説明

基板搬送用ハンド、基板搬送用ロボットシステム、基板位置ずれ検出方法、及び基板位置補正方法

【課題】基板の位置ずれを検出することが可能な基板搬送用ハンド、基板搬送用ロボットシステム、基板位置ずれ検出方法を提供する。また、基板位置補正方法を提供する。
【解決手段】基板搬送用ロボットシステム10は、基板Wの下面に接触する接触部PBL、PFL、PBR、PFR及び接触部PBL、PFL、PBR、PFRに接触した基板Wの重心位置を検出するための複数のセンサSBL、SFL、SBR、SFRが設けられた基板搬送用ハンド60を有する基板搬送用ロボット20と、1)基板搬送用ハンド60上の基準となる位置にて基板Wが支持された際の各センサSBL、SFL、SBR、SFRの検出値である基準値と現在の各センサSBL、SFL、SBR、SFRの検出値との差分をそれぞれ演算する差分演算部70及び2)各差分に基づいて基板Wの位置ずれ方向を判断する第1の判断部72を有する第1の制御装置30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送用ハンド、基板搬送用ロボットシステム、基板位置ずれ検出方法、及び基板位置補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の基板搬送用ロボットのハンドには、ガラス基板を検出する光学式のセンサが設けられている。ハンドに支持されたガラス基板は、この光学式センサによって、予め決められた位置にあるか否かが判断される。(例えば、特許文献1参照)。
ここで一般に、基板搬送用ロボットにおいては、光学式センサを用いて、搬送中の基板位置のずれが監視されている。しかし、例えば基板の種類によっては、光学式センサがガラス基板を検出できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−318975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、基板の位置ずれを検出することが可能な基板搬送用ハンド、基板搬送用ロボットシステム、基板位置ずれ検出方法を提供することを目的とする。また、位置ずれした基板の位置を補正することが可能な基板位置補正方法を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う第1の発明に係る基板搬送用ロボットシステムは、基板の下面に接触する接触部及び該接触部に接触した該基板の重心位置を検出するための複数のセンサが設けられた基板搬送用ハンドを有する基板搬送用ロボットと、
1)前記基板搬送用ハンド上の基準となる位置にて前記基板が支持された際の前記各センサの検出値である基準値と現在の前記各センサの検出値との差分をそれぞれ演算する差分演算部及び2)該各差分に基づいて前記基板の位置ずれ方向を判断する第1の判断部を有する第1の制御装置とを備える。
【0006】
第1の発明に係る基板搬送用ハンドにおいて、前記接触部は複数設けられ、
前記各センサは、前記各接触部の下部に設けられ、該接触部が前記基板から受ける荷重を検出する荷重センサとすることができる。
【0007】
第1の発明に係る基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記第1の制御装置は、前記基板が搬送方向及び該搬送方向と実質的に直交する方向にずれた際の前記各差分の増減のパターンAを予め記憶するパターン記憶部を有し、
前記第1の判断部は、前記各差分を前記パターン記憶部に記憶された前記パターンAに照合して前記位置ずれ方向を判断することができる。
【0008】
第1の発明に係る基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記第1の制御装置が、前記各差分に基づいて、前記基板の回転位置のずれ方向を判断する第2の判断部を更に有してもよい。
【0009】
第1の発明に係る基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記パターン記憶部は、前記基板の回転位置がずれた際の前記各差分の増減のパターンBを更に記憶し、
前記第2の判断部は、前記各差分を前記パターン記憶部に記憶された前記パターンBに照合して前記回転位置のずれ方向を判断してもよい。
【0010】
第1の発明に係る基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記第1の制御装置に代えて、第2の制御装置を備え、
前記第2の制御装置は、前記基板の重心位置を変えた際の前記各センサの検出値と該重心位置とを対応付けた参照テーブルを記憶する参照テーブル記憶部と、
前記参照テーブルを参照し、前記各センサの検出値から前記基板の重心位置を求める重心位置決定部とを有してもよい。
【0011】
第1の発明に係る基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記第1の制御装置に代えて、第3の制御装置を備え、
前記第3の制御装置は、前記各センサの検出値に基づいて、前記基板の重心位置を演算する重心位置演算部を有してもよい。
【0012】
前記目的に沿う第2の発明に係る基板搬送用ハンドは、基板の下面に接触する接触部と、
前記接触部に接触した前記基板の重心位置を検出するための複数のセンサとを備える。
【0013】
前記目的に沿う第3の発明に係る基板位置ずれ検出方法は、ロボットに設けられたハンド上の基準となる位置に基板を載せ、該ハンドに設けられた該基板に接触する接触部が該基板から受ける荷重を、基準値として記憶するステップと、
前記ロボットが前記基板を搬送している間に前記接触部が該基板から受ける荷重と、前記基準値との差分を求めるステップと、
前記差分に基づいて、前記基板の位置ずれの方向を求めるステップとを含む。
【0014】
前記目的に沿う第4の発明に係る基板位置補正方法は、ロボットに設けられたハンド上の各位置にて、該ハンドに設けられ基板に接触する接触部が該基板から受ける荷重と前記基板の重心位置とを対応付けた参照テーブルを記憶するステップと、
前記ロボットが前記基板を搬送している間に、前記接触部が該基板から受ける荷重と、前記参照テーブルに基づいて、前記基板の重心位置を求めるステップと、
前記ロボットが、前記重心位置に基づいて、前記基板の位置ずれを補正するように、前記ハンドを移動させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る基板搬送用ハンド、基板搬送用ロボットシステム、基板位置ずれ検出方法においては、基板の位置ずれを検出することが可能である。
また、本発明に係る基板位置補正方法においては、基板の位置を補正することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムの説明図である。
【図2】同基板搬送用ロボットシステムが備える基板搬送用ロボットのハンドの三面図である。
【図3】図2に示すハンドのA部拡大図である。
【図4】同基板搬送用ロボットシステムが備えるロボット制御装置の機能ブロック図である。
【図5】同基板搬送用ロボットシステムが備える基板搬送用ロボットのハンドに設けられた荷重センサの検出状態とガラス基板のずれ方向を示す説明図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムが備えるロボット制御装置の機能ブロック図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムが備えるロボット制御装置の機能ブロック図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムが備えるロボット制御装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。なお、各図において、説明に関連しない部分は図示を省略する場合がある。
【0018】
本発明の第1の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステム10は、ガラス基板(基板の一例)Wを搬送する基板搬送用ロボット20と、ロボット制御装置(第1の制御装置の一例)30とを備えている。
基板搬送用ロボット20は、例えば図1に示すように、設置面に固定される固定ベース42と、固定ベース42に一端部が水平軸AX1回りに回転可能に設けられる下部アーム44と、下部アーム44の他端部に一端部が水平軸AX2回りに回転可能に設けられる上部アーム46と、上部アーム46の他端部に水平軸AX3及び鉛直軸AX4回りに回転可能に設けられる上部ベース48を備えている。基板搬送用ロボット20は、更に、上部ベース48の上に設けられ、2つのアーム体がそれぞれ回転軸AX5、AX6回りに回転することで伸縮する左アーム50a及び右アーム50b(以下、まとめて単に「アーム50」という場合がある。)と、左アーム50a及び右アーム50bの先端部にそれぞれ設けられた左ハンド60a及び右ハンド(基板搬送用ハンドの一例、以下、まとめて単に「ハンド60」という場合がある。図5参照)とを備えている。なお、図1において、右ハンド(右アーム50bの先端部)は省略されている。
【0019】
基板搬送用ロボット20は、下部アーム44、上部アーム46及び上部ベース48をそれぞれ設置面と実質的に水平な水平軸AX1、水平軸AX2、及び水平軸AX3回りに回転させることで、ハンド60を実質的に水平に維持したまま上下方向に移動させることができる。また、基板搬送用ロボット20は、アーム50を伸縮させて、ハンド60を前方向(Y方向)及び後方向(Y方向)に搬送することができる。
従って、基板搬送用ロボット20は、ハンド60上に支持したガラス基板Wを上下方向及び前後方向(Y方向及びY方向)に移動させて、ガラス基板Wをカセット65に収容したり、取り出したりすることができる。
【0020】
次に、ハンド60について詳細に説明する。
左ハンド60aは、図1、図2に示すように、左アーム50aの先端部に設けられた左フレーム66と、左フレーム66からそれぞれ延びる第1及び第2の支持部材68a、68bとを備えている。
【0021】
左フレーム66は、長手方向が左アーム50aの伸縮方向と交差する下部フレーム66aと、下部フレーム66aの上側に設けられ、長手方向が左アーム50aの伸縮方向と交差する上部フレーム66bと、下部フレーム66a及び上部フレーム66bの端部を連結する連結部材66cとを有している。
【0022】
第1及び第2の支持部材68a、68bは、上部フレーム66bから、間隔を有して左アーム50aの伸縮方向にそれぞれ延びて配置される。
第1及び第2の支持部材68a、68bには、ガラス基板Wの下面に接触してガラス基板Wを支持する支持ピン(接触部の一例)が2つずつ設けられている。第1の支持部材68aに設けられた支持ピンPBL、PFLと第2の支持部材68bに設けられた支持ピンPBR、PFRとは、基板搬送用ロボット20を平面視して、水平軸AX1に直交し、鉛直軸AX4を通る軸に関して実質的に対称となるように配置されている。
支持ピンPBL、PFLの下部には、図3に示すように、支持ピンPBL、PFLに支持されたガラス基板Wから受ける荷重を検出することができる荷重センサ(センサの一例)SBL、SFLが設けられている。同様に、支持ピンPBR、PFRの下部には、支持ピンPBR、PFRに支持されたガラス基板Wから受ける荷重を検出することができる荷重センサSBR、SFRが設けられている。これら荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRは、例えば、ロードセルとすることができる。
【0023】
右ハンド(不図示)は、左ハンド60aとの干渉を回避するため、高さ方向に関して左ハンド60aの上部フレーム66bと下部フレーム66aの間に配置される。従って、右ハンドの右フレーム(不図示)の形状は左ハンド60aの左フレーム66の形状とは相違するが、それ以外の構成は同様である。
以下、右ハンドに関連する内容の説明は省略し、左ハンド60aに関する部分についてのみ説明する。
【0024】
ロボット制御装置30は、図1に示すように、基板搬送用ロボット20に接続され、基板搬送用ロボット20の動作を制御することができる。ロボット制御装置30は、図4に示すように、差分演算部70及び第1の判断部72を有している。
差分演算部70には、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRが接続され、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの出力が取り込まれる。差分演算部70には、基準値記憶部74が接続される。この基準値記憶部74には、ガラス基板Wが左ハンド60a上の予め決められた正常な位置(基準位置)にある際の各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの検出値(基準値)が記憶される。差分演算部70は、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの現在の検出値と、基準値記憶部74に記憶された各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの基準値との差分を演算することができる。
第1の判断部72は、差分演算部70が演算した差分と、パターン記憶部76に記憶した各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRについての差分の増減のパターン(後述するパターンA)とを比較して、ガラス基板Wの位置ずれ方向を判断する。
【0025】
次に、基板搬送用ロボットシステム10による基板位置ずれ検出方法について説明する。
ガラス基板Wはその位置が予め決められた位置(Y方向及びY方向の位置並びにX方向及びX方向の位置)でカセット65に収容されている(図1参照)。しかし、その位置がずれている場合がある。
また、基板搬送用ロボット20がアーム50を伸縮させると、支持ピンPBL、PFL、PBR、PFRとガラス基板Wとの摩擦状態によっては、左ハンド60aに支持されたガラス基板Wの位置がずれる場合がある。例えば、アーム50が伸びると、搬送方向(Y方向)又は搬送方向とは反対の方向(Y方向)にガラス基板Wがずれる場合がある。また、例えば、上部ベース48が時計回りに回転(鉛直軸AX4回りに旋回)すると、ガラス基板Wが左方向(X方向)にずれる場合がある。
【0026】
実質的に左右対称のガラス基板Wの位置ずれは、左ハンド60a上にガラス基板Wが載った際に、ガラス基板Wの重心位置(図5参照)のずれとして捉えることができる。従って、ガラス基板Wの重心位置を求めることで、位置ずれを検出することができる。
ガラス基板Wの重心位置は、左ハンド60aに設けられた荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRによって求めることができる。
【0027】
ここで、ガラス基板WがYF方向(前方向)にずれた場合は、重心位置が同方向にずれる。そのため、ガラス基板Wが予め決められた正常な位置(基準位置)にある場合と比較して、荷重センサSFL、SFRが検出する荷重は、増加する。反対に荷重センサSBL、SBRが検出する荷重は、減少する。
また、ガラス基板WがY方向(後方向)にずれた場合は、重心位置が同方向にずれる。そのため、ガラス基板Wが基準位置にある場合と比較して、荷重センサSBL、SBRが検出する荷重は、増加する。反対に荷重センサSFL、SFRが検出する荷重は、減少する。
また、ガラス基板Wが搬送方向と実質的に直交するX方向(左方向)にずれた場合は、重心位置が同方向にずれる。そのため、ガラス基板Wが基準位置にある場合と比較して、荷重センサSFL、SBLが検出する荷重は、増加する。反対に荷重センサSFR、SBRが検出する荷重は、減少する。
また、ガラス基板Wが搬送方向と実質的に直交するX方向(右方向)にずれた場合は、重心位置が同方向にずれる。そのため、ガラス基板Wが基準位置にある場合と比較して、荷重センサSFR、SBRが検出する荷重は、増加する。反対に荷重センサSFL、SBLが検出する荷重は、減少する。
【0028】
即ち、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの基準値からの増減を監視することによって(即ち、ガラス基板Wの重心位置を監視することによって)、ガラス基板Wの位置ずれ方向(Y方向、Y方向、X方向、及びX方向)が検出される。
【0029】
以下、基板搬送用ロボットシステム10による基板位置ずれ検出方法について、具体的に順を追って説明する。基板搬送用ロボットシステム10による基板位置ずれ検出方法は、以下の手順で実行される。
(ステップ1)
左ハンド60a上の基準位置にガラス基板Wを載せる。荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRを用いて、支持ピンPBL、PFL、PBR、PFRがガラス基板Wから受ける荷重をそれぞれ検出する。これらの荷重を基準値としてロボット制御装置30に設けられた基準値記憶部74に記憶する。なお、このステップ1は、事前準備として実行される。
【0030】
(ステップ2)
基板搬送用ロボット20を用いて、実際にガラス基板Wの搬送作業を行う。左ハンド60a上にガラス基板Wが載っている間、差分演算部70は、荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの検出値と、ステップ1にて基準値記憶部74に記憶された基準値との差分をそれぞれ求める。
【0031】
(ステップ3)
各差分が予め決められた閾値を超えた場合は、第1の判断部72はガラス基板Wがずれたものと判断する。その際、第1の判断部72はパターン記憶部76を参照し、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの差分とパターン記憶部76に記憶されたパターンA(図5に示した左表参照)とを照合し、差分がパターンAに合致する場合は、そのパターンAに対応する方向に位置がずれているものと判断する。
【0032】
即ち、荷重センサSBLの差分が負(−)、荷重センサSBRの差分が負(−)、荷重センサSFLの差分が正(+)、荷重センサSFRの差分が正(+)、となった場合は、ガラス基板Wの位置は、Y方向にずれているものと判断される。
また、荷重センサSBLの差分が正(+)、荷重センサSBRの差分が正(+)、荷重センサSFLの差分が負(−)、荷重センサSFRの差分が負(−)、となった場合は、ガラス基板Wの位置は、Y方向にずれているものと判断される。
また、荷重センサSBLの差分が正(+)、荷重センサSBRの差分が負(−)、荷重センサSFLの差分が正(+)、荷重センサSFRの差分が負(−)、となった場合は、ガラス基板Wの位置は、X方向にずれているものと判断される。
また、荷重センサSBLの差分が負(−)、荷重センサSBRの差分が正(+)、荷重センサSFLの差分が負(−)、荷重センサSFRの差分が正(+)、となった場合は、ガラス基板Wの位置は、X方向にずれているものと判断される。
【0033】
このように、本実施の形態によれば、荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRを用いてガラス基板Wの重心位置を検出し、ガラス基板Wの位置ずれ方向を検出することができる。
なお、更に基板搬送用ロボット20の動作を考慮することで、位置ずれ方向の検出の信頼性を向上させることが可能である。具体的には、基板搬送用ロボット20がガラス基板Wの位置をずらすような力を加える動作を行ったか否かを判断し、位置ずれ方向の検出にあたっては、この動作を考慮する。例えば、第1の判断部72は、実際に基板搬送用ロボット20がアーム50を伸縮する動作を行った場合に限り、Y方向又はY方向にガラス基板Wがずれたものと判断する。従って、例えば、基板搬送用ロボット20がアーム50を伸縮させた場合に、X方向又はX方向にガラス基板Wがずれたものと判断されることがなく、位置ずれ方向の検出の信頼性が向上する。
【0034】
続いて、本発明の第2の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムについて説明する。第1の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステム10と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施の形態においては、基板搬送用ロボットシステムは、更に、ガラス基板Wの回転位置のずれを検出することができる。
本実施の形態に係るロボット制御装置80は、図6に示すように、更に第2の判断部82を備えている。この第2の判断部82は、差分演算部70が演算した差分と、パターン記憶部76に更に記憶された各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRについての差分の増減のパターンB(ガラス基板Wの回転位置のずれに関する差分の増減のパターンB)とを照合して、ガラス基板Wの回転位置のずれ方向を判断する。
【0035】
次に、基板搬送用ロボットシステムによる基板位置ずれ検出方法について説明する。
第1の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムによる基板位置ずれ検出方法のステップ3において、差分が予め決められた閾値を超えた場合は、第2の判断部82はガラス基板Wがずれたものと判断する。その際、第2の判断部82はパターン記憶部76を参照し、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRについての差分とパターン記憶部76に記憶されたパターンB(図5示した右表参照)とを照合し、差分がパターンBに合致する場合は、そのパターンBに対応する方向に回転位置がずれているものと判断する。
【0036】
即ち、荷重センサSBLの差分が正(+)、荷重センサSBRの差分が負(−)、荷重センサSFLの差分が負(−)、荷重センサSFRの差分が正(+)となった場合は、ガラス基板Wの回転位置は、平面視して時計回りの方向(R方向)にずれているものと判断される。
また、荷重センサSBLの差分が負(−)、荷重センサSBRの差分が正(+)、荷重センサSFLの差分が正(+)、荷重センサSFRの差分が負(−)となった場合は、ガラス基板Wの回転位置は、平面視して反時計回りの方向(R方向)にずれているものと判断される。
このように、本実施の形態によれば、荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRを用いてガラス基板Wの回転位置のずれを検出することができる。
【0037】
続いて、本発明の第3の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムについて説明する。第1の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステム10と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施の形態においては、ガラス基板Wの位置ずれ検出方法が相違する。
第1の実施の形態においては、検出可能なガラス基板Wの位置ずれ方向は4方向(Y方向、Y方向、X方向、及びX方向)であったが、本実施の形態においては、基板搬送用ロボットシステムは、全方向の位置ずれを検出することが可能である。
【0038】
本実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムのロボット制御装置(第2の制御装置の一例)90は、図7に示すように、参照テーブル記憶部92及び重心位置決定部94を備えている。
参照テーブル記憶部92は、左ハンド60a上の各位置にて検出された荷重とガラス基板Wの重心位置とを対応付けた参照テーブルを記憶することができる。
重心位置決定部94は、参照テーブル記憶部92に記憶された参照テーブルを参照し、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの検出値からガラス基板Wの重心位置、即ち、ガラス基板Wの位置ずれの大きさと方向を求めることができる。
【0039】
以下、本実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムによる基板位置ずれ検出方法について、順を追って説明する。基板搬送用ロボットシステムによる基板位置ずれ検出方法は、以下の手順で実行される。
(ステップ1)
左ハンド60aにガラス基板Wを載せる。各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRを用いて、支持ピンPBL、PFL、PBR、PFRがガラス基板Wから受ける荷重をそれぞれ検出する。次に、ガラス基板Wを載せる位置をずらして(ガラス基板Wの重心位置をずらして)、再び各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRを用いて、支持ピンPBL、PFL、PBR、PFRがガラス基板Wから受ける荷重を検出する。更にこの作業を繰り返す。
各位置にて検出された荷重とガラス基板Wの重心位置とを対応付けた参照テーブルを作成し、この参照テーブルをロボット制御装置90に設けられた参照テーブル記憶部92に記憶する。なお、このステップ1は、事前準備として実行される。
【0040】
(ステップ2)
基板搬送用ロボット20を用いて、実際にガラス基板Wの搬送作業を行う。重心位置決定部94は、左ハンド60a上にガラス基板Wが載った後、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRから荷重を取り込み、参照テーブルに基づいて、対応するガラス基板Wの重心位置を求める。その結果、第1の実施の形態と比較して、ガラス基板Wの位置ずれの大きさと方向をより詳細に求められる。
【0041】
なお、ガラス基板Wの位置ずれの大きさと方向がより詳細に求められるので、この位置ずれの大きさと方向に基づいて、ガラス基板Wの位置を補正するように基板搬送用ロボット20を動作させることも可能である。
また、本実施の形態においては、重心位置を求めるために、荷重センサの数は合計3つ(一方の支持部材に2つ、他方の支持部材に1つ)とすることもできる。
【0042】
続いて、本発明の第4の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムについて説明する。第1の実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステム10と同一の構成要素については、同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
本実施の形態においては、重心位置が演算にて求められる。即ち、基板搬送用ロボットシステムは、ガラス基板Wが載せられた状態で荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRから荷重を検出し、各検出値に基づいて、ガラス基板Wの重心位置(即ち、ガラス基板Wの位置ずれの大きさと方向)を演算により求めることができる。
【0043】
本実施の形態に係る基板搬送用ロボットシステムのロボット制御装置(第3の制御装置の一例)100は、図8に示すように、重心位置演算部102を備えている。
重心位置演算部102は、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの検出値から、演算によりガラス基板Wの重心位置を求めることができる。即ち、重心位置演算部102は、演算によりガラス基板Wの位置ずれの大きさと方向を求めることができる。
なお、各荷重センサSBL、SFL、SBR、SFRの位置は既知であり、ガラス基板Wの重心位置を求めるための具体的演算は容易であるので、その説明は省略する。
【0044】
本実施の形態によれば、ガラス基板Wの位置ずれの大きさと方向がより詳細に求められる。ガラス基板Wの位置ずれの大きさと方向がより詳細に求められるので、この位置ずれの大きさと方向に基づいて、ガラス基板Wの位置を補正するように基板搬送用ロボット20を動作させることも可能である。
なお、本実施の形態においては、演算によってガラス基板Wの重心位置を求めるため、荷重センサの数は合計3つ(一方の支持部材に2つ、他方の支持部材に1つ)とすることもできる。
【0045】
なお、本発明は、前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能である。例えば、前述の実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて発明を構成する場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
基板は、ガラス基板Wに限定されるものではない。また、接触部は、吸着パッドであってもよい。
【0046】
センサは、基板の重心位置を検出することができれば任意のものでよい。例えば、センサは、基板が接触する各接触部材の撓み量を検出する撓み量センサ(例えば、ひずみゲージ)とすることもできる。この撓み量センサから各接触部に加わる荷重を求め、ガラス基板Wの重心位置が求められる。
【0047】
また、センサは、支持部材に直接設けられなくてもよい。即ち、センサは、支持部材から搬送方向とは異なる方向に張り出したブラケットに設けられてもよい。
【0048】
基板搬送用ロボットは前述の実施の形態に示した形態に限定されるものではない。例えば、アームはダブルアームではなく、シングルアームであってもよい。また、ハンドの形態や、接触部の配置についても、前述の実施の形態に示した形態に限定されるものではない。例えば、ハンドは、1つ又は3つ以上の支持部材を有していてもよい。
また、接触部は、基準位置にある基板の中心線に関して非対称となるように配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0049】
10:基板搬送用ロボットシステム、20:基板搬送用ロボット、30:ロボット制御装置、42:固定ベース、44:下部アーム、46:上部アーム、48:上部ベース、50:アーム、50a:左アーム、50b:右アーム、60:ハンド、60a:左ハンド、65:カセット、66:左フレーム、66a:下部フレーム、66b:上部フレーム、66c:連結部材、68a:第1の支持部材、68b:第2の支持部材、70:差分演算部、72:第1の判断部、74:基準値記憶部、76:パターン記憶部、80:ロボット制御装置、82:第2の判断部、90:ロボット制御装置、92:参照テーブル記憶部、94:重心位置決定部、100、ロボット制御装置、102:重心位置演算部、PBL、PBR、PFL、PFR:支持ピン、SBL、SBR、SFL、SFR:荷重センサ、W:ガラス基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の下面に接触する接触部及び該接触部に接触した該基板の重心位置を検出するための複数のセンサが設けられた基板搬送用ハンドを有する基板搬送用ロボットと、
1)前記基板搬送用ハンド上の基準となる位置にて前記基板が支持された際の前記各センサの検出値である基準値と現在の前記各センサの検出値との差分をそれぞれ演算する差分演算部及び2)該各差分に基づいて前記基板の位置ずれ方向を判断する第1の判断部を有する第1の制御装置とを備えた基板搬送用ロボットシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記接触部は複数設けられ、
前記各センサは、前記各接触部の下部に設けられ、該接触部が前記基板から受ける荷重を検出する荷重センサである基板搬送用ロボットシステム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記第1の制御装置は、前記基板が搬送方向及び該搬送方向と実質的に直交する方向にずれた際の前記各差分の増減のパターンAを予め記憶するパターン記憶部を有し、
前記第1の判断部は、前記各差分を前記パターン記憶部に記憶された前記パターンAに照合して前記位置ずれ方向を判断する基板搬送用ロボットシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記第1の制御装置が、前記各差分に基づいて、前記基板の回転位置のずれ方向を判断する第2の判断部を更に有する基板搬送用ロボットシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記パターン記憶部は、前記基板の回転位置がずれた際の前記各差分の増減のパターンBを更に記憶し、
前記第2の判断部は、前記各差分を前記パターン記憶部に記憶された前記パターンBに照合して前記回転位置のずれ方向を判断する基板搬送用ロボットシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記第1の制御装置に代えて、第2の制御装置を備え、
前記第2の制御装置は、前記基板の重心位置を変えた際の前記各センサの検出値と該重心位置とを対応付けた参照テーブルを記憶する参照テーブル記憶部と、
前記参照テーブルを参照し、前記各センサの検出値から前記基板の重心位置を求める重心位置決定部とを有する基板搬送用ロボットシステム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の基板搬送用ロボットシステムにおいて、前記第1の制御装置に代えて、第3の制御装置を備え、
前記第3の制御装置は、前記各センサの検出値に基づいて、前記基板の重心位置を演算する重心位置演算部を有する基板搬送用ロボットシステム。
【請求項8】
基板の下面に接触する接触部と、
前記接触部に接触した前記基板の重心位置を検出するための複数のセンサとを備えた基板搬送用ハンド。
【請求項9】
ロボットに設けられたハンド上の基準となる位置に基板を載せ、該ハンドに設けられた該基板に接触する接触部が該基板から受ける荷重を、基準値として記憶するステップと、
前記ロボットが前記基板を搬送している間に前記接触部が該基板から受ける荷重と、前記基準値との差分を求めるステップと、
前記差分に基づいて、前記基板の位置ずれの方向を求めるステップとを含む基板位置ずれ検出方法。
【請求項10】
ロボットに設けられたハンド上の各位置にて、該ハンドに設けられ基板に接触する接触部が該基板から受ける荷重と前記基板の重心位置とを対応付けた参照テーブルを記憶するステップと、
前記ロボットが前記基板を搬送している間に、前記接触部が該基板から受ける荷重と、前記参照テーブルに基づいて、前記基板の重心位置を求めるステップと、
前記ロボットが、前記重心位置に基づいて、前記基板の位置ずれを補正するように、前記ハンドを移動させるステップとを含む基板位置補正方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−121680(P2012−121680A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273789(P2010−273789)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】