説明

基板処理装置

【課題】処理液バルブのリーク故障や吸引手段の故障を検出して、基板処理不良を抑制する。
【解決手段】この基板処理装置は、基板Wに処理液を吐出するノズル12と、ノズル12に接続された処理液供給管25と、処理液供給管25に介装された第1および第2処理液バルブ28A,28Bとを備えている。第1処理液バルブ28Aとノズル12との間に設定された分岐位置36には、処理液吸引管32が処理液供給管25に分岐接続されている。処理液吸引管32には吸引装置34が接続されており、その途中部には吸引バルブ33が介装されている。処理液供給管25は、分岐位置36とノズル12との間において、鉛直方向に沿う液面検出部40を有している。この液面検出部40に設定された液面検出位置42には、液面センサ41が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に対して処理液を用いた処理を施す基板処理装置に関する。処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体装置や液晶表示装置の製造工程では、半導体ウエハ等の基板に対して処理液を用いた処理を施す基板処理装置が用いられる。このような基板処理装置には、複数枚の基板に対して一括して処理を施すバッチ型のものと、1枚ずつの基板に対して処理を施す枚葉型のものとがある。
枚葉型の基板処理装置は、基板をほぼ水平に保持して回転させるスピンチャックと、このスピンチャックに保持された基板に対して処理液を供給する処理液ノズルとを備えている。たとえば、処理液ノズルとしては、一定の位置に吐出部が固定された固定ノズルや、スピンチャックに保持された基板に沿って揺動する揺動アームの先端付近に吐出部を保持し、揺動アームの揺動によって処理液供給位置を基板上でスキャンさせるスキャン型ノズルなどが用いられる。
【0003】
図4は、処理液の供給のための構成を示す図解図である。処理液ノズル1には、処理液配管5が接続され、この処理液配管5には処理液バルブ6が介装されている。そして、この処理液バルブ6の開閉によって、基板Wへの処理液10の供給および供給停止を制御するようになっている。
処理液ノズル1は、水平部2と、この水平部2から垂下した垂下部3とを有し、この垂下部3の下端が処理液吐出口4となっている。
【0004】
処理液バルブ6と処理液ノズル1との間の処理液配管5からは、吸引配管7が分岐している。この吸引配管7は、吸引バルブ8を介して吸引装置(図示せず)に接続されている。
処理液バルブ6を閉じて処理液10の供給を停止するときには、吸引バルブ8が開かれ、処理液バルブ6よりも処理液ノズル1側の処理液が吸引される。処理液の吸引は、処理液先端面が水平部2に後退するまで行われる。
【特許文献1】特開2005−277211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、処理液バルブ6が故障して処理液のリークが生じると、処理液先端面が水平部2から垂下部3へと前進し、処理液吐出口4からぼた落ちする状態に至る懸念がある。これにより、処理液供給開始タイミング前や処理液供給停止タイミング後に基板W上に処理液がぼた落ちするおそれがある。その結果、基板処理が不良になる。
このような基板処理不良は、処理後の基板Wを検証して始めて発見されることが多く、ロット単位で多数の処理不良基板が生じ、大きな損失を招くという問題がある。
【0006】
また、吸引バルブ8および吸引装置を含む吸引系統に故障が生じていると、処理液先端面を水平部2にまで後退させることができず、垂下部3に残留するおそれがある。したがって、処理液ノズル1内の残留処理液10が基板W上にぼた落ちする場合がある。したがって、やはり、処理液の吐出開始および/または吐出停止タイミングを正確に規定することができず、基板の処理が不良になったり、基板毎に処理にばらつきが生じたりするおそれがある。
【0007】
たとえば、スキャン型ノズルの場合には、スピンチャックの側方のプリディスペンスポッドにおいてプリディスペンスが行われ、その後に、揺動アームの揺動によって処理液ノズルが基板上に導かれる。この場合に、プリディスペンス直後の処理液ノズルから処理液がぼた落ちすれば、処理液による処理開始のタイミングを正確に規定することができない。より具体的には、吐出部が処理開始位置に達するまでに、基板上への処理液のぼた落ちが生じ、基板に対する処理が不良になるおそれがある。
【0008】
そこで、この発明の一つの目的は、処理液バルブの故障を検出して、処理液のリークに起因する基板処理不良を抑制または防止できる基板処理装置を提供することである。
また、この発明の他の目的は、吸引手段の故障を検出して、不用意な処理液供給に起因する基板処理不良を抑制または防止できる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、基板(W)を処理するための処理液を吐出するノズル(12)と、このノズルに接続され、当該ノズルに処理液を供給する処理液供給管(25)と、この処理液供給管に介装され、前記ノズルへの処理液の供給およびその停止を切り換える処理液バルブ(28A)と、この処理液バルブと前記ノズルとの間に設定された分岐位置(36)で前記処理液供給管に分岐接続され、前記処理液供給管内の処理液を吸引して排出するための処理液吸引管(32)と、この処理液吸引管を介して前記処理液供給管内の処理液を吸引する吸引手段(33,34)と、前記分岐位置と前記ノズルとの間に設定された所定の液面検出位置で前記処理液供給管内の処理液先端面を検出する処理液先端面検出手段(41)とを含む、基板処理装置である。なお、括弧内の英数字は後述の実施形態における対応構成要素等を表す。以下、この項において同じ。
【0010】
この構成によれば、処理液バルブを開くことによって、処理液供給管を介してノズルへと処理液を供給でき、このノズルから処理液を吐出させることができる。処理液バルブを閉じることによって、ノズルからの処理液吐出を停止することができる。処理液バルブを閉じた状態で吸引手段を作動させることで、処理液供給管の分岐位置からノズル側の処理液を処理液吸引管を介して吸引し、処理液配管内の処理液先端面を後退させることができる。
【0011】
処理液先端面が液面検出位置よりも後退するまで処理液を吸引しておくと、その後に処理液先端面検出手段が処理液先端面を検出すれば、処理液バルブのリーク故障が生じていることが分かる。こうして、処理液バルブのリーク故障を検出できる。また、ノズルから液面検出位置にまで処理液先端面を後退させるのに十分な時間だけ吸引手段を作動させても処理液先端面が液面検出位置よりも後退したことが検出できなければ、吸引手段に不具合が生じていることが分かる。こうして、吸引手段の故障を検出できる。このようにして、処理液ノズルや吸引手段の故障を検出できるので、不所望なタイミングで不用意に基板に処理液が供給されてしまうことを抑制または防止できるから、基板処理不良を抑制することができる。
【0012】
前記基板処理装置は、前記ノズルが配置された処理室と、前記処理液バルブ、前記吸引手段および前記処理液先端面検出手段が配置された処理液ユニットとをさらに含んでいてもよい。この場合に、処理液ユニットから処理室へと処理液供給管を通して処理液が供給されるようになっていて、液面検出位置が処理液ユニット内に設定されていてもよい。この場合、処理液ユニット内の液面検出位置より処理液先端面が後退するまで処理液を吸引するように吸引手段を作動させることになる。
【0013】
請求項2記載の発明は、前記処理液バルブを閉じた後に、前記吸引手段を作動させて前記処理液供給管内の処理液を吸引して排除する吸引工程(S1,S2)を行う制御手段(55)をさらに含み、前記制御手段が、前記吸引工程の後に、前記処理液先端面検出手段が処理液先端面を検出したことに応答して、前記処理液バルブに異常が発生したものと判断し、所定の処理液バルブ異常処理を行う処理液バルブ異常処理手段(S6,S7)をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置である。
【0014】
この構成によれば、処理液バルブを閉じ、吸引手段によって処理液供給管内の処理液が吸引(より具体的には、処理液先端面が液面検出位置よりも分岐位置側に後退するまで吸引)された後に、処理液先端面検出手段の出力が監視される。処理液バルブが閉じられているので、この処理液バルブが正常である限り、処理液の供給はなく、したがって、処理液先端面がノズル側に移動することはないはずである。それにも拘わらず処理液先端面検出手段が処理液先端面を検出したとすれば、処理液バルブにリーク故障が生じていることになる。そこで、処理液先端面検出手段が処理液先端面を検出したことに応答して、処理液バルブ異常処理が行われる。この処理液バルブ異常処理は、警報発生処理、基板処理停止処理などを含む処理であってもよい。
【0015】
請求項3記載の発明は、前記処理液バルブである第1の処理液バルブに加えて、前記処理液供給管に介装され、前記ノズルへの処理液の供給およびその停止を切り換える第2の処理液バルブ(28B)をさらに含み、前記処理液バルブ異常処理手段が行う処理液バルブ異常処理は、前記第2の処理液バルブを閉じて前記ノズルへの処理液の供給を停止させる処理を含む、請求項2記載の基板処理装置である。第1処理液バルブに異常が生じていない通常時には、前記第2の処理液バルブは、開状態に維持されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、処理液供給管には、第1の処理液バルブに加えて第2の処理液バルブが介装されている。そして、第1の処理液バルブにリーク故障が生じていると判定されると、第2処理液バルブが閉じられる。これにより、ノズルへの処理液の供給を停止することができる。その結果、第1の処理液バルブのリーク故障に起因して不所望なタイミングで基板に処理液が供給されることを抑制または防止できる。こうして、基板の処理不良を一層確実に抑制または防止できる。
【0017】
請求項4記載の発明は、前記処理液バルブを閉じた後に、前記吸引手段を作動させて前記処理液供給管内の処理液を吸引して排除する吸引工程を行う制御手段をさらに含み、前記制御手段が、前記吸引工程中または前記吸引工程後に前記処理液先端面検出手段の出力を参照して、処理液先端面が前記液面検出位置よりも前記分岐位置側に後退したことが検出されないときに、前記吸引手段の異常が発生したものと判断し、所定の吸引異常処理を行う吸引異常処理手段(S3,S4)を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
【0018】
この構成によれば、処理液先端面検出手段の出力を参照して、処理液先端面が液面検出位置よりも前記分岐位置側に後退したかどうかが検出される。このような処理液先端面の後退が検出されなければ、吸引手段に異常が発生しているものと判断されて吸引異常処理が行われる。この吸引異常処理は、警報発生、基板処理装置の停止などを含む処理であってもよい。
【0019】
たとえば、吸引工程中に処理液先端面検出手段の出力を監視し、処理液先端面が液面検出位置を通過して分岐位置側へと後退したかどうかを検出してもよい。また、処理液先端面が液面検出位置よりも分岐位置側に後退させるのに十分な時間(ただし吸引手段が正常な場合に対応する時間)だけ吸引手段を作動させた後、処理液先端面検出手段の出力を参照し、処理液先端面が液面検出位置よりも分岐位置側に後退したかどうか(液面検出位置に処理液が存在するかどうか)を検出するようにしてもよい。
【0020】
請求項5記載の発明は、前記処理液供給管が、前記液面検出位置を含む区間に、前記分岐位置側よりも前記ノズル側が高くなるように高低差を付けた液面検出部(40)を有しており、前記処理液先端面検出手段は、前記液面検出部において処理液先端面を検出するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置である。
この構成によれば、処理液供給管には、分岐位置よりもノズル側の方が高くなるように高低差を付けた液面検出部が液面検出位置を含む区間に設けられている。これにより、重力を利用して処理液先端面の位置を安定化できるので、処理液先端面が液面検出位置よりもノズル側にあるか否かを正確に検出できる。前記液面検出部は、鉛直方向に沿うように設けられていることが好ましい。これにより、より一層正確な検出が可能になる。
【0021】
請求項6記載の発明は、前記処理液供給管を保持することによって前記液面検出部を形成する保持部材(43)をさらに含み、前記処理液先端面検出手段が、前記保持部材に取り付けられたセンサ(41)を含む、請求項5記載の基板処理装置である。この構成によれば、保持部材によって、高低差を付けた液面検出部を処理液供給管の途中部に形成することができる。そして、この保持部材を利用して、処理液先端面検出のためのセンサが取り付けられている。これにより、処理液先端面検出手段は、確実に液面検出部で処理液先端面を検出できるうえ、センサ取り付けのための構成を簡単にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための概念図である。この基板処理装置は、半導体ウエハ等の円形の基板Wに処理液を供給して当該基板Wを処理するためのものである。この基板処理装置は、内部で基板Wが処理される処理室51と、この処理室51に向けて処理液を供給するための処理液ユニット52とを備えている。
【0023】
処理室51内には、スピンチャック11と、処理液ノズル12と、リンス液ノズル13と、ノズル保持機構16とが収容されている。スピンチャック11は、基板Wをほぼ水平に保持して鉛直軸線まわりに回転可能なスピンベース14と、このスピンベース14を鉛直軸線まわりに回転させる回転駆動機構15とを含む。
ノズル保持機構16は、ほぼ鉛直方向に沿って配置された回動軸18と、この回動軸18に対して水平方向に沿って取り付けられた揺動アーム19と、回動軸18を鉛直軸線まわりに所定の回動角度範囲で往復回動させることによって揺動アーム19を揺動させる揺動駆動機構20とを備えている。揺動アーム19の先端部に、処理液ノズル12が保持されている。したがって、揺動駆動機構20を作動させて、揺動アーム19を水平面に沿って揺動させることにより、処理液ノズル12から供給される処理液の着液点は、スピンチャック11に保持された基板Wの回転中心および周端縁を含む円弧形状の軌跡22を描いて移動することになる。これによって、処理液吐出部15によって基板Wの上面全域をスキャンしながら処理液を供給することができる。
【0024】
処理ユニット52には、処理液供給機構17が収容されている。処理液供給機構17は、処理液ノズル12に処理液を供給する処理液配管25と、処理液を貯留した処理液タンク26と、処理液タンク26から処理液を汲み出して処理液配管25へと送り込むポンプ27とを備えている。処理液配管25には、処理液の流量を調節する流量調節バルブ23、処理液の供給/停止を切り換えるための第1処理液バルブ28Aおよび第2の処理液バルブ28B、処理液の流量を計測するための流量計29、ならびに処理液配管25に送り込まれる処理液の温度を調整するための温度調節器30が介装されている。図1の構成では、第1処理液バルブ28Aよりも処理液供給方向上流側に第2処理液バルブ28Bが配置されているが、これらの配置は逆であってもよい。
【0025】
処理液配管25は、処理液ユニット52を出て処理室51に入り、この処理室51内で処理液ノズル12に接続されている。処理液配管25と処理液ノズル12とは、別部品であってもよいし、処理液配管25の先端部を処理液ノズル12として用いてもよい。すなわち、同一部品で処理液配管25および処理液ノズル12を構成することもできる。
処理液配管25において温度調節器30と第1処理液バルブ28Aとの間には、処理液を処理液タンク26へと帰還させるためのリターン配管31が分岐接続されている。処理液バルブ28が閉じられているときには、ポンプ27によって汲み出された処理液は、温度調節器30を通り、さらにリターン配管31を通って処理液タンク26へと帰還されることによって循環され、これにより、処理液の温度を基板Wの処理に適した一定の温度に保持することができるようになっている。
【0026】
一方、第1処理液バルブ28の下流側、この実施形態では流量計29の下流側に設定された分岐位置36には、それよりも下流側の処理液配管25内の処理液を吸引するための吸引配管32が分岐接続されている。この吸引配管32は、吸引バルブ33および流量調節バルブ24を介して吸引装置34へと接続されている。この実施形態では、分岐位置36は、処理液ユニット52内に設定されている。
【0027】
分岐位置36よりも下流側には、処理液配管25内の処理液先端面(液面)を検出するための液面検出部40が設けられている。液面検出部40は、処理液配管25の一部の区間であり、この実施形態では、処理液ユニット52内に配置されていて、分岐位置36側よりも処理液ノズル12側の方が高くなるように高低差を付けてある。より具体的には、この実施形態では、液面検出部40は、処理液配管25の途中部の区間を鉛直方向に沿う直管部をなすように保持して構成されている。そして、この液面検出部40に近接する位置には、液面検出部40内の処理液の液面(処理液先端面)を所定の液面検出位置(所定の液面検出高さ)42で検出するための液面センサ41が配置されている。この液面センサ41は、具体的には、液面検出位置42における処理液の有無を検出し、その検出結果に応じた信号を出力するものである。液面検出位置42を処理液先端面が通過することにより、処理液の液面(処理液先端面)が検出されることになる。
【0028】
基板処理装置の各部を制御するために、制御ユニット55が備えられている。この制御ユニット55には、液面センサ41の出力が与えられるようになっている。制御ユニット55は、さらに、回転駆動機構15、揺動駆動機構20、吸引装置34および温度調節器30の動作を制御し、また、第1および第2処理液バルブ28A,28Bおよび吸引バルブ33を開閉制御し、流量計29の出力をモニタする。
【0029】
スピンチャック11の側方には、基板Wの処理に先立ち、処理液ノズル12から処理液をプリディスペンスするためのプリディスペンスポッド38が配置されている。このプリディスペンスポッド38は、処理液ノズル12からプリディスペンスされる処理液を受けて、排液配管39へと導くようになっている。処理液のプリディスペンスを行うことにより、処理液配管25内に非温度調節状態の処理液が存在していれば、これを予め排出し尽くした後に、適切に温度調節された処理液を処理開始当初から基板Wに供給することができる。
【0030】
図2は、液面検出部40に関連する構成を説明するための図解図である。処理液ユニット52内には、処理液配管25の途中部の液面検出部40を鉛直方向に沿う姿勢で保持する配管ブラケット43が設けられ、処理液ユニット52内の適所に固定されている。配管ブラケット43は、たとえば、鉛直方向に沿う長尺形状の本体部44と、この本体部44の両端に設けられた一対の配管クランプ45,46とを備えた横向きU字状に形成されている。一対の配管クランプ45,46は、鉛直方向に沿って上下に配置されており、上下方向に所定の間隔を開けて配置されている。一方の配管クランプ45は、液面検出部40の上端部を保持し、他方の配管クランプ46は、液面検出部40の下端部を保持している。これにより、液面検出部40は、鉛直方向に沿う直管状を成している。
【0031】
液面センサ41は、本体部44の中間部付近に結合されたセンサブラケット48に固定されている。センサブラケット48は液面検出位置42付近で処理液配管25を抱きかかえるように配置されている。このように、センサブラケット48を配管ブラケット43に取り付けた構造により、液面センサ41の位置ずれを効果的に抑制または防止できる。
液面センサ41は、処理液を光学的に検出する光学センサであってもよいし、超音波を用いて処理液を検出する超音波センサであってもよいし、液面検出位置42付近での静電容量の変化を検出する静電容量センサであってもよい。光学センサは、たとえば、発光素子と受光素子との対で構成されてもよい。このような光学センサとしては、発光素子から発生して処理液配管25を通過した光を検出する透過型のセンサと、発光素子から発生して処理液配管25から反射してくる光を検出する反射型のセンサとがあり、いずれも処理液配管25内の処理液の検出のために用いることができる。
【0032】
次に、基板処理装置の動作について説明する。
未処理の基板Wは、基板搬送ロボット(図示せず)によって、処理室51内へと搬入され、スピンチャック11に受け渡される。基板搬送ロボットのハンドが処理室51から退出した後、回転駆動機構15によってスピンチャック11のスピンベース14が回転される。したがって、スピンチャック1に保持された基板Wが鉛直軸線まわりに回転される。
【0033】
揺動アーム19は、初期状態において、処理液ノズル12をプリディスペンスポッド38上に配置した退避位置にある。この状態で、第1処理液バルブ28Aが一定時間だけ開かれることにより、第1処理液バルブ28Aよりも上流側の処理液が処理液配管25を介して処理液ノズル12へと導かれ、処理液配管25内は温度調節された状態の処理液で満たされる。
【0034】
このプリディスペンスを終了すると、第1処理液バルブ28Aが閉じられ、代わって、吸引バルブ33が開かれる。これにより、常時作動状態とされている吸引装置34の働きが有効化され、分岐位置36と処理液ノズル12との間の処理液配管25内に存在する処理液が吸引して排除される。吸引バルブ33は、所定時間だけ開成状態とされた後に閉成される。その後、揺動駆動機構20が作動され、揺動アーム19がスキャン開始位置へと移動させられる。スキャン開始位置は、たとえば、処理液ノズル12が基板Wの回転中心の直上に配置される位置であってもよいし、処理液ノズル12が基板Wの周縁部の直上に配置される位置であってもよい。
【0035】
この状態から、第1処理液バルブ28Aが開かれる。それとともに、揺動駆動機構20は、基板Wの回転中心およびその周端部を含む所定の揺動範囲(基板Wの半径に相当する範囲または直径に相当する範囲)にわたって処理液の着液点が移動するように、往復揺動させられる。これにより、処理液配管25を介して処理液ノズル12から吐出される処理液が基板Wの全域に導かれ、この基板Wの表面に対する処理が行われる。
【0036】
処理液タンク26に処理液としてふっ酸などの薬液を貯留し、この薬液を処理液ノズル12から基板W上に吐出した後には、揺動アーム19は、上述の退避位置へと退避させられ、その後、リンス液ノズル13から基板Wの回転中心に向けて純水(脱イオン水)その他のリンス液が供給される。このリンス液は、回転状態の基板W上で遠心力を受けてその全域へと広がり、基板W上の薬液を置換することになる。
【0037】
こうして一定時間のリンス処理を行った後には、リンス液の供給を停止するとともに、回転駆動機構12によりスピンチャック11を高速回転させて、基板Wの表面の液滴を振り切るための乾燥処理が行われる。この乾燥処理の後、基板搬送ロボットにより、処理済の基板Wが処理室51から払い出される。
第2処理液バルブ28Bは、第1処理液バルブ28Aが正常に動作している限り、常時、開成状態に保持される。
【0038】
図3は、第1処理液バルブ28Aが閉成されたときに制御ユニット55によって行われる吸引・異常判定処理を説明するためのフローチャートである。制御ユニット55は、第1処理液バルブ28Aを閉じた後、吸引バルブ33を開いて、吸引装置34による処理液配管25に対する吸引動作を有効化する(ステップS1)。その後、制御ユニット55は、所定時間Tの経過を待機する(ステップS2)。所定時間Tは、正常状態の吸引装置34による処理液配管25内の吸引により、処理液配管25内の処理液先端面を処理液ノズル12から後退させて、液面検出位置42よりも分岐位置36側に至らせるのに十分な時間に設定されている。
【0039】
前記所定時間Tの経過後には、制御ユニット55は、液面センサ41の出力信号を監視する。この液面センサ41の出力信号に基づいて、制御ユニット55は、液面検出位置42に処理液が存在するかどうかを判断する(ステップS3)。処理液の存在が検出されると、制御ユニット55は、吸引装置34等を含む吸引系統(吸引手段)に故障が生じているものと判定し、吸引異常処理を行う(ステップS4)。吸引異常処理は、たとえば、警報(警報音および/または警報表示)を発生させたり、基板処理装置をシステム停止させたりする処理を含む。「システム停止」とは、現在仕掛かり中の基板Wがあれば、その処理が終わり次第、基板処理装置の運転を停止させることをいう。仕掛かり中の基板Wがなければ、ただちに基板処理装置の運転が停止される。
【0040】
ステップS4において、処理液配管25内の処理液の存在が検出されないときには、吸引系統の故障はないものと判断され、制御ユニット55は、第1処理液バルブ28Aのリーク故障の有無を判定するための処理を実行する。すなわち、第1処理液バルブ28Aを開いて処理液を吐出させるべきかどうかを判断し(ステップS5)、第1処理液バルブ28Aを開いていないときには、液面センサ41によって処理液が検出されるかどうかを判断する(ステップS6)。処理液が検出されれば、第1処理液バルブ28Aにリーク故障が生じているものとして、バルブ異常処理を実行する(ステップS7)。バルブ異常処理は、たとえば、警報(警報音および/または警報表示を発生させたり、基板処理装置をシステム停止させたりする処理を含む処理であってもよい。この実施形態では、バルブ異常処理は、常時開成状態に制御されている第2処理液バルブ28Bを閉成する処理を含む。
【0041】
ステップS6で、液面センサ41によって処理液が検出されていないと判断されると、ステップS5の処理に戻る。
ステップS5で、第1処理液バルブ28Aが開かれたと判断されると、吸引・異常判定処理を終える。
このように、この実施形態によれば、液面センサ41の出力をモニタすることによって、制御ユニット55により、第1処理液バルブ28Aのリーク故障および吸引系統の故障を検出し、それを報知することができる。これにより、それらの故障に早期に対処することができるので、処理液ノズル12からの処理液のぼた落ちを効果的に抑制または防止することができる。その結果、処理不良基板の発生を抑制できるから、基板を用いて作製される製品のコストを低減することができる。
【0042】
また、この実施形態では、第1処理液バルブ28Aのリーク故障が発生すると、第2処理液バルブ28Bを閉じるようにしている。これにより、第1処理液バルブ28Aにリーク故障が生じても、処理液ノズル12へと処理液が供給されないので、リーク故障に起因する基板処理不良を一層効果的に抑制または防止できる。
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
【0043】
たとえば、前述の実施形態では、処理液配管25に第1および第2処理液バルブ28A,28Bを介装し、第1処理液バルブ28Aのリーク故障時に第2処理液バルブ28Bを閉じるようにしているが、第2処理液バルブ28Bを省いてもよい。この場合でも、第1処理液バルブ28Aのリーク故障を検出し、それを報知することができるので、使用者が速やかに対処することによって、処理不良基板の発生を抑制できる。
【0044】
また、第1処理液バルブ28Aにリーク故障が発生したときは、警報を発生する一方で、この第1処理液バルブ28Aを常時開成状態に制御し、第2処理液バルブ28Bの制御によって、処理液ノズル12への処理液の供給/停止を切り換えるようにしてもよい。
さらに、前述の実施形態では、吸引バルブ33を所定時間開いた後に、液面検出位置42で処理液の有無を検出するようにしているが、液面センサ41が液面検出位置42で処理液を検出しなくなるまで吸引バルブ33を開くようにしてもよい。そして、吸引バルブ33を開いてから所定時間の経過後にも液面センサ41が処理液を検出し続けている場合に、吸引系の異常が発生したものと判断して、吸引異常処理を行うようにしてもよい。この場合の所定時間は、吸引バルブ33を開いてから処理液先端面が液面検出位置42よりも分岐位置36側まで後退するのに必要な時間以上に設定すればよい。
【0045】
さらに、上記の実施形態では、スキャン型ノズルにこの発明が適用される例について説明したが、この発明は、処理室内に固定配置される固定ノズルに対しても同様に適用することができる。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明の一実施形態に係る基板処理装置の構成を説明するための概念図である。
【図2】液面検出部に関連する構成を説明するための図解図である。
【図3】異常判定処理を説明するためのフローチャートである。
【図4】処理液の供給のための従来技術を示す図解図である。
【符号の説明】
【0047】
11 スピンチャック
12 処理液ノズル
13 リンス液ノズル
14 スピンベース
15 回転駆動機構
16 ノズル保持機構
17 処理液供給機構
18 回転軸
19 揺動アーム
20 揺動駆動機構
21 保持部
23 流量調節バルブ
24 流量調節バルブ
25 処理液配管
26 処理液タンク
27 ポンプ
28A 第1処理液バルブ
28B 第2処理液バルブ
29 流量計
30 温度調節器
31 リターン配管
32 吸引配管
33 吸引バルブ
34 吸引装置
36 分岐位置
38 プリディペンスポッド
39 排液配管
40 液面検出部
41 液面センサ
42 液面検出位置
43 配管ブラケット
44 本体部
45,46 配管クランプ
48 センサブラケット
51 処理室
52 処理液ユニット
55 制御ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理するための処理液を吐出するノズルと、
このノズルに接続され、当該ノズルに処理液を供給する処理液供給管と、
この処理液供給管に介装され、前記ノズルへの処理液の供給およびその停止を切り換える処理液バルブと、
この処理液バルブと前記ノズルとの間に設定された分岐位置で前記処理液供給管に分岐接続され、前記処理液供給管内の処理液を吸引して排出するための処理液吸引管と、
この処理液吸引管を介して前記処理液供給管内の処理液を吸引する吸引手段と、
前記分岐位置と前記ノズルとの間に設定された所定の液面検出位置で前記処理液供給管内の処理液先端面を検出する処理液先端面検出手段とを含む、基板処理装置。
【請求項2】
前記処理液バルブを閉じた後に、前記吸引手段を作動させて前記処理液供給管内の処理液を吸引して排除する吸引工程を行う制御手段をさらに含み、
前記制御手段が、前記吸引工程の後に、前記処理液先端面検出手段が処理液先端面を検出したことに応答して、前記処理液バルブに異常が発生したものと判断し、所定の処理液バルブ異常処理を行う処理液バルブ異常処理手段をさらに含む、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理液バルブである第1の処理液バルブに加えて、前記処理液供給管に介装され、前記ノズルへの処理液の供給およびその停止を切り換える第2の処理液バルブをさらに含み、
前記処理液バルブ異常処理手段が行う処理液バルブ異常処理は、前記第2の処理液バルブを閉じて前記ノズルへの処理液の供給を停止させる処理を含む、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液バルブを閉じた後に、前記吸引手段を作動させて前記処理液供給管内の処理液を吸引して排除する吸引工程を行う制御手段をさらに含み、
前記制御手段が、前記吸引工程中または前記吸引工程後に前記処理液先端面検出手段の出力を参照して、処理液先端面が前記液面検出位置よりも前記分岐位置側に後退したことが検出されないときに、前記吸引手段の異常が発生したものと判断し、所定の吸引異常処理を行う吸引異常処理手段を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記処理液供給管が、前記液面検出位置を含む区間に、前記分岐位置側よりも前記ノズル側が高くなるように高低差を付けた液面検出部を有しており、
前記処理液先端面検出手段は、前記液面検出部において処理液先端面を検出するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記処理液供給管を保持することによって前記液面検出部を形成する保持部材をさらに含み、
前記処理液先端面検出手段が、前記保持部材に取り付けられたセンサを含む、請求項5記載の基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−158597(P2009−158597A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332803(P2007−332803)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】