説明

弾性ローラ、弾性ローラの製造方法、画像形成装置用定着装置及び画像形成装置

【課題】高品質の画像を形成することのできる弾性ローラ、均一な物性を有する弾性層を形成することのできる弾性ローラの製造方法、並びに、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置用定着装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】軸体2と、軸体2の外周面に形成された弾性層3とを備え、前記弾性層3に形成されたセル4の最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)が1.5以下である弾性ローラ1、軸体2の外周面に配置されたゴム組成物を過熱水蒸気で加熱して、前記軸体2の外周面に弾性層3を形成する弾性ローラ1の製造方法、並びに、弾性ローラ1を備えた画像形成装置用定着装置及び画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性ローラ、弾性ローラの製造方法、画像形成装置用定着装置及び画像形成装置に関し、さらに詳しくは、高品質の画像を形成することのできる弾性ローラ、均一な物性を有する弾性層を形成することのできる弾性ローラの製造方法、並びに、この弾性ローラを備えた画像形成装置用定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザープリンタ、複写機、ビデオプリンタ、ファクシミリ、これらの複合機等には、電子写真方式を利用した各種の画像形成装置が採用されている。電子写真方式を利用した画像形成装置は、軸体とその外周面に形成された弾性層とを有する、例えば、クリーニングローラ、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、加圧ローラ、紙送り搬送ローラ、定着ローラ等の各種ローラを備えている。このような画像形成装置において、高品質の画像を形成するには、画像形成装置に装着された各種ローラ、特に弾性層が均一な物性を有していることが求められる。
【0003】
これらのローラは、通常、ゴム組成物を各種成形方法により軸体の周囲に加熱成形することにより弾性層を形成して、製造される。ゴム組成物の加熱成形は、加熱手段として、通常、熱風加熱器を用いて熱風を噴射する方法及び加熱オーブン等の加熱器を用いる方法が採用されるが、これらの方法の他に、赤外線ヒータを用いて遠赤外線又は赤外線を照射する方法(例えば、特許文献1及び2参照。)、マイクロ波加熱炉を用いる方法(例えば、特許文献3参照。)等も採用されている。
【0004】
ところが、従来の加熱手段においては、軸体の外周面に配置されたゴム組成物を均一に加熱しにくいことがある。それ故、本出願人により、ゴムローラの全域にわたり均一な物性を得ることができるゴムローラの架橋方法として、「発泡剤が混入されたゴムロールを移動させながら加熱槽内で加熱して、このゴムロールを加硫するゴムロールの加硫方法において、前記ゴムロールの上方及び下方の斜め方向から遠赤外線を照射して、このゴムロールの外表面を加熱して、このゴムロールの外表面を焼き固めた後に、前記ゴムロールの外表面をさらに加熱して、このゴムロールの内部を発泡させて加硫することを特徴とするゴムロールの加硫方法」が提案されている(特許文献4参照。)。
【0005】
近年、画像形成装置は画像の高精細化及び印刷速度の高速化が著しく向上しているから、高速で高精細化した画像を形成するためには、ローラ、特に、ローラの弾性層には、その軸線方向及び厚さ方向の全体にわたってより一層均一な物性を有していることが要求されている。また、ローラの生産性向上等も要求されていることはいうまでもない。
【0006】
【特許文献1】特開2002−347040号公報
【特許文献2】特開平8−157622号公報
【特許文献3】特公平6−59654号公報
【特許文献4】特開2000−271937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、高品質の画像を形成することのできる弾性ローラを提供すること、及び、均一な物性を有する弾性層を形成することのできる弾性ローラの製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、この発明は、高品質の画像を形成することのできる画像形成装置用定着装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、軸体と、前記軸体の外周面に形成された弾性層とを備え、前記弾性層に形成されたセルの最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)が1.5以下である弾性ローラであり、
請求項2は、前記セルは、平均セル径が100〜800μmである請求項1に記載の弾性ローラであり、
請求項3は、前記弾性層は、アスカーC硬度が20〜60である請求項1又は2に記載の弾性ローラであり、
請求項4は、前記弾性層は、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を硬化して成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性ローラであり、
請求項5は、軸体の外周面に配置されたゴム組成物を過熱水蒸気で加熱して、前記軸体の外周面に弾性層を形成する弾性ローラの製造方法であり、
請求項6は、前記過熱水蒸気による加熱に先立って、前記過熱水蒸気による加熱条件よりも穏やかな条件で前記ゴム組成物を予備加熱する請求項5に記載の弾性ローラの製造方法であり、
請求項7は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性ローラを備えた画像形成装置用定着装置であり、
請求項8は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性ローラを備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0010】
この発明に係る弾性ローラにおいては、その弾性層に形成された複数のセルは、最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)が1.5以下であり、セル径がほぼ均一である。故に、このようなセルが形成された弾性層は均一な物性を有し、この発明に係る弾性ローラを近年の画像形成装置に装着すると、高品質の画像を所望のように形成することができる。また、この発明に係る弾性ローラの製造方法は、過熱水蒸気によってゴム組成物を加熱成形するから、ゴム組成物の全域にわたって均一かつ高い加熱効率でゴム組成物が加熱され、その結果、成形される弾性層の物性を均一にすることができる。したがって、この発明によれば、高品質の画像を形成することのできる弾性ローラ、及び、均一な物性を有する弾性層を形成することのできる弾性ローラの製造方法を提供することができる。また、この発明によれば、この発明に係る弾性ローラを備えているから、高品質の画像を所望のように形成することのできる画像形成装置用定着装置及び画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明に係る弾性ローラは、図1に示されるように、軸体2と、その外周面に形成された弾性層3とを備え、この弾性層3は、最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)が1.5以下となる複数のセル4を有している。
【0012】
前記軸体2は、良好な導電特性を有していればよく、通常、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、真鍮等で構成された所謂「芯金」と称される軸体とされる。また、軸体2は、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等の絶縁性芯体にメッキを施して導電化した軸体であってもよく、さらには、熱可塑性樹脂若しくは熱硬化性樹脂等に導電性付与剤としてカーボンブラック又は金属粉体等を配合した導電性樹脂で形成された軸体であってもよい。
【0013】
前記弾性層3は、後述するゴム組成物によって、軸体2の外周面に形成され、その内部及び/又は外表面に複数のセル4又は中空部を有している。この発明においては、発泡剤の発泡又は分解等によって生じる中空領域をセルと称し、中空フィラー等に由来する中空領域を中空部と称するが、以下、セルと中空部とをあわせてセルと称することがある。複数のセル4は、他のセルに接することのない、又は連通することのない状態(独立セル状態と称する。図1参照。)、他のセルに接し、又は連通している状態(連通セル状態と称する。)、又は、前記独立セル状態と前記連通セル状態とが共存する状態の何れの状態にあってもよい。弾性層3が複数のセル4を有していると、弾性層3の硬度を所望のように調整することができる。特に、弾性ローラが被当接体に圧接された状態で画像形成装置に装着される場合には、圧接による弾性層3の変形量を所望の範囲に容易に調整することができると共に、弾性層3が被当接体等に当接又は圧接することにより変形しても速やかに復元することができる。
【0014】
弾性層3に形成されるセル4は、最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)が1.5以下である。セル4が前記範囲のrmax/rminを有すると、軸線方向においても、また、厚さ方向においても、弾性層3の物性が均一になり、その結果、この弾性層3を備えた弾性ローラを画像形成装置に装着した場合に、高品質の画像を形成することに貢献することができる。高品質の画像を形成することに多大に貢献することができる点で、前記rmax/rminは、1.45以下であるのが好ましく、1.40以下であるが特に好ましい。なお、前記rmax/rminの下限は、1であるのがよいが、1.2程度でもこの発明の目的を十分に達成することができる。
【0015】
ここで、最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)は、弾性層3の表面又は弾性層3を任意の面で切断したときの切断面において、約2mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する複数のセルにおいて、各セルの開口部における最大長さを測定し、測定された最大長さをセルのセル径rとして、最小セル径rminを有するセルに対する最大セル径rmaxを有するセルのセル径比(rmax/rmin)を算出することにより、求めることができる。なお、観察は複数の領域、例えば、3箇所の領域で行い、好ましくは、弾性層3の表面と、弾性層3の軸線方向に沿って切断された切断面と、弾性層3の厚さ方向に沿って切断された切断面とから観察領域を選択する。
【0016】
セル4は、標準偏差σが0.10以下であるのが好ましい。セル4が前記範囲の標準偏差σを有すると、この弾性層3を備えた弾性ローラ1を画像形成装置に装着した場合に、高品質の画像を形成することに貢献することができる。高品質の画像を形成することに多大に貢献することができる点で、前記標準偏差σは、0.07以下であるのがより好ましく、0.05以下であるが特に好ましい。
【0017】
ここで、セル4の標準偏差σは常法により求めることができる。具体的には、弾性層3の表面又は弾性層3を任意の面で切断したときの切断面において、約2mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セル4の開口部における最大長さを測定し、測定された最大長さをセルのセル径rとし、測定された各セル径から、セル径の大きい方から順に5つ、また、セル径の小さい方から順に5つを選択して、標準偏差σを求めることができる。なお、観察は複数の領域、例えば、3箇所の領域で行い、好ましくは、弾性層3の表面と、弾性層3の軸線方向に沿って切断された切断面と、弾性層3の厚さ方向に沿って切断された切断面とから観察領域を選択する。
【0018】
セル4は、平均セル径が100〜800μmであるのが好ましい。セル4が前記範囲の平均セル径を有すると、耐熱性、耐圧性及び耐久性の向上による画像形成装置等の長寿命化、並びに、印字画像の高精細化を達成することができる。画像形成装置等の長寿命化と印字画像の高精細化をより一層高い水準で達成することができる点で、セル4の平均セル径は、200〜500μmであるのがより好ましく、250〜350μmであるのが特に好ましい。
【0019】
ここで、セル4の平均セル径は、弾性層3の表面又は弾性層3を任意の面で切断したときの切断面において、約2mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在する各セル4の開口部における最大長さを測定して、測定された最大長さを算術平均して得られた平均長さとして、求めることができる。なお、観察は複数の領域、例えば、3箇所の領域で行い、好ましくは、弾性層3の表面と、弾性層3の軸線方向に沿って切断された切断面と、弾性層3の厚さ方向に沿って切断された切断面とから観察領域を選択する。
【0020】
セル4は、セル壁が0.01〜0.50mmであるのが好ましい。セル4が前記範囲のセル壁を有すると、弾性層3の硬度を所望のように調整することができ、弾性層3における一定の弾性が得られ、また、弾性層3における部分的な弾性の差が緩和されるという効果が得られる。この効果がより一層優れる点で、セル4のセル壁は、0.05〜0.40mmであるのがより好ましく、0.10〜0.30mmであるのが特に好ましい。
【0021】
ここで、セル4のセル壁は、あるセルと他のセルとの間に位置し、これらセルを分離する壁を成す弾性層3又はセルを形成している外壁の部分をいい、セル壁は、前記セル径と同様に、弾性層3の表面又は弾性層3を任意の面で切断したときの切断面において、約2mmの領域を電子顕微鏡等で観察し、観察視野内に存在するセルとセルとの平均間隔、すなわち、セルとセルとの間にある壁の平均幅を測定することによって、求めることができる。
【0022】
セル4の形状は、特に限定されず、例えば、略球状であってもよく、また、楕円形、不定形であってもよく、また、複数のセル4が連通して管状となっていてもよい。セル4は、例えば、発泡剤の発泡等によって生じるセルそのものであってもよく、また、中空充填材等であってもよい。
【0023】
弾性層3は、セル4を複数有していればよいが、そのアスカーC硬度が20〜60であるのが好ましい。弾性層3のアスカーC硬度が前記範囲内にあると、特に、弾性ローラが被当接体に当接又は圧接された状態で画像形成装置に装着される場合には、当接又は圧接による弾性層3の変形量を所望の範囲に容易に調整することができると共に、弾性層3が被当接体等に当接又は圧接することにより変形しても速やかに復元することができる。弾性層3が、変形量の調整及び変形からの復元に優れる点で、弾性層3のアスカーC硬度は、20〜50であるのがより好ましく、25〜40であるのが特に好ましい。弾性層3のアスカーC硬度は、軸体2の外周面に形成された状態で、JIS K6253に準拠して測定することができる。弾性層3のアスカーC硬度は、例えば、弾性層3を形成するゴム組成物に含有されるゴム及び発泡剤等の種類を選択し、及び/又は、それらの含有量等を変更することにより、調整することができる。
【0024】
弾性ローラ1に導電性が要求される場合には、弾性層3は、その体積抵抗率(ρv)が1×10〜1×1013Ω・cmであるのが好ましく、1×1010〜1×1012Ω・cmであるのが特に好ましい。体積抵抗率(ρv)が前記範囲内にあると、弾性ローラ1を画像形成装置に使用した場合に、高品質の画像を形成することができる。体積抵抗率(ρv)は、体積抵抗測定装置(三菱化学株式会社製、商品名:Hiresta−UP、使用プローブ:URS)により測定することができる。
【0025】
弾性層3の厚さは、画像形成装置に用いられる各種ローラに応じて、その厚さが決定され、通常、例えば、2〜20mmであるのが好ましく、3〜12mmであるのが特に好ましい。また、弾性層3は、画像形成装置に用いられる各種ローラに応じて、軸線方向の長さが決定され、例えば、記録体としてA3サイズ(JIS、297mm×420mm)の用紙を縦長に用いる場合には、約310mm程度に調整され、記録体としてA4サイズ(JIS、210mm×297mm)の用紙を縦長に用いる場合には、約230mm程度に調整される。
【0026】
弾性層3を形成するゴム組成物は、ゴムと、発泡剤又は中空充填材と、所望により各種添加剤等とを含有する組成物であればよく、例えば、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物及び発泡ウレタンゴム系組成物等が好ましく挙げられる。特に、独立セル状態のセルを形成することのできる発泡シリコーンゴム系組成物は、耐熱性、耐久性及び耐残留歪み特性等に優れ、画像形成装置の高速運転にも耐えられる好適なゴム組成物である。このような発泡シリコーンゴム系組成物として、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物が特に好ましい。
【0027】
付加反応型発泡シリコーンゴム組成物は、ビニル基含有シリコーン生ゴムと、シリカ系充填材と、発泡剤と、付加反応架橋剤と、付加反応触媒と、反応制御剤と、所望により、有機過酸化物架橋剤と、各種添加剤とを含有する。
【0028】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴムは、例えば、ミラブル型シリコーンゴム、熱架橋シリコーンゴム(HTV:High Temperature Vulcanizing)等が挙げられる。これらのビニル基含有シリコーン生ゴムは、後工程で、発泡剤及び架橋剤等をロールミル等で容易に混練りすることができるという特性を有し、一種単独又は二種以上を混合して用いることができる。
【0029】
前記シリカ系充填材は、補強性を有する煙霧質シリカ又は沈降性シリカ等が挙げられ、一般式がRSi(OR’)で示されるシランカップリング剤で表面処理された、補強効果の高い表面処理シリカ系充填材が好ましい。ここで、前記一般式におけるRは、グリシジル基、ビニル基、アミノプロピル基、メタクリロキシ基、N−フェニルアミノプロピル基又はメルカプト基等であり、前記一般式におけるR’はメチル基又はエチル基である。前記一般式で示されるシランカップリング剤は、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KBM1003」及び「KBE402」等として、容易に入手することができる。このようなシランカップリング剤で表面処理されたシリカ系充填材は、定法に従って、シリカ系充填材の表面を処理することにより、得られる。シリカ系充填材の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、5〜100質量部であるのがよい。
【0030】
前記発泡剤としては、従来より発泡ゴムに用いられる発泡剤であればよく、例えば、無機系発泡剤として、重炭酸ソーダ、炭酸アンモニウム等が挙げられ、有機系発泡剤として、ジアゾアミノ誘導体、アゾニトリル誘導体、アゾジカルボン酸誘導体等の有機アゾ化合物等が挙げられる。通常、ゴムに連続セルを形成する場合には無機系発泡剤が用いられ、独立セルを形成する場合には有機系発泡剤が用いられる。弾性ローラ1においては、発泡剤は、独立セル状態のセル4を形成することができる点で、有機系発泡剤であるのがよく、具体的には、例えば、アゾジカルボンアミド、アゾビス−イソブチロニトリル等のアゾ化合物が好適に使用される。特に、ジメチル−1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)が好適に使用できる。発泡剤の含有量は、発泡剤の種類によって相違するが、弾性層3のアスカーC硬度が20〜60となるように調整するのがよい。具体的には、例えば、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.1〜10質量部、特に0.5〜10質量部であるのがよい。発泡剤の含有量が、0.1質量部未満であると、形成される弾性層3に十分なセル4を形成することができないことがあり、一方、10質量部を超えると、発泡シリコーンゴムとしての形態を維持することができなくなり、弾性層3の機械的強度が低下することがある。発泡剤として、ジメチル−1,1’−アゾ−ビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)を選択する場合には、その含有量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.5〜5質量部であるのが特によい。
【0031】
前記付加反応架橋剤は、例えば、一分子中に2個以上のSiH基(SiH結合)を有する付加反応型の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができる。このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、直鎖状、環状、分枝状のいずれであってもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して、0.01〜20質量部であるのがよい。
【0032】
前記付加反応触媒は、例えば、周期律表第9属又は第10属の金属単体及びその化合物が挙げられ、より具体的には、シリカ、アルミナ又はシリカゲル等の担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸六水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸六水塩のアルコール溶液等の白金系触媒、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられる。これら付加反応触媒の配合量は、触媒量で十分であり、通常、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物全体に対して、1〜1,000ppmであるのがよく、10〜500ppmであるのが特によい。付加反応触媒の配合量が、周期律表第9属又は第10属の金属量に換算して、1ppmより少ないと、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応が十分に進行せず、ビニル基含有シリコーン生ゴムの硬化が不十分となることがあり、一方、1,000ppmを超えると、ビニル基含有シリコーン生ゴムの架橋反応を促進する能力が向上せず、かえって、経済性が低下することがある。
【0033】
前記反応制御剤は、公知の反応制御剤を制限されることなく使用することができ、例えば、メチルビニルシクロテトラシロキサン、アセチレンアルコール類、シロキサン変性アセチレンアルコール、ハイドロパーオキサイド等が挙げられる。反応制御剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.1〜2質量部であるのがよい。
【0034】
前記有機過酸化物架橋剤は、単独でビニル基含有シリコーン生ゴムを架橋させることも可能であるが、付加反応架橋剤の補助架橋剤として併用すれば、シリコーンゴムの強度、歪み等の物性がより向上する。有機過酸化物架橋剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物架橋剤の配合量は、前記ビニル基含有シリコーン生ゴム100質量部に対して0.3〜10質量部であるのがよい。
【0035】
前記各種添加剤は、例えば、アセチレンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック、炭酸カルシウム等の充填材、着色剤、耐熱性向上剤、難燃性向上剤、熱伝導性向上剤等の添加剤、離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール基封鎖低分子シロキサン等の分散剤、及び、得られるゴムの硬度を調整することのできる粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ等が挙げられる。これらの各種添加剤は、所望の配合量で配合される。
【0036】
前記ビニル基含有シリコーン生ゴム、前記シリカ系充填材及び前記各種添加剤を含有するシリコーンゴム組成物として、例えば、信越化学工業株式会社製の商品名「KEシリーズ」及び「KEGシリーズ」等を容易に入手することができる。
【0037】
ゴム組成物は、二本ロール、三本ロール、ロールミル、バンバリーミキサ、ドウミキサ(ニーダー)等のゴム混練り機等を用いて、均一に混合されるまで、例えば、数分から数時間、好ましくは5分以上1時間以下にわたって、常温又は加熱下で混練して、得られる。
【0038】
弾性層3の外周面には、所望により、コート層が形成されてもよい。弾性層の外表面にコート層が形成されると、例えば、現像剤等の離型性を向上させることができる。コート層は、例えば、1〜100μmの厚さに形成される。
【0039】
コート層を形成する材料は、特に制限されるものではないが、弾性ローラ1は被当接体に当接又は圧接されるから、永久変形しにくい材料であるのが好ましく、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0040】
弾性ローラ1において、所望により、軸体2と弾性層3との間には、接着層、プライマー層等が設けられてもよく、また、弾性層3又はコート層の外周面に、例えば、保護層等の表面層が設けられてもよい。
【0041】
弾性ローラ1は、用途に応じて、軸体2内、弾性層3内、又は軸体2と弾性層3との間に、加熱体、例えば、電熱器、発熱コイル等を備えていてもよい。例えば、弾性ローラ1が熱ローラ定着器の定着ローラとして使用される場合には加熱体を備えている。
【0042】
この発明に係る弾性ローラの製造方法について説明する。この発明に係る弾性ローラの製造方法おいては、軸体2に、必要に応じて予め、その外周面に接着剤又はプライマーを、スプレー法、浸漬法等によって、塗布し、その外周面に接着層又はプライマー層を形成しておくのがよい。プライマーとしては、特に限定されず、例えば、シランカップリング系プライマー等が挙げられる。また、接着剤としては、特に制限されないが、例えば、アルキッド樹脂、フェノール変性・シリコーン変性等のアルキッド樹脂変性物、オイルフリーアルキッド樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、アミノ基及び/又は水酸基を有する接着剤が好適である。また、これらの樹脂を硬化させるための架橋剤として、イソシアネート化合物、メラミン化合物、エポキシ化合物、過酸化物、フェノール化合物、ハイドロジェンシロキサン化合物等が用いられる。
【0043】
次いで、接着層又はプライマー層が形成された軸体2の外周面に弾性層3を形成するゴム組成物を配置する。軸体2の外周面にゴム組成物を配置する方法としては、例えば、押出機等により軸体2とゴム組成物とを一体に分出して、軸体2の外周面にゴム組成物を配置する方法、また、軸体2を収納する金型にゴム組成物を注入して、軸体2の外周面にゴム組成物を配置する方法等が挙げられる。この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、押出機等により軸体2とゴム組成物とを一体に分出しする方法が、作業が容易で、作業を連続して行うことができる点で、好ましい。
【0044】
この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、後述する過熱水蒸気によるゴム組成物の加熱に先立って、この過熱水蒸気による加熱条件よりも穏やかな条件でゴム組成物を予備加熱してもよい。ゴム組成物を予備加熱すると、軸体2の外周面にゴム組成物を所望のように配置することができ、ゴム組成物の流動又は重力等によるゴム組成物の変形等を効果的に防止することができる。ここで、予備加熱は、後述する過熱水蒸気による加熱条件よりも穏やかな条件で行われ、ゴム組成物の粘度等に応じて調整される。予備加熱における加熱条件は、例えば、ゴム組成物の外周近傍におけるゴムが一部架橋し、かつ、発泡剤の発泡又は分解が起こらない条件、より具体的には、加熱温度は50〜90℃程度で、加熱時間は5〜30分間の条件が挙げられる。この予備加熱は、ゴム組成物を軸体の外周面に配置するのと同時に行ってもよく、また、ゴム組成物を軸体の外周面に配置した後に、行ってもよい。
【0045】
このようにして軸体2の外周面にゴム組成物を配置した後、この状態を維持しつつ、軸体2ごとゴム組成物を加熱する。ゴム組成物の加熱は、ゴム組成物に含まれるゴム、例えば、ビニル基含有シリコーン生ゴムが架橋し、かつ、発泡剤が分解又は発泡するのに十分な条件で行われればよい。例えば、ゴム組成物は、通常、170〜500℃程度、特に200〜400℃に加熱され、数分以上1時間以下、特に5〜30分間、加熱される。この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、ゴム組成物の加熱は過熱水蒸気で加熱される。ここで、過熱水蒸気は、定法に従って、加熱手段により水又は水蒸気を常圧下で100℃以上に加熱することにより得られる。
【0046】
例えば、ゴム組成物に過熱水蒸気を吹き付ける等に手段により、軸体2の外周面に配置されたゴム組成物に過熱水蒸気を接触させると、ゴム組成物が加熱され、架橋する。この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、ゴム組成物に過熱水蒸気を直接接触させてもよく、また、ゴム組成物に過熱水蒸気を間接的に接触させてもよい。ゴム組成物が過熱水蒸気により加熱されると、ゴム組成物は、その軸線方向及び厚さ方向にわたって均一でかつ速やかに加熱される。それ故、ゴム組成物に含有されるゴム等が均一に架橋し、かつ、発泡剤が分解又は発泡する程度も均一になるから、軸線方向及び厚さ方向にわたって均一な径を有するセルが均一に分散した弾性層3が速やかに形成される。
【0047】
この発明においては、例えば、軸体2の外周面にゴム組成物を配置する工程と、ゴム組成物を過熱水蒸気で加熱する工程とを同時に又は連続して行うこともできる。
【0048】
この発明に係る弾性ローラの製造方法においては、所望により、ゴム組成物は、過熱水蒸気による加熱後に、二次加熱が行われてもよい。二次加熱は、過熱水蒸気で架橋されたゴム組成物をより確実に架橋させる工程であり、二次加熱によって、弾性層3の物性がより一層安定する。二次加熱は、例えば、例えば、過熱水蒸気により架橋されたゴム組成物を、例えば、180〜250℃、好ましくは190〜230℃で、1〜24時間、好ましくは3〜10時間にわたって、再度加熱されることによって、行われる。
【0049】
次いで、このようにして形成された弾性層3は、所望により、仕上げ工程として、所望の大きさ及び形状等に調整する研削工程、研磨工程及び/又は切削工程等が施される。研削工程及び/又は研磨工程は、従来から利用されている研削盤、円筒研削盤、やすり等により、定法に従って行うことができる。また、研削工程、研磨工程及び/又は切削工程後に、研削カス、研磨カス、切削カス及び異物等を除去するため、所望により、弾性層3は洗浄されてもよい。洗浄は、例えば、水等を用いた湿式洗浄及び/又はウエス等を用いたふき取り洗浄、送風洗浄等が挙げられる。
【0050】
次いで、所望により、弾性層3の外周面にコート層を形成する。コート層は、前記材料を弾性層3の外径とほぼ同じ内径を有する円筒状に予め形成した管体に、弾性層3を挿入して、弾性層3の外表面に形成されるのが、弾性層3の表面に存在するセル4等に大きく影響されず、平滑な表面を有するコート層を形成することができる点で、好ましい。もちろん、コート層は、前記材料を、例えば、ディップ法、スプレー法等に従って、弾性層3の外周面に塗布した後、硬化及び/又は架橋して、形成されてもよい。さらに、所望により、弾性層3又はコート層の外周面に保護層等を定法に従って形成することもできる。
【0051】
この発明に係る弾性ローラ1の製造方法において、軸体2の外周面に配置されたゴム組成物を過熱水蒸気で加熱する手段は、ゴム組成物に直接又は間接に過熱水蒸気を接触させることができる装置等であれば、特に限定されない。ゴム組成物を過熱水蒸気で加熱する手段として、例えば、図2に示される過熱水蒸気加熱炉10等が挙げられる。この過熱水蒸気加熱炉10は、図2に示されるように、加熱炉本体20と、加熱炉本体20の内部に設けられ、未加熱ローラ支持部材22を載置する載置台21と、加熱炉本体20の内部に設けられ、未加熱ローラ支持部材22に装着された未加熱ローラ5に過熱水蒸気を噴射する過熱水蒸気噴射装置30と、加熱炉本体20の内部及び外部を連通し、加熱炉本体20内の噴射された過熱水蒸気を加熱炉本体20の外部に排気する排気装置40とを有している。
【0052】
前記加熱炉本体20は、密閉可能な筐体とされ、軸体2の外周面にゴム組成物を配置して成る未加熱ローラ5を装着した未加熱ローラ支持部材22を収納し、取り出すことができるようになっている。この加熱炉本体20は、過熱水蒸気に対する耐熱性を有する材料、例えば、各種金属、耐熱性樹脂等によって、形成されている。
【0053】
前記載置台21は、未加熱ローラ5を軸体2の両端部で略平行に複数装着した未加熱ローラ支持部材22を、加熱炉本体20の下部であって、後述する過熱水蒸気噴射装置30から噴射される過熱水蒸気が直接噴射される位置に、載置することができるように、所定の大きさを有する水平な台とされている。なお、この載置台21は、均一な加熱が可能となるように、回転テーブルとされてもよい。
【0054】
前記過熱水蒸気噴射装置30は、図2に示されるように、加熱炉本体20の外部に配置され、水を加熱して水蒸気を調製するボイラ31と、このボイラ31から移送手段32、例えば、配管等を介して供給される水蒸気を100℃以上に加熱して、過熱水蒸気を発生させる過熱水蒸気発生器33と、過熱水蒸気発生器33から移送手段34、例えば、配管等によって供給される過熱水蒸気を、載置台21上に載置された未加熱ローラ支持部材22の未加熱ローラ5に向かって噴射し、未加熱ローラ5に直接吹き付けることができるように、加熱炉本体20内の天井及び側壁に設けられた噴射口36を複数備えた噴射ノズル35とを有する。
【0055】
ボイラ31は、図2に示されるように、加熱炉本体20の外部に配置される。ボイラ31は、水供給手段37、例えば、配管及びバルブによって供給される水を加熱して、水蒸気を調製することができればよく、通常のボイラを特に制限されることなく使用することができる。
【0056】
過熱水蒸気発生器33は、図2に示されるように、加熱炉本体20の外部に配置される。過熱水蒸気発生器33は、移送手段32及びその途中に介装された切替弁38を介して供給される水蒸気を過熱水蒸気に加熱することができればよく、例えば、発熱体に高周波磁束を加えて発熱体を加熱し、加熱された発熱体に水蒸気を通して加熱する電磁誘導タイプの過熱水蒸気発生器、水蒸気をバーナ等で加熱するバーナタイプの過熱水蒸気発生器等が挙げられる。過熱水蒸気発生器33は、過熱水蒸気の温度、供給量等に応じて適宜選択することができ、例えば、過熱水蒸気の温度制御を正確に行うには、電磁誘導タイプの過熱水蒸気発生器が有利であり、大容量の過熱水蒸気を供給するには、バーナタイプの過熱水蒸気発生器等が有利である。過熱水蒸気発生器33で発生する過熱水蒸気は、180〜800℃であればよく、200〜270℃であるのがよい。この過熱水蒸気加熱炉10においては、ボイラ31によって水を水蒸気にし、そして、過熱水蒸気発生器33によって、水蒸気を過熱水蒸気にするから、温度が安定した過熱水蒸気を大容量で供給することができる。
【0057】
前記噴射ノズル35は、図2に示されるように、過熱水蒸気発生器33から移送手段34を介して供給される過熱水蒸気を未加熱ローラ5に均一に直接吹き付けることができるように、未加熱ローラ支持部材22、すなわち、未加熱ローラ5から所定の距離を隔てて、加熱炉本体20内の天井及び側壁に設けられている。噴射ノズル35は、その周面に形成された複数の噴射口36を備えた管体とされている。この噴射ノズル35は、このように構成され、未加熱ローラ5に均一に過熱水蒸気を吹き付けることができるように成っている。
【0058】
前記排気装置40は、図2に示されるように、加熱炉本体20の側面下部に、加熱炉本体20の内部及び外部を連通するように、設けられている。排気装置40は、噴射ノズル35から噴射された過熱水蒸気を加熱炉本体20の外部に排気する排気口41と、この排気口41から移送手段42、例えば、配管を介して排気された過熱水蒸気、水蒸気及び/又は熱水等と、切替弁38を介して水供給手段から前記過熱水蒸気発生器33に供給される水とを熱交換させる熱交換器43と、熱交換器43で熱交換された過熱水蒸気、水蒸気及び/又は熱水等を排出する排出管44とを有している。
【0059】
排気口41及び排出管44は、通常採用される排気口及び排出管であればよい。熱交換器43は、例えば、遊動頭型熱交換器、U字配管型熱交換器、固定管板型熱交換器等を適宜選択して用いることができる。熱交換器の清掃容易性を重視する場合には、遊動頭型熱交換器がよく、安価な熱交換器を選択する場合には、U字配管型熱交換器がよく、熱交換器の機械的な清掃容易性熱交換器の固定管板型熱交換器がよい。
【0060】
この過熱水蒸気加熱炉10は、図示されない温度調節装置が備えられている。すなわち、加熱炉本体20内部に、温度センサが配置され、この温度センサで検知した内部温度信号が温度制御部に電信され、電信された内部温度信号に基づいて、温度制御部からボイラ31及び/又は過熱水蒸気発生器33の加熱容量、並びに、排気装置40における排気口41の開度を調節する信号がボイラ31、過熱水蒸気発生器33及び排気口41に送信されて、噴射される過熱水蒸気量及び排気される過熱水蒸気量が調整されるようになっている。
【0061】
過熱水蒸気加熱炉10は、以下のようにして、未加熱ローラ5を加熱することができる。すなわち、図2に示されるように、複数の未加熱ローラ5を、その軸体2の両端部を両壁に形成された切欠部に支持することによって、未加熱ローラ支持部材22に装着し、過熱水蒸気加熱炉10の載置台21上に設置し、加熱炉本体20内に収納する。一方、ボイラ31及び過熱水蒸気発生器33を稼動し、水蒸気及び過熱水蒸気を発生させる。過熱水蒸気が安定に発生するようになったら、過熱水蒸気発生器33から移送手段34を介して、加熱炉本体20内に設けられた噴射ノズル35に過熱水蒸気を供給する。ここで、過熱水蒸気噴射装置10は、ボイラ31と過熱水蒸気発生器33とが協働して、過熱水蒸気を発生させるから、ボイラ31と過熱水蒸気発生器33との稼動後、短時間で過熱水蒸気は安定して発生する。噴射ノズル35に過熱水蒸気を供給すると、噴射ノズル35の周面に形成された複数の噴射口36から未加熱ローラ支持部材22に装着された未加熱ローラ5に向かって過熱水蒸気が噴射される。このように、噴射口36から過熱水蒸気を噴射して、過熱水蒸気を未加熱ローラ5に吹き付けて、未加熱ローラ5のゴム組成物を所定温度で所定時間加熱する。ここで、噴射ノズル35は、未加熱ローラ5に均一に過熱水蒸気を吹き付けることができるように成っているから、未加熱ローラ5のゴム組成物は均一かつ速やかに加熱される。また、加熱炉本体20内は過熱水蒸気雰囲気になり、噴射ノズル35から噴射される過熱水蒸気量に応じて排気装置40の排気量が決定されるから、加熱炉本体20内がほぼ一定の温度、例えば、170〜500℃、好ましくは180〜400℃に保たれる。したがって、未加熱ローラ5のゴム組成物は、架橋反応が速やかに進行して架橋すると共に、発泡剤が均一に発泡して、架橋した弾性層3中に均一な径を有するセルが均一に分散形成される。
【0062】
所定温度で所定時間、未加熱ローラ5に過熱水蒸気を吹き付けた後、ボイラ31、過熱水蒸気発生器33を停止し、また、排気装置40の排気口41を全開にして、加熱炉本体20及び未加熱ローラ5を冷却し、加熱炉本体20から未加熱ローラ支持部材22を取り出す。次いで、未加熱ローラ支持部材22からゴム組成物が架橋されて成る弾性ローラ1を取り出して、所望により前記後処理を施して、弾性ローラ1が製造される。
【0063】
前記過熱水蒸気加熱炉10は、図2に示される構造に限定されることなく、種々の変更が可能である。例えば、図2に示される過熱水蒸気加熱炉10は、噴射ノズル35は、加熱炉本体20内の天井及び側壁に設けられているが、均一に未加熱ローラ5を加熱することができる限り、噴射ノズルは、加熱炉本体20内の天井又は側壁に設けられていてもよい。また、移送手段34にバルブ等を介装して、それぞれの噴射ノズル35から噴射される過熱水蒸気量を調整することもできる。
【0064】
また、過熱水蒸気加熱炉10は、ボイラ31と過熱水蒸気発生器33とを有しているが、ボイラ31と過熱水蒸気発生器33とを有する必要はなく、過熱水蒸気発生器33のみを有していてもよい。
【0065】
さらに、過熱水蒸気加熱炉10においては、熱交換器43は、前記過熱水蒸気発生器33に水蒸気を供給する移送手段32に切替弁38を介して接続されているが、前記ボイラ31に水を供給する水供給手段37に接続されてもよい。
【0066】
また、過熱水蒸気加熱炉10の載置台21は、加熱炉本体20の下部に固定されているが、載置台は、固定されている必要はなく、例えば、ベルトコンベヤ等の搬送手段によって、無限軌道を回動するように加熱炉本体20内部を移動させ、過熱水蒸気による金型の加熱がより均一になるように、構成することもできる。
【0067】
このようにして、均一な物性を有する弾性層3、特に、最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)が1.5以下であるセル4を有する弾性層3を備えた弾性ローラ1が製造される。
【0068】
すなわち、このようにして製造された弾性ローラ1は、最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)が1.5以下であるセル4を有し、均一な物性を有する弾性層3を備えているから、画像形成装置の各種ローラ、例えば、転写ローラ、現像ローラ、帯電ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、紙送りローラ等に、特に定着ローラに、好適に使用される。
【0069】
特に、弾性ローラ1が画像形成装置に配設された場合には、所定の圧力でかつ弾性ローラ1の軸線方向及び厚さ方向にわたって均一に被当接体に当接又は圧接する。故に、弾性ローラ1は、被当接体に対して、その軸線方向及び厚さ方向にわたって均一に作用することができるから、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。例えば、画像形成装置に装備された定着装置における加圧ローラ及び定着ローラの少なくとも一方のローラとして、弾性ローラ1が使用される場合には、所定の圧力でかつ弾性ローラ1の軸線方向及び厚さ方向にわたって均一に転写紙等の記録体を押圧して、記録体に転写された現像剤(静電潜像)を均一に加熱及び/又は加圧することができるから、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。
【0070】
次に、この発明に係る弾性ローラを備えた画像形成装置用定着装置(以下、この発明に係る定着装置と称することがある。)及び画像形成装置(以下、この発明に係る画像形成装置と称することがある。)の一例を、図3を参照して、説明する。
【0071】
この発明に係る画像形成装置50は、図3に示されるように、静電潜像が形成される回転可能な像担持体51例えば感光体と、像担持体51に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体51を帯電させる帯電手段52例えば帯電ローラと、像担持体51の上方に設けられ、像担持体51に静電潜像を形成する露光手段53と、像担持体51に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体51に一定の層厚で現像剤62を供給し、静電潜像を現像する現像手段60と、像担持体51の下方に圧接するように設けられ、現像された静電潜像を像担持体51から記録体56例えば転写紙上に転写する転写手段54例えば転写ローラと、記録体56の搬送方向の下流に設けられ、記録体56に転写された現像剤62(静電潜像)を定着させる定着手段55例えば定着装置と、記録体56に転写されず像担持体51に残留した現像剤62及び/又は像担持体51に付着したゴミ等を除去するクリーニング手段57とを備えている。画像形成装置50は、像担持体51の表面に残留している静電潜像を除去する除電手段(図示しない。)を、クリーニング手段57と帯電手段52との間又は転写手段54とクリーニング手段57との間に、備えていてもよい。
【0072】
前記定着手段55は、記録体56に転写された現像剤62(静電潜像)を定着させることができればよく、例えば、発熱可能な定着ローラを備えた熱ローラ定着装置、オーブン定着器等の加熱定着装置、加圧可能な定着ローラを備えた圧力定着装置等を用いることができる。これらの定着装置は無端ベルトを備えた定着装置であってもよい。図3において、無端ベルトを備えた定着手段55はこの発明に係る定着装置とされている。この定着装置55は、図3にその断面が示されるように、記録体56を通過させる開口72を有する筐体70内に、定着ローラ73と、定着ローラ73の近傍に配置された無端ベルト支持ローラ74と、定着ローラ73及び無端ベルト支持ローラ74に巻き掛けられた無端ベルト75と、定着ローラ73と対向配置された加圧ローラ76とを備え、無端ベルト75を介して定着ローラ73と加圧ローラ76とが、互いに当接又は圧接するように、回転自在に支持されて成る圧力熱定着装置である。無端ベルト支持ローラ74は、画像形成装置に通常用いられるローラであればよく、例えば、弾性ローラ等が用いられる。無端ベルト75は、例えば、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂により、無端状に形成されたベルトであればよく、その厚さ等も適宜定着手段55に適合するように調整することができる。定着ローラ73、無端ベルト支持ローラ74及び加圧ローラ76はそれぞれ、加熱体(図示しない。)が内蔵され、加圧ローラ76はスプリング等の付勢手段(図示しない。)によって、無端ベルト75を介して定着ローラ73に圧接している。無端ベルト75と加圧ローラ76との圧接された間を記録体56が通過することにより、加圧と同時に加熱され、記録体56に転写された現像剤62(静電潜像)を定着させることができる。
【0073】
画像形成装置50における現像手段60は、従来の画像形成装置に備えられた現像手段と基本的に同様に形成され、同様に配置されている。例えば、現像手段60は、図3に示されるように、像担持体51に対向する位置に開口部を有し、現像剤62を収納する現像剤収納部61と、現像剤収納部61の開口部に、像担持体51に当接若しくは圧接して又は所定の間隔を置いて設けられ、像担持体51に現像剤62を一定の層厚で供給する回転可能な現像剤担持体64と、現像剤担持体64に当接して設けられ、現像剤担持体64に現像剤62を供給する回転可能な現像剤供給手段63と、現像剤担持体64の上方に設けられ、現像剤担持体64に当接して現像剤62の層厚を規制すると共に、摩擦帯電により現像剤62を帯電させる現像剤規制部材65とを備えている。前記現像剤収納部61に収納される現像剤62としては、摩擦により帯電可能で、記録体56に定着可能な一成分系の現像剤であれば、乾式現像剤であっても湿式現像剤であってもよく、また、非磁性現像剤であっても磁性現像剤であってもよい。
【0074】
現像手段60における現像剤担持体64は、現像剤規制部材65と接触して、現像剤62を帯電させる。したがって、現像剤担持体64は、現像剤規制部材65と接触して、現像剤62を帯電させることができるように構成されていればよく、例えば、導電性を有する弾性層を備えた現像ローラ等が挙げられる。例えば、このような現像剤担持体64、特に現像ローラとして、この発明に係る弾性ローラ1を使用することができる。現像剤規制部材65は、図3に示されるように、所定の圧力で現像剤担持体64の表面に当接するように、現像手段60の開口部に、配置されている。この現像剤規制部材65は、現像剤担持体64に接触して、現像剤担持体64に付着した現像剤62を一定の層厚に調整すると共に、現像剤62を帯電させることができればよく、例えば、支持体と、支持体に装着され、現像剤担持体64に当接するブレードとから成っていてもよい。
【0075】
この発明に係る画像形成装置50は、帯電手段52の帯電ローラ、現像剤担持体64の現像ローラ、転写手段54の転写ローラ、定着手段55の定着ローラ73、加圧ローラ76又は無端ベルト支持ローラ74、クリーニング手段37のクリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラを備え、これら各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されている。好ましくは、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ及び加圧ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されている。
【0076】
この発明に係る画像形成装置50は、次のように作用する。まず、画像形成装置50において、像担持体51が、図3の矢印に示されるように、時計方向に回転しつつ、クリーニング手段57により、その表面の現像剤62及び/又はゴミ等が除去された後、帯電手段52により、一様に帯電される。次いで、露光手段53により画像が露光され、像担持体51の表面に静電潜像が形成される。
【0077】
一方、現像手段60において、現像剤62が現像剤供給手段63によって現像剤担持体64に供給され、現像剤担持体64が図3に示される矢印方向に回転することにより、現像剤担持体64の表面に付着した現像剤62が、現像剤担持体64と現像剤担持体64に当接した現像剤規制部材65との間を通過する。このとき、現像剤62は、所望の層厚に規制されると共に、現像剤62を所望のように帯電させることができる。つまり、現像剤62が、現像剤担持体64と現像剤規制部材65との間を通過することによって、現像剤担持体64の表面上における現像剤62の層厚が規制されると共に、現像剤規制部材65と現像剤担持体64及び/又は現像剤62との摩擦帯電等により、現像剤担持体64上の現像剤62が所望のように帯電される。
【0078】
次いで、このようにして現像手段60から所望の層厚及び帯電量を有する現像剤62が像担持体51に供給され、像担持体51に形成された静電潜像が現像されて、この静電潜像が現像剤像として可視化される。このようにして、現像手段60は、像担持体51に所望の層厚及び帯電量を有する現像剤62を供給し、静電潜像を現像することができる。次いで、像担持体51上に現像された現像剤像は、搬送手段により、像担持体51と転写手段54との間に搬送される記録体56上に、像担持体51及び/又は転写手段54によって転写される。次いで、現像剤像が転写された記録体36は、搬送手段により定着手段55に搬送され、定着手段55により加熱及び/又は加圧されて、転写された現像剤像が永久画像として記録体56に定着される。このようにして、記録体56に画像を形成することができる。
【0079】
この発明に係る画像形成装置50は、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ、定着ローラ、加圧ローラ、無端ベルト支持ローラ、クリーニングローラ、紙送り搬送ローラ等の各種ローラのうち少なくとも1つのローラとしてこの発明に係る弾性ローラ1が使用されているので、この発明に係る弾性ローラ1が使用されたローラは、被当接体に対して、その軸線方向及び厚さ方向にわたって均一に作用することができ、高品質の画像を形成することに十分に貢献することができる。
【0080】
この発明に係る画像形成装置50において、像担持体51、帯電手段52、露光手段53、転写手段54、定着手段55及びクリーニング手段57は、図3に示される配置の他に、従来の画像形成装置に備えられる像担持体、帯電手段、露光手段、転写手段、定着手段及びクリーニング手段とそれぞれ同様に形成され、同様に配置されてもよい。
【0081】
また、画像形成装置50は、電子写真方式の画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、電子写真方式には限定されず、例えば、静電方式の画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置50は、現像手段60に単色の現像剤62のみを収容するモノクロ画像形成装置とされているが、この発明において、画像形成装置は、モノクロ画像形成装置に限定されず、カラー画像形成装置であってもよい。カラー画像形成装置としては、例えば、像担持体上に担持された現像剤像を中間転写体に順次一次転写を繰り返す4サイクル型カラー画像形成装置、各色毎の現像手段を備えた複数の像担持体を中間転写体や転写搬送ベルト上に直列に配置したタンデム型カラー画像形成装置等が挙げられる。画像形成装置50は、例えば、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置とされる。
【実施例】
【0082】
(実施例1)
まず、無電解ニッケルメッキ処理が施された軸体2(直径12mm×長さ300mm、SUM22)をトルエンで洗浄し、プライマー「No.101A/B」(信越化学工業株式会社製:商品名)を塗布した。プライマー処理した軸体2を、ギアーオーブンを用いて、180℃の温度にて30分焼成処理した後、常温にて30分以上冷却し、プライマー層を形成した。
【0083】
一方、ビニル基含有シリコーン生ゴムとシリカ系充填材とを含むシリコーンゴム組成物「KE−904FU」(信越化学工業株式会社製:商品名)100質量部と、付加反応架橋剤「C−153A」(信越化学工業株式会社製:商品名)2.0質量部と、発泡剤アゾビス−イソブチロニトリル(商品名「KEP−13」、信越化学工業株式会社製)3.0質量部と、付加反応触媒としての白金触媒適量と、反応制御剤適量と、有機過酸化物架橋剤としての「C−3」(信越化学工業株式会社製:商品名)適量とを、二本ロールで十分に混練して、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を調製した。
【0084】
次いで、プライマー層を形成した軸体2と、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物とを、押出成形機にて一体分出して、軸体の外周面に厚さ約5mmの付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を配置し、未加熱ローラ5を作製した。このようにして作製した複数の未加熱ローラ5を未加熱ローラ支持部材22の両壁に形成された切欠部に固定した。
【0085】
図2に示される過熱水蒸気加熱炉10を、ボイラ31及び過熱水蒸気発生器33を稼動し、過熱水蒸気を安定的に発生させた。この過熱水蒸気加熱炉10における載置台21に、未加熱ローラ5を装着した未加熱ローラ支持部材22を載置し、過熱水蒸気を噴射ノズル35から噴射して、加熱炉本体20を過熱水蒸気雰囲気として、未加熱ローラ5に過熱水蒸気を接触させて、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を加熱した。過熱水蒸気及び加熱炉本体20の温度はいずれも250℃であり、この状態を12分間保った。
【0086】
次いで、噴射ノズル35からの過熱水蒸気の噴射を停止し、加熱炉本体20から、弾性ローラ原型Iを取り出し、常温にて30分以上冷却した(弾性ローラ原型Iの直径は約40mmであった。)。過熱水蒸気加熱された弾性ローラ原型Iを、さらに、ギアーオーブンを用いて、200℃で7時間にわたって二次加熱し、常温にて1時間以上放置した。このようにして、弾性ローラ原型IIを得た。次いで、弾性ローラ原型II端部の弾性層を所定の位置で切断し、さらに、円筒研削盤にて外径が30mmとなるように研削して、弾性ローラAを製造した。
【0087】
(実施例2)
軸体2の外周面に分出しされた前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、予め80℃、5分加熱した後に、過熱水蒸気加熱炉10を用いて、250℃で7分間加熱した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラBを製造した。
(実施例3)
過熱水蒸気加熱炉10を用いて、前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、180℃で18分間加熱した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラCを製造した。
(実施例4)
軸体2の外周面に分出しされた前記付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を、予め80℃、5分加熱した後に、過熱水蒸気加熱炉10を用いて、180℃で13分間加熱した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラDを製造した。
【0088】
(比較例1)
過熱水蒸気加熱炉10の代わりに、赤外線加熱炉を用いて、250℃で15分間加熱した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラEを製造した。
(比較例2)
過熱水蒸気加熱炉10の代わりに、熱風加熱炉(ETAC株式会社製)を用いて、250℃で20分間加熱した以外は、実施例1と同様にして、弾性ローラFを製造した。
【0089】
弾性ローラA〜Fの各弾性層3に発泡形成された独立セル状態のセル4おける平均セル径、最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)、標準偏差σ及びセル壁を、前記方法に準拠して算出した。なお、観察領域は、弾性層3の表面、弾性層3の軸線方向に沿って切断された切断面、及び、弾性層3の厚さ方向に沿って切断された切断面の3領域とした。また、前記方法に準拠して、アスカーC硬度を測定した。これらの結果を、表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
弾性ローラA〜Fを、図3に示される画像形成装置の定着ローラ73として装着した。この画像形成装置を、25℃、55RH%の環境下、画像を印刷したところ、弾性ローラA〜Dを装着した場合はいずれも、高品質の画像を形成することができたのに対して、弾性ローラE及びFを装着した場合は、画像のずれ、かすれ及び/又は汚れ等が生じ、高品質の画像を形成することができなかった。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】図1は、この発明に係る弾性ローラの一例を示す斜視図である。
【図2】図2は、過熱水蒸気加熱炉における構成を概略的に示す概略図である。
【図3】図3は、この発明に係る画像形成装置の一例を示す要部概略図である。
【符号の説明】
【0093】
1 弾性ローラ
2 軸体
3 弾性層
4 セル
5 未加熱ローラ
10 過熱水蒸気加熱炉
20 加熱炉本体
21 載置台
22 未加熱ローラ支持部材
30 過熱水蒸気噴射装置
31 ボイラ
32、34、42 移送手段
33 過熱水蒸気発生器
35 噴射ノズル
36 噴射口
37 水供給手段
38 切替弁
40 排気装置
41 排気口
43 熱交換器
44 排出管
50 画像形成装置
51 像担持体
52 帯電手段
53 露光手段
54 転写手段
55 定着手段
56 記録体
57 クリーニング手段
60 現像手段
61 現像剤収納部
62 現像剤
63 現像剤供給手段
64 現像剤担持体
65 現像剤規制部材
70 筐体
72 開口
73 定着ローラ
74 無端ベルト支持ローラ
75 無端ベルト
76 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、前記軸体の外周面に形成された弾性層とを備え、前記弾性層に形成されたセルの最小セル径rminに対する最大セル径rmaxの割合(rmax/rmin)が1.5以下である弾性ローラ。
【請求項2】
前記セルは、平均セル径が100〜800μmである請求項1に記載の弾性ローラ。
【請求項3】
前記弾性層は、アスカーC硬度が20〜60である請求項1又は2に記載の弾性ローラ。
【請求項4】
前記弾性層は、付加反応型発泡シリコーンゴム組成物を硬化して成る請求項1〜3のいずれか1項に記載の弾性ローラ。
【請求項5】
軸体の外周面に配置されたゴム組成物を過熱水蒸気で加熱して、前記軸体の外周面に弾性層を形成する弾性ローラの製造方法。
【請求項6】
前記過熱水蒸気による加熱に先立って、前記過熱水蒸気による加熱条件よりも穏やかな条件で前記ゴム組成物を予備加熱する請求項5に記載の弾性ローラの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性ローラを備えた画像形成装置用定着装置。
【請求項8】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の弾性ローラを備えた画像形成装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−30876(P2008−30876A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−204783(P2006−204783)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】