説明

圧電デバイス

【課題】圧電振動素子の圧電振動部が素子搭載部材の凹部空間内底面に接触することを防ぎ、安定した発振周波数を出力することができる圧電デバイスの提供。
【解決手段】圧電デバイス100は、凹部空間を有する素子搭載部材110と、凹部空間内に搭載される圧電振動素子120と、凹部空間を気密封止する蓋部材130と、を備える圧電デバイス100であって、圧電振動素子120は、励振用電極が設けられている圧電振動部121と、圧電振動部を囲い、圧電振動部よりも薄くなるように設けられている圧電振動枠部122と、圧電振動枠部の一部に素子搭載部材の凹部空間内底面に向かって設けられている突起部123と、圧電振動枠部に形成される素子搭載部材接続電極125と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
以下、圧電デバイスの一例として圧電振動子について説明する。
従来の圧電振動子は、その例として素子搭載部材、圧電振動素子、蓋部材とから主に構成されている。
素子搭載部材は、基板部と枠部で主に構成されている。
この素子搭載部材は、基板部の一方の主面に枠部が設けられて凹部空間が形成される。
その凹部空間内に露出する基板部の一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッドが設けられている。
また、基板部は、積層構造となっており、基板部の内層には、配線パターン等が設けられている。この配線パターンにより圧電振動素子搭載パッドは、素子搭載部材の基板部の他方の主面に設けられている外部接続用電極端子と接続している。
これら圧電振動素子搭載パッド上には、導電性接着剤を介して電気的に接続される圧電振動素子が搭載されている。この圧電振動素子を囲繞する素子搭載部材の枠部の頂面には金属製の蓋部材が被せられ、前記枠部と接合されている。これにより、凹部空間が気密封止されている。
【0003】
圧電振動素子は、圧電振動部の周囲に、前記圧電振動部の厚みより薄い枠部を一体で形成されており、前記圧電振動部の表裏主面上に励振用電極と、前記励振用電極から枠部を介して引き出した引出電極と、前記枠部の外周辺のうち一辺の短辺側の表裏縁部近傍に形成した前記引出電極と電気的に接続した素子搭載部材接続用電極とを形成することで構成されている構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−267888号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の圧電デバイスでは小型化されると、素子搭載部材の凹部空間内に圧電振動素子の姿勢の保持と、圧電振動素子が他の部品に打ち付けられることを防止との役割を果たす枕部を設けることができないため、落下等の衝撃により、圧電振動素子の圧電振動部が素子搭載部材の凹部空間内底面に接触し、発振周波数が変動してしまうといった課題があった。
また、落下等の衝撃で圧電振動素子の圧電振動部が凹部空間K1内底面に接触した際に、圧電振動部に破損や欠けを生じてしまうといった課題があった。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたものであり、圧電振動素子の圧電振動部が素子搭載部材の凹部空間内底面に接触することを防ぎ、安定した発振周波数を出力することができる圧電デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の圧電デバイスは、凹部空間を有する素子搭載部材と、凹部空間内に搭載される圧電振動素子と、凹部空間を気密封止する蓋部材と、を備える圧電デバイスであって、圧電振動素子は、励振用電極が設けられている圧電振動部と、圧電振動部を囲い、圧電振動部よりも薄くなるように設けられている圧電振動枠部と、圧電振動枠部の一部に素子搭載部材の凹部空間内底面に向かって設けられている突起部と、圧電振動枠部に形成される素子搭載部材接続電極と、を備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の圧電デバイスによれば、圧電振動素子は、励振用電極が設けられている圧電振動部と、圧電振動部を囲い、圧電振動子部よりも薄く形成される圧電振動枠部と、圧電振動枠部の一部に素子搭載部材の凹部空間内底面側に向かって設けられる突起部と、圧電振動枠部に設けられる素子搭載部材接続電極とを備えて構成されていることにより、落下等の衝撃で圧電振動素子の突起部が圧電振動部よりも先に凹部空間内底面に接触することになるので、圧電振動素子の圧電振動部が凹部空間内底面に接触することを防ぐことができる。よって、圧電デバイスは、発振周波数が変動することがなく、安定した発振周波数を出力することが可能となる。
また、落下等の衝撃で圧電振動素子の圧電振動部が素子搭載部材の凹部空間内底面に接触することがないので、圧電振動部の破損や欠けを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスを示す分解斜視図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスを示す分解斜視図である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイスを構成する圧電振動素子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。尚、圧電振動素子に水晶を用いた場合について説明する。
尚、説明を明りょうにするため説明に不必要な構造体の一部を図示していない。さらに図示した寸法も一部誇張して示している。
【0011】
(第1の実施形態)
図1及び図2に示すように、圧電デバイス100は、素子搭載部材110と圧電振動素子120と蓋部材130とから構成されている。この圧電発振器100は、前記素子搭載部材110の一方の主面に凹部空間K1が形成され、前記素子搭載部材110の前記凹部空間K1内に前記圧電振動素子120が搭載され、前記蓋部材130によって圧電振動素子20が搭載された凹部空間K1を気密封止した構造となっている。
【0012】
圧電振動素子120は、図1及び図2に示すように、圧電振動部121と、圧電振動枠部122と、突起部123と、励振用電極124と、素子搭載部材接続用電極125により構成されている。
前記圧電振動部121は、圧電振動素子120の所定の位置に凸形状になるように設けられており、凸形状の両主面に励振用電極124が形成されている。また圧電振動部121の振動モードは厚みすべり振動である。
【0013】
圧電振動枠部122は、前記圧電振動部121を囲い、前記圧電振動部121よりも薄くなるように設けられている。また、前記圧電振動枠部122の表面には素子搭載部材接続電極125が設けられている。前記圧電振動枠部122は、前記圧電振動子部121の厚みよりも薄くなっている。
【0014】
突起部123は、前記圧電振動枠部122の一部に前記素子搭載部材110の凹部空間K1内底面側に向かって設けられている。つまり、前記突起部123は、前記圧電振動素子120の先端側に位置する前記圧電振動枠部122に設けられている。
また、突起部123の厚みは、圧電振動部121の圧電振動枠部122よりも凹部空間内K1底面側に突出している部分の厚みよりも厚くなっている。つまり、凹部空間K1内底面の基板部110aと対向する前記突起部123の面は、圧電振動部121の励振用電極124が設けられ、凹部空間K1内底面の基板部110aと対向する圧電振動部121の面よりも凹部空間K1内底面に近づくようにして設けられている。
【0015】
励振用電極124は、前記圧電振動部121の表裏両主面に金属膜を積層するようにして被着・形成したものである。
尚、励振用電極124は、第1の金属膜であるクロム(Cr)又はチタン(Ti)が下地として形成され、第1の金属膜の上面に第2の金属膜である金(Au)が積層するように形成されている。第1の金属膜と第2の金属膜の接合力を上げるためにニッケル(Ni)を第1の金属膜と第2の金属膜の間に形成する場合もある。
【0016】
素子搭載部材接続電極125は、前記圧電振動枠部122の両主面に形成されており、前記励振用電極124から圧電振動枠部122上に引き出された引き出し電極126を介して、前記励振用電極124と接続されている。
【0017】
引き出し電極126は、前記突起部123にかからないようにして、引き出されている。
また、前記圧電振動部121と、前記圧電振動枠部122と、前記突起部123は一体形成されている。
【0018】
前記圧電振動素子120を製造する方法としては、突起部123となる部分の厚みが一番厚くなるように、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて製造される。
突起部123が、水晶ウエハの厚みを厚さとし、後述する素子搭載部材110の凹部空間K1内底面に向かう位置になるように、平板形状の水晶ウエハの主面側にフォトリソグラフィ法及びエッチング法により設けられる。
次に、圧電振動部121は、前記突起部123を残して、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を行うことより、厚みすべり振動モードで所望する周波数を励振する厚みにまで厚み加工することで設けられる。
更に、圧電振動枠部122は、前記突起部123と前記圧電振動部121を残して、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を行うことにより、前記圧電振動部121の周囲に設けられる。
これにより、圧電振動部121と、圧電振動枠部122と、突起部123とが一体的に設けられる。
【0019】
このような圧電振動素子120は、枠部122の両主面に被着されている素子搭載部材接続電極125と後述する素子搭載部材110の凹部空間K1内に設けられた圧電振動素子搭載パッド111とを、導電性接着剤DSを介して電気的且つ機械的に接続されることによって搭載される。
【0020】
素子搭載部材110は、図1及び図2に示すように、素子搭載部材110は、基板部110aと、枠部110bと、圧電振動素子搭載パッド111と、外部接続用電極端子Gとで主に構成されている。
この素子搭載部材110は、基板部110aの一方の主面に枠部110bが設けられて、凹部空間K1が形成されている。
尚、この素子搭載部材110を構成する基板部110aは、例えばアルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料を複数積層することよって形成されている。また、基板部110aは、セラミック材が積層した構造となっている。
枠部110bは、例えば、シールリングを用いている。この場合、枠部110bは、42アロイやコバール等の金属から成り、中心が打ち抜かれた枠状になっている。
また、枠部110bは、基板部110aの一方の主面の外周を囲繞するように設けられた封止用導体膜HMの主面にロウ付けなどにより接合される。
凹部空間K1内で露出した基板部110aの一方の主面には、2個一対の圧電振動素子搭載パッド111が設けられている。
更に、前記素子搭載部材110の他方の主面には外部接続用電極端子Gである例えば水晶端子やグランド端子が設けられている。
【0021】
また、蓋部材130は、例えば、Fe−Ni合金(42アロイ)やFe−Ni−Co合金(コバール)などからなる。このような蓋部材130は、凹部空間K1を、窒素ガス雰囲気中や真空雰囲気中などで気密封止される。具体的には、蓋部材130は、窒素雰囲気中や真空雰囲気中で、素子搭載部材110の枠部110b上に載置され、枠部110bの表面の金属と蓋部材130の金属の一部とが溶接されるように所定電流を印加してシーム溶接を行うことにより、枠部110bに接合される。
尚、蓋部材130の一方の主面に、凹部を形成したものを用いても良い。
【0022】
導電性接着剤DSは、シリコーン樹脂の中に導電性フィラーが含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、またはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0023】
尚、素子搭載部材110は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に外部接続用電極端子G、圧電振動素子搭載パッド111等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0024】
このように本発明の圧電デバイス100によれば、圧電振動素子120は、励振用電極124が設けられている圧電振動部121と、前記圧電振動部121を囲い、前記圧電振動子部121よりも薄くなるように設けられている圧電振動枠部122と、前記圧電振動枠部122の一部に素子搭載部材110の凹部空間K1内底面側に向かって設けられる突起部123と、前記圧電振動枠部122に設けられる素子搭載部材接続電極125とを備えて構成されていることにより、落下等の衝撃で前記突起部123が前記圧電振動部121よりも先に凹部空間K1内底面に接触することになるので、前記圧電振動部121が凹部空間K1内底面に接触することを防ぐことができる。よって、圧電デバイス100は、発振周波数が変動することがなく、安定した発振周波数を出力することが可能となる。
また、本発明の圧電デバイス100は、落下等の衝撃で圧電振動素子120の圧電振動部121が素子搭載部材110の凹部空間K1内底面に接触することがないので、圧電振動部121の破損や欠けを防止することができる。
【0025】
また、本発明の圧電デバイスは、落下等の衝撃で圧電振動素子120の突起部123が凹部空間K1内底面に打ちつけられても、前記圧電振動素子120の突起部123に厚みがあるため、従来の圧電振動素子と比べ剛性が高くなり、圧電振動素子120の破損や欠けを防止することが可能となる。
【0026】
(第2の実施形態)
素子搭載部材210の基板部210aと第2の枠部210cによって設けられた第2の凹部空間K2内に集積回路素子240が搭載されている点で第1の実施形態と異なる。
【0027】
本発明の第2の実施形態に係る圧電発振器200は、図3及び図4に示すように、素子搭載部材210と圧電振動素子120と蓋部材130と集積回路素子240で主に構成されている。この圧電発振器200は、前記素子搭載部材210に圧電振動素子120が搭載され、前記素子搭載部材210に形成されている第2の凹部空間K2内に集積回路素子240が搭載され、その圧電振動素子120が蓋部材130により気密封止された構造となっている。
【0028】
また、図3及び図4に示す集積回路素子240は、その内部に設けられた回路形成面に圧電振動素子120からの発振出力を生成する発振回路等が設けられており、この発振回路で生成された出力信号は外部接続用電極端子Gを介して圧電発振器200外へ出力され、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
また、集積回路素子240は、図4に示すように、素子搭載部材210の第2の凹部空間K2内底面に設けられた集積回路素子搭載パッド212に搭載されている。
【0029】
図3及び図4示すように、素子搭載部材210は、基板部210aと、枠部210b、210cとで主に構成されている。
この素子搭載部材210は、基板部210aの一方の主面に枠部210bが設けられて、第1の凹部空間K1が形成されている。また、素子搭載部材210の他方の主面に枠部210cが設けられて、第2の凹部空間K2が形成されている。
図3及び図4に示すように、第1の凹部空間K1内で露出した基板部210aの一方の主面には、圧電振動素子搭載パッド211が設けられている。
図3及び図4に示すように、第2の凹部空間K2内で露出した基板部210aの他方の主面には、複数の集積回路素子搭載パッド212と2個一対の圧電振動素子測定用パッド(図示せず)が設けられている。
【0030】
また、集積回路素子搭載パッド212は、集積回路素子250に形成されている接続パッドが電気的且つ機械的に接続され、前記素子搭載部材210内部に形成されている配線導体やビアホール導体等を介して外部接続用電極端子Gのうちの例えば、発振出力端子、発振制御端子、電源電圧端子、グランド端子に電気的に接続される。
【0031】
本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスによれば、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0032】
(第3の実施形態)
圧電振動素子20の凸部22が複数個形成されている点で第1の実施形態と異なる。
図5に示すように、圧電振動素子120の突起部123が複数個形成されていることで、落下等の衝撃で圧電振動素子120が凹部空間内底面に接触することを防ぎ、発振周波数が変動することを防ぐことができる。
【0033】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0034】
110、210・・・素子搭載部材
110a、210a・・・基板部
110b、210b・・・枠部
111,211・・・圧電振動素子搭載パッド
212・・・集積回路素子搭載パッド
120・・・圧電振動素子(水晶振動素子)
121・・・圧電振動部
122・・・圧電振動枠部
123・・・突起部
124・・・励振用電極
125・・・素子搭載部材接続用電極
126・・・引き出し電極
130・・・蓋部材
DS・・・導電性接着剤
K1・・・凹部空間(第1の凹部空間)
K2・・・第2の凹部空間
G・・・外部接続用電極端子
100、200・・・圧電デバイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部空間を有する素子搭載部材と、
前記凹部空間内に搭載される圧電振動素子と、
前記凹部空間を気密封止する蓋部材と、を備える圧電デバイスであって、
前記圧電振動素子は、励振用電極が設けられている圧電振動部と、
前記圧電振動部を囲い、前記圧電振動部よりも薄くなるように設けられている圧電振動枠部と、
前記圧電振動枠部の一部に前記素子搭載部材の凹部空間内底面に向かって設けられている突起部と、
前記圧電振動枠部に形成される素子搭載部材接続電極と、を備えて構成されていることを特徴とする圧電デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−211339(P2011−211339A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−74975(P2010−74975)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】