説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】処理液の消費量を低減しつつ、基板の主面全域に処理液を供給することができる基板処理装置および基板処理方法を提供すること。
【解決手段】基板処理装置は、基板Wの上面および下面に非接触で当該基板Wを水平に保持するスピンチャックと、スピンチャックに保持された基板Wの上面および下面に処理液を供給する処理液供給機構と、スピンチャックに保持された基板Wを取り囲む環状部材4とを備えている。環状部材4は、基板Wの上面周縁部を取り囲む上側環状親水面29と、基板Wの下面周縁部を取り囲む下側環状親水面30とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置などの製造工程では、半導体ウエハや液晶表示装置用ガラス基板などの基板に対して処理液を用いた処理が行われる。基板を1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置は、たとえば、基板を水平に保持して当該基板の中心を通る鉛直軸線まわりに当該基板を回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板の上面中央部に向けて処理液を吐出するノズルと、スピンチャックおよびノズルを収容する処理室とを備えている。スピンチャックによって基板を回転させながら、ノズルから処理液を吐出させることにより、基板の上面に処理液が供給され、基板の上面が処理液によって処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−27931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の基板処理装置において、スピンチャックによって基板を回転させながら、ノズルから処理液を吐出させると、ノズルから吐出された処理液は、基板の上面中央部に供給される。これにより、ほぼ円形の処理液の液膜が基板の上面中央部に形成される。そして、この処理液の液膜は、基板の回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。さらに、この処理液の液膜は、後続の処理液が基板の上面に供給されることにより外方に広がっていく。そのため、処理液の液膜は、ほぼ円形のまま基板の上面に沿って広がっていく。
【0005】
しかしながら、基板の上面が疎水性である場合、処理液の液膜は、基板の上面周縁部までほぼ円形のまま広がらずに、基板の上面周縁部に達する前に放射状に広がる場合がある。すなわち、基板の上面が疎水性である場合、ほぼ円形の処理液の液膜の外縁から径方向に延びる複数の処理液の筋が形成されることがある。この場合、基板の上面全域に処理液が供給されないので、基板の上面をむらなく処理することができない。さらに、処理室内に浮遊する処理液のミストやパーティクルが、基板の上面において処理液によって覆われていない領域に付着して、基板が汚染されるおそれがある。
【0006】
たとえば、高流量でノズルから処理液を吐出させるとともに、基板を高速で回転させれば、基板の上面が疎水性であっても、基板の上面の一部が露出することを抑制または防止できる。しかしながら、高流量でノズルから処理液を吐出させると、処理液の消費量が増加するので、ランニングコストが増加してしまう。また、基板を高速で回転させると、基板から飛散する処理液の速度が増加するので、飛散した処理液が基板の周囲に設けられた部材に衝突したときの衝撃が増加する。そのため、処理液のミストの発生量が増加し、基板や処理室内の部材に処理液のミストが付着するおそれがある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、処理液の消費量を低減しつつ、基板の主面全域に処理液を供給することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)の主面に非接触で当該基板を水平に保持する基板保持手段(2)と、前記基板保持手段に保持された基板の主面に処理液を供給する処理液供給手段(3)と、前記基板保持手段に保持された基板の主面に保持された処理液の液膜に接する環状の親水面(29、30、346、Wa,Wb)を前記基板の主面周縁部に沿って配置する親水面配置手段(4、204、304、447)とを含む、基板処理装置(1、201、301、401)である。基板の主面は、基板の上面であってもよいし、基板の下面であってもよい。
【0009】
親水性の固体表面に液体を供給した場合、液体が固体表面に沿って広がり、薄い液膜が形成される。一方、疎水性の固体表面に液体を供給した場合、液体が固体表面に沿って広がらずに、液滴が形成される。すなわち、親水性の固体表面は、濡れやすく、疎水性の固体表面は、濡れにくい。しかし、本願発明者は、固体表面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、親水性の固体表面に液体を供給した場合と同様に、液体を固体表面に沿って広げられることを発見した。
【0010】
具体的には、本願発明者は、固体表面において液体によって覆われている領域(被覆領域)と液体によって覆われていない領域(非被覆領域)の境界(液体表面と固体表面とが交わるところ)が、液体の広がりに大きく影響することを発見した。すなわち、図11に示すように、固体表面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、被覆領域と非被覆領域との境界が、親水性の領域に達していれば、固体表面に供給された液体は、親水性の固体表面に液体を供給した場合と同様に、固体表面に沿って広がり、薄い液膜を形成する。したがって、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域に到達させれば、少ない液量で広い範囲を濡らすことができる。
【0011】
この発明によれば、基板保持手段によって、基板の主面に非接触で当該基板を水平に保持することができる。また、処理液供給手段によって、基板保持手段に保持された基板の主面に処理液を供給することにより、基板の主面を覆う処理液の液膜を形成することができる。さらに、親水面配置手段は、基板の主面に保持された処理液の液膜に接する環状の親水面を基板の主面周縁部に沿って配置することができる。これにより、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域、すなわち、親水面に位置させることができる。そのため、基板の主面が疎水性である場合や、基板の主面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板の主面全域を処理液によって覆うことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記親水面配置手段は、前記基板保持手段に保持された基板の主面を含む水平面に沿って配置されており、前記基板の主面周縁部を取り囲む環状親水面(29、30)を含む、請求項1記載の基板処理装置である。
この発明によれば、処理液供給手段によって基板保持手段に保持された基板の主面に処理液を供給することにより、基板の主面に保持された処理液の液膜の外縁を環状親水面に到達させることができる。すなわち、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域である環状親水面に位置させることができる。したがって、基板の主面が疎水性である場合や、基板の主面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板の主面全域を処理液によって覆うことができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記基板保持手段に保持された基板の主面を含む水平面に沿って配置されており、前記環状親水面を取り囲む環状疎水面(243、244)をさらに含む、請求項2記載の基板処理装置である。
この発明によれば、環状親水面が環状疎水面によって取り囲まれている。環状疎水面は、疎水性である。したがって、処理液が環状親水面から環状疎水面に移動するときに、当該処理液に抵抗が加わり、環状疎水面の内側に処理液が留められる。これにより、環状疎水面の内側に処理液を溜めて、基板の主面全域が処理液によって覆われた状態を維持できる。これにより、処理液の消費量を一層低減できる。
【0014】
請求項4記載の発明は、前記基板保持手段は、基板の上面および下面に非接触で当該基板を水平に保持するように構成されており、前記処理液供給手段は、前記基板保持手段に保持された基板の上面および下面に処理液を供給するように構成されており、前記環状親水面は、前記基板保持手段に保持された基板の上面を含む水平面に沿って配置されており、前記基板の上面周縁部を取り囲む上側環状親水面(29)と、前記基板保持手段に保持された基板の下面を含む水平面に沿って配置されており、前記基板の下面周縁部を取り囲む下側環状親水面(30)とを含む、請求項2または3記載の基板処理装置である。
【0015】
この発明によれば、基板保持手段によって、基板の上面および下面に非接触で当該基板を水平に保持できる。したがって、処理液供給手段から基板保持手段に保持された基板の上面および下面に処理液を供給することにより、基板の上面全域を覆う処理液の液膜と、基板の下面全域を覆う処理液の液膜とを形成できる。さらに、基板の上面に保持された処理液の液膜の外縁を上側環状親水面に到達させ、基板の下面に保持された処理液の液膜の外縁を下側環状親水面に到達させることにより、基板の上面および下面が疎水性である場合や、基板の上面および下面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板の上面全域および下面全域を処理液によって覆うことができる。これにより、処理液の消費量を低減しつつ、基板の上面および下面を処理できる。また、基板の上面および下面を同時に処理できるので、処理時間を短縮できる。
【0016】
請求項5記載の発明は、前記親水面配置手段は、前記基板保持手段に保持された基板の主面周縁部に対向する環状の対向親水面(346)を含む、請求項1記載の基板処理装置である。
この発明によれば、基板保持手段に保持された基板の主面周縁部に対向する環状の対向親水面が設けられているので、処理液供給手段によって基板保持手段に保持された基板の主面に処理液を供給することにより、基板の主面周縁部と対向親水面との間に処理液を進入させることができる。これにより、基板の主面に保持された処理液の液膜の外縁を対向親水面に到達させることができる。すなわち、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域である対向親水面に位置させることができる。したがって、基板の主面が疎水性である場合や、基板の主面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板の主面全域を処理液によって覆うことができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、前記対向親水面を取り囲む環状疎水面(343)をさらに含む、請求項5記載の基板処理装置である。
この発明によれば、対向親水面が、環状疎水面によって取り囲まれているので、処理液が対向親水面より外側に移動するときに、環状疎水面からの抵抗が処理液に加わり、環状疎水面の内側に処理液が留められる。したがって、高流量で基板に処理液を供給しなくても、基板の主面全域が処理液によって覆われている状態を確実に維持できる。そのため、処理液の消費量を低減しつつ、基板の主面全域に処理液を供給できる。
【0018】
請求項7記載の発明は、前記親水面配置手段は、基板の主面を処理液から保護する保護液を、前記基板保持手段に保持された基板の主面周縁部に供給する保護液供給手段(447)を含む、請求項1記載の基板処理装置である。
この発明によれば、保護液供給手段によって、基板保持手段に保持された基板の主面周縁部に保護液を供給することにより、基板の主面周縁部を処理液から保護できる。具体的には、たとえば、基板の主面が親水性であり、処理液供給手段から供給される処理液が、基板の主面を疎水性に変化させる処理液であっても、基板の主面周縁部を保護液によって保護することにより、基板の主面周縁部を親水性に維持できる。これにより、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域である基板の主面周縁部に位置させることができる。したがって、基板の主面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板の主面全域を処理液によって覆うことができる。
【0019】
請求項8記載の発明は、前記基板保持手段は、基板の上面および下面に非接触で当該基板を水平に保持するように構成されており、前記処理液供給手段は、前記基板保持手段に保持された基板の上面および下面に処理液を供給するように構成されており、前記保護液供給手段は、前記基板保持手段に保持された基板の上面周縁部に前記保護液を供給する上面保護液供給手段(448)と、前記基板保持手段に保持された基板の下面周縁部に前記保護液を供給する下面保護液供給手段(452、652)とを含む、請求項7記載の基板処理装置である。
【0020】
この発明によれば、上面保護液供給手段によって、基板保持手段に保持された基板の上面周縁部に保護液を供給することにより、基板の上面周縁部を処理液から保護できる。同様に、下面保護液供給手段によって、基板保持手段に保持された基板の下面周縁部に保護液を供給することにより、基板の下面周縁部を処理液から保護できる。これにより、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域である基板の上面周縁部および下面周縁部に位置させることができる。したがって、基板の上面および下面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板の上面全域および下面全域を処理液によって覆うことができる。これにより、処理液の消費量を低減しつつ、基板の上面および下面を処理できる。また、基板の上面および下面を同時に処理できるので、処理時間を短縮できる。
【0021】
請求項9記載の発明は、基板(W)の主面に非接触で水平に保持された当該基板の主面に処理液を供給する処理液供給工程と、前記処理液供給工程と並行して、前記基板の主面に保持された処理液の液膜に接する環状の親水面(29、30、346、Wa,Wb)を前記基板の主面周縁部に沿って配置する親水面配置工程とを含む、基板処理方法である。この発明によれば、請求項1の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0022】
請求項10記載の発明は、前記処理液供給工程は、基板の上面および下面に非接触で水平に保持された当該基板の上面および下面に処理液を同時に供給する工程を含み、前記親水面配置工程は、前記処理液供給工程と並行して、前記基板の上面に保持された処理液の液膜に接する環状の上側親水面(29、Wa)を前記基板の上面周縁部に沿って配置する上側親水面配置工程と、前記処理液供給工程と並行して、前記基板の下面に保持された処理液の液膜に接する環状の下側親水面(30、Wb)を前記基板の下面周縁部に沿って配置する下側親水面配置工程とを含む、請求項9記載の基板処理方法である。
【0023】
この発明によれば、基板の上面を覆う処理液の液膜と、基板の下面を覆う処理液の液膜とを同時に形成できる。さらに、基板の上面に保持された処理液の液膜に接する環状の上側親水面を当該基板の上面周縁部に沿って配置するとともに、基板の下面に保持された処理液の液膜に接する環状の下側親水面を当該基板の下面周縁部に沿って配置することができる。すなわち、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域に位置させることができる。したがって、基板の上面および下面が疎水性である場合や、基板の上面および下面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板の上面全域および下面全域を処理液によって覆うことができる。これにより、処理液の消費量を低減しつつ、基板の上面および下面を処理できる。また、基板の上面および下面を同時に処理できるので、処理時間を短縮できる。
【0024】
請求項11記載の発明は、基板(W)の主面に非接触で当該基板を水平に保持する基板保持手段(2)と、前記基板保持手段に保持された基板の主面に処理液を供給する処理液供給手段(3)と、前記基板保持手段に保持された基板に交差する回転軸線(L1)まわりに前記基板を回転させる基板回転手段(2)と、前記基板保持手段に保持された基板とは高さが異なる前記基板の主面側の水平面に沿って配置されており、前記基板の主面周縁部に沿って配置された環状の疎水面(543)を有する環状部材(504)とを含む、基板処理装置(501)である。
【0025】
この発明によれば、処理液供給手段によって、基板保持手段に保持されている基板の主面に処理液を供給できる。さらに、基板回転手段によって、基板に交差する回転軸線まわりに基板を回転させることができる。処理液供給手段から基板への処理液の供給によって、基板の主面全域を覆う処理液の液膜を形成できる。さらに、基板回転手段による基板の回転によって、基板の主面に保持されている処理液を、基板の主面周縁部から排出させることができる。疎水面が、基板とは異なる高さで基板の主面周縁部に沿って配置されているので、基板の主面周縁部から排出される処理液は、疎水面に接触し、疎水面からの抵抗を受ける。したがって、基板からの処理液の排出を規制し、疎水面の内側に処理液を留めることができる。そのため、高流量で基板に処理液を供給しなくても、基板の主面全域が処理液の液膜によって覆われている状態を維持できる。これにより、処理液の消費量を低減しつつ、基板の主面全域に処理液を供給できる。
【0026】
請求項12記載の発明は、前記疎水面の外縁は、前記基板保持手段に保持された基板の外端より外側に配置されている、請求項11に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、疎水面の外縁が、基板の外端より外側に配置されているので、基板から排出される処理液の飛散方向が、疎水面によって制限される。具体的には、たとえば疎水面が基板より上方に配置されている場合には、基板の上面周縁部から斜め上への処理液の飛散が抑制される。同様に、疎水面が基板より下方に配置されている場合には、基板の下面周縁部から斜め下への処理液の飛散が抑制される。これにより、処理液の飛散範囲を狭めることができる。したがって、基板の周囲に配置されている部材が処理液のミストによって汚染されることを抑制または防止できる。そのため、この部材に付着しているパーティクルが基板に移動して、基板が汚染されることを抑制または防止できる。
【0027】
請求項13記載の発明は、前記疎水面の内縁は、前記基板保持手段に保持された基板の外端より内側に配置されている、請求項11または12に記載の基板処理装置である。
この発明によれば、疎水面の内縁が、基板の外端より内側に配置されているので、疎水面の内縁は、基板の主面周縁部に対向している。基板の主面は、通常、基板の周端面よりも寸法精度が高い。したがって、疎水面の内縁が、基板の外端より外側に配置されており、基板の周端面に対向している場合よりも、疎水面と基板との間のクリアランスのばらつきが小さい。すなわち、疎水面と基板との間のクリアランスの大きさが、全周に亘って等しい。したがって、疎水面と基板との間を通って基板から排出される処理液の流量が、各位置で等しい。そのため、基板からの処理液の排出量の偏りにより、処理液の液膜がその周縁部から壊れる(ブレークする)ことを抑制または防止できる。これにより、高流量で基板に処理液を供給しなくても、基板の主面全域が処理液の液膜によって覆われている状態を維持できる。
【0028】
請求項14記載の発明は、基板の主面に非接触で水平に保持された当該基板の主面に処理液を供給する処理液供給工程と、前記処理液供給工程と並行して、前記基板に交差する回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転工程と、前記処理液供給工程と並行して、前記基板とは高さが異なる前記基板の主面側の水平面に沿って配置されており、前記基板の主面周縁部に沿って配置された環状の疎水面を前記基板の主面に保持された処理液の液膜に接触させることにより、前記基板からの処理液の排出を規制する処理液排出規制工程とを含む、基板処理方法である。この発明によれば、請求項11の発明に関して述べた効果と同様な効果を奏することができる。
【0029】
なお、この項において、括弧内の英数字は、後述の実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2におけるIII−III線に沿う部分断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る挟持部材およびこれに関連する構成の側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る挟持部材およびこれに関連する構成の側面図である。
【図6】本発明の第1実施形態に係る挟持部材およびこれに関連する構成の平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
【図9】本発明の第1実施形態に係る基板処理装置によって基板を処理するときの第1処理例について説明するための工程図である。
【図10】第1処理例における基板への処理液の供給状態について説明するための模式図である。
【図11】固体表面に供給された液体の広がりについて説明するための模式図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態における基板への処理液の供給状態について説明するための模式図である。
【図14】本発明の第3実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す側面図である。
【図15A】本発明の第3実施形態における基板への処理液の供給状態について説明するための模式図である。
【図15B】本発明の第3実施形態に係る環状部材の第1変形例について説明するための模式図である。
【図15C】本発明の第3実施形態に係る環状部材の第2変形例について説明するための模式的な側面図である。
【図15D】本発明の第3実施形態に係る環状部材の第3変形例について説明するための模式的な側面図である。
【図15E】本発明の第3実施形態に係る環状部材の第4変形例について説明するための模式的な側面図である。
【図16】本発明の第4実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す側面図である。
【図17】本発明の第4実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す平面図である。
【図18】本発明の第4実施形態に係る基板処理装置によって基板を処理するときの第4処理例について説明するための工程図である。
【図19】第4処理例における基板への処理液の供給状態について説明するための模式図である。
【図20】本発明の第5実施形態に係る基板処理装置の概略構成を示す側面図である。
【図21】本発明の第5実施形態における基板への処理液の供給状態について説明するための模式図である。
【図22A】本発明の第5実施形態に係る環状部材移動機構の第1構成例について説明するための模式的な側面図である。
【図22B】本発明の第5実施形態に係る環状部材移動機構の第2構成例について説明するための模式的な側面図である。
【図22C】本発明の第5実施形態に係る環状部材移動機構の第3構成例について説明するための模式的な側面図である。
【図23】本発明の第6実施形態に係る保護液供給機構の概略構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。以下の説明において、「親水性」は、水との接触角が基板と水との接触角よりも小さいことを意味し、「疎水性」は、水との接触角が基板と水との接触角よりも大きいことを意味する。シリコン酸化膜が除去されたシリコン基板(水素終端化されたシリコン基板)と水との接触角は、70度程度である。したがって、基板が、シリコン酸化膜が除去されたシリコン基板である場合には、「親水性」は、水の接触角が70度より小さいことを意味し、「疎水性」は、水の接触角が70度より大きいことを意味する。
【0032】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す側面図である。また、図2は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す平面図である。図3は、図2におけるIII−III線に沿う部分断面図である。
この基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円形の基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置である。基板処理装置1は、基板Wを水平に保持して回転させるスピンチャック2(基板保持手段)と、スピンチャック2に保持された基板Wに処理液を供給する処理液供給機構3(処理液供給手段)と、スピンチャック2に保持された基板Wを取り囲む環状部材4(親水面配置手段)とを含む。スピンチャック2および環状部材4は、図示しない隔壁によって区画された処理室5に配置されている。
【0033】
スピンチャック2は、鉛直に延びる筒状の回転軸6と、回転軸6の上端に水平に取り付けられた円盤状のスピンベース7と、このスピンベース7上に配置された複数個(3個以上)の挟持部材8と、回転軸6に連結されたスピンモータ9とを含む。複数個の挟持部材8は、スピンベース7の上面周縁部において基板Wの外周形状に対応する円周上で適当な間隔を空けて配置されている。スピンチャック2は、各挟持部材8を基板Wの周端面に当接させることにより、基板Wを水平方向に挟むことができる。これにより、基板Wが、スピンベース7の上方に設けられた挟持位置(図1および図3に示す位置)で水平に保持される。後述するように、スピンチャック2は、スピンベース7より上方の支持位置と、支持位置より上方の挟持位置との2つの位置で基板Wを水平に保持することができる。基板Wが挟持位置で保持された状態で、スピンモータ9の駆動力が回転軸6に入力されることにより、基板Wの中心を通る鉛直な回転軸線L1まわりに基板Wが回転する。
【0034】
また、処理液供給機構3は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面に処理液を供給する上面処理液供給機構10を含む。上面処理液供給機構10は、第1薬液ノズル11と、第1薬液供給配管12と、第1薬液バルブ13とを含む。さらに、上面処理液供給機構10は、第1リンス液ノズル14と、第1リンス液供給配管15と、第1リンス液バルブ16とを含む。第1薬液供給配管12は、第1薬液ノズル11に接続されている。第1薬液バルブ13は、第1薬液供給配管12に介装されている。また、第1リンス液供給配管15は、第1リンス液ノズル14に接続されている。第1リンス液バルブ16は、第1リンス液供給配管15に介装されている。
【0035】
第1薬液バルブ13が開かれると、第1薬液供給配管12から第1薬液ノズル11に薬液が供給される。また、第1薬液バルブ13が閉じられると、第1薬液供給配管12から第1薬液ノズル11への薬液の供給が停止される。第1薬液ノズル11から吐出された薬液は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に供給される。同様に、第1リンス液バルブ16が開かれると、第1リンス液供給配管15から第1リンス液ノズル14にリンス液が供給される。また、第1リンス液バルブ16が閉じられると、第1リンス液供給配管15から第1リンス液ノズル14へのリンス液の供給が停止される。第1リンス液ノズル14から吐出されたリンス液は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面中央部に供給される。
【0036】
また、処理液供給機構3は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面に処理液を供給する下面処理液供給機構17を含む。下面処理液供給機構17は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面に向けて処理液を吐出する下面ノズル18と、回転軸6内で上下に延びる第1処理液供給配管19と、第1処理液供給配管19に連結された第2処理液供給配管20とを含む。さらに、下面処理液供給機構17は、第2処理液供給配管20に連結された第2薬液供給配管21および第2リンス液供給配管22と、第2薬液供給配管21に介装された第2薬液バルブ23と、第2リンス液供給配管22に介装された第2リンス液バルブ24とを含む。下面ノズル18は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面に対向する対向部25を含む。対向部25は、スピンベース7より上方に配置されている。対向部25は、たとえば、水平面に沿って配置された円板状である。対向部25は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面中央部に向けて処理液を吐出する処理液吐出口26を含む。
【0037】
第2薬液バルブ23が開かれると、第2処理液供給配管20を介して、第1処理液供給配管19から下面ノズル18に薬液が供給される。また、第2薬液バルブ23が閉じられると、下面ノズル18への薬液の供給が停止される。下面ノズル18に供給された薬液は、処理液吐出口26から上方に吐出される。これにより、スピンチャック2に保持された基板Wの下面中央部に薬液が供給される。同様に、第2リンス液バルブ24が開かれると、第2処理液供給配管20を介して、第1処理液供給配管19から下面ノズル18にリンス液が供給される。また、第2リンス液バルブ24が閉じられると、下面ノズル18へのリンス液の供給が停止される。下面ノズル18に供給されたリンス液は、処理液吐出口26から上方に吐出され、スピンチャック2に保持された基板Wの下面中央部に供給される。
【0038】
処理液供給機構3から基板Wに供給される薬液としては、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、BHF(Buffered Hydrogen Fluoride:バッファードフッ酸)、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、有機アルカリ(たとえば、TMAH:テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドなど)、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液を例示することができる。また、処理液供給機構3から基板Wに供給されるリンス液としては、純水(脱イオン水)、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水や、希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水などを例示することができる。
【0039】
また、環状部材4は、スピンベース7の上方に配置されている。環状部材4は、挟持位置(図1および図3に示す位置)で保持された基板Wを径方向に間隔を空けて取り囲んでいる。環状部材4は、回転軸線L1上に中心を有する円に沿って配置されている。環状部材4は、円筒状の内周面および外周面を有する平面視円形のリングを周方向に等間隔で複数個に分割した形状を有している。すなわち、環状部材4は、円弧状の複数の分割体27を含む。複数の分割体27は、環状部材4の周方向に等間隔を空けて配置されている。各分割体27は、スピンベース7に連結された支柱28によって支持されている。各分割体27は、スピンベース7と共に回転軸線L1まわりに回転する。分割体27の内側の面は、挟持位置で保持された基板Wの周端面に径方向に間隔を空けて対向している。また、複数個の挟持部材8は、平面視において、周方向に対向する分割体27の端面の間に挟持部材8の一部(後述の挟持部32)が位置するように配置されている。
【0040】
図3に示すように、環状部材4は、上側環状親水面29(親水面、環状親水面、上側親水面)と、下側環状親水面30(親水面、環状親水面、下側親水面)とを含む。上側環状親水面29は、複数の分割体27の上面であり、下側環状親水面30は、複数の分割体27の下面である。上側環状親水面29は、挟持位置で保持された基板Wの上面を含む水平面に沿って配置されており、当該基板Wの上面周縁部を取り囲んでいる。同様に、下側環状親水面30は、挟持位置で保持された基板Wの下面を含む水平面に沿って配置されており、当該基板Wの下面周縁部を取り囲んでいる。上側環状親水面29は、挟持位置で保持された基板Wの上面と同じ高さに配置されていてもよいし、当該基板Wの上面より上方または下方に配置されていてもよい。同様に、下側環状親水面30は、挟持位置で保持された基板Wの下面と同じ高さに配置されていてもよいし、当該基板Wの下面より上方または下方に配置されていてもよい。第1実施形態では、上側環状親水面29は、挟持位置で保持された基板Wの上面と同じ高さに配置されており、下側環状親水面30は、当該基板Wの下面と同じ高さに配置されている。
【0041】
上側環状親水面29および下側環状親水面30に対する水の接触角は、たとえば、70度未満である。上側環状親水面29および下側環状親水面30の親水性は、水素終端化されたシリコン基板の親水性よりも高いことが最低条件であり、水の接触角が10度程度のシリコン酸化膜と同等程度の親水性ならなお好ましい。
図4および図5は、本発明の第1実施形態に係る挟持部材8およびこれに関連する構成の側面図である。また、図6は、本発明の第1実施形態に係る挟持部材8およびこれに関連する構成の平面図である。図4では、基板Wが支持位置で水平に保持されている状態が示されており、図5では、基板Wが挟持位置で水平に保持されている状態が示されている。
【0042】
スピンチャック2は、支持位置と挟持位置との2つの位置で基板Wを水平に保持することができる。すなわち、挟持部材8は、支持位置で基板Wを水平に支持する支持部31と、挟持位置で基板Wを水平に挟持する挟持部32と、支持部31および挟持部32を支持する台座33とを含む。台座33は、スピンベース7上に配置されている。支持部31および挟持部32は、台座33上に配置されている。挟持部32は、水平方向に開いたV字状の保持溝34を有している。保持溝34は、内方(基板Wの回転軸線L1側)に向けられている。挟持部32は、台座33に対して鉛直軸線L2まわりに回動可能である。支持部31は、鉛直軸線L2より内方に配置されている。また、分割体27は、台座33より上方に配置されている。台座33と分割体27とは、平面視において重なり合っている。
【0043】
スピンチャック2は、台座33に対して挟持部32を鉛直軸線L2まわりに回動させる挟持部回動機構35を含む。挟持部回動機構35は、たとえば、スピンベース7内に収容されている。挟持部回動機構35は、挟持部32が基板Wの周端面に接触する接触位置(図5に示す位置)と、挟持部32が基板Wの周端面から離れた退避位置(図4に示す位置)との間で挟持部32を鉛直軸線L2まわりに回動させる。さらに、挟持部回動機構35は、複数の挟持部32を同期させて鉛直軸線L2まわりに回動させる。図6に示すように、複数の分割体27は、挟持部32が接触位置と退避位置との間で回動する際に通過する範囲に重ならないように配置されている。これにより、挟持部32の回動に伴って、挟持部32が分割体27に衝突することが防止されている。
【0044】
スピンチャック2に搬入される基板Wは、複数の挟持部32が退避位置に位置する状態で複数の支持部31に載置される。基板Wが複数の支持部31に載置されることにより、各支持部31が基板Wの下面周縁部に点接触し、当該基板Wが支持位置で水平に保持される。また、基板Wが支持位置で水平に保持された状態で、挟持部回動機構35が複数の挟持部32を退避位置から接触位置に回動させることにより、基板Wの周縁部が保持溝34内に入り込むとともに、保持溝34の傾斜によって当該基板Wが上方に持ち上げられる。これにより、支持部31が基板Wの下面から離れ、当該基板Wが挟持位置で水平に保持される。すなわち、挟持位置では、基板Wの上面および下面に非接触で当該基板Wが水平に保持される。
【0045】
図7は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の概略構成を示す平面図である。以下では、図2および図7を参照する。図2では、可動体36が閉位置に位置し、挟持部32が接触位置に位置する状態が示されている。また、図7では、可動体36が開位置に位置し、挟持部32が退避位置に位置する状態が示されている。
複数の分割体27は、スピンベース7に対して移動可能に保持された2つの可動体36を含む。2つの可動体36は、環状部材4の周方向に隣接している。可動体36は、一端部37(周方向に関する端部)と、他端部38(周方向に関する端部)とを含む。可動体36は、他端部38を通る鉛直軸線まわりに回動可能である。スピンチャック2は、可動体36を鉛直軸線まわりに回動させる分割体回動機構39を含む。分割体回動機構39は、たとえば、スピンベース7内に収容された2つのモータ40を含む。分割体回動機構39は、閉位置(図2に示す位置)と、開位置(図7に示す位置)との間で、可動体36を鉛直軸線まわりに回動させる。閉位置は、一端部37と他端部38とが回転軸線L1上に中心を有する共通の円上に位置する位置である。また、開位置は、他端部38が一端部37より外方(基板Wの回転軸線L1から離れる方向)に位置する位置である。
【0046】
可動体36が閉位置に配置されている状態では、全ての分割体27が、共通の円上に位置している。基板Wに処理液を供給して当該基板Wを処理するときには、2つの可動体36が閉位置に配置される。一方、2つの可動体36が開位置に配置されている状態では、2つの可動体36は、基板Wを搬送する搬送ロボットのハンド41の幅より大きい間隔を空けて水平方向に対向している。ハンド41によって基板Wがスピンチャック2に搬入されるとき、およびハンド41によって基板Wがスピンチャック2から搬出されるときには、2つの可動体36が予め開位置に配置される。そして、2つの可動体36が開位置に配置された状態で、ハンド41によって支持された基板Wがスピンベース7上で昇降されることにより、支持部31とハンド41との間で基板Wの受け渡しが行われる。このとき、2つの可動体36が開位置に配置されているので、ハンド41が可動体36に衝突することが防止されている。
【0047】
図8は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
基板処理装置1は、マイクロコンピュータを含む構成の制御部42を備えている。制御部42は、スピンモータ9、挟持部回動機構35、および分割体回動機構39などの動作を制御する。また、基板処理装置1に備えられたバルブの開閉は、制御部42によって制御される。制御部42は、予め設定されたレシピ(基板Wを処理するための処理条件)に従ってスピンモータ9、挟持部回動機構35、および分割体回動機構39などや、バルブの開閉を制御する。
【0048】
図9は、本発明の第1実施形態に係る基板処理装置1によって基板Wを処理するときの第1処理例について説明するための工程図である。図10は、第1処理例における基板Wへの処理液の供給状態について説明するための模式図である。図10では、挟持位置で基板Wが水平に保持されている状態が示されている。以下では、図1、図7、図9、および図10を参照して、シリコン酸化膜によって全域が覆われた基板W(シリコン基板)からシリコン酸化膜を除去するときの処理例について説明する。
【0049】
未処理の基板Wは、搬送ロボットのハンド41によって搬送され、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック2に搬入される。具体的には、挟持部32が退避位置に位置し、可動体36が開位置に位置する状態(図7に示す状態)で、未処理の基板Wが、ハンド41によって複数の支持部31に載置される。そして、制御部42は、ハンド41を退避させた後、分割体回動機構39を制御して、可動体36を開位置から閉位置に移動させる。さらに、制御部42は、挟持部回動機構35を制御して、複数の挟持部32を退避位置から接触位置に移動させる。これにより、支持部31が基板Wの下面から離れ、基板Wの上面および下面に非接触で当該基板Wが水平に保持される。
【0050】
次に、薬液の一例であるフッ酸を基板Wの上面、下面、および周端面に同時に供給する薬液処理が行われる(ステップS101)。具体的には、制御部42は、スピンモータ9を制御して、基板Wおよび環状部材4を回転軸線L1まわりに回転させる。そして、制御部42は、第1薬液バルブ13を開いて、第1薬液ノズル11からフッ酸を吐出させる。第1薬液ノズル11から吐出されたフッ酸は、基板Wの上面中央部に供給される。これにより、ほぼ円形のフッ酸の液膜が基板Wの上面中央部に形成される。そして、このフッ酸の液膜は、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。さらに、このフッ酸の液膜は、後続のフッ酸が基板Wの上面に供給されることにより外方に広がっていく。そのため、フッ酸の液膜がほぼ円形のまま基板Wの上面周縁部まで広がり、基板Wの上面全域がフッ酸の液膜によって覆われる。これにより、基板Wの上面全域にフッ酸が供給され、基板Wの上面全域からシリコン酸化膜が除去される。
【0051】
一方、制御部42は、第1薬液ノズル11からのフッ酸の吐出と並行して、下面ノズル18からフッ酸を吐出させる。具体的には、制御部42は、基板Wおよび環状部材4を回転させながら、第2薬液バルブ23を開いて、下面ノズル18からフッ酸を吐出させる。下面ノズル18から吐出されたフッ酸は、基板Wの下面中央部に供給される。これにより、ほぼ円形のフッ酸の液膜が基板Wの下面中央部に形成される。そして、このフッ酸の液膜は、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。さらに、このフッ酸の液膜は、後続のフッ酸が基板Wの下面に供給されることにより外方に広がっていく。そのため、フッ酸の液膜がほぼ円形のまま基板Wの下面周縁部まで広がり、基板Wの下面全域がフッ酸の液膜によって覆われる。これにより、基板Wの下面全域にフッ酸が供給され、基板Wの下面全域からシリコン酸化膜が除去される。
【0052】
また、図10に示すように、基板Wの上面周縁部に達したフッ酸の一部は、基板Wの周端面と環状部材4との間に進入し、残りのフッ酸は、環状部材4の上側環状親水面29に移動する。同様に、基板Wの下面周縁部に達したフッ酸の一部は、基板Wの周端面と環状部材4との間に進入し、残りのフッ酸は、環状部材4の下側環状親水面30に移動する。基板Wの周端面には、基板Wの周端面と環状部材4との間に進入したフッ酸が供給される。このようにして、基板Wの上面、下面、および周端面にフッ酸が同時に供給され、基板Wの上面、下面、および周端面からシリコン酸化膜が除去される(薬液処理)。そして、薬液処理が所定時間にわたって行われると、第1薬液バルブ13および第2薬液バルブ23が閉じられて、第1薬液ノズル11および下面ノズル18からのフッ酸の吐出が停止される。
【0053】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面、下面、および周端面に同時に供給するリンス処理が行われる(ステップS102)。具体的には、制御部42は、基板Wの上面および下面にフッ酸の液膜が保持された状態で、基板Wおよび環状部材4を回転させながら、第1リンス液バルブ16を開いて、第1リンス液ノズル14から純水を吐出させる。第1リンス液ノズル14から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に供給される。基板Wの上面中央部に保持されたフッ酸は、第1リンス液ノズル14から吐出された純水によって外方に押し流される。また、基板Wの上面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。したがって、基板Wの上面に保持されたフッ酸は、外方に広がる純水よって外方に押し流されていく。これにより、基板Wの上面からフッ酸が洗い流され、基板Wの上面全域を覆うフッ酸の液膜が純水の液膜に置換される。
【0054】
一方、制御部42は、第1リンス液ノズル14からの純水の吐出と並行して、下面ノズル18から純水を吐出させる。具体的には、制御部42は、基板Wの上面および下面にフッ酸の液膜が保持された状態で、基板Wおよび環状部材4を回転させながら、第2リンス液バルブ24を開いて、下面ノズル18から純水を吐出させる。下面ノズル18から吐出された純水は、基板Wの下面中央部に供給される。基板Wの下面中央部に保持されたフッ酸は、下面ノズル18から吐出された純水によって外方に押し流される。また、基板Wの下面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。したがって、基板Wの下面に保持されたフッ酸は、外方に広がる純水よって外方に押し流されていく。これにより、基板Wの下面からフッ酸が洗い流され、基板Wの下面全域を覆うフッ酸の液膜が純水の液膜に置換される。
【0055】
また、図10に示すように、基板Wの上面周縁部に達した純水の一部は、基板Wの周端面と環状部材4との間に進入し、残りの純水は、環状部材4の上側環状親水面29に移動する。同様に、基板Wの下面周縁部に達した純水の一部は、基板Wの周端面と環状部材4との間に進入し、残りの純水は、環状部材4の下側環状親水面30に移動する。基板Wの周端面には、基板Wの周端面と環状部材4との間に進入した純水が供給される。このようにして、基板Wの上面、下面、および周端面に純水が同時に供給され、基板Wの上面、下面、および周端面に付着しているフッ酸が洗い流される(リンス処理)。そして、リンス処理が所定時間にわたって行われると、第1リンス液バルブ16および第2リンス液バルブ24が閉じられて、第1リンス液ノズル14および下面ノズル18からの純水の吐出が停止される。
【0056】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS103)。具体的には、制御部42は、スピンモータ9を制御して、基板Wおよび環状部材4を高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、基板Wおよび環状部材4に付着している純水に大きな遠心力が作用し、当該純水が基板Wおよび環状部材4から周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する(乾燥処理)。そして、乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、制御部42は、スピンモータ9を制御して、基板Wおよび環状部材4の回転を停止させる。さらに、制御部42は、分割体回動機構39を制御して、可動体36を閉位置から開位置に移動させ、挟持部回動機構35を制御して、挟持部32を接触位置から退避位置に移動させる。その後、処理済みの基板Wが搬送ロボットのハンド41によってスピンチャック2から搬出される。
【0057】
図11は、固体表面に供給された液体の広がりについて説明するための模式図である。
親水性の固体表面に液体を供給した場合、液体が固体表面に沿って広がり、薄い液膜が形成される。一方、疎水性の固体表面に液体を供給した場合、液体が固体表面に沿って広がらずに、液滴が形成される。すなわち、親水性の固体表面は、濡れやすく、疎水性の固体表面は、濡れにくい。しかし、本願発明者は、固体表面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、親水性の固体表面に液体を供給した場合と同様に、液体を固体表面に沿って広げられることを発見した。
【0058】
具体的には、本願発明者は、固体表面において液体によって覆われている領域(被覆領域)と液体によって覆われていない領域(非被覆領域)の境界(液体表面と固体表面とが交わるところ)が、液体の広がりに大きく影響することを発見した。すなわち、図11に示すように、固体表面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、被覆領域と非被覆領域との境界が、親水性の領域に達していれば、固体表面に供給された液体は、親水性の固体表面に液体を供給した場合と同様に、固体表面に沿って広がり、薄い液膜を形成する。したがって、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域に到達させれば、少ない液量で広い範囲を濡らすことができる。
【0059】
前述のように第1処理例の薬液処理では、シリコン酸化膜によって全域が覆われた基板W(シリコン基板)にフッ酸が供給される。シリコン酸化膜は、親水性である。したがって、フッ酸が供給される前の基板Wの上面、下面、周端面は、親水性である。そのため、たとえば、高流量でノズル11、18からフッ酸を吐出させるとともに、基板Wを高速で回転させなくても、フッ酸の液膜をほぼ円形のまま基板Wの上面周縁部および下面周縁部にまで広げて、基板Wの上面全域および下面全域をフッ酸の液膜によって覆うことができる。これにより、基板Wの上面、下面、周端面にフッ酸を供給して、基板Wの上面、下面、周端面からシリコン酸化膜を除去することができる。
【0060】
一方、シリコン酸化膜が基板Wから除去されると、基板Wの下地(シリコン)が露出する。そのため、基板Wの上面、下面、周端面が、疎水性に変化し、基板Wが濡れ難くなる。しかし、前述のように第1処理例の薬液処理では、基板Wの上方に保持されたフッ酸の液膜の外縁が、上側環状親水面29に到達しており、基板Wの下方に保持されたフッ酸の液膜の外縁が、下側環状親水面30に到達している。すなわち、被覆領域と非被覆領域との境界が親水性の領域に到達している。したがって、シリコン酸化膜が基板Wから除去された後も、親水性の固体表面に液体が供給された場合と同様に、フッ酸が基板Wの上面および下面に沿って広がる。そのため、高流量でノズル11、18からフッ酸を吐出させなくても、基板Wの上面全域および下面全域にフッ酸を供給し続けることができる。これにより、フッ酸の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域および下面全域にフッ酸を供給することができる。
【0061】
また、第1処理例のリンス処理では、基板Wの上面および下面にフッ酸の液膜が保持された状態で、基板Wの上面および下面に純水が供給される。そして、基板Wの上面に保持されたフッ酸の液膜が純水の液膜に置換され、基板Wの下面に保持されたフッ酸の液膜が純水の液膜に置換される。したがって、被覆領域と非被覆領域との境界が親水性の領域(上側環状親水面29および下側環状親水面30)に位置する状態で、基板Wの上面および下面に保持されたフッ酸の液膜が純水の液膜に置換される。そのため、高流量でノズル14、18から純水を吐出させなくても、基板Wの上面全域および下面全域に純水を供給することができる。これにより、基板Wの上面、下面、周端面が、疎水性であっても、純水の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域および下面全域に純水を供給することができる。
【0062】
また、第1処理例のリンス処理では、基板Wの上面および下面に保持されたフッ酸の液膜を純水の液膜に置換する場合について説明したが、基板Wの上面全域および下面全域を覆うフッ酸の液膜が保持されていない状態で、基板Wの上面および下面に純水が供給されてもよい。薬液処理が行われた後は、シリコン酸化膜が基板Wから除去されているので、基板Wの上面、下面、周端面は、疎水性である。したがって、この場合、たとえば、第1リンス液供給配管15および第2リンス液供給配管22に第1流量調整バルブを設けて、リンス処理の初期の段階では、たとえば、高流量でノズル14、18から純水を吐出させるとともに、基板Wを高速で回転させて、基板Wの上面全域および下面全域を覆う純水の液膜を形成する必要がある。しかし、純水の液膜の外縁が、上側環状親水面29および下側環状親水面30に到達した後は、親水性の固体表面に液体が供給された場合と同様に、純水が基板Wの上面および下面に沿って広がるので、第1流量調整バルブの開度を制御部42によって調整して、ノズル14、18からの純水の吐出流量を減少させることができる。これにより、純水の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域および下面全域に純水を供給することができる。
【0063】
同様に、第1処理例では、上面、下面、周端面が親水性である基板Wが処理対象の基板である場合について説明したが、上面、下面、周端面が疎水性である基板Wが処理対象の基板であってもよい。この場合、たとえば、第1薬液供給配管12および第2薬液供給配管21に第2流量調整バルブを設けて、薬液処理の初期の段階では、たとえば、高流量でノズル11、18からフッ酸を吐出させるとともに、基板Wを高速で回転させて、基板Wの上面全域および下面全域を覆うフッ酸の液膜を形成する必要がある。しかし、フッ酸の液膜の外縁が、上側環状親水面29および下側環状親水面30に到達した後は、親水性の固体表面に液体が供給された場合と同様に、フッ酸が基板Wの上面および下面に沿って広がるので、第2流量調整バルブの開度を制御部42によって調整して、ノズル11、18からのフッ酸の吐出流量を減少させることができる。これにより、フッ酸の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域および下面全域にフッ酸を供給することができる。
【0064】
以上のように第1実施形態では、処理液供給機構3によって、スピンチャック2に保持された基板Wの上面および下面に処理液を供給することにより、基板Wの上面を覆う処理液の液膜と、基板Wの下面を覆う処理液の液膜とを形成することができる。さらに、基板Wの上面に保持された処理液の液膜の外縁を上側環状親水面29に到達させることができ、基板Wの下面に保持された処理液の液膜の外縁を下側環状親水面30に到達させることができる。すなわち、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域である上側環状親水面29および下側環状親水面30に位置させることができる。したがって、基板Wの上面および下面が疎水性である場合や、基板Wの上面および下面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域および下面全域を処理液によって覆うことができる。これにより、処理液の消費量を低減しつつ、基板Wの上面および下面を処理することができる。また、基板Wの上面および下面を同時に処理することができるので、処理時間を短縮することができる。
【0065】
[第2実施形態]
図12は、本発明の第2実施形態に係る基板処理装置201の概略構成を示す平面図である。また、図13は、本発明の第2実施形態における基板Wへの処理液の供給状態について説明するための模式図である。図13では、挟持位置で基板Wが水平に保持されている状態が示されている。この図12および図13において、前述の図1〜図11に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
【0066】
この第2実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、環状部材の上面および下面に、親水面と疎水面とが設けられていることである。
具体的には、基板処理装置201は、スピンチャック2に保持された基板Wを取り囲む環状部材204(親水面配置手段)を含む。環状部材204は、上側環状親水面29を取り囲む上側環状疎水面243(環状疎水面)と、下側環状親水面30を取り囲む下側環状疎水面244(環状疎水面)とを含む。上側環状親水面29および上側環状疎水面243は、環状部材204の上面(分割体27の上面)に設けられており、上側環状疎水面243は、上側環状親水面29の外側に配置されている。同様に、下側環状親水面30および下側環状疎水面244は、環状部材204の下面(分割体27の下面)に設けられており、下側環状疎水面244は、下側環状親水面30の外側に配置されている。上側環状疎水面243は、挟持位置で保持された基板Wの上面を含む水平面に沿って配置されており、下側環状疎水面244は、挟持位置で保持された基板Wの下面を含む水平面に沿って配置されている。上側環状疎水面243および下側環状疎水面244に対する水の接触角は、上側環状親水面29および下側環状親水面30に対する水の接触角より大きい。すなわち、上側環状疎水面243および下側環状疎水面244は、上側環状親水面29および下側環状親水面30より疎水性が高い。上側環状疎水面243および下側環状疎水面244に対する水の接触角は、たとえば、90度以上である。
【0067】
上側環状疎水面243は、挟持位置で保持された基板Wの上面と同じ高さに配置されていてもよいし、当該基板Wの上面より下方または上方に配置されていてもよい。さらに、上側環状疎水面243は、上側環状親水面29と同じ高さに配置されていてもよいし、上側環状親水面29より下方または上方に配置されていてもよい。同様に、下側環状疎水面244は、挟持位置で保持された基板Wの下面と同じ高さに配置されていてもよいし、当該基板Wの下面より下方または上方に配置されていてもよい。さらに、下側環状疎水面244は、下側環状親水面30と同じ高さに配置されていてもよいし、下側環状親水面30より下方または上方に配置されていてもよい。第2実施形態では、上側環状親水面29および上側環状疎水面243は、挟持位置で保持された基板Wの上面と同じ高さに配置されており、下側環状親水面30および下側環状疎水面244は、当該基板Wの下面と同じ高さに配置されている。
【0068】
制御部42は、スピンチャック2によって基板Wおよび環状部材204を回転軸線L1まわりに回転させながら、第1薬液ノズル11または第1リンス液ノズル14(図1参照)から処理液を吐出させて、基板Wの上面中央部に処理液を供給させる。これにより、基板Wの上面中央部に処理液の液膜が形成される。そして、制御部42は、基板Wの上面に保持された処理液の液膜の外縁を上側環状親水面29に移動させる。また、制御部42は、第1薬液ノズル11または第1リンス液ノズル14からの処理液の吐出と並行して、スピンチャック2によって基板Wおよび環状部材204を回転させながら、下面ノズル18から処理液を吐出させて、基板Wの下面中央部に処理液を供給させる。これにより、基板Wの下面中央部に処理液の液膜が形成される。そして、制御部42は、基板Wの下面に保持された処理液の液膜の外縁を下側環状親水面30に移動させる。
【0069】
上側環状親水面29に達した処理液は、環状部材204の回転による遠心力を受けて外方に移動する。同様に、下側環状親水面30に達した処理液は、環状部材204の回転による遠心力を受けて外方に移動する。上側環状疎水面243が疎水性であるから、図13に示すように、上側環状親水面29から上側環状疎水面243に移動した処理液は、液滴に変化し、液滴の状態で外方に移動する。また、上側環状疎水面243が疎水性であるから、処理液が上側環状親水面29から上側環状疎水面243に移動するときに、当該処理液に抵抗が加わり、上側環状疎水面243の内側に処理液が留められる。同様に、下側環状疎水面244が疎水性であるから、図13に示すように、下側環状親水面30から下側環状疎水面244に移動した処理液は、液滴に変化し、液滴の状態で外方に移動する。また、下側環状疎水面244が疎水性であるから、処理液が下側環状親水面30から下側環状疎水面244に移動するときに、当該処理液に抵抗が加わり、下側環状疎水面244の内側に処理液が留められる。
【0070】
以上のように第2実施形態では、上側環状親水面29が上側環状疎水面243によって取り囲まれており、下側環状親水面30が下側環状疎水面244によって取り囲まれている。上側環状疎水面243および下側環状疎水面244は、疎水性である。したがって、処理液が上側環状親水面29から上側環状疎水面243に移動するときに、当該処理液に抵抗が加わり、上側環状疎水面243の内側に処理液が留められる。同様に、処理液が下側環状親水面30から下側環状疎水面244に移動するときに、当該処理液に抵抗が加わり、下側環状疎水面244の内側に処理液が留められる。これにより、上側環状疎水面243および下側環状疎水面244の内側に処理液を溜めて、基板Wの上面全域および下面全域が処理液によって覆われた状態を維持することができる。これにより、処理液の消費量を一層低減することができる。
【0071】
また、第2実施形態では、上側環状疎水面243が、上側環状親水面29と同じ高さに配置されている場合について説明したが、上側環状疎水面243を上側環状親水面29より上方に配置した場合には、上側環状親水面29から上側環状疎水面243に移動する処理液にさらに大きな抵抗を与えることができる。同様に、第2実施形態では、下側環状疎水面244が、下側環状親水面30と同じ高さに配置されている場合について説明したが、下側環状疎水面244を下側環状親水面30より下方に配置した場合には、下側環状親水面30から下側環状疎水面244に移動する処理液にさらに大きな抵抗を与えることができる。これにより、上側環状疎水面243および下側環状疎水面244の内側に処理液を溜めて、基板Wの上面全域および下面全域が処理液によって覆われた状態を維持することができる。これにより、処理液の消費量を一層低減することができる。
【0072】
[第3実施形態]
次に、図14〜図15Eを適宜参照して、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置301について説明する。図14〜図15Eにおいて、前述の図1〜図13に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図14は、本発明の第3実施形態に係る基板処理装置301の概略構成を示す側面図である。また、図15Aは、本発明の第3実施形態における基板Wへの処理液の供給状態について説明するための模式図である。図15Aでは、挟持位置で基板Wが水平に保持されており、環状部材304が処理位置に配置されている状態が示されている。
【0073】
この第3実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、スピンチャックに保持された基板を取り囲む環状部材に代えて、スピンチャックに保持された基板の上面周縁部に対向する環状部材が設けられていることである。
具体的には、図14に示すように、基板処理装置301は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面周縁部に対向する環状部材304(親水面配置手段)と、スピンベース7の上方で環状部材304を昇降させる環状部材昇降機構345とを含む。環状部材昇降機構345は、たとえば、エアシリンダや、ボールねじ機構を含む。環状部材304は、環状部材昇降機構345によって支持されている。環状部材304は、スピンベース7の上方に配置されている。環状部材304は、回転軸線L1上に中心を有する円に沿って配置されている。環状部材304は、円筒状の内周面および外周面を有する平面視円形のリングである。環状部材304の内径は、スピンチャック2に保持された基板Wの外径より小さい。環状部材304の外径は、スピンチャック2に保持された基板Wの外径より小さい。
【0074】
環状部材304の少なくとも一部は、親水性である。環状部材304は、環状部材304全体が親水性材料によって形成されていてもよいし、環状部材304の一部が親水性材料によって形成されていてもよい。たとえばコーティングによって、環状部材304の表層だけが、親水性材料によって形成されていてもよい。さらに、環状部材304の表面は、鏡面であってもよいし、粗面であってもよい。すなわち、表面粗さを調整する加工や処理が、環状部材304に施されていてもよい。親水性材料は、たとえば、PVC(polyvinyl chloride)、石英、および炭化ケイ素(SiC)の少なくとも一つを含む材料であってもよい。
【0075】
環状部材304は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面周縁部に対向する対向親水面346(親水面)を含む。対向親水面346は、環状部材304の下面である。対向親水面346に対する水の接触角は、たとえば、70度未満である。環状部材昇降機構345は、対向親水面346が挟持位置で水平に保持された基板Wの上面周縁部に近接する処理位置(図14において二点鎖線で示す位置)と、処理位置より上方の退避位置(図14において実線で示す位置)との間で環状部材304を昇降させる。ハンド41(図7参照)によって基板Wがスピンチャック2に搬入されるとき、およびハンド41によって基板Wがスピンチャック2から搬出されるときには、環状部材304が退避位置に配置される。また、スピンチャック2に保持された基板Wが処理液によって処理されるときには、環状部材304が処理位置に配置される。環状部材304を処理位置に移動させることにより、挟持位置で水平に保持された基板Wの上面周縁部に沿って対向親水面346を配置することができる。
【0076】
環状部材昇降機構345は、制御部42(図8参照)によって制御される。制御部42は、環状部材304を処理位置に位置させた状態で、スピンチャック2によって基板Wを回転軸線L1まわりに回転させながら、第1薬液ノズル11または第1リンス液ノズル14から処理液を吐出させる。すなわち、制御部42は、挟持位置で水平に保持された基板Wの上面周縁部に対向親水面346を近接させた状態で、基板Wを回転させながら、基板Wの上面中央部に処理液を供給させる。これにより、基板Wの上面中央部に処理液の液膜が形成される。そして、制御部42は、基板Wの上面に保持された処理液の液膜の外縁を基板Wの上面周縁部に移動させる。
【0077】
処理液の液膜の外縁が基板Wの上面周縁部に移動することにより、基板Wの上面周縁部と対向親水面346との間に処理液が進入する。これにより、図15Aに示すように、処理液の液膜の外縁が対向親水面346に接する。すなわち、被覆領域と非被覆領域との境界が親水性の領域に移動する。したがって、基板Wの上面が疎水性であったとしても、親水性の固体表面に液体が供給された場合と同様に、処理液が基板Wの上面に沿って広がる。そのため、高流量でノズル11、14から処理液を吐出させなくても、基板Wの上面全域に処理液を供給できる。これにより、処理液の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域に処理液を供給できる。
【0078】
以上のように第3実施形態では、スピンチャック2に保持された基板Wの上面周縁部に対向する環状の対向親水面346が設けられているので、処理液供給機構3によってスピンチャック2に保持された基板Wの上面に処理液を供給することにより、基板Wの上面周縁部と対向親水面346との間に処理液を進入させることができる。これにより、基板Wの上面に保持された処理液の液膜の外縁を対向親水面346に到達させることができる。すなわち、被覆領域と非被覆領域との境界を親水性の領域である対向親水面346に位置させることができる。したがって、基板Wの上面が疎水性である場合や、基板Wの上面に疎水性の領域が含まれる場合であっても、処理液の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域を処理液によって覆うことができる。
【0079】
また第3実施形態では、対向親水面346が親水性であるから、処理液が対向親水面346に接触すると、対向親水面346に沿って処理液が広がり、対向親水面346によって処理液が保持される。つまり、対向親水面346によって処理液が捕まえられ(トラップされ)、対向親水面346が濡れている状態が維持される。したがって、たとえば、処理液をノズルに送るポンプの脈動によって基板Wへの処理液の供給流量が変動したとしても、対向親水面346と基板Wとの間が処理液によって満たされた状態(液密状態)が維持される。そのため、対向親水面346と基板Wとの間で液切れが生じて、処理液の液膜がその周縁部から壊れることを抑制または防止できる。これにより、基板Wの上面に保持されている処理液が連続している状態を維持できる。したがって、高流量で基板Wに処理液を供給しなくても、基板Wの上面全域が処理液の液膜によって覆われている状態を維持できる。
【0080】
また第3実施形態では、対向親水面346が、全周に亘って連続しており、全周に亘って一定の間隔(たとえば、3mm以下)を空けて基板Wの上面周縁部に対向している。すなわち、対向親水面346と基板Wとの間のクリアランスの大きさが、全周に亘って等しい。したがって、対向親水面346と基板Wとの間を通って基板Wから排出される処理液の流量が、各位置で等しい。そのため、基板Wからの処理液の排出量の偏りにより、処理液の液膜がその周縁部から壊れることを抑制または防止できる。これにより、高流量で基板Wに処理液を供給しなくても、基板Wの上面全域が処理液の液膜によって覆われている状態を維持できる。さらにまた、対向親水面346が基板Wの上面周縁部に非接触だから、基板Wの上面周縁部にも処理液が確実に供給される。そのため、処理の均一性の低下を抑制または防止できる。
【0081】
なお、前述の説明では、環状部材304の外径が、基板Wの外径より小さい場合について説明した。しかし、環状部材304の外径は、基板Wの外径と等しくてもよいし、基板Wの外径より大きくてもよい。いずれの場合においても、基板Wの上面に保持された処理液の液膜の外縁を対向親水面346に到達させることができる。これにより、処理液の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域を処理液によって覆うことができる。さらに、図15Bに示すように、環状部材304の外径が、基板Wの外径より大きい場合には、基板Wから排出される処理液の飛散方向が、環状部材304の外周部によって制限される。すなわち、基板Wの上面周縁部から斜め上への処理液の飛散が抑制される。これにより、処理液の飛散範囲を狭めることができる。
【0082】
また、前述の説明では、対向親水面346だけが、環状部材304の下面に設けられている場合について説明した。しかし、図15Cに示すように、対向親水面346に加えて、対向親水面346を取り囲む環状の環状疎水面343が環状部材304の下面に設けられていてもよい。すなわち、環状部材304は、対向親水面346を有する親水部と、環状疎水面343を有する疎水部とによって構成されていてもよい。環状疎水面343は、全周に亘って連続した環状面である。環状疎水面343は、対向親水面346と共通の水平面に沿って配置されている。環状疎水面343の高さは、対向親水面346と同じであってもよいし、対向親水面346とは異なっていてもよい。環状疎水面343に対する水の接触角は、対向親水面346に対する水の接触角より大きい。環状疎水面343に対する水の接触角は、たとえば、70度より大きい。
【0083】
図15Cに示すように、対向親水面346と環状疎水面343とが環状部材304に設けられている場合、処理液が対向親水面346より外側に移動するときに、環状疎水面343からの抵抗が処理液に加わり、環状疎水面343の内側に処理液が留められる。したがって、高流量で基板Wに処理液を供給しなくても、基板Wの上面全域が処理液によって覆われている状態を確実に維持できる。そのため、基板Wの上面が処理液から露出することを確実に防止できる。
【0084】
なお、対向親水面346と環状疎水面343とが環状部材304に設けられている場合、対向親水面346と環状疎水面343との境界位置の直径は、基板Wの外径より大きくてもよいし、基板Wの外径より小さくてもよい。しかし、境界位置の直径が、基板Wの外径より大きすぎると、基板W上の処理液に対して環状疎水面343からの抵抗が加わらない。そのため、境界位置の直径は、基板Wの外径以下であることが好ましい。
【0085】
また、前述の説明では、環状部材304が、径方向および周方向に連続した形状を有している場合について説明した。しかし、環状部材304は、径方向に複数個に分割されていてもよいし、部分的に切断されていてもよい。すなわち、図15Dに示すように、環状部材304は、径方向に間隔を空けて同心円状に配置された複数の分割リング357によって構成されていてもよい。また、図15Eに示すように、環状部材304は、複数の分割リング357と、複数の分割リング357を部分的に連結する複数の連結部358とによって構成されていてもよい。いずれの場合においても、環状部材304の下面の面積は、環状部材304が径方向および周方向に連続している場合より小さい。したがって、処理液に含まれるパーティクルが環状部材304の下面に付着することを抑制できる。これにより、環状部材304から基板Wにパーティクルが移動して、基板Wが汚染されることを抑制または防止できる。
【0086】
[第4実施形態]
次に、図16〜図19を適宜参照して、本発明の第4実施形態に係る基板処理装置401について説明する。図16〜図19において、前述の図1〜図15Eに示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図16は、本発明の第4実施形態に係る基板処理装置401の概略構成を示す側面図である。また、図17は、本発明の第4実施形態に係る基板処理装置401の概略構成を示す平面図である。
【0087】
この第4実施形態と前述の第1実施形態との主要な相違点は、環状部材に代えて、保護液を基板に供給する保護液供給機構が設けられていることである。
具体的には、基板処理装置401は、基板Wを処理液から保護する保護液を、スピンチャック2に保持された基板Wの上面周縁部Wa(親水面、上側親水面)および下面周縁部Wb(親水面、下側親水面)に供給する保護液供給機構447(親水面配置手段、保護液供給手段)を含む。保護液供給機構447は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面周縁部Waに保護液を供給する上面保護液供給機構448(上面保護液供給手段)を含む。上面保護液供給機構448は、第1保護液ノズル449と、第1保護液供給配管450と、第1保護液バルブ451とを含む。第1保護液供給配管450は、第1保護液ノズル449に接続されている。第1保護液バルブ451は、第1保護液供給配管450に介装されている。第1保護液バルブ451が開かれると、第1保護液供給配管450から第1保護液ノズル449に保護液が供給される。また、第1保護液バルブ451が閉じられると、第1保護液供給配管450から第1保護液ノズル449への保護液の供給が停止される。第1保護液ノズル449から吐出された保護液は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面周縁部Waに供給される。
【0088】
また、保護液供給機構447は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面周縁部Wbに保護液を供給する下面保護液供給機構452(下面保護液供給手段)を含む。下面保護液供給機構452は、下面ノズル418と、第2保護液供給配管453と、第2保護液バルブ454とを含む。すなわち、第4実施形態では、下面ノズル418が、下面処理液供給機構17と、下面保護液供給機構452とによって共有されている。下面ノズル418は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面に対向する対向部425を含む。対向部425は、スピンベース7より上方に配置されている。対向部425は、たとえば、平面視においてスピンベース7の中央部から水平方向に延びる棒状である。対向部425は、スピンチャック2に保持された基板Wの下面中央部に向けて処理液を処理液吐出口26と、スピンチャック2に保持された基板Wの下面周縁部Wbに向けて保護液を吐出する保護液吐出口455とを含む。
【0089】
第2保護液供給配管453は、保護液吐出口455に接続されている。第2保護液バルブ454は、第2保護液供給配管453に介装されている。第2処理液供給配管20を流れる処理液は、処理液吐出口26に供給され、第2保護液供給配管453を流れる保護液は、保護液吐出口455に供給される。したがって、第2保護液バルブ454が開かれると、第2保護液供給配管453から保護液吐出口455に保護液が供給される。これにより、保護液吐出口455から基板Wの下面周縁部Wbに向けて保護液が吐出される。また、第2保護液バルブ454が閉じられると、保護液吐出口455への保護液の供給が停止される。保護液としては、リンス液、およびIPA(イソプロピルアルコール)のうちの少なくとも1つを含む液を例示することができる。
【0090】
図18は、本発明の第4実施形態に係る基板処理装置401によって基板Wを処理するときの第4処理例について説明するための工程図である。図19は、第4処理例における基板Wへの処理液の供給状態について説明するための模式図である。図19では、挟持位置で基板Wが水平に保持されている状態が示されている。以下では、図16〜図19を参照して、シリコン酸化膜によって全域が覆われた基板W(シリコン基板)からシリコン酸化膜を除去するときの処理例について説明する。
【0091】
未処理の基板Wは、搬送ロボットのハンド41(図7参照)によって搬送され、デバイス形成面である表面をたとえば上に向けてスピンチャック2に搬入される。具体的には、挟持部32が退避位置に位置する状態で、未処理の基板Wが、ハンド41によって複数の支持部31に載置される。そして、制御部42は、ハンド41を退避させた後、挟持部回動機構35(図4参照)を制御して、複数の挟持部32を退避位置から接触位置に移動させる。これにより、支持部31が基板Wの下面から離れ、基板Wの上面および下面に非接触で当該基板Wが水平に保持される。
【0092】
次に、保護液の一例である純水を基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbに同時に供給する周縁部保護処理が行われる(ステップS401)。具体的には、制御部42は、スピンモータ9を制御して、スピンチャック2に保持された基板Wを回転軸線L1まわりに回転させる。そして、制御部42は、第1保護液バルブ451および第2保護液バルブ454を開いて、第1保護液ノズル449および保護液吐出口455から純水を吐出させる。図19に示すように、第1保護液ノズル449から吐出された純水は、基板Wの上面周縁部Waに供給され、基板Wの上面に沿って外方に流れる。また、保護液吐出口455から吐出された純水は、基板Wの下面周縁部Wbに供給され、基板Wの下面に沿って外方に流れる。さらに、第1保護液ノズル449から吐出された純水の一部と、保護液吐出口455から吐出された純水の一部とが、基板Wの周端面に沿って流れ、基板Wの周端面に純水が供給される。これにより、基板Wの上面周縁部Wa、下面周縁部Wb、および周端面に純水が供給され、基板Wの上面周縁部Wa、下面周縁部Wb、および周端面が純水によって保護される。
【0093】
次に、薬液の一例であるフッ酸を基板Wの上面、下面、および周端面に同時に供給する薬液処理が行われる(ステップS402)。具体的には、制御部42は、第1保護液ノズル449および保護液吐出口455から純水を吐出させるとともに、基板Wを回転させながら、第1薬液バルブ13を開いて、第1薬液ノズル11からフッ酸を吐出させる。第1薬液ノズル11から吐出されたフッ酸は、基板Wの上面中央部に供給される。これにより、ほぼ円形のフッ酸の液膜が基板Wの上面中央部に形成される。そして、このフッ酸の液膜は、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。さらに、このフッ酸の液膜は、後続のフッ酸が基板Wの上面に供給されることにより外方に広がっていく。そのため、フッ酸の液膜がほぼ円形のまま基板Wの上面周縁部Waまで広がり、基板Wの上面全域がフッ酸の液膜によって覆われる。このとき、基板Wの上面周縁部Waが純水によって保護されているので、基板Wの上面において周縁部を除く領域にフッ酸が供給され、当該領域からシリコン酸化膜が除去される。すなわち、基板Wの上面周縁部Waからシリコン酸化膜が除去されることが抑制または防止される。
【0094】
一方、制御部42は、第1薬液ノズル11からのフッ酸の吐出と並行して、下面ノズル418の処理液吐出口26からフッ酸を吐出させる。具体的には、制御部42は、第1保護液ノズル449および保護液吐出口455から純水を吐出させるとともに、基板Wを回転させながら、第2薬液バルブ23を開いて、下面ノズル418の処理液吐出口26からフッ酸を吐出させる。下面ノズル418の処理液吐出口26から吐出されたフッ酸は、基板Wの下面中央部に供給される。これにより、ほぼ円形のフッ酸の液膜が基板Wの下面中央部に形成される。そして、このフッ酸の液膜は、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。さらに、このフッ酸の液膜は、後続のフッ酸が基板Wの下面に供給されることにより外方に広がっていく。そのため、フッ酸の液膜がほぼ円形のまま基板Wの下面周縁部Wbまで広がり、基板Wの下面全域がフッ酸の液膜によって覆われる。このとき、基板Wの下面周縁部Wbが純水によって保護されているので、基板Wの下面において周縁部を除く領域にフッ酸が供給され、当該領域からシリコン酸化膜が除去される。すなわち、基板Wの下面周縁部Wbからシリコン酸化膜が除去されることが抑制または防止される。
【0095】
また、基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbに達したフッ酸の一部は、基板Wの周端面に沿って流れた後、基板Wの周囲に振り切られる。そのため、基板Wの周端面は、フッ酸によって覆われる。しかし、このとき、基板Wの周端面が純水によって保護されているので、基板Wの周端面からシリコン酸化膜が除去されることが抑制または防止される。そのため、基板Wの周縁部(上面周縁部Wa、下面周縁部Wb、および周端面)を除く領域からシリコン酸化膜が除去される(薬液処理)。そして、薬液処理が所定時間にわたって行われると、第1薬液バルブ13および第2薬液バルブ23が閉じられて、第1薬液ノズル11および下面ノズル418の処理液吐出口26からのフッ酸の吐出が停止される。
【0096】
次に、リンス液の一例である純水を基板Wの上面、下面、および周端面に同時に供給するリンス処理が行われる(ステップS403)。具体的には、制御部42は、基板Wの上面および下面にフッ酸の液膜が保持された状態で、基板Wを回転させながら、第1リンス液バルブ16を開いて、第1リンス液ノズル14から純水を吐出させる。また、制御部42は、第1リンス液ノズル14からの純水の吐出を開始させた後、または純水の吐出と同時に、第1保護液バルブ451を閉じて、第1保護液ノズル449からの純水の吐出を停止させる。第1リンス液ノズル14から吐出された純水は、基板Wの上面中央部に供給される。基板Wの上面中央部に保持されたフッ酸は、第1リンス液ノズル14から吐出された純水によって外方に押し流される。また、基板Wの上面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。したがって、基板Wの上面に保持されたフッ酸は、外方に広がる純水よって外方に押し流されていく。これにより、基板Wの上面からフッ酸が洗い流され、基板Wの上面全域を覆うフッ酸の液膜が純水の液膜に置換される。
【0097】
一方、制御部42は、第1リンス液ノズル14からの純水の吐出と並行して、下面ノズル418の処理液吐出口26から純水を吐出させる。具体的には、制御部42は、基板Wの上面および下面にフッ酸の液膜が保持された状態で、基板Wを回転させながら、第2リンス液バルブ24を開いて、下面ノズル418の処理液吐出口26から純水を吐出させる。また、制御部42は、下面ノズル418の処理液吐出口26からの純水の吐出を開始させた後、または純水の吐出と同時に、第2保護液バルブ454を閉じて、保護液吐出口455からの純水の吐出を停止させる。下面ノズル418の処理液吐出口26から吐出された純水は、基板Wの下面中央部に供給される。基板Wの下面中央部に保持されたフッ酸は、下面ノズル418から吐出された純水によって外方に押し流される。また、基板Wの下面に供給された純水は、基板Wの回転による遠心力を受けて外方に広がっていく。したがって、基板Wの下面に保持されたフッ酸は、外方に広がる純水よって外方に押し流されていく。これにより、基板Wの下面からフッ酸が洗い流され、基板Wの下面全域を覆うフッ酸の液膜が純水の液膜に置換される。
【0098】
また、基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbに達した純水の一部は、基板Wの周端面に沿って流れた後、基板Wの周囲に振り切られる。これにより、基板Wの周端面に純水が供給される。したがって、薬液処理において基板Wに供給されたフッ酸が基板Wの周端面に付着していたとしても、このフッ酸は、純水によって洗い流される。このようにして、基板Wの上面、下面、および周端面に純水が同時に供給され、基板Wの上面、下面、および周端面に付着しているフッ酸が洗い流される(リンス処理)。そして、リンス処理が所定時間にわたって行われると、第1リンス液バルブ16および第2リンス液バルブ24が閉じられて、第1リンス液ノズル14および下面ノズル418の処理液吐出口26からの純水の吐出が停止される。
【0099】
次に、基板Wを乾燥させる乾燥処理(スピンドライ)が行われる(ステップS404)。具体的には、制御部42は、スピンモータ9を制御して、基板Wを高回転速度(たとえば数千rpm)で回転させる。これにより、基板Wに付着している純水に大きな遠心力が作用し、当該純水が基板Wから周囲に振り切られる。このようにして、基板Wから純水が除去され、基板Wが乾燥する(乾燥処理)。そして、乾燥処理が所定時間にわたって行われた後は、制御部42は、スピンモータ9を制御して、基板Wの回転を停止させる。さらに、制御部42は、挟持部回動機構35を制御して、挟持部32を接触位置から退避位置に移動させる。その後、処理済みの基板Wが搬送ロボットのハンド41によってスピンチャック2から搬出される。
【0100】
以上のように第4実施形態では、保護液供給機構447によって、スピンチャック2に保持された基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbに保護液を同時に供給することができる。したがって、たとえば第4処理例の薬液処理において説明したように、基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbからシリコン酸化膜が除去されることを抑制または防止することができる。そのため、基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbが親水性に維持され、基板Wの上面および下面に保持されたフッ酸の液膜の外縁が、環状の親水面である上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbに接した状態で、薬液処理が行われる。すなわち、被覆領域と非被覆領域との境界が親水性の領域に位置する状態で、薬液処理が行われる。したがって、高流量でノズル11、18からフッ酸を吐出させなくても、基板Wの上面全域および下面全域にフッ酸を供給することができる。これにより、フッ酸の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域および下面全域にフッ酸を供給することができる。
【0101】
また、第4処理例では、制御部42は、第1リンス液ノズル14からの純水の吐出を開始させた後、または純水の吐出と同時に、第1保護液バルブ451を閉じて、第1保護液ノズル449からの純水の吐出を停止させる。さらに、制御部42は、下面ノズル418の処理液吐出口26からの純水の吐出を開始させた後、または純水の吐出と同時に、第2保護液バルブ454を閉じて、保護液吐出口455からの純水の吐出を停止させる。したがって、基板Wの上面および下面に保持されたフッ酸の液膜が純水の液膜に置換されるまで、第1保護液ノズル449および保護液吐出口455から吐出された純水によって基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbが保護される。そのため、第4処理例のリンス処理において、基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbからシリコン酸化膜が除去されることを抑制または防止することができる。これにより、被覆領域と非被覆領域との境界が親水性の領域に位置する状態で、リンス処理が行われる。したがって、高流量でノズル14、18から純水を吐出させなくても、基板Wの上面全域および下面全域に純水を供給することができる。これにより、純水の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域および下面全域に純水を供給することができる。
【0102】
また、第4処理例では、薬液処理およびリンス処理において、基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbからシリコン酸化膜が除去されることを抑制または防止する場合について説明したが、第4処理例の薬液処理において、基板Wの上面周縁部Waおよび下面周縁部Wbからシリコン酸化膜を除去してもよい。具体的には、第4処理例の薬液処理において、制御部42は、第1薬液バルブ13および第2薬液バルブ23を閉じる前に、第1保護液バルブ451および第2保護液バルブ454を閉じて、第1保護液ノズル449および保護液吐出口455からの純水の吐出を停止させてもよい。この場合、基板Wの上面周縁部Wa、下面周縁部Wb、および周端面にもフッ酸が供給されるから、基板Wの全域からシリコン酸化膜が除去される。また、この場合、基板Wの全域からシリコン酸化膜が除去された状態でリンス処理を行う必要があるから、たとえば、高流量でノズル14、18から純水を吐出させるとともに、基板Wを高速で回転させることにより、基板Wの上面全域および下面全域に純水を供給してもよい。
【0103】
[第5実施形態]
次に、図20〜図22Cを参照して、本発明の第5実施形態について説明する。図20〜図22Cにおいて、前述の図1〜図19に示された各部と同等の構成部分については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
図20は、本発明の第5実施形態に係る基板処理装置501の概略構成を示す側面図である。図21は、本発明の第5実施形態における基板Wへの処理液の供給状態について説明するための模式図である。図21では、挟持位置で基板Wが水平に保持されており、環状部材504が処理位置に配置されている状態が示されている。
【0104】
この第5実施形態と前述の第3実施形態との主要な相違点は、親水面を有する環状部材304に代えて、疎水面を有する環状部材504が設けられていることである。
具体的には、基板処理装置501は、スピンチャック2(基板保持手段、基板回転手段)と、処理液供給機構3(処理液供給手段)と、環状部材504と、環状部材504を移動させる環状部材移動機構545とを含む。スピンチャック2および環状部材504は、図示しない隔壁によって区画された処理室5に配置されている。
【0105】
環状部材504は、スピンチャック2に保持された基板Wより上方に配置されている。環状部材504は、回転軸線L1上に中心を有する円に沿って配置されている。環状部材504は、円筒状の内周面および外周面を有する平面視円形のリングである。環状部材504の内径は、スピンチャック2に保持された基板Wの直径より小さい。また、環状部材504の外径は、スピンチャック2に保持された基板Wの直径より大きい。したがって、環状部材504の内周部は、基板Wの上面周縁部に重なっており、上下方向に間隔を空けて基板Wの上面周縁部に対向している。また、環状部材504の外周部は、基板Wより外側(回転軸線L1とは反対側)に配置されている。環状部材504の内径は、基板Wの直径より小さい値に限らず、基板Wの直径と等しいまたは大きい値であってもよい。同様に、環状部材504の外径は、基板Wの直径より大きい値に限らず、基板Wの直径と等しいまたは小さい値であってもよい。
【0106】
環状部材504は、疎水性である。環状部材504は、環状部材504全体が疎水性材料によって形成されていてもよいし、環状部材504の一部が疎水性材料によって形成されていてもよい。たとえばコーティングによって、環状部材504の表層だけが、疎水性材料によって形成されていてもよい。さらに、環状部材504の表面は、鏡面であってもよいし、粗面であってもよい。すなわち、表面粗さを調整する加工や処理が、環状部材504に施されていてもよい。疎水性材料は、たとえば、GC(glassy carbon)およびPTFE(polytetrafluoroethylene)の少なくとも一つを含む材料であってもよい。
【0107】
環状部材504は、スピンチャック2に保持された基板Wの上面周縁部に対向する対向疎水面543(疎水面)を含む。対向疎水面543は、環状部材504の下面である。対向疎水面543に対する水の接触角は、たとえば、70度より大きい。環状部材移動機構545は、対向疎水面543が基板Wの上面周縁部に近接する処理位置(図20に示す位置)と、対向疎水面543が基板Wから離れた退避位置との間で環状部材504を移動させる。基板Wを搬送するハンド41(図7参照)によって基板Wがスピンチャック2に搬入されるとき、およびハンド41によって基板Wがスピンチャック2から搬出されるときには、環状部材504が退避位置に配置される。また、スピンチャック2に保持された基板Wが処理液によって処理されるときには、環状部材504が処理位置に配置される。環状部材504を処理位置に移動させることにより、基板Wの上面周縁部に沿って対向疎水面543を配置することができる。
【0108】
環状部材移動機構545は、制御部42(図8参照)によって制御される。制御部42は、環状部材504を処理位置に位置させた状態で、スピンチャック2によって基板Wを回転軸線L1まわりに回転させながら、第1薬液ノズル11または第1リンス液ノズル14から処理液を吐出させる。すなわち、制御部42は、挟持位置で水平に保持された基板Wの上面周縁部に対向疎水面543を近接させた状態で、基板Wを回転させながら、基板Wの上面中央部に処理液を供給させる。これにより、基板Wの上面中央部に処理液の液膜が形成される。そして、制御部42は、基板Wの上面に保持された処理液の液膜の外縁を基板Wの上面周縁部に移動させる。
【0109】
処理液の液膜の外縁が基板Wの上面周縁部に移動することにより、基板Wの上面周縁部と対向疎水面543との間に処理液が進入する。これにより、図21に示すように、処理液の液膜の外縁が対向疎水面543に接する。対向疎水面543が疎水性であり、対向疎水面543と基板Wとの間の隙間が小さいから、対向疎水面543からの抵抗が基板W上の処理液に加わり、基板Wからの処理液の排出が妨げられる。したがって、基板W上に処理液が貯留される。その一方で、遠心力が基板W上の処理液に加わるから、基板W上の処理液は、基板Wの周囲に排出される。したがって、処理液の貯留と排出とが並行して行われる。
【0110】
対向疎水面543は、基板Wの上面周縁部全域に沿って配置されている。したがって、処理液の貯留と排出とが、基板Wの上面周縁部全域において均一に行われる。そのため、基板Wの上面全域が処理液の液膜によって覆われている状態が維持されながら、基板W上の処理液が後続の処理液によって置換されていく。そのため、高流量でノズル11、14から処理液を吐出させなくても、基板Wの上面全域に処理液を供給することができる。これにより、処理液の消費量を低減しつつ、基板Wの上面全域に処理液を供給できる。
【0111】
図22A、図22B、および図22Cは、環状部材移動機構545の概略構成を示す側面図である。
図22Aに示すように、環状部材移動機構545は、環状部材504に固定された複数の固定シャフト559と、複数の固定シャフト559に連結された複数の昇降装置560とを備えるものであってもよい。複数の固定シャフト559は、基板Wの周囲に配置されている。複数の固定シャフト559は、スピンベース7の上面から上方に突出している。環状部材504は、複数の固定シャフト559を介して複数の昇降装置560に支持されている。昇降装置560は、エアシリンダなどの空気圧によって駆動される空圧アクチュエータであってもよいし、電磁プランジャなどの磁力によって駆動されるソレノイドアクチュエータであってもよい。複数の昇降装置560は、複数の固定シャフト559を昇降させることにより、処理位置(実線で示す位置)と退避位置(二点鎖線で示す位置)との間で環状部材504を移動させる。複数の昇降装置560は、スピンベース7の内部に配置されている。環状部材504、複数の固定シャフト559、および複数の昇降装置560は、スピンベース7と共に回転軸線L1まわりに回転する。
【0112】
また、図22Bに示すように、環状部材移動機構545は、環状部材504に取り付けられたマグネット561と、環状部材504に接触可能な複数の昇降シャフト562と、複数の昇降シャフト562に連結された複数の昇降装置560とを備えるものであってもよい。環状部材504は、複数の挟持部材8によって処理位置(実線で示す位置)で支持されている。環状部材504は、環状部材504に取り付けられたマグネット561と、挟持部材8の内部に配置されたマグネット(図示せず)との間に働く磁力によって複数の挟持部材8に固定されている。したがって、環状部材504は、スピンベース7と共に回転軸線L1まわりに回転する。
【0113】
複数の昇降シャフト562は、基板Wより外側に配置されている。複数の昇降装置560は、スピンベース7の内部に配置されている。複数の昇降装置560は、スピンベース7の外に配置されていてもよい。昇降シャフト562は、昇降シャフト562がスピンベース7の上面から上方に突出する突出位置と、昇降シャフト562全体がスピンベース7の内部に退避する退避位置との間で移動可能である。昇降装置560は、突出位置と退避位置との間で昇降シャフト562を昇降させることにより、環状部材504を処理位置と退避位置(二点鎖線で示す位置)との間で移動させる。
【0114】
具体的には、昇降装置560が昇降シャフト562を退避位置から突出位置に移動させると、昇降シャフト562が環状部材504に接触し、環状部材504が退避位置まで持ち上げられる。また、昇降装置560が昇降シャフト562を突出位置から退避位置まで下降させると、昇降シャフト562が退避位置に達する前に、環状部材504が挟持部材8によって処理位置で支持され、昇降シャフト562が環状部材504から離れる。その後、昇降シャフト562全体が、スピンベース7内に退避する。したがって、環状部材504が処理位置に位置している状態では、複数の昇降シャフト562が基板Wの周囲から退避している。そのため、基板Wの周囲に飛散した処理液が、昇降シャフト562に衝突して、基板W側に跳ね返ることを防止できる。
【0115】
また、図22Cに示すように、環状部材移動機構545は、マグネット561と、複数の昇降シャフト562と、複数の昇降装置560と、環状部材504を保持するハンド563とを備えるものであってもよい。ハンド563は、挟持部材8または昇降シャフト562から環状部材504を受け取る。そして、ハンド563は、挟持部材8または昇降シャフト562に環状部材504を渡す。ハンド563は、環状部材504を上下に挟んで保持する。ハンド563は、環状部材504を挟んだ状態で上下方向に昇降することにより、環状部材504を上下方向に昇降させてもよい。また、ハンド563は、環状部材504を挟んだ状態で水平軸線まわりに回転することにより、水平な姿勢と鉛直な姿勢との間で環状部材504を移動させてもよい。
【0116】
また、図示はしないが、環状部材504が周方向に分割されており、複数の分割体によって構成されている場合、環状部材移動機構545は、分割体を水平面内で回動させることにより、処理位置と退避位置との間で環状部材504を移動させてもよい。この場合、分割体は、挟持部材8に連結されており、挟持部材8と共に回動してもよい。また、図7に示す第1実施形態と同様に、各分割体は、スピンベース7内に収容されたモータによって駆動されてもよい。
【0117】
以上のように第5実施形態では、環状部材504の対向疎水面543が、基板Wとは異なる高さで基板Wの上面周縁部に沿って配置されている。基板Wの上面周縁部から排出される処理液は、対向疎水面543に接触し、対向疎水面543からの抵抗を受ける。したがって、基板Wからの処理液の排出を規制し、対向疎水面543の内側に処理液を溜めることができる。そのため、高流量で基板Wに処理液を供給しなくても、基板Wの上面全域が処理液によって覆われている状態を維持できる。
【0118】
また、第5実施形態では、対向疎水面543が、全周に亘って連続しており、全周に亘って一定の間隔(たとえば、3mm以下)を空けて基板Wの上面周縁部に対向している。すなわち、対向疎水面543と基板Wとの間のクリアランスの大きさが、全周に亘って等しい。したがって、対向疎水面543と基板Wとの間を通って基板Wから排出される処理液の流量が、各位置で等しい。そのため、基板Wからの処理液の排出量の偏りにより、処理液の液膜がその周縁部から壊れることを抑制または防止できる。さらにまた、疎水面が基板Wの上面周縁部に非接触だから、基板Wの上面周縁部にも処理液が確実に供給される。そのため、処理の均一性の低下を抑制または防止できる。
【0119】
[その他の実施形態]
この発明の実施の形態の説明は以上であるが、この発明は、前述の第1〜第5実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前述の第1〜第5実施形態では、第1薬液ノズル11から基板Wの上面に向けて薬液が吐出され、第1リンス液ノズル14から基板Wの上面に向けてリンス液が吐出される場合について説明した。しかし、共通のノズルから基板Wの上面に向けて薬液およびリンス液が選択的に吐出されてもよい。
【0120】
また、前述の第1〜第5実施形態では、基板Wを挟持して当該基板Wを水平に保持する挟持式のスピンチャック2が、基板処理装置に備えられている場合について説明した。しかし、スピンチャック2は、挟持式に限らず、たとえば、基板Wの下面(裏面)を真空吸着することにより基板Wの上面(表面)に非接触で当該基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0121】
また、前述の第1、第2、および第4実施形態では、基板Wの上面および下面を処理液によって同時に処理する場合について説明した。しかし、基板Wの上面および下面を別々に処理してもよい。
また、前述の第4実施形態では、下面ノズル18が、下面処理液供給機構17と、下面保護液供給機構452とによって共有されている場合について説明した。しかし、下面保護液供給機構452は、専用の第2保護液ノズルを有していてもよい。具体的には、図23に示すように、下面保護液供給機構652(下面保護液供給手段)は、スピンチャック2によって挟持位置で水平に保持された基板Wの外方に配置された第2保護液ノズル656を有しており、この第2保護液ノズル656から当該基板Wの下面周縁部に向けて保護液が吐出されてもよい。
【0122】
また、前述の第1および第4処理例では、親水性の基板が処理対象の基板である場合について説明した。しかし、疎水性の基板が処理対象の基板であってもよい。
また前述の第3および第5実施形態では、環状部材304、504が基板Wより上方に配置されている場合について説明した。しかし、環状部材304は、基板Wより下方に配置されていてもよい。さらに、2つの環状部材304が、それぞれ、基板Wより上方および下方に配置されていてもよい。環状部材504についても同様である。
【0123】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 基板処理装置
2 スピンチャック
3 処理液供給機構
4 環状部材
29 上側環状親水面
30 下側環状親水面
201 基板処理装置
204 環状部材
243 上側環状疎水面
244 下側環状疎水面
301 基板処理装置
304 環状部材
346 対向親水面
401 基板処理装置
447 保護液供給機構
448 上面保護液供給機構
452 下面保護液供給機構
501 基板処理装置
504 環状部材
543 対向疎水面
652 下面保護液供給機構
L1 回転軸線
W 基板
Wa 上面周縁部
Wb 下面周縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面に非接触で当該基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の主面に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の主面に保持された処理液の液膜に接する環状の親水面を前記基板の主面周縁部に沿って配置する親水面配置手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記親水面配置手段は、前記基板保持手段に保持された基板の主面を含む水平面に沿って配置されており、前記基板の主面周縁部を取り囲む環状親水面を含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記基板保持手段に保持された基板の主面を含む水平面に沿って配置されており、前記環状親水面を取り囲む環状疎水面をさらに含む、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板保持手段は、基板の上面および下面に非接触で当該基板を水平に保持するように構成されており、
前記処理液供給手段は、前記基板保持手段に保持された基板の上面および下面に処理液を供給するように構成されており、
前記環状親水面は、前記基板保持手段に保持された基板の上面を含む水平面に沿って配置されており、前記基板の上面周縁部を取り囲む上側環状親水面と、前記基板保持手段に保持された基板の下面を含む水平面に沿って配置されており、前記基板の下面周縁部を取り囲む下側環状親水面とを含む、請求項2または3記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記親水面配置手段は、前記基板保持手段に保持された基板の主面周縁部に対向する環状の対向親水面を含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記対向親水面を取り囲む環状疎水面をさらに含む、請求項5記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記親水面配置手段は、基板の主面を処理液から保護する保護液を、前記基板保持手段に保持された基板の主面周縁部に供給する保護液供給手段を含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持手段は、基板の上面および下面に非接触で当該基板を水平に保持するように構成されており、
前記処理液供給手段は、前記基板保持手段に保持された基板の上面および下面に処理液を供給するように構成されており、
前記保護液供給手段は、前記基板保持手段に保持された基板の上面周縁部に前記保護液を供給する上面保護液供給手段と、前記基板保持手段に保持された基板の下面周縁部に前記保護液を供給する下面保護液供給手段とを含む、請求項7記載の基板処理装置。
【請求項9】
基板の主面に非接触で水平に保持された当該基板の主面に処理液を供給する処理液供給工程と、
前記処理液供給工程と並行して、前記基板の主面に保持された処理液の液膜に接する環状の親水面を前記基板の主面周縁部に沿って配置する親水面配置工程とを含む、基板処理方法。
【請求項10】
前記処理液供給工程は、基板の上面および下面に非接触で水平に保持された当該基板の上面および下面に処理液を同時に供給する工程を含み、
前記親水面配置工程は、前記処理液供給工程と並行して、前記基板の上面に保持された処理液の液膜に接する環状の上側親水面を前記基板の上面周縁部に沿って配置する上側親水面配置工程と、前記処理液供給工程と並行して、前記基板の下面に保持された処理液の液膜に接する環状の下側親水面を前記基板の下面周縁部に沿って配置する下側親水面配置工程とを含む、請求項9記載の基板処理方法。
【請求項11】
基板の主面に非接触で当該基板を水平に保持する基板保持手段と、
前記基板保持手段に保持された基板の主面に処理液を供給する処理液供給手段と、
前記基板保持手段に保持された基板に交差する回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転手段と、
前記基板保持手段に保持された基板とは高さが異なる前記基板の主面側の水平面に沿って配置されており、前記基板の主面周縁部に沿って配置された環状の疎水面を有する環状部材とを含む、基板処理装置。
【請求項12】
前記疎水面の外縁は、前記基板保持手段に保持された基板の外端より外側に配置されている、請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記疎水面の内縁は、前記基板保持手段に保持された基板の外端より内側に配置されている、請求項11または12に記載の基板処理装置。
【請求項14】
基板の主面に非接触で水平に保持された当該基板の主面に処理液を供給する処理液供給工程と、
前記処理液供給工程と並行して、前記基板に交差する回転軸線まわりに前記基板を回転させる基板回転工程と、
前記処理液供給工程と並行して、前記基板とは高さが異なる前記基板の主面側の水平面に沿って配置されており、前記基板の主面周縁部に沿って配置された環状の疎水面を前記基板の主面に保持された処理液の液膜に接触させることにより、前記基板からの処理液の排出を規制する処理液排出規制工程とを含む、基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図15C】
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【図15D】
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【図15E】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−94836(P2012−94836A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203460(P2011−203460)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】