形状検査装置及び形状検査方法
【課題】良否判定の判定基準を自動設定し検査の効率を高めながら、判定の精度を確保することできる形状検査装置及び形状方法を提供する。
【解決手段】被検査物20の形状を検査する形状検査装置10であって、被検査物20の検査結果を蓄積する蓄積手段と、判定基準に基いて、被検査物20の良否を判定する判定手段と、判定基準を設定する判定基準設定手段とを備えており、判定基準は、あらかじめ入力された算出手順と蓄積手段に蓄積された被検査物20の検査結果とに基いて、判定基準設定手段により自動設定される。
【解決手段】被検査物20の形状を検査する形状検査装置10であって、被検査物20の検査結果を蓄積する蓄積手段と、判定基準に基いて、被検査物20の良否を判定する判定手段と、判定基準を設定する判定基準設定手段とを備えており、判定基準は、あらかじめ入力された算出手順と蓄積手段に蓄積された被検査物20の検査結果とに基いて、判定基準設定手段により自動設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の良否判定の判定基準を自動設定しながら、良否を判定する形状検査装置及び形状検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査物にスリット光を照射して被検査物の形状を検査する検査装置が知られている。このような検査装置においては、スリット光照射により、被検査物の表面に形成された形状線を撮像し、この形状線における断面形状を求めることができる。そして、この断面形状に基いて被検査物の形状を検査することができる。
【0003】
例えば下記特許文献1には、溶接部及びその周辺部の表面形状を近似するポリラインを作成し、このポリラインに基づき演算を行って溶接品質を判定することが提案されている。この溶接品質判定方法によれば、溶接品質の良否の判定の結果を定量的に、かつ自動的に取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−215839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶接品質の良否の判定を自動的に行うには、判定部位、判定項目ごとに閾値を設定する必要がある。この設定する閾値は数百に及ぶこともあり、閾値の設定は極めて煩雑なものである。また、ロボットのティーチングや溶接条件を変更すると溶接ビードの形状は変化するため、ロボットのティーチングや溶接条件を変更するたびに閾値を設定する必要がある。このことからも、溶接品質の良否を判定するための閾値設定は極めて煩雑な作業であり、この煩雑さは実用的な溶接品質検査装置の開発を困難なものとしていた。
【0006】
加えて、溶接部は部品のロット変化や溶接トーチの経時変化によっても形状変化が生じる場合がある。例えば、検査開始時点と現時点との間で部品のロットが異なる場合、溶接部の隙が変り溶接部の形状が変化する。溶接部に寸法変化が生じた場合、目視などで良品とされるワークであっても、検査開始時点と同じ閾値では、不良品と判定される場合も生じ、この場合は不良品が多発する可能性もある。このように、ビード形状が経時変化することにより判定の閾値が不適切なものとなり誤判定による不良品が多発した場合、一旦検査を中断し適正な閾値に再設定できれば、正確な判定が可能になる。この場合、適正な閾値を得るためには、手入力を伴う複雑な設定作業が必要となる。また、閾値は判定対象毎に必要であるので、判定対象が多数である場合は、閾値を変更することは極めて煩雑な作業となる。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、良否判定の判定基準を自動設定し検査の効率を高めながら、判定の精度を確保することできる形状検査装置及び形状方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の形状検査装置は、被検査物の形状を検査する形状検査装置であって、被検査物の検査結果を蓄積する蓄積手段と、判定基準に基いて被検査物の良否を判定する判定手段と、前記判定基準を設定する判定基準設定手段とを備えており、前記判定基準は、あらかじめ入力された算出手順と前記蓄積手段に蓄積された被検査物の検査結果とに基いて、前記判定基準設定手段により自動設定されることを特徴とする。
【0009】
本発明の形状検査方法は、判定基準に基いて被検査物の良否を判定する形状検査方法であって、被検査物の検査結果を蓄積しておき、前記判定基準の算出手順をあらかじめ入力しておき、前記判定基準が、前記算出手順と前記蓄積した被検査物の検査結果とに基いて自動設定されるようにすることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、検査済みの被検査物の検査結果に基いて、判定基準が設定されることになる。このため、被検査物のロット変化や製造条件の変化等による被検査物の形状の経時変化に対応した判定基準を設定でき、判定の精度を確保することが可能になる。一方、本発明によれば、検査済みの被検査物の検査結果は、蓄積手段に保存することができ、判定基準の算出手順はあらかじめ入力されている。したがって、これらの蓄積済みの検査結果と入力済みの算出手順とに基いて、自動的に判定基準を再設定することが可能になり、検査の効率を高めることができる。
【0011】
前記本発明においては、前記判定基準は、検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定されることが好ましい。この構成によれば、判定基準は被検査物の良品の状態が反映されたものとなり、判定の精度確保に有利になる。
【0012】
前記本発明においては、前記判定基準は、検査中の被検査物に対し直近の検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定されることが好ましい。この構成によっても、判定基準は被検査物の良品の状態が反映されたものとなり、判定の精度確保に有利になる。この構成は、判定基準は直近の検査済検査結果に基いているので、検査を中断することなく判定基準を自動設定する場合に適している。
【0013】
前記本発明においては、前記判定基準設定手段は、新たに被検査物が投入される毎に、判定基準を再設定し、前記判定基準の再設定は、新たな被検査物に対し直近の検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて設定することが好ましい。この構成によっても、判定基準は被検査物の良品の状態が反映されたものとなり、判定の精度確保に有利になる。この構成についても、判定基準は直近の検査済検査結果に基いているので、検査を中断することなく判定基準を自動設定する場合に適している。
【0014】
前記判定手段の判定対象が被検査物の特徴量であり、前記判定基準は数値範囲を表す閾値であり、前記判定手段は、計測した被検査物の特徴量と前記閾値とを比較して被検査物の良否を判定するようにしてもよい。この構成は、判定対象が数値表現されるものに適している。判定対象の特徴量としては、幅、高さ等の寸法に限らず、重心や断面積でもよく、高さ断面積比等の各種比率であってもよい。
【0015】
前記判定手段の判定対象が被検査物の断面形状であり、前記判定基準は外形線であり、前記判定手段は、計測した被検査物の断面形状の外形線と前記判定基準の外形線との差分値に基いて被検査物の良否を判定するようにしてもよい。この構成は、断面形状を直接的に検査でき、例えば凹凸による不良の検出が可能になる。
【0016】
前記判定手段の判定対象は、被検査物の断面形状又は断面形状から算出された特徴量であり、前記断面形状は、被検査物の三次元形状の点群データから算出したものであり、前記点群データは、被検査物にスリット光を投射し、前記スリット光の走査により被検査物上に順次形成される形状線を撮像し、前記順次形成された各形状線の撮像データから取得し、前記断面形状は、前記点群データに基いて表示した被検査物に切断線を設定し、前記切断線に対応した前記点群データにより算出したものとしてもよい。この構成によれば、一度のスリット光の走査により、任意の断面線における断面形状が算出できるので、判定に必要な断面形状や特徴量の算出が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検査物のロット変化や製造条件の変化等による被検査物の形状変化に対応した判定基準を設定でき、判定の精度を確保することが可能になる。さらに、本発明によれば、蓄積済みの被検査物の検査結果と入力済みの判定基準の算出手順とに基いて、自動的に判定基準を再設定することが可能になり、検査の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る形状検査装置の概略図。
【図2】被検査物の一例を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係る形状検査装置で測定した断面形状の一例を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る閾値設定のフローチャート。
【図5】本発明の一実施形態に係る形状測定のフローチャート。
【図6】本発明の一実施形態において、ワークをレーザ光源からのスリット光で走査している様子を示す平面図。
【図7】ワーク上に、取得した点群データに対応する点群を示した模式図。
【図8】本発明の一実施形態において、基準面の設定の様子を示す平面図。
【図9】本発明の一実施形態において、断面線を設定した状態を示す平面図。
【図10】(a)図は断面線と点群との関係を摸式的に示した平面図、(b)図は、(a)図における断面線上の点及び断面線近傍の点を抜き出した図。
【図11】本発明の一実施形態に係る判定閾値の再設定のフローチャート。
【図12】本発明の一実施形態に係る直近ワーク検索の模式図。
【図13】本発明の一実施形態に係る基準外形線設定のフローチャート。
【図14】本発明の一実施形態において、形状学習エリアを設定した状態の平面図。
【図15】本発明の一実施形態において、良品ワークから形状学習エリアを抜き出した後の平面図。
【図16】図15のBB断面線における断面の一部を示した図。
【図17】本発明の一実施形態に係る断面形状の判定の様子を示す図。
【図18】本発明の一実施形態に係る断面形状の判定の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る形状検査装置の概略図を示している。形状検査装置10は、ケース11内に撮像光学系12を収納している。撮像光学系12は、投射手段であるレーザ光源13と撮像手段である計測カメラ14(CCDカメラ)とで構成されている。ステージ15上には、ワーク(被検査物)20が載置されている。図2は、ワーク20の一例を示している。ワーク20は、平面部21上に、穴22を囲むように凸状の溶接ビード23、24及び25が形成されている。以下の説明は、形状検査装置10の検査対象が図2に示したワーク20の例で説明する。
【0020】
形状検査装置10は、コンピュータを備えており、図1に示した画像処理部30、制御部31、入力部32及び表示部33は、コンピュータの構成部分である。形状検査装置10は、ワーク20の断面形状を計測可能である。図3は、形状検査装置10で測定した断面形状の一例を示している。図3は図2のワーク20の溶接ビード25のAA線における断面図を示している。断面形状の算出の詳細については、後に図5〜10を参照しながら説明する。
【0021】
形状検査装置10は、図2の断面における各種寸法を算出することができ、算出した各種寸法の良否を判定可能である。以下、形状検査装置10によるワーク20の判定について、図3のビード幅W、ビード高さHが判定対象である場合で説明する。ビード幅W、ビード高さHが判定対象である場合、判定基準が必要となる。すなわち、判定の際には、あらかじめ設定した閾値の範囲内であれば良品、閾値の範囲外であれば不良品と判定することになる。
【0022】
判定対象が、成形品の各部寸法であれば、閾値は各部寸法の設計値に基いて設定すればよいことになる。これに対し、ビード幅W、ビード高さHは溶接ビード25の寸法である。溶接範囲は設計上規定されるが、溶接ビードの各種寸法については、設計段階では正確な数値は把握困難となる。一方、溶接ビードに求められるのは、接合強度の確保である。このため、接合強度の確保されているワーク20すなわち良品ワークのビード幅W、ビード高さHの測定値に基いて、閾値を設定することが可能になる。
【0023】
図4は、閾値を設定する際のフローチャートを示している。閾値の設定の際には、形状検査装置10を用いて、あらかじめ複数のワーク20について3次元形状を計測し、各ワーク20の計測データを制御部31(図1)が備える蓄積手段に蓄積しておく。3次元形状の計測の詳細は、後に図5〜10を参照しながら説明する。
【0024】
まず、蓄積されたデータから、所定単位のワーク群を検索する(図4のステップ100)。例えば、測定日及び時間帯をユーザが指定することにより、指定範囲内におけるワーク群を検索する。100個のワーク群が検索された場合、この100個について、それぞれ表示部33(図1)に表示して目視検査する。この目視検査により、不良ワークを除外する(図4のステップ101)。
【0025】
前記の通り、溶接ビードには接合強度の確保が求められる。溶接ビードに欠損、窪みや肉厚不足が無い場合は、接合強度が確保できているとみなすことができる。このため、目視検査においては、溶接ビードに欠損、窪みや肉厚不足のあるワークを不良品と判定する。目視検査による不良品は、検索されたワーク群のリストから除外する。不良品を除外して残った良品ワークについて、検査対象の特徴量を算出する(図4のステップ102)。ここでは特徴量は、図3のビード幅W、ビード高さHである。これらの特徴量は、形状検査装置10により算出可能であり、算出の詳細は後に説明する。
【0026】
次に、良品ワークから得たビード特徴量のデータについて、統計解析を行った後(図4のステップ103)、判定閾値を設定する(図4のステップ104)。これらは、制御部31(図1)が備える判定基準設定手段により実行される。具体的には、ビード幅W、ビード高さHについて、平均値及び標準偏差を算出する。この平均値及び標準偏差から、閾値を設定する(図4のステップ104)。閾値の設定例として、平均値±(既定値×標準偏差)や平均値±既定値が挙げられる。ここでは、閾値は平均値±(既定値×標準偏差)とする。このうち既定値は、あらかじめ設定しておく値であり、例えば3である。前記のようにして得られたビード幅W、ビード高さHの閾値は、良品におけるビード幅W、ビード高さHの範囲を示していることになる。したがって、この閾値を用いることにより、ビード幅W、ビード高さHの良否の判定ができることになる。
【0027】
前記の通り、形状検査装置10はワークの3次元形状を測定できるとともに、3次元形状の点群データに基いて、各種断面形状の算出及び特徴量の算出が可能である。以下、図5〜図10を参照しながら、形状検査装置10による形状測定について説明する。図5は、本実施形態に係る形状測定のフローチャートである。以下、図5のフローチャートに沿って、図2に示したワーク20の形状測定について説明する。
【0028】
最初に、ワーク20全体の点群データを取得する(図5のステップ200)。点群データの取得は、制御部31(図1)が備える点群データ取得手段により行う。図6は、ワーク20をレーザ光源13(図1)からのスリット光で走査している様子を示す斜視図である。スリット光はX軸方向に走査され、ワーク20の全体がスリット光で走査されることになる。スリット光の走査により、ワーク20上にはX軸方向における位置を変えながら形状線が順次形成されることになる。図6では、3個所における形状線26〜28を図示している。形状線26〜28は、それぞれ計測カメラ14(図1)で撮像される。
【0029】
形状線26〜28における断面形状は、光切断法によって求めることができる。具体的には以下の通りである。図1に示したように、計測カメラ14の光軸は、ワーク20の垂直線(Z軸)に対して傾斜している。一方、図2において、ワーク20は凸状の溶接ビード23〜25が形成されているので、形状線26〜24は、Y軸方向において、高さが変化している。したがって、各形状線の計測カメラ14による撮像画像は、溶接ビード23〜25の高さの変化に応じて、高さが変化していることになる。
【0030】
この撮像画像における形状線の高さを、画像処理部30(図1)において、三角測量法により実際の高さに換算して、形状線の点群の各点における3次元座標が算出されることになる。したがって、ワーク20の全体をスリット光で走査することにより、ワーク20の全体に亘り形状線の点群データが得られ、ワーク20全体の点群データを取得することができることになる。
【0031】
図7は、ワーク20上に、取得した点群データに対応する点群を示した模式図である。点群データ取得後は、図7に示したワーク26上の各点における3次元座標が取得されていることになる。
【0032】
点群データの取得後は、ワーク20の3次元形状を表示部33(図1)に表示する(図5のステップ201)。具体的には、図1の画像処理部30で算出された点群データは、制御部31に送られる。制御部31では点群データの3次元座標に基いて3次元形状を作成し、これを表示部33に出力する。
【0033】
ユーザは、表示部33の3次元形状に基いて基準面を設定する(図5のステップ202)。ワーク20は治具により位置決めされているが、位置決めのばらつきや溶接によるワーク26の歪みにより、ワーク26に傾斜や高さのばらつきが生じる場合がある。この場合は、溶接基準面に対する溶接ビード25の正確な高さは得られないことになる。
【0034】
本実施形態では、制御部31(図1)は基準面設定手段を備えており、形状検査をする前に基準面を設定するようにしている。基準面はワーク20の例では、ワーク20の点群データから算出した平面であり、ワーク20の水平面とみなすことができる平面である。基準面の設定後は、制御部31の基準面設定手段は、検査断面を基準面を基準とする座標系に変換して算出するようにしている。このことにより、検査断面をワーク20に傾斜や高さのばらつきが生じていない状態における形状で算出することができる。
【0035】
図8は基準面の設定の様子を示す斜視図である。ワーク20の面上に円34〜39を選択している。この選択は、表示部33(図1)の画面を見ながら、入力部32(図1)による入力により行う。この入力は、例えばマウスクリックにより行うことができる。
【0036】
前記の通り、ワーク26の点群データは取得済みであるので、円34〜39内における点群データも取得済みである。したがって、円34〜39内における点群データを用いて、近似平面を求めることができ、これを基準面とする。基準面の精度を高めるために、より多くの円を選択してもよい。また、基準面は平面に限らず曲面でもよい。曲率のあるワークや溶接歪みの大きいワークの場合は、基準となる自由曲面を算出しこれを基準面とすればよい。
【0037】
次に、ユーザは、表示部33(図1)の3次元形状に基いて、断面線を設定する(図5のステップ203)。図9は、断面線を設定した状態を示す平面図である。本実施形態では、制御部31(図1)は切断線設定手段を備えている。切断線設定手段は、始点と終点とが設定されると、始点と終点とを最短経路で結んで断面線を設定する。図9では、始点40と終点41とを結ぶ断面線42が設定されている。この設定は、表示部33(図1)の画面を見ながら、例えばマウスクリックにより入力部32(図1)で行う。断面線42は、図2のAA線に相当する。
【0038】
断面線42が設定されると、断面線42における断面形状の算出が開始する(図5のステップ204)。断面形状の算出は、制御部31(図1)が備える断面形状算出手段により行う。断面形状の算出について、図10を参照しながら説明する。図10(a)は、断面線42と点群43との関係を摸式的に示した平面図である。図10(b)は、図10(a)における断面線42上の点及び断面線42近傍の点を抜き出した図である。
【0039】
図10(a)、(b)において、断面線42上における点は、断面線42における断面の外形線上の点になる。前記の通り、点群43の各点における3次元座標は取得している。このため、断面線42の線上の各点の3次元座標を用いて、断面線42における断面の外形線を算出でき、断面線42における断面形状を算出できることになる。
【0040】
一方、断面線42上における点の数が不足している場合もある。このため、本実施形態では、断面線42の近傍の点についても、断面線42上の点として、断面形状の算出に用いるようにしている。断面線42の近傍の範囲については、点群における点の密度に応じてユーザが設定できるようにしておけばよい。
【0041】
前記の図3は、図10の断面線42上及びその近傍の点群データにより、図9の断面線42における断面の外形線を図示したものである。この外形線は、点群データから得られた点を移動平均処理したものである。前記の通り、図3の断面において、ビード幅W、ビード高さHを算出する。これらの算出は、図3の表示に変換後の点群データに基いて、制御部31(図1)が備える特徴量算出手段により行う。算出可能な特徴量は、ビード幅W、ビード高さHに限らず、各種特徴量を算出可能であり、例えば重心、断面積でもよく、高さ断面積比等の各種比率であってもよい。また、断面線の設定位置、各種特徴量の算出手順を、制御部31(図1)にあらかじめ設定しておくことにより、各種特徴量の自動計測が可能になる。
【0042】
次に、閾値の学習機能について説明する。前記の通り、図4のステップ104において、判定閾値が設定されている。具体的には図3におけるビード幅W及びビード高さHを判定する閾値が設定されている。この閾値を用いて形状検査装置10は、ワーク20について良否を判定することになる。形状検査装置10の制御部31(図1)は判定手段を備えており、判定手段は、計測したビード幅W、ビード高さHの両方が閾値の範囲内であれば良品、少なくとも一方が閾値の範囲外であれば不良品と判定する。
【0043】
ここで、ワークのロット変化や溶接トーチの経時変化等の無い状態でワーク20を検査する場合は、同一の閾値を用いても判定の精度は保たれることになる。一方、ワークのロット変化や溶接トーチの経時変化等により、溶接ビードの形状に変化が生じる場合がある。この場合、検査開始時点と同一の閾値を用いると、目視などで良品とされるワークであっても、不良品と誤判定される場合も生じることになる。すなわち、溶接ビードの形状に経時変化が生じると、検査開始時点と同一の閾値は不適切なものとなり、誤判定による不良品が多発する場合が生じ得ることになる。
【0044】
ここでは、溶接ビードの形状に経時変化が生じる場合として、ワークのロット変化や溶接トーチの経時変化を挙げたが、これら以外にもロボットのティーチング変更、ワークの製作精度、ワークのセットばらつき、溶接ワイヤの変更が挙げられる。
【0045】
誤判定による不良品が多発した場合、一旦検査を中断し適正な閾値に再設定できれば、正確な判定が可能になる。この場合、適正な閾値を得るためには、手入力を伴う複雑な設定作業が必要となる。また、閾値は判定対象毎に必要であるので、判定対象が多数である場合は、閾値を変更することは極めて煩雑な作業となる。例えば本実施形態では、判定対象を図3の断面におけるビード幅W及びビード高さHの例で説明しているが、実際の検査では、検査部位は一つの断面だけでなく多数の断面となり、一つの断面における検査項目は数百に及ぶ多数となることもある。したがって、検査を中断しながら閾値を手入力で変更することは、手間と時間がかかり効率的な検査の妨げになる。
【0046】
ここで、前記の通り、図4のステップ102の特徴量の計算に際し、断面線の設定位置、各種特徴量の算出手順を、制御部31(図1)にあらかじめ設定しておくことにより、各種特徴量の自動計測が可能になる。同様に、図4のステップ103〜104における統計解析も含めた判定閾値の算出手順を制御部31にあらかじめ設定しておくことにより、判定閾値の自動設定が可能になる。
【0047】
このため、検査を中断し図4の各ステップを経て判定閾値を再設定する場合、不良ワークを除外するまでのステップ100〜101は、人による作業が必要であるが、特徴量の計算から判定閾値設定までのステップ102〜104までは自動処理が可能になる。すなわち、判定対象が多数であっても各判定対象の判定閾値が自動設定されるので、時間と手間が省け効率的な検査が可能になる。
【0048】
より具体的には、例えばワーク20のロット変化があった場合、一旦検査を中断し、あらかじめ新たなロットにおけるワーク20の一部を検査し、この検査結果を蓄積手段に蓄積しておく。ユーザは蓄積手段からこの蓄積データを検索し(図4のステップ100)、検索した各ワーク20の表示画像を目視検査して不良ワークを除外する(図4のステップ101)。以後は、不良ワークを除外して残った良品ワークの蓄積済みの検査結果に基いて、新たなロットの判定に適した判定基準が自動設定されることになる(図4のステップ102〜104)。
【0049】
これに対し、検査を中断なく継続しながら、閾値が自動的に学習されていくようにすることもできる。図11に、判定閾値の再設定のフローチャートを示している。図12に、直近ワーク検索の模式図を示している。以下、図11、12を参照しながら、図3のビード幅W及びビード高さHを判定する例について説明する。図12のAは現時点での検査対象のワークを示している。ワーク列50内は、検査済みのワークを時系列で表示したものである。ワークBはワークAより一つ前に検査したワークであり、ワークCはワークAより二つ前に検査したワークである。ワークAより前に検査したワークの3次元形状の計測データ及び判定結果は、制御部31(図1)が備える蓄積手段に保存されている。
【0050】
ワークAの検査において、ビード幅W及びビード高さHを算出する(図11のステップ300)。この後、直近ワークを検索する(図11のステップ301)。直近ワークは、時系列で並べたワーク列50内のワークのうちワークAに近接した所定数のワークである。この所定数はユーザがあらかじめ設定し、例えば25個である。説明の便宜上、ここでは10とする。この場合、図12のワーク列51内の10個のワークB〜Kが直近ワークとなる。
【0051】
次に、ワーク列51内の10個のワークから不良ワークを除外する(図11のスップ302)。ワーク列51内の各ワークの良否は判定済みであるので、判定結果に基いて不良ワークの抽出が可能である。図12のワーク列52は、不良ワーク除外後のワーク列である。ワーク列52の8個のワークは、ワーク列51の10個のワークからワークDとワークHの2個のワークを不良ワークとして除外したものである。
【0052】
不良ワークを除外したワーク列52内のワークについて、ビード特徴量を計算する(図11のスップ303)。ビード特徴量は、ここではビード幅W及びビード高さHであるが、これらは蓄積手段に保存されている3次元形状の計測データに基いて算出することができる。ワーク検査時にビード幅W及びビード高さHの算出値を保存している場合には、改めて計算することは不要である。
【0053】
ワーク列52内の良品ワークについて、ビード特徴量の統計解析を行い(図11のスップ304)、閾値を再設定する(図11のステップ305)。再設定における閾値の算出手順はあらかじめ入力されている。具体的には、ワーク列52内の良品ワーク8個についてビード幅W及びビード高さHについて、平均値及び標準偏差を算出する。この平均値及び標準偏差から、閾値を再設定する(図11のステップ305)。ビード特徴量の統計解析及び閾値の再設定は、制御部31(図1)が備える判定基準設定手段により行う。再設定における閾値の計算式についても閾値の算出手順の一部としてあらかじめ入力されている。前記の通り、閾値の設定例として、平均値±(既定値×標準偏差)や平均値±既定値が挙げられる。ここでは、平均値±(既定値×標準偏差)とし、既定値は3とする。
【0054】
閾値の再設定後は、再設定後の閾値を基準としてワークAのビード幅W及びビード高さHの良否を判定する(図11のステップ306)。この良否判定を終えると、新たなワークの検査に移行する。新たなワークの検査においては、図11のステップ300〜305を経て、判定閾値が再設定されることになる。この場合の閾値の設定方法は、ワークAの場合と同じであるが、直近ワークの内容がワークAの場合と異なる。具体的には、ワークAの検査時の直近10個のワークがワークB〜Kであったのに対し、新たなワークの検査においては、ワークA〜Jが直近10個のワークとなる。すなわち、検査対象のワークが新たに投入される毎に、直近10個のワークは、新たなワークに対し直近の10個のワークに変わっていくことになる。
【0055】
前記のように、ワークのロット変化や溶接トーチの経時変化等により、溶接ビードの形状に経時変化が生じた場合は、良品ワークにおける平均値と標準偏差は、検査開始当初のものと異なっていることになる。一方、本実施形態では、判定基準の閾値は、新たに投入されたワークの直近10個のワークに含まれる良品ワークから算出した平均値及び標準偏差に基いて設定されている。このため、判定基準の閾値は、直近の良品ワークの状態が反映されていることになる。したがって、再設定された新たな閾値を用いることにより、ロット変化等により溶接ビードの形状が経時変化しても、判定の精度を確保することが可能になる。
【0056】
本実施形態では、前記の通り、検査済みのワークの3次元形状の計測データ及び判定結果は、制御部31(図1)が備える蓄積手段に保存されている。また、閾値の再設定における閾値の算出手順はあらかじめ入力されている。したがって、これらの蓄積済みの検査結果と入力済みの算出手順とに基いて、制御部31が備える判定基準設定手段の演算処理により、検査を中断することなく良否判定の判定基準を自動設定しながら判定の精度を確保することが可能になる。
【0057】
前記の例では、直近ワークの個数は10個の例で説明し、新たにワークが投入される毎に、閾値を再設定する例で説明したが、これらに限るものではない。例えばワークの個数は25個以上としてもよい。また、閾値の再設定の頻度を少なくしてもよい。また、前記の例では検索した10個の直近ワークに含まれる良品ワークを検索するようにしているが、閾値の再設定に用いる良品ワークの個数を例えば10個とし、良品ワークの個数を優先するようにしてもよい。
【0058】
以上、判定対象がワークの断面形状から算出した特徴量である場合について説明したが、判定対象を断面形状自体としてもよい。この場合は、算出した断面形状の外形線と、判定基準である断面形状の外形線とを比較して、断面形状の良否を判定することになる。判定にはあらかじめ設定した基準外形線を用い、最初の1個目のワークの良否の判定を行うことになる。図13に、基準外形線を設定する際のフローチャートを示している。ステップ400〜404を経ることにより、設定した形状学習エリアにおいて設定数の基準外形線が得られることになる。
【0059】
検査対象のワークは、図2に示したワーク20の例で説明する。基準外形線の設定の際には、断面形状の算出が必要となる。ここでは、図5〜10を用いて説明した断面形状の算出方法を用いた例で説明する。また、図13のステップ400に移行する前に、図4のステップ100、101と同様に、複数(例えば100個)のワーク20について、3次元形状の計測データ及び目視検査による良否の判定結果を蓄積しておく。
【0060】
最初に、現在投入されているワーク20について、基準形状の対象となる形状学習エリアを設定する(図13のステップ400)。形状学習エリアは、判定対象となる断面形状を算出するエリアである。図14は、形状学習エリアを設定した状態の平面図を示している。本図では、設定線44〜46により囲まれた溶接ビード23〜25が形状学習エリアとなる。設定線44〜46の設定は、入力部22(図1)による入力により行う。この入力は、例えばマウスクリックにより行うことができる。
【0061】
形状学習エリアの設定後は基準面を設定する(図13のステップ401)。基準面は、図5のステップ202における基準面の設定に相当し、図8を用いて説明した基準面の設定と同じ要領で基準面を設定する。基準面設定後は、ステップ401で形状学習エリアとして設定した溶接ビード23〜25の形成部の全体から判定対象とする複数の断面形状を算出する。断面形状の算出方法は、図5のステップ203及び204と同様である。
【0062】
以下のステップ402〜404において、断面形状の判定基準である基準外形線を設定する。基準外形線は目視検査により良品とされたワークに基いて設定する。前記の通り、ステップ400に移行する前に、複数のワーク20について、各ワーク20の3次元形状の計測データ及び目視検査による良否の判定結果が蓄積されている。この蓄積データから良品ワークを検索する(図13のステップ402)。
【0063】
良品ワーク検索後は、検索した良品ワークについて、形状学習エリアを切り出す(図13のステップ403)。形状学習エリアは、ステップ400において設定済みである。ステップ403においては、この形状学習エリアに対応する部分を、各良品ワークから抜き出すことになる。図15は、良品ワークから形状学習エリアを抜き出した後の平面図を示している。
【0064】
検索した各良品ワークについて、図15に示した形状学習エリアにおいて、基準外形線を算出することになる。前記の通り、現時点の検査対象であるワーク20について、判定対象である複数の断面形状が算出されている。基準外形線は、判定対象の各断面形状について設定することになる。ここでは、基準外形線を設定する断面形状は、図15のBB線における断面の例で説明する。図15のBB線における断面形状は、図5のステップ201〜204と同様の方法により算出可能である。
【0065】
図16は、図15のBB断面における断面の一部を示している。線53は、BB線における断面形状の外形線の一部を示している。図16は一つの良品ワークにおける外形線を示しているが、図13のステップ402で検索した各良品ワークについて、BB線における断面形状を算出する。これらの複数の断面形状に基いて、BB線における断面形状の外形線の区分多項式を算出する(図13のステップ404)。
【0066】
区分多項式を求めた後は、この区分多項式を判定基準として検査対象のワーク20の断面形状を判定する(図13のステップ405)。図17、18は、断面形状の判定の様子を示す図である。図17はワーク20のBB断面が基準に適合する例を示しており、図18はワーク20のBB断面が基準に適合していない例を示している。図17の線55、図18の線56は、それぞれワーク20のBB断面の外形線の一部を示している。線55は基準に適合する例であり、線56は基準に適合していない例である。図17、18において、基準外形線54は判定基準となる線であり、図4のステップ404で求めた区分多項式を表示したものである。
【0067】
断面形状の判定は、図17、18の各図において、線55、56と基準外形線54との差分値に基いて行う。全体的に差分値が大きい場合のみならず、部分的に差分値が大きい場合も不良と判定される。図17では基準に適合する線55は、全体に亘り基準外形線54と近接している。これに対し、図18では全体的に線56と基準外形線54との差分値が大きく、部分的に大きく窪んだ部分(Δd)がある。
【0068】
図13の手順により良否判定する場合、ステップ402〜404を繰り返すことにより、基準外形線を再設定することができる。例えばロット変化があった場合、一旦検査を中断し、あらかじめ新たなロットにおけるワーク20の一部を検査し、3次元形状の計測データ及び目視検査による良否の判定結果を蓄積しておく。そして、この蓄積データに基いて、図13のステップ402〜404を実行することにより、新たな基準外形線が得られることになる。
【0069】
図13のステップ402は、蓄積済の判定結果に基いて自動検索できる。また、図13のステップ403〜404による基準外形線の算出手段をあらかじめ入力しておけば、蓄積済みのワーク20の計測データに基いて、ステップ403〜404は自動処理することができ、新たな基準外形線が自動設定されることになる。すなわち、前記の判定閾値を自動設定する場合と同様に、判定対象が多数であっても各判定対象の基準外形線が自動設定されるので、時間と手間が省け効率的な検査が可能になる。
【0070】
判定基準を基準外形線とした場合であっても、検査を中断なく継続しながら、基準外形線が自動的に学習されていくようにすることもできる。基準外形線の再設定の要領は、図11のフローチャートによる判定閾値の再設定の場合と同様である。すなわち、基準外形線の再設定の際には、蓄積済みのワーク検査結果と入力済みの基準外形線の算出手順を用いて、判定対象の断面形状における区分多項式が自動的に算出されることになる。そして、現時点のワークの判定には、この新たな区分多項式による基準外形線を用いることになる。
【0071】
以上、本実施形態の形状検査について説明したが、断面形状の算出については、図5〜10を用いて説明した算出方法に限るものではなく、光切断法等の手法を用いた各種算出手法を用いたものであってもよい。また、本実施形態における形状検査は撮像光学系を用いたものであるが、これに限るものではない。被検査物の形状の計測データが得られ、この計測データを演算処理により判定可能な装置であれば、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 形状検査装置
12 撮像光学系
13 レーザ光源
14 計測カメラ
20 ワーク
23,24,25 溶接ビード
26,27,28 形状線
42 断面線
43 点群
50,51,52 ワーク列
54 基準形状線
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の良否判定の判定基準を自動設定しながら、良否を判定する形状検査装置及び形状検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検査物にスリット光を照射して被検査物の形状を検査する検査装置が知られている。このような検査装置においては、スリット光照射により、被検査物の表面に形成された形状線を撮像し、この形状線における断面形状を求めることができる。そして、この断面形状に基いて被検査物の形状を検査することができる。
【0003】
例えば下記特許文献1には、溶接部及びその周辺部の表面形状を近似するポリラインを作成し、このポリラインに基づき演算を行って溶接品質を判定することが提案されている。この溶接品質判定方法によれば、溶接品質の良否の判定の結果を定量的に、かつ自動的に取得することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−215839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、溶接品質の良否の判定を自動的に行うには、判定部位、判定項目ごとに閾値を設定する必要がある。この設定する閾値は数百に及ぶこともあり、閾値の設定は極めて煩雑なものである。また、ロボットのティーチングや溶接条件を変更すると溶接ビードの形状は変化するため、ロボットのティーチングや溶接条件を変更するたびに閾値を設定する必要がある。このことからも、溶接品質の良否を判定するための閾値設定は極めて煩雑な作業であり、この煩雑さは実用的な溶接品質検査装置の開発を困難なものとしていた。
【0006】
加えて、溶接部は部品のロット変化や溶接トーチの経時変化によっても形状変化が生じる場合がある。例えば、検査開始時点と現時点との間で部品のロットが異なる場合、溶接部の隙が変り溶接部の形状が変化する。溶接部に寸法変化が生じた場合、目視などで良品とされるワークであっても、検査開始時点と同じ閾値では、不良品と判定される場合も生じ、この場合は不良品が多発する可能性もある。このように、ビード形状が経時変化することにより判定の閾値が不適切なものとなり誤判定による不良品が多発した場合、一旦検査を中断し適正な閾値に再設定できれば、正確な判定が可能になる。この場合、適正な閾値を得るためには、手入力を伴う複雑な設定作業が必要となる。また、閾値は判定対象毎に必要であるので、判定対象が多数である場合は、閾値を変更することは極めて煩雑な作業となる。
【0007】
本発明は、前記のような従来の問題を解決するものであり、良否判定の判定基準を自動設定し検査の効率を高めながら、判定の精度を確保することできる形状検査装置及び形状方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の形状検査装置は、被検査物の形状を検査する形状検査装置であって、被検査物の検査結果を蓄積する蓄積手段と、判定基準に基いて被検査物の良否を判定する判定手段と、前記判定基準を設定する判定基準設定手段とを備えており、前記判定基準は、あらかじめ入力された算出手順と前記蓄積手段に蓄積された被検査物の検査結果とに基いて、前記判定基準設定手段により自動設定されることを特徴とする。
【0009】
本発明の形状検査方法は、判定基準に基いて被検査物の良否を判定する形状検査方法であって、被検査物の検査結果を蓄積しておき、前記判定基準の算出手順をあらかじめ入力しておき、前記判定基準が、前記算出手順と前記蓄積した被検査物の検査結果とに基いて自動設定されるようにすることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、検査済みの被検査物の検査結果に基いて、判定基準が設定されることになる。このため、被検査物のロット変化や製造条件の変化等による被検査物の形状の経時変化に対応した判定基準を設定でき、判定の精度を確保することが可能になる。一方、本発明によれば、検査済みの被検査物の検査結果は、蓄積手段に保存することができ、判定基準の算出手順はあらかじめ入力されている。したがって、これらの蓄積済みの検査結果と入力済みの算出手順とに基いて、自動的に判定基準を再設定することが可能になり、検査の効率を高めることができる。
【0011】
前記本発明においては、前記判定基準は、検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定されることが好ましい。この構成によれば、判定基準は被検査物の良品の状態が反映されたものとなり、判定の精度確保に有利になる。
【0012】
前記本発明においては、前記判定基準は、検査中の被検査物に対し直近の検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定されることが好ましい。この構成によっても、判定基準は被検査物の良品の状態が反映されたものとなり、判定の精度確保に有利になる。この構成は、判定基準は直近の検査済検査結果に基いているので、検査を中断することなく判定基準を自動設定する場合に適している。
【0013】
前記本発明においては、前記判定基準設定手段は、新たに被検査物が投入される毎に、判定基準を再設定し、前記判定基準の再設定は、新たな被検査物に対し直近の検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて設定することが好ましい。この構成によっても、判定基準は被検査物の良品の状態が反映されたものとなり、判定の精度確保に有利になる。この構成についても、判定基準は直近の検査済検査結果に基いているので、検査を中断することなく判定基準を自動設定する場合に適している。
【0014】
前記判定手段の判定対象が被検査物の特徴量であり、前記判定基準は数値範囲を表す閾値であり、前記判定手段は、計測した被検査物の特徴量と前記閾値とを比較して被検査物の良否を判定するようにしてもよい。この構成は、判定対象が数値表現されるものに適している。判定対象の特徴量としては、幅、高さ等の寸法に限らず、重心や断面積でもよく、高さ断面積比等の各種比率であってもよい。
【0015】
前記判定手段の判定対象が被検査物の断面形状であり、前記判定基準は外形線であり、前記判定手段は、計測した被検査物の断面形状の外形線と前記判定基準の外形線との差分値に基いて被検査物の良否を判定するようにしてもよい。この構成は、断面形状を直接的に検査でき、例えば凹凸による不良の検出が可能になる。
【0016】
前記判定手段の判定対象は、被検査物の断面形状又は断面形状から算出された特徴量であり、前記断面形状は、被検査物の三次元形状の点群データから算出したものであり、前記点群データは、被検査物にスリット光を投射し、前記スリット光の走査により被検査物上に順次形成される形状線を撮像し、前記順次形成された各形状線の撮像データから取得し、前記断面形状は、前記点群データに基いて表示した被検査物に切断線を設定し、前記切断線に対応した前記点群データにより算出したものとしてもよい。この構成によれば、一度のスリット光の走査により、任意の断面線における断面形状が算出できるので、判定に必要な断面形状や特徴量の算出が容易になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、被検査物のロット変化や製造条件の変化等による被検査物の形状変化に対応した判定基準を設定でき、判定の精度を確保することが可能になる。さらに、本発明によれば、蓄積済みの被検査物の検査結果と入力済みの判定基準の算出手順とに基いて、自動的に判定基準を再設定することが可能になり、検査の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る形状検査装置の概略図。
【図2】被検査物の一例を示す斜視図。
【図3】本発明の一実施形態に係る形状検査装置で測定した断面形状の一例を示す図。
【図4】本発明の一実施形態に係る閾値設定のフローチャート。
【図5】本発明の一実施形態に係る形状測定のフローチャート。
【図6】本発明の一実施形態において、ワークをレーザ光源からのスリット光で走査している様子を示す平面図。
【図7】ワーク上に、取得した点群データに対応する点群を示した模式図。
【図8】本発明の一実施形態において、基準面の設定の様子を示す平面図。
【図9】本発明の一実施形態において、断面線を設定した状態を示す平面図。
【図10】(a)図は断面線と点群との関係を摸式的に示した平面図、(b)図は、(a)図における断面線上の点及び断面線近傍の点を抜き出した図。
【図11】本発明の一実施形態に係る判定閾値の再設定のフローチャート。
【図12】本発明の一実施形態に係る直近ワーク検索の模式図。
【図13】本発明の一実施形態に係る基準外形線設定のフローチャート。
【図14】本発明の一実施形態において、形状学習エリアを設定した状態の平面図。
【図15】本発明の一実施形態において、良品ワークから形状学習エリアを抜き出した後の平面図。
【図16】図15のBB断面線における断面の一部を示した図。
【図17】本発明の一実施形態に係る断面形状の判定の様子を示す図。
【図18】本発明の一実施形態に係る断面形状の判定の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施形態に係る形状検査装置の概略図を示している。形状検査装置10は、ケース11内に撮像光学系12を収納している。撮像光学系12は、投射手段であるレーザ光源13と撮像手段である計測カメラ14(CCDカメラ)とで構成されている。ステージ15上には、ワーク(被検査物)20が載置されている。図2は、ワーク20の一例を示している。ワーク20は、平面部21上に、穴22を囲むように凸状の溶接ビード23、24及び25が形成されている。以下の説明は、形状検査装置10の検査対象が図2に示したワーク20の例で説明する。
【0020】
形状検査装置10は、コンピュータを備えており、図1に示した画像処理部30、制御部31、入力部32及び表示部33は、コンピュータの構成部分である。形状検査装置10は、ワーク20の断面形状を計測可能である。図3は、形状検査装置10で測定した断面形状の一例を示している。図3は図2のワーク20の溶接ビード25のAA線における断面図を示している。断面形状の算出の詳細については、後に図5〜10を参照しながら説明する。
【0021】
形状検査装置10は、図2の断面における各種寸法を算出することができ、算出した各種寸法の良否を判定可能である。以下、形状検査装置10によるワーク20の判定について、図3のビード幅W、ビード高さHが判定対象である場合で説明する。ビード幅W、ビード高さHが判定対象である場合、判定基準が必要となる。すなわち、判定の際には、あらかじめ設定した閾値の範囲内であれば良品、閾値の範囲外であれば不良品と判定することになる。
【0022】
判定対象が、成形品の各部寸法であれば、閾値は各部寸法の設計値に基いて設定すればよいことになる。これに対し、ビード幅W、ビード高さHは溶接ビード25の寸法である。溶接範囲は設計上規定されるが、溶接ビードの各種寸法については、設計段階では正確な数値は把握困難となる。一方、溶接ビードに求められるのは、接合強度の確保である。このため、接合強度の確保されているワーク20すなわち良品ワークのビード幅W、ビード高さHの測定値に基いて、閾値を設定することが可能になる。
【0023】
図4は、閾値を設定する際のフローチャートを示している。閾値の設定の際には、形状検査装置10を用いて、あらかじめ複数のワーク20について3次元形状を計測し、各ワーク20の計測データを制御部31(図1)が備える蓄積手段に蓄積しておく。3次元形状の計測の詳細は、後に図5〜10を参照しながら説明する。
【0024】
まず、蓄積されたデータから、所定単位のワーク群を検索する(図4のステップ100)。例えば、測定日及び時間帯をユーザが指定することにより、指定範囲内におけるワーク群を検索する。100個のワーク群が検索された場合、この100個について、それぞれ表示部33(図1)に表示して目視検査する。この目視検査により、不良ワークを除外する(図4のステップ101)。
【0025】
前記の通り、溶接ビードには接合強度の確保が求められる。溶接ビードに欠損、窪みや肉厚不足が無い場合は、接合強度が確保できているとみなすことができる。このため、目視検査においては、溶接ビードに欠損、窪みや肉厚不足のあるワークを不良品と判定する。目視検査による不良品は、検索されたワーク群のリストから除外する。不良品を除外して残った良品ワークについて、検査対象の特徴量を算出する(図4のステップ102)。ここでは特徴量は、図3のビード幅W、ビード高さHである。これらの特徴量は、形状検査装置10により算出可能であり、算出の詳細は後に説明する。
【0026】
次に、良品ワークから得たビード特徴量のデータについて、統計解析を行った後(図4のステップ103)、判定閾値を設定する(図4のステップ104)。これらは、制御部31(図1)が備える判定基準設定手段により実行される。具体的には、ビード幅W、ビード高さHについて、平均値及び標準偏差を算出する。この平均値及び標準偏差から、閾値を設定する(図4のステップ104)。閾値の設定例として、平均値±(既定値×標準偏差)や平均値±既定値が挙げられる。ここでは、閾値は平均値±(既定値×標準偏差)とする。このうち既定値は、あらかじめ設定しておく値であり、例えば3である。前記のようにして得られたビード幅W、ビード高さHの閾値は、良品におけるビード幅W、ビード高さHの範囲を示していることになる。したがって、この閾値を用いることにより、ビード幅W、ビード高さHの良否の判定ができることになる。
【0027】
前記の通り、形状検査装置10はワークの3次元形状を測定できるとともに、3次元形状の点群データに基いて、各種断面形状の算出及び特徴量の算出が可能である。以下、図5〜図10を参照しながら、形状検査装置10による形状測定について説明する。図5は、本実施形態に係る形状測定のフローチャートである。以下、図5のフローチャートに沿って、図2に示したワーク20の形状測定について説明する。
【0028】
最初に、ワーク20全体の点群データを取得する(図5のステップ200)。点群データの取得は、制御部31(図1)が備える点群データ取得手段により行う。図6は、ワーク20をレーザ光源13(図1)からのスリット光で走査している様子を示す斜視図である。スリット光はX軸方向に走査され、ワーク20の全体がスリット光で走査されることになる。スリット光の走査により、ワーク20上にはX軸方向における位置を変えながら形状線が順次形成されることになる。図6では、3個所における形状線26〜28を図示している。形状線26〜28は、それぞれ計測カメラ14(図1)で撮像される。
【0029】
形状線26〜28における断面形状は、光切断法によって求めることができる。具体的には以下の通りである。図1に示したように、計測カメラ14の光軸は、ワーク20の垂直線(Z軸)に対して傾斜している。一方、図2において、ワーク20は凸状の溶接ビード23〜25が形成されているので、形状線26〜24は、Y軸方向において、高さが変化している。したがって、各形状線の計測カメラ14による撮像画像は、溶接ビード23〜25の高さの変化に応じて、高さが変化していることになる。
【0030】
この撮像画像における形状線の高さを、画像処理部30(図1)において、三角測量法により実際の高さに換算して、形状線の点群の各点における3次元座標が算出されることになる。したがって、ワーク20の全体をスリット光で走査することにより、ワーク20の全体に亘り形状線の点群データが得られ、ワーク20全体の点群データを取得することができることになる。
【0031】
図7は、ワーク20上に、取得した点群データに対応する点群を示した模式図である。点群データ取得後は、図7に示したワーク26上の各点における3次元座標が取得されていることになる。
【0032】
点群データの取得後は、ワーク20の3次元形状を表示部33(図1)に表示する(図5のステップ201)。具体的には、図1の画像処理部30で算出された点群データは、制御部31に送られる。制御部31では点群データの3次元座標に基いて3次元形状を作成し、これを表示部33に出力する。
【0033】
ユーザは、表示部33の3次元形状に基いて基準面を設定する(図5のステップ202)。ワーク20は治具により位置決めされているが、位置決めのばらつきや溶接によるワーク26の歪みにより、ワーク26に傾斜や高さのばらつきが生じる場合がある。この場合は、溶接基準面に対する溶接ビード25の正確な高さは得られないことになる。
【0034】
本実施形態では、制御部31(図1)は基準面設定手段を備えており、形状検査をする前に基準面を設定するようにしている。基準面はワーク20の例では、ワーク20の点群データから算出した平面であり、ワーク20の水平面とみなすことができる平面である。基準面の設定後は、制御部31の基準面設定手段は、検査断面を基準面を基準とする座標系に変換して算出するようにしている。このことにより、検査断面をワーク20に傾斜や高さのばらつきが生じていない状態における形状で算出することができる。
【0035】
図8は基準面の設定の様子を示す斜視図である。ワーク20の面上に円34〜39を選択している。この選択は、表示部33(図1)の画面を見ながら、入力部32(図1)による入力により行う。この入力は、例えばマウスクリックにより行うことができる。
【0036】
前記の通り、ワーク26の点群データは取得済みであるので、円34〜39内における点群データも取得済みである。したがって、円34〜39内における点群データを用いて、近似平面を求めることができ、これを基準面とする。基準面の精度を高めるために、より多くの円を選択してもよい。また、基準面は平面に限らず曲面でもよい。曲率のあるワークや溶接歪みの大きいワークの場合は、基準となる自由曲面を算出しこれを基準面とすればよい。
【0037】
次に、ユーザは、表示部33(図1)の3次元形状に基いて、断面線を設定する(図5のステップ203)。図9は、断面線を設定した状態を示す平面図である。本実施形態では、制御部31(図1)は切断線設定手段を備えている。切断線設定手段は、始点と終点とが設定されると、始点と終点とを最短経路で結んで断面線を設定する。図9では、始点40と終点41とを結ぶ断面線42が設定されている。この設定は、表示部33(図1)の画面を見ながら、例えばマウスクリックにより入力部32(図1)で行う。断面線42は、図2のAA線に相当する。
【0038】
断面線42が設定されると、断面線42における断面形状の算出が開始する(図5のステップ204)。断面形状の算出は、制御部31(図1)が備える断面形状算出手段により行う。断面形状の算出について、図10を参照しながら説明する。図10(a)は、断面線42と点群43との関係を摸式的に示した平面図である。図10(b)は、図10(a)における断面線42上の点及び断面線42近傍の点を抜き出した図である。
【0039】
図10(a)、(b)において、断面線42上における点は、断面線42における断面の外形線上の点になる。前記の通り、点群43の各点における3次元座標は取得している。このため、断面線42の線上の各点の3次元座標を用いて、断面線42における断面の外形線を算出でき、断面線42における断面形状を算出できることになる。
【0040】
一方、断面線42上における点の数が不足している場合もある。このため、本実施形態では、断面線42の近傍の点についても、断面線42上の点として、断面形状の算出に用いるようにしている。断面線42の近傍の範囲については、点群における点の密度に応じてユーザが設定できるようにしておけばよい。
【0041】
前記の図3は、図10の断面線42上及びその近傍の点群データにより、図9の断面線42における断面の外形線を図示したものである。この外形線は、点群データから得られた点を移動平均処理したものである。前記の通り、図3の断面において、ビード幅W、ビード高さHを算出する。これらの算出は、図3の表示に変換後の点群データに基いて、制御部31(図1)が備える特徴量算出手段により行う。算出可能な特徴量は、ビード幅W、ビード高さHに限らず、各種特徴量を算出可能であり、例えば重心、断面積でもよく、高さ断面積比等の各種比率であってもよい。また、断面線の設定位置、各種特徴量の算出手順を、制御部31(図1)にあらかじめ設定しておくことにより、各種特徴量の自動計測が可能になる。
【0042】
次に、閾値の学習機能について説明する。前記の通り、図4のステップ104において、判定閾値が設定されている。具体的には図3におけるビード幅W及びビード高さHを判定する閾値が設定されている。この閾値を用いて形状検査装置10は、ワーク20について良否を判定することになる。形状検査装置10の制御部31(図1)は判定手段を備えており、判定手段は、計測したビード幅W、ビード高さHの両方が閾値の範囲内であれば良品、少なくとも一方が閾値の範囲外であれば不良品と判定する。
【0043】
ここで、ワークのロット変化や溶接トーチの経時変化等の無い状態でワーク20を検査する場合は、同一の閾値を用いても判定の精度は保たれることになる。一方、ワークのロット変化や溶接トーチの経時変化等により、溶接ビードの形状に変化が生じる場合がある。この場合、検査開始時点と同一の閾値を用いると、目視などで良品とされるワークであっても、不良品と誤判定される場合も生じることになる。すなわち、溶接ビードの形状に経時変化が生じると、検査開始時点と同一の閾値は不適切なものとなり、誤判定による不良品が多発する場合が生じ得ることになる。
【0044】
ここでは、溶接ビードの形状に経時変化が生じる場合として、ワークのロット変化や溶接トーチの経時変化を挙げたが、これら以外にもロボットのティーチング変更、ワークの製作精度、ワークのセットばらつき、溶接ワイヤの変更が挙げられる。
【0045】
誤判定による不良品が多発した場合、一旦検査を中断し適正な閾値に再設定できれば、正確な判定が可能になる。この場合、適正な閾値を得るためには、手入力を伴う複雑な設定作業が必要となる。また、閾値は判定対象毎に必要であるので、判定対象が多数である場合は、閾値を変更することは極めて煩雑な作業となる。例えば本実施形態では、判定対象を図3の断面におけるビード幅W及びビード高さHの例で説明しているが、実際の検査では、検査部位は一つの断面だけでなく多数の断面となり、一つの断面における検査項目は数百に及ぶ多数となることもある。したがって、検査を中断しながら閾値を手入力で変更することは、手間と時間がかかり効率的な検査の妨げになる。
【0046】
ここで、前記の通り、図4のステップ102の特徴量の計算に際し、断面線の設定位置、各種特徴量の算出手順を、制御部31(図1)にあらかじめ設定しておくことにより、各種特徴量の自動計測が可能になる。同様に、図4のステップ103〜104における統計解析も含めた判定閾値の算出手順を制御部31にあらかじめ設定しておくことにより、判定閾値の自動設定が可能になる。
【0047】
このため、検査を中断し図4の各ステップを経て判定閾値を再設定する場合、不良ワークを除外するまでのステップ100〜101は、人による作業が必要であるが、特徴量の計算から判定閾値設定までのステップ102〜104までは自動処理が可能になる。すなわち、判定対象が多数であっても各判定対象の判定閾値が自動設定されるので、時間と手間が省け効率的な検査が可能になる。
【0048】
より具体的には、例えばワーク20のロット変化があった場合、一旦検査を中断し、あらかじめ新たなロットにおけるワーク20の一部を検査し、この検査結果を蓄積手段に蓄積しておく。ユーザは蓄積手段からこの蓄積データを検索し(図4のステップ100)、検索した各ワーク20の表示画像を目視検査して不良ワークを除外する(図4のステップ101)。以後は、不良ワークを除外して残った良品ワークの蓄積済みの検査結果に基いて、新たなロットの判定に適した判定基準が自動設定されることになる(図4のステップ102〜104)。
【0049】
これに対し、検査を中断なく継続しながら、閾値が自動的に学習されていくようにすることもできる。図11に、判定閾値の再設定のフローチャートを示している。図12に、直近ワーク検索の模式図を示している。以下、図11、12を参照しながら、図3のビード幅W及びビード高さHを判定する例について説明する。図12のAは現時点での検査対象のワークを示している。ワーク列50内は、検査済みのワークを時系列で表示したものである。ワークBはワークAより一つ前に検査したワークであり、ワークCはワークAより二つ前に検査したワークである。ワークAより前に検査したワークの3次元形状の計測データ及び判定結果は、制御部31(図1)が備える蓄積手段に保存されている。
【0050】
ワークAの検査において、ビード幅W及びビード高さHを算出する(図11のステップ300)。この後、直近ワークを検索する(図11のステップ301)。直近ワークは、時系列で並べたワーク列50内のワークのうちワークAに近接した所定数のワークである。この所定数はユーザがあらかじめ設定し、例えば25個である。説明の便宜上、ここでは10とする。この場合、図12のワーク列51内の10個のワークB〜Kが直近ワークとなる。
【0051】
次に、ワーク列51内の10個のワークから不良ワークを除外する(図11のスップ302)。ワーク列51内の各ワークの良否は判定済みであるので、判定結果に基いて不良ワークの抽出が可能である。図12のワーク列52は、不良ワーク除外後のワーク列である。ワーク列52の8個のワークは、ワーク列51の10個のワークからワークDとワークHの2個のワークを不良ワークとして除外したものである。
【0052】
不良ワークを除外したワーク列52内のワークについて、ビード特徴量を計算する(図11のスップ303)。ビード特徴量は、ここではビード幅W及びビード高さHであるが、これらは蓄積手段に保存されている3次元形状の計測データに基いて算出することができる。ワーク検査時にビード幅W及びビード高さHの算出値を保存している場合には、改めて計算することは不要である。
【0053】
ワーク列52内の良品ワークについて、ビード特徴量の統計解析を行い(図11のスップ304)、閾値を再設定する(図11のステップ305)。再設定における閾値の算出手順はあらかじめ入力されている。具体的には、ワーク列52内の良品ワーク8個についてビード幅W及びビード高さHについて、平均値及び標準偏差を算出する。この平均値及び標準偏差から、閾値を再設定する(図11のステップ305)。ビード特徴量の統計解析及び閾値の再設定は、制御部31(図1)が備える判定基準設定手段により行う。再設定における閾値の計算式についても閾値の算出手順の一部としてあらかじめ入力されている。前記の通り、閾値の設定例として、平均値±(既定値×標準偏差)や平均値±既定値が挙げられる。ここでは、平均値±(既定値×標準偏差)とし、既定値は3とする。
【0054】
閾値の再設定後は、再設定後の閾値を基準としてワークAのビード幅W及びビード高さHの良否を判定する(図11のステップ306)。この良否判定を終えると、新たなワークの検査に移行する。新たなワークの検査においては、図11のステップ300〜305を経て、判定閾値が再設定されることになる。この場合の閾値の設定方法は、ワークAの場合と同じであるが、直近ワークの内容がワークAの場合と異なる。具体的には、ワークAの検査時の直近10個のワークがワークB〜Kであったのに対し、新たなワークの検査においては、ワークA〜Jが直近10個のワークとなる。すなわち、検査対象のワークが新たに投入される毎に、直近10個のワークは、新たなワークに対し直近の10個のワークに変わっていくことになる。
【0055】
前記のように、ワークのロット変化や溶接トーチの経時変化等により、溶接ビードの形状に経時変化が生じた場合は、良品ワークにおける平均値と標準偏差は、検査開始当初のものと異なっていることになる。一方、本実施形態では、判定基準の閾値は、新たに投入されたワークの直近10個のワークに含まれる良品ワークから算出した平均値及び標準偏差に基いて設定されている。このため、判定基準の閾値は、直近の良品ワークの状態が反映されていることになる。したがって、再設定された新たな閾値を用いることにより、ロット変化等により溶接ビードの形状が経時変化しても、判定の精度を確保することが可能になる。
【0056】
本実施形態では、前記の通り、検査済みのワークの3次元形状の計測データ及び判定結果は、制御部31(図1)が備える蓄積手段に保存されている。また、閾値の再設定における閾値の算出手順はあらかじめ入力されている。したがって、これらの蓄積済みの検査結果と入力済みの算出手順とに基いて、制御部31が備える判定基準設定手段の演算処理により、検査を中断することなく良否判定の判定基準を自動設定しながら判定の精度を確保することが可能になる。
【0057】
前記の例では、直近ワークの個数は10個の例で説明し、新たにワークが投入される毎に、閾値を再設定する例で説明したが、これらに限るものではない。例えばワークの個数は25個以上としてもよい。また、閾値の再設定の頻度を少なくしてもよい。また、前記の例では検索した10個の直近ワークに含まれる良品ワークを検索するようにしているが、閾値の再設定に用いる良品ワークの個数を例えば10個とし、良品ワークの個数を優先するようにしてもよい。
【0058】
以上、判定対象がワークの断面形状から算出した特徴量である場合について説明したが、判定対象を断面形状自体としてもよい。この場合は、算出した断面形状の外形線と、判定基準である断面形状の外形線とを比較して、断面形状の良否を判定することになる。判定にはあらかじめ設定した基準外形線を用い、最初の1個目のワークの良否の判定を行うことになる。図13に、基準外形線を設定する際のフローチャートを示している。ステップ400〜404を経ることにより、設定した形状学習エリアにおいて設定数の基準外形線が得られることになる。
【0059】
検査対象のワークは、図2に示したワーク20の例で説明する。基準外形線の設定の際には、断面形状の算出が必要となる。ここでは、図5〜10を用いて説明した断面形状の算出方法を用いた例で説明する。また、図13のステップ400に移行する前に、図4のステップ100、101と同様に、複数(例えば100個)のワーク20について、3次元形状の計測データ及び目視検査による良否の判定結果を蓄積しておく。
【0060】
最初に、現在投入されているワーク20について、基準形状の対象となる形状学習エリアを設定する(図13のステップ400)。形状学習エリアは、判定対象となる断面形状を算出するエリアである。図14は、形状学習エリアを設定した状態の平面図を示している。本図では、設定線44〜46により囲まれた溶接ビード23〜25が形状学習エリアとなる。設定線44〜46の設定は、入力部22(図1)による入力により行う。この入力は、例えばマウスクリックにより行うことができる。
【0061】
形状学習エリアの設定後は基準面を設定する(図13のステップ401)。基準面は、図5のステップ202における基準面の設定に相当し、図8を用いて説明した基準面の設定と同じ要領で基準面を設定する。基準面設定後は、ステップ401で形状学習エリアとして設定した溶接ビード23〜25の形成部の全体から判定対象とする複数の断面形状を算出する。断面形状の算出方法は、図5のステップ203及び204と同様である。
【0062】
以下のステップ402〜404において、断面形状の判定基準である基準外形線を設定する。基準外形線は目視検査により良品とされたワークに基いて設定する。前記の通り、ステップ400に移行する前に、複数のワーク20について、各ワーク20の3次元形状の計測データ及び目視検査による良否の判定結果が蓄積されている。この蓄積データから良品ワークを検索する(図13のステップ402)。
【0063】
良品ワーク検索後は、検索した良品ワークについて、形状学習エリアを切り出す(図13のステップ403)。形状学習エリアは、ステップ400において設定済みである。ステップ403においては、この形状学習エリアに対応する部分を、各良品ワークから抜き出すことになる。図15は、良品ワークから形状学習エリアを抜き出した後の平面図を示している。
【0064】
検索した各良品ワークについて、図15に示した形状学習エリアにおいて、基準外形線を算出することになる。前記の通り、現時点の検査対象であるワーク20について、判定対象である複数の断面形状が算出されている。基準外形線は、判定対象の各断面形状について設定することになる。ここでは、基準外形線を設定する断面形状は、図15のBB線における断面の例で説明する。図15のBB線における断面形状は、図5のステップ201〜204と同様の方法により算出可能である。
【0065】
図16は、図15のBB断面における断面の一部を示している。線53は、BB線における断面形状の外形線の一部を示している。図16は一つの良品ワークにおける外形線を示しているが、図13のステップ402で検索した各良品ワークについて、BB線における断面形状を算出する。これらの複数の断面形状に基いて、BB線における断面形状の外形線の区分多項式を算出する(図13のステップ404)。
【0066】
区分多項式を求めた後は、この区分多項式を判定基準として検査対象のワーク20の断面形状を判定する(図13のステップ405)。図17、18は、断面形状の判定の様子を示す図である。図17はワーク20のBB断面が基準に適合する例を示しており、図18はワーク20のBB断面が基準に適合していない例を示している。図17の線55、図18の線56は、それぞれワーク20のBB断面の外形線の一部を示している。線55は基準に適合する例であり、線56は基準に適合していない例である。図17、18において、基準外形線54は判定基準となる線であり、図4のステップ404で求めた区分多項式を表示したものである。
【0067】
断面形状の判定は、図17、18の各図において、線55、56と基準外形線54との差分値に基いて行う。全体的に差分値が大きい場合のみならず、部分的に差分値が大きい場合も不良と判定される。図17では基準に適合する線55は、全体に亘り基準外形線54と近接している。これに対し、図18では全体的に線56と基準外形線54との差分値が大きく、部分的に大きく窪んだ部分(Δd)がある。
【0068】
図13の手順により良否判定する場合、ステップ402〜404を繰り返すことにより、基準外形線を再設定することができる。例えばロット変化があった場合、一旦検査を中断し、あらかじめ新たなロットにおけるワーク20の一部を検査し、3次元形状の計測データ及び目視検査による良否の判定結果を蓄積しておく。そして、この蓄積データに基いて、図13のステップ402〜404を実行することにより、新たな基準外形線が得られることになる。
【0069】
図13のステップ402は、蓄積済の判定結果に基いて自動検索できる。また、図13のステップ403〜404による基準外形線の算出手段をあらかじめ入力しておけば、蓄積済みのワーク20の計測データに基いて、ステップ403〜404は自動処理することができ、新たな基準外形線が自動設定されることになる。すなわち、前記の判定閾値を自動設定する場合と同様に、判定対象が多数であっても各判定対象の基準外形線が自動設定されるので、時間と手間が省け効率的な検査が可能になる。
【0070】
判定基準を基準外形線とした場合であっても、検査を中断なく継続しながら、基準外形線が自動的に学習されていくようにすることもできる。基準外形線の再設定の要領は、図11のフローチャートによる判定閾値の再設定の場合と同様である。すなわち、基準外形線の再設定の際には、蓄積済みのワーク検査結果と入力済みの基準外形線の算出手順を用いて、判定対象の断面形状における区分多項式が自動的に算出されることになる。そして、現時点のワークの判定には、この新たな区分多項式による基準外形線を用いることになる。
【0071】
以上、本実施形態の形状検査について説明したが、断面形状の算出については、図5〜10を用いて説明した算出方法に限るものではなく、光切断法等の手法を用いた各種算出手法を用いたものであってもよい。また、本実施形態における形状検査は撮像光学系を用いたものであるが、これに限るものではない。被検査物の形状の計測データが得られ、この計測データを演算処理により判定可能な装置であれば、本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 形状検査装置
12 撮像光学系
13 レーザ光源
14 計測カメラ
20 ワーク
23,24,25 溶接ビード
26,27,28 形状線
42 断面線
43 点群
50,51,52 ワーク列
54 基準形状線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の形状を検査する形状検査装置であって、
被検査物の検査結果を蓄積する蓄積手段と、
判定基準に基いて被検査物の良否を判定する判定手段と、
前記判定基準を設定する判定基準設定手段とを備えており、
前記判定基準は、あらかじめ入力された算出手順と前記蓄積手段に蓄積された被検査物の検査結果とに基いて、前記判定基準設定手段により自動設定されることを特徴とする形状検査装置。
【請求項2】
前記判定基準は、検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定される請求項1に記載の形状検査装置。
【請求項3】
前記判定基準は、検査中の被検査物に対し直近の検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定される請求項1又は2に記載の形状検査装置。
【請求項4】
前記判定基準は、新たに被検査物が投入される毎に、新たな被検査物に対し直近の検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定される請求項1から3のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項5】
前記判定手段の判定対象が被検査物の特徴量であり、前記判定基準は数値範囲を表す閾値であり、前記判定手段は、計測した被検査物の特徴量と前記閾値とを比較して被検査物の良否を判定する請求項1から4のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項6】
前記判定手段の判定対象が被検査物の断面形状であり、前記判定基準は外形線であり、前記判定手段は、計測した被検査物の断面形状の外形線と前記判定基準の外形線との差分値に基いて被検査物の良否を判定する請求項1から5のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項7】
前記判定手段の判定対象は、被検査物の断面形状又は断面形状から算出された特徴量であり、
前記断面形状は、被検査物の三次元形状の点群データから算出したものであり、
前記点群データは、被検査物にスリット光を投射し、前記スリット光の走査により被検査物上に順次形成される形状線を撮像し、前記順次形成された各形状線の撮像データから取得し、
前記断面形状は、前記点群データに基いて表示した被検査物に切断線を設定し、前記切断線に対応した前記点群データにより算出したものである請求項1から6のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項8】
判定基準に基いて被検査物の良否を判定する形状検査方法であって、
被検査物の検査結果を蓄積しておき、
前記判定基準の算出手順をあらかじめ入力しておき、
前記判定基準が、前記算出手順と前記蓄積した被検査物の検査結果とに基いて自動設定されるようにすることを特徴とする形状検査方法。
【請求項1】
被検査物の形状を検査する形状検査装置であって、
被検査物の検査結果を蓄積する蓄積手段と、
判定基準に基いて被検査物の良否を判定する判定手段と、
前記判定基準を設定する判定基準設定手段とを備えており、
前記判定基準は、あらかじめ入力された算出手順と前記蓄積手段に蓄積された被検査物の検査結果とに基いて、前記判定基準設定手段により自動設定されることを特徴とする形状検査装置。
【請求項2】
前記判定基準は、検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定される請求項1に記載の形状検査装置。
【請求項3】
前記判定基準は、検査中の被検査物に対し直近の検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定される請求項1又は2に記載の形状検査装置。
【請求項4】
前記判定基準は、新たに被検査物が投入される毎に、新たな被検査物に対し直近の検査済の良品とされる被検査物の集合体の検査結果に基いて自動設定される請求項1から3のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項5】
前記判定手段の判定対象が被検査物の特徴量であり、前記判定基準は数値範囲を表す閾値であり、前記判定手段は、計測した被検査物の特徴量と前記閾値とを比較して被検査物の良否を判定する請求項1から4のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項6】
前記判定手段の判定対象が被検査物の断面形状であり、前記判定基準は外形線であり、前記判定手段は、計測した被検査物の断面形状の外形線と前記判定基準の外形線との差分値に基いて被検査物の良否を判定する請求項1から5のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項7】
前記判定手段の判定対象は、被検査物の断面形状又は断面形状から算出された特徴量であり、
前記断面形状は、被検査物の三次元形状の点群データから算出したものであり、
前記点群データは、被検査物にスリット光を投射し、前記スリット光の走査により被検査物上に順次形成される形状線を撮像し、前記順次形成された各形状線の撮像データから取得し、
前記断面形状は、前記点群データに基いて表示した被検査物に切断線を設定し、前記切断線に対応した前記点群データにより算出したものである請求項1から6のいずれかに記載の形状検査装置。
【請求項8】
判定基準に基いて被検査物の良否を判定する形状検査方法であって、
被検査物の検査結果を蓄積しておき、
前記判定基準の算出手順をあらかじめ入力しておき、
前記判定基準が、前記算出手順と前記蓄積した被検査物の検査結果とに基いて自動設定されるようにすることを特徴とする形状検査方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−37488(P2012−37488A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180509(P2010−180509)
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(593118128)コアテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月11日(2010.8.11)
【出願人】(593118128)コアテック株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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