説明

基板処理システム及び基板洗浄装置

【課題】基板の裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができる基板処理システムを提供する。
【解決手段】基板処理システム10が備える基板洗浄装置としてのプロセスモジュール15は、ウエハWを収容するチャンバ38と、該チャンバ38内の底部に配置されてウエハWを載置するステージ39と、チャンバ38内の天井部に配置されてステージ39に対向するシャワーヘッド40とを備え、ステージ39はウエハWの裏面や周縁部に向けて液相及び気相の2つの相状態を呈する洗浄物質、例えば、純水と、不活性ガス、例えば、窒素ガスとが混合された洗浄剤を噴出し、シャワーヘッド40はウエハWの表面に向けたダウンフローを発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理システム及び基板洗浄装置に関し、基板の裏面や周縁部に付着した異物を除去する基板洗浄装置を備える基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、基板としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)に所定の処理を施す基板処理装置では、ウエハと該ウエハを載置する載置台との接触に起因する金属片、例えばアルミの金属片や、処理ガスの反応に起因する反応生成物、例えば、フルオロカーボン系のポリマー等が発生する。これらの異物(パーティクル)は、ウエハに付着して該ウエハの表面に形成された半導体デバイスの品質を低下させる。
【0003】
ウエハに付着したパーティクルを除去する方法として、エッチング処理が施されたウエハをウエット処理室においてフッ酸溶液や純水によって水洗するウエット洗浄方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、アンモニア水やフッ酸溶液等の洗浄液が満たされた洗浄槽に複数のウエハを浸漬して洗浄する方法も知られている。これらの方法によってエッチング処理中にウエハに付着したパーティクルを除去することができる。
【特許文献1】特開平4−14222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したウエット洗浄方法では、主にウエハの表面に向けて純水等を吹き付けるため、ウエハの裏面に付着したパーティクルやウエハの周縁部(ベベル(Bevel)部)に付着したベベルポリマー(Bevel Polymer)を除去することができない。
【0005】
ウエハの裏面に付着したパーティクルは、ウエハを載置台に載置した際、該ウエハを浮き上がらせるため、ウエハの表面に塗布されたフォトレジストを露光するリソグラフィー工程において、焦点位置がフォトレジストの位置と一致せず、露光を正確に行うことができない。また、ウエハの周縁部のベベルポリマーは、液浸露光装置においてウエハをレンズに対して移動させる際、ウエハ及びレンズ間に介在する超純水中を通過する。このとき、ベベルポリマーが剥がれて超純水中に混じることがあり、該ベベルポリマーが光を遮光するため、やはり露光を正確に行うことができない。なお、ウエハの周縁部には当該リソグラフィー工程の前に形成されたフォトレジストの残渣が残留することがあり、該フォトレジストの残渣もベベルポリマーと同様に超純水中に混じることがある。その結果、該ウエハから製造される半導体デバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0006】
また、エッチング処理が施されたウエハは、複数のウエハを互いに平行に保持する密閉容器、例えば、フープ(Foup)等に収容されて搬送されるが、該フープ内において上方に位置するウエハの裏面や周縁部から異物(パーティクル、ポリマー)が剥離して下方に位置するウエハの表面に落下して付着し、該下方のウエハから製造される半導体デバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0007】
また、上述した洗浄槽に複数のウエハを浸漬する方法では、ウエハの表面のパーティクルだけでなく、ウエハの裏面のパーティクルやウエハの周縁部のベベルポリマーを除去することが可能であるが、除去されたパーティクルは洗浄液中に留まるため、該パーティクルがウエハに再付着(クロスコンタミネーション)することがあり、半導体デバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0008】
さらに、上述したウエット洗浄方法において、仮にウエハの裏面のパーティクルやベベルポリマーが除去されたとしても、ウエット洗浄における純水の流れは制御されていないため、除去されたパーティクル等がウエット洗浄されているウエハの隣で、例えば、同時にウエット洗浄されているウエハの表面に再付着して、半導体デバイスの品質を低下させるという問題がある。
【0009】
本発明の目的は、基板の裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができる基板処理システム及び基板洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の基板処理システムは、基板に所定の処理を施す基板処理装置と、少なくとも前記所定の処理の前後のいずれかにおいて前記基板を洗浄する基板洗浄装置とを備える基板処理システムであって、前記基板洗浄装置は、気相及び液相の2つの相状態を呈する洗浄物質、並びに高温ガスを、前記基板の裏面や周縁部に向けて噴出する噴出装置を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の基板処理システムは、請求項1記載の基板処理システムにおいて、前記噴出装置は、前記洗浄物質及び前記高温ガスを、前記基板の裏面に対して斜めに噴出することを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の基板処理システムは、請求項1又は2記載の基板処理システムにおいて、前記噴出装置及び前記基板は互いに平行且つ相対的に移動することを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の基板処理システムは、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記噴出装置は、前記基板の裏面に向けて開口する吸気部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の基板処理システムは、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記基板洗浄装置は、前記基板の表面に向けて他のガスを噴出する他の噴出装置を有することを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の基板処理システムは、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記基板洗浄装置は、前記基板を保持する保持装置を有することを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の基板処理システムは、請求項6記載の基板処理システムにおいて、前記保持装置は前記基板を反転させることを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の基板処理システムは、請求項6又は7記載の基板処理システムにおいて、前記基板洗浄装置は、前記保持装置に振動を付与する振動付与装置を有することを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の基板処理システムは、請求項1乃至8のいずれか1項記載の基板処理システムにおいて、前記基板洗浄装置は、前記洗浄物質及び前記高温ガスに振動を付与する他の振動付与装置を有することを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の基板処理システムは、請求項1乃至9のいずれか1項記載の基板処理システムにおいて、前記基板洗浄装置は、前記洗浄物質及び前記高温ガスの流速をパルス波的に変動させる流速変動装置を有することを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の基板処理システムは、請求項1乃至10のいずれか1項記載の基板処理システムにおいて、前記洗浄物質は、水、有機溶剤、界面活性剤及び洗浄溶液からなる群から選択された1つであることを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の基板処理システムは、請求項1乃至11のいずれか1項記載の基板処理システムにおいて、前記所定の処理はエッチング処理であることを特徴とする。
【0022】
請求項13記載の基板処理システムは、請求項1乃至11のいずれか1項記載の基板処理システムにおいて、前記所定の処理はフォトレジストの露光処理又はコータデベロッパ処理であることを特徴とする。
【0023】
請求項14記載の基板処理システムは、請求項1乃至13のいずれか1項に記載の基板処理システムにおいて、前記高温ガスの温度は80℃〜150℃であることを特徴とする。
【0024】
上記目的を達成するために、請求項15記載の基板処理システムは、基板に所定の処理を施す基板処理装置と、少なくとも前記所定の処理の前後のいずれかにおいて前記基板を洗浄する基板洗浄装置とを備える基板処理システムであって、前記基板洗浄装置は、気相を呈する洗浄物質及び高温ガスを、前記基板の裏面や周縁部に向けて噴出する噴出装置を有し、前記気相を呈する洗浄物質はクラスタ化した分子又は原子を含むことを特徴とする。
【0025】
上記目的を達成するために、請求項16記載の基板洗浄装置は、気相及び液相の2つの相状態を呈する洗浄物質、並びに高温ガスを、基板の裏面や周縁部に向けて噴出する噴出装置を備えることを特徴とする。
【0026】
上記目的を達成するために、請求項17記載の基板洗浄装置は、気相を呈する洗浄物質及び高温ガスを、前記基板の裏面や周縁部に向けて噴出する噴出装置を備え、前記気相を呈する洗浄物質はクラスタ化した分子又は原子を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の基板処理システム及び請求項16記載の基板洗浄装置によれば、基板の裏面や周縁部に向けて気相及び液相の2つの相状態を呈する洗浄物質、並びに高温ガスが噴出される。高温ガスは基板の裏面や周縁部に付着した比較的大きい異物を熱応力や粘性力によって除去する。また、噴出された高温ガスによって基板の裏面や周縁部には該高温ガスが流れない境界層が発生するが、液相を呈する洗浄物質は境界層に進入し、境界層内の比較的小さい異物の周りに付着する。該洗浄物質が異物の周りに付着すると、該異物と基板の引力、例えば、ファンデルワールス力が低下する。さらに、境界層に進入した液相を呈する洗浄物質は異物に衝突して物理的衝撃を与える。これにより、比較的小さい異物も除去される。したがって、基板の裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができる。
【0028】
請求項2記載の基板処理システムによれば、基板の裏面に対して洗浄物質及び高温ガスが斜めに噴出される。斜めに噴出された洗浄物質及び高温ガスは境界層を基板の裏面に沿って押しのけるため、比較的小さい異物を境界層から露出することができる。これにより、基板の裏面に付着した比較的小さい異物を確実に除去することができる。
【0029】
請求項3記載の基板処理システムによれば、噴出装置及び基板は互いに平行且つ相対的に移動するので、基板の裏面や周縁部から除去された異物が基板の裏面や周縁部に向けて噴出される高温ガスの流れに乗って再び基板の裏面や周縁部に押し付けられることがなく、もって、基板の裏面や周縁部へ異物が再付着するのを防止することができる。
【0030】
請求項4記載の基板処理システムによれば、基板の裏面に向けて吸気口が開口するので、基板の裏面から除去された異物を吸引し、基板の裏面へ異物が再付着するのを確実に防止することができる。
【0031】
請求項5記載の基板処理システムによれば、基板の表面に向けて他のガスが噴出されるので、基板の裏面や周縁部に向けて噴出された洗浄物質及び高温ガスによって該基板が移動するのを防止することができると共に、基板の裏面や周縁部から除去された異物が基板の表面に回り込むのを防止して該表面に異物が付着するのを防止することができる。
【0032】
請求項6記載の基板処理システムによれば、基板が保持されるので、基板の裏面や周縁部に向けて噴出された洗浄物質及び高温ガスによって該基板が移動するのを確実に防止することができる。
【0033】
請求項7記載の基板処理システムによれば、基板を反転させることができるので、噴出される洗浄物質及び高温ガスによって基板の裏面の異物だけでなく基板の表面の異物も除去することができる。
【0034】
請求項8記載の基板処理システムによれば、基板を保持する保持装置に振動が付与されるので、基板を振動させることができ、もって、異物の除去を促進することができる。
【0035】
請求項9記載の基板処理システムによれば、基板の裏面や周縁部に向けて噴出される洗浄物質及び高温ガスに振動が付与されるので、洗浄物質や高温ガスが異物に与える物理的衝撃を大きくすることができる。その結果、異物の除去を促進することができる。
【0036】
請求項10記載の基板処理システムによれば、洗浄物質及び高温ガスの流速がパルス波的に変動するので、洗浄物質や高温ガスに圧力変動を発生させることができ、もって、洗浄物質や高温ガスが異物に与える物理的衝撃を大きくすることができる。その結果、異物の除去を促進することができる。
【0037】
請求項11記載の基板処理システムによれば、基板の裏面や周縁部に向けて噴出される洗浄物質は、水、有機溶剤、界面活性剤及び洗浄溶液からなる群から選択された1つである。これらの洗浄物質の沸点は比較的低いので、容易に気相及び液相の2つの相状態を混在させることができる。また、これらの洗浄物質は異物に付着しやすいので、該異物と基板の引力を確実に弱めることができる。
【0038】
請求項12記載の基板処理システムによれば、基板の洗浄の少なくとも前後のいずれかにおいて実行される所定の処理はエッチング処理である。ここで、基板の裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができるので、エッチング処理を実行する基板処理装置内への基板の搬入時において異物が該基板処理装置内へ進入するのを防止することができると共に、エッチング処理において発生した反応生成物やポリマーに起因する異物の他の基板処理装置内への進入を阻止することができる。
【0039】
請求項13記載の基板処理システムによれば、基板の洗浄の少なくとも前後のいずれかにおいて実行される所定の処理はフォトレジストの露光処理又はコータデベロッパ処理である。ここで、基板の裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができるので、液浸露光装置における基板の浮き上がりを防止すると共に、液浸露光装置の超純水中への異物の混入を防止することができ、もって、露光を正確に行うことができる。
【0040】
請求項15記載の基板処理システム及び請求項17記載の基板洗浄装置によれば、基板の裏面や周縁部に向けて気相を呈する洗浄物質及び高温ガスが噴出され、気相を呈する洗浄物質はクラスタ化した分子又は原子を含む。高温ガスは基板の裏面や周縁部に付着した比較的大きい異物を熱応力や粘性力によって除去する。また、噴出された高温ガスによって基板の裏面や周縁部には該高温ガスが流れない境界層が発生するが、クラスタ化した分子又は原子は境界層に進入し、境界層内の比較的小さい異物の周りに分子単位又は原子単位で付着する。分子又は原子が異物の周りに付着すると、該異物と基板の引力、例えば、ファンデルワールス力が低下する。さらに、境界層に進入したクラスタ化した分子又は原子は異物に衝突して物理的衝撃を与える。これにより、比較的小さい異物も除去される。したがって、基板の裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0042】
まず、本発明の第1の実施の形態に係る基板処理システムについて説明する。
【0043】
図1は、本実施の形態に係る基板処理システムの構成を概略的に示す平面図である。
【0044】
図1において、基板処理システム10は、平面視六角形のトランスファモジュール11と、該トランスファモジュール11の周囲において放射状に配置された4つのプロセスモジュール12〜15と、矩形状の共通搬送室としてのローダーモジュール16と、トランスファモジュール11及びローダーモジュール16の間に配置され、トランスファモジュール11及びローダーモジュール16を連結する2つのロード・ロックモジュール17,18とを備える。
【0045】
各プロセスモジュール12〜15は、半導体デバイス用のウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)Wに所定の処理を施す基板処理装置である。例えば、プロセスモジュール12はウエハWにプラズマを用いてエッチング処理を施すエッチング処理装置であり、プロセスモジュール15はウエハWの裏面や周縁部に洗浄処理を施す基板洗浄装置である。
【0046】
基板処理システム10では、トランスファモジュール11及び各プロセスモジュール12〜15は内部の圧力が真空に維持され、トランスファモジュール11と各プロセスモジュール12〜15とは、それぞれ真空ゲートバルブ19〜22を介して接続される。また、ローダーモジュール16の内部圧力が大気圧に維持される一方、トランスファモジュール11の内部圧力は真空に維持される。そのため、各ロード・ロックモジュール17,18は、それぞれトランスファモジュール11との連結部に真空ゲートバルブ23,24を備えると共に、ローダーモジュール16との連結部に大気ドアバルブ25,26を備えることによって、その内部圧力を調整可能な真空予備搬送室として構成される。また、各ロード・ロックモジュール17,18はローダーモジュール16及びトランスファモジュール11の間において受渡されるウエハWを一時的に載置するためのウエハ載置台27,28を有する。
【0047】
トランスファモジュール11はその内部に配置された屈伸及び旋回自在になされたフロッグレッグタイプの基板搬送ユニット29を有し、基板搬送ユニット29は、水平方向に伸縮自在且つ回転自在なアーム30と、該アーム30の先端部に接続されてウエハWを支持する二股状の搬送フォーク31とを有する。基板搬送ユニット29は、各プロセスモジュール12〜15や各ロード・ロックモジュール17,18の間においてウエハWを搬送する。
【0048】
ローダーモジュール16には、上述したロード・ロックモジュール17,18の他、25枚のウエハWを収容する容器としてのフープ(Front Opening Unified Pod)32がそれぞれ載置される3つのフープ載置台31と、フープ32から搬出されたウエハWの位置をプリアライメントするオリエンタ33とが接続されている。
【0049】
ローダーモジュール16は、内部に配置され且つウエハWを搬送する基板搬送ユニット34と、各フープ載置台31に対応するように側壁に配置されたウエハWの投入口としての3つのロードポート35とを有する。基板搬送ユニット34は、水平方向に伸縮自在且つ回転自在なアーム36と、該アーム36の先端部に接続されてウエハWを支持する二股状の搬送フォーク37とを有する。基板搬送ユニット34はアーム36を伸縮・回転させることによってウエハWを支持する搬送フォーク37を所望の位置に移動させ、これにより、ウエハWを所望の位置に搬送する。具体的に、基板搬送ユニット34は、フープ載置台31に載置されたフープ32からウエハWをロードポート35経由で取り出し、該取り出したウエハWを各ロード・ロックモジュール17,18やオリエンタ33へ搬出入する。
【0050】
また、基板処理システム10は、各構成要素の動作を制御するシステムコントローラ(図示しない)と、ローダーモジュール16の長手方向に関する一端に配置されたオペレーションパネル37とを備える。上記システムコントローラは各種処理に対応するプログラムに応じて各構成要素の動作を制御する。オペレーションパネル37は各構成要素の動作状況を表示し、操作者の操作入力を受け付ける。
【0051】
図2は、図1における基板洗浄装置としてのプロセスモジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【0052】
図2において、プロセスモジュール15は、ウエハWを収容するチャンバ38と、該チャンバ38内の底部に配置されてウエハWを載置するステージ39と、チャンバ38内の天井部に配置されてステージ39に対向するシャワーヘッド40と、チャンバ38内のガスを排気する排気口41とを備える。
【0053】
ステージ39は上面39aから突出自在な複数のプッシャーピン42と、該ステージ39を貫通して上面39aに開口する複数の洗浄剤噴出穴43とを有する。該洗浄剤噴出穴43は洗浄剤振動付与装置44(他の振動付与装置)を介して洗浄剤供給管45と連通し、該洗浄剤供給管45はヒータ46及びバルブからなるパルスジェネレータ47(流速変動装置)を介して洗浄剤供給装置(図示しない)に接続される。
【0054】
また、シャワーヘッド40は内部にバッファ室48を有する。該バッファ室48はダウンフローガス供給管49と連通し、該ダウンフローガス供給管49はダウンフローガス供給装置(図示しない)に接続される。バッファ室48は複数の貫通穴50を介してチャンバ38内と連通する。
【0055】
プロセスモジュール15において、チャンバ38内に搬入されたウエハWは、その裏面がステージ39の上面39aと対向するように該上面39aに載置され、プッシャーピン42はウエハWを上面39aから離間させるように該ウエハWを持ち上げる。
【0056】
洗浄剤供給装置は、液相及び気相の2つの相状態(以下、単に「2相状態」という。)を呈する洗浄物質、例えば、純水と、不活性ガス、例えば、窒素ガスとが混合された洗浄剤をヒータ46、洗浄剤供給管45及び洗浄剤振動付与装置44を介して洗浄剤噴出穴43に供給する。該洗浄剤噴出穴43は供給された洗浄剤をウエハWの裏面や周縁部に向けて噴出する。したがって、ステージ39は洗浄剤の噴出装置として機能する。
【0057】
ここで、ヒータ46は洗浄剤、特に、窒素ガスを加熱し、洗浄剤振動付与装置44は洗浄剤に超音波振動を付与する。また、パルスジェネレータ47はバルブを開閉させることにより、図3に示すように、洗浄剤の流速をパルス波的に変動させる。すなわち、洗浄剤にパルス波的な圧力変動を発生させる。これにより、洗浄剤噴出穴43からウエハWの裏面や周縁部に向けて噴出される洗浄剤は、超音波振動し且つパルス波的に圧力変動する2相状態の純水及び高温窒素ガス(高温ガス)を含む。なお、高温窒素ガスの温度は80℃〜150℃であるのが好ましい。
【0058】
通常、エッチング処理が施されたウエハWの裏面や周縁部にはパーティクルやポリマー等の異物が付着する。これらの異物の大きさは様々である。異物が付着したウエハWの裏面や周縁部に向けてガスを噴出すると、ウエハWの裏面や周縁部には境界層51が発生する(図4(A))。該境界層51内ではガスが殆ど流れない。ここで、比較的大きい異物Pはその一部が境界層51から突出するため、ガス52と接触して該ガス52の粘性力を受けてウエハWの裏面や周縁部から剥離する。一方、比較的小さい異物Pは境界層51から突出することがないため、ガス52の粘性力を受けることが無く、その結果、ウエハWの裏面や周縁部から剥離することがない。
【0059】
プロセスモジュール15では、これに対応して、ステージ39が、異物が付着するウエハWの裏面や周縁部に向けて上記洗浄剤、すなわち、2相状態を呈する純水及び高温窒素ガスを噴出する。このとき、噴出された高温窒素ガス53によってウエハWの裏面や周縁部には境界層51が発生するが、噴出された高温窒素ガス53は境界層51から一部が突出する比較的大きい異物Pを熱応力や粘性力によって除去する。ここで、液体は境界層に進入可能であるため、噴出された2相状態を呈する純水54のうち液相を呈するものは境界層51に進入する(図4(B))。
【0060】
境界層51に進入した純水54の一部は多数の微細な純水粒54aとなって境界層51から突出しない比較的小さい異物Pの周りに付着する(図4(C))。純水粒54aが異物Pの周りに隙間無く付着すると、ウエハWを構成する分子や原子と、異物Pを構成する分子や原子との間に作用する引力、例えば、ファンデルワールス力が低下する。したがって、異物PはウエハWの裏面や周縁部から剥離しやすくなる。また、境界層51に進入した純水54のうち、微細な純水粒54aとならない純水54は異物Pに衝突して該異物Pに物理的衝撃を与える。これにより、境界層51から突出する比較的大きい異物Pだけでなく、境界層51から突出しない比較的小さい異物Pも除去することができる。したがって、ウエハWの裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができる。
【0061】
なお、境界層51には僅かではあるがガスの対流が発生しているため、例え、純水54が衝突しなくても、純水粒54aが周りに隙間無く付着した異物Pは該対流によっても移動して除去される。
【0062】
また、純水54がウエハWの裏面や周縁部に付着して長時間かけて蒸発すると、ウォーターマークを発生させる可能性があるが、ウエハWの裏面や周縁部には高温窒素ガス53が吹き付けられるので、ウエハWの裏面に付着した純水54は直ちに蒸発する。したがって、ウエハWの裏面や周縁部にはウォーターマークが発生することがない。
【0063】
また、プロセスモジュール15では、ウエハWの裏面や周縁部に向けて噴出される洗浄剤は、超音波振動し且つパルス波的に圧力変動するため、純水54が異物に与える物理的衝撃を大きくすることができる。その結果、ウエハWの裏面や周縁部からの異物の除去を促進することができる。さらに、洗浄剤、特に、高温窒素ガスがパルス波的に圧力変動すると、該圧力変動に応じて境界層51の厚さも変動する。該境界層51の厚さ変動は異物に振動を付与するため、これによっても、異物の除去を促進することができる。
【0064】
図2に戻り、ダウンフローガス供給装置は、他の不活性ガス、例えば、アルゴンガスを、ダウンフローガス供給管49を介してシャワーヘッド40のバッファ室48に供給する。該バッファ室48は供給されたアルゴンガスを複数の貫通穴50を介してチャンバ38内、特に、ウエハWの表面に向けて噴出する。これにより、チャンバ38内においてウエハWの表面に向けたダウンフローが発生する。したがって、シャワーヘッド40はダウンフローの噴出装置(他の噴出装置)として機能する。チャンバ38内に発生したダウンフローはウエハWの表面からステージ39の脇へ流れ、排気口41から排出される。
【0065】
プロセスモジュール15では、シャワーヘッド40からのダウンフローの流量がステージ39からの洗浄剤の噴出流量よりも多く設定される。したがって、ウエハWの裏面や周縁部から除去された異物を巻き込んだ洗浄剤の流れがウエハWの表面に回り込むのを防止することができ、もって、ウエハWの表面に異物が付着するのを防止することができる。また、ウエハWがステージ39から噴出された洗浄剤によって移動する、例えば、プッシャーピン42から浮き上がるのを防止することができる。
【0066】
上述したプロセスモジュール15は、洗浄剤によってウエハWの裏面や周縁部に付着した異物を除去したが、除去可能なものはこれに限られず、例えば、ウエハWの周縁部に残留するフォトレジストの残渣も除去することができる。
【0067】
上述したプロセスモジュール15では、洗浄剤の洗浄物質として純水を用いたが、洗浄物質はこれに限られない。例えば、有機溶剤(エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール等)、界面活性剤又は洗浄溶液(SC1、SC2、BHF、DHF等)を用いてもよい。これらの洗浄物質の沸点は比較的低いので、容易に気相及び液相の2つの相状態を混在させることができる。また、これらの洗浄物質は異物に付着しやすいので、該異物とウエハWとの引力(例えば、ファンデルワールス力)を確実に弱めることができる。特にエチレングリコールはポリマーと組成が似ているので、異物がポリマーを主成分とする場合、洗浄物質としてエチレングリコールを用いると、上述した熱応力や粘性力による除去、並びにファンデルワールス力の低下を利用した除去だけでなく、液相のエチレングリコールへの溶出を利用した除去も起こるため、異物の除去をより促進することができる。
【0068】
また、上述したプロセスモジュール15では、洗浄剤の不活性ガスとして窒素ガスを用いたが、粘性力の観点からはガスを構成する分子の分子量が大きいほど好ましく、例えば、アルゴンガスやクリプトンガスを用いてもよい。
【0069】
上述した基板処理システム10のプロセスモジュール12はエッチング処理装置なので、該基板処理システム10ではプロセスモジュール15による洗浄処理の前後のいずれかにおいてエッチング処理が実行される。ここで、プロセスモジュール15はウエハWの裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができるので、洗浄処理の後にエッチング処理を実行する場合、プロセスモジュール12内へのウエハWの搬入時において異物がプロセスモジュール12内へ進入するのを防止することができ、洗浄処理の前にエッチング処理を実行する場合、エッチング処理において発生した反応生成物やポリマーに起因する異物のプロセスモジュール13,14内への進入を阻止することができる。
【0070】
なお、プロセスモジュール12はウエハWにフォトレジストの露光処理を施す液浸露光装置であってもよく、この場合、基板処理システム10ではプロセスモジュール15による洗浄処理の後にフォトレジストの露光処理が実行される。ここで、プロセスモジュール15はウエハWの裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができるので、液浸露光装置における載置台からのウエハWの浮き上がりを防止すると共に、液浸露光装置の超純水中への異物の混入を防止することができ、もって、露光を正確に行うことができる。また、プロセスモジュール12はウエハWにコータデベロッパ処理を施すデベロッパであってもよい。
【0071】
上述したプロセスモジュール15では、洗浄剤に超音波振動を付与したが、超音波振動の代わりに、例えば、0.1MHz〜100MHzの高周波振動を付与してもよい。また、洗浄剤の流速におけるパルス波的変動の周波数は、圧力変動により物理的衝撃を異物に効果的に伝達するために、低い方が好ましく、例えば、1Hz程度であるのがよい。
【0072】
上述したプロセスモジュール15はシャワーヘッド40を備えたが、図5に示すように、プロセスモジュール15はシャワーヘッド40の代わりにウエハWを保持するアーム55(保持装置)を備えてもよい。アーム55はチャンバ38内の側壁部に設けられ、ウエハWの周縁部を保持する。これにより、ウエハWがステージ39から噴出された洗浄剤によって移動する、例えば、浮き上がるのを確実に防止することができる。このとき、プロセスモジュール15はアーム55に振動を付与するアーム振動付与装置56を備えてもよく、これにより、ウエハWを振動させることができ、もって、異物の除去をさらに促進することができる。
【0073】
また、プロセスモジュール15は、図6に示すように、ウエハWを保持し且つウエハWの表裏面を反転させるアーム57(保持装置)を備えてもよい。この場合、プロセスモジュール15はチャンバ38内の天井部に、洗浄剤振動付与装置58、洗浄剤供給管59、ヒータ60及びパルスジェネレータ76を介して洗浄剤供給装置(図示しない)に接続された、ステージ39と同様の構造を有するシャワーヘッド61を備える。
【0074】
シャワーヘッド61は、アーム57に保持されたウエハWの表面に向けて2相状態を呈する純水及び高温窒素ガスが混合された洗浄剤を噴出する。また、アーム57がウエハWの表裏面を反転させてウエハWの裏面をシャワーヘッド61させたとき、シャワーヘッド61はウエハWの裏面に向けて上記洗浄剤を噴出する。これにより、洗浄剤によってウエハWの裏面の異物だけでなくウエハWの表面の異物も除去することができる。
【0075】
さらに、図6のプロセスモジュール15では、チャンバ38内の底部にシャワーヘッド40と同様の構造を有するステージ62を備えてもよく、これにより、ウエハWにおいて洗浄液が噴出される面とは反対の面に向けてアルゴンガスを噴出することができる。これにより、除去された異物が上記反対の面に回り込んで該反対の面に付着するのを防止することができる。
【0076】
また、上述したプロセスモジュール15では、ステージ39がウエハWの裏面や周縁部に向けて2相状態を呈する純水及び高温窒素ガスが混合された洗浄剤を噴出したが、気相のみを呈する純水(洗浄物質)及び高温窒素ガスが混合された洗浄剤を噴出してもよい。ここで、気相のみを呈する純水は、複数のクラスタ化した水分子を含むとする。このときも、図7(A)に示すように、ウエハWの裏面や周縁部には境界層51が発生するが、噴出された高温窒素ガス53は境界層51から一部が突出する比較的大きい異物Pを熱応力や粘性力によって除去する。ここで、クラスタ化した水分子63は境界層51に進入する。
【0077】
境界層51に進入したクラスタ化した水分子63の一部は1つ1つの水分子63aに分かれて境界層51から突出しない比較的小さい異物Pの周りに付着する(図7(B))。水分子63aが異物Pの周りに隙間無く付着すると、ウエハWを構成する分子や原子と、異物Pを構成する分子や原子との間に作用する引力、例えば、ファンデルワールス力が低下する。したがって、異物PはウエハWの裏面や周縁部から剥離しやすくなる。また、境界層51に進入したクラスタ化した水分子63のうち、微細な水分子63aとならないクラスタ化した水分子63は異物Pに衝突して該異物Pに物理的衝撃を与える。
【0078】
これにより、2相状態を呈する純水及び高温窒素ガスが混合された洗浄剤を噴出する場合と同様に、境界層51から突出する比較的大きい異物Pだけでなく、境界層51から突出しない比較的小さい異物Pも除去することができる。したがって、ウエハWの裏面や周縁部に付着した異物を完全に除去することができる。
【0079】
上述したように境界層51には僅かではあるがガスの対流が発生しているため、例え、クラスタ化した水分子63が衝突しなくても、水分子63aが周りに隙間無く付着した異物Pは該対流によっても移動して除去されること、並びに、気相のみを呈する純水及び高温窒素ガスが混合された洗浄剤に超音波振動を付与し、該洗浄剤の流速をパルス波的に変動させて異物の除去をさらに促進することができることも、2相状態を呈する純水及び高温窒素ガスが混合された洗浄剤を噴出する場合と同様である。
【0080】
なお、洗浄剤に含まれる洗浄物質としては、上述した純水だけでなく、有機溶剤(エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール等)、界面活性剤又は洗浄溶液(SC1、SC2、BHF、DHF等)を用いてもよいことも、2相状態を呈する純水及び高温窒素ガスが混合された洗浄剤を噴出する場合と同様である。
【0081】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る基板処理システムについて説明する。
【0082】
本実施の形態に係る基板処理システムは、ウエハWの裏面や周縁部に洗浄処理を施すプロセスモジュールの構造が第1の実施の形態と異なるのみであるので、重複した構成、作用については説明を省略し、以下に異なる構成、作用についての説明を行う。
【0083】
図8は、本実施の形態に係る基板処理システムが備える基板洗浄装置としてのプロセスモジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【0084】
図8において、プロセスモジュール64は、ウエハWを収容するチャンバ65と、該チャンバ65内に配置されてウエハWを水平に保持するアーム66と、該保持されたウエハWの裏面に対して斜めに対向するように配置された洗浄剤噴出ノズル67と、チャンバ65内の天井部に配置されてウエハWの表面と対向するシャワーヘッド40と、チャンバ65内のガスを排気する排気口41とを備える。
【0085】
洗浄剤噴出ノズル67は、チャンバ38内において水平に設置されたガイドレール68(図中の白抜き矢印)に沿って移動するため、洗浄剤噴出ノズル67及びウエハWは互いに平行且つ相対的に移動する。
【0086】
図9は、図8における洗浄剤噴出ノズルの構成を概略的に示す図であり、図9(A)は、ウエハと洗浄剤噴出ノズルの位置関係を示す図であり、図9(B)は、図9(A)における線B−Bに沿う断面図であり、図9(C)は、図9(B)におけるC部の拡大図である。
【0087】
図9(A)に示すように、洗浄剤噴出ノズル67は篦状部材からなり、頂部においてウエハWの裏面に対して斜めに対向する対向面67aを有する。該対向面67aには複数の洗浄剤噴出穴69が開口する。各洗浄剤噴出穴69からは洗浄剤が噴出される。対向面67aは洗浄剤噴出ノズル67の移動方向(図中白抜き矢印で示す)に対して直角方向に延出し、該直角方向に関する対向面67aの長さはウエハWの直径以上であるため、洗浄剤噴出ノズル67は各洗浄剤噴出穴69から噴出される洗浄剤によってウエハWの裏面全体を走査することができる。また、対向面67aには複数の吸気穴70(吸気部)が開口する。したがって、これらの吸気穴70はウエハWの裏面に向けて開口する。吸気穴70はウエハWの裏面や周縁部から除去された異物を洗浄剤と共に吸引する。
【0088】
洗浄剤噴出ノズル67は、図9(B)に示すように、内部に各洗浄剤噴出穴69と連通するバッファ部71と、各吸気穴70と連通する吸気路72とを有する。該吸気路72は吸引装置(図示しない)と連通する。また、各洗浄剤噴出穴69は、図9(C)に示すように、対向面67aにおける開口部は末広がり状に形成される。これにより、各洗浄剤噴出穴69は、ウエハWの裏面や周縁部に向けて満遍なく洗浄剤を噴出することができる。
【0089】
図8に戻り、洗浄剤噴出ノズル67の各洗浄剤噴出穴69はバッファ部71、可撓パイプ73及び洗浄剤振動付与装置44(他の振動付与装置)を介して洗浄剤供給管45と連通し、該洗浄剤供給管45はヒータ46及びパルスジェネレータ47を介して洗浄剤供給装置(図示しない)に接続される。また、シャワーヘッド40のバッファ室48は複数の貫通穴50を介してチャンバ65内と連通する。
【0090】
本実施の形態でも、洗浄剤供給装置は、液相及び気相の2相状態を呈する洗浄物質、例えば、純水と、不活性ガス、例えば、窒素ガスとが混合された洗浄剤をヒータ46、洗浄剤供給管45、洗浄剤振動付与装置44及び可撓パイプ73を介してバッファ部71に供給する。該バッファ部71に供給された洗浄剤は、さらに、各洗浄剤噴出穴69を介してウエハWの裏面や周縁部に向けて噴出される。したがって、洗浄剤噴出ノズル67は洗浄剤の噴出装置として機能する。このとき、ウエハWの裏面や周縁部において、比較的大きい異物Pが高温窒素ガスの熱応力や粘性力によって除去され、ファンデルワールス力が純水粒の付着によって低下した比較的小さい異物Pは純水の衝突によって除去されることは、第1の実施の形態と同様である。
【0091】
また、シャワーヘッド40からダウンフローがウエハWの表面に向けてダウンフローが発生し、ウエハWの表面に異物が付着するのを防止することも第1の実施の形態と同様である。
【0092】
さらに、洗浄剤噴出ノズル67では、上述したように、ウエハWの裏面に対して斜めに対向する対向面67aに、洗浄剤を噴出する洗浄剤噴出穴69が配されるため、洗浄剤噴出ノズル67はウエハWの裏面に対して洗浄剤を斜めに噴出する。
【0093】
ここで、図10に示すように、斜めに噴出された洗浄剤74は境界層75をウエハWの裏面に沿って押しのけるため、比較的小さい異物Pの一部を境界層75から露出することができる。これにより、比較的小さい異物Pにも高温窒素ガスの熱応力や粘性力を作用させ、もって、該異物Pを確実に除去することができる。
【0094】
ところで、ウエハWの裏面の全体に向けて洗浄剤が同時に噴出されると、除去された異物が該洗浄剤の流れに乗って再びウエハWの裏面や周縁部に押し付けられて付着する虞があるが、プロセスモジュール64では、上述したように、洗浄剤噴出ノズル67及びウエハWは互いに平行且つ相対的に移動するため、ウエハWの裏面の全体に向けて洗浄剤が同時に噴出されることがなく、これにより、除去された異物が再びウエハWの裏面や周縁部に押し付けられることがない。また、上述したように、吸気穴70がウエハWの裏面や周縁部から除去された異物を洗浄剤と共に吸引する。その結果、ウエハWの裏面や周縁部へ異物が再付着するのを確実に防止することができる。
【0095】
なお、洗浄剤噴出ノズル67における各洗浄剤噴出穴69の断面形状は、図9(A)に示す円形状に限られず、三角形状、四角形状、星形状等であってもよい。
【0096】
また、アーム66はウエハWの表裏面を反転させてもよく、これにより、ウエハWの裏面の異物だけでなくウエハWの表面の異物も除去することができる。
【0097】
なお、上述した各実施の形態では、基板洗浄装置としてのプロセスモジュールは基板処理システム10に組み込まれていたが、基板洗浄装置としてのプロセスモジュールが基板処理システム10に組み込まれることなく単独で配置されていてもよい。
【0098】
また、上述した各実施の形態では、洗浄処理が施される基板が半導体ウエハであったが、基板はこれに限られず、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やFPD(Flat Panel Display)等のガラス基板であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板処理システムの構成を概略的に示す平面図である。
【図2】図1における基板洗浄装置としてのプロセスモジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【図3】洗浄剤の流速のパルス波的変動を示す図である。
【図4】本実施の形態における異物除去を説明するための図であり、図4(A)は、洗浄剤としてガスのみを噴出した場合であり、図4(B)は、洗浄剤として2相状態を呈する純水及び高温窒素ガスを噴出した場合であり、図4(C)は、図4(B)における比較的小さい異物の除去の様子を示す図である。
【図5】図2のプロセスモジュールの第1の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【図6】図2のプロセスモジュールの第2の変形例の構成を概略的に示す断面図である。
【図7】本実施の形態における異物除去の変形例を説明するための図であり、図7(A)は、洗浄剤として気相のみを呈する純水及び高温窒素ガスを噴出した場合であり、図7(B)は、図7(A)における比較的小さい異物の除去の様子を示す図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る基板処理システムが備える基板洗浄装置としてのプロセスモジュールの構成を概略的に示す断面図である。
【図9】図8における洗浄剤噴出ノズルの構成を概略的に示す図であり、図9(A)は、ウエハと洗浄剤噴出ノズルの位置関係を示す図であり、図9(B)は、図9(A)における線B−Bに沿う断面図であり、図9(C)は、図9(B)におけるC部の拡大図である。
【図10】本実施の形態における異物除去を説明するための図である。
【符号の説明】
【0100】
W ウエハ
,P 異物
10 基板処理システム
12,15 プロセスモジュール
38,65 チャンバ
39,62 ステージ
40,61 シャワーヘッド
43,69 洗浄剤噴出穴
44,58 洗浄剤振動付与装置
47,76 パルスジェネレータ
51,75 境界層
53 高温窒素ガス
54 純水
54a 純水粒
55,57,66 アーム
63 クラスタ化した水分子
63a 水分子
67 洗浄剤噴出ノズル
70 吸気穴
74 洗浄剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に所定の処理を施す基板処理装置と、少なくとも前記所定の処理の前後のいずれかにおいて前記基板を洗浄する基板洗浄装置とを備える基板処理システムであって、
前記基板洗浄装置は、気相及び液相の2つの相状態を呈する洗浄物質、並びに高温ガスを、前記基板の裏面や周縁部に向けて噴出する噴出装置を有することを特徴とする基板処理システム。
【請求項2】
前記噴出装置は、前記洗浄物質及び前記高温ガスを、前記基板の裏面に対して斜めに噴出することを特徴とする請求項1記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記噴出装置及び前記基板は互いに平行且つ相対的に移動することを特徴とする請求項1又は2記載の基板処理システム。
【請求項4】
前記噴出装置は、前記基板の裏面に向けて開口する吸気部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項5】
前記基板洗浄装置は、前記基板の表面に向けて他のガスを噴出する他の噴出装置を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項6】
前記基板洗浄装置は、前記基板を保持する保持装置を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項7】
前記保持装置は前記基板を反転させることを特徴とする請求項6記載の基板処理システム。
【請求項8】
前記基板洗浄装置は、前記保持装置に振動を付与する振動付与装置を有することを特徴とする請求項6又は7記載の基板処理システム。
【請求項9】
前記基板洗浄装置は、前記洗浄物質及び前記高温ガスに振動を付与する他の振動付与装置を有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項記載の基板処理システム。
【請求項10】
前記基板洗浄装置は、前記洗浄物質及び前記高温ガスの流速をパルス波的に変動させる流速変動装置を有することを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載の基板処理システム。
【請求項11】
前記洗浄物質は、水、有機溶剤、界面活性剤及び洗浄溶液からなる群から選択された1つであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項記載の基板処理システム。
【請求項12】
前記所定の処理はエッチング処理であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の基板処理システム。
【請求項13】
前記所定の処理はフォトレジストの露光処理又はコータデベロッパ処理であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項記載の基板処理システム。
【請求項14】
前記高温ガスの温度は80℃〜150℃であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の基板処理システム。
【請求項15】
基板に所定の処理を施す基板処理装置と、少なくとも前記所定の処理の前後のいずれかにおいて前記基板を洗浄する基板洗浄装置とを備える基板処理システムであって、
前記基板洗浄装置は、気相を呈する洗浄物質及び高温ガスを、前記基板の裏面や周縁部に向けて噴出する噴出装置を有し、
前記気相を呈する洗浄物質はクラスタ化した分子又は原子を含むことを特徴とする基板処理システム。
【請求項16】
気相及び液相の2つの相状態を呈する洗浄物質、並びに高温ガスを、基板の裏面や周縁部に向けて噴出する噴出装置を備えることを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項17】
気相を呈する洗浄物質及び高温ガスを、前記基板の裏面や周縁部に向けて噴出する噴出装置を備え、
前記気相を呈する洗浄物質はクラスタ化した分子又は原子を含むことを特徴とする基板洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−251743(P2008−251743A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−89803(P2007−89803)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】