塗工装置、塗工方法、管状成型体の製造方法、無端ベルト、中間転写ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、定着ベルト、および画像形成装置
【課題】粘度が高く、チクソトロピ性を有する塗工液を、芯体の回転数を上げて塗工した場合においても塗布液への空気の巻き込みを抑制できる塗工装置等の提供。
【解決手段】芯体10を、軸線が水平になるように支持するとともに、軸線の回りに回転させる保持部材12と、保持部材12によって支持された芯体10の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、芯体10の外表面に塗工液を流下させるディスペンサ20と、先端部が芯体10の外表面に所定の押圧力で押圧された状態でディスペンサ20と共に芯体10の一端から他端に向かって移動しつつ、ディスペンサ20から芯体10の外表面に流下した塗工液を所定の厚みに均すブレード22と、を備え、ブレード22の先端部における芯体10に接する側の面が、前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されている塗工装置。
【解決手段】芯体10を、軸線が水平になるように支持するとともに、軸線の回りに回転させる保持部材12と、保持部材12によって支持された芯体10の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、芯体10の外表面に塗工液を流下させるディスペンサ20と、先端部が芯体10の外表面に所定の押圧力で押圧された状態でディスペンサ20と共に芯体10の一端から他端に向かって移動しつつ、ディスペンサ20から芯体10の外表面に流下した塗工液を所定の厚みに均すブレード22と、を備え、ブレード22の先端部における芯体10に接する側の面が、前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されている塗工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置、塗工方法、管状成型体の作製方法、無端ベルト、中間転写ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、定着ベルト、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ、レーザプリンタなどの電気写真方式の画像形成装置においては、感光体、中間転写ベルト、記録用紙搬送ベルト、定着ベルトとして薄肉の樹脂製ベルトが使用されることが多い。
【0003】
前記樹脂製ベルトに継ぎ目があると、出力画像に継ぎ目の跡が生じるので、継ぎ目のない無端ベルトが好ましい、
【0004】
画像形成装置においては近年小型化や省電力化、高速化が強く要望されているので、画像形成装置に使用される無端ベルトにも、肉厚が薄く、高い柔軟性、力学的強度、および耐久性が要求されている(特許文献1、2)
【0005】
前記無端ベルトの材質としては、強度や寸法安定性、耐熱性などの観点からポリイミド(以下、「PI」と略称する。)樹脂やポリアミドイミド(以下、「PAI」と略称する。)樹脂が一般的に使用されている(特許文献3〜10)。
【0006】
PI樹脂で無端ベルトのような管状成型体を作製する方法としては、円筒体の内面にPI樹脂前駆体溶液を塗工して回転させながら乾燥させてPI皮膜を形成する遠心成形法(特許文献11)や、円筒体内面にPI樹脂前駆体溶液を展開して加熱乾燥し、PI皮膜とする内面塗工法(特許文献12)などがある。
【0007】
PI樹脂で管状成型体を作製する別の方法としては、円柱形の芯体の外表面にPI樹脂前駆体溶液を浸漬塗工法によって塗工し、加熱乾燥して芯体外表面にPI樹脂皮膜を形成する方法がある。また、前記芯体の外表面にPI樹脂前駆体溶液を塗工するノズルと、前記芯体の外表面に対して平行であって前記外表面から僅かな隙間をおいて設けられた面を有するガイドの内側に前記芯体を設置し、前記ガイドを前記芯体の軸線方向に移動させる塗工方法(特許文献13)もある。
【0008】
更に、円筒状または円柱状の芯体を回転させ、ディスペンサによってPI樹脂前駆体溶液を前記芯体の外表面に供給しながら、前記ディスペンサを芯体の軸線方向に移動させ、同時に、前記ディスペンサと共に移動するブレードによって前記PI樹脂前駆体溶液を一定の厚みに均して塗工し、加熱乾燥して芯体外表面にPI樹脂皮膜を形成する方法がある(特許文献14)。
【特許文献1】特開平8−262903号公報
【特許文献2】特開平11−133776号公報
【特許文献3】特開平6−258960号公報
【特許文献4】特開2002−148951号公報
【特許文献5】特開2002−148951号公報
【特許文献6】特開2002−148957号公報
【特許文献7】特開2002−292656号公報
【特許文献8】特開平8−259709号公報
【特許文献9】特開平8−262903号公報
【特許文献10】特開2002−226765号公報
【特許文献11】特開昭62−019437号公報
【特許文献12】特開2002−091027号公報
【特許文献13】特開平10−069183号公報
【特許文献14】特開平9−297482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、粘度が高く、チクソトロピ性を有する塗工液を、芯体の回転数を上げて塗工した場合においても塗布液への空気の巻き込みを抑制できる塗工装置、塗工方法、管状成型体の製造方法、前記管状成型体の製造方法で製造された無端ベルト、前記無端ベルトから作製した中間転写ベルト、転写ベルト、定着ベルト、およびこれらの中間転写ベルト等を有する画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、円筒状または円柱状の芯体を、前記芯体の軸線が水平になるように支持するとともに、前記軸線の回りに回転させる芯体支持回転手段と、前記芯体支持回転手段によって支持された芯体の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、前記芯体の外表面に塗工液を流下させるディスペンサ手段と、先端部が前記芯体の外表面に所定の押圧力で押圧された状態で前記ディスペンサ手段と共に前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、前記ディスペンサ手段から前記芯体の外表面に流下した塗工液を均すブレードと、を備え、前記ブレードの先端部における芯体に接する側の面が、前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されている塗工装置に関する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗工装置において、前記ブレードの先端部における芯体に接する側の面が、円弧状または部分楕円状に湾曲した断面形状を有するものに関する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の塗工装置において、前記ブレードの先端部における芯体に接する側の面が楔型の断面形状を有するものに関する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の塗工装置において、前記ブレードの先端部の先端角が20〜50度であるものに関する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、円筒状または円柱状の芯体を、軸線が水平になるように保持しつつ、前記軸線の周りに回転させ、前記芯体の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かってディスペンサを移動させつつ、前記ディスペンサから前記芯体の外表面に塗工液を流下させ、ブレード部材の先端縁を前記芯体の外表面に所定の押圧力で押圧させて前記ディスペンサとともに芯体の一端から他端に移動させ、前記芯体の外表面に流下した塗工液を均して塗工する塗工工程と、芯体の外表面に塗工された塗工液を乾燥、固化して皮膜とする皮膜形成工程と、を有し、前記塗工工程においては、先端部における芯体に接する側の面が、が前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲する断面形状を有するブレードを用いる塗工方法に関する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の塗工方法によって芯体の外表面に管状の皮膜を形成した後、前記皮膜から芯体を抜去して管状成型体とする管状成型体の製造方法に関する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の管状成型体の製造方法によって製造された無端ベルトに関する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の中間転写ベルトに関する。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の転写ベルトに関する。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の搬送ベルトに関する。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の定着ベルトに関する。
【0021】
請求項12に記載の発明は、請求項8に記載の中間転写ベルト、請求項9に記載の転写ベルト、請求項10に記載の搬送ベルト、および請求項11に記載の定着ベルトの少なくとも1つを有する電子写真式の画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、ブレードと芯体とによって塗工液に加えられた圧力がブレード端縁で緩やかに開放されるため、ブレード端縁の直後において塗工液がブレードに向かう方向に流動して空気が塗工液に巻き込まれることが抑止される。したがって、前記塗工液から成型される管状成型体に気泡やボイドが生じることが少ない塗工装置が提供される。
【0023】
請求項2の発明によれば、先端部の断面形状が楔形であるブレードを用いた場合と比較して更にブレードの端縁における圧力の開放が更に緩やかになるから、ブレード端縁近傍における塗工液への空気の巻き込みが更に効果的に抑止される。
【0024】
請求項3の発明によれば、ブレードの先端部の断面形状が楔状なので、端縁が円弧状または部分楕円状に湾曲した断面形状を有するブレードと比較してブレードが容易に作製できる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、楔形の先端部を有するブレードにおいて先端角が20度未満、または50度を超える角度を有する場合と比較して、ブレードの先端部が楔形であってもブレードの端縁近傍における塗工液への空気の巻き込みが効果的に抑止され、したがって、前記塗工液から成型される管状成型体に気泡やボイドが生じることがより少ない塗工装置が提供される。
【0026】
請求項5の発明によれば、ブレードと芯体とによって塗工液に加えられた圧力がブレード端縁で緩やかに開放されるため、ブレード端縁の直後において塗工液がブレードに向かう方向に流動して空気が塗工液に巻き込まれることが抑止される。したがって、前記塗工液から成型される管状成型体に気泡やボイドが生じることが少ない塗工方法が提供される。
【0027】
請求項6の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない管状成型体が提供される。
【0028】
請求項7の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない無端ベルトが提供される。
【0029】
請求項8の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない中間転写ベルトが提供される。
【0030】
請求項9の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない転写ベルトが提供される。
【0031】
請求項10の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない搬送ベルトが提供される。
【0032】
請求項11の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない定着ベルトが提供される。
【0033】
請求項12の発明によれば、中間転写ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、および定着ベルトの欠陥に起因する画質不良が殆ど生じることのない画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
1.実施形態1
実施形態1に係る塗工装置100は、図1および図2に示すように、軸線が水平に位置するように、両端が芯体回転支持手段である保持部材12で保持され、回転手段(図示せず。)によって軸線の回りに回転する円筒状の芯体10と、容器14に貯留されたPI樹脂前駆体溶液を芯体10の外表面に流下させるディスペンサ20と、ディスペンサ20によって芯体10の表面に流下したPI樹脂前駆体溶液を所定の厚みに均す板状部材であるブレード22と、芯体10の他端近傍に設けられたブレード22を洗浄するためのスポンジ24とを備える。ディスペンサ20は本発明におけるディスペンサ手段に相当する。
【0035】
芯体10は、矢印aで示すように、図1および図2における時計回り方向に沿って回転する。芯体10の直径は、管状成型体の内径に応じて選択すればよいが、一般的には10〜150mmの範囲である。また、肉厚は0.5〜3mmが一般的である。また、芯体10の材質はアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属材料が好ましい。また芯体10の表面はクロームやニッケルで鍍金し、更に弗素樹脂やシリコーン樹脂で被覆してもよい。また、PI樹脂前駆体様液を乾燥、イミド化して得られるPI樹脂皮膜が接着しないように、芯体10の表面には離型剤を塗布することが好ましい。
【0036】
また、PI樹脂前駆体様液を塗布後、乾燥、およびイミド化する際に、PI樹脂前駆体様液中の溶剤や生成水によってPI樹脂皮膜に膨れが生じることがあり、特にPI樹脂皮膜が厚い場合に顕著である。この膨れの発生を防止する手段として、芯体10の表面粗面化することがある。芯体10の表面を粗面化するときの粗度は、Raで0.2〜2μmの範囲が好ましい。表面粗面化の方法としては、切削、ブラスト処理、サンドペーパ掛けなどがある。
【0037】
ディスペンサ20は、芯体10の外表面における上側の面にPI樹脂前駆体溶液を流下させるように配置されている。図1および図2において、Sは、ディスペンサ20から流下したPI樹脂前駆体溶液の流れを示す。
【0038】
そして、ディスペンサ20は、PI樹脂前駆体溶液を芯体10の外表面に向かって吐出するノズル18と、容器14に貯留されたPI樹脂前駆体溶液をノズル18に向かって送出するポンプ16とを有する。ポンプ16としては、PI樹脂前駆体溶液を一定の流量で途切れなく押し出せるものであれば特に種類を問わないが、通常は回転容積型の1軸偏心ポンプであるノーモポンプ(商品名)が使用される。
【0039】
なお、図1および図2に示す例では、ディスペンサ20においては、容器14内のPI樹脂前駆体溶液をポンプ16でノズル18に送出しているが、容器14内を不活性ガスや空気で加圧し、このガス圧でノズル18からPI樹脂前駆体溶液を吐出するようにしてもよい。また、容器14にピストンを設け、このピストンでPI樹脂前駆体溶液を押し出してもよい。
【0040】
ディスペンサ20におけるノズル18の先端と芯体10の外表面との距離は、PI樹脂前駆体溶液の流れSが途切れないように、10〜100mmの範囲が好ましい。
【0041】
ディスペンサ20とブレード22とは、図1において矢印bで示すように、相対的な位置関係を保持したまま、芯体10の一端から他端に向かって移動手段(図示せず。)によって移動する。ディスペンサ20とブレード22との移動速度Vは、可変可能である。
【0042】
ブレード22は、ディスペンサ20のノズル18の下方に配設された板状部材であり、先端部が所定の押圧力で芯体10の表面に押圧されている。
【0043】
PI樹脂前駆体溶液は粘度が高く、しかもチクソトロピ性を有しているから、従来においては、ディスペンサから芯体の外表面に流下されたPI樹脂前駆体溶液をブレードで均す際に、ブレードと芯体とによってPI樹脂前駆体溶液に加えられた圧力がブレード先端で急激に開放されるため、図13に示すように、PI樹脂前駆体溶液は、ブレード端縁の直後においてブレードに向かう方向の流動を起し、乱流が生じる。これにより、PI樹脂前駆体溶液に空気が巻き込まれて泡が生じるから、得られる管状成型体に気泡やボイドが生じ、品質や歩留まりの低下の原因となっていた。
とくに、PI樹脂前駆体溶液のように粘度が高く、チクソトロピ性を有する塗布液を塗工する際に、塗布タクトを短縮するために芯体の回転数を上げると前記問題が顕著に生じることがあった。
【0044】
それに対して本実施形態のブレード22は、図3に示すように、先端部22Aにおける芯体10に接する側の面である芯体圧接面22Bが、前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されている。
【0045】
ブレード22は、先端部22Aが図4に示すように半円状の断面を有していてもよく、図5に示すように1/4円状の断面を有してもよい。また、先端部22Aは、図6および図8に示すように半楕円状の断面を有してもよく、図7および図9に示すように1/4楕円状の断面を有してもよい。更に、ブレード22は、先端部22Aが図10に示すように楔形に成型されていてもよい。ここで、図6および図8に示す例においては、楕円の長径がブレード22の長手方向であり、図7および図9に示す例においては、長径がブレードの厚さ方向である。但し、図5、図7、図9、および図10に示すように、先端部22Aが1/4円状、1/4楕円状、または楔状の断面を有するときは、円柱面状または楕円中面状に湾曲し、または屈曲した側の面が芯体圧接面22Bとなるように形成されている。また、先端部22Aが楔状の断面を有するブレード22においては、先端角θは20〜50度の範囲が好ましい。先端角θが前記範囲内であれば、高速で塗工を行う場合においても塗工時のPI樹脂前駆体溶液への気泡巻き込み効果が得られる。以下、図4、図5、図6、図7、図8、図9、および図10に示すブレード22の形態を「形態#1」、「形態#2」、「形態#3」、「形態#4」、「形態#5」、「形態#6」、「形態#7」ということがある。また、図4〜図10においてL1、L2、L3は夫々ブレード長、ブレード幅、ブレード厚みを示す。
【0046】
ブレード22の材質は、PI樹脂前駆体溶液に侵されたり、PI樹脂前駆体溶液を変質させたりすることのないものが好ましく、具体的にはステンレス鋼や真鍮などの金属材料や、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、弗素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂材料、およびシリコーンゴム、ブチルゴムなどのゴム系材料から選択される材質からなるプレートが使用される。
【0047】
ブレード22の厚さL3は、金属材料の場合は50μm〜2mmが、樹脂材料の場合は100μm〜5mm、ゴム系材料の場合は1〜10mmの範囲が好ましい。
【0048】
ブレード22の幅L2は、PI樹脂前駆体溶液の塗工ピッチ(=芯体10が1回転する間にディスペンサ20およびブレード22が移動する距離)より広いことが好ましいが、ブレード22の幅が余りに広いと筋が形成される可能性があるので、前記ピッチの2倍以下が好ましい。
【0049】
以下、塗工装置100においてPI樹脂前駆体溶液を塗工してPI樹脂の管状成型体を作製する条件および手順について説明する。
【0050】
PI樹脂前駆体溶液を塗工する際の芯体10の回転速度は20〜200rpmの範囲が好ましい。また、ディスペンサ20とブレード22との移動速度Vは、ディスペンサ20からのPI樹脂前駆体溶液の流下量をf、得られる塗膜の厚みをt、芯体10の外径をDとすると、以下の式:
【0051】
V=f/(t×D×π)
【0052】
に従って設定できる。
【0053】
前述のようにブレード22の先端部は、芯体10に押圧される側の面が前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されているから、PI樹脂前駆体溶液は、図12に示すようにブレード22の芯体圧接面22Bと芯体10の外表面との間を滑らかに流れる。したがって、ブレード先端の近傍においてPI樹脂前駆体溶液の乱流が生じてPI樹脂前駆体溶液に空気が巻き込まれることがない。
【0054】
PI樹脂前駆体溶液を芯体10に塗工したら、芯体10を乾燥装置(図示せず。)に移して軸線の回りに回転させながら加熱乾燥する。芯体10の回転速度は1〜60rpm、加熱温度は90〜170℃、乾燥時間は20〜60分が好ましい。
【0055】
なお、芯体10に塗工する塗工液が本実施形態のようにPI樹脂前駆体溶液の場合は、PI樹脂前駆体の皮膜はPI樹脂皮膜ほど強くないので、塗膜から溶媒を除去しすぎると塗膜に割れが生じやすい。そこで、塗膜に15〜45質量%程度溶媒が残存している状態で必要に応じて2回目の塗工を行い、同様の条件で乾燥すればよい。
【0056】
15〜45質量%程度溶媒が残存している状態まで塗膜を乾燥したら、250〜450℃、好ましくは300〜350℃に芯体10を加熱してPI樹脂前駆体の塗膜をイミド化し、PI樹脂とする。イミド化の際には芯体10は回転させる必要はない。塗膜のイミド化が終了したら、得られた管状成型体を芯体10から剥離する。
【0057】
なお、塗工液がPAI樹脂溶液のように乾燥後のイミド化反応を必要としない場合には、塗工液を芯体10に塗工後、上述の条件で乾燥して溶媒を除去するだけで無端ベルトなどの管状成型体が得られる。
【0058】
得られた管状成型体には必要に応じて孔開け加工やリブ付け加工などの各種の後加工を施し、最終製品とする。
【0059】
塗工液としては、PI樹脂前駆体溶液およびPAI樹脂溶液のほか、ポリウレタン樹脂溶液、全芳香族ポリエステル樹脂溶液、ポリカーボネート樹脂溶液、ポリエステル樹脂溶液、ポリアミド樹脂溶液など、無端ベルトなどの管状成型体に使用される樹脂、または前記樹脂の前駆体の溶液が使用される。塗工液中の固形分濃度は、4〜20質量%程度がディスペンサ20からの塗工液の吐出を安定的に行う上から好ましい。
【0060】
前記管状成型体が画像形成装置用の無端ベルトであって、前記無端ベルトが転写ベルトや接触帯電ベルトとして使用するためのものである場合には、塗工液としてPI樹脂前駆体溶液やPAI樹脂溶液などに導電性物質を分散させたものを使用することが好ましい。前記導電性物質としては、カーボンブラック、カーボンファイバ、カーボンなのチューブ、グラファイトなどの炭素系導電性物質、銅、金、アルミニウム、錫などの金属や合金類、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化錫インジウムなどの導電性酸化物などが挙げられる。
【0061】
また、前記無端ベルトが定着ベルトとして使用するためのものである場合は、無端ベルトの表面にトナーに対して非粘着性の皮膜を形成することが好ましい。前記皮膜の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエステル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの弗素系樹脂が好ましい。また前記皮膜の形成方法としては前記弗素系樹脂の水分散液を無端ベルトの表面に塗布して焼き付ける方法が好ましい。なお、塗工液がPI樹脂前駆体溶液である場合には、塗膜が乾燥した段階で前記弗素系樹脂の水分散液を塗膜表面に塗布し、イミド化と皮膜形成とを同時に行うようにしてもよい。
【0062】
2.実施形態2
実施形態1に記載の塗工装置で作製された無端ベルトを中間転写ベルト、搬送ベルト、および定着ベルトとして用いた電子写真式の画像形成装置について以下に説明する。
【0063】
実施形態2に係る画像形成装置200は、図11に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー画像が表面に形成される感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kと、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面に形成された潜像をY、M、C、Kのトナーで現像する現像器105、106、107、108と、上記無端ベルトから形成され、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面に当接するように配設された中間転写ベルト102と、中間転写ベルト102を張架すると共に矢印Bの方向に回転駆動する張架ローラ117〜119と、中間転写ベルト102を挟んで張架ローラ117に相対するように配設された二次転写ローラ120と、中間転写ベルト102を裏面側から感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kに押圧する転写バッフル121〜124と、転写バッフル121〜124に隣接して配置され、中間転写ベルト102を帯電させるコロナ放電器109〜121と、中間転写ベルト102の下方に位置し、記録用紙103が収納されている記録媒体収納部113とを備える。張架ローラ117と二次転写ローラ120と中間転写ベルト102とによって二次転写部125が形成される。そして、記録媒体収納部113に収納された記録用紙103は、送り出しローラ126によって二次転写部125に送り出される。
【0064】
二次転写部125を挟んで記録媒体収納部113の反対側には、二次転写部125で記録用紙103に転写されたトナー画像を加熱、定着する加熱ローラ127と、やはり上記無端ベルトから形成され、記録用紙103を加熱ローラ127に押圧する押圧ローラ128とからなる定着部129と、二次転写部125でトナー画像が転写された記録用紙103を定着部129に搬送する上記無端ベルトから形成された搬送ベルトを有する搬送コンベア115とが設けられている。
【0065】
中間転写ベルト102における二次転写部125よりも下流側には、二次転写部125において記録用紙103に転写されないで残ったトナーを除去するクリーナ115が設けられている。
【0066】
以下、画像形成装置200の作用について説明する。
【0067】
る感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面に潜像が形成されると、前記潜像は、現像器105〜108によってY、M、C、Kの各色のトナーで現像され、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面にY、M、C、Kの各色のトナー画像が形成される。
【0068】
感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面に形成されたトナー画像は順次中間転写ベルト102に転写され、Y、M、C、Kの各色のトナー画像が重ね合わされたフルカラーのトナー画像が形成される。
【0069】
中間転写ベルト102上に形成されたフルカラーのトナー画像は、二次転写部125において記録用紙103に転写される。トナー画像が転写された記録用紙103は、搬送ベルトコンベア115で定着部129に搬送され、定着部129でトナー画像が記録用紙103に定着される。
【実施例】
【0070】
1.実施例1
(1)PI樹脂前駆体溶液の調製
攪拌棒、温度計、および滴下ロートを取り付けたフラスコに、五酸化燐で乾燥した窒素ガスを流通させながら、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略称する。)1977.6gを注入した。NMPを加熱して液温を60℃まで上昇させた後に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200.2g(1.0モル)を添加して溶解させた。4,4’−ジアミノジフェニルエーテルがNMPに溶解したのを確認したら、液温を60℃に保ちながら3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物294.2g(1.0モル)を添加して攪拌、溶解させた。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物の溶解を確認後、更に液温を60℃に保ちながら攪拌を継続してポリアミック酸(PI樹脂前駆体)の重合反応を行った。重合反応を24時間継続し、固形分濃度が20質量%のPI樹脂前駆体溶液を得た。
【0071】
(2)CB分散PI樹脂前駆体溶液の調整
次に、得られたPI樹脂前駆体溶液500gに非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(Luvitec(登録商標)K17、BASFジャパン株式会社製、以下「PVP」と略する。)0.5gを添加、溶解させた。次に、導電剤として、酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(商品名、Degussa製)、pH4.0、揮発分14.0%、以下「CB」と略する。)25.0gを添加してボールミルにて6時間処理してCBの分散を行った。
【0072】
(3)無端ベルトの作製
図4に示す塗工装置102に、芯体10として、外径90mm、長さ450mmの金属製円筒状金型を軸線が水平になるように保持部材12に装着した。なお、芯体10の外表面には予め弗素系理系剤を塗布し、作製後の無端ベルトが容易に脱着できるようにした。ディスペンサ20として、容器14に貯留されたPI樹脂前駆体溶液を空気圧で内径4mmのノズル18から押し出す形態のものを用いた。
【0073】
ブレード22としては、図4に示す形態#1のブレード22を用いた。ブレード22の寸法L1、L2、L3は表1に示すとおりである。
【0074】
次いで、芯体10を120rpmで回転させ、ダイアルゲージで押圧力をゲージ値3に設定してブレード23Aからの押圧力を測定した。押圧力の測定は以下の手順で行った。先ず、芯体10に円周方向に沿って100mm幅の圧力測定フィルム(商品名:プレスケールLLW、富士フイルム株式会社製)を巻回し、CB分散PI樹脂前駆体溶液を芯体10に塗工するときの同一の回転数で回転させ、ダイアルゲージで押圧力を塗工時と同一の強さに設定してブレード23Aを芯体10の外表面に押し当てる。この状態で芯体10を1回転させた後、圧力測定フィルムを芯体10の外表面から剥離し、剥離した圧力測定フィルムを非職を利用した圧力測定システム(富士フイルム株式会社製)にかけて押圧力を測定した。
【0075】
次いで、容器14にCB分散PI樹脂前駆体溶液を注入し、0.4MPaの空気圧を加えてCB分散PI樹脂前駆体溶液をノズル18から芯体10の外側面に向かって23ml/分の流量で押し出した。同時に、ディスペンサ20とブレード22との移動速度を180mm/分(1.5mm/1回転)に設定して芯体10の外側面にCB分散PI樹脂前駆体溶液を塗工した。
【0076】
上記の条件で芯体10の一端から他端に向かってCB分散PI樹脂前駆体溶液が塗布されたら、芯体10を水平に保持しつつ、20rpmの回転速度で回転させながら、内部が150℃に保持された乾燥炉で60分間乾燥した。乾燥後、芯体10の表面には焼く150μmのPI樹脂前駆体皮膜が形成されていた。PI樹脂前駆体皮膜の溶媒含有量は40質量%であった。
【0077】
次に、PI樹脂前駆体皮膜が形成された芯体10を150℃で20分間、280℃で20分間、320℃で30分間加熱してPI樹脂前駆体をイミド化した。イミド化後、芯体10を室温まで冷却し、PI樹脂を主成分とする管状成型体を芯体10から脱着して無端ベルトを得た。
【0078】
(4)無端ベルトの評価
(4−1)外観
【0079】
A.気泡
得られた無端ベルトにつき、気泡の有無を目視で観察した。観察は3人の検査者によって行い、以下の基準で評価した。
0:無端ベルト表面に何れの大きさの気泡も認められなかった。
1:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさの気泡が認められず、直径2mm未満の気泡は1個以上5個未満認められた。
2:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさの気泡が1個以上5個未満、または直径2mm未満の気泡は5個以上10個未満認められた。
3:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさの気泡が5個以上、または直径2mm未満の気泡が10個以上認められた。
【0080】
B.ボイド
得られた無端ベルトにつき、ボイドの有無を目視で観察した。観察は3人の検査者によって行い、以下の基準で評価した。
0:無端ベルト表面に何れの大きさのボイドも認められなかった。
1:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさのボイドが認められず、直径2mm未満のボイドは1個以上5個未満認められた。
2:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさのボイドが1個以上5個未満、または直径2mm未満のボイドは5個以上10個未満認められた。
3:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさのボイドが5個以上、または直径2mm未満のボイドが10個以上認められた。
【0081】
C.螺旋状ムラ
得られた無端ベルトにつき、外表面の螺旋状ムラの有無を目視で観察し、観察は3人の検査者によって行い、以下の基準で評価した。
0:3人の検査者の何れも螺旋ムラの発生を認めない。
1:3人の検査者のうち、1人が螺旋ムラの発生を認めた。
2:3人の検査者のうち、2人が螺旋ムラの発生を認めた。
3:3人の検査者の何れも螺旋ムラの発生を認めた。
結果は何れも「0」であった。
【0082】
(4−2)膜厚
無端ベルトの膜厚は、サンコー電子株式会社製の渦電流式膜厚計CTR−1500を用いて、無端ベルトの両端部20mmの範囲内で軸方向に5mmピッチ(83点)で測定し、その平均値を求めた。膜厚は80±2μであった。
【0083】
(4−3)コピー画質
富士ゼロックス株式会社製DocuCentreColor2220(商品名)の改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μA)を使用し、高温高湿(28℃、85%RH)および低温低湿(10℃、15%RH)でシアンおよびマゼンタの50%ハーフトーンを富士ゼロックス株式会社製C2記録紙に出力し、以下の基準で濃度ムラを目視で評価した。
【0084】
◎:濃度ムラが認められない。
○:濃度ムラは認められるが問題のないレベルである。
×:濃度ムラがはっきりと認められた。
【0085】
結果は高温高湿および低温低湿の何れも「◎」であった。
【0086】
2.実施例2〜6、比較例1、参考例1〜4
ブレード22の形状および押圧力設定値を表1、2のように変向した以外は、実施例1と同様の手順、条件で無端ベルトを作製し、無端ベルトの外観、膜厚、コピー画質を評価した。結果を表1、2に示す。なお、表2においてブレードの形状において「#8」とあるのは、図14に示すように、ブレード22の面に対して直角に先端を切落した形態のブレードである。
【0087】
【表1】
【表2】
表1および2から明らかなように、形態#1〜#4、および形態#7であって先端角θが20〜50度の範囲のブレード部材を用いた実施例1〜6においては、無端ベルトは何れも表面に気泡やボイド、螺旋状ムラの発生が認められず、高温高湿時および低温低湿時のいずれにおいてもコピー画像にムラが見られず、良好なコピー画質が得られた。
【0088】
これに対し形態#8のブレード部材を用いた比較例1では、得られた無端ベルトに気泡、ボイド、螺旋ムラの何れの発生も認められ、また、コピー画像に濃度ムラが見られた。また、形態#5、#6、および形態#7であって先端角θが20度未満または50度超のブレードを用いた参考例1〜4においても、実施例1〜6ほど良好なコピー画質は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、実施形態1に係る塗工装置の構成の概略を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る塗工装置の構成の概略を示す端面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る塗工装置における芯体およびブレード近傍の構成を示す部分拡大図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第1の形態を示す平面図および側面図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第2の形態を示す平面図および側面図である。
【図6】図6は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第3の形態を示す平面図および側面図である。
【図7】図7は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第4の形態を示す平面図および側面図である。
【図8】図8は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第5の形態を示す平面図および側面図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第6の形態を示す平面図および側面図である。
【図10】図10は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第7の形態を示す平面図および側面図である。
【図11】図11は、実施形態1に係る塗工装置で作製された無端ベルトを用いた画像形成装置の一例について構成を示す概略図である。
【図12】図12は、実施形態1に係る塗工装置におけるブレード近傍での塗工液の流れを示す説明図である。
【図13】図13は、従来の塗工装置におけるブレード近傍での塗工液の流れを示す説明図である。
【図14】図14は、比較例1で使用したブレードの形態を示す平面図および側面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 芯体
12 保持部材
14 容器
16 ポンプ
18 ノズル
20 ディスペンサ
22 ブレード
24 スポンジ
100 塗工装置
200 画像形成装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗工装置、塗工方法、管状成型体の作製方法、無端ベルト、中間転写ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、定着ベルト、および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やファクシミリ、レーザプリンタなどの電気写真方式の画像形成装置においては、感光体、中間転写ベルト、記録用紙搬送ベルト、定着ベルトとして薄肉の樹脂製ベルトが使用されることが多い。
【0003】
前記樹脂製ベルトに継ぎ目があると、出力画像に継ぎ目の跡が生じるので、継ぎ目のない無端ベルトが好ましい、
【0004】
画像形成装置においては近年小型化や省電力化、高速化が強く要望されているので、画像形成装置に使用される無端ベルトにも、肉厚が薄く、高い柔軟性、力学的強度、および耐久性が要求されている(特許文献1、2)
【0005】
前記無端ベルトの材質としては、強度や寸法安定性、耐熱性などの観点からポリイミド(以下、「PI」と略称する。)樹脂やポリアミドイミド(以下、「PAI」と略称する。)樹脂が一般的に使用されている(特許文献3〜10)。
【0006】
PI樹脂で無端ベルトのような管状成型体を作製する方法としては、円筒体の内面にPI樹脂前駆体溶液を塗工して回転させながら乾燥させてPI皮膜を形成する遠心成形法(特許文献11)や、円筒体内面にPI樹脂前駆体溶液を展開して加熱乾燥し、PI皮膜とする内面塗工法(特許文献12)などがある。
【0007】
PI樹脂で管状成型体を作製する別の方法としては、円柱形の芯体の外表面にPI樹脂前駆体溶液を浸漬塗工法によって塗工し、加熱乾燥して芯体外表面にPI樹脂皮膜を形成する方法がある。また、前記芯体の外表面にPI樹脂前駆体溶液を塗工するノズルと、前記芯体の外表面に対して平行であって前記外表面から僅かな隙間をおいて設けられた面を有するガイドの内側に前記芯体を設置し、前記ガイドを前記芯体の軸線方向に移動させる塗工方法(特許文献13)もある。
【0008】
更に、円筒状または円柱状の芯体を回転させ、ディスペンサによってPI樹脂前駆体溶液を前記芯体の外表面に供給しながら、前記ディスペンサを芯体の軸線方向に移動させ、同時に、前記ディスペンサと共に移動するブレードによって前記PI樹脂前駆体溶液を一定の厚みに均して塗工し、加熱乾燥して芯体外表面にPI樹脂皮膜を形成する方法がある(特許文献14)。
【特許文献1】特開平8−262903号公報
【特許文献2】特開平11−133776号公報
【特許文献3】特開平6−258960号公報
【特許文献4】特開2002−148951号公報
【特許文献5】特開2002−148951号公報
【特許文献6】特開2002−148957号公報
【特許文献7】特開2002−292656号公報
【特許文献8】特開平8−259709号公報
【特許文献9】特開平8−262903号公報
【特許文献10】特開2002−226765号公報
【特許文献11】特開昭62−019437号公報
【特許文献12】特開2002−091027号公報
【特許文献13】特開平10−069183号公報
【特許文献14】特開平9−297482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、粘度が高く、チクソトロピ性を有する塗工液を、芯体の回転数を上げて塗工した場合においても塗布液への空気の巻き込みを抑制できる塗工装置、塗工方法、管状成型体の製造方法、前記管状成型体の製造方法で製造された無端ベルト、前記無端ベルトから作製した中間転写ベルト、転写ベルト、定着ベルト、およびこれらの中間転写ベルト等を有する画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、円筒状または円柱状の芯体を、前記芯体の軸線が水平になるように支持するとともに、前記軸線の回りに回転させる芯体支持回転手段と、前記芯体支持回転手段によって支持された芯体の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、前記芯体の外表面に塗工液を流下させるディスペンサ手段と、先端部が前記芯体の外表面に所定の押圧力で押圧された状態で前記ディスペンサ手段と共に前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、前記ディスペンサ手段から前記芯体の外表面に流下した塗工液を均すブレードと、を備え、前記ブレードの先端部における芯体に接する側の面が、前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されている塗工装置に関する。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗工装置において、前記ブレードの先端部における芯体に接する側の面が、円弧状または部分楕円状に湾曲した断面形状を有するものに関する。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の塗工装置において、前記ブレードの先端部における芯体に接する側の面が楔型の断面形状を有するものに関する。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の塗工装置において、前記ブレードの先端部の先端角が20〜50度であるものに関する。
【0014】
請求項5に記載の発明は、円筒状または円柱状の芯体を、軸線が水平になるように保持しつつ、前記軸線の周りに回転させ、前記芯体の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かってディスペンサを移動させつつ、前記ディスペンサから前記芯体の外表面に塗工液を流下させ、ブレード部材の先端縁を前記芯体の外表面に所定の押圧力で押圧させて前記ディスペンサとともに芯体の一端から他端に移動させ、前記芯体の外表面に流下した塗工液を均して塗工する塗工工程と、芯体の外表面に塗工された塗工液を乾燥、固化して皮膜とする皮膜形成工程と、を有し、前記塗工工程においては、先端部における芯体に接する側の面が、が前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲する断面形状を有するブレードを用いる塗工方法に関する。
【0015】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の塗工方法によって芯体の外表面に管状の皮膜を形成した後、前記皮膜から芯体を抜去して管状成型体とする管状成型体の製造方法に関する。
【0016】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の管状成型体の製造方法によって製造された無端ベルトに関する。
【0017】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の中間転写ベルトに関する。
【0018】
請求項9に記載の発明は、請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の転写ベルトに関する。
【0019】
請求項10に記載の発明は、請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の搬送ベルトに関する。
【0020】
請求項11に記載の発明は、請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の定着ベルトに関する。
【0021】
請求項12に記載の発明は、請求項8に記載の中間転写ベルト、請求項9に記載の転写ベルト、請求項10に記載の搬送ベルト、および請求項11に記載の定着ベルトの少なくとも1つを有する電子写真式の画像形成装置に関する。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、ブレードと芯体とによって塗工液に加えられた圧力がブレード端縁で緩やかに開放されるため、ブレード端縁の直後において塗工液がブレードに向かう方向に流動して空気が塗工液に巻き込まれることが抑止される。したがって、前記塗工液から成型される管状成型体に気泡やボイドが生じることが少ない塗工装置が提供される。
【0023】
請求項2の発明によれば、先端部の断面形状が楔形であるブレードを用いた場合と比較して更にブレードの端縁における圧力の開放が更に緩やかになるから、ブレード端縁近傍における塗工液への空気の巻き込みが更に効果的に抑止される。
【0024】
請求項3の発明によれば、ブレードの先端部の断面形状が楔状なので、端縁が円弧状または部分楕円状に湾曲した断面形状を有するブレードと比較してブレードが容易に作製できる。
【0025】
請求項4に記載の発明によれば、楔形の先端部を有するブレードにおいて先端角が20度未満、または50度を超える角度を有する場合と比較して、ブレードの先端部が楔形であってもブレードの端縁近傍における塗工液への空気の巻き込みが効果的に抑止され、したがって、前記塗工液から成型される管状成型体に気泡やボイドが生じることがより少ない塗工装置が提供される。
【0026】
請求項5の発明によれば、ブレードと芯体とによって塗工液に加えられた圧力がブレード端縁で緩やかに開放されるため、ブレード端縁の直後において塗工液がブレードに向かう方向に流動して空気が塗工液に巻き込まれることが抑止される。したがって、前記塗工液から成型される管状成型体に気泡やボイドが生じることが少ない塗工方法が提供される。
【0027】
請求項6の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない管状成型体が提供される。
【0028】
請求項7の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない無端ベルトが提供される。
【0029】
請求項8の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない中間転写ベルトが提供される。
【0030】
請求項9の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない転写ベルトが提供される。
【0031】
請求項10の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない搬送ベルトが提供される。
【0032】
請求項11の発明によれば、気泡やボイド等の欠陥の殆どない定着ベルトが提供される。
【0033】
請求項12の発明によれば、中間転写ベルト、転写ベルト、搬送ベルト、および定着ベルトの欠陥に起因する画質不良が殆ど生じることのない画像形成装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
1.実施形態1
実施形態1に係る塗工装置100は、図1および図2に示すように、軸線が水平に位置するように、両端が芯体回転支持手段である保持部材12で保持され、回転手段(図示せず。)によって軸線の回りに回転する円筒状の芯体10と、容器14に貯留されたPI樹脂前駆体溶液を芯体10の外表面に流下させるディスペンサ20と、ディスペンサ20によって芯体10の表面に流下したPI樹脂前駆体溶液を所定の厚みに均す板状部材であるブレード22と、芯体10の他端近傍に設けられたブレード22を洗浄するためのスポンジ24とを備える。ディスペンサ20は本発明におけるディスペンサ手段に相当する。
【0035】
芯体10は、矢印aで示すように、図1および図2における時計回り方向に沿って回転する。芯体10の直径は、管状成型体の内径に応じて選択すればよいが、一般的には10〜150mmの範囲である。また、肉厚は0.5〜3mmが一般的である。また、芯体10の材質はアルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルなどの金属材料が好ましい。また芯体10の表面はクロームやニッケルで鍍金し、更に弗素樹脂やシリコーン樹脂で被覆してもよい。また、PI樹脂前駆体様液を乾燥、イミド化して得られるPI樹脂皮膜が接着しないように、芯体10の表面には離型剤を塗布することが好ましい。
【0036】
また、PI樹脂前駆体様液を塗布後、乾燥、およびイミド化する際に、PI樹脂前駆体様液中の溶剤や生成水によってPI樹脂皮膜に膨れが生じることがあり、特にPI樹脂皮膜が厚い場合に顕著である。この膨れの発生を防止する手段として、芯体10の表面粗面化することがある。芯体10の表面を粗面化するときの粗度は、Raで0.2〜2μmの範囲が好ましい。表面粗面化の方法としては、切削、ブラスト処理、サンドペーパ掛けなどがある。
【0037】
ディスペンサ20は、芯体10の外表面における上側の面にPI樹脂前駆体溶液を流下させるように配置されている。図1および図2において、Sは、ディスペンサ20から流下したPI樹脂前駆体溶液の流れを示す。
【0038】
そして、ディスペンサ20は、PI樹脂前駆体溶液を芯体10の外表面に向かって吐出するノズル18と、容器14に貯留されたPI樹脂前駆体溶液をノズル18に向かって送出するポンプ16とを有する。ポンプ16としては、PI樹脂前駆体溶液を一定の流量で途切れなく押し出せるものであれば特に種類を問わないが、通常は回転容積型の1軸偏心ポンプであるノーモポンプ(商品名)が使用される。
【0039】
なお、図1および図2に示す例では、ディスペンサ20においては、容器14内のPI樹脂前駆体溶液をポンプ16でノズル18に送出しているが、容器14内を不活性ガスや空気で加圧し、このガス圧でノズル18からPI樹脂前駆体溶液を吐出するようにしてもよい。また、容器14にピストンを設け、このピストンでPI樹脂前駆体溶液を押し出してもよい。
【0040】
ディスペンサ20におけるノズル18の先端と芯体10の外表面との距離は、PI樹脂前駆体溶液の流れSが途切れないように、10〜100mmの範囲が好ましい。
【0041】
ディスペンサ20とブレード22とは、図1において矢印bで示すように、相対的な位置関係を保持したまま、芯体10の一端から他端に向かって移動手段(図示せず。)によって移動する。ディスペンサ20とブレード22との移動速度Vは、可変可能である。
【0042】
ブレード22は、ディスペンサ20のノズル18の下方に配設された板状部材であり、先端部が所定の押圧力で芯体10の表面に押圧されている。
【0043】
PI樹脂前駆体溶液は粘度が高く、しかもチクソトロピ性を有しているから、従来においては、ディスペンサから芯体の外表面に流下されたPI樹脂前駆体溶液をブレードで均す際に、ブレードと芯体とによってPI樹脂前駆体溶液に加えられた圧力がブレード先端で急激に開放されるため、図13に示すように、PI樹脂前駆体溶液は、ブレード端縁の直後においてブレードに向かう方向の流動を起し、乱流が生じる。これにより、PI樹脂前駆体溶液に空気が巻き込まれて泡が生じるから、得られる管状成型体に気泡やボイドが生じ、品質や歩留まりの低下の原因となっていた。
とくに、PI樹脂前駆体溶液のように粘度が高く、チクソトロピ性を有する塗布液を塗工する際に、塗布タクトを短縮するために芯体の回転数を上げると前記問題が顕著に生じることがあった。
【0044】
それに対して本実施形態のブレード22は、図3に示すように、先端部22Aにおける芯体10に接する側の面である芯体圧接面22Bが、前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されている。
【0045】
ブレード22は、先端部22Aが図4に示すように半円状の断面を有していてもよく、図5に示すように1/4円状の断面を有してもよい。また、先端部22Aは、図6および図8に示すように半楕円状の断面を有してもよく、図7および図9に示すように1/4楕円状の断面を有してもよい。更に、ブレード22は、先端部22Aが図10に示すように楔形に成型されていてもよい。ここで、図6および図8に示す例においては、楕円の長径がブレード22の長手方向であり、図7および図9に示す例においては、長径がブレードの厚さ方向である。但し、図5、図7、図9、および図10に示すように、先端部22Aが1/4円状、1/4楕円状、または楔状の断面を有するときは、円柱面状または楕円中面状に湾曲し、または屈曲した側の面が芯体圧接面22Bとなるように形成されている。また、先端部22Aが楔状の断面を有するブレード22においては、先端角θは20〜50度の範囲が好ましい。先端角θが前記範囲内であれば、高速で塗工を行う場合においても塗工時のPI樹脂前駆体溶液への気泡巻き込み効果が得られる。以下、図4、図5、図6、図7、図8、図9、および図10に示すブレード22の形態を「形態#1」、「形態#2」、「形態#3」、「形態#4」、「形態#5」、「形態#6」、「形態#7」ということがある。また、図4〜図10においてL1、L2、L3は夫々ブレード長、ブレード幅、ブレード厚みを示す。
【0046】
ブレード22の材質は、PI樹脂前駆体溶液に侵されたり、PI樹脂前駆体溶液を変質させたりすることのないものが好ましく、具体的にはステンレス鋼や真鍮などの金属材料や、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、弗素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂材料、およびシリコーンゴム、ブチルゴムなどのゴム系材料から選択される材質からなるプレートが使用される。
【0047】
ブレード22の厚さL3は、金属材料の場合は50μm〜2mmが、樹脂材料の場合は100μm〜5mm、ゴム系材料の場合は1〜10mmの範囲が好ましい。
【0048】
ブレード22の幅L2は、PI樹脂前駆体溶液の塗工ピッチ(=芯体10が1回転する間にディスペンサ20およびブレード22が移動する距離)より広いことが好ましいが、ブレード22の幅が余りに広いと筋が形成される可能性があるので、前記ピッチの2倍以下が好ましい。
【0049】
以下、塗工装置100においてPI樹脂前駆体溶液を塗工してPI樹脂の管状成型体を作製する条件および手順について説明する。
【0050】
PI樹脂前駆体溶液を塗工する際の芯体10の回転速度は20〜200rpmの範囲が好ましい。また、ディスペンサ20とブレード22との移動速度Vは、ディスペンサ20からのPI樹脂前駆体溶液の流下量をf、得られる塗膜の厚みをt、芯体10の外径をDとすると、以下の式:
【0051】
V=f/(t×D×π)
【0052】
に従って設定できる。
【0053】
前述のようにブレード22の先端部は、芯体10に押圧される側の面が前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されているから、PI樹脂前駆体溶液は、図12に示すようにブレード22の芯体圧接面22Bと芯体10の外表面との間を滑らかに流れる。したがって、ブレード先端の近傍においてPI樹脂前駆体溶液の乱流が生じてPI樹脂前駆体溶液に空気が巻き込まれることがない。
【0054】
PI樹脂前駆体溶液を芯体10に塗工したら、芯体10を乾燥装置(図示せず。)に移して軸線の回りに回転させながら加熱乾燥する。芯体10の回転速度は1〜60rpm、加熱温度は90〜170℃、乾燥時間は20〜60分が好ましい。
【0055】
なお、芯体10に塗工する塗工液が本実施形態のようにPI樹脂前駆体溶液の場合は、PI樹脂前駆体の皮膜はPI樹脂皮膜ほど強くないので、塗膜から溶媒を除去しすぎると塗膜に割れが生じやすい。そこで、塗膜に15〜45質量%程度溶媒が残存している状態で必要に応じて2回目の塗工を行い、同様の条件で乾燥すればよい。
【0056】
15〜45質量%程度溶媒が残存している状態まで塗膜を乾燥したら、250〜450℃、好ましくは300〜350℃に芯体10を加熱してPI樹脂前駆体の塗膜をイミド化し、PI樹脂とする。イミド化の際には芯体10は回転させる必要はない。塗膜のイミド化が終了したら、得られた管状成型体を芯体10から剥離する。
【0057】
なお、塗工液がPAI樹脂溶液のように乾燥後のイミド化反応を必要としない場合には、塗工液を芯体10に塗工後、上述の条件で乾燥して溶媒を除去するだけで無端ベルトなどの管状成型体が得られる。
【0058】
得られた管状成型体には必要に応じて孔開け加工やリブ付け加工などの各種の後加工を施し、最終製品とする。
【0059】
塗工液としては、PI樹脂前駆体溶液およびPAI樹脂溶液のほか、ポリウレタン樹脂溶液、全芳香族ポリエステル樹脂溶液、ポリカーボネート樹脂溶液、ポリエステル樹脂溶液、ポリアミド樹脂溶液など、無端ベルトなどの管状成型体に使用される樹脂、または前記樹脂の前駆体の溶液が使用される。塗工液中の固形分濃度は、4〜20質量%程度がディスペンサ20からの塗工液の吐出を安定的に行う上から好ましい。
【0060】
前記管状成型体が画像形成装置用の無端ベルトであって、前記無端ベルトが転写ベルトや接触帯電ベルトとして使用するためのものである場合には、塗工液としてPI樹脂前駆体溶液やPAI樹脂溶液などに導電性物質を分散させたものを使用することが好ましい。前記導電性物質としては、カーボンブラック、カーボンファイバ、カーボンなのチューブ、グラファイトなどの炭素系導電性物質、銅、金、アルミニウム、錫などの金属や合金類、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化錫インジウムなどの導電性酸化物などが挙げられる。
【0061】
また、前記無端ベルトが定着ベルトとして使用するためのものである場合は、無端ベルトの表面にトナーに対して非粘着性の皮膜を形成することが好ましい。前記皮膜の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエステル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などの弗素系樹脂が好ましい。また前記皮膜の形成方法としては前記弗素系樹脂の水分散液を無端ベルトの表面に塗布して焼き付ける方法が好ましい。なお、塗工液がPI樹脂前駆体溶液である場合には、塗膜が乾燥した段階で前記弗素系樹脂の水分散液を塗膜表面に塗布し、イミド化と皮膜形成とを同時に行うようにしてもよい。
【0062】
2.実施形態2
実施形態1に記載の塗工装置で作製された無端ベルトを中間転写ベルト、搬送ベルト、および定着ベルトとして用いた電子写真式の画像形成装置について以下に説明する。
【0063】
実施形態2に係る画像形成装置200は、図11に示すように、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒(K)のトナー画像が表面に形成される感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kと、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面に形成された潜像をY、M、C、Kのトナーで現像する現像器105、106、107、108と、上記無端ベルトから形成され、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面に当接するように配設された中間転写ベルト102と、中間転写ベルト102を張架すると共に矢印Bの方向に回転駆動する張架ローラ117〜119と、中間転写ベルト102を挟んで張架ローラ117に相対するように配設された二次転写ローラ120と、中間転写ベルト102を裏面側から感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kに押圧する転写バッフル121〜124と、転写バッフル121〜124に隣接して配置され、中間転写ベルト102を帯電させるコロナ放電器109〜121と、中間転写ベルト102の下方に位置し、記録用紙103が収納されている記録媒体収納部113とを備える。張架ローラ117と二次転写ローラ120と中間転写ベルト102とによって二次転写部125が形成される。そして、記録媒体収納部113に収納された記録用紙103は、送り出しローラ126によって二次転写部125に送り出される。
【0064】
二次転写部125を挟んで記録媒体収納部113の反対側には、二次転写部125で記録用紙103に転写されたトナー画像を加熱、定着する加熱ローラ127と、やはり上記無端ベルトから形成され、記録用紙103を加熱ローラ127に押圧する押圧ローラ128とからなる定着部129と、二次転写部125でトナー画像が転写された記録用紙103を定着部129に搬送する上記無端ベルトから形成された搬送ベルトを有する搬送コンベア115とが設けられている。
【0065】
中間転写ベルト102における二次転写部125よりも下流側には、二次転写部125において記録用紙103に転写されないで残ったトナーを除去するクリーナ115が設けられている。
【0066】
以下、画像形成装置200の作用について説明する。
【0067】
る感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面に潜像が形成されると、前記潜像は、現像器105〜108によってY、M、C、Kの各色のトナーで現像され、感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面にY、M、C、Kの各色のトナー画像が形成される。
【0068】
感光体ドラム101Y、101M、101C、101Kの表面に形成されたトナー画像は順次中間転写ベルト102に転写され、Y、M、C、Kの各色のトナー画像が重ね合わされたフルカラーのトナー画像が形成される。
【0069】
中間転写ベルト102上に形成されたフルカラーのトナー画像は、二次転写部125において記録用紙103に転写される。トナー画像が転写された記録用紙103は、搬送ベルトコンベア115で定着部129に搬送され、定着部129でトナー画像が記録用紙103に定着される。
【実施例】
【0070】
1.実施例1
(1)PI樹脂前駆体溶液の調製
攪拌棒、温度計、および滴下ロートを取り付けたフラスコに、五酸化燐で乾燥した窒素ガスを流通させながら、N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略称する。)1977.6gを注入した。NMPを加熱して液温を60℃まで上昇させた後に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル200.2g(1.0モル)を添加して溶解させた。4,4’−ジアミノジフェニルエーテルがNMPに溶解したのを確認したら、液温を60℃に保ちながら3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物294.2g(1.0モル)を添加して攪拌、溶解させた。3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物の溶解を確認後、更に液温を60℃に保ちながら攪拌を継続してポリアミック酸(PI樹脂前駆体)の重合反応を行った。重合反応を24時間継続し、固形分濃度が20質量%のPI樹脂前駆体溶液を得た。
【0071】
(2)CB分散PI樹脂前駆体溶液の調整
次に、得られたPI樹脂前駆体溶液500gに非イオン系高分子としてポリビニル−2−ピロリドン(Luvitec(登録商標)K17、BASFジャパン株式会社製、以下「PVP」と略する。)0.5gを添加、溶解させた。次に、導電剤として、酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4(商品名、Degussa製)、pH4.0、揮発分14.0%、以下「CB」と略する。)25.0gを添加してボールミルにて6時間処理してCBの分散を行った。
【0072】
(3)無端ベルトの作製
図4に示す塗工装置102に、芯体10として、外径90mm、長さ450mmの金属製円筒状金型を軸線が水平になるように保持部材12に装着した。なお、芯体10の外表面には予め弗素系理系剤を塗布し、作製後の無端ベルトが容易に脱着できるようにした。ディスペンサ20として、容器14に貯留されたPI樹脂前駆体溶液を空気圧で内径4mmのノズル18から押し出す形態のものを用いた。
【0073】
ブレード22としては、図4に示す形態#1のブレード22を用いた。ブレード22の寸法L1、L2、L3は表1に示すとおりである。
【0074】
次いで、芯体10を120rpmで回転させ、ダイアルゲージで押圧力をゲージ値3に設定してブレード23Aからの押圧力を測定した。押圧力の測定は以下の手順で行った。先ず、芯体10に円周方向に沿って100mm幅の圧力測定フィルム(商品名:プレスケールLLW、富士フイルム株式会社製)を巻回し、CB分散PI樹脂前駆体溶液を芯体10に塗工するときの同一の回転数で回転させ、ダイアルゲージで押圧力を塗工時と同一の強さに設定してブレード23Aを芯体10の外表面に押し当てる。この状態で芯体10を1回転させた後、圧力測定フィルムを芯体10の外表面から剥離し、剥離した圧力測定フィルムを非職を利用した圧力測定システム(富士フイルム株式会社製)にかけて押圧力を測定した。
【0075】
次いで、容器14にCB分散PI樹脂前駆体溶液を注入し、0.4MPaの空気圧を加えてCB分散PI樹脂前駆体溶液をノズル18から芯体10の外側面に向かって23ml/分の流量で押し出した。同時に、ディスペンサ20とブレード22との移動速度を180mm/分(1.5mm/1回転)に設定して芯体10の外側面にCB分散PI樹脂前駆体溶液を塗工した。
【0076】
上記の条件で芯体10の一端から他端に向かってCB分散PI樹脂前駆体溶液が塗布されたら、芯体10を水平に保持しつつ、20rpmの回転速度で回転させながら、内部が150℃に保持された乾燥炉で60分間乾燥した。乾燥後、芯体10の表面には焼く150μmのPI樹脂前駆体皮膜が形成されていた。PI樹脂前駆体皮膜の溶媒含有量は40質量%であった。
【0077】
次に、PI樹脂前駆体皮膜が形成された芯体10を150℃で20分間、280℃で20分間、320℃で30分間加熱してPI樹脂前駆体をイミド化した。イミド化後、芯体10を室温まで冷却し、PI樹脂を主成分とする管状成型体を芯体10から脱着して無端ベルトを得た。
【0078】
(4)無端ベルトの評価
(4−1)外観
【0079】
A.気泡
得られた無端ベルトにつき、気泡の有無を目視で観察した。観察は3人の検査者によって行い、以下の基準で評価した。
0:無端ベルト表面に何れの大きさの気泡も認められなかった。
1:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさの気泡が認められず、直径2mm未満の気泡は1個以上5個未満認められた。
2:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさの気泡が1個以上5個未満、または直径2mm未満の気泡は5個以上10個未満認められた。
3:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさの気泡が5個以上、または直径2mm未満の気泡が10個以上認められた。
【0080】
B.ボイド
得られた無端ベルトにつき、ボイドの有無を目視で観察した。観察は3人の検査者によって行い、以下の基準で評価した。
0:無端ベルト表面に何れの大きさのボイドも認められなかった。
1:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさのボイドが認められず、直径2mm未満のボイドは1個以上5個未満認められた。
2:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさのボイドが1個以上5個未満、または直径2mm未満のボイドは5個以上10個未満認められた。
3:無端ベルト表面に直径2mm以上の大きさのボイドが5個以上、または直径2mm未満のボイドが10個以上認められた。
【0081】
C.螺旋状ムラ
得られた無端ベルトにつき、外表面の螺旋状ムラの有無を目視で観察し、観察は3人の検査者によって行い、以下の基準で評価した。
0:3人の検査者の何れも螺旋ムラの発生を認めない。
1:3人の検査者のうち、1人が螺旋ムラの発生を認めた。
2:3人の検査者のうち、2人が螺旋ムラの発生を認めた。
3:3人の検査者の何れも螺旋ムラの発生を認めた。
結果は何れも「0」であった。
【0082】
(4−2)膜厚
無端ベルトの膜厚は、サンコー電子株式会社製の渦電流式膜厚計CTR−1500を用いて、無端ベルトの両端部20mmの範囲内で軸方向に5mmピッチ(83点)で測定し、その平均値を求めた。膜厚は80±2μであった。
【0083】
(4−3)コピー画質
富士ゼロックス株式会社製DocuCentreColor2220(商品名)の改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μA)を使用し、高温高湿(28℃、85%RH)および低温低湿(10℃、15%RH)でシアンおよびマゼンタの50%ハーフトーンを富士ゼロックス株式会社製C2記録紙に出力し、以下の基準で濃度ムラを目視で評価した。
【0084】
◎:濃度ムラが認められない。
○:濃度ムラは認められるが問題のないレベルである。
×:濃度ムラがはっきりと認められた。
【0085】
結果は高温高湿および低温低湿の何れも「◎」であった。
【0086】
2.実施例2〜6、比較例1、参考例1〜4
ブレード22の形状および押圧力設定値を表1、2のように変向した以外は、実施例1と同様の手順、条件で無端ベルトを作製し、無端ベルトの外観、膜厚、コピー画質を評価した。結果を表1、2に示す。なお、表2においてブレードの形状において「#8」とあるのは、図14に示すように、ブレード22の面に対して直角に先端を切落した形態のブレードである。
【0087】
【表1】
【表2】
表1および2から明らかなように、形態#1〜#4、および形態#7であって先端角θが20〜50度の範囲のブレード部材を用いた実施例1〜6においては、無端ベルトは何れも表面に気泡やボイド、螺旋状ムラの発生が認められず、高温高湿時および低温低湿時のいずれにおいてもコピー画像にムラが見られず、良好なコピー画質が得られた。
【0088】
これに対し形態#8のブレード部材を用いた比較例1では、得られた無端ベルトに気泡、ボイド、螺旋ムラの何れの発生も認められ、また、コピー画像に濃度ムラが見られた。また、形態#5、#6、および形態#7であって先端角θが20度未満または50度超のブレードを用いた参考例1〜4においても、実施例1〜6ほど良好なコピー画質は得られなかった。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、実施形態1に係る塗工装置の構成の概略を示す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る塗工装置の構成の概略を示す端面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る塗工装置における芯体およびブレード近傍の構成を示す部分拡大図である。
【図4】図4は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第1の形態を示す平面図および側面図である。
【図5】図5は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第2の形態を示す平面図および側面図である。
【図6】図6は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第3の形態を示す平面図および側面図である。
【図7】図7は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第4の形態を示す平面図および側面図である。
【図8】図8は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第5の形態を示す平面図および側面図である。
【図9】図9は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第6の形態を示す平面図および側面図である。
【図10】図10は、実施形態1に係る塗工装置で使用されるブレードの第7の形態を示す平面図および側面図である。
【図11】図11は、実施形態1に係る塗工装置で作製された無端ベルトを用いた画像形成装置の一例について構成を示す概略図である。
【図12】図12は、実施形態1に係る塗工装置におけるブレード近傍での塗工液の流れを示す説明図である。
【図13】図13は、従来の塗工装置におけるブレード近傍での塗工液の流れを示す説明図である。
【図14】図14は、比較例1で使用したブレードの形態を示す平面図および側面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 芯体
12 保持部材
14 容器
16 ポンプ
18 ノズル
20 ディスペンサ
22 ブレード
24 スポンジ
100 塗工装置
200 画像形成装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状または円柱状の芯体を、前記芯体の軸線が水平になるように支持するとともに、前記軸線の回りに回転させる芯体支持回転手段と、
前記芯体支持回転手段によって支持された芯体の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、前記芯体の外表面に塗工液を流下させるディスペンサ手段と、
先端部が前記芯体の外表面に所定の押圧力で押圧された状態で前記ディスペンサ手段と共に前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、前記ディスペンサ手段から前記芯体の外表面に流下した塗工液を均すブレードと、
を備え、
前記ブレードの先端部における前記芯体に接する側の面は、前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されている塗工装置。
【請求項2】
前記ブレードの先端部における前記芯体に接する側の面は、弧状または部分楕円状に湾曲した断面形状を有する請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記ブレードの先端部における前記芯体に接する側の面は、楔型の断面形状を有する請求項1に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記ブレードの先端部の先端角は20〜50度である請求項3に記載の塗工装置。
【請求項5】
円筒状または円柱状の芯体を、軸線が水平になるように保持しつつ、前記軸線の周りに回転させ、前記芯体の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かってディスペンサを移動させつつ、前記ディスペンサから前記芯体の外表面に塗工液を流下させ、ブレード部材の先端部を前記芯体の外表面に所定の押圧力で押圧させて前記ディスペンサとともに芯体の一端から他端に移動させ、前記芯体の外表面に流下した塗工液を均して塗工する塗工工程と、
芯体の外表面に塗工された塗工液を乾燥、固化して皮膜とする皮膜形成工程と、
を有し、
前記塗工工程においては、先端部における芯体に接する側の面が前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲する断面形状を有するブレードを用いる塗工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の塗工方法によって芯体の外表面に管状の皮膜を形成した後、前記皮膜から芯体を抜去して管状成型体とする管状成型体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の管状成型体の製造方法によって製造された無端ベルト。
【請求項8】
請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の中間転写ベルト。
【請求項9】
請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の転写ベルト。
【請求項10】
請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の搬送ベルト。
【請求項11】
請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の定着ベルト。
【請求項12】
請求項8に記載の中間転写ベルト、請求項9に記載の転写ベルト、請求項10に記載の搬送ベルト、および請求項11に記載の定着ベルトの少なくとも1つを有する電子写真式の画像形成装置。
【請求項1】
円筒状または円柱状の芯体を、前記芯体の軸線が水平になるように支持するとともに、前記軸線の回りに回転させる芯体支持回転手段と、
前記芯体支持回転手段によって支持された芯体の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、前記芯体の外表面に塗工液を流下させるディスペンサ手段と、
先端部が前記芯体の外表面に所定の押圧力で押圧された状態で前記ディスペンサ手段と共に前記芯体の一端から他端に向かって移動しつつ、前記ディスペンサ手段から前記芯体の外表面に流下した塗工液を均すブレードと、
を備え、
前記ブレードの先端部における前記芯体に接する側の面は、前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲するように形成されている塗工装置。
【請求項2】
前記ブレードの先端部における前記芯体に接する側の面は、弧状または部分楕円状に湾曲した断面形状を有する請求項1に記載の塗工装置。
【請求項3】
前記ブレードの先端部における前記芯体に接する側の面は、楔型の断面形状を有する請求項1に記載の塗工装置。
【請求項4】
前記ブレードの先端部の先端角は20〜50度である請求項3に記載の塗工装置。
【請求項5】
円筒状または円柱状の芯体を、軸線が水平になるように保持しつつ、前記軸線の周りに回転させ、前記芯体の軸線に沿って前記芯体の一端から他端に向かってディスペンサを移動させつつ、前記ディスペンサから前記芯体の外表面に塗工液を流下させ、ブレード部材の先端部を前記芯体の外表面に所定の押圧力で押圧させて前記ディスペンサとともに芯体の一端から他端に移動させ、前記芯体の外表面に流下した塗工液を均して塗工する塗工工程と、
芯体の外表面に塗工された塗工液を乾燥、固化して皮膜とする皮膜形成工程と、
を有し、
前記塗工工程においては、先端部における芯体に接する側の面が前記芯体の外表面の湾曲方向とは反対の方向に湾曲または屈曲する断面形状を有するブレードを用いる塗工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の塗工方法によって芯体の外表面に管状の皮膜を形成した後、前記皮膜から芯体を抜去して管状成型体とする管状成型体の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の管状成型体の製造方法によって製造された無端ベルト。
【請求項8】
請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の中間転写ベルト。
【請求項9】
請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の転写ベルト。
【請求項10】
請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の搬送ベルト。
【請求項11】
請求項7に記載の無端ベルトから形成された電子写真式画像形成装置用の定着ベルト。
【請求項12】
請求項8に記載の中間転写ベルト、請求項9に記載の転写ベルト、請求項10に記載の搬送ベルト、および請求項11に記載の定着ベルトの少なくとも1つを有する電子写真式の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−142775(P2010−142775A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325247(P2008−325247)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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