説明

基板処理装置および基板処理方法

【課題】基板Wの周縁部Eに形成された傾斜面Bf、Brに付着した汚染物質を、粘着ローラー84を用いて効果的に除去することを可能とする。
【解決手段】基板Wの周縁部Eに粘着剤層84aを介して当接する粘着ローラー84を、回転させながら基板Wの周縁部Wに沿って基板Wに対して相対的に移動させる(移動動作)。しかも、この移動動作の実行中に、基板Wの周縁部Eが粘着剤層84aに食い込んだ状態で、粘着剤層84aを基板Wに対して相対的に回転軸方向Df、Dbへ移動させ、これによって傾斜面Bf、Brに粘着剤層84aを接触させている。したがって、基板Wの周縁部Eに形成された傾斜面Bf、Brに付着したパーティクルを粘着ローラー84の粘着剤層84aで捕捉して、効果的に除去することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板の周縁部からパーティクルを除去する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、粘着ローラーを用いて基板の周縁部からパーティクル等の汚染物質を除去する装置が記載されている。つまり、この装置では、基板の主面に対して垂直に支持された粘着ローラーが、基板の周縁部に当接する。これによって、基板の周縁部に付着していた汚染物質が、粘着ローラーの粘着性によって粘着ローラーに移動して、基板の周縁部から除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−119576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような基板の周縁部の断面は、基板主面に垂直な平面形状を有するとは限らず、基板主面に対して傾斜した形状を有する場合がある。具体例を挙げれば、半導体基板の周縁部には、基板主面に対して傾斜したベベルが形成されるのが一般的である。しかしながら、このように基板主面に対して傾斜する傾斜面が周縁部に形成されていると、粘着ローラーの粘着層が基板周縁部の傾斜面に接触せずに、この傾斜面から汚染物質を十分に除去できない場合があった。
【0005】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板の周縁部に形成された傾斜面に付着した汚染物質を、粘着ローラーを用いて効果的に除去することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明にかかる基板処理装置は、上記目的を達成するため、外周面に粘着剤層を有して回転軸中心に回転自在な粘着ローラーと、主面に対して傾斜する傾斜面が周縁部に形成された基板の周縁部に粘着剤層を介して当接する粘着ローラーを、回転させながら基板の周縁部に沿って基板に対して相対的に移動させる移動動作を実行する第1移動機構と、第1移動手段が移動動作を実行中に、基板の周縁部が粘着剤層に食い込んだ状態で、粘着剤層を基板に対して相対的に回転軸方向へ移動させることで、傾斜面に粘着剤層を接触させる第2移動機構とを備えたことを特徴としている。
【0007】
また、この発明にかかる基板処理方法は、上記目的を達成するため、主面に対して傾斜する傾斜面が周縁部に形成された基板の周縁部に、外周面に形成された粘着剤層を介して当接する回転軸中心に回転自在な粘着ローラーを、回転させながら基板の周縁部に沿って基板に対して相対的に移動させる工程を備え、当該工程では、基板の周縁部が粘着剤層に食い込んだ状態で、粘着剤層を基板に対して相対的に回転軸方向へ移動させることで、傾斜面に粘着剤層を接触させることを特徴としている。
【0008】
このように構成された発明(基板処理装置、基板処理方法)は、基板の周縁部に粘着剤層を介して当接する粘着ローラーを、回転させながら基板の周縁部に沿って基板に対して相対的に移動させる移動動作(移動工程)を実行する。しかも、この発明は、この移動動作の実行中に、基板の周縁部が粘着剤層に食い込んだ状態で、粘着剤層を基板に対して相対的に回転軸方向へ移動させ、これによって傾斜面に粘着剤層を接触させている。したがって、基板の周縁部に形成された傾斜面に付着した汚染物質を粘着ローラーの粘着剤層で捕捉して、効果的に除去することが可能となっている。
【0009】
また、第2移動機構は、粘着剤層を基板に対して相対的に回転軸方向へ往復移動させるように、基板処理装置を構成しても良い。このように構成した場合、基板の表裏それぞれに傾斜面が形成されている場合であっても、傾斜面それぞれに対して粘着剤層を接触させて、汚染物質を効果的に除去することができる。
【0010】
また、粘着ローラーの回転軸は、基板の主面に垂直な方向に平行であるように、基板処理装置を構成しても良い。
【0011】
また、基板の主面に平行な方向において、基板の周縁部が粘着剤層に食い込む深さが傾斜面の幅以上であるように、基板処理装置を構成しても良い。このように構成することで、傾斜面に粘着剤層をしっかりと接触させて、基板の周縁部に形成された傾斜面から、より効果的に汚染物質を除去することが可能となる。
【0012】
また、第1移動機構は、通気口が形成された回転自在な支持台を有し、支持台に載置された基板の主面を通気口から吸引することで支持台に固定した基板を、支持台と一体的に回転させることにより、粘着ローラーを基板の周縁部に沿って基板に対して相対移動させるように、基板処理装置を構成しても良い。ただし、このように、支持台に載置された基板の主面を吸引することで基板を支持台に固定する構成では、支持台と基板主面との接触部分で、支持台から基板主面へと汚染物質が付着してしまうおそれがある。
【0013】
そこで、第1移動機構は、一方面を通気口に向けて支持台に配置されて他方面と通気口の間を気体が通過可能な通気性を有する粘着シートと、粘着シートを介して支持台に載置された基板の主面を通気口から粘着シートを介して吸引することで基板の主面を粘着シートに密着させて支持台に固定する基板密着手段とを有するように、基板処理装置を構成しても良い。このような構成では、その一方面を通気口に向けて支持台に配置されて、その他方面と通気口の間を気体が通過可能な通気性を有する粘着シートが設けられている。つまり、支持台が有する通気口との間に通気性を有する粘着シートが設けられている。したがって、粘着シートの他方面に載置された基板を通気口から粘着シートを介して吸引することで、基板を粘着シートに密着させることができ、その結果、吸引力と密着力によって基板を支持台にしっかりと固定することができる。しかも、基板の主面は粘着シートを介して支持台に載置される。したがって、粘着シートによって汚染物質を捕捉することで、基板主面への汚染物質の付着を抑制することが可能となる。
【0014】
なお、この構成では、基板を固定するにあたって、基板を粘着シートに密着させている。このような構成では、粘着シートに密着した基板を粘着シートから剥離するためには、この密着力に抗するだけの十分に大きな力を基板に与える必要がある。そのため、例えば、リフトピンで基板を突き上げる等の手法によって粘着シートから基板を剥離する構成では、リフトピンと基板の接触部分に局所的に大きな力が発生して、基板が破損してしまうおそれがある。
【0015】
そこで、第1移動機構は、粘着シートに密着した基板の主面と粘着シートの間に通気口から粘着シートを介して気体を圧入することで基板の主面を粘着シートから剥離する基板剥離手段をさらに備えるように、基板処理装置を構成しても良い。このような構成では、基板に対して局所的に大きな力を作用させることなく、圧入した気体が基板に及ぼす比較的分散化された力によって、粘着シートから基板を剥離することができる。その結果、粘着シートから基板を剥離する際に、基板が破損してしまうといった問題の発生を抑制することが可能となる。
【0016】
なお、傾斜面は種々の形状を有しうる。そこで例えば、傾斜面は平面形状を有するものであっても良い。また、傾斜面は曲面形状を有するものであっても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、基板の周縁部に形成された傾斜面に付着した汚染物質を、粘着ローラーを用いて効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態にかかる基板処理装置の一例を模式的に示した部分断面図である。
【図2】図1の基板処理装置の一部を鉛直方向に分解して模式的に示した斜視図である。
【図3】実施形態におけるパーティクル除去処理を示すフローチャートである。
【図4】図3のフローチャートにおける各ステップでの動作を説明するための動作説明図である。
【図5】基板周縁部を洗浄する粘着ローラーの動作を模式的に説明する動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、実施形態にかかる基板処理装置の一例を模式的に示した部分断面図である。図2は、図1の基板処理装置の一部を鉛直方向に分解して模式的に示した斜視図である。この基板処理装置1は、基台2から上方に延びる支軸3の上端に円形の支持テーブル4を取り付けて、この支持テーブル4の支持平面4fに載置された基板Wの周縁部Eから洗浄機構8によってパーティクル(汚染物質)を除去するパーティクル除去処理を実行するものである。なお、この実施形態では、半導体基板である基板Wに対してパーティクル除去処理を実行する場合を例示して説明する。
【0020】
基板Wが載置される支持テーブル4は、回転可能に構成されている。具体的には、基板処理装置1には、回転モーター21が具備されている。そして、制御部100の制御を受けて回転モーター21が回転すると、回転モーター21の駆動力が基台2に内蔵する動力伝達機構を介して支軸3に伝わり、支持テーブル4と支軸3とが一体的に鉛直軸を中心として回転する。
【0021】
支軸3の軸心には、鉛直方向に支持テーブル4の内部にまで延びる配管31が形成されている。この配管31は、支持テーブル4の内部で水平方向に放射状に分岐した後に、上方に延びて支持テーブル4の支持平面4fで開口する。こうして、鉛直上方を向く水平な支持平面4fにおいて、配管31に連通する複数の配管口4aが放射状に並んで開口する。また、支持テーブル4には、これら配管口4aの外側で同心円状に並ぶ複数の貫通孔4bが形成されている。これら貫通孔4bは、支持テーブル4を鉛直方向に貫通する孔である。また、この支持テーブル4は、支軸3の上端に固定された下部プレート42と、支持平面4fが形成されており前記下部プレート42に着脱自在な上部プレート43とに分離可能に構成されている。
【0022】
支持テーブル4の支持平面4fには、粘着性を有する円形の粘着シート5が固定されている。この粘着シート5には、その中心から放射状に並ぶ複数の通気孔5aが、支持テーブル4の複数の配管口4aに対応する位置に形成されている。つまり、各通気孔5aは、対応する配管口4aの上方で、粘着シート5を貫通するように形成されている。したがって、配管口4aから流出した気体は、この配管口4aの上方に位置する通気孔5aを介して粘着シート5を通過する。また、配管口4aに向かう気体は、この配管口4aの上方に位置する通気孔5aを介して粘着シート5を通過した後に、この配管口4aに流入する。このように、粘着シート5は、配管口4aに対して流入出する気体に対して通気性を有している。
【0023】
また、粘着シート5には、これら通気孔5aの外側で同心円状に並ぶ複数の貫通孔5bが、支持テーブル4の複数の貫通孔4bに対応する位置に形成されている。つまり、各貫通孔5bは、支持テーブル4に形成された対応する貫通孔4bの上方で、粘着シート5を貫通するように形成されている。したがって、支持テーブル4の貫通孔4bと粘着シート5の貫通孔5bとは鉛直方向に連なる。
【0024】
そして、このような粘着シート5が支持テーブル4の支持平面4fに固定されている。なお、上述したとおり、支持平面4fが形成された上部プレート43は、支軸3の上端に固定された下部プレート42に対して着脱自在となっている。したがって、支持平面4f上の粘着シート5と一体的に上部プレート43を下部プレート42から着脱することで、粘着シート5を交換できるようになっている。そして、この粘着シート5を介して支持テーブル4の上に基板Wが載置される。なお、支持テーブル4は基板Wより小さいサイズを有しており、支持テーブル4に載置された基板Wの周縁部Eは支持テーブル4より外側に突出する。
【0025】
一方、支持テーブル4の下方には、基板Wを上方に持ち上げて、粘着シート5から基板Wを離間させる基板上昇機構6が配置されている。この基板上昇機構6は、水平に配置された環状のフレーム61と、このフレーム61に同心円状に配置された複数のリフトピン62と、フレーム61を昇降させるソレノイド63とを備える。複数のリフトピン62は、支持テーブル4の複数の貫通孔4bを下方から臨むように形成されている。したがって、ソレノイド63がフレーム61を上昇させると、これに伴ってリフトピン62が貫通孔4b、5bを下方から貫通して、基板Wを突き上げる。こうして、基板Wは、粘着シート5から離間する。なお、ソレノイド63の動作は、制御部100によって制御される。
【0026】
また、基板処理装置1は、支持テーブル4の支持平面4fで開口する配管口4aに連通する配管31を減圧・加圧する圧力調整機構7を備える。具体的には、配管31には、減圧バルブ71を介して吸引ポンプ72が接続されている。そして、配管31内の減圧は、吸引ポンプ72を稼動させた状態で、減圧バルブ71を調整することで実行される。つまり、制御部100が減圧バルブ71を開くと、吸引ポンプ72が配管31内の排気を開始して、配管31内が減圧される。一方、制御部100が減圧バルブ71を閉じると、吸引ポンプ72の排気動作が停止して、配管31内は大気圧に戻る。
【0027】
また、配管31には、加圧バルブ73を介して窒素ガス供給源74が接続されている。そして、配管31内の加圧は、配管31内の加圧は加圧バルブ73を調整することで実行される。つまり、制御部100が加圧バルブ73を開くと、窒素ガス供給源74が配管31内への窒素ガスの供給を開始して、配管31内が加圧される。一方、制御部100が加圧バルブ73を閉じると、窒素ガス供給源によるガス供給動作が停止して、配管31内は大気圧に戻る。
【0028】
さらに、この基板処理装置1は、基板Wの周縁部Eからパーティクルを除去するための洗浄機構8を備えている。この洗浄機構8は、鉛直方向に延びる支持軸81と、支持軸81に支持されたケーシング82と、ケーシング82から下方に延びる回転軸83と、回転軸83の下端に回転自在に取り付けられた粘着ローラー84とを備える。そして、制御部100が支持軸81に接続されたモーターM81を回転させると、ケーシング82が回転軸83および粘着ローラー84と一体的に回動する。したがって、制御部100によってモーターM81を適宜回転させることで、粘着ローラー84を鉛直軸周りに回動させて、基板Wの周縁部Eに接離させることができる。この際、粘着ローラー84は、その外周面に形成された粘着剤層85aを介して、基板Wの周縁部Eに接離する。
【0029】
また、この粘着ローラー84が取り付けられた回転軸83は、ケーシング82内部に設けられた一対のガイドローラー85の間に挟まれて支持されている。そして、制御部100がガイドローラー85に接続されたモーターM85を回転させると、ガイドローラー85の回転に伴って回転軸83が鉛直方向に動く。したがって、制御部100によってモーターM85を適宜回転させることで、粘着ローラー84を鉛直方向に上下動させることができる。
【0030】
以上が、この実施形態にかかる基板処理装置1の概略構成である。続いては、基板処理装置1が実行するパーティクル除去動作について説明する。図3は、実施形態におけるパーティクル除去処理を示すフローチャートである。図4は、図3のフローチャートにおける各ステップでの動作を説明するための動作説明図である。図4では、鉛直方向に並ぶ支持テーブル4、粘着シート5および基板Wの一部が拡大されて示されている。以下の説明では、基板Wの表面に対して符号Wfを付与するとともに、基板Wの裏面に対して符号Wrを付与する。また、粘着シート5の表面に符号5fを付与するとともに、粘着シート5の裏面に符号5rを付与する。さらに、以下で適宜示すz軸は鉛直方向に相当し、x軸は水平方向に相当するものとする。
【0031】
以下に説明するパーティクル除去処理は、支持テーブル4に載置された基板Wの周縁部Eから粘着ローラー84によってパーティクルを除去するものである。また、支持テーブル4への載置によって、基板Wにパーティクルが付着することが無いように、基板Wは粘着シート5を介して支持テーブル4に載置される。つまり、図3、図4に示すように、ステップS101では、基板Wがその裏面Wrを粘着シート表面5fに向けて、この粘着シート表面5fに載置される。この状態では、基板Wは、自重により粘着シート表面5fに接しているに過ぎず、基板Wは支持テーブル4に固定されていない。
【0032】
続くステップS102では、制御部100が減圧バルブ71を開いて、配管31内の気体を吸引ポンプ72により吸引する。これによって、基板裏面Wrと粘着シート表面5fの間の気体が、通気孔5aを介して配管口4aへと吸引される。そして、配管口4aから粘着シート5を介して吸引される基板裏面Wrが粘着シート表面5fに押し付けられて、基板裏面Wrと粘着シート表面5fが密着する。この際、粘着シート5の通気孔5a周縁の粘着シート5は、鉛直方向に押し潰されることで、水平方向にはみ出して通気孔5aを塞ぐ。その結果、気体吸引前には通気孔5aが形成されていた部分においても、気体吸引後には基板裏面Wrと粘着シート表面5fが密着することとなる。
【0033】
なお、吸引ポンプ72による吸引が継続する間、基板Wは粘着シート5に密着されるのみならず、支持テーブル4に固定されることとなる。つまり、基板Wには粘着シート5からの粘着力と吸引ポンプ72からの吸引力が働くため、これらの力によって基板Wが支持テーブル4にしっかりと固定される。そして、こうして基板Wを支持テーブル4に固定した状態で、ステップS103の基板周縁部洗浄が実行される。詳述ずると、このステップS103では、支持テーブル4が基板Wを保持しつつ回転を開始して、スピンチャックとして機能する。そして、支持テーブル4と一体的に回転する基板Wの周縁部Eに、粘着ローラー84が当接して洗浄を実行する。
【0034】
図5は、基板周縁部を洗浄する粘着ローラーの動作を模式的に説明する動作説明図であり、特に、基板Wの周縁部Eの断面と粘着ローラー84との位置関係を示す。同図の「当接時」の欄では、粘着ローラー84が回転する基板Wの周縁部Eに当接したときの状態が示されている。同欄に示すように、粘着ローラー84は、その外周面に形成された粘着剤層84aを介して基板Wの周縁部Eに当接しつつ、基板Wの周縁部Eからの摩擦力を受けて回転軸83周りに従動回転する。これによって、粘着ローラー84は回転しながら、基板Wの周縁部Eに沿って基板Wに対して相対的に移動する。さらにこの際、洗浄機構8は、基板主面Wf、Wrに垂直な回転軸83に粘着ローラー84を回転自在に支持しつつ、粘着ローラー84の粘着剤層84aを基板Wの周縁部Eに圧接しており、その結果、基板主面Wf、Wrに水平なx軸方向において、基板Wの周縁部Eは粘着剤層84aに食い込んでいる。
【0035】
一方、基板Wの周縁部Eは、基板主面Wf、Wrに垂直な端面Bpの他に、基板主面Wf、Wrに対して傾斜した傾斜面Bf、Brを有している。傾斜面Bfは、基板表面Wf側で端面Bpの上端から基板Wの内側に向かって形成されており、いわゆるフロントベベルに相当する。また、傾斜面Brは、基板裏面r側で端面Bpの下端から基板Wの内側に向かって形成されており、いわゆるバックベベルに相当する。各傾斜面Bf、Brは、x軸方向において端面Bpから幅Lb(ファセットレングス)を有している。
【0036】
そして、図5の「当接時」の欄に示すように、x軸方向において、基板Wの周縁部Eが粘着剤層84aに食い込む深さLcが、各傾斜面Bf、Bpの幅Lb以上になっている(Lc≧Lb)。なお、基板Wの周縁部Eに当接した時点では、粘着剤層84aは、基板Wの端面Bpには接触しているものの、周縁部Eに形成された傾斜面Bf、Brには接触していない。そこで、ステップS103の基板周縁部洗浄では、粘着ローラー84を回転軸方向(z軸方向)に往復移動させて、粘着剤層84aを傾斜面Bf、Brに接触させる(図5の「往路移動」「復路移動」)。
【0037】
つまり、図5の「往路移動」の欄に示すように、粘着ローラー84をその回転軸83に平行に基板表面Wf側(方向Df)へ移動させることで、粘着剤層84aを基板裏面Er側の傾斜面Brに接触させることができる。一方、図5の「復路移動」の欄に示すように、粘着ローラー84をその回転軸83に平行に基板裏面Wr側(方向Db)へ移動させることで、粘着剤層84aを基板表面Ef側の傾斜面Bfに接触させることができる。このようにステップS103では、基板Wを回転させながら、基板Wの周縁部Eに粘着剤層84aを介して当接する粘着ローラー84を回転軸方向Df、Drに往復移動させることで、基板Wの傾斜面Bf、Brに粘着剤層84aを接触させて、傾斜面Bf、Brからパーティクルを除去することができる。
【0038】
このステップS103が完了すると、ステップS104が実行される。このステップS104では、制御部100が、減圧バルブ71を閉じて配管31内の排気を停止するとともに、加圧バルブ73を開いて配管31内に窒素ガスを供給する。これによって、基板裏面Wrと粘着シート表面5fの間に、配管口4aから通気孔5aを介して窒素ガスが圧入される。具体的には、配管口4aから流出する窒素ガスは、閉塞していた粘着シート5の各通気孔5aを押し開けるのに続いて、基板裏面Wrと粘着シート表面5fとの間を押し広げながら水平方向に進む。こうして、圧入された窒素ガスによって、基板裏面Wrと粘着シート表面5fとが剥離されて、これらの密着性が解消される。
【0039】
ここで、「剥離」とは、基板裏面Wrと粘着シート表面5fとの間に圧入されたガスによって、これらの密着状態が解消された状態を示すものであり、基板裏面Wrと粘着シート表面5fとが離間していることまでを意味するものではない。
【0040】
ステップS105では、制御部100がソレノイド63に上昇指令を出して、ソレノイド63に各リフトピン62を上昇させる。これによって、粘着シート5から剥離された基板Wが、各リフトピン62によって押し上げられて、粘着シート5から離間する。そして、これらステップS101〜S105を経てパーティクルが除去された基板Wは、例えばフォトリソグラフィ等の以後の工程に供することができる。これによって、以後の工程では、パーティクルP1、P2が除去された基板Wに対して、適切な処理を実行することができる。
【0041】
以上のように、この実施形態では、基板Wの周縁部Eに粘着剤層84aを介して当接する粘着ローラー84を、回転させながら基板Wの周縁部Wに沿って基板Wに対して相対的に移動させる(移動動作)。しかも、この実施形態では、この移動動作の実行中に、基板Wの周縁部Eが粘着剤層84aに食い込んだ状態で、粘着剤層84aを基板Wに対して相対的に回転軸方向Df、Dbへ移動させ、これによって傾斜面Bf、Brに粘着剤層84aを接触させている。したがって、基板Wの周縁部Eに形成された傾斜面Bf、Brに付着したパーティクルを粘着ローラー84の粘着剤層84aで捕捉して、効果的に除去することが可能となっている。
【0042】
また、この実施形態では、粘着剤層84aを基板Wに対して相対的に回転軸方向Df、Dbへ往復移動させている。その結果、この実施形態で示したように、基板Wの表裏それぞれに傾斜面Bf、Brが形成されている場合であっても、傾斜面Bf、Brそれぞれに対して粘着剤層84aを接触させて、パーティクルを効果的に除去することができる。
【0043】
また、この実施形態では、基板Wの主面Wf、Wrに平行な方向(x軸方向)において、基板Wの周縁部Eが粘着剤層84aに食い込む深さLcが傾斜面Bf、Brの幅Lb以上となっている。このように構成することで、傾斜面Bf、Brに粘着剤層84aをしっかりと接触させて、基板Wの周縁部Eに形成された傾斜面Bf、Brから、より効果的にパーティクルを除去することが可能となる。
【0044】
ところで、この実施形態では、通気口4aが形成された回転自在な支持テーブル4が設けられていた。そして、支持テーブル4に載置された基板Wの主面Wrを通気口4aから吸引することで支持テーブル4に固定した基板Wを、支持テーブル4と一体的に回転させることにより、粘着ローラー84を基板Wの周縁部Eに沿って基板Wに対して相対移動させていた。ただし、このように、支持テーブル4に載置された基板Wの主面Wrを吸引することで基板を支持テーブル4に固定する構成では、支持テーブル4と基板主面Wrとの接触部分で、支持テーブル4から基板主面Wrへとパーティクルが付着してしまうおそれがある。
【0045】
そこで、この実施形態では、その裏面5rを配管口4aに向けて支持テーブル4に配置されて、その表面5fと配管口4aの間を気体が通過可能な通気性を有する粘着シート5が具備されている。つまり、支持テーブル4が有する配管口4aとの間に通気性を有する粘着シート5が具備されている。したがって、粘着シート5の表面5fに載置された基板Wを通気口4aから粘着シート5を介して吸引することで、基板Wを粘着シート5に密着させることができ、その結果、吸引力と密着力によって基板を支持テーブル5にしっかりと固定することができる。しかも、基板主面Wrは粘着シート5を介して支持テーブル4に載置される。したがって、粘着シート5によってパーティクルを捕捉して、基板主面Wrへのパーティクルの付着を抑制することが可能となる。
【0046】
また、この実施形態は、粘着シート5と基板Wとの間に気体(窒素ガス)を圧入することで、粘着シート5から基板Wを剥離している。これによって、基板Wに対して局所的に大きな力を作用させることなく、圧入した気体(窒素ガス)が基板Wに及ぼす比較的分散化された力によって、粘着シート5から基板Wを剥離することができる。その結果、基板Wの破損を抑制しつつ、粘着シート5から基板Wを剥離することが可能となっている。
【0047】
また、この実施形態では、粘着シート5から剥離した基板Wを、粘着シート5から離間させる構成を備えている。なお、このように基板Wを粘着シート5から離間させる構成としては種々のものを採用可能であるが、この実施形態によれば、基板Wを突き上げて粘着シートから離間させる上述のリフトピンのようなものを用いることができる。なぜなら、基板Wの突き上げに先立って基板Wは粘着シート5から剥離されており、基板Wと粘着シート5の密着状態は解消されているため、比較的小さい力で破損の発生を抑えながら基板Wを粘着シート5から離間させることができるからである。
【0048】
<その他>
このように、上記実施形態では、基板処理装置1が本発明の「基板処理装置」に相当し、粘着ローラー84が本発明の「粘着ローラー」に相当し、粘着剤層84aが本発明の「粘着剤層」に相当し、回転軸83が本発明の「回転軸」に相当し、支持テーブル4が本発明の「第1移動機構」に相当し、洗浄機構8が本発明の「第2移動機構」に相当し、基板Wが本発明の「基板」に相当し、基板Wの表裏面Wf,Wrが本発明の「主面」に相当し、周縁部Eが本発明の「周縁部」に相当し、傾斜面Bf、Brが本発明の「傾斜面」に相当する。また、支持テーブル4が本発明の「支持台」に相当し、配管口4aが本発明の「通気口」に相当し、粘着シート5が本発明の「粘着シート」に相当し、粘着シート表面5fが本発明の「粘着シートの他方面」に相当し、粘着シート裏面5rが本発明の「粘着シートの一方面」に相当し、吸引ポンプ72、配管31および制御部100が本発明の「基板密着手段」として機能し、窒素ガス供給源74、配管31および制御部100が本発明の「基板剥離手段」として機能している。
【0049】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態では、半導体基板である基板Wに対して本発明を適用した場合について説明した。しかしながら、本発明を適用可能な基板Wの種類は半導体基板に限られない。
【0050】
また、上記実施形態では、表裏面Wf、Wrの両側に傾斜面Bf、Brが形成されている基板Wに対してパーティクル洗浄動作を実行した場合について説明した。しかしながら、表裏面Wf、Wrの一方側にのみ傾斜面が形成されている基板Wに対しても、上述と同様にしてパーティクル洗浄動作を実行して、傾斜面からパーティクルを除去することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、平面形状を有する傾斜面Bf、Brが例示されていた。しかしながら、傾斜面Bf、Brの形状はこれに限られず、平面形状以外に、例えば凹状あるいは凸状に湾曲した曲面形状を有するものであっても良い。
【0052】
また、上記実施形態では、平面形状を有する端面Bpが例示されていた。しかしながら、端面Bpの形状はこれに限られず、平面形状以外に、例えば凹状あるいは凸状に湾曲した曲面形状を有するものであっても良い。
【0053】
また、上記実施形態では、粘着ローラー84の回転軸83は、基板主面Wf、Wrに垂直に支持されていた。しかしながら、粘着ローラー84の回転軸83の方向はこれに限られず、基板主面Wf、Wrに対して傾いていても良い。例えば、基板裏面Wr側にのみ傾斜面Brが形成されているような場合には、粘着ローラー84の基板裏面Wr側の端部を基板Wの内側に傾けつつ、粘着ローラー84を支持するように構成しても良い。これによって、基板裏面Wr側の傾斜面Brに対して、よりしっかりと粘着剤層84aを接触させて、パーティクルの除去率の向上を図ることができる。
【0054】
また、上記実施形態では、基板Wの主面Wf、Wrに平行な方向(x軸方向)において、基板Wの周縁部Eが粘着剤層84aに食い込む深さLcが傾斜面Bf、Brの幅Lb以上となっていた。しかしながら、基板Wの周縁部の食い込む深さLcと傾斜面Bf、Brとの寸法関係はこれに限られない。
【0055】
また、上記実施形態では、粘着シート5を介して支持テーブル4に基板Wを載置するスピンチャック機構によって基板Wを固定する場合について説明した。しかしながら、基板Wを固定する方法はこれに限られない。そこで、例えば粘着シート5を用いない機構によって基板Wを固定するように構成しても良い。
【0056】
また、上記実施形態では、基板Wを駆動回転させて、これに当接する粘着ローラー84を従動回転させていた。しかしながら、これとは逆に、粘着ローラー84を駆動回転させて、これに当接する基板Wを従動回転させてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、基板Wを回転させることで、粘着ローラー84を基板Wに対して相対移動させていた。しかしながら、基板Wを固定したまま粘着ローラー84を基板Wの周縁部Eに沿って動かすことで、粘着ローラー84を基板Wに対して相対移動させても良い。
【0058】
また、上記実施形態では、粘着ローラー84を動かすことで、粘着剤層84を基板Wに対して相対的に回転軸83方向へ移動させていた。しかしながら、粘着ローラー84を固定したまま基板Wを動かすことで、粘着剤層84を基板Wに対して相対的に回転軸83方向へ移動させても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、平面(支持平面4f)で基板Wを支持していたが、基板Wの支持態様はこれに限られない。したがって、例えば多数のピンで基板Wを支持するように構成しても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、粘着シート5から剥離された基板Wをリフトピン62により突き上げることで、粘着シート5から基板Wを離間させていた。しかしながら、粘着シート5から剥離された基板Wを粘着シート5から離間させる具体的構成はこれに限られず種々の構成を採用可能である。
【0061】
また、粘着シート5から基板Wを剥離する際に圧入する気体の種類は、上述の窒素ガスに限られず、例えば空気であっても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、通気孔5aを貫通形成することで粘着シート5の通気性を確保していた。しかしながら、このような通気孔5aを形成する代わりに、多孔質性の材料で粘着シート5を構成することで、粘着シート5の通気性を確保しても良い。
【0063】
また、上記実施形態では、支持平面4fに開口する複数の配管口4aは、いずれも吸引ポンプ72と窒素ガス供給源74の両方が接続されており、気体の吸引および圧入の両方を実行できるものであった。しかしながら、吸引ポンプ72が接続されて気体の吸引を行う吸引用配管口4a(通気口)と、窒素ガス供給源74が接続されて気体の圧入を行う圧入用配管口4a(通気口)とを別々に支持平面4fに開口して形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0064】
この発明は、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などを含む基板全般に付着したパーティクル等の汚染物質を除去する基板処理装置および基板処理方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1…基板処理装置
31…配管31
4…支持テーブル
4a…配管口
4f…支持平面4
5…粘着シート
5a…通気孔
71…減圧バルブ
72…吸引ポンプ
73…加圧バルブ
74…窒素ガス供給源
8…洗浄機構
81…支持軸
82…ケーシング
83…回転軸
84…粘着ローラー
84a…粘着剤層
W…基板W
E…周縁部
Wf,Wr…主面
Bf、Br…傾斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に粘着剤層を有して回転軸中心に回転自在な粘着ローラーと、
主面に対して傾斜する傾斜面が周縁部に形成された基板の前記周縁部に前記粘着剤層を介して当接する前記粘着ローラーを、回転させながら前記基板の前記周縁部に沿って前記基板に対して相対的に移動させる移動動作を実行する第1移動機構と、
前記第1移動手段が前記移動動作を実行中に、前記基板の前記周縁部が前記粘着剤層に食い込んだ状態で、前記粘着剤層を前記基板に対して相対的に前記回転軸方向へ移動させることで、前記傾斜面に前記粘着剤層を接触させる第2移動機構と
を備えたことを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記第2移動機構は、前記粘着剤層を前記基板に対して相対的に前記回転軸方向へ往復移動させる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記粘着ローラーの前記回転軸は、前記基板の前記主面に垂直な方向に平行である請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記基板の前記主面に平行な方向において、前記基板の前記周縁部が前記粘着剤層に食い込む深さが前記傾斜面の幅以上である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記第1移動機構は、通気口が形成された回転自在な支持台を有し、前記支持台に載置された前記基板の前記主面を前記通気口から吸引することで前記支持台に固定した前記基板を、前記支持台と一体的に回転させることにより、前記粘着ローラーを前記基板の前記周縁部に沿って前記基板に対して相対移動させる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記第1移動機構は、一方面を前記通気口に向けて前記支持台に配置されて他方面と前記通気口の間を気体が通過可能な通気性を有する粘着シートと、前記粘着シートを介して前記支持台に載置された前記基板の前記主面を前記通気口から前記粘着シートを介して吸引することで前記基板の前記主面を前記粘着シートに密着させて前記支持台に固定する基板密着手段とを有する請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第1移動機構は、前記粘着シートに密着した前記基板の前記主面と前記粘着シートの間に前記通気口から前記粘着シートを介して気体を圧入することで前記基板の前記主面を前記粘着シートから剥離する基板剥離手段をさらに備えた請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記傾斜面は、平面形状を有する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記傾斜面は、曲面形状を有する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
主面に対して傾斜する傾斜面が周縁部に形成された基板の前記周縁部に、外周面に形成された粘着剤層を介して当接する回転軸中心に回転自在な粘着ローラーを、回転させながら前記基板の前記周縁部に沿って前記基板に対して相対的に移動させる移動工程を備え、
前記移動工程では、前記基板の前記周縁部が前記粘着剤層に食い込んだ状態で、前記粘着剤層を前記基板に対して相対的に前記回転軸方向へ移動させることで、前記傾斜面に前記粘着剤層を接触させることを特徴とする基板処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−74124(P2013−74124A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212218(P2011−212218)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】