説明

多色画像形成方法及び画像形成装置

【課題】像担持体上にトナー像形成を繰り返して行う場合の不具合を解消でき、安価で簡易な構成を実現できる多色画像形成方法を提供する。
【解決手段】の感光体ドラム81の周囲には、クリーニング装置85、帯電装置101、露光装置(図示せず)、現像装置201、帯電装置102、現像装置202、帯電装置103、現像装置203、帯電装置104、現像装置204、転写前帯電装置82の順に配設されている。
各々の現像装置は現像剤として負帯電トナーを現像領域(感光体と対向している領域)にある搬送量で運んでいる。感光体ドラム81の表面にトナー像が形成された状態で、同一の感光体に2色目の帯電を行う場合、2色目の帯電は、1色目の帯電電位を越えない条件で帯電を行う。次段の帯電電位もこの条件を満たすようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多色画像形成方法、特に像担持体上で現像剤像を重ね合わせる多色画像形成方法、該多色画像形成方法を実施可能な複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式で、現像剤(以下「トナー」と記す)の像を何層か重ね合わせて多色の画像を転写媒体に形成する方法は、トナー像をどこの行程で重ねるかによって大きく2つに分けられる。
1つ目は各色に対応する像担持体を持ち、各像担持体は1色のトナー像を形成し、像担持体に形成されたトナー像を、転写媒体あるいは中間転写体に転写する方法である。
この方法では、像担持体上には、1色のトナー像のみを形成するため、トナー像の形成は有利であるが、トナーの転写を繰り返すため、転写回数が増加し、転写時の重ね合わせずれ、転写時のトナー像の乱れなどが発生する。
一つの感光体にトナー像を形成し転写した後に同じ感光体上に別のトナー像を形成して転写する方法も、感光体上に一つのトナー像のみを形成するという点で同じ方式である。
また、上記1つ目の方式は、像担持体が各色の分(YMCKの場合は4つ)必要であるため、装置が大きくなりやすい。
【0003】
これに対し、2つ目の方式として、像担持体上で多色のトナー像を形成する方式がある。像担持体上で現像剤像を重ねる方式は、転写回数を減らすことができるので、画像の転写による乱れが少なくなる。また、像担持体が一つで、多色の現像剤像を形成することで小型化に有利である。
電子写真では、感光体上に、帯電・潜像形成・トナー像形成を行うが、感光体上にあるトナー像の上から帯電・露光するので、トナーが保持している電荷量が変わる。
帯電する感光体にトナーを用いて現像するときは以下のプロセスを行う。
(1)感光体を一様に帯電する。
(2)感光体に露光して画像部電位と非画像部電位の潜像を形成する。
(3)現像バイアスを画像部電位と非画像電位の間に設定し、地肌電位(VG)とコントラスト電位(VP)を形成する。
(4)現像剤を潜像に付着させる。
1〜4を繰り返して数層の多色トナー画像を感光体上に形成し、トナー像を形成した後に転写体に一括で転写する。
すなわち、初段帯電工程である帯電Aによって感光体表面を一様に帯電し、露光Aにより静電潜像を形成し、現像Aによって初段のトナー像を形成する。次に、帯電Bによって感光体表面並びに初段トナー像を帯電し、露光Bによりトナー像越しに静電潜像を形成し、現像Bによって初段トナー像上に二段目トナー像を形成する。
これらの工程を複数回経ることで、感光体上に複数色のトナー像を形成する。ここで、前段のトナー像を破壊しないよう、帯電方式としては非接触帯電であるコロナ帯電方式などを、また現像方式としては非接触現像であるクラウド現像方式などを採用するのが好ましい。
【0004】
【特許文献1】特許第2899815号公報
【特許文献2】特許第2782872号公報
【特許文献3】特開平8−286456号公報
【特許文献4】特許第3703547号公報
【特許文献5】特許第3250858号公報
【特許文献6】特開平3−113474号公報
【特許文献7】特開平3−21967号公報
【特許文献8】特開2002−341656号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような多重現像方式を高画質で成立させるための大きな課題として、前段で現像されたトナー像による影響を如何に低減するかがある。
トナー像による影響の中で最も大きな課題は、前段の現像工程によって形成されたトナー層が有する電位の影響を如何に取り除くかである。
図18は、感光体とトナーが同極性の場合の多重現像方式の例である。
1段目の感光体を一様にマイナス帯電し露光によって潜像をマイナストナーによって現像し、トナー像を形成する。
次に2回目の帯電によって帯電すると、現像されたトナーのマイナス電荷による電位の上昇に加え、帯電によって更にトナーの電位が上昇し余計な表面電位が生成され、次に露光したときのコントラスト電位が小さくなってしまうという課題がある。
【0006】
これに対して、図19は、感光体とトナーの極性を変えた場合の多重現像方式の例である。
1段目で感光体を一様にプラス帯電し露光によって潜像を形成し、次にマイナストナーでトナー像を形成する。トナーの電荷はマイナスであるので、2色目の帯電でプラス帯電が印加され、トナーの電荷は相殺され、トナーによる電位形成の影響を少なくできる。
しかしながら、図20に示したようなことが発生する。つまり、1段目の時は問題が無いが、2段目の帯電をするときに、1段目よりも大きな電位で帯電させてしまうと、トナーの極性が逆転して、2色面の露光時にトナーが移動してしまう、という不具合がある。
【0007】
このようなトナー層電位の問題を克服すべく、トナー層の存在する部位と存在しない部位とで書き込み露光の条件を変える方法が提案されている(特許文献1)。このような方法によれば、原理的にはトナー層電位による不具合を解決することが可能であるが、例えば初段画像のエッジ部や微細なドット部に対して二段目以降の書き込み位置を厳密に制御することは、書き込み系そのものの精度や感光体駆動等の精度の点から非常に困難である。
また、特許文献2や、特許文献3、特許文献4においては、トナー層に対して2段もしくは3段のコロナ放電工程を施すことで、トナー層電位を低減する方法が提案されている。
しかしながら、コロナチャージャの数が増すとともに、コストアップやマシンの大型化が避けられない。
また、特許文献5には反転現像方式が提案されているが、トナーと感光体の極性が違う場合が想定されていない。
【0008】
本発明は、像担持体上にトナー像形成を繰り返して行う場合の上記不具合を解消でき、安価で簡易な構成を実現できる多色画像形成方法及び画像形成装置の提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明では、像担持体を均一に第1の帯電電位に帯電し露光することで第1の静電潜像を形成し、第1の現像剤を担持した現像剤担持体を前記像担持体に対向させて第1の静電潜像の現像を行い、続いて第1のトナー像を担持したまま、前記像担持体を第2の帯電電位で帯電し露光することで第2の静電潜像を形成し、第2の現像剤を担持した現像剤担持体を前記像担持体に対向させて非接触現像法を用いて第2の静電潜像の現像を行い、前記像担持体に2色以上の現像剤を担持させることを順次、数回繰り返し多色の現像剤像を形成した後に、転写、定着工程を経て画像を形成する多色画像形成方法において、前記像担持体の極性と現像剤の極性が互いに反対になっており、次段の帯電電位が前段の帯電電位を超えないこと特徴とする。
[課題]
コントラスト電位を形成するときに、現像剤の帯電の極性と、帯電電位を形成するコロナチャージャの極性が同じであると、現像剤の電荷が増加してしまい、現像剤像のある部分の電位が現像剤の無い部分よりも高くなってしまい、コントラスト電位が低下する。さらに第1の現像後の帯電によってトナー電荷が変化するため、トナーと像担持体との間に働く鏡像力が部分的に弱まり、現像剤が移動してしまうことを防止する。
【0010】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の多色画像形成方法において、第2段以降の帯電を1つの帯電装置で行うことを特徴とする。
[課題]
多段の帯電と現像を繰り返す場合、小型・高速にするために現像装置と帯電装置を像担持体上に複数設置しなくてはならないために、各段の帯電装置を小さくする。
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の多色画像形成方法において、前記帯電装置が、DCスコロトロン帯電装置であることを特徴とする。
[課題]
像担持体上に現像剤層が形成された部分と現像剤層が形成されていない部分があるが、双方の電位を一定にする。
請求項4記載の発明では、請求項1〜3のいずれかに記載の多色画像形成方法において、前記像担持体が正帯電、現像剤が負帯電であることを特徴とする。
[課題]
像担持体上の電位を一定にする。
【0011】
請求項5記載の発明では、請求項1〜4のいずれかに記載の多色画像形成方法において、2段目以降の現像が、フレア現像装置によりなされることを特徴とする。
[課題]
第2段目以降の混色を防止する。
請求項6記載の発明では、請求項1〜5のいずれかに記載の多色画像形成方法において、現像剤の円形度が、0.96以上であることを特徴とする。
[課題]
像担持体上に現像剤層が多層形成されると、結果として付着量が大きくなり、転写が困難になり、画像ムラが増加するのでこれを抑制する。
請求項7記載の発明では、画像形成装置において、請求項1〜6のいずれかに記載の多色画像形成方法を実施可能であることを特徴とする。
[課題]
小型の多色画像形成装置にするために、部品点数を少なくする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の発明によれば、像担持体上の現像剤は、像担持体上の現像剤に係るコロナ帯電によって電荷が誘起されるが、電荷量が低下することによる現像剤と像担持体の鏡像力が低下することを防止でき、現像剤は電荷量を保持できるので、現像剤の移動を防止することができる。
現像剤の極性と帯電の極性が反対になるので、現像剤の帯電によって発生する電荷の増加による電位上昇が抑えられる。
請求項2記載の発明によれば、各色の帯電装置を集約して一段にすることにより、一つの像担持体に多数の画像形成部材を並べることができ、多色画像形成装置を小さくすることができる。
請求項3記載の発明によれば、収束電極を持った帯電装置であるため、現像剤層のある部分も現像剤層が無く像担持体が剥き出しになっている部分も表面の電位を同等にすることができる。
請求項4記載の発明によれば、一般に知られているように、負帯電の帯電装置よりも正帯電の帯電装置のほうが、より安定なコロナ放電を形成するため、像担持体に対する電位の変動を小さくすることができ、画像を安定させることができる。
請求項5記載の発明によれば、スキャベンジのないクラウド現像のため混色を防止できる。
請求項6記載の発明によれば、接触面積が小さいので転写しやすくなり、多色の現像剤を良好な画像を維持したままで転写することが可能になる。
請求項7記載の発明によれば、部品点数を抑え高速・高画質の多重現像画像形成装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。
図1に多色画像形成装置の主要部を示し、これについて説明する。像担持体としてアルミ素管をベースとした剛体の有機感光体ドラム(以下「感光体ドラム」という)を用いた。この感光体ドラム81の周囲には、クリーニング装置85、帯電装置101、露光装置(図示せず)、現像装置201、帯電装置102、現像装置202、帯電装置103、現像装置203、帯電装置104、現像装置204、転写前帯電装置82の順に配設されている。
各々の現像装置は現像剤として負帯電トナーを現像領域(感光体と対向している領域)にある搬送量で運んでいる。
このときの被転写体は転写紙で、図示しない給紙トレイより転写紙を感光体ドラム81と転写装置83との対向部に向けて給紙する給紙搬送装置(図示なし)と、トナー像を転写された転写紙が感光体ドラム81から分離した後、トナー像を転写紙に定着する定着装置(図示なし)とを備えている。符号84は、クリーニング前帯電装置を示している。
【0014】
上記構成の多色画像形成装置において、矢印方向に回転する感光体ドラム81の表面は、帯電装置で一様に帯電された後、露光装置により画像情報に基づいて変調されたレーザー光線が感光体軸方向にスキャンされて照射され露光される。
これにより、感光体ドラム81上に静電潜像が形成される。感光体ドラム81上に形成された静電潜像は、現像装置201と対向する現像領域において、現像装置201により帯電したトナーを付着させることで現像され、1色目のトナー像となる。
1色目のトナーの付着量は0.3mg/cm2以下が望ましい。付着量が少なくなると、トナーに覆われていない表面の空間が増える。この場合のように1色目のトナーが少ないと2色目現像時の帯電電位で、トナーありとトナー無しの差を小さくすることができるので、より効果的である。
【0015】
トナー付着量を少なくすることの効果は、トナー電位の上昇を抑えることだけではなく、帯電装置のイオンがトナーから回り込んで感光体ドラム81の表面に到達するので、感光体ドラム81の表面電位のチャージが相殺され、トナーのある無しにかかわらずトナー層電位によるコントラスト電位の減少の影響を小さくすることができる。
【0016】
感光体上でトナーを帯電・露光を繰り返して、多層のトナー層を形成するときに、まず、感光体を一様に帯電し、ポテンシャル差を利用して現像装置から感光体に正あるいは負に帯電したトナーを付着させる。
帯電したトナーは、クーロン力で感光体に引き付けられ、付着したときにトナーの持っている電荷によって鏡像力とファンデルワールス力などの非静電的な付着力で感光体に付着している。
マイナス帯電の感光体上で、マイナストナー層を重ねる現在の主流である有機感光体を使用する反転現像の場合は、マイナスに帯電させた感光体にマイナストナーを付着させ、次のトナー層を形成するときには感光体にマイナス帯電をさせる。
このときのトナーは、マイナスであって、帯電時に感光体とともにマイナスの電荷が与えられる。そのため、感光体に付着する鏡像力は増加しトナーは移動しない。
つまりトナーと同極性の電荷が与えられるので、帯電後の露光で電位が小さくなってもトナーの露光時のチリは発生しにくい。
【0017】
ところが、トナーの極性と反対の極性に帯電させる場合には、トナーの電荷をなくす方向に帯電させることになる。そのため、トナーの鏡像力が小さくなり、感光体表面に電位差ができるとトナーが移動してしまう。
しかしながら、トナーと感光体を同極性にした場合、トナーに残った電荷によってトナー電位が形成され、トナー層上の電位が高くなり、コントラスト電位が下がってしまう。
特許文献2や、特許文献3、特許文献4のように帯電電位を高くしてしまうとトナーの電荷が無くなりトナーが移動しやすくなってしまう。像の場合、元々トナーが持っている極性と逆極性に帯電させるので、トナーの電荷が小さくなり感光体との鏡像力が低下する。また帯電装置が多く必要になり、小型化に不利になってしまう。
鏡像力が低下したトナー領域に露光すると、トナーは図20に示したように露光した部分から排除するように電界の力が働く。そのため、露光によって形成される電位が深いほど移動しやすくなる。
【0018】
続いて、感光体ドラム81の表面にトナー像が形成された状態で、同一の感光体に2色目の帯電を行う。
2色目の帯電は、1色目の帯電電位を越えない条件で帯電を行う。例えば、1色目を600Vで帯電させた場合には、2色目の帯電を600V以下にする。1色目の帯電を超えない場合は、トナーの電荷を完全には除電しないので、露光時の逆帯電によるトナー移動を避けることができる。
次に、現像装置202の前に2色目の変調されたレーザー光線が感光体ドラムの軸方向にスキャンされて照射され露光される。これにより、感光体ドラム上に2色目の静電潜像が形成される。
3段目4段目の帯電も、2段目の行程と同様にすることよって、多色(通常はYMCKの4色)の画像を形成することができる。
【0019】
また、各段の帯電装置を1段にすることによって感光体ドラムの周りに必要な帯電装置が少なくなり小型化が可能になる。
続いて、感光体ドラム上に形成された静電潜像は、現像装置202と対向する現像領域において、現像装置202により帯電したトナーを付着させることで現像され、2色目のトナー像となる。
2色目の現像装置の方式は、1色目のトナー像を乱さないために非接触現像でトナー像を形成する。以下3色目、4色目も同様に露光と現像を順次行い、現像はすでに形成されたトナー像を乱さないように非接触現像でトナー像を形成する。
このときに接触現像で、2色目以降の現像を行ってしまうと、現像時に先に像担持体上に形成されているトナー像から接触によってトナーが離脱する、或いは別の場所に、移動してしまうなどの不具合が発生してしまう。
【0020】
また、形成されたトナー層は、帯電工程を数回経たものと受けていない現像剤があるため、転写前帯電装置82によって、トナーの極性を揃えることが望ましい。
一方、転写紙は図示しない給紙搬送装置で給紙・搬送され、所定のタイミングで感光体ドラム81と転写装置83とが対向する転写部に送出・搬送される。そして、転写装置83により、転写紙に感光体ドラム上のトナー像とは逆極性の電荷を付与することで、感光体ドラム上に形成された4色のトナー像が転写紙に転写される。
次いで、転写紙は、感光体ドラムから分離され、図示しない定着装置に送られ、定着装置でトナー像が定着された転写紙が出力される。転写装置でトナー像が転写された後の感光体ドラムの表面は、クリーニング装置85でクリーニングされ、感光体ドラム上に残ったトナーが除去される。
【0021】
帯電装置としてのコロナ帯電器は、トナー層の有無にかかわらず感光体ドラムに与える電位を均す作用をするグリッド電位で制御されたイオンを放出できるDCスコロトロン帯電器が望ましい。
正帯電の感光体ドラムと負帯電のトナーを使用すると各段の帯電装置は正イオン放電式のコロナ帯電器になる。
正イオン放電式のコロナ帯電器を利用すると、負イオン放電式に比べてオゾン発生量が非常に少なく、感光体への悪影響(表面劣化や高湿時の像流れなど)に対して非常に有利であり、且つ機外に排出されてしまうオゾンも非常に少ない。
【0022】
本発明の現像剤に用いられる樹脂はポリエステル、ポリオール、スチレンアクリル等のバインダー樹脂等が使用できる。また離型剤としてのワックス類は、従来公知のものが使用できる。
例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等の低分子量ポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプシュワックス等の合成炭化水素系ワックス、密ロウ、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、モンタンワックス等の天然ワックス類、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の石油ワックス類、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸及び高級脂肪酸の金属塩、高級脂肪酸アミド等及びこれらの各種変性ワックスが挙げられる。
これらは1種又は2種以上を併用して用いることが出きるが、特に脱遊離脂肪酸型カルナウバワックス、モンタンワックス及び酸化ライスワックスを単独又は組み合わせて使用する事により良好な離型性を得ることができる。ここで、カルナウバワックスとしては、微結晶であり、酸価が5以下であり、結着樹脂中に分散した時の粒子径が1μm以下であるものが特に好ましい。
また、モンタンワックスについては、一般に鉱物より精製されたモンタン系ワックスを指し、カルナウバワックス同様、微結晶であり、酸価が5〜14であるものが特に好ましい。また、酸化ライスワックスは、米ぬかワックスを空気酸化したものであり、その酸価が10〜30であるものが特に好ましい。
【0023】
さらに、この時の離型剤の融点が80〜125℃であることが特に好ましい。融点を80℃以上にすることにより耐久性が優れたトナーとすることができ、また、融点を125℃以下とすることにより定着時に速やかに溶融し、確実な離型効果を発揮できる。
これらの離型剤の含有量は、結着樹脂100重量部に対して、通常1〜15重量部、好ましくは、2〜10重量部である。1重量部以下ではオフセット防止効果が不十分であり、15重量部以上では転写性、耐久性等が低下する。
なお、本発明の構成により、表面に露出する離型剤が極めて少なくなることから、離型剤の針入度については特に限定されないが、好ましくは5以下である。
また、本発明で使用されるトナーは、必要に応じて、着色剤、帯電制御剤、磁性体、添加剤等を加えることも可能である。
【0024】
用いられる着色剤としては、公知の染料及び顔料が使用できる。黄色系着色剤としては、例えば、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー、(GR、A、RN、R),ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、ベンズイミダゾロンイエロー、イソインドリノンイエロー等が挙げられる。
赤色系着色剤としては、例えば、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイヤーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッド(F5R、FBB)、ブリリアントカーミン6B、ピグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パ−マネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ等が挙げられる。
【0025】
青色系着色剤としては、例えば、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン等が挙げられる。
黒色系着色剤としては、例えば、カーボンブラック、オイルファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、アニリンブラック等のアジン系色素、金属塩アゾ色素、金属酸化物、複合金属酸化物等が挙げられる。
その他の着色剤としては、チタニア、亜鉛華、リトボン、ニグロシン染料、鉄黒等が挙げられる。
これらの着色剤の含有量は結着樹脂100重量部に対して、通常1〜30重量部の範囲内である。
【0026】
用いられる帯電制御剤としては、まず、トナーを正帯電性に制御するものとして、ニグロシン及びその変成物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレート等の四級アンモニウム塩、ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド、ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレート等のジオルガノスズボレート等が挙げられる。
また、トナーを負帯電性に制御するものとして、サリチル酸金属錯体や塩類、有機ホウ素塩類、カリックスアレン系化合物等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることも可能である。
これらの帯電制御剤の含有量は結着樹脂100重量部に対して、0.5〜8重量部が好ましい。
【0027】
更に、現像剤は、磁性体を含有させ、磁性トナーとしても使用することもできる。
具体的な磁性体としては、マグネタイト、ヘマタイト、フェライト等の酸化鉄、コバルト、ニッケルのような金属あるいはこれら金属とアルミニウム、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金及びその混合物等が挙げられる。
これらの磁性体は平均粒径が0.1〜2μm程度のものが望ましく、このときの磁性体の含有量は、結着樹脂100重量部に対して20〜200重量部、特に好ましくは結着樹脂100重量部に対して40〜150重量部である。
【0028】
用いられる添加剤としては、従来公知のものが使用できるが、具体的には、Si,Ti,Al,Mg,Ca,Sr,Ba,In,Ga,Ni,Mn,W,Fe,Co,Zn,Cr,Mo,Cu,Ag,V,Zr等の酸化物や複合酸化物等が挙げられ、特にSi,Ti,Alの酸化物であるシリカ、チタニア、アルミナが好適に用いられる。
また、このときの添加剤の添加量は、母体粒子100重量部に対して0.5〜1.8重量部であることが好ましく、特に好ましくは、0.7〜1.5重量部である。
添加剤の添加量が、0.5重量部未満であると、トナーの流動性が低下するため、十分な帯電性が得られず、また、転写性や耐熱保存性も不十分となり、また、地汚れやトナー飛散の原因にもなりやすい。
また1.8重量部より多いと、流動性は向上するものの、ビビリ、ブレードめくれ等の感光体クリーニング不良や、トナーから遊離した添加剤による感光体等へのフィルミングが生じやすくなり、クリーニングブレードや感光体等の耐久性が低下し、定着性も悪化する。さらに、細線部におけるトナーのチリが発生しやすくなり、特に、フルカラー画像における細線の出力の場合には、少なくとも2色以上のトナーを重ねる必要があり、付着量が増えるため、特にその傾向が顕著である。
【0029】
さらに、カラートナーとして用いる場合には、添加剤が多く含有されていると、透明シートに形成されたトナー画像をオーバーヘッドプロジェクターで投影した場合に投影像にかげりが生じ、鮮明な投影像が得られにくくなる。
ここで、添加剤の含有量の測定には種々の方法があるが、蛍光X線分析法で求めるのが一般的である。すなわち、添加剤の含有量既知のトナーについて、蛍光X線分析法で検量線を作成し、この検量線を用いて、添加剤の含有量を求めることができる。
さらに、本発明に用いられる添加剤は、必要に応じ、疎水化、流動性向上、帯電性制御等の目的で、表面処理を施されていることが好ましい。
ここで、表面処理に用いる処理剤としては、有機系シラン化合物等が好ましく、例えば、メチルトリクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等のアルキルクロロシラン類、ジメチルジメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン等のアルキルメトキシシラン類、ヘキサメチルジシラザン、シリコーンオイル等が挙げられる。
また、処理方法としては、有機シラン化合物を含有する溶液中に添加剤を漬積し乾燥させる方法、添加剤に有機シラン化合物を含有する溶液を噴霧し乾燥させる方法等があるが、本発明においては、いずれの方法も好適に用いることができる。
現像剤の体積平均粒径の範囲は3〜12μmが好適であるが、本実施例では6μmであり、1200dpi以上の高解像度の画像にも十分対応することが可能である。
【0030】
図2に現像装置の構成の概略を示し、これに基づいて説明する。ここでは、シアン色のトナーで現像する現像装置203を代表して説明する。感光体ドラム81の回転方向における現像装置203の上流側には、マゼンタの画像が存在している。
現像装置203の内部には、感光体ドラム81側から、現像剤搬送手段としての現像ローラ31、現像剤供給手段としての磁気ブラシローラ32、スクリュ状の攪拌・搬送部材33、34が配設されている。
ケーシング内の現像剤(トナー)は、磁性粒子と共に攪拌・搬送部材33、34、磁気ブラシローラ32の回転力で攪拌され、前記磁性粒子との摩擦帯電により電荷が付与される。
このように摩擦帯電されたトナーを含む現像剤の一部が磁気ブラシローラ32上に担持される。磁気ブラシローラ32上の現像剤は、現像剤規制手段35で層厚が規制された後、トナー供給領域で現像ローラ31に接触する。
このトナー供給領域で、磁気ブラシローラ32上の現像剤から一定量のトナーのみが分離されて現像ローラ31に供給され、残りのトナー(現像剤)は、攪拌・搬送部材33、34による撹拌部に戻される。
このときのトナー供給量は、現像ローラ31と磁気ブラシローラ32との間に形成される間隙、回転速度等により制御することができる。
また、磁気ブラシローラ32より供給されたトナーを担持した現像ローラ31は、現像領域で感光体ドラム81に接触するように配設されている。
【0031】
現像ローラ31の軸部には、現像領域に現像電界を形成するための現像バイアスを印加する不図示の電源が接続されている。磁気ブラシローラ32のスリーブには、トナー供給領域にトナー供給用電界を形成するためのトナー供給バイアスを印加する不図示の電源が接続されている。
図3にトナー担持ローラとしての現像ローラ31の概念図を示す。支持基盤上に空間周期的なアルミ蒸着により、ローラ上に電極Aと電極Bを交互に形成し表面を樹脂コートで覆っている。但し、この周期的な電極の構成方法はこれに限ったものではない。
図4に示すように、周期的な電極に交互に、異なる波形の電圧Vaと電圧Vbを印加した時のトナークラウドの状態を図6に示す。VaとVbは図4に示すように時間的に逆向きである(位相が180度ずれている)ようにする。
【0032】
すると、Vaを印加した電極とVbを印加した電極の間に振動電界が形成される。よって、トナーはVaを印加した電極とVbを印加した電極の間をホッピングして、クラウド状態(トナーが浮遊している状態)が形成される。このようにして現像ローラ31上にトナーをクラウド状態として担持できる。
なお、図4ではVaとVbは矩形波として示したが、正弦波で形成される通常の交流電圧であってもよい。また、ここでは周期的な電極を2分割して交互に異なる波形の電圧を印加したが、振動電界が形成されてトナーがホッピングしてクラウド状態を形成できる条件ならば3分割以上に分割してそれぞれに異なる波形の電圧を印加するように構成してもよい。
【0033】
本実施例では、VaとVbには、交流成分がピーク間電圧600[V]、周波数1[kHz]の矩形波で、+200[V]の直流成分を重畳した電圧を印加する。現像領域で潜像へのトナーによる現像のきっかけとなる現像バイアスは、この電圧の時間平均値であり、+200[V]である。
【0034】
以下に、クラウド現像の原理及びその原理を用いた現像装置を説明する。
まず、クラウド現像の原理(実験)について説明する。図5に示すように、ガラス基板1上にアルミニウムを蒸着することによって、p[μm]のピッチで移動方向に配列された複数の電極21、22、23・・・からなる電極バターン2を形成し、その上に保護層3として厚み約3[μm]、体積抵抗率約1010[Ω・cm]の樹脂コートを施したものを形成してトナー担持体としての基板4を構成し、この基板4の上には、帯電させたトナー層5を形成する。
【0035】
このトナー層5は、基板4に対して図示しない2成分現像器によってベタ画像を薄層に現像することによって形成した。トナーはポリエステル系の粒径約6[μm]のものを使い、基板4上に薄層に形成された状態でのトナーの帯電量は約−22[μC/g]であった。この状態のトナー層5に対して、図6に示すように、奇数番目の電極21、23・・・の集合体である奇数番目電極群に交流電源6から交流電圧を印加する一方で、偶数番目の電極22・・・の集合体である偶数番目電極群に前記交流電圧とは逆位相の交流電圧を印加すると、トナー5は奇数番目電極群21、23・・・と偶数番目電極群22・・・を往復するような運動を行う。この現象を以下、フレア(あるいはフレア現象)と呼ぶ。また、フレア現象を引き起こしている状態をフレア状態という。
【0036】
電極21、22、23・・・のピッチがそれぞれ50、100、200及び400[μm]である4種類の基板4を用いて、交流電源6から電極21、22、23・・・間に印加する交流電圧のプラス側ピーク値とマイナス側ピーク値との差分の絶対値であるVmax[V]を何点かに振りながら(変えながら)、フレアの活性度を高速度カメラで観察したところ、図7に示すような結果を得た。因みに、電極21、22、23・・・の幅と、電極21、22、23・・・の隣同士の距離は、電極21、22、23・・・のピッチの1/2となるようにした。
【0037】
ここで、フレアの活性度とは、基板4の表面に張り付いて動かないトナーの様子を観察することで約5段階の官能評価により求められたものである。図7から、Vmaxやpの値に関わらず、Vmax[V]/p[μm]によってフレアの活性度がほぼ一義的に得られることが確認できる。そして、Vmax[V]/p[μm]>1の時にフレアが活性化し始めて、Vmax[V]/p[μm]>3ではフレアが完全に活性化していることが分かる。
【0038】
また、基板4表面の電気的特性の影響を調べるために、基板4の表層3の体積抵抗率を何点か振って(変えて)、同様にフレア活性度を確認した。表層3に用いた材料はシリコーン系樹脂であり、そこに分散されるカーボン微粒子の量を変更することにより、10〜1014[Ω・cm]の体積抵抗率の保護層(厚みは約5[μm])3を形成した。代表的なものとして、電極21、22、23・・・のピッチが50[μm]のものを使って、上述と同様の実験をしたところ、図8に示す結果を得た。
【0039】
この結果から、表層3の体積抵抗率が10〜1012[Ω・cm]の範囲にあることが適正であることが確認できる。これは、体積抵抗率が非常に高い表層3を用いると、飛翔を繰り返すトナーと表層3との摩擦によって基板4の表面が帯電したままになってしまう。そして、この帯電により、基板の表面電位が変動して、現像に寄与するバイアスを不安定にしてしまう。また、逆にあまりに表層3の導電性が高いと、電極21、22、23・・・間で電荷のリーク(ショート)が発生してしまうために、効率的なバイアス効果が得られなくなるからである。表層3は、基板4の表面に蓄積した電荷が電極群21、22、23・・・にうまく逃げられるように、適当な抵抗率(体積抵抗率で10〜1012[Ω・cm])となっている必要がある。なお、この体積抵抗率の最適範囲は、図6に示す装置を具備する実験設備を用いた実験によって得られたものである。図6に示す装置に代えて、現像ローラを備える現像装置の場合には、最適範囲が前述のものと変わってくることもある。このような場合には、その現像装置における体積抵抗率の最適範囲を実験によって調べた上で、適切な体積抵抗率に調整することが望ましい。
【0040】
本発明者らは、基板4の表面の摩擦帯電特性の影響を調べるために、表層3をシリコーン系樹脂及びフッ素系樹脂の2種類として上記と同様なフレア活性度観察を行った。表層3は、カーボン微粒子を微量分散させることにより、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂のいずれのコート層としても体積抵抗率を1011〜1012[Ω・cm]とした。交流電源6から電極21、22、23・・・に交番バイアスを印加してフレア活性度を観察すると、表層3がシリコーン系樹脂の場合は長時間フレア状態を維持していたが、表層3がフッ素系樹脂の場合は直ぐにフレアが消滅しトナーが基板4に張り付いたままとなってしまった。
【0041】
上記観察後に、基板4上のトナーの帯電量を測定したところ、表層3がシリコーン系樹脂の場合には基板4上のトナーの帯電量は初期に比べて若干の低下がみられただけであったが、表層3がフッ素系樹脂の場合には基板4上のトナーの帯電量はトナーの電荷がほとんど無くなっていた。試しに、帯電していないトナーをそれぞれの表層3の表面に擦り付けてみたところ、表層3がシリコーン系樹脂の場合にはトナーが正規の極性の摩擦電荷を得られたのに対し、表層3がフッ素系樹脂の場合にはほとんど摩擦電荷を得られないばかりか若干逆の極性となっていた。つまり、フレア現象は、トナーと基板4の表面とが無数回衝突するプロセスであるため、表層3の材料はトナーの電荷を奪ってしまうものではなく、トナーに正規の電荷を与えられる材質であることが好ましいことが理解できる。これは材料の摩擦帯電系列に習うものであり、表層3の材料としては、例えばガラス系のものや、2成分現像剤のキャリアコートに使用されている材料を用いることが好ましい。
【0042】
次に、図9に示すような系での実験結果について説明する。基板Aはアルミニウムからなる基板7の上に厚み約20[μm]の樹脂層(これは感光体を想定したもの)8を形成することで構成する。基板7は接地し、樹脂層8にはベタ画像相当の0.4[mg/cm]のトナー層9を形成する。このトナー層9は図示しない2成分現像器によって樹脂層8に対してベタ現像をすることで形成したものである。
【0043】
この基板Aに間隔d[μm]で対向するように基板Bを設置する。この基板Bは上記基板4と同様に構成され、表層3は以降の作業によってここに転移するトナーの量を光学的な測定装置(反射光濃度測定器)によって計測しやすいように白色のコート層とする。図7から、Vmax[V]/p[μm]=4であればいずれの条件でも安定なフレアを形成できるので、Vmax[V]/p[μm]=4となる4種の条件を用いて、基板Bへのトナー転移量の現像ギャップ(d[μm])依存性を調べると、図6に示すような結果が得られた。図10のグラフの縦軸は、基板Bにおける表層3の光学濃度増加量を示しており、表層3にトナーが全く付着していない状態では、光学濃度増加量が0となる。同グラフにおいて、光学濃度増加量が0よりも大きくなっている結果が含まれているが、これは基板Aの樹脂層8に付着していたトナー層9における一部のトナーが基板B上に形成される電界の影響を受けてトナー層9から基板Bの表層3に転移したためである。このような転移が発生すると、重ね合わせ現像において、先行する現像時に潜像担持体(例えば感光体)上に形成されたトナー層のトナーが、後続の現像時に後続色の現像装置内に転移して混色を引き起こしてしまう。また、先行する現像で得られた潜像担持体上の画像を乱してしまう。このような混色や画像の乱れを回避し得るのは、同グラフにおいて光学濃度増加量が0となっている条件である。そして、同グラフにより、かかる条件は、ピッチ間距離pが現像ギャップdより小さいこと、すなわちp<dであることがわかる。
【0044】
これは、トナー担持体(基板B)上に形成される電界カーテンの影響が、潜像担持体(基板A)上の静電潜像電場やトナー像に対して及ばない条件であると考えることができる。このような条件のもとでは、例えば1200dpiや2400dpiの孤立ドットをスキャベンジなしで正確に現像できるばかりでなく、上述したように、潜像担持体(基板A)上でのトナー像重ねのような作像プロセスを利用する際にも、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱すこと無く、且つ、現像装置内のトナーの混色を招くことも無く、非常に高画質なトナー像重ねを実現することができる。
【0045】
像担持体に第一のトナー像が形成され、その上に順次に第二のトナー像、第三のトナー像を形成していくような作像プロセスにおいては、先に像担持体上に形成されているトナー像を乱さないような現像方式でなくてはいけない。
非接触一成分現像方式や、特許文献6に記載のトナークラウド現像方式を用いることで、像担持体上に順次に各色トナーを形成していくことは可能であるが、いずれの方式も、像担持体と現像ローラとの間には交番電界が形成されてしまうために、像担持体上に先に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまう。
これによって、像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。これらは高画質画像を得るには致命的であり、この問題を解決する方法としては像担持体と現像ローラとの間には交番電場を形成しない方法で、クラウド現像を実現する必要がある。
【0046】
このようなクラウド現像を実現できる方法としては、特許文献7や特許文献8に記載の方式が有効と考えられるが、これらに関しては、適当な条件の元で利用しないと全く効果が無い。
具体的には、条件が不適切であると、トナーをクラウド化させることができなくなる。更には、トナーをクラウド化させたとしても、重ね合わせ現像においては、先行する現像で得られた潜像担持体上のトナー層中のトナーを後続色の現像装置内に転移させ、画像の乱れや混色を引き起こしてしまう。
【0047】
そこで、本実施形態に係る画像形成装置においては、上述した実験の結果に鑑みて、Vmax[V]/p[μm]>1という条件を具備させている。かかる構成では、トナーを確実にクラウド化せしめることができる。よって、本実施形態によれば、従来技術よりも高画質を実現でき、且つより小型にできる。
本実施形態では、上記現像装置201〜204のうち、少なくとも現像装置202〜204は上記条件を満たすクラウド現像方式の現像装置としている。
【0048】
次に現像ローラ(以下、「トナー担持ローラ」ともいう)31を詳細に説明する。
図11に示すように、トナー担持体としてのトナー担持ローラ31は、回転ローラ形状に形成したもので、移動方向にp[μm]のピッチで配列されて空間周期的に配置された複数の電極41、42、43・・・からなる電極パターンにおける奇数番目の電極の集合体である奇数番目電極群におけるそれぞれの電極に接続された第1共通電極としての電極軸40Aを有している。
また、偶数番目の電極の集合体である偶数番目電極群におけるそれぞれの電極に接続された第2共通電極としての電極軸40Bも有している。電極軸40Aは、トナー担持ローラ31の回転軸線方向の一端側に位置する金属製の回転軸部材が第1共通電極として兼用されたものである。また、電極軸40Bは、トナー担持ローラ31の回転軸線方向の他端側に位置する金属製の回転軸部材が第2共通電極として兼用されたものである。これら電極軸40A、電極軸40Bは、互いに絶縁状態を維持するように配設されており、それぞれ図示しない軸受けに回転自在に支持されている。そして、トナー担持ローラ31の無端移動方向である回転方向の全周に渡って導電性表面を露出させている。
【0049】
それぞれの電極軸40A、40Bには、図示しない電極ブラシ等の摺擦接点部材によって交流電源からバイアス電位として交流電圧が印加される。この交流電圧は、図12に示されるように、上述の奇数番目電極群を束ねた電極軸(40A)に印加される矩形波状のA相パルス電圧と、偶数番目電極群を束ねた電極軸(40B)に印加される矩形波状のB相パルス電圧とからなる。これらA相パルス電圧、B相パルス電圧は、図示のように互いに逆位相になっており、単位時間あたりにおける平均電位は互いに同じである。なお、図13に示すように、一方の電極軸に周波数fの矩形波状のパルス電圧を印加する一方で、もう一方の電極軸には、前記パルス電圧の平均電位となる直流電圧を印加しても、逆位相のパルス電圧を採用する場合と同様に、フレア現象を生起せしめることが可能である。
【0050】
トナー担持ローラ31は、図14(a)に示すように、絶縁体であるアクリル樹脂の円筒51に軸穴52を設け、図14(b)に示すようにステンレス製の電極軸40A、40Bを円筒51の軸穴52に圧入して電極軸40A、40Bを奇数番目電極群41、43・・・、偶数番目電極群42・・・にそれぞれ接続する。次に、図15(a)〜(e)に示す各工程でパターン電極を形成する。図15はトナー担持ローラ31の表面を回転軸に沿った方向に見た図である。図15(a)に示す工程では、図14に示す工程よって得られたローラ51の表面を外周旋削によって平滑に仕上げる。図15(b)に示す工程では、溝のピッチが100[μm]、溝幅が50[μm]となるように溝53の切削を行う。図15(c)に示す工程では、溝切削を行ったローラ51に無電解ニッケル54のメッキを施し、図15(d)に示す工程では、無電解ニッケル54のメッキを施したローラ31の外周を旋削して不要な導体膜を取り除く。この時点で電極41、42、43・・・が溝53の部分に互いに絶縁して形成される。その後、ローラ51にシリコーン系樹脂をコーティングすることでローラ51の表面を平滑にし、同時に表面保護層(厚み約5[μm]、体積抵抗率約1010[Ω・cm])55を形成してトナー担持ローラ31を製作した。
図16は、トナー担持ローラ31を平面状に展開した状態を示す平面図である。
【0051】
以下にトナーの円形度について説明する。
像担持体上には現像剤層が重なっているため多く付着しており、その現像剤を次の作像にかかるまでに転写する必要がある。そのためには、移動しやすい円形度が大きく移動しやすい現像剤を使いたい。
従来から使われている、円形度が小さい粉砕法で形成される現像剤は表面の凸凹が大きく不定形であるので、感光体との接触面積が大きくなり、非静電的な力が大きくなるため移動しにくいが、重合トナーなどの円形度の高い現像剤は、感光体との接触面積が小さくなり移動しやすい。
使用するトナーはフロー式粒子像測定器(ホソカワミクロン社製)で計測した円形度が(>0.96)を満たすトナーが望ましい。使用するトナーの円形度が(>0.96)になると搬送基板上のトナーの移動が安定し、ピッチムラの発生のない画像が形成できる。円形度がそれ以下のトナーでは、搬送速度が大きくなると(感光体線速150mm/secを超える)と、搬送基板に対する接触面がトナーによって変化してしまい非静電的付着力に差ができ均一な搬送が困難になり、均一な画像が得られなくなる。
【0052】
画像ムラのランクと感光体線速、球形度の調査結果を図17に示した。ここで、ランク4以上を画像ムラのない良好な画像と判断している。
ただし、逆に移動しやすいために帯電や書き込みによる電位に変動(電荷量が下がることによる)によって、画像部にあった現像剤が別の場所に移動しやすくなるが、先に示したように次段の帯電電位が、前段の帯電電位を超えないことによって、必要な現像剤像のままの画像転写が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の要部を示す図である。
【図2】現像装置の概要構成図である。
【図3】クラウド現像を行うための現像剤担持体としての現像ローラの概念図である。
【図4】現像剤担持体に印加する電圧の波形図である。
【図5】本発明に関する実験に用いた系を示す断面図である。
【図6】同系のフレア状態を示す断面図である。
【図7】同系の実験結果であるVmax[V]/p[μm]とフレア活性度との関係を示す特性図である。
【図8】同系の実験結果である表層の体積抵抗率とフレア活性度との関係を示す特性図である。
【図9】本発明に関する実験に用いた系を示す断面図である。
【図10】同系の実験結果である現像ギャップと基板A上の光学濃度増加分との関係を示す特性図である。
【図11】本発明の実施形態における現像剤担持体を示す斜視図である。
【図12】現像剤担持体の電極に印加されるA相パルス電圧及びB相パルス電圧の特性を示す波形図である。
【図13】現像剤担持体の電極に印加されるパルス電圧及び平均電圧の特性を示す波形図である。
【図14】同現像剤担持体の製造工程の一部を示す断面図である。
【図15】同現像剤担持体の製造工程の他の一部を示す断面図である。
【図16】同現像剤担持体を平面状に展開した状態を示す展開図である。
【図17】画像ムラのランクとトナーの円形度の関係を示す特性図である。
【図18】感光体と現像剤の極性が同じ場合の多重現像方式の問題を説明するための模式図である。
【図19】感光体と現像剤の極性が異なる場合の多重現像方式の原理を示す模式図である。
【図20】感光体と現像剤の極性が異なる場合の多重現像方式の問題を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0054】
81 像担持体としての感光体ドラム
31 現像剤担持体としての現像ローラ
101、102、103、104 帯電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体を均一に第1の帯電電位に帯電し露光することで第1の静電潜像を形成し、第1の現像剤を担持した現像剤担持体を前記像担持体に対向させて第1の静電潜像の現像を行い、続いて第1のトナー像を担持したまま、前記像担持体を第2の帯電電位で帯電し露光することで第2の静電潜像を形成し、第2の現像剤を担持した現像剤担持体を前記像担持体に対向させて非接触現像法を用いて第2の静電潜像の現像を行い、前記像担持体に2色以上の現像剤を担持させることを順次、数回繰り返し多色の現像剤像を形成した後に、転写、定着工程を経て画像を形成する多色画像形成方法において、
前記像担持体の極性と現像剤の極性が互いに反対になっており、次段の帯電電位が前段の帯電電位を超えないこと特徴とする多色画像形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の多色画像形成方法において、
第2段以降の帯電を1つの帯電装置で行うことを特徴とする多色画像形成方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の多色画像形成方法において、
前記帯電装置が、DCスコロトロン帯電装置であることを特徴とする多色画像形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の多色画像形成方法において、
前記像担持体が正帯電、現像剤が負帯電であることを特徴とする多色画像形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の多色画像形成方法において、
2段目以降の現像が、フレア現像装置によりなされることを特徴とする多色画像形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の多色画像形成方法において、
現像剤の円形度が、0.96以上であることを特徴とする多色画像形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の多色画像形成方法を実施可能な画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−39442(P2010−39442A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205800(P2008−205800)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】