説明

層の厚さを制御するための方法および装置

スピンコーティング工程の前にまたはその間に、基板を熱的に、局所特定的に調整することによって、粘性の液体を基板(1)、たとえば半導体ウェハまたはデータ記憶媒体の表面にわたって分配するための方法および装置が示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、ここに引用により援用される米国出願第60/431,346号の優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般的に基板のスピンコーティングの分野に関し、特に基板上のコーティングの温度分布を制御することによって、コーティングの厚さ分布を制御するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
先行技術において、特に半導体製造の分野だけでなく、光学またはバイオテクノロジーの或る領域において公知のように、本質的に平坦な基板上での液体の均質な分布は、基板を、その表面によって与えられた平面に対して垂直な軸のまわりで回転(スピン)させることによって達成され得る。スピンする際に表面に粘性の液体を塗布することによって、遠心力は表面上で放射状に外側へと液体の分配に影響を及ぼす。このような「スピン」技術を用いて、たとえば半導体基板上のラッカー、樹脂、フォトレジストを分散させる。さらに、これは、樹脂、ラッカー、粘着剤等の実質的に均質な層を生じるために光データ記憶技術の生成において用いられる。特別な場合として、2つの半分のディスクの結合を必要とするすべての種類のDVDフォーマットの生成がある。
【0004】
このような分配方法のための標準的な工程は、
1) コーティングされるべき基板に液体を分配するステップであり、有利な初期の拡散を達成するために、このステップの間に次第にそれをゆっくりと回転させ、上記工程はさらに、
2) 液体を均質に分配するために高速で(典型的に最大12,000rpmの数百rpmで)ディスクをスピンさせるステップである。
【0005】
層の厚さは、粘性、温度、回転速度および回転時間等のパラメータに依存する。
【0006】
中心穴を有する基板について、スピンコーティングされた層の厚さの輪郭は、内部半径から外縁に向かってだんだん高くなる傾向があることを示している。これは、外側に流れる可能性のある液体材料が、中心穴に/中心穴に近接して、存在しないためである。このように材料がないことによって、小さな半径における厚さが減じられる。
【0007】
したがって、厚さ分布のばらつきは、標準のスピンコーティング工程によって最小のレベルにまで減じられない。最適化されたコーティングの状況を達成するために、スピンコーティング工程の間に余分の処置が必要とされる。
【0008】
さらに、中心穴を有さない基板に関しては、たとえば適用例を習得する際に、たとえばフォトレジストコーティングの厚さにとって重要な、傾斜した厚さ分布を達成することが難しい。
【0009】
したがって、スピン工程の際に、放射状の厚さ分布に影響を与える方法を有することが望ましい。放射状の厚さの液体の厚さへの依存は、スピン工程の物理的過程によって規定され、これは放射状に一定した液体の粘性では回避することはできない。したがって、本
発明の目的は、スピンする際に分配されるべき液体の粘性を制御するための方法を提供することである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
先行技術の説明
半導体の製造において、冷却または加熱チャックの使用が周知である。これらのチャックに、半導体基板、通常ウェハが締め付けられ、(加熱または冷却された)チャックとの熱接触によって、基板の温度は、特定の処理ステップの必要性に応じて調整される。しかしながら、このようなチャックは、基板の全領域にわたって均質に温度を調整しようとする。
【0011】
この原理の使用および続きは、米国特許第6,242,044 B1に示されている。この文書は、CDの温度を中心から縁部へと放射状に調整する方法を記載している。これは、CDを運ぶためにその上に装着されたプレートを有する中心回転軸を有する実施例において達成される。
【0012】
軸の底部のみが積極的に冷却され、熱伝導率によって、プレート上の温度勾配が形成される。この方法の欠点は以下のものである。すなわち、温度勾配は、チャックの材料および周囲温度等の環境の状態に依存する。さらに、このシステムは、安定した状態、すなわち熱勾配が発生しなければならない状態を達成するための時間を必要とする。
【0013】
さらに、ポリカーボネートは比較的良好な断熱材であるため、プラスチックの基板を介して表面に分配された液体を冷却および/または加熱することは非効率的である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の概要
スピンコーティング工程における液体の粘性に、特に中心穴を有するスピンコーティングされた基板(たとえば、DVD、CD、ブルー・レイ等の光ディスク)の樹脂層の厚さ分布に影響を及ぼすために、スピン工程の前にまたはその間に、基板のうち液体が分配される側に向けられた熱源によって、温度勾配が局所的に選択的に生成される。代わりに、冷却源を用いてこのような温度勾配を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
好ましい実施例の詳細な説明
本発明の一実施例は、ディスクの半径にわたって液体の粘性を変更するために、スピンする際にディスクの外部半径に向けられた高温(40−90℃の温度範囲)のガス流を含む。
【0016】
別の実施例において、高温ガス流は、好適な手段によって基板の複数の領域に向けられる。別の実施例では、液体の粘性およびそれによりスピンコーティングされた基板上の液体の厚さ分布を正確に制御するために、ガスの温度および/または流れを選択的に制御することができる。「ガス」は、単純な空気またはガス貯蔵器から与えられた浄化ガス等の最も広い方法で理解されるべきである。ガスの加熱は、抵抗加熱または他の技術的に好適な手段によって電気的に達成され得る。
【0017】
この熱調整は、本発明の別の実施例では、電磁放射源によって達成され得る。これは、本質的に可視のスペクトルまたはIRスペクトルを有するランプを含み得る。
【0018】
さらなる実施例において、本発明の熱源は、スピンする際に基板の異なる位置に有利に
向けることのできる複数のサブソースを含み得る。これは回転軸のまわりの本質的に円形の領域において温熱条件の制御をもたらす。技術的に、これは、たとえば加熱または冷却されたガスを基板のこのような領域に向ける複数のノズルによって達成され得る。別の種類としては、基板の異なる位置に向けるように配置されたIR放射器またはハロゲンランプ等の複数のランプを用いることが挙げられる。ガスノズルの場合、基板の熱調整は、ガス流および/またはガスの温度を調整することによって容易に達成することができる。ランプの場合、これは、それぞれのランプに分配された電力を調整することによって達成することができる。双方の場合につき、ノズルまたはランプの、基板の平面に対する角度は、温熱条件を微調整するためのさらなるパラメータである。
【0019】
本発明を実施するのに好適な装置は、回転可能な支持物、基板の表面上に液体を分散するための分配手段、および基板に対して基板の温熱条件に影響を及ぼすことができる位置で少なくとも1つの熱源を固定するための手段を含み得る。一実施例において、この固定手段は、熱源を有するカバーを含み、最終的に分配手段がそれに取付けられ得る。好ましい実施例において、熱源はアームに取付けられ、このアームは回転可能な支持物の少なくとも一部にわたって延在する。このアーム、カバーまたは一般的に、固定手段は、基板を支持物に装着するおよび基板を支持物から取外すために、基板/支持物の領域をきれいにするように可動であり得る。
【0020】
図面の詳細な説明
図1は支持物2上の基板1を示している。この基板は中心穴を有し、この中心穴は回転軸3のまわりでそれを中心に置くことができる。矢印は、支持物および基板の回転を示している。回転のための駆動手段は示されていない。回転の際に、過剰の液体が外側にスピンされ、遮蔽4および6は、環境をこのような過剰な液体から保護する。
【0021】
図2は、放射源10を備えた可動アーム11を有する図1の実施例を示している。アーム11の可動性は、矢印12によって示される。容易に理解することができるように、アームは、直線的に動かされ、水平にもしくは垂直に、または基板および支持物の領域をきれいにするいかなる他の好適な態様においても旋回され得る。これは、基板が装着されているまたはそれが支持物から取外されているときに特に必要であり得る。装着および取外し機構は示されていないが、これらは先行技術に従って組立てることができる。矢印13は、複数の熱的サブソースの効果的な方向を示している。
【0022】
本発明に従った装置における本発明の方法の適用例において、基板1は支持物2上の好適な手段によって配置されている。基板1は、半導体ウェハ、CD,DVD等のデータ記憶媒体またはいかなる本質的に平らな加工物であってもよい。好ましい実施例において、アーム11は分配手段と同様に熱源を運ぶため、アームを基板の上に置いた後で液体を分配することができる。このようにして、液体は基板1の表面に分散され、一方で最終的にゆっくりと回転される。液体を分散した後で、基板のスピンが開始され、スピンの開始と並行してまたはその直後に、熱調整が始まる。調整時間は、先行の実験によって規定することができ、または代わりに接触自由測定手段が熱調整の終わりを決定する。
【0023】
さらに、スピンコーティングされた基板の縁部での小滴の蓄積等のエッジ効果は、このような縁部において熱源を選択的に方向付けることによって回避することができる。
【0024】
基本的に、熱源は、液体の粘性に局所的に影響を与えて、基板の表面上で均質なまたは選択的に均質でない所望の分配が達成されるようにる。
【0025】
本発明を用いる別の方法において、ステップの順序は、基板が記載された方法で予熱されて、その後で液体が分配およびスピンされるというように変更してもよい。これは、た
とえば機械的、物質的または化学的拘束が先述の順序を許容しない適用例において有益であり得る。この場合、基板の熱容量は、液体の粘性が影響を及ぼすことができるまで熱勾配を保持するのに十分でなければならない。
【0026】
本発明の方法は、熱源、分配手段および回転可能な手段が結合される単一のプロセスステーションで実施され得る。しかしながら、熱調整、分配およびスピンのステップを複数のプロセスモジュールに分配することも有益であり得る。
【0027】
図3は、樹脂でのスピンコーティングの際に光学記憶媒体の外部領域に向けられた単一の熱源(熱風の流れ)の結果を示している。調整されていないサンプルと比較すると、層の均質性が大幅に向上したことがわかる。半径の関数として厚さを単調に増加する加熱されていない基板とは対照的に、部分的に加熱された基板の厚さは、約35−45mmの半径の最高点に達した後で低下する。基板の異なる領域の間に与えられた熱勾配は、約4℃でDVDの半分のディスクにラッカーを結合する場合、ほんの数度であった。粘性および他の環境的な条件に依存して、約10℃の熱勾配は大半の適用例にとって十分である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】基板を有する回転支持物の断面図である。
【図2】複数の熱源を有する基板上に延在するアームを有する本発明の一実施例である。
【図3】本発明に従った実験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面にわたって粘性の液体を分配するための方法であって、
基板を本質的に水平に支持物上に置くステップと、
粘性の液体を前記基板の表面に塗布するステップと、
当該液体を放射状に外側に分配するために当該基板を回転させるステップと、
特定の方法で局所的にその粘性に影響を及ぼすために、当該基板上の当該液体を熱的に調整するステップとを含む、方法。
【請求項2】
熱調整は、当該基板の表面の上に置かれた熱いまたは冷たい熱源によって行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱調整は、加熱または冷却ガスの流れによって行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
熱調整は、電磁放射源によって行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
放射源は、本質的に可視のスペクトルまたはIR放射器を有するランプである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
当該熱源は、少なくとも2つのサブソースを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
当該サブソースは、当該基板の半径に対して異なる位置に向けられる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
回転する基板上で液体を熱調整するための装置であって、
回転可能な支持物と、
液体を基板表面に分配するための分配手段と、
当該基板の上に配置された少なくとも1つの熱源のための固定手段とを含む、装置。
【請求項9】
当該固定手段は、当該支持物の少なくとも一部にわたって延在するカバーを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
固定手段は、支持物の少なくとも一部にわたって延在するアームとして構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
当該熱源は、少なくとも放射源、ランプ、IR放射器、加熱または冷却ガスの流れのうちの1つを含む、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
当該分配手段は、当該固定手段に機械的に取付けられる、請求項8に記載の装置。
【請求項13】
当該固定手段は、少なくとも当該基板の装着および取外しの際に、当該アームを除去するために基板および支持物に対して可動である、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
基板の表面にわたって粘性の液体を分配するための方法であって、
本質的に水平の支持物上で当該基板を回転させるステップと、
当該基板を熱的、局所特定的に調整するステップと、
前記基板の表面に液体を塗布するステップと、
当該液体が所望の分配に従って放射状に分配されるように、当該基板を回転させるステップとを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−508787(P2006−508787A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555946(P2004−555946)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/CH2003/000791
【国際公開番号】WO2004/050261
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(596013501)ユナキス・バルツェルス・アクチェンゲゼルシャフト (55)
【Fターム(参考)】