説明

帯電防止剤、帯電防止膜及び帯電防止膜被覆物品

【課題】化学増幅系レジストにおけるかぶりや膜減り現象防止に優れた帯電防止剤、該帯電防止剤を用いた帯電防止膜及び被覆物品を提供することを目的とする。
【解決手段】水溶性導電性高分子、溶媒及び水溶性高分子を含む帯電防止剤。特定の水溶性高分子、特に、ポリビニル構造を有する特定の水溶性高分子を水溶性導電性高分子と併用することにより、安価で簡単にレジストへの塗布性を付与できる界面活性剤を用いても、塗布性を維持しながら、レジストへの影響(レジストの溶解やレジストの現像の結果生じるレジストのかぶりや膜べり現象)を抑止できる。界面活性剤を含有させることにより塗布性を向上させた帯電防止剤は、化学増幅系レジスト、および非化学増幅系レジストに対するミキシング抑制に効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光、電子線あるいはイオン線等の荷電粒子線を用いたリソグラフィ技術においてレジストの被覆材として用いることのできる帯電防止剤に関する。さらに詳しく言えば、化学増幅系レジストに適用した場合、レジストの膜減り現象またはかぶり現象を効果的に抑止できる帯電防止剤、その帯電防止剤を用いた帯電防止膜及びその帯電防止膜を被覆した被覆物品に関する。
【背景技術】
【0002】
化学増幅系レジストは、光、電子線あるいはイオン線等の荷電粒子線を用いたリソグラフィの共通技術として必要不可欠の材料になってきているが、使用環境の影響を受け易く、取り扱いの難しいレジストであることが知られている。
【0003】
化学増幅系レジストを水溶性の被覆材料で被覆する場合、露光により生成した酸が被覆材料により中和される、あるいは、露光していないのに被覆材料に含まれる酸成分がレジスト表層を侵食し露光されたと同じ状態となってしまう等の問題があった。このように、被覆材料中の僅かの酸成分でレジストの感度に大きく影響を与える。この現象は、ポジ型レジストでは膜減りとなって現われ、ネガ型レジストでは難溶化層の形成あるいは不溶化層の形成となって現われる。
【0004】
このような現象を防止する方法として、被覆材料水溶液に弱酸とアミンとを含む緩衝液を使用してpH低下を抑制する方法(特許文献1;特開平11−189746号公報)、被覆材料水溶液をフッ素化脂肪族スルホン酸またはフッ素化脂肪族カルボン酸を含む組成物とする方法(特許文献2;特開2003−29410号公報)等が提案されている。
【0005】
また、化学増幅系レジストを製膜した後の表面は疎水性であり、界面活性剤を添加するなどの方法で界面活性性を付与しないと帯電防止剤を塗布することが困難になるという問題がある。帯電防止剤はレジスト上に被覆させて用いるため、平坦性、均一性が求められる。そこで、塗布性を向上させる目的で界面活性剤や、バインダーポリマーを含有させることが従来から提案されている。例えば、特許文献3(特開平6−3813)では、スルホン化ポリアニリンを含んでなる組成物に、成分として溶媒に可溶な高分子化合物、及び/又は界面活性剤を含んでなるパターン形成用導電性組成物が報告されている。これには、平坦化、塗布性及び導電性などが向上するとある。しかしながら、塗布性を与えるために界面活性剤を用いるとミキシング層が形成されるなど、レジスト特性に悪影響を及ぼす。そこで、界面活性剤を用いない化学増幅系レジスト向けの帯電防止剤として、含窒素官能基及び末端疎水性基を有する高分子化合物を用いることによる化学増幅系レジストへの影響低減について提案されている(特許文献4;特開2002−226721号公報)。また、特許文献5(特開平8−109351)では、チャージアップ防止効果のある組成物に、バインダーポリマーとして水溶性高分子、水系でエマルジョンを形成する高分子化合物を用いることができることが示されている。
【0006】
レジストの帯電防止剤は、加工時に一時的に導電性を付与する目的で使用するため、不溶化せずに水、アルカリ水等で容易に剥離できることが求められる。水溶性高分子のうち、エステル基を有するものは、加水分解等により酸を発生してレジストに影響を与える場合があり、適さない。また架橋性末端を有するものは、工程中に不溶化して、剥離ができなくなる可能性が在る。塩基性を有する水溶性ポリマーは、スルホン酸基を有する水溶性導電性高分子と併用することにより、沈殿が生じることがあり、好ましくない。
【0007】
近年の半導体デバイスの進歩は目覚しく、レジスト加工精度の向上に伴って、帯電防止剤の平坦性、均一性、レジスト現像後のレジスト解像性能への要求はさらに高まっている。従来の方法では帯電防止剤の塗布性が不十分であったり、従来許されていた帯電防止剤に含まれる界面活性剤などの添加剤によるレジスト形状への影響が半導体製造の品質にかかわるようになってきている。すなわち、近年、100nm以下のレジストの微細加工においては数nmオーダーのレジスト形状の管理を行っているが、帯電防止剤によるレジストへの僅かな影響であってもこのような微細加工レベルではレジスト形状の矩形性を著しく損ねたりする。また、現像工程を経てパターニングされたレジストは、引き続きドライエッチング工程により基板にパターンが転写されるが、半導体デバイスの最小回路線幅の微細化に合わせてパターニングされたレジストの倒壊防止を目的に、レジストパターンの適正なアスペクト比となるようレジストの薄膜化が進んでおり、レジスト形状の変化はエッチング時のパターン転写に大きく影響を及ぼす。つまり、半導体デバイス作製技術の進歩に伴い、化学増幅系レジストの性能維持に対する帯電防止剤への要求は益々厳しくなっており、さらなるレジストへの影響を低減した帯電防止膜が要望されている。また、非化学増幅系レジストにおいても、10nmオーダーの超微細加工に無機レジストが使われることもあり、膜減りを起こすことがある。
【0008】
【特許文献1】特開平11−189746号公報
【特許文献2】特開2003−29410号公報
【特許文献3】特開平6-3813号公報
【特許文献4】特開2002−226721号公報
【特許文献5】特開平8-109351号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、化学増幅系レジストにおけるかぶりや膜減り現象防止に優れた帯電防止剤、該帯電防止剤を用いた帯電防止膜及び被覆物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、水溶性高分子、特に、ポリペプチド結合を有する水溶性高分子化合物またはポリビニル構造を有する特定の水溶性高分子を水溶性導電性高分子と併用することにより、安価で簡単にレジストへの塗布性を付与できる界面活性剤を用いても、塗布性を維持しながら、レジストへの影響(レジストの溶解やレジストの現像の結果生じるレジストのかぶりや膜べり現象)を抑止できることを見出し、かかる知見に基いて本発明を完成するに至った。また、界面活性剤を含有させることにより塗布性を向上させた帯電防止剤は、化学増幅系レジストに対してばかりでなく、微細加工用の非化学増幅系レジストに対しても現像不良、現像時間の変化などのミキシングを起こす場合があるが、今回発明の帯電防止剤は、化学増幅系レジストに対するミキシング抑制に効果があるばかりでなく、このような非化学増幅系レジストに対するミキシング抑制にも効果があることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は以下の帯電防止剤、帯電防止膜及び帯電防止膜被覆物品、並びに帯電防止膜を用いるパターン形成方法に関する。
1.水溶性導電性高分子、溶媒及び水溶性高分子を含む帯電防止剤。
2.水溶性高分子がポリペプチド構造を有する水溶性高分子である前記1に記載の帯電防止剤。
3.水溶性高分子が式(10)
【化1】

(式中、P1は、次式P1(1)
【化2】

または次式P1(2)
【化3】

を表し、P1が前記P1(1)のとき、P2は次式−C(=O)−を表し、かつZはメチレン基−CH(−R)−を表していて、このとき式(10)は、アミノ酸残基(10)a
【化4】

(式中、R,R’は、アミノ酸残基を構成する置換基を表わし、R’が水素原子のときは、Rは独立してアミノ酸残基を構成する置換基を表し、R’が水素原子でないときは、RとR’は協力して、水酸基で置換されていてもよい含窒素環を形成して、アミノ酸残基(10)aはアミノ酸残基(10)a’
【化5】

(式中、Waは、式−(CRab)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Ra,Rbはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、または水酸基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)であってもよい。)で示される繰り返し構造を示し、
1が前記P1(2)のとき、Z=−O−、またはZ=−N(−Q)−であり、
前記Z=−O−のとき、P2=アルキル基であって、式(10)は、アルコキシエチレン残基(10)b
【化6】

で示される繰り返し構造を示し、
前記Z=−N(−Q)−のとき、P2とQとは協力してラクタム環基を形成して、式(10)は、アミドエチレン残基(10)c
【化7】

(式中、Wcは式−(CRcd)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Rc,Rdはそれぞれ独立して水素原子、またはアルキル基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)で示される繰り返し構造を示す。)で示される化学構造を繰り返し構造として有する、前記1に記載の帯電防止剤。
4.水溶性高分子が、前記式(10)a、(10)b、または(10)cで示される繰り返し構造のうち、少なくとも1種を分子内に有する水溶性高分子である前記1に記載の帯電防止剤。
5.水溶性高分子がアミノ酸残基(10)a
【化8】

を繰り返し構造とするポリペプチド構造を有する水溶性高分子である前記1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止剤。
6.水溶性高分子が、式(10)’
【化9】

(式中、Y=−O−のとき、P2=アルキル基であって、式(10)’は、アルコキシエチレン残基(10)b
【化10】

で示される繰り返し構造を示し、
Y=−N(−Q)−のとき、P2とQとは協力してラクタム環基を形成して、式(10)’は、アミドエチレン残基(10)c
【化11】

(式中、Wcは式−(CRcd)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Rc,Rdはそれぞれ独立して水素原子、またはアルキル基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)で示される繰り返し構造を示す。)で示されるポリビニル構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子である前記1、3または4に記載の帯電防止剤。
7.ポリペプチド構造を有する水溶性高分子が、タンパク質加水分解物である前記2〜5のいずれか1項に記載の帯電防止剤。
8.水溶性高分子が、ポリペプチド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルキルエーテルからなる群のうち、少なくとも1種の水溶性高分子である前記1、3、または4に記載の帯電防止剤。
9.水溶性高分子が、ポリビニルピロリドンである前記8に記載の帯電防止剤。
10.水溶性高分子が、重量平均分子量100000以上のポリビニルピロリドンである前記9に記載の帯電防止剤。
11.更に、界面活性剤を含有する前記1〜10のいずれか1項に記載の帯電防止剤。
12.水溶性導電性高分子0.1〜20質量%、ポリペプチド構造を有する水溶性高分子0.0001〜10質量%及び溶媒70.0〜99.8質量%を含む前記1、2、3、4、5、または7に記載の帯電防止剤。
13.水溶性導電性高分子0.1〜20質量%、ポリビニル構造を有する水溶性高分子0.0001〜10質量%及び溶媒70.0〜99.8質量%を含む前記1、3、4、6、8、9、または10に記載の帯電防止剤。
14.水溶性導電性高分子0.1〜20質量%、ポリペプチド構造を有する水溶性高分子を0.0001〜10質量%、界面活性剤0.0001〜2質量%及び溶媒68.0〜99.8質量%含む前記11に記載の帯電防止剤。
15.水溶性導電性高分子0.1〜20質量%、ポリビニル構造を有する水溶性高分子を0.0001〜10質量%、界面活性剤0.0001〜2質量%及び溶媒68.0〜99.8質量%含む前記11に記載の帯電防止剤。
16.水溶性導電性高分子がブレンステッド酸基またはその塩を有するπ共役系導電性高分子である前記1〜15のいずれか1項に記載の帯電防止剤。
17.ブレンステッド酸基がスルホン酸基である前記16に記載の帯電防止剤。
18.水溶性導電性高分子が、下記式(1)
【化12】

(式中、m、nは、それぞれ独立して、0または1を表わす。Xは、S、N−R1(R1は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選択される基を表わす。)、またはOのいずれかを表わし、Aは、−B−SO3-+で表わされる置換基を少なくとも1つ有し、かつその他の置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレンまたはアルケニレン基(二重結合は2つ以上有していてもよい。)を表わし、Bは、−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表わし、p及びrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表わす。)で示される化学構造を含む前記17に記載の帯電防止剤。
19.水溶性導電性高分子が、下記式(2)
【化13】

(式中、R2〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表わす。Bは、−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表わし、p及びrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表わす。)で示される化学構造を含む前記17に記載の帯電防止剤。
20.水溶性導電性高分子が、下記式(3)
【化14】

(式中、R5は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表わし、Bは、−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表わし、p及びrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表わす。)で示される化学構造を含む前記17に記載の帯電防止剤。
21.水溶性導電性高分子が、下記式(4)
【化15】

(式中、R6とR7は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表わし、R8は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選択される一価の基を表わし、Bは、−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表わし、p及びrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表わす。)で示される化学構造を含む前記17に記載の帯電防止剤。
22.水溶性導電性高分子が、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルを含む重合体である前記19に記載の帯電防止剤。
23.前記1〜22のいずれか1項に記載の帯電防止剤を用いて得られる帯電防止膜。
24.前記23に記載の帯電防止膜で被覆して得られる被覆物品。
25.被覆表面が下地基板に塗布した感光性組成物もしくは感荷電粒子線組成物である前記24に記載の被覆物品。
26.前記23に記載の帯電防止膜を用いることを特徴とするパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の帯電防止剤は、化学増幅系レジスト表面に塗布し、被覆帯電防止膜を形成する際に化学増幅系レジストの品質変化(例えば、かぶり、膜減り、Tトップや肩落ち等のレジストの形状変化)を起こすことがないので、パターンを精度良く形成することができ、帯電防止効果により荷電粒子線を用いた描画工程で位置ズレを防止することができるため、より良い精度でパターンを形成することができる。また、本発明の帯電防止剤は、化学増幅系レジスト表面に塗布して用いて、現像不良、現像時間の変化などのミキシングを抑制する効果があるばかりでなく、非化学増幅系レジストに対するミキシング抑制にも効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明に係る帯電防止剤は、水溶性導電性高分子、溶媒及び水溶性高分子、特に、ポリペプチド結合を有する水溶性高分子化合物、なかでも前記式(10)aで示されるアミノ酸残基を繰り返し構造として有する水溶性高分子、および前記式(10)bで示されるアルコキシエチレン残基を繰り返し構造として有する水溶性高分子、および前記式(10)cで示されるアミドエチレン残基を繰り返し構造として有する水溶性高分子、および、これらの式(10)a、(10)b、および(10)cで示される繰り返し残基のうち少なくとも1種を繰り返し構造として有する水溶性高分子を含む、前記式(10)で示される構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子を含む組成物であり、更に界面活性剤を含んでいてもよい。
【0014】
本発明の帯電防止剤を物品に塗布した後、放置または乾燥すれば、帯電防止剤に含まれる溶媒が揮発等によって減少し、流動性の無くなった半固体あるいは固体となる。この流動性のなくなった膜体を帯電防止膜と呼ぶ。
【0015】
(I)水溶性導電性高分子
本発明で使用される水溶性導電性高分子としては、例えば、ブレンステッド酸基またはその塩を有するπ共役系導電性高分子が挙げられる。該ブレンステッド酸基は、π電子共役主鎖に直接結合していてもよいし、もしくはスペーサー(例えば、アルキレン側鎖あるいはオキシアルキレン側鎖)を介して結合していてもよく、結合形態は高分子の一次構造には制限されない。
ブレンステッド酸基としては、例えばスルホン酸基、カルボン酸基などが挙げられ、スルホン酸基が好ましい。
【0016】
水溶性導電性高分子の具体例としては、ポリ(イソチアナフテンスルホン酸)、ポリ(チオフェンアルキルスルホン酸)、ポリ(ピロールアルキルスルホン酸)、ポリ(アニリンスルホン酸)、ポリ(アニリンアルカンスルホン酸)、ポリ(アニリンチオアルカンスルホン酸)等、あるいはこれらの重合体のスルホン酸基または塩を有する繰り返し単位を含む共重合体、またはこれらの各種塩構造体及び置換誘導体等の自己ドープ型導電性高分子を挙げることができる。
【0017】
また、前記共重合体におけるスルホン酸基を含む繰り返し単位は、重合体の全繰り返し単位の50〜100モル%が好ましく、80〜100モル%がさらに好ましい。
【0018】
本発明に用いる共重合体は、他のπ共役系化学構造からなる繰り返し単位を含む共重合体であってもよく、2〜5種の繰り返し単位からなる共重合体組成であってもよい。
なお、本発明にいう「繰り返し単位を含む共重合体」は、必ずしもその単位を連続して含む共重合体に限定されず、π共役系主鎖に基づく所望の導電性が発現される限りにおいてランダムコポリマーのようにπ共役系主鎖に不規則、不連続に繰り返し単位を含む重合体でもよい。
【0019】
水溶性導電性高分子におけるスルホン酸基またはその塩を含む繰り返し単位の例として、下記式(1)、(2)、(3)及び(4)で示される化学構造が挙げられる。
【化16】

式(1)中、m、nは、それぞれ独立して、0または1を表わす。Xは、S、N−R1、またはOのいずれかを表わし、R1は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選択される基を表わし、Aは、−B−SO3-+で表わされる置換基を少なくとも1つ有し、かつその他の置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレンまたはアルケニレン基(二重結合は2つ以上有していてもよい。)を表わし、Bは、−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表わし、p及びrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオンまたは第4級アンモニウムイオンを表わす。
【0020】
アルキレンまたはアルケニレン基の他の置換基としては、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、及び置換フェニル基から選ばれる1種以上である。
1が表わす置換フェニル基及び上記の置換フェニル基の置換基としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられ、置換フェニル基はこれら置換基から選ばれる1〜5個の基で置換されたフェニル基である。
【0021】
【化17】

式(2)中、R2〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表わし、B及びM+は前記と同じ意味を表わす。
【0022】
2、R3またはR4が表わす置換フェニル基の置換基としては、例えば炭素数1〜8のアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられ、複数基が置換していてもよい。
【0023】
2、R3及びR4が表わす炭化水素基及びアルコキシ基中の任意のエチレン基は、カルボニル基(−CO−)、オキシ基(−O−)、カルボニルオキシ基(−COO−または−OCO−)、アミノカルボニル基(−NH2−CO−または−CO−NH2−)、アミノスルホニル基(−NH2−SO2−または−SO2−NH2−)、スルファニル基(−S−)、スルフィニル基(−S(O)−)、スルホニル基(−SO2−)、スルホニルオキシ基(−SO2−O−または−O−SO2−)、またはイミノ基(−NH−)に置き換わっていてもよい。
【0024】
具体的には、アルキルカルボニルアルキル基、アルコキシアルキル基、アルコキシアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アシルオキシ基、アシルオキシアルキル基、アルキルアミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニルアルキル基、アルキルカルボニルアミノ基、アルキルカルボニルアミノアルキル基、アルキルアミノスルホニル基、アルキルアミノスルホニルアルキル基、アルキルスルホニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノアルキル基、アルキルチオ基、アルキルチオアルキル基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルフィニルアルキル基、アルキルスルホニル基、アルキルスルホニルアルキル基、アルキルスルホニルオキシ基、アルキルスルホニルオキシアルキル基、アルキルアミノ基、及び上記のアルキル部分が置換されていてもよいフェニル基に置き換わったものが挙げられる。フェニル基の置換基としては、R2〜R4が表わす置換フェニル基の置換基と同様である。
【0025】
【化18】

式(3)中、R5は、前記のR2〜R4と同様の意味を表わし、B及びM+は前記と同じ意味を表わす。
【0026】
【化19】

式(4)中、R6とR7は、それぞれ独立して、前記のR2〜R4と同様の意味を表わし、B及びM+は前記と同じ意味を表わし、R8は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選択される基を表わす。R8が表わす置換フェニル基の置換基は、R2〜R4が表わす置換フェニル基の置換基と同様である。
【0027】
式(1)〜式(4)の定義において飽和または不飽和の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子からなる基をいい、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、芳香族炭素環及びこれらの基中の1つまたは複数の水素原子が他の基により置換された基が挙げられる。
【0028】
2〜R5としては、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基、及び炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基が好ましく、水素原子及び炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状のアルコキシ基がさらに好ましい。R6またはR7としては、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和炭化水素基、フェニル基、及び置換フェニル基が好ましい。
【0029】
2〜R7の特に好ましい例としては、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、カルボニル基含有基、アルコキシアルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、フェニル基、置換フェニル基、及びスルホン酸基が挙げられる。これらの置換基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、アリル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル等のアルキル基、ビニル、1−プロピニル、1−ブテニル等のアルケニル基、エトキシエチル、メトキシエチル、メトキシエトキシエチル等のアルコキシアルキル基、アセトニル、フェナシル等のカルボニル基含有基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、オクチルオキシ、ドデシルオキシ等のアルコキシ基、メトキシエトキシ、メトキシエトキシエトキシ等のアルコキシアルコキシ基、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブトキシカルボニル等のアルコキシカルボニル基、アセトキシ、ブチロイルオキシ等のアシルオキシ基、フェニル、フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル等の、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基などの置換基を有していてもよいフェニル基などが挙げられる。
【0030】
前記式(1)〜(4)において、Bの好ましい例としては、単結合、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、アリーレン、ブタジエニレン、オキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレン、メチレンオキシエチレン、エチレンオキシエチレン等が挙げられる。特に好ましいBとしては、単結合、エチレン、プロピレン、オキシエチレン、エチレンオキシエチレンである。
【0031】
+が表わすカチオンは2種以上が混在していてもよい。
アルカリ金属イオンの例としては、例えばNa+、Li+及びK+が挙げられる。
【0032】
第4級アンモニウムイオンは、N(R9)(R10)(R11)(R12+で示される。R9〜R12はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30の直鎖状もしくは分岐状の置換または非置換アルキル基、または置換もしくは非置換アリール基を表わし、アルコキシ基、ヒドロキシル基、オキシアルキレン基、チオアルキレン基、アゾ基、アゾベンゼン基、p−ジフェニレンオキシ基等の炭素、水素以外の元素を含む基を含むアルキルまたはアリール基でもよい。
【0033】
第4級アンモニウムイオンとしては、例えばNH4+、NH(CH33+、NH(C653+、N(CH32(CH2OH)(CH2−Z)+等(ただし、Zは化学式量が600以下の任意の置換基を表し、例えば、フェノキシ基、p−ジフェニレンオキシ基、p−アルコキシジフェニレンオキシ基、p−アルコキシフェニルアゾフェノキシ基等が挙げられる)の非置換またはアルキル置換もしくはアリール置換型カチオンが用いられる。なお、特定カチオンに変換するために、通常のイオン交換樹脂を用いてもよい。
【0034】
9〜R12のアルキル基中の任意のエチレン基は、カルボニル基(−CO−)、オキシ基(−O−)、カルボニルオキシ基(−COO−または−OCO−)、アミノカルボニル基(−NH2−CO−または−CO−NH2−)、アミノスルホニル基(−NH2−SO2−または−SO2−NH2−)、スルファニル基(−S−)、スルフィニル基(−S(O)−)、スルホニル基(−SO2−)、スルホニルオキシ基(−SO2−O−または−O−SO2−)、またはイミノ基(−NH−)に置き換わっていてもよい。
【0035】
式(1)、(2)または(3)で示される化学構造の好ましい具体例としては、5−(3’−プロパンスルホ)−4,7−ジオキシシクロヘキサ[2,3−c]チオフェン−1,3−ジイル、5−(2’−エタンスルホ)−4,7−ジオキシシクロヘキサ[2,3−c]チオフェン−1,3−ジイル、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、4−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、4−メチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−メチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−メチル−4−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、5−メチル−4−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−エチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−プロピル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−ブチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−ヘキシル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−デシル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−メトキシ−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−エトキシ−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−クロロ−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−ブロモ−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、6−トリフルオロメチル−5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(スルホメタン)イソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(2’−スルホエタン)イソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(2’−スルホエトキシ)イソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(2’−(2”−スルホエトキシ)メタン)−イソチアナフテン−1,3−ジイル、5−(2’−(2”−スルホエトキシ)エタン)−イソチアナフテン−1,3−ジイル等、もしくはそれらのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0036】
式(4)で示される化学構造の好ましい具体例としては、2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、3−メチル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−メチル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、6−メチル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−エチル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−ヘキシル−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、3−メトキシ−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−メトキシ−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、6−メトキシ−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、5−エトキシ−2−スルホ−1,4−イミノフェニレン、2−スルホ−N−メチル−1,4−イミノフェニレン、2−スルホ−N−エチル−1,4−イミノフェニレン等、もしくはそのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0037】
また、本発明において使用できる、上記式(1)〜(4)以外の水溶性導電性高分子の具体例としては、ポリ(カルバゾール−N−アルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレン−オキシアルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−アルカンスルホン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−オキシアルカンスルホン酸)、ポリ(アニリン−N−アルカンスルホン酸)、ポリ(チオフェンアルキルカルボン酸)、ポリ(チオフェンオキシアルキルカルボン酸)、ポリ(ポリピロールアルキルカルボン酸)、ポリ(ピロールオキシアルキルカルボン酸)、ポリ(カルバゾール−N−アルキルカルボン酸)、ポリ(フェニレン−オキシアルキルカルボン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−アルキルカルボン酸)、ポリ(フェニレンビニレン−オキシアルキルカルボン酸)、ポリ(アニリン−N−アルキルカルボン酸)またはこれらの置換誘導体、6−スルホナフト[2,3−c]チオフェン−1,3−ジイル等、もしくはそれらのリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、メチルアンモニウム塩、エチルアンモニウム塩、ジメチルアンモニウム塩、ジエチルアンモニウム塩、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
本発明に用いられる水溶性導電性高分子の分子量としては、主鎖を構成する繰り返し単位数(重合度)で5〜2000、好ましくは10〜1000である。
【0039】
本発明に用いる水溶性導電性高分子の特に好ましい具体例としては、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルの重合体、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルを80モル%以上含有するランダム共重合体、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルとイソチアナフテン−1,3−ジイルとの共重合体、ポリ(3−(3−チエニル)エタンスルホン酸)、ポリ(3−(3−チエニル)プロパンスルホン酸)、ポリ(2−(3−チエニル)オキシエタンスルホン酸)、2−スルホ−1,4−イミノフェニレンを50モル%以上含有するランダムコポリマー、2−スルホ−1,4−イミノフェニレンと1,4−イミノフェニレンとの共重合体、またはこれらの重合体のリチウム塩、ナトリウム塩、アンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩等が挙げられる。
【0040】
(II)溶媒
本発明で用いる溶媒は、水と混和し水溶性高分子および水溶性導電性高分子を溶解するものである。溶媒の具体例としては、水、1,4−ジオキサンやテトラヒドロフラン等のエーテル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類、アセトニトリルやベンゾニトリル等のニトリル類、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどのアルコール類、N、N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドンなどの非プロトン性極性溶媒、硫酸等の鉱酸、酢酸などの有機酸等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で、または2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0041】
(III)水溶性高分子
本発明で使用する水溶性高分子としては、ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、および
式(10)
【化20】

(式中、P1は、次式P1(1)
【化21】

または次式P1(2)
【化22】

を表し、P1が前記P1(1)のとき、P2は次式−C(=O)−を表し、かつZはメチレン基−CH(−R)−を表していて、このとき式(10)は、アミノ酸残基(10)a
【化23】

(式中、R,R’は、アミノ酸残基を構成する置換基を表わし、R’が水素原子のときはRは独立してアミノ酸残基を構成する置換基を表し、R’が水素原子でないときは、RとR’は協力して、水酸基で置換されていてもよい含窒素環を形成して、アミノ酸残基(10)aはアミノ酸残基(10)a’
【化24】

(式中、Waは、式−(CRab)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Ra,Rbはそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、または水酸基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)であってもよく、式(10)a’は、好ましくは式(10)a”
【化25】

(式中、Wは、いずれかの炭素原子が水酸基で置換されていてもよいエチレン基を表す。)であってもよい。)で示される繰り返し構造(ポリペプチド構造)を示し、
1が前記P1(2)のとき、Z=−O−、またはZ=−N(−Q)−であり、
前記Z=−O−のとき、P2=アルキル基であって、式(10)は、アルコキシエチレン残基(10)b
【化26】

で示される繰り返し構造(ポリビニルアルキルエーテル構造)を示し、
前記Z=−N(−Q)−のとき、P2とQとは協力してラクタム環基を形成して、式(10)は、アミドエチレン残基
【化27】

(式中、Wcは式−(CRcd)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Rc,Rdはそれぞれ独立して水素原子、またはアルキル基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)で示される繰り返し構造を示し、式(10)cのうち、次式(10)c’
【化28】

(ただし、nは、1〜7の整数を表す。)で示される繰り返し構造(ポリビニルラクタム構造)が好ましい。)で示される化学構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子が好ましい。
【0042】
[ポリペプチド構造を有する水溶性高分子]
本発明で使用するポリペプチド構造を有する水溶性高分子は、前記アミノ酸残基(10)a
【化29】

を繰り返し構造とするポリペプチド構造を有する水溶性高分子を含み、これらは、各種タンパク質を加水分解して得る方法、任意のアミノ酸やオリゴペプチドなどから合成する方法、微生物等の生物を用い生産する方法等により得ることができる。各種タンパク質を加水分解する場合、使用するタンパク質は、天然に広く存在し容易に入手し得る天然由来物が好ましく、例えば、ケラチンやコラーゲンといったタンパク質は繊維性タンパク質で、生体を形成する構造タンパク質でもある。任意のアミノ酸からポリペプチドを合成する例としては、2個のアミノ酸分子またはその誘導体(例えば酸クロリドにしたものなど)間の縮合を繰り返して一つ一つのアミノ酸残基(例えば式(10)aで示されるアミノ酸残基など)をペプチド結合させる方法、精製アミノ酸N−カルボキシ無水物を重合する方法、ポリスチレンフィルムのような高分子に反応基をつけて1種類のアミノ酸を結合させ、そのアミノ酸を反応し易い構造に変えてから、また次の別のアミノ酸を結合させていくというメリーフィールドの固相合成方法が挙げられる。なお、アミノ酸残基(10)aとしては、グリシン(Gly)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、セリン(Ser)、トレオニン(Thr)、アスパラギン酸(Asp)、アスパラギン(Asn)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、システイン(Cys)、メチオニン(Met)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、フェニルアラニン(Phe)、チロシン(Tyr)、トリプトファン(Trp)、プロリン(Pro)、3−ヒドロキシプロリン(3Hyp)、4−ヒドロキシプロリン(4Hyp)のアミノ酸残基(前記例示のアミノ酸について括弧内にそのアミノ酸残基の3文字略号を示した。)などが挙げられる。
【0043】
タンパク質の加水分解物としては、例えば、牛皮由来ゼラチン、豚皮由来ゼラチン、魚皮由来ゼラチンや魚鱗などに多く含まれるコラーゲンの加水分解物である加水分解コラーゲンや、羊毛や羽毛などに多く含まれるケラチンの加水分解物である加水分解ケラチンなどや、乳などに多く含まれるカゼインの加水分解物である加水分解カゼインなど動物性タンパク質由来の加水分解物がある。また、絹糸からはシルクを由来とする加水分解シルク、大豆タンパクを由来とする加水分解カゼイン、コンキオリンや小麦タンパクなど、植物性タンパク質の加水分解物が挙げられる。
【0044】
ポリペプチド構造を有する水溶性高分子は前記各種アミノ酸を含むことから、化学修飾を容易に行うことができる。本発明においては、化学修飾を行なった種々の誘導体も使用することができる。化学修飾の具体例としては、ポリペプチド末端アミノ基の4級アンモニウムカチオン化及びシリル化や、末端カルボキシル基のエステル化などが挙げられる。4級アンモニウムカチオン化は、ポリペプチド末端アミノ基だけでなく、リシンやヒスチジンなどの塩基性アミノ酸の側鎖に誘導することができる。また、溶媒可溶化や界面活性効果を付与する目的で、各種脂肪酸を縮合させることもできる。
【0045】
[ポリビニル構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子]
本発明で用いるポリビニル構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子としては、特に好適なものとして、前記式(10)’
【化30】

(式中、Y=−O−のとき、P2=アルキル基であって、式(10)’は、アルコキシエチレン残基(10)b
【化31】

で示される繰り返し構造(ポリビニルアルキルエーテル構造)を示し、
Y=−N(−Q)−のとき、P2とQとは協力してラクタム環基を形成して、式(10)’は、アミドエチレン残基
【化32】

(式中、Wcは式−(CRcd)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Rc,Rdはそれぞれ独立して水素原子、またはアルキル基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)で示される繰り返し構造を示し、式(10)cのうち、次式(10)c’
【化33】

(ただし、nは、1〜7の整数を表す。)で示される繰り返し構造(ポリビニルラクタム構造)が好ましい。)で示される化学構造(ポリビニル構造)を繰り返し構造として有する水溶性高分子が好ましい。
【0046】
本発明に係るポリビニル構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子の製法は特に限定しないが、例えば、対応するビニル基を有するモノマーの少なくとも1種を、過酸化物、亜硫酸塩、アゾ触媒、フッ化ホウ素、塩化アルミニウムなどの重合触媒を用いて重合させることにより、目的の水溶性高分子を得ることができる。すなわち、例えば、前記式(20)
【化34】

で示されるビニル基を有するモノマーの1種または2種以上を単独でまたは複数を、前記カチオン系重合触媒を用いて重合または共重合させることによっても、式(10)’
【化35】

で示される繰り返し構造(ポリビニル構造)を有する水溶性高分子を製造することができる。
【0047】
すなわち、本発明で特に好ましく用いられるポリビニル構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子(10)’は、式(20)
【化36】

(式中、Y=−O−のとき、P2=アルキル基であって、式(20)は、ビニルアルキルエーテル(20)b
【化37】

を示し、
Y=−N(−Q)−のとき、P2とQとは協力してラクタム環基を形成して、式(20)は、N−ビニルラクタム(20)c
【化38】

(式中、Wcは式−(CRcd)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Rc,Rdはそれぞれ独立して水素原子、またはアルキル基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)を示し、式(20)cのうち、次式(20)c’
【化39】

(ただし、nは、1〜7の整数を表す。)が好ましい。)で示されるビニル基を有するモノマーの少なくとも1種を重合させることによっても得ることができる。得られる目的の水溶性高分子は、式(10)’
【化40】

(式中、Y=−O−のとき、P2=アルキル基であって、式(10)’は、アルコキシエチレン残基(10)b
【化41】

で示される繰り返し構造(ポリビニルアルキルエーテル構造)を示し、
Y=−N(−Q)−のとき、P2とQとは協力してラクタム環基を形成して、式(10)’は、
アミドエチレン残基
【化42】

(式中、Wcは式−(CRcd)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Rc,Rdはそれぞれ独立して水素原子、またはアルキル基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)で示される繰り返し構造を示し、式(10)cのうち、次式(10)c’
【化43】

(ただし、nは、1〜7の整数を表す。)で示される繰り返し構造(ポリビニルラクタム構造)が好ましい。)で示される化学構造(ポリビニル構造)を繰り返し構造として有する水溶性高分子が好ましい。
【0048】
前記アルキル基P2、Ra、Rb、Rc、およびRdとしては、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状の鎖状または環状アルキル基が好ましく、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基等の直鎖状または分岐状の鎖状アルキル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の環状アルキル基が挙げられ、これらのうち、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基がより好ましい。前記N−ビニルラクタム(20)cおよび前記アミドエチレン残基(10)cのラクタム環基を形成するメチレン基−(CH2)n−のnは、1〜7の整数が好ましく、1〜5の整数がより好ましい。
【0049】
前記P2とQとが協力して形成するラクタム環基のうち、特に好ましいラクタム環基(n=n)
【化44】

の具体例としては、
n=1のラクタム環基(β−プロピオラクタム基)
【化45】

n=2のラクタム環基(γ−ブチロラクタム基=ビニルピロリドンまたはその重合体のラクタム環基)
【化46】

n=3のラクタム環基(δ−バレロラクタム基)
【化47】

n=4のラクタム環基(ε-カプロラクタム基=ビニルカプロラクタムまたはその重合体のラクタム環基)
【化48】

n=5のラクタム環基
【化49】

などが挙げられる。
【0050】
前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特に好適な水溶性高分子の具体例としては、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、およびそれらの共重合体、または、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、およびそれらの共重合体などが挙げられる。共重合体の共重合比は任意である。用いられる高分子は水溶性であればよいが、当該水溶性高分子の重量平均分子量の好ましい範囲はモノマーの種類により異なるが、通常、1000〜2,000,000の範囲であることが望ましく、より好ましくは5000〜2,000,000の範囲である。分子量が低いと充分な効果が得られないおそれがあるばかりか、レジストを溶解するおそれがある。2,000,000を超えると溶解させることが困難になる場合があったり、溶解後の組成物の粘度上昇により塗布が困難になる場合がある。ポリビニルピロリドンは、通常、重量平均分子量が100,000以上、好ましくは800,000〜2,000,000の範囲、より好ましくは、1,000,000〜1,800,000のものを用いる。100,000未満では、所望の効果が得られないおそれがある。
【0051】
本発明に係る前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子は、これらを界面活性剤と併用して含有させることにより、良塗布性を維持しながら、ミキシングを防止することができる。これら、本発明に係る前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子のミキシング抑制の効果には容量依存性が認められ、通常、組成物全体に対し0.0001〜10%の範囲、より好ましくは0.01〜2質量%の範囲で用いられる。少なすぎると、ミキシング抑制効果が不十分となるおそれがあり、多すぎると、導電性ポリマーの比率が下がることによって導電性の低下を招くおそれがある。具体的には、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリビニルカプロラクタム、およびそれらの重合体、および共重合体などの前記ポリビニルラクタム構造を有する水溶性高分子には、ミキシング抑制効果が認められ、ポリビニルピロリドンの場合は、分子量に依存して、分子量が大きいほどミキシング抑制効果が大きくなる傾向がある。また、前記ポリビニルアルキルエーテル構造を有する水溶性高分子にも、同様のミキシング抑制効果が認められる。なお、本発明に係る前記ポリビニル構造を有する水溶性高分子を含有しても、レジストへの影響は認められない。これに対して、水溶性高分子として、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリスチレンスルホン酸を用いるときは、その分子量の大小にかかわらず、ミキシングを抑制しない。すなわち、導電性高分子に界面活性剤、およびこれらの水溶性高分子を含有させると、塗布性は向上するが、レジストへのミキシングが起こり、ネガレジストの場合、現像時間が延長する。また、ポリビニルイミダゾール、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミンなどの塩基性残基を有する水溶性ポリマーは、スルホン酸基を有する水溶性導電性高分子と併用することにより、沈殿が生じることがあり、好ましくない。
【0052】
今回発明の帯電防止剤、特に、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を用いた帯電防止剤は、化学増幅系レジストに対するミキシング抑制ばかりでなく、非化学増幅系レジストに対するミキシング抑制にも効果がある。すなわち、例えば、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を用いた帯電防止剤は、ネガ型化学増幅系レジストに対してミキシング抑制効果を示すばかりでなく、非化学増幅系レジストに対してもミキシング抑制効果を示す。さらに、前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を用いた帯電防止剤、または前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子を用いた場合は、ポジ型化学増幅系レジストの膜減りが小さい。また、本発明の帯電防止剤は、化学増幅系レジストおよび非化学増幅系レジストにおいても低接触角化したまま界面活性剤によるレジストへの影響を抑制できる。
【0053】
これらの、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子は、化学増幅系レジストとミキシングを起こさない。さらに、帯電防止剤中に後述する界面活性剤などのレジストとミキシングを起こす化合物を含有していても、これらの、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子が含まれることにより耐レジストミキシング抑制特性を付与することができる。
【0054】
(IV)界面活性剤
本発明で使用できる界面活性剤は界面活性効果を発現する化合物であれば特に限定されず、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤のいずれもが使用可能である。
【0055】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルエーテルカルボン酸、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、α−オレフィンスルホン酸、アルカンスルフォネート、ジアルキルスルホコハク酸、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、アルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル、高級アルコールリン酸エステル、高級アルコール酸化エチレン付加物リン酸エステル、アシル−N−メチルタウリンなどが挙げられ、その塩類も用いることができる。
【0056】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、モノアルキルアンモニウム、ジアルキルアンモニウム、エトキシ化アンモニウム、4級アミン、アルキルアミン酢酸などが挙げられ、その塩類も用いることができる。
【0057】
両性界面活性剤の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキサイド、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン、アラニン類などが挙げられ、その塩類も用いることができる。
【0058】
ノニオン性界面活性剤の具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエ-テル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アセチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸アルキレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、脂肪酸アルカノールアミド、脂肪酸アミドアルキレンオキサイド付加物、アミンEO付加物、アミンPO付加物などが挙げられる。
【0059】
これらの界面活性剤は、単独で使用するか、または2種以上を混合して使用することができる。好ましくはアニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤の少なくとも1種の界面活性剤であり、さらに、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤またはカチオン性界面活性剤や水溶性高分子などの界面活性効果をもつ化合物を混合して使用することもできる。
【0060】
(V)配合量
本発明の帯電防止剤の各成分の配合量としては、水溶性導電性高分子0.1〜20質量%、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子0.0001〜10質量%及び溶媒70.0〜99.8質量%が好ましい。さらに好ましくは、水溶性導電性高分子0.2〜5質量%、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子0.01〜2質量%及び溶媒が93〜99.7質量%である。
【0061】
また、界面活性剤を含む組成では、水溶性導電性高分子0.1〜20質量%、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を0.0001〜10質量%、界面活性剤0.0001〜2質量%及び溶媒68.0〜99.8質量%が好ましい。さらに好ましくは、水溶性導電性高分子0.2〜5質量%、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子0.01〜2質量%、界面活性剤0.0001〜10質量%及び溶媒83〜99.7質量%である。
【0062】
前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子の量が0.0001質量%未満では、レジストへのミキシング層形成抑制効果は期待できない。また、10質量%を超えると導電性が低下するおそれがあるので好ましくない。本発明で使用される、前記ポリペプチド構造を有する水溶性高分子、または前記ポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子の水溶性とは、上記効果が発現する添加量において溶解するものをいう。
【0063】
(VI)用途
本発明の帯電防止剤は、非化学増幅系レジスト及び化学増幅系レジストのいずれに対しても使用することができる。また、ポジ型レジスト及びネガ型レジストのいずれにも使用することができる。
【0064】
非化学増幅系レジストに対しては、塗布性に優れた帯電防止剤として有効である。非化学増幅系レジストの具体例としては、ノボラック樹脂等のフェノール系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリレート樹脂等のアクリル系樹脂、α−メチルスチレンとα−クロロアクリル酸との共重合体系等やカリックスアレーンが挙げられる。
その他には、非化学増幅系レジストには無機系のレジストもあるが、具体例としては、ヒドロジェンシルセスキオキサン(HSQ)をメチルイソブチルケトンなどの溶剤に溶かしたものがある。HSQはフラッシュメモリーなどの半導体デバイスの層間絶縁膜として使用されており、レジストは表面疎水性が強い。このレジストは、帯電防止剤によってレジストミキシングを起こすことがある。
【0065】
化学増幅系レジストに対しては、本発明の帯電防止膜と化学増幅系レジストとの接触面のミキシング層の形成防止がより効果的に認められる。化学増幅系レジストの具体例としては、フェノール樹脂系、アクリル樹脂系、アジド化合物系等の感光性樹脂、ポリメタクリレート樹脂系、ポリビニルフェノール系やポリヒドロキシスチレン系、α−メチルスチレンとα−クロロアクリル酸との共重合体系等の感荷電粒子線樹脂が挙げられる。
【0066】
また、前記非化学増幅系レジスト及び化学増幅系レジスト中には感光剤、アジド化合物、架橋剤、溶解阻害剤、酸発生剤等の添加剤が加えられてもよい。
【0067】
本発明の帯電防止剤は、溶液中に含まれる水溶性導電性高分子のブレンステッド酸及びその他添加剤の中和にM+−OH-(式中、M+は前記と同じ意味であり、水素イオン、アルカリ金属イオンまたは第4級アンモニウムイオンを表わす。)で示される化合物を使用することができる。この化合物の添加量を変えることにより、帯電防止剤のpHを酸性〜アルカリ性の間で任意に調整することができる。
本発明の帯電防止剤のpHとしては、pH2〜9が好ましく、pH3〜8がさらに好ましい。化学増幅系レジストを用いる場合には、pH2未満だとプロトン濃度が高くレジストの現像性能に悪影響を及ぼす可能性がある。pH9を超えると水溶性導電性高分子が脱ドープを起こしてしまい電気伝導度が低下するおそれがある。
【0068】
本発明の帯電防止剤をレジスト表面に塗布して、帯電防止膜を形成する。帯電防止剤をレジスト表面に塗布する方法としては、回転塗布法が好ましいが、その他の方法、例えばディッピング法(浸漬法)、吹付け法、バーコーター法等を用いてもよい。塗布後に室温下風乾、もしくはオーブンやホットプレートでレジストが塗布された基材を加熱処理することにより帯電防止膜が形成される。なお、不活性ガス雰囲気中で加熱処理を行うと溶媒性除去のためにより好ましい。
【0069】
本発明の帯電防止膜が被覆された物品としては、例えば、帯電防止膜とレジストが積層された状態の基板などが挙げられる。基板材料としては、シリコンウエハー、ガリウム砒素ウエハー、インジウムリンウエハー等の化合物半導体ウエハー、石英基板、ガラス基板、磁性体基板等が挙げられる。また、レジストを用いないでイオンビームなどで造形する場合など、加工したい材料に被覆することもできる。
【0070】
なお、本発明の物品には、半導体製造過程及びフォトマスク、レチクル、ステンシルマスク、ナノインプリントのテンプレート等の製造過程において一時的に存在する基板も含まれる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に説明するが、本発明は以下の例により何等制限されるものではない。なお、水溶液のpHは、ガラス電極式水素イオン濃度計pH METER F−13((株)堀場製作所製)にて測定した。
【0072】
[水溶性導電性高分子]
・ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル):
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)を、特開平7−48436号公報に記載の方法を参考にして合成及び精製した。得られた水溶性導電性高分子は、重合体繰返し単位のスルホン酸基による置換率をアルカリによる中和滴定で求めたところ、スルホン酸置換体組成がほぼ100モル%(モル分率で1.0)の重合体であった。分子量は、GPC測定から数平均分子量が18000であった(ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)。得られたポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)は、0.1wt%水溶液となるよう調製し、1wt%となるよう、ミリポア社製ペリコンXL(膜タイプBiomax−10)により濃縮した。この操作を5回繰り返し実施することで精製した。
・ポリ(3−(3−チエニル)プロパンスルホン酸):
ポリ(3−(3−チエニル)プロパンスルホン酸)は、第39回高分子学会予稿集(Polymer Preprints Japan)第39巻.561頁(1990年)記載の方法を用いて合成した。分子量は、GPC測定から重量平均分子量が100000であった(プルラン換算)。得られたポリ(3−(3−チエニル)プロパンスルホン酸)は、0.1wt%水溶液となるよう調製し、1wt%となるよう、ミリポア社製ペリコンXL(膜タイプBiomax−10)により濃縮した。この操作を5回繰り返し実施することで精製した。
・ポリ(アニリン−3−スルホン酸):
ポリ(アニリン−3−スルホン酸)は、J.Am.Chem.Soc.,112.2800頁(1990年)を参考にして合成した。分子量は、GPC測定から重量平均分子量が20000であった(プルラン換算)。得られたポリ(アニリン−3−スルホン酸)は、0.1wt%水溶液となるよう調製し、1wt%となるよう、ミリポア社製ペリコンXL(膜タイプBiomax−10)により濃縮した。この操作を5回繰り返し実施することで精製した。
【0073】
[ポリペプチド構造を有する水溶性高分子]
・加水分解コラーゲン(添加剤A):プロモイスW−42SP(Mn:1000)
・加水分解コラーゲン(添加剤B):プロモイスW−32(Mn:400)
・加水分解コラーゲン(添加剤C):プロモイスW−52P(Mn:2000)
・加水分解ケラチン(添加剤D):プロモイスWK−H(Mn:1000)
・加水分解ケラチン(添加剤E):プロモイスWK−L(Mn:4000)
・加水分解シルク(添加剤F):プロモイスSILK−700SP(Mn:350)
・加水分解シルク(添加剤G):プロモイスSILK−1000P(Mn:1000)
各添加剤の分子量は数平均分子量(Mn)で示しており、添加剤A〜Fは総窒素量及びアミノ酸窒素量をもとに計算したもの、添加剤Gはゲルろ過分析により測定したものである。上記のポリペプチド構造を有する水溶性高分子は、全て成和化成(株)社製である。
【0074】
[ポリビニル構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子]
・ポリビニルメチルエーテル(添加剤H):アルドリッチ社製ポリ(メチルビニルエーテル)50%水溶液
・ポリビニルピロリドン(添加剤I):アルドリッチ社製(Mw1300000)
・ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム共重合体(添加剤J):BASF社製LuvitecVPC55K65W
・ポリビニルカプロラクタム(添加剤K):BASF社製Luvicap EGを限外濾過膜により精製して作製した。
・ポリビニルピロリドン(添加剤L):アルドリッチ社製(Mw55,000)
・ポリスチレンスルホン酸アンモニウム塩(添加剤M):アルドリッチ社製(Mw200,000)
・ポリアクリルアミド(添加剤N):アルドリッチ社製(Mw10,000)
・ポリアクリル酸(添加剤O):アルドリッチ社製(Mw250,000)
なお、限外濾過膜による精製は、ミリポア社製ペリコンXL(膜タイプBiomax-5)を用い、BASF社製Luvicap EGに対し、精製水での希釈、濃縮を繰り返して、精製水以外の溶剤を除去することにより行った。
【0075】
[界面活性剤]
・ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P):花王(株)社製ペレックスFS
・アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸(添加剤Q):花王(株)社製ペレックスSSH(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム)をカチオン型イオン交換樹脂(オルガノ(株)社製アンバーライトIR−120B)により脱ナトリウムすることにより作製。
【0076】
実施例1
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表1に示す。
【0077】
実施例2
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.1質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表1に示す。
【0078】
実施例3
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B及びB−2)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0079】
実施例4
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸(添加剤Q)0.05質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.1質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表1に示す。
【0080】
実施例5
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸(添加剤Q)0.05質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ポジ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定B)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)、ポジ型化学増幅系レジストの膜減り測定(測定条件E)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表1及び表7に示す。
【0081】
実施例6
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解コラーゲン(添加剤B)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表2に示す。
【0082】
実施例7
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解コラーゲン(添加剤C)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表2に示す。
【0083】
実施例8
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解ケラチン(添加剤D)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表2に示す。
【0084】
実施例9
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解ケラチン(添加剤E)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表2に示す。
【0085】
実施例10
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解シルク(添加剤F)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表2に示す。
【0086】
実施例11
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解シルク(添加剤G)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表2に示す。
【0087】
実施例12
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ポリビニルメチルエーテル(添加剤H)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表3に示す。
【0088】
実施例13〜24
実施例12と同様に、表3に示した、ポリビニル構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子(添加剤H〜K)、界面活性剤(添加剤P,Q)を用いて帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件C)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表3に示す。
【0089】
実施例25
ポリ(3−(3−チエニル)プロパンスルホン酸))0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)を行った。結果を表4に示す。
【0090】
実施例26
スルホン化ポリアニリン0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)を行った。結果を表4に示す。
【0091】
実施例27
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.05質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−2)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件C)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表5に示す。
【0092】
実施例28
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.05質量部、ポリビニルメチルエーテル(添加剤H)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−2)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件C)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表5に示す。
【0093】
実施例29
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.1質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にて、ネガ型非化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−3)、ネガ型非化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件D)を行った。結果を表6に示す。
【0094】
実施例30
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.1質量部、ポリビニルメチルエーテル(添加剤H)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にて、ネガ型非化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−3)、ネガ型非化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件D)を行った。結果を表6に示す。
【0095】
比較例1
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部を水に溶解し全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、実施例1と同様の方法によりネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表1に示す。
【0096】
比較例2
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部を水に溶解し全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。得られた帯電防止剤を用いて、実施例1と同様の方法によりネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B及びB−2)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表1及び表2に示す。
【0097】
比較例3
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸(添加剤Q)0.050質量部を水に溶解し全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。得られた帯電防止剤を用いて、実施例5と同様の方法によりネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ポジ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−4)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)、ポジ型化学増幅系レジストの膜減り測定(測定条件E)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表1及び表7に示す。
【0098】
比較例4〜7
実施例12の添加剤Hに代えて、表3に示した水溶性高分子(添加剤L〜O)、界面活性剤(添加剤P)を用いて帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表3に示す。
【0099】
比較例8
ポリ(3−(3−チエニル)プロパンスルホン酸)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)を行った。結果を表4に示す。
【0100】
比較例9
スルホン化ポリアニリン0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.025質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)を行った。結果を表4に示す。
【0101】
比較例10
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.05質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にてネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−2)、ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件C)、帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)を行った。結果を表5に示す。
【0102】
比較例11
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸(添加剤P)0.1質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にて、ネガ型非化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−3)、ネガ型非化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件D)を行った。結果を表6に示す。
【0103】
比較例12
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法にて、ネガ型非化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−3)、ネガ型非化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件D)を行った。結果を表6に示す。
【0104】
各物性の測定方法及び評価方法は以下の通りである。以下において、帯電防止膜及びレジスト膜の回転塗布による作製、超純水による帯電防止膜の剥離、現像後の現像液の振り切りなどは、スピンナー1H−III(協栄セミコンダクター(株)社製)を用いた。また、レジスト膜厚及び帯電防止膜厚は、それぞれ膜に幅約1mmの溝を掘り、触針式段差計Dektak−3030(日本真空(株)社製)にてその段差を測定することで求めた。
【0105】
1)ネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A)
接触角は、協和界面科学(株)社製DM−500接触角測定装置にて測定した。接触角測定は、レジスト膜表面に帯電防止剤の液滴作成後、30秒後にその液滴とレジスト膜との接触角を読み取った。レジスト膜は、4×4cmのシリコンウェハー上にネガ型化学増幅系レジスト0.2mL滴下後、直ちにスピンナーを用いて、1500rpmにて回転塗布し、プリベークをホットプレートにて105℃、90秒間行い溶媒を除去することにより作製した。ネガ型化学増幅系レジストは、ロームアンドハース電子材料社製マイクロポジット SAL−601−SR2 E−ビームレジストを用いた。
【0106】
1−2)ネガ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−2)
接触角は、協和界面科学(株)社製DM−500接触角測定装置にて測定した。接触角測定は、レジスト膜表面に帯電防止剤の液滴作成後、30秒後にその液滴とレジスト膜との接触角を読み取った。レジスト膜は、4×4cmのシリコンウェハー上にネガ型化学増幅系レジスト0.2mL滴下後、直ちにスピンナーを用いて、1500rpmにて回転塗布し、プリベークをホットプレートにて105℃、90秒間行い溶剤を除去することにより作製した。ネガ型化学増幅系レジストは、富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 FEN−270レジストを用いた。
【0107】
1−3)非化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−3)
接触角は、協和界面科学(株)社製DM−500接触角測定装置にて測定した。接触角測定は、レジスト膜表面に帯電防止剤の液滴作成後、30秒後にその液滴とレジスト膜との接触角を読み取った。レジスト膜は、4×4cmのシリコンウェハー上にネガ型非化学増幅系レジスト0.2mL滴下後、直ちにスピンナーを用いて、1500rpmにて回転塗布し、プリベークをホットプレートにて180℃、40分間行い溶剤を除去することにより作製した。非化学増幅系レジストは、ダウコーニング社製 Fox−12レジストを用いた。
【0108】
1−4)ポジ型化学増幅系レジストに対する接触角の測定(接触角測定A−4)
接触角は、協和界面科学(株)社製DM−500接触角測定装置にて測定した。接触角測定は、レジスト膜表面に帯電防止剤の液滴作成後、30秒後にその液滴とレジスト膜との接触角を読み取った。レジスト膜は、4×4cmのシリコンウェハー上にポジ型化学増幅系レジスト0.2mL滴下後、直ちにスピンナーを用いて、1500rpmにて回転塗布し、プリベークをホットプレートにて120℃、90秒間行い溶媒を除去することにより作製した。ポジ型化学増幅系レジストは、富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 FEP−171レジストを用いた。
【0109】
2)ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B)
ネガ型化学増幅系レジストの現像時間は、以下の手順で評価した。
(1)レジスト膜形成:4×4cmのシリコンウェハー上にネガ型化学増幅系レジスト0.2mL滴下後、直ちにスピンナーを用いて、1500rpmにて回転塗布し、プリベーク105℃、90秒間行い溶媒を除去することで膜厚約300nmのレジスト膜を得た。ネガ型化学増幅系レジストは、ロームアンドハース電子材料社製マイクロポジット SAL−601−SR2 E−ビームレジストを用いた。
(2)帯電防止膜形成:塗布された上記レジスト表面に帯電防止剤2mLを滴下し、10分経過後、スピンナー1H−III(協栄セミコンダクター(株)製)を用いて、800rpmにて回転塗布を行い、膜厚約20nmの帯電防止膜を形成した。
(3)ベーク処理:帯電防止膜とレジストが積層された基板をホットプレートにて、80℃、180秒間加熱後、空気中常温下で5分放置した。
(4)帯電防止膜の剥離:ベーク処理後の帯電防止膜表面に超純水10mLを滴下し、60秒間静置した後、800rpmにてスピンコーターで超純水に溶解した帯電防止剤を除去した。
(5)再ベーク処理:レジストのポストエクスポージャーベーク条件となる加熱を、110℃/60秒間行った後、空気中常温下で5分放置した。
(6)現像:現像液である2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液2mLを、(5)で得られたレジスト表面に滴下し、現像液に接しているレジスト膜が基板上より消失する時間を現像時間として測定した。
【0110】
2−2)ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件B−2)
ネガ型化学増幅系レジストの現像時間は、2)(3)のベーク処理において80℃、180秒間の加熱に代えて75℃、60秒間の加熱とした以外は測定条件Bと同様にして測定した。
【0111】
3)ネガ型化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件C)
ネガ型化学増幅系レジストの現像時間は、以下の手順で評価した。
(1)レジスト膜形成:4×4cmのシリコンウェハー上にネガ型化学増幅系レジスト0.2mL滴下後、直ちにスピンナーを用いて、1000rpmにて回転塗布し、プリベーク120℃、90秒間行い溶剤を除去することで膜厚約300nmのレジスト膜を得た。ネガ型化学増幅系レジストは、富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 FEN−270レジストを用いた。
(2)帯電防止膜形成:塗布された上記レジスト表面に帯電防止処理剤2mLを滴下し、10分経過後、スピンナー1H−III(協栄セミコンダクター(株)製)を用いて、800rpmにて回転塗布を行い、膜厚約20nmの帯電防止膜を形成した。
(3)ベーク処理:帯電防止膜とレジストが積層された基板をホットプレートにて、80℃、90秒間加熱後、空気中常温下で5分放置した。
(4)再ベーク処理:レジストのポストエクスポージャーベーク条件となる加熱を、110℃/90秒間行った後、空気中常温下で5分放置した。
(5)帯電防止膜の剥離:ベーク処理後の帯電防止膜表面に超純水10mLを滴下し、60秒間静置した後、800rpmにてスピンコーターで超純水に溶解した帯電防止剤を除去した。
(6)現像:現像液である2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液2mLを、(5)で得られたレジスト表面に滴下し、現像液に接しているレジスト膜が基板上より消失する時間を現像時間として測定した。
【0112】
4)ネガ型非化学増幅系レジストの現像時間測定(測定条件D)
ネガ型非化学増幅系レジストの現像時間は、以下の手順で評価した。
(1)レジスト膜形成:4×4cmのシリコンウェハー上にネガ型非化学増幅系レジスト0.2mL滴下後、直ちにスピンナーを用いて、1500rpmにて回転塗布し、プリベーク180℃、10分間行い溶媒を除去することで膜厚約200nmのレジスト膜を得た。ネガ型非化学増幅系レジストは、ダウコーニング社製 Fox−12レジストを用いた。
(2)帯電防止膜形成:塗布された上記レジスト表面に帯電防止処理剤2mLを滴下し、10分経過後、スピンナー1H−III(協栄セミコンダクター(株)製)を用いて、800rpmにて回転塗布を行い、膜厚約20nmの帯電防止膜を形成した。
(3)帯電防止膜の剥離:ベーク処理後の帯電防止膜表面に超純水10mLを滴下し、60秒間静置した後、800rpmにてスピンコーターで超純水に溶解した帯電防止剤を除去した。
(4)現像:現像液である2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液2mLを、(3)で得られたレジスト表面に滴下し、現像液に接しているレジスト膜が基板上より消失する時間を現像時間として測定した。
本特許の実施例および比較例の帯電防止剤を使用しないで上記(1)のレジスト膜に、上記(4)の操作を行った場合、そのTMAH現像時間は60秒であった。
【0113】
5)ポジ型化学増幅系レジストの膜べり測定(測定条件E)
ポジ型化学増幅系レジストの膜べり測定は、以下の手順で評価した。
(1)ポジ型レジスト膜形成:4×4cmのシリコンウェハー上にポジ型化学増幅系レジスト0.2mL滴下後、直ちにスピンナーを用いて、1500rpmにて回転塗布し、プリベーク120℃、90秒間行い溶媒を除去することで膜厚約300nmのレジスト膜を得た。ポジ型化学増幅系レジストには、富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ社製 FEP−171レジストを用いた。
(2)膜厚の測定:レジスト膜厚は、レジストに幅約1mmの溝を掘り、触針式段差計にて測定した。これをレジスト塗布直後の膜厚とした。
(3)帯電防止膜形成:塗布された上記レジスト表面に帯電防止剤2mLを滴下し、1分経過後、スピンナーを用いて、800rpmにて回転塗布を行い、膜厚約20nmの帯電防止膜を形成した。
(4)ベーク処理:帯電防止膜とレジストが積層された基板をホットプレートにて、80℃、90秒間加熱後、空気中常温下で5分放置した。
(5)再ベーク処理:レジストのポストエクスポージャーベーク条件となる加熱を、110℃/60秒間行った後、空気中常温下で5分放置した。
(6)帯電防止剤の剥離:再ベーク処理後の帯電防止膜表面に超純水10mLを滴下し、60秒間静置した後、800rpmにてスピンコーターで超純水に溶解した帯電防止剤を除去した。
(7)現像:現像液である2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液2mLを、帯電防止膜除去後のレジスト表面に滴下し、室温で60秒間静置した後、200rpmにてスピンコーターで現像液を振り切りながら超純水10mLを滴下し、さらに800rpmでレジスト表面に残った水滴を振り切った。
(8)膜厚の再測定:現像後のレジスト膜厚は、レジストに掘った幅約1mmの溝を、触針式段差計にて再測定した。これを現像後のレジスト膜厚とした。
(9)膜べり値測定:(2)で測定した膜厚から(8)で測定した膜厚を引くことで、レジストの膜べり値とした。
【0114】
6)帯電防止剤の表面抵抗の測定(測定条件F)
60×60mm四方のガラス基板(コーニング社製#1737)上に帯電防止剤2mLを滴下した後、スピンナーを用いて800rpmにて回転塗布し帯電防止剤の塗布膜を作製した。得られた、帯電防止剤の塗布膜を、表面抵抗測定器メガレスタMODEL HT−301(シシド静電気(株)社製)を用いて表面抵抗値を測定した。
【0115】
【表1】

【0116】
実施例1では、ポリペプチド構造を有する水溶性高分子を添加することで、比較例1に対して、現像時間を短くすることができる。実施例2から5では、界面活性剤により低接触角化でき良好な塗布性を付与することができ、かつポリペプチド構造を有する水溶性高分子を添加することで、ネガ型化学増幅系レジスト現像時間を短くすることができる。比較例1では、接触角が大きくスピンコートによる塗布では塗布不良が発生し、低接触角化しないと良好に塗布できない。比較例2および3では、界面活性剤の添加により、低接触角化でき塗布性が良好であり塗布不良は発生しなかったが、ネガ型化学増幅系レジストが現像液により溶解せず、現像不良が起こった。
【0117】
【表2】

【0118】
実施例1で用いたポリペプチド構造を有する水溶性高分子の分子量や由来するタンパク質原料の種類によらず、界面活性剤により低接触角化でき良好な塗布性を付与することができ、かつ、ネガ型化学増幅系レジスト現像時間を短くすることができる。
【0119】
【表3】

添加剤H:ポリビニルメチルエーテル
添加剤I:ポリビニルピロリドン(Mw1300000)
添加剤J:ビニルピロリドン/ビニルカプロラクタム共重合体
添加剤K:ポリビニルカプロラクタム
添加剤L:ポリビニルピロリドン(Mw55,000)
添加剤M:ポリスチレンスルホン酸NH3(Mw200,000)
添加剤N:ポリアクリルアミド(Mw10,000)
添加剤O:ポリアクリル酸(Mw250,000)
【0120】
実施例12から14ではポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を含有することで、ネガ型化学増幅系レジスト現像時間を短くすることができる。
実施例15から24では、界面活性剤により低接触角化でき良好な塗布性を付与することができ、かつポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を含有することで、ネガ型化学増幅系レジスト現像時間を短くすることができる。
比較例4から7では、界面活性剤と水溶性高分子を含むことにより、低接触角化でき塗布性が良好であり塗布不良は発生しなかったが、ネガ型化学増幅系レジストが現像液により溶解ぜす、現像不良が起こった。
【0121】
【表4】

【0122】
実施例25および26では、ポリペプチド構造を有する水溶性高分子(添加剤A)を添加することで、現像時間を短くすることができる。ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)のみならず、ポリ(3−(3−チエニル)プロパンスルホン酸))およびスルホン化ポリアニリンにおいても、ポリペプチド構造を有する水溶性高分子またはポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を含有する帯電防止剤はレジストミキシングを起こしにくい。比較例8および9は、界面活性剤Pを含みレジスト基板に塗布できるが、ネガ型化学増幅系レジストが現像液により溶解せず、現像不良が起こった。
【0123】
【表5】

【0124】
【表6】

【0125】
ポリペプチド構造を有する水溶性高分子またはポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を含有する帯電防止剤である実施例29および30のネガ型非化学増幅系レジストであるFox−12のTMAH現像時間と、帯電防止剤を使わない場合のTMAH現像時間はほぼ同等であるのに対して、比較例11のTMAH現像時間は短くなっており、ポリペプチド構造を有する水溶性高分子またはポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を含有する帯電防止剤によりレジストミキシングを抑制している。
実施例12は界面活性剤を含まないため、Fox−12に対する接触角は79°と高く、Fox−12へ塗布することが出来なかった。Fox-12のような塗布が困難なレジストには、界面活性剤が必要であり、レジストミキシングを防止するためには、ポリペプチド構造を有する水溶性高分子またはポリビニル構造を繰り返し構造として有する特定の水溶性高分子を含有する帯電防止剤が必要である。
【0126】
【表7】

【0127】
ポジ型化学増幅系レジストにおいてはレジストへの影響は膜減りとなって現れるところ、比較例3の帯電防止剤を用いると20nmの膜べり値があったが、実施例5で用いたポリペプチド構造を有する水溶性高分子を添加した帯電防止剤を用いることで膜べり値を16nmに低減できた。すなわち、本発明の帯電防止剤は、ポジ型化学増幅系レジストにおいても低接触角化したまま界面活性剤によるレジストへの影響を抑制できる。
【0128】
実施例31
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸(添加剤Q)0.075質量部、加水分解コラーゲン(添加剤A)0.2質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、下記の方法により電子線描画を行いレジストパターン形成評価を行った。
【0129】
電子線描画によるレジストパターン形成評価の方法は以下の通りである。
(1)レジスト膜形成:レジスト膜は、2×2cmシリコンウェハー上にネガ型化学増幅系レジスト0.2mL滴下し、スピンナーを用いて2000rpm、60秒にて回転塗布し作製した。塗布後、ホットプレートにてプリベーク105℃、60秒間行い溶媒を除去し、大気中常温下で5分間冷却することで膜厚約300nmのレジスト膜を得た。ネガ型化学増幅系レジストは、ロームアンドハース電子材料社製マイクロポジット SAL−601−SR2 E−ビームレジストを用いた。
(2)帯電防止膜形成:塗布された上記レジスト表面に帯電防止剤2mLを滴下し、10分経過後、スピンナーを用いて、1500rpmにて回転塗布を行い、レジスト上に膜厚約20nmの帯電防止膜を形成した。
(3)ベーク処理:帯電防止膜とレジストが積層された基板をホットプレートにて、75℃、180秒間加熱後、空気中常温下で10分放置した。
(4)電子線描画:電子線描画は、日本電子製JBX−6000FSを用いて行った。電子線露光は、電流量100pA、DOSE量5〜52.5μC/cm2の条件で、ラインアンドスペースデザイン(L/S)の細線を描画した。L/Sは、長さ50μm、ピッチ幅200nm、500nm、1000nmで、ラインとスペースが同じ幅となるデザインを設定した。
(5)帯電防止膜の剥離:ベーク処理後の帯電防止膜表面に純水中に30秒間静置した後に取り出し、窒素ガスにて乾燥することで、帯電防止膜を除去した。
(6)再ベーク処理:レジストのポストエクスポージャーベーク条件となる加熱を、115℃/60秒間行った後、空気中常温下で5分放置した。
(7)現像:現像液である2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド水溶液に(6)で得られたレジスト付き基板を5分間浸漬し現像を行ない、さらに純水中に30秒間浸漬することで基板のリンスを行なった。
(8)現像で得られたレジストパターンをSEM観察することで、電子線描画によるレジストパターン形成評価を行った。
【0130】
比較例13
ポリ(5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイル)0.6質量部、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸(添加剤Q)0.075質量部を水に溶解し、全量を80質量部とし、アンモニア水を添加することでpH4.5に調整後、さらに水を加え、全量で100質量部として帯電防止剤を調製した。
得られた帯電防止剤を用いて、実施例31と同様の方法により電子線描画を行いレジストパターン形成評価を行った。
【0131】
その結果、比較例13で得られた帯電防止剤を用いた場合には、光学顕微鏡でのトップビュー観察において、電子線照射部分以外にもレジストの残存箇所が多く見られ、またL/Sパターンの描画箇所ではスペース部分がなく、所望するレジストパターンは得られなかった。一方、実施例31で得られた帯電防止剤を用いた場合には、所望するラインアンドスペースのレジストパターンが得られた。そして、レジスト断面をSEM観察したところ、最適DOSE量は、250μmL/Sでは10〜14μC/cm2であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(10)c
【化1】

(式中、Wcは式−(CRcd)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Rc,Rdはそれぞれ独立して水素原子、またはアルキル基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)で示される化学構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子、下記式(1)
【化2】

(式中、m、nは、それぞれ独立して、0または1を表わす。Xは、S、N−R1(R1は水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、フェニル基及び置換フェニル基からなる群から選択される基を表わす。)、またはOのいずれかを表わし、Aは、−B−SO3-+で表わされる置換基を少なくとも1つ有し、かつその他の置換基を有していてもよい炭素数1〜4のアルキレンまたはアルケニレン基(二重結合は2つ以上有していてもよい。)を表わし、Bは、−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表わし、p及びrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表わす。)で示される化学構造を含む水溶性導電性高分子及び溶媒を含む帯電防止剤。
【請求項2】
式(10)c
【化3】

(式中、Wcは式−(CRcd)n−で示されるポリメチレン基を表し、置換基Rc,Rdはそれぞれ独立して水素原子、またはアルキル基を表わし、nは2〜8の整数を表す。)で示される化学構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子、下記式(2)
【化4】

(式中、R2〜R4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表わす。Bは、−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表わし、p及びrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表わす。)で示される化学構造を含む水溶性導電性高分子及び溶媒を含む帯電防止剤。
【請求項3】
水溶性導電性高分子が、5−スルホイソチアナフテン−1,3−ジイルを含む重合体である請求項2に記載の帯電防止剤。
【請求項4】
式(10)c
【化5】

(式中の記号は請求項1と同じ意味を表す。)で示される化学構造を繰り返し構造として有する水溶性高分子、下記式(3)
【化6】

(式中、R5は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和の炭化水素基、炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状の飽和または不飽和のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、トリハロメチル基、フェニル基、置換フェニル基、または−B−SO3-+基を表わし、Bは、−(CH2p−(O)q−(CH2r−を表わし、p及びrは、それぞれ独立して、0または1〜3の整数を表わし、qは0または1を表わす。M+は、水素イオン、アルカリ金属イオン、または第4級アンモニウムイオンを表わす。)で示される化学構造を含む水溶性導電性高分子及び溶媒を含む帯電防止剤。
【請求項5】
水溶性高分子が、ポリビニルカプロラクタムである請求項1〜4のいずれか1項に記載の帯電防止剤。
【請求項6】
更に、界面活性剤を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電防止剤。
【請求項7】
水溶性導電性高分子0.1〜20質量%、水溶性高分子0.0001〜10質量%及び溶媒70.0〜99.8質量%を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の帯電防止剤。
【請求項8】
水溶性導電性高分子0.1〜20質量%、水溶性高分子0.0001〜10質量%、界面活性剤0.0001〜2質量%及び溶媒68.0〜99.8質量%含む請求項6に記載の帯電防止剤。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の帯電防止剤を用いて得られる帯電防止膜。
【請求項10】
請求項9に記載の帯電防止膜で被覆して得られる被覆物品。
【請求項11】
被覆表面が下地基板に塗布した感光性組成物もしくは感荷電粒子線組成物である請求項10に記載の被覆物品。
【請求項12】
請求項9に記載の帯電防止膜を用いることを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−79226(P2009−79226A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278238(P2008−278238)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【分割の表示】特願2007−28883(P2007−28883)の分割
【原出願日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】