説明

多気筒ディーゼルエンジン

【課題】コモンレールの熱損傷や燃料温度の上昇を抑制することができる多気筒ディーゼルエンジンを提供する。
【解決手段】クランク軸の架設方向を前後方向として、吸気マニホルド2の上方に前後方向に向けたコモンレール3を配置し、エンジンの前側にエンジン冷却ファン4を配置した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、前後方向と直交するエンジンの幅方向を横方向とし、コモンレール3の両横側方のうち、ヘッドカバー側とは逆側の外横側方に吸気マニホルド2の吸気入口部6を配置し、エンジン冷却ファン4からのエンジン冷却風の吹き当たり個所にコモンレール3を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒ディーゼルエンジンに関し、詳しくは、コモンレールの熱損傷や燃料温度の上昇を抑制することができる多気筒ディーゼルエンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多気筒ディーゼルエンジンとして、クランク軸の架設方向を前後方向として、吸気マニホルドの上方に前後方向に向けたコモンレールを配置し、エンジンの前側にエンジン冷却ファンを配置したものがある(特許文献1参照)。
この種のエンジンによれば、コモンレールにシリンダヘッドやシリンダブロックの熱が入熱されにくいうえ、エンジン冷却ファンからのエンジン冷却風でコモンレールを空冷できる利点がある。
しかし、この従来技術では、吸気マニホルドの吸気入口部がコモンレールの前方に配置されているため、問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−133274号公報(図7、図8参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
《問題》 コモンレールの熱損傷や燃料温度の上昇が起こり易い。
吸気マニホルドの吸気入口部がコモンレールの前方に配置されているため、エンジン冷却ファンからのエンジン冷却風が吸気入口部で遮られ、コモンレールに吹き当たらず、コモンレールの放熱性が低く、コモンレールの熱損傷や燃料温度の上昇が起こり易い。
【0005】
本発明の課題は、コモンレールの熱損傷や燃料温度の上昇を抑制することができる多気筒ディーゼルエンジンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明の発明特定事項は、次の通りである。
図1〜図3、または図9〜図11に例示するように、クランク軸(1)の架設方向を前後方向として、
吸気マニホルド(2)の上方に前後方向に向けたコモンレール(3)を配置し、エンジンの前側にエンジン冷却ファン(4)を配置した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
前後方向と直交するエンジンの幅方向を横方向とし、コモンレール(3)の両横側方のうち、ヘッドカバー(5)側とは逆側の外横側方に吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)を配置し、エンジン冷却ファン(4)からのエンジン冷却風の吹き当たり個所にコモンレール(3)を配置した、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【発明の効果】
【0007】
(請求項1に係る発明)
請求項1に係る発明は、次の効果を奏する。
《効果》 コモンレールの熱損傷と燃料温度の上昇を抑制することができる
図1〜図3、または図9〜図11に例示するように、ヘッドカバー(5)側とは逆側の外横側方に吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)を配置し、エンジン冷却ファン(4)からのエンジン冷却風の吹き当たり個所にコモンレール(3)を配置したので、コモンレール(3)にエンジン冷却風が吹き当たり、コモンレール(3)の放熱性が高まり、コモンレール(3)の熱損傷や燃料の温度上昇を抑制することができる。
【0008】
(請求項2に係る発明)
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 燃料サプライポンプの熱損傷や燃料の温度上昇を抑制することができる。
図3または図10に例示するように、ポンプ収容室(8)から上方に突出させた燃料サプライポンプ(9)の上側部(13)をエンジン冷却ファン(4)の冷却風吹き当たり個所に配置したので、燃料サプライポンプ(9)の上側部(13)にエンジン冷却風が吹き当たり、燃料サプライポンプ(9)の放熱性が高まり、燃料サプライポンプ(9)の熱損傷や燃料の温度上昇を抑制することができる。
【0009】
(請求項3に係る発明)
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の効果に加え、次の効果を奏する。
《効果》 ポンプ駆動室からの動力取り出しを行うことができる。
図7(A)に例示するように、ポンプ駆動室(11)の後部にポンプ駆動カム軸(12)を介して出力を行う動力取り出し部(14)を設けたので、燃料サプライポンプ(9)を駆動するポンプ駆動室(11)からの動力取り出しを行うことができる。
【0010】
(請求項4に係る発明)
請求項4に係る発明は、請求項2または請求項3に係る発明の効果加え、次の効果を奏する。
《効果》 燃料サプライポンプの精度や耐久性を高めることができる。
図7(A)(B)に例示するように、ポンプ収容室(8)とポンプ駆動室(11)とを区画壁(15)で区画し、この区画壁(15)にポンプ嵌合孔(16)をあけ、このポンプ嵌合孔(16)に燃料サプライポンプ(9)のタペットガイド筒(17)を内嵌させたので、コモンレール(3)に高圧の燃料を圧送するためにポンプ駆動カム軸(12)からタペット(18)を介してタペットガイド筒(17)に作用する大きな力が区画壁(15)で受け止められ、タペットガイド筒(17)の変形を抑制することができ、燃料サプライポンプ(9)の精度や耐久性を高めることができる。
【0011】
(請求項5に係る発明)
請求項5に係る発明は、請求項4に係る発明の効果加え、次の効果を奏する。
《効果》 タペットのスムーズな昇降が維持されるとともに、燃料へのエンジンオイルの混入も抑制される。
図7(A)に例示するように、燃料サプライポンプ(9)の周壁にタペット(18)昇降用の空気出入孔(19)を設け、この空気出入孔(19)よりも下の部分で、タペットガイド筒(17)をポンプ嵌合孔(16)に内嵌させたので、ポンプ駆動室(11)でポンプ駆動カム軸(12)によって跳ね上げられたエンジンオイルは区画壁(15)で受け止められ、空気出入孔(19)には進入しにくい。このため、空気出入孔(19)にエンジンオイルが詰まりにくく、タペット(18)のスムーズな昇降が維持される。また、燃料サプライポンプ(9)内の燃料へのエンジンオイルの混入も抑制される。
【0012】
(請求項6に係る発明)
請求項6に係る発明は、請求項4に係る発明の効果加え、次の効果を奏する。
《効果》 燃料サプライポンプの組み付けをスムーズに行うことができる。
図7(B)に例示するように、ポンプ嵌合孔(16)の前後周縁部に前後方向に窪む凹部(20)(20)を設けたので、タペットガイド筒(17)をポンプ嵌合孔(16)に内嵌させる場合に、燃料サプライポンプ(9)が前後に傾いても、タペットガイド筒(17)とポンプ嵌合孔(16)の前後周壁部との接触による嵌合の抵抗が凹部(20)(20)によって回避され、燃料サプライポンプ(9)の組み付けをスムーズに行うことができる。
【0013】
(請求項7に係る発明)
請求項7に係る発明は、請求項5に係る発明の効果加え、次の効果を奏する。
《効果》 燃料サプライポンプの組み付けをスムーズに行うことができる。
図7(B)に例示するように、ポンプ嵌合孔(16)の前後周縁部に前後方向に窪む凹部(20)(20)を設けたので、タペットガイド筒(17)をポンプ嵌合孔(16)に内嵌させる場合に、燃料サプライポンプ(9)が前後に傾いても、タペットガイド筒(17)とポンプ嵌合孔(16)の前後周壁部との接触による嵌合の抵抗が凹部(20)(20)によって回避され、燃料サプライポンプ(9)の組み付けをスムーズに行うことができる。
【0014】
《効果》 空気出入孔へのエンジンオイルの進入抑制機能は維持される。
図7(A)(B)に例示するように、前後の両凹部(20)(20)の真上から外れた位置で、空気出入孔(19)を燃料サプライポンプ(9)の横周壁に設けたので、前後の両凹部(20)(20)からポンプ収容室(8)に進入したエンジンオイルは横側の空気出入孔(19)には進入しにくく、空気出入孔(19)へのエンジンオイルの進入抑制機能は維持される。このため、空気出入孔(19)にエンジンオイルが詰まりにくく、タペット(18)のスムーズな昇降が維持される。また、燃料サプライポンプ(9)内の燃料へのエンジンオイルの混入も抑制される。
【0015】
(請求項8に係る発明)
請求項8に係る発明は、請求項2から請求項7のいずれかに係る発明の効果加え、次の効果を奏する。
《効果》 複数の電子部品にハーネスを接続する作業をエンジンの前部で容易に行うことができる。
図6、図7(A)に例示するように、カム軸ポジションセンサ(25)と調圧弁アクチュエータ(28)とコモンレール圧センサ(29)とを、コモンレール(3)側のエンジンの前寄りに集約化することができ、これら複数の電子部品(25)(28)(29)にワイヤーハーネスを接続する作業をエンジンの前寄りで容易に行うことができる。
【0016】
(請求項9に係る発明)
請求項9に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれに係る発明の効果加え、次の効果を奏する。
《効果》 コモンレールの熱損傷や燃料の温度上昇を抑制することができる。
図1、図2、図8(A)(B)に例示するように、コモンレール(3)の外横側方に、前後方向に並べた吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)とEGR弁アクチュエータ(32)とEGR弁ケース(31)とからなるエンジン冷却風ガイド壁を配置したので、コモンレール(3)の外横側方からのエンジン冷却風の逃げが抑制され、コモンレール(3)の放熱効率が高まり、コモンレール(3)の熱損傷や燃料の温度上昇を抑制することができる。
【0017】
《効果》 エンジンの全高が高くなるのを抑制でき、また、エンジンの全長が長くなるのを抑制することができる。
図1、図2に例示するように、EGR弁ケース(31)の前部からEGR弁アクチュエータ(32)を前向きに突出させたので、EGR弁ケース(31)の上部からEGR弁アクチュエータ(32)を上向きに突出させる場合に比べ、エンジンの全高が高くなるのを抑制でき、また、EGR弁ケース(31)の後部からEGR弁アクチュエータ(32)を後向きに突出させる場合に比べ、エンジンの全長が長くなるのを抑制することができる。
【0018】
(請求項10に係る発明)
請求項10に係る発明は、請求項1から請求項8のいずれに係る発明の効果加え、次の効果を奏する。
《効果》 燃料の冷却効率が高い。
図9〜図11に例示するように、コモンレール(3)の外横側方に、前後方向に並べた吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)とEGR弁アクチュエータ(32)からなるエンジン冷却風ガイド壁を配置したので、コモンレール(3)の外横側方からのエンジン冷却風の逃げが抑制され、コモンレール(3)の放熱効率が高まり、コモンレール(3)の熱損傷や燃料の温度上昇を抑制することができる。
【0019】
《効果》 エンジンの全長が長くなるのを抑制することができる。
図9に例示するように、EGR弁ケース(31)の上部からEGR弁アクチュエータ(32)を上向きに突出させるので、EGR弁ケース(31)の後部からEGR弁アクチュエータ(32)を後向きに突出させる場合に比べ、エンジンの全長が長くなるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1実施形態に係る立形直列4気筒ディーゼルエンジンの左側面図である。
【図2】図1のエンジンの平面図である。
【図3】図1のエンジンの正面図である。
【図4】図1のエンジンの背面図である。
【図5】図1のエンジンの右側面図である。
【図6】図1のエンジンの燃料サプライポンプとその周辺の正面図である。
【図7】図7(A)は図6のVIIA−VIIA線断面図、図7(B)は図7(A)のB−B線断面図である。
【図8】図8(A)は図1のエンジンの吸気マニホルドを後方から右斜め下に見た斜視図、図8(B)は同吸気マニホルドを後方から左斜め下に見た斜視図、図8(C)は逆止弁の立断面図、図8(D)は図8(B)のD−D線断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る立形直列3気筒ディーゼルエンジンの左側面図である。
【図10】図9のエンジンの平面図である。
【図11】図9のエンジンの正面図である。
【図12】図12(A)は図2のエンジンの吸気マニホルドを後方から右斜め下に見た斜視図、図12(B)は同吸気マニホルドを後方から左斜め下に見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜図8は本発明の第1実施形態に係る立形直列4気筒ディーゼルエンジンを説明する図、図9〜図12は本発明の第2実施形態に係る立形直列3気筒ディーゼルエンジンを説明する図である。
【0022】
第1実施形態について説明する。
このエンジンは、図3に示すように、シリンダブロック(7)の上部にシリンダヘッド(33)を組み付け、シリンダヘッド(33)の上部にヘッドカバー(5)を組み付け、シリンダブロック(7)の下部にオイルパン(40)を組み付け、シリンダブロック(7)の前部にギヤケース(21)を組み付けている。図4に示すように、シリンダブロック(7)の後部にはフライホイールハウジング(41)を組み付け、フライホイールハウジング(41)内にクランク軸(1)に組み付けたフライホイール(42)を収容している。
【0023】
図3に示すように、エンジンの前方から見て、シリンダヘッド(33)の左側には吸気マニホルド(2)を組み付け、シリンダヘッド(33)の右側には排気マニホルド(43)を組みつけている。排気マニホルド(43)の上部には過給機(44)を取り付け、過給機(44)から過給パイプ(45)を介して吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)に過給がなされる。
このエンジンは、コモンレールシステムとEGRシステムとを備えている。
【0024】
コモンレールシステムの構造は、次の通りである。
燃料タンク(図外)の燃料は、燃料フィルタ(図外)と燃料フィードポンプ(47)とを介して燃料サプライポンプ(9)に供給され、燃料サプライポンプ(9)で高圧化された燃料がコモンレール(3)に供給され、コモンレール(3)で蓄圧された燃料は、燃料インジェクタ(48)の電磁弁の開弁により、燃料噴射管(49)と燃料インジェクタ(48)とを介して燃焼室に噴射される。
【0025】
コモンレール圧や燃料インジェクタ(48)からの燃料噴射開始時期や燃料噴射量は、いずれもエンジンECU(図外)の制御によって調節される。
コモンレール圧の調節は、コモンレール圧センサ(29)で圧を検出しながら、調圧弁アクチュエータ(28)で燃料サプライポンプ(9)の調圧弁の開度を調節するフィードバック制御により行われる。
燃料インジェクタ(48)からの燃料噴射開始時期や燃料噴射量の調節はエンジン回転数やエンジン負荷に基づいて、燃料インジェクタ(48)の電磁弁の開弁時期や開弁期間を調節することにより行われる。
燃料インジェクタ(48)の電磁弁の開弁開始時期は、クランク角センサ(50)とカム軸ポジションセンサ(25)の検出信号で特定される各気筒の燃焼行程毎のクランク角に基づいて調節される。クランク角センサ(50)はエンジン回転数センサも兼ねている。このエンジンは、4サイクルエンジンであり、クランク軸(1)が2回転する間にポンプ駆動カム軸(12)は1回転する。
【0026】
EGRシステムの構成は、次の通りである。
排気マニホルド(43)の排気の一部はEGRガスとして、EGRクーラ(51)とEGRガス中継パイプ(52)とEGR弁ケース(31)とEGRガス導入ケース(30)とEGRガス放熱通路(36)とを介して吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)に供給される。
EGR弁(38)の開度は、エンジン回転数やエンジン負荷に基づいて、エンジンECUの制御によってEGR弁アクチュエータ(32)で調節される。
【0027】
コモンレールシステムの工夫は、次の通りである。
図1〜図3に示すように、クランク軸(1)の架設方向を前後方向として、吸気マニホルド(2)の上方に前後方向に向けたコモンレール(3)を配置し、エンジンの前側にエンジン冷却ファン(4)を配置している。
前後方向と直交するエンジンの幅方向を横方向とし、コモンレール(3)の両横側方のうち、ヘッドカバー(5)側とは逆側の外横側方に吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)を配置し、エンジン冷却ファン(4)からのエンジン冷却風の吹き当たり個所にコモンレール(3)を配置している。
【0028】
図1〜図3に示すように、コモンレール(3)は吸気マニホルド(2)の真上に配置され、吸気入口部(6)に固定されている。
図8(A)(B)に示すように、吸気マニホルド(2)は枝管のない前後に長い箱形構造で、シリンダヘッド(33)の横側壁に沿って配置され、シリンダヘッド(33)側は開口され、シリンダヘッド(33)の吸気ポート入口(39)と連通している。
コモンレール(3)の両横側方のうち、ヘッドカバー(5)側で、シリンダヘッド(33)の上部に燃料インジェクタ(48)が、ヘッドカバー(5)に沿って前後に配列されている。
【0029】
図6、図7(A)に示すように、シリンダブロック(7)の両横側方のうち、コモンレール(3)側の横側方の前寄りにポンプ収容室(8)を形成し、このポンプ収容室(8)にコモンレール(3)に燃料を圧送する燃料サプライポンプ(9)の下側部(10)を収容し、ポンプ収容室(8)の下方にポンプ駆動室(11)を設け、ポンプ駆動室(11)に前後方向に向けたポンプ駆動カム軸(12)を収容し、このポンプ駆動カム軸(12)で燃料サプライポンプ(9)を駆動し、燃料サプライポンプ(9)でコモンレール(3)に燃料を圧送する。
図3に示すように、ポンプ収容室(8)から上方に突出させた燃料サプライポンプ(9)の上側部(13)をエンジン冷却ファン(4)からエンジン冷却風の吹き当たり個所に配置している。
図6に示すように、ポンプ収容室(8)の横外側部から横外側方に燃料フィードポンプ(47)を突出させ、この燃料フィードポンプ(47)もポンプ駆動カム軸(12)で駆動する。
【0030】
図7(A)に示すように、ポンプ駆動室(11)の後部にポンプ駆動カム軸(12)を介して出力を行う動力取り出し部(14)を設けている。
動力取り出し部(14)には、動力取り出しケース(53)を設け、この動力取り出しケース(53)にポンプ駆動カム軸(12)の後端に取り付けたカム軸出力ギヤ(54)とこのカム軸出力ギヤ(54)と噛み合わせた連動ギヤ(55)とこの連動ギヤ(56)から後向きに導出された動力取り出し軸(60)を収容している。ポンプ駆動カム軸(12)の前後寄り部はいずれも転がり軸受(56)(56)で軸受けされ、動力取り出し軸(60)も転がり軸受(57)で軸受けされている。
【0031】
図7(A)(B)に示すように、ポンプ収容室(8)とポンプ駆動室(11)とを区画壁(15)で区画し、この区画壁(15)にポンプ嵌合孔(16)をあけ、このポンプ嵌合孔(16)に燃料サプライポンプ(9)のタペットガイド筒(17)を内嵌させている。
図7(A)に示すように、燃料サプライポンプ(9)の周壁にタペット(18)昇降用の空気出入孔(19)を設け、この空気出入孔(19)よりも下の部分で、タペットガイド筒(17)をポンプ嵌合孔(16)に内嵌させている。
【0032】
図7(A)(B)に示すように、ポンプ嵌合孔(16)の前後周縁部に前後方向に窪む凹部(20)(20)を設け、前後の両凹部(20)(20)の真上から外れた位置で、空気出入孔(19)を燃料サプライポンプ(9)の横周壁に設けている。
図7(B)に示すように、ポンプ収容室(8)の4隅のうちシリンダブロック(7)寄りの2隅には、区画壁(15)に上下連通孔(61)をあけ、この上下連通孔(61)でポンプ収容室(8)とポンプ駆動室(11)とを連通させている。
ポンプ駆動室(11)はシリンダブロック(7)のクランクケース内と連通孔で連通され、クランクケースからポンプ駆動室(11)内にオイルミストが供給される。
【0033】
図6、図7(A)に示すように、ポンプ駆動室(11)の前側にギヤケース(21)を配置し、ギヤケース(21)内にポンプ駆動カム軸(12)に取り付けたポンプ駆動カムギヤ(22)とカム軸ロータ(23)とを収容し、カム軸ロータ(23)の被検出部(24)を検出するカム軸ポジションセンサ(25)をギヤケース(21)の上壁(26)に取り付けている。
ギヤケース(21)の上壁(26)の後方にポンプ収容室(8)の上壁(27)を配置し、ポンプ収容室(8)の上壁(27)から上方に突出する燃料サプライポンプ(9)の上側部(10)の前側に調圧弁アクチュエータ(28)を配置し、コモンレール(3)の前端にコモンレール圧センサ(29)を配置している。
【0034】
図1、図2に示すように、吸気マニホルド(2)の両横側方のうち、シリンダヘッド(33)とは逆側の外横側方で、吸気マニホルド(2)の外横側壁の後寄り部に沿ってEGRガス導入ケース(30)を設け、このEGRガス導入ケース(30)の上部にEGR弁ケース(31)を取り付け、このEGR弁ケース(31)の前部からEGR弁アクチュエータ(32)を前向きに突出させ、コモンレール(3)の外横側方に、前後方向に並べた吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)とEGR弁アクチュエータ(32)とEGR弁ケース(31)とからなるエンジン冷却風ガイド壁を配置している。
【0035】
EGRシステムの工夫は、次の通りである。
図1に示すように、EGR通路の途中にEGR弁ケース(31)と逆止弁ケース(34)とを配置し、逆止弁ケース(34)に収容した逆止弁(35)で吸気側からの逆流を阻止する。この逆止弁ケース(34)は前記したEGRガス導入ケース(30)である。図8(C)に示すように、逆止弁(35)は、楔形の弁ホルダ(58)に取り付けたリード弁である。
図8(D)に示すように、逆止弁ケース(34)と吸気マニホルド(2)の後部とをEGRガス短絡通路(37)で連通させている。
このため、吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)と後部気筒の吸気ポート入口(39)が離れている場合であっても、EGRガスがEGRガス短絡通路(37)を介して後部気筒の吸気ポート入口(39)付近に流入するので、各気筒へのEGRガスの分配を均等化することができ、各気筒の燃焼を均等化して、エンジン出力を高めることができる。
【0036】
図9〜図12に示す第2実施形態は、次の点が第1実施形態と異なる。
この第2実施形態のエンジンは、立形直列3気筒ディーゼルエンジンである。
EGRガス導入ケース(30)、すなわち逆止弁ケース(34)の後部にEGR弁ケース(31)を取り付け、このEGR弁ケース(31)の上部からEGR弁アクチュエータ(32)を上向きに突出させ、コモンレール(3)の外横側方に、前後方向に並べた吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)とEGR弁アクチュエータ(32)からなるエンジン冷却風ガイド壁を配置している。
EGRガス導入ケース(30)、すなわち逆止弁ケース(34)と吸気マニホルドとの間にEGRガス短絡通路はない。
吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)は吸気スロットル弁を収容したスロットルボディ(59)を備えている。
他の構成は、第1実施形態と同じであり、図9〜図12中、第1実施形態と同一の要素には、同一の符号を付しておく。
【符号の説明】
【0037】
(1) クランク軸
(2) 吸気マニホルド
(3) コモンレール
(4) エンジン冷却ファン
(5) ヘッドカバー
(6) 吸気入口部
(7) シリンダブロック
(8) ポンプ収容室
(9) 燃料サプライポンプ
(10) 燃料サプライポンプの下側部
(11) ポンプ駆動室
(12) ポンプ駆動カム軸
(13) 燃料サプライポンプの上側部
(14) 動力取り出し部
(15) 区画壁
(16) ポンプ嵌合孔
(17) タペットガイド筒
(18) タペット
(19) 空気出入孔
(20) 凹部
(21) ギヤケース
(22) ポンプ駆動カムギヤ
(23) カム軸ロータ
(24) 被検出部
(25) カム軸ポジションセンサ
(26) ギヤケースの上壁
(27) ポンプ収容室の上壁
(28) 調圧弁アクチュエータ
(29) コモンレール圧センサ
(30) EGRガス導入ケース
(31) EGR弁ケース
(32) EGR弁アクチュエータ
(33) シリンダヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランク軸(1)の架設方向を前後方向として、
吸気マニホルド(2)の上方に前後方向に向けたコモンレール(3)を配置し、エンジンの前側にエンジン冷却ファン(4)を配置した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
前後方向と直交するエンジンの幅方向を横方向とし、コモンレール(3)の両横側方のうち、ヘッドカバー(5)側とは逆側の外横側方に吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)を配置し、エンジン冷却ファン(4)からのエンジン冷却風の吹き当たり個所にコモンレール(3)を配置した、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【請求項2】
請求項1に記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
シリンダブロック(7)の両横側方のうち、コモンレール(3)側の横側方の前寄りにポンプ収容室(8)を形成し、このポンプ収容室(8)にコモンレール(3)に燃料を圧送する燃料サプライポンプ(9)の下側部(10)を収容し、ポンプ収容室(8)の下方にポンプ駆動室(11)を設け、ポンプ駆動室(11)に前後方向に向けたポンプ駆動カム軸(12)を収容し、このポンプ駆動カム軸(12)で燃料サプライポンプ(9)を駆動し、燃料サプライポンプ(9)でコモンレール(3)に燃料を圧送するようにし、
ポンプ収容室(8)から上方に突出させた燃料サプライポンプ(9)の上側部(13)をエンジン冷却ファン(4)からエンジン冷却風の吹き当たり個所に配置した、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【請求項3】
請求項2に記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
ポンプ駆動室(11)の後部にポンプ駆動カム軸(12)を介して出力を行う動力取り出し部(14)を設けた、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
ポンプ収容室(8)とポンプ駆動室(11)とを区画壁(15)で区画し、この区画壁(15)にポンプ嵌合孔(16)をあけ、このポンプ嵌合孔(16)に燃料サプライポンプ(9)のタペットガイド筒(17)を内嵌させた、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【請求項5】
請求項4に記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
燃料サプライポンプ(9)の周壁にタペット(18)昇降用の空気出入孔(19)を設け、この空気出入孔(19)よりも下の部分で、タペットガイド筒(17)をポンプ嵌合孔(16)に内嵌させた、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【請求項6】
請求項4に記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
ポンプ嵌合孔(16)の前後周縁部に前後方向に窪む凹部(20)(20)を設けた、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【請求項7】
請求項5に記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
ポンプ嵌合孔(16)の前後周縁部に前後方向に窪む凹部(20)(20)を設け、
前後の両凹部(20)(20)の真上から外れた位置で、空気出入孔(19)を燃料サプライポンプ(9)の横周壁に設けた、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【請求項8】
請求項2から請求項7のいずれかに記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
ポンプ駆動室(11)の前側にギヤケース(21)を配置し、ギヤケース(21)内にポンプ駆動カム軸(12)に取り付けたポンプ駆動カムギヤ(22)とカム軸ロータ(23)とを収容し、カム軸ロータ(23)の被検出部(24)を検出するカム軸ポジションセンサ(25)をギヤケース(21)の上壁(26)に取り付け、
ギヤケース(21)の上壁(26)の後方にポンプ収容室(8)の上壁(27)を配置し、ポンプ収容室(8)の上壁(27)から上方に突出する燃料サプライポンプ(9)の上側部(10)の前側に調圧弁アクチュエータ(28)を配置し、
コモンレール(3)の前端にコモンレール圧センサ(29)を配置した、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
吸気マニホルド(2)の両横側方のうち、シリンダヘッド(33)とは逆側の外横側方で、吸気マニホルド(2)の外横側壁の後寄り部に沿ってEGRガス導入ケース(30)を設け、
このEGRガス導入ケース(30)の上部にEGR弁ケース(31)を取り付け、このEGR弁ケース(31)の前部からEGR弁アクチュエータ(32)を前向きに突出させ、
コモンレール(3)の外横側方に、前後方向に並べた吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)とEGR弁アクチュエータ(32)とEGR弁ケース(31)とからなるエンジン冷却風ガイド壁を配置した、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。
【請求項10】
請求項1から請求項8のいずれかに記載した多気筒ディーゼルエンジンにおいて、
吸気マニホルド(2)の両横側方のうち、シリンダヘッド(33)とは逆側となる外横側方で、吸気マニホルド(2)の外横側壁の後寄り部に沿ってEGRガス導入ケース(30)を設け、
このEGRガス導入ケース(30)の後部にEGR弁ケース(31)を取り付け、このEGR弁ケース(31)の上部からEGR弁アクチュエータ(32)を上向きに突出させ、
コモンレール(3)の外横側方に、前後方向に並べた吸気マニホルド(2)の吸気入口部(6)とEGR弁アクチュエータ(32)からなるエンジン冷却風ガイド壁を配置した、ことを特徴とする多気筒ディーゼルエンジン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−64074(P2011−64074A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212782(P2009−212782)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】