説明

帯電部材、プロセスカートリッジおよび電子写真装置

【課題】長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが表面に固着しにくく、よってDC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電および画像出力が可能な帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供する。
【解決手段】支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、および、該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電部材において、帯電部材の表面層が、フッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電部材、ならびに、帯電部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子写真感光体の表面を帯電する方式の1つとして、接触帯電方式が実用化されている。
【0003】
接触帯電方式は、電子写真感光体に接触配置された帯電部材に電圧を印加し、該帯電部材と該電子写真感光体との間の当接部近傍で微少な放電をさせることによって、該電子写真感光体の表面を帯電する方式である。
【0004】
電子写真感光体の表面を帯電するための帯電部材としては、電子写真感光体と帯電部材との当接ニップを十分に確保する観点から、支持体および該支持体上に設けられた弾性層(導電性弾性層)を有するものが一般的である。
【0005】
また、弾性層(導電性弾性層)は、低分子量成分を比較的多量に含むことが多いため、この低分子量成分がブリードアウトし、電子写真感光体の表面を汚染することを抑制するために、導電性弾性層上には、これとは別の、導電性弾性層に比べて弾性率の小さい表面層を設けることもよく行われている。
【0006】
また、帯電部材の形状としては、ローラー形状が一般的である。以下、ローラー形状の帯電部材を「帯電ローラー」ともいう。
【0007】
また、接触帯電方式の中でも広く普及している方式は、直流電圧に交流電圧を重畳した電圧を帯電部材に印加する方式(以下「AC+DC接触帯電方式」ともいう。)である。AC+DC接触帯電方式の場合、交流電圧には、帯電開始電圧の2倍以上のピーク間電圧を持つ電圧が用いられる。
【0008】
AC+DC接触帯電方式は、交流電圧を用いることにより、帯電均一性の高い安定した帯電を行える方式であるが、交流電圧源を使用する分、直流電圧のみの電圧を帯電部材に印加する方式(以下「DC接触帯電方式」ともいう。)に比べて、帯電装置、電子写真装置の大型化、コストアップを招いてしまう。
すなわち、DC接触帯電方式は、AC+DC接触帯電方式に比べて、帯電装置、電子写真装置の小型化、コストダウンの点で優れた帯電方式である。
【0009】
なお、特許文献1には、動摩擦係数が0.4以下であり、表面自由エネルギーが35dyn/cm以下である転写部材が開示されている。
【特許文献1】特開2003−107927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、DC接触帯電方式は、交流電圧による帯電均一性向上効果が無いため、帯電部材の表面の汚れ(トナーやトナーに用いられる外添剤など)や、帯電部材自体の電気抵抗の不均一性が、出力画像に現れやすい。
特に、DC接触帯電方式の場合、繰り返し使用により帯電部材の表面にトナーやトナーに用いられる外添剤などが不均一に強く付着(固着)すると、高温高湿(30℃/80%RH)環境下、ハーフトーン画像を出力した際に、その固着部分が過帯電や帯電不良を引き起こすことがある。
【0011】
本発明の目的は、長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが表面に固着しにくく、よってDC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電および画像出力が可能な帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、および、該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電部材において、該表面層が、フッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有することを特徴とする帯電部材である。
また、本発明は、上記帯電部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが表面に固着しにくく、よってDC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電および画像出力が可能な帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の帯電部材は、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、および、該導電性弾性層上に形成された表面層を有するものである。この「表面層」とは、帯電部材が有する層のうち、帯電部材の最表面に位置する層を意味する。
【0015】
本発明の帯電部材の最も簡単な構成は、該支持体上に導電性弾性層および表面層の2層を設けた構成であるが、支持体と導電性弾性層との間や導電性弾性層と表面層との間に別の層を1つまたは2つ以上設けてもよい。
【0016】
図1に、本発明の帯電部材の構成の一例を示す。図1中、101は支持体であり、102は導電性弾性層であり、103は表面層である。
【0017】
帯電部材の支持体としては、導電性を有していればよく(導電性支持体)、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルなどの金属性(合金製)の支持体を用いることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理などの表面処理を施してもよい。
【0018】
導電性弾性層には、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性体を1種または2種以上用いることができる。
【0019】
ゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴムおよびアルキルエーテルゴムなどが挙げられる。
【0020】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマーおよびオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製「ラバロン」、クラレ(株)製「セプトンコンパウンド」などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の「サーモラン」、三井石油化学工業(株)社製の「ミラストマー」、住友化学工業(株)社製の「住友TPE」およびアドバンストエラストマーシステムズ社製の「サントプレーン」などが挙げられる。
【0021】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗は、導電剤の種類および使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗の好適な範囲は10Ω以上10Ω以下であり、より好適な範囲は10Ω以上10Ω以下である。
【0022】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。
【0023】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムおよび変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩が挙げられる。第四級アンモニウム塩として、具体的には、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩およびハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩など)などが挙げられる。
【0024】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩および高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩が挙げられる。
【0025】
帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステルおよび多価アルコール脂肪酸エステルなどの非イオン性帯電防止剤などが挙げられる。
【0026】
電解質としては、例えば、周期律表第1族の金属(LiやNaやKなど)の塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩として、具体的には、LiCFSO、NaClO、LiAsF、LiBF、NaSCN、KSCNおよびNaClなどが挙げられる。
【0027】
また、導電性弾性層用の導電剤として、周期律表第2族の金属(CaやBaなど)の塩(Ca(ClOなど)やこれから誘導される帯電防止剤が、イソシアネート(一級アミノ基や二級アミノ基など)と反応可能な活性水素を有する基(水酸基やカルボキシル基など)を1つ以上持ったものを用いることもできる。また、これらと多価アルコール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなど)もしくはその誘導体との錯体や、これらとモノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)との錯体などのイオン導電性導電剤を用いることもできる。
【0028】
また、導電性弾性層用の導電剤として、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、および、熱分解カーボンなどの導電性のカーボンを用いることもできる。ゴム用カーボンとして、具体的には、Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)、Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Rein Forcing Furnace(SRF:中補強性)、Fine Thermal(FT:微粒熱分解)およびMedium Thermal(MT:中粒熱分解)などの各ゴム用カーボンが挙げられる。
【0029】
また、導電性弾性層用の導電剤として、天然グラファイトおよび人造グラファイトなどのグラファイトを用いることもできる。
【0030】
また、導電性弾性層用の導電剤として、酸化スズ、酸化チタンおよび酸化亜鉛などの金属酸化物や、ニッケル、銅、銀およびゲルマニウムなどの金属を用いることもできる。
また、導電性弾性層用の導電剤として、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリアセチレンなどの導電性ポリマーを用いることもできる。
【0031】
また、導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウムおよび硫酸アルミニウムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤などが挙げられる。
【0032】
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーCで70度以上であることが好ましく、特には73度以上であることがより好ましい。
本発明において、アスカーC硬度の測定は、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0033】
また、電子写真感光体との当接ニップを十分に確保するために設けた導電性弾性層の機能を十分に発揮させる観点から、帯電部材の表面層の弾性率は2000MPa以下であることが好ましい。一方、一般的に、層の弾性率は小さくなるほど架橋密度が小さくなる傾向にあるため、帯電部材の表面にブリードアウトした低分子量成分による電子写真感光体の表面の汚染を抑制する観点から、帯電部材の表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
【0034】
また、表面層の層厚は厚いほど低分子量成分のブリードアウトの抑制する効果が大きくなる傾向にあるが、一方、帯電部材の帯電能が低下する傾向にあるため、表面層の層厚は0.1μm以上1.0μm以下であることが好ましく、特には0.2μm以上0.6μm以下であることがより好ましい。
【0035】
また、帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制する観点から、帯電部材の表面(=表面層の表面)の粗さ(Rz)はJIS94で10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがより一層好ましい。
【0036】
本発明の帯電部材は、上記のとおり、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、および、該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電部材において、該表面層が、フッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有することを特徴とする帯電部材である。
【0037】
上記フッ化アルキル基としては、例えば、直鎖型または分岐型のアルキル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したものが挙げられる。その中でも、炭素数6〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0038】
上記オキシアルキレン基とは、−O−R−(R:アルキレン基)で示される構造を有する2価の基(「アルキレンエーテル基」と呼ばれることもある。)である。このR(アルキレン基)としては、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましい。
【0039】
上記ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上70.0質量%以下であることが好ましく、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して20.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
【0040】
また、上記ポリシロキサンは、さらにアルキル基およびフェニル基を有するものが好ましい。このアルキル基としては、炭素数1以上21以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基、ヘキシル基、デシル基がより好ましい。
【0041】
上記ポリシロキサンがさらにアルキル基およびフェニル基を有する場合、上記ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、ポリシロキサン中のアルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、ポリシロキサン中のフェニル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して20.0質量%以上80.0質量%以下であることが好ましい。
【0042】
上記ポリシロキサンは、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させて加水分解性縮合物を得て、次いで、該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、該加水分解性縮合物を架橋させることによって得ることができる。
【0043】
上記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
【化1】

【0044】
上記式(2)中、R21は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。R22は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z21は、2価の有機基を示す。Rc21は、カチオン重合可能な基を示す。dは0以上2以下の整数であり、eは1以上3以下の整数であり、d+e=3である。
【0045】
上記式(2)中のRc21のカチオン重合可能な基とは、開裂によってオキシアルキレン基を生成するカチオン重合可能な有機基を意味し、例えば、エポキシ基やオキセタン基などの環状エーテル基、および、ビニルエーテル基などが挙げられる。これらの中でも、入手の容易性および反応制御の容易性の観点から、エポキシ基が好ましい。
【0046】
上記式(2)中のR21およびR22の飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。
【0047】
上記式(2)中のZ21の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基およびアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
【0048】
上記式(2)中のeは3であることが好ましい。
【0049】
上記式(2)中のdが2の場合、2個のR21は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0050】
上記式(2)中のeが2または3の場合、2個または3個のR22は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
以下に、上記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(2−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(2−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
(2−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
(2−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン
【0052】
また、上記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
【化2】

【0053】
上記式(3)中、R31は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。R32は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z31は、2価の有機基を示す。Rf31は、炭素数1以上31以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基を示す。fは0以上2以下の整数であり、gは1以上3以下の整数であり、f+g=3である。
【0054】
上記式(3)中のR31およびR32の飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。
【0055】
上記式(3)中のZ31の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基およびアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上6以下のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
【0056】
上記式(3)中のRf31の炭素数1以上31以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基としては、処理性の観点から、特に炭素数6以上31以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0057】
上記式(3)中のgは3であることが好ましい。
【0058】
上記式(3)中のfが2の場合、2個のR31は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0059】
上記式(3)中のgが2または3の場合、2個または3個のR32は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0060】
以下に、上記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(3−1):CF−(CH−Si−(OR)
(3−2):F(CF−(CH−Si−(OR)
(3−3):F(CF−(CH−Si−(OR)
(3−4):F(CF−(CH−Si−(OR)
(3−5):F(CF−(CH−Si−(OR)
(3−6):F(CF10−(CH−Si−(OR)
【0061】
上記(3−1)乃至(3−6)中のRはメチル基またはエチル基を示す。
【0062】
上記(3−1)乃至(3−6)の中でも、(3−4)乃至(3−6)が好ましい。
【0063】
上記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物および上記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物は、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0064】
特に、上記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物として、上記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を用いる場合、Rf31の炭素数n(nは6以上31以下の整数)のものと、炭素数n(nは6以上31以下の整数かつn≠n)のものとを併用すると、得られるポリシロキサンは、炭素数の異なるパーフルオロアルキル基を有することになる。パーフルオロアルキル基は、帯電部材の表面に向かって配向する傾向にあるため、帯電部材の表面層に含有されるポリシロキサンが炭素数の異なるパーフルオロアルキル基を有していれば、帯電部材の表面に向かって長さの異なるパーフルオロアルキル基が配向することになる。この場合、単一の長さのパーフルオロアルキル基が帯電部材の表面に向かって配向する場合に比べて、帯電部材の表面近傍のフッ素原子濃度が高くなり、帯電部材の表面自由エネルギーが低くなるため、長期間繰り返し使用した際の帯電部材の表面へのトナーや外添剤などの固着をより抑制することができる。
【0065】
上記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を2種以上用いる場合は、上記(3−4)乃至(3−6)の中から2種以上選択することが好ましい。
【0066】
本発明の帯電部材に用いられるポリシロキサンは、上述のとおり、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させて加水分解性縮合物を得て、次いで、該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、該加水分解性縮合物を架橋させることによって得ることができるが、帯電部材の表面物性の制御の観点から、加水分解性縮合物を得る際には、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物に加えて、さらに、下記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用することが好ましい。
【化3】

【0067】
上記式(1)中、R11は、フェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基、または、アルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基を示す。R12は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。aは0以上3以下の整数であり、bは1以上4以下の整数であり、a+b=4である。
【0068】
上記式(1)中のR11のフェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基のアルキル基としては、炭素数1以上21以下の直鎖状のアルキル基が好ましい。
【0069】
上記式(1)中のR11のアルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0070】
上記式(1)中のaは1以上3以下の整数であることが好ましく、特には1であることがより好ましい。
【0071】
上記式(1)中のbは1以上3以下の整数であることが好ましく、特には3であることがより好ましい。
【0072】
上記式(1)中のR12の飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基およびアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1以上3以下の直鎖状もしくは分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましい。
【0073】
上記式(1)中のaが2または3の場合、2個または3個のR11は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0074】
上記式(1)中のbが2、3または4の場合、2個、3個または4個のR12は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0075】
以下に、上記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(1−1):テトラメトキシシラン
(1−2):テトラエトキシシラン
(1−3):テトラプロポキシシラン
(1−4):メチルトリメトキシシラン
(1−5):メチルトリエトキシシラン
(1−6):メチルトリプロポキシシラン
(1−7):エチルトリメトキシシラン
(1−8):エチルトリエトキシシラン
(1−9):エチルトリプロポキシシラン
(1−10):プロピルトリメトキシシラン
(1−11):プロピルトリエトキシシラン
(1−12):プロピルトリプロポキシシラン
(1−13):ヘキシルトリメトキシシラン
(1−14):ヘキシルトリエトキシシラン
(1−15):ヘキシルトリプロポキシシラン
(1−16):デシルトリメトキシシラン
(1−17):デシルトリエトキシシラン
(1−18):デシルトリプロポキシシラン
(1−19):フェニルトリメトキシシラン
(1−20):フェニルトリエトキシシラン
(1−21):フェニルトリプロポキシシラン
(1−22):ジフェニルジメトキシシラン
(1−23):ジフェニルジエトキシシラン
【0076】
上記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物および上記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合、上記式(1)中のaは1以上3以下の整数であることが好ましく、bは1以上3以下の整数であることが好ましく、a個のR11のうちの1個のR11は炭素数1以上21以下の直鎖状のアルキル基であることが好ましく、さらに、該炭素数1以上21以下の直鎖状のアルキル基の炭素数をn(nは1以上21以下の整数)とし、上記式(3)中のRf31の炭素数をn(nは1以上31以下の整数)としたとき、n−1≦n≦n+1であることが好ましい。
【0077】
上記炭素数1以上21以下の直鎖状のアルキル基は、パーフルオロアルキル基と同様、帯電部材の表面に向かって配向する傾向にあるが、n>n+2となると、上記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物のパーフルオロアルキル基による効果が乏しくなる場合がある。一方、n<n−2となると、理由の詳細は不明であるが、帯電時の放電に影響を及ぼし、ハーフトーン画像を出力した際に、その前の文字や黒い図形などがわずかに残像してしまう現象(ゴースト現象)が発生しやすくなる。
【0078】
上記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合には、上記式(1)中のR11がアルキル基のものと上記式(1)中のR11がフェニル基のものとを併用することが好ましい。アルキル基は帯電部材の表面物性の制御の観点から好ましく、フェニル基は上記のゴースト現象抑制の観点から好ましいからである。
【0079】
以下、本発明の帯電部材の具体的な製造方法(上記ポリシロキサンを含有する表面層の具体的な形成方法)について説明する。
【0080】
まず、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物、ならびに、必要に応じて上記の他の加水分解性シラン化合物を水の存在下で加水分解反応させることによって加水分解性縮合物を得る。
加水分解反応の際、温度やpHなどを制御することで、所望の縮合度の加水分解性縮合物を得ることができる。
【0081】
また、加水分解反応の際、加水分解反応の触媒として金属アルコキシドなどを利用し、縮合度を制御してもよい。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシドおよびジルコニアアルコキシドなど、ならびに、これらの錯体(アセチルアセトン錯体など)が挙げられる。
【0082】
また、加水分解性縮合物を得る際の、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物およびフッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物の配合割合は、あるいは、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物および上記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の配合割合は、得られるポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量がポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上50.0質量%以下になるように、オキシアルキレン基の含有量がポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上70.0質量%以下になるように、シロキサン部分の含有量がポリシロキサン全質量に対して20.0質量%以上90.0質量%以下になるようにすることが好ましい。
【0083】
具体的には、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物を、全加水分解性シラン化合物に対して0.5mol%以上20.0mol%以下の範囲になるように配合することが好ましく、特には1.0mol%以上10.0mol%以下の範囲になるように配合することがより好ましい。
【0084】
また、上記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合には、さらに、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物(M)と上記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物(M)とのモル比(M:M)が10:1から1:10までの範囲になるように配合することが好ましい。
【0085】
次に、得られた加水分解性縮合物を含む表面層用塗布液を調製し、支持体および該支持体上に形成された導電性弾性層を有する部材(以下「導電性弾性部材」ともいう。)上に、調製した表面層用塗布液を塗布する。
【0086】
表面層用塗布液を調製する際には、塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、エタノールおよび2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトンなど、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。また、表面層用塗布液を導電性弾性部材上に塗布する際には、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などを採用することができる。
【0087】
次に、導電性弾性部材上に塗布された表面層用塗布液に活性エネルギー線を照射する。すると、表面層用塗布液に含まれる加水分解性縮合物中のカチオン重合可能な基は開裂し、これによって該加水分解性縮合物を架橋させることができる。加水分解性縮合物は架橋によって硬化する。
活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
【0088】
上記活性エネルギー照射時に発生した熱により、導電性弾性部材の導電性弾性層が膨張し、その後冷却によって収縮した際、表面層がこの膨張・収縮に十分に追従しないと、シワやクラックが多い表面層になってしまう場合があるが、架橋反応に紫外線を用いた場合、短時間(15分以内)に加水分解性縮合物を架橋することができる上、熱の発生も少ないため、表面層のシワやクラックが発生しにくい。
【0089】
また、帯電部材の置かれる環境が温湿度の変化が急激な環境である場合、その温湿度の変化による導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従しないと、表面層にシワやクラックが発生することがあるが、架橋反応を熱の発生が少ない紫外線によって行えば、導電性弾性層と表面層との密着性が高まり、導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従できるようになるため、環境の温湿度の変化による表面層のシワやクラックも抑制することができる。
【0090】
また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0091】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150nm以上480nm以下の光を豊富に含む紫外線源が用いられる。
【0092】
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm]=紫外線強度[mW/cm]×照射時間[s]
【0093】
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離などで行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。
【0094】
低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやUVD−S254を用いて測定することができ、エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−AやVUV−S172を用いて測定することができる。
【0095】
また、架橋反応の際、架橋効率向上の観点から、カチオン重合触媒(重合開始剤)を共存させておくことが好ましい。例えば、活性エネルギー線によって賦活化されるルイス酸のオニウム塩に対してエポキシ基は高い反応性を示すことから、上記のカチオン重合可能な基がエポキシ基である場合、カチオン重合触媒としては、ルイス酸のオニウム塩を用いることが好ましい。
【0096】
その他のカチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物などが挙げられる。
【0097】
各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性および反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましく、特には、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、旭電化工業(株)製)や、
【化4】

下記式で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)
【化5】

が好ましい。
【0098】
カチオン重合触媒の使用量は、加水分解性縮合物に対して1質量%以上3質量%以下であることが好ましい。
【0099】
本発明者らは、本発明の帯電部材を基に、帯電部材の各種特性のうち、どの特性が上述の課題の解決に作用しているのかを検討した結果、主として、帯電部材の表面層(表面)の化学的特性および物理的特性、さらには電気的特性が上述の課題の解決に作用していることを見いだした。
【0100】
本発明の帯電部材は、表面層が、下記(i),(ii)および(iii):
(i)6<表面自由エネルギー(γTotal)≦35[mJ/m]、
(ii)0.1≦表面の動摩擦係数(μ)≦0.3、
(iii)1.0×10−6≧静電容量(C)≧5.0×10−9[F]
で示す物性を有していることが好ましい。
【0101】
上記表面自由エネルギー(γTotal)は、帯電部材の表面層(表面)の化学的特性を表すパラメーターであり、上記表面の動摩擦係数(μ)は、帯電部材の表面層(表面)の物理的特性を表すパラメーターであり、上記静電容量(C)は、帯電部材の表面層の電気的特性を表すパラメーターである。
【0102】
まず、帯電部材の表面自由エネルギー(γTotal)について説明する。
表面自由エネルギーは、小さいほど、帯電部材の表面にトナーや外添剤が固着しにくくなる傾向にある。一方、本発明者らは、表面自由エネルギーの低減にはトリフッ化メチル基(−CF)が最も効果があると考えている。このトリフッ化メチル基が帯電部材の表面全域を占めた場合、帯電部材の表面自由エネルギーは、理論的に6mJ/mとなる。
【0103】
また、導電性弾性層中の低分子量成分の帯電部材の表面へのブリードアウトを抑制する観点から、導電性弾性層の表面自由エネルギー(γTotal)と帯電部材の表面自由エネルギー(γTotal)との差が10mJ/m以上あることが好ましい。一方、電子写真感光体との当接ニップを十分に確保するために、導電性弾性層中に可塑剤などを含有させることによってその弾性率を調整する場合、可塑剤の量の増大とともに導電性弾性層の表面自由エネルギーが増大する傾向にあり、すると、低分子量成分との相溶性が低下し、低分子量成分がブリードアウトしやすくなるため、導電性弾性層の表面自由エネルギー(γTotal)は、40mJ/m以下であることが好ましい。
【0104】
帯電部材の表面自由エネルギーや導電性弾性層の表面自由エネルギーは、表1に示す表面自由エネルギー3成分が既知のプローブ液体を使用して測定した。
【0105】
【表1】

【0106】
具体的には、協和界面(株)製の接触角計CA−X ROLL型を使用し、帯電部材の表面/導電性弾性層の表面における上記各プローブ液体の接触角θを測定し、以下の北崎・畑の理論の式を用い、
【数1】

表1のプローブ液体3種の表面自由エネルギーγL、γL、γLと、それぞれ求めた接触角θとから3つの式を作り、その3元連立方程式を解いて、γs、γs、γsを算出し、γs、γsおよびγsの和をもって帯電部材の表面自由エネルギー/導電性弾性層の表面自由エネルギーとした。
【0107】
接触角θの詳細な測定条件は以下のとおりである。
測定:液滴法(真円フィッティング)
液量:1μl
着滴認識:自動
画像処理:アルゴリズム−無反射
イメージモード:フレーム
スレッシホールドレベル:自動
【0108】
次に、帯電部材の表面の動摩擦係数(μ)について説明する。
帯電部材が電子写真感光体に従動して回転する場合、動摩擦係数が大きすぎると、回転の際に帯電部材が回転方向に弓状に撓みやすくなり、帯電部材が弓状に撓むと、帯電部材の表面に部分的にトナーや外添剤が固着したり、トナーや外添剤の固着領域が増大したりすることがある。また、帯電部材が電子写真感光体に従動して回転する場合、動摩擦係数が小さすぎると、帯電部材が回転しにくくなることがある。
【0109】
本発明において、帯電部材の表面の動摩擦係数(μ)は、次のようにして測定される値を意味する。この測定方法は、オイラーのベルト式に準拠している。
【0110】
本発明において動摩擦係数の測定に用いる測定機の概略図を図2に示す。
図2において、201は測定対象である帯電部材であり、202は帯電部材に所定の角度θで接触させたベルト(厚さ100μm、幅30mm、長さ180mm、ポリエチレンテレフタレート(PET)製(商品名:ルミラーS10 #100、東レ(株)製))であり、203はベルト202の一端に繋がれた重りであり、204はベルト202の他端に繋がれた荷重計であり、205は荷重計204に接続された記録計である。
【0111】
図2に示す状態で、帯電部材201を所定の方向および所定の速度で回転させたとき、荷重計204で測定された力をF[g重]、重りの重さとベルトの重さとの和をW[g重]とすると、摩擦係数は以下の式で求められる。
摩擦係数=(1/θ)ln(F/W)
【0112】
この測定方法により得られるチャートの一例を図3に示す。
帯電部材を回転させた直後の値が回転を開始するのに必要な力であり、それ以降が回転を継続するのに必要な力であるから、回転開始点(すなわちt=0[秒]の時点)の摩擦係数が静摩擦係数であり、t>0[秒]の任意の時間における摩擦係数が任意の時間における動摩擦係数である。本発明では、回転開始点から10秒後に得られる摩擦係数をもって、上記の動摩擦係数(μ)とした。
【0113】
本発明においては、W=100[g重]とし、帯電部材の回転速度を115rpmとし、測定環境を23℃/53%RHとした。
【0114】
次に、帯電部材の表面層の静電容量(C)について説明する。
静電容量は、大きいほど、帯電部材の表面の静電的な反発力が大きくなり、帯電部材の表面にトナーや外添剤が固着しにくくなるが、大きすぎると、ゴースト現象が生じる場合がある。
【0115】
本発明において、帯電部材の表面層の静電容量は次のように測定した。
まず、測定対象の帯電部材を30℃/80%RH環境下に24時間放置した。
次に、図4に示す構成の測定装置に帯電部材を装着し、印加電圧3V、測定周波数0.1Hz以上1MHz以下の条件で誘電率を測定した。測定の結果、例えば、図5に示すようなインピーダンス特性が得られる。
【0116】
次に、図6に示すように前記帯電部材を導電性弾性層/表面層/表面層と円筒電極との界面におけるRC並列の等価回路を想定し、導電性弾性層の抵抗をR1、静電容量をC1とし、表面層の抵抗をR2、静電容量をC2とし、表面層と円筒電極との界面の抵抗をR3、静電容量をC3として、C2の値を算出した。
【0117】
なお、図4中、401は帯電部材であり、402は円筒電極(金属ローラー)であり、403は誘電率測定システム(英国ソーラトロン社製1296型誘電率測定インターフェース、1260型インピダンスアナライザーを併用)である。
【0118】
上記各パラメーターに関しては、使用する材料の種類や配合比、さらには表面の粗さおよび表面層の層厚などを適宜調整することによって所望の値に調整することができる。
【0119】
例えば、上記紫外線照射は、帯電部材の表面を酸化させるため、帯電部材の表面自由エネルギーは増大する傾向にある。上記処理剤の使用は、上記紫外線照射を行っても帯電部材の表面自由エネルギーの増大を抑制することができる上、帯電部材の表面がある程度粗面化されてその動摩擦係数を小さくすることもできる。また、表面層の層厚を厚くするほど、表面層の静電容量は小さくなり、表面層の層厚を薄くするほど、表面層の静電容量は大きくなる傾向にある(図7参照)。静電容量を上記範囲に収める観点からは、表面層の層厚は5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがより一層好ましい。
【0120】
図8に、本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す。
図8において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体としては、支持体および支持体上に形成された無機感光層もしくは有機感光層を有するものが一般的である。また、電子写真感光体は表面層として電荷注入層を有するものであってもよい。
【0121】
回転駆動される電子写真感光体1の表面は、本発明の帯電部材3(図8においてはローラー形状の帯電部材)により、正または負の所定電位に均一に帯電され、次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0122】
帯電部材3による電子写真感光体1の表面の帯電の際、帯電部材3には、電圧印加手段(不図示)から直流電圧のみの電圧あるいは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。後述の実施例においては、帯電部材には直流電圧のみの電圧(−1200V)を印加した。また、後述の実施例において、暗部電位は−600V、明部電位は−350Vとした。
【0123】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像(反転現像もしくは正規現像)されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラーなど)6からの転写バイアスによって、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送された転写材(紙など)Pに順次転写されていく。
【0124】
現像手段としては、例えば、ジャンピング現像手段、接触現像手段および磁気ブラシ手段などが挙げられるが、トナーの飛散性改善の観点から、接触現像手段が好ましく、後述の実施例においては、接触現像手段を採用した。
また、転写ローラーとしては、支持体上に中抵抗に調整された弾性樹脂層を被覆してなるものが例示される。
【0125】
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合、この画像形成物は、不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写部へ再導入される。
【0126】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化され、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段が接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0127】
上述の電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5、転写手段6およびクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に結合して構成し、このプロセスカートリッジを複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に構成してもよい。図8では、電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5およびクリーニング手段7を一体に支持してカートリッジ化して、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としている。
【0128】
(実施例)
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0129】
〈実施例1〉
エピクロルヒドリンゴム(商品名:エピクロマーCG102、ダイソー(株)製)100部、充填剤としてのMTカーボン(商品名:HTC#20、新日化カーボン(株)製)35部、ベントナイト(商品名:ベンゲルSH、ホージュン(株)製)5部、酸化亜鉛5部およびステアリン酸1部を、オープンロールで30分間混練した。この30分間混練したものに、加硫促進剤としてのジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(商品名:ノクセラーDM−P、大内新興化学(株)製)1部、加硫促進剤としてのテトラメチルチウラムモノスルフィド(商品名:ノクセラーTS、大内新興化学(株)製)1部および加硫剤としてのイオウ1.2部を加え、オープンロールでさらに15分間混練することによって、混練物Iを得た。
【0130】
次に、混練物Iを、ゴム押し出し機で、外径9.5mm、内径5.4mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶で160℃の水蒸気で30分間1次加硫することによって、導電性弾性層用1次加硫チューブIを得た。
【0131】
一方、直径6mm、長さ256mmの円柱形の鋼製の支持体(表面をニッケルメッキ加工したもの)の円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属およびゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布し、これを30分間80℃で乾燥させた後、さらに1時間120℃で乾燥させた。
【0132】
この円柱面に熱硬化性接着剤を塗布し乾燥させた支持体を、導電性弾性層用1次加硫チューブIの中に挿入し、その後、導電性弾性層用1次加硫チューブIを1時間160℃で加熱した。この加熱によって、導電性弾性層用1次加硫チューブIが2次加硫され、また、熱硬化性接着剤が硬化した。このようにして、表面研磨前の導電性弾性ローラーIを得た。
【0133】
次に、表面研磨前の導電性弾性ローラーIの導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を231mmとした後、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨することによって、端部直径8.2mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状で、表面の十点平均粗さ(Rz)が4.9μmで、振れが22μmの導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)Iを得た。
【0134】
十点平均粗さ(Rz)はJISB6101に準拠して測定した。
振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430vを用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0135】
得られた導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)Iの硬度は74度(アスカーC)であり、表面自由エネルギーは39.8mJ/mであった。
【0136】
次に、加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)27.84g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン(MTES)17.83g(0.1mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)7.68g(0.0151mol(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当))と、水17.43gおよびエタノール37.88gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物Iを得た。
【0137】
この縮合物Iを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液Iを調製した。
【0138】
この縮合物含有アルコール溶液I100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を、縮合物含有アルコール溶液Iに添加することによって、表面層用塗布液Iを調製した。
【0139】
次に、導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)Iの導電性弾性層上に表面層用塗布液Iをリング塗布し、これに254nmの波長の紫外線を積算光量が9000mJ/cmになるように照射し、表面層用塗布液Iを硬化(架橋反応による硬化)および乾燥させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
紫外線の照射によってグリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ基が開裂し、縮合物Iの架橋反応が生じたと考えられる。
【0140】
以上のようにして、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、および、該導電性弾性層上に形成された表面層(表面層用塗布液Iを用いて形成したポリシロキサンを含有する層)を有する帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを、帯電ローラーIとする。
【0141】
作製した帯電ローラーIの表面自由エネルギー(γTotal)は18.4mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.26であり、表面層の静電容量(C)は1.43×10−8Fであった。
【0142】
・帯電ローラーの評価
・評価1
作製した帯電ローラーIを用いて、以下に示すブリードアウト試験および評価を行った。
まず、作製した帯電ローラーIと電子写真感光体とを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジに組み込み、このプロセスカートリッジを、40℃/95%RHの高温高湿槽に1週間放置した。
【0143】
なお、帯電ローラーIとともにプロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体は、支持体上に層厚14μmの有機感光層を形成してなる有機電子写真感光体である。また、この有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリカーボネート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となっている。
【0144】
1週間放置の後、プロセスカートリッジから帯電ローラーIおよび電子写真感光体を取り出し、帯電ローラーIと電子写真感光体の当接部を光学顕微鏡で観察し、帯電ローラーIからブリードアウトしたもの(ブリード物)が当接部に付着しているか否かを確認した。
【0145】
評価基準は以下のとおりである。
A:ブリード物が付着していない。
C:ブリード物が付着している。
【0146】
・評価2
上記と同様にして作製した帯電ローラーIを用いて、以下に示す出力画像評価を行った。
作製した帯電ローラーIと電子写真感光体とを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジに組み込み、このプロセスカートリッジをA4紙縦出力用のレーザービームプリンターに装着した。このレーザービームプリンターの現像方式は反転現像方式であり、転写材の出力スピードは47mm/sであり、画像解像度は600dpiである。
なお、帯電ローラーIとともにプロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体は、上記と同様のものである。
【0147】
また、上記レーザービームプリンターに使用したトナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレートおよびエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子にシリカ微粒子および酸化チタン微粒子を外添してなるトナー粒子を含む、いわゆる重合トナーであって、そのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は6μmである。
【0148】
画像出力は、30℃/80%RH環境下で行い、A4紙にハーフトーン画像(電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像)を形成し、これを47mm/sのプロセススピードで6000枚出力した。
出力画像の評価は、1000枚ごとに出力画像を目視することによって行った。
【0149】
評価基準は以下のとおりである。
AA:帯電ローラーの表面にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上確認できないもの。
A:帯電ローラーの表面にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上ほとんど確認できないもの。
B:帯電ローラーの表面にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上確認できるもの。
C:帯電ローラーの表面にトナーや外添剤が固着することによる帯電ムラが出力画像上確認でき、その帯電ムラの程度が大きいもの。具体的には、白い縦スジ状の帯電ムラ。
【0150】
以上の評価結果を表5に示す。
【0151】
・帯電ローラーの表面層の組成分析
帯電ローラーIの表面層の組成分析を以下のとおりにして行った。
10倍以上1000倍以下の光学顕微鏡下、光学顕微鏡に設置した3次元粗微動マイクロマニピュレーター((株)ナリシゲ製)を用い、上記と同様にして作製した帯電ローラーIの表面層から1mg程度の試料を採取した。
【0152】
採取した試料を、TG−MS法(TG装置にMS装置を直結)により、加熱時に発生する気体の質量数ごとの濃度変化を、重量変化と同時に、温度の関数として追跡した。測定の条件を表2に示す。
【0153】
【表2】

【0154】
上記条件で測定して得られたTG−DTG(Derivative thrmogravimetry)曲線によると、室温付近から重量減少が認められ、また、400℃以上500℃以下付近および500℃以上650℃以下付近から、2段階の顕著な重量減少が認められた。
【0155】
ここで、400℃以上500℃以下で発生する気体について、質量数(m/z)31、43、58、59のオキシアルキレン基(グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ基由来)が確認でき、その重量減少率から、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して37.36質量%であることがわかった。
【0156】
また、500℃以上600℃以下で発生する気体について、質量数(m/z)51、69、119、131のフッ化アルキル基(トリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシランのフッ化アルキル基由来)が確認でき、その重量減少率から、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して19.20質量%であることがわかった。
【0157】
残渣はポリシロキサン中のシロキサン部分であると考えられ、よってポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して100.00−(37.36+19.20)=43.44質量%である。
【0158】
〈実施例2〉
実施例1において、表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液IIに変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを帯電ローラーIIとする。
【0159】
表面層用塗布液IIは以下のようにして調製した。
すなわち、加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)27.84g(0.1mol)、メチルトリエトキシシラン(MTES)17.83g(0.1mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数10)3.34g(0.0047mol(加水分解性シラン化合物総量に対して2.3mol%相当))と、水16.6gおよびエタノール31.7gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物IIを得た。
【0160】
この縮合物IIを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液IIを調製した。
この縮合物含有アルコール溶液II100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を、縮合物含有アルコール溶液IIに添加することによって、表面層用塗布液IIを調製した。
【0161】
作製した帯電ローラーIIの表面自由エネルギー(γTotal)は22.1mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.26であり、表面層の静電容量(C)は4.78×10−8Fであった。
帯電ローラーIIの評価を実施例1の帯電ローラーIの評価と同様にして行った。評価結果を表5に示す。
【0162】
また、帯電ローラーIIの表面層の組成分析を、実施例1の帯電ローラーIの表面層の組成分析と同様にして行ったところ、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して40.00質量%であり、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して11.90質量%であり、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して48.10質量%であった。
【0163】
〈実施例3〉
実施例1において、表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液IIIに変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを帯電ローラーIIIとする。
【0164】
表面層用塗布液IIIは以下のようにして調製した。
すなわち、加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)27.84g(0.1mol)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)24.04g(0.1mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)7.68g(0.0151mol(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当))と、水17.43gおよびエタノール53.82gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物IIIを得た。
【0165】
この縮合物IIIを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液IIIを調製した。
この縮合物含有アルコール溶液III100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を、縮合物含有アルコール溶液IIIに添加することによって、表面層用塗布液IIIを調製した。
【0166】
作製した帯電ローラーIIIの表面自由エネルギー(γTotal)は19.1mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.27であり、表面層の静電容量(C)は3.54×10−8Fであった。
帯電ローラーIIIの評価を実施例1の帯電ローラーIの評価と同様にして行った。評価結果を表5に示す。
【0167】
また、帯電ローラーIIIの表面層の組成分析を、実施例1の帯電ローラーIの表面層の組成分析と同様にして行ったところ、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して33.50質量%であり、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して12.90質量%であり、ポリシロキサン中のフェニル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して6.70質量%であり、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して46.90質量%であった。なお、400℃以上500℃以下で発生する気体については、質量数(m/z)78のベンゼンや質量数(m/z)91(トルエン)などのフェニル基も確認でき、これから上記フェニル基に関しての6.70質量%を算出した。
【0168】
〈実施例4〉
実施例1において、表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液IVに変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを帯電ローラーIVとする。
【0169】
表面層用塗布液IVは以下のようにして調製した。
すなわち、加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)41.43g(0.149mol)、ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)30.71g(0.149mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)11.42g(0.0224mol(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当))と、水25.93gおよびエタノール83.14gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物IVを得た。
【0170】
この縮合物IVを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液IVを調製した。
この縮合物含有アルコール溶液IV100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を、縮合物含有アルコール溶液IVに添加することによって、表面層用塗布液IVを調製した。
【0171】
作製した帯電ローラーIVの表面自由エネルギー(γTotal)は16.5mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.25であり、表面層の静電容量(C)は2.38×10−8Fであった。
帯電ローラーIVの評価を実施例1の帯電ローラーIの評価と同様にして行った。評価結果を表5に示す。
【0172】
また、帯電ローラーIVの表面層の組成分析を、実施例1の帯電ローラーIの表面層の組成分析と同様にして行ったところ、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して29.18質量%であり、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して12.71質量%であり、ポリシロキサン中のアルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して22.50質量%であり、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して35.61質量%であった。なお、400℃以上500℃以下で発生する気体については、質量数(m/z)16、41などのアルキル基も確認でき、これから上記アルキル基に関しての22.50質量%を算出した。
【0173】
〈実施例5〉
実施例1において、表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液Vに変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを帯電ローラーVとする。
【0174】
表面層用塗布液Vは以下のようにして調製した。
すなわち、加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)32.52g(0.117mol)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)28.08g(0.117mol)、ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)13.21g(0.064mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)11.42g(0.022mol(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当))と、水25.93gおよびエタノール77.12gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物Vを得た。
【0175】
この縮合物Vを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液Vを調製した。
この縮合物含有アルコール溶液V100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を、縮合物含有アルコール溶液Vに添加することによって、表面層用塗布液Vを調製した。
【0176】
作製した帯電ローラーVの表面自由エネルギー(γTotal)は15.5mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.25であり、表面層の静電容量(C)は5.12×10−8Fであった。
帯電ローラーVの評価を実施例1の帯電ローラーIの評価と同様にして行った。評価結果を表5に示す。
【0177】
また、帯電ローラーVの表面層の組成分析を、実施例1の帯電ローラーIの表面層の組成分析と同様にして行ったところ、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して13.70質量%であり、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して6.10質量%であり、ポリシロキサン中のアルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して10.20質量%であり、ポリシロキサン中のフェニル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して6.40質量%であり、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して63.60質量%であった。アルキル基およびフェニル基の含有量の算出は、実施例3および4と同様である。
【0178】
〈比較例1〉
エラストマー用ポリエステルポリオール(商品名:ニッポラン4042(水酸基価56KOHmg/g)、日本ポリウレタン工業(株)製)100部および導電性カーボン(商品名:トーカブラック#3845、東海カーボン(株)製)1部を、3本ロールで混練することによって、混練物CIを得た。
【0179】
次に、混練物CIを100℃に昇温させ、3mmHgの減圧下で3時間脱水処理を行った。
次に、脱水処理後の混練物CIに、NCO/OH比が1.05となるように2,6−トリレンジイソシアナート(商品名:コスモネートT−80、三井化学(株)製)19.1gを加え、これらを2分間以上3分間以下激しく混合することによって、導電性弾性層用組成物を得た。
【0180】
この導電性弾性層用組成物を、あらかじめ150℃に昇温させておいた金型(内型は実施例1で用いた支持体と同様の支持体)に流し込み、60分間放置することによって、導電性弾性層用組成物を硬化させ、その後、脱型して、さらに24時間110℃で導電性弾性層用組成物を硬化させた。このようにして、導電性弾性ローラーCIを得た。
得られた導電性弾性ローラーCIの表面自由エネルギーは25.5mJ/mであった。
【0181】
次に、ウレタン樹脂(商品名:レザミンME44−ELP、大日精化工業(株)製)100部、フッ素系改質剤(商品名:ダイアロマーFF−101(D)、大日精化工業(株)製)1.3部およびレベリング樹脂(商品名:GS−30、東亞合成(株)製)0.05部を、メチルエチルケトン177部/ジメチルホルムアミド98部の混合溶剤に溶解させることによって、表面層用塗布液CIを調製した。
この表面層用塗布液CIを導電性弾性ローラーCIの導電性弾性層上に浸漬塗布し、30分間100℃で乾燥させることによって、層厚が15μmの表面層を形成した。
【0182】
このようにして、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層および該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを、帯電ローラーCIとする。
作製した帯電ローラーCIの表面自由エネルギー(γTotal)は30.0mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.32であり、表面層の静電容量(C)は1.83×10−9Fであった。
帯電ローラーCIの評価を実施例1の帯電ローラーIの評価と同様にして行った。評価結果を表5に示す。
【0183】
〈比較例2〉
実施例1において、混練物Iを以下の混練物CIIに変更した以外は、実施例1と同様にして導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)CIIを得た。
【0184】
混練物CIIは以下のようにして得た。
すなわち、エピクロルヒドリンゴム(商品名:エピクロマーCG102、ダイソー(株)製)100部、充填剤としてのMTカーボン(商品名:HTC#20、新日化カーボン(株)製)5部、酸化亜鉛5部、ステアリン酸1部、可塑剤としてのアジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)(商品名:DOA、(株)ジェイ・プラス製)5部およびイオン導電剤としての過塩素酸第四級アンモニウム塩1部を、オープンロールで30分間混練した。この30分間混練したものに、加硫促進剤としてのジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(商品名:ノクセラーDM−P、大内新興化学(株)製)1部、加硫促進剤としてのテトラメチルチウラムモノスルフィド(商品名:ノクセラーTS、大内新興化学(株)製)1.0部および加硫剤としてのイオウ1.2部を加え、オープンロールでさらに15分間混練することによって、混練物CIIを得た。
【0185】
得られた導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)CIIの表面の十点平均粗さ(Rz)は5.6μmであり、振れは28μmであり、硬度は70度(アスカーC)であり、表面自由エネルギーは44.0mJ/mであった。
【0186】
次に、ラクトン変性アクリルポリオール(商品名:プラクセルDC2016(水酸基価80KOHmg/g)、ダイセル化学工業(株)製)42.9部を、メチルイソブチルケトン(MIBK)557.1部に溶解させ、固形分5.0質量%の溶液とした。この溶液200部に、イソホロンジイソシアネートのブロックタイプのイソシアヌレート型3量体(IPDI)(商品名:ベスタナートB1370、デグサ・ヒュルス社製)10.7部を混合し、これらをボールミルで1時間撹拌し、攪拌後、200メッシュの網で溶液を濾過することによって、表面層用塗布液CIIを調製した。
【0187】
次に、導電性弾性ローラー(表面研磨後の導電性弾性ローラー)CIIの導電性弾性層上に表面層用塗布液CIIをリング塗布し、これをオーブンで1時間160℃で加熱し、表面層用塗布液CIIを硬化(熱硬化)および乾燥させることによって表面層を形成した。
【0188】
このようにして、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層および該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを、帯電ローラーCIIとする。
【0189】
作製した帯電ローラーCIIの表面自由エネルギー(γTotal)は37.5mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.24であり、表面層の静電容量(C)は2.06×10−9Fであった。
帯電ローラーCIIの評価を実施例1の帯電ローラーIの評価と同様にして行った。評価結果を表5に示す。
【0190】
〈比較例3〉
実施例1において、表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液CIIIに変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを帯電ローラーCIIIとする。
【0191】
表面層用塗布液CIIIは以下のようにして調製した。
すなわち、加水分解性シラン化合物としてのグリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)35.04g(0.128mol)、フェニルトリエトキシシラン(PhTES)30.77g(0.128mol)およびヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)13.21g(0.064mol)と、水25.93gおよびエタノール63.07gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物CIIIを得た。
【0192】
この縮合物CIIIを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液CIIIを調製した。
この縮合物含有アルコール溶液CIII100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を、縮合物含有アルコール溶液CIIIに添加することによって、表面層用塗布液CIIIを調製した。
【0193】
作製した帯電ローラーCIIIの表面自由エネルギー(γTotal)は45.1mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.23であり、表面層の静電容量(C)は1.23×10−8Fであった。
帯電ローラーCIIIの評価を実施例1の帯電ローラーIの評価と同様にして行った。評価結果を表5に示す。
【0194】
また、帯電ローラーCIIIの表面層の組成分析を、実施例1の帯電ローラーIの表面層の組成分析と同様にして行ったところ、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して16.30質量%であり、ポリシロキサン中のアルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.40質量%であり、ポリシロキサン中のフェニル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して9.90質量%であり、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して68.40質量%であった。
【0195】
〈比較例4〉
実施例1において、表面層用塗布液Iを以下の表面層用塗布液CIVに変更した以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラーを作製した。この帯電ローラーを帯電ローラーCIVとする。
【0196】
表面層用塗布液CIVは以下のようにして調製した。
すなわち、加水分解性シラン化合物としてのフェニルトリエトキシシラン(PhTES)56.16g(0.234mol)、ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS)13.21g(0.064mol)およびトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6)11.42g(0.022mol(加水分解性シラン化合物総量に対して7mol%相当))と、水25.93gおよびエタノール61.50gとを混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物CIVを得た。
【0197】
この縮合物CIVを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液CIVを調製した。
この縮合物含有アルコール溶液CIV100gに対して0.35gの光カチオン重合開始剤としての芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を、縮合物含有アルコール溶液CIVに添加することによって、表面層用塗布液CIVを調製した。
【0198】
作製した帯電ローラーCIVの表面自由エネルギー(γTotal)は16.1mJ/mであり、表面の動摩擦係数(μ)は0.46であり、表面層の静電容量(C)は3.25×10−8Fであった。
帯電ローラーCIVの評価を実施例1の帯電ローラーIの評価と同様にして行った。評価結果を表5に示す。
【0199】
また、帯電ローラーCIVの表面層の組成分析を、実施例1の帯電ローラーIの表面層の組成分析と同様にして行ったところ、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して7.10質量%であり、ポリシロキサン中のアルキル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して5.40質量%であり、ポリシロキサン中のフェニル基の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して18.00質量%であり、ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量は、ポリシロキサン全質量に対して69.50質量%であった。
【0200】
実施例1〜5および比較例1〜4の測定結果をまとめたものを表3および4に示す。
【0201】
【表3】

【0202】
【表4】

【0203】
【表5】

【0204】
以上のとおり、本発明によれば、長期間の繰り返し使用によってもトナーやトナーに用いられる外添剤などが表面に固着しにくく、よってDC接触帯電方式に用いても、長期間安定した帯電および画像出力が可能な帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジおよび電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】本発明の帯電部材の構成の一例を示す図である。
【図2】動摩擦係数の測定に用いる測定機の概略図である。
【図3】チャートの一例を示す図である。
【図4】静電容量を測定するための測定装置の構成を示す図である。
【図5】インピーダンス特性を示す図である。
【図6】導電性弾性層/導電性弾性層と表面層との界面/表面層におけるRC並列の等価回路の想定図である。
【図7】表面層の層厚と表面層の静電容量の関係を示す図である。
【図8】本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0206】
101 支持体
102 導電性弾性層
103 表面層
201 帯電部材
202 ベルト
203 重り
204 荷重計
205 記録計
401 帯電部材
402 円筒電極
403 誘電率測定システム
R1 導電性弾性層の抵抗
C1 導電性弾性層の静電容量
R2 界面の抵抗
C2 界面の静電容量
R3 表面層の抵抗
C3 静電容量
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電部材
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段
7 クリーニング手段
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、および、該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電部材において、該表面層が、フッ化アルキル基およびオキシアルキレン基を有するポリシロキサンを含有することを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量が前記ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上50.0質量%以下であり、前記ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量が前記ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上70.0質量%以下であり、前記ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量が前記ポリシロキサン全質量に対して20.0質量%以上90.0質量%以下である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記ポリシロキサンがさらにアルキル基およびフェニル基を有し、前記ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量が前記ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上50.0質量%以下であり、前記ポリシロキサン中のオキシアルキレン基の含有量が前記ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下であり、前記ポリシロキサン中のアルキル基の含有量が前記ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下であり、前記ポリシロキサン中のフェニル基の含有量が前記ポリシロキサン全質量に対して5.0質量%以上30.0質量%以下であり、前記ポリシロキサン中のシロキサン部分の含有量が前記ポリシロキサン全質量に対して20.0質量%以上80.0質量%以下である請求項2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記ポリシロキサンが、下記工程(I)および(II):
(I)カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる縮合工程、
(II)該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(I)により得られた加水分解性縮合物を架橋させる架橋工程
を経て得られるポリシロキサンである請求項1乃至3のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項5】
前記ポリシロキサンが、下記工程(III)および(IV):
(III)カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物と、下記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる縮合工程
【化1】

(式(1)中、R11は、フェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基、または、アルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基を示す。R12は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。aは0以上3以下の整数であり、bは1以上4以下の整数であり、a+b=4である。)、
(IV)該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(III)により得られた加水分解性縮合物を架橋させる架橋工程
を経て得られるポリシロキサンである請求項1乃至3のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項6】
前記式(1)中のaが1以上3以下の整数であり、bが1以上3以下の整数であり、a個のR11のうちの1個のR11が炭素数1以上21以下の直鎖状のアルキル基である請求項5に記載の帯電部材。
【請求項7】
前記ポリシロキサンが、下記工程(V)および(VI):
(V)カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物と、アルキル基を有する加水分解性シラン化合物と、フェニル基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる縮合工程、
(VI)該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(V)により得られた加水分解性縮合物を架橋させる架橋工程
を経て得られるポリシロキサンである請求項1乃至3のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項8】
前記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物が、下記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物である請求項4乃至7のいずれかに記載の帯電部材。
【化2】

(式(2)中、R21は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。R22は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z21は、2価の有機基を示す。Rc21は、カチオン重合可能な基を示す。dは0以上2以下の整数であり、eは1以上3以下の整数であり、d+e=3である。)
【請求項9】
前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物が、下記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物である請求項4乃至8のいずれかに記載の帯電部材。
【化3】

(式(3)中、R31は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。R32は、飽和もしくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。Z31は、2価の有機基を示す。Rf31は、炭素数1以上31以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基を示す。fは0以上2以下の整数であり、gは1以上3以下の整数であり、f+g=3である。)
【請求項10】
前記式(3)中のRf31が炭素数6以上31以下の直鎖状のパーフルオロアルキル基である請求項9に記載の帯電部材。
【請求項11】
前記縮合工程の際、前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物として、前記式(3)で示される構造を有しかつRf31が炭素数n(nは6以上31以下の整数)の直鎖状のパーフルオロアルキル基であるシラン化合物Aと、前記式(3)で示される構造を有しかつRf31が炭素数n(nは6以上31以下の整数かつn≠n)の直鎖状のパーフルオロアルキル基であるシラン化合物Bとが併用される請求項9に記載の帯電部材。
【請求項12】
前記表面層が、下記(i)、(ii)および(iii):
(i)6<表面自由エネルギー(γTotal)≦35[mJ/m]、
(ii)0.1≦表面の動摩擦係数(μ)≦0.3、
(iii)1.0×10−6≧静電容量(C)≧5.0×10−9[F]
で示す物性を有している請求項1乃至11のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項13】
前記導電性弾性層の表面の表面自由エネルギー(γTotal)が40mJ/m以下であり、かつ、該γTotalと前記γTotalとが下記(iv):
(iv)│γTotal−γTotal│≧10[mJ/m
で示す関係を有している請求項12に記載の帯電部材。
【請求項14】
電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電部材とを一体に支持し、電子写真装置本体に着脱自在であるプロセスカートリッジにおいて、該帯電部材が請求項1乃至13のいずれかに記載の帯電部材であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項15】
前記帯電部材が前記電子写真感光体に接触配置されている請求項14に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項16】
電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電部材とを有する電子写真装置において、該帯電部材が請求項1乃至13のいずれかに記載の帯電部材であることを特徴とする電子写真装置。
【請求項17】
前記帯電部材が前記電子写真感光体に接触配置されている請求項16に記載の電子写真装置。
【請求項18】
前記帯電部材に直流電圧のみの電圧を印加するための電圧印加手段を有する請求項16または17に記載の電子写真装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−4113(P2007−4113A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−363509(P2005−363509)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】