説明

局所露光方法

【課題】現像処理後のレジスト残膜の均一性を向上し、配線パターンの線幅及びピッチのばらつきを抑制する。
【解決手段】被処理基板Gに形成された感光膜を複数の大ブロックB1に分割し、前記大ブロックを複数の小ブロックB2に分割するステップと、前記大ブロック内の小ブロック毎に、段階的に異なる照射照度を設定するステップと、複数の発光素子Lに対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップと、前記感光膜を現像処理するステップと、前記小ブロック毎に、前記感光膜の残膜厚を測定し、前記小ブロックに設定された照度と残膜厚との相関データを得るステップと、前記相関データに基づき前記大ブロック毎に設定された感光膜の目標残膜厚から、各大ブロックに照射する必要照度を求めるステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光膜が形成された被処理基板に対し局所的に露光処理を行う局所露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、FPD(フラットパネルディスプレイ)の製造においては、いわゆるフォトリソグラフィ工程により回路パターンを形成することが行われている。
このフォトリソグラフィ工程では、特許文献1にも記載されている通り、ガラス基板等の被処理基板に所定の膜を成膜した後、フォトレジスト(以下、レジストと呼ぶ)が塗布され、レジスト中の溶剤を蒸発させる予備乾燥処理(減圧乾燥、及びプリベーク処理)によってレジスト膜(感光膜)が形成される。そして、回路パターンに対応して前記レジスト膜が露光され、これが現像処理され、パターン形成される。
【0003】
ところで、このようなフォトリソグラフィ工程にあっては、図10(a)に示すようにレジストパターンRに異なる膜厚(厚膜部R1と薄膜部R2)を持たせ、これを利用して複数回のエッチング処理を行うことによりフォトマスク数、及び工程数を低減することが可能である。尚、そのようなレジストパターンRは、1枚で光の透過率が異なる部分を有するハーフトーンマスクを用いるハーフ(ハーフトーン)露光処理によって得ることができる。
【0004】
このハーフ露光が適用されたレジストパターンRを用いた場合の回路パターン形成工程について図10(a)〜(e)を用いて具体的に説明する。
例えば、図10(a)において、ガラス基板G上に、ゲート電極200、絶縁層201、a−Si層(ノンドープアモルファスSi層)202aとn+a−Si層202b(リンドープアモルファスSi層)からなるSi層202、電極を形成するためのメタル層203が順に積層されている。
また、メタル層203上には、一様にレジスト膜が形成された後、減圧乾燥、及びプリベーク処理によりレジスト中の溶剤が蒸発され、その後、前記ハーフ露光処理、及び現像処理により、レジストパターンRが形成される。
【0005】
このレジストパターンR(厚膜部R1及び薄膜部R2)の形成後、図10(b)に示すように、このレジストパターンRをマスクとして、メタル層203のエッチング(1回目のエッチング)が行われる。
次いで、レジストパターンR全体に対し、プラズマ中でアッシング(灰化)処理が施される。これにより、図10(c)に示すように、膜厚が半分程度に減膜されたレジストパターンR3が得られる。
そして、図10(d)に示すように、このレジストパターンR3をマスクとして利用し、露出するメタル層203やSi層202に対するエッチング(2回目のエッチング)が行われ、最後に図10(e)に示すようにレジストR3を除去することにより回路パターンが得られる。
【0006】
しかしながら、前記のように厚膜R1と薄膜R2とが形成されたレジストパターンRを用いるハーフ露光処理にあっては、レジストパターンRの形成時に、その膜厚が基板面内で不均一の場合、形成するパターンの線幅やパターン間のピッチがばらつくという課題があった。
【0007】
即ち、図11(a)〜(e)を用いて具体的に説明すると、図11(a)は、レジストパターンRのうち、薄膜部R2の厚さt2が、図10(a)に示した厚さt1よりも厚く形成された場合を示している。
この場合において、図10に示した工程と同様に、メタル膜203のエッチング(図11(b))、レジストパターンR全体に対するアッシング処理(図11(c))が施される。
【0008】
ここで、図11(c)に示すように、膜厚が半分程度に減膜されたレジストパターンR3が得られるが、除去されるレジスト膜の厚さは、図10(c)の場合と同じであるため、図示する一対のレジストパターンR3間のピッチp2は、図10(c)に示すピッチp1よりも狭くなる。
したがって、その状態から、メタル膜203及びSi層202に対するエッチング(図11(d)、及びレジストパターンR3の除去(図11(e))を経て得られた回路パターンは、そのピッチp2が図10(e)に示すピッチp1よりも狭いものとなっていた(回路パターンの線幅が広くなっていた)。
【0009】
前記課題に対し、従来は、露光処理時に光を透過させるマスクパターン毎に、レジストパターンRにおける膜厚が所望値よりも厚く形成される所定部位を膜厚測定により特定し、その部位の露光感度を高くする手段がとられている。
即ち、露光処理前にレジスト膜を加熱して溶剤を蒸発させるプリベーク処理において、基板面内の加熱量に差異を持たせ、前記所定部位における露光感度を変化させることにより、現像処理後の残膜厚が調整(面内均一化)されている。
具体的には、プリベーク処理に用いるヒータを複数の領域に分割し、分割されたヒータを独立して駆動制御することによりエリア毎の温度調整が行われている。
更には、基板を支持するプロキシミティピンの高さ変更(ヒータと基板間の距離変更)により加熱温度の調整が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−158253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記のようにプリベークによる加熱処理によって残膜厚の調整を行う場合、分割されたヒータ面積は、ハードウエアの制約上、ある程度の大きさを確保する必要があるため、細かなエリアの加熱調整が出来ないという課題があった。
また、プロキシミティピンの高さによる加熱調整にあっては、ピン高さを変更する作業工数を要するため、生産効率が低下するという課題があった。
【0012】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、基板の被処理面内で細かく設定したエリア毎の露光量を容易に調整することができ、現像処理後のレジスト残膜の均一性を向上し、配線パターンの線幅及びピッチのばらつきを抑制することのできる局所露光方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記した課題を解決するために、本発明に係る局所露光方法は、被処理基板に形成された感光膜を複数の大ブロックに分割し、ライン状に配列された複数の発光素子の下方において、その配列方向に交差する方向に前記基板を相対的に移動させ、前記大ブロック毎に予め設定された照度に基づき、前記複数の発光素子を選択的に発光制御することによって、局所的に露光処理を施す局所露光方法であって、前記大ブロックを複数の小ブロックに分割するステップと、前記大ブロック内の小ブロック毎に、段階的に異なる照射照度を設定するステップと、前記複数の発光素子に対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップと、前記発光素子の照射により露光処理された感光膜を現像処理するステップと、前記現像処理がなされた小ブロック毎に、前記感光膜の残膜厚を測定し、前記小ブロックに設定された照度と残膜厚との相関データを得るステップと、前記相関データに基づき、前記大ブロック毎に設定された感光膜の目標残膜厚から、各大ブロックに照射する必要照度を求めるステップとを含むことに特徴を有する。
【0014】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る局所露光方法は、被処理基板に形成された感光膜を複数の大ブロックに分割し、ライン状に配列された複数の発光素子の下方において、その配列方向に交差する方向に前記基板を相対的に移動させ、前記大ブロック毎に予め設定された照度に基づき、前記複数の発光素子を選択的に発光制御することによって、局所的に露光処理を施す局所露光方法であって、前記大ブロックを複数の小ブロックに分割するステップと、前記大ブロック内の小ブロック毎に、段階的に異なる照射照度を設定するステップと、前記複数の発光素子に対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップと、前記発光素子の照射により露光処理された感光膜を現像処理するステップと、前記現像処理がなされた小ブロック毎に、前記感光膜の現像後の線幅を測定し、前記小ブロックに設定された照度と線幅との相関データを得るステップと、前記相関データに基づき、前記大ブロック毎に設定された感光膜の目標線幅から、各大ブロックに照射する必要照度を求めるステップとを含むことに特徴を有する。
【0015】
尚、前記相関データに基づき、各大ブロックに照射する必要照度を求めるステップの後、被処理基板を前記複数の発光素子に対し相対的に移動させるステップと、前記基板上に形成された前記複数の大ブロックが、前記複数の発光素子の下方を相対的に移動する際、各大ブロックに対し、前記求められた必要照度に基づき前記複数の発光素子を選択的に発光制御するステップとを実行することが望ましい。
【0016】
このような方法によれば、被処理基板への露光処理を補正する手段として、膜厚(或いは線幅)をより調整したい任意の部位に対して局所的に露光処理が行われる。
この局所的な露光処理にあっては、予めレシピ内容を設定する測定モードにおいて、複数段階の照度と残膜厚(或いは線幅)との相関データを得ることができるため、膜厚(或いは線幅)制御の単位となるブロック毎に、目標膜厚(或いは目標線幅)から最適な必要照度を容易に設定することができる。
したがって、例えばハーフ露光処理においてレジスト膜に異なる膜厚(厚膜部と薄膜部)を持たせる場合であっても(即ち薄膜部のように薄い膜厚であっても)、現像処理後のレジスト膜厚を調整し均一にすることができる。その結果、配線パターンの線幅及びピッチのばらつきを抑制することができる。
また、前記相関データをデータベースとして保持することにより、マスクパターンの変更により目標膜厚(或いは目標線幅)が変化しても、前記相関データに基づき必要照度を容易に得ることができる。
【0017】
尚、前記複数の発光素子に対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップにおいて、前記小ブロック毎に、1つまたは複数の発光素子を発光制御し、前記設定された照度で照射することが望ましい。
このように1つの小ブロックに対し1つの発光素子の発光制御により照射を行う場合には、基板面に最も多くの小ブロックを設定することができ、膜厚(或いは線幅)均一性の精度を高いものとすることができる。
また、1つの小ブロックに対し複数の発光素子の発光制御により照射を行う場合には、複数の発光素子の照射面積に応じた小ブロックを設定する必要があるため、1つの発光素子により対応する場合よりも基板面に設定される小ブロックの数が減少し、より短時間で各大ブロックにおける必要照度を得ることができる。
【0018】
また、前記複数の発光素子に対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップにおいて、前記発光素子から発光された光を、光拡散板を介して前記基板上の感光膜に対し放射することが望ましい。
このように発光素子から発光された光を、光拡散板を介し放射することによって、光は光拡散板によって適度に拡散され、隣接する発光素子の光をライン状に繋げて照射することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板の被処理面内で細かく設定したエリア毎の露光量を容易に調整することができ、現像処理後のレジスト残膜の均一性を向上し、配線パターンの線幅及びピッチのばらつきを抑制することのできる局所露光方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る一実施形態の全体概略構成を示す断面図である。
【図2】図2は、本発明に係る一実施形態の全体概略構成を示す平面図である。
【図3】図3は、フォトリソグラフィ工程における局所露光装置の配置を模式的に示す図である。
【図4】図4は、本発明に係る局所露光方法においてレシピ内容を設定する工程、及び通常の局所露光処理の工程を示すフローである。
【図5】図5は、本発明に係る局所露光方法において、被処理基板面を仮想的に複数の大ブロックと小ブロックとに分割するイメージを示す基板平面図である。
【図6】図6は、図5の小ブロックに割り当てられる照度の設定例を示す平面図である。
【図7】図7は、図6の小ブロックに割り当てられた照度に対する現像処理後の膜厚をグラフにしたものである。
【図8】図8は、本発明に係る局所露光方法において用いられるレシピの例を示す表である。
【図9】図9は、本発明に係る局所露光方法により実施される局所露光において、図5の大ブロックに設定された必要照度の例を示す平面図である。
【図10】図10(a)〜図10(e)は、ハーフ露光処理を用いた配線パターンの形成工程を説明するための断面図である。
【図11】図11(a)〜図11(e)は、ハーフ露光処理を用いた配線パターンの形成工程を示す図であって、図10の場合よりもレジスト膜厚が厚い場合を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の局所露光方法にかかる一実施形態を、図面に基づき説明する。図1は、本発明に係る局所露光方法が実施される局所露光装置1の概略構成を示す断面図、図2は、その平面図である。また、図3は、フォトリソグラフィ工程における局所露光装置1(AE)の配置を模式的に示す図である。
【0022】
図1、図2に示す局所露光装置1(AE)は、例えば図3に示すように、被処理基板をX方向に平流し搬送しながら一連のフォトリソグラフィ工程を行うユニット内に配置される。即ち、フォトリソグラフィ工程においては、被処理基板に感光膜とするレジスト液を塗布するレジスト塗布装置51(CT)と、減圧されたチャンバ内において基板上のレジスト膜(感光膜)を乾燥する減圧乾燥装置52(DP)とが配置される。更に、基板Gにレジスト膜を定着させるために加熱処理を行うプリベーク装置53(PRB)と、それを所定温度に冷却する冷却装置54(COL)と、レジスト膜に対し所定の回路パターンに露光する露光装置55(EXP)と、露光後のレジスト膜を現像処理する現像装置56(DEV)とが順に配置される。
【0023】
ここで、本発明に係る局所露光装置1(AE)は、例えば、図3に示すように、基板全体に対する露光処理を行う露光装置55(EXP)の後段に配置される。
このように配置された局所露光装置1にあっては、例えば、ポジ型レジストを使用する場合、複数枚の基板Gを連続的に処理する際に、全ての基板Gの所定領域において他の領域よりも配線パターン幅が広くパターン間ピッチが狭くなる場合に、前記所定領域に対する(減膜厚のための)局所露光が施される。
尚、以下の実施形態にあっては、ポジ型レジストの場合を例に説明するが、本発明に係る局所露光方法にあっては、ネガ型レジストの場合にも適用することができ、その場合には、レジスト残膜をより厚く残したい所定領域に対して局所露光が施される。
【0024】
局所露光装置1(AE)の構成について詳しく説明する。図1、図2に示すように局所露光装置1(AE)は、回転可能に敷設された複数のコロ20によって基板GをX方向に向かって搬送する基板搬送路2を具備する。
基板搬送路2は、図2に示すようにY方向に延びる円柱状のコロ20を複数有し、それら複数のコロ20は、X方向に所定の間隔をあけて、それぞれ回転可能に配置されている。また、複数のコロ20は、その回転軸21の回転がベルト22によって連動可能に設けられ、1つの回転軸21がモータ等のコロ駆動装置10に接続されている。
【0025】
また、局所露光装置1(AE)は、基板搬送路2の周りを覆うと共に基板Gに対する露光処理空間を形成するための箱状のチャンバ8を備える。
図示するようにチャンバ8の前部側壁には、Y方向に延びるスリット状の搬入口8aが設けられている。この搬入口8aを基板搬送路2上の基板Gが通過し、チャンバ8内に搬入されるようになされている。
また、チャンバ8の後部側壁には、基板搬送路2上の基板Gが通過可能なY方向に延びるスリット状の搬出口8bが設けられている。即ち、この搬出口8bを基板搬送路2上の基板Gが通過し、チャンバ8から搬出されるように構成されている。
【0026】
また、図示するように、チャンバ8内の基板搬送路2の上方には、基板Gに対し局所的な露光(UV光放射)を行うための光照射器3が配置されている。
この光照射器3は、光源4を遮蔽空間に収容する筐体5を備え、この筐体5の下面には光拡散板からなる光放射窓6が設けられている。即ち、光源4と被照射体である基板Gとの間に光放射窓6が配置されている。
【0027】
筐体5に収容された光源4は、基板幅方向(Y方向)に延設されたライン状光源4であって、このライン状光源4は、それぞれ所定波長(例えば、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(364nm)のいずれかに近い)UV光を発光する複数のUV−LED素子L1〜Ln(nは正の整数)が回路基板7上に直線状に配置されて構成されている。
光源4から放射された光は、光放射窓6によって適度に拡散されるため、隣接するUV−LED素子Lの光はライン状に繋がって下方に照射されるようになされている。
【0028】
また、光源4を構成する各UV−LED素子Lは、それぞれ発光駆動部9により、独立してその発光駆動が制御される。更には、各UV−LED素子Lに対し供給される順電流値をそれぞれ制御可能となされている。即ち、各UV−LED素子Lは、発光駆動部9によって、その供給電流に応じた発光の放射照度が可変となされている。
また、通常の露光処理の際には、隣接する複数(例えば5つ)のUV−LED素子Lが1つのグループ(発光制御グループGRと呼ぶ)とされ、そのグループ単位で発光駆動部9により発光制御がなされる。
尚、前記発光駆動部9は、コンピュータからなる制御部40によって、その駆動が制御される。
【0029】
また、図1に示すように、光照射器3は、昇降軸11によって下方から支持され、昇降軸11は、モータ等からなる昇降駆動部12によって、例えばボールねじ式構造により上下動可能に設けられている。即ち、光照射器3は、基板搬送路2を搬送される基板Gに対して、その照射位置の高さを可変とすることができる。昇降駆動部12は、制御部40によって制御される。
【0030】
また、チャンバ8内において、光照射器3の側方(図では上流側)には、光源4から放射され、光放射窓6を通過した光の照度(放射束)を検出するための照度センサ13が設けられている。この照度センサ13は、光放射窓6の下方位置に対して側方から進退可能な進退軸14の先端に設けられ、更に、進退軸14は、その進退駆動部15が支持軸16によって吊り下げられている。また、支持軸16は、水平移動駆動部17によって基板幅方向(Y方向)に移動可能に設けられており、これにより照度センサ13は、光放射窓6の下方において、任意の位置の照度を検出可能となされている。
尚、照度センサ13によって検出された信号は、コンピュータからなる制御部40に供給される。また、前記進退駆動部15及び水平移動駆動部17は、制御部40によって制御される。
【0031】
また、この局所露光装置1にあっては、例えばチャンバ8の搬入口8aの上流側に、基板搬送路2を搬送される基板Gの所定箇所(例えば先端)を検出するための基板検出センサ30が設けられ、その検出信号を制御部40に出力するようになされている。基板Gは、基板搬送路2上を所定速度(例えば50mm/sec)で搬送されるため、制御部40は基板Gの搬送位置を前記検出信号と、該検出信号を取得後の時間、及び基板搬送速度によって取得することができる。
【0032】
また、制御部40は、光源4を構成する各UV−LED素子Lの輝度、即ち、各素子Lに供給する電流値を所定のタイミングにおいて制御するための発光制御プログラムPを所定の記録領域に有する。
この発光制御プログラムPは、その実行時に用いるレシピのパラメータとして、基板Gの所定位置に対して放射すべき必要照度(発光制御グループGRに供給する電流値)、前記基板Gの所定位置に対し発光制御する発光制御グループGRを特定するための情報等が予め設定されている。
【0033】
ここで、局所露光装置1において実施される、制御部40に記憶されるレシピ内容(パラメータ)を求めるための工程(測定モードと呼ぶ)、並びに通常の局所露光工程の一連の動作について、図4を用いて説明する。
尚、前記測定モードにおいては、図1、図2に示すように、局所露光装置1と現像装置56(DEV)と膜厚測定装置57とが連携して作業が行われる。また、図4のフローにおいて、破線で囲むステップは、局所露光装置1以外での処理内容を示している。
【0034】
先ず、レジスト膜が形成された基板Gが露光装置55(EXP)に搬入され、所定のマスクパターンでの露光処理(ハーフ露光処理)が実施される(図4のステップSt1)。
ステップSt1での露光処理後、基板Gが局所露光装置1の基板搬送路2を搬送され、基板検出センサ30により検出されると、制御部40にその基板検出信号が供給される(図4のステップSt2)。
制御部40は、前記基板検出信号と基板搬送速度とに基づいて、基板Gの搬送位置を取得(検出)開始する(図4のステップSt3)。
【0035】
ここで、レシピ内容(パラメータ)が未設定の場合、制御部40の制御によりレシピ内容を設定するための測定モードが実施される(図4のステップSt4)。
この測定モードについて、図5乃至図7を用いて具体的に説明する。
測定モードにおいては、図5に示すように基板Gの被処理面(感光膜面)が複数の大ブロックB1(太線で区切られた領域)に仮想的に分割され、更に各大ブロックB1内の領域が複数(例えば25個)の小ブロックB2(鎖線で区切られた領域)に仮想的に分割される。
制御部40においては、各大ブロックB1の識別を座標値(例えば、B1(x1、y1)、B1(x2、y1)等)により行い、各小ブロックの識別は、その大ブロックB1内で定めた座標値(例えば、B2(x1−1、y1−1))により行う。
【0036】
前記大ブロックB1は、膜厚管理の最小の単位領域(目標膜厚が同じ領域)であって、測定モードではなく通常の局所露光工程を実施する際に、その領域内は均一の照度で照射がなされる。
また、前記小ブロックB2は、測定モードにおける照射制御の最小の単位領域であって、測定モードで各小ブロックB2に照射される照度は、他の小ブロックB2に照射される照度とはそれぞれ異なる設定となされる。
具体的には、図6に示すように各大ブロックB1の中の小ブロックB2は、0〜48mJ/cmの範囲で、所定間隔毎に異なる数字が割り振られる。図6では、25個の小ブロックB2のそれぞれに異なる照度が割り振られている。これにより、各小ブロックB2に対する露光量が照度に応じて異なるものとなり、現像処理後の膜厚には、前記照度に応じた差異が生じることになる。
このように測定モードにおいて複数の小ブロックB2に対しそれぞれ異なる照度で照射を行うのは、各大ブロックB1について、現像処理後の膜厚を所望値(目標膜厚)とするための最適な照度(以下、必要照度と呼ぶ)を求めるためである。即ち、測定モードにおいて現像処理後に目標膜厚に一致する残膜厚となった小ブロックB2を選択し、その小ブロックB2に対し照射された照度を必要照度とすればよい。
【0037】
また、本実施の形態にあっては、各小ブロックB2の大きさは、1つのUV−LED素子Lによる照射面積に対応するものとされ、測定モードにおいて各UV−LED素子Lの発光制御が独立して行われることによって、各小ブロックB2に対し、図6に示した設定照度での照射が行われる。このように1つの小ブロックB2に対し1つのUV−LED素子Lの発光制御により照射を行う場合には、基板面に最も多くの小ブロックB2を設定することができ、必要照度の精度を高くし、膜厚均一性を向上することができる。
したがって、制御部40は、測定モードにおいて、基板Gが光照射器3の下方を搬送される際、各UV−LED素子Lの下方を通過する各小ブロックB2に対し、図6に示す設定照度で各UV−LED素子Lにより照射がなされるよう発光駆動部9を制御する(図4のステップSt5)。
【0038】
ここで、ステップSt5での露光処理を終えた基板Gは、現像装置56(DEV)に搬入され、現像処理が施される(図4のステップSt6)。
そして、現像処理がなされた基板Gは、膜厚測定装置57に搬入され、各大ブロックB1の中の各小ブロックB2について、レジスト膜の残膜厚が測定される(図4のステップSt7)。この測定により、各大ブロックB1について、図7に示すような残膜厚と照度との相関グラフ(相関データ)が得られる(図4のステップSt8)。
即ち、図7は、横軸を照度(0〜48mJ/cm)、縦軸を残膜厚(Å)として、各照度(0,2,4,・・・,48mJ/cm)に対応する小ブロックB2の残膜厚をプロットした相関グラフの一例である。
【0039】
制御部40には、前記図7にグラフとして示した大ブロックB1毎の相関データがフィードバックされ、その記憶手段(図示せず)に例えば相関テーブルとして記憶される。
また、制御部40が記憶する図8のレシピテーブルTには、予め全ての大ブロックB1について、目標とする膜厚値(例えば、大ブロックB1(x1,y1)は7500Å、B1(x3,y1)は8000Å)がそれぞれ設定されており、制御部40は、その目標膜厚を前記相関データに当てはめることにより、全ての大ブロックB1について適切な必要照度を求める。
そして、全ての大ブロックB1について、必要照度が求められると、制御部40は、それら必要照度をレシピテーブルTに登録する(図4のステップSt9)。図8の例では、大ブロックB1(x1,y1)は0mJ/cm(即ち、補正照射の必要なし)、B1(x3,y1)は2mJ/cmが登録される。
【0040】
また、制御部40は、各大ブロックB1への照射に対応する複数(図では5個)のUV−LED素子Lを発光制御グループGRとして設定し、各発光制御グループGRを前記必要照度で発光させるために必要な順電流値を求め、レシピテーブルTに登録する。図8の例では、大ブロックB1(x1,y1)は発光制御グループGR5が対応し、0mAの電流値が設定され、B1(x3,y1)は発光制御グループGR5が対応し、4.1mAの電流値が設定される。
この順電流値の測定においては、昇降駆動部12により光照射器3が所定高さまで上昇移動され、前記進退駆動部15及び水平移動駆動部17により照度センサ13が光放射窓6の下方に移動される。ここで、例えば光放射窓6と照度センサ13との距離が、光放射窓6と基板G上面との距離に等しくなるよう調整され、発光制御単位となる制御グループGRの発光照度が、それぞれ照度センサ13により検出される。そして、照度センサ13により検出された照度の値が、その発光制御グループGRを発光させるべき照度となると、そのときの供給電流が測定され、駆動電流値としてレシピテーブルTに登録される(図4のステップSt10)。
【0041】
一方、図4のステップSt4において、既にレシピ内容が設定されている場合、制御部40は、通常の局所露光工程として、レシピテーブルTに基づきUV−LED素子Lの発光制御を行う(図4のステップSt11)。
即ち、図9に模式的に示すように、各大ブロックB1における必要照度はレシピに設定されているため、各発光制御グループGRの下方を基板G上の各大ブロックB1が通過するタイミングにおいて、各発光制御グループGRに対して、必要照度に対応する順電流の供給がなされる。例えば、図8のレシピテーブルTの例では、大ブロックB1(x2,y1)が通過するタイミングにおいて、発光制御グループGR5に対し7.5mAの順電流が供給され、B1(x3,y1)が通過するタイミングにおいて、発光制御グループGR5に対し4.1mAの電流が供給される。
尚、前記したように、本実施形態においては、5個のUV−LED素子Lを発光制御グループGRとして、各グループGRが1つの大ブロックB1に対応するものとしている。
【0042】
このようにして、基板Gが、光源4の下方を通過する際、全ての大ブロックB1に対しレシピに基づく必要照度での照射が行われ、局所露光処理が終了する。
尚、図3に示したように、この局所露光処理(AE)により、基板Gに対する露光処理が完了し、その露光後のレジスト膜が現像装置56(DEV)により現像処理される。
【0043】
以上のように、本発明に係る実施の形態によれば、基板Gへの露光処理を補正する手段として、膜厚をより薄くしたい任意の部位に対して局所的に露光処理が行われる。
この局所的な露光処理にあっては、予めレシピ内容を設定する測定モードにおいて、複数段階の照度と残膜厚との相関データを得ることができるため、膜厚制御の単位となる大ブロックB1毎に、目標残膜から最適な必要照度を容易に設定することができる。
したがって、例えばハーフ露光処理においてレジスト膜に異なる膜厚(厚膜部と薄膜部)を持たせる場合であっても(即ち薄膜部のように薄い膜厚であっても)、現像処理後のレジスト膜厚を調整し均一にすることができる。その結果、配線パターンの線幅及びピッチのばらつきを抑制することができる。
また、前記相関データをデータベースとして保持することにより、マスクパターンの変更により必要な減膜厚(目標膜厚)が変化しても、前記相関データに基づき必要照度を容易に得ることができる。
【0044】
尚、前記実施の形態においては、ハーフ露光処理後のレジスト残膜厚を均一にする場合を例に説明したが、本発明に係る局所露光方法にあっては、ハーフ露光処理に限らず適用することができる。例えば、ハーフ露光処理ではなく通常の露光処理を行う場合であっても、発明に係る局所露光方法を適用することによって、レジスト残膜厚を面内均一とすることができる。
また、測定モードにおいて、図4のステップSt7、St8のように、レジスト残膜厚を測定して残膜厚と照度との相関データを求めることに限らず、現像処理後のパターン線幅を測定してパターン線幅と照度との相関データを求め、その相関データに基づきレシピテーブルを作成してもよい。
また、前記実施形態においては、基板Gを平流し搬送しながら露光処理を行う場合を例に説明したが、本発明にあっては、その形態に限定されず、被処理基板をチャンバ内に静止した状態で保持し、保持した基板に対して露光処理を行う構成であってもよい。
その場合、ライン状光源を被処理基板に対して移動させるようにしてもよい(即ち、ライン状光源と被処理基板とが相対的に逆方向に移動する構成であればよい)。
【0045】
また、前記実施の形態にあっては、測定モードにおいて、1つの小ブロックB2に対し1つのUV−LED素子Lを発光制御し、それぞれ設定された照度で照射するようにしたが、本発明においては、それに限定されるものではない。
即ち、測定モードにおける最小の発光制御単位の大きさは限定されるものではなく、例えば1つの小ブロックB2に対し、互いに隣接する複数のUV−LED素子Lを発光制御し、設定された所定の照度で照射するようにしてもよい。
このように1つの小ブロックB2に対し複数のUV−LED素子Lの発光制御により照射を行う場合には、複数のUV−LED素子Lの照射面積に応じた小ブロックB2を設定する必要があるため、1つのUV−LED素子Lにより対応する場合よりも基板面に設定される小ブロックB2の数が減少し、より短時間で各大ブロックB1における必要照度を得ることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 局所露光装置
2 基板搬送路
3 光照射器
4 光源
9 発光駆動部
20 搬送コロ(基板搬送手段)
40 制御部
G ガラス基板(被処理基板)
L UV−LED素子(発光素子)
GR 発光制御グループ
T レシピテーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板に形成された感光膜を複数の大ブロックに分割し、ライン状に配列された複数の発光素子の下方において、その配列方向に交差する方向に前記基板を相対的に移動させ、前記大ブロック毎に予め設定された照度に基づき、前記複数の発光素子を選択的に発光制御することによって、局所的に露光処理を施す局所露光方法であって、
前記大ブロックを複数の小ブロックに分割するステップと、
前記大ブロック内の小ブロック毎に、段階的に異なる照射照度を設定するステップと、
前記複数の発光素子に対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップと、
前記発光素子の照射により露光処理された感光膜を現像処理するステップと、
前記現像処理がなされた小ブロック毎に、前記感光膜の残膜厚を測定し、前記小ブロックに設定された照度と残膜厚との相関データを得るステップと、
前記相関データに基づき、前記大ブロック毎に設定された感光膜の目標残膜厚から、各大ブロックに照射する必要照度を求めるステップとを含むことを特徴とする局所露光方法。
【請求項2】
被処理基板に形成された感光膜を複数の大ブロックに分割し、ライン状に配列された複数の発光素子の下方において、その配列方向に交差する方向に前記基板を相対的に移動させ、前記大ブロック毎に予め設定された照度に基づき、前記複数の発光素子を選択的に発光制御することによって、局所的に露光処理を施す局所露光方法であって、
前記大ブロックを複数の小ブロックに分割するステップと、
前記大ブロック内の小ブロック毎に、段階的に異なる照射照度を設定するステップと、
前記複数の発光素子に対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップと、
前記発光素子の照射により露光処理された感光膜を現像処理するステップと、
前記現像処理がなされた小ブロック毎に、前記感光膜の現像後の線幅を測定し、前記小ブロックに設定された照度と線幅との相関データを得るステップと、
前記相関データに基づき、前記大ブロック毎に設定された感光膜の目標線幅から、各大ブロックに照射する必要照度を求めるステップとを含むことを特徴とする局所露光方法。
【請求項3】
前記相関データに基づき、各大ブロックに照射する必要照度を求めるステップの後、
被処理基板を前記複数の発光素子に対し相対的に移動させるステップと、
前記基板上に形成された前記複数の大ブロックが、前記複数の発光素子の下方を相対的に移動する際、各大ブロックに対し、前記求められた必要照度に基づき前記複数の発光素子を選択的に発光制御するステップとを実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載された局所露光方法。
【請求項4】
前記複数の発光素子に対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップにおいて、
前記小ブロック毎に、1つまたは複数の発光素子を発光制御し、前記設定された照度で照射することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載された局所露光方法。
【請求項5】
前記複数の発光素子に対し相対的に移動する前記基板の感光膜に対し、前記小ブロック毎に設定された照射照度に基づき、前記発光素子を発光制御するステップにおいて、
前記発光素子から発光された光を、光拡散板を介して前記基板上の感光膜に対し放射することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載された局所露光方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−133163(P2012−133163A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285641(P2010−285641)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】