説明

封止充てん用樹脂組成物、並びに半導体装置及びその製造方法

【課題】良好なフラックス活性を示すと同時に、接続信頼性に優れた封止充てん用の樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】エポキシ樹脂と、硬化剤と、2以上のアルコール性水酸基を有するアルコール化合物と、を含有する、封止充てん用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止充てん用樹脂組成物、並びに半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高機能化の進展に伴って、半導体装置に対して小型化、薄型化及び電気特性の向上(高周波伝送への対応など)が求められている。そのため、ワイヤーボンディングで半導体チップを基板に実装する従来の方式から、半導体チップにバンプと呼ばれる導電性の突起を形成してこれを基板電極と直接接続するフリップチップ接続方式への移行が進んでいる。フリップチップ接続方式においてバンプと基板電極との接続を得る方法として、はんだやスズなどを用いて金属接合させる方法、超音波振動を印加して金属接合させる方法、樹脂の収縮力を利用して機械的接触を保持する方法などが知られている。中でも、生産性や接続信頼性の観点から、はんだやスズなどを用いて金属接合させる方法が広く用いられている。特にはんだを用いる方法は、高い接続信頼性を示すことからMPUなどの実装のために適用されている。
【0003】
フリップチップ接続方式では、半導体チップと基板の熱膨張係数差に由来する熱応力が接続部に集中して接続部が破壊する場合がある。これを防いで接続信頼性を高めるために、半導体チップと基板の間の空隙を樹脂で封止充てんし、熱応力を分散する必要がある。一般に、樹脂による封止充てんは、半導体チップと基板をはんだなどを用いて接続した後、空隙に液状封止樹脂を、毛細管現象を利用して注入する方式が採用して行われる。
【0004】
ところで、半導体チップと基板を接続する際には、はんだなどのバンプ表面の酸化膜を還元除去して金属接合を容易にするために、ロジンや有機酸などを含むフラックスが用いられる。このフラックスの残渣が残ると、液状樹脂を注入したときの気泡発生や、酸成分による配線の腐食の原因となり、接続信頼性が低下する。したがって、フラックス残渣を洗浄する工程が必須であった。しかし、近年の接続ピッチの狭ピッチ化に伴い、半導体チップと基板の間の空隙が狭くなっているため、フラックス残渣の洗浄が困難になる傾向がある。
【0005】
そこで、はんだなどの金属の表面に存在する酸化膜を還元除去する性質(以下「フラックス活性」と記す。)を示す封止樹脂を用いる方法が提案されている。フラックス活性を示す封止樹脂としては、カルボン酸などの有機酸を配合したものが検討されている(特許文献1〜3)。これらの封止樹脂を基板に供給した後、半導体チップと基板を接続すると同時に、半導体チップと基板の間の空隙が封止樹脂で封止充される。これにより、フラックス残渣の洗浄を省略することができる。
【特許文献1】特開2001−223227号公報
【特許文献2】特開2005−272547号公報
【特許文献3】特開2006−169407号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、フラックス活性を付与するために従来用いられている有機酸は、封止樹脂に広く用いられているエポキシ樹脂の硬化剤としても作用することから、反応性の制御や保存安定性の確保が困難であったり、酸成分によって配線の腐食が発生し、絶縁信頼性が低下したりする場合があった。また、液状の封止樹脂をディスペンスなどにより基板に塗布する際に、樹脂粘度の経時変化によって、供給量を安定的に制御することが困難になる場合があった。さらには、半導体チップと基板の間の狭い空隙に液状樹脂を注入するのに長時間を要し、生産性が低下するという問題もあった。
【0007】
そこで、本発明は、良好なフラックス活性を示すと同時に、接続信頼性に優れた半導体装置の効率的な製造を可能にする封止充てん用の樹脂組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、接続信頼性に優れた半導体装置及びこれを良好な生産性で得ることを可能にする方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、これらの課題を解決するために鋭意検討した結果、エポキシ樹脂及びその硬化剤を含有する樹脂組成物に、アルコール性水酸基を少なくとも2個有するアルコール化合物を添加することによって、絶縁信頼性を大きく損なうことなく優れたフラックス活性が得られることを見出し、係る知見に基づいて本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、2以上のアルコール性水酸基を有するアルコール化合物とを含有する封止充てん用樹脂組成物に関する。
【0010】
上記本発明に係る樹脂組成物は、上記特定の成分を組み合わせたことにより、封止充てん用の樹脂として用いられたときに、良好なフラックス活性を示すと同時に、優れた接続信頼性が得られる。
【0011】
アルコール化合物は、三級窒素原子を有することが好ましい。これにより更に優れたフラックス活性が得られる。
【0012】
硬化剤は、保存安定性と硬化物の耐熱性に優れるイミダゾール化合物を含むことが好ましい。
【0013】
本発明に係る樹脂組成物は、無機フィラーを更に含有することが好ましい。
【0014】
本発明に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を更に含有し、フィルム状であることが好ましい。熱可塑性樹脂を樹脂組成物に配合することによって容易に樹脂組成物をフィルム状とすることが可能である。フィルム状の樹脂組成物は取扱扱性や作業性に優れ、これを用いて良好な生産性で接続信頼性に優れた半導体装置を製造することが可能である。
【0015】
別の側面において、本発明は半導体装置の製造方法に関する。本発明に係る製造方法は、基板とこれにフリップチップ接続される半導体チップとの間を、上記本発明に係る樹脂組成物によって封止充てんする工程を含む。あるいは、本発明に係る製造方法は、基板とこれに接続される半導体パッケージとの間を、上記本発明に係る樹脂組成物によって封止充てんする工程を含む。
【0016】
上記本発明に係る製造方法によれば、接続信頼性に優れた半導体装置を良好な生産性で得ることが可能である。
【0017】
更に本発明は、上記本発明に係る製造方法によって得ることのできる半導体装置に関する。本発明に係る半導体装置は優れた接続信頼性を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、良好なフラックス活性を示すと同時に、接続信頼性に優れた封止充てん用の樹脂組成物が提供される。また、本発明によれば、接続信頼性に優れた半導体装置及びこれを良好な生産性で得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本実施形態に係る樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、エポキシ樹脂と、硬化剤と、2以上のアルコール性水酸基を有するアルコール化合物とを含有する。
【0021】
エポキシ樹脂としては、2官能以上の各種多官能エポキシ樹脂が用いられる。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド骨格含有エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型多官能エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有多官能エポキシ樹脂、トリフェニルメタン骨格含有多官能エポキシ樹脂、アミノフェノール型エポキシ樹脂及びジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂からなる群より選ばれるエポキシ樹脂が用いられる。これらのエポキシ樹脂は単独または2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、低粘度化、低吸水率、高耐熱性の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有多官能エポキシ樹脂及びトリフェニルメタン骨格含有多官能エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は25℃で液状でも固形でも構わないが、例えばはんだを加熱溶融させて接続する場合、固形のエポキシ樹脂の融点又は軟化点は、はんだの融点よりも低いことが望ましい。
【0022】
硬化剤としては、イミダゾール化合物、酸無水物、アミン、ヒドラジド化合物、ポリメルカプタン、ルイス酸−アミン錯体などを用いることができる。その中でも、保存安定性と硬化物の耐熱性に優れるイミダゾール化合物が望ましい。商業的に入手可能なイミダゾール化合物としては、例えば、2MZ、C11Z、2PZ、2E4MZ、2P4MZ、1B2MZ、1B2PZ、2MZ−CN、2E4MZ−CN、2PZ−CN、C11Z−CN、2PZ−CNS、C11Z−CNS、2MZ−A、C11Z−A、2E4MZ−A、2P4MHZ、2PHZ、2MA−OK及び2PZ−OK(四国化成工業株式会社製、製品名)がある。これらのイミダゾール類をエポキシ樹脂と付加させた化合物を用いてもよい。また、これら硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは可使時間が延長されるために好ましい。これらは単独または2種以上を混合して使用することもできる。
【0023】
本実施形態に係る樹脂組成物は、エポキシ樹脂及び硬化剤の他に、これらとは異なる化合物であって、2以上のアルコール性水酸基を有するアルコール化合物を含有する。アルコール化合物としては、例えば、1,3−ジオキサン−5,5−ジメタノール、1,5−ペンタンジオール、2,5−フランジメタノール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、3−メチルペンタン−1,3,5−トリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エリトリトール、ペンタエリトリトール、リビトール、ソルビトール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、1,3−ブチレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、N−ブチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソプロパノールアミン、ビス(2−ヒドロキシメチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン、N,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、及び1,1’,1’’,1’’’−(エチレンジニトリロ)テトラキス(2−プロパノール)からなる群より選ばれる1種以上を用いることができる。これら中でも、三級窒素原子を有するアルコール化合物、例えば、N−ブチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)イソプロパノールアミン、ビス(2−ヒドロキシメチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン及びN,N,N’,N’−テトラキス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1,1’,1’’,1’’’−(エチレンジニトリロ)テトラキス(2−プロパノール)は、その他の化合物に比較して、良好なフラックス活性を示すことから特に好ましい。三級窒素原子を有するアルコール化合物が良好なフラックス活性を示す詳細な理由は明らかではないが、アルコール性水酸基による酸化膜還元能と、3級窒素原子上の不対電子に由来する電子供与性による還元能が相乗的に作用することに起因していると推測される。これらの化合物は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
例えばはんだを加熱溶融させて半導体チップを接続する場合、フラックス活性を付与するために添加するアルコール化合物が、加熱によって分解及び揮発せずに樹脂中に残っている必要がある。そのため、アルコール化合物のTGA(Thermal Gravimetory Analysis)法によって測定される熱重量変化率が0%となる(残存重量が0となる)最低温度が、はんだの溶融温度より高いことが望ましい。また、フラックス活性を付与するためにアルコール化合物が常温で固体状である場合、その溶融温度がはんだの溶融温度より低いことが好ましい。これにより、はんだの溶融温度において化合物が液体状態で存在することから、はんだ表面の酸化膜を均一に除去することができる。
【0025】
本明細書において「フラックス活性」は、金属表面の酸化膜を還元除去して金属が容易に溶融できるようにし、更には、溶融した金属が濡れ広がるのを阻害せずに金属接合部が形成される状態を達成する性質を意味する。例えば、フラックス活性が十分であれば、はんだボールを銅板上などで加熱溶融させて接続する場合、はんだボールの径が初期よりも大きくなって銅表面に濡れ広がり、溶融後のはんだボールをシェア試験した際に、はんだと銅の界面で破断するのではなく、はんだボールのバルク破壊となる状態を達成できる。また、溶融後のはんだボールの初期径に対する変化率を、後述するはんだ濡れ広がり率として定義すると、良好なフラックス活性を実現するには、はんだ濡れ広がり率が20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることがさらに好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂は、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルゴムからなる群より選ばれる。これらの熱可塑性樹脂は単独または2種以上の混合体や共重合体として使用することもできる。これらの中でも耐熱性およびフィルム形成性に優れるフェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂及びポリカルボジイミド樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂及びポリイミド樹脂がより好ましい。特に好ましいのは、フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂である。フルオレン骨格を有するフェノキシ樹脂は、ガラス転移点温度が約90℃と他のフェノキシ樹脂(約60℃)より高いため、これを用いることによりフィルム状樹脂組成物のガラス点移転温度が向上し、耐熱性の向上が期待できる。
【0027】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は5000より大きいことが望ましく、より望ましくは10000以上であり、さらに望ましくは20000以上である。重量平均分子量が5000以下であるとフィルム形成能が低下する傾向がある。なお、この重量平均分子量はGPC(Gel Permeation Chromatography)を用いて、ポリスチレン換算で測定した値である。
【0028】
熱可塑性樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂及びエポキシ樹脂の合計量100重量部に対して、5〜50重量部であることが好ましく、5〜40重量部であることがより好ましく、10〜35重量部であることが特に好ましい。この配合量が5重量部未満ではフィルム形成が困難となる傾向があり、50重量部を超えると粘度が高くなって接続不良が発生する可能性がある。
【0029】
エポキシ樹脂の配合量は、熱可塑性樹脂及びエポキシ樹脂の合計量100重量部に対して、10〜90重量部であることが好ましく、15〜90重量部であることがより好ましく、20〜80重量部であることがさらに好ましい。この配合量が10重量部未満では硬化物の耐熱性が低下する傾向があり、90重量部を超えるとフィルム形成性が低下する傾向がある。
【0030】
硬化剤の配合量は、当業者には理解されるように、硬化剤の種類に応じて、エポキシ樹脂との当量比等を考慮して適宜調整される。例えば硬化剤がイミダゾール化合物である場合、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましく、1〜10重量部であることがより好ましい。この配合量が0.1重量部未満では、十分な硬化が困難となる傾向がある。また20重量部より多いと硬化物の耐熱性が低下する場合がある。
【0031】
フラックス活性を付与するためのアルコール化合物の種類および配合量は、フラックス活性の有無だけでなく、フィルム形成性、フィルム製造時の作業性(ワニスの粘度変化など)、フィルムの取扱性(タック性、打ち抜きやスリットなどの加工性など)などを考慮して設定される。具体的には、アルコール化合物の配合量は、熱可塑性樹脂及びエポキシ樹脂の合計量100重量部に対して、0.5〜20重量部が好ましく、0.5〜15重量部がより好ましく、1〜10重量部がさらに好ましい。この配合量が0.5重量部未満では、フラックス活性向上の効果が小さくなる傾向があり、20重量部を超えると、フィルム形成性が低下したり、硬化物の耐熱性が低下したりする可能性がある。
【0032】
本実施形態に係る樹脂組成物は、無機フィラーを含有してもよい。無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、ガラス、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化チタン(チタニア)、酸化マグネシウム(マグネシア)、カーボンブラック、マイカ及び硫酸バリウムが挙げられる。これらは単独または2種以上を混合して使用してもよい。また、無機フィラーは2種類以上の金属酸化物を含む複合酸化物(2種類以上の金属酸化物が単に混合されてなるものではなく、金属酸化物同士が化学的に結合して分離不能な状態となっているもの)であってもよい。例えば、二酸化ケイ素と酸化チタン、二酸化ケイ素と酸化アルミニウム、酸化ホウ素と酸化アルミニウム、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムと酸化マグネシウムなどの組み合わせによって構成される複合酸化物が挙げられる。無機フィラーの平均粒径は、フリップチップ接続時に無機フィラーが接続部に捕捉されて電気的な接続を阻害することを防止するため、10μm以下であることが望ましい。さらに、粘度や硬化物の物性を調整するために、粒径の異なる無機フィラーを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
無機フィラーの配合量は、熱可塑性樹脂及びエポキシ樹脂の合計量100重量部に対して、200重量部以下であることが好ましく、150重量部以下であることがより好ましい。この配合量が200重量部より多いと、樹脂組成物の粘度が高くなり、接続不良が起きる可能性があり、また、フィルム状樹脂組成物の可とう性が低下して脆くなる傾向がある。
【0034】
本実施形態に係る樹脂組成物は、硬化促進剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸化防止剤、レベリング剤、及びイオントラップ剤などの添加剤をさらに含有してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。配合量については、各添加剤の効果が発現するように調整すればよい。
【0035】
樹脂組成物の150℃における粘度は、望ましくは50Pa・s以下、より望ましくは40Pa・s以下、さらに望ましくは30Pa・s以下である。この粘度が50Pa・sより高いと、溶融した金属が濡れ広がることが阻害され、接続不良が発生する可能性がある。樹脂組成物の粘度は、例えば、ずり粘弾性測定装置(例えば、ティーエーインスツルメント株式会社製 ARES)を用いて、直径8〜25mmの平行円板間にフィルム状樹脂組成物をみ、所定の温度において、周波数1〜10Hzの条件下で測定される。測定は全自動で行われる。また、円形に打ち抜いたフィルム状樹脂組成物をガラス板間に挟み、所定の温度において、所定の圧力で所定の時間加圧した際の加圧前後の樹脂厚みの変化から粘度を計算する方法を採用してもよい。この場合、次式(1)(平行板間の1軸圧縮流動に関するヒーリーの式)によって、粘度を算出できる。
【0036】
【数1】


η:粘度(Pa・s)
F:荷重(N)
t:加圧時間(s)
Z:加圧後の樹脂厚み(m)
:加圧前の樹脂厚み(m)
V:樹脂の体積(m
【0037】
樹脂組成物の260℃におけるゲル化時間は、望ましくは1〜60秒、より望ましくは3〜40秒、さらに望ましくは5〜30秒である。ゲル化時間が1秒より短いと、はんだなどが溶融する前に硬化してしまい、接続不良が発生する可能性があり、60秒より長いと生産性が低下したり、硬化が不充分になって信頼性が低下したりする傾向がある。ゲル化時間は、フィルム状樹脂組成物を260℃に設定した熱板上に置き、スパチュラなどで攪拌し、攪拌不能になるまでの時間を指す。
【0038】
本実施形態に係る樹脂組成物は、通常、フィルム状に成形された状態で封止充てん用樹脂として半導体装置の製造に用いられる。フィルム状樹脂組成物は、例えば、熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、アルコール化合物及び必要に応じて無機フィラー等の他の成分をトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトンなどの有機溶媒中で混合することによってワニスを作製する工程と、ワニスを、ナイフコーターやロールコーターを用いて、離型処理が施されたポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムなどのフィルム基材上に塗布する工程と、フィルム基材上に塗布されたワニスから有機溶媒を除去する工程とを含む方法によって、製造することができる。
【0039】
図1は、半導体装置の一実施形態を示す端面図である。図1に示す半導体装置101は、回路基板3と、回路基板3に搭載された半導体チップ5と、回路基板3と半導体チップ5の間隙を充てんする封止充てん層10aとを備える半導体パッケージである。半導体チップ5の回路基板3側の主面上にバンプ50が設けられている。回路基板3は、インターポーザー31と、インターポーザー31の半導体チップ5側の主面上に設けられた配線33と、インターポーザー31の半導体チップ5とは反対側の主面上に設けられた電極パッド35と、電極パッド35上に設けられたはんだボール37とを有する。回路基板3の配線33と半導体チップ5のバンプ50とが接合されている。
【0040】
図2も、半導体装置の一実施形態を示す端面図である。図2に示す半導体装置102は、マザーボード2と、マザーボード2上に搭載された半導体パッケージ101と、マザーボード2と半導体パッケージ101との間の間隙を充てんする封止充てん層10bとを備える。マザーボード2は、絶縁基板21と、絶縁基板21の半導体パッケージ101側の主面上に設けられた配線22と、絶縁基板21の内部に設けられた内部配線27と、絶縁基板21の表面に設けられた導電性のビア23とを有する。ビア23の一部は、絶縁基板21内に形成された貫通孔25の壁面上に形成されている。マザーボード2の配線22と半導体パッケージ101のはんだボール1とが接合されている。
【0041】
封止充てん層10a及び10bは、上述の実施形態に係るフィルム状樹脂組成物を硬化することによって形成されている。言い換えると、封止充てん層10a及び10bは、フィルム状樹脂組成物の硬化物である。本実施形態に係るフィルム状樹脂組成物は、良好なフラックス活性を示すことから、はんだ等によって形成された導電性突起を介して半導体チップを基板にフリップチップ接続するときに特に好適に用いられる。
【0042】
半導体チップ5としては、特に限定はなく、シリコン、ゲルマニウムなどの元素半導体、ガリウムヒ素、インジウムリンなどの化合物半導体等、各種半導体を用いることができる。
【0043】
回路基板3は、例えば、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミックなどの絶縁基板表面に形成された銅などの金属層の不要な個所をエッチングにより除去して配線パターンを形成する方法、絶縁基板表面に銅めっきなどによって配線パターンを形成する方法、又は絶縁基板表面に導電性物質を印刷して配線パターンを形成する方法によって得られる。配線パターンの表面には、低融点はんだ、高融点はんだ、スズ、インジウム、金、ニッケル、銀、銅、パラジウムなどからなる金属層が形成されていてもよく、この金属層は単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、複数の金属層が積層された構造をしていてもよい。回路基板3に代えて、半導体チップ3とは別の半導体チップを用いてもよい。
【0044】
導電性突起であるバンプ50の材質は、例えば、低融点はんだ、高融点はんだ、スズ、インジウム、金、銀及び銅から選ばれる。バンプ50は単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、バンプ50はこれらの金属が積層された構造をなすように形成されていてもよい。バンプは半導体チップに形成されていてもよいし、基板に形成されていてもよいし、半導体チップと基板の両方に形成されていてもよい。
【0045】
半導体パッケージとしては、例えばCSP(チップサイズパッケージ)やBGA(ボールグリッドアレイ)が挙げられる。また、半導体チップの電極部を半導体チップ表面上で再配線することによって、インターポーザーを用いないで基板に搭載可能とした半導体パッケージである、ウエハーレベルパッケージと呼ばれるものもある。
【0046】
図3は、半導体装置の製造方法の一実施形態を示す工程図である。図3においては、半導体チップ5とこれに接続される回路基板3との間の間隙を、フィルム状樹脂組成物1によって封止充てんする工程が端面図によって示されている。
【0047】
絶縁基板(インターポーザー)31及び配線33を有する回路基板3を準備し、回路基板3の配線33側の面にフィルム状樹脂組成物1を貼り付ける。貼り付けは加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネートなどによって行うことができる。フィルム状樹脂組成物1の供給量は貼付面積とフィルム厚みによって設定され、半導体チップの大きさ、バンプ高さなどによって規定される。粘度等の経時変化が起きても、供給量を容易に制御することができる。また、フィルム状樹脂組成物は半導体チップに貼り付けられてもよく、半導体ウエハにフィルム状樹脂組成物を貼り付けた後、ダイシングして、半導体チップに個片化することによって、フィルム状樹脂組成物を貼り付けた半導体チップを作製することもできる。
【0048】
続いて、半導体チップ5と回路基板3とを、ステージ71及び接続ヘッド72を有するフリップチップボンダーなどの接続装置を用いて位置合わせし、半導体チップ5と回路基板3をはんだバンプの融点以上の温度で加熱しながら押し付けて、半導体チップ5と回路基板3を接続するとともに、溶融したフィルム状樹脂組成物1によって半導体チップ5と回路基板3の間の空隙を封止充てんする。加熱及び加圧により封止充てん層10が形成されて、半導体装置103が得られる。この際、フィルム状樹脂組成物1のフラックス活性によって、バンプ(はんだバンプ)50表面の酸化膜が還元除去され、バンプ50が溶融し、金属接合による接続部が形成される。また、半導体チップと基板を位置合わせして、はんだバンプが溶融しない温度で加熱しながら押し付けることによってフィルム状樹脂組成物を溶融させて、半導体チップのバンプと基板電極の間の樹脂を除去するとともに、半導体チップと基板間の空隙を封止充てんして、半導体チップと基板を仮固定した後、リフロー炉で加熱処理することによってはんだバンプを溶融させて半導体チップと基板を接続することによって半導体装置を製造してもよい。
【0049】
さらに、接続信頼性を高めるために、半導体装置を加熱オーブンなどで加熱処理し、フィルム状樹脂組成物の硬化をさらに進行させてもよい。
【0050】
基板を個片化する前に、複数の基板がつながった状態において、基板全体にフィルム状樹脂組成物を貼り付け、半導体チップを接続した後、個片化してもよい。また、半導体チップに個片化する前の半導体ウエハにフィルム状接着剤を貼り付け、ダイシングによって半導体チップに個片化してもよい。
【0051】
フィルム状接着剤を基板または半導体チップに貼り付けた後、個片化する方法においては、個片化する位置や基板と半導体チップの位置合わせを行うための位置合わせマークをフィルム状樹脂組成物を通して認識するため、フィルム状樹脂組成物の透過率は、波長555nmの光に対して、15%以上あることが望ましい。フィルム状樹脂組成物が無機フィラーを含有している場合、無機フィラーと樹脂の屈折率をほぼ同一にすることによって、前述の透過率を達成できる。例えば、樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合、無機フィラーの屈折率はエポキシ樹脂の屈折率約1.6に対して、1.53〜1.65であることが望ましい。このような屈折率を示す無機フィラーとしては、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、二酸化ケイ素と酸化チタンからなる複合酸化物、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムからなる複合酸化物、酸化ホウ素と酸化アルミニウムからなる複合酸化物、二酸化ケイ素と酸化アルミニウムと酸化マグネシウムからなる複合酸化物などが挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下、参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲はこれらによって限定されるものではない。
【0053】
(参考例)
(a)熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂FX293(東都化成株式会社製、製品名)25重量部、(b)エポキシ樹脂として、固形多官能エポキシ樹脂EP1032H60(ジャパンエポキシレジン製、製品名)30重量部及び液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂EP828(ジャパンエポキシレジン製、製品名)45重量部、(d)アルコール性水酸基を有する化合物として、表1に示す化合物を5重量部、球状シリカフィラーとしてSE6050(株式会社アドマテックス製、製品名、平均粒径2μm)100重量部を、トルエン−酢酸エチル溶媒中に固形分濃度が60〜70重量%になるように溶解して、ワニスを作製した。このワニスをセパレータフィルム(PETフィルム)上にナイフコーターを用いて塗布し、その後70℃のオーブンで10分間乾燥させることによって、厚さ40〜45μmの参考例1〜12のフィルム状樹脂組成物を作製した。得られたフィルム状樹脂組成物をホットロールラミネータにて2枚重ね合わせることにより合計の厚さが80〜90μmとなるように調整し、これを下記評価において使用した。
【0054】
(フラックス活性評価方法)
25mm角に切断した両面銅はく付きガラスエポキシ基板(MCL−E−679F、日立化成工業株式会社製、製品名、厚み0.3mm、脱脂及び酸洗処理済み)の銅表面に、10mm角に切り出したフィルム状樹脂組成物を貼り付け、セパレータフィルムをはく離した。次いで、フィルム状樹脂組成物の上に、はんだボール(M705(Sn−3Ag−0.5Cu)、千住金属工業株式会社製、製品名、ボール径0.4mm、融点217〜220℃)を5個配置し、さらに、カバーガラス(サイズ18mm角、厚み0.17mm)を置いて評価用サンプルを得た。各参考例のフィルム状樹脂組成物について評価用サンプルを2個ずつ準備した。この評価用サンプルを、160℃に加熱した熱板上に30秒置き、引き続いて260℃に加熱した熱板上に30秒置いてから室温(25℃)に戻した。その後、評価用サンプルをメチルエチルケトン中に浸漬して、フィルム状樹脂組成物を溶解により除去した。フィルム状樹脂組成物の除去後、ガラスエポキシ基板の表面に残ったはんだボールの数および直径を計測した。計測結果から、「はんだ濡れ広がり率」を次式(2)に従って算出した。
はんだ濡れ広がり率(%)=(基板表面に残ったはんだボールの直径−初期はんだボール直径)/初期はんだボール直径×100 ・・・式(2)
【0055】
さらに、ガラスエポキシ基板の表面に残ったはんだボールについて、シェア試験を実施した。シェア試験の際の破壊モードを、はんだボールと銅はくの界面で破断した場合をAモード、はんだボールのバルク破壊となった場合をBモードに分類し、Bモードを合格と判断した。なお、シェア試験はデイジ社製ボンドテスターシリーズ4000(製品名)を用いて、室温(25℃)において、シェア高さ50μm、シェア速度100μm/sの条件で行った。
【0056】
(揮発終了温度の測定)
化合物の揮発終了温度(熱重量変化率が0%となる最低温度)の測定は、セイコーインスツルメント社製TG/DTA6300(製品名)を用いて、昇温速度10℃/min、エア流量200ml/min、測定温度範囲30〜300℃、サンプル重量5〜10mgで行った。
【0057】
フラックス活性及び揮発終了温度の評価結果を表1に示す。表中、備考欄にアルコール化合物等の製造メーカを記した。
【0058】
【表1】

【0059】
アルコール化合物を添加しなかった参考例1では、フェノキシ樹脂やエポキシ樹脂中に存在するアルコール性水酸基に起因すると思われるフラックス活性が認められるが、その効果は不充分である。アルコール性水酸基を1個有する1−ドデカノールを用いた参考例2も、充分なフラックス活性は示さなかった。参考例3〜11のように、アルコール性水酸基を2以上有するアルコール化合物を添加することによって、参考例1、2と比較して、はんだボール残存率及びはんだ濡れ広がり率が向上した。また、シェア試験の破壊モードがはんだボールのバルク破壊(Bモード)となった。このように、参考例3〜11は、有機酸である2,5−ジヒドロキシ安息香酸と同等のフラックス活性を示すことが分かる。
【0060】
(実施例1〜4、及び比較例1〜3)
(a)熱可塑性樹脂として、フェノキシ樹脂FX293(東都化成株式会社製、製品名)25重量部、(b)エポキシ樹脂として、固形多官能エポキシ樹脂EP1032H60(ジャパンエポキシレジン製、製品名)30重量部及び液状ビスフェノールA型エポキシ樹脂EP828(ジャパンエポキシレジン製、製品名)45重量部、(c)硬化剤として、2,4−ジヒドロキシメチル−5−フェニルイミダゾール2PHZ(四国化成株式会社製、製品名)3重量部、(d)表2に示すアルコール化合物又は有機酸を5重量部、球状シリカフィラーとしてSE6050(株式会社アドマテックス製、製品名)100重量部を、トルエン−酢酸エチル溶媒中に固形分濃度が60〜70重量%になるように溶解して、ワニスを作製した。このワニスをセパレータフィルム(PETフィルム)上にナイフコーターを用いて塗布し、その後70℃のオーブンで10分間乾燥させることによって、厚さ40〜45μmの実施例1〜4及び比較例1〜3のフィルム状樹脂組成物を作製した。得られたフィルム状樹脂組成物をホットロールラミネータにて2枚重ね合わせることにより合計の厚さが80〜90μmとなるように調整し、これを下記評価において使用した。
【0061】
(比較例4)
フィラーの配合量を220重量部にしたこと以外は比較例3と同様にして、フィルム状樹脂組成物を作製した。
【0062】
フィルム状樹脂組成物の硬化物の物性を、以下のようにして測定した。
(平均線膨張係数の測定)
フィルム状樹脂組成物を200℃、1時間の加熱条件で硬化し、硬化後のフィルムから3.0mm×25mmの大きさを有する試験片を切り出した。セイコーインスツルメント社製TMA/SS6000(製品名)を用いて、チャック間距離15mm、測定温度範囲20〜300℃、昇温速度5℃/min、試験片断面積に対して0.5MPaとなる引っ張り荷重の条件で測定を行なった。測定結果から、40〜100℃の温度範囲における平均線膨張係数を算出した。
【0063】
(弾性率及びガラス転移温度(Tg)の測定)
フィルム状樹脂組成物を200℃、1時間の加熱条件で硬化し、硬化後のフィルムから5.0mm×45mmの大きさを有する試験片を切り出した。セイコーインスツルメント社製DMS6100(製品名)を用いて、チャック間距離20mm、周波数1Hz、測定温度範囲20〜300℃、昇温速度5.0℃/minの条件で、貯蔵弾性率、損失弾性率、及びtanδの測定を行い、40℃での貯蔵弾性率、およびTg(tanδのピーク温度)を読み取った。
【0064】
(粘度測定)
15mm角(厚さ0.7mm)のガラス板の上に直径4mmの円形に打ち抜いたフィルム状樹脂組成物を貼り付け、セパレーターフィルムをはく離し、そこに、フィルム状樹脂組成物を覆うカバーガラス(サイズ18mm角、厚さ0.17mm)を載せて、評価用サンプルを準備した。これを、フリップチップボンダーFCB3(パナソニックファクトリーソリューションズ製、製品名)に配置し、ヘッド温度185℃、ステージ温度50℃、荷重12.6N、加圧時間1s(到達150℃)の条件で加熱及び加圧した。樹脂体積を一定と仮定すると式(3)の関係が成立することから、加圧後の半径を顕微鏡で測定し、前述した式(1)に従い、150℃での粘度を算出した。
Z/Z=(r/r) 式(3)
:加圧前の樹脂厚み
Z:加圧後の樹脂厚み
:加圧前の樹脂の半径(直径4mmで打ち抜いているので、2mm)
r:加圧後の樹脂の半径
【0065】
(ゲル化時間測定)
260℃の熱板上にセパレーターをはく離したフィルム状樹脂組成物を置き、スパチュラで攪拌した。フィルム状樹脂組成物を置いてからスパチュラで攪拌不能になるまでの時間をゲル化時間とした。
【0066】
(接続サンプル作製)
銅配線表面にSn−3.0Ag−0.5Cuの受けはんだ層が形成されたプリント基板JKIT TYPE III(日立超LSIシステムズ製、製品名)のチップ搭載領域に、10mm角に切り出したフィルム状樹脂組成物を80℃/50N/5sの条件で貼り付け、セパレータフィルムをはく離した。次いで、高融点はんだバンプ(95Pb−5Sn)が形成されたチップPhase2E175(日立超LSIシステムズ製、製品名、サイズ10mm角、厚み550μm、バンプ数832、バンプピッチ175μm)とプリント基板とを、荷重5Nで加圧しながら、180℃/5〜30s+230〜280℃/5sの温度プロファイルで加熱して接続した。位置合わせはフリップチップボンダーFCB3(パナソニックファクトリーソリューションズ製、製品名)を用いて行った。その後、さらに165℃のオーブンで2時間加熱処理を行い、接続サンプルを作製した。
【0067】
(はんだ接合性)
接続サンプルの導通検査を行い、導通が確認されたものについて、接続部の断面を観察した。バンプと受けはんだ層が均一に濡れて接合されているものを合格と判定した(合格:A、不合格:B)。
【0068】
(耐湿信頼性)
接続サンプルを温度130℃/相対湿度85%に設定した試験槽内に100時間放置した後、導通検査を行い、放置前の接続抵抗と比較して、抵抗変化率が±10%以内であるものを合格とした(合格:A)。
【0069】
(絶縁信頼性)
配線幅20μm、配線間距離40μmで形成された銅配線の櫛型パターンを有するポリイミド基板に、フィルム状樹脂組成物を80℃/100N/5sの条件で櫛型パターンを覆うように貼り付けて、セパレータフィルムをはがした。次いで165℃のオーブンで2時間加熱処理を行い、評価用サンプルを作製した。このサンプルを温度130℃/相対湿度85%に設定した試験槽内に5Vの直流電圧を印加しながら放置し、IMV社製マイグレーションテスターMIG−8600(製品名)にて試験槽内における絶縁抵抗を連続測定した。100時間の測定中に10Ω以上の絶縁抵抗を保持しているものを合格とした(合格:A)。
【0070】
評価結果を表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
表2に示す結果から分かるように、実施例は良好なはんだ接合性及び信頼性を示した。また、フラックス活性を付与するためのアルコール化合物を添加しても、添加していない比較例1とほぼ同等の物性が維持された。比較例1及び2では、断面観察においてバンプと受けはんだが均一に濡れておらず、フラックス活性が不充分であった。比較例3では、はんだ接合性は良好であったものの、絶縁信頼性評価において不良が発生した。比較例4では、バンプと受けはんだが均一に濡れておらず、フィルム状樹脂組成物の粘度が高いために、溶融したはんだが濡れ広がることが阻害されたと考えられる。
【0073】
以上に説明した実験結果等から明らかなように、本発明によって、良好なフラックス活性を示すと同時に、接続信頼性に優れたフィルム状樹脂組成物を得ることができる。また、本発明のフィルム状樹脂組成物を用いることによって、金属接合が容易となり、接続信頼性に優れた半導体装置を得ることが可能となる。さらに、良好な生産性を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】半導体装置(半導体パッケージ)の一実施形態を示す端面図である。
【図2】半導体装置の一実施形態を示す端面図である。
【図3】半導体装置の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0075】
1…フィルム状樹脂組成物、2…マザーボード、3…回路基板、5…半導体チップ、10,10a,10b…封止充てん層、21…絶縁基板、22…配線、23…ビア、27…内部配線、31…基板(インターポーザー)、33…配線、35…電極パッド、37…はんだボール、50…バンプ、71…ステージ、72…接続ヘッド、101,102,103…半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と、
硬化剤と、
2以上のアルコール性水酸基を有するアルコール化合物と、
を含有する、封止充てん用樹脂組成物。
【請求項2】
前記アルコール化合物が三級窒素原子を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤がイミダゾール化合物を含む、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
無機フィラーを更に含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
熱可塑性樹脂を更に含有し、フィルム状である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
基板とこれにフリップチップ接続される半導体チップとの間を、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物によって封止充てんする工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項7】
基板とこれに接続される半導体パッケージとの間を、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂組成物によって封止充てんする工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の製造方法によって得ることのできる半導体装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−167385(P2009−167385A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260918(P2008−260918)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】