説明

建設機械

【課題】吸音装置を軽量化しながらも剛性の低下を抑制すると共に、吸音性能を向上させる。
【解決手段】本発明に係る建設機械は、エンジンフードと、吸音装置とを備える。エンジンフードは、内部にエンジンが収容される機械室を構成する。吸音装置は、エンジンフードの内面に取り付けられ表面に凹凸が形成された樹脂製のフレーム18と、フレーム18の凹部23を覆うようにフレーム18に取り付けられる吸音材19とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンが収容されるエンジンルームを内部に有する建設機械には、エンジンからの騒音を抑制するためにエンジンルーム内に吸音装置が設けられるものがある(特許文献1参照)。この吸音装置は、ウレタン等からなる吸音材と、吸音材が取り付けられる金属板とを有しており、例えば図7に示す構造を有する。この吸音装置では、平坦な金属板91に複数の釘92が設けられており、シート状の吸音材93が釘92に突き刺されて金属板91に取り付けられている。また、吸音材93を釘92に突き刺した後に釘92に抜け止め部材94を取り付けることにより、吸音材93の脱落を防止している。そして、金属板91が金属製のフレーム部材(図示せず)を介してエンジンフードの内面に取り付けられることにより、吸音装置がエンジンルーム内に設けられる。
【特許文献1】特開2007−85010号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記のような建設機械では、吸音装置の重量が大きいため、吸音装置を支持するために強固なフレーム部材が必要となり、コストが増大してしまう。このため、吸音装置の軽量化が求められているが、吸音装置を軽量な材料で形成した場合、吸音装置の剛性が低下する恐れがある。
【0004】
一方、エンジンルーム内にはエンジンを冷却するために空気の流れが生成されるため、吸音装置を設ける範囲が制限される。このため、吸音装置を大型化させずに吸音性能を向上させることが求められる。
【0005】
本発明の課題は、吸音装置を軽量化しながらも剛性の低下を抑制すると共に、吸音性能を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る建設機械は、エンジンフードと、吸音装置とを備える。エンジンフードは、内部にエンジンが収容される機械室を構成する。吸音装置は、エンジンフードの内面に取り付けられ表面に凹凸が形成された樹脂製のフレームと、フレームの凹部を覆うようにフレームに取り付けられる吸音材とを有する。
【0007】
この建設機械では、吸音装置のフレームが樹脂で形成されているため、吸音装置が軽量化される。また、フレームには凹凸が形成されているため、フレームの剛性を向上させることができる。さらに、フレームに凹凸が形成されることによって生じる凹部を覆うように吸音材が取り付けられるため、吸音材とフレームとの間に空隙が形成され、吸音材を透過した騒音の吸音効果を向上させる空気層として機能する。これにより、吸音装置の吸音性能を向上させることができる。このように、本発明に係る建設機械では、フレームが樹脂で形成されることによる剛性低下をフレームに凹凸を形成することによって補うと共に、フレームの凹部と吸音材の間に形成される空気層によって吸音効果を向上させることができる。
【0008】
第2発明に係る建設機械は、第1発明の建設機械であって、エンジンフードの天面又は側面には空気が通過するための開口が設けられている。そして、吸音装置は、開口が設けられたエンジンフードの天面又は側面から距離を隔てて配置されている。
【0009】
この建設機械では、吸音装置が、開口が設けられたエンジンフードの天面又は側面から距離を隔てて配置されている。このため、機械室内の空気の流れを妨げる恐れを低減することができる。
【0010】
第3発明に係る建設機械は、第1発明または第2発明の建設機械であって、フレームは、凹凸が形成され吸音材によって覆われる第1部材と、第1部材の吸音材によって覆われる表面の反対側に位置する背面を覆うように取り付けられる第2部材と、を有する。
【0011】
この建設機械では、フレームが第1部材と第2部材との2重構造になっている。このため、フレームの剛性をより向上させることができる。また、第1部材と第2部材とを別々に成形することができるため、フレームの製造を容易にすることができる。
【0012】
第4発明に係る建設機械は、第3発明の建設機械であって、第1部材の凸部は、背面が表面側へ凹むことによって表面に凸部が形成されており、第1部材の凸部には、複数の貫通孔が設けられている。そして、吸音装置は、固定部材をさらに有する。固定部材は、第1部材の凸部の貫通孔に吸音材の一部と共に押し込まれて第1部材の凸部に係止することによって吸音材をフレームに固定する。
【0013】
この建設機械では、固定部材によって吸音材を安定的に固定することができる。また、第1部材の凸部は、背面が表面側へ凹むことによって形成されているため、凸部の背面側は凹状の形状となっている。このため、第1部材の凸部と第2部材との間に空間が形成され、この空間を固定部材と吸音材の一部とが押し込まれる空間として利用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る建設機械では、フレームが樹脂で形成されることによる剛性低下をフレームに凹凸を形成することによって補うと共に、フレームの凹部と吸音材の間に形成される空気層によって吸音効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<全体構成>
本発明の一実施形態に係る建設機械1を図1に示す。この建設機械1は、油圧ショベルであり、履帯2aが設けられた下部走行体2と、下部走行体2上に載置される上部旋回体3とを備える。上部旋回体3は、運転室4、作業機5、作動油タンク6、燃料油タンク7、機械室8、カウンターウェイト9と、これらを支持する旋回フレーム10(図2参照)等を有する。運転室4は、上部旋回体3の前部に設けられており、その側方に作業機5のブーム5aの基端部が配置されている。作業機5および運転室4の後方には、作動油タンク6および燃料油タンク7が左右方向に並んで配置されており、作動油タンク6および燃料油タンク7の後方には機械室8が配置されている。また、機械室8の後方にはカウンターウェイト9が配置されている。
【0016】
機械室8の断面図を図2に示す。機械室8は、主として、第1側面部材11と第2側面部材12とエンジンフード13とによって構成されており、その内部には、エンジン14、ラジエータ15、冷却ファン16、吸音装置17などが収納されている。
【0017】
第1側面部材11は、機械室8の一側面を構成しており、ラジエータ15に対向して配置されている。第1側面部材11は、L字型に屈曲した板状の形状を有しており、第1側面部材11の側面および上面には、空気が通過する開口11a,11bが形成されている。
【0018】
第2側面部材12は、機械室8の他側面を構成している。第2側面部材12は、L字型に屈曲した板状の形状を有しており、第2側面部材12の上面には、空気が通過する開口12aが形成されている。
【0019】
エンジンフード13は、主として機械室8の天面を構成しており、エンジン14やラジエータ15の上方に配置されている。エンジンフード13は、図3に示すように、下面が開口した箱状の形状を有しており、エンジンフード13の天面および側面には空気が通過するための開口13a,13b,13cが設けられている。
【0020】
<吸音装置17の構成>
吸音装置17は、エンジンフード13とエンジン14との間に配置され、エンジン14で発生した騒音を吸音するためのものである。吸音装置17は、エンジンフード13の内面に取り付けられており、エンジンフード13の天面から下方に距離を隔てて配置されている。吸音装置17は、フレーム18と、吸音材19と、複数の固定部材20とを有する。
【0021】
フレーム18は、図4に示すように、ポリプロピレン等の合成樹脂から形成された板状の部材であり、両端が屈曲した形状を有する。フレーム18の両端の屈曲部分18a,18bには、ボルト等の固定手段によってフレーム18をエンジンフード13の内側面に固定するための固定部21a,21bが設けられている。また、フレーム18のエンジン14側の面には、凹凸が形成されており、凸部22が格子状に配置されている。このため、凸部22の間には四角形の凹部23が設けられており、フレーム18の表面には凹部23が複数配置されている。なお、図4では、複数の凹部23の一部にのみ符号を付し、他は省略している。フレーム18には、凹凸が形成された部分の側方に開口18cが形成されている。また、フレーム18は、図5に示すように、第1部材24と第2部材25とを有する。
【0022】
第1部材24は、表面に凹凸が形成されており、吸音材19によって覆われる部材である(図6参照)。第1部材24は、樹脂から一体成形されており、背面が表面側(エンジン14側)へ凹むことによって表面に凸部22が形成されている。なお、図5において、下方がエンジン14が配置されている側である。第1部材24の凸部22には、複数の貫通孔26が設けられており、凸部22の背面側に設けられた空間に連通している。なお、図4において、複数の貫通孔26を図示しているが、そのうちの一部にのみ符号を付して他は省略している。
【0023】
第2部材25は、樹脂から一体成形された平坦な板状の部材であり、第1部材24の背面を覆うように取り付けられる。このため、第1部材24の凸部22の背面側の空間は、第2部材25によって上方を閉じられる。
【0024】
吸音材19は、図6に示すように、ウレタン等の吸音性を有する素材から形成されたシート状の部材である。吸音材19は、フレーム18の第1部材24の表面に取り付けられ、フレーム18の凹部23を覆うようにフレーム18に取り付けられる。このため、吸音材19の背面側には、第1部材24の凹部23との間に空隙が形成されており、吸音材19を透過した騒音の消音効果を高める空気層として機能する。なお、図6は、吸音装置17の断面図であり、図5に示すフレーム18に吸音材19を取り付けた状態を示している。吸音材19は、図3に示すように複数のシートに分かれてフレーム18に取り付けられている。
【0025】
固定部材20は、フレーム18の凸部22の貫通孔26に吸音材19の一部と共に押し込まれてフレーム18の凸部22の内側に係止することによって吸音材19をフレーム18に固定する部材である。固定部材20は、例えばアンカークリップであり、吸音材19に突き刺せるように先端が尖った形状になっている。また、固定部材20は、嵌め込みにより簡易にフレーム18に取り付けることができる。なお、これらの固定部材20と共に、両面粘着テープなどの別種の固定手段が併用されてもよい。
【0026】
<特徴>
(1)
この建設機械1では、吸音装置17のフレーム18が合成樹脂で形成されているため、吸音装置17が軽量化される。また、吸音装置17の軽量化により、吸音装置17を支えるエンジンフード13への負担が小さくなるため、エンジンフード13を合成樹脂により形成することができる。これにより、建設機械1の軽量化が可能である。
【0027】
また、フレーム18には凹凸が形成されていると共に、フレーム18が第1部材24と第2部材25との2重構造となっているため、フレーム18の剛性を向上させることができる。
【0028】
さらに、フレーム18に凹凸が形成されることによって生じる凹部23を、吸音材19を透過した騒音の吸音効果を向上させる空気層として利用している。これにより、吸音装置17の吸音性能を向上させることができる。
【0029】
(2)
吸音装置17において、吸音材19は、上記のような固定部材20によってフレーム18に固定されるため、吸音材19を安価且つ安定的に取り付けることができる。また、吸音材19のフレーム18への取付やフレーム18からの取り外しが容易であるため、吸音材19の取替作業を容易に行うことができる。
【0030】
(3)
吸音装置17は、開口13aが形成されたエンジンフード13の天面から距離を隔てて配置されている。また、上述したように吸音材19の背面側に空気層が設けられることにより吸音性能が向上するため、吸音装置17の小型化が可能である。このため、吸音装置17が機械室8内の空気の流れを妨げる恐れが少なくなり、機械室8内のヒートバランスに与える影響を低減することができる。
【0031】
<他の実施形態>
(a)
上記の実施形態では、フレーム18の凹部23は四角形であるが、円形など他の形状であってもよい。
【0032】
(b)
上記の実施形態では、吸音装置17がエンジンフード13の天面から距離を隔てて配置されているが、開口13cが設けられたエンジンフード13の側面から距離を隔てて配置されてもよい。特に、上記の実施形態では、吸音装置17のフレーム18の凹部23および吸音材19がエンジンフード13の天面に沿って配置されているが、エンジンフード13の側面に沿って配置されてもよい。この場合も、エンジンフード13の側面の開口13cを通る空気の流れを妨げる恐れが少なく、上記と同様の効果を奏することができる。
【0033】
(c)
上記の実施形態では、建設機械として油圧ショベルが例示されているがブルドーザ等の他の建設機械にも本発明の適用が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、フレームが樹脂で形成されることによる剛性低下をフレームに凹凸を形成することによって補うと共に、フレームの凹部と吸音材の間に形成される空気層によって吸音効果を向上させることができる効果を有し、建設機械として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】建設機械の外観斜視図。
【図2】機械室の断面図。
【図3】エンジンフードおよび吸音装置を斜め下方から見た斜視図。
【図4】吸音装置のフレームを斜め下方から見た斜視図。
【図5】吸音装置のフレームの断面図。
【図6】吸音装置の断面図。
【図7】従来の吸音装置の構造を示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
1 建設機械
13 エンジンフード
17 吸音装置
18 フレーム
19 吸音材
20 固定部材
24 第1部材
25 第2部材
26 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にエンジンが収容される機械室を構成するエンジンフードと
前記エンジンフードの内面に取り付けられ表面に凹凸が形成された樹脂製のフレームと、前記フレームの凹部を覆うように前記フレームに取り付けられる吸音材とを有する吸音装置と、
を備える建設機械。
【請求項2】
前記エンジンフードの天面又は側面には空気が通過するための開口が設けられており、
前記吸音装置は、前記開口が設けられた前記エンジンフードの天面又は側面から距離を隔てて配置されている、
請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記フレームは、凹凸が形成され前記吸音材によって覆われる第1部材と、前記第1部材の前記吸音材によって覆われる表面の反対側に位置する背面を覆うように取り付けられる第2部材と、を有する、
請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記第1部材は、背面が表面側へ凹むことによって表面に凸部が形成されており、
前記第1部材の凸部には、複数の貫通孔が設けられており、
前記吸音装置は、前記第1部材の凸部の貫通孔に前記吸音材の一部と共に押し込まれて前記第1部材の凸部に係止することによって前記吸音材を前記フレームに固定する固定部材をさらに有する、
請求項3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−302893(P2008−302893A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−154130(P2007−154130)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】