説明

基板部材、モジュール、電気機器、およびモジュールの製造方法

【課題】基板部材と電子部品とのギャップにおける樹脂の充填漏れを、極力抑えることが可能となる基板部材を提供する。
【解決手段】基板上に電子部品が実装されて樹脂封止されたモジュールの製造部品であって、略板状であり、将来的に前記基板となる基板部材において、前記モジュールの製造工程は、前記基板部材の実装面に前記電子部品を実装する実装工程と、前記実装面に樹脂を流して、該実装された電子部品を樹脂封止する封止工程と、を含むものであり、前記実装工程は、略平面状の取付面を有する第1電子部品を、前記実装面上に特定された第1実装領域に、該取付面と該実装面との間にギャップを有するように実装する工程を有するものであり、前記実装面には、前記封止工程において前記ギャップへの樹脂の充填を促す、第1溝が設けられている構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板部材およびこれを用いて製造されるモジュール、ならびに当該モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気機器の構成部品として利用されるモジュールであって、基板部材などを用いて製造されるものが使用されている。またモジュールの仕様等による都合上、構成部品として、モジュールの基板にギャップを有するように実装される電子部品(例えば、フリップチップ実装される電子部品)が使われ、かつ、実装された各電子部品が樹脂封止されて製造されるモジュールがある。ここで当該モジュールの製造工程の一例について、簡潔に説明する。
【0003】
モジュールの製造工程は、概ね、所定の基板部材(複数のモジュール基板が繋がったもの)に電子部品を実装する実装工程、基板部材の実装面上に樹脂を流して、実装された電子部品を封止する封止工程、および、モジュール基板の境界において、基板部材を樹脂ごと切断して個片化する切断工程の各工程からなる。
【0004】
基板部材は、図11に示すような構成となっている。すなわち基板部材130は、導電層や絶縁層が設けられた板状体となっており、各パート(将来的に、切断工程を経て個片化される)が、破線で示す境界131で繋がったものとなっている。また各パートの実装面には、ギャップを有するように実装される電子部品(例えば狭ギャップ仕様のICチップ)が実装される実装領域132など、各種の電子部品が実装される領域が決められている。
【0005】
そして実装工程では、図12に示すように、基板部材130の実装面における決められた領域に、ギャップを有するように実装される電子部品140aなどの各種電子部品140が実装される。電子部品140aは、例えばフリップチップ実装によって、各パートの実装領域132にギャップを有するように実装される。
【0006】
また封止工程では、実装工程を経た基板部材130が金型に入れられ、基板部材130の実装面上に樹脂が流し込まれた後、樹脂が固形化することによって各電子部品140が封止される。このようにして、例えばトランスファーモールドの手法によって、各電子部品140が封止されることになる。ここまでの工程によって、実装面側に樹脂層の形成された実装基板130が得られる。
【0007】
そして切断工程では、基板部材130が、境界131において樹脂層ごと切断され、個片化される。個片化されたものは必要な処理が施され、最終的に完成品としてのモジュールとなる。図13に、上述した一連の工程によって製造されたモジュールの構成図を示す。なお図13において、上段は、当該モジュール100を上側から見たもの(便宜上、封止部材112は透過させている)を、下段は、線分XX’で切断した場合の断面図を、それぞれ表している。
【0008】
図13に示すように、モジュール100は、モジュール基板111(基板部材130が個片化したもの)の実装面に実装された各電子部品140が、封止部材112(樹脂層が個片化したもの)によって封止された形態となっている。このように各電子部品140が樹脂封止されていることで、各電子部品140は衝撃などから保護され、ひいては、モジュール100の品質維持が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−172176号公報
【特許文献2】特開2008−288610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ここで先述した封止工程に関し、基板部材130と電子部品140aとのギャップにおける樹脂の充填について、図14を参照しながら説明する。なお図14は、実装領域132の近傍における、実装面上の樹脂の流れを概略的に表している。当該ギャップは、実装領域132の縁においてギャップの外部に開放されているため、図14の白色矢印で示すように、この開放された部分から、当該ギャップに樹脂が流れ込むことになる。
【0011】
しかし当該ギャップの大きさ(基板部材130と電子部品140aとの距離)が比較的狭くなっている場合(例えば100μm以下の狭ギャップとなっている場合)には、この開放された部分からは、十分な量(当該ギャップを完全に充填する程度の量)の樹脂が流れ込まないおそれがある。特に図14に示すように、開放された部分から遠くなる程、つまり実装領域132の内側になるほど、樹脂は届きにくくなり、樹脂の充填漏れ(空気の残り)が生じ易いと考えられる。
【0012】
このような樹脂の充填漏れがあると、モジュールの品質を維持することが難しくなる。例えば、モジュールが電気機器に半田実装される際、ギャップに残っている空気が膨張して、モジュールに必要以上の圧力が加わること等が想定される。
【0013】
本発明は上述した問題に鑑み、基板部材と電子部品とのギャップにおける樹脂の充填漏れを、極力抑えることが可能となる基板部材の提供を目的とする。また、当該基板部材を用いたモジュールの製造方法、モジュールを用いた電気機器、および当該製造方法によって製造されるモジュールの提供をも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係る基板部材は、基板上に電子部品が実装されて樹脂封止されたモジュールの製造部品であって、略板状であり、将来的に前記基板となる基板部材において、前記モジュールの製造工程は、前記基板部材の実装面に前記電子部品を実装する実装工程と、前記実装面に樹脂を流して、該実装された電子部品を樹脂封止する封止工程と、を含むものであり、前記実装工程は、略平面状の取付面を有する第1電子部品を、前記実装面上に特定された第1実装領域に、該取付面と該実装面との間にギャップを有するように実装する工程を有するものであり、前記実装面には、前記封止工程において前記ギャップへの樹脂の充填を促す、第1溝が設けられている構成とする。
【0015】
本構成によれば、基板部材の実装面に第1溝が設けられているため、第1溝が設けられていない場合に比べて、基板部材と電子部品とのギャップへの樹脂の充填が促進される。そのため、当該ギャップにおける樹脂の充填漏れを、極力抑えることが可能となる。
【0016】
また上記構成において、前記第1溝は、前記第1実装領域を、貫通するように設けられている構成としてもよい。本構成によれば、第1溝に樹脂が流れるようにして、第1実装領域を貫通するように樹脂を流すことが可能となる。第1溝を流れる樹脂の少なくとも一部が、ギャップに進入することにより、ギャップへの樹脂の充填が促進される。
【0017】
また上記構成において、前記基板部材の外縁は略四角形であり、前記第1溝は、前記基板部材の外縁の一辺から、該一辺に対向する他辺へ伸びるように、設けられている構成としてもよい。
【0018】
また上記構成としてより具体的には、前記封止工程においては、前記基板部材の実装面に沿って略一定の方向に樹脂を流す、トランスファーモールドの手法が適用され、前記第1溝は、伸びる方向が、前記樹脂を流す方向と略一致するように、設けられている構成としてもよい。
【0019】
本構成によれば、トランスファーモールドの手法による樹脂の流れの勢いを活かして、第1溝にも樹脂を流すことが可能となる。そのため、第1溝における樹脂の流れを円滑にし、ギャップへの樹脂の進入を、より一層促進させることが可能となる。
【0020】
また上記構成としてより具体的には、前記第1実装領域において、前記第1溝の幅は、前記樹脂を流す方向に向かって、広がるように設定されている構成としてもよい。
【0021】
また上記構成において、前記実装工程においては、前記取付面に設置されているバンプを、前記第1実装領域の所定箇所に接着することで、前記第1電子部品が前記基板部材に実装されるものであり、前記第1溝は、該バンプが接着される箇所を避けるように、設けられている構成としてもよい。
【0022】
本構成によれば、第1電子部品の適切な実装が、第1溝の存在によって阻害されないようにすることが可能となる。また封止工程において、第1溝に樹脂を流し易くすることが可能となる。
【0023】
また上記構成において、前記第1溝は、前記第1実装領域の略中央を通るように、設けられている構成としてもよい。本構成によれば、第1実装領域の略中央からギャップに樹脂を進入させ、ギャップへの樹脂の充填を効率よく行うことが可能となる。
【0024】
また、それぞれが別々の前記モジュールの基板となる各パートが、前記実装面の広がる方向に繋がった態様となっている、上記構成の基板部材において、前記モジュールの製造工程は、前記封止工程がなされた後に、各パート間の境界が樹脂とともに切断されて、個片化される工程を含むものであり、前記実装面における前記境界の部分には、前記封止工程において樹脂が流れ込む、第2溝が設けられている構成としてもよい。本構成によれば、基板部材における切断される箇所が比較的薄くなるため、当該切断が容易となる。
【0025】
また上記構成としてより具体的には、前記第2溝は、略90度以下の角度をなすV字溝として設けられている構成としてもよい。
【0026】
また上記構成において、前記基板部材は、前記モジュールの絶縁被覆材となる絶縁層、および前記モジュールの配線パターンとなる導電層が設けられており、前記第2溝の深さは、前記絶縁層および導電層より深くなっている構成としてもよい。
【0027】
本構成によれば、絶縁層および導電層にまで樹脂を流し込むことが可能となる。そのため、基板部材が第2溝で切断されて個片化された場合、切り口において絶縁層および導電層が樹脂に覆われた状態となり、これらの層を露出させないようにすることが可能となる。
【0028】
また本発明に係るモジュールの製造方法は、上記構成に係る基板部材を、製造部品として用いた方法とする。当該方法によれば、上記構成の基板部材による利点を活かしながら、モジュールを製造することが可能となる。
【0029】
また本発明に係るモジュールの製造方法は、基板上に電子部品が実装されて樹脂封止されたモジュールの製造方法であって、略板状であり、将来的に前記基板となる基板部材の実装面に、前記電子部品を実装する実装工程と、前記実装面に樹脂を流して、該実装された電子部品を樹脂封止する封止工程と、を含み、前記実装工程は、略平面状の取付面を有する第1電子部品を、前記実装面上に特定された第1実装領域に、該取付面と該実装面との間にギャップを有するように実装する工程を有するものであり、前記実装面には、前記第1実装領域を貫通するように、第1溝が設けられており、前記封止工程は、前記第1溝にも樹脂を流し、前記第1実装領域において該第1溝から前記ギャップへ樹脂が流れるようにすることで、前記ギャップへの樹脂の充填が促されるようにした方法とする。
【0030】
当該方法によれば、基板部材と第1電子部品とのギャップへの樹脂の充填が促進される。そのため、当該ギャップにおける樹脂の充填漏れを、極力抑えることが可能となる。
【0031】
また上記製造方法において、前記実装工程は、略直方体形状の受動部品を、前記基板部材の実装面に実装する工程を有するものであり、前記封止工程は、前記基板部材の実装面に沿って略一定の方向に樹脂を流す、トランスファーモールドの手法が適用されたものであり、該実装工程において、前記実装面に実装される受動部品の全ては、それぞれの長手方向が、前記樹脂を流す方向と略一致するように実装される方法としてもよい。
【0032】
当該方法によれば、封止工程における樹脂の流れが、受動部品によって極力阻害されないようにすることが可能となる。
【0033】
また上記製造方法としてより具体的には、前記実装工程において、前記第1電子部品は、前記ギャップが100μm以下となるように、前記基板部材の実装面に実装される方法としてもよい。
【0034】
また本発明に係るモジュールは、上記の製造方法によって製造されたものとする。当該モジュールによれば、製造段階において、上記製造方法による利点を享受することが可能となる。また当該モジュールは、電気機器(例えば通信機器)の構成部品の一つとして利用される。
【発明の効果】
【0035】
上述した通り、本発明に係る基板部材によれば、基板部材の実装面に第1溝が設けられているため、第1溝が設けられていない場合に比べて、基板部材と電子部品とのギャップへの樹脂の充填が促進される。そのため、当該ギャップにおける樹脂の充填漏れを、極力抑えることが可能となる。また本発明に係るモジュールの製造方法によれば、第1溝が設けられたことによる利点を活かしつつ、モジュールを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態に係る高周波モジュールの構成図である。
【図2】当該高周波モジュールの外観図である。
【図3】本発明の実施形態に係る基板部材の構成図である。
【図4】本発明の実施形態に係るICチップに関する説明図である。
【図5】電子部品が実装された状態の当該基板部材を表す説明図である。
【図6】当該ICチップの実装態様に関する説明図である。
【図7】本発明の実施形態における封止工程に関する説明図である。
【図8】第1実装領域の近傍における樹脂の流れに関する説明図である。
【図9】本発明の実施形態に係る、別態様の基板部材の構成図である。
【図10】本発明の実施形態に係る、更に別態様の基板部材の構成図である。
【図11】従来の基板部材の一例についての構成図である。
【図12】電子部品が実装された状態の当該基板部材を表す説明図である。
【図13】従来のモジュールの一例についての構成図である。
【図14】従来の封止工程における樹脂の流れに関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態について、通信機器の一構成部品として用いられる高周波モジュールを挙げて、以下に説明する。
【0038】
[モジュールの構成等]
図1は、本発明の実施形態に係る高周波モジュール(モジュールの一形態)の構成図である。図2は、当該高周波モジュール1の外観図(斜視図)である。なお図1においては、上段に、高周波モジュール1を上側から見た図(便宜上、封止部材12は透過させている)が、下段に、線分AA’で切断した場合の断面図が、それぞれ表されている。
【0039】
図1に示すように、高周波モジュール1は、全体的に見て、モジュール基板11の実装面上に各種の電子部品21が実装され、これらの電子部品21が、封止部材12によって封止された構成となっている。
【0040】
モジュール基板11は、平面的に見て、4つの辺(外縁)を有する正方形形状(一辺は約6mm)に形成されている。また、モジュール基板11は、上側(実装面の側)から順に、絶縁皮膜材などを形成する絶縁層と、配線パターンなどを形成する導電層が、それぞれ配置されている。実装面においては、例えば絶縁層の一部が除去されることにより、その部分に導電層が露出しており、電子部品が実装可能となっている。
【0041】
一方、モジュール基板11の下側の面(実装面と反対側の面)には、複数の外部接続端子(不図示)が形成されている。これら外部接続端子は、例えばヴィアホールやスルーホールを介して、上述した配線パターンと電気的に接続されている。外部接続端子は、高周波モジュール1が通信機器(電気機器の一形態)の本体に組み込まれる際、通信機器本体側の端子と電気的に接続される。これにより、高周波モジュール1は、通信機器の各部との信号のやり取り等が可能となり、通信機器の一構成部品として機能する。
【0042】
モジュール基板11の実装面に実装されている電子部品21は、配線パターンやヴィアホールなどを介して互いに電気的に接続されている。なお電子部品21には、略板状であるICチップ21aや、略直方体の形状である受動部品(抵抗素子、インダクタ素子、コンデンサ素子など)21bが含まれている。
【0043】
電子部品21の各々は、全体として、例えばチューナとしての機能を発揮するように設けられており、これにより高周波モジュール1は、通信機器においてチューナ(チューナモジュール)として利用可能となっている。
【0044】
また封止部材12は、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂から構成されており、モジュール基板11の実装面上に、電子部品21の全てを封止するように形成されている。この封止部材12は、平面的に見て、モジュール基板11と同じ正方形形状を有している。また、封止部材12の4つの側面は、それぞれ、モジュール基板11の4つの側面と、同一面となっている。また、封止部材12は、電子部品21を封止することによって、電子部品21を保護する役割を果している。
【0045】
なおモジュール基板11の実装面には、図1(特に断面図)に示すように、溝部11aと傾斜部11bが形成されている。溝部11aは、実装面の外縁の一辺からその対辺まで、実装面のほぼ真中を縦断するように設けられている。また溝部11aは、ICチップ21aが実装される領域のほぼ真中を通っている。
【0046】
また傾斜部11bは、モジュール基板11の内外方向に傾斜しており、実装面の外縁のほぼ全周(4辺)に設けられている。傾斜部11bは封止部材12で覆われているため、外部に露出しないようになっている。
【0047】
上述した高周波モジュール1は、概ね、所定の基板部材(高周波モジュール1の製造部品の一つであり、複数のモジュール基板11が繋がったもの)に電子部品21を実装する実装工程、基板部材の実装面上に樹脂を流して、実装された電子部品21を封止する封止工程、および、モジュール基板11の境界において、基板部材を樹脂ごと切断して個片化する切断工程の各工程が、順に実行されることによって製造される。以下、この基板部材の構成等、ならびに高周波モジュール1の製造工程等について、より詳細に説明する。
【0048】
[基板部材の構成等]
まず基板部材の構成等について説明する。
【0049】
図3は、当該基板部材30の構成図である。図3において、上段は、基板部材30を3方向(上側、下側、および右側)から見たものを、下段は、破線で囲まれた部分を拡大表示したものを、それぞれ表している。なお第1溝33については、第2溝34との区別を容易とするために、着色して表示している。
【0050】
図3に示すように当該基板部材30は、外縁が長方形の板状体となっており、厚さ方向に着目すれば、実装面の裏側(遠い側)から、ベース層30a、導電層30b、および絶縁層30cが、順に積層された構成となっている。導電層30bおよび絶縁層30cは、それぞれ将来的に、モジュール基板11における導電層および絶縁層となる。また基板部材30は、図3に矢印で示すように、封止工程(トランスファーモールドの手法が用いられる)において樹脂の流される方向(図7を参照)が、予め決められている。
【0051】
基板部材30は、平面的に見ると一体的に形成されているが、将来的に切断工程において、図3に破線で示す境界31(モジュール基板11同士の境界)で切断されることとなる。また個片化された各基板部材30は、モジュール基板11となる。このことから基板部材30は、将来的に別々のモジュール基板11となる各パート(境界31で囲まれた部分)が、境界31において、実装面の広がる方向に繋がったものと見ることもできる。
【0052】
図3に示す基板部材30によれば、3個(縦方向)×4個(横方向)=12個のパートが繋がっていることになる。但しこれは一例であって、他の態様(一般的には、より多数のパートが繋がったものが採用される)であっても構わない。また基板部材30は、複数のパートが繋がったものではなく、将来的に単一のモジュール基板11になるものとしても構わない。
【0053】
また基板部材30においては、各パートについて、将来的にICチップ21が実装される領域である、第1実装領域32が設けられている。第1実装領域32においては、ICチップ21のフリップチップ実装(ICチップ21に予め設置されたバンプを、実装面に接着して実装する)が可能となるように、配線パターンなどが設定されている。
【0054】
また基板部材30においては、基板部材30の外縁の一辺からこれに対向する辺に伸びるように、かつ、各パートの第1実装領域32を貫通するように、第1溝33が設けられている。また第1溝33は、各パートの第1実装領域32の中央を通るように設けられている。なお第1溝33が伸びている方向は、封止工程において樹脂が流される方向と、略一致するように設定されている。
【0055】
第1溝33は主に、封止工程において、後述するギャップ54への樹脂の充填を促すために設けられている。また第1溝33の断面の形状や寸法は、その中を、溶融している樹脂がある程度円滑に流れる程度に(少なくとも、ギャップ54の空間より円滑に流れる程度に)設定されている。この点については、改めて説明する。
【0056】
更に基板部材30においては、先述した境界31に対応した位置に、第2溝34が設けられている。第2溝34は、図3(特に下段)に示すように、その断面がV字であるV字溝として形成されている。当該V字がなす角度αは、90度以下(例えば60度)に設定されている。また第2溝34の深さは、ベース層30a(つまり、絶縁層30cおよび導電層30bより深い位置)に達している。
【0057】
第2溝34は主に、切断工程を容易とするため、および、高周波モジュール1において絶縁層や導電層が露出しないようにするために設けられている。この点については、改めて説明する。また第1溝33および第2溝34は、例えば、これらの溝が施されていない状態の基板部材30に、所定の溝加工が施されることによって形成される。
【0058】
[モジュールの製造工程等]
次に、高周波モジュール1の製造工程等について、より詳細に説明する。
【0059】
実装工程では、基板部材30の実装面に、先述した電子部品21の各々が実装される。なお図4に示すように、ICチップ21aは、平面状の取付面51に複数のバンプ52が設置されている一方、取付面51における中心線から一定幅のスペース53には、バンプ52が設置されていない(欠如している)形態となっている。
【0060】
そしてICチップ21aは、バンプ52が、第1実装領域32の所定箇所に接着されることで、図5に示すように、基板部材30の実装面に実装される。このようにICチップ21aは、基板部材30の実装面にフリップチップ実装(或いはフェイスダウン実装)される。なおICチップ21aは、狭ギャップ部品の仕様となっている。そのため、基板部材30に実装された状態においては、図6に示すように、ICチップ21aの取付面51と基板部材30の実装面とのギャップ(隙間)54の大きさは、狭ギャップ(100μm以下であり、通常は、50〜60μm)の状態となっている。ギャップ54は、第1実装領域32の全域に及んでいる。
【0061】
またこのように実装されたとき、図6に示すように、取付面51におけるスペース53は、基板部材30の第1溝33と対向するようになっている。そのため、第1溝33と取付面51との間には、バンプ52が介在しないようになっている。つまり、第1溝33は、バンプ52が接着される箇所を避けるように設けられている。また基板部材30とICチップ21aの間において、第1溝33とギャップ54は空間的に繋がっている。
【0062】
また略直方体の形状である受動部品21bの各々は、図5に示すように、基板部材30における所定の位置に、例えば半田付けによって実装される。なお全ての受動部品21bの実装は、その長手方向が、封止工程において樹脂が流される方向と略一致するようになされる。また電子部品21同士の配線は、基本的に、絶縁層に覆われた導電層において実現されており、実装面には現れない。
【0063】
封止工程では、図7に示すように、実装工程を経た基板部材30が、所定の金型60の内部にセットされる。なお図7では、左側に、金型60にセットされた状態の基板部材30を上から見た図を、右側に、線分BB’を断面とした場合の断面図が表されている。
【0064】
このようにセットされた状態では、金型60の内面と基板部材30の実装面との間には、溶融した樹脂が流れる空間61(第1溝33や第2溝34も含まれる)が出来ており、金型60の外部からこの空間61に、樹脂が流し込まれる。これによって樹脂は、全体的に見ると、図7に示す矢印の方向(つまり略一定の方向)に流され、最終的には、基板部材30の実装面上を全体的に覆う状態となる。その後、樹脂は固形化し、基板部材30に実装されている各電子部品21を封止した状態の樹脂層となる。
【0065】
この樹脂層は、後述する通り、後の切断工程において基板部材30とともに切断され、封止部材12となる。つまり当該樹脂層は、将来的に封止部材12となるものが、基板部材30の平面方向に繋がったものと見ることもできる。
【0066】
ここで封止工程の際の、基板部材30とICチップ21aのギャップ54における樹脂の充填について、図8を参照しながら説明する。なお図8は、第1実装領域32の近傍における、実装面上の樹脂の流れを概略的に表している。
【0067】
ギャップ54は、ICチップ21aの縁においてギャップ54の外部に開放されているため、図8の白色矢印で示すように、この開放された部分から、当該ギャップに樹脂が流れ込むことになる。ただし当該ギャップは非常に狭くなっているため、この開放された部分からは、十分な量(ギャップ54を完全に充填する程度の量)の樹脂が流れ込まない場合がある。この点は、既に説明した従来の封止工程の場合(図14を参照)と同様である。
【0068】
しかし基板部材30には第1溝33が設けられているため、この第1溝33に、空間61を流れている樹脂が流れ込むことになる。これにより、樹脂は第1溝33を通り、ICチップ21aの真下を流れる。なお第1溝33が伸びている方向は、封止工程において樹脂が流される方向と、略一致するように設定されているため、この流れの勢いを活かして、第1溝33に樹脂を円滑に流すことが可能となっている。またスペース53(ICチップ21aにおける第1溝33に対向した箇所)には、バンプ52が設けられていないため、バンプ52が設けられていたと仮定した場合に比べて、第1溝33に樹脂をより円滑に流すことが可能となっている。
【0069】
またギャップ54は、第1実装領域32において第1溝33と空間的に繋がっており、この繋がっている部分から、樹脂が流入可能となっている。そのため図8の黒色矢印で示すように、第1溝33を流れる樹脂の一部は、ギャップ54に進入することとなる。
【0070】
このように本実施形態では、ギャップ54の外部から内部への樹脂の流動経路が、より十分に確保されており、樹脂がギャップ54に進入しやすくなっている。その結果、ギャップ54に樹脂を満遍なく行き渡らせ、樹脂を完全に充填させることが、従来に比べて容易となっている。
【0071】
また受動部品21bの実装は、その長手方向が、封止工程において樹脂が流される方向と略一致するようになされている。つまり、樹脂が流される方向から見て、受動部品21bの介在する面積が極力小さくなるように、当該実装がなされている。そのため封止工程では、樹脂の流れが、受動部品21bによって極力阻害されないようになっており、樹脂を出来るだけ円滑に流すことが可能となっている。
【0072】
封止工程が完了した段階で、実装面側に樹脂層の形成された実装基板30が得られる。そして切断工程では、ブレード等を用いて、基板部材30が境界31において樹脂層ごと切断され、個片化される。当該切断の方向は、基板部材30の面に垂直な方向となっている。なお基板部材30における境界31の箇所は、第2溝34が設けられているため、溝が設けられていない他の箇所よりも薄くなっている。そのため、第2溝が設けられていない場合に比べて、ブレードによる切断が容易となっている。
【0073】
個片化されたものは必要な処理が施され、最終的に完成品としてのモジュール1(構成図は図1に示した通り)となる。このようにして製造されたモジュール1は、キャップ54における樹脂の充填漏れが極力抑えられており、その品質を維持することが容易となっている。
【0074】
[その他]
モジュール1における溝部11a(図1を参照)は、第1溝33が設けられていたことにより、また傾斜部11b(図1を参照)は、第2溝34が設けられていたことにより、結果的に存在することになる。
【0075】
ここで第2溝34の深さは、先述したように、基板部材30の絶縁層および導電層より深くなるように設定されている。そのため、切断工程における切り口の部分においては、絶縁層や導電層が封止部材12に覆われた状態(傾斜部11bが樹脂に覆われた状態)となっており、絶縁層や導電層が外部に露出しないようになっている。なお第2溝34の断面におけるV字がなす角度αは、90度以下であるため、傾斜部11bにおける傾斜の角度(実装面に垂直な方向と、傾斜面とのなす角度)は、45度以下(角度αの半分)となっている。
【0076】
また第1溝33のような、ギャップ54への樹脂の充填を促すための溝は、上述した態様のものに限定されず、様々な態様のものとすることができる。一例としては、図9に示すように、第1実装領域32の中央で交差するように、かつ、縦横の両方向へ伸びるように設けられるようにしても構わない。実装基板30に設けられる溝は、第1実装領域32の内外に及んでいれば、このような溝が無い場合に比べて、第1実装領域32の外部から内部(つまりギャップ54)へ樹脂を流れ易くすることができ、ギャップ54への樹脂の充填を促すという効果が期待できる。
【0077】
また第1溝33の深さは、状況に応じて、種々の態様とすることができる。例えば、第1溝33の深さが、絶縁層30cに留まっているようにしても良く、導電層30bに達しているようにしても良い。また第1溝33の深さが、ベース層30aに及んでいるようにしても良い。
【0078】
また各第1実装領域32において、第1溝33の断面積(幅や深さ)が、封止工程において樹脂を流す方向に向かって(上流側から下流側に向かって)、広がるように設定されていても良い。例えば図10に示すように、第1溝33の幅が徐々に広がるように設定されていても良い。このようにすれば、第1実装領域32において、樹脂が第1溝33の中を、より流れ易くなることが期待される。
【0079】
以上に説明した通り、本実施形態の基板部材30は、モジュール基板11上に電子部品21が実装されて樹脂封止された高周波モジュール1の製造部品であって、略板状であり、将来的にモジュール基板11となるものである。また当該高周波モジュール1の製造工程は、基板部材30の実装面に電子部品21を実装する実装工程と、当該実装面に樹脂を流して、実装された電子部品21を樹脂封止する封止工程と、を含むものである。またこの実装工程は、略平面状の取付面51を有するICチップ21a(第1電子部品)を、当該実装面上に特定された第1実装領域32に、取付面51と当該実装面との間にギャップ54を有するように実装する工程を有している。そして更に、基板部材30の実装面には、封止工程においてギャップ54への樹脂の充填を促す、第1溝33が設けられている。
【0080】
このように基板部材30の実装面には第1溝33が設けられているため、第1溝が設けられていない場合に比べて、ギャップ54への樹脂の充填が促進されるようになっている。そのため、ギャップ54における樹脂の充填漏れを、極力抑えることが可能となっている。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの内容に限定されるものではない。また本発明の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない限り、種々の改変を加えることが可能である。また本実施形態では、モジュールとして、通信機器の部品として用いられる高周波モジュールを挙げたが、これに限定されるものではなく、他種の電気機器に用いられるモジュールであっても良く、他の機能を有するモジュールであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、各種の電気機器の構成部品となるモジュールに利用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 高周波モジュール(モジュール)
11 モジュール基板(基板)
11a 溝部
11b 傾斜部
12 封止部材
21 電子部品
21a ICチップ(第1電子部品)
21b 受動部品
30 基板部材
30a ベース層
30b 導電層
30c 絶縁層
31 境界
32 第1実装領域
33 第1溝
34 第2溝
51 取付面
52 バンプ
53 第1溝33と対向するスペース
54 ギャップ
60 金型
61 樹脂が流れる空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に電子部品が実装されて樹脂封止されたモジュールの製造部品であって、略板状であり、将来的に前記基板となる基板部材において、
前記モジュールの製造工程は、
前記基板部材の実装面に前記電子部品を実装する実装工程と、前記実装面に樹脂を流して、該実装された電子部品を樹脂封止する封止工程と、を含むものであり、
前記実装工程は、
略平面状の取付面を有する第1電子部品を、前記実装面上に特定された第1実装領域に、該取付面と該実装面との間にギャップを有するように実装する工程を有するものであり、
前記実装面には、
前記封止工程において前記ギャップへの樹脂の充填を促す、第1溝が設けられていることを特徴とする基板部材。
【請求項2】
前記第1溝は、
前記第1実装領域を、貫通するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板部材。
【請求項3】
前記基板部材の外縁は略四角形であり、
前記第1溝は、
前記基板部材の外縁の一辺から、該一辺に対向する他辺へ伸びるように、設けられていることを特徴とする請求項2に記載の基板部材。
【請求項4】
前記封止工程においては、前記基板部材の実装面に沿って略一定の方向に樹脂を流す、トランスファーモールドの手法が適用され、
前記第1溝は、
伸びる方向が、前記樹脂を流す方向と略一致するように、設けられていることを特徴とする請求項3に記載の基板部材。
【請求項5】
前記第1実装領域において、
前記第1溝の幅は、前記樹脂を流す方向に向かって、広がるように設定されていることを特徴とする請求項4に記載の基板部材。
【請求項6】
前記実装工程においては、
前記取付面に設置されているバンプを、前記第1実装領域の所定箇所に接着することで、前記第1電子部品が前記基板部材に実装されるものであり、
前記第1溝は、
該バンプが接着される箇所を避けるように、設けられていることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の基板部材。
【請求項7】
前記第1溝は、
前記第1実装領域の略中央を通るように、設けられていることを特徴とする請求項4から請求項6の何れかに記載の基板部材。
【請求項8】
それぞれが別々の前記モジュールの基板となる各パートが、前記実装面の広がる方向に繋がった態様となっている、請求項4から請求項7の何れかに記載の基板部材であって、
前記モジュールの製造工程は、
前記封止工程がなされた後に、各パート間の境界が樹脂とともに切断されて、個片化される工程を含むものであり、
前記実装面における前記境界の部分には、
前記封止工程において樹脂が流れ込む、第2溝が設けられていることを特徴とする基板部材。
【請求項9】
前記第2溝は、
略90度以下の角度をなすV字溝として設けられていることを特徴とする請求項8に記載の基板部材。
【請求項10】
前記基板部材は、
前記モジュールの絶縁被覆材となる絶縁層、および前記モジュールの配線パターンとなる導電層が設けられており、
前記第2溝の深さは、
前記絶縁層および導電層より深くなっていることを特徴とする請求項8または請求項9に記載の基板部材。
【請求項11】
請求項4から請求項10の何れかの基板部材を、製造部品として用いたことを特徴とするモジュールの製造方法。
【請求項12】
基板上に電子部品が実装されて樹脂封止されたモジュールの製造方法であって、
略板状であり、将来的に前記基板となる基板部材の実装面に、前記電子部品を実装する実装工程と、
前記実装面に樹脂を流して、該実装された電子部品を樹脂封止する封止工程と、
を含み、
前記実装工程は、
略平面状の取付面を有する第1電子部品を、前記実装面上に特定された第1実装領域に、該取付面と該実装面との間にギャップを有するように実装する工程を有するものであり、
前記実装面には、
前記第1実装領域を貫通するように、第1溝が設けられており、
前記封止工程は、
前記第1溝にも樹脂を流し、前記第1実装領域において該第1溝から前記ギャップへ樹脂が流れるようにすることで、前記ギャップへの樹脂の充填が促されるようにしたことを特徴とする製造方法。
【請求項13】
前記実装工程は、
略直方体形状の受動部品を、前記基板部材の実装面に実装する工程を有するものであり、
前記封止工程は、
前記基板部材の実装面に沿って略一定の方向に樹脂を流す、トランスファーモールドの手法が適用されたものであり、
該実装工程において、
前記実装面に実装される受動部品の全ては、それぞれの長手方向が、前記樹脂を流す方向と略一致するように実装されることを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記実装工程において、
前記第1電子部品は、前記ギャップが100μm以下となるように、前記基板部材の実装面に実装されることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
請求項11から請求項14の何れかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とするモジュール。
【請求項16】
請求項15に記載のモジュールを構成部品の一つとしたことを特徴とする電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−96865(P2011−96865A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249689(P2009−249689)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】