説明

導電性パターンの形成方法、導電性パターン形成用組成物および導電性パターンを有する電子部品

【課題】基材表面に、導電性に優れ、断面のアスペクト比が高い導電性パターンを形成する方法およびその方法に用いる組成物を提供する。
【解決手段】導電性パターン形成用液状組成物を露光面を有する容器に供給する工程と、導電性パターンが形成される表面を有する基材を前記組成物に浸漬する工程と、露光面と基材の表面との間に所定厚みの組成物層が介在するように基材を配置し、組成物層にマスクを介して露光し、所定パターンの硬化物層を形成する工程と、露光面と形成された硬化物層の表面との間に所定厚みの新たな組成物層が介在するように基材を移動させ、その組成物層にマスクを介して露光し、所定パターンの硬化物層を更に形成する操作を1回以上行い、硬化物層の積層膜を形成する工程と、基材の表面から未硬化の組成物を除去する工程と、積層膜を熱処理する工程とを有する導電性パターンの形成方法およびその方法に用いる導電性パターン形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に導電性パターンの形成方法に関し、詳しくは感光性成分を含む導電性パターン形成用組成物を用いる導電性パターンの形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話などの電子機器は、小型化が急速に進んでいる。それにともなって、電子機器内で使用される半導体素子(例えばICやLSI)などの電子部品も小型化が進んでいる。そのため、電子部品や基板を基材として、それらの表面に形成される配線パターン(導電性パターン)に対しても、微細化や低抵抗化、更には高密度実装による小型化のための積層化が要求されている。
【0003】
微細な導電性パターンの形成方法としては、従来、薄膜法、メッキ法、印刷法などが用いられている。これらのなかでも、導電粒子と樹脂とを含む組成物を所定パターンでスクリーン印刷し、その後、組成物の膜を焼成して導電性パターンを形成する印刷法が広く用いられている。この方法によれば、導電性パターンの形成が容易であり、抵抗体等の受動素子を同時に形成することが可能である。しかし、印刷法では、導電性パターンを50μm以下の解像度で形成することが困難であり、得られる導電性パターンの断面形状の制御にも限界がある。
【0004】
導電性パターンの解像度および断面形状を改善するものとして、感光性の組成物を用いる方法が提案されている。この方法は、光硬化性を有する感光性成分を含む組成物を基板全面に塗布し、乾燥後、マスク露光および現像の工程を経ることで、高解像度の導電性パターンを形成するものである。感光性の組成物には、金属粉末と光硬化性樹脂との混合物が多く用いられている。しかし、感光性の組成物の膜は、非感光性のそれと比較して、焼成後に得られる導電性パターンの抵抗値が高いという問題がある。
【0005】
高導電性の導電性パターンを得ようとした場合、組成物中に多量の導電粒子を含ませる必要がある。その場合、組成物の膜に露光しても、膜の内部まで光が十分に到達せず、感光性成分の硬化が不十分となる。一方、膜を内部まで十分に硬化させるためには、組成物中に含ませる導電粒子の量を制限する必要があり、導電性パターンの抵抗値の制御には限界が生じる。
【0006】
なお、感光性の組成物を用いる方法として、従来、以下のような技術が提案されている。
特許文献1は、膜の焼成処理を行うことなく、感光性成分(樹脂材料)の光硬化性を改善することにより、導電性パターンの抵抗値を低くすることを提案している。この提案では、焼成を行わないため、基材に熱ダメージを与えることがないが、低抵抗化に限界があるため、利用範囲は限られている。
【0007】
特許文献2は、感光性成分中における炭素−炭素2重結合の量を、2mmol/g以上とすることにより、感光性成分の光硬化性を高めることを提案している。この提案によれば、低抵抗の導電性パターンを形成することができるが、組成物の膜を580℃程度の高温で加熱処理する必要がある。よって、耐熱性の低い材料からなる基材に導電性パターンを形成することは困難である。
【0008】
特許文献3は、金属コロイド粒子、高分子顔料分散剤および感光性成分を含む組成物を提案している。この提案では、塗布−乾燥−露光−現像からなるフォトリソグラフィにより、所定パターンで組成物の膜を形成した後、100〜400℃の低温で膜の加熱処理が行われる。この方法では、例えば幅50μmのラインアンドスペース(L/S=50μm)の導電性パターンを得ることができるが、達成できる膜厚は1μm以下である。すなわち、断面のアスペクト比の小さい導電性パターンしか得ることができないため、導電性パターンの幅を狭くすると、抵抗値を低く維持することができない。よって、導電性パターンの微細化に十分に対応できるものではない。
【0009】
一方、フォトリソグラフィ法により、基材上に膜厚の厚い導電性パターンを形成するためには、塗布−乾燥−露光−現像を複数回繰り返す必要がある。つまり、先に形成されたパターンの上に、新たなパターンを正確に位置合わせして積層することが必要となる。しかし、先に形成したパターンの表面には凹凸が生じるため、感光性の組成物を平坦かつ均一に塗布することは困難である。また、複雑な工程を複数回行うことが必要となるため、コストも高くなる。
【特許文献1】特開平4−283211号公報
【特許文献2】特開2001−194779号公報
【特許文献3】特開2003−217350号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記を鑑み、感光性成分を含む導電性パターン形成用組成物を用いて、高い導電性を有する高アスペクト比の断面形状を有する導電性パターンを形成するための有効な手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、(1)導電粒子と感光性成分とを含み、感光性成分が光硬化性モノマーと光重合開始剤とを含む導電性パターン形成用液状組成物を、露光面を有する容器に供給する工程と、(2)前記組成物に、導電性パターンが形成される表面を有する基材を浸漬する工程と、(3)前記露光面と前記基材の表面との間に、所定厚みの組成物層が介在するように、基材を配置し、前記組成物層にマスクを介して露光し、所定パターンの硬化物層を形成する工程と、(4)前記露光面と前記形成された硬化物層の表面との間に、所定厚みの新たな組成物層が介在するように、基材を移動させ、前記新たな組成物層にマスクを介して露光し、所定パターンの硬化物層を更に形成する操作を1回以上行い、硬化物層の積層膜を形成する工程と、(5)前記基材の表面から、未硬化の前記組成物を除去する工程と、(6)前記積層膜を熱処理する工程とを有する導電性パターンの形成方法に関する。
【0012】
上記の導電性パターンの形成方法において、前記露光面が、前記容器の上面である場合、工程(3)では、基材を移動させることにより、前記露光面と前記形成された硬化物層の表面との間に、所定厚みの新たな組成物層を介在させることが有効である。
【0013】
本発明は、また、上記の導電性パターンの形成方法に好適な導電性パターン形成用組成物に関する。すなわち、本発明は、導電粒子と感光性成分とを含み、感光性成分が、光硬化性モノマーと光重合開始剤とを含み、導電粒子が、前記組成物の50〜90重量%を占め、残りが感光性成分である導電性パターン形成用組成物に関する。
【0014】
ここで、光硬化性モノマーは、複数の光重合性基を有する多官能性モノマーと、光重合性基を1つだけ有する単官能性モノマーとを含むことが好ましい。また、導電粒子の平均粒子径は、10μm未満であることが好ましい。また、導電性パターン形成用組成物の粘度は、10Pa・s以下であることが好ましい。
【0015】
本発明は、さらに、積層構造を有する導電性パターンと、導電性パターンが担持された表面とを備え、導電性パターンが、2層以上の上記の導電性パターン形成用組成物の焼成膜からなる電子部品に関する。本発明は、また、前記2層以上の焼成膜の寸法が、前記表面から遠くなるに従い、次第に小さくなっている電子部品に関する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、薄い厚さの組成物層に対する露光を繰り返すことができるため、比較的多量の導電粒子を含む光透過性の低い組成物を用いることができる。また、導電粒子の含有量の高い組成物を用いることができるため、比較的低温で硬化物の積層膜を焼成することにより、高い導電性を有する高アスペクト比の断面形状を有する導電性パターンを形成することができる。また、硬化物の積層膜を焼成するため、内部歪みの小さな導電性パターンを得ることができる。さらに、高温での焼成工程を要さないため、耐熱性の低い基材の表面にも導電性パターンを形成することができる。
【0017】
本発明では、組成物を収容した容器に、基材を浸漬した状態で、硬化物の積層膜を形成することができるため、塗布−乾燥−露光−現像という複雑な操作を繰り返す必要がない。よって、露光毎に、マスクと下地の硬化物層との位置合わせをする必要がなく、効率的に導電性パターンを形成することができる。
【0018】
なお、本発明によれば、コンピュータ制御可能な液晶パネルなどをマスクとして用い、露光毎に光透過部の形状を変更することにより、複雑な立体形状を有する導電性パターンを電子部品などの表面に形成することができる。例えば、本発明によれば、高密度実装のためのピラミッド型の接合用バンプを、ICなどの電極表面に形成することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を、図面を参照しながら説明する。
実施の形態1
図1は、本発明の一実施形態にかかる、表面に導電性パターンが形成された基材(配線基板)100の縦断面図を示す。図2に、図1の波線で囲まれた部分の拡大図を示す。
図1の配線基板100は、基板110とその上に形成された配線パターン(導電性パターン)120を具備する。
【0020】
基板110としては、例えば、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させたガラスエポキシ基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリイミド樹脂などのフレキシブル基板、セラミック、ガラス、シリコンなどからなる無機基板を用いることができる。
【0021】
導電性パターン120は、図2に示されるように、積層構造を有している。導電性パターン120は、複数の焼成膜130を含む。
【0022】
以下、基板110上への導電性パターン120の形成方法の一例について、図3および図4を参照しながら、説明する。
まず、導電粒子および感光性成分を含み、感光性成分が光硬化性モノマーと光重合開始剤とを含む導電性パターン形成用液状組成物を調製する。
【0023】
次に、図3(a)に示されるように、光源206、基板上に形成される導電性パターンの形状に対応する光透過部211を有するマスク200、および移動可能なステージ201を用意する。
マスク200を所定の位置に配置する。次いで、基板110の所定の位置に導電性パターンが形成されるように、基板110をステージ201の上に装着する。
【0024】
次いで、マスク200と基板110との間に、透明板202を、透明板202と基板110とが平行になるように配置する。ここで、ステージ201は、透明板202に対して、Z軸方向(紙面に平行な上下方向)に移動可能である。基板110と透明板202とが所定の間隔になるように、ステージ201を移動させて、基板110の位置を定める。
【0025】
次に、上面に透明板202を装着可能であり、その上面が露光面となる容器204を用意する。容器204に、導電性パターン形成用組成物203をその露光面に達するまで供給する(工程1)。
次いで、組成物203を満たした容器204を、図3(b)に示されるように、容器204の上面に透明板202が装着されるように配置し、基板110を組成物203中に浸漬させる(工程2)。
【0026】
露光面となる組成物203の液面には、透明板202の下面が接している。基板110は、露光面と基板の表面とが平行になるように、組成物203中の所定深さに配置される。基板110の表面と透明板202との間隙205に、組成物203が流れ込む。こうして、露光面と基板110の表面との間に、所定厚さの組成物層を介在させる。
なお、露光面と基板110の表面との間に介在する組成物層の厚みは、本実施形態においては、組成物203の液面が透明板202の下面に接しているため、透明板202の下面と基板110の表面との距離を調節することにより、制御することができる。
【0027】
次に、光源206から、マスク200および透明板202を介して、露光面と基板110の表面との間に介在する組成物層に光を照射する。これにより、マスクが有する光透過部の形状に、組成物層が光硬化される。
【0028】
透明板202を構成する材質は、光源206から照射される所定の波長の光が透過するように選択されている。透明板202の材質としては、用いられる光の波長にもよるが、ガラスを用いることができる。また、光の透過性の観点から、石英ガラスが最適である。また、透明板202の導電性パターン形成用組成物と接する方の表面には、光硬化物が離型しやすいように、離型処理が施してあることが好ましい。
【0029】
こうして、図3(c)に示されるように、基板110上に、所定厚さの第1硬化物層207が形成される(工程3)。
【0030】
ここで、露光面と基板110の表面との間に介在する組成物層の厚さは、組成物203の硬化深さ以下であることが好ましい。硬化深さとは、組成物203に所定の露光量の露光を行ったときに光硬化することのできる深さ方向の寸法をいう。なお、組成物203の厚さを、硬化深さを超える寸法とした場合、露光により光硬化は起こるものの、基板に近いところでは、その組成物が硬化しない。このため、硬化物が基板に密着しないので、導電性パターンが崩れる虞がある。
【0031】
次に、図3(d)に示されるように、ステージ201をZ軸方向下側に移動させて、形成された第1硬化物層207を透明板202の下面から離型させる。そうすると、透明板と第1硬化物層207との間に再度、所定厚さの間隙208が形成される。この間隙には、周囲から組成物203が流れ込む。こうして、露光面と第1硬化物層207との間に、所定厚さの組成物層を新たな介在させる。なお、組成物203に圧力をかけて、露光面と第1硬化物層との間隙への組成物203の充填を促進することも可能である。
【0032】
次いで、上記と同様にして、露光面と第1硬化物層との間に介在する組成物層にマスクを介して露光し、その組成物層を光硬化する。こうして、図3(e)に示されるように、第1硬化物層207の上に、第2硬化物層209が形成される。
この操作を、1回以上行い、図3(f)に示されるように、硬化物層が積層された積層膜210を基板110上に形成する(工程4)。
【0033】
次に、基板を取り出し、その表面から、未硬化の導電性パターン形成用組成物を取り除く(工程5)。未硬化の導電性パターン形成用組成物は、例えば、エアーブローや溶剤リンスなどの当該分野で一般的な方法を用いて取り除くことができる。
【0034】
次に、基板表面に形成された積層膜210を熱処理し、導電粒子からなる導電性パターンを得る(工程6)。ここで、本方法においては、以下で説明するような導電性パターン形成用組成物を用いているため、熱処理の温度は、150〜350℃とすることができる。なお、熱処理により、感光性成分のような有機物は分解される。
【0035】
基板上に所定厚みの積層した硬化物層を形成する方法としては、本実施の形態1の方法に限定するものではない。
例えば、上記容器204の底面を透明板(露光面)として、基板を上方に移動させながら、容器204の下方からマスク露光してもよい。
また、上記方法において、透明板を用いず、基板の位置を容器204の所定の位置に固定した状態で、マスク露光ごとに容器204における導電性パターン形成用組成物の量を調節して、基板の表面または硬化物層の表面からの組成物203の液面(露光面)の高さを調整することにより、硬化物層を複数積層してもよい。
【0036】
次に、導電性パターン形成用液状組成物について説明する。
導電性パターン形成用液状組成物は、光硬化性モノマーおよび光重合開始剤を含む感光性成分と、導電粒子とを含有する。
【0037】
光硬化性モノマーは、複数の光重合性基を有する多官能性モノマーと光重合性基を1つだけ有する単官能性モノマーの両方を含むことが好ましい。
複数の光重合性基を有する多官能性モノマーとしては、例えば、1分子中に、炭素−炭素二重結合重結合のような重合可能な官能基を2つ以上有する化合物が用いられる。多官能性モノマーに含まれる重合可能な官能基の数は、3〜10個であることが好ましいが、前記範囲に限定されない。なお、重合可能な官能基の数が3個より少ない場合、硬化性が低下する傾向がある。その官能基の数が10個より多くなると、分子サイズが大きくなり、粘度が大きくなる傾向がある。
【0038】
複数の光重合性基を有する多官能性モノマーの具体的な例としては、例えば、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物のジアクリレート、ビスフェノールA−プロピレンオキサイド付加物のジアクリレートが挙げられる。また、上記化合物に含まれるアクリル基の1部または全てを、例えば、メタクリル基に置換した化合物を用いることもできる。
【0039】
光重合性基を1つだけ有する単官能性モノマーは、かぶり現象を防止するために、前記組成物に添加される。単官能性モノマーを含有しない場合には、光硬化が進みやすくなるため、露光部分だけでなく、非露光部分まで光硬化が進み、パターンの境界がぼける、いわゆる、かぶり現象が発生しやすくなる。
また、単官能性モノマーは比較的低粘度であるため、前記組成物の粘度を低くするために、前記組成物に添加してもよい。
【0040】
光重合性基を1つだけ有する単官能性モノマーとしては、例えば、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコールアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレートが挙げられる。また、上記化合物に含まれるアクリル基を、例えば、メタクリル基に置換した化合物を、単官能性モノマーとして用いることもできる。
【0041】
光重合開始剤としては、市販の光開始剤を好適に使用できる。光重合開始剤としては、例えば、光還元性の色素と還元剤との組み合わせが用いられる。なお、光重合開始剤はこれらに限定されるものではない。
【0042】
光還元性の色素としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4’−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノアセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(O−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム、1−フエニル−3−エトキシープロパントリオン−2−(O−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイル、エオシン、メチレンブルーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
還元剤としては、例えば、アスコルビン酸、トリエタノールアミンが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
導電粒子としては、導電性を有する金属微粒子であれば、限定されることなく用いることができる。例えば、金、銀、白金、ニッケル、銅、パラジウム、モリブデン、タングステン等の微粒子が挙げられる。これらの金属微粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、上記元素を含む合金からなる合金粉を導電粒子として使用することもできる。
【0045】
また、低温による焼成で低抵抗の導体を得るという目的から、比較的融点が低く、比抵抗値の低い金属材料を導電粒子として用いることが好適である。このような金属材料としては、例えば、金、銀および銅が好ましい。なお、金は非常に高価であること、銅は酸化しやすく、空気中の焼成ができない等のことから、銀が最も好適である。
【0046】
導電粒子の形状は、塊状、鱗片状、微結晶状、球状、粒状、フレーク状等の種々の形状であってもよいし、不定形であってもよい。そのなかでも、導電粒子の形状は、球状または粒状であることが好ましい。露光時の光透過性が良く、露光効率が良いからである。
【0047】
導電粒子の平均粒子径は、10μm未満であることが好ましく、5μm未満であることがさらに好ましく、3μm未満であることが特に好ましい。導電粒子の平均粒子径が5μm未満であることにより、150〜350℃程度の低温での焼結が可能となるため、焼結後の比抵抗値が小さく、電気伝導性に優れた伝導体が得られる。また、このような微粒子を使用することにより、解像度の良い光硬化物が得られる。
導電粒子の平均粒子径が3μm未満であることにより、更に、低温で焼結を行うことができるだけでなく、より微細な導電性パターンを形成することができ、電子部品の小型化が可能となる。
なお、導電粒子の平均粒子径が10μm以上である場合には、光硬化物の表面粗さが大きくなり、パターン精度や寸法精度が低下する。
【0048】
基板と透明板との間隙への前記組成物の充填性を良好なものとするために、前記組成物の粘度は、10Pa・s以下であることが好ましく、1Pa・s以下であることがさらに好ましい。特に前記組成物の粘度が1Pa・s以下である場合には、基板と透明板との間隙への前記組成物の充填性がより向上するため、組成物層の厚みをより薄くすることができ、導電性パターンの解像度を向上させることができる。さらには、充填時間が短くできるため、生産性を向上させることもできる。一方で、前記組成物の粘度が10Pa・sよりも高い場合には、所定厚みの組成物層を形成するための充填に時間を要したり、前記間隙に空気がはいったりすることがある。さらには、充填が困難となり、組成物層を介在させることができなくなる場合もある。
なお、上記粘度は、例えば、温度25℃で、コーンプレート型粘度計を用いて測定することができる。
【0049】
抵抗値の低い導電性パターンを得るために、導電粒子は、導電性パターン形成用組成物の50〜90重量%を占めることが好ましい。
また、前記組成物に含まれる感光性成分について、多官能性モノマー、単官能性モノマーおよび光重合開始剤の適正な配合量は、導電粒子100重量部あたり、多官能性モノマーは5〜30重量部であり、単官能性モノマーは0.5〜10重量部であり、光重合開始剤は0.1〜5重量部であることが望ましい。各感光性成分の量がこの範囲を逸脱した場合、所望の導電性が得られず、また、密着性、パターン形成の点で問題を生じる。
【0050】
なお、導電性パターン形成用組成物は、上記導電粒子および感光性成分の他に、例えば、分散剤および粘度調節剤を含んでいてもよい。
【0051】
以上のように、本実施形態では、電子部品の表面または硬化物層と露光面との間に、所定厚さの組成物層を介在させ、その組成物層にマスク露光を行うことにより、硬化物層を積層している。このため、硬化物層が積層された積層膜において、深さ方向における硬化が均一であり、また、硬化による歪みが少ない。このような積層膜を熱処理することにより、寸法精度がよく、低抵抗の導電性パターンを得ることができる。また、硬化物層の積層数を増やすことによって、容易に高アスペクト比の断面形状を持つ導電性パターンが得られる。さらには、積層膜の熱処理を低い温度で行うことができるため、耐熱性の低い材料や電子部品の上にも、導電性パターンを形成することができる。
【0052】
さらに、上記方法では、所定厚さの組成物層に露光を繰り返すため、フォトリソグラフィー法では必要とされる塗布、現像および乾燥の工程が不要となる。また、硬化物層の積層において、基板の位置決めを何度も行う必要がなくなる。このため、硬化物層の積層を容易に行うことができる。
【0053】
実施の形態2
図5に、本発明の別の実施形態に係る、ICチップの電極表面に接合用バンプを形成した電子部品(IC基板)の斜視図を示す。また、図6には、図5のVI−VI線断面図を示す。
【0054】
図5に示されるIC基板300は、ICチップ310およびその上に担持された複数のピラミッド形状の接合用バンプ330を含む。なお、IC基板300においては、ICチップ310の表面に設けられた複数の電極320上に、それぞれ、接合用バンプ330が形成されている。
【0055】
本実施形態のIC基板300の導電体(接合用バンプ)と、実施の形態1の配線基板100の導電体(導電性パターン)とは、導電体の縦断面の形状が異なる。すなわち、実施の形態1の配線基板100では、縦断面の形状および大きさが同じである焼成膜が積層されている。一方で、本実施形態では、図6に示されるように、ICチップ310の電極320の上に、横断面が正方形で、その大きさが徐々に小さくなっていく焼成膜340が積層されて、ピラミッド形状の接合用バンプ330が形成されている。
【0056】
本実施形態に示されるIC基板の作製方法の一例を、図7および8を参照しながら説明する。なお、図7〜8において、図3〜4と同じ構成要素には、同じ番号を付している。
図7〜8に示される作製方法においては、図3〜4のマスクの代わりに、光透過部402の形状および大きさがコンピュータ401によって制御される液晶素子400を用いている。
【0057】
まず、上記実施の形態1と同様に、ICチップ310の所定の位置にバンプパターンに合わせて硬化物層が形成されるように、ステージ201の上にICチップ310を装着する。液晶素子400と基板110との間に、透明板202を配置する。次いで、図7(a)に示されるように、ICチップ310と透明板202とが所定の間隔になるように、ステージ201を移動させる。
【0058】
次に、上面に透明板202を装着可能であり、その上面が露光面となる容器204に、導電性パターン形成用組成物203をその上面まで満たす。組成物203を満たした容器204を、図7(b)に示されるように、容器204の上面に透明板202が装着されるように配置し、ICチップ310を導電性パターン形成用組成物203中に浸漬させる。このとき、上記実施の形態1と同様に、露光面とICチップ310の表面が平行となるように、組成物203内にICチップ310を配置する。
【0059】
IC310の表面と露光面(透明板の下面)との間隙205には、周囲から組成物203が流れ込む。こうして、ICチップ310の表面に、所定厚さの組成物層を介在させる。
【0060】
次いで、液晶素子400および透明板202を介して、光源206から光を照射し、露光面とICチップ310の表面に供給された組成物層に露光する。マスクとして用いられる液晶素子400には、コンピュータ401により、バンプの底面に合わせて、正方形の光の透過部が設けられている。
こうして、図7(c)に示されるように、ICチップ310上に、横断面が正方形で、所定厚さの第1硬化物層407が形成される。
ここで、上記実施の形態1と同様に、ICチップ310の表面と露光面との間に介在する組成物層の厚さは、組成物203の硬化深さ以下であることが好ましい。
【0061】
次に、図8(d)に示されるように、ステージ201をZ軸方向下側に移動させ、第1硬化物層407を透明板202の下面から離型させる。第1硬化物層407の上面には、再度、所定厚さの間隙208が形成される。この間隙に、周囲から導電性パターン形成用組成物が流れ込む。こうして、露光面と第1硬化物層407との間に、所定厚さの新たな組成物層を介在させる。なお、実施の形態1と同様に、組成物203に圧力をかけて、透明板とICチップとの間隙への組成物203の充填を促進してもよい。
【0062】
次いで、コンピュータ401によって、液晶素子400の光透過部402の寸法を小さくして、再度マスク露光を行う。これにより、第1硬化物層407と露光面との間に介在する組成物層が光硬化される。こうして、図8(e)に示されるように、第1硬化物層407の上に、横断面が、第1硬化物層407のそれよりも少し小さい寸法の正方形である第2硬化物層409が形成される。
この操作を、液晶素子400に設けられる正方形の光透過部402の寸法を徐々に小さくしながら、1回以上行い、硬化物層がピラミッド状に積層された積層膜410を得る。
【0063】
ICチップ310を取り出し、その表面から、未硬化の導電性パターン形成用組成物を取り除く。
次いで、ICチップ310の表面に形成された積層膜410を熱処理することにより、導電粒子を焼結する。このして、ピラミッド状の接合用バンプを得ることができる。なお、積層膜の熱処理は、実施の形態1と同様に、150〜350℃の温度で行うことができる。
【0064】
このように、ICチップの表面または硬化物層と露光面との間に介在する組成物層に露光するときに、正方形の光透過部の寸法を変化させることにより、ピラミッド状の接合用バンプを形成することができる。このとき、光透過部の寸法の変更とステージのZ軸方向の移動とを、コンピュータにより連動して制御することにより、硬化物層を自動的に積層することもできる。
なお、上記のような液晶素子を用いることなく、正方形の透過部の寸法が異なる複数のマスクを用いることによっても、上記ピラミッド状の接合用バンプを形成することもできる。
【0065】
また、露光時に、マスクの光透過部の形状を変更することにより、ピラミッド形状よりも複雑な立体形状、さらには、オーバハング形状のバンプや導電体の形成も可能である。さらには、本発明の形成方法を用い、露光毎にマスクの光透過部を所定の形状に変更することにより、これまで形成できなかったバネ形状の導電体も容易に形成することができる。
【0066】
以下、本発明を、実施例により、さらに具体的に説明する。本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0067】
以下のような導電粒子、多官能性モノマー、単官能性モノマーおよび光重合開始剤を混合し、導電性パターン形成用組成物を調製した。
【0068】
導電粒子として、平均粒径0.08μmの銀微粒子(40重量部)と平均粒径0.9μmの銀微粒子(60重量部)の2種類を用いた。
多官能性モノマーとしては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(20重量部)およびトリメチロールプロパントリアクリレート(5重量部)を用いた。
単官能性モノマーとしては、メタクリル酸メチル(1重量部)およびアクリル酸ブチル(3重量部)を用いた。
光重合開始剤として、アセトフェノン誘導体(2.5重量部)を用いた。
【0069】
導電性パターン形成用組成物の粘度を、25℃で、コーンプレート型粘度計を用いて測定したところ、0.8Pa・sであった。
【0070】
この導電性パターン形成用組成物を用いて、上記実施の形態1と同様にして、ガラス基板上に、ラインアンドスペースの導電性パターンを形成した。
【0071】
透明板とその透明板に対して移動可能なステージを用意し、5cm角のガラス基板をステージ上に装着した。ここで、ガラス基板と透明板との間隔を5μmに調整しておいた。
次に、上面に透明板を装着でき、その上面が露光面となる所定の容器に、上記のようにして調製した導電性パターン形成用組成物を満たした。このとき、その上面(露光面)まで、組成物を満たした。その容器の上面に透明板を装着し、露光面とガラス基板の表面とが平行になるように、ガラス基板を前記組成物中に浸漬した。ここで、透明板の下面には、組成物が接しており、この下面が露光面となる。
組成物がガラス基板と透明板の間隙に流れ込み、これにより、厚さ5μmの組成物層を、ガラス基板と露光面との間に介在させた。
【0072】
次に、開口部の幅が30μmのラインアンドスペースの直線パターンのマスクを用い、超高圧水銀灯により、500mJ/cm2のエネルギーで光を、ガラス基板と露光面との間に介在する組成物層に照射し、厚さ50μmの第1硬化物層を得た。なお、500mJ/cm2のエネルギーで光線を導電性パターン形成用組成物に照射したときの硬化深さは、20μmである。
【0073】
次に、ステージを、Z軸方向にさらに5μm下向きに移動させて、第1硬化物層と露光面との間に、厚さ5μmの組成物層を介在させた。再度、超高圧水銀灯により500mJ/cm2のエネルギーで光を、第1硬化物層と露光面との間に介在する組成物層に照射し、厚さ5μmの第2硬化物層を形成した。
この工程を所定の回数行い、ラインアンドスペースの直線パターンの積層膜を得た。得られた積層膜の厚みは60μmであり、各幅は30μmであった。
【0074】
上記直線パターンを形成したガラス基板を取り出し、その表面をエアーブローによって、クリーニングして、未硬化の導電性パターン形成用組成物を除去した。この後、その積層膜を、200℃で2時間加熱処理し、導電粒子を焼結して、導電性パターンを得た。
【0075】
得られた導電性パターンの体積抵抗率を、抵抗率測定器(三菱化学(株)製のロレスターGP)を用いて計測したところ、3.0×10-5Ω・cmであった。
【実施例2】
【0076】
上記実施の形態2と同様にして、5mm角のICチップの電極上に、ピラミッド形状の接合用バンプを形成した。導電性パターン形成用組成物は、実施例1と同じものを用いた。
ICチップとしては、縦方向および横方向において、200μmのピッチで各10個ずつ、合計100個の電極が形成されているものを用いた。
【0077】
ICチップを、電極面を上にしてステージ上に装着し、ICチップの電極面と透明板の間隔を5μmに調整した。
【0078】
次に、上記実施例1と同様に、導電性パターン形成用組成物を満たした容器の上面に透明板を装着し、露光面とICチップの表面とが平行になるように、ICチップを組成物中に浸漬した。ICチップの電極面と透明板の間隙に組成物が流れ込み、こうして、露光面とICチップとの間に厚さ5μmの組成物層を介在させた。
【0079】
マスクとして、光透過部の形状がコンピュータにより制御される液晶素子を用いた。この液晶素子は、70μm角の正方形の光透過部が、200μmのチッピで、縦方向および横方向に、それぞれ各10個ずつ、合計100個配置された光透過パターンを有した。
露光面とICチップの表面との間に介在する組成物層に、超高圧水銀灯により500mJ/cm2のエネルギーで光を照射し、横断面が70μm角の正方形で、厚さが5μmの第1硬化物層を形成した。
【0080】
次に、ステージをZ軸方向に、さらに5μmだけ下向きに移動させ、露光面と第1硬化物層との間に、厚さ5μmの組成物層を介在させた。液晶素子の光透過部の形状を、70μm角の正方形から62μm角の正方形に変更して、再度、超高圧水銀灯により500mJ/cm2のエネルギーで光を、第1硬化物層の上に供給された組成物に照射した。こうして、第1硬化物層の上に、横断面が62μm角の正方形で、厚さが5μmの第2硬化物層を形成した。
この操作を、液晶素子の光透過部の寸法を54μm角、46μm角、38μm角、30μm角、22μm角、または14μm角に変更して行い、底面が70μm角の正方形であり、高さが40μmであるピラミッド形状の積層膜を形成した。
【0081】
ICチップを取り出し、その表面をエアーブローによって、クリーニングし、未硬化の導電性パターン形成用組成物を除去した。この後、形成した積層膜を、270℃で2時間熱処理して、導電粒子を焼結した。このようにして、ICチップの電極上に、ピラミッド状の接合用バンプを形成した。
【0082】
得られた接合用バンプの抵抗を、抵抗率測定器(三菱化学(株)製のロレスターGP)を用いて計測したところ、5mΩであった。
【比較例1】
【0083】
導電性パターン形成用組成物(粘度0.8Pa・s)の代わりに、感光性ポリマーおよびウレタンアクリレートをベースとした感光性ペースト(粘度90Pa・s)を用いたこと以外、実施例1と同様して、基板上に導電性パターンを形成した。
しかしながら、前記感光性ペーストを、基板と透明板との間隙(幅5μm)に均一に充填することができなかった。このため、マスク露光によって、マスクパターンの一部分しか光硬化できず、実施例1と同じパターンで硬化物層を形成することはできなかった。
【比較例2】
【0084】
比較例1で用いた感光性ペーストに、溶剤である酢酸ブチルカルビトールを添加して、その粘度を7Pa・sに調整した。このような感光性ペーストを用いて、実施例1と同様にして、露光を行った。しかし、感光性ペーストが十分に硬化されず、実施例1と同じパターンの硬化物層を得ることができなかった。つまり、非重合性の溶剤を添加して、粘度を10Pa・s以下に調整した感光性ペーストを用いた場合、光硬化性が十分ではなかった。
【0085】
実施例1〜2および比較例1〜2の結果より、本発明の導電性パターン形成用組成物および導電性パターン形成方法を用いることによって、種々の立体形状の、導電性に優れた導電性パターンを形成できることが分かる。
【0086】
さらには、上記導電性パターン形成用組成物を用いることにより、積層膜の熱処理を従来よりも低くすることができる。このため、上記組成物および形成方法を用いることにより、耐熱性の低い基板にも、例えば、抵抗が小さい微細な配線パターンを形成することができる。
【0087】
また、実施の形態2および実施例2に示されるように、ICチップの電極上に、液晶素子をマスクとした露光により、ICチップの複数の電極上に、一括して、ピラミッド状の接合用バンプを形成することができた。よって、高密度実装における積層化された接合用バンプを、ICなどの電極表面に形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、例えば、電子部品の表面に、導電性パターンを形成するために用いることができる。特に、電子部品上に、導電性が高く、また高アスペクト比の縦断面を有する導電性パターン、さらには、複雑な立体構造の導電性パターンを形成するために、本発明を好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態にかかる電子部品(配線基板)の縦断面図である。
【図2】図1の波線で囲まれた部分の拡大図である。
【図3】図1に示される配線基板の作製において、基板上に1つの硬化物層を形成するまでの操作を説明する図である。
【図4】図1に示される配線基板の作製において、基板上に1つの硬化物層を形成したのち、基板上に複数の硬化物層が積層された積層膜が形成されるまでの操作を説明する図である。
【図5】本発明の別の実施形態にかかる電子部品(IC基板)の縦断面図である。
【図6】図5の電子部品のVI−VI線での縦断面図である。
【図7】図5に示されるIC基板の作製において、ICチップの電極上に、横断面が正方形である硬化物層を1つ形成するまでの操作を説明する図である。
【図8】図1に示されるIC基板の作製において、ICチップの電極上に1つの硬化物層を形成したのち、横断面の正方形の寸法が徐々に小さくなる、複数の硬化物層が積層された積層膜が形成されるまでの操作を説明する図である。
【符号の説明】
【0090】
100 配線基板
110 基板
120 導電性パターン
130、340 焼成膜
200 マスク
201 ステージ
202 透明板
203 導電性パターン形成用組成物
204 容器
205、208 間隙
206 光源
207、407 第1硬化物層
209、409 第2硬化物層
210、410 積層膜
211、402 光透過部
300 IC基板
310 ICチップ
320 電極
330 接合用バンプ
400 液晶素子
401 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)導電粒子と感光性成分とを含み、前記感光性成分が光硬化性モノマーと光重合開始剤とを含む導電性パターン形成用液状組成物を、露光面を有する容器に供給する工程と、
(2)前記組成物に、導電性パターンが形成される表面を有する基材を浸漬する工程と、
(3)前記露光面と前記基材の表面との間に、所定厚みの組成物層が介在するように、前記基材を配置し、前記組成物層にマスクを介して露光し、所定パターンの硬化物層を形成する工程と、
(4)前記露光面と前記形成された硬化物層の表面との間に、所定厚みの新たな組成物層が介在するように、前記基材を移動させ、前記新たな組成物層にマスクを介して露光し、所定パターンの硬化物層を更に形成する操作を1回以上行い、硬化物層の積層膜を形成する工程と、
(5)前記基材の表面から、未硬化の前記組成物を除去する工程と、
(6)前記積層膜を熱処理する工程と、
を有する導電性パターンの形成方法。
【請求項2】
前記露光面が、前記容器の上面であり、工程(3)において、前記基材を移動させることにより、前記露光面と前記形成された硬化物層の表面との間に、前記所定厚みの新たな組成物層を介在させる、請求項1記載の導電性パターンの形成方法。
【請求項3】
前記組成物の粘度が、10Pa・s以下である、請求項1記載の導電性パターンの形成方法。
【請求項4】
請求項1記載の導電性パターンの形成方法に用いる導電性パターン形成用組成物であって、
導電粒子と感光性成分とを含み、
前記感光性成分が、光硬化性モノマーと光重合開始剤とを含み、
前記導電粒子が、前記組成物の50〜90重量%を占め、残りが前記感光性成分である、導電性パターン形成用組成物。
【請求項5】
前記光硬化性モノマーが、複数の光重合性基を有する多官能性モノマーと、光重合性基を1つだけ有する単官能性モノマーとを含む、請求項4記載の導電性パターン形成用組成物。
【請求項6】
前記導電粒子の平均粒子径が、10μm未満である、請求項4記載の導電性パターン形成用組成物。
【請求項7】
積層構造を有する導電性パターンと、前記導電性パターンが担持された表面とを備え、前記導電性パターンが、2層以上の請求項4記載の組成物の焼成膜からなる、電子部品。
【請求項8】
前記2層以上の焼成膜の寸法が、前記表面から遠くなるに従い、次第に小さくなっている、請求項7記載の電子部品。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−194118(P2007−194118A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12563(P2006−12563)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】