説明

寸法測定方法

【課題】干渉計の部品、構成の変更や大掛かりな補正をすることなく、被測定物の複数の被測定個所の寸法を正確に測定できる寸法測定方法を提供する。
【解決手段】光波干渉を用いて、予備値が既知の被測定物の相対向する端面間の寸法を、複数の被測定個所において測定する寸法測定方法であって、平行光線を直進光と参照光とに2分割し、直進光の光路中に、直進光の波面に設定した測定位置と複数の被測定個所のうちの1つとが重なるように被測定物を挿入する設置過程と、直進光が被測定物に反射した反射光を参照光と干渉させ、得られた干渉縞を基に被測定個所の寸法を求める測定過程と、を複数の被測定個所の全てについて実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光波干渉を用いた寸法測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブロックゲージ等の端度器は、長さの測定の基準として用いられる精度のよい標準器であり、数個を互いに密着すると、例えば、1〜10μm単位で任意の寸法を作り出すことができるので、例えば、工場用長さ標準器として広く用いられている。
このような精度のよいゲージの検査には、より高い精度が要求され、例えば、寸法を高分解能、非接触で測定できることから、光波干渉計を用いた測定方法が広く用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ブロックゲージとリンギングしているベースプレートを傾けて、複数の傾き角における干渉縞を測定し、傾き角、および、ブロックゲージからの反射光による干渉縞とベースプレートからの反射光による干渉縞との位相差に基づいて、ブロックゲージの寸法を求める光波干渉測定方法が開示されている。
特許文献1に記載の光波干渉測定方法によれば、予備値を求めることなくブロックゲージの寸法を測定することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平7−120210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ブロックゲージは、両測定面が互いに平行で、かつ両測定面の距離が任意の寸法に仕上げられた端度器である。しかし、実際には、位置によっては寸法の大きいところ、小さいところが存在する。
そこで、このような寸法差を表す値として、最大寸法と中央寸法との差f、中央寸法と最小寸法との差fが規定されている。
【0006】
図8は、一般的なブロックゲージ2の側面を誇張して示したものである。
図8において、lは、ブロックゲージ2の測定面2Aの中央と測定面2Bの中央との間の寸法を表し、lmax、lminはそれぞれ測定面間距離の最大値、最小値を表す。
ここで、f、fは、以下の式(1)および式(2)で表される。
=lmax−l …(1)
=l−lmin …(2)
【0007】
例えば、EAL(European cooperation for Accreditation of Laboratories)のEAL−G21規格によれば、ブロックゲージの中央および四隅の寸法を測定し、中央の寸法をl、中央および四隅の寸法の最大値、最小値をそれぞれlmax、lminとしてf、fを算出する。
【0008】
ここで、特許文献1に記載のような従来の寸法測定方法で測定できるのは、ブロックゲージの測定面のうち、予め設定した所定の位置(測定光の波面に設定した測定位置)の寸法のみである。つまり、多くの場合、ブロックゲージの中央の寸法lのみが求まることになる。
そこで、従来は、干渉縞に基づいて、測定面中央に対する他の部分の高さ情報を求め(形状測定)、この高さ情報と中央の寸法lとを足し合わせて、中央以外の部分の寸法を算出していた。
【0009】
しかし、このような寸法測定方法では、形状測定において、測定光の波面の歪みによる誤差が避けられないという問題点がある。
光波干渉計は、参照鏡、ハーフミラー、コリメータレンズ、ピンホール等、多数の光学部品を備える。これらの光学部品の幾何形状が理想形状でなかったり、材料が不均一であったりすると、その部品を測定光が透過もしくは反射する際に波面が歪む原因となる。
測定光の波面の歪みは、干渉縞に影響を与える。よって、形状測定によって得られた高さ情報は、波面の歪みによる誤差が含まれた不正確なものとなる。
【0010】
波面の歪みを防止する方法としては、光学部品の形状、材質等の品質を向上することや、光学部品の部品数を減らすことが挙げられる。
しかし、前者では部品のコストが増大し、後者では干渉計の構成を変更できない場合に対応できない。
また、幾何形状の絶対値を補正することによって形状測定の誤差を取り除く方法もあるが、基準となる平面の校正と、校正データの加工が必要な大掛かりな補正となり、コストが増大するという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、干渉計の部品、構成の変更や大掛かりな補正をすることなく、被測定物の複数の被測定個所の寸法を正確に測定できる寸法測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の寸法測定方法は、光波干渉を用いて、予備値が既知の被測定物の相対向する端面間の寸法を、複数の被測定個所において測定する寸法測定方法であって、平行光線を直進光と参照光とに2分割し、前記直進光の光路中に、前記直進光の波面に設定した測定位置と前記複数の被測定個所のうちの1つとが重なるように前記被測定物を挿入する設置過程と、前記直進光が前記被測定物に反射した反射光を前記参照光と干渉させ、得られた干渉縞を基に前記被測定個所の寸法を求める測定過程と、を前記複数の被測定個所の全てについて実施することを特徴とする。
【0013】
このような本発明では、設置過程において、直進光の波面に設定した測定位置と複数の被測定個所のうちの1つとが重なるように被測定物を設置し、測定過程において、その被測定個所の寸法のみを測定する。
そして、設置過程と測定過程を全ての被測定個所について実施して、各被測定個所の寸法を測定する。
これによれば、全ての被測定個所について、直進光の波面の同一位置(測定位置)による測定が実施される。したがって、各被測定部間の相対的な差について、波面の歪み等による誤差を排除することができる。
よって、干渉計の部品、構成の変更や大掛かりな補正をすることなく、複数の被測定個所の寸法を正確に測定することができる。
【0014】
本発明の寸法測定方法は、光波干渉を用いて、予備値が既知の被測定物の相対向する端面間の寸法を、複数の被測定個所において測定する寸法測定方法であって、前記被測定物と略同一の断面形状を有する基準測定物を用いて補正値を算出する補正値算出過程と、前記被測定物の前記複数の被測定個所の寸法を測定する実測定過程と、前記補正値を用いて前記実測定過程で測定した前記複数の被測定個所の寸法を補正する補正過程と、を備え、前記補正値算出過程は、平行光線を直進光と参照光とに2分割し、前記直進光の光路中に、前記直進光の波面に設定した測定位置と前記複数の被測定個所のうちの1つとが重なるように前記基準測定物を挿入し、前記直進光が前記基準測定物に反射した反射光を前記参照光と干渉させ、得られた干渉縞を基に前記被測定個所の寸法を求める寸法測定過程、および、前記干渉縞に基づいて前記被測定個所に対する他の前記被測定個所の高さ情報を求め、前記被測定個所の寸法と前記他の被測定個所の高さ情報とを足し合わせて前記他の被測定個所の寸法を求める形状測定過程、を有する一括測定過程と、前記平行光線を直進光と参照光とに2分割し、前記直進光の光路中に、前記直進光の前記測定位置と前記他の被測定個所のうちの1つとが重なるように前記基準測定物を挿入する設置過程、および、前記直進光が前記基準測定物に反射した前記反射光を前記参照光と干渉させ、得られた前記干渉縞を基に前記被測定個所の寸法を求める測定過程、を前記他の被測定個所の全てについて実施する個別測定過程と、前記一括測定過程において測定した前記複数の被測定個所の寸法と、前記個別測定過程において測定した前記複数の被測定個所の寸法との差を補正値として算出する算出過程と、を有し、前記実測定過程は、前記一括測定過程を前記被測定物について実施し、前記補正過程は、前記実測定過程で測定した前記複数の被測定個所の寸法から前記補正値を差し引くことを特徴とする。
【0015】
このような本発明では、一括測定過程の寸法測定過程において、干渉縞に基づいて1つの被測定個所の寸法を算出する。また、形状測定過程において、干渉縞に基づいてこの被測定個所に対する他の被測定個所の高さ情報を求め、この被測定個所の寸法と他の被測定個所の高さ情報とを足し合わせて、他の被測定個所の寸法を算出する。
ここで、複数の被測定個所は、それぞれ直進光の波面の異なる部分に位置しているので、一括測定過程で算出した他の被測定個所の寸法には、直進光の波面の歪み等による誤差が含まれるおそれがある。
【0016】
一方、個別測定過程においては、全ての被測定個所について、直進光の波面の同一位置(測定位置)による測定が実施されるので、各被測定部間の相対的な差について、直進光の波面の歪み等による誤差を排除した寸法が測定される。
つまり、算出過程において補正値として算出する、一括測定過程において測定した複数の被測定個所の寸法と、個別測定過程において測定した複数の被測定個所の寸法との差は、直進光の波面の歪み等による形状測定の誤差に対応する。
したがって、補正過程において、実測定過程で測定した被測定物の被測定個所の寸法から算出過程で算出した補正値を差し引けば、波面の歪み等による誤差を排除した正確な寸法を測定することができる。
【0017】
また、一度補正値を算出しておけば、以降は被測定物について一括測定過程を実施するだけで、複数の被測定個所についての正確な寸法を測定することができる。設置過程を繰り返すことなく、複数の被測定個所の測定ができるので、測定にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0018】
なお、一括測定過程の寸法測定過程で寸法を測定した被測定個所については、個別測定過程の測定過程を実施しても同じ寸法が求まると考えられる。したがって、この被測定個所の補正値はゼロとしてよく、測定過程を実施する必要はない。
【0019】
本発明の寸法測定方法において、前記測定過程では、互いに逆方向に放射され前記被測定物よりも径の大きい第1平行光線と第2平行光線とを用い、前記第1平行光線および前記第2平行光線のそれぞれを、前記被測定物に向かう第1直進光および第2直進光と、残りの部分である第1参照光および第2参照光とに分割し、前記被測定物の脇を通過してきた前記第2直進光と前記第1参照光とを重ね合わせて第1基準干渉縞を得、前記第1参照光が前記被測定物に反射した第1反射光と前記第1参照光とを重ね合わせて第1測定干渉縞を得、前記被測定物の脇を通過してきた前記第1直進光と前記第2参照光とを重ね合わせて第2基準干渉縞を得、前記第2参照光が前記被測定物に反射した第2反射光と前記第2参照光とを重ね合わせて第2測定干渉縞を得、前記被測定物の相対向する端面間の予備値、ならびに、前記第1基準干渉縞と前記第1測定干渉縞との位相差、および、前記第2基準干渉縞と前記第2測定干渉縞との位相差に基づいて、前記被測定物の前記被測定個所の寸法を求めることが望ましい。
【0020】
このような2つの平行光線を用いた寸法測定では、ブロックゲージ等の被測定物とベースプレートとのリンギングが不要となるため、測定誤差を大幅に低減することができる。
しかし、平行光線が2つに増えるとともに光学部品の数が増加するので、波面の歪み等による誤差が大きくなるおそれがある。
これに対し、本願発明では、全ての被測定個所について、第1および第2直進光の波面の同一位置(測定位置)による測定が実施されるので、各被測定部間の相対的な差について、波面の歪み等による誤差を排除することができる。または、簡易な補正によって、波面の歪み等による誤差を排除することができる。
したがって、複数の被測定個所の寸法をより正確に測定することができる。
【0021】
本発明の寸法測定方法において、前記被測定物は、ブロックゲージであり、前記複数の被測定個所は、前記ブロックゲージの中央および四隅であることが望ましい。
これにより、EAL−G21規格に基づいてf、fを正確に算出することができる。
【0022】
本発明の寸法測定方法において、前記被測定物は、ブロックゲージであり、前記複数の被測定個所は、前記ブロックゲージの中央および四隅であり、前記基準測定物は、中央および四隅に被測定個所の表示を有する前記ブロックゲージであることが望ましい。
これにより、個別測定過程の設置過程において、被測定個所の表示を目印として容易に位置合わせをすることができる。
【0023】
本発明の寸法測定方法において、前記複数の被測定個所には、前記ブロックゲージの中央が含まれ、前記ブロックゲージの前記複数の被測定個所の最大寸法と前記ブロックゲージの中央の寸法との差であるfおよび前記ブロックゲージの中央の寸法と前記ブロックゲージの前記複数の被測定個所の最小寸法との差であるfを算出する規格値算出過程を備えることが好ましい。
これにより、寸法差を表す規格値としてのf、fを正確に算出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
[第1実施形態]
本実施形態の寸法測定方法は、光波干渉を用いて、予備値が既知の被測定物の相対向する端面間の寸法を、複数の被測定個所において測定するものである。
ここで、被測定物は、ブロックゲージであり、複数の被測定個所は、ブロックゲージの中央および四隅である。
本実施形態の寸法測定方法は、被測定物と略同一の断面形状を有する基準測定物を用いて補正値を算出する補正値算出過程と、被測定物の複数の被測定個所の寸法を測定する実測定過程と、補正値を用いて実測定過程で測定した複数の被測定個所の寸法を補正する補正過程と、を備える。
本実施形態の寸法測定方法に用いる測長装置および各過程の実施について、以下説明する。
【0026】
[測長装置]
図1に、本実施形態の寸法測定方法に用いる測長装置1の概略構成を示す。
測長装置1は、1つの光照射手段11と、第1ハーフミラー121と、ブロックゲージ2の測長軸と一致した光軸を有し、かつ所定離隔距離をおいて配置された第2ハーフミラー122および第3ハーフミラー123を備える。
また、第2ハーフミラー122、第3ハーフミラー123でそれぞれ形成される干渉光の位相差を観察可能な第1スクリーン131および第2スクリーン132を備える。
また、同図に示すように第1参照鏡124、および第2参照鏡125を光学系構成部材として備える。
このように第1ハーフミラー121、第2ハーフミラー122、第3ハーフミラー123により、環状の干渉計12を構成している。
【0027】
光照射手段11は、単一波長レーザ111と、コリメートレンズ112と、反射鏡113を備える。そして、単一波長レーザ111から出射された所定波長λを持つレーザ光は、コリメートレンズ112により必要な大きさのビーム径にコリメートされ、レーザ光110として、反射鏡113を介して第1ハーフミラー121に入射される。
このレーザ光110のビーム径の大きさは、レーザ光110の一部がブロックゲージ2の端部に入射し、かつその残りがブロックゲージ2の脇部を通過して、第2ハーフミラー122、あるいは第3ハーフミラー123に入射することのできるように、ブロックゲージ2の測定面(左端面2A、右端面2B)より大きい。
【0028】
第1ハーフミラー121は、反射鏡113からのレーザ光110を図中、時計回り光路と半時計回り光路とに2分割し、各分割光を環状に構築された干渉計12に入射させる。
すなわち、一方の分割光である第1平行光線を第2ハーフミラー122に入射させ、他方の分割光である第2平行光線を第3ハーフミラー123に入射させる。
そして、第2ハーフミラー122は、第1平行光線を第1直進光と第1参照光とに2分割し、第1直進光をブロックゲージ2の測長方向の、図中右方に向けて出射し、第1参照光を第1参照鏡124に入射させる。第2ハーフミラー122によりブロックゲージ2の測長方向の、図中右方に向けて照射された第1直進光の一部は、ブロックゲージ2の左端面2Aに入射する。その残りの光は、ブロックゲージ2の左端面2Aに入射することなく、その脇を通過して、第3ハーフミラー123に入射する。
【0029】
一方、第2平行光線は、第1ハーフミラー121から第3ハーフミラー123に入射する。この第3ハーフミラー123は、第2平行光線を第2直進光と第2参照光とに2分割し、第2直進光をブロックゲージ2の測長方向の、図中左方に向けて照射し、第2参照光を第2参照鏡125に入射させる。第3ハーフミラー123によりブロックゲージ2の図中左方に向けて出射された第2直進光の一部は、ブロックゲージ2の右端面2Bに入射する。その残りの光はブロックゲージ2の右端面2Bに入射することなくその脇を通過して、第2ハーフミラー122に入射する。
【0030】
第1スクリーン131では、第1基準干渉縞と第1測定干渉縞との位相差が観測される。
すなわち、第2ハーフミラー122により第1参照鏡124に向けて出射された光は、第1参照鏡124で反射し、再度第2ハーフミラー122に戻る。
第2ハーフミラー122では、ブロックゲージ2の脇を通過してきた第3ハーフミラー123からの第2直進光(光路L)と第1参照鏡124からの第1参照光とを重ね合わせて干渉光が得られる。この干渉光は、第1スクリーン131で第1基準干渉縞として観測される。この観測と同時に、この第2ハーフミラー122では、第2ハーフミラー122によりブロックゲージ2の左端面2Aに向けて出射され、該左端面2Aで反射し、再度第2ハーフミラー122に戻った第1反射光(光路L)と、第1参照鏡124からの第1参照光とを重ね合わせて干渉光が得られる。この干渉光は第1スクリーン131に入射され、第1スクリーン131で第1測定干渉縞として、第1基準干渉縞と同時に観測される。
【0031】
一方、第2スクリーン132では、第2基準干渉縞と第2測定干渉縞との位相差が観測される。
すなわち、第3ハーフミラー123により、第2参照鏡125に向けて照射された第2参照光は、第2参照鏡125で反射し、再度第3ハーフミラー123に戻る。
第3ハーフミラー123では、ブロックゲージ2の脇を通過してきた第2ハーフミラー122からの第1直進光(光路L)と第2参照鏡125からの第2参照光を重ね合わせて干渉光が得られる。この干渉光は、第2スクリーン132に入射され、第2スクリーン132で第2基準干渉縞として観測される。この観測と同時に、この第3ハーフミラー123では、第3ハーフミラー123によりブロックゲージ2の右端面2Bに向けて出射され、該右端面2Bで反射し、再度第3ハーフミラー123に戻った第2反射光(光路L)と、第2参照鏡125からの第2参照光とを重ね合わせて干渉光が得られる。この干渉光は第2スクリーン132に入射され、第2スクリーン132で第2測定干渉縞として、第2基準干渉縞と同時に観測される。
【0032】
[寸法の測定]
以下、測定過程において、ブロックゲージ2の予備値と、第1スクリーン131での各干渉縞及び第2スクリーン132での各干渉縞とに基づいて、ブロックゲージ2の被測定個所の寸法Lを求める方法について説明する。
【0033】
測長装置1は、図1に示すように、第1スクリーン131の後段に第1読取手段141を備えている。そして、第1読取手段141は、図2(A)に示すように第1スクリーン131で観察された第1基準干渉縞211と第1測定干渉縞221との位相差(b/a)を読取る。その読取結果はコンピュータ15の演算手段151に入力され、位相差情報(ε−ε)として測定データ記憶部152に記憶される。
【0034】
また、測長装置1は、図1に示すように、第2スクリーン132の後段に第2読取手段142を備えている。そして、第2読取手段142は、図2(B)に示すように第2スクリーン132で観察された第2基準干渉縞212と第2測定干渉縞222との位相差(b/a)を読取る。その読取結果はコンピュータ15の演算手段151に入力され、位相差情報(ε−ε)として測定データ記憶部152に記憶される。
【0035】
コンピュータ15は、演算情報記憶部153を備える。
演算情報記憶部153には、ブロックゲージ2の予備値の情報や、後述する合致法を行うためのプログラム等が予め格納されている。
また、演算情報記憶部153には、第1ハーフミラー121と第2ハーフミラー122間の光路長a、第2ハーフミラー122とブロックゲージ2の左端面2A間の光路長b、第1ハーフミラー121と第3ハーフミラー123間の光路長c、第3ハーフミラー123とブロックゲージ2の右端面2B間の光路長dが格納されている。
【0036】
演算手段151は、演算情報記憶部153に格納してあるブロックゲージ2の予備値の情報等と、測定データ記憶部152に格納してある位相差情報(ε−ε)、(ε−ε)に、例えば、合致法を用いてブロックゲージ2の測長方向の相対向する端面間の寸法Lを以下のように求める。
【0037】
すなわち、以下の光路L〜Lの光路長l〜lは、上述の光路長a〜dを用いて以下の式(3)〜式(6)のように表せる。
【0038】
:第1ハーフミラー121から第2ハーフミラー122、ブロックゲージ2の左端面2A、第2ハーフミラー122までの光路
:第1ハーフミラー121から第3ハーフミラー123、ブロックゲージ2の脇、第2ハーフミラー122までの光路
:第1ハーフミラー121から第3ハーフミラー123、ブロックゲージ2の右端面2B、第3ハーフミラー123までの光路
:第1ハーフミラー121から第2ハーフミラー122、ブロックゲージ2の脇、第3ハーフミラー123までの光路
【0039】
=a+2b …(3)
=b+c+d+L …(4)
=c+2d …(5)
=a+b+d+L …(6)
【0040】
式(3)および式(4)より、以下の式(7)が成り立つ。
−l =(b+c+d+L)−(a+2b) …(7)
また、式(5)および式(6)より、以下の式(8)が成り立つ。
−l =(a+b+d+L)−(c+2d) …(8)
【0041】
さらに、式(7)および式(8)から、以下の式(9)が成り立つ。
−l+l−l=(a+2b+c+2d+2L)−(a+2b+c+2d)=2L …(9)
これを変形すると、ブロックゲージ2の測長方向の相対向する左端面2Aと右端面2B間の寸法Lは、以下の式(10)で表せる。
=1/2{(l−l)+(l−l)} …(10)
【0042】
また、上述の光路L〜Lの光路長l〜lは、以下のλ、N〜N、ε〜εを用いて、以下の式(11)〜(14)で表せる。
=λ(N+ε) …(11)
=λ(N+ε) …(12)
=λ(N+ε) …(13)
=λ(N+ε) …(14)
【0043】
λ:レーザ光の波長(測定波長)
〜N:各光路長Lを波長λで割ったときの商の自然数
ε〜ε:各光路長Lを波長λで割ったときの商の端数(位相)
【0044】
式(10)に、式(11)〜(14)を代入すると、下記の式(15)が成り立つ。
=(1/2)・(l−l+l−l
=(1/2)・{λ(N+ε)−λ(N+ε)+λ(N+ε)−λ(N+ε)}
=(λ/2)・{N−N+N−N+(ε−ε)+(ε−ε)} …(15)
【0045】
ここで、(ε−ε)は、第1スクリーン131で観察された各干渉縞のずれ(b/a)より求めた位相差情報であり、(ε−ε)は、第2スクリーン132で観察された各干渉縞のずれ(b/a)より求めた位相差情報である。
したがって、測定データ記憶部152に格納して位相差情報(ε−ε)および位相差情報(ε−ε)と、既知の測定波長λと、ブロックゲージ2の予備値を用いて、式(15)によりブロックゲージ2の被測定部の寸法Lを求めることができる。
【0046】
[補正値算出過程]
補正値算出過程は、一括測定過程と、個別測定過程と、算出過程とを有する。
【0047】
[一括測定過程]
一括測定過程では、寸法測定過程および形状測定過程により、基準測定物である基準ゲージの、複数の被測定個所の寸法を求める。
寸法測定過程では、第1および第2直進光の波面に設定した測定位置と複数の被測定個所のうちの1つとが重なるように基準ゲージを挿入し、得られた干渉縞を基に被測定個所の寸法を求める。
【0048】
図3は、寸法測定過程における基準ゲージ3を測定面から見た図である。
基準ゲージ3は、ブロックゲージ2と略同一の断面形状を有し、その左端面3Aの中央および四隅に被測定個所の表示31〜35を有する。
図3に示すように、基準ゲージ3は、測長装置1のゲージ設置部101に、左端面3Aを紙面手前側に向けて載置されている。ゲージ設置部101は、ステージ102に設けられた図示しない駆動機構によって三次元方向および回転方向に駆動可能に構成されている。
【0049】
図3中、114は、第1および第2直進光のビーム径、すなわち干渉領域を表す。第1直進光は、紙面手前側から奥側に向かって、第2直進光は、紙面奥側から紙面手前側に向かって照射される。
本実施形態では、干渉領域の中心114Cを測定位置としており、図3では、測定位置と基準ゲージ3の表示31を合わせることにより、測定位置と被測定個所のうちの1つである基準ゲージ3の中央とが重なるように、基準ゲージ3がゲージ設置部101に設置されている。
【0050】
この状態において、上述した寸法の測定が実施され、基準ゲージ3の中央の寸法ls1が求められる。
【0051】
形状測定過程では、第1測定干渉縞221および第2測定干渉縞222に基づいて基準ゲージ3の中央に対する四隅の高さ情報h12〜h15およびh22〜h25を求め、基準ゲージ3の中央の寸法ls1と四隅の高さ情報h12〜h15およびh22〜h25とを足し合わせて四隅の寸法ls2〜ls5を求める。
s2=ls1+h12+h22 …(16)
s3=ls1+h13+h23 …(17)
s4=ls1+h14+h24 …(18)
s5=ls1+h15+h25 …(19)
このようにして演算手段151が算出した寸法ls2〜ls5は、測定データ記憶部152に記憶される。
【0052】
[個別測定過程]
個別測定過程では、設置過程および測定過程を、基準ゲージ3の四隅について実施し、その寸法を求める。
【0053】
設置過程では、第1および第2直進光の光路中に、測定位置と基準ゲージ3の四隅のうちの1つとが重なるように基準ゲージ3を挿入する。
図4〜図7に、基準ゲージ3の四隅それぞれについて設置過程を実施した場合に基準ゲージ3を測定面から見た図を示す。
図4〜図7では、位置あわせ部材4を用いて基準ゲージ3を持ち上げ、測定位置(干渉領域の中心114C)と基準ゲージ3の表示32〜35のいずれかを合わせることにより、測定位置と基準ゲージ3の四隅のうちの1つとが重なるように、基準ゲージ3が設置されている。
【0054】
測定過程では、図4〜図7のいずれかの配置となった状態で、上述した寸法の測定を実施する。これにより、基準ゲージ3の四隅の寸法lr2〜lr5が求められる。
四隅の寸法lr2〜lr5は、測定データ記憶部152に記憶される。
【0055】
[算出過程]
算出過程では、演算手段151が、測定データ記憶部152に記憶されたデータを読み込み、一括測定過程において測定した基準ゲージ3の四隅の寸法ls2〜ls5と、個別測定過程において測定した基準ゲージ3の四隅の寸法lr2〜lr5との差を補正値C〜Cとして算出する。
=Is2−Ir2 …(20)
=Is3−Ir3 …(21)
=Is4−Ir4 …(22)
=Is5−Ir5 …(23)
このようにして演算手段151が算出した補正値C〜Cは、測定データ記憶部152に記憶される。
なお、一括測定過程の寸法測定過程で寸法ls1を測定した基準ゲージ3の中央については、個別測定過程の測定過程を実施しても同じ寸法ls1が求まると考えられる。したがって、この被測定個所の補正値Cはゼロとしてよく、測定過程を実施する必要はない。
【0056】
[実測定過程]
実測定過程では、前述の一括測定過程と同様の操作を被測定物であるブロックゲージ2について実施し、ブロックゲージ2の中央および四隅の寸法lw1〜lw5を求める。測定した寸法lw1〜lw5は、測定データ記憶部152に記憶される。
【0057】
[補正過程]
補正過程では、演算手段151が、測定データ記憶部152に記憶されたデータを読み込み、実測定過程で測定したブロックゲージ2の四隅の寸法lw2〜lw5から補正値C〜Cを差し引いて、補正寸法lcw2〜lcw5を算出する。
cw2=lw2−C …(24)
cw3=lw3−C …(25)
cw4=lw4−C …(26)
cw5=lw5−C …(27)
このようにして演算手段151が算出した補正寸法lcw2〜lcw5は、最終的な寸法として測定データ記憶部152に記憶される。
なお、上述の通り、中央の補正値Cはゼロなので、補正過程を実施する必要はなく、lw1が最終的な寸法として測定データ記憶部152に記憶される。
【0058】
[規格値算出過程(f、fの算出)]
実測定過程で測定したブロックゲージ2の中央の寸法lw1をlとし、四隅の補正寸法lcw2〜lcw5の最大値、最小値をそれぞれlmax、lminとしてf、fを算出する。
=lmax−lw1 …(28)
=lw1−lmin …(29)
ここで、四隅の補正寸法lcwiは、ブロックゲージ2の中央の寸法lw1と、ブロックゲージ2の中央に対する高さ情報hと、補正値Cとにより、下記式で表される。
cwi=lw1+h−C
したがって、fおよびfは、それぞれ、(h−C)の最大値および(h−C)の最小値の符号を反転したものとなる。
このため、fおよびfには、形状誤差が含まれている可能性のあるlw1が含まれておらず、しかも、高さ情報hについては補正値Cによって形状誤差が補正されている。つまり、本実施形態によれば、形状誤差を排除した正確なfおよびfを求めることができる。
【0059】
[第1実施形態の作用効果]
本発明の第1実施形態に係る寸法測定方法によれば、例えば、以下の作用効果が期待できる。
【0060】
(1)一括測定過程の寸法測定過程において、干渉縞に基づいて1つの基準ゲージ3の中央の寸法ls1を算出する。また、形状測定過程において、干渉縞に基づいて基準ゲージ3の中央に対する四隅の高さ情報h12〜h15およびh22〜h25を求め、基準ゲージ3の中央の寸法ls1と四隅の高さ情報h12〜h15およびh22〜h25を足し合わせて、四隅の寸法ls2〜ls5を算出する。
ここで、複数の被測定個所は、それぞれ直進光の波面の異なる部分に位置しているので、形状測定過程で算出した四隅の寸法ls2〜ls5には、直進光の波面の歪み等による誤差が含まれるおそれがある。
一方、個別測定過程においては、全ての被測定個所について、直進光の波面の同一位置(測定位置)による測定が実施されるので、各被測定部間の相対的な差について、波面の歪み等による誤差を排除した基準ゲージ3の四隅の寸法lr2〜lr5が測定される。
つまり、算出過程において補正値C〜Cとして算出する、一括測定過程において測定した四隅の寸法ls2〜ls5と、個別測定過程において測定した四隅の寸法lr2〜lr5との差は、直進光の波面の歪み等による形状測定の誤差に対応する。
したがって、補正過程において、実測定過程で測定したブロックゲージ2の四隅の寸法lw2〜lw5から算出過程で算出した補正値C〜Cを差し引けば、波面の歪み等による誤差を排除した正確な寸法を測定することができる。
【0061】
(2)また、一度補正値を算出しておけば、以降は被測定物について一括測定過程を実施するだけで、複数の被測定個所についての正確な寸法を測定することができる。設置過程を繰り返すことなく、複数の被測定個所の測定ができるので、測定にかかる時間を大幅に短縮することができる。
【0062】
(3)2つの平行光線を用いて寸法測定を実施するので、ブロックゲージ2とベースプレートとのリンギングが不要となるため、測定誤差を大幅に低減することができる。
ここで、平行光線が2つに増えるとともに光学部品の数が増加するので、波面の歪み等による誤差が大きくなるおそれがあるが、本願発明では、全ての被測定個所について、第1および第2直進光の波面の同一位置による測定が実施されるので、各被測定部間の相対的な差について、波面の歪み等による誤差を排除することができる。または、簡易な補正によって、波面の歪み等による誤差を排除することができる。
したがって、複数の被測定個所の寸法をより正確に測定することができる。
【0063】
(4)ブロックゲージ2の中央および四隅を被測定個所としたので、EAL−G21規格に基づいたf、fを正確に算出することができる。
(5)基準ゲージ3の中央および四隅に被測定個所の表示31〜35を設けたので、一括測定過程の設置過程において、被測定個所の表示31〜35を目印として容易に位置合わせをすることができる。
【0064】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る寸法測定方法について説明する。
本実施形態では、基準ゲージ3を用いた補正を実施せず、上述の個別測定過程のみを被測定物であるブロックゲージ2に対して実施するものである。その他の構成および作用は同一であるから、それらの説明は省略する。
具体的には、設置過程と、測定過程とをブロックゲージ2の複数の被測定個所の全てについて実施するものである。
このような第2実施形態に係る寸法測定方法によれば、上述の第1実施形態の作用効果(1)(2)に代えて、例えば、以下の作用効果が期待できる。
【0065】
(5)ブロックゲージ2の全ての被測定個所について、直進光の波面の同一位置(測定位置)による測定が実施されるので、各被測定部間の相対的な差について、波面の歪み等による誤差を排除することができる。
よって、干渉計の部品や構成を変更や大掛かりな補正をすることなく、ブロックゲージ2の複数の被測定個所の寸法を正確に測定することができる。
(6)測定するブロックゲージ2の数が少ない場合には、補正値算出過程と補正過程を省略することで、測定にかかる時間を短縮することができる。
【0066】
[変形例]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0067】
上述の第1および第2実施形態において、2つの平行光線を用いて寸法の測定を実施する方法を例示したが、これに限定されない。
例えば、1つの平行光線を用いて、ベースプレートとリンギングさせたブロックゲージ2の寸法を求めてもよい。
この場合、直進光がブロックゲージ2の端面に反射した反射光と参照光とを重ね合わせて測定干渉縞を得るとともに、直進光がベースプレートに反射したベース反射光と参照光とを重ね合わせて基準干渉縞を得る。基準干渉縞と測定干渉縞との位相差に基づいてブロックゲージ2の寸法を求める。
このような方法によっても、ブロックゲージ2または基準ゲージ3を移動させて、複数の被測定個所の寸法を求めれば、上述の各実施形態と同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0068】
上述の各実施形態において、被測定物としてブロックゲージ2を例示したが、これに限らない。
本発明によれば、ブロックゲージ2以外の被測定物であっても、被測定部間の相対的な差について、波面の歪み等による誤差を排除し、複数の被測定個所の寸法を正確に測定することができる。
【0069】
上述の各実施形態において、被測定個所としてブロックゲージ2の中央および四隅を例示したが、これに限定されない。
被測定個所は、被測定物の測定面の任意の個所をいくつでも選択することができる。
例えば、JISやISO等の規格では、f、fの測定位置は規定されていないが、このような場合であっても本発明の寸法測定方法を適用し、任意の個所の寸法を正確に測定し、正確なf、fを求めることができる。
【0070】
測長装置1の構成等は、上述の各実施形態のものに限らない。
例えば、測長装置1には、複数のゲージ設置部101が設けられていてもよい。この場合、各ゲージ設置部101のそれぞれに測定位置が設定されるが、各測定位置のそれぞれについて本発明の寸法測定方法を適用すればよい。
また、測定位置を、干渉領域の中心以外の個所に変更してもよい。この場合でも、上述の各実施形態と同様の優れた作用効果を得ることができる。
【0071】
基準ゲージ3の構成は、上述の第1実施形態において例示したものに限定されない。
例えば、基準ゲージ3は、左端面3Aのみならず右端面3Bにも、被測定個所の表示31〜35を有していてもよい。両端面3A,3Bに被測定個所の表示31〜35を設ければ、設置過程における位置決めが一層容易となる。
また、基準ゲージ3には、被測定個所の表示31〜35は無くてもよい。被測定個所の表示31〜35が無かったとしても、位置決めが多少困難となるだけで、上述の各実施形態と同様の作用効果が発揮されることに違いは無い。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、光波干渉を用いた寸法測定方法として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】第1実施形態の寸法測定方法に用いる測長装置の概略構成を示す図。
【図2】第1実施形態の測長装置で観測された基準干渉縞と測定干渉縞の一例を示す図。
【図3】第1実施形態の寸法測定過程における基準ゲージを測定面から見た図。
【図4】第1実施形態の設置過程後における基準ゲージを測定面から見た図。
【図5】第1実施形態の設置過程後における基準ゲージを測定面から見た図。
【図6】第1実施形態の設置過程後における基準ゲージを測定面から見た図。
【図7】第1実施形態の設置過程後における基準ゲージを測定面から見た図。
【図8】一般的なブロックゲージの側面を誇張して示した図。
【符号の説明】
【0074】
1 測長装置
2 ブロックゲージ
2A 左端面
2B 右端面
3 基準ゲージ
4 位置あわせ部材
11 光照射手段
12 干渉計
15 コンピュータ
31〜35 被測定個所の表示
114 第1および第2直進光のビーム径
114A 測定位置
114C 干渉領域の中心
211,212 第1,2基準干渉縞
221,222 第1,2測定干渉縞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光波干渉を用いて、予備値が既知の被測定物の相対向する端面間の寸法を、複数の被測定個所において測定する寸法測定方法であって、
平行光線を直進光と参照光とに2分割し、前記直進光の光路中に、前記直進光の波面に設定した測定位置と前記複数の被測定個所のうちの1つとが重なるように前記被測定物を挿入する設置過程と、
前記直進光が前記被測定物に反射した反射光を前記参照光と干渉させ、得られた干渉縞を基に前記被測定個所の寸法を求める測定過程と、
を前記複数の被測定個所の全てについて実施する
ことを特徴とする寸法測定方法。
【請求項2】
光波干渉を用いて、予備値が既知の被測定物の相対向する端面間の寸法を、複数の被測定個所において測定する寸法測定方法であって、
前記被測定物と略同一の断面形状を有する基準測定物を用いて補正値を算出する補正値算出過程と、
前記被測定物の前記複数の被測定個所の寸法を測定する実測定過程と、
前記補正値を用いて前記実測定過程で測定した前記複数の被測定個所の寸法を補正する補正過程と、
を備え、
前記補正値算出過程は、
平行光線を直進光と参照光とに2分割し、前記直進光の光路中に、前記直進光の波面に設定した測定位置と前記複数の被測定個所のうちの1つとが重なるように前記基準測定物を挿入し、前記直進光が前記基準測定物に反射した反射光を前記参照光と干渉させ、得られた干渉縞を基に前記被測定個所の寸法を求める寸法測定過程、および、前記干渉縞に基づいて前記被測定個所に対する他の前記被測定個所の高さ情報を求め、前記被測定個所の寸法と前記他の被測定個所の高さ情報とを足し合わせて前記他の被測定個所の寸法を求める形状測定過程、を有する一括測定過程と、
前記平行光線を直進光と参照光とに2分割し、前記直進光の光路中に、前記直進光の前記測定位置と前記他の被測定個所のうちの1つとが重なるように前記基準測定物を挿入する設置過程、および、前記直進光が前記基準測定物に反射した前記反射光を前記参照光と干渉させ、得られた前記干渉縞を基に前記被測定個所の寸法を求める測定過程、を前記他の被測定個所の全てについて実施する個別測定過程と、
前記一括測定過程において測定した前記複数の被測定個所の寸法と、前記個別測定過程において測定した前記複数の被測定個所の寸法との差を補正値として算出する算出過程と、
を有し、
前記実測定過程は、前記一括測定過程を前記被測定物について実施し、
前記補正過程は、前記実測定過程で測定した前記複数の被測定個所の寸法から前記補正値を差し引く
ことを特徴とする寸法測定方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の寸法測定方法において、
前記測定過程では、
互いに逆方向に放射され前記被測定物よりも径の大きい第1平行光線と第2平行光線とを用い、
前記第1平行光線および前記第2平行光線のそれぞれを、前記被測定物に向かう第1直進光および第2直進光と、残りの部分である第1参照光および第2参照光とに分割し、
前記被測定物の脇を通過してきた前記第2直進光と前記第1参照光とを重ね合わせて第1基準干渉縞を得、前記第1参照光が前記被測定物に反射した第1反射光と前記第1参照光とを重ね合わせて第1測定干渉縞を得、
前記被測定物の脇を通過してきた前記第1直進光と前記第2参照光とを重ね合わせて第2基準干渉縞を得、前記第2参照光が前記被測定物に反射した第2反射光と前記第2参照光とを重ね合わせて第2測定干渉縞を得、
前記被測定物の相対向する端面間の予備値、ならびに、前記第1基準干渉縞と前記第1測定干渉縞との位相差、および、前記第2基準干渉縞と前記第2測定干渉縞との位相差に基づいて、前記被測定物の前記被測定個所の寸法を求める
ことを特徴とする寸法測定方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の寸法測定方法において、
前記被測定物は、ブロックゲージであり、
前記複数の被測定個所は、前記ブロックゲージの中央および四隅である
ことを特徴とする寸法測定方法。
【請求項5】
請求項2に記載の寸法測定方法において、
前記被測定物は、ブロックゲージであり、
前記複数の被測定個所は、前記ブロックゲージの中央および四隅であり、
前記基準測定物は、中央および四隅に被測定個所の表示を有する前記ブロックゲージである
ことを特徴とする寸法測定方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の寸法測定方法において、
前記複数の被測定個所には、前記ブロックゲージの中央が含まれ、
前記ブロックゲージの前記複数の被測定個所の最大寸法と前記ブロックゲージの中央の寸法との差であるfおよび前記ブロックゲージの中央の寸法と前記ブロックゲージの前記複数の被測定個所の最小寸法との差であるfを算出する規格値算出過程を備える
ことを特徴とする寸法測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−103597(P2009−103597A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276103(P2007−276103)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】