全固溶相を有する炭化物または炭窒化物の固溶体粉末を製造するために、前記第1の段階においては、ナノサイズを有する入手可能な酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物が使用できる。好ましくは、高エネルギーボールミル(例えば、プラネタリーミルまたはアトリッションミル(attrition mill))を用いてミクロンサイズを有する酸化物、水酸化物、炭酸化物、または水化物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する。
【0064】
すなわち、例えば、ナノサイズを有するTiC系の固溶体粉末を製造するために、ナノサイズのTiO2、ナノサイズの周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の金属の酸化物(例えば、WO3)を炭素粉末と共に混合する。その後、必要に応じて、ナノサイズの酸化物及び炭素粉末の混合粉末を粉砕する段階をさらに行う。
【0065】
しかしながら、混合及び/または粉砕に先立って、既にナノサイズである金属酸化物が用いられない場合、ミクロンサイズのTiO2、ミクロンサイズの周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の金属の酸化物を炭素粉末と共に混合した後、ナノサイズまたは非晶質状態を有するように前記混合された粉末を粉砕する。
【0066】
ここで、混合量は、固溶体粉末の予定された組成に応じて適宜に選択できる。さらに、粉砕に当たり、上述したように、高エネルギーボールミルが使用可能である。本発明において、単に前記ボールミル過程を行っただけで、ナノサイズの結晶粒または非晶質状態が容易に得られる。
【0067】
一方、サーメット粉末を製造する第1の段階は、ナノサイズを有する、周期表IV、V、VI族の成分から、好ましくは、Tiを含んで選ばれた金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及びナノサイズを有する、Ni、CoまたはFeなどのバインダを炭素粉末または炭素源物質と混合するか、あるいは、混合後、必要に応じて前記混合物を粉砕することを含む。
【0068】
または、サーメット粉末を製造する第1の段階は、ミクロンサイズを有する、周期表IV、V、VI族の成分から、好ましくは、Tiを含んで選ばれた金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及びミクロンサイズを有する、Ni、CoまたはFeなどのバインダを炭素粉末または炭素源物質と混合し、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕することを含む。
【0069】
すなわち、本発明によるサーメット粉末を製造するために、ナノサイズのNi、Co、FeまたはNi/Coなどのバインダ金属及びナノサイズを有する周期表IV、V、VI族の成分から、好ましくは、Tiを含んで選ばれる金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物、または水化物を炭素粉末または炭素源物質と共に混合する。この場合、必要に応じて、粉砕をさらに行っても良い。
【0070】
ここで、Ni、Coなどのミクロンサイズの結合金属が用いられるとき、ナノまたはミクロンサイズを有する周期表IV,V,VI族成分から、好ましくは、Tiを含んで選ばれる金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及び炭素粉末または炭素源物質と前記ミクロンサイズの結合金属を混合した後、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する。
【0071】
前記第1の段階によれば、コア/リム構造を有さない完全固溶相の均一なマイクロ構造が得られる。さらに、さらなる混合過程が無くても、前記固溶体粉末またはサーメット粉末を直接的に焼結すれば、セラミックまたはサーメットが得られる。さらに、拡散速度を高めると共に、拡散距離を短縮させる欠陥が十分にある非晶質状態またはナノ結晶粒を生産することにより、後述するように、全体としての工程効率のアップを意味する1300℃以下の低温及び相対的に短時間で還元及び炭化することが可能である。
【0072】
次いで、固溶体粉末及びサーメット粉末を製造するための第2の段階は、(S2)還元及び炭化を含む。必要に応じて、前記第2の段階は、還元、炭化及び窒化を含む。
【0073】
すなわち、前記混合及び/または粉砕された混合物が、例えば、真空、水素、CO/CO2またはCH4の雰囲気下で還元及び炭化(炭化・窒化)された後、ナノ結晶粒を有する完全固溶相よりなる固溶体粉末が製造される。また、サーメット粉末の場合、ナノ結晶粒及び完全固溶相を有する凝集体が製造される。
【0074】
さらに、例えば、炭窒化物を形成するに当たり、還元及び炭化は、真空または水素の雰囲気下で1000ないし1300℃の温度及び3時間以下の条件下で焼鈍を行うことによりなされ(このように低温及び相対的に短時間が実現可能である点に注目されたい。)、その後に窒化が行われることにより、最小量の酸素と適宜な炭素及び窒素の量が保証され、ひび割れの形成が防がれるほか、サーメットの機械的な特性が向上する。
【0075】
酸素の含量は、前記過程により得られる炭化物または炭窒化物のナノ粉末内において重要な因子である。一般に、前記酸素の含量が増えると、これは、ひび割れの形成につながるため、酸素の含量に応じて、最小限の酸素の含量と炭素の適正量を保証する必要がある。
【0076】
このため、混合及び/または粉砕された粉末は、真空または水素の雰囲気下で1000ないし1300℃で3時間以下還元後に炭化されることにより(炭化及び窒化)、下記の実施例に示すように、ナノ粉末は、特に、Ti(CN)系のナノ結晶粒の場合、通常のミクロンサイズ粉末の酸素の含量とほとんど同じ酸素含量を有する。
【0077】
加工条件下で、窒素の量は、加工温度、粉末構成時の窒素の粉圧、粉末への炭素の添加量に応じて自由に選択可能である。特に、安定的な組成として、C/N(モル比)が3/7、5/5または7/3であることが好ましく、7/3であることが一層好ましい。
【0078】
その後、得られた固溶体粉末またはサーメット粉末は、真空などの雰囲気下で前記固溶体粉末またはサーメット粉末を所定の温度と時間の条件下で焼結することにより、完全な固溶相を有するセラミックまたはサーメットを得る。
【0079】
本発明による方法によれば、(Ti,M1,M2・・・)C,(Ti,M1,M2・・・)(C,N),(Ti,M1,M2・・・)C−Ni及び(Ti,M1,M2・・・)(C,N)−Ni・・・のタイプを有する完全固溶体粉末が製造できる。さらに、前記固溶体粉末を用いるセラミック、前記固溶体粉末を含むサーメット粉末、前記サーメット粉末を用いたサーメットが得られる。
【0080】
特に、本発明に従い製造されたTiCまたはTi(CN)系の固溶体粉末は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する。さらに、本発明に従い製造されたセラミック及びサーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する凝集体となる。
【0081】
前記粉末及び凝集体は、各種のサイズに調節可能である。すなわち、時間、速度、温度などの粉砕条件、時間、温度などの粉末組成条件を調節することにより、前記粉末及び凝集体のサイズが調節可能である。さらに、前記凝集体は、サブミクロンサイズ(100nm及び1μm下)及びミクロンサイズ(数μm)を有するように製造できる。
【0082】
しかし、先行技術によるサーメットの製造装置及び工程は、サブミクロン以上のサイズを有する粉末に対して最適化されているため、アプローチの容易さ及び経済的な効率性という観点から、200nm以下の凝集体を本発明に従い製造することが好適である。
【0083】
本発明の固溶体粉末内に固溶されている全ての金属は、各金属の固溶度の範囲内で完全な固溶相を形成することができる。これは、サーメット粉末の場合にも同様である。
【0084】
Tiが本発明の完全な固溶体粉末内に含まれるとき、Tiを除く他の成分の量は、5〜90重量%であることが好ましい。
【0085】
特に、本発明の完全な固溶体粉末において、例えば、Wが含まれる場合、Wの量は10〜90重量%である。さらに、Wが他のMo、Nb、Taと共に含まれる場合、Mo、Nb及び/またはTaの量は0〜25重量%であり、好ましくは、0〜10重量%であり、Wの量は、好ましくは、30〜90重量%である。さらに、サーメット粉末の場合、Mo、Nb及び/またはTaの量は0〜10重量%であり、Wの量は10〜85重量%であり、好ましくは、10〜60重量%であり、Ni、Co及び/またはFeの結合相の量は0〜30重量%である。
【0086】
また、本発明の範囲は、例えば、WCの大量(重量比を基準にWC/TiC>4)の使用により、焼結体のマイクロ構造内においてWCと共存する(Ti,W)Cの焼結体を含む。
【0087】
本発明において、本発明による高強度を有するサーメットまたはセラミックの強度を一層高めるために、本発明による焼結中に前記サーメットまたはセラミックの表面上に強化層またはコーティング層の1以上の層が形成される2通りの方法が使用可能である。
一つは、サーメットまたはセラミックの表面に硬質層を形成する方法であり、もう一つは、サーメットまたはセラミックの表面上に高硬質コーティング層を形成する方法である。
【0088】
例えば、サーメットの表面に前記硬質層を形成するために、好ましくは、炉への窒素注入量及び炉への窒素注入時間が、本発明による焼結中に調節される。
【0089】
すなわち、本発明によるサーメット粉末の焼結中に、窒素1〜100torrが焼結温度調節中またはその前に炉内に導入され、気圧は冷却過程まで保たれる。これにより、(Ti,W,M1,M2・・・)C/(Ti,W,M1,M2・・・)CNタイプの固溶体相は、分解により WC,M1C,M2Cを有するか又は有さない高硬質のTiC,Ti(CN),(Ti,w,m1,m2..)Cまたは(Ti,w,m1,m2..)(CN)となり、前記高硬質相は、前記サーメットの表面だけに硬質層として形成され、これにより、全てのサーメット焼結体は高靱性を保持して高硬度を有する。
【0090】
さらに、サーメットの表面上に高硬度コーティング層を形成するために、TiC,TiN,Ti(CN),TiAlN,TiAlCrNの高硬度コーティング層の1以上の層が、本発明によるサーメット粉末の焼結後にCVD,PVDなどの方法によりサーメットの表面上に形成される。さらに、格子不整合を制御する(前記格子不整合を減らす)必要がある場合、本発明によるサーメット粉末の焼結中に、真空またはアルゴン、窒素などの雰囲気下で金属の結合相をサーメットの表面上に増やすか、あるいは、前記サーメットの表面上に固溶相を一層大きくした後(前記サーメットが拡張されたサイズの固溶相を有する)、前記高硬度コーティング層を形成する。
【0091】
さらに、前記セラミックの表面上に(特に、靱性)強化コーティング層を形成するために、TiC−Me,Ti(CN)−Me,(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層が前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法によりセラミックの表面上に形成される。
【0092】
さらに、前記方法の採用有無を問わずに、本発明において、全体的に高硬度を有する高靱性の極微細またはナノサイズのサーメットが次の2つの方法により製造できる。
【0093】
一つは、TiC−MeまたはTi(CN)−Meのナノ結晶粒粉末を本発明によるWC−Me,Mo2C−Me,TaC−Me,NbC−Me,ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)と共に所定量だけ混合し、微細なTiCまたはTi(CN)コアを有するように焼結する方法である。
【0094】
もう一つは、TiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のナノ結晶粒粉末及び本発明による完全固溶体のサーメット粉末を所定量だけ混合し、前記サーメットの硬度が上がるように焼結する方法である。
【0095】
上述したように、前記方法は、サーメットの表面上に硬質層を形成する方法またはサーメットの表面上に高硬質コーティング層を形成する方法と併用できる。
【実施例1】
【0096】
実施例として、純度99+%のアナターゼTiO2、純度99%のNiO(平均粒径45μm)及び純度99+%のWO3(平均粒径20μm)が用いられた。
【0097】
次の如き6通りの目標組成を得るために、炭素粉末が混合された。(i)(Ti,W)
C−Ni(WC15重量%を含む。)、(ii)(Ti,W)C−Ni(WC30重量%を
含む。)、(iii)(Ti,W)(C,N)−Ni(WC15重量%を含む、C/N=2:
1)、(iv)(Ti,W)(C,N)−Ni(WC30重量%を含む、C/N=3:1)
、及び(v)(Ti,W)C(WC15重量%を含む。)、(vi)(Ti,W)C(WC
の量を変える。)これらは高エネルギーボールミルであるプラネタリーミル(Fritsch Pulverisette 7)を用いて粉砕された。直径5mmのタングステン炭化物(WC)ボールが粉砕媒体として使用され、ボール対粉末の重量比を20:1として粉末との混合が行われた。
タングステン炭化物容器が使用され、全ての粉砕は、大気中で20時間、250RPMの速度にて行われた。
【0098】
これにより、粉砕されたナノ粉末は、真空または水素雰囲気下、1300℃で1時間30分間、焼鈍により還元及び炭化された。ここで、炭窒化物の場合、窒素が真空炉に注入されて窒化された。
図1は、本発明の一実施例に従い製造されたナノ粉末のXRD相の分析結果を示す。
さらに、図1(a)は、(Ti,W)Cの完全固溶体粉末(WC15重量%を含む。)がTiO2,WO3及びCの混合物から得られることを示す。図1(b)は、(Ti,W)C−Niの完全固溶相を有するサーメット粉末(WC30重量%を含む。)がTiO2,WO3,NiO及びCの混合物から得られることを示す。図1(c)は、(Ti,W)(C,N)−Niの完全固溶相を有するサーメット粉末(WC30重量%を含む。)がTiO2,WO3,NiO及びCの混合物から得られることを示す。
【0099】
図1(a)に示すように、形成された固溶体相は単一相であり、これは、先行技術では形成が不可能であった。また、図1(b)及び図1(c)は、Niナノ粉末が単一固溶相と混合された状態で存在することを示す。
【0100】
これより、ナノサイズのNi及びナノサイズの炭化物または炭窒化物を用いて均一なマイクロ構造を得られるということが分かる。また、前記方法によれば、サーメットの製造工程内におけるさらなる混合過程無しに直接焼結によりサーメットが得られる。
【0101】
図2aは、本発明による一実施例に従い製造された(Ti,W)C−Ni粉末(WC15重量%を含む。)を示すSEM写真であり、図2bは、本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C−Ni粉末(WC15重量%を含む。)を示すTEM写真である。
【0102】
図2aから明らかなように、前記粉末が与えられたスケールで略200nmの均一な凝集体として形成され、図2bから明らかなように、前記粉末が与えられたスケールで略100nmよりも小さな混合凝集体として形成されている。
【0103】
図2c(1)は本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C粉末(WC45重量%を含む。)を示すSEM写真、図2c(2)は本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C粉末(WC45重量%を含む。)を示すTEM写真である。
図2c(1)のSEM写真は、前記粉末が与えられたスケールで100nm〜1μmと均一な凝集体を形成していることを示し、図2c(2)のTEM写真は、前記粉末が与えられたスケールで20〜50nmと小さな炭化物凝集体を形成していることを示す。
通常、このような凝集現象はナノ粉末において見られ、凝集体の形成は、過度な凝集を除いては、焼結に寄与する。
表1は、前記過程により前記組成に基づいて製造された粉末のCNO成分の分析結果である。比較例として、同じ組成を有する市販粉末に対する分析が行われた。
【0104】
【表1−1】
【0105】
【表1−2】
【0106】
表1−1から明らかなように、得られたナノ粉末は15及び30重量%のWCを有する(Ti,W)C−Ni及び(Ti,W)(C,N)−Niのサーメット粉末であり、特に、(Ti,W)(C,N)−Niの場合、酸素の含量は市販粉末の酸素含量よりも低い。
表1−2から明らかなように、Niを有さない(Ti,W)Cの固溶体粉末の場合、WCの量が増えるにつれて酸素の量は減る。
表2は、各種の組成を有する固溶体粉末を示す。
【0107】
【表2】
【0108】
本発明の方法に従い製造された上記の如き組成を有する粉末は、10-2Torrの真空雰囲気下の1510℃で1時間焼結された。
図3aは、組成(i)及び(ii)を有する焼結済み試料のマイクロ構造を示す写真であり
、左側の写真は組成(i)の場合であり、右側の写真は組成(ii)の場合である。
図3bは、組成(iii)及び(iv)を有する焼結済み試料のマイクロ構造を示す写真であり
、左側の写真は組成(iii)の場合であり、右側の写真は組成(iv)の場合である。
図3aに示すように、(Ti,W)C−Ni固溶体粉末を用いて焼結を行ったときの結晶粒径は100nm以下であり、図3bに示すように、(Ti,W)(C,N)−Ni固溶体粉末の場合、マイクロ構造は1μm以下であった。
【0109】
図3c(1)は1120℃で1時間還元及び炭化されたTiC−45重量%WC、図3c(2)は1120℃で1時間還元及び炭化されたTiC−77重量%WC、図3c(3)は1200℃で1時間還元及び炭化されたTiC−58重量%WC、図3c(4)は1200℃で1時間還元及び炭化されたTiC−77重量%WCにそれぞれ該当する組成を有する焼結された(Ti,W)Cセラミック(1510℃及び1時間)のマイクロ構造を示す写真である。
【0110】
図3cに示すように、(Ti,W)Cの固溶体粉末として焼結されるとき、(1)及び(3)からはWCがよく見られなかった。一方、(Ti,W)Cの暗くて明るい灰色の相と共に3〜5μmのWC(白色相)が存在するマイクロ構造が現れた。
【0111】
図3dは、1200℃で1時間炭化・還元後、1450℃で1時間焼結されたTiC−xWC−10Co(重量%)において、(a)x=85,(b)x=80,(c)x=70,(d)x=60である組成に該当するサーメットのSEM/BSEイメージを示す。白色及び黒色相はそれぞれWC及びCoであり、暗くて明るい灰色相は(Ti,W)Cである。
【0112】
図3dに示すように、WCの量に応じて、WCはマイクロ構造内において(Ti,W)Cと共存する。
【0113】
表3は、TiC−xWC−10Co(重量%)において、(a)x=85,(b)x=80,(c)x=70及び(d)x=60である組成に該当する図3dのサーメットの特性を示す。前記サーメットは、1200℃で1時間炭化・還元後、1450℃で1時間焼結された。
【0114】
【表3】
【0115】
その結果、通常のTi(C,N)−M1C−M2C−・・・−Ni/Coなどのシステムと比較するとき、コア/リム構造が観測されない完全な固溶相構造が形成されているということが分かった。
表4は、本発明の実施例に従い製造されたサーメットの機械的な特性を示す。比較のために、同じ組成を有するミクロンサイズの市販粉末により製造されたサーメットに対して評価が行われた。
【0116】
【表4−1】
【0117】
【表4−2】
【0118】
表4−1に示すように、得られたサーメットは、サーメットの単純な組成の場合にも高い焼結密度及び低い気孔度を有するということが分かった。さらに、比較例のサーメットにおけるKIC値は6〜8MPam1/2であるのに対し、本発明のサーメットにおけるKIC値は11〜14MPam1/2と高靱性である。これより、先行技術のサーメットよりは、本発明サーメットの方が幅広く使用できると予想できる。また、表4−2に示すように、本発明のセラミックは高い焼結密度、低い気孔度、高い靱性及び高い硬度を示す。
【実施例2】
【0119】
実施例として、先ず、簡単な目標組成が選択され、これにより、それぞれの含量による100nm結晶粒を有するTiO2,WO3,NiOナノ酸化物が製造された。
目標組成として、次の2種類の組成が選択された:(i)(Ti,W)C−Ni(WC1
5重量%を含む。)及び(ii)(Ti,W)C−Ni(WC30重量%を含む。)
炭素粉末及び前記のように得られたナノ酸化物が混合・粉砕され、粉砕されたナノ粉末は真空または水素、CH4,CO/CO2の雰囲気下、1300℃で2時間焼鈍されて還元及び炭化された。
得られたサーメット粉末を焼結する間に、1〜100Torrの窒素が前記焼結温度で炉内に導入され、圧力(1〜100Torr)が冷却過程中に保持された。
図4aは、本発明に従い製造された窒素雰囲気下における(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の焼結試料(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真である。
図4aには、試料の表面及び内部における、(Ti,W)C−Niの2種の相異なる完全固溶相を有する焼結試料のマイクロ構造が示してある。(Ti,W)C−Ni焼結体(WC15重量%を含む)がTiO2,WO3,NiO及びCの混合物から製造され、冷却過程まで焼結(1510℃及び1時間)する間に窒素(〜100Torr)の雰囲気に露出された。
窒素雰囲気下で焼結されたサーメットの内部及び表面における固溶体相の組成に対してSEM/EDS分析を行い、その結果を下記表5に示す。
【0120】
【表5】
【0121】
表5に示すように、形成された固溶相は組成がそれぞれ異なる。表面近くの固溶相は内部よりもTiの含量が一層高く、これは、表面層の硬度を高める。TiC/Ti(CN)系固溶体の硬度は、固溶体内のTiの含量に応じて増えると知られている。図4aは、表面近くの金属バインダの増大に伴う表面固溶体の増加を示している。
【0122】
これに対し、図4bは、本発明に従い製造された窒素雰囲気下における(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む)の焼結試料(1200℃及び1時間)の表面を示すFE−SEM写真である。
【0123】
図4bに示すように、焼結済み試料の表面のマイクロ構造は、黒色を有するTiC[または、Ti(CN)]の極めて硬い相の生成を示す。
【0124】
このため、焼結中または焼結前から窒素雰囲気を使用することにより、表面に一層硬いマイクロ構造が得られることが分かった。このような条件は、冷却過程まで拡張可能である。
【実施例3】
【0125】
実施例として、先ず、簡単な目標組成が選択され、これにより、各含量に応じて100nmの結晶粒径を有するTiO2,WO3,NiOナノ酸化物が製造された。
【0126】
目標組成として、4通りの組成が次のように選択された:(i)(Ti,W)C−Ni
(WC15重量%を含む)、(ii)(Ti,W)C−Ni(WC30重量%を含む)、(
iii)(Ti,W)CN−Ni(WC15重量%を含む)及び(iv)(Ti,W)CN−N
i(WC30重量%を含む)。
【0127】
炭素粉末及び得られた前記ナノ酸化物が混合・粉砕され、粉砕されたナノ粉末は真空または水素、CH4,CO/CO2雰囲気下、1300℃で2時間焼鈍されて還元及び炭化された。炭窒化物の場合、窒素が真空炉内に注入された。
【0128】
得られたサーメット粉末の焼結中に、真空雰囲気(または、アルゴン、窒素)が使用される。さらに、TiNのコーティング層がPVD方法により焼結されたサーメットの表面上に形成される。TiNのコーティング層は高硬度及び耐摩耗性を示し、サーメットの表面上にTiNのコーティング層を形成することは、サーメットの硬度を大いに高める効果をもたらす。
【0129】
図5は、(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む)の焼結体(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真であり、その表面には、本発明に従い、PVDによるTiNの硬質コーティング層がコーティングされている。
【0130】
図5に示すように、前記コーティング層は、サーメットの表面上に形成されている。前記層の厚さは、1〜1.5ミクロンであった。
本発明によるそれぞれの焼結体の機械的な特性を下記表6に示す。
【0131】
【表6】
【0132】
表6に示すように、たとえコーティング層は内部相の靱性よりも低い靱性を有するとしても、前記コーティング層は内部相の硬度よりも一層高い硬度を示す。このため、サーメットの表面上のコーティング層は、全体的(内部+コーティング層)に高靱性を有するサーメットに高硬度を与え、これにより、切削工具用サーメットとしての好適性が得られる。
【実施例4】
【0133】
実施例において、先ず、Ti(CN)−Ni,WC−Ni及びMO2C−Niのナノ粉末が混合のための目標組成として選択された。そして、これにより、各含量による100nmの結晶粒を有する(TiO2,NiO),(WO3,NiO)及び(MO2,NiO)のナノ酸化物が得られた。
【0134】
上述したように、次の3通りの組成が選択された。(i)Ti(CN)−Ni(Ni2
0重量%を含む、C/N=7:3)、(ii)WC−Ni(Ni20重量%を含む。)及び
(iii)MO2C−Ni(Ni20重量%を含む。)。
【0135】
炭素粉末及び得られた前記ナノ酸化物が混合・粉砕され、粉砕されたナノ粉末は真空または水素、CH4,CO/CO2の雰囲気下、1300℃で2時間焼鈍されて還元及び炭化された。炭窒化物の場合、窒素が真空炉内に注入された。
前記方法に従い製造された3通りのナノ粉末が次のような2種類の目標組成のために混合された。(i)Ti(CN)−Ni+WC−Ni(WC−Niを15重量%含む。)及び
(ii)Ti(CN)−Ni+MO2C−Ni(MO2C−Niを15重量%含む。)。
【0136】
図6aは、本発明によるTiC−Ni及びWC−Niのサーメット粉末混合物の焼結体(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真(バースケール:5μm)である。また、図6bは、本発明によるTi(CN)−Ni及びMO2C−Niのサーメット粉末混合物の焼結体(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真(バースケール:5μm)である。
図6a及び図6bに示すように、特にNiを含む炭化物及び炭窒化物の混合物の焼結体が得られた。このような方法によれば、硬度の強化及び組成の変化が容易になる。
【実施例5】
【0137】
実施例として、固溶体粉末を得るために各含量に応じて100nmの結晶粒を有するT i(CN)−Ni,(TiO2,WO3,NiO)及び(TiO2,NiO)ナノ酸化 物が得られた。
目標組成として、次の2通りの組成が選択された。(i)(Ti,W)(CN)−Ni(
WC30重量%を含む、Ni20重量%を含む。)及び(ii)Ti(CN)−Ni(Ni
20重量%を含む、C/N=7:3)。
【0138】
得られた(Ti,W)(CN)−Niの固溶体粉末及びTi(CN)−Niの粉末が予定された組成(30重量%のTi(CN)−Ni)で混合および焼結された。
【0139】
図7は、(Ti,W)(CN)−Ni及びTi(CN)−Niサーメット粉末混合物(30重量%Ti(CN)−Ni)の焼結体(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真である(バースケール:5μm)。
【0140】
図7に示すように、固溶体粉末とTi(CN)−Niの混合物の焼結体が得られた。このような方法によれば、硬度が容易に高められる。
【0141】
以上述べたように、本発明による固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法は、従来の技術によるTiCまたはTi(CN)系のサーメットなどのサーメットがその高い硬度のために一層低い靱性を有していた問題を解決することができ、靱性に加えて硬度を一層高めることにより、従来のWC−Coに代えて切削工具、ダイ材料などに好適に使用することができる。
【0142】
上述したように、本発明による固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法においては、固溶体粉末、特にTiCまたはTi(CN)系の固溶体粉末のマイクロ構造に完全固溶相を与えることができ、サーメット材料の靱性を実質的にかなり高めることができるほか、さらなる混合工程なしに直接焼結が行えるというメリットを有する。さらに、全体的に高い機械的な特性を有することから、WC−Coの超硬材料に代えて、高硬度及び高靱性の切削工具を製造することができるという効果もある。
【0143】
以上、本発明の好適な実施例を技術的な目的から説明したが、当業者にとっては、請求の範囲に開示された発明の範囲と思想を逸脱しない範囲内であれば、各種の変形、追加及び代替が行えるということは理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】図1(a)は本発明による(Ti,W)C固溶体粉末(WC15重量%を含む。)のXRD相の分析結果を示し、図1(b)は本発明による(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む。)のXRD相の分析結果を示し、図1(c)は本発明による(Ti,W)(C,N)−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む、C/N=3:1)のXRD相の分析結果を示す 。
【図2a】本発明による(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の形状を示すSEM写真である。
【図2b】本発明による(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の形状を示すTEM写真である。
【図2c】図2c(1)は本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C粉末(WC45重量%を含む。)を示すSEM写真、図2c(2)は本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C粉末(WC45重量%を含む。)を示すTEM写真である。
【図3a】本発明による(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)及び(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む。)の各焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図3b】本発明による(Ti,W)(C,N)−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む、C/N=2:1)及び(Ti,W)(C,N)−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む、C/N=3:1)の各焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図3c】図3c(1)は1120℃で1時間還元及び炭化されたTiC−45重量%WC、図3c(2)は1120℃で1時間還元及び炭化されたTiC−77重量%WC、図3c(3)は1200℃で1時間還元及び炭化されたTiC−58重量%WC、図3c(4)は1200℃で1時間還元及び炭化されたTiC−77重量%WCにそれぞれ該当する組成を有する焼結された(Ti,W)Cセラミック(1510℃,1時間)のマイクロ構造を示す写真である 。
【図3d】図3dは1200℃で1時間炭化・還元後、1450℃で1時間焼結されたTiC−xWC−10Co(重量%)において、(a)x=85,(b)x=80,(c)x=70,(d)x=60である組成に該当するサーメットのSEM/BSEイメージを示す。白色相及び黒色相がそれぞれWC及びCoであり、暗くて明るい灰色相が(Ti,W)Cである。
【図4a】本発明に従い製造された、窒素の雰囲気下で焼結(1510℃,1時間)された(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の試料を示すFE−SEM写真である。
【図4b】本発明に従い製造された、窒素の雰囲気下で焼結(1200℃,1時間)された(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む。)の試料の表面を示すFE−SEM写真である。
【図5】本発明によるPVDによりTiNの硬質コーティング層が表面にコーティングされた(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図6a】本発明によるTiC−Ni及びWC−Niサーメット粉末混合物の焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図6b】本発明によるTi(CN)−Ni及びMO2C−Niサーメット粉末混合物の焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図7】(Ti,W)(CN)−Ni及びTi(CN)−Niサーメット粉末混合物(30重量%Ti(CN)−Ni)の焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の機械製造などの機械産業、自動車産業などに用いられる高速切削工具及びダイ用材料に適用されて材料の機械的な特性、特に、硬度及び靱性を高められる固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この明細書および特許請求の範囲において、“ナノサイズ”とは、よく知られているように、100nm以下の寸法を意味する。
【0003】
この明細書および特許請求の範囲には、大文字 W,M1,M2・・及び小文字 w,m1,m2..が使用されている。小文字 w,m1,m2..は、意図的に、大文字 W,M1,M2・・に比べて相対的に少量の金属を表記するときに使われている。
【0004】
機械産業に必要な金属切削に用いられる切削工具または耐摩耗性工具として、WC系の硬質合金、種々のTiCまたはTi(CN)系のサーメット合金及び他のセラミックまたは高速鋼などが使われる。
【0005】
サーメットとは、セラミック金属複合物の焼結体を意味する。一般的に、サーメットは、TiC及びTi(CN)の硬質相とNi、Co、Feなどの金属結合相及び周期表のIV、V及びVI族の金属の炭化物、窒化物、炭窒化物などの添加物を含む。
【0006】
すなわち、通常、サーメットは、TiCまたはTi(CN)に加えて、WC、NbC、TaC、Mo2Cなどの硬質セラミック粉末を前記セラミック粉末の結合のためのマトリクス相であるCo、Niなどの金属粉末と混合し、前記混合物を真空または水素の雰囲気下で焼結することにより製造される。
【0007】
チタン炭化物及びチタン炭窒化物は、様々な応用分野を有する、硬度に優れた物質である。 チタン炭化物は、高い硬度(ビッカース=3200kg/mm2)、高融点(3260℃)、高い化学的・熱的安定性、高い耐磨耗性及び他の炭化物に対する高い溶解性を有することから、WC−Co合金の代わりに、高速切削工具として用いられてきた。 しかしながら、TiC−Niサーメットシステムにおいて、TiC粒子の粗粒化は、不良な機械的特性を引き起こす。さらに、TiCを用いてサーメットを製造する場合、焼結に当たり、結合相金属としてのNiが液体金属として用いられる結果、WC−Coの結合に比べてぬれ角が大きくなり、TiCの早い粒子の成長が起こり、これは、サーメットの靱性の低下の問題を引き起こす。
【0008】
それにもかかわらず、1956年にフォード自動車社は、TiC−Mo2C−Niサーメットを大量生産した。前記サーメットの靱性はあまり高くなかったものの、前記サーメットは、精密な機械の加工のための高硬度工具用材料として、中削り及び仕上げ削りに用いられてきた。
【0009】
1960年代及び1970年代には、TiC−Niサーメットシステムの大きな弱点となる靱性を高めるために、TiC−Niサーメットに各種の成分を添加しようとする試みがあったが、これといった結果を得ることはできなかった。
【0010】
その中で、1970年代には、もっと安定した熱力学相を有するTi(C,N)を形成するために、TiNをTiCに添加しようとする試みが行われた。
【0011】
すなわち、Ti(C,N)は、TiCに比べてマイクロ微細構造を有しているため、化学的な安定性及び機械的な衝撃抵抗性に加えて、その靱性が高くなった。
【0012】
一方、靱性を高めるために、WC、Mo2C、TaC、NbCなど各種の添加炭化物が用いられてきており、現在では、Ti(C,N)−M1C−M2C−・・・−Ni/Coタイプの製品が市販されている。
【0013】
靱性を高めるために添加炭化物を適用するとき、通常のTiC系またはTi(C,N)系サーメット焼結体のマイクロ構造は硬質相のコア/リム構造として観測され、前記硬質相をNi、Coなどの結合相が取り囲んでいる。
【0014】
このような構造のコアは、焼結中に液化金属バインダ(Ni,Coなど)内で溶解されないTiCまたはTi(C,N)であり、前記コアは、高硬度を持つ構造を有する。
【0015】
逆に、前記コアを取り囲んでいるリム構造は、コア成分であるTiCまたはTi(CN)及び添加剤である炭化物の固溶体である[前記固溶体は、(Ti,M1,M2・・・)(C,N)のように表される]。
【0016】
リム構造は、硬度よりは高い靱性を有する。このため、TiCまたはTi(C,N)−Niなどの単純なサーメットが有する靱性の致命的な弱点を解決するために、リム構造がサーメットに提供されてきた。
しかしながら、サーメットコア/リム構造を有するサーメットは、依然としてWC−Co硬質合金の靱性よりも低い靱性を有するという問題があり、前記サーメットは、まだWC−Coに完全に代えられるものではない。
【0017】
さらに、コア及びリム相間の界面における応力変形は物性に否定的な影響を与え、機械の加工工程中に界面を通じてひび割れの伝播を促する。このため、住友や京セラなどのような日本の工具会社及びEUとNATOの研究者は、コア/リム構造を有さない単一相の均一な固溶体を生産するために多くの努力を遂行した。しかし、このような均一性を目指す多くの産業的な試みは、コア/リム構造を有さない単一相の均一な固溶体を提供することに失敗した。
【0018】
詳しくは、固溶相は焼結工程中に形成され、その形成される固溶相の量は焼結工程の時間及び温度によるが、これには、1400℃以上の高温と相対的に長時間が要されるために、従来の技術によれば、1300℃以下の低温及び相対的に短時間の還元及び炭化条件下でコア/リム構造を有さない均一な固溶相を得ることはできなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本発明は、従来の技術における上記のような問題を解決するためになされたものである。
【0020】
本発明の目的は、マイクロ構造としてコア/リム構造を有さない完全固溶相が得られることから、通常のサーメット(特に、TiCまたはTi(CN)などのサーメット)が有する高硬度による低靱性の問題が解決され、さらに、靱性に加えて硬度も一層高くなり、これにより、セラミックまたはサーメットを用いる材料の通常の機械的な物性を実質的にかなり増大させるに伴い、WC−Co硬質材料に代えて、高硬度及び高靱性を有する切削工具を製造可能にし、コア/リム構造を有さない完全固溶相が1300℃以下の低温及び相対的に短時間の還元及び炭化条件下でも得られることから、全体として工程の効率性を高められる、固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明によれば、周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはこれらの混合物を含む固溶体粉末であり、前記固溶体粉末のマイクロ構造は、完全固溶相を有する固溶体粉末が提供される。
【0022】
本発明による固溶体粉末において、前記固溶体粉末は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する。
【0023】
本発明による固溶体粉末において、Tiを除く他の成分の量は、5〜90重量%である。
【0024】
本発明による固溶体粉末において、Wの量は10〜90重量%である。
【0025】
本発明による固溶体粉末において、Wの量は10〜80重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に25重量%以下である。
【0026】
本発明による固溶体粉末において、Wの量は10〜80重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下である。
【0027】
本発明による固溶体粉末において、Wの量は30〜90重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下である。
【0028】
さらに、本発明において、前記固溶体粉末の焼結体であるセラミックが提供される。
【0029】
本発明によるセラミックにおいて、前記セラミックは、前記セラミックの表面上にTiC−Me、Ti(CN)−Me、(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層をさらに含み、前記強化コーティング層は、前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成される。
【0030】
さらに、本発明によれば、(i)周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはその混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、完全固溶相のマイクロ構造を有するサーメット粉末が提供される。
【0031】
本発明によるサーメット粉末において、前記サーメット粉末は、(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、完全固溶相のマイクロ構造を有するサーメット粉末である。
【0032】
本発明によるサーメット粉末において、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する。
【0033】
本発明によるサーメット粉末において、Wの量は10〜85重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下であり、Ni、Co及び/またはFeの結合相の量は30重量%以下である。
【0034】
本発明によるサーメット粉末において、Wの量は10〜60重量%であり、Mo,Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下であり、Ni、Co及び/またはFeの結合相の量は30重量%以下である。
【0035】
さらに、本発明によれば、前記サーメット粉末の焼結体であるサーメットが提供される。
【0036】
本発明によるサーメットにおいて、前記サーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni、Co、Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末及びいずれも100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するWC−Me、Mo2C−Me、TaC−Me、NbC−Me、ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のサーメット粉末の混合物の焼結体であり、前記焼結体は、TiCまたはTi(CN)のコアを有するサーメットである。
【0037】
本発明によるサーメットにおいて、前記サーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及び(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒及び完全固溶相を有するサーメット粉末の混合物の焼結体である。
【0038】
本発明によるサーメットにおいて、前記サーメットは、TiC、Ti(CN)、(Ti,M1,M2..)Cまたは(Ti,M1,M2..)(CN)の硬質相が前記サーメットの表面上だけにさらに含まれ、前記硬質相は、炉への窒素注入量及び/または炉への窒素注入時間を制御しながら前記サーメット粉末を焼結することにより形成される。
【0039】
本発明によるサーメットにおいて、前記サーメットは、前記サーメットの表面上にTiC,TiN、Ti(CN)、TiAlNまたはTiAlCrNの強化コーティング層の1以上の層を含み、前記強化コーティング層は、前記サーメット粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成される。
【0040】
さらに、本発明によれば、ナノサイズを有する周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と予定された組成で混合する段階(S1−1)と、前記混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含む固溶体粉末の製造方法が提供される。
本発明による方法において、前記(S1−1)段階は、前記混合物を粉砕する段階をさらに含む。
【0041】
さらに、本発明によれば、ミクロンサイズを有する周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と予定された組成で混合し、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階(S1−2)と、前記混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含む固溶体粉末の製造方法が提供される。
【0042】
さらに、本発明によれば、前記固溶体粉末を焼結する段階を含むセラミックの製造方法が提供される。
【0043】
本発明による方法において、前記方法は、TiC−Me,Ti(CN)−Me,(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feから選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層をセラミックの表面に形成する段階を含み、前記強化コーティング層は、前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成される。
【0044】
さらに、本発明によれば、(i)ナノサイズを有する、Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ナノサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合する段階(S1−3)と、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むサーメット粉末の製造方法が提供される。
【0045】
本発明による方法において、前記(S1−3)段階は、(i)ナノサイズを有する、Ni、Co及びFeから選ばれた少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ナノサイズを有する、周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合する段階を含む。
【0046】
本発明による方法において、前記(S1−3)段階は、前記(i),(ii)及び(iii)混合物を粉砕する段階をさらに含む。
【0047】
さらに、本発明によれば、(i)ミクロンサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ミクロンサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合し、前記(i),(ii)及び(iii)の混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階(S1−4)と、前記(i),(ii)及び(iii)の混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むサーメット粉末の製造方法が提供される。
【0048】
本発明による方法において、前記(S1−4)段階は、(i)ミクロンサイズを有する、Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ミクロンサイズを有する、周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合し、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階を含む。
【0049】
本発明による方法において、前記(S2)段階は、前記還元及び炭化に加えて、前記混合物を窒化する段階をさらに含む。
【0050】
本発明による方法において、前記(S2)段階は、前記還元及び炭化が1000ないし1300℃の温度及び3時間以下の条件下で、真空または水素、CH4、CO/CO2の雰囲気下で行われた後、窒化が窒素の雰囲気下で行われる。
【0051】
さらに、本発明によれば、前記サーメット粉末を焼結する段階を含むサーメットの製造方法が提供される。
【0052】
本発明による方法において、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及びいずれも100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するWC−Me、Mo2C−Me、TaC−Me、NbC−Me、ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のサーメット粉末の混合物が焼結される。
【0053】
本発明による方法において、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni、Co、Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である。)のサーメット粉末、及び(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒及び完全固溶相を有するサーメット粉末の混合物が焼結される。
【0054】
本発明による方法において、前記方法は、炉内への窒素注入時間及び/または炉内への窒素注入量を制御しながらサーメット粉末を焼結することにより、TiC、Ti(CN)、(Ti,M1,M2..)Cまたは(Ti,M1,M2..)(CN)の硬質相を前記サーメットの表面にのみ形成する段階をさらに含む。
【0055】
本発明による方法において、前記方法は、前記サーメット粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法によりTiC、TiN、Ti(CN)、TiAlNまたはTiAlCrNの強化コーティング層の1以上の層を前記サーメットの表面に形成する工程をさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
本発明において、“炭素源物質”とは、炭素粉末を除いて、他の物質に炭素を与えられる物質を意味し、アセトン、エタノール、ブタノール、4塩化炭素、4臭素化炭素、3塩化臭素化メタンなどを含む。
【0057】
本発明において、金属の酸化物に加えて、水酸化物、炭酸化物または水化物は、前記水酸化物、炭酸化物または水化物が酸化物のように容易に還元可能であるという点で、採用可能である。
【0058】
本発明によれば、固溶体粉末または前記固溶体粉末に加えて、結合相金属を含む凝集体であるサーメット粉末は、コア/リム構造を有さない完全固溶体相を提供することができ、これに従い製造されたサーメットの靱性を実質的にかなり高めることができる。
【0059】
さらに、好ましくは、前記固溶体粉末または前記サーメット粉末は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する。もちろん、前記固溶体粉末またはサーメット粉末の結晶粒径は、シェラー法(scherrer法)、 直線フィッティング方法及び最小自乗フィッティング方法などの分析方法に応じて異なる分析結果が得られる。しかし、本発明の方法の効率性の観点から、公知の分析方法を用いるいかなる場合にも、本発明に従い製造された前記固溶体粉末またはサーメット粉末の結晶粒径は、100nmを超えないことが好ましい。
【0060】
本発明によれば、前記固溶体粉末及びサーメット粉末を製造する方法は、それぞれ2段階を含む。
【0061】
固溶体粉末を製造する第1の段階は、ナノサイズを有する、周期表IV、V、VI族の成分からTiを含んで選ばれた金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と混合するか、あるいは、混合後に、必要に応じて前記混合物を粉砕すること(S1−1)を含む。
【0062】
または、前記固溶体粉末を製造する第1の段階は、ミクロンサイズを有する、周期表IV、V、VI族の成分からTiを含んで選ばれた金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と混合し、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕すること(S1−2)を含む。
【0063】
完全固溶相を有する炭化物または炭窒化物の固溶体粉末を製造するために、前記第1の段階においては、ナノサイズを有する入手可能な酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物が使用できる。好ましくは、高エネルギーボールミル(例えば、プラネタリーミルまたはアトリッションミル(attrition mill))を用いてミクロンサイズを有する酸化物、水酸化物、炭酸化物、または水化物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する。
【0064】
すなわち、例えば、ナノサイズを有するTiC系の固溶体粉末を製造するために、ナノサイズのTiO2、ナノサイズの周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の金属の酸化物(例えば、WO3)を炭素粉末と共に混合する。その後、必要に応じて、ナノサイズの酸化物及び炭素粉末の混合粉末を粉砕する段階をさらに行う。
【0065】
しかしながら、混合及び/または粉砕に先立って、既にナノサイズである金属酸化物が用いられない場合、ミクロンサイズのTiO2、ミクロンサイズの周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の金属の酸化物を炭素粉末と共に混合した後、ナノサイズまたは非晶質状態を有するように前記混合された粉末を粉砕する。
【0066】
ここで、混合量は、固溶体粉末の予定された組成に応じて適宜に選択できる。さらに、粉砕に当たり、上述したように、高エネルギーボールミルが使用可能である。本発明において、単に前記ボールミル過程を行っただけで、ナノサイズの結晶粒または非晶質状態が容易に得られる。
【0067】
一方、サーメット粉末を製造する第1の段階は、ナノサイズを有する、周期表IV、V、VI族の成分から、好ましくは、Tiを含んで選ばれた金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及びナノサイズを有する、Ni、CoまたはFeなどのバインダを炭素粉末または炭素源物質と混合するか、あるいは、混合後、必要に応じて前記混合物を粉砕することを含む。
【0068】
または、サーメット粉末を製造する第1の段階は、ミクロンサイズを有する、周期表IV、V、VI族の成分から、好ましくは、Tiを含んで選ばれた金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及びミクロンサイズを有する、Ni、CoまたはFeなどのバインダを炭素粉末または炭素源物質と混合し、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕することを含む。
【0069】
すなわち、本発明によるサーメット粉末を製造するために、ナノサイズのNi、Co、FeまたはNi/Coなどのバインダ金属及びナノサイズを有する周期表IV、V、VI族の成分から、好ましくは、Tiを含んで選ばれる金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物、または水化物を炭素粉末または炭素源物質と共に混合する。この場合、必要に応じて、粉砕をさらに行っても良い。
【0070】
ここで、Ni、Coなどのミクロンサイズの結合金属が用いられるとき、ナノまたはミクロンサイズを有する周期表IV,V,VI族成分から、好ましくは、Tiを含んで選ばれる金属の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物及び炭素粉末または炭素源物質と前記ミクロンサイズの結合金属を混合した後、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する。
【0071】
前記第1の段階によれば、コア/リム構造を有さない完全固溶相の均一なマイクロ構造が得られる。さらに、さらなる混合過程が無くても、前記固溶体粉末またはサーメット粉末を直接的に焼結すれば、セラミックまたはサーメットが得られる。さらに、拡散速度を高めると共に、拡散距離を短縮させる欠陥が十分にある非晶質状態またはナノ結晶粒を生産することにより、後述するように、全体としての工程効率のアップを意味する1300℃以下の低温及び相対的に短時間で還元及び炭化することが可能である。
【0072】
次いで、固溶体粉末及びサーメット粉末を製造するための第2の段階は、(S2)還元及び炭化を含む。必要に応じて、前記第2の段階は、還元、炭化及び窒化を含む。
【0073】
すなわち、前記混合及び/または粉砕された混合物が、例えば、真空、水素、CO/CO2またはCH4の雰囲気下で還元及び炭化(炭化・窒化)された後、ナノ結晶粒を有する完全固溶相よりなる固溶体粉末が製造される。また、サーメット粉末の場合、ナノ結晶粒及び完全固溶相を有する凝集体が製造される。
【0074】
さらに、例えば、炭窒化物を形成するに当たり、還元及び炭化は、真空または水素の雰囲気下で1000ないし1300℃の温度及び3時間以下の条件下で焼鈍を行うことによりなされ(このように低温及び相対的に短時間が実現可能である点に注目されたい。)、その後に窒化が行われることにより、最小量の酸素と適宜な炭素及び窒素の量が保証され、ひび割れの形成が防がれるほか、サーメットの機械的な特性が向上する。
【0075】
酸素の含量は、前記過程により得られる炭化物または炭窒化物のナノ粉末内において重要な因子である。一般に、前記酸素の含量が増えると、これは、ひび割れの形成につながるため、酸素の含量に応じて、最小限の酸素の含量と炭素の適正量を保証する必要がある。
【0076】
このため、混合及び/または粉砕された粉末は、真空または水素の雰囲気下で1000ないし1300℃で3時間以下還元後に炭化されることにより(炭化及び窒化)、下記の実施例に示すように、ナノ粉末は、特に、Ti(CN)系のナノ結晶粒の場合、通常のミクロンサイズ粉末の酸素の含量とほとんど同じ酸素含量を有する。
【0077】
加工条件下で、窒素の量は、加工温度、粉末構成時の窒素の粉圧、粉末への炭素の添加量に応じて自由に選択可能である。特に、安定的な組成として、C/N(モル比)が3/7、5/5または7/3であることが好ましく、7/3であることが一層好ましい。
【0078】
その後、得られた固溶体粉末またはサーメット粉末は、真空などの雰囲気下で前記固溶体粉末またはサーメット粉末を所定の温度と時間の条件下で焼結することにより、完全な固溶相を有するセラミックまたはサーメットを得る。
【0079】
本発明による方法によれば、(Ti,M1,M2・・・)C,(Ti,M1,M2・・・)(C,N),(Ti,M1,M2・・・)C−Ni及び(Ti,M1,M2・・・)(C,N)−Ni・・・のタイプを有する完全固溶体粉末が製造できる。さらに、前記固溶体粉末を用いるセラミック、前記固溶体粉末を含むサーメット粉末、前記サーメット粉末を用いたサーメットが得られる。
【0080】
特に、本発明に従い製造されたTiCまたはTi(CN)系の固溶体粉末は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する。さらに、本発明に従い製造されたセラミック及びサーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有する凝集体となる。
【0081】
前記粉末及び凝集体は、各種のサイズに調節可能である。すなわち、時間、速度、温度などの粉砕条件、時間、温度などの粉末組成条件を調節することにより、前記粉末及び凝集体のサイズが調節可能である。さらに、前記凝集体は、サブミクロンサイズ(100nm及び1μm下)及びミクロンサイズ(数μm)を有するように製造できる。
【0082】
しかし、先行技術によるサーメットの製造装置及び工程は、サブミクロン以上のサイズを有する粉末に対して最適化されているため、アプローチの容易さ及び経済的な効率性という観点から、200nm以下の凝集体を本発明に従い製造することが好適である。
【0083】
本発明の固溶体粉末内に固溶されている全ての金属は、各金属の固溶度の範囲内で完全な固溶相を形成することができる。これは、サーメット粉末の場合にも同様である。
【0084】
Tiが本発明の完全な固溶体粉末内に含まれるとき、Tiを除く他の成分の量は、5〜90重量%であることが好ましい。
【0085】
特に、本発明の完全な固溶体粉末において、例えば、Wが含まれる場合、Wの量は10〜90重量%である。さらに、Wが他のMo、Nb、Taと共に含まれる場合、Mo、Nb及び/またはTaの量は0〜25重量%であり、好ましくは、0〜10重量%であり、Wの量は、好ましくは、30〜90重量%である。さらに、サーメット粉末の場合、Mo、Nb及び/またはTaの量は0〜10重量%であり、Wの量は10〜85重量%であり、好ましくは、10〜60重量%であり、Ni、Co及び/またはFeの結合相の量は0〜30重量%である。
【0086】
また、本発明の範囲は、例えば、WCの大量(重量比を基準にWC/TiC>4)の使用により、焼結体のマイクロ構造内においてWCと共存する(Ti,W)Cの焼結体を含む。
【0087】
本発明において、本発明による高強度を有するサーメットまたはセラミックの強度を一層高めるために、本発明による焼結中に前記サーメットまたはセラミックの表面上に強化層またはコーティング層の1以上の層が形成される2通りの方法が使用可能である。
一つは、サーメットまたはセラミックの表面に硬質層を形成する方法であり、もう一つは、サーメットまたはセラミックの表面上に高硬質コーティング層を形成する方法である。
【0088】
例えば、サーメットの表面に前記硬質層を形成するために、好ましくは、炉への窒素注入量及び炉への窒素注入時間が、本発明による焼結中に調節される。
【0089】
すなわち、本発明によるサーメット粉末の焼結中に、窒素1〜100torrが焼結温度調節中またはその前に炉内に導入され、気圧は冷却過程まで保たれる。これにより、(Ti,W,M1,M2・・・)C/(Ti,W,M1,M2・・・)CNタイプの固溶体相は、分解により WC,M1C,M2Cを有するか又は有さない高硬質のTiC,Ti(CN),(Ti,w,m1,m2..)Cまたは(Ti,w,m1,m2..)(CN)となり、前記高硬質相は、前記サーメットの表面だけに硬質層として形成され、これにより、全てのサーメット焼結体は高靱性を保持して高硬度を有する。
【0090】
さらに、サーメットの表面上に高硬度コーティング層を形成するために、TiC,TiN,Ti(CN),TiAlN,TiAlCrNの高硬度コーティング層の1以上の層が、本発明によるサーメット粉末の焼結後にCVD,PVDなどの方法によりサーメットの表面上に形成される。さらに、格子不整合を制御する(前記格子不整合を減らす)必要がある場合、本発明によるサーメット粉末の焼結中に、真空またはアルゴン、窒素などの雰囲気下で金属の結合相をサーメットの表面上に増やすか、あるいは、前記サーメットの表面上に固溶相を一層大きくした後(前記サーメットが拡張されたサイズの固溶相を有する)、前記高硬度コーティング層を形成する。
【0091】
さらに、前記セラミックの表面上に(特に、靱性)強化コーティング層を形成するために、TiC−Me,Ti(CN)−Me,(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層が前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法によりセラミックの表面上に形成される。
【0092】
さらに、前記方法の採用有無を問わずに、本発明において、全体的に高硬度を有する高靱性の極微細またはナノサイズのサーメットが次の2つの方法により製造できる。
【0093】
一つは、TiC−MeまたはTi(CN)−Meのナノ結晶粒粉末を本発明によるWC−Me,Mo2C−Me,TaC−Me,NbC−Me,ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)と共に所定量だけ混合し、微細なTiCまたはTi(CN)コアを有するように焼結する方法である。
【0094】
もう一つは、TiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のナノ結晶粒粉末及び本発明による完全固溶体のサーメット粉末を所定量だけ混合し、前記サーメットの硬度が上がるように焼結する方法である。
【0095】
上述したように、前記方法は、サーメットの表面上に硬質層を形成する方法またはサーメットの表面上に高硬質コーティング層を形成する方法と併用できる。
【実施例1】
【0096】
実施例として、純度99+%のアナターゼTiO2、純度99%のNiO(平均粒径45μm)及び純度99+%のWO3(平均粒径20μm)が用いられた。
【0097】
次の如き6通りの目標組成を得るために、炭素粉末が混合された。(i)(Ti,W)
C−Ni(WC15重量%を含む。)、(ii)(Ti,W)C−Ni(WC30重量%を
含む。)、(iii)(Ti,W)(C,N)−Ni(WC15重量%を含む、C/N=2:
1)、(iv)(Ti,W)(C,N)−Ni(WC30重量%を含む、C/N=3:1)
、及び(v)(Ti,W)C(WC15重量%を含む。)、(vi)(Ti,W)C(WC
の量を変える。)これらは高エネルギーボールミルであるプラネタリーミル(Fritsch Pulverisette 7)を用いて粉砕された。直径5mmのタングステン炭化物(WC)ボールが粉砕媒体として使用され、ボール対粉末の重量比を20:1として粉末との混合が行われた。
タングステン炭化物容器が使用され、全ての粉砕は、大気中で20時間、250RPMの速度にて行われた。
【0098】
これにより、粉砕されたナノ粉末は、真空または水素雰囲気下、1300℃で1時間30分間、焼鈍により還元及び炭化された。ここで、炭窒化物の場合、窒素が真空炉に注入されて窒化された。
図1は、本発明の一実施例に従い製造されたナノ粉末のXRD相の分析結果を示す。
さらに、図1(a)は、(Ti,W)Cの完全固溶体粉末(WC15重量%を含む。)がTiO2,WO3及びCの混合物から得られることを示す。図1(b)は、(Ti,W)C−Niの完全固溶相を有するサーメット粉末(WC30重量%を含む。)がTiO2,WO3,NiO及びCの混合物から得られることを示す。図1(c)は、(Ti,W)(C,N)−Niの完全固溶相を有するサーメット粉末(WC30重量%を含む。)がTiO2,WO3,NiO及びCの混合物から得られることを示す。
【0099】
図1(a)に示すように、形成された固溶体相は単一相であり、これは、先行技術では形成が不可能であった。また、図1(b)及び図1(c)は、Niナノ粉末が単一固溶相と混合された状態で存在することを示す。
【0100】
これより、ナノサイズのNi及びナノサイズの炭化物または炭窒化物を用いて均一なマイクロ構造を得られるということが分かる。また、前記方法によれば、サーメットの製造工程内におけるさらなる混合過程無しに直接焼結によりサーメットが得られる。
【0101】
図2aは、本発明による一実施例に従い製造された(Ti,W)C−Ni粉末(WC15重量%を含む。)を示すSEM写真であり、図2bは、本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C−Ni粉末(WC15重量%を含む。)を示すTEM写真である。
【0102】
図2aから明らかなように、前記粉末が与えられたスケールで略200nmの均一な凝集体として形成され、図2bから明らかなように、前記粉末が与えられたスケールで略100nmよりも小さな混合凝集体として形成されている。
【0103】
図2c(1)は本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C粉末(WC45重量%を含む。)を示すSEM写真、図2c(2)は本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C粉末(WC45重量%を含む。)を示すTEM写真である。
図2c(1)のSEM写真は、前記粉末が与えられたスケールで100nm〜1μmと均一な凝集体を形成していることを示し、図2c(2)のTEM写真は、前記粉末が与えられたスケールで20〜50nmと小さな炭化物凝集体を形成していることを示す。
通常、このような凝集現象はナノ粉末において見られ、凝集体の形成は、過度な凝集を除いては、焼結に寄与する。
表1は、前記過程により前記組成に基づいて製造された粉末のCNO成分の分析結果である。比較例として、同じ組成を有する市販粉末に対する分析が行われた。
【0104】
【表1−1】
【0105】
【表1−2】
【0106】
表1−1から明らかなように、得られたナノ粉末は15及び30重量%のWCを有する(Ti,W)C−Ni及び(Ti,W)(C,N)−Niのサーメット粉末であり、特に、(Ti,W)(C,N)−Niの場合、酸素の含量は市販粉末の酸素含量よりも低い。
表1−2から明らかなように、Niを有さない(Ti,W)Cの固溶体粉末の場合、WCの量が増えるにつれて酸素の量は減る。
表2は、各種の組成を有する固溶体粉末を示す。
【0107】
【表2】
【0108】
本発明の方法に従い製造された上記の如き組成を有する粉末は、10-2Torrの真空雰囲気下の1510℃で1時間焼結された。
図3aは、組成(i)及び(ii)を有する焼結済み試料のマイクロ構造を示す写真であり
、左側の写真は組成(i)の場合であり、右側の写真は組成(ii)の場合である。
図3bは、組成(iii)及び(iv)を有する焼結済み試料のマイクロ構造を示す写真であり
、左側の写真は組成(iii)の場合であり、右側の写真は組成(iv)の場合である。
図3aに示すように、(Ti,W)C−Ni固溶体粉末を用いて焼結を行ったときの結晶粒径は100nm以下であり、図3bに示すように、(Ti,W)(C,N)−Ni固溶体粉末の場合、マイクロ構造は1μm以下であった。
【0109】
図3c(1)は1120℃で1時間還元及び炭化されたTiC−45重量%WC、図3c(2)は1120℃で1時間還元及び炭化されたTiC−77重量%WC、図3c(3)は1200℃で1時間還元及び炭化されたTiC−58重量%WC、図3c(4)は1200℃で1時間還元及び炭化されたTiC−77重量%WCにそれぞれ該当する組成を有する焼結された(Ti,W)Cセラミック(1510℃及び1時間)のマイクロ構造を示す写真である。
【0110】
図3cに示すように、(Ti,W)Cの固溶体粉末として焼結されるとき、(1)及び(3)からはWCがよく見られなかった。一方、(Ti,W)Cの暗くて明るい灰色の相と共に3〜5μmのWC(白色相)が存在するマイクロ構造が現れた。
【0111】
図3dは、1200℃で1時間炭化・還元後、1450℃で1時間焼結されたTiC−xWC−10Co(重量%)において、(a)x=85,(b)x=80,(c)x=70,(d)x=60である組成に該当するサーメットのSEM/BSEイメージを示す。白色及び黒色相はそれぞれWC及びCoであり、暗くて明るい灰色相は(Ti,W)Cである。
【0112】
図3dに示すように、WCの量に応じて、WCはマイクロ構造内において(Ti,W)Cと共存する。
【0113】
表3は、TiC−xWC−10Co(重量%)において、(a)x=85,(b)x=80,(c)x=70及び(d)x=60である組成に該当する図3dのサーメットの特性を示す。前記サーメットは、1200℃で1時間炭化・還元後、1450℃で1時間焼結された。
【0114】
【表3】
【0115】
その結果、通常のTi(C,N)−M1C−M2C−・・・−Ni/Coなどのシステムと比較するとき、コア/リム構造が観測されない完全な固溶相構造が形成されているということが分かった。
表4は、本発明の実施例に従い製造されたサーメットの機械的な特性を示す。比較のために、同じ組成を有するミクロンサイズの市販粉末により製造されたサーメットに対して評価が行われた。
【0116】
【表4−1】
【0117】
【表4−2】
【0118】
表4−1に示すように、得られたサーメットは、サーメットの単純な組成の場合にも高い焼結密度及び低い気孔度を有するということが分かった。さらに、比較例のサーメットにおけるKIC値は6〜8MPam1/2であるのに対し、本発明のサーメットにおけるKIC値は11〜14MPam1/2と高靱性である。これより、先行技術のサーメットよりは、本発明サーメットの方が幅広く使用できると予想できる。また、表4−2に示すように、本発明のセラミックは高い焼結密度、低い気孔度、高い靱性及び高い硬度を示す。
【実施例2】
【0119】
実施例として、先ず、簡単な目標組成が選択され、これにより、それぞれの含量による100nm結晶粒を有するTiO2,WO3,NiOナノ酸化物が製造された。
目標組成として、次の2種類の組成が選択された:(i)(Ti,W)C−Ni(WC1
5重量%を含む。)及び(ii)(Ti,W)C−Ni(WC30重量%を含む。)
炭素粉末及び前記のように得られたナノ酸化物が混合・粉砕され、粉砕されたナノ粉末は真空または水素、CH4,CO/CO2の雰囲気下、1300℃で2時間焼鈍されて還元及び炭化された。
得られたサーメット粉末を焼結する間に、1〜100Torrの窒素が前記焼結温度で炉内に導入され、圧力(1〜100Torr)が冷却過程中に保持された。
図4aは、本発明に従い製造された窒素雰囲気下における(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の焼結試料(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真である。
図4aには、試料の表面及び内部における、(Ti,W)C−Niの2種の相異なる完全固溶相を有する焼結試料のマイクロ構造が示してある。(Ti,W)C−Ni焼結体(WC15重量%を含む)がTiO2,WO3,NiO及びCの混合物から製造され、冷却過程まで焼結(1510℃及び1時間)する間に窒素(〜100Torr)の雰囲気に露出された。
窒素雰囲気下で焼結されたサーメットの内部及び表面における固溶体相の組成に対してSEM/EDS分析を行い、その結果を下記表5に示す。
【0120】
【表5】
【0121】
表5に示すように、形成された固溶相は組成がそれぞれ異なる。表面近くの固溶相は内部よりもTiの含量が一層高く、これは、表面層の硬度を高める。TiC/Ti(CN)系固溶体の硬度は、固溶体内のTiの含量に応じて増えると知られている。図4aは、表面近くの金属バインダの増大に伴う表面固溶体の増加を示している。
【0122】
これに対し、図4bは、本発明に従い製造された窒素雰囲気下における(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む)の焼結試料(1200℃及び1時間)の表面を示すFE−SEM写真である。
【0123】
図4bに示すように、焼結済み試料の表面のマイクロ構造は、黒色を有するTiC[または、Ti(CN)]の極めて硬い相の生成を示す。
【0124】
このため、焼結中または焼結前から窒素雰囲気を使用することにより、表面に一層硬いマイクロ構造が得られることが分かった。このような条件は、冷却過程まで拡張可能である。
【実施例3】
【0125】
実施例として、先ず、簡単な目標組成が選択され、これにより、各含量に応じて100nmの結晶粒径を有するTiO2,WO3,NiOナノ酸化物が製造された。
【0126】
目標組成として、4通りの組成が次のように選択された:(i)(Ti,W)C−Ni
(WC15重量%を含む)、(ii)(Ti,W)C−Ni(WC30重量%を含む)、(
iii)(Ti,W)CN−Ni(WC15重量%を含む)及び(iv)(Ti,W)CN−N
i(WC30重量%を含む)。
【0127】
炭素粉末及び得られた前記ナノ酸化物が混合・粉砕され、粉砕されたナノ粉末は真空または水素、CH4,CO/CO2雰囲気下、1300℃で2時間焼鈍されて還元及び炭化された。炭窒化物の場合、窒素が真空炉内に注入された。
【0128】
得られたサーメット粉末の焼結中に、真空雰囲気(または、アルゴン、窒素)が使用される。さらに、TiNのコーティング層がPVD方法により焼結されたサーメットの表面上に形成される。TiNのコーティング層は高硬度及び耐摩耗性を示し、サーメットの表面上にTiNのコーティング層を形成することは、サーメットの硬度を大いに高める効果をもたらす。
【0129】
図5は、(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む)の焼結体(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真であり、その表面には、本発明に従い、PVDによるTiNの硬質コーティング層がコーティングされている。
【0130】
図5に示すように、前記コーティング層は、サーメットの表面上に形成されている。前記層の厚さは、1〜1.5ミクロンであった。
本発明によるそれぞれの焼結体の機械的な特性を下記表6に示す。
【0131】
【表6】
【0132】
表6に示すように、たとえコーティング層は内部相の靱性よりも低い靱性を有するとしても、前記コーティング層は内部相の硬度よりも一層高い硬度を示す。このため、サーメットの表面上のコーティング層は、全体的(内部+コーティング層)に高靱性を有するサーメットに高硬度を与え、これにより、切削工具用サーメットとしての好適性が得られる。
【実施例4】
【0133】
実施例において、先ず、Ti(CN)−Ni,WC−Ni及びMO2C−Niのナノ粉末が混合のための目標組成として選択された。そして、これにより、各含量による100nmの結晶粒を有する(TiO2,NiO),(WO3,NiO)及び(MO2,NiO)のナノ酸化物が得られた。
【0134】
上述したように、次の3通りの組成が選択された。(i)Ti(CN)−Ni(Ni2
0重量%を含む、C/N=7:3)、(ii)WC−Ni(Ni20重量%を含む。)及び
(iii)MO2C−Ni(Ni20重量%を含む。)。
【0135】
炭素粉末及び得られた前記ナノ酸化物が混合・粉砕され、粉砕されたナノ粉末は真空または水素、CH4,CO/CO2の雰囲気下、1300℃で2時間焼鈍されて還元及び炭化された。炭窒化物の場合、窒素が真空炉内に注入された。
前記方法に従い製造された3通りのナノ粉末が次のような2種類の目標組成のために混合された。(i)Ti(CN)−Ni+WC−Ni(WC−Niを15重量%含む。)及び
(ii)Ti(CN)−Ni+MO2C−Ni(MO2C−Niを15重量%含む。)。
【0136】
図6aは、本発明によるTiC−Ni及びWC−Niのサーメット粉末混合物の焼結体(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真(バースケール:5μm)である。また、図6bは、本発明によるTi(CN)−Ni及びMO2C−Niのサーメット粉末混合物の焼結体(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真(バースケール:5μm)である。
図6a及び図6bに示すように、特にNiを含む炭化物及び炭窒化物の混合物の焼結体が得られた。このような方法によれば、硬度の強化及び組成の変化が容易になる。
【実施例5】
【0137】
実施例として、固溶体粉末を得るために各含量に応じて100nmの結晶粒を有するT i(CN)−Ni,(TiO2,WO3,NiO)及び(TiO2,NiO)ナノ酸化 物が得られた。
目標組成として、次の2通りの組成が選択された。(i)(Ti,W)(CN)−Ni(
WC30重量%を含む、Ni20重量%を含む。)及び(ii)Ti(CN)−Ni(Ni
20重量%を含む、C/N=7:3)。
【0138】
得られた(Ti,W)(CN)−Niの固溶体粉末及びTi(CN)−Niの粉末が予定された組成(30重量%のTi(CN)−Ni)で混合および焼結された。
【0139】
図7は、(Ti,W)(CN)−Ni及びTi(CN)−Niサーメット粉末混合物(30重量%Ti(CN)−Ni)の焼結体(1510℃及び1時間)を示すFE−SEM写真である(バースケール:5μm)。
【0140】
図7に示すように、固溶体粉末とTi(CN)−Niの混合物の焼結体が得られた。このような方法によれば、硬度が容易に高められる。
【0141】
以上述べたように、本発明による固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法は、従来の技術によるTiCまたはTi(CN)系のサーメットなどのサーメットがその高い硬度のために一層低い靱性を有していた問題を解決することができ、靱性に加えて硬度を一層高めることにより、従来のWC−Coに代えて切削工具、ダイ材料などに好適に使用することができる。
【0142】
上述したように、本発明による固溶体粉末、この固溶体粉末の製造方法、この固溶体粉末を用いるセラミック、このセラミックの製造方法、この固溶体粉末を含むサーメット粉末、このサーメット粉末の製造方法、このサーメット粉末を用いるサーメット、及びこのサーメットの製造方法においては、固溶体粉末、特にTiCまたはTi(CN)系の固溶体粉末のマイクロ構造に完全固溶相を与えることができ、サーメット材料の靱性を実質的にかなり高めることができるほか、さらなる混合工程なしに直接焼結が行えるというメリットを有する。さらに、全体的に高い機械的な特性を有することから、WC−Coの超硬材料に代えて、高硬度及び高靱性の切削工具を製造することができるという効果もある。
【0143】
以上、本発明の好適な実施例を技術的な目的から説明したが、当業者にとっては、請求の範囲に開示された発明の範囲と思想を逸脱しない範囲内であれば、各種の変形、追加及び代替が行えるということは理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】図1(a)は本発明による(Ti,W)C固溶体粉末(WC15重量%を含む。)のXRD相の分析結果を示し、図1(b)は本発明による(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む。)のXRD相の分析結果を示し、図1(c)は本発明による(Ti,W)(C,N)−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む、C/N=3:1)のXRD相の分析結果を示す 。
【図2a】本発明による(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の形状を示すSEM写真である。
【図2b】本発明による(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の形状を示すTEM写真である。
【図2c】図2c(1)は本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C粉末(WC45重量%を含む。)を示すSEM写真、図2c(2)は本発明の一実施例に従い製造された(Ti,W)C粉末(WC45重量%を含む。)を示すTEM写真である。
【図3a】本発明による(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)及び(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む。)の各焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図3b】本発明による(Ti,W)(C,N)−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む、C/N=2:1)及び(Ti,W)(C,N)−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む、C/N=3:1)の各焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図3c】図3c(1)は1120℃で1時間還元及び炭化されたTiC−45重量%WC、図3c(2)は1120℃で1時間還元及び炭化されたTiC−77重量%WC、図3c(3)は1200℃で1時間還元及び炭化されたTiC−58重量%WC、図3c(4)は1200℃で1時間還元及び炭化されたTiC−77重量%WCにそれぞれ該当する組成を有する焼結された(Ti,W)Cセラミック(1510℃,1時間)のマイクロ構造を示す写真である 。
【図3d】図3dは1200℃で1時間炭化・還元後、1450℃で1時間焼結されたTiC−xWC−10Co(重量%)において、(a)x=85,(b)x=80,(c)x=70,(d)x=60である組成に該当するサーメットのSEM/BSEイメージを示す。白色相及び黒色相がそれぞれWC及びCoであり、暗くて明るい灰色相が(Ti,W)Cである。
【図4a】本発明に従い製造された、窒素の雰囲気下で焼結(1510℃,1時間)された(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の試料を示すFE−SEM写真である。
【図4b】本発明に従い製造された、窒素の雰囲気下で焼結(1200℃,1時間)された(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC30重量%を含む。)の試料の表面を示すFE−SEM写真である。
【図5】本発明によるPVDによりTiNの硬質コーティング層が表面にコーティングされた(Ti,W)C−Niサーメット粉末(WC15重量%を含む。)の焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図6a】本発明によるTiC−Ni及びWC−Niサーメット粉末混合物の焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図6b】本発明によるTi(CN)−Ni及びMO2C−Niサーメット粉末混合物の焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【図7】(Ti,W)(CN)−Ni及びTi(CN)−Niサーメット粉末混合物(30重量%Ti(CN)−Ni)の焼結体(1510℃,1時間)を示すFE−SEM写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはこれらの混合物を含む固溶体粉末であり、前記固溶体粉末のマイクロ構造は完全固溶相であることを特徴とする固溶体粉末。
【請求項2】
前記固溶体粉末は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有することを特徴とする請求項1に記載の固溶体粉末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固溶体粉末の焼結体であることを特徴とするセラミック。
【請求項4】
TiC−Me,Ti(CN)−Me,(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層をセラミックの表面上にさらに含み、前記強化コーティング層は、前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成されることを特徴とする請求項3に記載のセラミック。
【請求項5】
(i)周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはその混合物、及び(ii)Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、完全固溶相のマイクロ構造を有することを特徴とするサーメット粉末。
【請求項6】
(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはその混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、完全固溶相のマイクロ構造を有することを特徴とする請求項5に記載のサーメット粉末。
【請求項7】
前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有することを特徴とする請求項5または6に記載のサーメット粉末。
【請求項8】
請求項5ないし7のうちいずれかに記載のサーメット粉末の焼結体であることを特徴とするサーメット。
【請求項9】
前記サーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及びいずれも100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するWC−Me,Mo2C−Me,TaC−Me,NbC−Me,ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のサーメット粉末の混合物の焼結体であり、前記焼結体は、TiCまたはTi(CN)のコアを有することを特徴とする請求項8に記載のサーメット。
【請求項10】
前記サーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及び(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒及び完全固溶相を有するサーメット粉末の混合物の焼結体であることを特徴とする請求項8に記載のサーメット。
【請求項11】
前記サーメットは、TiC、Ti(CN)、(Ti,M1,M2..)Cまたは(Ti,M1,M2..)(CN)の硬質相が前記サーメットの表面上だけにさらに含まれ、前記硬質相は、炉への窒素注入量及び/または炉への窒素注入時間を制御しながら前記サーメット粉末を焼結することにより形成されることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のサーメット。
【請求項12】
前記サーメットは、前記サーメットの表面上にTiC,TiN,Ti(CN),TiAlNまたはTiAlCrNの強化コーティング層の1以上の層を含み、前記強化コーティング層は、前記サーメット粉末の焼結後にCVDまたはPVDにより形成されることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のサーメット。
【請求項13】
ナノサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と予定された組成で混合する段階(S1−1)と、
前記混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むことを特徴とする固溶体粉末の製造方法。
【請求項14】
前記(S1−1)段階は、前記混合物を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ミクロンサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と予定された組成で混合し、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階(S1−2)と、
前記混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むことを特徴とする固溶体粉末の製造方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載の固溶体粉末を焼結する段階を含むセラミックの製造方法。
【請求項17】
前記方法は、TiC−Me、Ti(CN)−Me、(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feから選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層をセラミックの表面に形成する段階を含み、前記強化コーティング層は、前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(i)ナノサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ナノサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合する段階(S1−3)と、
前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むことを特徴とするサーメット粉末の製造方法。
【請求項19】
前記(S1−3)段階は、(i)ナノサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ナノサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記(S1−3)段階は、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
(i)ミクロンサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ミクロンサイズを有する、周期表IV,V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合し、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階(S1−4)と、
前記(i),(ii)及び(iii)の混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むことを特徴とするサーメット粉末の製造方法。
【請求項22】
前記(S1−4)段階は、(i)ミクロンサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ミクロンサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合し、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記(S2)段階は、前記還元及び炭化に加えて、前記混合物を窒化する段階をさらに含むことを特徴とする請求項13ないし15,18ないし23のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記(S2)段階は、前記還元及び炭化が1000ないし1300℃の温度及び3時間以下の条件下で真空または水素、CH4、CO/CO2の雰囲気下で行われた後、窒化が窒素の雰囲気下で行われることを特徴とする請求項13ないし15,18ないし23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項5ないし7のいずれかに記載のサーメット粉末を焼結する段階を含むことを特徴とするサーメットの製造方法。
【請求項26】
100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及びいずれも100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するWC−Me、Mo2C−Me、TaC−Me、NbC−Me、ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のサーメット粉末の混合物が焼結されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni、Co、Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及び(i)周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒及び完全固溶相を有するサーメット粉末の混合物が焼結されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、炉内への窒素注入時間及び/または炉内への窒素注入量を制御しながらサーメット粉末を焼結することにより、TiC、Ti(CN)、(Ti,M1,M2..)Cまたは(Ti,M1,M2..)(CN)の硬質相を前記サーメットの表面にのみ形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25ないし27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、前記サーメット粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法によりTiC、TiN、Ti(CN)、TiAlNまたはTiAlCrNの強化コーティング層の1以上の層を前記サーメットの表面に形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25ないし27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
Tiを除く他の成分の量が5〜90重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の固溶体粉末。
【請求項31】
Wの量が10〜90重量%であることを特徴とする請求項30に記載の固溶体粉末。
【請求項32】
Wの量が10〜80重量%であり、Mo、Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に25重量%以下であることを特徴とする請求項30に記載の固溶体粉末。
【請求項33】
Wの量が10〜80重量%であり、Mo、Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下であることを特徴とする請求項30に記載の固溶体粉末。
【請求項34】
請求項30ないし33のいずれかに記載の固溶体粉末の焼結体であることを特徴とするセラミック。
【請求項35】
Wの量が10〜85重量%であり、Mo、Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下、Ni,Co及び/またはFeの結合相の量が30重量%以下であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のサーメット粉末。
【請求項1】
周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはこれらの混合物を含む固溶体粉末であり、前記固溶体粉末のマイクロ構造は完全固溶相であることを特徴とする固溶体粉末。
【請求項2】
前記固溶体粉末は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有することを特徴とする請求項1に記載の固溶体粉末。
【請求項3】
請求項1または2に記載の固溶体粉末の焼結体であることを特徴とするセラミック。
【請求項4】
TiC−Me,Ti(CN)−Me,(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層をセラミックの表面上にさらに含み、前記強化コーティング層は、前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成されることを特徴とする請求項3に記載のセラミック。
【請求項5】
(i)周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはその混合物、及び(ii)Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、完全固溶相のマイクロ構造を有することを特徴とするサーメット粉末。
【請求項6】
(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物またはその混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、完全固溶相のマイクロ構造を有することを特徴とする請求項5に記載のサーメット粉末。
【請求項7】
前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有することを特徴とする請求項5または6に記載のサーメット粉末。
【請求項8】
請求項5ないし7のうちいずれかに記載のサーメット粉末の焼結体であることを特徴とするサーメット。
【請求項9】
前記サーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及びいずれも100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するWC−Me,Mo2C−Me,TaC−Me,NbC−Me,ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のサーメット粉末の混合物の焼結体であり、前記焼結体は、TiCまたはTi(CN)のコアを有することを特徴とする請求項8に記載のサーメット。
【請求項10】
前記サーメットは、100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及び(i)周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒及び完全固溶相を有するサーメット粉末の混合物の焼結体であることを特徴とする請求項8に記載のサーメット。
【請求項11】
前記サーメットは、TiC、Ti(CN)、(Ti,M1,M2..)Cまたは(Ti,M1,M2..)(CN)の硬質相が前記サーメットの表面上だけにさらに含まれ、前記硬質相は、炉への窒素注入量及び/または炉への窒素注入時間を制御しながら前記サーメット粉末を焼結することにより形成されることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のサーメット。
【請求項12】
前記サーメットは、前記サーメットの表面上にTiC,TiN,Ti(CN),TiAlNまたはTiAlCrNの強化コーティング層の1以上の層を含み、前記強化コーティング層は、前記サーメット粉末の焼結後にCVDまたはPVDにより形成されることを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載のサーメット。
【請求項13】
ナノサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と予定された組成で混合する段階(S1−1)と、
前記混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むことを特徴とする固溶体粉末の製造方法。
【請求項14】
前記(S1−1)段階は、前記混合物を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ミクロンサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物を炭素粉末または炭素源物質と予定された組成で混合し、前記混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階(S1−2)と、
前記混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むことを特徴とする固溶体粉末の製造方法。
【請求項16】
請求項1または2に記載の固溶体粉末を焼結する段階を含むセラミックの製造方法。
【請求項17】
前記方法は、TiC−Me、Ti(CN)−Me、(Ti,M1,M2..)C−Meまたは(Ti,M1,M2..)(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feから選ばれるいずれか1種以上の結合相である)の強化コーティング層の1以上の層をセラミックの表面に形成する段階を含み、前記強化コーティング層は、前記固溶体粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法により形成されることを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
(i)ナノサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ナノサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合する段階(S1−3)と、
前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むことを特徴とするサーメット粉末の製造方法。
【請求項19】
前記(S1−3)段階は、(i)ナノサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ナノサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記(S1−3)段階は、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物を粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
(i)ミクロンサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ミクロンサイズを有する、周期表IV,V及びVI族の金属から選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合し、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階(S1−4)と、
前記(i),(ii)及び(iii)の混合物を還元及び炭化する段階(S2)とを含むことを特徴とするサーメット粉末の製造方法。
【請求項22】
前記(S1−4)段階は、(i)ミクロンサイズを有する、Ni,Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、(ii)ミクロンサイズを有する、周期表IV、V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の酸化物、水酸化物、炭酸化物または水化物、及び(iii)炭素粉末または炭素源物質を予定された組成で混合し、前記(i)、(ii)及び(iii)の混合物をナノサイズまたは非晶質状態に粉砕する段階を含むことを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記(S2)段階は、前記還元及び炭化に加えて、前記混合物を窒化する段階をさらに含むことを特徴とする請求項13ないし15,18ないし23のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記(S2)段階は、前記還元及び炭化が1000ないし1300℃の温度及び3時間以下の条件下で真空または水素、CH4、CO/CO2の雰囲気下で行われた後、窒化が窒素の雰囲気下で行われることを特徴とする請求項13ないし15,18ないし23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項5ないし7のいずれかに記載のサーメット粉末を焼結する段階を含むことを特徴とするサーメットの製造方法。
【請求項26】
100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及びいずれも100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するWC−Me、Mo2C−Me、TaC−Me、NbC−Me、ZrC−Me及び/またはHfC−Me(Meは、Ni,Co,Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)よりなる群から選ばれるいずれか1種以上のサーメット粉末の混合物が焼結されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
100nm以下のナノサイズの結晶粒を有するTiC−MeまたはTi(CN)−Me(Meは、Ni、Co、Feよりなる群から選ばれるいずれか1種以上の結合相である)のサーメット粉末、及び(i)周期表IV,V及びVI族の金属からTiを含んで選ばれる少なくとも2種の金属成分の炭化物、炭窒化物、またはこれらの混合物、及び(ii)Ni、Co及びFeから選ばれる少なくとも1種の金属成分を含む凝集体であり、前記凝集体は、100nm以下のナノサイズの結晶粒及び完全固溶相を有するサーメット粉末の混合物が焼結されることを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法は、炉内への窒素注入時間及び/または炉内への窒素注入量を制御しながらサーメット粉末を焼結することにより、TiC、Ti(CN)、(Ti,M1,M2..)Cまたは(Ti,M1,M2..)(CN)の硬質相を前記サーメットの表面にのみ形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25ないし27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記方法は、前記サーメット粉末の焼結後にCVDまたはPVD方法によりTiC、TiN、Ti(CN)、TiAlNまたはTiAlCrNの強化コーティング層の1以上の層を前記サーメットの表面に形成する工程をさらに含むことを特徴とする請求項25ないし27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
Tiを除く他の成分の量が5〜90重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の固溶体粉末。
【請求項31】
Wの量が10〜90重量%であることを特徴とする請求項30に記載の固溶体粉末。
【請求項32】
Wの量が10〜80重量%であり、Mo、Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に25重量%以下であることを特徴とする請求項30に記載の固溶体粉末。
【請求項33】
Wの量が10〜80重量%であり、Mo、Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下であることを特徴とする請求項30に記載の固溶体粉末。
【請求項34】
請求項30ないし33のいずれかに記載の固溶体粉末の焼結体であることを特徴とするセラミック。
【請求項35】
Wの量が10〜85重量%であり、Mo、Nb及び/またはTaの量は、添加される場合に10重量%以下、Ni,Co及び/またはFeの結合相の量が30重量%以下であることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のサーメット粉末。
【図1】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図3d】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6a】
【図6b】
【図7】
【公開番号】特開2006−299396(P2006−299396A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−233775(P2005−233775)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(304045918)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファンデーション (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−233775(P2005−233775)
【出願日】平成17年8月11日(2005.8.11)
【出願人】(304045918)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファンデーション (3)
【Fターム(参考)】
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