説明

差動入力段回路、差動入力段回路を備えた演算増幅器及び電圧レギュレータ回路

【課題】出力インピーダンスが大きい信号源を接続した場合でも大きなバイパスコンデンサを必要とせず、かつ電源電圧変動除去特性の良い差動入力段回路を提供する。
【解決手段】差動入力段回路を、差動入力部を構成し、ソースが結合されたトランジスタM1,M2と、トランジスタM1,M2とグランドとの間に接続された定電流源Icと、カレントミラー段を構成し、ソースが電源に接続されたトランジスタM3,M4と、トランジスタM3のドレーンにドレーンが接続され、トランジスタのドレーンにソースが接続され、ゲートが基準電圧源Vbiasに接続された、トランジスタM1と同一の導電型のトランジスタM5と、トランジスタM4のドレーンにドレーンが接続され、トランジスタM2のドレーンにソースが接続され、ゲートが基準電圧源Vbiasに接続された、トランジスタM2と同一の導電型のトランジスタM6と、で構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動入力段回路、差動入力段回路を備えた演算増幅器及び電圧レギュレータ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
差動入力段回路及びそれを備えた低ドロップアウトレギュレータとして、例えば特許文献1〜4に記載のものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図4は、従来の差動入力段回路の一例を示す。差動入力段回路は一般に入力インピーダンスができるだけ大きくなるように構成される。しかし、入力信号源の出力インピーダンスが極端に高いと、入力信号に影響を与える虞がある。例えば、電源Vddの電圧に揺れが生じたときに、この電圧の揺れが定電流源を構成するトランジスタM3,M4と、差動入力部を構成するトランジスタM1,M2とを接続するノードAにほぼ同じ大きさで伝わり、入力トランジスタM1,M2のゲート・ドレイン間容量を介して入力信号VIN1,VIN2に注入される。このとき入力トランジスタM1,M2の入力ノードをバイバスするバイパスコンデンサがあれば、入力トランジスタM1,M2のゲート・ドレイン間容量を介して注入された揺れだけが入力ノードに伝わることとなり、電源Vddの電圧揺れに伴う影響を小さくするのに有効である。しかし、バイパスコンデンサを設けることはLSIの面積を増大させることとなり、デメリットとなる。
【0004】
本発明は、上述した実情を考慮してなされたものであって、出力インピーダンスが大きい信号源を接続した場合でも、大きなバイパスコンデンサを必要とせず、かつ電源電圧変動除去特性の良い差動入力段回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、差動入力段回路が提供される。この差動入力段回路は、差動入力部を構成し、ソース同士が結合された第1、第2のトランジスタと、前記差動入力部の第1、第2のトランジスタとグランドとの間に接続された定電流源と、カレントミラー回路を構成し、ソースが電源に接続された第3、第4のトランジスタと、前記カレントミラー回路の第3のトランジスタのドレーンにドレーンが接続され、前記差動入力部の第1のトランジスタのドレーンにソースが接続され、ゲートが基準電圧源に接続された、前記第1のトランジスタと同一の導電型の第5のトランジスタと、前記カレントミラー回路の第4のトランジスタのドレーンにドレーンが接続され、前記差動入力部の第2のトランジスタのドレーンにソースが接続され、ゲートが前記基準電圧源に接続された、前記第2のトランジスタと同一の導電型の第6のトランジスタと、で構成されている。
【0006】
また、第2の態様において、第1の態様の差動入力段回路を有する演算増幅器が提供される。
【0007】
また、第3の態様において、第2の態様の演算増幅器をエラーアンプとして使用する電圧レギュレータ回路が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、出力インピーダンスが大きい信号源を接続した場合でも、大きなバイパスコンデンサを必要とせず、かつ電源電圧変動除去特性の良い差動入力段回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る差動入力段回路の回路図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る演算増幅器の回路図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る電圧レギュレータの回路図である。
【図4】従来の差動入力段回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
1.構成
図1は本発明の第1の実施形態に係る差動入力段回路の回路図である。本実施形態の差動入力段回路は、差動入力部を構成するN型電界効果トランジスタ(以下「N型トランジスタ」という)M1,M2と、カレントミラー回路を構成するP型電界効果トランジスタ(以下「P型トランジスタ」という)M3,M4と、差動入力部とカレントミラー回路との間に設けられ、変動抑制部を構成するN型トランジスタM5,M6と、差動入力部とグランドとの間に接続された定電流源Icとから構成されている。
【0011】
N型トランジスタM1,M2は差動入力部の入力トランジスタである。N型トランジスタM1,M2は、ソースが定電流源Icに接続され、ゲートに入力信号VIN1,VIN2が入力される。
【0012】
P型トランジスタM3,M4は、ソースが電源Vddに接続され、ゲート同士が接続され、このゲート同士の接続ノードがP型トランジスタM3のドレインに接続され、カレントミラー回路を構成している。
【0013】
N型トランジスタM5,M6は、ソースがN型トランジスタM1,M2のドレインに接続され、ドレインがN型トランジスタM3,M4のドレインに接続され、ゲート同士が接続され、このゲート同士の接続ノードが基準電圧Vbiasに接続されている。
【0014】
2.動作
本実施形態の差動入力段回路は、図4に示す従来の差動入力段回路にトランジスタM5,M6を追加した構成を有する。この構成により、電源Vddの電圧が揺れた場合、ノードAはこの電圧の揺れとほぼ同じ大きさで揺れるが、ノードBの揺れは抑圧される。次式は、MOSトランジスタの電流式である。

Id=μ・Cox・W/L/2・(Vgs - Vth)2・(1+λVds)

ここで、Idはドレイン電流、μ・Cox・W/Lは利得係数、Vgsはゲート・ソース間電圧、Vthは閾値電圧、λはチャネル長変長係数、Vdsはドレイン・ソース間電圧である。この式からわかるように、IdはVgsの変化に対して二乗で変化する。換言すれば、一定の電流を流した時にはVgsの変化はきわめて小さい。また、λが小さい時にはVdsの変化に対してIdの変化が小さい。これらのことから、電源電圧Vddが揺れた時にノードAは電源とほぼ同じ大きさで揺れるが、ノードBの揺れは抑圧されることがわかる。
【0015】
トランジスタM5、M6のゲートに対する基準電圧Vbiasは、電源電圧Vddが揺れても揺れないような定電圧源から持ってくる必要がある。ローノイズLDO(低ドロップアウト電圧レギュレータ)においては、この電圧源としてローパスフィルタを通す前の比較的出力インピーダンスの低い電圧源を使用することが好ましい。ただし、その電圧の実現方法は様々であり、これに限定されるものではない。
【0016】
3.まとめ
本実施形態では、差動入力段回路を、差動入力部を構成し、ソースが結合された第1、第2のトランジスタM1,M2と、差動入力部の第1、第2のトランジスタM1,M2とグランドとの間に接続された定電流源Icと、カレントミラー回路を構成し、ソースが電源に接続された第3、第4のトランジスタM3,M4と、カレントミラー回路の第3のトランジスタM3のドレーンにドレーンが接続され、差動入力部の第1のトランジスタのドレーンにソースが接続され、ゲートが基準電圧源Vbiasに接続された、第1のトランジスタM1と同一の導電型の第5のトランジスタM5と、カレントミラー回路の第4のトランジスタM4のドレーンにドレーンが接続され、差動入力部の第2のトランジスタM2のドレーンにソースが接続され、ゲートが基準電圧源Vbiasに接続された、第2のトランジスタM2と同一の導電型の第6のトランジスタM6と、で構成している。
【0017】
これにより、出力インピーダンスが大きい信号源を接続した場合でも、大きなバイパスコンデンサを必要とせず、かつ電源電圧変動除去特性の良い差動入力段回路を提供することができる。
【0018】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施の形態について説明する。図2は、第2の実施形態に係る演算増幅器の回路図である。この演算増幅器は、第1の実施の形態とほぼ同一の差動入力段回路を有している。この差動入力段回路においては、定電流源はN型MOSトランジスタM7により構成されている。トランジスタM7は、ソースがグランドに接続され、ドレインがトランジスタM1、M2のソースの接続ノードに接続され、ゲートが第2基準電圧Vbias2に接続され、定電流源を構成している。
【0019】
また、演算増幅器は、電源Vddとグランドとの間に、P型トランジスタM8とN型トランジスタM9とを有している。
【0020】
P型トランジスタM8は、ソースが電源Vddに接続され、ドレインがN型トランジスタM9のドレインに接続され、ゲートが差動入力段回路のN型トランジスタM6のドレインとP型トランジスタM4のドレインとの接続ノードに接続されている。この接続ノードと、P型トランジスタM8のドレインとの間には、P型トランジスタM8のゲートとドレインとの間をバイパスする抵抗R1及びコンデンサC1が直列に接続されている。
【0021】
N型トランジスタM9は、ソースがグランドに接続され、ゲートが上記第2基準電圧Vbias2に接続され、定電流源を構成している。
【0022】
P型トランジスタM8のドレインとN型トランジスタM9のドレインとの接続ノードから出力電圧Voutが出力される。
【0023】
このような構成の演算増幅器においては、差動入力段回路が動作したときに、P型トランジスタM4のドレイン電圧によりP型トランジスタM8が制御され、P型トランジスタM8のドレイン電圧がVoutとして出力される。
【0024】
第2の実施の形態の演算増幅器によれば、差動入力段回路において、第1の実施の形態と同様の効果が得られることとなる。
【0025】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施の形態について説明する。図3は、第3の実施形態に係る電圧レギュレータの回路図である。この電圧レギュレータは、ローノイズ出力を意図して構成されている。この電圧レギュレータでは、AMP3の出力にデバイスに起因するノイズが重畳しており、このノイズを後段のフィルタ回路10でカットするようになっている。フィルタ回路10は、例えば1/fノイズのようなノイズをカットするものであり、カットオフ周波数ができるだけ低いローパスフィルタで構成するのが望ましい。しかし、このようなカットオフ周波数の低いフィルタ回路10を簡易な回路で構成した場合、その出力インピーダンスが非常に大きくなる。すなわち、AMP4の入力信号源のインピーダンスが高くなることがある。このような場合に、AMP4を第1の実施形態の差動入力段回路を利用して構成することにより、あるいは第2の実施の形態の演算増幅器をエラーアンプとして利用して構成することにより、電源の揺れが発生した場合でも、その揺れが信号に伝播して重畳してしまうという不具合を解消することができる。
【符号の説明】
【0026】
4 AMP
10 フィルタ回路
M1,M2 N型トランジスタ(第1、第2トランジスタ)
M3,M4 P型トランジスタ(第3、第4トランジスタ)
M5,M6 N型トランジスタ(第5、第6トランジスタ)
Ic 定電流源
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】特開2009−053783号公報
【特許文献2】特開2007−249712号公報
【特許文献3】特開2002−157031号公報
【特許文献4】特登4236586号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動入力部を構成し、ソース同士が結合された第1、第2のトランジスタと、
前記差動入力部の第1、第2のトランジスタとグランドとの間に接続された定電流源と、
カレントミラー回路を構成し、ソースが電源に接続された第3、第4のトランジスタと、
前記カレントミラー回路の第3のトランジスタのドレーンにドレーンが接続され、前記差動入力部の第1のトランジスタのドレーンにソースが接続され、ゲートが基準電圧源に接続された、前記第1のトランジスタと同一の導電型の第5のトランジスタと、
前記カレントミラー回路の第4のトランジスタのドレーンにドレーンが接続され、前記差動入力部の第2のトランジスタのドレーンにソースが接続され、ゲートが前記基準電圧源に接続された、前記第2のトランジスタと同一の導電型の第6のトランジスタと、
で構成された差動入力段回路。
【請求項2】
請求項1に記載の差動入力段回路を有する演算増幅器。
【請求項3】
請求項2に記載の演算増幅器をエラーアンプとして有する電圧レギュレータ回路。
【請求項4】
請求項3に記載の電圧レギュレータ回路であって、
前記差動入力部の入力側にローパスフィルタを有する電圧レギュレータ回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−155488(P2011−155488A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15674(P2010−15674)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】