説明

対基板作業システム

【課題】 対基板作業システムの利便性を向上させる。
【解決手段】 回路部品を支持して電子回路を構成する回路基板に対して、予定された対回路基板作業を行う対基板作業システムを、1以上の対基板作業ユニットによって構成する。その対基板作業ユニットは、ベース(10:574)と、そのベース上に配置された1以上の対基板作業装置(636:600,12,634,632)とから構成され、その1以上の対基板作業装置の少なくとも1つのものを、ベースに対する相対移動が可能な可動装置とする。対基板作業装置の調整,メンテナンス等の作業を、容易に行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路の組立ての際、回路基板に対して実行される対回路基板作業を行うための対基板作業システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の組立て、すなわち、プリント配線板等の回路基板に電子部品等の回路部品を実装する作業は、一般的に、回路部品実装ラインによって行われる。回路部品の実装作業は、複数の種類の作業、例えば、回路基板にクリームはんだを印刷するはんだ印刷作業、回路基板に接着剤を塗布する接着剤塗布作業、回路基板に回路部品を装着する回路部品装着作業、回路部品が装着された回路基板を加熱することによってはんだ付けを行うはんだ付け作業、それらの各作業の少なくともいずれかの作業結果を検査する検査作業等(以下、それらの作業の総称として「対回路基板作業」、あるいは略して「対基板作業」と呼ぶ)を含んで構成され、一般的な回路部品実装ラインは、それらの対回路基板作業を行う対基板作業機であるところの、はんだ印刷機、接着剤塗布機、部品装着機、リフロー炉、検査機等を含んで構成されている。
【0003】
従来の実装ラインでは、それぞれの作業機の調整、メンテナンス等の際の利便性を考慮する等の理由から、上記作業機が間隔をおいて配置され、それぞれの作業機を搬送コンベア等で繋ぐように構成されることが一般的であった。そのような実装ラインでは、スペース効率を向上させることに限界があり、コンパクトな対基板作業システムが望まれている。また、上記構成の実装ラインにおいて、ライン編成を変更する場合、1つ1つの対基板作業機を移動させ、1つ1つを位置決めしければならないことから、ライン変更をという観点からも、コンパクトであることが望まれ、また、ライン変更作業を迅速に行えるような利便性や、ライン構成の態様の幅を広げるという点からのフレキシビリティに富んだ対基板作業システムが望まれている。さらに、上述のように、対基板作業システムは、調整、メンテナンス等の際の利便性に優れることも望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、対基板作業システムには、コンパクトである、利便性に優れる、フレキシビリティに富むといった種々の要求が存在する。そこで、本発明は、それらの要求のうちの少なくともいくつかのものを満足する対基板作業システムを得ることを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の対基板作業システムは、
回路部品を支持して電子回路を構成する回路基板に対して、予定された対回路基板作業を行う対基板作業システムであって、
(a)ベースと、(b)そのベース上に配置され、自身の作業領域内に少なくとも一部分が位置する回路基板に対して定められた対回路基板作業を行う1以上の対基板作業装置とを有する対基板作業ユニットを備え、
前記1以上の対基板作業装置のうちの少なくとも1つのものが、前記ベースに対する相対移動が可能な可動装置とされたことを特徴とする。
また、本発明の対基板作業システムは、
【0006】
回路部品を支持して電子回路を構成する回路基板に対して、予定された対回路基板作業を行う対基板作業システムであって、
回路基板を搬送する基板搬送装置と、
それぞれが、(a)ベースと、(b)そのベース上に配置され、自身の作業領域内に少なくとも一部分が位置する回路基板に対して定められた対回路基板作業を行う1以上の対基板作業装置とを有する複数の対基板作業ユニットと
を備え、
前記複数の対基板作業ユニットが、
それらが有する複数の対基板作業装置が、前記基板搬送装置によって回路基板が搬送される方向である基板搬送方向に沿って整列する状態で、配設されており、
前記複数の対基板作業装置のうちの少なくとも1つのものが、前記基板搬送方向と交差する方向に延びる装置軌道に沿って、自身が配置される前記ベースに対する相対移動が可能な可動装置とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
複数の対基板作業装置が配置されたシステムでは、例えば、そのシステムの長さが長い、たくさんの装置が配置されている、各装置間の間隔が狭いといった場合等には、いずれかの対基板作業装置の調整,メンテナンス等の作業を行う際、隣り合う対基板作業装置の存在が影響する等して、その作業に困難が付きまとう。調整等の作業の対象となる装置が、装置配列の中から抜き出せるように移動させることができれば、そのシステムの利便性が向上する。
【発明の態様】
【0008】
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能である。
【0009】
なお、(1)項,(3)項,(14)項,(15)項を合わせたものの主要な発明特定事項によって構成したものが請求項1,請求項3に相当する。また、請求項1,請求項3に、(19)項,(20)項に記載の発明特定事項を付加したものが、それぞれ、概ね、請求項2,請求項4に相当する。
【0010】
(1)回路部品を支持して電子回路を構成する回路基板に対して、予定された1以上の対回路基板作業を行う対基板作業システムであって、
システムベースと、
回路基板を搬送する基板搬送装置と、
その基板搬送装置によって回路基板が搬送される方向である基板搬送方向沿って整列する状態で前記システムベース上に配置され、自身の作業領域内に少なくとも一部分が位置する回路基板に対してそれぞれが定められた対回路基板作業を行う複数の対基板作業装置と
を含む対基板作業システム。
【0011】
本項に記載の態様の対基板作業システムは、システム全体のベースとなるシステムベースに、複数の対基板作業装置を配置したものである。いくつかの対基板作業を1つのシステムで行うことができ、コンパクトな対基板作業システムが得られる。なお、配置される対基板作業装置の種類、配置の方式等のバリエーションは、以下の項において詳しく説明する。
【0012】
システムベースは、少なくとも、複数の対基板作業装置が載置されるための台としての機能を有することを要する。その機能に加え、配置される複数の対基板作業装置のうちの2つ以上のものあるいは全部のものが共用する共用装置,共用デバイス、例えば、動作電源、正圧,負圧発生源あるいはそれら発生源からの正圧,負圧供給路、システム全体を統括して制御する制御装置、各対基板作業装置間の制御信号,情報のやり取りのための通信ケーブル,ターミナル等を備えるものであってもよく、また、配置される複数の対基板作業装置のいずれかが専用する専用装置,専用デバイス、例えば、専用の制御装置、動作電源等や、各対基板作業装置を位置決めあるいは固定するための位置決め装置,固定装置あるいはそれらの一部分等を備えるものであってもよい。専用装置、専用デバイスをシステムベースに有することによって、配置される対基板作業装置のコンパクト化が図れ、共用装置、共用デバイスを有するように構成すれば、さらに、システムベース自体のコンパクト化が図ることができる。望ましい態様の1つとして、システムベースを、少なくとも、対基板作業装置へ電力、流体圧力等の駆動力を供給する駆動力供給部を備えたものとすることができる。
【0013】
基板搬送装置は、回路基板がシステム全体すなわち各対基板作業装置を通過するようにされることが望ましい。基板搬送装置は、例えばコンベアを主体とするものの場合、搬送する回路基板の幅に応じて、その幅が変更可能な基板幅対応幅変更装置を備えるものであってもよい。また、基板搬送装置は、システム全体にわたって1つの搬送ラインを形成するものであってもよく、また、システム全体にわたってあるいはシステムの一部において複数の搬送ラインを形成するものであってもよい。さらに、基板搬送ラインの数がシステム構成,基板の種類等に応じて随時変更可能なものであってもよい。また、基板搬送装置は、上記共用装置あるいは専用装置としてシステムベースに設けられるものであってもよく、後に説明するように、その一部あるいは全部が分割されて対基板作業装置内に組み込まれ、それらの対基板作業装置がシステムベースの所定の配置位置に配置されることで、システム内に構築されるものであってもよい。
【0014】
(2)前記複数の対基板作業装置が、回路基板の表面に高粘性流体を塗布する高粘性塗布作業、回路基板の表面に回路部品を装着する回路部品装着作業、それら高粘性塗布作業と回路部品装着作業との少なくとも一方の作業の結果を検査する検査作業から選ばれる作業のうちの少なくとも1つの作業を行う装置を含む(1)項に記載の対基板作業システム。
【0015】
上記列挙した対回路基板作業は、従来の実装ラインにおける対基板作業機が行う一般的な作業であり、これらの作業を行う対基板作業装置を配置した対基板作業システムは、実用的なシステムとなる。列挙したもののなかでも、回路部品装着作業は、多種の回路部品が1枚の回路基板に装着される場合に複数の装着機にわたって行われることが多いことから、複数の回路部品装着装置が主体となるように配置された回路部品装着システムは、本システムの1つの有効的な態様となる。
【0016】
本発明のシステムでは、配置される対基板作業装置の数、種類が限定されるものではない。たとえば、すべての対基板作業装置が、1種の対基板作業を行う装置とすることができ、また、互いに異なる対基板作業を行う複数種の装置を配置することも可能である。なお、対基板作業装置が行う対基板作業は、上記列挙したものに限定されない。例えば、前述した加熱作業を行うリフロー炉装置(加熱作業装置)や、回路基板の搬送を主目的とする搬送作業装置,回路基板をストック等する待機作業を行う待機作業装置,回路基板のシステムへの搬入作業を行う搬入作業装置,回路基板のシステムからの搬出作業を行う搬出作業装置等の補助的な作業を行う対基板作業装置を含んで本システムを構築することもできる。なお、待機作業装置の一例として、複数の回路基板をストックするストック作業装置がある。また、上記以外の補助的な作業を行う装置の例として、回路基板の搬送経路を変更する搬送経路変更作業装置がある。上記搬送作業装置を初めとして、ストック作業装置と搬送経路変更作業装置とは基板搬送関連作業機の一種である。このような補助的な作業を行う対基板作業装置を含んで、あるいは含み得る状態でシステムを構築することにより、システムのフレキシビリティや利便性が向上する。
【0017】
配置される対基板作業装置は、それが行う対基板作業に応じた構成とすればよい。例えば、回路部品装着装置である場合には、回路部品を供給する部品供給装置、回路基板を定められた作業位置に固定して保持する基板保持装置、吸着ノズル等の部品保持デバイスを備え、部品供給装置から回路部品を取り出して保持し、保持された回路基板にその回路部品を装着する装着ヘッド、装着ヘッドを部品供給装置と回路基板との間で移動させる装着ヘッド移動装置等を含む構成のものとすることができる。また、高粘性流体塗布装置の一種であるクリームはんだ印刷装置の場合は、例えば、基板保持装置、メタルマスクとスキージとを有する塗布装置、塗布装置にクリームはんだを供給する供給装置等を含む構成のものすることができ、別の一種である接着剤塗布装置の場合は、例えば、基板保持装置、シリンジ,ディスペンサ等を備えた塗布装置等を含む構成のものとすることができ、上記各種作業の結果を検査する検査装置の場合は、例えば、基板保持装置、CCDカメラ等の認識デバイス、画像処理ユニット等の認識データを処理する認識データ処理ユニット等を含む構成のものとすることができる。
【0018】
(3)前記複数の対基板作業装置のうちの少なくとも1つのものが、前記基板搬送方向と交差する方向に延びる装置軌道に沿って、前記システムベースに対する相対移動が可能な可動装置とされた(1)項または(2)項に記載の対基板作業システム。
【0019】
複数の対基板作業装置が配置されたシステムでは、例えば、そのシステムの長さが長い、たくさんの装置が配置されている、各装置間の間隔が狭いといった場合等には、いずれかの対基板作業装置の調整,メンテナンス等の作業を行う際、隣り合う対基板作業装置の存在が影響する等して、その作業に困難が付きまとう。調整等の作業の対象となる装置が、装置配列の中から抜き出せるように移動させることができれば、そのシステムの利便性が向上する。本項に記載のシステムは、基板搬送方向、すなわち対基板作業装置が並ぶ方向と交差する方向に延びる装置軌道に沿って、ある対基板作業装置を移動させることができるため、利便性に優れる。
【0020】
上記装置軌道の方向は特に限定されず、対基板作業装置がシステム正面から見て左右方向に整列する場合に、上下方向,前後方向,前方斜め上方,後方斜め上方等、様々な方向に延びる装置軌道を採用することができる。また、装置軌道は、直線的なものに限られず、曲線的な軌道であってもよい。また、可動装置とされる対基板作業装置の数は限定されず、一部のもののみ可動装置とすることも、また、すべての装置を可動装置とすることもできる。複数の対基板作業装置を可動装置とする場合、それらの装置を近づけて配置可能であることに鑑みれば、それらの各々の装置軌道が互いに平行な各々の平面内に位置することが望ましい。また、可動装置は、所定の配置位置から一方向にのみ移動可能とされたものでもよく、1つの装置軌道上の中間位置に所定の配置位置が存在し、その配置位置からその装置軌道に沿った両方向に移動可能とされたものであってもよい。
【0021】
対基板作業装置の移動は、手動すなわち人力で行われるものであってもよく、また、例えば、システムベースあるいは可動装置となる対基板作業装置に電動モータ、シリンダ装置等の駆動源を備えた駆動装置によって行われるものであってもよい。移動可能な範囲は、特に限定されないが、調整,メンテナンス等の作業の際の利便性という点に考慮すれば、基板搬送方向に平行な方向から見た場合に、対象となる装置とそれに隣り合う装置とが、互いに重なり合わないか、あるいは、大半の部分が重ならない程度に、可動範囲を広くすることが望ましい。
【0022】
(4)前記装置軌道が、前記基板搬送方向と直交する直線的な軌道である(3)項に記載の対基板作業システム。
(5)前記装置軌道が略水平に延びる(3)項または(4)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0023】
上記2つの項に記載の態様は、装置軌道の方向、すなわち、可動装置とされた対基板作業装置の移動方向に関する限定を加えたものである。(4)項に記載の態様では、移動対象となる対基板作業装置を移動させた場合に、その装置と隣り合う対基板作業装置と干渉せずに移動させる態様とすることが容易であり、特に、隣り合う装置が移動対象となる装置と隣接して配置された状態であっても、干渉を生じないようにすることが可能である。また、(5)項に記載の態様では、装置軌道に沿ったいずれの向きの移動においても、その移動方向には上方に向かう移動方向成分を殆ど含まず、移動させる可動装置の重量が負荷となり難い。したがって、移動容易化手段の一種である車輪,ころ等の摩擦力減少手段を採用すれば、人力によって可動装置を容易に装置軌道に沿って移動させることができる。上記2つの項に記載の態様は、実用的な態様であり、両者に記載の限定事項をともに採用する態様は、より実用的な態様である。
【0024】
(6)当該対基板作業システムが、前記装置軌道に沿った前記可動装置の移動を許容する可動装置移動許容装置と、その装置軌道上の一定位置に前記可動装置を固定する可動装置固定装置とを備えた(3)項ないし(5)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0025】
本項に記載の態様は、対基板作業装置を可動装置とした際の一態様である。対基板作業装置の移動方向を装置軌道によって規制するとともに、装置軌道上の一定位置、例えば、システムベースに対する一定の相対位置に固定すれば、実用的なシステムとなる。上記固定装置による可動装置の装置軌道上の固定位置は、システムを稼動させる際の対基板作業装置のシステムベースにおける所定の配置位置を含むものであってもよく、また、その配置位置から任意の距離だけ移動させた位置をさらに含むものであってもよい。つまり、固定位置は、1位置に限定されず、例えば、上記所定の配置位置およびそれとは別に設定された位置と含む態様とされる場合のように、複数の位置であってもよいのである。
【0026】
(7)前記可動装置移動許容装置が、
前記システムベースと前記可動装置との一方に位置が固定して設けられ、前記装置軌道を形成する装置軌道形成部と、
前記システムベースと前記可動装置との他方に位置が固定して設けられ、前記装置軌道形成部に対して移動可能に係合する対軌道係合部と
を有する(6)項に記載の対基板作業システム。
【0027】
本項に記載の態様における可動装置移動許容装置は、装置軌道形成部と対軌道係合部とを有する。例えば、システムベース上に軌道形成部材としてのガイドレールを敷設し、可動装置にそのガイドレールに係合する係合部材を付設したような場合においては、ガイドレールが上記装置軌道形成部に相当し、係合部材が対軌道係合部に相当する。その場合、その係合部材は、ガイドレールとの間で発生する摩擦力の小さなものであることが望ましく、例えば、軸受けを介して回転自在とされた車輪を含む車輪装置,ベアリング等を含むスライド装置等を採用することが望ましい。なお、逆に、可動装置側にガイドレールを設け、システムベース側に上記係合部材を設ける態様であってもよい。
【0028】
(8)前記可動装置固定装置が、
前記システムベースと前記可動装置とのそれぞれに前記装置軌道の延びる方向における位置が固定されて設けられ、互いに当接することにより、前記可動装置の前記システムベースに対する前記装置軌道に沿った一方向の移動を禁止するそれぞれの当接部と、
それらそれぞれの当接部どうしの当接状態が解除されることを禁止することにより、前記可動装置の前記システムベースに対する前記装置軌道に沿った他方向の移動を禁止する当接状態解除禁止部と
を有する(6)項または(7)項に記載の対基板作業システム。
【0029】
本項に記載の態様は、可動装置固定装置に関する限定を行った態様である。例えば、システムベースにストッパ等の係止部材を設け、可動装置にその係止部材によって係止される被係止部材を設け、装置軌道上の一定位置において両者が当接する場合に、それら係止部材および被係止部材が上記それぞれの当接部に相当する。そして、例えば、システムベースあるいは可動装置の一方に、シリンダ等の付勢力発生デバイスを含む付勢装置を設け、システムベースあるいは可動装置の他方の一部分を、係止部材および被係止部材が互いに当接しつづける方向に付勢すれば、可動装置のシステムベースに対する相対位置は維持される。すなわち、可動装置がシステムベースに固定されるのである。その場合、その付勢装置を含んで、当接状態解除禁止部が構成される。付勢力を解除することにより、係止部材および被係止部材の互いの当接が解除可能とされ、可動装置の装置軌道に沿った移動が許容される。
【0030】
なお、本項に記載の態様における可動装置固定装置は、可動装置とシステムベースとの一方に、それらの他方に向かって突出するピンを設け、それらの他方にそのピンが隙間なく嵌合する嵌合穴を設け、そのピンをその嵌合穴にはめ合わせるような態様の装置であってもよい。その場合、ピンの外周面の一部分と嵌合穴の一部分とが当接部に相当し、ピンおよび嵌合穴自体が、当接状態解除禁止部として機能することになる。
【0031】
(9)前記装置軌道とは別の軌道を形成可能なテーブル装置が、その別の軌道が前記装置軌道を延長する状態で前記システムベースの傍らに配置された場合に、前記可動装置の少なくとも一部分が、前記テーブル装置に載置されるべく、前記別の軌道に沿って移動可能とされた(3)項ないし(8)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0032】
コンパクトなシステムであることを考慮すれば、システムべース上に複数の対基板作業装置が配置された場合、システムベースの大きさは、対基板作業装置の配置スペースに対して、必要以上に大きくしないことが望ましい。そのような場合、例えば、可動装置をシステムベースに対して横方向に移動させるようにすれば、可動装置は、システムベースからオーバーハングした状態となる。本項に記載の態様は、かかる場合に有効であり、特に、可動装置の装置軌道が略水平である場合に有効な態様である。つまり、本項に記載のテーブル装置は、補助ベースとしての役割を果たすものといえる。なお、本システムは、テーブル装置をシステムの直接的な構成要素としていないが、テーブル装置をも含んたシステムとすることもできる。
【0033】
テーブル装置は、システムに対する所定位置に配置された場合に、それが有する軌道が装置軌道を延長するものである。そのため、上記別の軌道は、延長軌道と称することができる。延長軌道は、装置軌道を形成するための構成と同様の構成によって形成されるものとすることができる。例えば、前述の可動装置移動許容装置と同様に、テーブル装置と可動装置との関係において、装置軌道形成部と対軌道係合部とを有するテーブル装置側可動装置移動許容装置を含むように、テーブル装置を構成することができる。その場合、例えば、テーブル装置本体上に軌道形成部材としてのガイドレールを敷設し、可動装置にそのガイドレールに係合する係合部材を付設したような態様のものとすることができる。なお、延長軌道は、装置軌道を延長するものであるが、上記のようにガイドレールを採用する場合、必ずしもガイドレールそのものが一直線上に位置する必要はない。その場合、例えば、システムベース側のガイドレールに係合する係合部材とは別の係合部材を設け、その別の係合部材がテーブル装置側のガイドレールと係合させる態様を採用することもできる。軌道が延長される限り、すなわち、可動装置の移動方向を一定方向に維持したまま装置軌道による移動範囲が延長される限り、前記可動装置移動許容装置の構成部分とテーブル装置側可動装置移動許容装置の構成部分とが、互いに兼用される態様であっても、兼用されない態様であってもよいのである。
【0034】
また、テーブル装置側に、前述の可動装置固定装置を設けることもできる。そのテーブル装置側可動装置固定装置には、前記可動装置固定装置の構成に従う構成のものとすることができる。なお、テーブル装置は、1つの可動装置が載置されるものであってもよく、また、2以上の可動装置が載置されるものであってもよい。複数の可動装置が載置可能な態様のテーブル装置は、例えば、後に詳しく説明するように、隣り合う2以上の可動装置を同時に移動させる必要がある場合等に便利なテーブル装置である。
【0035】
(10)前記可動装置が前記テーブル装置に移載することで、その対基板作業装置が前記システムベースから分離される(9)項に記載の対基板作業システム。
【0036】
例えば、後に説明するように、対基板作業装置がモジュール化されたような場合にあっては、その対基板作業装置がシステムベースから分離可能とされる。そのような態様のシステムにおいて、その対基板作業装置のシステムベースからの分離作業の際、当該テーブル装置を用いることのできる態様が、本項に記載の態様に相当する。本項に記載の態様において、テーブル装置を移動可能なものとすれば、そのテーブル装置は、対基板作業装置運搬装置を兼用できるものとなる。例えば、車輪装置等を設け人力で移動可能な態様、テーブル装置自体が駆動源を有して自走可能な態様等、種々の態様の可動式テーブル装置とすることができる。また、テーブル装置は、例えば、リフタ装置を設ける等して利便性を向上させることも可能である。
【0037】
(11)前記システムベースが連結部を備え、その連結部が、前記別の軌道が前記装置軌道を延長する状態となる位置に前記テーブル装置を位置決めするものである(9)項または(10)項に記載の対基板作業システム。
【0038】
可動装置の移動は、主に、その可動装置の調整,メンテナンス等の際に、あるいは、システム変更のとき等、可動装置がシステムベースから分離される際に行われる。したがって、システム稼動時等の通常時には、テーブル装置は、システムから離れた場所あって、必要なときに、システムの傍らに配置される。その場合に、テーブル装置を有する軌道が装置軌道を延長する位置に定置させる作業を簡便に行い得る態様が、本項に記載の態様である。連結部およびテーブル装置側の連結部の具体的構成は、特に限定されるものではなく、ピンと嵌合穴とのそれぞれを互いの連結部の各々に設け、それらを嵌合させることで、位置決めがなされるような連結装置を有するようなものであってもよい。
【0039】
(12)前記複数の対基板作業装置のうちの互いに隣り合う2つ以上のものが前記可動装置であり、それら2つ以上の可動装置の前記装置軌道の延びる方向が互いに平行であり、当該対基板作業システムが、少なくともそれら2つ以上の可動装置が前記システムベースに対して同時に相対移動する際に、それら2つ以上の可動装置の少なくとも前記装置軌道の延びる方向における互いの相対移動を制限する装置相互間相対移動制限装置を含む(3)項ないし(11)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0040】
後に詳しく説明するように、2以上の対基板作業装置に1つの回路基板が跨って位置し、それらの装置がその1つの回路基板に協働して作業する場合がある。かかる場合に、何らかの不具合が発生した際、それらの装置を同時に調整等することが要求されるときがある。それらの装置が可動装置である場合、例えば、回路基板を保持したままでで、それらの装置を同時期に配置位置から移動させて調整作業を余儀なくされるときもある。そのときには、それらの装置に跨る回路基板等への影響を考慮し、それらの装置間の相対位置関係を維持したまま、そられの装置を同時に移動させ得ることが望まれる。本項に記載の態様は、かかる場合に有効な態様である。つまり、本項の記載の態様は、互いに平行な装置軌道を有して隣り合う複数の可動装置を、それら装置間の相対位置関係を維持したままで、一斉に移動させることが可能な態様である。なお、装置相互間相対移動制限装置は、その利用目的から、相対位置が大きくずれることのみを禁止し、ある程度のずれを許容するといった態様の装置とすることもできる。
【0041】
なお、装置相互間相対移動制限装置は、可動装置を同時に移動させる場合に限らず、また、対象となる対基板作業装置が可動装置であるか否かにかかわらず、複数の対基板作業装置の配置位置における互いの相対位置関係を適正なものとするための装置として利用することも可能である。
【0042】
(13)前記装置相互間相対移動制限装置が、前記2つ以上の可動装置のうちの1つとその1つと隣り合う別の1つとのそれぞれに、前記装置軌道の延びる方向における位置が固定されて設けられて互いに係合するそれぞれの係合部を有し、それら係合部の少なくとも前記装置軌道の延びる方向における互いの相対位置を規制するものである(12)項に記載の対基板作業システム。
【0043】
本項は、上記装置相互間相対移動制限装置の具体的態様を示した項である。隣り合う2つの対基板作業装置の相対位置関係がずれることを効果的に防止できる。本項の態様は、具体的には、例えば、一方の装置に、他方の装置に向かって突出可能なピンを設け、他方の装置にそのピンと嵌合する嵌合穴を設け、両者を嵌合させることによって、双方の装置の相対位置を規制する態様の装置相互間相対移動制限装置を採用することができる。その態様の場合、ピンおよび嵌合穴が上記それぞれの係合部に相当する。ある程度の相対位置ずれを許容する場合は、ピンと嵌合穴との嵌め合い関係をルーズなものとすればよい。なお、上記態様の装置相互間相対移動制限装置を採用する場合、ピンを突出状態とすることによって嵌合穴と嵌合する状態となり、ピンを被突出状態とすることによって嵌合しない状態となるようにすることもできる。このように、2つの係合部を係合状態と被係合状態との2つの状態に切り替えることができる装置相互間相対移動制限装置は、裏を返せば、任意の時期において、2つの可動装置の相対位置関係の制限を解除する装置であり、装置相互間相対移動許容装置として機能する。
【0044】
(14)前記システムベースが、複数のベースモジュールを含んで構成された(1)項ないし(13)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0045】
本発明の対基板作業システムは、その構成要素のいくつかをモジュール化できる。本項に記載の態様は、システムベースを、モジュール化されたベースモジュールによってシステムベースを構成する態様である。システムベースは、複数のベースモジュールが互いに連結されて一体化されたものであってもよく、また、連結されずに、互いに適正な位置に配置されることによって、一体的に機能するものであってもよい。さらに、ベースモジュールどうしが連結された部分と、連結されない部分とが混在して1つのシステムベースを構成するものであってもよい。システムベースがベースモジュールによって構成されるメリットとして、システム編成の変更に伴うシステムベースの長さの変更に容易に対応できること、配置される対基板作業装置に対応した専用のベースモジュールが存在する場合に、その専用モジュールを含ませることができること等、システムのフレキシビリティが向上することが挙げられる。
【0046】
(15)前記複数のベースモジュールの各々と、その各々の上に配置された前記複数の対基板作業装置の1つ以上のものとを含んで対基板作業ユニットが構成され、その対基板作業ユニットが複数配置されて構成された(14)項に記載の対基板作業システム。
【0047】
ベースモジュールを採用する場合、そのベースモジュールとそれに配置される対基板作業装置とで、例えば、単独の対基板作業機として機能するユニットを構成することも可能である。その場合、1つのベースモジュールに2以上の対基板作業装置が配置されて対基板作業ユニットが構成される場合、そのユニット自体が、(1)項にいう対基板作業システムとなり得る。1つのベースモジュールに2つ以上の対基板作業装置が配置されたユニット、1つの対基板作業装置が配置されたものと比較して、ユニットごとに移動させる等の場合に、利便性に優れる。なお、ベースモジュール自体に、車輪装置等の移動容易化装置を設ければ、そのモジュールを含んで構成される対基板作業ユニットは、容易に移動可能なユニットとなる。ユニット化により、システムの汎用性が向上する。
【0048】
(16)前記複数の対基板作業装置のうちの少なくとも1つのものが、前記システムベースと分離可能にモジュール化されたモジュール化装置である(1)項ないし(15)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0049】
対基板作業装置を容易に分離可能にモジュール化すれば、いくつかのモジュール化装置をシステムベースに配置し直すことにより、容易にシステムの変更が可能となり、システムの汎用性が高まる。すべての対基板作業装置をモジュール化させれば、より高いフレキシビリティを有するシステムが実現される。対基板作業装置の一種である回路部品装着装置では、例えば、装置モジュール本体に、先に説明したところの部品供給装置、基板保持装置、装着ヘッド、装着ヘッド移動装置等を組み込んでモジュール化することができる。また、例えば、それらの装置を制御する制御装置、基板表面を認識する基板認識装置、装着ヘッドに保持された回路部品を認識する部品認識装置等の装置をも組み込んでモジュール化することもできる。なお、「分離可能」の程度に関していえば、例えばたくさんの締結具による締結等により対基板作業装置が固定されており、分離するのに大きな労力、手間を有するような状態ではなく、比較的簡単な操作により、容易に脱着可能な状態で、対基板作業装置が配置されることが望ましい。
【0050】
(17)前記モジュール化装置うちの少なくとも1つのものが、他に準備された別のモジュール化装置と交換可能とされた(16)項に記載の対基板作業システム。(18)前記複数の対基板作業装置のうちの少なくとも2つ以上のものが前記モジュール化装置であり、それら2つ以上のモジュール化装置のうちの少なくとも2つ以上ものもが、互いに配置位置を変更可能とされた(16)項または(17)項に記載の対基板作業システム。
【0051】
上記2つの項は、対基板作業装置のモジュール化の程度に関して限定を加えた態様である。(17)項に記載の態様では、別のモジュール化装置との交換を可能にするものであり、例えば、ある対基板作業装置を、その装置に異常が発見された場合に正常に作動する対基板作業装置と交換する、あるいは、システムが行う対基板作業の内容に応じて異なる種類の対基板作業装置と交換するといったことが容易に行え、交換作業時におけるロスの少ないシステムが実現される。また、(18)項に記載の態様では、配置替えを容易に行うことができ、システム変更における利便性が良好である。なお、複数の対基板作業装置がすべてモジュール化されており、いずれのモジュール化装置も他のものに交換可能な態様、または、いずれのモジュール化装置も任意に互いの配置位置を変更できる態様とすることが、システムの利便性、汎用性という観点からみて、より好ましい。
【0052】
(19)前記基板搬送装置が、前記基板搬送方向において分離可能にモジュール化された複数の基板搬送モジュールを含んで構成された(1)項ないし(18)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0053】
基板搬送装置を、その部分々々においてモジュール化すれば、ベースのモジュール化と同様、システムの長さの変更への対応が容易化する等、システムの汎用性が向上する。基板搬送装置のすべての部分がモジュール化されるものであってもよく、また、一部分のみがモジュール化されるものであってもよい。
【0054】
(20)前記基板搬送装置が、前記基板搬送方向において分離可能にモジュール化された複数の基板搬送モジュールを含んで構成されており、前記モジュール化装置のうちの1つ以上のものが、それら複数の基板搬送モジュールのうちの1つ以上のものを配備搬送装置として自身に配備してモジュール化された搬送装置配備モジュール化装置である(16)項ないし(18)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0055】
基板搬送装置の一部がモジュール化された基板搬送モジュールを、モジュール化された対基板作業装置に配備した態様が、本項に記載の態様である。システムが高度にモジュール化された態様である。1つのモジュール化装置に1つの基板搬送モジュールが配備された態様であってもよく、1つのモジュール化装置に2以上の基板搬送モジュールが配備された態様であってもよい。
【0056】
(21)前記配備搬送装置が、前記基板搬送装置のその配備搬送装置と隣り合う部分と協働して、回路基板を移送し、回路基板の少なくとも一部分をその配備搬送装置が配備された搬送装置配備モジュール化装置の作業領域の定められた作業位置に位置させるものである(20)項に記載の対基板作業システム。
【0057】
本項に記載の態様は、配備搬送装置としての基板搬送モジュールが、それが配備されたモジュール化装置における基板保持装置を兼ねる場合等に、特に有効な態様である。また、協働した搬送は、上流側,下流側の基板搬送装置の部分(別の配備搬送装置であってもよい)と配備搬送装置との間の回路基板の受け渡し、回路基板の移動の開始、停止等において、それぞれの間でのそれぞれの始動・停止のタイミング、それぞれの搬送速度等を、同期、同調等させること等によって実現される。また、例えば、回路基板の幅によって、上流側,下流側の基板搬送装置の搬送部の幅と配備搬送装置の搬送部の幅(例えば、コンベア装置である場合のコンベア幅等を意味する)とを互いに対応させつつ変更することを可能に構成することもできる。また、後に説明するように、1つの回路基板が1つの対基板作業装置により作業される場合の基板停止位置と、隣り合う2つの対基板作業装置に跨って位置する回路基板に対してそれら2つの装置が協働して作業を行う場合の基板停止位置とを、回路基板の種類に応じて切替可能に構成することもできる。
【0058】
(22)前記基板搬送装置が、コンベアを主体とする装置であり、前記配備搬送装置が、前記基板搬送装置の他の部分から独立したコンベアを有し、そのコンベアが、前記搬送装置配備モジュール化装置が前記システムベースに配置された場合に、前記基板搬送装置の隣り合う部分に存在するコンベアと一線上に位置する構成とされた(21)項に記載の対基板作業システム。
【0059】
ベルトコンベア等のコンベアを主体とする搬送装置は、簡便である。また、基板搬送方向に容易に分離してモジュール化することもできるというメリットをも併せ持つ。
【0060】
(23)当該対基板作業システムが、前記配備搬送装置の動作と前記基板搬送装置のその配備搬送装置と隣り合う部分の動作とを協調させるべく、前記基板搬送装置の制御を行う基板搬送協調制御部を含む(21)項または(22)項に記載の対基板作業システム。
【0061】
先に説明したような、上流側,下流側の基板搬送装置の部分と配備搬送装置との間の基板の受け渡し、回路基板の任意の停止位置への停止等を、各装置が協調して行うことを可能とする態様である。例えば、配備搬送装置等がコンベアを主体とするものである場合には、それらが有するコンベアの動作を協調させる。具体的には、配備搬送装置とそれに隣り合う基板搬送装置の部分とのそれぞれに、回路基板の一部分が存在するか否かを確認する基板検知器を1箇所以上の箇所に設け、基板搬送強調制御部が、それら基板検知器の設けられた箇所における基板検知信号に基いて、配備搬送装置の動作とそれに隣り合う基板搬送装置の部分の動作とを協調させる制御を行う態様のシステムとすることができる。コンベアを主体とする装置の場合は、そのコンベアの始動・停止、搬送速度の変更等において、同期、同調、タイミングの適正化等を図ればよい。基板搬送協調制御部は、その制御の中心となる部分が、システムベース等、システムの共有部分に設けられるものであってもよく、また、各対基板作業装置のそれぞれの制御装置内等に分散して存在するものであってもよい。
【0062】
なお、上記(21)項ないし(23)項に記載の特徴は、基板搬送モジュールが配備搬送装置としてモジュール化装置に配備されたものか否かに拘わらず、基板搬送モジュールの特徴となり得る。したがって、(19)項にいうところの「複数の基板搬送モジュール」のうちの1つ以上のものを「着目対象基板搬送モジュール」とし、(21)項ないし(23)項の「配備搬送装置」を「着目対象基板搬送モジュール」として、これら(21)項ないし(23)項に記載の技術的特徴よって、(19)項を限定したものも、本発明の一態様となり得る。
【0063】
(24)前記複数の対基板作業装置の少なくとも一部である複数のものの各々が、互いに隣接する状態に配置された相互隣接配置装置であり、それら複数の相互隣接配置装置が互いに隣接する状態に配置されて隣接装置群をなす(1)項ないし(23)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0064】
対基板作業装置を隣接して配置することにより、コンパクトな対基板作業システムが実現する。ここでいう「隣接」とは、対基板作業装置の外表面の少なくとも一部分が互いに接近して配置されることを意味する。なお、互いを連結する部材等、特殊な部材の表面は上記外表面からは除く。平たく言えば、例えば、隣接装置群を構成する相互隣接配置装置が、基板搬送方向において殆ど隙間なく配置されている状態である。相互隣接配置装置が前述の可動装置である場合等には、その装置の基板搬送方向に交差する方向への移動を隣接する装置との干渉を生じない状態で行い得る程度の隙間の存在を容認するものとする。具体的には、互いの装置の外表面の間隔が、例えば、最も小さな部分おいて50mm以内であることが望ましく、30mm以内であることがより望ましく、さらには15mm以内であることが望ましい。なお、複数の対基板作業装置の一部が隣接装置群を構成する態様を採用してもよく、また、よりコンパクトである態様として、複数の対基板作業装置のすべてによって隣接装置群が構成される態様を採用することも可能である。
【0065】
(25)前記複数の相互隣接配置装置の各々が、前記システムベースと分離可能にモジュール化されたものであり、各々の前記基板搬送方向における幅が、設定された単位幅の略整数倍に規格化された(24)項に記載の対基板作業システム。
【0066】
隣接装置群を構成する対基板作業装置である相互隣接配置装置がモジュール化されている場合、それらの装置の幅を規格化することによって、コンパクトかつフレキシブルなシステムが実現される。対基板作業装置の「幅」とは、対基板作業装置の基板搬送方向において互いに反対側に位置する外表面の部分の離間距離のうち最も大きな値となる距離を意味する。互いを連結する部材等、特殊な部材が存在する部分の幅については、それを除外して考える。例えば、同じ外形形状を有する対基板作業装置を、基板搬送方向において整列した状態で互いに密着させた状態でシステムベースの所定の配置位置に配置した場合には、その配設ピッチがその装置の幅と等しくなる。幅が規格化されれば、隣接装置群の幅も規格化されることになり、相互隣接配置装置の交換、配置替え等をする場合に、ベースの使い回しが可能となる。
【0067】
規格化における単位幅は、例えば、最も幅の小さな相互隣接配置装置の幅に略相当する幅とすることができる。その場合、他の相互隣接配置装置は、その幅と等しい幅、すなわちその幅の1倍の幅、あるいは、2倍、3倍・・・の幅とすればよい。相互隣接装置が可動装置となる場合等、配置替え等を考慮して装置間に若干の隙間を設けることが必要とされる場合には、装置の幅は厳密には整数倍とはならないが、そのような場合であっても、そのシステムは本項に記載の態様に含まれるものとする。
【0068】
(26)前記システムベースが、少なくとも前記隣接装置群が配置される部分に、前記基板搬送方向において前記単位幅に等しいピッチで設けられて前記複数の相互隣接配置装置の各々の少なくとも前記基板搬送方向の配置位置を決定する複数の配置位置決定装置を備え、それら複数の相互隣接配置装置の各々が、それら複数の配置位置決定装置のうちの1つ以上のものにより配置位置が決定される(25)項に記載の対基板作業システム。
【0069】
本項に記載の態様は、平たく言えば、例えば、システムベースに設けられた配置位置決定装置を規格化し、相互隣接配置装置における配置位置決定装置に対する位置関係を規格化した態様である。例えば、単位幅の相互隣接配置装置のみで隣接装置群を構成する場合、いずれの配置位置決定装置が、いずれの相互隣接配置装置をも所定の配置位置に配置可能とすれば、それら相互隣接配置装置を位置を入れ替えて配置した場合であっても、隣接装置群を容易に構成することができる。また、単位幅の略2倍の相互隣接配置装置の場合は、相互に隣接する2つの単位幅の相互隣接配置装置が配置され、それらを一体化された装置であると仮定した場合において、その仮定した装置が配置される位置と同じ位置に配置可能なように、配置位置決定装置を構成すればよい。基本幅の略3倍、略4倍・・・の装置についても同様の構成とすればよい。上述のような構成とすれば、隣接装置群を構成する相互隣接配置装置の配置替え、交換、増減等に対応して、容易に、多様な隣接装置群を有するシステムを構築することができる。また、システムベースの汎用性がより向上する。
【0070】
(27)前記配置位置決定装置が、前記相互隣接配置装置の前記基板搬送方向における配置位置を決定する搬送方向位置決定部と、前記基板搬送方向と交差する方向における配置位置を決定する交差方向位置決定部とを有する(26)項に記載の対基板作業システム。
【0071】
本項に記載の態様では、上記両方向の位置決めが可能であり、実用的なシステムとなる。搬送方向位置決定部および交差方向位置決定部の具体的態様が限定されるものではないが、例えば、相互隣接装置が可動装置である場合、前述した、可動装置移動許容装置の装置軌道形成部がシステムベースに設けられているときには、その装置軌道形成部が搬送方向位置決定部を兼ねる態様とすることができる。また、前述の可動装置固定装置の一部分が、上記交差方向位置決定部を兼ねる態様とすることができる
【0072】
(28)当該対基板作業システムが、前記複数の対基板作業装置のうちの互いに隣り合う2以上のものによって構成された作業装置群を有し、その作業装置群を構成する対基板作業装置の作業領域に跨って位置する大きさの回路基板に対して対基板作業を行うことが可能な(1)項ないし(27)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0073】
本発明の対基板作業システムは、各々の対基板作業装置の作業領域内に収まるような大きさの回路基板を、基板搬送装置によって移送し、各対基板作業装置の作業領域内に順次停止させて、各々の対基板作業装置による対基板作業を行うような作業形態を採用することができる。これに対し、本項記載の態様は、比較的小さな対基板作業装置を整列させ、比較的大きな回路基板に対する対基板作業を行うに際して、その回路基板を、複数の対基板作業装置に跨る位置に位置させて対基板作業を行う作業形態が採用可能な態様である。対基板作業装置を小型化できるという利点を有し、システム全体を小型化できるという利点を有する。
【0074】
作業装置群は、配備された対基板作業装置のうちの一部のものによって構成される態様でもよく、また、すべての対基板作業装置によって構成される態様であってもよい。また、システムにおける作業装置群の数は1つであってもよく、2つ以上であってもよい。複数の対基板作業装置のすべてを複数の作業装置群に区分するような態様も含まれる。その場合、例えば、基板搬送方向における装置幅が互いに等しい複数の対基板作業装置をすべて隣接して配置し、同じ数の対基板作業装置によって互いに隣接した複数の作業装置群とし、作業装置群ごとに同じ種類の対基板作業を行う対基板作業装置が含まれるようにシステムを構成すれば、そのシステムは実用的なシステムとなる。
【0075】
(29)前記作業装置群を構成する対基板作業装置の作業領域に跨って位置する大きさの回路基板に対して対基板作業を行う際に、前記基板搬送装置に、回路基板をその作業装置群を一単位として搬送させ、その作業装置群を構成する対基板作業装置の各々に、その各々の作業領域に位置する回路基板の部分領域に対してその各々に定められた一定の対基板作業を行わせることで、その回路基板に対する対基板作業を一括して行わせる一括作業制御部を含む(28)項に記載の対基板作業システム。
【0076】
(30)前記作業装置群を構成する対基板作業装置の作業領域に跨って位置する大きさの回路基板に対して対基板作業を行う際に、前記基板搬送装置に、回路基板をその作業装置群を構成する対基板作業装置ごとに順送りに搬送させ、その作業装置群を構成する対基板作業装置の各々に、その各々が作業する回路基板の部分領域を順次変更しつつ、作業する部分領域に対応して定められた対基板作業を順次行わせる順送作業制御部を含む(28)項に記載の対基板作業システム。
【0077】
(31)当該対基板作業システムが、(a)前記作業装置群を構成する対基板作業装置の作
業領域に跨って位置する大きさの回路基板に対して対基板作業を行う際に、前記基板搬送装置に、回路基板をその作業装置群を一単位として搬送させ、その作業装置群を構成する対基板作業装置の各々に、その各々の作業領域に位置する回路基板の部分領域に対してその各々に定められた一定の対基板作業を行わせることで、その回路基板に対する対基板作業を一括して行わせる一括作業制御部と、(b)前記作業装置群を構成する対基板作業装置の作業領域に跨って位置する大きさの回路基板に対して対基板作業を行う際に、前記基板搬送装置に、回路基板をその作業装置群を構成する対基板作業装置ごとに順送りに搬送させ、その作業装置群を構成する対基板作業装置の各々に、その各々が作業する回路基板の部分領域を順次変更しつつ、作業する部分領域に対応して定められた対基板作業を順次行わせる順送作業制御部とを含み、かつ、前記一括作業制御部による制御と前記順送作業制御部による制御とを選択的に行わせる作業形態選択制御部を含む(28)項に記載の対基板作業システム。
【0078】
上記3つの態様は、2以上の対基板作業装置に跨る大きさの回路基板に対して作業を行う際の作業形態に関する。平たく言えば、例えば、回路基板における被作業領域をいくつかの領域に分けた場合に、そのうちの1つの領域に対する対基板作業を1つの対基板作業装置によって行う態様が(29)項に記載の態様であり、1つの対基板作業装置が複数の領域に対する対基板作業を順次行う態様が(30)項に記載の態様である。それらの態様では、コンパクトな対基板作業装置で、比較的大きな回路基板に対する対基板作業を行うことが可能であり、利便性に富んだシステムとなる。そして、(31)項に記載の態様は、その2つの作業形態を選択的に行い得る態様であり、作業形態の幅が広がり、よりフレキシブルなシステムとなる。なお、例えば、同一構成の対基板作業装置が互いに隣接して複数配置され、同数の対基板作業装置によって構成されて互いに隣接する複数の作業装置群に区分けされたシステムにおいては、(30)項の態様では、回路基板の搬送ピッチは、それらの対基板作業装置の配置ピッチに等しいピッチとすることができ、また、(29)項の態様では、配置ピッチに作業装置群にを構成する対基板作業装置の数を乗じたピッチとすることができる。
【0079】
(32)前記複数の対基板作業装置の少なくとも1つのものが、
回路基板に対する主たる作業動作を行う作業ヘッドと、
その作業ヘッドを直交する2方向にそれぞれ移動させる2つの直線移動装置を備えて、前記作業ヘッドを一平面内において移動させるヘッド移動装置と、
を含む作業ヘッド平面移動型装置であり、
当該対基板作業システムが、前記ヘッド移動装置を制御するヘッド移動制御部を含む(1)項ないし(31)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0080】
本項に記載の態様は、対基板作業装置少なくともいずれかが、いわゆるXYロボット型の移動装置を備えた装置である態様である。例えば、回路部品装着作業、接着剤塗布作業、検査作業等を行う対基板作業装置が、本項における作業ヘッド平面移動型装置となり得る。そしてそれらの装置においては、例えば、回路部品装着装置の場合は、回路部品保持デバイスを含む装着ヘッドが、接着剤塗布装置においては、シリンジ,ディスペンサ等を有する塗布ヘッドが、検査装置の場合は、回路基板表面を認識する基板認識デバイス等を有する検査ヘッドが、それぞれの装置の作業ヘッドに相当する。
【0081】
ヘッド移動装置がXYロボット型移動装置である場合、X軸方向に作業ヘッドを移動させるXスライド装置と、Y軸方向に作業ヘッドを移動させるYスライド装置とが、上記2つの直線移動装置のそれぞれに相当する。例えば、Xスライド装置は、X軸方向ガイドと、X軸方向ガイドに沿って移動するXスライドと、Xスライドを移動させるXスライド移動装置とを備えた構成とし、同様に、Yスライド装置は、Y軸方向ガイドと、Y軸方向ガイドに沿って移動するYスライドと、Yスライドを移動させるYスライド移動装置とを備えた構成とすることができ、X軸方向ガイドとY軸方向ガイドとの一方を対基板作業装置の本体部分に固定的に設け、X方軸向ガイドとY軸方向ガイドとの他方を、前記X軸方向ガイドとY軸方向ガイドとの一方に沿って移動するところのXスライドとYスライドとの一方に固定的に設け、そして、XスライドとYスライドとの他方に作業ヘッドを保持させることによって、作業ヘッド平面移動型装置であるXYロボット型移動装置を構成することができる。
【0082】
ヘッド移動制御部は、対基板作業システムのいずれの箇所に設けられるものであってもよい。例えば、作業ヘッド平面移動型装置とされた対基板作業装置が備える制御装置内に設けられるものであっても、対基板作業装置以外の箇所、例えばシステムベース、独立した制御盤等に備えられた制御装置に設けられてもよい。また、部分ごとに複数の箇所に分散して設けられ、それらの部分が情報をやり取りしつつ、総合的に制御を行う態様ものであってもよい。
【0083】
(33)回路部品を支持して電子回路を構成する回路基板に対して、予定された対回路基板作業を行う対基板作業システムであって、
(a)回路基板に対する主たる作業動作を行う作業ヘッドと、(b)その作業ヘッドを直交する2方向にそれぞれ移動させる2つの直線移動装置を備えて、前記作業ヘッドを一平面内において移動させるヘッド移動装置とを含むヘッド平面移動型装置である対基板作業装置と、
そのヘッド移動装置を制御するヘッド移動制御部と
を含む対基板作業システム。
(34)前記対基板作業装置が、回路基板の表面に高粘性流体を塗布する高粘性塗布作業、回路基板の表面に回路部品を装着する回路部品装着作業、それら高粘性塗布作業と回路部品装着作業との少なくとも一方の作業の結果を検査する検査作業から選ばれる対回路基板作業のうちの少なくとも1つの作業を行う装置である(33)項に記載の対基板作業システム。
【0084】
上記2つの項は、発明として認識された態様を示すものではなく、以下に掲げる項の前提項としての役割を果たす。つまり、具体的に例示すれば、(1)項に示すところの構成要件である、「システムベース」,「基板搬送装置」,「複数」の対基板作業装置といった要件を必須要件としない対基板作業システム(例えば、独立した対基板作業機等)においても、以下の項に記載の技術的特徴を付加したものが発明として成立し得ることから、それらをも含めた本発明の説明を行うために、上記2つの項を便宜的に設けた。
【0085】
(35)前記2つの直線移動装置の少なくとも一方が、自身による前記作業ヘッドの移動方向に平行な第1の軌道を形成する第1軌道形成部と、その第1の軌道に沿って移動しかつその第1の軌道に平行な第2の軌道を形成する第2軌道形成部と、前記作業ヘッドを保持して前記第2軌道に沿って移動する移動部とを有し、複段式移動装置として構成された(32)項ないし(34)項のいずれかに記載の対基板作業システム。
【0086】
本項に記載の態様は、対基板作業装置がヘッド平面移動型装置である場合において、ヘッド移動装置が備える直線移動装置に関する限定を加えた態様である。ヘッド移動装置がXYロボット型移動装置である場合、Xスライド装置とYスライド装置の少なくとも一方が、例えば、伸縮型(テレスコピック型)のスライド装置等の複段式(多段式)の移動装置とされた態様である。上記態様のシステムでは、コンパクトな対基板作業装置とした上で、広い作業領域を確保することが可能である。
【0087】
例えば、Xスライド装置を2段式移動装置とする場合、第1X軸方向ガイドを有して構成された第1軌道形成部と、それに沿って移動する第1Xスライドに第1X軸方向ガイドに平行な第2X軸方向ガイドを固定的に設けることによって構成された第2軌道形成部と、第2X軸方向ガイドに沿って移動する第2Xスライドを有して構成された移動部とを備えた態様とすることができる。Yスライド装置を2段式移動装置とする場合も同様である。さらに、直線移動装置を3段式以上の複段式移動装置とする場合も、同様の方式を採用すればよい。
【0088】
例えば、Y軸方向ガイドが装置本体部に固定的に設けられ、YスライドにX軸方向ガイドが固定的に設けられ、そして、Xスライドが作業ヘッドを保持する場合において、Xスライド装置のみを複段式装置とするものであってもよく、Yスライド装置のみを複段式装置とするものであってもよく、また、両者ともに複段式装置としてもよい。Xスライドを複段式移動装置とする場合、上記移動部は、直接的に作業ヘッドを保持する態様となる。これに対して、Yスライド装置を複段式装置とする場合は、移動部はXスライド装置を介して間接的に作業ヘッドを保持することになる。本項の態様においては、このように、移動部が一方の直線移動装置を介して間接的に作業ヘッドを保持する態様をも含むのである。
【0089】
複段式移動装置の伸縮代は、任意に設定できる。例えば、一方の直線移動装置を複段式装置とする場合、第2軌道形成部が全く移動しないと仮定した場合の作業領域に対して、第2軌道形成部を移動させることによって、その作業領域が5%以上拡大する伸縮代とすることが望ましい。より望ましくは10%以上の拡大作業領域が得られるような収縮代に、さらに望ましくは、20%以上の拡大作業領域が得られるような伸縮代とするのがよい。
【0090】
(36)前記第1の軌道上の前記第2軌道形成部の移動範囲内にその第2軌道形成部の停止位置である複数の軌道部停止位置が設定されており、前記ヘッド移動制御部が、その第2軌道形成部を前記複数の軌道部停止位置のいずれかに停止させた状態で、前記第2軌道に沿って前記作業ヘッドを移動させる軌道部停止ヘッド移動制御部を備えた(35)項に記載の対基板作業システム。
【0091】
複段式移動装置とした場合、作業ヘッドの一停止位置に対して、移動部の第2軌道上の停止位置と第2軌道形成部の第1軌道上の停止位置との組み合わせが任意に選択できる。極端には連続的な無限の組み合わせが存在し、その中から、何らかの規律に基づいて両者の停止位置を決定する制御可能である。本項に記載の態様では、まず第2軌道形成部の第1軌道上の停止位置をいくつか設定しておき、軌道部停止ヘッド移動制御部が、その設定位置の中から停止位置を選択して、その選択した停止位置に第2軌道形成部を停止させた状態で、移動部を移動させるのである。第2軌道形成部の停止位置の選択を、一定の規律に基づいて行えば、作業ヘッドの停止位置の制御が容易となる。一定の規律を、シチュエーションに応じて変更することも可能であり、対応性に富んだ制御が可能となる。例えば、作業ヘッドの移動可能領域をいくつかの区分領域に分割し、作業ヘッドをいずれの区分領域に停止させるかに基づいて、第2軌道形成部の停止位置を決定するような制御とすることができる。なお、ここでいう「停止させた状態で」とは、必ずしも、第2軌道形成部材を停止させた後に作業ヘッドを移動させることだけを意味するものではない。実際の制御において、第2軌道形成部の停止位置の変更時において、第2軌道形成部の別の停止位置への移動と、第2軌道形成部に対する作業ヘッドの移動とが、同時あるいは殆ど時間をおかずして開始される場合もある。その場合、両者がともに移動しているケースが発生し得る(発生する頻度は必ずしも高くない)。上記「停止させた状態で」は、かかるケースも含む意味である。
【0092】
(37)前記複段式移動装置とされた直線移動装置による前記作業ヘッドの移動方向である特定方向において、その直線移動装置の前記第1軌道形成部および前記第2軌道形成部の長さが、前記ヘッド平面移動型装置の装置領域の幅を超えない長さとされており、前記ヘッド移動制御部が、前記第2軌道形成部を前記第2軌道の一部が装置領域外に進出する位置に移動させることによって、前記作業ヘッドを装置領域外にまで進出可能とする進出制御部を備えた(35)項または(36)項に記載の対基板作業システム。
【0093】
本項に記載の態様によれば、装置領域内に収まる直線移動装置を備える対基板作業装置において、例えば、第2軌道形成部の一部を装置領域からはみださせることにより、作業領域を装置外に拡大することが可能となる。「装置領域」とは、対基板作業装置の装置本体部の外表面によって区画される内部空間を意味する。第2軌道形成部,作業ヘッド等の移動して進出する装置,デバイス,部材等、あるいは、対基板作業装置を互いに連結する部材等の特殊な部材等の外表面は除外して、内部空間が決定されるものとする。なお、特定方向における装置領域の片側にのみ作業ヘッドが進出するものであってもよく、また、両側に進出するものであってもよい。
【0094】
(38)着目対象装置としての前記ヘッド平面移動型装置とは別の対基板作業装置が前記特定方向に並ぶ状態で並設装置として配置された場合に、前記進出制御部の制御によって、その着目対象装置の前記作業ヘッドがその並設装置の装置領域にまで進出可能とされた(37)項に記載の対基板作システム。
【0095】
本項以下の項においては、特定方向に並ぶ対基板作業装置が存在する場合の態様であり、説明の中心となる側の対基板作業装置を着目対象装置とし、それに並ぶ対基板作業装置を並設装置とする。本項の態様では、隣り合って並ぶ装置の装置領域にまで作業領域が拡大される。対基板作業装置が並ぶ方向である特定方向は、着目対象装置における複段式移動装置による作業ヘッドの移動方向であるが、システムが複数の対基板作業装置を含みそれらが基板搬送方向に整列する場合、特定方向は、その基板搬送方向であってもよい。本項以下の態様は、特定方向が基板搬送方向である場合に、特に実用的な対基板作業システムとなる。
【0096】
(39)前記着目対象装置と前記並設装置とが、両者に跨って位置する回路基板に対して協働して作業可能な(38)項に記載の対基板作業システム。
【0097】
並設装置の装置領域にまで着目対象装置の作業領域が拡大されれば、互いの装置の作業領域を重複させることが可能となる。その場合、2つの装置に跨るように回路基板を位置させれば、作業領域の重複部分において、その回路基板に対する協働作業が可能となる。そのため、作業領域におけるデッドゾーンをなくすことが可能となる。また、2つの装置の協働作業を可能とすることは、作業形態の豊富化につながる。協働作業は、重複する作業領域の有無に拘わらず、1つの回路基板に対して2以上の対基板作業装置が時期を同じくして作業を行う場合が含まれる。重複作業領域が存在する場合、例えば、その重複作業領域において両装置のいずれもが作業を行う態様が含まれる。また、例えば、重複作業領域において、着目対象装置の作業ヘッドのみが作業を行い、並設装置の作業領域のうちの重複作業領域とならない部分においては、並設装置が作業を行うようにする態様、つまり、作業領域を区分してそれぞれが区分されたそれぞれの領域において作業を行うような態様も含まれる。そのような態様では、2つの装置の作業負荷を均等化させることが可能になる。なお、例えば、後に説明するように、重複作業領域において、着目対象装置の作業ヘッドや第2軌道形成部が並設装置の構成部分との干渉を避けるように移動して作業を行うような態様も、協働作業の態様の一種である。
【0098】
(40)前記並設装置が前記着目対象装置と同様の構成の装置である場合に、その並設装置が備える前記作業ヘッドがその着目対象装置の装置領域にまで進出することを許容する(38)項または(39)項に記載の対基板作業システム。
【0099】
並設装置が「同様の構成」であるとは、並設装置がヘッド平面移動型装置であり、少なくとも一方の直線移動装置が複段式移動装置であり、かつ、自身の装置領域外に作業ヘッドを進出させることが可能であることを意味する。そのような並設装置を並んで配置させ、その作業ヘッドを着目対象装置の装置領域内にヘッドを進出させることによって、重複する作業領域をさらに拡大させることができ、さらに作業形態のバリエーションが豊富化する。
【0100】
(41)前記着目対象装置と前記並設装置とが、両者に跨って位置する回路基板に対して協働して作業可能とされ、前記ヘッド移動制御部が、協働作業時おいて、前記着目対象装置の作業ヘッド等と前記並設装置の作業ヘッド等との干渉を避けつつ、前記作業ヘッドを移動させる干渉回避制御部を含む(40)項に記載の対基板作業システム。
【0101】
ここで「作業ヘッド等」とは、着目対象装置と並設装置との一方の装置の構成部分であって、着目対象装置と並設装置との他方の装置の装置領域に進出可能な作業ヘッドを始めとする構成部分を意味する。2つの対基板作業装置を互いに、独立した制御(無関係な制御)下で動作させれば、その構成部分どうしが干渉することになる。具体的には、「作業ヘッド等」には、作業ヘッドと第2軌道形成部とが含まれる。2つの対基板作業装置の作業ヘッド等の干渉を回避できれば、円滑な協働作業が可能となる。具体的には、例えば、両装置の作業ヘッド等がともに位置することが可能な領域内に、両者の作業ヘッド等を同時に存在させないといった制御を行うことが、本項の態様のうちの一態様となる。
【0102】
(42)前記着目対象装置と前記並設装置との一方の装置の前記作業ヘッドが、その一方の装置の前記第2軌道上のいずれの位置に位置させられるときであっても、その一方の装置の前記作業ヘッド等が前記着目対象装置と前記並設装置との他方の装置の装置領域に進出しない状態となる範囲において、前記一方の装置の前記第2軌道形成部が位置させられる前記第1軌道上の限界位置を、前記一方の装置についての非進出限界位置とし、かつ、前記他方の装置の前記作業ヘッド等が前記一方の装置の装置領域内に最も進出する状態において、前記一方の装置の前記作業ヘッドが前記第2軌道上のいずれの位置に位置させられるときであっても、前記一方の装置の前記作業ヘッド等と前記他方の装置の前記作業ヘッド等とが互いに干渉しない状態となる範囲において、前記一方の装置の前記第2軌道形成部が位置させられる前記第1軌道上の限界位置を、前記一方の装置についての非干渉限界位置とした場合において、
前記干渉回避制御部が、前記並設装置の前記第2軌道形成部が自身の前記非干渉限界位置を超えない位置に位置する状態となる場合において、前記着目対象装置の前記第2軌道形成部が自身の前記非進出限界位置を超えて位置することを許容し、かつ、前記並設装置の前記第2軌道形成部が自身の前記非進出限界位置を超えた位置に位置する状態となる場合において、前記着目対象装置の前記第2軌道形成部が自身の前記非干渉限界位置を超えて位置することを禁止する第2軌道形成部位置制御部を有する(41)項に記載の対基板作業システム。
【0103】
本項に記載の態様は、2つの対基板作業装置の干渉を回避するための具体的な一態様であり、第2軌道形成部の第1軌道上の位置を管理することにより2つの装置の作業ヘッド等の干渉を避ける制御を行う態様である。平たく言えば、例えば、第2軌道形成部の位置に関して、自身の作業ヘッド等が自身の装置領域を進出しない限界位置と、たとえ相手側の作業ヘッド等が進出したとしても自身の作業ヘッド等と干渉しない限界位置とを、それぞれの装置について定め、通常は、互いの第2軌道形成部が前者を超えないように制御し、一方の装置の第2軌道形成部が後者を超えない場合にのみ、他方の装置の第2軌道形成部が前者を超えることを許容するように制御する態様が、本項の態様に含まれる。
【0104】
(43)前記第1の軌道上の前記第2軌道形成部の移動範囲内に、その第2軌道形成部の停止位置として、前記非干渉限界位置を超えない位置に存在する1つ以上の非干渉停止位置と、前記非進出限界位置を超えて存在する1つ以上の進出停止位置とを含む複数の軌道部停止位置が設定されており、
前記第2軌道形成部位置制御部が、前記並設装置の前記第2軌道形成部が自身の前記非干渉限界位置を超えない位置に位置する状態となる場合において、前記着目対象装置の前記第2軌道形成部を前記進出停止位置のいずれかに停止させることを許容し、かつ、前記並設装置の前記第2軌道形成部が自身の前記非進出限界位置を超えた位置に位置する状態となる場合において、前記着目対象装置の前記第2軌道形成部を前記非干渉停止位置のいずれかに停止させるものである(42)項に記載の対基板作業システム。
【0105】
本項に記載の態様は、上記(42)項の態様と、前記(36)項で説明したところの、第2軌道形成部をいずれかの設定停止位置に停止させた状態で移動部を移動させる態様とを組み合わせた一態様である。上記非進出限界位置および非干渉限界位置との関係で複数の軌道部停止位置を設け、互いの第2軌道形成部の停止位置を管理することにより、2つの対基板作業装置の作業ヘッド等の干渉を回避する制御を行う態様である。
【0106】
以上、本発明の対基板作業システムの各種態様について説明したが、上記説明において、システムに含まれる対基板作業装置を、「可動装置」,「モジュール化装置」,「搬送装置配備モジュール化装置」,「相互隣接配置装置」,「モジュール化相互隣接配置装置」,「ヘッド平面移動型装置」,「着目対象装置」,「並設装置」といった種々の機能名称によって呼び分けている。これらの名称は、あくまで、その対基板作業装置の特性を示すために便宜的に使用するものであり、本発明は、1つの対基板作業装置が上記名称に対応する複数の機能を有する態様を妨げるものではない。すなわち、ある対基板作業装置が、「可動装置」であり、「モジュール化装置」であり、「相互隣接配置装置」であり、かつ、「ヘッド平面移動型装置」であるといった態様も、本発明の一態様なのである。

【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】回路部品装着システムのいくつかの態様を示す全体図斜視図である。
【図2】基本的態様の回路部品装着システムを1つの回路部品装着装置の外装部品を取り除いて示す斜視図である。
【図3】基本的態様の回路部品装着システムを構成するシステムベースの斜視図を示す。
【図4】回路部品装着装置に配備された配線板搬送装置の全体を示す斜視図である。
【図5】配線板搬送装置のコンベアレールの1つを正面から見た図およびその一部の断面図である。
【図6】回路部品装着装置が備える装着ヘッドおよびヘッド移動装置を示す斜視図である。
【図7】ヘッド移動装置のXスライド装置を示す水平断面図である。
【図8】ヘッド移動装置を模式的に示す斜視図である。
【図9】回路部品装着装置が備える装着ヘッドを示す斜視図である。
【図10】Xスライド装置による装着ヘッドの移動を示す模式図である。
【図11】Xスライド装置による装着ヘッドの移動において、第1Xスライドを所定の停止位置に停止させて装着ヘッドを移動させる方法を示す模式図である。
【図12】回路部品装着装置の制御ブロック図である。
【図13】基本的態様の回路部品装着システムの右側面一部断面図である。
【図14】基本的態様の回路部品装着システムの正面一部断面図である。
【図15】基本的態様の回路部品装着システムに準備されているテーブル装置と、そのテーブル装置の使用状態を示す斜視図である。
【図16】基本的態様の回路部品装着システムのシステムベースとテーブル装置とを連結する連結装置を示す斜視図である。
【図17】回路部品装着システムについてのいくつかの別の態様を示す全体図斜視図である。
【図18】幅の異なる回路部品装着装置を配備した回路部品装着システムを示す斜視図である。
【図19】幅の異なる回路部品装着装置を配備した別の回路部品装着システムを示す斜視図である。
【図20】単位幅の回路部品装着装置を8つ整列して配置可能なシステムベースを示す斜視図である。
【図21】図20に示すシステムベースを例にとって、各種幅の回路部品装着装置の配置方式を説明するための概念図である。
【図22】主として配線板の搬送作業を行う搬送作業装置を回路部品装着装置の間に配置した態様の回路部品装着システムを示す斜視図である。
【図23】対基板作業の種類が異なる各種対基板作業装置を配置した対基板作業システムを示す斜視図である。
【図24】回路部品装着システムにおいて、配線板搬送装置が複数並んだ状態を示す模式図である。
【図25】回路部品装着システムにおける配線板の搬送方法の第1例を示す模式図である。
【図26】回路部品装着システムにおける配線板の搬送方法の第2例を示す模式図である。
【図27】回路部品装着システムにおける配線板の搬送方法の第3例を示す模式図である。
【図28】回路部品装着システムにおいて、1つの回路部品装着装置を着目対象装置とし、それの一方の側に隣接する回路部品装着装置を並設装置として、2つの装置の装着ヘッド等の動作を示す模式図である。
【図29】回路部品装着システムにおいて回路部品装着作業に供されるところの、2つの装着装置に跨る配線板を示す模式図である。
【図30】回路部品装着システムにおいて2つの回路部品装着装置に跨る配線板に対して回路部品装着作業を行う場合の一作業形態を示す模式的である。
【図31】回路部品装着システムにおいて2つの回路部品装着装置に跨る配線板に対して回路部品装着作業を行う場合のもう一つの作業形態を示す模式的である。
【図32】回路部品装着システムの各回路部品装着装置が備えた装着装置制御装置に関する機能ブロック図である。
【図33】主として配線板のストック作業を行うストック作業装置を配置した態様の回路部品装着システムを示す斜視図である。
【図34】主として配線板の搬送経路を変更する作業を行う搬送経路変更作業装置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0108】
以下、請求可能発明を実施するための形態を、実施例として、図を参照しつつ説明する。なお、請求可能発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、その実施形態の他、前記〔発明の態様〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【実施例】
【0109】
<基本的態様の対基板作業システム>
i)システムの全体構成
図1(a)に、対基板作業システムの1つの基本的態様を示す。図1(a)に示すシステムは、回路部品装着作業を行う回路部品装着システムであり、1つのシステムベース10の上に、同じ構成の2つの回路部品装着装置(対基板作業装置の1種であり、以下「装着装置」と略す)12が互いに隣接して同じ向きに配置されている。なお、以下の説明の便宜を図るべく、装着装置12の並ぶ方向を左右方向とし、その方向に直角な水平の方向を前後方向と称することにする。
【0110】
ii)装着装置の構成の概要
図2に、上記基本的態様のシステムにおける一方の装着装置12の外装部品の一部を取り除いた斜視図を示す。装着装置12の各々は、フレーム14部とフレーム部14に上架されたビーム部16とを含んで構成された装置本体18を有している。また、装着装置12の各々は、装置本体18のフレーム部14の前方の部分に、回路部品の1種である電子部品がテーピング化された電子部品テーピングから電子部品を1つずつ供給するテープフィーダ20を複数備えた電子部品供給装置22を備えている。この電子部品供給装置22は、回路部品供給装置の1種であり、図示するものはリールに巻回されたテープ化電子部品から部品を供給するフィーダを主体として構成された装置である。以下、電子部品供給装置を、単に「部品供給装置」と略す。詳しい説明は省略するが、部品供給装置22は、テープフィーダ20を整列して載置するパレットを有し、そのパレットはフレーム部14に着脱可能に設けられている。また、各テープフィーダ20も、パレットに対して着脱可能とされており、電子部品の種類に応じた任意のテープフィーダ20を任意の順に配列可能となっている。
【0111】
さらに、各装着装置12には、回路基板の1種であるプリント配線板(以下、「配線板」と略す)を搬送するとともに、配線板を設定された位置に固定して保持する基板板保持装置としての機能をも有する配線板搬送装置24が、それぞれ配備されている。2つの装着装置12が所定の配置位置に位置する状態において、2つの配線板搬送装置24は、互いに揃うようにされ、互いに協働して配線板を搬送可能とされている。本態様のシステムにおいては、配線板は、装着装置12が並ぶ方向である左右方向に搬送される。すなわち、その方向が、本態様のシステムにおける配線板搬送方向(「基板搬送方向」と称することもできる)となる。配線板搬送装置24については、さらに後述する。
【0112】
また、装着装置12の各々は、部品供給装置22から電子部品を取出し、配線板搬送装置24に保持された配線板にその電子部品を装着する装着ヘッド26(作業ヘッドの1種である)を有しており、装着ヘッド26は、各々のビーム部16に配備されたXYロボット型の移動装置である各々の装着ヘッド移動装置(以下、「ヘッド移動装置」と略す)28によって、部品供給装置22と配線板搬送装置24とにわたって移動させられる。装着ヘッド26およびヘッド移動装置28については、後に詳しく説明する。
【0113】
また、各々の装着装置12には、フレーム部14に、部品供給装置22と配線板搬送装置24との間に撮像デバイスとしてのCCDカメラを有する部品撮像装置30が配備されており、この部品撮像装置30は、装着ヘッド26によって保持された電子部品の姿勢等を撮像する。その他、装着装置12の各々は、外装部品の1種であるトップカバー32の前方に、入出力装置としての操作パネル34を有しており、また、本図では省略するが、各々の装着装置12は、部品供給装置22を始めとする自らに配備された各種装置を制御するためのコンピュータを主体とした装着装置制御装置36(図12参照)、部品撮像装置30等によって得られた画像データを処理する画像処理ユニット38(図12参照)等を有している。
【0114】
各々の装着装置12は、部品供給装置22、装着ヘッド26、ヘッド移動装置28等をそれぞれに配備してモジュール化されたモジュール化装置とされている。また、配線板搬送装置24までが装着装置12内に配備されていることから、装着装置12は、搬送装置配備モジュール化装置とされているのである。また、後に詳しく説明するが、各々の装着装置12は、システムベース10から容易に分離可能な構造とされ、各々の入れ替えて配置することも可能となっている。また、各々の装着装置12は、システムベース12に対して、配線板搬送方向に直角な方向でありかつ略水平な方向である前後方向に、移動可能とされた可動装置である。この移動可能となるための構造についても、後述する。
【0115】
iii)システムベースの構成の概要
図3に、システムベース10の斜視図を示す。2つの装着装置12が配置されるシステムベース10は、フレーム50と、外装板52と、天板54とを含んで構成されるベース本体56を有する。ベース本体56の内部には、装着装置12の共用装置,共用デバイスとしての、電源ユニット58、外部正圧,負圧エア源からの配管装置60,62等が備えられており、これらにより各装着装置12への駆動力を供給する駆動力供給部が構成されている。また、ベース本体56の内部には、図示は省略するが、各装着装置12間および各装着装置12とシステムを統括制御するシステム制御装置(後述)との間の制御信号,情報をやり取りするための通信ケーブル,そのターミナル等も配設されている。天板54には、これらのメンテナンスのための開口が設けられており、その開口を塞ぐ天蓋64が取り付けられている。また、前部に近い上部には、もう一つの開口66が設けられており、この開口66に通ずるベース本体56の内部には、部品供給装置22から排出される電子部品テーピングのキャリアテープ,トップカバーテープ等を回収するテープ回収容器68が設けられている。説明は省略するが、装着装置12は、キャリアテープ等を切断するカッタ装置が設けられており、任意に切断されたキャリアテープが、テープ回収容器62に排出されるように構成されている。開口66、テープ回収容器68等を含んで、装着装置12の共用装置であるテープ回収装置が構成されているのである。なお、図示は省略するが、回収されたそれらのテープは、システムベース10の外部へ取出すことが可能となっている。先に述べたように、各々の装着装置12が可動装置とされるための装置構成、および、容易に分離可能となるための装置構成については後述する。
【0116】
iv)配線板搬送装置の構成
図4に、配線板搬送装置24の全体を示す。配線板搬送装置24は、コンベア装置であり、配線板搬送方向(左右方向)に延びて互いに平行に位置する4つのコンベアレール(以下、単に「レール」と略す)100〜106を有する。最前方に位置するレール100は、その後方に位置するレール102とが対になって互いに向き合っており、また、さらに後方に位置するレール104とその後方に位置するレール106とが対になって互いに向き合っている。本配線板搬送装置24は、フロントコンベア部110およびリアコンベア部112の2つコンベア部を有し、レール100およびレール102によってフロントコンベア部110が形成され、レール104およびレール106によってリアコンベア部112が形成される。つまり、レール100,レール102の各々がフロントコンベア部110のそれぞれ基準レール,従属レールとして機能し、レール104,レール106の各々がリアコンベア部112のそれぞれ基準レール、従属レールとして機能する。
【0117】
レール100は、ベース114の前方に固定して設けられた固定レールであり、レール102,104,106は、ベース114に配設された2本のガイド116に沿って前後方向に移動可能に設けられた可動レールである。装置の右側には、3本の可動のレール102,104,106の各々に設けられたナットに噛合する、3本のボールねじ118が配設され、また装置後方には、それらボールねじ118の各々の駆動源となる3つ電動モータ(ステッピングモータ)であるレール位置変更モータ120が配設され(1つは隠れている)、それら3つのレール位置変更モータ120を独立して駆動させることにより、3本の可動のレール102,104,106は独立して前後方向に移動させられる。これにより、フロントコンベア部110およびリアコンベア部112のコンベア幅が任意に変更可能とされている。各レール100〜106の上部の中央部には基準マーク122が設けられており、装着ヘッド26とともにヘッド移動装置28に設けられたマーク撮像装置(後述する)を用いて、各レールの装着装置12における位置が撮像され、その画像の認識結果に基づいてコンベア幅が調整される。すなわち、本配線板搬送装置24は、搬送する配線板の幅(配線板搬送方向に直角な方向の長さ)に応じた幅に対応してコンベア部110,112の幅を変更する基板幅対応変更装置を備えており、その基板幅対応幅変更装置は、可動のレール102,104,106,レール位置変更モータ120等を含んで構成されているのである。
【0118】
配線板搬送装置24は、幅の狭い配線板を搬送する場合、フロントコンベア部110とリアコンベア部112との両方を使用することができる。すなわち2ラインの搬送装置として使用されるのである。その場合、リアコンベア部112の基準レールであるレール104の位置を設定された位置に固定して、2つのコンベア部110,112のそれぞれのコンベア幅を調整する。これに対して、幅の広い配線板を搬送する場合は、フロントコンベア部110とリアコンベア部112との一方のみを用い、1ラインの搬送装置として使用することができる。その場合、レール104を装置後方あるいは前方に移動させ、使用する一方のコンベア幅を調整する。
【0119】
レール100〜106の構造を、レール102を例にとって説明する。図5に、レール102を示す。図5(a)は正面から見た図であり、図5(b)は、A−Aでの断面図である。レール102は、2つのブラケット130と、2つのブラケット130の間に渡されたレール本体板132と、レール本体板132の上部に設けられたガイドロッド134とを含んで構成されている。ブラケット130の一方には、駆動プーリ136が配設されている。配線板搬送装置24の左側には前後に延びるスプライン軸138(図4参照)が配設されており、図では省略しているが、駆動プーリ136はスプライン軸138とスプライン嵌合しており、レール102が前後方向においてどの位置に位置する場合であっても、スプライン軸138の回転が駆動プーリ136に伝達可能とされている。さらに、ブラケット130およびレール本体板132には、複数の従動プーリ140が回転可能に配設され、これら駆動プーリ136および従動プーリ140に、コンベアベルト142が、図に示すような状態に巻き掛けられている。スプライン軸138は、装置後方に配設された電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)である配線板移送モータ(図4参照)144に連結されており、配線板移送モータ144を駆動させることで、コンベアベルト142が周回する。他のレール100,104,106も同様の構造となっているため、それらについての説明は省略する。
【0120】
配線板150は、コンベアベルト142の上方において水平に張られた部分に支承され、ガイドロッド134に前後方向の位置を規制されながら、コンベアベルト142の周回によって左右方向である配線板搬送方向に移送される。なお、4つのレール100〜106に設けられたコンベアベルト142は、一斉に周回するため、フロントコンベア部110の搬送動作とリアコンベア部112の搬送動作とは、独立して制御できない構造となっている。
【0121】
配線板搬送装置24は、配線板150を回路部品装着作業のために設定された位置に固定して保持する基板保持装置としての機能をも果たす。配線板搬送装置24は、2つの支持板152を備える。支持板152の上面には、バックアップピン154を備えた複数のバックアップ器具156が任意の位置に取り付け可能な構造となっている。コンベアベルト142に支承されて移送されてきた配線板150は、コンベアベルト142の周回を停止することにより、配線板の種類および回路部品装着作業の形態等に応じて設定された位置に停止させられる。その状態において、支持板152を、図示を省略する支持板昇降装置158(図12参照)によって所定距離だけ上昇させる(図5(a)の2点鎖線参照)。そうすれば、バックアップピン154の先端が配線板150の裏面に当接してその配線板150が持ち上げられ、コンベアベルト142による支承が解かれるとともに、配線板150の端部の表面がガイドロッド134の係止部158に適切な力で係止される。つまり、その状態において、配線板150は、回路部品装着作業のために設定された位置に固定して保持されるのである。
【0122】
なお、コンベアベルト142の周回の開始,停止は、当該配線板搬送装置24、あるいは、それの上流側、下流側につながる搬送装置に設けられた配線板検知器(基板検知器の一種)としての光電センサ160(図4,図5では省略、図12,図24参照)の検知信号に基づいて制御される。これについては、詳しく後述する。また、先に述べたように、本配線板搬送装置24では、フロントコンベア部110の搬送動作とリアコンベア部112の搬送動作とは、独立して制御できない構造となっているが、フロントコンベア部110とリアコンベア部112の一方において上記配線板150を保持した状態となっている場合に、他方による搬送動作を行うようにすれば、2つのコンベア部を使用した効率のよい2ラインでの作業を実行することができる。
【0123】
v)ヘッド移動装置の構成
図6に、装着ヘッド26およびヘッド移動装置28の斜視図を、図7に、Xスライド装置(後述)の水平断面図を示し、理解の容易のために、図8に、ヘッド移動装置28の模式的斜視図を示す。ヘッド移動装置28は、装着ヘッド26を、直交する2方向に移動させる2つの直線移動装置を含んで構成されている。その1つが、配線板搬送方向に直角な水平方向である前後方向(以下、「Y軸方向」と称す)の移動装置であるYスライド装置200であり、もう1つが、配線板搬送方向に平行な方向である左右方向(以下、「X軸方向」と称す)の移動装置であるXスライド装置202である。これら2つの直線移動装置によって、装着ヘッド26が一平面内を移動させられる。すなわち、装着装置12は、作業ヘッド平面移動型装置とされている。
【0124】
Yスライド装置200は、Y軸方向に平行にビーム部16に設けられた2本のY軸方向ガイド(以下「Yガイド」と略す)210と、Yガイド210を摺動する4つの摺動部材(リニアベアリング)212を有してY軸方向に移動するYスライド214と、ビーム部16に設けられてY軸方向に延びるYボールねじ216と、Yボールねじに螺合して回転可能にかつ位置を固定されてYスライド214に設けられたYナット218と、後方に設けられてYボールねじ216を回転させる電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるY軸モータ220を駆動源として有するY軸駆動装置222とを含んで構成されている。
【0125】
Xスライド装置202は、複段式移動装置すなわち2段式移動装置であり、互いに平行な方向に装着ヘッド26を移動させる第1Xスライド装置230と、第2Xスライド装置232との2つのスライド装置を含んで構成されている。第1Xスライド装置230は、X軸方向に平行な2本の第1X軸方向ガイド(以下、「X1ガイド」と略す)240を有する第1Xスライド242と、Yスライド214に固定的に設けられX1ガイド240を摺動させる4つの摺動部材(リニアベアリング)244と、Yスライド214に設けられてX軸方向に延びるX1ボールねじ246と、X1ボールねじ246に螺合して回転可能にかつ位置を固定されて第1Xスライド242に設けられたX1ナット248と、Yスライド214に設けられてX1ボールねじ246を回転させる電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるX1軸モータ250を駆動源として有するX1軸駆動装置252とを含んで構成され、第2Xスライド装置232は、X軸方向に平行に第1Xスライド242に設けられた2本の第2X軸方向ガイド(以下「X2ガイド」と略す)260と、X2ガイド260を摺動する2つの摺動部材(リニアベアリング)262をする第2Xスライド264と、第1Xスライド242に設けられてX軸方向に延びるX2ボールねじ266と、X2ボールねじ266に螺合して回転可能にかつ位置を固定されて第2Xスライド264に設けられたX2ナット268と、X1スライド244に設けられてX2ボールねじ266を回転させる電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるX2軸モータ270を駆動源として有するX2軸駆動装置272とを含んで構成されている。
【0126】
Xスライド装置202は、上記構成の複段式詳しくは2段式の直線移動装置である。X1ガイド240を摺動させる摺動部材244を備えたYスライド214は、第1の軌道を形成する第1軌道形成部として機能し、X2ガイド260を備えた第1Xスライド242は、第1の軌道に沿って移動しかつその第1の軌道に平行な第2の軌道を形成する第2軌道形成部として機能し、X2ガイド260に沿って移動する第2Xスライド264は、第2軌道に沿って移動する移動部として機能する。すなわち、Xスライド装置202は、伸縮型(テレスコピック型)の移動装置とされているのである。そして、その移動部である第2Xスライド264に装着ヘッド26が保持されているのである。複段式移動装置による装着ヘッド26の移動方向を特定方向とすれば、装着装置12では、X軸方向が特定方向に該当する。Y軸モータ220,X1軸モータ250,X2軸モータ270の回転を制御することにより、装着ヘッド26は、一平面内を移動し、作業領域内の任意の位置に位置させられる。
【0127】
vi)装着ヘッドの構成
図10に、装着ヘッド26の斜視図を示す。第2Xスライド264に保持された装着ヘッド26は、複数、詳しくは8つの回路部品保持デバイスである吸着ノズル288を先端部に保持する装着ユニット290を備えている。吸着ノズル288の各々は、図示は省略するが、正負圧選択供給装置292(図12参照)を介して負圧エア,正圧エア通路に通じており、負圧にて電子部品を先端部に吸着保持し、僅かな正圧が供給されることで保持した電子部品が離脱する構造となっている。概して軸状をなす装着ユニット290は、間欠回転するユニット保持体294の外周部に、等角度ピッチで、軸方向が垂直となる状態に保持されている。また、それぞれの装着ユニット290は、自転可能に、かつ、軸方向に移動可能とされている。ユニット保持体294は、電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)である保持体回転モータ296を有するユニット保持体回転装置298によって駆動され、装着ユニット290の配設角度ピッチに等しい角度ずつ間欠回転させられることで、装着ユニット290は、間欠回転させられる。間欠回転における装着ユニット290の1つの停止位置であるユニット昇降ステーション(最も前方に位置するステーション)において、そのステーションに位置する装着ユニット290は、電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるユニット昇降モータ300を駆動源として有するユニット昇降装置302によって昇降させられる。部品供給装置22からの電子部品の取出動作、および、配線板搬送装置24に保持された配線板への電子部品の装着動作は、この昇降ステーション位置する装着ユニット290によって行われ、その際に装着ユニット290が設定された距離下降させられる。また、別の一停止位置が、ユニット自転ステーションとされており、そのステーションにおいて、吸着保持した電子部品の装着方位の調整等を目的として、電動モータ(エンコーダ付サーボモータ)であるユニット自転モータ304を駆動源として有するユニット自転装置306によって自転させられる。以上が、装着ヘッド26の主要な構成である。なお、第2Xスライド264には、その下部に、配線板の表面に付された基準マーク等を撮像するための装置であって、撮像デバイスとしてのCCDカメラを含むマーク撮像装置308が設けられている(図6参照)。
【0128】
vii)Xスライド装置による装着ヘッドの移動
図10に、Xスライド装置206による装着ヘッド26の移動について模式的に示す。図では、第1軌道形成部としてのYスライド214と、第2軌道形成部としての第1Xスライド242と、移動部としての第2Xスライド264に保持された装着ヘッド26のみを示している。実線で示すAAは、装着装置12の側面を示す線であり、AA−AAは、装着装置12の装置領域を示している。Yスライド214は、X軸方向には移動せずに特定方向であるX軸方向における装置領域の中央位置を保ったまま、Y軸方向にのみ移動する。第1Xスライド242は、Yスライド214により形成された第1軌道に沿って、X軸方向に一定範囲の移動が許容されている。また、装着ヘッド26は、第1Xスライドにより形成された第2軌道に沿って、第1Xスライドの全範囲にわたって移動する。
【0129】
Yスライド214および第1Xスライドは、ともに、特定方向であるX軸方向における長さが装置幅より小さくされている。図の実線で示す状態では、第1Xスライド242はX軸方向の中央の位置に存在しており、その状態において、第1Xスライド242は、装置領域AA−AA内に収まっている。装着ヘッド26は、概ね、その端が第1Xスライド242の端に位置するまで第2軌道に沿った移動が可能とされている。図では省略しているが、第1Xスライド242が中央位置に位置する状態で装着ヘッド26を移動させても、装着ヘッド26の端は、装置側面AAからある程度の間隔を残した位置までしか到達しない状態とされている。第1Xスライド242を中央位置から所定距離だけ移動させることにより、第1Xスライド242が装置側面AAから進出しない程度の装置側面AAの近傍位置させられ、それによって、装着ヘッド26の移動可能範囲を、それの端が装置側面AAから飛び出さない範囲まで拡大させることができる。その拡大した状態において、図に示すWA1−WA1の範囲の装着作業が可能となる。第1Xスライド242をさらに中央位置から離れるように移動させれれば、第1Xスライド242の端部が装置領域外に進出する。それによって、装着ヘッド26も装置領域外に進出し、装着ヘッド26の移動可能範囲が、装置領域AA−AAを超えて、WA2−WA2の範囲までさらに拡大する。このように、装着装置12は、複段式移動装置を採用することで、コンパクトでありながら作業領域の広い装置とされているのである。
【0130】
ヘッド移動装置28の実際の制御においては、第1Xスライド242について、第1の軌道上の移動範囲内において複数の停止位置(第2軌道形成部の停止位置である軌道部停止位置に相当)が設定されており、それらの停止位置のいずれかに第1Xスライド242を停止させつつ、装着ヘッド26を第1Xスライドにより形成された第2軌道に沿って移動させている。図11に、第1Xスライド242を所定の停止位置に停止させて行う装着ヘッド26の移動について、模式的に示す。Xスライド装置202において、第1Xスライド242の第1軌道上の停止位置は4つ設定されている。それぞれの、停止位置はST1〜ST4と番号付けられている。図11(b),(c)に示すように、第1Xスライド242がST2,ST3に位置する状態は、それぞれ、右方向,左方向において、第1Xスライド242が装置領域外に進出しない状態であり、装着ヘッド26を第2軌道上のいかなる位置に位置させたとしても、装着ヘッド26が装置領域外に進出しない状態である。これに対して、図11(a),(d)に示すように、第1Xスライド242がST1,ST4に位置する状態は、それぞれ、右方向,左方向において、第1Xスライド242が装置領域外に進出した状態であり、それに応じて装装着ヘッド26が装置領域外に進出可能とされた状態である。
【0131】
装着装置12の装置領域をはみだす配線板に回路部品装着作業を行う場合について説明すれば、例えば、配線板の装置領域内に位置する装着位置に電子部品を装着する場合、その装着位置が装置中央より右側に存在するときにはST2の停止位置に第1Xスライド242を停止させ、その装着位置が装置中央より左側に存在するときにはST3の停止位置に第1Xスライド242を停止させて、装着ヘッド26を移動させるように制御を行う。そして、配線板の装置領域外に位置する装着位置に電子部品を装着する場合には、その装着位置が装置領域外の右側に存在するときにはST1の停止位置に第1Xスライド242を停止させ、その装着位置が装置領域外の左側に存在するときにはST4の停止位置に第1Xスライド242を停止させて、装着ヘッド26を移動させるように制御を行う。このように、装着位置がどの位置に存在するかというシチュエーションに応じて、装着ヘッド26の移動可能領域を複数の区分領域に分割し、装着ヘッド26をいずれの区分領域に停止させるかに基づいて、第1Xスライド242の停止位置を決定するような制御が行われる。なお、第1Xスライド242の位置は、X1軸モータ250が備えるエンコーダの信号基づいて、後に説明する装着装置制御装置36によって把握されている。
【0132】
装着装置12においては、装着ヘッド26の移動に関し、ヘッド移動装置28に対して上述のヘッド移動制御が行われる。ヘッド移動制御では、具体的には、第2軌道形成部である第1Xスライド242を、複数の停止位置のいずれかに停止させた状態で、第2軌道に沿って装着ヘッド26を移動させる軌道部停止ヘッド移動制御が行われており、また、第1Xスライド242を第2軌道の一部が装置領域外に進出する位置に移動させることによって、装着ヘッド26を装置領域外にまで進出可能とする進出制御が行われているのである。
【0133】
以上のように、第1Xスライド242および装着ヘッド26が装置側面から進出することが可能とされた装着作業が行われるのであるが、装着装置12の側面外装板320には、右側面,左側面いずれにも、側配線板搬送装置24が存在する部分に開口322が設けられており、装着ヘッド26が、装置領域外に進出する場合には、その開口322を通って、第1Xスライド242および装着ヘッド26が装置領域外に進出させられる(図1(a)参照)。なお、本装着装置12において、装着ヘッド26の移動可能領域が装置領域外まで拡大されるのは、電子部品の装着動作を行う場合とされており、部品供給装置22からの電子部品の取出動作等の場合には、第1Xスライド242は、ST2,ST3またはそれらの中間に設定された別の停止位置に位置させられており、装着ヘッド26は、装置領域内を移動させられる。
【0134】
viii)装着装置制御装置
図12に、本発明に関係の深い部分を中心とした装着装置12の制御ブロック図を示す。基本的態様の回路部品装着システムでは、2つの装着装置12を有しており、それらのそれぞれが自身に装着装置制御装置36を備える。図は、一方の装着装置12およびその装着装置12が備える装着装置制御装置36を中心したブロック図である。装着装置制御装置36は、コンピュータ350を主体とする制御装置であり、コンピュータ350は、PU(プロセッシングユニット)352と、ROM354と、RAM356と、入出力インターフェース358と、それらを互いに接続するバス360を有している。入出力インターフェース358には、装着装置制御装置36が備えるそれぞれの駆動回路362を介して、部品供給装置22の各テープフィーダ20、配線板搬送装置24の3つのレール位置変更モータ120,配線板移送モータ144,支持板昇降装置158、装着ヘッド26の正負圧選択供給装置292,保持体回転モータ296,ユニット昇降モータ300,ユニット自転モータ304、ヘッド移動装置28のY軸モータ220,X1軸モータ250,X2軸モータ270が、それぞれ接続されている。また、部品撮像装置30およびマーク撮像装置308が、それらによって得られた撮像データから種々の認識結果を得れるまでのデータ処理を行う画像処理ユニット38を介して接続されている。さらに、入出力インターフェース358には、配線板搬送装置24に備えられた光電センサ160が接続されている。
【0135】
2つの装着装置12の一方は、他方の動作と関連して作動する。また、本基本的態様のシステムは、システムベース10および装着装置12とは別体をなしてシステム全体を統括制御するシステム制御装置370(図1、図2等では省略)を備えている。そのため、入出力インターフェース358には、他方の装着装置12およびシステム制御装置370が、通信ケーブル372を介して接続されている。なお、システム制御装置370は、本システムが他の対基板作業システムと連結してさらに大きなシステムを構成する等の場合においては、他の対基板作業システムのシステム制御装置と兼用される。さらに、装着装置12はモジュール化されており、他の別のシステム内に配置されることがある。その場合において、本装着装置制御装置36は、その別のシステムにおける他の対基板作業装置が備える制御装置、その別のシステムのシステム制御装置とも接続可能とされている。
【0136】
ROM354には、装着装置12の基本動作プログラム等が記憶されており、また、RAM356には、作業形態に応じた動作制御,他の対基板作業装置との協調動作,協働動作制御等に関する動作プログラム、配線板の保持位置ずれ,部品の吸着保持位置のずれ等に応じた装着位置補正プログラム等のアプリケーションプログラム、回路部品装着作業が行われる配線板に応じて設定されている装着順序データ,装着位置データ、装着される電子部品に関する部品固有データ、どの電子部品がどのテープフィーダ20から供給されるかといった部品供給装置関連データ等の各種データ等が記憶されている。
【0137】
ix)回路部品装着作業の概要
次に、1つの装着装置12による回路部品装着作業を、その装着装置12の装置領域内に収まる大きさの配線板に対する作業を例にとって、簡単に説明する。上流側から移送されてきた配線板は、配線板搬送装置24によって、装置領域内の設定された作業位置に停止させられる。停止させられた配線板は、その位置において、支持板昇降装置158が上昇させられることにより、配線板保持装置24よって固定保持される。次いで、ヘッド移動装置28によって、マーク撮像装置308が、配線板に付された基準マークの上方に移動させられ、基準マークを撮像する。その撮像データから、保持された配線板の保持位置のずれが検出される。なお、後に説明する2つの装着装置12による協働作業の場合、それぞれの装着装置12が備える配線板保持装置24のそれぞれが協働し、1つの配線板が固定保持される。その場合、それぞれの装着装置12の装置領域内に存在する基準マークを、それぞれの装着装置12のマーク撮像装置308が撮像し、撮像データを処理した結果を相互に受け渡すことによって、それぞれの装着装置12における配線板の保持位置のずれが検出される。
【0138】
次に、装着ヘッド26が部品供給装置22の上方に移動させられ、設定された取出順序に従って、電子部品が吸着ノズル288に吸着保持される。詳しくは、昇降ステーションに位置する装着ユニット290が、保持対象とされた電子部品を供給するテープフィーダ20の部品取出部の上方に位置させられて、その位置でその装着ユニット290が下降させられ、先端に保持された吸着ノズル288に負圧が供給されて、その電子部品を吸着保持する。そして装着ユニット290が間欠回転させられ、次の装着ユニット290に関する同様の部品取出動作が行われる。このようにして、装着ヘッド26が備える装着ユニット290について、順次、部品取出動作(多くの場合は8回)が行われる。
【0139】
次に、電子部品を保持した装着ヘッド26は、部品撮像装置30の上方に移動させられる。その位置において、部品撮像装置30は、保持された電子部品を一視野内に収めて撮像する。得られた撮像データにより、それぞれの電子部品の保持位置のずれが検出される。装着ヘッド26は、配線板の上方に移動させられるのであるが、その移動の途中で、ユニット自転ステーションに位置する装着ユニット29が、それが保持する電子部品に設定された装着方位,検出された配線板保持位置ずれ量,電子部品の保持位置ずれ量に基づいて、適正な回転位置まで自転させらる。この自転動作は、最初に装着される電子部品を保持する装着ユニット290が昇降ステーションに位置するまで装着ユニット290の間欠回転を繰り返し、その間欠回転の間にユニット自転ステーションに位置する装着ユニット20に対して行う。自転ステーションに位置しなかった装着ユニット290については、装着動作における間欠回転の際に行われる。
【0140】
続いて、装着ヘッド26は、配線板の上方まで移動させられ、設定された装着順序に従って、配線板の表面に保持された電子部品が装着される。詳しくは、まず、ユニット昇降ステーションに位置する装着ユニット290が適正な装着位置の上方に位置させられる。このとき、検出された配線板保持位置ずれ量,電子部品の保持位置ずれ量に基づいて、装着ヘッド26の移動位置が適正化される。その位置において、装着ユニット290が所定距離下降させられ、吸着ノズル288に正圧が供給されて、保持した電子部品が配線板の表面に装着される。続いて装着ユニット290が間欠回転させられ、次の装着ユニット290に関する同様の部品装着動作が行われる。このようにして、電子部品を保持する装着ユニット290について、順次、部品装着動作が行われる。
【0141】
予定されたすべての電子部品の装着が終了するまで、装着ヘッド26が部品供給装置22と配線板との間を往復させられて、部品取出動作、部品装着動作が繰り返し行われる。すべての電子部品の装着が終了した後、配線板搬送装置24の支持板昇降装置158が下降させられ、配線板の固定保持が解除される。その配線板は、配線板保持装置24によって、下流側へ移送される。このようにして、その配線板に予定された回路部品装着作業が終了する。説明を省略した配線板搬送装置24による配線板の搬送については、後に詳しく説明する。なお、基本的態様のシステムに配置された2つの装着装置12は、両方に跨がる大きさの配線板に対しても、回路部品装着作業を行うことができる。これについては、後述する。
【0142】
<システムベースに対する装着装置の移動等>
i)装着装置移動許容装置
図3に示すように、システムベース10の上部には、複数本のガイドレール470が一直線上に並んで構成される4つのレール列472が設けられている(図1,図2等では図示を省略)。前方から見て左右外側のレール列472は、それぞれ2本ずつのガイドレール470により構成されており、内側の2列のレール列472は、それぞれ3本のガイドレール470から構成されている。4つのレール列472は、互いに平行に配設されている。4つのレール列472は、2つのレール対に分けることができる。右側の2列のレール列472によって構成されるレール対が、右側の装着装置12に関係し、左側の2列のレール列472によって構成されるレール対が、左側の装着装置に関係するものとなっている。なお、2つのレール対は互いに、それぞれのレール対を構成するレール列472の間隔は互いに等しくされている。
【0143】
図13に、上記基本的態様のシステムの右側面一部断面図を、図14に、部品供給装置22を除外した状態における正面一部断面図を示す。装着装置12は、フレーム部14の下部に、4つずつ2列に並んだ合計8つの車輪474を軸受を介して回転自在に保持する車輪装置を有し、その車輪474が、係合部材として、対をなすそれぞれのレール列472を構成する軌道形成部材としてのガイドレール470にそれぞれ係合する。これにより、装着装置12は、システムベース10に対する前後方向への相対的な移動が可能とされる。つまり、装着装置12は、前後方向に延びる装置軌道に沿って移動可能な可動装置とされている。装置軌道は、配線板搬送方向である左右方向に直角に交差する直線的な軌道であり、かつ、水平に延びるものとなっている。また、本システムは、可動装置とされた装着装置12の移動を上記移動を許容する可動装置移動許容装置としての2つの装着装置移動許容装置を備えているのであり、各々の装着装置移動許容装置は、システムベース10に位置が固定されて設けられた装置軌道形成部としての対をなすレール列472と、装着装置12に位置を固定して設けられ、ガイドレール470に対して移動可能に係合する対軌道係合部としての車輪装置を含んで構成されているのである。なお、装着装置12が前方に移動した場合、1つのレール列472において、ガイドレール470の存在しない箇所(レールの隙間)にいずれかの車輪474が位置する場合があるが、その場合でも、複数の車輪474が対をなすレール列472を構成するいずれかのガイドレール470に係合するようになっている。車輪装置は、可動装置移動容易化手段として機能し、装着装置12は人力にて容易に移動可能である。
【0144】
なお、図14に示すように、車輪474の外周部は平たくされているが、1対のレール列472を構成するガイドレール70は、左右方向の外側の部分が車輪474の脱輪を防止するように上方に突出する形状とされており、そのことにより、可動装置とされた装着装置12が装置軌道を外れないようになっている。ガイドレール470および車輪474の互いに係合する部分の形状は、上記形状に限られない。例えば、平板な上部形状を有するガイドレールと脱輪防止の鍔部を設けた車輪とを係合させる(鉄道車両におけるレールと車輪との関係に類似)、山形の断面を有するガイドレールとそれに勘合するV形の断面形状の溝を有する車輪とを係合させる、1対のガイドレールの上面を互いに反対方向に傾斜させる(例えば「ハ」の字となるように傾斜させる)とともにそれに勘合するテーパ形状の外周面を有する車輪を採用するといった態様とすることもできる。
【0145】
ii)装着装置固定装置
図3に示すように、システムベース10には、装着装置12の下部後方に固定的に設けられた被係止部材としての当接部材480を係止する係止部材としてのストッパ482が、上部後方であって2つのレール対のそれぞれの中間部に、それぞれ1つずつ設けられている。装置軌道に沿って装着装置12を移動させた場合、当接部材480の一部分がストッパ482の一部分に当接して、装着装置12のそれ以上の後方への移動が禁止される。また、システムベース10には、付勢力発生デバイスとしてのシリンダ装置486を有して、リンク機構を介して装着装置12の下部に固定的に設けられた被付勢部材488を付勢可能な付勢装置490が、前後方向の中央部付近であってレール対を構成する2つのレール列472の中間部に、2つのレール対のそれぞれ対して設けられている。図3においては、付勢装置490が有する付勢具492が非付勢位置にある状態を、図13においては、付勢具492が天板54より上方に突出するように回動した状態つまり付勢位置にある状態を示している。上述の当接部材480をストッパに482に当接した状態で付勢装置490によって被付勢部材488を後方に向かって付勢することによって、当接部材480のストッパ482への当接状態が維持され、装着装置12の前方への移動が阻止される。つまり、本システムは、装置軌道上の一定位置に可動装置を固定する可動装置固定装置としての装着装置固定装置を備えるものであり、当接部材480およびストッパ482が、装着装置12の装置軌道に沿った一方向の移動を禁止すべく装着装置12およびシステムベース10の各々に設けられた当接部として機能し、付勢装置490および被付勢部材488が上記当接部の当接状態が解除されることを禁止する当接状態解除禁止部として機能し、これら当接部および当接状態解除禁止部を含んで装着装置固定装置が構成されているのである。この装着装置固定装置による装着装置12の固定位置が、システムベース10に対する装着装置12の所定の配置位置となる。
【0146】
iii)テーブル装置
装着装置固定装置による固定を解除して、装着装置12を装置軌道に沿って前方に移動させた場合、装着装置12をシステムベース10よりオーバーハングするように移動可能であるが、移動距離が大きい時には、装着装置12がシステムベース10から落下する可能性がある。そこで本システムには、装着装置12の少なくとも一部が載置可能なテーブル装置が準備されている。図15に、テーブル装置と、そのテーブル装置を使用状態を示す。テーブル装置500は、装着装置12の左右方向における幅(配線板搬送方向における幅)よりもやや大きな幅で、装着装置12の前後方向における長さと略同じ長さで、システムベース10の上面とほほ同じ高さの上面を有する台部502を主体として構成されている。台部502の上面には、前述のガイドレール470と同じ断面形状を有する2本のガイドレール504が設けられている。2本のガイドレール504は互いに平行に配設されており、それらの間隔は、上記1つのレール対を構成する2つのレール列472の間隔と等しくされている。テーブル装置500は、2本ガイドレール504のそれぞれが、移動させようとする装着装置12が係合している対をなすレール列472のそれぞれを延長する状態となるように、システムベース10の前方の傍らに位置決めされて配置される。
【0147】
テーブル装置500を配置した後、前述の装着装置固定装置を操作して装着装置12の固定を解除し、その装着装置12を前方に移動させる。ある程度の距離を移動させた状態で、装着装置12の一部はテーブル装置500に載置される。詳しくは、装着装置12の複数の車輪474の一部がテーブル装置500が備えるガイドレール504に係合するのである。この状態では、移動させられた装着装置12の一部は隣接するもう一方の装着装置12に対して前方にずれた状態となるため、メンテナンス、調整等の作業が容易に行える。つまり、テーブル装置500は、システムにおける補助的なベースユニットとして機能するのである。そして、装着装置12をさらに前方に移動させることで、その装着装置12は、テーブル装置500に移載する状態となる。この移載した状態を図15は示している。なお、図15において一点鎖線で示す状態が、装着装置12の一部がテーブル装置500に載置された状態である。装着装置12がテーブル装置500に移載した状態において、その装着装置12は、システムベース10から分離された状態となる。テーブル装置500を本システムに利用することで、延長軌道形成部材としてのガイドレール504と、それに係合する係合部材としての車輪474とを含んで、テーブル装置側可動装置移動許容装置が構成されるのである。
【0148】
テーブル装置500には、台部502の上面前方部であって2本のガイドレールの中間部に、テーブル側係止部材としてストッパ506が設けられている。また、システムベース10に設けられている付勢装置490と類似の構造の付勢装置508を有している。ストッパ506は、装着装置12に固定的に設けられた前述のものとは別の当接具(図示を省略)を係止し、また、付勢装置508は、装着装置12に固定的に設けられた前述のものとは別の被付勢部材(図示を省略)を付勢する。すなわち、ストッパ506、付勢装置508等を含んで、テーブル装置側可動装置固定装置が構成されているのである。先に説明したシステム側の装着装置固定装置と同様の機能であるため説明は省略するが、このテーブル側の固定装置によって、装着装置12は、延長軌道上の一定位置に位置が固定される。本テーブル装置500では、装着装置12がシステムベース10から分離されてテーブル装置500に移載した状態の位置で固定可能とされている。
【0149】
また、テーブル装置500は、下部に移動容易化手段としてのキャスタ510を有しており、人力で容易に移動可能な可動式テーブルとされている。装着装置12を上面に載置した状態でテーブル装置を移動させることにより、その装着装置12を例えば実装ライン外に存在するメンテナンスエリア等にまで運搬することが可能である。すなわち、テーブル装置500は、システムベース10に配置される対基板作業装置を運搬する対基板作業装置運搬装置としての機能をも果たしているのである。
【0150】
本システムでは、装置軌道を延長する位置にテーブル装置500を位置決めすることを容易化すべく、システムベース10とテーブル装置500とを連結する連結装置を採用する。図16に、その連結装置を示す。図16(a)に示すように、システムベース10の前面には、ベース側連結部としての連結ブロック520が、1つの装着装置12あたり1対設けられている(図では片方のみを示す)。また、図16(b)に示すように、テーブル装置500のシステムベース10の前面と向きあう面には、嵌合ピン522を上方に向かって突出させるピン突出装置524が、1対の連結ブロック520に対応して1対設けられている(図では片方のみを示す)。テーブル装置500を概略の位置にまで移動させた状態で、それぞれのピン突出装置524のレバー526を押し下げれば、それぞれの嵌合ピン522が対応するそれぞれの連結ブロック520の嵌合穴528に嵌入する。この状態において、テーブル装置500のガイドレール504とシステムベース10のレール列472とが一直線上に位置するように、テーブル装置500が位置決めされる。そのような状態となるように、互いの連結部の位置が適正化されているのである。なお、2つの装着装置12のうちのいずれのものを移動させる場合でも同じテーブル装置が使用できるように、本システムベース10では、連結ブロック520が両方の装着装置12のそれぞれに対応して2対設けられている。
【0151】
iv)装置相互間相対移動制限装置
基本的態様として例示する本システムでは、2つの装着装置12のいずれもが可動装置とされており、システムベース10に対して単独で移動可能であり、また、単独で分離可能である。さらに、本システムでは、2つの装着装置12の装置軌道が互いに平行であることから、それらを一緒に移動、一緒に分離させることも可能である。つまり、2つの装着装置12の相対位置を略一定に維持しつつ、システムベース10に対する相対移動が可能なのである。その場合、前述のテーブル装置500に代え、2つの装着装置12が載置可能なテーブル装置、詳しくは、互いに平行な2対のガイドレールを有するテーブル装置を採用することができる。
【0152】
2つの装着装置12の相対位置関係を維持しつつそれらを一緒に移動させる場合に有効な手段として、本システムでは、装着装置12相互の相対移動を制限する装置相互間相対移動制限装置を、それぞれの装着装置12が有している。図13および図14を参照しつつ、それについて説明する。装着装置12には、その前方の部分、詳しくは、フレーム部14の部品供給装置22が設けられる部分の下部に、装置の左側面から嵌合ピン540を突出させるピン突出装置542が設けられており、また、対応する装置のフレーム部14の右側面の部分に、嵌合ピン540が嵌入する嵌合穴544が設けられている。ピン突出装置542は、シリンダ装置546を主体とするものである。嵌合ピン540は、フレーム部14の左側面に位置する部分に設けられた支持穴548によって、左右方向に延びる向きに、前後,上下方向に移動不能にかつ左右方向に移動可能に支持されている。嵌合ピン540の後端部はシリンダ装置546のロッド先端部に連結されており、シリンダ装置546が操作されることによって、装着装置12の左側面から嵌合ピン540が突出する状態と突出しない状態とを選択的に切替可能とされている。
【0153】
図13では、右側の装着装置12に設けられたピン突出装置542について示されており、その図が示すように、2つの装着装置12がともに所定の配置位置に位置するときに突出状態とすれば、嵌合ピン540の先端部が、左側の装着装置12の嵌合穴544に嵌入する状態となる。つまり、嵌合ピン540が一方の装着装置12の係合部として機能し、嵌合穴544が他方の装着装置12の係合部として機能するのである。嵌合ピン540の外寸は、嵌合穴544の内寸に対して、若干の隙間を有するように小さくされている(装着装置12における嵌合ピン540および嵌合穴544の配設精度を考慮するものである)。一方の装着装置12の嵌合ピン540と他方の装着装置12の嵌合穴544とが互いに係合している状態では、装置軌道の延びる方向において、2つの装着装置12の相対移動は制限され、両者の相対位置関係が維持されたままで、両者を装置軌道に沿って一緒に移動させることが可能となる。逆に、嵌合ピン540が非突出状態である場合には、隣の装着装置12との相対位置の制限はなくなり、いずれの装着装置12も、単独で、装置軌道に沿って移動させることができるのである。
【0154】
基本的な態様として例示した本システムでは、2つの装着装置12の位置を入れ替えて、つまり、右のものを左側に、左のものを右側に配置することも可能である。本システムでは2つの装着装置12の各々にピン突出装置542および嵌合穴544が設けられており、2つの装着装置12を入れ替えた場合でも、入れ替えない状態において使用されていなかった側のピン突出装置542および嵌合穴544を使用することにより、2つの装着装置12を両者の相対位置関係を維持したままで移動させることが可能である。
【0155】
後に詳しく説明するが、装着装置12は、隣の装着装置12と協働して、両装置に跨って位置する1つの配線板に対する回路部品装着作業を行うことが可能である。その場合、例えば、協働作業中にいずれかの装着装置12に不具合が発生した場合には、両装置が備える配線板搬送装置24に1つの配線板を保持させたままで、装着装置12を移動させる必要が生じる。このような必要が生じた場合に、装置相互間相対移動制限装置は、有効な手段となる。
【0156】
<対基板作業システムのバリエーション等>
対基板作業システムは、上述した基本的態様の回路部品装着システムに限定されず、それを始めとして、バリエーションに富んだ数多くの種類のものが存在する。それらのいくつかを、以下に説明する。
【0157】
i)対基板作業装置の配置数に関するバリエーション
図1(b)〜(d)に示すものは、装着装置12の配置数がそれぞれに異なる回路部品装着システムである。図1(a)に示す基本的な態様のシステムにおいては、装着装置12が2つであるが、図1(b)に示すものでは4つの装着装置12が、図1(c)に示すものでは6つの装着装置12が、図1(d)に示すものでは8つの装着装置12が、それぞれ配線板搬送方向である左右方向に整列して配置されたシステムである。なお、装着装置12は、図1(a)〜(d)のいずれのものも同じ構成のものである。それら各システムは、装着装置12の配置数に応じて、システムベースの幅(配線板搬送方向における長さ)が異なり、図1(b),(c),(d)に示すシステムのそれぞれのシステムベース570,572,574は、それぞれ、図1(a)に示すシステムのシステムベース10の約2倍,約3倍,約4倍の幅のものとされている。
【0158】
図1に示すいずれの装着装置12も上述の可動装置とされており、システムベース570,572,574の上面には、先に説明したところの図1(a)に示す基本的態様ものと同様のレール列472が、配置される装着装置12の数に応じてそれぞれ4対,6対,8対配設されている。それらのレール列472によって形成される装置軌道は、いずれも配線板搬送方向に直角に交差し、前後方向に水平に延びるものである。つまり、すべての装着装置12について、前述の装着装置移動許容装置が設けられているのである。また、前述したのと同様の構成の装着装置固定装置も、装着装置12の配置数に応じた数設けられている。さらに、いずれの装着装置12にも装置相互間相対移動制限装置が設けられており、1つの装着装置12を単独で、あるいは、互い隣接する2以上の装着装置12を互いの相対位置関係を維持しつつ、システムの前方に向かって移動させることができる。
【0159】
ii)システムベースのモジュール化と対基板作業ユニット
図17に、回路部品装着システムについて、前記態様との別のいくつかの態様を示す。図17(a)〜(c)に示すシステムは、複数の図1(a)に示す基本的態様のシステムを、配線板搬送方向に整列させたシステムである。図13および図14に示すように、基本的態様のシステムは、システムベース10が複数のキャスタ580を有しており、システム自体が容易に移動可能とされている。また、システムの設置にあたっては、ジャッキ装置182,184を利用して、高さを調整しつつ、任意の位置に設置可能である。図17(a)〜(c)に示すシステムは、基本的態様のシステムをそれぞれ2つ,3つ,4つ配置したものであり、外観上は、図1(b)〜(d)のシステムと近似している。異なるのは、前者が、同じシステムベース10を複数並べて設置してあるのに対して、後者は、幅の異なる1つのシステムベース570,572,574により構成されていることである。つまり、図17に示す態様のシステムでは、システムベース10の1つ1つがモジュール化されたベースモジュールとして機能し、それらのシステムは、そのベースモジュールが複数集合して構成されたシステムベース590,592,594を有するシステムとみなすことができるのである。このように、対基板作業システムにおいては、システムベースは、複数のベースモジュールを含んで構成されるものであってもよい。例示したシステムベース590,5922,594は、ベースモジュールとしてのシステムベース10を並べて設置するだけでもよく、また、専用の連結装置を用いて、それらを一体的に連結するものであってもよい。
【0160】
図17に示す態様の場合、ベースモジュールとしての1つのシステムベース10と、それに配置された2つの装着装置12とを含んで、回路部品装着ユニット(対基板作業ユニットの一種)が構成されているとみなすこともできる。つまり、前述の基本的態様のシステムは、ここでは1つの回路部品装着ユニットとして取り扱うことができるのである。回路部品装着ユニットとしての基本的態様のシステムは、それ自体で独立して移動させることができ、また、そのユニットごとの交換も自由に行えることから、システムの汎用性が高いものとなる。
【0161】
iii)対基板作業装置の装置幅に関するバリエーション
上述の装着装置12と異なる装着装置を配置した回路部品装着システムについて説明する。図18(a)に示すものは、先の基本的態様のシステムにおいて用いられているシステムベース10上に、配線板搬送方向における装置幅が異なる装着装置600を配置したシステムである。具体的には、装着装置12の約2倍の装置幅を有している。装着装置600に配備されている配線板搬送装置602は、装置幅に応じて装着装置12に配備された配線板搬送装置24の約2倍の搬送長さ(配線板搬送方向の装置長さ)を有している。したがって、装着装置12の装置領域内に収まる配線板よりも大きな(約2倍近い長さの)配線板を、装置領域内に位置させて回路部品を装着することが可能となっている。また、部品供給装置604も、装着装置12の部品供給装置22と比較して、数多くのテープフィーダ20を搭載することが可能とされ、装着装置600は、より多品種の電子部品が装着可能である。装着ヘッドおよびヘッド移動装置は、先に説明した装着装置12のものと同様の構成であるが、装置幅が大きくなっているのに伴って、X軸方向(配線板搬送方向)のヘッド移動可能領域が大きくされている。他の配備装置等も装着装置12と同様の構成とされている。
【0162】
図18(b)に示す回路部品装着システムは、図18(a)に示すシステムを1つの回路部品装着ユニットとし、そのユニットと、それとは別のユニットとなる前述の基本的態様のシステムとを並べて配置することによって構成されたシステムである。2つのシステムベース10は、それぞれがベースモジュールとなり、図17(a)に示すものと同様、1つのシステムベース590を構成する。このシステムは、そのシステムベース590上に、2つの装着装置12と1つの装着装置600とが配線板搬送方向に整列して配置されたシステムとなる。後に詳しく説明するが、2つの装着装置12は、両者に跨って位置する配線板に対して、協働して装着作業を行うことができる。したがって、上流側から下流側に向かって(左右いずれを上流側としてもよい)配線板を搬送し、装着装置200の装置領域内に配線板を位置させて1つの装着ヘッドによる回路部品装着作業と、2つの装着装置12に跨って配線板を位置させて2つの装着ヘッドによる回路部品装着作業とを、任意の順で順次行うようなシステムとすることができる。例えば、2つの装着装置12によって少品種多量の電子部品を装着し、装着装置600により多品種少量の電子部品を装着するといった作業形態を採用することもでき、柔軟性に富んだシステムの活用が可能となる。
【0163】
図19に、装置幅の異なる装着装置を配置した回路部品装着システムの別の態様を示す。図19(a)に示すものは、基本的態様のシステムにおいて用いられている装着装置12が6つ配置可能なシステムベース572(図1(c)に示すシステムのものと同じもの)上に、その装着装置12が4つ整列して配置され、それらに隣接して、前述の装着装置12の約2倍の幅の装着装置600が配置されたシステムである。また、図19(b)に示すものは、装着装置12が8つ配置可能なシステムベース574(図1(d)に示すシステムのものと同じもの)上に、その装着装置12が3つ整列して配置され、それらに隣接して、前述の装着装置12の約2倍の幅の装着装置600が配置され、さらにそれに隣接して、装着装置12の約3倍の幅の装着装置610が配置されたシステムである。このように、配線板搬送方向の幅の異なる装着装置を整列して配置する態様も採用可能である。
【0164】
iv)対基板作業装置のモジュール化
これまでに列挙した数々の態様の回路部品装着システムは、複数の装着装置が配置されるものであるが、それらすべての装着装置はモジュール化されたものである。つまり、システムは、システムベースに対して分離可能なモジュール化装置を配置して構成されていることから、例えば、1つのモジュール化装置が故障等した場合であっても、その装置と同構成の別のモジュール化装置が準備されていれば、短時間でそれらの装置の交換が可能であり、システムの復旧が容易に行える。また、システム構成の変更、例えば、装着装置の配置位置を変更、入れ替え等の際にも迅速に対処可能である。特に、図1および図17に示すシステムは、1種の装着装置12によって構成されたシステムであり、単一のモジュール化装置によって構成されていることから、より利便性に優れるシステムとなる。
【0165】
いずれの装着装置も、部品供給装置、配線板搬送装置、装着ヘッド、装着ヘッド移動装置等の各種装置を配備する形でモジュール化されている。さらに、上記システムでは、それらの配備装置を制御する制御装置(前述の装着装置制御装置36に相当するもの)を、装着装置ごとに有しており、その制御装置をも配備してモジュール化されたシステムなのである。また、システムベースには、前述したところの、各装着装置についての各種共用装置,専用装置等が配備されている。モジュール化された装着装置を所定の配置位置に固定した場合において、それら共用装置,専用装置等と、装着装置との連結は規格化されており、利便性に優れるシステムが実現されている。例えば、装着装置とシステムベースとをつなぐ電源線、正圧,負圧供給路、制御装置間の信号のやり取りをする信号線等は、システムの背面側において、ワンタッチで接続・分離可能な継手を介して、接続される(図示は省略)。
【0166】
v)対基板作業装置の隣接配置と装置幅の規格化
上記各態様のシステムにおいて、複数の装着装置は、互いに隣接して配置されている。つまり、装着装置の各々が相互隣接配置装置とされており、それらの装置が互いに隣接して配置された隣接装置群を構成している。その結果、コンパクトなシステムが実現されている。各装着装置の配線板搬送方向のおける側面(左右の側面)は、略平坦にされており、各装置間の隙間が殆どない状態で、各装着装置が配置されている。上記各態様のシステムにおいては、隣接装置群を構成する各装着装着は、その装置幅が規格化されたモジュール化装置とされている。前述の基本的態様のシステムにおいて用いられる装着装置12の装置幅を単位幅として、その単位幅の略整数倍の装置幅を有する装置だけで、隣接装置群が構成されているのである。例えば、図19(b)に示すシステムを例にとって説明すれば、装着装置12は単位幅の約1倍の装置幅、装着装置600は約2倍の装置幅、装着装置610は約3倍の装置幅の装置とされている。このように装置幅が規格化されたモジュール化装置で隣接配置群を構成することで、その隣接装置群全体の幅、上記態様のシステムの場合はシステム全体の幅が規格化されている。
【0167】
上記システムでは、装着装置の幅が規格化されていることに加え、装着装置の配置位置、配置方式も規格化されている。図20に、単位幅の装着装置12を8つ整列して配置可能なシステムベース574を示し、図21に、そのシステムベース174を例にとって、各種幅の装着装置の配置方式を説明するための概念図を示す。システムベース574には、単位幅の装着装置12が隣接して配置可能なように、互いに平行なレール列472が対となって構成されたレール対(前記基本的態様のシステムのものと同様の構成)が、互いに平行に8つ設けられている。レール対を構成する2つのレール列472の間隔は、いずれのレール対においても相等しく、また、8つのレール対は単位幅に等しいピッチで配設されている。
【0168】
単位幅の装着装置12である場合には、図21(a)に示すように、装着装置12の車輪474が係合して配置される。これに対して、単位幅の約2倍の装着装置600が配置される場合は、図21(b)に示すように、互いに並ぶ2つのレール対の各々を構成する4つのレール列472のうちの外側の2つのレール列472に、装着装置600の車輪474が係合する。同様に、単位幅の約3倍の装着装置610が配置される場合は、図21(c)に示すように、互いに並ぶ3つレール対を構成する6つのレール列472のうちの外側の2つのレール列472に、装着装置610の車輪474が係合する。いずれの装着装置も、配線板搬送方向における装置幅を決定するところの装置の両側面のそれぞれが、隣り合うレール対どうしの略中央に位置するように車輪474が設けられることによって、規格化されており、いずれの装着装置を並べて配置しても、装置側面どうしが殆ど隙間のない状態で、隣り合う装着装置どうしを隣接させることが可能とされている。なお、装置幅が単位幅の約4倍以上の装着装置であっても、それが略整数倍の装着装置であれば、同様の方式で、隣接して配置させることが可能である。ここで説明した装着装置のいずれのものも、左右の外側に存在する2つのレール列472に車輪474が係合する構成とされているが、単位幅の2倍以上の装着装置の場合、装着装置の下部に存在する他のレール列472の一部またはすべてに車輪474が係合するような構成とすることもできる。
【0169】
1つのレール対を構成する2つのレール列472の中間部には、先に説明したところの、装着装置固定装置を構成するストッパ482、付勢装置490が、それぞれ設けられている。詳しい説明は省略するが、単位幅の約2倍以上の装着装置の場合は、その装着装置の下方に複数のストッパ482、付勢装置490等が存在することになる。その場合、それら複数のストッパ482等のいずれか1以上のものによって、前後方向の配置位置を決定させればよい。
【0170】
以上の説明から理解できるように、本システムは、相互隣接配置装置とされた装着装置の配置位置を決定する複数の配置位置決定装置を備えるものとされている。その配置位置決定装置は、配線板搬送方向における配置位置を決定する搬送方向位置決定部と、配線板搬送方向と交差する方向における配置位置を決定する交差方向位置決定部とを含むものであり、搬送方向位置決定部は、装着装置移動許容装置を構成する1対のレール列472を含んで構成され、また、交差方向位置決定部は、装着装置固定装置を構成するストッパ482を含んで構成されている。また、隣接装置群を構成する装着装置は、それらがすべて可動装置とされており、いずれの装着装置も配線板搬送方向に直交する方向に移動可能となっている。そられの装着装置は、互いに隣接して配置されているが、隣接するものとの干渉なくそれらのもののうちの1つ以上のものを容易に移動させることができるのである。なお、相互隣接配置装置とされた装着装置の各々には、前述した装置相互間相対移動制限装置を規格化して設けてもよい。
【0171】
vi)補助的な作業を行う対基板作業装置を配置したシステム
これまでに例示した、回路部品装着システムは、装着装置のみをシステムベース上に配置して構成されている。それらの態様の他に、配線板の搬送、搬入、搬出、待機、ストック、搬送方向・経路の変更、配線板の向きの変更といった基板搬送関連作業のうちの少なくともいずれかの作業を行う装置を、補助作業装置として、配置させることも可能である。以下に、補助作業装置の例を述べる。
【0172】
vi-i)搬送作業装置
図22に、補助作業装置の例として、主として配線板の搬送作業を行う搬送作業装置を装着装置の間に配置した態様の回路部品装着システムを示す。このシステムは、図1(d)に示すシステムにおいて、右から3番目の装着装置12に代えて、その位置に配線板の搬送作業を主目的とする搬送作業装置620を配置したものである。搬送作業装置620は、装着装置12に配備されている配線板搬送装置24を主たる配備装置とし、装着ヘッド26、ヘッド移動装置28、部品供給装置22等の配備装置を除外した装置である。このような搬送作業装置220は、例えば、装着装置12のいずれかが故障したとき等に便利に活用できる。その場合、配置されていた装着装置12に割当てられていた回路部品装着作業を他の装着装置12が分担する等すれば、システムの大幅な稼動ロスを回避できる。同じ装着装置12を予備として保有しておくことによっても稼動ロスを回避できるが、搬送作業装置620は装置構成が単純で装着装置12よりも低コストな装置であるため、設備全体のコストを低く抑えることができるというメリットもある。なお、搬送作業装置620は、故障等の場合だけでなく、システムベース上に装着装置が配置されない空きスペースができるようなシステムを構築する際に、その空きスペースを補完する装置として利用可能である。この搬送作業装置220のような基板搬送関連作業装置は、システムのフレキシビリティ、利便性の向上に役立つ装置となる。
【0173】
vi-ii)ストック作業装置
図33に、補助作業装置の別の例として、基板搬送関連作業である配線板のストック作業を行うストック作業装置800の斜視図を示す。前述の単位幅の対基板作業装置を3つ隣接して配置可能なシステムベース804に、2台の装着装置12と1台のストック作業装置800とが隣接して配置されている。また、この図はストック作業装置800のカバーの一部の図示を省略し、この装置の主要な部分を概略的に示したものである。ストック作業装置800は、昇降台810を有し、その昇降台810上に配線板収容装置812が設けられている。配線板収容装置812は、単純には、前述の装着装置12に配備されている配線板搬送装置24が、基板保持機能(配線板を下方から押し上げて固定する機能)を有さず、複数のコンベアレールを備えたものと考えることができる。

【0174】
配線板収容装置812は、フロント収容部814とリア収容部816とを有し、それぞれに複数の配線板を収容することができる。フロント収容部814は、一対の第1レール支持部材820に支持された複数のコンベアレール824と一対の第2レール支持部材822に支持された複数のコンベアレール826とを備えており、支持された位置の高さが互いに等しく互いに向かい合うコンベアレール824,826の1つの対によって1つのコンベア部828が形成され、その1つのコンベア部に1つの配線板が収容される。本配線板収容装置812において、フロント収容部814に6つのコンベア部828が備えられており、配線板収容装置812は、フロント収容部814に最大6つの配線板を収容することができる。リア収容部816も同様に、第3レール支持部材830および第4レール支持部材832にそれぞれ複数のコンベアレール834,836が互いに向かい合うように複数支持されており、それらコンベアレール834,836の対によって形成されるコンベア部838にそれぞれ配線板が収容され、最大で6つまで収容可能とされる。
【0175】
コンベア部828,838の各々は、配線板を搬送するコンベアベルト(図示省略)と、そのコンベアベルトを駆動するモータ(図示省略)とを有している。それら、コンベアベルト(図示省略)とモータとは、各コンベアレール824,826,834,836(以下、「コンベアレール824〜836」と総称する場合がある)に1つずつ設けられており、1つのコンベア部828,838を形成する1対のコンベアレール824〜836に設けられた2つのモータを互いに同期させて回転させることにより、1対のコンベアレール824〜836に設けられた2つのコンベアベルトが同期して駆動されて配線板が搬送される。なお、任意のコンベア部828,838に属する1対のコンベアベルトを互いに同期して駆動可能とされている。
【0176】
通常、配線板の搬入あるいは搬出は、複数のコンベア部828,838のうち、所定の高さに位置するコンベア部828,838によって行われる。他の対基板作業機により、配線板は、図に複数の直線Hで示した高さ方向の位置である搬送高さ位置を通るように搬送され、配線板収容装置812において、その搬送高さ位置に位置するコンベア部828,838によって、配線板の搬入あるいは搬出が行われるのである。ストック作業装置800には、昇降台810を昇降させる昇降装置840が備えられており、その昇降装置840により配線板収容装置812が昇降台810とともに昇降させられ、配線板収容装置812の高さ位置が変更される。配線板の搬入あるいは搬出が行われる際には、複数のコンベア部828,838のうち、搬入あるいは搬出が行われるコンベア部828,838が、搬送高さ位置に位置させられるのである。
【0177】
なお、配線板収容装置810は、3つのモータ842を備えており、第2,第3,第4レール支持部材822,830,832のそれぞれに個別に螺合させられた3本のボールねじを個別に回転駆動することができ、それらレール支持部材の前後方向における位置を個別に変更することができる。つまり、前述の装着装置12に配備された配線板搬送装置24と同様に、フロント収容部814におけるコンベア幅と、リア収容部816におけるコンベア幅とをそれぞれ別個に変更することができるのである。
【0178】
本ストック作業装置800は、制御装置850を備えており、その制御装置850により、上述のような配線板収容装置810の昇降,コンベア幅の変更,各コンベア部828,838の駆動等が制御される。その制御装置850の制御下において、本ストック作業装置800は、自機の上流側に隣接する対基板作業機あるいはシステム外から搬送された複数の配線板を一時的に収容しておき、搬出を要求する信号の受信や入力があった際に、自機に収容されている配線板を自機の下流側に隣接する対基板作業機あるいはシステム外に搬出することができる。なお、配線板を搬入あるいは搬出するコンベア部828,838の順序は自由に設定でき、例えば、一番上のものから順に、あるいは一番下のものから順に行うことや、搬入と搬出との順序を同じようにして行うこと等が可能である。
【0179】
本ストック作業装置800を対基板作業機システムに配置することにより、対基板作業機システムのフレキシビリティや利便性が向上する。例えば、本ストック作業装置800は、自機の下流側に配置された対基板作業機の段取り替えを行っている間に、自機の上流側に配置された対基板作業機により作業が行われた配線板をストックしておき、その後に上流側の段取り替えを行っている間に、ストックされている配線板を下流側へ搬出するといった目的で使用することができる。
【0180】
vi-iii) 搬送経路変更作業装置
補助作業装置のさらに別の例として、図34に、配線板の搬送経路を変更する等の基板搬送関連作業を行う搬送経路変更作業装置900の斜視図を示す。搬送経路変更作業装置900は、前後方向に細長い支持台910を備えており、その支持台910はシステムベース10の後方へ伸び出ている。その支持台910の上面に、搬送装置移動装置912が設けられており、その搬送装置移動装置912は、Yテーブル914,2本のガイドレール916,ボールねじ918,モータ920を有している。Yテーブル914はスライド部材(ベアリングを含む)を有し、そのスライド部材がガイドレール916と係合させられており、それら2本のガイドレール916によってYテーブル914の移動方向が前後方向に規制されている。また、Yテーブル914は図示しないナット(ベアリングを含む)を有し、そのナットがボールねじ918と螺合させられており、そのボールねじ918がモータ920に回転させられることにより、Yテーブル914が前後方向に移動させられる。
【0181】
搬送経路変更作業装置900は、配線板搬送装置930と、Yテーブル914上に固定されてその配線板搬送装置930を支持する搬送装置回転装置932とを備えている。搬送装置回転装置932は、配線板搬送装置930を水平面内において回転させることが可能とされており、配線板搬送装置930の向きを任意に変更することができる。配線板搬送装置930は、単純には、前述の装着装置12に配備されている配線板搬送装置24の基板保持機能(配線板を下方から押し上げて固定する機能)を有さず、コンベア部が1つになったものと考えることができる。配線板搬送装置930は、2つのコンベアレールの間隔を変更することも可能である。
【0182】
搬送装置移動装置912は、配線板搬送装置930を搬送装置回転装置932とともに支持台910の後端部まで移動させることが可能である。配線板搬送装置930は、支持台910の後端部に位置した状態において、左右方向に配線板の搬入あるいは搬出を行うことができる。また、支持台910の後端部において、配線板搬送装置930が搬送経路変更作業装置900と隣接する他の対基板作業機と干渉しなくなるため、搬送装置回転装置932により配線板搬送装置930を回転させることが可能であり、任意の回転位置で配線板の搬入あるいは搬出を行うことができる。例えば、システムにおける搬送方向である左右方向だけでなく前後方向において配線板の搬入あるいは搬出を行うことができるのである。本実施形態において、搬送経路変更作業装置900は、搬送方向変換装置としての機能を有しているのである。なお、配線板の搬入,搬出にあたっては、支持台910の後部にコンベア装置等を併設すればよい。
【0183】
本搬送経路変更作業装置900は、他の対基板作業機と隣接して配置され、搬送されてきた配線板を対配線板作業システムの搬送方向と直角な方向(前後方向)へ移動させてから搬出することが可能である。そのため、上流側あるいは下流側に隣接する対基板作業機がコンベア部を複数有する配線板搬送装置を備えている場合には、上流機のどのコンベア部からでも配線板を搬入することができ、下流機のどのコンベア部にでも配線板を搬出することができる。例えば、本搬送経路変更作業装置900の上流側と下流側とに隣接する対基板作業機がフロントおよびリアのコンベア部を2つ有する配線板搬送装置を備えていれば、上流機のフロントコンベア部あるいはリアコンベア部から下流機のそれとは異なる側のコンベア部への搬送が可能なのである。なお、本搬送経路変更作業装置900は制御装置940を備えており、その制御装置940により各装置が制御されて、上述のような配線板の搬入あるいは搬出,配線板搬送装置930の移動や回転等の動作が行われる。
【0184】
本搬送経路変更作業装置900を対基板作業機システムに配置することにより、対基板作業機システムのフレキシビリティや利便性が向上する。例えば、搬送経路変更作業装置900の上流側に配置された対基板作業機の作業速度が速く、下流側に配置された対基板作業機の作業速度が遅い場合に、本搬送経路変更作業装置900により、上流側の対基板作業機により作業が行われた配線板を他の対基板作業システムに振り分けることができる。また、例えば、ある配線板に対する対基板作業に不具合があった場合に、その配線板を不良品としてシステム外に排出するといったことも可能である。
【0185】
vii)対基板作業の種類についてのバリエーション
これまでに例示したシステムは、回路部品装着作業を行うシステムであるが、他の種類の対基板作業を行うシステムを構築することもできる。図23に、対基板作業の種類が異なる各種対基板作業装置を配置した対基板作業システムを示す。本システムのシステムベース630は、2つのベースモジュールから構成されている。その1つは、単位幅の対基板作業装置を8つ隣接して配置可能なシステムベース574であり、他の1つは、単位幅の対基板作業装置を2つ隣接して配置可能なシステムベース10である。システムベース574が上流側(左側)に位置し、システムベース10が下流側(右側)に位置して、互いに隣接して配置されている。システムベース574上には、上流側から順に、配線板に対して高粘性塗布作業の1種であるクリームはんだ印刷作業を行うはんだ印刷装置632、別の高粘性塗布作業の1種である接着剤塗布作業を行う接着剤塗布装置634、先に説明した単位幅の2つの装着装置12および装着装置600、回路部品の装着結果の検査を行う装着結果検査装置636が、互いに隣接して配置されている。2つの装着装置12を除く他の装置は、単位幅の約2倍の装置幅を有する装置とされている。見方を変えれば、本システムは、(A)システムベース574とそれの上に配置されたはんだ印刷装置632、接着剤塗布装置634、2つの装着装置12および装着装置600とを含む第1の対基板作業ユニットと、(B)システムベース10とそれの上に配置された装着結果検査装置636とを含む第2の対基板作業ユニットとを含んで本システムが構成されているといえる。なお、第1の対基板作業ユニットおよび第2の対基板作業ユニットは、それぞれ単独で対基板作業システムとなるものである。
【0186】
viii)その他
上記例示した各種の対基板作業システムへの配線板の搬入は、例えば、上流側の対基板作業装置に配備されている配線板搬送装置に、搬入機(例えば、搬入コンベア等を主体とする設備)をつなげ、その搬入機によって行えばよく、また、システムからの搬出は、、例えば、下流側の対基板作業装置に配備されている配線板搬送装置に、搬出機(例えば、搬出コンベア等を主体とする設備)をつなげ、その搬出機によって行えばよい。搬入装置、搬出装置をシステムが備える対基板作業装置の一種として、モジュール化する等して、システムベース上に配置することも可能である。また、上記対基板作業システムは、他のシステム、対基板作業機等とつなげて用いることで、実装ラインの一部を担うような態様で使用されてもよい。
【0187】
<配線板の搬送>
図1に示すところの、装置幅が単位幅である装着装置12が互いに隣接して配置された態様の回路部品装着システムを例にとって、以下に、配線板の搬送について説明する。
【0188】
i)システム搬送装置の構成
本態様の回路基板装着システムでは、複数の装着装置12は互いに隣接して配置される。配線板搬送装置24は、装着装置12の装置幅と略等しい幅(搬送長さであり配線板搬送方向における長さである)を有しており、複数の装着装置12が所定の配置位置に配置された場合、各装着装置12に配備された各配線板搬送装置24は、互いに隣接して位置する。また、配線板搬送装置24は、装着装置12内の一定位置に配備されおり、複数の装着装置12が所定の配置位置に配置された場合、各配線板搬送装置24は、一直線上に並ぶ状態となる。各配線板搬送装置24が連なって並ぶことにより、システム全体にわたって配線板を搬送する装置が構成される。その装置は、システムにおける基板搬送装置となるものであり、各配線板搬送装置と区別すべく、「システム搬送装置」と呼ぶことにする。このシステム搬送装置は、部分々々がモジュール化された搬送モジュールが連なって構成されたものと考えることができる。すなわち、各装着装置12に配備搬送装置として配備された配線板搬送装置24の1つずつが、システム搬送装置における搬送モジュールに相当するものとなる。また、各装着装置12は、搬送装置をも配備してモジュール化された装置であることから、搬送装置配備モジュール化装置と称することができる。なお、配線板搬送装置24の構成については、先の説明を参照することとし、ここでの説明は省略する。
【0189】
本実施例の回路部品装着システムは、単位幅の装着装置12のみを配置したシステムである。先に説明したように、単位幅の2倍以上の略整数倍の装置幅を有する装着装置を配置したシステムも存在する。その場合でも、その装着装置に配備された配線板搬送装置を、上記装置幅に応じた幅のものとすれば、同様のシステム搬送装置を構成することができる。また、上記単位幅の2倍以上の略整数倍の装置幅を有する装着装置内に、単位幅の装着装置12において用いた配線板搬送装置24を、装置幅に応じた数だけ直列に並ぶように配備することによっても、同様のシステム搬送装置が得られる。
【0190】
ii)配線板の存在位置の認識
上記システム搬送装置は、互いに隣り合う配線板搬送装置24が協働し合って配線板を移送するとともに、少なくとも配線板の一部分を装着装置12の作業領域の定められた作業位置に位置させるものである。例えば、互いの配線板搬送装置24のコンベア動作を協調させて搬送を行う。すなわち、搬送協調制御が行われるのである。搬送協調制御を行う前提として、配線板が現在どの位置に存在するかを把握する必要がある。本システム搬送装置は、各配線板搬送装置24の各々が、配線板検知器としての光電センサ160を備えており、その光電センサ160による検知結果に基づいて、配線板の存在位置が認識される。以下に、その配線板の存在位置の認識の方法について説明する。なお、前述したように(図4参照)、本例の回路部品装着システムでは、前記フロントコンベア部110とリアコンベア部112との両方による配線板の搬送が可能であるが、以下の説明は、理解の容易さを考慮して、フロントコンベア部110にのみ着目した説明とする。また、コンベア動作とは、配線板の搬送、停止等を目的とするコンベアルト142(図5参照)の周回の開始、周回の停止、周回速度の変更等を意味するが、説明を簡単にするため、単に、それらを、コンベアの始動、停止、速度変更と称することにする。
【0191】
図24に、本態様のシステムにおいて、システム搬送装置を構成する配線板搬送装置24が複数並んだ状態を模式的に示す。図には、複数の配線板搬送装置24のうち4つのものの全体が示されており、それらの配線板搬送装置24は、上流側(左側)から順に番号付けして、装置〔X〕と呼ぶことにする。図では、上流側から順に装置〔1〕,装置〔2〕,装置〔3〕,装置〔4〕となる。基準レールとなるレール100(図4参照)の上流端部および下流端部には、配線板検知器(基板検知器の一種)としての反射型の光電センサ160がそれぞれ設けられている。光電センサ160(以下単に「センサ」という)は、配線板の検知信号を発することが可能なものであり、配線板搬送装置24の番号Xと関連付けて、それぞれ上流側のものをセンサ〔X〕U、下流側のものセンサ〔X〕Lと呼ぶことにする。ある装置〔X〕の上流側の装置〔X−1〕の下流側のセンサ〔X−1〕Lが、配線板150の下流側端がそのセンサ〔X−1〕Lの位置を通過することによって、ONの状態(検出状態)となる。それにより、その装置〔X〕に配線板350が入るものとして認識される。また、その装置〔X〕の下流側の装置〔X+1〕の上流側のセンサ〔X+1〕Uが、配線板150の上流側端がそのセンサ〔X+1〕Uの位置を通過することによって、OFFの状態(非検出状態)となる。それにより、その装置〔X〕から配線板150が出たものとして認識される。それらの認識結果により、ある装置〔X〕に配線板350の少なくとも一部が存在しているか否かの配線板有無情報が取得されるのである。配線板の存在の有無の管理は、対象となる装置〔X〕が配備されている装着装置12に配備された制御装置36によって行われ、上流側装置〔X−1〕のセンサからの認識信号および下流側装置〔X+1〕のセンサからの認識信号、配線板有無情報等は、それらの装置が配備されている装着装置12に配備された装着装置制御装置36との間でやり取りされる。
【0192】
iii)1つの装着装置の装置領域内に収まる配線板の搬送
図25に、配線板の搬送方法の第1例を模式的に示す。本例の搬送方法は、配線板搬送装置24の幅よりも短い長さ(配線板搬送方向における長さ)の配線板、平たく言えば、1つの装着装置12の装置領域内に収まる大きさの配線板(実際には、装置の構造上、装置幅より所定の長さだけ短い配線板である)を、搬送するのに適した搬送方法である。まず、図25(a)に示す状態では、配線板150は、装置〔1〕の配線板搬送方向における中央の位置に固定して保持され、装置〔1〕を配備する装着装置12による回路部品装着作業に供されている状態である。その回路部品装着作業が終了した場合に、配線板の固定が解除される。続いて、装置〔2〕に配線板が存在しないことが確認された後、装置〔1〕のコンベアが始動する。配線板150が移動して図25(b)に示す位置に到達したときに、センサ〔1〕LがONとなり、装置〔2〕のコンベアが始動する。なお、装置〔1〕のコンベア速度と装置〔2〕のコンベア速度は等しくされている。続いて、図25(c)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔2〕UがONとなり、その時点を始点とする搬送距離の制御が開始される。搬送距離の制御は、前述の電動モータ344の回転量(回転角度)の制御によって行う。配線板350の長さは把握されており、配線板350の下流端を、センサ〔2〕Uの位置から設定された距離まで移動させるように、上記回転量が制御されるのである。この制御により、配線板150を任意の位置で停止させることが可能となる。なお、本例では、配線板150の中心が、配線板搬送方向における中心の位置に停止するように設定されている。次いで、配線板150が図25(d)に示す位置まで到達したときに、センサ〔2〕UがOFFとなり、装置〔1〕のコンベアが停止する。そして、図25(e)に示すように、上記設定された位置まで配線板350が到達した場合に、装置〔2〕のコンベアが停止するとともに、上記搬送距離の制御を終了する。この位置において、配線板150は固定されて保持され、装置〔2〕を配備する装着装置12による回路部品装着作業が開始される。
【0193】
以上のような搬送を各配線板搬送装置24が順次繰り返し、配線板150は、各装着装置12を順次移動していく。多くの場合、各装着装置12は、並行して回路部品装着作業を実施しており、システム内に存在する配線板搬送装置24ごとに配線板150が存在している。したがって、実際の搬送においては、まず、下流側の配線板搬送装置24を空の状態(配線板150が存在しない状態)とし、その上流側から配線板を移送してその空の状態を埋めるという1つの搬送動作を、下流側から上流側に向かって順に行って、システム搬送装置に存在するすべての配線板150の搬送が行われる。なお、別の方法として、すべての配線板搬送装置24のコンベア動作を一斉に行って、システム搬送装置内の配線板を同時に搬送するようにしてもよい。また、システムのへの搬入(最上流に位置する配線板搬送装置への搬入)、システムからの搬出(最下流に位置する配線板搬送装置24からの搬出)も、システム外部のコンベア装置に前述の光電センサ160を設ける等して、上記と同様の方法で、協働して搬送動作を行わせることも可能である。また、上記光電センサ160の検知信号に基づき、あるいは、別の光電センサを設けてその光電センサの検知信号に基づいて、コンベアベルト142の周回速度を変更することで、配線板の移送速度を変更する態様の搬送協調制御を行わせることもできる。
【0194】
iv)複数の装着装置に跨る配線板の搬送方法1
図26に、配線板の搬送方法の第2例を模式的に示す。本例の搬送方法は、配線板搬送装置24の幅よりも長い長さの配線板、すなわち、複数の装着装置に跨る大きさの配線板を搬送するのに適した搬送方法である。互いに隣り合う複数の装着装置12に跨る配線板を、それらの装着装置12が互いに協働して回路部品装着作業を行う場合に効果的である。本例では、2つの装着装置12に跨る大きさの配線板を搬送する場合について説明する。
【0195】
まず、図26(a)に示す状態では、配線板150は、中心が装置〔1〕と装置〔2〕とのちょうど中間位置に位置して、それら両装置に固定して保持され、それらの両装置の各々を配備する2つの装着装置12による回路部品装着作業に供されている状態である。その回路部品装着作業が終了した場合に、両装置による配線板の固定が解除される。続いて、装置〔3〕および装置〔4〕に配線板が存在しないことが確認された後、装置〔1〕および装置〔2〕のコンベアが始動する。配線板150が移動して図26(b)に示す位置に到達したときに、センサ〔2〕LがONとなり、装置〔3〕のコンベアが始動する。続いて、図26(c)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔2〕UがOFFとなり装置〔1〕のコンベアが停止する。続いて、図26(d)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔3〕LがONとなり装置〔4〕のコンベアが始動する。次に、図26(e)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔4〕UがONとなり、その時点を始点とする搬送距離の制御(前述のものと同様の制御)が開始される。次いで、配線板150が図26(f)に示す位置まで到達したときに、センサ〔3〕UがOFFとなり、装置〔2〕のコンベアが停止する。そして、図26(g)に示すように、配線板150の中心が装置〔3〕と装置〔4〕との中間位置まで到達した場合に、装置〔3〕および装置〔4〕の2つのコンベアが同時に停止するとともに、搬送距離の制御を終了する。この位置において、配線板150は、固定されて保持され、装置〔3〕および装置〔4〕の各々を配備する2つの装着装置12による回路部品装着作業が開始される。
【0196】
本例の搬送方法では、配線板150は、配線板搬送装置24の2つ分の幅だけ一度に送られる。多くの配線板がシステム内に存在する場合の搬送方法、システムへの配線板の搬入、システムからの配線板の搬出の方法、移送速度の変更等は、前述の第1例と同様に実施可能である。なお、先に例示したように、単位幅の約2倍の装置幅を有する装着装置がいずれかの位置に配置されている場合には、その部分について、上記2つの搬送方法から類推される同様の搬送方法(具体的な説明は省略する)を適用ればよい。本例の搬送方法が利用される場合において、本態様のシステムでは、装置〔1〕と装置〔2〕とが1つの作業装置群を構成しており、また、装置〔3〕と装置〔4〕とが別の1つの作業装置群を構成している。本例の搬送方法によれば、それら作業装置群を一単位とした配線板の搬送が実現される。この搬送形態を群単位搬送形態と称する。
【0197】
iv)複数の装着装置に跨る配線板の搬送方法2
図27に、配線板の搬送方法の第3例を模式的に示す。本例の搬送方法は、前記第2例と同様、配線板搬送装置24の幅よりも長い長さの配線板、すなわち、複数の装着装置に跨る大きさの配線板を搬送するのに適した搬送方法である。互いに隣り合う複数の装着装置12に跨る配線板を、それらの装着装置12が互いに協働して回路部品装着作業を行う場合に効果的である。本例では、2つの装着装置12に跨る大きさの配線板を搬送する場合について説明する。
【0198】
まず、図27(a)に示す状態では、配線板150は、中心が装置〔1〕と装置〔2〕とのちょうど中間位置に位置して、それら両装置に固定して保持され、それらの両装置の各々を配備する2つの装着装置12による回路部品装着作業に供されている状態である。その回路部品装着作業が終了した場合に、配線板150の固定が解除される。続いて、装置〔3〕に配線板が存在しないことが確認された後、装置〔1〕および装置〔2〕のコンベアが始動する。配線板150が移動して図27(b)に示す位置に到達したときに、センサ〔2〕LがONとなり、装置〔3〕のコンベアが始動する。続いて、図27(c)に示す位置に配線板150が到達したときに、センサ〔3〕UがONとなり、その時点を始点とする前述の搬送距離の制御が開始される。次いで、配線板150が図27(d)に示す位置まで到達したときに、センサ〔2〕UがOFFとなり、装置〔1〕のコンベアが停止する。そして、図27(e)に示すように、配線板150の中心が装置〔2〕と装置〔3〕との中間位置まで到達した場合に、装置〔2〕および装置〔3〕の2つのコンベアが同時に停止するとともに、搬送距離の制御を終了する。この位置おいて、配線板150は、固定されて保持され、装置〔2〕および装置〔3〕の各々を配備する2つの装着装置12による回路部品装着作業が開始される。
【0199】
本例の搬送方法では、前記第2例と異なり、配線板150は配線板搬送装置24の1つ分ずつしか搬送されない。多くの配線板がシステム内に存在する場合の搬送方法、システムへの配線板の搬入、システムからの配線板の搬出の方法、移送速度の変更、単位幅の約2倍の装置幅の装着装置が配置されている場合の搬送等は、前述の第2例と同様である。本例の搬送方法が利用される場合において、本態様のシステムでは、装置〔1〕と装置〔2〕とが1つの作業装置群を構成しており、また、装置〔3〕と装置〔4〕とが別の1つの作業装置群を構成している。また見方を変えれば、装置〔2〕と装置〔3〕とが1つの作業装置群を構成しているともいえる。本例の搬送方法によれば、それら作業装置群を一単位とした配線板の搬送ではなく、作業装置群を構成する1つの装着装置を一単位としたの送りが実現される。すなわち装着装置ごとに順送りされるのである。この搬送形態を装置単位搬送形態と称する。本態様のシステムでは、この装置単位搬送形態と、前述の群単位搬送形態とを、本システムの作業形態に応じて、選択的に採用することが可能とされている。
【0200】
<複数の装着装置による協働作業>
図1に示すところの、装置幅が単位幅とされた装着装置12が互いに隣接して配置された態様の回路部品装着システムを例にとって、以下に、複数の装着装置による協働作業について説明する。本システムは、複数の装着装置12が、隣接して配置されており、それらののうちの隣り合う複数のものの装置領域に跨って位置する配線板に対して、それら複数のものが、協働して電子部品の装着を行うことができる。装着装置12は、いずれも同じ構成の装置であり、いずれの装着装置12に跨る配線板に対しても、その装着装置12と隣り合ういずれの装着装置12との間で協働作業が可能である。以下の説明は、2つの装着装置12に跨る配線板への電子部品装着に関して行うが、特に、通常の装着ヘッド26の移動動作において存在するところの、2つの装着装置12の境界部分に位置する配線板の装着領域におけるデッドゾーンを解消するための、装着ヘッド26の移動動作を中心に行う。なお、装着ヘッド26およびヘッド移動装置28の構成とその動作については、図10,図11を用いて行った前述の説明を、適宜参照するものとする。
【0201】
i)装置領域を超えない装着ヘッドの移動と特定領域
図28に、1つの装着装置を着目対象装置とし、それの一方の側に隣接する装着装置を並設装置として、2つの装置の装着ヘッド等の動作を模式的に示す。図において、左側の装着装置12が着目対象装置であり、右側の装着装置12が並設装置である。着目対象装置を装置〔M〕とし、並設装置を装置〔N〕とする。配線板は、配線板搬送方向における中心が装置〔M〕と装置〔N〕との中央に位置する位置に保持されている。なお、装置〔M〕と装置〔N〕は、各々の第1Xスライドの移動方向であるX軸方向、つまり各々の装置における特定方向が互いに同じ方向となるように配置されている。
【0202】
先に説明したように、ヘッド移動装置28は、第2軌道形成部である第1Xスライド242を、第1軌道上のST1〜ST4のいずれかのステーションに停止させた状態で、装着ヘッド26を移動させる。図11に示すように、第1Xスライド242がST2およびST3に位置する場合は、装着ヘッド26ないし第1Xスライド242は、自身の装置領域から進出しない。したがって、1つの配線板を自身の装置領域内に収めて回路部品装着作業を行う場合には、通常、第1Xスライド242をST2またはST3に位置させて装着ヘッド26移動させることで、電子部品を装着が可能である。
【0203】
図28(a)は、装置〔M〕の第1Xスライド242をST2に位置させ、装置〔N〕の第1Xスライド242をST3に位置させた状態を示している。この状態では、互いの装着ヘッド26を第2軌道上のいずれの位置に位置させたとしても、両装置の装着ヘッド26ないし第1Xスライド242は、互いに干渉することはない。(以下、これら干渉の可能性のある装着装置の構成部分を「装着ヘッド等」と略す。)ところが、この状態では、配線板の装着領域(電子部品が装着される部品装着位置に関する領域)内において、両装置の装着ヘッド26のいずれもが装着不可能なデッドゾーンとなる特定領域666(図における斜線の領域)が存在する。この特定領域666の存在により、上述した通常の装着ヘッド26の移動動作では、満足な協働作業ができない。
【0204】
ii)装置領域を超える装着ヘッドの移動と干渉回避制御
そこで、本システムでは、装置〔M〕および装置〔N〕の両者のヘッド移動可能領域すなわち作業領域を拡大すべく、互いに相手の装置領域への装着ヘッド26の進出を可能とし、互いに相手側の装着ヘッド26の自身の装置領域への進出を許容している。この際、両装置の作業ヘッド等の干渉を避けつつ、互いの装着ヘッド26移動させる干渉回避制御が行われる。着目対象装置である装置〔M〕についていえば、具体的には、図28(b)に示すように、並設装置である装置〔N〕の第1Xスライド242がST2に位置するときに、装置〔M〕の第1Xスライド242をST1に位置させることで、互いの装着ヘッド等の干渉を避けつつ、装置〔M〕による特定領域666への電子部品の装着を可能としている。また、逆に、図28(c)に示すように、装置〔N〕の第1Xスライド242がST4に位置するときあるいは位置しようとするときには、装置〔M〕の第1Xスライド242をST3に位置させることで、互いの装着ヘッド等の干渉を避けつつ、装置〔N〕による特定領域666への電子部品の装着を可能としている。
【0205】
さらに詳しく説明すれば、以下のようになる。一方の装置の装着ヘッド26が第2軌道上のいずれの位置に位置させられるときであっても、その一方の装置の作業ヘッド等が他方の装置の装置領域に進出しない状態となる範囲において、その一方の第1Xスライド242が位置させられる第1軌道上の限界位置が、一方の装置についての非進出限界位置として定められている。そして、装置〔M〕のST1,装置〔N〕のST4は、両装置の関係において、その非進出限界位置を超えて設定された停止位置である進出停止位置として設定されている。また、他方の装置の作業ヘッド等が一方の装置の装置領域内に最も進出する状態において、その一方の装置の作業ヘッド26が第2軌道上のいずれの位置に位置させられるときであっても、一方の装置の作業ヘッド等と他方の装置の作業ヘッド等とが互いに干渉しない状態となる範囲において、一方の装置の第1Xスライド242が位置させられる第1軌道上の限界位置が、一方の装置についての非干渉限界位置として定められている。そして、装置〔M〕のST3,装置〔N〕のST2は、両装置の関係において、非干渉限界位置を超えない位置に存在する1つ以上の非干渉停止位置として設定されている。
【0206】
干渉回避制御は、主に、第2軌道形成部である第1Xスライド242の位置を制御することにより行われる。着目対象装置である装置〔M〕についていえば、装置〔N〕の第1Xスライド242が非干渉限界位置を超えない位置に位置する状態となる場合において、装置〔M〕の第1Xスライド242が非進出限界位置を超えて位置することを許容される。つまり、装置〔M〕の第1Xスライド242が、進出停止位置であるST1に停止することを許容されるのである。また、装置〔N〕の第1Xスライド242が非進出限界位置を超えた位置に位置する状態となる場合において、装置〔M〕の第1Xスライド242が非干渉限界位置を超えて位置することを禁止される。つまり、装置〔M〕の第1Xスライド242が、非干渉停止位置であるST3に停止させられるのである。並設装置である装置〔N〕についても、装置〔M〕との関係において同様の制御が行われる。このようにして、本態様のシステムでは、干渉回避制御において、第1Xスライド242位置の制御、すなわち第2軌道形成部の位置制御が行われている。
【0207】
本態様のシステムでは、着目対象装置である装置〔M〕の図における左側にも装着装置12が配置される場合もある。その場合、その左側の装着装置12との間で、上記干渉回避制御を行うようにされている。左側の装着装置12との関係においては、装置〔M〕に設定されているST4が、上記進出停止位置とされており、ST2が上記非干渉停止位置とされている。干渉回避制御は、隣合う一方の装着装置12との間でのみ行うものであってもよく、隣合う両側の装着装置12との間で、同時期に行うものであってもよい。
【0208】
<複数の装着装置に跨る配線板についての作業形態>
図1に示すところの、装置幅が単位幅とされた装着装置12が互いに隣接して配置された態様の回路部品装着システムを例にとって、以下に、複数の装着装置に跨る配線板に回路部品装着作業を行う際の作業形態について説明する。
【0209】
i)配線板と作業装置群
図29に、回路部品装着作業に供される配線板を模式的に示す。図に示す配線板150は、2つの装着装置12に跨る大きさのものであり、説明を簡単にするために、2種の電子部品690が装着されるものとする。2種の電子部品のうちの1種のものを部品aとし、便宜的に、配線板150の左側より順に部品a1〜a9と番号付けする。同様に、もう1種の電子部品を、部品bとし、便宜的に、配線板150の左側より順に部品b1〜b8と番号付けする。配線板150の被作業領域である装着領域を略中央で2つに分ければ、部品a1〜a5および部品b1〜b4が左側の部分領域694に、部品a6〜a9および部品b5〜b8が右側の部分領域694に位置している。なお、部品a5,a6および部品b4,b5は、前述の特定領域666に装着される。回路部品装着システムは、複数の装着装置12のうち、互いに隣接する2つのもので構成される作業装置群を構成する。装着装置12の配置数により、当該システムが有する作業装置群の数が異なるが、説明は、そのうちの1つの作業装置群について行う。したがって、上記電子部品690は、その1つの作業装置群において装着されることとする。本回路部品装着システムは、2つの作業形態を選択可能とされており、上記のことを前提として、それら2つの作業形態を順に説明する。
【0210】
ii)一括作業制御による作業形態
図30に、2つの作業形態のうちの1つの作業形態を模式的に示す。図において、配線板は、上流側である左側から、下流側である右側に向かって搬送される。作業装置群を構成する2つの装着装置12を、それぞれ、上流側のものを装置〔A〕、下流側のものを装置〔B〕とする。なお、装着装置は、コンベアのみが図示され、他の部分は省略されている。本作業形態では、配線板150は、作業装置群を一単位として搬送される。詳しくは、装置〔A〕および装置〔B〕に先の配線板150が存在しない状態において、配線板150が、装置〔A〕の上流側より移送され、中心が装置〔A〕と装置〔B〕との中間位置に停止させられ、その位置において電子部品690の装着がなされた後、装置〔A〕および装置〔B〕にその配線板150が存在しなくなるように装置〔B〕の下流側に移送されるのである。具体的には、先に説明した配線板の搬送形態のうちの群単位搬送形態での搬送が行われる。なお、ここで説明する作業形態を、一括作業形態とよび、その形態の作業を実行するためのの制御を一括作業制御と呼ぶ。
【0211】
図30(a)は、電子部品690が装着される前の状態を、図30(b)は、電子部品690が装着された後の状態を示している。本作業形態では、前述の左側の部分領域694に対して、装置〔A〕によって、部品a,部品bがともに装着され、右側の部分領域696に対して、装置〔B〕によって、部品a,部品bがともに装着される。具体的には、装置〔A〕によって部品a1〜a5,部品b1〜b4が、装置〔B〕によって部品a6〜a9,部品b5〜b8が、それぞれ装着される(図29参照)。なお、特定領域666に対する電子部品の装着は、前述の進出制御および干渉回避制御によって装着ヘッド26を移動させることにより行われる。このように行われる本作業形態においては、装置〔A〕,装置〔B〕のそれぞれに定められた回路部品装着作業は、一定の作業とされている。つまり、装置〔A〕,装置〔B〕ともに、各々が作業する配線板150の装着領域および装着する電子部品690が、装置ごとに一定とされている。
【0212】
なお、上記一括作業形態においては、部分領域を694,696を、1つのパターンとして設定している。これに代えて、部分領域を、装着する電子部品の種類等に応じた複数のパターンとすることも可能である。つまり、例えば、電子部品690の種類にごとに、各装置が作業する装着領域を変更するといった態様で、回路部品装着作業を行うこともできる。一括作業形態では、各種類の電子部品690が配線板の装着領域の全域にわたって装着される場合に、複数の装着装置12ごとに各種類の電子部品を準備しなければならない。つまり、同じ種類の電子部品690を供給するテープフィーダ20を、各装着装置12が備える部品供給装置22に配備しなければならい。このことは、若干のデメリットとなるが、次に説明する作業形態と比較して、本作業形態は、配線板の搬送のための時間を短縮でき、迅速な回路部品装着作業を行い得るというメリットがある。
【0213】
iii)順送作業制御による作業形態
図31に、2つの作業形態のうちの別の1つの作業形態を模式的に示す。配線板の搬送方向、作業装置群およびそれを構成する装着装置12に関する名称は、上記一括作業形態と同様である。本作業形態では、配線板150は、作業装置群を構成する装着装置ごとに順送りに搬送される。詳しくは、まず、配線板150は、上流側から移送され、装置〔A〕の装置領域内に配線板150の下流側の略半分が収まる位置に停止させられる。その位置においてその配線板150に対する装置〔A〕による電子部品690の装着が終了後、その配線板150は移送され、中心が装置〔A〕と装置〔B〕との中間位置となる位置に停止させられる。次に、その位置において、装置〔A〕と装置〔B〕とによるその配線板150に対する装着が終了後、その配線板150は移送され、装置〔B〕の装置領域内に配線板150の上流側の略半分が収まる位置に停止させられる。その位置において装置〔B〕によるその配線板150への装着が終了した後、その配線板150は装置〔B〕の下流側に移送されるのである。具体的には、先に説明した配線板の搬送形態のうちの装置単位搬送形態での搬送が行われる。実際には、いくつかの配線板150が連なって搬送されており、装置〔A〕の装置領域内に配線板150の下流側の略半分が位置するときに、装置〔B〕の装置領域内に先の配線板150の上流側の略半分が位置させられる。図31(a),(b)は、その状態を示しており、図31(c),(d)は、配線板150が、その中心が装置〔A〕と装置〔B〕との中間位置となる位置に停止している状態を示している。なお、ここで説明する作業形態を、順送作業形態とよび、その形態の作業を実行するためのの制御を順送作業制御と呼ぶ。
【0214】
図31(a),(c)は、電子部品690が装着される前の状態を、図30(b),(d)は、電子部品690が装着された後の状態を、それぞれ示している。1つの配線板150に対する作業を順に説明すれば、以下のようになる。まず、図31(a),(b)に示すように、配線板150の右側の部分領域696に対して、装置〔A〕によって、部品a6〜a9が装着される(部品番号は図29参照のこと、以下同様)。このとき、特定領域666への部品a6の装着は、前述の進出制御および必要な場合には干渉回避制御によって行われる。次に、配線板150が1つの装置分搬送された後、図31(c),(d)に示すように、配線板150の左側の部分領域694に対して、装置〔A〕によって、部品a1〜a5の装着が行なわれ、右側の部分領域696に対して、装置〔B〕によって、部品b5〜b8の装着が行われる。特定領域666への、部品a5および部品b5の装着は、一括作業形態の場合と同様、前述の進出制御および干渉回避制御によって装着ヘッド26を移動させることにより行われる。そして、さらに配線板150が1つの装置分搬送された後、図31(a),(b)に示すように、配線板150の左側の部分領域694に対して、装置〔b〕によって、部品b1〜b4が装着される。同様に、特定領域666への部品a6の装着は、前述の進出制御および必要な場合には干渉回避制御によって行われる。なお、このとき、装置〔A〕において、次の配線板150の右側の部分領域696に対する装着が行われる。
【0215】
前述の一括作業形態では、装置〔A〕,装置〔B〕のそれぞれに定められた回路部品装着作業は、一定の作業とされている。これに対して、本作業態様では、装置〔A〕,装置〔B〕ともに、配線板150に対する回路部品装着作業が都度変更される。すなわち、本態様では、両装置とも、異なる2つの回路部品装着作業が順次繰り返されるように変更される。その2つの回路部品装着作業は、対象となる配線板150の装着領域も順次変更され、それに応じて、その領域に装着される電子部品690の種類およびその装着位置も異なるのである。(注:本例では、簡略化のため、2種の電子部品のみを示しており、1つの装着装置が1種のの部品しか装着しない。そのため、見かけ上、装着装置ごとに同種の電子部品を装着しているが、そのことをもって、装着される電子部品が同じとされるものではない。)なお、部分領域を1つのパターンとせずに、複数のものに変更しつつ作業を行うことは、前記一括作業形態の場合と同様に可能である
【0216】
本作業形態では、装置〔A〕と装置〔B〕との関係において、装置〔A〕のみが部品aを装着し、装置〔B〕のみが部品bを装着するようにされている。したがって、部品aを装置〔A〕に準備する必要がなく、また、部品bを装置〔A〕に準備するする必要がない。すなわち、部品aを供給するテープフィーダ20を装置〔A〕の部品供給装置22にのみ配備し、部品bを供給するテープフィーダ20を装置〔B〕の部品供給装置22にのみ配備する態様のシステムを構築することができるのである。このことは、システムが備えるテープフィーダ20の数の減少につながり、システム自体の配線板搬送方向における幅の減少,コストの低減を可能にする。
【0217】
<回路部品装着システムの制御に関する機能ブロック>
以上、回路部品装着システムにおける回路部品装着作業についてのいくつかの形態と、それに応じた装着装置12を中心とした動作とについて説明した。上記回路部品装着装着システムは、先に説明したように、制御装置として、システム全体を統括して制御するシステム制御装置376と、各々の装着装置12に備えられた対基板作業装置制御装置としての装着装置制御装置36とを含んでいる。上記回路部品装着システムは、分散型の制御が行われ、主として、各装着装置制御装置36が、互いに情報,信号等を通信にてやり取りして、各装着装置12の制御を行うことで、システム全体が制御される。そこで、制御の中心的存在である装着装置制御装置36に関しての機能を、以下に説明する。
【0218】
図32に、装着装置制御装置36の機能ブロック図を、本発明に関係の深い部分について示す。装着装置制御装置36は、装着装置12に配備された種々の配備装置等の制御を行う種々の制御部を有する。その1つとして、装着ヘッド26の移動制御すなわちヘッド移動装置28の制御を行うヘッド移動制御部710が存在する。ヘッド移動制御部710は、軌道部停止ヘッド制御部712と、進出制御部714と、干渉回避制御部716とを有しており、その中の干渉回避制御部716は、第2軌道形成部位置制御部718を有している。それぞれは、前述した装着ヘッド26の移動に関する様々な制御を行う部分であり、それぞれを簡単に説明すれば、軌道部停止ヘッド制御部712は、第2軌道形成部である第1Xスライド242を第1軌道上の所定の停止位置に停止させたままで装着ヘッド26を移動させる制御を行う部分であり、進出制御部714は、第1Xスライド242を自身の装置領域外に進出させて装着ヘッド26を装置領域外にさせる制御を行う部分である。干渉回避制御部716は、隣り合う装着装置12作業ヘッド等と自らの作業ヘッド等が干渉しあわないように制御する部分であり、第2軌道形成部位置制御部は718、干渉回避制御において、第1Xスライド242の位置を制御する部分である。これらの各制御部が奏合して、装着ヘッド26の移動を司っている。
【0219】
また、装着装置制御装置36は、基板搬送モジュールとしての配線板搬送装置24を制御する配線板搬送制御部720を備えている。配線板搬送装置24は、コンベアを主体とするものであり、各配線板搬送装置24が協調して動作することにより、基板搬送装置としてのシステム全体にわたるシステム搬送装置が動作させられるのである。具体的には、先に説明したように、各コンベアの始動・停止等を協調させる搬送協調制御を行う。この搬送協調制御を行う部分が、配線板搬送制御部720が有する基板搬送協調制御部としての配線板搬送協調制御部722である。
【0220】
上記回路部品装着システムでは、先に説明したように、複数の装着装置12に跨る配線板に対して、作業形態を選択し得る。その1つの作業形態として、一括作業形態があり、装着装置制御装置は36は、一括作業制御を行う場合の制御部として、一括作業制御部724を有している。この一括作業制御部724は、ヘッド移動制御部710および配線板搬送制御部720を統括して制御する部分として存在する。同様に、もう1つの作業形態として、順送作業形態があり、順送作業制御を行う場合の制御部として、順送作業制御部726を有している。 順送作業制御部726も、同様に、ヘッド移動制御部710および配線板搬送制御部720を統括して制御する部分として存在する。そしてさらに、装着装置制御装置36は、一括作業制御と順送作業制御とのいずれを行うかを選択し、その選択した方の制御を実行させる部分として、作業形態選択制御部728を有している。
【符号の説明】
【0221】
10:システムベース 12:回路部品装着装置 22:部品供給装置 24:配線板搬送装置 26:装着ヘッド 36:装着装置制御装置 110:フロントコンベア部 112:リアコンベア部 150:配線板 200:Yスライド装置 202:Xスライド装置 210:Y軸方向ガイド 214:Yスライド 240:第1X軸方向ガイド 242:第1Xスライド 260:第2X軸方向ガイド 264:第2Xスライド 472:レール列 474:車輪 480:当接部材 482:ストッパ 488:被付勢部材 490:付勢装置 500:テーブル装置 504:ガイドレール 520:連結ブロック 570〜574:システムベース 590〜594:システムベース 600:回路部品層装着装置 602:配線板搬送装置 604:部品供給装置 610:回路部品装着装置 620:搬送作業装置 630:システムベース 632:はんだ印刷装置 634:接着剤塗布装置 636:装着結果検査装置 666:特定領域 690:電子部品 694,696:部分領域 710:ヘッド移動制御部 712:軌道部停止ヘッド移動制御部 714:進出制御部 716:干渉回避制御部 718:第2軌道形成部位置制御部 720:配線板搬送制御部 724:配線板搬送協調制御部 800:ストック作業装置 900:搬送経路変更作業装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路部品を支持して電子回路を構成する回路基板に対して、予定された対回路基板作業を行う対基板作業システムであって、
(a)ベースと、(b)そのベース上に配置され、自身の作業領域内に少なくとも一部分が位置する回路基板に対して定められた対回路基板作業を行う1以上の対基板作業装置とを有する対基板作業ユニットを備え、
前記1以上の対基板作業装置のうちの少なくとも1つのものが、前記ベースに対する相対移動が可能な可動装置とされたことを特徴とする対基板作業システム。
【請求項2】
前記1以上の対基板作業装置のうちの少なくとも1つのものが、基板搬送装置を有し、その基板搬送装置とともに前記ベースに対して相対移動可能とされた請求項1に記載の対基板作業システム。
【請求項3】
回路部品を支持して電子回路を構成する回路基板に対して、予定された対回路基板作業を行う対基板作業システムであって、
回路基板を搬送する基板搬送装置と、
それぞれが、(a)ベースと、(b)そのベース上に配置され、自身の作業領域内に少なくとも一部分が位置する回路基板に対して定められた対回路基板作業を行う1以上の対基板作業装置とを有する複数の対基板作業ユニットと
を備え、
前記複数の対基板作業ユニットが、
それらが有する複数の対基板作業装置が、前記基板搬送装置によって回路基板が搬送される方向である基板搬送方向に沿って整列する状態で、配設されており、
前記複数の対基板作業装置のうちの少なくとも1つのものが、前記基板搬送方向と交差する方向に延びる装置軌道に沿って、自身が配置される前記ベースに対する相対移動が可能な可動装置とされたことを特徴とする対基板作業システム。
【請求項4】
前記基板搬送装置が、互いに分離可能な複数の搬送装置が前記基板搬送方向において連なって並ぶことによって構成されており、
前記可動装置とされた前記対基板作業装置が、前記複数の搬送装置のうちの1つ以上のものを配備搬送装置として自身に配備するともに、その配備搬送装置とともに、自身が配置される前記ベースに対する相対移動が可能とされた請求項3に記載の対基板作業システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【公開番号】特開2010−10710(P2010−10710A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234984(P2009−234984)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【分割の表示】特願2009−11929(P2009−11929)の分割
【原出願日】平成15年4月21日(2003.4.21)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】