説明

基板処理装置、基板処理方法及び記憶媒体

【課題】乾燥用流体の消費量を抑制でき、乾燥用流体の汚染も防止できる基板処理装置を提供すること。
【解決手段】基板Wを保持する基板保持部1と、基板保持部1に保持された基板Wに対してアルカリを含む処理液を供給する第1の処理液供給部2aと、基板保持部1に保持された基板Wに対して乾燥用流体を供給する第2の処理液供給部2bとを備える処理液供給機構2と、を具備し、第2の処理液供給部2bの乾燥用流体吐出ノズル2fが、不活性ガスを噴射する外側配管と、この外側配管内に設けられ、乾燥用流体を吐出する内側配管との多重構造を有し、乾燥用流体を吐出しないとき、外側配管から不活性ガスを噴射して内側配管を外気から遮断するように第2の処理液供給部2bを制御する汚染抑制機構8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体ウエハ等の基板に対して洗浄処理のような所定の処理を行う基板処理装置、基板処理方法、及びこの基板処理方法を実行させる記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスやフラットパネルディスプレー(FPD)の製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハやガラス基板に薬液を供給して薬液処理を行うプロセスが多用されている。このようなプロセスとしては、例えば、基板に付着したパーティクルやコンタミネーション等を除去する洗浄処理を挙げることができる。
【0003】
このような基板処理装置としては、半導体ウエハ等の基板をスピンチャックに保持し、基板を回転させた状態でウエハに洗浄液等の薬液を供給して洗浄処理を行うものが知られている。この種の装置では、通常、薬液はウエハの中心に供給され、基板を回転させることにより薬液を外側に広げて液膜を形成し、薬液を基板の外方へ離脱させる。
【0004】
このような洗浄処理に使用される薬液としては、過酸化水素水、及び/又は水にアルカリであるアンモニアを混合したアルカリ性処理液、例えば、APM洗浄液やSC−1洗浄液などがよく知られている。
【0005】
被処理基板への薬液処理を終えた後、基板を乾燥させる。この乾燥処理では、基板を回転させながら遠心力で薬液を吹き飛ばすスピン乾燥の他、基板を回転させながらイソプロパノール(IPA)蒸気を供給して乾燥させる方法が知られている。この種の乾燥方法は、例えば、特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平10−335298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された乾燥方法は、薬液処理、例えば、洗浄処理から乾燥処理への切り換えがスムーズであり、切り換えの間の自然乾燥によるウォーターマークの発生等の防止に有効である。しかし、乾燥処理にIPAを使う場合、IPAは揮発性薬液や大気中の水分を溶存する。このため、IPAは外気や薬液雰囲気に暴露されると、その性能が急激に落ちる。
【0007】
このため、特許文献1に記載されたような乾燥方法では、乾燥用流体中に薬液や水分が溶け込んだ部分をノズル内から捨てる作業、いわゆるダミーディスペンスを、乾燥処理前、又は定期的に行うことが実施されている。
【0008】
しかしながら、ダミーディスペンスでは乾燥用流体を捨ててしまうため、乾燥用流体の消費量が増えやすい。このため、コストダウンを困難にする、という事情がある。
【0009】
この発明は、乾燥用流体の消費量を抑制でき、乾燥用流体の汚染も防止できる基板処理装置、及びその基板処理方法、並びにその基板処理方法を実行させるプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、この発明の第1の態様に係る基板処理装置は、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に対してアルカリを含む処理液を供給する第1の処理液供給部と、前記基板保持部に保持された基板に対して乾燥用流体を供給する第2の処理液供給部とを備える処理液供給機構と、を具備し、前記第2の処理液供給部の乾燥用流体吐出ノズルが、不活性ガスを噴射する外側配管と、この外側配管内に設けられ、前記乾燥用流体を吐出する内側配管との多重構造を有し、前記乾燥用流体を吐出しないとき、前記外側配管から不活性ガスを噴射して前記内側配管を外気から遮断するように前記第2の処理液供給部を制御する汚染抑制機構を備える。
【0011】
この発明の第2の態様に係る基板処理方法は、基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に対してアルカリを含む処理液を供給する第1の処理液供給部と、前記基板保持部に保持された基板に対して乾燥用流体を供給する第2の処理液供給部とを備える処理液供給機構と、を具備する基板処理装置の基板処理方法であって、前記第2の処理液供給部の乾燥用流体吐出ノズルが、不活性ガスを噴射する外側配管と、この外側配管内に設けられ、前記乾燥用流体を吐出する内側配管との多重構造を有し、前記乾燥用流体を吐出しないとき、前記外側配管から不活性ガスを噴射して前記内側配管を外気から遮断する。
【0012】
この発明の第3の態様に係る記憶媒体は、コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第2の態様に係る基板処理方法が行われるように、コンピュータに基板処理装置を制御させる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、乾燥用流体の消費量を抑制でき、乾燥用流体の汚染も防止できる基板処理装置、及びその基板処理方法、並びにその基板処理方法を実行させるプログラムが記憶された記憶媒体を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。この説明においては、この発明を半導体ウエハ(以下、単にウエハと記す)の表裏面洗浄を行う液処理装置に適用した場合について示す。
【0015】
図1は、この発明の第1の実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、第1の実施形態に係る基板処理装置100は、ウエハWを保持する基板保持部1と、基板保持部1に保持されたウエハWに処理液を供給する処理液供給機構2と、を備える。さらに、本例では、基板保持部1の外側から下方にかけて設けられ、ウエハWに供給された処理液を回収可能なドレインカップ3と、ドレインカップ3の外側に設けられた外カップ4と、を備える。
【0017】
本例の基板保持部1は、水平に設けられた円板状をなす回転プレート1aと、回転プレート1aの裏面の中心部に接続され、下方に向かって鉛直に延びる円筒状の回転軸1bとを有している。回転プレート1aの中心部には円形の孔1cが形成され、孔1cは円筒状の回転軸1bの孔1dに連通される。孔1c及び孔1d内には裏面側液供給ノズル1eを備えた昇降部材1fが上下方向に昇降可能に設けられている。回転プレート1a上には、ウエハWの外縁を保持する保持部材1gが設けられている。保持部材1gは、図1では1つのみが示されているが、例えば、3つ設けられ、互いに等間隔で配置される。保持部材1gは、ウエハWを回転プレート1aから浮いた状態で水平に保持する。
【0018】
本例の処理液供給機構2は、アルカリを含む処理液を供給する第1処理液供給部2aと、乾燥用流体を供給する第2の処理液供給部2bとを備える。
【0019】
本例の第1処理液供給部2aは、アルカリを含む処理液を吐出するノズル2cを備える。アルカリを含む処理液の一例は、アルカリとしてアンモニアを含む処理液である。より詳しい一例は、過酸化水素水、及び/又は水に、アルカリであるアンモニアを混合したアルカリ性処理液である。例えば、APM洗浄液やSC−1洗浄液、あるいはこれら洗浄液に類似した洗浄液を挙げることができる。さらに、ノズル2cは、バルブ切り換えにより、リンス液を吐出する。リンス液の一例は純水(DIW)である。
【0020】
ノズル2cは第1スキャンアーム2dの先端部分に取り付けられている。第1スキャンアーム2dはシャフト2eに接続されている。シャフト2eを回動させることで、ノズル2cを、基板保持部1の外側にある待機位置と基板保持部1上に保持されたウエハWの上方の処理位置との間でスキャンさせることが可能になっている。さらに、シャフト2eは上下方向の昇降駆動が可能であり、例えば、処理位置においてシャフト2eを昇降させると、ノズル2cが処理液を吐出する位置(高さ)を調節することができる。
【0021】
本例の第2処理液供給部2bは、乾燥用流体を吐出するノズル2fを備える。乾燥用流体の一例は有機溶剤である。有機溶剤の例は乾燥処理に使用される乾燥溶媒である。乾燥溶媒の例は、イソプロパノール(IPA)、及びIPAを含む溶媒、ハイドロフルオロエーテル(HFE)、及びHFEを含む溶媒を挙げることができる。なお、本例では、乾燥用流体としてIPAを使用した基板処理装置100を例示している。さらに、本例の第2処理液供給部2bは、酸を含む処理液を吐出するノズル2gと、ウエハWに対して気体を噴射し、乾燥を促進するノズル2hとを備える。酸を含む処理液の一例は酸として弗酸を含む処理液である。より詳しい一例は、酸である弗酸を水等で希釈した酸性処理液、例えば、希弗酸である。基板に対して噴射される気体の一例は窒素である。さらに、ノズル2gは、バルブ切り換えによりリンス液をさらに吐出する。リンス液の一例は純水(DIW)である。
【0022】
ノズル2f、2g、及び2hも、ノズル2cと同様にスキャンアーム、本例では第2スキャンアーム2iの先端部分に取り付けられている。本例の第2スキャンアーム2iは、第1のスキャンアーム2eから独立して上下動可能、かつ、基板保持部1(処理位置)と待機位置との間で回動可能である。第2スキャンアーム2iはシャフト2jに接続され、シャフト2jを回動させることで、ノズル2f、2g、及び2hを、待機位置と処理位置との間でスキャンさせることが可能になっている。さらに、シャフト2jも上下方向の昇降駆動が可能であり、例えば、処理位置においてノズル2f及び2gが乾燥溶媒、及び処理液を吐出する位置(高さ)と、ノズル2hが気体を噴射する位置(高さ)とを調節することができる。
【0023】
本例の基板保持部1は、回転プレート1aに加えて、回転プレート1aの外側に、回転カップ1hを備えている。本例の回転カップ1hは、回転プレート1aの周方向に沿って設けられている。回転カップ1hは、回転プレート1aに、ねじ等の固定部材1jによって固定されており、回転プレート1aとともに回転する。回転カップ1hは、回転プレート1aの周囲を囲む筒状の壁部と、この壁部の上方で、回転プレート1aの外縁上方を覆う円環状の庇部とを有した形状をなしている。回転カップ1hの筒状の壁部と回転プレート1aとの間には円環状の隙間が形成されている。ウエハWが回転プレート1a及び回転カップ1hとともに回転することで飛散した処理液は、円環状の隙間から基板保持部1の外側から下方にかけて設けられたドレインカップ3に導かれる。
【0024】
本例のドレインカップ3は、回転カップ1hの外側に設けられ、鉛直方向に設けられた筒状をなす外周壁3aと、外周壁3aの下端部から内側に向かって延びる内側壁3bとを有し、外周壁3aと内側壁3bとによって規定された環状の空間を、処理液を回収し、収容する液収容部3cとしている。液収容部3cは、回収した処理液を排液する排液管3dに接続されている。回収した処理液は、排液管3dを介して、例えば、図示せぬ排液処理機構やリサイクル機構に導かれる。ドレインカップ3の外側には、外カップ4が設けられている。
【0025】
本例の外カップ4は、ドレインカップ3の外周壁3aの外側に設けられている。本例の外カップ4は基板保持部1の下方に延びて形成され、ドレインカップ3が外カップ4の内部に配置された形状となっている。本例の外カップ4は、ドレインカップ3の内側壁3bよりも回転軸1b側に形成された内側壁4aを備えている。外カップ4の底部には内側壁4aと内側壁3bとの間の位置に設けられた排液孔があり、この排液孔には排液管4bが接続されている。さらに、外カップ4の底部には内側壁3bの下方に位置する部分には排気孔があり、この排気孔には排気管4cが接続されている。
【0026】
本例の外カップ4は、ベースプレート5の上に取り付けられている。さらに、外カップ4上には、ウエハW、基板保持部1、処理液供給機構2、ドレインカップ3、及び外カップ4の上方を覆うようにケーシング6が設けられている。ケーシング6の上部には図示せぬファン・フィルター・ユニット(FFU)からの気流を、ケーシング6の側部に設けられた導入口6aを介して導入する気流導入部6bが設けられている。気流導入部6bは、基板保持部1に保持されたウエハWに、清浄空気をダウンフローで供給する。供給された清浄空気は、上記排気管4cを介して排気される。
【0027】
ケーシング6の側部には、さらに、基板搬入出口6cが形成されている。ウエハWは、基板搬入出口6cを介してケーシング6の内部に対して搬入出される。
【0028】
さらに、ケーシング6の待機位置には排液孔6d、及び6eが形成されている。
【0029】
本例の基板処理装置100は制御ユニット7を有する。制御ユニット7は基板処理装置100を制御する。本例の制御ユニット7は、コンピュータであるプロセスコントローラ7aと、プロセスコントローラ7aに接続されたユーザーインターフェース7bと、同じくプロセスコントローラ7aに接続された記憶部7cとを備えている。
【0030】
ユーザーインターフェース7bは、オペレータが、基板処理装置100を管理するコマンドの入力操作等を行うキーボードや、基板処理装置100の稼働状況等を可視化して表示するディスプレイ等を有する。
【0031】
記憶部7cは、基板処理装置100で実行される処理を、プロセスコントローラ7aの制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じた処理を基板処理装置100に実行させたりするプログラム、即ちレシピが格納される。レシピは記憶部7cの中の記憶媒体に記憶される。記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、ハードディスクや半導体メモリであっても良いし、CD−ROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであっても良い。任意のレシピは、ユーザーインターフェース7bからの指示等にて記憶部7cから読み出され、プロセスコントローラ7aに実行させることで、プロセスコントローラ7aの制御下で、基板処理装置100による基板処理が行われる。レシピは、例えば、専用回線を介して他の装置から適宜伝送させることも可能である。
【0032】
本例では、汚染抑制機構8をさらに備える。汚染抑制機構8は、例えば、制御ユニット7の指示に基づき、第2の処理液供給部2bを制御する。
【0033】
図2Aは汚染抑制機構8の一例を示すブロック図である。なお、図2Aには乾燥用流体を吐出する乾燥用流体吐出ノズル2fの先端部分を拡大して示した断面が示され、図2Bには図2A中の2B−2B線に沿う断面が示されている。
【0034】
図2Aに示すように、本例の乾燥用流体吐出ノズル2fは、乾燥用流体を吐出する部分と、不活性ガスを噴射する部分とを備えた多重構造ノズルである。本例では一例として、不活性ガスを噴射する外側配管9aと、この外側配管9a内に設けられ、乾燥用流体を吐出する内側配管9bとの二重構造ノズルを例示する。
【0035】
また、本例の汚染抑制機構8は、不活性ガス供給機構8aと、バルブ制御装置8bとを備える。
【0036】
不活性ガス供給機構8aは、不活性ガスを第2の処理液供給部2bに供給する。このような不活性ガスの例は、窒素を含む不活性ガスや希ガスである。本例では、乾燥用流体がIPAである。乾燥用流体がIPAの場合には、例えば、窒素ガスが良い。本例では、不活性ガスを窒素ガスとしている。
【0037】
バルブ制御装置8bは、本例ではバルブ2k及びバルブ2mを制御する。バルブ2kは、不活性ガス供給機構8aと、不活性ガス供給機構8aと外側配管9aとの間に設けられ、不活性ガスの供給量を変えたり、又は供給を止めたりするバルブである。同様に、バルブ2mは、乾燥用流体を第2の処理液供給部2bに供給する乾燥用流体供給機構10と内側配管9bとの間に設けられ、乾燥用流体の供給量を変えたり、又は供給を止めたりするバルブである。バルブ制御装置8bは、例えば、制御ユニット7のプロセスコントローラ7aからの指示に基づいてバルブ2k及び2mを制御する。本例では、乾燥用流体を吐出しないとき、外側配管9aから不活性ガスを噴射して内側配管9bを外気から遮断するように第2の処理液供給部2b、具体的には第2の処理液供給部2bのバルブ2k及び2mを制御する。図3Aに乾燥用流体を吐出しないときの一例を、図3Bに乾燥用流体を吐出するときの一例を示す。
【0038】
図3Aに示すように、乾燥用流体を吐出しないときには、外側配管9aから不活性ガスを噴射する。不活性ガスは、内側配管9bの外側を囲むように形成された外側配管9aから噴射されるから、不活性ガスは、内側配管9bの乾燥用流体吐出口9c、即ち内側配管9bの最下面を外気から遮るように拡がる。さらに、不活性ガスは、外側配管9aの噴射口9d、即ち外側配管9aの最下面を外気から遮るように拡がる。この結果、内側配管9bの、特に、乾燥用流体吐出口9cの周囲は、不活性雰囲気となる。このように本例では、乾燥用流体を吐出しないとき、外側配管9aから不活性ガスを噴射して、内側配管9bの、特に、乾燥用流体吐出口9cの周囲を不活性雰囲気とすることで、内側配管9bを外気から遮断する。外気がケミカル雰囲気、例えば、アルカリ性雰囲気であったとしても、内側配管9b内の乾燥用流体はノズル2fと、吐出口9cの下方に拡がって形成された不活性雰囲気とによって護られる。このため、アルカリ性雰囲気中のケミカル物質、例えば、アルカリ性ミスト11が、不活性ガスを噴射しない場合に比較して内側配管9b内の乾燥用流体に到達し難くなり、ノズル2f中に残留している乾燥用流体の汚染や変質を抑制することができる。
【0039】
また、乾燥用流体を吐出するときには、図3Bに示すように、不活性ガスの噴射量を、乾燥用流体を吐出しないときに比較して減らす、又は不活性ガスの噴射を止めれば良い。本例では、汚染抑制機構8が不活性ガスの噴射を弱める、又は不活性ガスの噴射を止める。図3Bでは、不活性ガスの噴射を止めた例を示している。このように、噴射を弱める、又は噴射を止めることで、乾燥用流体の吐出量が少量であっても安定して乾燥用流体を吐出することができる。また、乾燥用流体の吐出時に、乾燥用流体の無用な飛び散りやミスト化等を抑制することができる。乾燥用流体の無用な飛び散りやミスト化を抑制することで、乾燥処理の効率低下、あるいは基板処理装置100の清浄度の低下を抑えることができる。
【0040】
なお、乾燥用流体を吐出するときの例は、例えば、第2の処理液供給部2bが基板保持部1の上方にあり、基板保持部1に保持されたウエハWに対して乾燥用流体を供給するとき、又は第2の処理液供給部2bが待機位置の上方にあるときである。
【0041】
このように、一実施形態に係る基板処理装置100によれば、乾燥用流体の汚染や変質を抑制できる。
【0042】
さらに、一実施形態に係る基板処理装置100によれば、乾燥用流体の廃棄量を減らすこともできる。乾燥用流体の廃棄量が減ることで、乾燥用流体の消費量を抑制できる基板処理装置100を得ることができる。
【0043】
乾燥用流体の廃棄量を減らすことが可能な一実施形態に係る基板処理装置100は、処理される基板がウエハWであった場合には、例えば、半導体集積回路装置の製造コストの低減に役立ち、また、処理される基板がフラットパネルディスプレイ(FPD)等であった場合には、ディスプレイ装置の製造コストの低減に役立つ。
【0044】
上記一実施形態においては、乾燥用流体吐出ノズル(多重構造ノズル)2fの内側配管9bの最下面(乾燥用流体吐出口9c)を、外側配管9aの内部に位置させた。しかし、これは、図4Aに示すように、内側配管9bの最下面(乾燥用流体吐出口9c)を、外側配管9aの最下面(不活性ガス噴射口)9dと同じレベル、又は内側配管9bの最下面(乾燥用流体吐出口9c)を、外側配管9aの最下面(不活性ガス噴射口)9dよりも外側に突出させるようにしても良い。
【0045】
このようにしても、不活性ガスは、内側配管9bの最下面(乾燥用流体吐出口9c)を、外気から遮るように拡がるから、内側配管9bの最下面の周囲を不活性雰囲気とすることができる。よって、上述した利点と同様の利点を得ることができる。
【0046】
ただし、図4Bに示すように、乾燥用流体吐出ノズル(多重構造ノズル)2fの内側配管9bの最下面(乾燥用流体吐出口9c)を、外側配管9aの内部に位置させると、乾燥用流体吐出ノズル2fに、外側配管9aの最下面と内側配管9bの最下面との間に、外側配管9aによって区切られた空間9eを有するように構成することができる。乾燥用流体吐出ノズル(多重構造ノズル)2fに空間9eを持たせることで、内側配管9bの最下面の周囲を不活性雰囲気とし易くなる、という利点を得ることができる。
【0047】
なお、乾燥用流体によっては、図4Aに示す構造の方が適切となる場合もあり得る。例えば、乾燥用流体の粘度が比較的高い場合、あるいは外側配管9a及び内側配管9bのサイズ、特に直径が小さい場合等には、空間9eの内部において、乾燥用流体が外側配管9aの内壁に接触し、乾燥用流体の飛び散りやミスト化の要因になることも予想される。
【0048】
次に、一実施形態に係る基板処理装置100を用いた基板処理方法の一例を説明する。
【0049】
図5は、第1の実施形態に係る基板処理装置100を用いた基板処理方法の一例を示す流れ図、図6乃至図11は、主要な工程における基板処理装置100の状態を概略的に示した断面図である。本例は、アルカリを含む処理液を用いた基板処理、酸を含む処理液を用いた基板処理、及び有機系乾燥溶媒を用いた乾燥処理を順次行う例である。
【0050】
まず、図5中のステップ1に示すように、基板に対してアルカリを含む処理液を供給する。
【0051】
本例では、図6に示すように、回転ステージ1a上に、保持部材1gを用いてウエハWを保持した後、第1の処理液供給部2aをウエハWの上方に移動させる。次いで、回転ステージ1aを回転させてウエハWを回転させる。次いで、ウエハWの表面に対して、アルカリを含む処理液21をノズル2cから供給する。処理液21の具体例は、アンモニアと過酸化水素水との混合液(SC−1)である。その温度は約70℃である。
【0052】
ステップ1が終了したら、図5中のステップ2に示すように、基板に対してリンス液22をノズル2cから供給する(図7)。
【0053】
ステップ1、及び2のとき、図6、及び図7に示すように、第2の処理液供給部2bは待機位置にいる。本例では、乾燥用流体を吐出する時以外、ノズル2fの外側配管9aから不活性ガスを噴射し、ノズル2fの内側配管9bの下方を不活性雰囲気として内側配管9bを外気や薬液雰囲気から遮断する。乾燥用流体を吐出する時には、後述するが、乾燥用流体の吐出に影響を与えないように不活性ガスの噴射を停止するか、もしくは乾燥用流体の吐出に影響しない流量で窒素ガスを噴射する。
【0054】
ステップ2が終了したら、図5中のステップ3に示すように、基板に対して、酸を含む処理液を供給する。
【0055】
本例では、図8に示すように、第2の処理液供給部2bをウエハWの上方に移動させる。次いで、ウエハWの表面に対して、酸を含む処理液23をノズル2gから供給する。処理液23の具体例は、弗酸を水で希釈した希弗酸(DHF)である。
【0056】
ステップ3が終了したら、図5中のステップ4に示すように、基板に対してリンス液24をノズル2gから供給する(図9)。
【0057】
ステップ4が終了したら、図5中のステップ5に示すように、基板に対して乾燥溶媒を供給し、基板を乾燥させる。乾燥溶媒を供給するときには、乾燥溶媒の吐出に影響を与えないようにノズル2fの外側配管9aからの不活性ガスの噴射を停止する。もしくは乾燥溶媒の吐出に影響しない流量で外側配管9aから不活性ガスを噴射する。
【0058】
具体的には、図10に示すように、ウエハWの表面に対して、乾燥溶媒25をノズル2fの内側配管9bから供給する。乾燥溶媒25の具体例はイソプロパノール(IPA)である。IPAを内側配管9bから吐出する時には、外側配管9aからの不活性ガス、本例では窒素ガスの噴射を停止するか、もしくはIPAの吐出に影響しない流量で外側配管窒素ガスを噴射する。
【0059】
さらに、乾燥溶媒25を基板に供給した後、又は供給しながら、ウエハWの表面に対して、乾燥溶媒25の乾燥を促進させる気体26をノズル2hから噴射し、第2のスキャンアーム2iを、ウエハWの中心からウエハWの外周に向かってスキャンする。これにより、ウエハWの表面を乾燥させる。乾燥を促進させる気体26の一例は窒素ガスである。
【0060】
このような基板処理方法によれば、例えば、アルカリを含む処理液21を用いた処理が行われた場合において、ノズル2fの乾燥用流体吐出口、本例では乾燥溶媒吐出口の周囲を不活性雰囲気とすることで、乾燥用流体の汚染や変質を抑制できる。よって、乾燥溶媒吐出口の周囲を不活性雰囲気としない場合に比較して乾燥溶媒の汚染量や変質量を減らすことができる。
【0061】
さらに、上記基板処理方法によれば、乾燥用流体の消費量も抑制することができる。
【0062】
以上、この発明を一実施形態により説明したが、この発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。また、この発明の実施形態は、上記実施形態が唯一の実施形態でもない。
【0063】
例えば、上記実施形態では、ウエハの表裏面洗浄を行う洗浄処理装置を例にとって示したが、本発明はこれに限らず、表面のみまたは裏面のみの洗浄処理を行う洗浄処理装置であってもよく、また、洗浄処理に限らず、他の液処理であっても構わない。
【0064】
さらに、上記実施形態では被処理基板として半導体ウエハを用いた場合について示したが、液晶表示装置(LCD)用のガラス基板に代表されるフラットパネルディスプレイ(FPD)用の基板等、他の基板に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の一例を概略的に示す断面図
【図2】図2Aは汚染抑制機構8の一例を示すブロック図、図2Bは図2A中の2B−2B線に沿う断面図
【図3】図3Aは乾燥用流体を吐出しないときの一例を示す断面図、図3Bは乾燥用流体を吐出するときの一例を示す断面図
【図4】図4A及び図4Bはそれぞれ乾燥用流体吐出ノズルの先端部分の例を示す図
【図5】一実施形態に係る基板処理装置を用いた基板処理方法の一例を示す流れ図
【図6】主要な工程における基板処理装置の状態を概略的に示した断面図
【図7】主要な工程における基板処理装置の状態を概略的に示した断面図
【図8】主要な工程における基板処理装置の状態を概略的に示した断面図
【図9】主要な工程における基板処理装置の状態を概略的に示した断面図
【図10】主要な工程における基板処理装置の状態を概略的に示した断面図
【符号の説明】
【0066】
1…基板保持部、2…処理液供給機構、2a…第1処理液供給部、2b…第2処理液供給部、2c…ノズル(アルカリ)、2f…ノズル(乾燥用流体)、2g…ノズル(酸)、2h…ノズル(気体)、2i…ノズル(気体)、2k…バルブ、2m…バルブ、3…ドレインカップ、4…外カップ、6…ケーシング、7…制御ユニット、8…汚染抑制機構、8a…不活性ガス供給機構、8b…バルブ制御装置、9a…外側配管、9b…内側配管、9c…内側配管の最下面(乾燥用流体吐出口)、9d…外側配管の最下面(不活性ガス噴射口)、9e…外側配管によって区切られた空間、W…基板(ウエハ)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持部と、
前記基板保持部に保持された基板に対してアルカリを含む処理液を供給する第1の処理液供給部と、前記基板保持部に保持された基板に対して乾燥用流体を供給する第2の処理液供給部とを備える処理液供給機構と、を具備し、
前記第2の処理液供給部の乾燥用流体吐出ノズルが、不活性ガスを噴射する外側配管と、この外側配管内に設けられ、前記乾燥用流体を吐出する内側配管との多重構造を有し、
前記乾燥用流体を吐出しないとき、前記外側配管から不活性ガスを噴射して前記内側配管を外気から遮断するように前記第2の処理液供給部を制御する汚染抑制機構を備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2の処理液供給部から前記乾燥用流体を吐出するとき、
前記汚染抑制機構が前記不活性ガスの噴射を弱める、又は前記不活性ガスの噴射を止めることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記乾燥用流体が、イソプロパノール(IPA)及びハイドロフルオロエーテル(HFE)のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記アルカリを含む処理液が、アンモニアを含むことを特徴とする請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記内側配管の最下面が前記外側配管の内部に位置することを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記内側配管の最下面が前記外側配管の最下面と同一レベルの位置にある、又は前記内側配管の最下面が前記外側配管の最下面よりも突出していることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1の処理液供給部が上下動可能、かつ、前記基板保持部上とこの基板保持部上から離れた待機位置との間で回動可能な第1のスキャンアームに取り付けられ、
前記第2の処理液供給部が前記第1のスキャンアームから独立して上下動可能、かつ、前記基板保持部と待機位置との間で回動可能な第2のスキャンアームに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記第2の処理液供給部が、前記基板保持部に保持された基板に対して酸を含む処理液を供給する処理液吐出ノズルをさらに備えていることを特徴とする請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部に保持された基板に対してアルカリを含む処理液を供給する第1の処理液供給部と、前記基板保持部に保持された基板に対して乾燥用流体を供給する第2の処理液供給部とを備える処理液供給機構と、を具備する基板処理装置の基板処理方法であって、
前記第2の処理液供給部の乾燥用流体吐出ノズルが、不活性ガスを噴射する外側配管と、この外側配管内に設けられ、前記乾燥用流体を吐出する内側配管との多重構造を有し、
前記乾燥用流体を吐出しないとき、前記外側配管から不活性ガスを噴射して前記内側配管を外気から遮断することを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
コンピュータ上で動作し、基板処理装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、請求項9に記載の基板処理方法が行われるように、コンピュータに基板処理装置を制御させることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−141279(P2009−141279A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318880(P2007−318880)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】