説明

干渉法により二次元光路分布の絶対測定を行う装置

二次元光路分布の絶対測定を行う装置であって、本装置は、複数の波長を有する光を物体(26)に照射する光源(4)と、物体の少なくとも一部分の画像を形成する干渉計(12)であって、この少なくとも一部分の画像は広帯域干渉図形を含む、干渉計(12)と、干渉計と光通信を行い、広帯域干渉図形を複数の狭帯域二次元干渉図形(72、74、76)にスペクトル的に分離するハイパースペクトル撮像装置(30)と、狭帯域干渉図形を空間的に位置合わせする位置合わせ装置(38)と、各狭帯域干渉図形内の対応する画素から一次元強度信号を抽出する抽出装置と、物体上の各点における周波数を、各点に関連付けられた一次元強度信号から計算する計算装置(100)と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元光路分布の絶対測定を行う装置に関し、特に、ただし、限定ではなく、三次元形状を測定する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
干渉法を用いて絶対光路差を測定することは周知である。干渉法は、物体と基準面との間の距離を、光の波長のわずかな端数の精度まで測定するための、十分に確立された光学手法である。干渉法は、点別、または線別の構成において用いられることもあるが、最も強力であるのは、干渉図形のかたちで二次元情報を与えるために用いられる場合である。商用用途の例としては、光学部品の検査、スペックル干渉法による変位場測定、走査型白色光干渉法(SWLI)による小型の機械的素子および電気的素子の形状測定などがある。
【0003】
2ビーム干渉計の場合の強度分布に関する一般方程式は、以下のように設定される。
I(x,y,k)=I0(x,y)+I1(x,y)cos[kz(x,y)+φ0] (1)
ただし、xおよびyは2つの撮像面座標であり、zは、物体と基準波との間の光路差であり、φ0は、波と波の間の位相シフトであり、kは、波数2π/λであり(λはビームの波長)、I0およびI1は、それぞれ、直流(I0)および変調(I1)の強度である。レーザのような狭帯域光源を使用する場合、式(1)は、平滑波面またはスペックル波面を有する多様なクラスの2ビーム干渉計(たとえば、マイケルソン干渉計、マッハツェンダー干渉計など)に当てはまる。
【0004】
単一波長干渉計によって生成される干渉図形を分析する既知の一方法は、既知の位相シフトφ0を導入する方法である。時間とともにφ0を変化させて、一連の干渉図形を記録することにより、一連の方程式を記録することが可能であり、これらの方程式から、ラッピング位相分布φw=W{kz(x,y)}を抽出することが可能であり、Wは、所与の位相値を−πからπの範囲にラッピングするラッピング演算子を示す1。一方、真の光路差関数z(x,y)は、次式のように、アンラッピング位相分布φuに比例する。
z(x,y)=φu(x,y)/k (2)
そしてφuは、次式のようにφwに関連付けられる。
φu(x,y)=φw(x,y)+2πν(x,y) (3)
ただし、ν(x,y)は、整数の場変数である。
【0005】
位相アンラッピング処理、すなわち、ν(x,y)場を決定する処理は、xおよびyに対して光路差が滑らかに変化する場合には、きわめて容易に行うことが可能である。しかしながら、多くの場合はそうならない。空間的な位相勾配の大きさが画素当たりπの値を超えると、位相データのみに基づくν(x,y)の一義解が存在しなくなり、位相アンラッピングが不可能になる。位相場が連続であっても、アンラッピング位相分布は、2πの整数倍の一定値に対して不確定になる。これは、単一波長における従来の干渉法の一義的な問題であるといえよう。
【0006】
第2の問題は、いくつかの干渉図形、または強度画像を測定し、それらの間で位相シフトを実行することに有限の取得時間を必要とする問題である。環境外乱(振動、乱気流など)によって、与えられる位相シフト(したがって、測定される位相)の誤差が大きくなる可能性がある2,3。この第2の問題は、時間的ではなく、空間的な位相シフト手法とパルスレーザ照射とにより、効果的に解消できる。しかしながら、そのような技術では、一義的な問題は克服されない。
【0007】
上述の一義的な問題に対する1つの部分的な解決策は、異なる2つの波長(λ1およびλ2)で干渉図形を記録することである。単一波長の干渉図形を用いた場合、光路差は、λの整数倍のレベルまでしか明らかにならないが、2つの波長を用いると、光路差は、次式で与えられる合成波長λsの整数倍のレベルまで明らかになる。
λs=λ1λ2/|λ1−λ2| (4)
このアプローチであれば、曖昧でない光路差を一桁分改善できるが、これは、可視波長では依然として、曖昧でない光路範囲が10μm以下であることに相当する。|λ1−λ2|を減らすことによってλsを増やすと、アンラッピング誤差のリスクが増えるため、より多くの強度測定を行わないと十分な信号対雑音比が得られなくなる。十分なデータ点を取得するのに時間がかかることは、そのような全場2波長システムが環境外乱に敏感であることを意味する。
【0008】
別の解決策では、波長走査干渉法(WSI)と呼ばれる手法において可変波長レーザ源を使用する。ビデオカメラを用いて、一連の飛び飛びの波長における干渉図形のシーケンスを記録する46。多数の波長によるアプローチは、2波長の干渉法の場合より格段に良好なダイナミック・レンジが得られるが、長い画像シーケンスを記録しなければならないため、やはり、環境外乱に対して脆弱である。
【0009】
第3の解決策は、既存の多くの市販の絶対光路長測定機器のベースをなすものであって、いわゆる走査型白色光干渉法(SWLI)である79。SWLIでは、広帯域照射を用いて、サンプルに照射する。そのサンプルのうちの、光路差がゼロに近い領域においてのみ、目立つ縞模様が観測される。サンプルまたは基準ミラーの機械式走査を行うことにより、縞模様が最も目立つ位置が画素単位で記録され、これによって、視野内のすべての点が光路差ゼロの面を通過した時点で完全な光路差マップを生成することが可能になる。この手法の問題点は、高価な機械式走査装置を必要とすることである。さらに、この手法は、環境外乱の影響を受けやすい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の実施態様によれば、二次元光路分布の絶対測定を行う装置が提供され、本装置は、
複数の波長を有する光を物体に照射する光源と、
物体の少なくとも一部分の画像を形成する干渉計であって、その画像は広帯域干渉図形を含む、干渉計と、
干渉計と光通信を行い、広帯域干渉図形を複数の狭帯域二次元干渉図形にスペクトル的に分離するハイパースペクトル撮像装置と、
狭帯域干渉図形を空間的に位置合わせする位置合わせ装置と、
各狭帯域干渉図形内の対応する画素から一次元強度信号を抽出する抽出装置と、
物体上の各点における周波数を、その点に関連付けられた一次元強度信号から計算する計算装置と、を含む。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、物体の三次元形状を測定する装置が提供され、本装置は、本発明の第1の態様による装置を含む。
【0012】
したがって、本発明は、複数の波長を有する光を測定対象物体に同時に照射することに適合された二次元干渉計を提供する。そして、本発明の一部をなすハイパースペクトル撮像系を用いて、様々な波長の帯域が分離される。
【0013】
本明細書で用いる「ハイパースペクトル撮像装置」という用語は、ハイパースペクトル撮像を実行することに用いる装置を意味している。
【0014】
本明細書で用いる「ハイパースペクトル撮像」という用語は、同じ領域の、連続する複数の狭スペクトル帯域にある画像を同時に取得することを含むプロセスを意味している。
【0015】
ハイパースペクトル撮像プロセスを経て得られたハイパースペクトル・データは、連続する複数のスペクトル帯域を含んでいる。ハイパースペクトル撮像装置を用いることにより、任意の数の連続するスペクトル帯域を含むハイパースペクトル・データを取得してもよい。
【0016】
入射光に複数の波長が含まれるため、上述の一義的な問題は解決される。さらに、複数の波長を有する光を測定対象物体に同時に照射するため、1回の照射で物体の表面形状を測定することが可能であり、これによって、測定に対する環境外乱の影響が実際に解消または低減される。
【0017】
本発明によれば、照射された物体の表面上の各点を表す複数の二次元狭帯域干渉図形が生成可能である。
【0018】
照射された物体が光学的に平滑であれば、生成された干渉図形は、それぞれの生成された干渉図形に用いられた照射の、狭い帯域幅に起因する縞模様を含む。
【0019】
物体が光学的に粗であれば、干渉縞ではなくスペックル場が見える。これは、反射光の開始相がランダムであるためである。
【0020】
いずれの場合も、ある画素における干渉図形の位相は、1つの狭帯域干渉図形から次の狭帯域干渉図形までの間に、その画素におけるz値に比例する量だけ変化する。
【0021】
光源は、ある連続的な広帯域スペクトルの中に入る範囲の波長を有する光を物体に照射することに適合された広帯域光源を含んでもよい。
【0022】
別の実施形態では、光源は、周波数変調器に作用的に接続された広帯域光源を含んでもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態では、光源は、光周波数コム光源を含んでもよい。光周波数コムは、複数の狭スペクトル線を含む光として定義される。狭スペクトル線は、通常、周波数間隔が均等であるが、実施形態によっては、周波数間隔が均等でなくてもよい。
【0024】
本発明の一実施形態では、ハイパースペクトル撮像装置は、複数の隣接するモードに対して同時に動作することに適合可能なモードロック・レーザを含む。このようにレーザを動作させることにより、光周波数コムが生成可能である。
【0025】
本発明の別の実施形態では、広帯域光源は、高周波ステップ関数発生器などの高周波変調器に作用的に接続された可変波長狭帯域光源を含んでもよい。高周波において可変波長狭帯域光源の波長に段を付けることにより、合成または見かけの周波数コム光源が生成可能である。本発明のそのような一実施形態では、変調器は、物体の照射時間の逆数に比べて高い周波数を生成することに適合可能である。さらに、変調器、たとえば、ステップ関数発生器は、物体の照射時間の間に、または、広帯域干渉図形の記録にかかる時間の間に、必要な波長をステップ・スルーすることに適合可能である。
【0026】
光周波数コム光源を含む光源を有することの一利点は、所望の周波数でのみ光が生成されることである。
【0027】
したがって、本明細書では、「広帯域光源」という用語は、狭帯域光源の波長を高い周波数で設定することに適合された周波数変調器に動作可能に接続された狭帯域光源を包含するもの、と解釈されてよいことを理解されたい。たとえば、露光時間が1ミリ秒であれば、数kHz以上の変調周波数でこの要件が満たされるであろう。
【0028】
ある連続的な帯域の波長の中に入る範囲の波長を有する光を生成する広帯域光源が光源に含まれる、本発明の実施形態では、ハイパースペクトル撮像装置はさらに、エタロンを含んでもよい。エタロンは、コム・フィルタとして動作し、均一に波数分離された飛び飛びの一連の波長をハイパースペクトル撮像系に入力できるように動作する。
【0029】
上述の、光周波数コムが生成される実施形態では、本装置は、広帯域干渉図形を空間的にスライスして複数の狭帯域二次元干渉図形を生成することに適合される。スペクトルのスライスは、物体に照射する光のスペクトル分布に不連続をつくることとして説明できる。そして、同じ波長を有する、様々な空間的位置からの光が、スペクトル分布内に形成されたギャップとギャップの間に配置される。
【0030】
本発明の一代替的実施形態では、周波数コムを生成するのではなく、ハイパースペクトル撮像装置が、広帯域干渉図形を空間的にサンプリングして各領域をハイパースペクトル撮像装置の別々の部分に分離するサンプリング装置を含んでもよい。
【0031】
サンプリング装置は、たとえば、レンズのアレイを含んでもよい。別の実施形態では、サンプリング装置は、光ファイバのアレイを含んでもよい。本発明のさらに別の実施形態では、サンプリング装置は、ミラーのアレイを含んでもよい。
【0032】
これらの実施形態のそれぞれにおいて、個々のレンズのような、サンプリング装置の構成要素の寸法は、物体の関心領域より小さい。
【0033】
本発明のそのような実施形態では、任意のハイパースペクトル撮像装置を用いて広帯域干渉図形を画像スライスすることが可能である。画像スライスは、物体の、撮像面内の光の空間分布に不連続をつくるプロセスと見なすことができる。そして、様々な波長を有するが同じ空間的位置からの光が、空間分布内に形成されたギャップとギャップの間に配置される。
【0034】
積分場分光法に関する詳細については、J. AllingtonSmith、「Basic principles of integral field spectroscopy」、New Astronomy Reviews 50 244251 (2006)、およびLiang Gao、Robert T. Kester、Nathan Hagen、Tomasz S. Tkaczyk、「Snapshot Image Mapping Spectrometer (IMS) with high sampling density for hyperspectral microscopy」、Optics Express 18 (14)、14330〜14344 (2010)を参照されたい。
【0035】
位置合わせ装置は、各二次元干渉図形内の特定画素にマッピングされたサンプルの領域も、他のすべての干渉図形がある中で識別可能であるように、複数の二次元干渉図形を空間的に位置合わせすることに適合可能である。
【0036】
実施形態によっては、サンプリングされたk個の値は、間隔が均等であり、連続する干渉図形間のkのステップ値はΔkで示される。
【0037】
抽出装置は、各対応画素および各干渉図形から一次元強度信号を抽出することに適合される。言い換えると、各狭帯域干渉図形は、複数の画素で構成された画像または副画像と見なしてもよい。そして、各画素は、照射された物体の表面の点に対応し得る。各二次元干渉図形にはインデックスが付けられているので、抽出装置は、各干渉図形から、照射された物体の表面の特定点に対応する画素に関連する一次元強度信号を抽出することが可能である。
【0038】
計算装置は、抽出装置によって得られた一次元強度信号から、各画素の周波数を計算することに適合される。
【0039】
各画素の周波数は、その画素における光路差に比例するので、絶対光路分布を推定し得る。
【0040】
ハイパースペクトル撮像装置は、光検出器アレイを含んでもよい。
【0041】
狭帯域干渉図形は、光検出器アレイに対して空間的に隔てられたアレイとして配列し得る。
【0042】
ハイパースペクトル撮像装置は、干渉計および物体より下流に配置された回折格子を含んでもよい。この回折格子は、様々な周波数帯を分離するように動作する。
【0043】
ハイパースペクトル撮像装置は、干渉計および物体より下流に配置された分散素子を含んでもよい。分散素子は、三次元画像ボリュームを生成するために広帯域干渉図形内で様々な周波数帯を分離するように動作する。
【0044】
分散素子は、都合のよい任意の構成要素を含んでよく、たとえば、回折格子またはプリズムを含んでもよい。
【0045】
代替として、ハイパースペクトル撮像装置は、干渉計より下流に配置された反射ボリューム・ホログラムを含んでよく、これには複数のブラッグ格子が書き込まれている。
【0046】
本装置は、さらに、データ処理装置を含んでよく、たとえば、メモリが連結されたデジタルコンピュータを含んでもよい。そのような実施形態では、狭帯域干渉図形のアレイをデータ処理装置に読み込んで、光路差の計算を可能にするための、さらなる処理を行ってもよい。
【0047】
位置合わせ装置は、三次元強度分布を形成するために、個々の副画像をそれぞれのx座標およびy座標に関して位置合わせすることに適合可能である。そのような実施形態では、狭帯域干渉図形をスタックして、x軸およびy軸方向だけでなくz軸方向にも延びる、サンプリングされたハイパースペクトル画像ボリュームを形成する。z軸は、各干渉図形の波数を表す。ハイパースペクトル画像ボリュームは、l(xm,yn,kp)として定義することができ、添え字m、n,およびpは、それぞれ、m=0,1,2,...,Nx−1、n=0,1,2,...,Ny−1、およびp=0,1,2,...,Nk−1の値をとり、Nx、Ny、およびNkは、それぞれの軸方向のサンプル点の数である。
【0048】
xおよびNyは、視野に対して十分な数の空間サンプル点が得られるように選択される(すなわち、積Nxyは、光路差の最終画像の画素数である)。隣接する干渉図形間の空間分離能は、部分的な重なりがないように十分でなければならない。たとえば、ハイパースペクトル画像がx軸方向に画像を分離する場合には、少なくともNx 個の画素による分離でなければならない。隣接する干渉図形間のkの分離能(Δk)は、式(5)で与えられる必要な深さ範囲を本システムがカバーできるように選択される。
【0049】
式(1)によれば、所与の位置(画素)xm=x0、yn=y0において測定された強度は、その後、kおよび角周波数z(x0,y0)とともに余弦的に変化する。この周波数は、強度値l(x0,y0,k)に対して、平均値を差し引いた後、kに関する一次元フーリエ変換を実行し、その後、z=z(x0,y0)にある、変換のピークを検索することにより、測定可能である。このプロセスをすべての(xm,yn)画素位置において繰り返すことにより、1回の照射測定から絶対二次元光路差分布が得られる。
【0050】
k軸によって与えられる追加情報によって、空間的に飛び飛びの領域が視野に含まれるために1つの狭帯域画像だけから正しくアンラッピングすることが不可能な場合でも、絶対光路長を確実に測定することが可能になる。
【0051】
曖昧ではない最大深さ範囲は、シャノンのサンプリング定理によって与えられる。この定理によれば、l(x0,yo,k)信号の適切なサンプリングを確実に行うためには、式(1)のkz(x,y)項を、連続するk個のサンプルの間でπより大きく変化させてはならない。したがって、zの最大許容値は、z=zmになる。ただし、zmは次式のとおりである。
【数1】

【0052】
これより大きなz値が存在すると、低いz値に対するエイリアシングが発生して、サンプリング間隔以下でのサンプリングによるアーティファクトが引き起こされる。
【0053】
一方、zの最小許容値は、z=0である。これは、式(1)の余弦関数が偶関数であるためである。したがって、負のz値と正のz値は区別がつかない。したがって、光路差の許容範囲は次式で与えられる。
0≦z≦zm (6)
【0054】
離散フーリエ変換
【数2】

は、Nk/2個の正の周波数成分を含み、サンプル点間の分離能は次式で与えられる。
【数3】

【0055】
スペクトルのピークの幅(すなわち、ゼロ交差点間の距離)は、スペクトル形状が均一であれば2Δzである。スペクトルが均一ではなく、形状W(k)を有する場合、あるいは、スペクトル漏れを低減するために、l(x0,y0,k)に窓関数W(k)を乗ずる場合には、ピークの幅は、W(k)のフーリエ変換(ここでは
【数4】

で表す)の幅で与えられる。一般に、スペクトルのピークの幅は、次式のとおりである。
δz=γΔz (8)
ただし、定数γは、たとえば、矩形窓の場合は値2をとり、ハミング窓の場合は値4をとる。
【0056】
しかしながら、zの測定精度は、式(7)および(8)で与えられる値よりずっとよい可能性がある。フーリエ変換を内挿することによって副画素解像度を得ることが可能であり、これは、たとえば、長さNz(>Nk)のベクトルの最初のNk個の要素がl(xo,yo,k)ベクトルであって、残りのNz−Nk個の要素がゼロ(「ゼロ・パディング」)である、長さNzのベクトルをフーリエ変換することによって可能である。一次元信号のフーリエ変換のピークの最大値を副画素精度まで求める効率的なアルゴリズムが、Kaufmannらによって提案されている10。そのようなアプローチの精度を制限する根本的な要因は、強度信号中のノイズである。
【0057】
ハイパースペクトル撮像装置のz解像度は、式(7)によれば、NkΔkに逆比例する。解像度を上げるためには、Δkを増やすことができる。しかしながら、式(5)によれば、これによって、曖昧でない光路差範囲zm。しかしながら、この場合は、水平方向の解像度が犠牲になる。たとえば、16メガピクセルでNx=Ny=256の撮像センサの場合、このセンサの全画素がハイパースペクトル撮像装置によって使用可能であるとすれば、Nkの最大値は256である。Nkは、4倍に増やすことが可能であるが、これは、ハイパースペクトル画像サイズを128×128に減らした場合のみ可能である。望ましいのは、良好な光路差(z)解像度と良好な水平方向(x、y)解像度とを両立させることである。これを達成する1つの方法は、2つ以上の、空間的に重ならない広帯域光源であって、それらの間の波数分離能が既知である広帯域光源を使用することに基づく方法である。
【0058】
そこで、本装置は、物体に照射するための複数の広帯域光源を含んでもよい。これら複数の広帯域光源は、複数の光帯を発生させるが、これら複数の光帯は、スペクトル的に互いに重ならず、既知の波数分離能で互いに離れている。
【0059】
これら複数の広帯域光源は、スペクトル的に互いに隣接する光帯を発生させ得る。あるいは、これらの広帯域光源は、スペクトル的に互いに離れている光帯を発生させ得る。この場合の分離能は、任意の所望の分離能であってもよい。
【0060】
上述の、SWLI手法の不利点から、SWLIは、オフラインの品質管理ツールであると一般に考えられている。しかしながら、SWLIは、その不利点にもかかわらず、小型部品の三次元形状の測定に広く用いられている。これは、SWLIが不連続物体を曖昧さを残さず測定できることと、高さ方向の解像度にすぐれていることとによるものである。
【0061】
これに対し、本発明によれば、小型部品の三次元形状測定(測定ボリュームの寸法は、典型的には、数十μmから数十mmの範囲であってよい)を、必要露光時間が短い手法で達成してもよい。必要な露光継続時間は、光源の電力、照射視野、光検出器アレイのスペクトル感度、サンプルの反射率などの要因によって決まる。典型的な値は、端から端まで1mm程度の反射性サンプルに10mWの超高輝度LEDで照射する場合には、1ミリ秒を下回り、マルチワット・スーパーコンティニューム光源を用いる場合には、1マイクロ秒を下回り得る。継続時間が1マイクロ秒であって、波長が1μmを下回る場合、サンプルは、その動きが縞模様の可視性に著しい影響を及ぼすまでに、最高250mm/秒の速度で動いている可能性がある。より高い速度であっても、パルス光源を用いれば対応可能である。このように、本発明は、正確な干渉計測に資するものではないと一般に考えられる環境であっても、インラインの品質管理ツールとして用いてもよい。
【0062】
本発明を用いて小型部品の三次元形状を測定してもよく、これは、次式に示すように、光路差が、サンプルの、ゼロ光路差Lの面から測定される局所距離の2倍であることに注目することによって行う。
z=2[h0−h(x,y)] (9)
ただし、h0は、サンプルの基準面からゼロ光路差の面までの既知の距離であり、h(x,y)は、基準面に対して測定されるサンプルの局所高さである。したがって、本発明の実施形態を用いて絶対光路(z)分布を測定すれば、式(9)から絶対高さ分布が得られる。
【0063】
本発明は、弱散乱媒体内の内部構造を測定する光干渉断層法(OCT)にも使用してもよい。
【0064】
本発明の第3の実施態様によれば、二次元光路分布の絶対測定を行う方法が提供され、本方法は、
複数の波長を有する光を物体に照射することを、この光を干渉計に透過させて物体の広帯域干渉図形を生成することによって行うステップと、
広帯域干渉図形をスペクトル的に分離して複数の二次元狭帯域干渉図形を形成するステップと、
これらの二次元干渉図形を空間的に位置合わせするステップと、
各狭帯域干渉図形内の対応する画素から一次元強度信号を抽出するステップと、
物体上の各点における周波数を、その点に関連付けられた一次元信号から計算するステップと、を含む。
【0065】
二次元干渉図形を空間的に位置合わせするステップは、すべての狭帯域干渉図形内での、サンプル面上の共通箇所の画素位置を識別するステップを含んでもよい。
【0066】
本発明の実施形態によっては、二次元干渉図形を空間的に位置合わせするステップは、それらの二次元狭帯域干渉図形の三次元強度分布を形成するステップを含む。このステップは、個々の狭帯域干渉図形をそれぞれのx座標およびy座標に対して位置合わせし、これらの位置合わせされた干渉図形をk軸方向にスタックしてサンプルのハイパースペクトル画像ボリュームを形成するステップを含んでよく、k軸は、各干渉図形の波数を表す。
【0067】
各干渉図形内の対応する画素から一次元強度信号を抽出するステップは、空間的に位置合わせされた干渉図形からk軸方向の周波数を測定するステップを含んでもよく、この測定は、一次元フーリエ変換によって、あるいは、サンプル面上の所与の点におけるk個のデータのすべてによる一次元信号のフーリエ変換によって行ってもよい。
【0068】
複数の波長を有する光を物体に照射するステップは、複数の光源からの複数の光帯を物体に照射するステップを含んでもよく、この複数の光帯のそれぞれは、他のどの光帯ともスペクトル的に分離されている。
【0069】
これらの光帯は、スペクトル的に互いに隣接していてもよい。代替として、これらの光帯は、適切な間隔で互いに離れていてもよい。
【0070】
本発明の方法は、物体の表面形状の測定に適用してもよい。さらに、本方法は、光干渉断層法の分野に適用してもよい。
【0071】
以下で、添付図面をあくまで例として参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1a】本発明の一実施形態による、物体の三次元形状を測定する装置を概略的に表した図である。
【図1b】図1aによる装置のブロック図である。
【図2】図1の装置を用いて、様々なk値により記録された、サンプルの関心領域の副画像からなるハイパースペクトル干渉法画像を概略的に表した図である。
【図3】ハイパースペクトル干渉法ボリュームを形成する、図2の副画像を概略的に表した図である。
【図4a】図3から取得された一次元信号を概略的に表した図である。
【図4b】図3から取得された一次元信号を概略的に表した図である。
【図5a】図4aおよび図4bで示した2つの一次元信号l(x0,y0,k)のフーリエ変換〔数3〕をそれぞれ示す図である。
【図5b】図4aおよび図4bで示した2つの一次元信号l(x0,y0,k)のフーリエ変換〔数3〕をそれぞれ示す図である。
【図6】サンプルの断面図である。
【図7】図1の装置の一部をなすカメラの水平軸いっぱいに広がる段差面の、Nk(=62)個のハイパースペクトル画像のセットを示す図である。
【図8】図1の装置を用いて測定された、11×19画素格子上の表面形状を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施形態による装置の一部をなすハイパースペクトル撮像素子を概略的に表した図である。
【図10a】スペクトル的に隣接する2つの光源LS1およびLS2による、請求項1に記載の装置のシミュレーション強度データのグラフである。
【図10b】LS1のみによるデータのフーリエ変換のグラフである。
【図10c】LS1とLS2との組み合わせによるデータのフーリエ変換のグラフである。
【図11a】スペクトル的に離れた2つの光源LS1およびLS2による、図1の装置のシミュレーション強度データのグラフである。
【図11b】LS1のみによるデータのフーリエ変換を示す図である。
【図11c】LS1とLS2との組み合わせによるデータのフーリエ変換を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1aおよび図1bを参照すると、サンプル26の三次元形状を測定する装置の全体が、参照符号2で示されている。本装置は、サンプル26の三次元形状を測定するにあたり、まず、二次元光路分布を測定する(これについては後で詳述する)。
【0074】
装置2は、広帯域光源4を含んでおり、広帯域光源4は、本実施形態では、中心波長840ナノメートル、半値全幅50ナノメートルの超高輝度LED光源(Superlum Diodes Limited製HP1)を含んでいる。光源4からの光は、光ファイバ6によってレンズ8に向けられており、レンズ8は、光ビームをコリメートする(平行光にする)。コリメートされた光ビームは、エタロン10を通過した後、点線12で示されている干渉計に入射する。コリメート光が干渉計12に入射する前に、エタロン10は、コム・フィルタとして動作し、広帯域光に含まれる飛び飛びの一連の波長だけを通過させることにより、均一な波数分離能Δkを有する広帯域コムを形成する。
【0075】
装置2は、さらに、狭帯域光源40を含んでおり、狭帯域光源40は、たとえば、波長633ナノメートルのHe−Neレーザによって形成される。狭帯域光源は、本装置をサンプル26に対して位置合わせするのに有用であるが、装置2に関しては、これだけが目的である。したがって、本発明の実施形態によっては、狭帯域光源40を使用しない。
【0076】
本実施形態では、2つの光源4、40を使用するため、本装置はさらに、ファイバ・カプラ42を含んでいる。ただし、狭帯域光源40を使用しない、本発明の実施形態では、ファイバ・カプラ42は不要である。
【0077】
干渉計は、都合のよい任意の干渉計であってよく、本実施形態の干渉計は、Linnik干渉計を含む。当該技術分野において知られているように、本干渉計は、ビーム・スプリッタ14、第1のレンズ16、第2のレンズ18、および基準ミラー20を含んでいる。干渉計12は、周知の方法で、入射光を基準ビーム22と測定ビーム24とに分割する。測定ビーム24は、点Pにおいて、サンプル26の一部分に照射される。サンプル26は、平行移動台28上に配置されているため、サンプルの任意の関心領域を照射するために移動させることが可能であり、また、サンプルと干渉計との間の距離(h0)を調節することが可能である。
【0078】
装置2は、さらに、点線30で示されているハイパースペクトル撮像系を含んでおり、これには、エタロン10、ビーム・スプリッタ32、回折格子34、レンズ36、およびカメラ38が含まれている。本実施形態では、回折格子34は、回折効率を最大化するためにリトロー構成内に配置されたブレーズド格子である。
【0079】
カメラ38は、光検出器アレイを含んでいる。
【0080】
サンプル26から反射した光は、基準ミラー20から反射した光と一緒になって、ハイパースペクトル撮像装置30に向かう。サンプル26上の単一点Pからの光から平行光束が形成され、これがハイパースペクトル撮像系30に入射する。回折格子34は、干渉計からの光の様々な波長を選択的に除去するために用いることができ、それにより、各波長がビーム・スプリッタ32によってカメラ36の別々の領域に向かうようにすることが可能である。このようにして、広帯域波長エンベロープ内に入るいくつかの異なる波長における複数の狭帯域干渉図形を生成してもよい。このことについては、後で詳述する。
【0081】
次に、光検出器アレイ上の狭帯域干渉図形画像を、後で詳述するように処理して、物体26の三次元形状に関する情報を与えてもよい。
【0082】
本実施形態において、装置2は更に、第2のカメラ50およびレンズ52を含んでおり、これらは、本装置の位置合わせを支援するために物体の単一の高解像度広帯域画像を生成するものであり、したがって、本発明に不可欠な要素ではない。
【0083】
したがって、広帯域干渉図形は、その干渉図形成分に光学的に分割され、各成分は、光源4で生成された広スペクトル照射エンベロープに入っている狭スペクトル帯域から形成される。これを達成するために、格子34は、別々の波長または別々の帯域の波長から形成される干渉図形が連続するように、広帯域干渉図形を光学的に分割する。次に、ハイパースペクトル撮像装置は、それらの狭帯域干渉図形を、二次元光検出器アレイ38内の飛び飛びの場所に向ける。隣接する干渉図形間のスペクトル分離能は、エタロン10の自由スペクトル領域(FSR)によって決まり、本例の場合は、840nmにおいて0.5nmである。これらの帯域のスペクトル幅は、エタロンの鮮鋭度によって決まり、本例の場合は、15より大きい。空間的にシャープな狭帯域干渉図形を得るためには、エタロンの鮮鋭度をNXに匹敵させるか、NXより大きくする必要がある(xは、図1Aの面内にある光検出器軸である)。
【0084】
図2は、別々のk値を有する、物体26の関心領域の、3つの概略的狭帯域干渉図形72、74、76を示す。これら3つの代表的干渉図形72、74、76は、二次元光検出器アレイ内に形成されている丸78の上にそれぞれの中心がある複数の干渉図形からなる矩形アレイの一部分として示されている。ここで示した装置2では、アレイは、1列分のみの干渉図形を含んでいる。
【0085】
干渉図形72、74、76のそれぞれは、空間的に離れている領域R1、R2を含んでもよい。そうであっても、本発明によれば、絶対光路長を確実に求めることが可能である。
【0086】
図3は、図2に示したタイプの複数の干渉図形であり、これらは、コンピュータ100を用いて、空間的に位置合わせされ、スタックされて、三次元強度分布を形成しており、これによって、いくつかの異なる波長における複数の狭帯域干渉図形が生成される。
【0087】
図4aおよび図4bは、Nk=16であって、kの総帯域幅がkの中心値の20%に等しいケースでの2つのz値z=0.23zmおよびz=0.65zmに対する、サンプルされたI(x0,y0,k)の分布を概略的に表したものである。これらに対応するフーリエ変換〔数4〕を、それぞれ図5(a)および図5(b)に示す。
【0088】
zの測定精度は、式(7)および(8)で与えられる値よりずっとよい可能性がある。図5aおよび図5bの縦点線50、52で示すように、フーリエ変換を内挿することによって副画素解像度を得てもよく、これは、たとえば、lベクトルをゼロ・パディングすることによって可能である。一次元信号のフーリエ変換のピークの最大値を副画素精度まで求める効率的なアルゴリズムが、Kaufmannらによって提案されている。
【0089】
図6は、サンプル26の表面60を概略的に表した図である。後述するように、絶対光路差を測定することにより、物体26の表面形状を決定てもよい。図6および式(9)から、光路差は、サンプルの、ゼロ光路差Lの面からの局所距離の2倍であることがわかる。2倍という数字は、複光路に由来し(光は垂直方向下向きに入射し、垂直方向上向きに出ていく)、サンプルの直前の媒体の屈折率は均一であるとしている。
【0090】
したがって、装置2を用いて絶対z分布を測定すれば、上述の式(9)から絶対高さ分布が得られる。
【0091】
図7は、画像を、図2に示したような個々の干渉図形にセグメント化した様子を示す。干渉図形の間隔は、格子34の周波数、レンズ36の焦点距離、およびエタロン10の自由スペクトル領域にほぼ比例し、サンプル26上の照射スポット径および撮像系の倍率で定義される視野に適合するように調節される。次に、これらの干渉図形がコンピュータ100によって組み合わされて、図3に示したようなハイパースペクトル画像ボリュームが形成される。k軸方向の一次元フーリエ変換を行い、次いでピーク探索アルゴリズムを実行することにより、画素ごとの絶対光路長が得られ、これを用いて、式(9)で高さ分布を計算する。
【0092】
この結果を図8に示す。図8は、11×19画素格子上の面60の表面形状を示しており、これは、本発明の装置を用いて、1回の照射で得られたものである。サンプルの照射部分に含まれる表面形状における段差が、計算された三次元形状において再現されており、計算された段差高さは、実験誤差の範囲に収まる。
【0093】
次に、図9を参照して、本発明の第2の実施形態を説明する。図9は、ハイパースペクトル撮像装置300を概略的に示しており、これは、図1に示した装置2の一部をなすハイパースペクトル撮像装置30に代わりうるものである。
【0094】
図1に示したハイパースペクトル撮像装置30では、平面回折格子34を用いて、ハイパースペクトル成分画像を線方向に分離する。したがって、図7の、1列のハイパースペクトル画像の上下にある暗い部分を占める画素の無駄を避けるためには、高さに比べて長さがある撮像センサが必要である。しかしながら、市販の撮像センサのほとんどは、アスペクト比が1:1、4:3、または16:9であるため、広帯域画像を複数列の狭帯域画像に分離する代替手段が望まれている。
【0095】
図9に示した本発明の実施形態によれば、ハイパースペクトル撮像装置300は、回折格子の代わりに、反射ボリューム・ホログラム92を含んでおり、これに、複数セットのブラッグ格子が書き込まれている。
【0096】
各ブラッグ格子92は、xg軸およびyg軸に関する一意の格子ピッチおよび唯一の傾斜角で材料の屈折率を低振幅正弦波変調することからなり、(xg ,yg,zg)は、図9で定義されているローカル座標系である。各格子は、ブラッグ条件で定義される狭スペクトル窓内からの光を高い効率で反射することにより12,13、各点の画像を光検出器アレイ38の別々の部分に送る。xg軸およびyg軸の両方に関する傾斜を有するホログラフィック素子に格子を書き込むことができるという事実は、図1aで検討した平面格子の場合と異なり、光検出器アレイの全域が使用可能であることを意味する。
【0097】
そのような実施形態では、エタロン10は不要である。さらに、湾曲したブラッグ格子を用いると、図1の装置における上流レンズおよび下流レンズによって実施される撮像機能も、原理上は、ボリューム格子素子内で実施可能になるため、レンズ16および38が不要になる可能性がある。
【0098】
このアプローチによれば、図1aのセンサ38の使用可能画素をすべて効率的に使用することに加えて、任意のスペクトル形状の複数光源からの画像の適応配置が可能である。この機能は特に、後述する本発明の実施形態において有用であり、そこでは、スペクトル的に離れている2つの光源を使用する。
【0099】
図10および図11は、この概念を例示したものであって、これらの図は2つのケース、すなわち(i)2つのスペクトル帯域が隙間なく互いに隣接しているケース(図10(a))、および(ii)それらが各帯域幅の6倍離れているケース(図11(a))とを考察したものである。両ケースとも、シミュレーションで使用した真のz値は、z/zm=0.23であった。両ケースとも、同じ数のハイパースペクトル画像(各光源から16個)を取得することが必要である。
【0100】
図10(b)および図11(b)に示した、第1の光源からの信号のフーリエ変換は、両ケースとも同じである。両光源からの信号をフーリエ変換した場合、スペクトル的に隣接した光源のケース(図10(c))では、ピーク幅は、ほぼ2分の1になる。一方、光源同士が空間的に離れている場合、主ピークは、単一光源のケースと同じ幅をとるが、周波数が2つの光源の分離能に比例する信号によって変調される。主ピーク内で正しい副ピークが選択されていれば、このピークの「シャープネス」が増強されたことは、帯域が隣接するケースと比べて、取得した副画像の数が同じでも、z解像度が大幅に向上していることを意味する。
【0101】
副ピーク位置を識別するアルゴリズムは、以下のステップからなる。
1.第1のスペクトル帯域の平均自由信号の離散フーリエ変換(図11(b)の丸印)のモジュラスの最大値として、zの第1の推定値(z=z1)を取得する。
2.第1のスペクトル帯域の平均自由信号の連続フーリエ変換(図11(b)の連続線)の(z=z2における)ピークの反復探索のための、zの初期推定値として、z=z1を用いる。
3.両スペクトル帯域の平均自由信号の連続フーリエ変換(図11(c)の連続線)の(z=z3における)ピークの反復探索のための、zの初期推定値として、z=z2を用いる。
【0102】
上述のアルゴリズムを、図11(a)に示した縞データからなるシミュレーションデータに適用したが、さらに、標準偏差が0.01の独立ガウスノイズを各強度測定値に追加している。この強度ノイズの効果は、zの計算値を変動させることである。zの計算値をzmで正規化したものの平均および標準偏差を、3つのケースについて、次の表1に示した。3つのケースは、(i)単一光源(データ点は全部で16個)、(ii)スペクトル的に隣接している2つの光源(データ点は全部で32個)、および(iii)スペクトル的に離れている2つの光源(データ点は全部で32個)である。全部で1024回の測定を行って、これらの値が得られた。空間的に離れた光源の場合のzの計算値の標準偏差は、空間的に隣接する光源の場合より、ほぼ1桁以上小さく、全体深さ測定範囲の約60000分の1である。
【0103】
3つの異なるハイパースペクトル干渉法光源スペクトルの場合の、zの正規化計算値に対する強度ノイズの影響(真値はz/zm=0.23)。
【0104】
【表1】

【0105】
したがって、本発明の性能は、スペクトル範囲の上半分と下半分とを分離することによって向上させることが可能である。一般に、分離能が高いほど、深さ解像度は良好である。ある時点では、主ピーク内の正しい副ピークの誤識別のため、解像度の向上は、検出信頼度の低下と相殺される。スペクトル範囲を3つ以上の帯域に分割すれば、さらなる性能向上が達成できる可能性がある。
【0106】
光干渉断層法(OCT)は、主に医療用と向けに開発された干渉法技術であって、弱散乱媒体内の内部構造を測定する技術である。スペクトルOCTは、分光器を用いて、サンプルの点別照射からの後方散乱光のスペクトル内容を測定することを意味する14。点別照射から線照射に拡張することにより、サンプル内のある面上の(振幅情報からの)構造および(位相情報からの)変位場の両方を1回の照射で測定することが可能になる15。しかしながら、二次元情報を空間的に位置合わせするためには、たとえば、点別照射または線別照射により三次元ボリュームを構築するためには、サンプル全体にわたって点または線の走査を行うことが必要である。したがって、従来のスペクトルOCTは、三次元形状測定に関して上述したWSIや他の干渉法技術の場合と同様の動きアーティファクトの問題を抱えている。そのため、インビボ測定は、実際には、二次元測定に限定されることが多い。
【0107】
本発明は、直接的には、三次元の振幅および位相のボリュームを1回の照射で測定することに適用可能である。強度測定データ〔数5〕のフーリエ変換の振幅は、画素(xm,yn)からカメラレンズの中心を通ってサンプル表面に延びる線に沿う散乱ポテンシャルの直接の測定値を与える。同様に、フーリエ変換の位相を用いて、参考文献15に記載の二次元技術と同様の方法で三次元ボリューム内の変位を測定することが可能である。既述の三次元形状測定の例と同様に、照射パルスの継続時間を短縮することにより、動きアーティファクトを除去することが可能であり、この走査を行うのに可動部は不要である。
【0108】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元光路分布の絶対測定を行う装置であって、
複数の波長を有する光を物体に照射する光源と、
前記物体の少なくとも一部分の画像を形成する干渉計であって、前記少なくとも一部分の画像が広帯域干渉図形を含む、前記干渉計と、
前記干渉計と光通信を行い、前記広帯域干渉図形を複数の狭帯域二次元干渉図形にスペクトル的に分離するハイパースペクトル撮像装置と、
前記狭帯域干渉図形を空間的に位置合わせする位置合わせ装置と、
各狭帯域干渉図形内の対応する画素から一次元強度信号を抽出する抽出装置と、
前記物体上の各点における周波数を、前記各点に関連付けられた一次元強度信号から計算する計算装置と、
を備える装置。
【請求項2】
前記光源が、周波数変調器に作用的に接続された狭帯域光源を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記光源が、光周波数コム光源を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記ハイパースペクトル撮像装置が、エタロンをさらに備える、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記ハイパースペクトル撮像装置が、前記干渉計より下流に配置された分散素子を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記ハイパースペクトル撮像装置が、前記干渉計より下流に配置された反射ボリューム・ホログラムを備え、前記反射ボリューム・ホログラムには複数のブラッグ格子が書き込まれている、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記ハイパースペクトル撮像装置に動作可能に接続されたデータ処理装置をさらに備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記ハイパースペクトル撮像装置が、光検出器アレイを備える、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記物体に照射するための複数の光源を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記複数の広帯域光源から発生する複数の光帯が、互いにスペクトル的に離れている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
二次元光路分布の絶対測定を行う方法であって、
複数の波長を有する光を物体に照射することを、前記光を干渉計に透過させて前記物体の広帯域干渉図形を生成することによって行うステップと、
前記広帯域干渉図形をスペクトル的に分離して複数の二次元狭帯域干渉図形を形成するステップと、
前記二次元干渉図形を空間的に位置合わせするステップと、
各狭帯域干渉図形内の対応する画素から一次元強度信号を抽出するステップと、
前記物体上の各点における周波数を、前記各点に関連付けられた一次元信号から計算するステップと、
を含む方法。
【請求項12】
広帯域光を物体に照射する前記ステップが、合成、または見かけ、の広帯域光源を生成するために、狭帯域光を高周波で変調するステップを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記二次元干渉図形を空間的に位置合わせする前記ステップが、すべての前記狭帯域干渉図形内での、前記サンプル面上の共通箇所の画素位置を識別するステップを含む、請求項11または請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記二次元干渉図形を空間的に位置合わせする前記ステップが、前記二次元狭帯域干渉図形の三次元強度分布を形成するステップを含む、請求項11から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記二次元狭帯域干渉図形の三次元強度分布を形成する前記ステップが、個々の狭帯域干渉図形をそれぞれのx座標およびy座標に対して位置合わせし、前記位置合わせされた干渉図形をk軸方向にスタックしてサンプルのハイパースペクトル画像ボリュームを形成するステップを含み、前記k軸は、各干渉図形の波数を表す、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
各干渉図形内の対応する画素から一次元強度信号を抽出する前記ステップが、前記空間的に位置合わせされた干渉図形から前記k軸方向の周波数を、一次元フーリエ変換によって測定するステップを含む、請求項11から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
広帯域光を物体に照射する前記ステップが、複数の光源からの広帯域光を前記物体に照射して複数の帯域の広帯域光を生成するステップを含み、各帯域は、他のどの帯域ともスペクトル的に離れている、請求項13から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
実質的には、添付図面に関してここまで説明されたとおりの装置。
【請求項19】
実質的には、添付図面に関してここまで説明されたとおりの方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【公表番号】特表2012−533746(P2012−533746A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521094(P2012−521094)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001379
【国際公開番号】WO2011/010092
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(512018276)ラフバロー ユニバーシティ (1)
【Fターム(参考)】