説明

基板洗浄方法、基板洗浄装置及び基板洗浄用記憶媒体

【課題】高撥水性材料を塗布した基板においても、短時間で高い洗浄効果を得ることができる基板洗浄方法、基板洗浄装置及び基板洗浄用記憶媒体を提供する。
【解決手段】回路パターンが形成された半導体ウエハWの中心部Cに、処理雰囲気温度(23℃)より高い温度の洗浄液Rを供給してウエハの表面全体に液膜を形成し、洗浄液の供給位置をウエハの中心部からウエハの周縁に向かって一定の距離だけ移動させると共に、ウエハの中心部にガスGを吐出して乾燥領域Dを形成させ、この乾燥領域がウエハの周縁部に広がる速度と略同一の速度で洗浄液の供給位置を移動させることにより、レジスト膜の回路パターン間に残存する溶解生成物を洗浄液で掻き出しながら、ウエハの表面を洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路パターンが形成された基板に洗浄液を供給して洗浄を行う基板洗浄方法、基板洗浄装置及び基板洗浄用記憶媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、例えば半導体ウエハ等の基板の上にフォトレジストを塗布し、レジスト膜を所定の回路パターンに応じて露光し、現像処理することにより回路パターンを形成する。これを、フォトリソグラフィ工程という。フォトリソグラフィ工程には、通常、塗布・現像処理装置に露光装置を接続した処理システムが用いられる。
【0003】
フォトリソグラフィ工程では、基板上に現像液を液盛りし、レジストの可溶性部位を溶解させて回路パターンが形成される。その後、一般に、レジストの溶解生成物を現像液と共に基板表面から除去するために洗浄処理が行われる。
【0004】
従来、この洗浄処理の手法として、基板の中心部に洗浄液を供給し、基板を鉛直軸回りに回転させてその遠心力により液膜を広げ、その液流にのせて上記溶解生成物及び現像液を基板上から除去するスピン洗浄方法が知られている。
【0005】
また、別の洗浄手法として、基板を水平に保持しながら鉛直軸回りに回転させ、基板中心部に洗浄液を吐出して遠心力により基板全体に広げ、その後、基板の中心部にガスを吐出して乾燥領域を形成し、洗浄液ノズルを外側に移動させて乾燥領域を周縁部に広げることにより基板を洗浄する基板洗浄方法及び装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−252855号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のスピン洗浄方法では、溶解生成物の除去効果が低く、スピン洗浄を長時間行っているのが現状である。さらに、近年、撥水性の高いレジスト材料が用いられるようになっており、従来のスピン洗浄を長時間行っても、回路パターン間の溶解生成物を十分に取り除くことができなくなっている。すなわち、高撥水性のレジスト材料を用いた場合、現像後の洗浄において、洗浄液の液膜は、基板の回転による遠心力によって瞬時に基板上を基板の周縁部に向かって移動する。よって、回路パターン間の溶解生成物は、洗浄液に伴って十分に除去されることはなく、洗浄液の供給を停止すると、図11(a)に示すように、特に遠心力の高い基板(ウエハW)の周縁部において洗浄液Rの液ちぎれが生じ、回路パターン間に溶解生成物と洗浄液Rが残留したままになってしまう。そして、これが現像欠陥として現れる。
【0008】
一方、特許文献1は、基板の中心部に洗浄液を供給し、次に基板の中心部にガスの吐出により乾燥領域を形成した後に、液ちぎれの発生を防止するため、乾燥領域が外に広がる速度よりも遅い速度で洗浄液ノズルを移動させることが記載されている。この基板洗浄方法は、高撥水性材料を塗布した基板の洗浄においても、極めて高い洗浄効果を得ることのできる手法である。しかしながら、特許文献1の技術を用いたとしても、良好な洗浄効果を得るためには、洗浄液ノズルの移動速度を十分に遅くする必要がある。しかし、洗浄液ノズルの移動速度を遅くすると、ノズルの移動に要する時間がプロセス時間の多くを占めることになるため、スループットの向上のためには、洗浄液ノズルの移動速度を上げることが望まれる。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、高撥水性材料を塗布した基板においても、短時間で高い洗浄効果を得ることができる基板洗浄方法、基板洗浄装置及び基板洗浄用記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の基板洗浄方法は、回路パターンが形成された基板の表面を洗浄する方法であって、前記基板を水平に保持し、前記基板の中心軸回りに回転させながら基板の表面の中心部に洗浄液を供給して前記基板の表面全体に液膜を形成する工程と、前記基板を回転させたまま、前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を基板の中心部から基板の周縁に向かって一定の距離だけ移動させると共に、前記基板の中心部にガスを吐出して乾燥領域を形成する工程と、前記基板を回転させながら、前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を、前記乾燥領域が前記基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度で前記基板の周縁に向かって移動させる工程と、を具備し、更に液膜を形成する洗浄液の温度が、少なくとも前記洗浄液の供給時に前記基板の表面上において処理雰囲気の温度よりも高くなるように、前記洗浄液を、温度調整する工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記洗浄液の温度は、23℃超乃至50℃であることが好ましい(請求項2)。ここで、洗浄液の温度が23℃超とは、処理雰囲気の温度すなわち処理モジュールの雰囲気温度である23℃よりも高いことを意味する。また、洗浄液の温度の上限を50℃と設定したのは、50℃以上になると、塗布・現像処理装置内の雰囲気制御が困難となる恐れがあるからである。
【0012】
また、洗浄液ノズルの移動速度を乾燥領域が基板の周縁部に広がる速度と略同一にする理由は、洗浄液ノズルの移動速度を乾燥領域の広がる速度よりも早くすると、液ちぎれが発生し、基板の回転による遠心力によって効果的に溶解生成物及び洗浄液を排出することができない。また、洗浄液ノズルの移動速度を乾燥領域の広がる速度よりもあまり遅くすると、洗浄液の外側に広がろうとする液流を乱して溶解生成物の速やかな排出を妨げ、更に処理時間が長くなりスループットが低下するからである。
【0013】
前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、前記基板の回転数は、500rpm乃至3000rpmであることが好ましい(請求項3)。また、前記洗浄液の供給位置の移動速度は、5mm/秒乃至20.0mm/秒であることが好ましい(請求項4)。
【0014】
また、本発明の洗浄方法は、前記乾燥領域を形成する工程において、前記洗浄液の供給位置と、前記ガスの吐出位置とを所定の間隔離間させた状態で、前記洗浄液の供給位置と前記ガスの吐出位置とを前記基板の周縁に向かって一体的に一定の距離だけ移動させ、その後、前記ガスの吐出を停止してもよい(請求項5)。
【0015】
また、本発明の基板洗浄方法は、前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、前記洗浄液の供給位置と、前記ガスの吐出位置とを所定の間隔離間させた状態で、洗浄液の供給とガスの吐出とを行いつつ、前記洗浄液の供給位置と前記ガスの吐出位置とを前記基板の周縁に向かって一体的に移動させ、前記洗浄液の供給位置が前記基板の周縁部に到達した時に、前記洗浄液の供給と前記ガスの吐出とを停止してもよい(請求項6)。
【0016】
更に、本発明の基板洗浄方法は、 前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、前記洗浄液の供給位置における線速度が計算上一定となるように、前記洗浄液の供給位置が前記基板の周縁に近づくにつれて、前記基板の回転数が低くなるようにすると好ましい(請求項7)。また、前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、前記洗浄液の供給位置における遠心力が計算上一定となるように、前記洗浄液の供給位置が前記基板の周縁に近づくにつれて、前記基板の回転数が低くなるように構成してもよい(請求項8)。
【0017】
また、本発明の基板洗浄方法において、洗浄液を温度調整する工程は、洗浄液を基板に供給する前に、温度調整器を用いて前記洗浄液を温度調整することにより行ってもよい(請求項9)。あるいは、前記洗浄液を温度調整する工程は、23℃より高い温度の基板に洗浄液を供給することにより行ってもよい(請求項10)。このとき、前記基板は、加熱手段により加熱され、その後、23℃より高い温度の現像液により現像されることにより、温度調整されてもよいし(請求項11)、前記基板の裏面に23℃より高い温度のリンス液を吐出することにより、温度調整されてもよい(請求項12)。また、前記基板の裏面に23℃より高い温度のガスを吐出することにより、温度調整されてもよい(請求項13)。
【0018】
本発明の第1の基板洗浄装置は、回路パターンが形成された基板の表面を洗浄する装置であって、前記基板の中心部とその回転中心軸とが一致するように前記基板を水平に保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転中心軸回りに回転させる回転機構と、前記基板保持部に保持された基板表面に洗浄液を供給する洗浄液ノズルと、前記基板保持部に保持された基板表面にガスを吐出するガスノズルと、前記洗浄液ノズルおよび前記ガスノズルをそれぞれ移動させるためのノズル駆動機構と、前記洗浄液の温度が、少なくとも前記洗浄液の供給時に処理雰囲気の温度よりも高くなるように、前記洗浄液を温度調整するための温度調整器と、前記回転機構,前記洗浄液ノズルの供給部,前記ガスノズルの供給部,前記ノズル駆動機構及び前記温度調節器を制御する制御手段と、を具備し、前記制御手段からの制御信号に基づいて、基板を回転させながら、基板の表面の中心部に前記洗浄液ノズルから洗浄液を供給して前記基板の表面全体に液膜を形成し、その後、前記洗浄液ノズルを基板の中心部上方から基板の周縁に向かって一定の距離だけ移動させると共に、前記基板の中心部に前記ガスノズルからガスを吐出して乾燥領域を形成し、前記乾燥領域が前記基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度で前記洗浄液ノズルを前記基板の周縁に向かって移動させるよう制御する、ことを特徴とする(請求項14)。
【0019】
また、本発明の第2の基板洗浄装置は、回路パターンが形成された基板の表面を洗浄する装置であって、前記基板の中心部と回転中心軸とが一致するように前記基板を水平に保持する基板保持部と、前記基板保持部を回転中心軸回りに回転させる回転機構と、前記基板保持部に保持された基板の表面に洗浄液を供給する洗浄液ノズルと、前記基板保持部に保持された基板の表面にガスを吐出するガスノズルと、前記洗浄液ノズルおよび前記ガスノズルを所定の間隔離間させた状態で、一体的に移動させるためのノズル駆動機構と、前記洗浄液の温度が、少なくとも前記洗浄液の供給時に前記基板の表面上において処理雰囲気の温度よりも高くなるように、前記洗浄液を温度調整するための温度調整器と、前記回転機構,前記洗浄液ノズルの供給部,前記ガスノズルの供給部,前記ノズル駆動機構及び前記温度調節器を制御する制御手段と、を具備し、前記制御手段からの制御信号に基づいて、基板を回転させながら、基板の表面の中心部に前記洗浄液ノズルから洗浄液を供給して前記基板の表面全体に液膜を形成し、その後、前記洗浄液ノズルを基板の中心部上方から基板の周縁に向かって移動させると共に、前記基板の中心部上方に前記ガスノズルを配置し、前記ガスノズルからガスを吐出して乾燥領域を形成し、前記乾燥領域が前記基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度で、前記洗浄液ノズルと前記ガスノズルとを前記基板の周縁に向かって一体的に移動させ、前記洗浄液ノズルが基板の周縁部上方に到達した時に、前記洗浄液の供給と前記ガスの吐出とを停止するよう制御する、ことを特徴とする(請求項15)。
【0020】
また、本発明の基板洗浄装置において、前記温度調整器は、洗浄液ノズルと洗浄液供給源とを接続する管路に介設され、洗浄液の温度を23℃超乃至50℃となるように設定可能に形成されていることが好ましい(請求項16)。
【0021】
更に、本発明の基板洗浄装置は、前記基板の裏面に、前記基板の裏面の周縁部に向けて23℃より高い温度の洗浄液を吐出するバックリンスノズルを設けてもよい(請求項17)。また、前記基板の裏面に、前記基板の裏面の周縁部に向けて23℃より高い温度のガスを吐出するガスノズルを更に設けてもよい(請求項18)。
【0022】
請求項19に記載の発明は、回路パターンが形成された基板表面を洗浄する装置に用いられ、コンピュータに制御プログラムを実行させるソフトウェアが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、前記制御プログラムは、上記基板処理方法のいずれか一つの基板洗浄方法を実行するように工程が組まれていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
(1)請求項1〜5、9〜18に記載の発明によれば、基板の中心部に洗浄液を供給して基板の表面全体に液膜を形成し、洗浄液の供給位置を基板の中心部から基板の周縁に向かって一定の距離だけ移動させると共に、基板の中心部にガスを吐出して乾燥領域を形成させ、この乾燥領域が基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度で洗浄液の供給位置を基板の周縁に向かって移動させることにより、レジスト膜の回路パターン間に残存する溶解生成物を洗浄液で掻き出しながら、洗浄液の液流にのせて溶解生成物を排出させることが可能となる。また、洗浄液の温度を、少なくとも前記洗浄液の供給時に基板表面上において処理雰囲気内の温度より高い温度にすることによって、乾燥領域が広がる速度を早くすることができ、基板の洗浄時間が短縮され、これによりスループットが向上する。
【0024】
(2)請求項6に記載の発明によれば、洗浄液の供給位置と、ガスの吐出位置とを一体的に基板の周縁部まで移動させることにより、乾燥領域の乾燥が促進され、効果的に基板を洗浄することができる。また、ガスの吐出により、洗浄液の供給位置において基板の周縁に向かう気流を形成するため、ミストの乾燥領域への付着を防止することができる。
【0025】
(3)更に、請求項7に記載の発明によれば、洗浄液の供給位置における線速度が計算上一定となるように、前記洗浄液の供給位置が前記基板の周縁に近づくにつれて、前記基板の回転数が低くなるようにすることにより、ミストの発生を抑制することができる。また、請求項8に記載の発明によれば、洗浄液の供給位置における遠心力が計算上一定となるようにすることにより、基板の面内の洗浄液の供給量を一定とすることができ、基板の周縁部においても高い洗浄効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る基板洗浄装置を適用した塗布・現像処理装置に露光装置を接続した処理システムの全体を示す概略平面図である。
【図2】前記処理システムの概略斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る基板洗浄装置を適用した現像処理装置の概略縦断面図である。
【図4】前記第1実施形態に係る基板洗浄装置を示す平面図である。
【図5】前記第1実施形態に係る基板洗浄装置を用いた基板洗浄方法を段階的に示す説明図である。
【図6】本発明に係る基板洗浄方法を用いて基板を洗浄したときの洗浄メカニズムを示す説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態に係る基板洗浄方法を段階的に示す説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係る基板洗浄装置を適用した現像処理装置の概略縦断面図である。
【図9】本発明の第4実施形態に係る基板洗浄装置を適用した現像処理装置の概略縦断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る基板洗浄装置を適用した現像処理装置の概略縦断面図である。
【図11】放射状欠陥が発生したウエハの平面図(a)及び同心円状欠陥が発生したウエハの平面図(b)である。
【図12】回路パターン間の洗浄液の液ちぎれの様子を示す説明図である。
【図13(a)】ウエハの回転数毎のウエハ上の各点における線速度を示すグラフである。
【図13(b)】ウエハ周縁においてミストが発生しない最大回転数毎のウエハ上の各点における制御回転数を示すグラフである。
【図14】評価試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、添付図面に基づいて説明する。ここでは、本発明に係る基板洗浄装置を塗布・現像処理装置に露光処理装置を接続した処理システムに適用した場合について説明する。
【0028】
前記処理システムは、被処理基板である半導体ウエハW(以下にウエハWという)を複数枚例えば25枚を密閉収納するキャリア10を搬出入するためのキャリアステーション1と、このキャリアステーション1から取り出されたウエハWにレジスト塗布,現像処理等を施す処理部2と、ウエハWの表面に光を透過する液層を形成した状態でウエハWの表面を液浸露光する露光部4と、処理部2と露光部4との間に接続されて、ウエハWの受け渡しを行うインターフェース部3とを具備している。
【0029】
キャリアステーション1は、キャリア10を複数個並べて載置可能な載置部11と、この載置部11から見て前方の壁面に設けられる開閉部12と、開閉部12を介してキャリア10からウエハWを取り出すための受け渡し手段A1とが設けられている。
【0030】
また、キャリアステーション1の奥側には筐体20にて周囲を囲まれる処理部2が接続されており、この処理部2にはキャリアステーション1から見て左手手前側から順に加熱・冷却系のユニットを多段化した棚ユニットU1,U2,U3を配置し、右手に液処理ユニットU4,U5を配置する。棚ユニットU1,U2,U3の間に、各ユニット間のウエハWの受け渡しを行う主搬送手段A2,A3が棚ユニットU1,U2,U3と交互に配列して設けられている。また、主搬送手段A2,A3は、キャリアステーション1から見て前後方向に配置される棚ユニットU1,U2,U3側の一面部と、後述する例えば右側の液処理ユニットU4,U5側の一面部と、左側の一面をなす背面部とで構成される区画壁21により囲まれる空間内に置かれている。また、キャリアステーション1と処理部2との間、処理部2とインターフェース部3との間には、各ユニットで用いられる処理液の温度調節装置や温湿度調節用のダクト等を備えた温湿度調節ユニット22が配置されている。
【0031】
インターフェース部3は、処理部2と露光部4との間に前後に設けられる第1の搬送室3A及び第2の搬送室3Bにて構成されており、それぞれに第1のウエハ搬送部30A及び第2のウエハ搬送部30Bが設けられている。
【0032】
棚ユニットU1,U2,U3は、液処理ユニットU4,U5にて行われる処理の前処理及び後処理を行うための各種ユニットを複数段例えば10段に積層した構成とされており、その組み合わせはウエハWを加熱(ベーク)する加熱ユニット(HP)、ウエハWを冷却する冷却ユニット(CPL)等が含まれる。また、液処理ユニットU4,U5は、例えば図2に示すように、レジストや現像液などの薬液収納部の上に反射防止膜を塗布するボトム反射防止膜塗布ユニット(BCT)23、塗布ユニット(COT)24、ウエハWに現像液を供給して現像処理する現像ユニット(DEV)25等を複数段例えば5段に積層して構成されている。本発明に係る基板洗浄装置は現像ユニット(DEV)25に設けられている。
【0033】
次に、前記の処理システムにおけるウエハWの流れについて簡単に説明する。先ず外部からウエハWの収納されたキャリア10が載置台11に載置されると、開閉部12と共にキャリア10の蓋体が外されて受け渡し手段A1によりウエハWが取り出される。そしてウエハWは棚ユニットU1の一段をなす受け渡しユニットを介して主搬送手段A2へと受け渡され、棚ユニットU1〜U3内の一つの棚にて、塗布処理の前処理として、反射防止膜の形成や冷却ユニットによる基板の温度調整などが行われる。
【0034】
その後、主搬送手段A2によりウエハWは塗布ユニット(COT)24内に搬入され、ウエハWの表面にレジスト膜が成膜される。レジスト膜が成膜されたウエハWは主搬送手段A2により外部に搬出され、加熱ユニットに搬入されて所定の温度でベーク処理がなされる。ベーク処理を終えたウエハWは、冷却ユニットにて冷却された後、棚ユニットU3の受け渡しユニットを経由してインターフェイス部3へと搬入され、このインターフェイス部3を介して露光部4内に搬入される。なお、液浸露光用の保護膜をレジスト膜の上に塗布する場合には、前記冷却ユニットにて冷却された後、処理部2における図示しないユニットにて保護膜用の薬液の塗布が行われる。その後、ウエハWは露光部4に搬入されて液浸露光が行われる。このとき、液浸露光の前にインターフェイス部3に設けられた図示しない本発明の基板洗浄装置にて洗浄するようにしてもよい。
【0035】
液浸露光を終えたウエハWは第2のウエハ搬送部30Bにより露光部4から取り出され、棚ユニットU6の一段をなす加熱ユニット(PEB)に搬入される。その後、ウエハWは第1のウエハ搬送部30Aによって加熱ユニット(PEB)から搬出され、主搬送手段A3に受け渡される。そしてこの主搬送手段A3により現像ユニット25内に搬入される。現像ユニット25では、現像処理に兼用する本発明に係る基板洗浄装置により基板の現像が行われ、更に洗浄が行われる。その後、ウエハWは主搬送手段A3により現像ユニット25から搬出され、主搬送手段A2、受け渡し手段A1を経由して載置台11上の元のキャリア10へと戻される。
【0036】
<第1実施形態>
本発明の基板洗浄装置を現像処理装置に組み合わせた実施の形態について図3及び図4を参照して説明する。
【0037】
図3及び図4に示すように、前記基板洗浄装置100は、ケーシング26内に、ウエハWの裏面中央部を吸引吸着して水平姿勢に保持する基板保持部であるスピンチャック30を具備している。スピンチャック30は軸部31を介して、例えばサーボモータ等の回転機構32と連結されており、この回転機構32によりウエハWを保持した状態で回転可能なように構成されている。なお、回転機構32は、制御手段である制御コンピュータ80の制御部80aに電気的に接続されており、制御コンピュータ80からの制御信号に基づいてスピンチャック30の回転数が制御される。また、ケーシング26には、ウエハWの搬入出口27が設けられ、この搬入出口27にはシャッタ28が開閉可能に配設されている。
【0038】
前記スピンチャック30上のウエハWの側方を囲むようにして上方側が開口するカップ体40が設けられている。このカップ体40は、円筒状の外カップ41と、上部側が内側に傾斜した筒状の内カップ42とからなり、外カップ41の下端部に接続された例えばシリンダ等の昇降機構43により外カップ41が昇降し、更に内カップ42は外カップ41の下端側内周面に形成された段部に押し上げられて昇降可能なように構成されている。なお、昇降機構43は、制御コンピュータ80に電気的に接続されており、制御コンピュータ80からの制御信号に基づいて外カップ41が昇降するように構成されている。
【0039】
また、スピンチャック30の下方側には円形板44が設けられており、この円形板44の外側には断面が凹部状に形成された液受け部45が全周に亘って設けられている。液受け部45の底面にはドレイン排出口46が形成されており、ウエハWからこぼれ落ちるか、あるいは振り切られて液受け部45に貯留された現像液や洗浄液は、このドレイン排出口46を介して装置の外部に排出される。また円形板44の外側には断面山形のリング部材47が設けられている。なお、円形板44を貫通する例えば3本の基板支持ピンである昇降ピン(図示せず)が設けられており、この昇降ピンと基板搬送手段(図示せず)との協働作用によりウエハWはスピンチャック30に受け渡しされるように構成されている。
【0040】
一方、スピンチャック30に保持されたウエハWの上方側には、現像液ノズル50、洗浄液ノズル60及びガスノズル70が昇降可能及び水平移動可能に設けられている。現像液ノズル50は、例えば、スピンチャック30に保持されたウエハWに、帯状に現像液を供給するスリット状の吐出口50Aを備えている。この吐出口50Aは、長手方向がウエハWの直径方向に沿うように配置されている。現像液ノズル50は、流量調整器52を介設した現像液供給管51を介して現像液供給源53に接続されている。現像液の流量及び供給時間は、例えば流量調整バルブ等の流量調整器52で調整される。
【0041】
前記現像液ノズル50は支持部材であるノズルアーム55の一端側に支持されており、このノズルアーム55の他端側は図示しない昇降機構を備えた移動基台56と接続されている。更に、移動基台56は、例えばケーシング26の底面にてX方向に伸びるガイド部材57に沿って、例えば、ボールねじ機構やタイミングベルト機構等からなるノズル移動機構200により横方向に移動可能なように構成されている。また、カップ40の一方の外側には、現像液ノズル50の待機部58が設けられ、この待機部58ではノズル先端部の洗浄などが行われる。
【0042】
また、スピンチャック30の上方には、洗浄液ノズル60が設けられ、流量調整器62を介設した洗浄液供給管61を介して洗浄液供給源63に接続されている。洗浄液の流量及び供給時間は、例えば流量調整バルブ等の流量調整器62で調整される。
【0043】
洗浄液供給源63には、例えばヒータなどの加熱機器を搭載した温度調整器64が接続され、洗浄液を所定の温度に調整する。また、洗浄液供給管61は、流量調整器62を含めて、断熱部材などから構成される温度維持部材61aで囲まれており、洗浄液ノズル60からウエハW上に洗浄液を供給する時まで、洗浄液の温度を温度調整器64で調整された所定の温度に維持することができる。
【0044】
また、洗浄液ノズル60は、図4に示すように、ノズル保持部65を介してノズルアーム66に固定されており、このノズルアーム66は昇降機構を備えた移動基台67と接続されている。この移動基台67は、例えば、ボールねじ機構やタイミングベルト機構等からなるノズル移動機構300により、例えば前記ガイド部材57に沿って現像液ノズル50と干渉しないで横方向に移動可能なように構成されている。また、カップ40の現像液ノズル50の待機部58の他方の外側には、洗浄液ノズル60の待機部68が設けられている。
【0045】
ガスノズル70は、ガス流量調整器72を介設したガス供給管71を介してガス供給源73に接続されている。なお、この実施形態においては、ガスノズル70から吐出されるガスとしてN2(窒素)などの不活性ガスが使用される。またガスノズル70は、例えば洗浄液ノズル60と共通のノズル保持部65に固定されており、ノズルアーム66により洗浄液ノズル60と一体的に移動するように構成されている。
【0046】
現像液ノズル50を移動させるためのノズル移動機構200、洗浄液ノズル60及びガスノズル70を移動させるためのノズル移動機構300、スピンチャック30を回転させる回転機構32及びカップ40の昇降機構43、現像液、洗浄液、ガスの流量を調整する流量調整器52,62,72は、制御部80aにより制御される。制御部80aは制御コンピュータ80に内蔵されており、制御コンピュータ80は、制御部80aの他に、基板洗浄装置100が行う後述の動作における各処理工程を実行するためのプログラムを格納する制御プログラム格納部80bと、読取部80cを内蔵している。また、制御コンピュータ80は、制御部80aに接続された入力部80eと、処理工程を作成するための処理工程画面を表示する表示部80dと、読取部80cに挿着されると共に、制御コンピュータ80に制御プログラムを実行させるソフトウェアが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体が備えられており、制御プログラムに基づいて前記各部に制御信号を出力するように構成されている。
【0047】
また、制御プログラムは、ハードディスク、コンパクトディスク、フラッシュメモリ、フレキシブルディスク、メモリカードなどの記憶媒体80fに格納され、これら記憶媒体80fから制御コンピュータ80にインストールされて使用される。
【0048】
次に、前記のように構成される基板洗浄装置100の動作態様について説明する。最初に、ウエハWが基板洗浄装置100内に搬入されていない時には、外カップ41、内カップ42は下降位置にあり、現像液ノズル50、洗浄液ノズル60及びガスノズル70は所定の待機位置にて夫々待機している。前記処理システムにおいて、液浸露光された後のウエハWが、加熱処理された後、主搬送手段A3(図1参照)により基板洗浄装置100内に搬入されると、主搬送手段A3と図示しない昇降ピンとの協働作用によりウエハWはスピンチャック30に受け渡される。なお、本実施形態では、撥水性の高いレジスト材料が用いられており、基板洗浄装置100に搬入されるウエハW表面の水の静的接触角は、例えば90度である。
【0049】
その後、外カップ41及び内カップ42が上昇位置に設定されると共に、現像液ノズル50からウエハW上に現像液が供給され、公知の手法により現像液の供給が行われる。この実施形態では、現像液の供給開始の際には、現像液ノズル50はウエハWの周縁部上方、例えばウエハWの表面から数mm上方に配置される。ウエハWを例えば1000〜1200rpmの回転速度で回転させると共に、現像液ノズル50から現像液を帯状に吐出しながら、現像液ノズル50をウエハWの周縁から中央部に向かって移動させる。現像液ノズル50から帯状に吐出された現像液は、ウエハWの外側から内側に向かって互いに隙間のないように並べられていき、これによりウエハWの表面全体に螺旋状に現像液が供給される。そしてウエハWの回転による遠心力によりウエハWの表面に沿って現像液は外側に広がり、薄膜状の液膜が形成される。こうして、現像液にレジストの溶解性部位が溶解して、不溶解性の部位が残って回路パターンが形成される。
【0050】
次に、この現像液ノズル50と入れ替わるようにして洗浄液ノズル60がウエハWの中心部上方に配置され、現像液ノズル50が現像液の供給を停止した直後に速やかに洗浄液ノズル60から洗浄液Rを吐出してウエハWの表面の洗浄を行う。以下に、この洗浄工程について図5及び図6を参照して詳細に説明する。
【0051】
本実施形態の洗浄工程は、以下のステップにより行われる。
【0052】
(ステップ1)図5(a)に示すように、洗浄液ノズル60をウエハWの中心部Cの上方、例えばウエハWの表面から15mmの高さの位置に配置する。スピンチャック30を例えば1000rpmの回転数で回転させながら、洗浄液ノズル60からウエハWの中心部Cに例えば純水などの洗浄液Rを例えば250ml/分の流量で例えば5秒間吐出する。洗浄液Rは遠心力によりウエハWの中心部Cから周縁部に向かって広がり、現像液が洗浄液Rにより置換される。こうして、ウエハWの表面全体に洗浄液Rの液膜が形成される。
【0053】
洗浄液Rは、前記の温度調整器64によって23℃超乃至50℃、例えば30℃に予め調整されている。従って、ウエハWの中心部Cに供給される洗浄液Rの温度は、基板洗浄装置100内の雰囲気温度の23℃よりも高い温度、例えば約30℃となっている。なお、温度の上限を50℃と設定したのは、50℃より高くなると、塗布・現像処理装置内の雰囲気制御が困難となる恐れがあるからである。
【0054】
(ステップ2)次に、スピンチャック30を1500rpm以上、例えば2000rpmの回転数で回転させながら、図5(b)に示すように、ノズルアーム66(図4参照)を移動させることにより、洗浄液ノズル60をウエハWの中心部CからウエハWの周縁部に向かって一定の距離だけ移動させ、ガスノズル70をウエハWの中心部Cの上方に配置する。このとき、洗浄液ノズル60は、洗浄液Rを例えば250ml/分の流量で吐出しながら例えば150mm/秒の速度で移動する。ここで洗浄液ノズル60をウエハWの中心部Cから一定の距離だけ外側に移動させると、当該中心部Cには洗浄液Rが供給されなくなる。しかしながら、図5(b)に示すように、当該中心部Cは遠心力が小さいので、洗浄液Rの液膜は、薄い液膜の状態を保ったまま引き裂かれずに維持される。
【0055】
ガスノズル70がウエハWの中心部Cの上方まで移動すると、ノズルアーム66は一旦停止し、ガスノズル70からウエハWの中心部Cに、例えばN2ガスGを吹き付ける。図5(c)に示すように、ガスノズル70からN2ガスGが吹付けられると、中心部Cに保たれていた薄い液膜が破れ、乾燥領域Dのコアが出現する。なお、乾燥領域Dとは、洗浄液Rが蒸発することによりウエハWの表面が露出した領域をいい、ここではウエハWの表面にミクロレベルの液滴が付着している場合も含む。この乾燥領域Dのコアは、遠心力により中心部Cから洗浄液Rの供給位置まで広がっていく。なお、本実施形態では、N2ガスGの吐出開始から吐出停止までの時間は、例えば5秒間である。こうして、ウエハWの中心部Cから洗浄液Rの供給位置までの距離を直径とした円状の乾燥領域Dを完全に乾燥させる。
【0056】
本実施形態において、ウエハWの表面は、水の接触角が90度と撥水性が高いため、乾燥領域DがウエハWの回転による遠心力により外側へと広がる速度は、親水性のウエハWと比較してかなり早い。しかし、中心部C付近のウエハWの回転による遠心力は低いので、乾燥領域Dは洗浄液Rの液膜を排除しながら洗浄液Rの供給領域へと徐々に広がる。また、ステップ1において、ウエハWの中心部Cから洗浄液Rの供給が開始され、供給された洗浄液Rが中心部Cに衝突し、その衝撃とウエハWの回転による遠心力との作用により、この中心部Cにおける溶解生成物は効率的に外側へと排出される。従って、回路パターンの凹部内の洗浄液Rは確実に排出され、欠陥は生じない。
【0057】
なお、良好な乾燥領域Dを形成するために、洗浄液ノズル60とガスノズル70は適切な離間距離をもって配置する必要がある。この実施形態において、その距離は約9mm〜約15mmである。離間距離が9mmより小さいと、洗浄液Rの液膜が十分に薄くなっていないため、乾燥領域Dがうまく形成されず、また離間距離が15mmより大きいと広い領域で瞬時に乾燥が起こり、欠陥数が多くなる。
【0058】
(ステップ3)ステップ2において乾燥領域Dを形成した後、ウエハWがそのまま回転している状態で、図5(d)に示すように、洗浄液ノズル60から洗浄液RをウエハWの表面に供給しながら、洗浄液ノズル60とガスノズル70を一体的にウエハWの周縁部に向けて移動させる。
【0059】
そして、洗浄液ノズル60の中心がウエハWの周縁から少し中心寄りの位置、例えばウエハWの周縁から中心側に2〜10mm離れた位置に達すると(図5(e))、洗浄液ノズル60からの洗浄液Rの吐出を停止する。このとき、ガスノズル70からはガスの吐出は停止させたままである。また、ウエハWは回転させたままにしておく。なお、洗浄液ノズル60からの洗浄液Rの供給をウエハWの周縁に至るまで行うと、洗浄液RがウエハWの周縁、特にノッチ部にあたって跳ね返り、ミストとなってウエハW表面に舞戻ってくるため、周縁に至る少し手前で洗浄液Rの供給を停止することが好ましい。
【0060】
既述の通り、ウエハWの表面の撥水性が高い場合、ウエハWを回転させたまま洗浄液Rの供給を停止すると、特に遠心力の高い基板周縁部において洗浄液Rの液ちぎれが発生して図11(a)に示すような、放射状の欠陥が発生してしまう。この放射状の欠陥は、図12に示すように、洗浄液Rが回路パターンの凸部上面Tと凹部Pとの間で引きちぎられて、凹部Pに洗浄液Rと溶解生成物が残留することにより発生する。本実施形態では、ウエハWを回転させながら、洗浄液ノズル60の洗浄液Rの供給位置を移動させていくことにより、図6(a)及び図6(b)に示すように、ウエハWの表面上の全ての位置において、洗浄液Rの供給による衝撃によって回路パターンの凹部Pの溶解生成物rを掻き出し、ウエハWの回転による遠心力によって洗浄液Rの液流にのせて溶解生成物rを排出するようにしている。
【0061】
また、本実施形態において、洗浄液ノズル60の移動速度は、乾燥領域Dが基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度に設定されている。この移動速度は、ウエハWの回転数にも依存するが、約5mm/秒〜約20mm/秒の範囲であることが好ましく、本実施形態においては、約10mm/秒である。なお、「乾燥領域Dが基板の周縁部に広がる速度」とは、ウエハWを回転させた状態で、ウエハWの中心部Cに洗浄液Rを供給して液膜を形成し、その後洗浄液Rを供給せずにN2ガスGの吹付けを行った場合の、乾燥領域Dが外側に広がっていく速度をいう。また、「略同一の速度」には、洗浄液ノズル60の移動速度が、乾燥領域Dが基板周縁に広がる速度よりも若干遅い場合も含む。洗浄液ノズル60の移動速度を乾燥領域Dが基板の周縁部に広がる速度と略同一にする理由は、洗浄液ノズル60の移動速度を乾燥領域Dの広がる速度よりも早くすると、液ちぎれが発生し、ウエハWの回転による遠心力によって効果的に溶解生成物r及び洗浄液Rを排出することができない。また、洗浄液ノズル60の移動速度を乾燥領域Dの広がる速度よりもあまり遅くすると、洗浄液Rの外側に広がろうとする液流を乱して溶解生成物rの速やかな排出を妨げ、更に処理時間が長くなりスループットが低下する。
【0062】
更に、ステップ3において、ステップ1及び2と同様に、洗浄液Rは、前記の温度調整器64によって23℃より高い温度、例えば約30℃に予め調整されている。ウエハWの表面における洗浄液Rの温度を上げることによって、乾燥領域Dが基板の周縁部に広がる速度をより早くすることができる。これにより、後述の評価試験において示されるように、洗浄液ノズル60の移動速度を上げることができ、スループットを上げることができる。このときの洗浄液Rの温度は、モジュール内の雰囲気の温度である23℃よりも高く、装置内の他のモジュールへの影響を考慮して50℃以下の温度が好ましい。
【0063】
また、ステップ3では、洗浄液Rの各供給位置においてウエハWの回転による遠心力が計算上一定となるようにウエハWの回転数が制御される。すなわち、洗浄液Rの供給位置がウエハWの中心に近いほどウエハWの回転数が高く、ウエハWの周縁に近いほどウエハWの回転数が低くなるようにウエハWの回転数を制御してもよい。このように回転数を制御することにより、ウエハW上の単位面積当たりに供給する洗浄液Rの量をウエハWの面内で揃え、これによりウエハWの中心部Cから外側の領域においても高い洗浄効果を得ることができる。
【0064】
なお、ステップ3の開始時の回転数は例えば500rpm〜3000rpmであることが好ましい。ウエハWの回転数が、3000rpmよりも高いとミストが発生して、ウエハWの乾燥領域Dの同心円状にミストが付着し、図11(b)に示すような現像欠陥が生じる。また、500rpmよりも低いと、乾燥領域Dの広がる速度が遅くなり、処理時間が長くなる。本実施形態のステップ3の開始時の回転数は、例えば2000rpmである。また、ステップ3における洗浄ノズル60の移動速度は、処理時間の短縮化を図るためにはできるだけ速い方が好ましいが、高い洗浄効果を発揮するためには、前記の通り、乾燥領域Dが基板周縁に広がる速度と略同一となるよう設定され、約5mm/秒〜約20mm/秒が好ましい。
【0065】
(ステップ4)洗浄液ノズル60からの洗浄液Rの供給を停止した後は、供給停止前の回転数、例えば2000rpmの回転数でウエハWを回転させる。これにより乾燥領域DがウエハWの周縁部まで広がる。その後、ウエハWの回転数を例えば2000rpmに設定したまま、ウエハW上のミクロレベルの液滴を遠心力により振り切って乾燥を行う。同時に、洗浄液ノズル60及びガスノズル70は待機位置に戻される。
【0066】
以上の一連のステップ1〜4は、制御コンピュータ80のメモリ内に格納されている制御プログラムを制御コンピュータ80が読み出し、その読み出した命令に基づいて既述の各機構を動作するための制御信号を出力することにより実行される。
【0067】
第1実施形態によれば、高い撥水性を持つレジスト材料が塗布されたウエハWに対して現像した後、ウエハWの中心部Cに洗浄液Rを供給し、洗浄液Rの供給位置をウエハWの周縁に向かって一定の距離だけ移動させると共に、ウエハWの中心部Cにガスノズル70からガスを吐出して乾燥領域Dを発生させ、その後、ウエハWを回転させたまま洗浄液Rの供給位置を、乾燥領域DがウエハWの周縁部に広がる速度と略同一の速度でウエハWの周縁に向けて移動させるようにしている。第1実施形態のこの構成により、高い洗浄効果を実現して、現像欠陥を皆無に近い状態まで低減することができる。更に、第1実施形態では、温度調整器64により予め23℃より高い温度に温度調整された洗浄液RをウエハWの表面上に供給することによって、ウエハWの乾燥を促進し、乾燥領域DがウエハWの周縁部に広がる速度を早めている。これにより、洗浄液ノズル60の移動速度を上げることができる。こうして、効果的な洗浄をより短時間で行うことができる。また、洗浄液Rの供給位置における遠心力が計算上一定となるようにウエハWの回転数を制御して、ウエハW上の単位面積当たりに供給する洗浄液Rの量をウエハWの面内で揃えるようにすることにより、ウエハWの周縁部においても高い洗浄効果が得られる。
【0068】
<第2実施形態>
次に、本発明に係る基板洗浄装置及び方法の第2実施形態について、図7を参照して説明する。第2実施形態は、第1実施形態で用いられる基板洗浄装置と同じ装置を用いているため、装置の説明は省略する。以下、本実施形態の洗浄工程について説明する。
【0069】
本実施形態は、ステップ2までは第1実施形態と同様である。まず、図7(a)に示すように、ウエハWを回転させながら、洗浄液ノズル60からウエハWの中心部に洗浄液Rを供給する。このときの洗浄液Rの温度は、温度調整器64により、23℃より高い温度、例えば約30℃に設定されている。次に、洗浄液ノズル60をウエハWの周縁方向に一定の距離だけ移動させ、ガスノズル70をウエハWの中心部上方に配置する。そして、ガスノズル70からガスを吐出して乾燥領域Dを形成する(図7(b)参照)。その後、以下のステップへと続く。
【0070】
(ステップ3α)スピンチャック30を1500rpm以上、例えば2500rpmの回転数で回転させながら、ノズルアーム66(図4参照)を移動させることにより、洗浄液ノズル60及びガスノズル70を一体的にウエハWの中心部Cから少し外側に移動させる(図7(c)参照)。このとき、洗浄液ノズル60は、洗浄液Rを例えば250ml/分の流量で吐出しながら例えば10mm/秒の速度で移動する。また同時に、ガスノズル70は、N2ガスを吐出しながら、洗浄液ノズル60と同様に例えば10mm/秒の速度で移動する。この洗浄液ノズル60とガスノズル70の移動は、例えば5秒間行われる。これにより、ウエハWの中心部から外側のより広い領域において、乾燥領域Dが形成され、この領域DではウエハWの表面は完全に乾燥している。
【0071】
(ステップ4α)次に、スピンチャック30の回転数を一旦下げて、例えば、1100rpmの回転数で回転させながら、ステップ3αと同様に、ノズルアーム66を移動させることにより、洗浄液ノズル60及びガスノズル70を一体的にウエハWの周縁に向かって移動させる(図7(c)参照)。このとき、洗浄液ノズル60及びガスノズル70の移動速度は、乾燥領域DがウエハWの周縁に広がる速度と略同一であり、本実施形態では、10mm/秒である。このように、洗浄液Rの温度が処理雰囲気温度の23℃よりも高いため、従来と比較して乾燥領域Dの基板の周縁部に広がる速度は早く、これによりノズル60及び70の移動速度を従来よりも早くすることができる。
【0072】
(ステップ5α)洗浄液Rの供給位置が、ウエハWの周縁より内側2〜10mmの位置まで到達すると、洗浄液ノズル60及びガスノズル70からの洗浄液RとN2ガスの供給を同時に停止する(図7(d)参照)。
【0073】
本実施形態では、まず、ステップ3αにおいて、ウエハWを高い回転数で回転させつつ洗浄液RとN2ガスGを吐出しながら洗浄液ノズル60とガスノズル70をウエハWの周縁部に向かって移動させることにより、ステップ2で形成された乾燥領域Dのコアを広げて、完全に乾燥した乾燥領域Dを形成している。こうして、ウエハWの表面の中心部に存在する溶解生成物が洗浄液Rの供給位置まで除去され、その後の洗浄液ノズル60の移動により、効果的に洗浄液Rの液流にのせて溶解生成物を除去することができる。
【0074】
また、ステップ4αにおいて、洗浄液ノズル60から洗浄液Rを供給しながらガスノズル70と一体的にウエハWの周縁まで移動する際に、ガスノズル70からもN2ガスを吐出し続けることにより、ウエハW上の気流の流れを外側に作り、ウエハWの乾燥領域Dへのミストの再付着を防止する。これにより、乾燥領域Dへのミストの再付着を原因とする同心円状の欠陥(図11(b)参照)が低減される。
【0075】
<第3実施形態>
次に、本発明に係る基板洗浄装置の第3実施形態について、図8を参照して説明する。図8に示すように、この実施形態に係る基板洗浄装置110は、現像液供給源53に、例えばヒータなどの加熱機器を搭載した温度調整器54を接続し、現像液を処理雰囲気温度の23℃より高い温度、例えば約30℃に調整する。この温度は23℃超〜50℃であることが好ましい。また、現像液供給管51は、流量調整器52を含めて、断熱部材などから構成される温度維持部材51aで囲まれており、現像液ノズル50からウエハW上に現像液を供給する時まで、現像液の温度を温度調整器54で調整された所定の温度に維持することができる。以上の構成の他は、第1実施形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0076】
このように構成される基板洗浄装置110を用いた基板洗浄方法について、図1〜図4及び図8を参照して簡単に説明する。
【0077】
まず、この実施形態に係る基板洗浄装置110に搬入される前に、液浸露光を終えたウエハWは第2のウエハ搬送部30Bにより露光部4から取り出され、棚ユニットU6の一段をなす加熱ユニット(PEB)に搬入される。この加熱ユニット(PEB)で加熱された後、ウエハWは、第1のウエハ搬送部30Aにより加熱ユニット(PEB)から搬出され、棚ユニットU3の温調ユニットに搬入される。そこでウエハWは、約23℃〜約100℃の温度に調整される。その後、主搬送手段A3により、ウエハWはこの実施形態に係る基板洗浄装置110のスピンチャック30に受け渡される。
【0078】
ウエハWがスピンチャック30に受け渡されると、外カップ41及び内カップ42が上昇し、現像液ノズル50からウエハW上に現像液が供給されて、回路パターンが形成される。このとき、供給される現像液の温度は、約30℃である。このように、ウエハWの温度を処理雰囲気温度(23℃)よりも高くしておく。
【0079】
次に、現像液ノズル50と入れ替わり、洗浄液ノズル60がウエハWの中心部の上方に配置され、洗浄液ノズル60から洗浄液Rが供給される。その後の洗浄方法は、第1実施形態と同様に行う。
【0080】
ウエハWの表面に供給する洗浄液Rの温度は、少なくとも洗浄液Rの供給時に処理雰囲気温度の23℃と同じであってもよいし、23℃より高い、例えば約30℃であってもよい。洗浄液Rの温度が処理雰囲気温度の23℃である場合、ウエハWの温度が約23℃超〜約100℃に調整されているので、洗浄液RはウエハWの表面に供給された時に温められ、ウエハWの表面上においては、洗浄液Rの温度は処理雰囲気温度の23℃よりも高くなる。従って、この場合においても、乾燥領域DのウエハWの周縁部に広がる速度は、洗浄液Rが処理雰囲気温度である場合と比較して早く、よって洗浄液ノズル60の移動速度を上げることができるため、従来よりもスループットを向上させることができる。
【0081】
また、現像の際に、ウエハW及び現像液を高温とすることによって、現像液に対する露光部分の溶解を促進し、現像時間を短縮することもできる。
【0082】
<第4実施形態>
図9は、本発明に係る基板洗浄装置の第4実施形態の縦断面図である。
【0083】
この実施形態では、ウエハWの裏面周縁に回り込んだ現像液等の処理液を除去するためのバックリンスノズル90が設けられている。バックリンスノズル90は、サックバックバルブなどの流量調整器62vを介設した洗浄液供給管61を介して、洗浄液ノズル60と共通の洗浄液供給源63に接続されている。第1実施形態と同様に、洗浄液供給源63には、例えばヒータなどの加熱機器を搭載した温度調整器64が接続され、洗浄液を処理雰囲気温度の23℃より高い温度、例えば23℃超〜50℃に調整する。また、洗浄液供給管61は、流量調整器62vを含めて、断熱部材などから構成される温度維持部材61bで囲まれており、バックリンスノズル90からウエハWの裏面周縁に洗浄液を供給する時まで、洗浄液の温度を温度調整器64で調整された所定の温度に維持することができる。第4実施形態は、このバックリンスノズル90が設けられた以外は、第1実施形態と同様の構成を有しているため、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0084】
次に、第4実施形態における基板洗浄方法について、簡単に説明する。まず、ウエハWがスピンチャック30に受け渡されると、外カップ41及び内カップ42が上昇する。そして、バックリンスノズル90から例えば23℃超〜50℃に温度調整された洗浄液RがウエハWの裏面周縁に吐出され、ウエハWが裏面より温められる。ウエハWの温度が例えば23℃超〜50℃にまで温められると、バックリンスノズル90からの洗浄液Rの供給は停止し、現像液ノズル50からウエハW上に現像液が供給されて、回路パターンが形成される。現像液ノズル50と洗浄液ノズル60とが入れ替わるタイミングで、バックリンスノズル90からの洗浄液Rの供給が再び開始し、ウエハWの表面及び裏面に、処理雰囲気温度よりも高温にされた洗浄液Rが同時に供給される。以後の工程は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0085】
この実施形態において、ウエハWを現像した後に洗浄する場合に、ウエハWが高温のバックリンスによって洗浄前に温められているので、温められた洗浄液RがウエハWの表面に供給される際に冷やされることがない。従って、ウエハWの表面上の洗浄液Rの蒸発が促進され、乾燥領域DのウエハWの周縁部に広がる速さを早くすることができ、洗浄液ノズル60の移動速度を上げることができる。
【0086】
なお、本実施形態では、洗浄液ノズル60とバックリンスノズル90とは共通の洗浄液供給源63に接続していたが、それぞれ別の洗浄液供給源に接続し、個別に温度調整するようにしてもよい。その場合、洗浄液ノズル60から供給する洗浄液Rの温度は、処理雰囲気温度の23℃であってもよい。この場合にも、予めバックリンスによってウエハWは温められているため、ウエハWの表面上に供給された洗浄液Rは、ウエハW上で温められ、乾燥領域Dの基板の周縁に広がる速さを早くすることができる。
【0087】
<第5実施形態>
図10は、本発明に係る基板洗浄装置の第5実施形態の縦断面図である。
【0088】
第5実施形態に係る基板洗浄装置130は、図10に示すように、第4実施形態におけるバックリンスノズル90の位置にN2ガスを吐出するガスノズル95を設けており、ガス供給管71に温度調整器74を設けた点以外は、第4実施形態と同様の構成を備えるため、同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0089】
この実施形態では、図10に示すように、ウエハWの裏面周縁に向けてN2ガスを吐出するように構成されたガスノズル95をウエハWの裏面に設けている。ガスノズル95は、流量調整器72vを介設したガス供給管71を介して、ガス供給源73に接続される。ガス供給源73は、ウエハWの表面にN2ガスを吐出するガスノズル70にも接続している。そして、ガス供給源73には、例えばヒータなどの加熱機器を搭載した温度調整器74が接続され、N2ガスを、例えば23℃超〜50℃に温度調整する。また、ガス供給管71は、断熱部材などから構成される温度維持部材71bで囲まれている。
【0090】
次に、第5実施形態における基板洗浄方法について、簡単に説明する。まず、ウエハWがスピンチャック30に受け渡されると、外カップ41及び内カップ42が上昇する。そして、ガスノズル95から23℃超〜50℃に温度調整されたN2ガスがウエハWの裏面周縁に吐出され、ウエハWが裏面より温められる。ウエハWの温度が23℃超〜50℃にまで温められると、現像液ノズル50からウエハW上に現像液が供給されて、回路パターンが形成される。その間、ウエハWの裏面へのN2ガスの供給は継続する。現像液ノズル50と洗浄液ノズル60とが入れ替わり、洗浄液RがウエハWの表面の中心部に供給される。以後の工程は、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0091】
本実施形態において、ウエハWを現像した後に洗浄する場合に、ウエハWの裏面が高温のN2ガスによって洗浄前に温められているので、温められた洗浄液RがウエハWの表面に供給される際に冷やされることがない。従って、ウエハWの表面上の洗浄液Rの蒸発が促進され、乾燥領域DのウエハWの周縁部に広がる速さを早くすることができ、洗浄液ノズル60の移動速度を上げることができる。
【0092】
なお、乾燥領域Dのコアを形成するためのN2ガスは、第1実施形態のステップ2においては、処理雰囲気温度と同じ23℃であるのに対し、この第5実施形態では、ウエハWの裏面に吐出されるN2ガスと同じ温度、例えば23℃超〜50℃である。これにより、更にウエハWの表面の乾燥が促進され、洗浄時間を短縮することができる。
【0093】
以上、いくつかの実施形態を参照しながら本発明を説明したが、本発明は前記の実施形態に限定されることなく、添付の特許請求の範囲に含まれる事項の範囲で種々の変形が可能である。
【0094】
例えば、以上の実施形態では、加熱ユニット、バックリンス、又はN2ガスを用いてウエハWの温度調整を行っていたが、その他の方法により洗浄液Rの供給前にウエハWを温めてもよい。例えば、基板洗浄装置のスピンチャック30の周囲にLED光源を配置して、ウエハWがスピンチャック30に載置された直後にLED光源からLED光を照射し、洗浄液Rが供給される前にウエハWを温めるようにしてもよい。この場合、LED光源は、スピンチャック30を中心として水平方向に放射状に複数配置する他、一列や十字に配置してもよい。また、LED光源の個数も用途等に応じて適宜決定してよい。
【0095】
以上の実施形態において、洗浄液ノズル60とガスノズル70は、共通のノズルアーム66に一体的に固定されていたが、それぞれ個別のノズルアームに固定するようにしてもよい。この場合、ガスノズル70は、N2ガスを吐出する時にだけウエハWの表面上方に配置されるため、洗浄液Rのミスト等がガスノズル70に付着して結露が発生するのを防止することができる。また、洗浄液ノズル60とガスノズル70は、ウエハWに対して垂直に設置するだけでなく、鉛直方向に傾斜して設置してもよい。このとき、洗浄液ノズル60とガスノズル70の傾斜方向は、ウエハWの回転方向と同じ方向にすることが好ましい。
【0096】
また、本発明に係る基板洗浄装置内の湿度を他のモジュールよりも低く設定することによって、乾燥領域Dにおける洗浄液Rの蒸発を促進させてもよい。この場合、通常約45%に設定されている湿度を、例えば約40%にして前記の実施形態に係る基板洗浄方法を行ってもよい。
【0097】
以上の実施形態においては、洗浄液Rの供給位置における遠心力が計算上一定となるようにウエハWの回転数を制御していた。しかし、ミストの発生を抑制する観点からは、洗浄液Rの供給位置における線速度が計算上一定となるようにウエハWの回転数を制御することが好ましい。この根拠として、発明者は、実験によりウエハWの洗浄液Rの供給位置における線速度と洗浄液Rの吐出速度との速度差が大きくなるにつれてミストが発生することを見出した。すなわち、ウエハWの線速度と洗浄液Rの吐出速度の速度差が大きくなると、回転するウエハW上に洗浄液Rが接触する際に洗浄液Rが弾かれやすくなってミストが発生しやすくなる。
【0098】
ここでミストの再付着を原因とする同心円状の欠陥を示す図11(b)を参照すると、ウエハWの周縁に近づくにつれてミストの付着が多くなっていることが分かる。図11(b)は、ウエハWの回転数及び洗浄液Rの吐出流量を一定として、ウエハWの中心部から周縁に洗浄液ノズルを移動させて洗浄した場合のウエハWの状態を示している。また、図13(a)は、ウエハWの回転数毎にウエハW上の各点における線速度を示したグラフである。図13(a)から分かるように、線速度はウエハWの中心部付近と比較してウエハWの周縁の方がかなり大きくなっている。つまり、洗浄液Rの吐出流量(吐出速度)を一定とすると、ウエハWの回転数を一定とした場合には、ウエハWの周縁に近づくにつれて線速度が大きくなるため、線速度と洗浄液Rの吐出速度の速度差が大きくなりミストが発生しやすくなる。従って、線速度が計算上一定となるように、洗浄液Rの供給位置がウエハWの周縁に近づくにつれてウエハWの回転数を低くすることにより、ミストの発生を抑制することができる。
【0099】
なお、上述の通り、スループットの向上のためには、回転数をなるべく高くした方が良い。この場合に最適な回転数を設定する方法としては、まずウエハWの周縁部においてミストが発生しない回転数を求め、その時の線速度を算出して、線速度が各点において略同一となるような回転数をそれぞれの点における回転数として求めればよい。図13(b)は、洗浄液Rの供給位置がウエハWの周縁に位置する時の回転数が1250rpm、1200rpm、1100rpm、1000rpm、900rpm、800rpm、750rpmである場合の、ウエハW上の各点における最適な回転数を示している。例えばウエハWの周縁においてミストが発生しない最大の回転数が1000rpmだとすると、ウエハWの中心部より60mmで2500rpm、100mmで1500rpm、150mm(ウエハWの周縁)で1000rpmに回転数を制御すると、全ての地点においてミストの発生が抑制される。
【0100】
ここでは、ウエハWの周縁においてミストが発生しない最大の回転数が1000rpmである場合について説明したが、ミストが発生しない回転数が1000rpm以外の場合においても、図13(b)に示すグラフに基づいて回転数を制御することにより、全ての地点においてミストの発生が抑制される。
【0101】
また、洗浄液Rの吐出速度を上げることでウエハWの回転数をさらに高くすることができる。洗浄液Rの吐出速度を上げる方法としては、洗浄液Rの流量を上げる方法や、洗浄液ノズルの口径を小さくする方法が挙げられる。
【0102】
本発明において用いるウエハの種類は、レジスト膜が塗布され、その後、露光・現像により回路パターンが形成されたウエハに限定されず、露光する前のレジスト膜が塗布されたウエハや、液浸露光後のウエハ、又はエッチング後にレジスト膜が剥離されたウエハであってもよい。更に、本発明は、シリコンウエハだけでなく、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板に対しても適用することができる。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を完成させるために行った比較実験について説明する。
(比較実験1)
図3に示す基板洗浄装置を用いて、300mmの親水性のベアウエハに対して、乾燥状態の比較を行う実験を行った。この実験では、洗浄液の温度を(A)処理雰囲気の温度(23℃){比較例1}、(B)32.5℃{比較例2}として、第1実施形態に係る基板洗浄方法を行った。ステップ1におけるウエハの回転数は1000rpmであり、ウエハの中心部に250ml/分の流量で洗浄液を約5秒間吐出し、その後、洗浄液ノズルを外側に移動させてウエハの中心部にN2ガスを約5秒間吐出し、スキャンリンスを行ってからウエハの回転により乾燥させた。 なお、この比較実験において、乾燥状態は、水残りの発生の有無を確認することで評価した。
【0104】
図14は、ウエハの乾燥状態が良好である(水残りの発生がほとんど無い)時のウエハの回転数と洗浄液ノズルの移動速度の最大値との関係を示したグラフである。図14に示すように、回転数が1250rpmとすると、(A){比較例1}の場合、良好な乾燥状態を得るための洗浄液ノズルの移動速度の最大値は、5mm/秒であった。また、(A){比較例1}において処理時間は43秒であった。一方、(B){比較例2}のように洗浄液を32.5℃にすると、同じ1250rpmの回転数では、ノズルの移動速度を10mm/秒に設定しても良好な乾燥状態を得ることができた。また、(B){比較例2}においては、処理時間は32.5秒であり、(A){比較例1}に比べて10.5秒も時間を短縮できた。
【0105】
この比較実験において、洗浄液の温度を処理雰囲気の温度(23℃)よりも高くした場合には、洗浄液の温度を処理雰囲気温度の23℃とした場合と比較して、洗浄液ノズルの移動速度をより早い速度に設定しても良好な乾燥状態が得られることが示された。これは、ウエハ表面上の洗浄液が高温であることで洗浄液の蒸発が促進され、乾燥領域が基板の周縁部に広がる速度が早くなったためであると考えられる。
【0106】
(比較実験2)
高撥水性のレジストの回路パターンが形成された300mmの ウエハを用いて、図3に示す基板洗浄装置を使って第1実施形態に係る基板洗浄方法で比較実験を行った。洗浄液の温度は、常温の23℃とした。 この比較実験では、ウエハの回転数毎の各々につき、洗浄液ノズルの移動速度を変えて洗浄を行い、洗浄・乾燥後のウエハの表面の状態をマクロ欠陥装置により検査した。表1に、評価結果を示す。なお、NG1は、乾燥状態不良に伴う液ちぎれを起因とした放射状欠陥(図11(a)参照)であり、NG2は、液はねにより発生する同心円状欠陥(図11(b))である。
【表1】

【0107】
(比較実験3)
高撥水性のレジストの回路パターンが形成された300mmの ウエハを用いて、図3に示す基板洗浄装置を使って第1実施形態に係る基板洗浄方法で比較実験を行った。洗浄液の温度は、比較実験1の比較例2と同じ32.5℃とした。 この実験では、ウエハの回転数毎の各々につき、洗浄液ノズルの移動速度を変えて洗浄を行い、洗浄・乾燥後のウエハの表面の状態をマクロ欠陥装置により検査した。表2に評価結果を示す。
【表2】

【0108】
図14、表1及び表2を参照して、ウエハの回転数を同一として比較実験2及び比較実験3の実験結果を見てみると、比較実験2及び比較実験3のいずれも、比較実験1において乾燥状態が良好である場合の最大ノズル移動速度と、ウエハのマクロ欠陥検査の結果がNG1(液ちぎれによる放射状欠陥の発生)ではない場合の最大ノズル移動速度とがほぼ重なっていることが分かる。この結果から、液ちぎれによる放射状欠陥の発生の有無は、ウエハの乾燥状態と密接に関連しているものと推測される。つまり、ウエハの回転数を同一とした場合、ノズルの移動速度をウエハの乾燥状態(水残りの発生の有無)が良好であるときの最大移動速度、すなわち乾燥領域が基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度にすれば、液ちぎれによる放射状欠陥は発生しないと考えられる。また、洗浄液の温度が処理雰囲気温度の23℃である比較実験2と、23℃より高い比較実験3とを比較すると、同一回転数の場合、比較実験3の方がノズルの移動速度がより早くても液ちぎれによる放射状欠陥は発生していない。よって、洗浄液の温度を処理雰囲気の温度である23℃よりも高くすることによって、ノズルの移動速度を早くすることができ、処理時間の短縮が可能となることが分かる。
【符号の説明】
【0109】
50 現像液ノズル
51 現像液供給管
54 温度調整器
60 洗浄液ノズル
61 洗浄液供給管
61a,61b 温度維持部材
62,62v 流量調整器
63 洗浄液供給源
64 温度調整器
65 ノズル保持部
66 ノズルアーム
70 ガスノズル
71 ガス供給管
72,72v 流量調整器
80 制御コンピュータ(制御手段)
90 バックリンスノズル
95 ガスノズル
100、110、120、130 基板洗浄装置
200 現像液ノズル移動機構
300 洗浄液ノズル・ガスノズル移動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路パターンが形成された基板の表面を洗浄する方法であって、
前記基板を水平に保持し、前記基板の中心軸回りに回転させながら基板の表面の中心部に洗浄液を供給して前記基板の表面全体に液膜を形成する工程と、
前記基板を回転させたまま、前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を基板の中心部から基板の周縁に向かって一定の距離だけ移動させると共に、前記基板の中心部にガスを吐出して乾燥領域を形成する工程と、
前記基板を回転させながら、前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を、前記乾燥領域が前記基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度で前記基板の周縁に向かって移動させる工程と、を具備し、
更に液膜を形成する洗浄液の温度が、少なくとも前記洗浄液の供給時に前記基板の表面上において処理雰囲気の温度よりも高くなるように、前記洗浄液を、温度調整する工程とを含むことを特徴とする基板洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液の温度は、23℃超乃至50℃であることを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項3】
前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、
前記基板の回転数は、500rpm乃至3000rpmであることを特徴とする請求項1に記載の基板洗浄方法。
【請求項4】
前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、
前記洗浄液の供給位置の移動速度は、5mm/秒乃至20.0mm/秒であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項5】
前記乾燥領域を形成する工程において、
前記洗浄液の供給位置と、前記ガスの吐出位置とを所定の間隔離間させた状態で、前記洗浄液の供給位置と前記ガスの吐出位置とを前記基板の周縁に向かって一体的に一定の距離だけ移動させ、その後、前記ガスの吐出を停止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項6】
前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、
前記洗浄液の供給位置と、前記ガスの吐出位置とを所定の間隔離間させた状態で、洗浄液の供給とガスの吐出とを行いつつ、前記洗浄液の供給位置と前記ガスの吐出位置とを前記基板の周縁に向かって一体的に移動させ、前記洗浄液の供給位置が前記基板の周縁部に到達した時に、前記洗浄液の供給と前記ガスの吐出とを停止することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項7】
前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、
前記洗浄液の供給位置における線速度が計算上一定となるように、前記洗浄液の供給位置が前記基板の周縁に近づくにつれて、前記基板の回転数が低くなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項8】
前記基板の表面上の洗浄液の供給位置を移動させる工程において、
前記洗浄液の供給位置における遠心力が計算上一定となるように、前記洗浄液の供給位置が前記基板の周縁に近づくにつれて、前記基板の回転数が低くなることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項9】
前記洗浄液を温度調整する工程は、前記洗浄液を前記基板に供給する前に、温度調整器を用いて前記洗浄液を温度調整することにより行うことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項10】
前記洗浄液を温度調整する工程は、23℃より高い温度の基板に洗浄液を供給することにより行うことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の基板洗浄方法。
【請求項11】
前記23℃より高い温度の基板は、加熱手段により加熱され、その後、23℃より高い温度の現像液により現像されることにより、温度調整されることを特徴とする請求項10に記載の基板洗浄方法。
【請求項12】
前記23℃より高い温度の基板は、前記基板の裏面に23℃より高い温度のリンス液を吐出することにより、温度調整されることを特徴とする請求項10に記載の基板洗浄方法。
【請求項13】
前記23℃より高い温度の基板は、前記基板の裏面に23℃より高い温度のガスを吐出することにより、温度調整されることを特徴とする請求項10に記載の基板洗浄方法。
【請求項14】
回路パターンが形成された基板の表面を洗浄する装置であって、
前記基板の中心部とその回転中心軸とが一致するように前記基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転中心軸回りに回転させる回転機構と、
前記基板保持部に保持された基板表面に洗浄液を供給する洗浄液ノズルと、
前記基板保持部に保持された基板表面にガスを吐出するガスノズルと、
前記洗浄液ノズルおよび前記ガスノズルをそれぞれ移動させるためのノズル駆動機構と、
前記洗浄液の温度が、前記基板表面上において処理雰囲気の温度よりも高くなるように、前記洗浄液を温度調整するための温度調整器と、
前記回転機構,前記洗浄液ノズルの供給部,前記ガスノズルの供給部,前記ノズル駆動機構及び前記温度調節器を制御する制御手段と、を具備し、
前記制御手段からの制御信号に基づいて、基板を回転させながら、基板の表面の中心部に前記洗浄液ノズルから洗浄液を供給して前記基板の表面全体に液膜を形成し、その後、前記洗浄液ノズルを基板の中心部上方から基板の周縁に向かって一定の距離だけ移動させると共に、前記基板の中心部に前記ガスノズルからガスを吐出して乾燥領域を形成し、前記乾燥領域が前記基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度で前記洗浄液ノズルを前記基板の周縁に向かって移動させるよう制御する、ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項15】
回路パターンが形成された基板の表面を洗浄する装置であって、
前記基板の中心部と回転中心軸とが一致するように前記基板を水平に保持する基板保持部と、
前記基板保持部を回転中心軸回りに回転させる回転機構と、
前記基板保持部に保持された基板の表面に洗浄液を供給する洗浄液ノズルと、
前記基板保持部に保持された基板の表面にガスを吐出するガスノズルと、
前記洗浄液ノズルおよび前記ガスノズルを所定の間隔離間させた状態で、一体的に移動させるためのノズル駆動機構と、
前記洗浄液の温度が、前記基板の表面上において処理雰囲気の温度よりも高くなるように、前記洗浄液を温度調整するための温度調整器と、
前記回転機構,前記洗浄液ノズルの供給部,前記ガスノズルの供給部,前記ノズル駆動機構及び前記温度調節器を制御する制御手段と、を具備し、
前記制御手段からの制御信号に基づいて、基板を回転させながら、基板の表面の中心部に前記洗浄液ノズルから洗浄液を供給して前記基板の表面全体に液膜を形成し、その後、前記洗浄液ノズルを基板の中心部上方から基板の周縁に向かって移動させると共に、前記基板の中心部上方に前記ガスノズルを配置し、前記ガスノズルからガスを吐出して乾燥領域を形成し、前記乾燥領域が前記基板の周縁部に広がる速度と略同一の速度で、前記洗浄液ノズルと前記ガスノズルとを前記基板の周縁に向かって一体的に移動させ、前記洗浄液ノズルが基板の周縁部上方に到達した時に、前記洗浄液の供給と前記ガスの吐出とを停止するよう制御する、ことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項16】
前記温度調整器は、洗浄液ノズルと洗浄液供給源とを接続する管路に介設され、洗浄液の温度を23℃超乃至50℃となるように設定可能に形成されている、ことを特徴とする請求項14または15に記載の基板洗浄装置。
【請求項17】
前記基板の裏面に、前記基板の裏面の周縁部に向けて23℃より高い温度の洗浄液を吐出するバックリンスノズルを更に設けることを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項18】
前記基板の裏面に、前記基板の裏面の周縁部に向けて23℃より高い温度のガスを吐出するガスノズルを更に設けることを特徴とする請求項14乃至16のいずれかに記載の基板洗浄装置。
【請求項19】
回路パターンが形成された基板表面を洗浄する装置に用いられ、コンピュータに制御プログラムを実行させるソフトウェアが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、請求項1乃至13のいずれか一つの基板洗浄方法を実行するように工程が組まれていることを特徴とする基板洗浄用記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13(a)】
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【図13(b)】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−114409(P2012−114409A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196376(P2011−196376)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】