導電性酸化亜鉛膜および導電性酸化亜鉛膜を備えた光電変換素子
【課題】経時安定性の高い導電性酸化亜鉛膜を得る。
【解決手段】B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜において、膜中に水素を含むものとし、その水素の含有量を3×1021 atoms/cm3以下とする。
【解決手段】B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜において、膜中に水素を含むものとし、その水素の含有量を3×1021 atoms/cm3以下とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性酸化亜鉛膜および導電性酸化亜鉛膜を備えた光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電極間に光電変換層を備えた光電変換素子が、太陽電池等の用途に使用されている。従来、太陽電池においては、バルクの単結晶Siまたは多結晶Si、あるいは薄膜のアモルファスSiを用いたSi系太陽電池が主流であったが、Siに依存しない化合物半導体系太陽電池の研究開発がなされている。化合物半導体系太陽電池としては、GaAs系等のバルク系と、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなるCISあるいはCIGS系等の薄膜系とが知られている。CIGS系は、一般式Cu1−zIn1−xGaxSe2−ySy(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)で表される化合物半導体であり、x=0のときがCISである。
【0003】
CIGS系等の薄膜系光電変換素子においては一般に、光電変換層の光吸収面側には、バッファ層を介して透光性導電層(透明電極)が形成されている。
【0004】
透光性導電層としては、酸化亜鉛に亜鉛よりもイオン価数の高いドーパント元素を添加した導電性酸化亜鉛膜(以下において、導電性ZnO膜)が、現在普及しているITO(酸化インジウム錫)に比して安価であり、資源的にも豊富な材料として注目されている。
【0005】
導電性ZnO膜の成膜方法において、気相法としては、スパッタリング法、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)などが知られている。
【0006】
光電変換素子のバッファ層上に導電性ZnO膜を成膜する場合、バッファ層の耐熱性等の観点から200℃程度以下の温度での成膜が望まれる。
【0007】
特許文献1には、MOCVD法による低温(150〜190℃)での導電性ZnO膜の成膜方法が開示されている。ここでは、III族元素含有有機化合物としてジボラン(B2H6)を用いることにより、低抵抗な導電性ZnO膜を成膜することができることが開示されている。一方で、取り扱い性の良くないジボランを加えることなく純度の低いジエチル亜鉛を原料として用い、この低純度のジエチル亜鉛に不純物として含まれているトリメチルアルミニウムをIII族元素含有有機化合物として転用することにより、ジボランを用いた場合と同程度の性能のZnO膜を成膜することができると記載されている。
【0008】
他方、非特許文献1には、MOCVD法による170℃程度の低温成膜において、ドーパントとしてボロンを用いることにより導電性ZnO膜の経時安定性が向上することが示されている。ボロンドープにより結晶粒が大きくなること、欠陥がボロンにより埋められることが安定性の向上要因であるとの考察が記載されている。
【0009】
また、非特許文献2にも同様に、200℃以下の低温で成膜された導電性ZnO膜の安定性に関する議論がなされており、結晶サイズなどの結晶性との相関が述べられている。
【0010】
他方、特許文献2には、2つの電極の間に光電変換半導体層を挟持する構造の太陽電池において、電極と半導体層の間に炭素原子を含む(5%以下)ZnO層を配したことで、電極と半導体層間の密着性の向上と抵抗を低減させる技術が開示されている。しかしながら、特許文献2は、ZnOにIII族元素などのドーピングは行っておらず、透明導電性膜としてのZnO膜に関連するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−183117号公報
【特許文献2】特開平5−82814号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】X.L. Chen et al, "Boron-doped zinc oxide thin films for large-area solar cells grown" Thin Solid Films 515(2007) pp.3753-3759
【非特許文献2】T. Minami et al, "Stability in a high humidity environment of TCO thin films deposited at low temperatures" Physica Status Solidi (a), 205,No2,255-260 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1、2にはZnO膜の経時安定性に関する記載はなく、非特許文献1、2においては、導電性ZnO膜の経時安定性に対するドーパント以外の不純物濃度については議論されていない。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、経時安定性の高い導電性ZnO膜を提供することを目的とするものである。また、本発明は経時安定性の高い導電性ZnO膜を備えた光電変換素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、導電性酸化亜鉛膜中のドーパント(B、Al、Ga、In)以外に含まれる不純物濃度に着目し、この不純物(H,C)濃度を一定値以下とすることにより導電性亜鉛膜の経時安定性が向上することを見いだし、本発明に至ったものである。
【0016】
本発明の第1の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に水素を含み、該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とするものである。
水素を含有しない導電性酸化亜鉛膜は、本発明の第1の導電性酸化亜鉛膜には含まれない。
【0017】
本発明の第2の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に炭素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であることを特徴とするものである。
炭素を含有しない導電性酸化亜鉛膜は、本発明の第2の導電性酸化亜鉛膜には含まれない。
【0018】
本発明の第3の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に炭素および水素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であり、かつ該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とするものである。
水素および炭素を含有しない導電性酸化亜鉛膜は、本発明の第3の導電性酸化亜鉛膜には含まれない。
【0019】
本発明の第1および第3の導電性酸化亜鉛膜において、前記水素の含有量は、1×1021 atoms/cm3以上であってもよい。
【0020】
本発明の第2および第3の導電性酸化亜鉛膜において、前記炭素の含有量は、1×1020atoms/cm3以上であってもよい。
【0021】
本発明の光電変換素子は、下部電極と光電変換層とバッファ層と透光性導電層とが積層されてなる光電変換素子において、
前記透光性導電層が、本発明の導電性酸化亜鉛膜であることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の光電変換素子は、前記光電変換層の主成分が、
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
また、前記バッファ層がCdSであることが好ましい。
【0023】
本発明の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法は、成膜室内に配された基板上に、有機金属化学気相蒸着法を用いて導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法であって、
前記基板の温度を400℃以上とし、
原料として、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)3,nは整数)と、ドーパントとなるIII族元素含有有機化合物と、水とを用いることを特徴とする。
【0024】
nは1または2であることが好ましくは、特にはジエチル亜鉛(Zn(CnH2n+1)2)が好ましい。
【0025】
前記III族元素含有有機化合物が、アルキルガリウム(Ga(CnH2n+1)3,nは整数)、アルキルアルミニウム(Al(CnH2n+1)3,nは整数)、アルキルインジウム(In(CnH2n+1)3,nは整数)のうちの少なくともいずれか1つであることが望ましい。
いずれの有機化合物においても、nは、1または2であることが好ましい。
【0026】
本明細書において、「透光性」とは、太陽光の透過率が70%以上であることを意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に水素を含み、該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であるので、経時安定性に優れている。
【0028】
本発明の第2の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に炭素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であるので、経時安定性に優れている。
【0029】
本発明の第3の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に炭素および水素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であり、かつ該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であるので、経時安定性に優れている。
【0030】
本発明の導電性酸化亜鉛膜は、水素および/または炭素の含有量を一定値以下とすることにより、経時安定性に優れており、太陽電池などの光電変換素子、タッチパネルなどの電子デバイスの透明導電膜に好適であり、本発明の導電性酸化亜鉛膜を備えることにより経時安定性を向上させ、電子デバイスの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法に用いられる一実施形態のMOCVD装置の概略構成を示す模式図
【図2】光電変換素子の製造工程および層構成を模式的に示す断面図
【図3】検証実験1における膜中炭素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図4】検証実験1における膜中水素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図5】検証実験2における膜中炭素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図6】検証実験2における膜中水素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図7】H2分解有無のサンプルのシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図8】検証実験4における膜中炭素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図9】検証実験4における膜中水素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図において、視認しやすくするため、各部の縮尺は適宜変更して示してある。
【0033】
「導電性酸化亜鉛膜」
本発明の第1の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に水素を含み、該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とする。
【0034】
本発明の第2の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に炭素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であることを特徴とする。
【0035】
本発明の第3の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に炭素および水素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であり、かつ該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とする。
【0036】
本発明の第1〜第3の導電性酸化亜鉛膜は、例えば有機金属化学気相蒸着法により成膜することができる。具体的には、基板温度、成膜時のガス等を調整することにより成膜することができる。
【0037】
本発明の導電性酸化亜鉛膜を成膜する第1の成膜方法としては、成膜室内に配された基板上に、有機金属化学気相蒸着法を用いて導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法であって、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)2、nは整数)と、ドーパントとなるIII族元素を含むIII族元素含有有機化合物と、水と、水素とを含むガスを成膜室に導入し、成膜室中において、基板の温度を400℃未満、より好ましくは300℃未満、さらに好ましくは200℃以下とした条件下で導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法が挙げられる。
【0038】
本発明の導電性酸化亜鉛膜を成膜する第2の成膜方法としては、成膜室内に配された基板上に、有機金属化学気相蒸着法を用いて導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法であって、原料として、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)3,nは整数)と、ドーパントとなるIII族元素含有有機化合物と、水とを用い、基板の温度を400℃以上とした条件下で導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法が挙げられる。
【0039】
図1は、上記成膜方法を実現する一実施形態の成膜装置(MOCVD装置)1の概略構成を示す模式図である。
【0040】
図1に示すように、MOCVD装置1は、成膜室2と、成膜室2内において基板10を保持する基板保持部20と、基板保持部20に保持される基板10上に反応ガスを吐出させるシャワーヘッド4と、成膜室2内のガスを排出させるための真空ポンプ5と、成膜室2内の圧力を検出する圧力計6と、シャワーヘッド4に接続されて成膜室2にガスを導入する複数のガス供給管31、32、33、34、35と、所定のガス供給管31、32、33に接続され、該ガス供給管から成膜室2内に導入されるガスの原料を個々に蓄える複数の原料槽41、42、43と、ガス供給管34に接続され、成膜室2内に導入される水素を蓄える水素ボンベ44と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給部45を備えている。
【0041】
成膜室2内の圧力は圧力計6により検出され、成膜室内の圧力を一定にするように真空ポンプ5により排気が行われる。成膜時においては成膜室2内の圧力は10Torr(1.33×103Pa)以下であることが好ましい。
【0042】
基板保持部20は、基板10を保持するサセプタ21と、該サセプタ21を加熱するヒータ22とこれらを支持する支持部材23とにより構成され、サセプタ21上の基板は均熱保持される。
サセプタ21としては、基板10を均熱保持可能なものであれば特に制限されないが、成膜される膜の面内組成分布の改善のため、支持部材23を中心軸として回転可能であることが好ましい。面内組成を略均一できればサセプタ21の回転数は特に制限されないが、例えば30rpm程度が挙げられる。
ヒータ22としてはサセプタ21を面内温度分布が略均一となるように加熱可能であり、室温程度〜800℃の範囲で温度制御可能であれば特に制限されない。
【0043】
原料槽41は、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)2、nは整数)を蓄えている。特にはジエチル亜鉛Zn(C2H5)2が好ましい。
原料槽42は、ドーパントとなるIII族元素を含むIII族元素含有有機化合物を蓄えている。III族元素含有有機化合物としては、アルキルガリウム(Ga(CnH2n+1)3、nは整数)、アルキルアルミニウム(Al(CnH2n+1)3、nは整数)およびアルキルインジウム(In(CnH2n+1)3、nは整数)のうちの少なくともいずれか1つであることが好ましい。特には、トリエチルガリウム(Ga(C2H5)3)、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)、およびトリメチルインジウム(In(CH3)3)のうちのいずれかであることが好ましい。
原料槽43は、水(H2O)を蓄えている。
【0044】
水素ボンベ44はガス供給管34に接続されて、水素ガスを供給するが、ガス供給管34の成膜室2に至る経路の途中に、水素ガスを水素原子に分解する水素分解機構としてのハロゲンランプ40が配置されている。
水素を成膜室2に導入する際には、水素ガス(水素分子)として成膜室に導入してもよいが、水素にハロゲンランプ40からの光を照射して、水素分子を水素原子に分解させて水素原子として成膜室2に導入することがより望ましい。
【0045】
ガス供給管31および32は、成膜室2に至る前に接続されて原料槽41、42からのガスは混合された状態で成膜室2に導入される。
原料が気体である場合はそのままガス供給管に流入させることができるが、液体である場合は、キャリアガス供給部45からキャリアガスをまず液体の原料槽内に流入させてバブリングすることにより気化させた後にガス供給管に流入させる。キャリアガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0046】
各供給管31〜35のガスの流量は、それぞれマスフローコントローラ(MFC)により管理調整される。成膜される膜の組成や物性、結晶構造は原料ガスの流量比、基板温度、圧力等によって変化するため、各ガスの流量や成膜室2内の圧力等を調整して成膜を実施すればよい。
【0047】
なお、成膜室2に供給された各ガスは、基板上にて反応して膜成長に寄与し、反応しなかったものは真空ポンプ60により強制排気される。
【0048】
なお、図1に示すMOCVD装置1においては、水素供給源として、水素ボンベ44を原料槽41〜43と並列的に備えるものとしたが、キャリアガス供給部45側に水素供給源を備え、水素をArあるいはN2等と混合してキャリアガスの一部として成膜室2に導入するようにしてもよい。
【0049】
MOCVD装置1を用いて導電性ZnO膜を成膜する第1の成膜方法の一例を説明する。
はじめに、基板10を用意し、MOCVD装置1の成膜室2のサセプタ21上に設置する。その後、サセプタ21をヒータ22により所定の温度になるように加熱して回転させる。基板10の温度は、400℃未満、好ましくは300℃未満、さらに好ましくは200℃以下とする。また、ZnO膜を気相成長させるには基板はある程度の温度に加熱する必要があり、60℃以上、好ましくは100℃以上とする。
【0050】
次に、原料槽41内のアルキル亜鉛と原料槽42内のIII族元素含有有機化合物をキャリアガスによりバブリングして気化させてそれぞれガス供給管31、32により導入し、両供給管31、32の接続により混合させた状態で成膜室内に導入する。原料槽43の水を、原料槽43にヒータを設け水蒸気化させて、あるいはキャリアガスによりバブリングして気化させて供給管33により成膜室2内に導入する。水素ボンベ44の水素を、ガス供給管34の途中に配置されているハロゲンランプ40による光照射により水素原子に分解し、水素原子として成膜室2に導入する。
【0051】
なお、基板温度が200℃以下である場合には、成膜室2において、水素の濃度がアルキル亜鉛に対して50倍以上の濃度となるように水素およびアルキル亜鉛の流量を調整する。
【0052】
成膜室2に導入されたガスはシャワーヘッド4の吐出口から、基板10上に供給される。
加熱された基板10上で原料が反応して導電性ZnO膜が成膜される。
【0053】
以上の第1の成膜方法により成膜される導電性ZnO膜は、膜中の水素含有量を3×1021 atoms/cm3以下とすることができ、炭素含有量を5×1020 atoms/cm3以下とすることができるので、経時安定性に優れている。
基板温度を200℃以下で成膜するとき、化合物半導体系の光電変換素子の透光性導電膜としての導電性ZnO膜の成膜に好適である。
他方、基板温度を200℃超−400℃未満で成膜するとき、より耐熱性の高い基板に対して導電性ZnO膜を形成する用途に適する。
【0054】
MOCVD装置1を用いて導電性ZnO膜を成膜する第2の成膜方法の一例を説明する。第2の成膜方法は、第1の成膜方法と異なる点のみを説明する。
第1の成膜方法においては、水素を含むガスを成膜室に導入するものとしたが、第2の成膜方法においては、水素を用いない。すなわち水素ボンベ44のバルブを閉としておく。また、第1の成膜方法では、基板温度を400℃未満としたが、第2の成膜方法では、基板温度を400℃以上とする。
他は、第1の成膜方法と同様とし、400℃以上に加熱された基板10上で原料が反応して導電性ZnO膜が成膜される。
【0055】
以上の第2の成膜方法により成膜された導電性ZnO膜は、膜中の水素含有量を3×1021 atoms/cm3以下とすることができ、炭素含有量を5×1020 atoms/cm3以下とすることができるので、経時安定性に優れている。
なお、MOCVD法により成膜する場合には、水素含有量を1×1021 atoms/cm3未満、炭素含有量を1×1020atoms/cm3未満とすることは極めて難しい。
【0056】
「光電変換素子」
図2を参照して、本発明の光電変換素子について説明する。図2は、光電変換素子の一実施形態である太陽電池50の製造工程を示す概略断面図である。
【0057】
光電変換素子である太陽電池50の構成を製造方法とともに説明する。
【0058】
図2(a)に示すように、基板51上に下部電極52、光電変換層53およびバッファ層54が順次形成された積層体を成膜基板10とし、この成膜基板10上、すなわちバッファ層54上に、例えば図1に示したMOCVD装置1を用いた上述の第1の成膜方法により、透光性導電層55として導電性ZnO膜を成膜する。
なお、バッファ層54上への導電性ZnO膜の成膜に際しては、基板10の温度が200℃以下となるように制御する必要がある。
【0059】
基板51上への下部電極52、光電変換層53、バッファ層54の形成方法は、公知の方法により行えばよく、液相、気相等、各層の形成に適するいかなる方法を用いてもよい。
【0060】
その後、図2(b)に示すように、透光性導電層55上に集電電極58を形成することにより太陽電池50を製造する。
【0061】
図2(b)に示す太陽電池20は、基板51上に、下部電極52、光電変換層53、バッファ層54、透光性導電層55として導電性ZnO膜、および集電電極58が順次形成されてなるものである。
【0062】
太陽電池50は、化合物半導体からなる光電変換層53を備えた太陽電池であり、図2においては、1セルの太陽電池を示しているが、集積型の太陽電池においても、透光性導電層として本発明の導電性ZnO膜は適用可能である。
【0063】
太陽電池50の基板51からバッファ層54について簡単に説明する。
【0064】
(基板)
太陽電池用の基板51としては、ガラス基板、表面に絶縁膜が成膜されたステンレス等の金属基板、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、およびポリイミド等の樹脂基板等が挙げられる。
【0065】
連続工程による生産が可能であることから、表面に絶縁膜が成膜された金属基板、陽極酸化基板、および樹脂基板等の可撓性基板が好ましい。
【0066】
(下部電極)
下部電極(裏面電極)52の主成分としては特に制限されず、Mo,Cr,W,およびこれらの組合せが好ましく、Mo等が特に好ましい。下部電極(裏面電極)52の膜厚は制限されず、200〜1000nm程度が好ましい。
【0067】
(光電変換層)
光電変換層53は、光吸収により電荷を生じる層である。光電変換層53の主成分としては特に制限されず、高光電変換効率が得られることから、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体である場合に好適に適用することができる。カルコパイライト構造の化合物半導体としては、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることがより好ましい。
【0068】
上記化合物半導体としては、CuAlS2,CuGaS2,CuInS2,CuAlSe2,CuGaSe2,AgAlS2,AgGaS2,AgInS2,AgAlSe2,AgGaSe2,AgInSe2,AgAlTe2,AgGaTe2,AgInTe2,Cu(In,Al)Se2,Cu(In,Ga)(S,Se)2,Cu1−zIn1−xGaxSe2−ySy(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)(CI(G)S),Ag(In,Ga)Se2,およびAg(In,Ga)(S,Se)2等が挙げられる。
光電変換層53の膜厚は特に制限されず、1.0〜3.0μmが好ましく、1.5〜2.0μmが特に好ましい。
【0069】
(バッファ層)
バッファ層54としては特に制限されないが、Cd,Zn,Sn,Inからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属硫化物を含むことが好ましい。
バッファ層54の膜厚は特に制限されず、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。
【0070】
(透光性導電層)
透光性導電層(透明電極)55は、光を取り込むと共に、下部電極52と対になって、光電変換層53で生成された電荷が流れる電極として機能する層である。本実施形態において、透光性導電層55が、上記の本発明の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法により成膜される。
【0071】
なお、太陽電池としては、その他、バッファ層と透光性導電層との間に窓層(保護層)を備えていてもよい。
また、必要に応じてカバーガラス、保護フィルム等が取り付けられている。
【0072】
なお、本発明の製造方法で作製される光電変換素子は、太陽電池のみならずCCD等の他の用途にも適用可能である。
【実施例1】
【0073】
本発明の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法について検証を行った結果を説明する。
【0074】
(検証実験1)
図1に示すMOCVD装置1を用い、SLG(ソーダライムガラス)基板上に導電性ZnO膜を成膜した。原料ガスとしてジエチル亜鉛(100μmol/min)、水蒸気(700μmol/min)、トリエチルガリウム(10μmol/min)を使用し、キャリアガスとして窒素を使用した。成膜圧力は10Torrとし、成膜する膜厚は500nmとした。異なる基板温度(200℃、300℃、400℃、500℃)の条件下でそれぞれ導電性ZnO膜(サンプル1a〜1d)を成膜した。
【0075】
サンプル1a〜1dについて、膜中の不純物濃度(炭素、水素)をSIMS(2次イオン質量分析)により測定した。
各サンプルの成膜温度と、不純物濃度の関係を表1に示す。
【表1】
【0076】
表1に示されるように成膜温度が高いサンプルほど膜中に含まれる炭素、水素濃度は低くなる傾向が得られた。
【0077】
また、各サンプル1a〜1dについての経時変化を調べた。室温保管したサンプルについて、5日毎にシート抵抗値を測定した。各サンプルについて、シート抵抗値を成膜直後の抵抗値で規格化したシート抵抗値の時間変化(経時変化)を図3および図4に示す。
【0078】
図3は、膜中の炭素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図3に示すように、膜中の炭素濃度が小さいほど経時劣化が少なく、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化が見られなかった。
【0079】
図4は、膜中の水素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図4に示すように、膜中の水素濃度が小さいほど経時劣化が少なく、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化が見られなかった。
【0080】
なお、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下の膜は400℃以上の基板温度で成膜したサンプル1c、1dであった。
すなわち、上記成膜方法においては、成膜温度を400℃以上にすることにより、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下および/または水素濃度3×1021 atoms/cm3以下の経時劣化の少ない安定した導電性酸化亜鉛膜を得ることができることが明らかになった。
【0081】
なお、上記においてトリエチルガリウムの代わりにトリメチルアルミニウムをドーパントとして用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0082】
(検証実験2)
検証実験1と同様に、MOCVD装置1を用い、SLG基板上に導電性ZnO膜を成膜した。原料ガスとしてジエチル亜鉛(100μmol/min)、水蒸気(700μmol/min)、トリエチルガリウム(10μmol/min)を使用し、水素を添加し、キャリアガスとしては窒素を使用した。検証実験1での成膜方法とは、原料ガスに水素が添加されている点で異なる。成膜圧力は10Torr、成膜する膜厚は500nmとした。基板温度200℃の条件下で、添加する水素量(mmol/min)を、0(水素添加なし)、1、5、10と変化させてそれぞれ導電性ZnO膜(サンプル2a〜2d)を成膜した。
【0083】
上記のようにして成膜したサンプル2a〜2dについて、膜中の不純物濃度(炭素、水素)をSIMSにより測定した。
各サンプルの成膜時の水素添加量と、不純物濃度の関係を表2に示す。
【表2】
【0084】
表2に示されるように、水素を添加することにより、膜中の不純物濃度(水素、酸素)の濃度を低減することができ、成膜時の水素添加量が多いほど膜中の不純物濃度が低くなる傾向があることが明らかになった。
【0085】
また、検証実験1と同様に、各サンプル2a〜2dについての経時変化を調べた。室温保管したサンプルについて、5日毎にシート抵抗値を測定した。各サンプルについて、シート抵抗値を成膜直後の抵抗値で規格化したシート抵抗値の経時変化を図5および図6に示す。
【0086】
図5は、膜中の炭素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図5に示すように、膜中の炭素濃度が小さいほど経時劣化が少なく、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化が見られなかった。
【0087】
図6は、膜中の水素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図6に示すように、膜中の水素濃度が小さいほど経時劣化が少なく、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化が見られなかった。
【0088】
なお、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下の膜は水素添加量が5mmol/min以上で成膜したサンプル2c、2dであった。200℃の基板温度の場合には、ジエチル亜鉛濃度が100μmol/minの時に、水素濃度を5mmol/min以上、すなわちジエチル亜鉛濃度に対する水素濃度を50倍以上とする必要があることが分かった。一方で、水素が1mmol/minであったサンプル2bの場合にも水素が添加されていない場合と比較して経時劣化を抑制する効果は十分に見られた。また、基板温度が200℃超である場合には、ジエチル亜鉛濃度に対する水素濃度が50倍よりも小さくても、経時劣化がほとんどない膜を得ることができると推測される。
【0089】
なお、トリエチルガリウムの代わりにトリメチルアルミニウムをドーパントとして用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0090】
(検証実験3)
検証実験2と同様の成膜方法において、水素ガスの供給管(導入ライン)において、ハロゲンランプ40による光照射を行い、水素を水素原子に分解した場合(サンプル3a)と、水素を分解しない場合(サンプル3b)を作成した。このとき、基板温度は200℃、水素添加量は5mmol/minとした。
【0091】
各サンプル3a、3bについて、膜中の不純物濃度(炭素、水素)をSIMSにより測定した。
各サンプルについての不純物濃度を表3に示す。
【表3】
【0092】
表3に示されるように、水素ガスを水素原子に分解して成膜室に導入することで、水素原子に分解しない場合と比較して、より効率的に不純物を低減することができた。
【0093】
また、検証実験1、2と同様に、両サンプル3a、3bについての経時変化を調べた。室温保管したサンプルについて、5日毎にシート抵抗値を測定した。両サンプルについてシート抵抗値を成膜直後の抵抗値で規格化したシート抵抗値の経時変化を図7に示す。
【0094】
図7に示すようにH2分解したサンプル3aはH2分解しなかったサンプル3bよりも経時劣化が小さく、ほとんど劣化しなかった。これは、水素分解したサンプルにおいて不純物濃度が低いためと考えられる。
【0095】
なお、検証実験2、3については、水素を原料ガスとして成膜室中で混合する場合だけでなく、水素をキャリアガスとして予め原料ガスと混合する場合にも同様の結果が得られた。
【0096】
なお、検証実験1〜3において、MOCVD法で成膜する限りにおいては、原料ガスに炭化水素が含まれるため、成膜される導電性ZnO膜中の炭素濃度を1×1020 atoms/cm3未満、水素濃度を1×1021 atoms/cm3未満にすることは極めて難しいことが分かった。
【0097】
(検証実験4)
検証実験1〜3と異なり、スパッタ法を用いてSLG基板上に導電性ZnO膜(ZnO:Ga)を成膜した。通常のスパッタ法で成膜した場合、膜中に不純物(炭素、水素)が含まれることはないが、不純物濃度と経時安定性の関係を評価するため、炭素を不純物として加える場合には二酸化炭素ガスを、水素不純物として加える場合には水素ガスを成膜雰囲気中に加え、添加ガス量により不純物濃度を調整した。スパッタ時の成膜温度は室温とし、成膜する膜厚は500nmとした。添加する二酸化炭素、水素量を異ならせて複数のサンプル4a〜4eを成膜した。
【0098】
各サンプル4a〜4eについて、膜中の不純物濃度(炭素、水素)はSIMSにより測定した。
各サンプルの不純物濃度を表4に示す。
【表4】
【0099】
表4に示すように、スパッタ法によれば、膜中の炭素、水素濃度を別々に制御することが可能であり、炭素、水素のいずれか一方のみを含むサンプルにより、炭素濃度の経時安定性への影響、水素濃度の経時安定性への影響を調べることができる。
【0100】
検証実験1〜3と同様に、サンプル4a〜4cについての経時変化を調べた。各膜についての、シート抵抗値を成膜直後の抵抗値で規格化したシート抵抗値の経時変化を図8および図9に示す。
【0101】
図8は、サンプル4a〜4cについての経時変化を示すものであり、水素を含まない膜中の炭素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図8に示すように、水素を含まない膜においても、炭素濃度が5×1020 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化がないことが明らかになった。
【0102】
図9は、サンプル4c〜4eについての経時変化を示すものであり、炭素を含まない膜中の水素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図9に示すように、炭素を含まない膜においても、水素濃度が3×1021 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化がないことが明らかになった。
【0103】
以上、検証実験1〜4により、水素および/または炭素濃度と導電性ZnO膜の経時安定性には相関があることが確認され、不純物濃度を規定値以下に保つことで、導電性ZnO膜の安定性を向上できることを見出した。
【0104】
(光電変換素子の変換効率)
MOCVD法により透光性導電膜を成膜した光電変換素子(CIGS太陽電池)の光電変換率の経時変化を測定した。
【0105】
ZnO膜の成膜用基板として、基板上に下部電極、光電変換層およびバッファ層が形成されてなるCIGS太陽電池用基板(CdS/CIGS/Mo/SLG)を用意し、このバッファ層(CdS)上に導電性ZnO膜を成膜した。原料ガスとして、ジエチル亜鉛、水蒸気、トリエチルガリウム、水素を使用し、基板温度を200℃とし、成膜する膜厚は500nmとした。
異なる複数の水素添加量で導電性ZnO膜を形成し、導電性ZnO膜上にそれぞれAl集電電極を取り付け、太陽電池(サンプル5a〜5d)を作製した。各サンプル5a〜5dの導電性ZnO膜の成膜方法は、それぞれ検証実験2のサンプル2a〜2dと同一の条件とした。
【0106】
4つの太陽電池サンプル5a〜5dについて、それぞれ高温高湿保持(85℃, 85%, 1000時間)前後の変換効率を測定した。
具体的には、市販の太陽電池用IV測定器を用い、AM1.5の擬似太陽光照射のもと、25℃にて太陽電池のIV測定を行い、変換効率を算出した。
表5に各サンプルについて、導電性ZnO膜中の不純物(炭素、水素)濃度および変換効率の低下率を示す。
【表5】
【0107】
表5に示すように、導電性ZnO膜中の不純物(炭素、水素)濃度が低いほど、CIGS太陽電池の劣化(変換効率の低下)が抑制されることがわかった。特には、導電性ZnO膜中の炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下であるサンプル5c、5dは、変換効率の低下率抑制効果が高いことが明らかになった。
【符号の説明】
【0108】
1 MOCVD装置
2 成膜室
4 シャワーヘッド
5 真空ポンプ
6 圧力計
10 基板
20 基板保持部
31、32、33、34、35 ガス供給管
40 ハロゲンランプ
41、42、43 原料槽
44 水素ボンベ
45 キャリアガス供給部
50 光電変換素子(太陽電池)
51 基板
52 下部電極
53 光電変換層
54 バッファ層
55 透光性導電膜(導電性酸化亜鉛膜)
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性酸化亜鉛膜および導電性酸化亜鉛膜を備えた光電変換素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電極間に光電変換層を備えた光電変換素子が、太陽電池等の用途に使用されている。従来、太陽電池においては、バルクの単結晶Siまたは多結晶Si、あるいは薄膜のアモルファスSiを用いたSi系太陽電池が主流であったが、Siに依存しない化合物半導体系太陽電池の研究開発がなされている。化合物半導体系太陽電池としては、GaAs系等のバルク系と、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなるCISあるいはCIGS系等の薄膜系とが知られている。CIGS系は、一般式Cu1−zIn1−xGaxSe2−ySy(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)で表される化合物半導体であり、x=0のときがCISである。
【0003】
CIGS系等の薄膜系光電変換素子においては一般に、光電変換層の光吸収面側には、バッファ層を介して透光性導電層(透明電極)が形成されている。
【0004】
透光性導電層としては、酸化亜鉛に亜鉛よりもイオン価数の高いドーパント元素を添加した導電性酸化亜鉛膜(以下において、導電性ZnO膜)が、現在普及しているITO(酸化インジウム錫)に比して安価であり、資源的にも豊富な材料として注目されている。
【0005】
導電性ZnO膜の成膜方法において、気相法としては、スパッタリング法、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD:metal-organic chemical vapor deposition)などが知られている。
【0006】
光電変換素子のバッファ層上に導電性ZnO膜を成膜する場合、バッファ層の耐熱性等の観点から200℃程度以下の温度での成膜が望まれる。
【0007】
特許文献1には、MOCVD法による低温(150〜190℃)での導電性ZnO膜の成膜方法が開示されている。ここでは、III族元素含有有機化合物としてジボラン(B2H6)を用いることにより、低抵抗な導電性ZnO膜を成膜することができることが開示されている。一方で、取り扱い性の良くないジボランを加えることなく純度の低いジエチル亜鉛を原料として用い、この低純度のジエチル亜鉛に不純物として含まれているトリメチルアルミニウムをIII族元素含有有機化合物として転用することにより、ジボランを用いた場合と同程度の性能のZnO膜を成膜することができると記載されている。
【0008】
他方、非特許文献1には、MOCVD法による170℃程度の低温成膜において、ドーパントとしてボロンを用いることにより導電性ZnO膜の経時安定性が向上することが示されている。ボロンドープにより結晶粒が大きくなること、欠陥がボロンにより埋められることが安定性の向上要因であるとの考察が記載されている。
【0009】
また、非特許文献2にも同様に、200℃以下の低温で成膜された導電性ZnO膜の安定性に関する議論がなされており、結晶サイズなどの結晶性との相関が述べられている。
【0010】
他方、特許文献2には、2つの電極の間に光電変換半導体層を挟持する構造の太陽電池において、電極と半導体層の間に炭素原子を含む(5%以下)ZnO層を配したことで、電極と半導体層間の密着性の向上と抵抗を低減させる技術が開示されている。しかしながら、特許文献2は、ZnOにIII族元素などのドーピングは行っておらず、透明導電性膜としてのZnO膜に関連するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−183117号公報
【特許文献2】特開平5−82814号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】X.L. Chen et al, "Boron-doped zinc oxide thin films for large-area solar cells grown" Thin Solid Films 515(2007) pp.3753-3759
【非特許文献2】T. Minami et al, "Stability in a high humidity environment of TCO thin films deposited at low temperatures" Physica Status Solidi (a), 205,No2,255-260 (2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1、2にはZnO膜の経時安定性に関する記載はなく、非特許文献1、2においては、導電性ZnO膜の経時安定性に対するドーパント以外の不純物濃度については議論されていない。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、経時安定性の高い導電性ZnO膜を提供することを目的とするものである。また、本発明は経時安定性の高い導電性ZnO膜を備えた光電変換素子を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、導電性酸化亜鉛膜中のドーパント(B、Al、Ga、In)以外に含まれる不純物濃度に着目し、この不純物(H,C)濃度を一定値以下とすることにより導電性亜鉛膜の経時安定性が向上することを見いだし、本発明に至ったものである。
【0016】
本発明の第1の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に水素を含み、該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とするものである。
水素を含有しない導電性酸化亜鉛膜は、本発明の第1の導電性酸化亜鉛膜には含まれない。
【0017】
本発明の第2の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に炭素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であることを特徴とするものである。
炭素を含有しない導電性酸化亜鉛膜は、本発明の第2の導電性酸化亜鉛膜には含まれない。
【0018】
本発明の第3の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に炭素および水素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であり、かつ該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とするものである。
水素および炭素を含有しない導電性酸化亜鉛膜は、本発明の第3の導電性酸化亜鉛膜には含まれない。
【0019】
本発明の第1および第3の導電性酸化亜鉛膜において、前記水素の含有量は、1×1021 atoms/cm3以上であってもよい。
【0020】
本発明の第2および第3の導電性酸化亜鉛膜において、前記炭素の含有量は、1×1020atoms/cm3以上であってもよい。
【0021】
本発明の光電変換素子は、下部電極と光電変換層とバッファ層と透光性導電層とが積層されてなる光電変換素子において、
前記透光性導電層が、本発明の導電性酸化亜鉛膜であることを特徴とするものである。
【0022】
本発明の光電変換素子は、前記光電変換層の主成分が、
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることが好ましい。
また、前記バッファ層がCdSであることが好ましい。
【0023】
本発明の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法は、成膜室内に配された基板上に、有機金属化学気相蒸着法を用いて導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法であって、
前記基板の温度を400℃以上とし、
原料として、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)3,nは整数)と、ドーパントとなるIII族元素含有有機化合物と、水とを用いることを特徴とする。
【0024】
nは1または2であることが好ましくは、特にはジエチル亜鉛(Zn(CnH2n+1)2)が好ましい。
【0025】
前記III族元素含有有機化合物が、アルキルガリウム(Ga(CnH2n+1)3,nは整数)、アルキルアルミニウム(Al(CnH2n+1)3,nは整数)、アルキルインジウム(In(CnH2n+1)3,nは整数)のうちの少なくともいずれか1つであることが望ましい。
いずれの有機化合物においても、nは、1または2であることが好ましい。
【0026】
本明細書において、「透光性」とは、太陽光の透過率が70%以上であることを意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の第1の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に水素を含み、該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であるので、経時安定性に優れている。
【0028】
本発明の第2の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に炭素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であるので、経時安定性に優れている。
【0029】
本発明の第3の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に炭素および水素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であり、かつ該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であるので、経時安定性に優れている。
【0030】
本発明の導電性酸化亜鉛膜は、水素および/または炭素の含有量を一定値以下とすることにより、経時安定性に優れており、太陽電池などの光電変換素子、タッチパネルなどの電子デバイスの透明導電膜に好適であり、本発明の導電性酸化亜鉛膜を備えることにより経時安定性を向上させ、電子デバイスの信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法に用いられる一実施形態のMOCVD装置の概略構成を示す模式図
【図2】光電変換素子の製造工程および層構成を模式的に示す断面図
【図3】検証実験1における膜中炭素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図4】検証実験1における膜中水素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図5】検証実験2における膜中炭素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図6】検証実験2における膜中水素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図7】H2分解有無のサンプルのシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図8】検証実験4における膜中炭素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【図9】検証実験4における膜中水素濃度毎のシート抵抗値の経時変化を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。各図において、視認しやすくするため、各部の縮尺は適宜変更して示してある。
【0033】
「導電性酸化亜鉛膜」
本発明の第1の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に水素を含み、該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とする。
【0034】
本発明の第2の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に炭素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であることを特徴とする。
【0035】
本発明の第3の導電性酸化亜鉛膜は、B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、膜中に炭素および水素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であり、かつ該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とする。
【0036】
本発明の第1〜第3の導電性酸化亜鉛膜は、例えば有機金属化学気相蒸着法により成膜することができる。具体的には、基板温度、成膜時のガス等を調整することにより成膜することができる。
【0037】
本発明の導電性酸化亜鉛膜を成膜する第1の成膜方法としては、成膜室内に配された基板上に、有機金属化学気相蒸着法を用いて導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法であって、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)2、nは整数)と、ドーパントとなるIII族元素を含むIII族元素含有有機化合物と、水と、水素とを含むガスを成膜室に導入し、成膜室中において、基板の温度を400℃未満、より好ましくは300℃未満、さらに好ましくは200℃以下とした条件下で導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法が挙げられる。
【0038】
本発明の導電性酸化亜鉛膜を成膜する第2の成膜方法としては、成膜室内に配された基板上に、有機金属化学気相蒸着法を用いて導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法であって、原料として、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)3,nは整数)と、ドーパントとなるIII族元素含有有機化合物と、水とを用い、基板の温度を400℃以上とした条件下で導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法が挙げられる。
【0039】
図1は、上記成膜方法を実現する一実施形態の成膜装置(MOCVD装置)1の概略構成を示す模式図である。
【0040】
図1に示すように、MOCVD装置1は、成膜室2と、成膜室2内において基板10を保持する基板保持部20と、基板保持部20に保持される基板10上に反応ガスを吐出させるシャワーヘッド4と、成膜室2内のガスを排出させるための真空ポンプ5と、成膜室2内の圧力を検出する圧力計6と、シャワーヘッド4に接続されて成膜室2にガスを導入する複数のガス供給管31、32、33、34、35と、所定のガス供給管31、32、33に接続され、該ガス供給管から成膜室2内に導入されるガスの原料を個々に蓄える複数の原料槽41、42、43と、ガス供給管34に接続され、成膜室2内に導入される水素を蓄える水素ボンベ44と、キャリアガスを供給するキャリアガス供給部45を備えている。
【0041】
成膜室2内の圧力は圧力計6により検出され、成膜室内の圧力を一定にするように真空ポンプ5により排気が行われる。成膜時においては成膜室2内の圧力は10Torr(1.33×103Pa)以下であることが好ましい。
【0042】
基板保持部20は、基板10を保持するサセプタ21と、該サセプタ21を加熱するヒータ22とこれらを支持する支持部材23とにより構成され、サセプタ21上の基板は均熱保持される。
サセプタ21としては、基板10を均熱保持可能なものであれば特に制限されないが、成膜される膜の面内組成分布の改善のため、支持部材23を中心軸として回転可能であることが好ましい。面内組成を略均一できればサセプタ21の回転数は特に制限されないが、例えば30rpm程度が挙げられる。
ヒータ22としてはサセプタ21を面内温度分布が略均一となるように加熱可能であり、室温程度〜800℃の範囲で温度制御可能であれば特に制限されない。
【0043】
原料槽41は、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)2、nは整数)を蓄えている。特にはジエチル亜鉛Zn(C2H5)2が好ましい。
原料槽42は、ドーパントとなるIII族元素を含むIII族元素含有有機化合物を蓄えている。III族元素含有有機化合物としては、アルキルガリウム(Ga(CnH2n+1)3、nは整数)、アルキルアルミニウム(Al(CnH2n+1)3、nは整数)およびアルキルインジウム(In(CnH2n+1)3、nは整数)のうちの少なくともいずれか1つであることが好ましい。特には、トリエチルガリウム(Ga(C2H5)3)、トリメチルアルミニウム(Al(CH3)3)、およびトリメチルインジウム(In(CH3)3)のうちのいずれかであることが好ましい。
原料槽43は、水(H2O)を蓄えている。
【0044】
水素ボンベ44はガス供給管34に接続されて、水素ガスを供給するが、ガス供給管34の成膜室2に至る経路の途中に、水素ガスを水素原子に分解する水素分解機構としてのハロゲンランプ40が配置されている。
水素を成膜室2に導入する際には、水素ガス(水素分子)として成膜室に導入してもよいが、水素にハロゲンランプ40からの光を照射して、水素分子を水素原子に分解させて水素原子として成膜室2に導入することがより望ましい。
【0045】
ガス供給管31および32は、成膜室2に至る前に接続されて原料槽41、42からのガスは混合された状態で成膜室2に導入される。
原料が気体である場合はそのままガス供給管に流入させることができるが、液体である場合は、キャリアガス供給部45からキャリアガスをまず液体の原料槽内に流入させてバブリングすることにより気化させた後にガス供給管に流入させる。キャリアガスとしては、窒素ガス、アルゴンガス等が挙げられる。
【0046】
各供給管31〜35のガスの流量は、それぞれマスフローコントローラ(MFC)により管理調整される。成膜される膜の組成や物性、結晶構造は原料ガスの流量比、基板温度、圧力等によって変化するため、各ガスの流量や成膜室2内の圧力等を調整して成膜を実施すればよい。
【0047】
なお、成膜室2に供給された各ガスは、基板上にて反応して膜成長に寄与し、反応しなかったものは真空ポンプ60により強制排気される。
【0048】
なお、図1に示すMOCVD装置1においては、水素供給源として、水素ボンベ44を原料槽41〜43と並列的に備えるものとしたが、キャリアガス供給部45側に水素供給源を備え、水素をArあるいはN2等と混合してキャリアガスの一部として成膜室2に導入するようにしてもよい。
【0049】
MOCVD装置1を用いて導電性ZnO膜を成膜する第1の成膜方法の一例を説明する。
はじめに、基板10を用意し、MOCVD装置1の成膜室2のサセプタ21上に設置する。その後、サセプタ21をヒータ22により所定の温度になるように加熱して回転させる。基板10の温度は、400℃未満、好ましくは300℃未満、さらに好ましくは200℃以下とする。また、ZnO膜を気相成長させるには基板はある程度の温度に加熱する必要があり、60℃以上、好ましくは100℃以上とする。
【0050】
次に、原料槽41内のアルキル亜鉛と原料槽42内のIII族元素含有有機化合物をキャリアガスによりバブリングして気化させてそれぞれガス供給管31、32により導入し、両供給管31、32の接続により混合させた状態で成膜室内に導入する。原料槽43の水を、原料槽43にヒータを設け水蒸気化させて、あるいはキャリアガスによりバブリングして気化させて供給管33により成膜室2内に導入する。水素ボンベ44の水素を、ガス供給管34の途中に配置されているハロゲンランプ40による光照射により水素原子に分解し、水素原子として成膜室2に導入する。
【0051】
なお、基板温度が200℃以下である場合には、成膜室2において、水素の濃度がアルキル亜鉛に対して50倍以上の濃度となるように水素およびアルキル亜鉛の流量を調整する。
【0052】
成膜室2に導入されたガスはシャワーヘッド4の吐出口から、基板10上に供給される。
加熱された基板10上で原料が反応して導電性ZnO膜が成膜される。
【0053】
以上の第1の成膜方法により成膜される導電性ZnO膜は、膜中の水素含有量を3×1021 atoms/cm3以下とすることができ、炭素含有量を5×1020 atoms/cm3以下とすることができるので、経時安定性に優れている。
基板温度を200℃以下で成膜するとき、化合物半導体系の光電変換素子の透光性導電膜としての導電性ZnO膜の成膜に好適である。
他方、基板温度を200℃超−400℃未満で成膜するとき、より耐熱性の高い基板に対して導電性ZnO膜を形成する用途に適する。
【0054】
MOCVD装置1を用いて導電性ZnO膜を成膜する第2の成膜方法の一例を説明する。第2の成膜方法は、第1の成膜方法と異なる点のみを説明する。
第1の成膜方法においては、水素を含むガスを成膜室に導入するものとしたが、第2の成膜方法においては、水素を用いない。すなわち水素ボンベ44のバルブを閉としておく。また、第1の成膜方法では、基板温度を400℃未満としたが、第2の成膜方法では、基板温度を400℃以上とする。
他は、第1の成膜方法と同様とし、400℃以上に加熱された基板10上で原料が反応して導電性ZnO膜が成膜される。
【0055】
以上の第2の成膜方法により成膜された導電性ZnO膜は、膜中の水素含有量を3×1021 atoms/cm3以下とすることができ、炭素含有量を5×1020 atoms/cm3以下とすることができるので、経時安定性に優れている。
なお、MOCVD法により成膜する場合には、水素含有量を1×1021 atoms/cm3未満、炭素含有量を1×1020atoms/cm3未満とすることは極めて難しい。
【0056】
「光電変換素子」
図2を参照して、本発明の光電変換素子について説明する。図2は、光電変換素子の一実施形態である太陽電池50の製造工程を示す概略断面図である。
【0057】
光電変換素子である太陽電池50の構成を製造方法とともに説明する。
【0058】
図2(a)に示すように、基板51上に下部電極52、光電変換層53およびバッファ層54が順次形成された積層体を成膜基板10とし、この成膜基板10上、すなわちバッファ層54上に、例えば図1に示したMOCVD装置1を用いた上述の第1の成膜方法により、透光性導電層55として導電性ZnO膜を成膜する。
なお、バッファ層54上への導電性ZnO膜の成膜に際しては、基板10の温度が200℃以下となるように制御する必要がある。
【0059】
基板51上への下部電極52、光電変換層53、バッファ層54の形成方法は、公知の方法により行えばよく、液相、気相等、各層の形成に適するいかなる方法を用いてもよい。
【0060】
その後、図2(b)に示すように、透光性導電層55上に集電電極58を形成することにより太陽電池50を製造する。
【0061】
図2(b)に示す太陽電池20は、基板51上に、下部電極52、光電変換層53、バッファ層54、透光性導電層55として導電性ZnO膜、および集電電極58が順次形成されてなるものである。
【0062】
太陽電池50は、化合物半導体からなる光電変換層53を備えた太陽電池であり、図2においては、1セルの太陽電池を示しているが、集積型の太陽電池においても、透光性導電層として本発明の導電性ZnO膜は適用可能である。
【0063】
太陽電池50の基板51からバッファ層54について簡単に説明する。
【0064】
(基板)
太陽電池用の基板51としては、ガラス基板、表面に絶縁膜が成膜されたステンレス等の金属基板、Alを主成分とするAl基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl材が複合された複合基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、Feを主成分とするFe材の少なくとも一方の面側にAlを主成分とするAl膜が成膜された基材の少なくとも一方の面側にAl2O3を主成分とする陽極酸化膜が形成された陽極酸化基板、およびポリイミド等の樹脂基板等が挙げられる。
【0065】
連続工程による生産が可能であることから、表面に絶縁膜が成膜された金属基板、陽極酸化基板、および樹脂基板等の可撓性基板が好ましい。
【0066】
(下部電極)
下部電極(裏面電極)52の主成分としては特に制限されず、Mo,Cr,W,およびこれらの組合せが好ましく、Mo等が特に好ましい。下部電極(裏面電極)52の膜厚は制限されず、200〜1000nm程度が好ましい。
【0067】
(光電変換層)
光電変換層53は、光吸収により電荷を生じる層である。光電変換層53の主成分としては特に制限されず、高光電変換効率が得られることから、少なくとも1種のカルコパイライト構造の化合物半導体である場合に好適に適用することができる。カルコパイライト構造の化合物半導体としては、Ib族元素とIIIb族元素とVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることがより好ましい。
【0068】
上記化合物半導体としては、CuAlS2,CuGaS2,CuInS2,CuAlSe2,CuGaSe2,AgAlS2,AgGaS2,AgInS2,AgAlSe2,AgGaSe2,AgInSe2,AgAlTe2,AgGaTe2,AgInTe2,Cu(In,Al)Se2,Cu(In,Ga)(S,Se)2,Cu1−zIn1−xGaxSe2−ySy(式中、0≦x≦1,0≦y≦2,0≦z≦1)(CI(G)S),Ag(In,Ga)Se2,およびAg(In,Ga)(S,Se)2等が挙げられる。
光電変換層53の膜厚は特に制限されず、1.0〜3.0μmが好ましく、1.5〜2.0μmが特に好ましい。
【0069】
(バッファ層)
バッファ層54としては特に制限されないが、Cd,Zn,Sn,Inからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属元素を含む金属硫化物を含むことが好ましい。
バッファ層54の膜厚は特に制限されず、10nm〜2μmが好ましく、15〜200nmがより好ましい。
【0070】
(透光性導電層)
透光性導電層(透明電極)55は、光を取り込むと共に、下部電極52と対になって、光電変換層53で生成された電荷が流れる電極として機能する層である。本実施形態において、透光性導電層55が、上記の本発明の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法により成膜される。
【0071】
なお、太陽電池としては、その他、バッファ層と透光性導電層との間に窓層(保護層)を備えていてもよい。
また、必要に応じてカバーガラス、保護フィルム等が取り付けられている。
【0072】
なお、本発明の製造方法で作製される光電変換素子は、太陽電池のみならずCCD等の他の用途にも適用可能である。
【実施例1】
【0073】
本発明の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法について検証を行った結果を説明する。
【0074】
(検証実験1)
図1に示すMOCVD装置1を用い、SLG(ソーダライムガラス)基板上に導電性ZnO膜を成膜した。原料ガスとしてジエチル亜鉛(100μmol/min)、水蒸気(700μmol/min)、トリエチルガリウム(10μmol/min)を使用し、キャリアガスとして窒素を使用した。成膜圧力は10Torrとし、成膜する膜厚は500nmとした。異なる基板温度(200℃、300℃、400℃、500℃)の条件下でそれぞれ導電性ZnO膜(サンプル1a〜1d)を成膜した。
【0075】
サンプル1a〜1dについて、膜中の不純物濃度(炭素、水素)をSIMS(2次イオン質量分析)により測定した。
各サンプルの成膜温度と、不純物濃度の関係を表1に示す。
【表1】
【0076】
表1に示されるように成膜温度が高いサンプルほど膜中に含まれる炭素、水素濃度は低くなる傾向が得られた。
【0077】
また、各サンプル1a〜1dについての経時変化を調べた。室温保管したサンプルについて、5日毎にシート抵抗値を測定した。各サンプルについて、シート抵抗値を成膜直後の抵抗値で規格化したシート抵抗値の時間変化(経時変化)を図3および図4に示す。
【0078】
図3は、膜中の炭素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図3に示すように、膜中の炭素濃度が小さいほど経時劣化が少なく、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化が見られなかった。
【0079】
図4は、膜中の水素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図4に示すように、膜中の水素濃度が小さいほど経時劣化が少なく、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化が見られなかった。
【0080】
なお、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下の膜は400℃以上の基板温度で成膜したサンプル1c、1dであった。
すなわち、上記成膜方法においては、成膜温度を400℃以上にすることにより、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下および/または水素濃度3×1021 atoms/cm3以下の経時劣化の少ない安定した導電性酸化亜鉛膜を得ることができることが明らかになった。
【0081】
なお、上記においてトリエチルガリウムの代わりにトリメチルアルミニウムをドーパントとして用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0082】
(検証実験2)
検証実験1と同様に、MOCVD装置1を用い、SLG基板上に導電性ZnO膜を成膜した。原料ガスとしてジエチル亜鉛(100μmol/min)、水蒸気(700μmol/min)、トリエチルガリウム(10μmol/min)を使用し、水素を添加し、キャリアガスとしては窒素を使用した。検証実験1での成膜方法とは、原料ガスに水素が添加されている点で異なる。成膜圧力は10Torr、成膜する膜厚は500nmとした。基板温度200℃の条件下で、添加する水素量(mmol/min)を、0(水素添加なし)、1、5、10と変化させてそれぞれ導電性ZnO膜(サンプル2a〜2d)を成膜した。
【0083】
上記のようにして成膜したサンプル2a〜2dについて、膜中の不純物濃度(炭素、水素)をSIMSにより測定した。
各サンプルの成膜時の水素添加量と、不純物濃度の関係を表2に示す。
【表2】
【0084】
表2に示されるように、水素を添加することにより、膜中の不純物濃度(水素、酸素)の濃度を低減することができ、成膜時の水素添加量が多いほど膜中の不純物濃度が低くなる傾向があることが明らかになった。
【0085】
また、検証実験1と同様に、各サンプル2a〜2dについての経時変化を調べた。室温保管したサンプルについて、5日毎にシート抵抗値を測定した。各サンプルについて、シート抵抗値を成膜直後の抵抗値で規格化したシート抵抗値の経時変化を図5および図6に示す。
【0086】
図5は、膜中の炭素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図5に示すように、膜中の炭素濃度が小さいほど経時劣化が少なく、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化が見られなかった。
【0087】
図6は、膜中の水素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図6に示すように、膜中の水素濃度が小さいほど経時劣化が少なく、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化が見られなかった。
【0088】
なお、炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下の膜は水素添加量が5mmol/min以上で成膜したサンプル2c、2dであった。200℃の基板温度の場合には、ジエチル亜鉛濃度が100μmol/minの時に、水素濃度を5mmol/min以上、すなわちジエチル亜鉛濃度に対する水素濃度を50倍以上とする必要があることが分かった。一方で、水素が1mmol/minであったサンプル2bの場合にも水素が添加されていない場合と比較して経時劣化を抑制する効果は十分に見られた。また、基板温度が200℃超である場合には、ジエチル亜鉛濃度に対する水素濃度が50倍よりも小さくても、経時劣化がほとんどない膜を得ることができると推測される。
【0089】
なお、トリエチルガリウムの代わりにトリメチルアルミニウムをドーパントとして用いた場合にも同様の結果が得られた。
【0090】
(検証実験3)
検証実験2と同様の成膜方法において、水素ガスの供給管(導入ライン)において、ハロゲンランプ40による光照射を行い、水素を水素原子に分解した場合(サンプル3a)と、水素を分解しない場合(サンプル3b)を作成した。このとき、基板温度は200℃、水素添加量は5mmol/minとした。
【0091】
各サンプル3a、3bについて、膜中の不純物濃度(炭素、水素)をSIMSにより測定した。
各サンプルについての不純物濃度を表3に示す。
【表3】
【0092】
表3に示されるように、水素ガスを水素原子に分解して成膜室に導入することで、水素原子に分解しない場合と比較して、より効率的に不純物を低減することができた。
【0093】
また、検証実験1、2と同様に、両サンプル3a、3bについての経時変化を調べた。室温保管したサンプルについて、5日毎にシート抵抗値を測定した。両サンプルについてシート抵抗値を成膜直後の抵抗値で規格化したシート抵抗値の経時変化を図7に示す。
【0094】
図7に示すようにH2分解したサンプル3aはH2分解しなかったサンプル3bよりも経時劣化が小さく、ほとんど劣化しなかった。これは、水素分解したサンプルにおいて不純物濃度が低いためと考えられる。
【0095】
なお、検証実験2、3については、水素を原料ガスとして成膜室中で混合する場合だけでなく、水素をキャリアガスとして予め原料ガスと混合する場合にも同様の結果が得られた。
【0096】
なお、検証実験1〜3において、MOCVD法で成膜する限りにおいては、原料ガスに炭化水素が含まれるため、成膜される導電性ZnO膜中の炭素濃度を1×1020 atoms/cm3未満、水素濃度を1×1021 atoms/cm3未満にすることは極めて難しいことが分かった。
【0097】
(検証実験4)
検証実験1〜3と異なり、スパッタ法を用いてSLG基板上に導電性ZnO膜(ZnO:Ga)を成膜した。通常のスパッタ法で成膜した場合、膜中に不純物(炭素、水素)が含まれることはないが、不純物濃度と経時安定性の関係を評価するため、炭素を不純物として加える場合には二酸化炭素ガスを、水素不純物として加える場合には水素ガスを成膜雰囲気中に加え、添加ガス量により不純物濃度を調整した。スパッタ時の成膜温度は室温とし、成膜する膜厚は500nmとした。添加する二酸化炭素、水素量を異ならせて複数のサンプル4a〜4eを成膜した。
【0098】
各サンプル4a〜4eについて、膜中の不純物濃度(炭素、水素)はSIMSにより測定した。
各サンプルの不純物濃度を表4に示す。
【表4】
【0099】
表4に示すように、スパッタ法によれば、膜中の炭素、水素濃度を別々に制御することが可能であり、炭素、水素のいずれか一方のみを含むサンプルにより、炭素濃度の経時安定性への影響、水素濃度の経時安定性への影響を調べることができる。
【0100】
検証実験1〜3と同様に、サンプル4a〜4cについての経時変化を調べた。各膜についての、シート抵抗値を成膜直後の抵抗値で規格化したシート抵抗値の経時変化を図8および図9に示す。
【0101】
図8は、サンプル4a〜4cについての経時変化を示すものであり、水素を含まない膜中の炭素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図8に示すように、水素を含まない膜においても、炭素濃度が5×1020 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化がないことが明らかになった。
【0102】
図9は、サンプル4c〜4eについての経時変化を示すものであり、炭素を含まない膜中の水素濃度毎による経時変化の違いを示すグラフである。
図9に示すように、炭素を含まない膜においても、水素濃度が3×1021 atoms/cm3以下のとき、ほとんど経時変化がないことが明らかになった。
【0103】
以上、検証実験1〜4により、水素および/または炭素濃度と導電性ZnO膜の経時安定性には相関があることが確認され、不純物濃度を規定値以下に保つことで、導電性ZnO膜の安定性を向上できることを見出した。
【0104】
(光電変換素子の変換効率)
MOCVD法により透光性導電膜を成膜した光電変換素子(CIGS太陽電池)の光電変換率の経時変化を測定した。
【0105】
ZnO膜の成膜用基板として、基板上に下部電極、光電変換層およびバッファ層が形成されてなるCIGS太陽電池用基板(CdS/CIGS/Mo/SLG)を用意し、このバッファ層(CdS)上に導電性ZnO膜を成膜した。原料ガスとして、ジエチル亜鉛、水蒸気、トリエチルガリウム、水素を使用し、基板温度を200℃とし、成膜する膜厚は500nmとした。
異なる複数の水素添加量で導電性ZnO膜を形成し、導電性ZnO膜上にそれぞれAl集電電極を取り付け、太陽電池(サンプル5a〜5d)を作製した。各サンプル5a〜5dの導電性ZnO膜の成膜方法は、それぞれ検証実験2のサンプル2a〜2dと同一の条件とした。
【0106】
4つの太陽電池サンプル5a〜5dについて、それぞれ高温高湿保持(85℃, 85%, 1000時間)前後の変換効率を測定した。
具体的には、市販の太陽電池用IV測定器を用い、AM1.5の擬似太陽光照射のもと、25℃にて太陽電池のIV測定を行い、変換効率を算出した。
表5に各サンプルについて、導電性ZnO膜中の不純物(炭素、水素)濃度および変換効率の低下率を示す。
【表5】
【0107】
表5に示すように、導電性ZnO膜中の不純物(炭素、水素)濃度が低いほど、CIGS太陽電池の劣化(変換効率の低下)が抑制されることがわかった。特には、導電性ZnO膜中の炭素濃度5×1020 atoms/cm3以下、水素濃度3×1021 atoms/cm3以下であるサンプル5c、5dは、変換効率の低下率抑制効果が高いことが明らかになった。
【符号の説明】
【0108】
1 MOCVD装置
2 成膜室
4 シャワーヘッド
5 真空ポンプ
6 圧力計
10 基板
20 基板保持部
31、32、33、34、35 ガス供給管
40 ハロゲンランプ
41、42、43 原料槽
44 水素ボンベ
45 キャリアガス供給部
50 光電変換素子(太陽電池)
51 基板
52 下部電極
53 光電変換層
54 バッファ層
55 透光性導電膜(導電性酸化亜鉛膜)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に水素を含み、該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とする導電性酸化亜鉛膜。
【請求項2】
B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に炭素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であることを特徴とする導電性酸化亜鉛膜。
【請求項3】
B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に炭素および水素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であり、かつ該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とする導電性酸化亜鉛膜。
【請求項4】
前記水素の含有量が、1×1021 atoms/cm3以上であることを特徴とする請求項1または3記載の導電性酸化亜鉛膜。
【請求項5】
前記炭素の含有量が、1×1020atoms/cm3以上であることを特徴とする請求項2または3記載の導電性酸化亜鉛膜。
【請求項6】
下部電極と光電変換層とバッファ層と透光性導電層とが積層されてなる光電変換素子において、
前記透光性導電層が、請求項1から5いずれか1項記載の導電性酸化亜鉛膜であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項7】
前記光電変換層の主成分が、
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることを特徴とする請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記バッファ層がCdSであることを特徴とする請求項6または7記載の光電変換素子。
【請求項9】
成膜室内に配された基板上に、有機金属化学気相蒸着法を用いて導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法であって、
前記基板の温度を400℃以上とし、
原料として、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)3,nは整数)と、ドーパントとなるIII族元素含有有機化合物と、水とを用いることを特徴とする導電性酸化亜鉛膜の成膜方法。
【請求項10】
前記III族元素含有有機化合物が、アルキルガリウム(Ga(CnH2n+1)3,nは整数)、アルキルアルミニウム(Al(CnH2n+1)3,nは整数)、アルキルインジウム(In(CnH2n+1)3,nは整数)のうちの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項9記載の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法。
【請求項1】
B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に水素を含み、該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とする導電性酸化亜鉛膜。
【請求項2】
B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に炭素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であることを特徴とする導電性酸化亜鉛膜。
【請求項3】
B、Al、GaおよびInからなる群から選ばれる1つ以上の元素をドーパントとして含む導電性酸化亜鉛膜であって、
膜中に炭素および水素を含み、該炭素の含有量が5×1020 atoms/cm3以下であり、かつ該水素の含有量が3×1021 atoms/cm3以下であることを特徴とする導電性酸化亜鉛膜。
【請求項4】
前記水素の含有量が、1×1021 atoms/cm3以上であることを特徴とする請求項1または3記載の導電性酸化亜鉛膜。
【請求項5】
前記炭素の含有量が、1×1020atoms/cm3以上であることを特徴とする請求項2または3記載の導電性酸化亜鉛膜。
【請求項6】
下部電極と光電変換層とバッファ層と透光性導電層とが積層されてなる光電変換素子において、
前記透光性導電層が、請求項1から5いずれか1項記載の導電性酸化亜鉛膜であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項7】
前記光電変換層の主成分が、
CuおよびAgからなる群より選択された少なくとも1種のIb族元素と、
Al,Ga及びInからなる群より選択された少なくとも1種のIIIb族元素と、
S,Se,及びTeからなる群から選択された少なくとも1種のVIb族元素とからなる少なくとも1種の化合物半導体であることを特徴とする請求項6に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記バッファ層がCdSであることを特徴とする請求項6または7記載の光電変換素子。
【請求項9】
成膜室内に配された基板上に、有機金属化学気相蒸着法を用いて導電性酸化亜鉛膜を成膜する方法であって、
前記基板の温度を400℃以上とし、
原料として、アルキル亜鉛(Zn(CnH2n+1)3,nは整数)と、ドーパントとなるIII族元素含有有機化合物と、水とを用いることを特徴とする導電性酸化亜鉛膜の成膜方法。
【請求項10】
前記III族元素含有有機化合物が、アルキルガリウム(Ga(CnH2n+1)3,nは整数)、アルキルアルミニウム(Al(CnH2n+1)3,nは整数)、アルキルインジウム(In(CnH2n+1)3,nは整数)のうちの少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項9記載の導電性酸化亜鉛膜の成膜方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2011−246787(P2011−246787A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123363(P2010−123363)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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