説明

基板の貼り付き発生を検出する方法

【課題】 処理用支持体であって、該処理用支持体の表面から基板を昇降させるためのリフトピンを含む処理用支持体の表面上に置かれた基板を加工する反応チャンバにおいて、基板の貼り付きの発生を検出する。
【解決手段】 基板の貼り付き発生を検出する方法は、反応チャンバ内を、または反応チャンバを通じて伝搬される振動を、センサにより監視する工程と、基板を反応チャンバ内で加工する間にこの振動が検出された場合に、事前に定められたシーケンスを実施する工程を含み、ここで、この振動は、リフトピンにより基板が処理用支持体の表面から持ち上げられた時の、基板の処理用支持体上への貼り付きを示唆または特定するものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に半導体製造プロセスにおいて、特にサセプタ表面などの支持面に対する基板の貼り付き発生を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上での膜形成中に基板が帯電して電極に貼り付くことがある。基板が貼り付いてしまった場合、搬送用に基板を持ち上げるリフトピンが作動することで、貼り付いた基板が跳ねてしまい基板の位置ずれ、またはクラックを生じさせる可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
基板がこの状態で搬送された場合、基板が正確な配置に搬送されず、搬送中に落下すること、あるいはロボットのエンドエフェクタと接触してエンドエフェクタが破損することなどの様々な問題が生じ得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一実施例においては、基板の貼り付きはチャンバ周囲の音および振動にもとづいて検出される。チャンバ周囲の音に基づき基板の貼り付きを検知する場合においては、装置の音や周囲の環境雑音などによりチャンバ中で生じる貼り付き音が掻き消されてしまうことから、この貼り付き音を検出することは困難である。しかしながら貼り付き音は、例えばリフトピンと基板とが接触した結果生じるものであり、このことは、音を振動として捉えることも可能であることを意味する。換言すると、例えば貼り付いた基板がリフトピンにより持ち上げられると、基板は跳ね、リフトピンと接触する基板の裏側の音が装置を通じて振動として伝えられる。チャンバなどに環境雑音の影響を低下させるセンサを設置することにより、貼り付き音を振動として捕捉することが可能なのである。
【0005】
本発明の一実施例においては、基板の搬送時に生じる音、振動および他の現象は、処理装置に音や振動などを検出するためのセンサを取り付けることにより監視される。このようにすれば、貼り付き音および振動は、基板の搬送中に通常は生じない音や振動と共に検出することができる。
【0006】
一実施例においては、概ね、または主に基板に関わる音および振動を通過させ、装置が設置された環境の雑音、または装置の作動により生じる雑音を遮断するフィルタを適用することにより、基板と関連のある音および振動のみを検出することができる。
【0007】
他の実施例においては、誤動作を防ぐために基板が持ち上げられた時に装置からタイミング信号が出力されるようになっており、この場合、具体的にはこの信号が出力された場合に限り、基板の貼り付きまたは異常を検出するための音および振動の監視が実施される。
【0008】
他の実施例においては、基板の貼り付きまたは異常が検出されると処理装置に信号を送ることにより基板搬送処理を停止させる機能を設けることができる。
【0009】
一実施例においては、「音」および「振動」という語は、同義的に使用されるものである。
【0010】
本発明の一実施例においては、基板搬送中に基板の貼り付きまたは異常を検出するために、音や振動などを拾うセンサが処理装置上に設けられており、貼り付きまたは異常が検出されると搬送処理が停止され、これにより基板とエンドエフェクタ間の接触を防止し、そして装置の稼働率低下を回避する。基板にクラックが生じた場合、または処理装置中でエンドエフェクタに接触した場合、その後実施される装置の修復には、装置内部のクリーニング、搬送ロボットのティーチング、排気、およびリークチェックを含む複数のタスクを実施しなければならないために時間がかかる。一実施例においては、上述した問題の少なくとも1つは解消することができる。
【0011】
本発明および従来技術にはない利点を要約して説明するために、本発明の特定の目的および利点を説明する。もちろん、必ずしもこれらの目的または利点の全てが本発明の特定の実施例に基づいて実現されるものではないことは言うまでもない。従って、たとえば本発明は、本願に教示される1つまたは一群の利点を達成するように、または最適化するように実現または実施することが可能であり、必ずしも本願に教示または示唆する他の目的または利点を達成するものである必要はない。
【0012】
本発明のさらなる態様、特徴および利点は、以下の実施例に関する詳細な説明から明らかとなるものである。
【0013】
推奨される実施例を描いた添付図を参照しつつ本発明のこれらおよび他の特徴を以下に説明するが、これらの図は、本発明を限定することではなく、説明することを意図して描かれたものである。図は説明の便宜上、簡略化されており、縮尺も正確なものではない。
【0014】
以下に、実施例を参照しつつ本発明の詳細を説明する。しかしながら、これらの実施例は本発明を限定することを意図したものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上述した目的の少なくとも1つを達成することができる一実施例において、本発明は、処理用支持体であって、該処理用支持体の表面から基板を昇降させるためのリフトピンを含む処理用支持体の表面上に置かれた基板を加工する反応チャンバにおいて、基板の貼り付き発生を検出する方法を提供するものであり、本方法は、(i)反応チャンバの外部に設置されたセンサにより反応チャンバ内、または反応チャンバを通じて伝搬される振動を監視する工程と、(ii)反応チャンバ内での基板処理中にこの振動が検出された場合、事前に定められたシーケンスを実施する工程とを含み、ここで、この振動は、基板がリフトピンにより処理用支持体表面から持ち上げられた時に、処理用支持体表面への基板の貼り付きを示唆または特定するものであることを特徴とする。
【0016】
上記実施例は、上述した目的の1つ以上を実現することができる以下の実施例を含むが、これらに限定されるものではない。
【0017】
一実施例においては、基板の貼り付きを示唆または特定する振動は、その振動が所定の閾値を超える強度をもつている場合に検出することができる。基板の貼り付きを示唆または特定する振動は、基板がリフトピンにより上方へと動かされた場合にのみ検出することができる。振動を監視する工程は、基板の貼り付きを示唆または特定する振動を含む振動の加速度(m/s)を監視することを含む。基板の貼り付きを示唆または特定する振動は、4kHzよりも大きく、8kHzよりも小さい周波数をもつものとすることができる。
【0018】
一実施例においては、振動を監視する工程は、(a)反応チャンバ内、または反応チャンバを通じて伝わる振動をセンサにより検出する工程と、(b)その振動の周波数に基づき、基板の貼り付きを示唆する振動を検出するために、センサから出力される信号をフィルタリングする工程と、を含んでいる。上述した例の場合、信号をフィルタリングする工程は、(b1)4kHz以下の周波数をもつ信号部分をフィルタリングして除外する工程と、(b2)8kHz以上の周波数をもつ信号部分をフィルタリングして除外する工程とを含んでいる。
【0019】
一実施例においては、事前に定められたシーケンスを実施する工程は、警告信号の発信と、基板の搬送停止を含むものとすることができる。
【0020】
一実施例においては、センサは電子を出力する圧電素子を用いたものとすることができる。
【0021】
一実施例においては、センサは反応チャンバの一部分の外表面に設置することができ、この一部分とは、基板の裏面がリフトピンの先端に対して跳ね当たった場合に発生する衝撃による振動を伝えることが可能な部分である。センサは反応チャンバの底部の外側金属面上に設置することができる。処理用支持体はサセプタとし、反応チャンバは半導体プロセス用リアクタとすることができる。リフトピンは、処理用支持体中に、その表面を通って軸方向に形成されたスルーホール中に挿入したものとすることができる。基板の貼り付きを示唆または特定する振動は、基板上に膜が形成され、サセプタが基板搬送用配置に下降した後に基板がリフトピンにより動かされた時にのみ、検出するようにしてもよい。
【0022】
本発明はシステムにも同様に応用することが可能である。一実施例においては、本発明は、処理用支持体であって、該処理用支持体の表面から基板を昇降させるためのリフトピンを含む処理用支持体の表面上に置かれた基板を加工する反応チャンバにおいて、基板の貼り付き発生を検出するシステムを提供するものであって、システムは、(i)反応チャンバ内または反応チャンバを通じて伝搬される振動を監視するために、反応チャンバの外側に設置されたセンサと、(ii)基板を反応チャンバ内で処理している間にこの振動が検出された場合、事前に定められたシーケンスを実施するためのコントローラとを具備し、ここで、この振動は、基板がリフトピンにより処理用支持体表面から持ち上げられた時に、処理用支持体表面への基板の貼り付きを示唆または特定するものであることを特徴とする。
【0023】
上記実施例は、上述した目的の1つ以上を実現することが可能な以下の実施例を含むが、これらに限るものではない。
【0024】
コントローラは、振動が所定の閾値を超える強度をもつ場合に基板の貼り付きを示唆または特定する振動を検出することができる。コントローラは、基板がリフトピンにより持ち上げられた場合にのみ、基板の貼り付きを示唆または特定する振動を検出するものであってもよい。センサは基板の貼り付きを示唆または特定する振動を含む振動の加速度(m/s)を監視することができる。
【0025】
センサは、4kHzを超え、8kHzを下回る周波数をもつ振動を監視するようになっていてもよい。システムはさらに、4kHz以下の周波数をもつ信号部分および8kHz以上の周波数をもつ信号部分をフィルタリングする帯域通過フィルタを備えたものとすることもできる。コントローラは振動を検知すると、警告信号を発信し、基板の搬送処理を停止することができる。
【0026】
上述においては、これらの方法実施例およびシステム実施例は、単一またはいずれかの組み合わせで用いることができ、そして代替的に利用することも可能である。
【0027】
上述したように、基板が処理装置中の膜形成処理用支持体上に配置され、帯電によりその支持体へと貼り付いた状態で膜が形成された場合、この貼り付きが原因で、処理後の基板をリフトピンで持ち上げた際に基板が跳ねる可能性、または何等かの異常を生じて基板のずれやクラックが発生する可能性がある。この状態で搬送処理が実施された場合、基板は正確な位置からは取り上げられずに搬送中に落下したり、クラックを生じたり、搬送ロボットのエンドエフェクタに接触して最終的にはこれに損傷を与えたりする可能性がある。基板にクラックが生じた、またはエンドエフェクタに損傷が生じた場合、この処理装置ラインを大気に開放しなければならない。装置の復旧には時間がかかり、処理装置の利用率が落ちる。本発明の一実施例においては、貼り付きによる搬送中の基板の跳ねまたは異常は、基板とリフトピン、または基板と支持体との間の接触を示唆する音、すなわち振動として捕捉され、そのような基板の異常が検出されるのである。本発明の一実施例を、以下に図を使って説明する。しかしながら、本発明はこれらの図または実施例に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0028】
図1に示す処理装置はプラズマCVD成膜装置1である。本発明の応用はプラズマCVD膜形成装置のみに限られているわけではなく、熱CVD膜形成装置、プラズマまたは熱ALD膜形成装置、エッチング装置、アニール装置、UV照射装置、および基板処理に用いられる他の装置にも応用可能である。図1に示した装置は通常、基板4が配置される処理用支持体(サセプタ)2を貫通する複数のリフトピン3(一般には3本であるが、4本以上あってもよく、ピン数量には制約はない)を有し、支持体上にある基板4は、処理用支持体2の上下の動きと連動して支持体の表面から持ち上げられたり下げられたりするものである。
【0029】
本実施例においては、音および振動を捕捉するためのセンサ5が装置上に設けられている。このセンサ5は、数Hzから約20kHzの周波数を拾うことにより接触音および振動の検出が可能なものとすることができるが、基板の貼り付きを示唆する接触音および振動を検出する上で好適なものである限りにおいては、他のいずれのセンサであってもよい。本実施例に使用されるセンサ5は、圧電素子を用いた電荷出力型接触加速度ピックアップであるが、電圧を出力するために内蔵型プリアンプを使ったセンサを利用することもできる。センサが基板の貼り付き音および振動の検出に好適である限りにおいては、いずれのモデルまたはタイプのセンサであっても、制約なく選択することができる。しかしながら、チャンバが高温にさらされるものである場合、高温に耐えられるように内蔵型アンプを用いない電荷出力型センサを利用することが望ましい。実際のセンサ素子の一例としては、電荷を電圧へと変換するチャージコンバータ(小野測器製:6130)を介して判定装置に接続した電荷出力型センサ(小野測器製:NP2130)が挙げられる。しかしながら、センサ素子はこの構成に限られたものではない。
【0030】
この例においては、センサ5からの信号はチャージコンバータまたは増幅器11により変換または増幅され、基板およびリフトピン間、または基板および支持体間の接触を示唆する音および振動の周波数を抽出する帯域通過フィルタを通過し、その後フィルタリングされた信号が、振動加速度閾値に照らして異常を判定するフィルタ/判定回路12へと送られる。一般的な制御モータなどは4kHz以下の振動を生じることに加え、実際の装置から得られた評価結果も考慮することにより、一実施例においては、4kHz以下および8kHz以上の周波数がフィルタリングされる。
【0031】
フィルタを適用するか否か、どの周波数をフィルタリング除去し、どの周波数を検出するのかについては、検出すべき貼り付き音および振動に基づいて適切と思われるものを選択すればよい。貼り付き音および振動の発生は、振動の伝搬特性と共に、リフトピンの材料および形状、基板の貼り付き面の材料および形状、支持体の配置面の材料および形状、装置内壁の材料および形状、装置の構造、駆動部品、駆動機構およびその他の装置を構成する部品の構造、そして装置の周囲で用いる周辺装置などによって、そしてさらには基板の貼り付き度合いや適用される処理の種類によって異なる可能性がある。従って、一実施例においては、貼り付き音および振動を検出するための有効周波数、フィルタリングする周波数、検出閾値および他の事項は、センサなどの特性を考慮しつつ各対象について事前に設定できることが望ましい。この結果、一実施例においては4〜8kHz範囲において貼り付きを効果的に検出することができるが、一方で下限を0.5、1、2、3、4、5、6または7kHz、上限を5、6、7、8、9、10、15または20kHzとした範囲で適正と思われる所望の検出範囲を組み合わせて設定することもできる。他の実施例においては、上述以外の周波数範囲を検出に用いてもよい。上述した計測周波数範囲は、単に適用範囲における振動の検出に有効であればよく、そしてそれが可能である限りにおいてはフィルタを用いる必要はなく、あるいはフィルタのレベルを適宜に調整することも可能である。閾値は検出が可能となるように設定することができ、例えば雑音が大きい環境においては計測値の1.3倍以上(例えば1.5倍や2倍)の強度の検出を許容する設定に、そして雑音が小さい環境においては計測値の1.1倍以上(例えば1.2倍)の強度の検出を許容する設定にすることができる。所定の周波数範囲に対応する閾値のかわりに、計測周波数範囲における振動波形を利用してもよい。
【0032】
フィルタの例としては、ハードウェア回路フィルタ(LC回路)およびディジタル(ソフトウェア)フィルタが含まれる。一実施例においては、ディジタルフィルタを判定装置を実施するものとして適用することができる。具体的には、振動が電圧変化(周波数)へと変換された後にディジタル化され、所定周波数を切り落とすソフトウェアへと送られる。
【0033】
次に、判定回路が貼り付きを検出したと判定した場合、適切な判定信号が装置コントローラ13へと送られ、基板搬送処理が停止し、警告が発信される。この結果、搬送ロボット21およびエンドエフェクタ22の動作を停止する制御が実行される。
【0034】
通常時の判定処理による誤動作を防ぐ目的で、他の装置コントローラ(図示せず)から判定回路へと基板リフトアップタイミング信号を出力することにより、この信号が判定回路へと出力された場合には、判定処理の開始または停止を実施するようにすることが可能である。
【0035】
貼り付きの発生を検出するための特定の物理量としては、音圧、位置ずれ、加速度または振動を示す他の数量が挙げられる。以下の例においては、これらのうちの加速度(m/s)が用いられる。振動は無次元単位であるdBで表現することも可能である。
【0036】
センサ5の位置は、特に制約はない。また、図1においてはリフトピン3が反応チャンバ1の底部に接触しているが、振動はリフトピンが反応チャンバに接触していない場合も、装置中で十分に検出可能である。リフトピンは図1では反応チャンバの底部部分に設置されているが、ピンを側面または上面に設置することも可能である。しかしながら、図1の装置の上面は別の構造体(シャワーヘッド構造体)を持ち、側面は断熱材カバーにより覆われている。リフトピンは、これらの要因により音(振動)が伝わる反応チャンバと直接接触することが出来ないことから、唯一の露出面である底面上に設けられているものである。センサは一般に装置の外装上に設置されている。反応チャンバには活性ガスが充満していることから、反応チャンバ内部に振動センサおよび信号ケーブルを設置することは困難ではあるが、これらを活性ガスに耐性のある材料で保護すれば反応チャンバ内に設置することは可能である。
【0037】
図2は、実際に貼り付きがどのように検出されるかを示すフローチャートの一例である。始めに、処理装置が始動してサセプタ上に配置された基板が処理される(工程1)。次に、センサを使って処理装置を通じて伝わる貼り付き振動が監視される(工程2)。膜が形成された後、サセプタが引き下げられると同時に、基板はリフトピンによりサセプタから持ち上げられる。フィルタを適用しない場合、貼り付き(異常音)が生じなかった場合の計測周波数範囲(数Hz〜約20kHz)における振動加速度は8.32m/sであった。貼り付き(異常音)が生じた場合、計測周波数範囲の振動加速度は9.88m/sであった。この状態で貼り付きが生じていたとしても、貼り付きの状態または他の雑音の状態によっては、加速度に明確な違いが出ない可能性もある。フィルタ(4kHz以下および8kHz以上をカットするもの)を適用した場合(工程3)、貼り付きが生じなかった場合の振動加速度は2.2m/sであった一方で、貼り付きが生じた場合の振動加速度は3.76m/sであったため、判定は容易であった(工程4)。換言すると、フィルタが適用されなかった上記例においては、貼り付きが発生した時の加速度は、貼り付きが発生しなかった時の1.2倍にしか増えておらず、フィルタが適用された場合は、加速度が1.7倍に増えていた。フィルタは、貼り付きに関係のない音および振動加速度をカットし、フィルタリングしなかった場合には他の音および振動により掻き消されていた貼り付きを示す振動加速度の特定を可能とするものである。
【0038】
基板はシリコン、石英、ガリウムヒ素などから成るものとすることができ、リフトピンは装置に応じてアルミ製またはセラミック製とすることができる。これら材料の相違は貼り付き振動に影響を与えることがある。また、製造ラインおよび隣接装置の振動も、検出に悪影響を与える可能性があることから、常に作業開始時には雑音周波数を調べて閾値を設定することが望ましい。一実施例においては、カットオフ周波数は判定装置で変更することができ、フィルタ周波数も可変となっている。
【0039】
通常時に判定処理により生じる誤動作を回避するために、基板リフトアップタイミング信号を装置コントローラから判定回路へと出力し(工程5)、この信号が判定回路へと出力された場合にこの信号を利用して判定処理を開始、または停止することができる。この結果、工程4において貼り付き発生判定となった場合、処理装置コントローラへと命令が送られ(工程5)、この命令により搬送処理が停止して警告が発信される(工程6)。
【0040】
本開示において、条件および/または構造が特定されていない部分については、当業者であればそのような条件および/または構造を、本発明の開示に照らして通常の実験により容易に得ることができる。
【0041】
当業者には明らかなように、本発明の精神から逸脱することなく多数の様々な変更が可能である。よって本発明の態様は、説明目的に限ったものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例に基づくプラズマCVD装置用貼り付き検出システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施例に基づくプラズマCVD装置用貼り付き検出法のフローチャートである。
【符号の説明】
【0043】
1 処理装置(反応チャンバ)
2 処理用支持体(サセプタ)
3 リフトピン
4 基板
5 センサ
13 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理用支持体であって、該処理用支持体の表面から基板を昇降させるためのリフトピンを含む処理用支持体の前記表面上に置かれた前記基板を加工する反応チャンバにおいて、前記基板の貼り付き発生を検出する方法であって、
前記反応チャンバ内で、または前記反応チャンバを通じて伝搬される振動をセンサにより監視する工程と、
前記反応チャンバ内で前記基板が処理される間に前記振動が検出された場合、事前に定められたシーケンスを実施する工程と、
を含み、
前記振動が、前記基板が前記処理用支持体の前記表面から前記リフトピンにより持ち上げられる時に、前記処理用支持体の前記表面への前記基板の貼り付きを示唆または特定するものであることを特徴とする方法。
【請求項2】
振動が所定の閾値を超える強度をもつ場合に、前記基板の貼り付きを示唆または特定する前記振動が検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板が前記リフトピンにより持ち上げられた時に限り、前記基板の貼り付きを示唆または特定する前記振動が検出されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記振動を監視する工程が、前記基板の貼り付きを示唆または特定する前記振動を含む振動の加速度(m/s)を監視することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板の貼り付きを示唆または特定する前記振動が、4kHzを超え、8kHzを下回る周波数をもつものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記振動を監視する工程が、
前記センサにより前記反応チャンバ内で、または前記反応チャンバを通じて伝搬される振動を検出する工程と、そして
その振動の周波数に基づいて、前記基板の貼り付きを示唆する前記振動を検出するために前記センサから出力される信号をフィルタリングする工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記信号をフィルタリングする工程が、
4kHz以下の周波数をもつ信号部分をフィルタリングして除去する工程と、そして
8kHz以上の周波数をもつ信号部分をフィルタリングして除去する工程と、を含むことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記事前に定められたシーケンスを実施する工程が、警告信号を発信することと、前記基板の搬送処理を停止することを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記センサが電子を出力する圧電素子を用いることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記センサが前記反応チャンバの一部分の外表面上に設けられることを特徴とし、前記一部分とは、前記基板の裏面が前記リフトピンの先端で跳ねた場合に生じる衝撃による振動を伝搬することが出来る部分であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記センサが前記反応チャンバの底面の外側金属面上に設けられることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記処理用支持体がサセプタであり、前記反応チャンバが半導体プロセス用リアクタであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記リフトピンが、前記処理用支持体に形成されたスルーホール中に、前記表面を通じて軸方向に挿入されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記基板上に膜が形成され、前記サセプタが前記基板の搬送時位置へと下降した後に、前記基板が前記リフトピンにより持ち上げられた時に限り、前記基板の貼り付きを示唆または特定する前記振動が検出されることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
処理用支持体であって、該処理用支持体の表面から基板を昇降させるためのリフトピンを含む処理用支持体の前記表面上に置かれた前記基板を加工する反応チャンバにおいて、前記基板の貼り付き発生を検出するシステムであって、
前記反応チャンバ内で、または前記反応チャンバを通じて伝搬される振動を監視するためのセンサと、
前記反応チャンバ内で前記基板が処理される間に前記振動が検出された場合、事前に定められたシーケンスを実施するコントローラと、
を含むであって、
前記振動が、前記基板が前記処理用支持体の前記表面から前記リフトピンにより持ち上げられる時に、前記処理用支持体の前記表面への前記基板の貼り付きを示唆または特定するものであることを特徴とするセンサとシステム。
【請求項16】
振動が所定の閾値を超える強度をもつ場合に、前記コントローラが前記基板の貼り付きを示唆または特定する前記振動を検出することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記基板が前記リフトピンにより持ち上げられた時に限り、前記コントローラが前記基板の貼り付きを示唆または特定する前記振動を検出することを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記センサが、前記基板の貼り付きを示唆または特定する前記振動を含む振動の加速度(m/s)を監視するものであることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記センサが、4kHzを超え、8kHzを下回る周波数をもつ振動を監視するものであることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
4kHz以下の周波数をもつ信号部分および8kHz以上の周波数をもつ信号部分をフィルタリングして除去する帯域通過フィルタをさらに具備する請求項15に記載のシステム。
【請求項21】
前記振動が検出された場合、前記コントローラが警告信号を発信し、前記基板の搬送処理を停止するものであることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項22】
前記センサが電子を出力する圧電素子を用いたセンサであることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項23】
前記センサが前記反応チャンバの一部分の外表面上に設けられることを特徴とし、前記一部分とは、前記基板の裏面が前記リフトピンの先端で跳ねた場合に生じる衝撃による振動を伝搬することができる部分であることを特徴とする請求項15に記載のシステム。
【請求項24】
前記センサが前記反応チャンバの底面の外側金属面上に設けられることを特徴とする請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記処理用支持体がサセプタであり、前記反応チャンバが半導体プロセス用リアクタであることを特徴とする請求項15に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−176760(P2009−176760A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321277(P2007−321277)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【Fターム(参考)】