説明

圧電発振器

【課題】圧電発振器の小型化が進んだ場合においても、集積回路素子の搭載面積を確保することができるとともに、従来の集積回路素子を使用することができ、生産コストを維持することができる圧電発振器を提供することを課題とする。
【解決手段】凹部空間を有する容器体と、凹部空間内に搭載される圧電振動素子と集積回路素子と、凹部空間を気密封止する蓋体とを備える圧電発振器であって、凹部空間の底面より高い位置に形成される搭載部と、搭載部に形成される圧電振動素子搭載パッドとを備え、集積回路素子の頂部が容器体の角部の間に位置し、集積回路素子搭載パッドが集積回路素子の搭載位置に対応して、凹部空間の底面に設けられていることを特徴とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器等に用いられる圧電発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来の圧電発振器を示す分解斜視図である。図3に示すように従来の圧電発振器200は、凹部空間205を有する容器体201と圧電振動素子202と集積回路素子203と蓋体204とから主に構成されている。
容器体201は、セラミック材料等から成る概略直方体からなり、一方の主面に開口する凹部空間205が形成され、前記凹部空間内の両端には前記凹部空間内底面より高い位置に搭載部206が形成されている。
圧電振動素子202は、前記搭載部206に形成された圧電振動素子搭載パッド上に両端保持の状態で搭載されている。
集積回路素子203は、前記容器体201の凹部空間内底面に形成された集積回路素子搭載パッド上に搭載されている。
蓋体204は、前記容器体201の凹部空間上に載置し、前記容器体201の側壁頂部と固着することにより、凹部空間内を気密封止される。
このような圧電発振器200において、前記容器体201の他方の主面の4隅には、外部接続用電極端子である電源電圧端子、グランド端子、発振出力端子、発振制御端子が形成されている構造が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−215204号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、電子機器等に搭載される圧電発振器200は小型化が進んでいる。従来の圧電発振器200では、小型化が進んだ場合、容器体201の凹部空間205内底面に形成されている搭載部206の間に集積回路素子203が搭載されているため、集積回路素子203を搭載する面積を確保することができないといった課題があった。
【0005】
また、圧電発振器200の容器体201の凹部空間205内底面に集積回路素子203を搭載するためには、集積回路素子203も小型化する必要があり、小型化された集積回路素子203では、購入価格が高くなり圧電発振器200の生産コストが高くなってしまうといった課題があった。
また、従来の大きさの集積回路素子203を使用する場合には、搭載する面積を確保することができないといった課題があった。
【0006】
本発明は前記課題に鑑みてなされたもので、圧電発振器の小型化が進んだ場合においても、集積回路素子の搭載面積を確保することができるとともに、従来の集積回路素子を使用することができ、生産コストを維持することができる圧電発振器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、凹部空間を有する容器体と、凹部空間内に搭載される圧電振動素子と集積回路素子と、凹部空間を気密封止する蓋体とを備える圧電発振器であって、凹部空間の底面より高い位置に形成される搭載部と、搭載部に形成される圧電振動素子搭載パッドとを備え、集積回路素子の頂部が容器体の角部の間に位置し、集積回路素子搭載パッドが集積回路素子の搭載位置に対応して、凹部空間の底面に設けられていることを特徴とするものである。
【0008】
また、容器体の凹部空間内底面の角部に設けられている搭載部が三角柱状に形成されていることを特徴とする圧電発振器でもある。
【0009】
更に、容器体の凹部空間内底面の角部に設けられている搭載部が対角に位置するように設けられていることを特徴とする圧電発振器でもある。
【発明の効果】
【0010】
本発明の圧電発振器によれば、容器体の凹部空間の底面より高い位置に形成される搭載部と、搭載部に形成される圧電振動素子搭載パッドと、凹部空間の底面に設けられる集積回路素子搭載パッドを備え、集積回路素子の頂部が前記容器体の角部の間に位置し、集積回路素子搭載パッドが集積回路素子の搭載位置に対応して、前記容器体の凹部空間内底面に設けられていることにより、集積回路素子を搭載するための面積を確保することが可能となる。また、容器体に合わせた小型の集積回路素子を用いる必要がなく、従来の大きさの集積回路素子を搭載することができるので、生産コストを維持することが可能となる。
【0011】
また、容器体の凹部空間内底面の角部に設けられている搭載部が三角柱状に形成されていることによって、凹部空間内の面積を拡張することができるので、集積回路素子を搭載するための面積を更に確保することが可能となる。
【0012】
更に、容器体の凹部空間内底面の角部に設けられている搭載部が凹部空間内で対角に位置するように設けられていることによって、凹部空間内の面積を拡張することができるので、集積回路素子を搭載するための面積を更に確保することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明における圧電発振器の実施形態に関する詳細な説明を、各図を参照して行う。
図1は本発明における圧電発振器の一実施形態を示した分解斜視図である。図2(a)は、容器体の凹部空間形成面から見た圧電振動素子が搭載されていない状態の平面図である。また図2(b)は、容器体の凹部空間形成面から見た圧電振動素子が搭載されている状態での平面図である。
また、各図では、同じ符号は同じ部品を示し、又説明を明りょうにするため構造体の一部を図示していない。更に図示した寸法も一部誇張して示している。
【0014】
図1〜図2に示すように、圧電発振器100は、内部に搭載する圧電振動素子20に用いられる材料として圧電材の1つである水晶素板を用いたものを示しており、主面形状が矩形の容器体10に、容器体10の一方の主面に形成された凹部空間11内に、その圧電振動素子20と、圧電振動素子20と電気的に接続した発振回路および周波数調整用回路等の電子回路網を内蔵した集積回路素子30を搭載し、蓋体50によって圧電振動素子20及び集積回路素子30が搭載された凹部空間11を気密封止した構造である。
【0015】
圧電振動素子20は、水晶素板に励振用電極21と引き出し電極を被着形成したものであり、外部からの交番電圧が励振用電極21を介して水晶素板に印加されると、所定の振動モード及び周波数で励振を起こすようになっている。
水晶素板は、人工水晶体から所定のカットアングルで切断し外形加工を施された概略平板状で平面形状が四角形である。
励振用電極21は、前記水晶素板の表裏両主面に被着・形成したものであり、引き出し電極は、励振用電極21から水晶素板の表裏両主面の両端側に引き出されて被着・形成したものである。
このような圧電振動素子20は、その両主面に被着されている引き出し電極と凹部空間11内の搭載部16の上面に形成されている圧電振動素子搭載パッド15とを、導電性接着剤40を介して電気的且つ機械的に接続することによって凹部空間11の段差部16に搭載される。
【0016】
導電性接着剤40は、シリコーン樹脂の中に導電性フィラーが含有されているものであり、導電性粉末としては、アルミニウム(Al)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケル鉄(NiFe)、またはこれらの組み合わせを含むものが用いられている。
【0017】
又、集積回路素子30は、回路形成面に圧電振動素子20からの発振出力を生成する発振回路等が設けられており、該発振回路で生成された出力信号は外部接続用電極端子13を介して圧電発振器外へ出力され、例えば、クロック信号等の基準信号として利用される。
また集積回路素子30は、容器体10の凹部空間11内に形成された集積回路素子搭載パッド14に搭載されている。
【0018】
容器体10は、例えば、アルミナセラミックス、ガラス−セラミック等のセラミック材料から成る絶縁層を複数積層することよって形成されており、容器体10の一方の主面には、中央域に開口する矩形状の凹部空間11が形成されている。又、凹部空間11を囲繞する容器体10の側壁部の開口側頂面の全周には、環状の封止用導体パターン12が形成されている。凹部空間11内には、凹部空間11の底面より高い位置に形成される搭載部16と、前記搭載部に形成される圧電振動素子搭載パッド15と、前記凹部空間11の底面に設けられる集積回路素子搭載パッド12を備えている。
更に、容器体10の他方の主面には、電源電圧端子、発振出力端子及びグランド端子を含む複数個の外部接続用電極端子13が設けられている。
【0019】
尚、容器体10は、アルミナセラミックスから成る場合、所定のセラミック材料粉末に適当な有機溶剤等を添加・混合して得たセラミックグリーンシートの表面に封止用導体パターン12、外部接続用電極端子13、集積回路素子搭載パッド14、圧電振動素子搭載パッド15等となる導体ペーストを、また、セラミックグリーンシートに打ち抜き等を施して予め穿設しておいた貫通孔内にビア導体となる導体ペーストを従来周知のスクリーン印刷によって塗布するとともに、これを複数枚積層してプレス成形した後、高温で焼成することにより製作される。
【0020】
また、容器体10の側壁部の凹部空間11開口部側頂面に形成された封止用導体パターン12は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)等から成る基層の表面にニッケル(Ni)層及び金(Au)層を順次、容器体10の環状に囲繞する形態で被着させることによって10μm〜25μmの厚みに形成されており、その封止用導体パターン12は、後述する蓋体50を、蓋体50に形成された封止部材51を介して、容器体10の上面に接合させるためのものであり、かかる封止用導体パターン12を前記したように、W若しくはMoから成る基層の表面にNi層及びAu層を順次被着させた構成となしておくことにより、封止用導体パターン12に対する封止部材51の濡れ性を良好とし、圧電発振器の気密信頼性及び生産性を向上させる。
【0021】
前記搭載部16は、凹部空間11の底面よりも高い位置に形成され、前記搭載部には、圧電振動素子搭載パッド15が被着形成されている。この圧電振動素子搭載パッド15は、圧電振動素子20の引き出し電極と接続されている。
また、圧電振動素子搭載パッド15は、容器体10の内部の配線導体やビアホール導体等及び凹部空間内底面に形成された集積回路素子接続用電極パッド14を介して、集積回路素子30に電気的に接続される。
【0022】
前記集積回路素子搭載パッド14は、前記集積回路素子30の頂部が前記容器体10の角部の間に位置し、前記集積回路素子搭載パッド14が集積回路素子の搭載位置に対応して、前記容器体10の凹部空間11の底面に設けられている。
よって、集積回路素子を搭載するための面積を確保することが可能となる。また、容器体に合わせた小型の集積回路素子を用いる必要がなく、従来の大きさの集積回路素子を搭載することができるので、生産コストを維持することが可能となる。
また、集積回路素子搭載パッド14は、集積回路素子30に形成されている接続パッドが電気的且つ機械的に接続され、容器体10内部に形成されている配線導体やビアホール導体等を介して外部接続用電極端子13のうちの電源電圧端子ならびに発振出力端子に電気的に接続される。
【0023】
また、容器体10の内部には、一方の終端を容器体10の封止用導体パターン12に他方の終端を容器体10の外部接続用電極端子13に接続させたビア導体(図示せず)が埋設させており、容器体10の側壁部の開口側頂面に被着させた封止用導体パターン12上に、封止部材51を介して後述する蓋体50を接合することによって、蓋体50がビア導体を介して容器体10の下面に形成されている外部接続用電極端子13のうちグランド端子と電気的に接続される。
このように、金属素材からなる蓋体50を外部接続用電極端子13のグランド端子と電気的に接続させておくことにより、圧電発振器100の使用の際には、蓋体50がグランド電位となるため、蓋体50の電磁シールド作用によって、圧電振動素子20並びに集積回路素子30を外部からの不要な電気的作用により良好に保護することができる。
このようなグランド端子を含む容器体10の下面の外部接続用電極端子13は、圧電発振器100をマザーボード等の外部配線基盤上に搭載する際に、外部配線基盤の配線と半田や金属バンプ等の導電性を有する接合材を介して電気的に接続するための電極端子として機能する。
【0024】
また、蓋体50は従来周知の金属加工法を採用し、42アロイ等の金属を所定形状に成形することによって製作され、前記蓋体50の上面には、ニッケル(Ni)層が形成され、更にニッケル(Ni)層の上面の封止用導体パターン12に対応する箇所に封止部材51である金錫(Au−Sn)層が形成される。金錫(Au−Sn)層の厚みは、10μm〜40μmである。例えば、成分比率が、金が80%、錫が20%のものが使用されている。
また、このような封止部材51は、封止用導体パターン12の凹凸を緩和し、気密性の低下を防ぐことが可能となる。また、封止部材51が薄すぎると当該機能を充分に発揮しない。
【0025】
尚、本発明は前記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
前記した本実施例では、圧電振動素子を構成する圧電素材として水晶を用いた水晶振動素子を説明したが、他の圧電素材として、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムまたは、圧電セラミックスを圧電素材として用いた圧電振動素子でも構わない。
【0026】
また、前記搭載部16を三角柱状に形成することによって、前記容器体10の凹部空間11内の搭載面積を拡張することができるので、集積回路素子30を搭載するための面積を更に確保することが可能となる。
【0027】
更に、前記搭載部16を前記容器体10の凹部空間11内底面の角部の対角に位置するように設けることによって、前記容器体10の凹部空間11内の搭載面積を拡張することができるので、集積回路素子30を搭載するための面積を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明における圧電発振器の一例である水晶発振器の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図2】(a)は、本発明における圧電発振器の一例である水晶発振器を構成する容器体を凹部空間形成面から見た水晶振動素子が搭載されていない状態の平面図であり、(b)は、本発明における圧電発振器の一例である水晶発振器を構成する容器体の凹部空間形成面から見た水晶振動素子が搭載されている状態での平面図である。
【図3】従来における圧電発振器の一例である水晶発振器を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10・・・容器体
11・・・凹部空間
12・・・封止用導体パターン
13・・・外部接続用電極端子
14・・・集積回路素子搭載パッド
15・・・圧電振動素子搭載パッド
16・・・搭載部
20・・・水晶振動素子(圧電振動素子)
21・・・励振用電極
30・・・集積回路素子
40・・・導電性接着剤
50・・・蓋体
51・・・封止部材
100・・・圧電発振器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹部空間を有する容器体と、前記凹部空間内に搭載される圧電振動素子と集積回路素子と、前記凹部空間を気密封止する蓋体とを備える圧電発振器であって、
前記凹部空間の底面より高い位置に形成される搭載部と、前記搭載部に形成される圧電振動素子搭載パッドとを備え、
前記集積回路素子の頂部が前記容器体の角部の間に位置し、前記集積回路素子搭載パッドが集積回路素子の搭載位置に対応して、前記容器体の凹部空間内底面に設けられていることを特徴とする圧電発振器。
【請求項2】
前記容器体の凹部空間内底面の角部に設けられている前記搭載部が三角柱状に形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧電発振器。
【請求項3】
前記容器体の凹部空間内底面の角部に設けられている前記搭載部が凹部空間内で対角に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の圧電発振器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−219093(P2008−219093A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49536(P2007−49536)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000104722)京セラキンセキ株式会社 (870)
【Fターム(参考)】