説明

圧気輸送の間の粒子への原子又は分子層堆積のための装置及び方法

本発明は、チューブの中を圧気輸送されている粒子にコーティングを堆積するための方を提供する。本方法は、入口及び出口を有するチューブを用意する段階、チューブの入口において又はその近くにおいて、粒子を運んでいるキャリアガスをチューブの中へと供給して、チューブを通る粒子の流れを作る段階、及び該粒子の流れの中の粒子との反応のために、チューブの入口から下流で少なくとも1の注入点を介してチューブの中へと自己停止する第一の反応物を注入する段階を含む。本方法は、原子層堆積及び分子層堆積に適切である。本方法を実施するための装置もまた開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、小さな粒子の上に層を堆積するための連続方法、より特に小さな粒子、特にナノ粒子、の上に原子又は分子層堆積のための連続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体基質上に物質の層を堆積するためのいくつかのテクニックは公知である。例は、電気メッキ、電気を使用しないメッキ、化学蒸着、及び原子又は分子層堆積を含む。種々のテクニックは基本的にバッチ様式で行われ、特定の所望される厚さのコーティングを得るために、堆積プロセスは数回繰り返されなければならない。その結果、従来技術の方法は、面倒かつ高価である傾向がある。
【0003】
英国特許第2214195A号は、粒子の加熱された表面上で気体状の金属のカルボニルを熱的に破壊することによる金属、例えばNi,Fe,又はCoで粒子を被覆するための圧気輸送反応器を開示する。この装置は、ループの形で構成され、該ループは下向きに延在する部分及び上向きに延在する部分を含む。粒子は該下向きの部分において金属カルボニルを含むキャリアガスと混合される。カルボニルは該上向き部分において分解され、粒子の上に金属を堆積させる。該装置はキャリアガスから粒子を分離するためのセパレーター、例えばサイクロン、を含む。
【0004】
該装置は、低いミクロンの範囲、4μmのオーダー、における粒子サイズを有する粒子に適する。粒子は、基本的にはバッチ式操作において、所望されるコーティングの厚さが達成されるまで粒子は閉じられたループを通して循環される。
【0005】
Puurunen著、「原子層堆積の表面化学:トリメチルアルミニウム/水プロセスのケーススタディ」、Journal of Applied Physics 第97巻,121301(2005年)は、一般的な原子特にアルミナの層の堆積の技術の総説を提供する。本質的に、原子層堆積(「ALD」)は、自己停止する気体−固体反応に基づく化学蒸着の特定な形である。
【0006】
ALDによる層の成長は、以下の4つの段階からなる繰り返し反応サイクルからなる。
(1)第一の反応物(反応物A)が固体基質の表面と自己停止する反応
(2)反応されなかった反応物A及びいかなる気体状の反応副生物を除去するためのパージ又は排出
(3)第二の反応物(反応物B)の自己停止する反応又は反応物Aとの反応のために再び基質の表面を活性化する別の処理
(4)過剰の反応物及び段階(3)において生成された気体状の反応生成物のパージ又は排出。
【0007】
段階(1)は、単層が形成されたとき、反応は停止するという意味において自己停止性である。ALDの文脈では、単層は、基質の表面において反応物Aのために利用可能な化学吸着部位の全てが占有されているとき、形成される。ALDの重要な利点は、層がエピタキシャルに堆積され、原子スケールにまでよく定義されたコーティングをもたらすことである。しかし、ALDでは、定義により、一つの原子層のみが各反応サイクルにおいて堆積される。即ち、相対的に厚いコーティングの形成については、そのようなコーティングの堆積は数十の、時には数百の、又は数千の反応サイクルを必要とし得るので、ALDはより低位に適切である。
【0008】
米国特許出願公開第2006/0062902A1は、光起電パネルにおける使用のためのCIGS粒子の製造のためにALDを使用することを開示している。該粒子は撹拌されて、コーティングの間に流動床を形成し、その結果懸濁された粒子の表面積の全てが表面反応に利用可能になる。
【0009】
Helmsingらによる「新規なベンチスケールのFCCライザ反応器における短い接触時間」、Chemical Engineering Science,第51巻、第11号、3039〜3044頁(1996年)は、基本的に長く細いチューブからなる噴流反応器(entrained flow reactor)を開示している。該チューブは取扱い可能な大きさの加熱室に適合するようにループになっている。該反応器は、プラグフロー条件下で運転されることができ、原油フラクションの流動触媒分解(FCC)に使用される触媒を試験するために、該反応器を適切にする。反応器は、反応物に対して単独の注入点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】英国特許第2214195号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0062902号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Puurunen、「原子層堆積の表面化学:トリメチルアルミニウム/水プロセスのケーススタディ」、Journal of Applied Physics、第97巻,121301(2005年)
【非特許文献2】Helmsingら、「新規なベンチスケールのFCCライザ反応器における短い接触時間」、Chemical Engineering Science,第51巻、第11号、3039〜3044頁(1996年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
即ち、小さな粒子上への原子又は分子の層を堆積させる連続方法及びそのような連続方法を実行するための装置に対するニーズが特にある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、チューブの中を圧気輸送されている粒子の上に連続層を堆積する方法を提供することによりこれらの問題に取り組む。該方法は、
(i)入口及び出口を有するチューブを用意する段階、
(ii)該チューブの入口において又は入口の近くにおいて、粒子を運んでいるキャリアガスをチューブの中へと供給して、チューブを通る粒子の流れを作る段階、及び
該粒子の流れの中の粒子との反応のために、チューブの入口から下流の少なくとも1の注入点を介してチューブの中へと自己停止する第一の反応物を注入する段階
を含む。これらの粒子との反応のためにチューブにおける粒子の流れの中へと反応物を注入することは、粒子上への層堆積の連続方法を可能にする。
【0014】
本発明の別の特徴は、粒子が圧気輸送に付されている間に粒子の上に連続層を堆積するための装置を含む。該装置は
(i)入口及び出口を有するチューブ、
(ii)粒子を運んでいるキャリアガスをチューブの中へと供給する供給デバイス、及び
(iii)反応物をチューブの中へと導入するための入口から下流にある少なくとも1の注入点
を含み、該装置は上記の方法を実行するように構成されている。
【0015】
本発明の特徴及び利点は、以下の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の装置の実施態様の模式図である
【符号の説明】
【0017】
1:チューブ
10:粒子
11:不活性ガス
12A〜16A:第一の注入点
12B〜16B:第二の注入点
12C〜16C:フラッシュポイント
12D〜16D:フラッシュポイント
17:ガスの流れ
18:粒子
21〜22:温度制御ユニット
23:前処理ユニット
100:流動化装置
200:分離デバイス
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、チューブの中を圧気輸送されている粒子に連続層を堆積するための連続方法に関し、該方法は、(i)入口及び出口を有するチューブを用意する段階、(ii)チューブの入口において又はその近くにおいて、粒子を運んでいるキャリアガスをチューブの中へと供給する段階、及びチューブの入口から下流で少なくとも1の注入点を介してチューブの中へと反応物を注入する段階を含む。
【0019】
本方法は、原子層堆積法及び/又は分子層堆積法により層を堆積するのに適切である。粒子は、より小さな粒子により形成される凝集体を含んでいてもよい。そのような凝集体は、これらの非常に小さな粒子の表面が反応物との反応に利用可能である間に、非常に小さな粒子の圧気輸送を許す。本明細書において、用語「粒子」は粒子及びこれらの粒子により形成される凝集体を意味する。
【0020】
本方法の好ましい実施態様において、粒子は実質的にプラグフローにおいてチューブを通って進む。用語「プラグフロー」は粒子がキャリアガスと同じ直線速度で進むことを示唆するが、より大きな粒子の場合、これは真実ではない。数マイクロメートルより大きな粒子では、キャリアガスと運ばれる粒子との間にはある量の差(slippage)があるので、キャリアガスは粒子より速い速度で進む。そのような条件下では、この滑りのために、反応器は基本的に自己パージ性である。すなわち未反応の反応物及び反応生成物はキャリアガスが粒子に追いつき、粒子を追い越すことにより粒子から除去される。
【0021】
本願発明のこの自己パージ性は、本方法が連続モードで運転される能力に寄与し、該連続モードは原子又は分子層堆積の反応サイクロを実行することについて本方法を魅力的にする。一般的に、粒子に1超の層を堆積させることが所望されるので、本方法の好ましい実施態様はチューブの入口の下流において複数の注入点を使用する。
【0022】
この自己パージ効果は、粒子サイズが如何なる重大な差が起きるのにも小さすぎるときには、存在しない。本発明の方法は少数の層を堆積させるこれらの環境においてさえも使用されることができる。例えば、触媒粒子を製造するときは、しばしば、1つの層だけを堆積すれば十分である。
【0023】
小さな粒子上にたくさんの層を堆積する場合でも、本発明の方法は有用である。本方法のこの実施態様の場合、反応副生物及び未反応の反応物を除去するためのパージポートを有するチューブを用意することが望ましい。
【0024】
慣用の化学蒸着においては、各反応物注入点は粒子上への層の堆積に該当する。この層は必ずしも単層ではない。例えば、本方法は金属、例えばNi,Fe,又はCoを堆積するために使用されることができ、そうすることにより対応する有機金属化合物が第一の反応物注入点に注入される。チューブは有機金属化合物の分解を起こすのに十分高い温度において保たれる。一般的に、100〜320℃の範囲の温度が適切であり、下限は該有機金属化合物の分解温度により支配される。あるいは、プラズマが反応を活性化するのに使用されることができる。
【0025】
チューブに入る時、有機金属化合物が分解し、金属がキャリアガスにより運ばれている粒子の上に堆積する。有機金属化合物の分解反応において生成する有機化合物は該粒子からキャリアガスにより除去される。堆積サイクルは、第二の注入点における有機金属化合物の注入において繰り返され、そうすることにより金属の第二の層が粒子の上に堆積される。一般的に本方法が慣用の化学蒸着において使用されるとき、粒子の上に堆積される層の数は有機金属化合物を受け止める注入点の数と同じである。
【0026】
本明細書において使用される用語「慣用の化学蒸着」は、一般的に単独反応物又は同時に添加された複数反応物化学蒸着を意味し、該蒸着において反応は自己停止性ではない。原子層蒸着(「ALD」)は化学蒸着の特定の実施態様と考えられる。ALDにおいて、一つのみの原子層は各反応サイクルにおいて蒸着される。特に用語「原子層蒸着」すなわち「ALD」は、本明細書において使用されるように、自己停止する反応において、反応物が粒子の表面に堆積する化学蒸着を意味する。多くの場合において、本方法のサイクルは、第二の反応物が粒子の表面と接触する第二の反応段階を含む。しかし、用語ALDは本明細書において使用されるように、第一の反応物との次の反応のために他の手段を使用して粒子の表面を活性化せてもよいので、この2つの反応物の方法に限定されない。
【0027】
重要なことは、特定の反応物に依存して、堆積される「原子」層は実際、分子の層であってもよい。本明細書において使用される用語ALDは、分子層堆積もまた包含する。
【0028】
ALD法は、2つの反応のALD反応サイクルを参照して説明される。第一の反応物は第一の注入点の中へと注入される。この第一の反応物は粒子の表面に堆積されるべき原子又は分子の前駆体である。第一の反応物は粒子と相互作用して、粒子の表面上に化学吸着単層を形成する。もしガス/粒子の差が起きると、未反応の第一反応物及び反応副生物は、上述の自己パージメカニズムにより粒子から除去される。
【0029】
第二の反応物は第二の注入点の中へと注入される。チューブに入ると、第二の反応物は第一の反応物(の反応生成物)の単層で被覆されている粒子と接触し、第二の反応物は化学吸着された第一の反応物(の反応生成物)と反応して所望されるコーティング物質の原子又は分子の層を形成する。もしガス/粒子の差が起きると、未反応の第二の反応物及び反応副生物は自己パージメカニズムにより粒子から除去される。
【0030】
第二のALD層は、第一の反応物を第三の注入点の中へと、そして第二の反応物を第四の注入点の中へと注入すること等により堆積され得る。一般的に、多数の層が多数の注入点をチューブに沿って用意することにより堆積されることができる。第一の反応物は(入口から数えて下流に行く)注入点1、3、5等に、そして第二の反応物は注入点2,4、6等に注入される。一般的に、第一の反応物は奇数の注入点の中へと注入され、第二の反応物は偶数の注入点の中へと注入される。
【0031】
上記の自己パージメカニズムは、理想化されたモデルであり、単独の注入点を有するチューブにおいてのみ一般的には遭遇される。第二の注入点に配置された粒子は、少量の未反応の反応物及び/又は反応副生物を含むキャリアガスにより第一の反応点からパージされる。一般的に、これらの汚染物質は、問題を起こさないように十分に希釈される。とくに、もしチューブが多数の注入点を含むならば、反応生成物及び/又は未反応の反応物を除去するための1以上のフラッシュポイントを用意することが望ましい。
【0032】
望ましくは、キャリアガスは不活性ガス、例えば窒素又は貴ガス、特にヘリウムである。
【0033】
キャリアガスの直線速度は、粒子の運搬を起こすのに十分、速いように選択される。従って、この直線速度の下限は、平均粒径、粒子密度及び粒子のアスペクト比などの因子によりおおむねは決められる。粒子の上に堆積されたコーティング層の結果として粒子がチューブを通って進むにつれて、粒径は大きくなることが理解される。キャリアガスの直線速度は、所望される数のコーティング層の堆積後に粒子を運ぶのに十分でなければならない。この目的のために、直線速度はチューブに沿って増加され得る。いくつかの実施態様において、そのような速度の増加は、続いて起きる反応物の注入により少なくとも部分的に得られる。
【0034】
本方法の別の実施態様において、チューブは1以上のフラッシュポイントを備えられている。該フラッシュポイントは、キャリアガスをフラッシュするためだけでなく、フラッシュにより押し出されるよりもたくさんのキャリアガスを導入することによりキャリアガスのフロー速度を増加させるために使用される。その結果、キャリアガスの直線速度がフラッシュポイントから下流で増加され、粒子の重さとサイズの増加を補う。
【0035】
キャリアガスの直線速度の上限は、プラグフロー条件下でチューブを操作するという所望により主に決められる。プラグフローの原理は当業者に周知である。本発明の方法において使用されたものに類似のチューブのためのプラグフローの条件は、Helmsingら,「新規なベンチスケールFCCライザー反応器における短い接触時間の実験(Short Contact Time Experiments in a Novel Benchscale FCC Riser Reactor)」、Chemical Engineering Science、第51巻、第11号、3039〜3044頁(1996年)に開示されており、該開示は参照することにより本明細書に取り込まれる。
【0036】
直線速度は、好ましくは、次の注入点が遭遇される前に自己停止する反応の完了を得られるように選択される。一般的にキャリアガスの直線速度は0.02〜30m/秒の範囲、好ましくは0.1〜10m/秒の範囲である。
【0037】
チューブは、チューブの中で行われる反応サイクルにとって適切な温度に保たれる。一般的に温度は0〜1000℃の範囲である。ALDでは、反応サイクルの第一及び第二の反応は、異なる反応温度を要求し得る。本発明の好ましい実施態様において、チューブの異なる部分が異なる温度に保たれてもよい。具体的には、奇数の番号を付与された注入点から下流でありかつ偶数の番号を付与された注入点から上流のチューブ部分は第一の温度に保たれ、それはALD反応サイクルの第一反応の反応温度に対応する。同様に、偶数の番号を付与された注入点から奇数の番号を付与された注入点までのチューブ部分は第二の温度に保たれ、それはALD反応サイクルの第二反応の反応温度に相当する。
【0038】
任意的に、ある注入点に到達する前、チューブの粒子は前処理されてもよい(preconditioned)。粒子の前処理は、粒子が第一の反応物と接触する前、即ち第一の注入点より上流で、特に有用であることができる。前処理は注入点より上流で粒子を所望される温度、好ましくは注入点より下流において計画されている反応の反応温度に相当又は近い温度、まで加熱することを含む。注入点より上流の粒子の前処理は、該注入点より下流のチューブにおける温度勾配の進展を制限し得る。そのような温度勾配の存在は、チューブの様々な部分において種々の反応速度を招来するので、望ましくない。チューブの種々の部分における実質的に一定の温度は、より一定の反応速度を与え、該一定の速度は反応制御及び装置の設計を単純化する。
【0039】
追加的に、又は二者択一的に、チューブに注入される反応物は、粒子の予備加熱に関する上記の理由と似た理由から、チューブに注入される前に適切な温度に予備加熱されてもよい。
【0040】
偶数の番号を付与された注入点から奇数の番号を付与された注入点までのチューブ部分は、異なる温度における反応に対応するため及び/又は異なる反応物及び/又は気体状反応生成物に対処するために、奇数の番号を付与された注入点から偶数の番号を付与された注入点までのチューブ部分とは異なる材料から製造されていてもよい。例えば、あるチューブ部分はテフロン(登録商標)からできていているが、他の部分はステンレススチールでできていてもよい。適切なチューブ物質の選択は化学耐性及び熱伝導性において最適を見出すことに基づき得る。例えば、もしチューブ全体を通して一定の温度を保つことが重要であるならば、十分に高い熱伝導性係数を有するチューブ物質が所望される。追加的に、粒子及び注入された反応物間の反応は、チューブの壁の結合基との化学反応により阻害されないことが望ましい。従って、もしそのような反応が特定のタイプの反応物の使用により起こる可能性があるならば、そのような化学反応に対する十分な耐性を有する物質が所望される。
【0041】
本方法は、広い範囲の平均粒径、約2nm〜1mm、の粒子にコーティングを堆積させるのに適切である。従来技術の流動床方法と比較して、本発明の方法の重要な利点は、1mmより十分小さい粒径を有する粒子をコーティングする能力である。
【0042】
本発明の別の特徴は、上記の方法を実行するための装置である。その最も広い特徴において、この特徴は粒子への原子層堆積のための連続方法のための装置に関し、該粒子は圧気油送に付され、該装置は(i)入口及び出口を有するチューブ、(ii)粒子を運んでいるキャリアガスをチューブの中へと供給する供給デバイス、及び(iii)反応物をチューブの中へと導入するための入口から下流にある少なくとも1の注入点を含む。
【0043】
好ましい実施態様において、チューブは入口から下流に複数の注入点を有する。望ましくは、注入点はチューブの長さの少なくとも一部に沿って、間隔をあけて配置される。好ましくは、注入点は実質的にチューブの長さに沿って間隔をあけて配置される。
【0044】
該装置の好ましい実施態様は、チューブから反応副生物を除去するための少なくとも1のフラッシュポイントを含む。用語「反応副生物」は、この文脈において未反応の反応物を含む。
【0045】
チューブは0.02〜300mmの範囲の内径を有する。実際の直径はこの範囲において該装置内でコーティングされるべき粒子の平均直径、キャリアガスの所望される直線速度などの因子の関数において選択され得る。ほとんどの場合において、適切なチューブの内径は0.1mm〜100mm、好ましくは1mm〜20mmの範囲である。
【0046】
もし1超の注入点があるならば、隣接する注入点間の距離は好ましくは反応が自己停止するのに要する時間、その時間の間にキャリアガスが進む距離により決められる。含まれる反応は一般的に多かれ少なかれ瞬間的であるが、反応物が注入点から粒子まで進むためにいくらかの時間が許される必要がある。一般的に次の注入点は10mm〜5000mm、好ましくは10mm〜100mm離れている。
【0047】
チューブの長さは要求される注入点の数により主に決められる。従って、チューブの長さは0.1m〜500mの範囲である。多くの場合、チューブの長さは5m〜50mの範囲である。
【0048】
該装置の物理的空間要求を制限するために、チューブは折りかえされ得るか又はコイル状にされ得る。適切には、チューブは加熱及び/又は冷却するための手段を用意されたチャンバーに収容される。チャンバーの実際の設計及び加熱及び/又は冷却手段の仕様は、所望される操作温度に基づき得る。操作温度は0℃〜1000℃の範囲であり得る。
【0049】
図1は、ガスの流れに運ばれる粒子の上にたくさんの層を堆積するための、本発明の装置の実施態様の模式図である。粒子10は流動化装置(fluidizer)100に供給され、そこで不活性ガス11、例えば窒素、により流動化され、コイル状のチューブ1の中へと運ばれる。第一の注入点12Aにおいて、原子層堆積サイクルの第一の反応物がコイル状のチューブに導入される。第二の注入点12Bにおいて、ALDサイクルの第二反応物がコイル状のチューブに導入される。注入点13Aにおいて、第一の反応物の第二の投与が導入され、注入点13Bにおいてコイル状のチューブは第二の反応物の第二の投与を受け取る。該サイクルは注入点のペア14A/14B;15A/15B;及び16A/16Bにおいて繰り返される。分離デバイス200がコーティングされた粒子18をガスの流れ17から分離し、該ガスの流れは不活性ガスだけでなく気体状の反応生成物及び未反応反応物をも含み得る。分離デバイス200は任意の適切な分離デバイス、例えばサイクロンセパレーター、であり得る。
【0050】
任意的に、破線の矢印により示されているように、1以上のフラッシュポイント12〜16C、12〜16Dがチューブに沿って配置され、ガスの流れから気体状の反応生成物を除去する。特にフラッシュポイント12C,13C,14C,15C及び16Cは、第一の反応に関連する気体状反応生成物を優越して除去する、同様に、フラッシュポイント12D,13D,14D,15D,及び16Dは、第二の反応に関連する気体状反応生成物を優越して除去する。フラッシュポイントは適切なフィルターを含み得、チューブ1に粒子を保ちながら反応生成物が除去されることを許す。
【0051】
任意的に、種々の反応の温度は温度制御ユニット21、22、例えば熱交換器又は当業者に公知の加熱及び/又は冷却のための他のタイプのデバイスにより設定され得る。温度制御ユニット21は第一の反応物との反応のために保存されているチューブの部分、即ち第一の反応物の注入点の下流かつ第二の反応物の注入点の上流の温度を制御するように配置されている。例えば温度制御ユニット21はこれらの部分における温度を第一の温度に保つように配置されている。同様に温度制御ユニット22は例えばこれらの部分の温度を第二の温度に保つことより第二の反応物との反応のために保存されているチューブ部分の温度を制御するように配置されていてもよい。
【0052】
任意的に、前処理ユニット23は粒子の流れにおいて粒子を前処理するために配置されている。そのような前処理は、注入点12Aを介して与えられる第一の反応物との所望される反応温度近くの温度まで粒子を加熱することを含む。明示的には示されていないが、例えばさらなる注入点より上流の粒子を予備加熱するためにより多くの前処理単位が該装置において使用され得る。
該図は模式的なものであることが理解される。注入点のペアの表現された数(図1におけるナンバリング5)は、実際はたったの1つから数百又は数千までの範囲を変動し得る複数の注入点のペアを表わす。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブの中を圧気輸送されている粒子にコーティングを堆積するための方法において、
(i)入口及び出口を有するチューブを用意する段階、
(ii)該チューブの入口において又は入口の近くにおいて、粒子を運んでいるキャリアガスをチューブの中へと供給して、チューブを通る粒子の流れを作る段階、及び
(iii)該粒子の流れの中の粒子との反応のために、チューブの入口から下流の少なくとも1の注入点を介してチューブの中へと自己停止する第一の反応物を注入する段階
を含む前記方法。
【請求項2】
粒子がより小さな粒子の凝集体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第一の反応物が、チューブの入口から下流にある複数の注入点を介してチューブの中へと注入され、かつ1つの注入点から下流にある別の注入点がキャリアガスの速度を上げるように配置されている、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
複数の注入点がチューブの長さの少なくとも一部に沿って間隔をあけて配置されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
複数の注入点が実質的にチューブの長さに沿って間隔をあけて配置されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
注入点の上流でチューブの中の粒子を前処理することをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
粒子の流れの中の粒子との反応のために、少なくとも1の注入点から下流にある少なくとも1のさらなる注入点を介して、チューブの中へと自己停止する第二の反応物を注入することをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
第一の反応物が第二の反応物のための前駆体である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
さらなる注入点がキャリアガスの速度を上げるように配置されている、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
キャリアガスの速度が粒子の流れの中の粒子の速度より速くなるような速度でキャリアガスが供給される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
粒子の流れがプラグフローの形をとる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1のフラッシュポイントにおいてチューブから反応副生物を除去することをさらに含む、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
該反応副生物が、チューブの長さに沿って間隔をあけて配置されている複数のフラッシュポイントにおいてチューブから除去される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
チューブの異なる部分を異なる温度に保つことをさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
チューブが、チューブの入口から逐次的に番号を付与された複数の注入点を備えられており、自己停止する第一の反応物は奇数の番号を付与された注入点の中へと注入され、かつ自己停止する第二の反応物は偶数の番号を付与された注入点の中へと注入される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
自己停止する反応物が複数の注入点の間で実質的に自己停止するように、該複数の注入点が間隔をあけて配置されている、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
−奇数の番号を付与された注入点から下流でありかつ偶数の番号を付与された注入点に対して上流のチューブ部分を第一の温度に保ち、かつ
−偶数の番号を付与された注入点から下流でありかつ奇数の番号を付与された注入点に対して上流のチューブ部分を第二の温度に保つことをさらに含む、請求項15又は16に記載の方法。
【請求項18】
キャリアガスが不活性ガスである、請求項1〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
キャリアガスが、0.02〜30m/秒、好ましくは0.1〜10m/秒の直線速度においてチューブの中を進む、請求項1〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
コーティングされる粒子の粒径が2nm〜1mmの範囲である、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
(i)入口及び出口を有するチューブ、
(ii)粒子を運んでいるキャリアガスをチューブの中へと供給する供給デバイス、及び
(iii)反応物をチューブの中へと導入するための入口から下流にある少なくとも1の注入点
を含む装置において、該装置が請求項1〜20のいずれか1項に記載の方法を行うように配置されている前記装置。
【請求項22】
装置が、チューブの長さの少なくとも一部に沿って間隔をあけて配置された複数の注入点を含む、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
チューブがチューブの入口から逐次的に番号を付与された複数の注入点を備えられ、奇数の番号を付与された注入点は自己停止する第一の反応物の注入のために配置されており、かつ偶数の番号を付与された注入点は自己停止する第二の反応物の注入のために配置されている、請求項21又は22に記載の装置。
【請求項24】
チューブから反応副生物を除去するための少なくとも1のフラッシュポイントをさらに含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の装置。
【請求項25】
チューブの長さの少なくとも一部に沿って複数のフラッシュポイントを含む、請求項24に記載の装置。
【請求項26】
チューブが0.02mm〜300mmの範囲、好ましくは1mm〜20mmの範囲の内径を有する、請求項21〜25のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
チューブが1mm〜20mmの範囲の内径を有する、請求項26に記載の装置。
【請求項28】
チューブが0.1m〜500mの長さを有する、請求項21〜27のいずれか1項に記載の装置。
【請求項29】
チューブが5m〜50mの長さを有する、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
チューブが折りかえされている又はコイル状である、請求項21〜29のいずれか1項に記載の装置。
【請求項31】
チューブが、加熱のための手段及び/又は冷却のための手段を備えられたチャンバーに収容されている、請求項21〜30のいずれか1項に記載の装置。
【請求項32】
チャンバーが、0℃〜1000℃の範囲の温度に保たれることができる、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
チューブの異なる部分が異なる温度に保たれている、請求項31に記載の装置。
【請求項34】
奇数の番号を付与された注入点から下流でありかつ偶数の番号を付与された注入点に対して上流のチューブの部分が、第一の温度に保たれるように配置されており、並びに偶数の番号を付与された注入点から下流でありかつ奇数の番号を付与された注入点に対して上流のチューブ部分は第二の温度に保たれるように配置されている、請求項23に記載の装置。


【図1】
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【公表番号】特表2012−519773(P2012−519773A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552450(P2011−552450)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052769
【国際公開番号】WO2010/100235
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511213465)デルフト ユニベルシティ オブ テクノロジー (1)
【Fターム(参考)】