説明

形状測定装置の精度判別方法、精度判別装置及び精度判別基準治具

【課題】形状測定装置の測定精度を少ない工数で容易に確認することができる精度判別方法、精度判別装置及び精度判別基準治具を提供する。
【解決手段】一定の広さの視野内に位置される被測定体に線状光発生手段3からの線状光4を照射して被測定体を撮像する精度判別において、線状光4が照射される照射面を線状光4の延長方向に沿うように連続した凹凸部10jで形成された基準治具10を視野内の目標位置に位置させるように、基準治具10を保持して駆動する治具駆動手段30と、基準治具10の照射面に線状光4が照射されるように線状光発生手段3を保持する保持手段40とを備え、この線状光4が照射された凹凸部10jを撮像手段5で撮像し、表示手段7で撮像された凹凸部10jを変換テーブル6fで実寸法に変換された画像断面図形としてモニタ表示して、この表示された画像断面図形と実際の凹凸図形を対比して形状測定装置の精度判別をするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置の精度を判別する精度判別方法、精度判別装置及び精度判別基準治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、精密加工して形成された金型等(被測定体)が、所定の寸法通りに加工されているかどうかを確認するために、3次元形状測定などを行い加工された物体の形状を測定している。この3次元形状測定には、例えば、光切断法が広く用いられている。
光切断法は、所定の撮像視野内に存在する測定対象にスリット光を照射するとともに被測定体を撮像手段で撮像して、被測定体上の画像断面図形を得て、これを画像解析することにより、被測定体の3次元形状の情報を取得する方法である。
【0003】
すなわち、図15に示すように、形状測定装置は、一定の広さのカメラ視野(仮想)1内に位置されるタイヤ金型などの被測定体2に線状光発生手段としてのレーザー光発生器3より、上下に延長する線状光としてのスリット光4を照射し、このスリット光4の反射光を撮像手段としてのCCDカメラ5で受光して、この受光信号を制御手段としてのコンピュータ6に出力し、コンピュータ6では表示手段としてのモニタ7に被測定体2の上記スリット光4が照射された部位に対応する断面実図形8を画像断面図形8′としてモニタ表示させるようにしたものである。
画像断面図形8′は、撮像された断面実図形8をコンピュータ6にあらかじめ備えられた変換テーブルにより実際の寸法の大きさに変換したものであり、モニタ7のカメラ画像視野1′内に画像として表示される。上記画像断面図形8′の表示内容の細部の寸法などが高精度に表示されているか否かは、例えば、高品質のタイヤを成型する上で、重要課題であり、この精度誤差を確認することは重要である。
すなわち、カメラ視野1の所定位置に配置された被測定体2が正確に(1対1の関係を保って)画像断面図形8′としてモニタ7に表示される必要がある。
しかし、CCDカメラ5のレンズ系の誤差や、レンズ系で取り込んだ画像処理系の処理誤差あるいはカメラの撮像位置の影響等により必ずしも各位置1a,1b,1cにおいて、1対1の関係を保って断面実図形8が出力画面にそのまま画像断面図形8′として表示されるとは限らない。このため、断面実図形8と画像断面図形8′との誤差を判別する方法が必要とされる。
第1の方法の精度判別方法として、従来、図16,図17において、カメラ視野1の少なくとも上,中央,下の各位置1a,1b,1cに所定の大きさの基準治具9aを設置し、この基準治具9aにレーザー光発生器3よりスリット光4を照射して、反射光をCCDカメラ5で撮像してコンピュータ6で処理し、モニタ7に基準治具9aの断面実図形9を画像断面図形9′として表示して、この画像断面図形9′を基準治具9aの断面実図形9の実寸法と比較して、その精度を精査するようにしている。上記基準治具9aは、縦寸法aと奥行き寸法bが正確に寸法設定された金型よりなる直方体であり、この場合一例として、a寸法は100mm,b寸法は50mmに高精度をもって成型されている。
基準治具9aは、CCDカメラ5を介してコンピュータ6で処理されてモニタ7に表示される画像断面図形9′が基準治具9aの断面実図形9に対し、どの部分が寸法誤差を生じているかをチェックすることで、CCDカメラ5に生じる精度誤差を判定できる。すなわち、画像断面図形9′は、CCDカメラ5,コンピュータ6を介して処理された結果が表示されるものであって、表示結果の画像断面図形9′の縦寸法a′,奥行き寸法b′が、図16の基準治具9aの縦寸法a,奥行き寸法bの実寸法と比較して許容範囲か否かをチェックすることで、各位置1a,1b,1cの各部位において、基準治具9aが正確に撮像処理されるか否かを知ることができる。許容範囲以外の場合は、レンズ系,画像処理系を修正するなどにより精度誤差が許容のものに設定される。
例えば、中央位置1bに基準治具9aを配置したとき、CCDカメラ5の撮像系について誤差が生じたことが分かるので、レンズ系あるいはカメラ位置などを修正するなどしてこの誤差を補正するようにして、誤差の生じないカメラ等を得るようにしている。
しかし、従来の方法では、基準治具9aは、各位置1a,1b,1cのそれぞれをカバーするものであるが、上下位置1a,1c,中央位置1bの調査位置に応じて、それぞれの位置に基準治具9aを配置替えしなければならない作業手間を要する。
また、この従来の方法において、例えば、各位置1a,1b,1cのさらに小領域の範囲をCCDカメラ5で撮像して判定したい場合には、図18に示すように、上記基準治具9aより小形の基準治具9b(寸法a,bは既知のもの)を別途用意し、小領域のみをカバーするように配置させて、CCDカメラ5で撮像してモニタ7に画像断面図形を表示するようにして、この画像断面図形を基準治具9bの実寸法と比較するものである。
【0004】
したがってこの第1の方法では、以上の作業手間を要する点に加えて、寸法の異なる基準治具を測定位置の大きさに応じて複数個用意しておくものであり、これにより、精度確認毎に複数の基準治具を取り換えCCDカメラ5の前に配置しなければならず、上記同様測定に手間を要することになる。
また、従来の方法では、CCDカメラ5が撮像する視野のある範囲においてしか、精度を論じることができなかった。すなわち視野内の、左右中央、上下中央付近の精度しかえられず、視野の場所毎に精度がはずれている場合がある。このため、視野全体の精度の校正を行うためには、基準治具を視野内で動かして校正を行う必要がある。しかし、視野の端の精度を得ようとしても、大きな基準治具では、視野からはみ出してしまい基準治具の左右方向の寸法が測定されないので実寸法と比較できず、測定精度を調べることができない。
また、光学式(レーザー照射式)の形状測定センサの場合、レーザーがあたりにくい物体の側面側の精度が悪化してしまうため、精度評価の正確性が低下してしまう。つまり、基準治具9aの正面側(寸法a)には、レーザーが良く照射されるので正しく測定できるが、基準治具9aの側面側(寸法b)には、レーザーが照射されにくいために測定精度が悪化してしまう。
このような精度評価の場合、測定のバラツキを考慮して複数回測定を行うことが望ましいが、同じ基準治具を測定しているために、単純に複数回の測定を行ったとしても同じ結果が測定される可能性が大きく、実際の被測定体2を測定するときに生じる測定のバラツキが再現されにくい。そこで、基準治具を設置しなおして再度測定を行う方法もあるが作業が煩雑になってしまう。
また、従来は基準治具の配置を変更すると基準治具とカメラとの位置関係が変化するので、画像断面図形9′の大きさが変化してしまい、断面実図形9との比較が容易に行えない欠点があった。
【0005】
また、第2の方法として、特許文献1に示すように、平面を高さが異なるように階段状に形成した校正用の基準治具としてのターゲットを測定するセンサの視野からはみ出るように位置させて、このターゲットの各平面に光パターンを照射して、センサにより走査することで光パターンの間隔を測定し、センサからターゲットの各平面までの高さを測定することにより、高さ方向の測定の校正を迅速に行う方法が公開されている。
しかし、この第2の方法によれば、校正に用いるターゲットが所定の高さとなるように形成された平面を階段状に形成したものであるので、例えば、測定対象の大きさが変化したときには、測定対象の大きさに対応するターゲットを作成して測定を行う必要があるため、ターゲットを変更する毎に測定精度の確認をする必要があるので、第1の方法と同様に手間がかかってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−170279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、上記課題を解決するために、形状測定装置の測定精度を少ない作業工数で容易に確認することができる精度判別方法、精度判別装置及び精度判別基準治具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態として、一定の広さの視野内に位置される被測定体に線状光発生手段からの線状光を照射して、この線状光の反射光を撮像手段で受光して、上記被測定体を撮像し、この撮像画像を断面形状として表示手段でモニタ表示可能とした形状測定装置の精度判別方法において、上記視野内の所定位置に位置されて、上記線状光が照射される基準治具を備え、上記基準治具の線状光が照射される照射面を線状光の延長方向に沿う連続した凹凸部として形成し、この凹凸部を上記撮像手段で撮像し、上記表示手段でモニタ表示して、この表示された画像断面図形と実際の凹凸図形を対比することで形状測定装置の精度誤差を判別可能とした。
本発明によれば、表示された画像断面図形と実際の凹凸図形とを対比することで形状測定装置の精度誤差の判別が可能となる。また、撮像手段の視野内の画像断面図形の細部又は広範囲について実際の基準治具の凹凸図形の寸法を比較することで、一定の広さの視野内について詳細に、又は広範囲に基準治具を取り替えることなく精度誤差が判別でき、かつそのサンプリング数を多くすることができるので、精度誤差の信頼性が向上する。
【0009】
本発明の第2の構成として、一定の広さの視野内に位置される被測定体に線状光発生手段からの線状光を照射して、この線状光の反射光を撮像手段で受光して、被測定体を撮像し、この撮像画像を断面形状として表示手段でモニタ表示可能とした形状測定装置の精度判別装置において、視野内の所定位置に位置されて、線状光が照射される基準治具を備え、基準治具の線状光が照射される照射面を線状光の延長方向に沿う連続した凹凸部として形成し、この凹凸部を撮像手段で撮像し、表示手段でモニタ表示するように構成して、この表示された画像断面図形と実際の凹凸図形を対比することで形状測定装置の精度誤差を判別可能とした。
本発明によれば、撮像手段で線状光が照射される基準治具の凹凸部を撮像し、表示手段でモニタ表示された画像断面図形と実際の凹凸図形を対比することにより、撮像手段の視野内の所定位置における形状測定装置の精度誤差を判別することができ、視野内の目標とする位置に撮像された基準治具の凹凸部が画像断面図形としてモニタ表示されることで、直感的、かつ正確に測定の精度誤差を得ることができるので精度誤差の判別の作業が容易になる。
【0010】
本発明の第3の構成として、形状測定装置は、基準治具を保持して視野内の目標位置まで駆動する治具駆動手段と、基準治具の照射面に線状光を照射する線状光発生手段を保持する保持手段とを備え、視野内の複数の目標位置における基準治具を位置決めして、複数の目標位置での基準治具の画像断面図形をモニタ表示可能とする構成とした。
本発明によれば、線状光が照射された状態で、基準治具が治具駆動手段により視野内の複数の目標位置に移動して撮像することにより、視野内における画像断面図形の細部又は広範囲について実際の基準治具の凹凸図形の寸法と比較することで、各視野内の詳細、又は広範囲の精度誤差の判別をするときに、基準治具を取り替えることなく精度を調べることができる。
さらに、視野内の目標位置を複数設定して視野全域での測定精度を詳細に調べれば、視野内の位置における精度誤差の判別のサンプリング数が多くなり信頼性が向上する。
さらに、凹凸図形の凹部又は凸部を組み合わせることで、種々の寸法における精度誤差の判別のサンプリング数を多くでき信頼性が向上する。
また、視野内の目標位置に撮像された基準治具の凹凸部が画像断面図形としてモニタ表示されることで、直感的に測定の精度誤差を得ることができるので精度誤差の判別の作業が容易になる。
【0011】
本発明の第4の構成として、一定の広さの視野を一定数に区画し、区画された視野の小領域ごとに、基準治具を治具駆動手段で位置決めするように構成した。
本発明によれば、区画された視野毎に精度誤差の判別を行うことで視野全体の精度誤差を詳細に調べることができるので、実際に被測定体を測定するときに、視野のどの区画にどの程度の精度誤差があるのかを知ることができる。
また、治具駆動手段により基準治具が視野の区画に位置決めされるので、再度、区画ごとの精度誤差を調べるときに、容易に各区画の同じ位置に位置させて精度誤差を判別することができるので精度誤差の判別の再現性が得られ、かつ、信頼性が向上する。
【0012】
本発明の第5の構成として、画像断面図形をモニタ表示の2次元平面上に表示可能とし、又は画像断面図形をモニタ表示の3次元画面上に表示可能に構成した。
本発明によれば、画像断面図形がカメラ視野としてのモニタ表示上の2次元平面に表示されるのでカメラ視野内のどの位置に精度誤差があるのか容易に判別でき、又は、2次元平面を重ねてカメラ視野の異なる焦点距離と対応するように3次元画面として表示されるのでカメラ視野内の奥行き方向の精度誤差も容易に判別することができる。
【0013】
本発明の第6の構成として、基準治具の凹凸部は、鋸歯状に設定されてなる。
本発明によれば、凹凸部の傾斜面により形成される凹部,凸部に線状光が途切れることなく直接照射されるため、凹凸部の形状をはっきりと撮像することができるので高精度の判定が可能となる。
【0014】
本発明の第7の構成として、表示手段に視野毎に区画された小領域を表示する入力画面を表示するようにし、目標位置をこの小領域の指定により入力可能とした。
本発明によれば、表示手段に表示された視野の小領域を選択するだけで、その小領域の精度測定の判定が自動的に行われるので容易に各小領域の精度測定の判定結果を得ることができる。
【0015】
本発明の第8の構成として、保持手段は、視野内の複数の目標位置に位置決めされた基準治具の照射面に線状光が照射されるように線状光発生手段を保持して駆動する構成とした。
本発明によれば、治具駆動手段により基準治具を視野内の目標位置に駆動したときでも、常に基準治具の照射面に線状光を照射することができるので、視野内の複数の目標位置に基準治具が位置決めされても容易に精度測定の判定結果を得ることができる。
【0016】
本発明の第9の構成として、形状測定装置の精度判別に用いられる基準治具であって、当該基準治具は、視野内の所定位置に位置されて、線状光が照射されるものであり、かつ、基準治具の線状光が照射される照射面を線状光の延長方向に沿う連続した凹凸部として形成し、この凹凸部を撮像手段で撮像し、表示手段でモニタ表示して、この表示された画像断面図形と実際の凹凸図形に対する精度誤差を判別可能とする構成とした。
本発明によれば、基準治具の線状光が照射される照射面を、線状光の延長方向に沿う連続した凹凸部として形成したことにより、凹凸部に照射された線状光が照射された凹凸部を撮像することにより得られた画像断面図形の凹部又は凸部を組み合わせて、それに対応する実際の凹凸図形を比較することで、一度に種々の寸法における精度誤差の判別のサンプリングを行うことができる。つまり、撮像手段の視野内の画像断面図形の細部又は広範囲について実際の基準治具の凹凸図形の寸法を比較することで、一定の広さの視野内について詳細に、又は広範囲に基準治具を取り替えることなく精度誤差が判別でき、かつそのサンプリング数を多くすることができるので、精度誤差の信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施形態1の精度判別装置の概略構成図。
【図2】本発明に係る実施形態1の画像断面図形の拡大図。
【図3】本発明に係る実施形態1のカメラ視野及びカメラ画像視野の対応図。
【図4】本発明に係る実施形態2のカメラ視野及びカメラ画像視野の対応図。
【図5】本発明に係る実施形態3のカメラ視野及びカメラ画像視野の対応図。
【図6】本発明に係る実施形態4のCCDカメラの配置図。
【図7】本発明に係る実施形態5の基準治具を示す図。
【図8】本発明に係る実施形態6の精度判別装置の概略構成図。
【図9】本発明に係る実施形態6のカメラ視野の拡大図。
【図10】本発明に係る実施形態6のカメラ画像視野の表示図。
【図11】本発明に係る実施形態6のカメラ画像視野の小領域の拡大図。
【図12】本発明に係る実施形態6のカメラ画像視野の表示図。
【図13】本発明に係る実施形態6のカメラ画像視野の表示図。
【図14】本発明に係る実施形態7のカメラ視野及びカメラ画像視野の対応図。
【図15】従来の構成を用いた実際の形状測定装置の概略構成図。
【図16】従来の形状測定装置の精度を判定するための基準治具を示す図。
【図17】従来の基準治具を用いた形状測定装置の精度を判定するための精度判別装置図。
【図18】従来の異なる大きさの基準治具を用いたときの配置図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施形態1
図1は、本発明による形状測定装置の精度判定方法、精度測定装置及び精度判別基準治具の一実施形態を示す概略構成図である。なお、同図において、図15,図17と同じものは同一符号を用いている。
衝立1mの前面の左右に位置されるレーザー光発生器3及びCCDカメラ5と、コンピュータ6と、モニタ7とよりなる形状測定装置を本実施形態の対象としている。
CCDカメラ5でカメラ視野1内の撮像が行われるものである。
【0019】
本実施形態では、この形状測定装置の精度判定を目的として、衝立1m前面の仮想のカメラ視野1の上位置1a,中央位置1b,下位置1cの全体をカバーするY方向(縦方向)に細長い基準治具10を図外の保持手段で位置決めする。この基準治具10の前面11には、幅方向中央を縦方向に延長する線状光としてのスリット光4をレーザー光発生器3より照射する。上記基準治具10の前面11の照射面には、スリット光4の延長方向に沿って、連続した凹凸からなる凹凸部10jが形成される。
具体的には、凹凸部10jは、既知の寸法の傾斜面10f,10gよりなる鋸歯状により形成されている。上記スリット光4の反射光は、上記凹凸部10jの表面で反射され、撮像手段としてのCCDカメラ5で受光される。
【0020】
上記スリット光4が照射される凹凸部10jの凹凸断面実図形13は、表示手段としてのモニタ7の画面のカメラ画像視野1′内に2次元平面上に画像断面図形13′として表示される。なお、モニタ7には、仮想のカメラ視野1に対応するカメラ画像視野1′全体が表示され、その表示されたカメラ画像視野1′とともに、上記画像断面図形13′が縦方向に延長するように表示される。表示手段としてのモニタ7の表示画面中のカメラ画像視野1′の側部(余白部分)には、拡大表示部14が設けられ、この拡大表示部14中に入力手段6mで制御されるカーソル15等で指定された画像断面図形13′の一部が拡大表示されるように構成されている。
【0021】
モニタ7の拡大表示部14に隣接する部位には、基準治具10の凹凸断面実図形表示部18が設けられ、この表示部18に基準治具10の実際の凹凸断面実図形13を表示する。この凹凸断面実図形13の表示は、入力手段6mの操作に基づき、オペレータが作成して直接(CCDカメラ5を介することなく)、コンピュータ6の制御下で入力表示される。
【0022】
基準治具10は、凹凸部10jのみがカメラ画像視野1′内に表示されるものとし、矩形の基部Fは不要であるので、カメラ画像視野1′には表示されないように、コンピュータ6で画像処理されるものとする。また、CCDカメラ5は、レイアウトの都合上、衝立1mを傾斜方向から撮像するが、カメラに対する基準治具10の位置(距離),方向(傾斜角度)等に応じて表示画像である画像断面図形13′には変換テーブル6fにより一定の補正が加えられる。変換テーブル6fにはCCDカメラ5の目標位置信号17mが入力される。具体的には、モニタ7上に表示される画像断面図形13′は、基準治具10の位置及び方向がカメラ視野1内の撮像される位置によって異なる。すなわち、基準治具10がCCDカメラ5に近い側では画像断面図形13′は大きく、基準治具10がCCDカメラ5に遠い側では画像断面図形13′は小さく撮像されることになる。そこで、変換テーブル6fで画像断面図形13′を凹凸断面実図形13と比較するときには、カメラ視野1内の基準治具10の撮像された位置及び方向(目標位置信号17m)に基づいて画像断面図形13′の大きさ,形状などを実寸法に合うように変換する。このようにして変換テーブル6fにより、撮像された画像断面図形13′の大きさ,方向は自動で実寸法に合うように変換されるので凹凸断面実図形13と比較できるように補正される。
また、本例のレーザー光発生器3のスリット光4は、基準治具10の凹凸部10jがどのような位置にあっても、常に固定された位置から照射される。
【0023】
以上の構成の動作は、次の通りである。
図1に示すように、基準治具10を衝立1mの前面のカメラ視野1内の左右方向(X方向)の例えば、中央部位に配置し、レーザー光発生器3よりスリット光4を照射し、凹凸部10jよりその線状の反射光をCCDカメラ5で受光し、コンピュータ6で処理して、モニタ7に画像断面図形13′として表示する。この画像断面図形13′は、凹凸断面実図形13に対応する図形である。
次に、カーソル15を上下に操作して画像断面図形13′内の必要とする部位をこのカーソル15で指定して拡大表示部14に拡大表示する。なお、凹凸断面実図形表示部18には、実際の基準治具10の凹凸部10jの凹凸断面実図形13が、傾斜面10f,10gの寸法とともに表示されている。オペレータが、拡大表示部14内の画像断面図形13′を凹凸断面実図形表示部18内の凹凸断面実図形13に対比して、各位置1a,1b,1cにおいてチェックすることで、CCDカメラ5の各位置1a,1b,1cのいずれにおいてカメラ誤差を生じているかが判別できる。画像断面図形13′と凹凸断面実図形13との対比は、鋸歯状の凹凸部10jの斜面の長さ寸法あるいは角度の比較、凹凸部10jの頂点間の間隔寸法の比較などによって行われる。なお、凹凸断面実図形13の寸法出しについては、コンピュータ6内の鋸歯状の基準治具10の実寸法を計算する寸法出し手段としてのソフトウェアを用いて、鋸歯状の凹凸部10jの各辺の寸法が求められる。
【0024】
具体的には、次の計算手順により求められる。まず、基準治具10の凹凸部10jの画像断面図形13′の各辺を構成する画素をデータ点群として扱い、各辺の点群を最小二乗法により直線近似して、この近似された直線同士の交点を鋸歯状の屈曲点として求め、屈曲点同士を組み合わせることにより、傾斜面の長さ寸法あるいは角度、凹凸部10jの頂点間の間隔寸法が求められる。
【0025】
以上の構成によれば、図2に示すように、例えば、カメラ画像視野1′の上下方向の中央位置1b′の画像断面図形13′と、カメラ視野1の凹凸断面実図形13とを比較して誤差が認められる場合(本例では傾斜面10f′と傾斜面10g′の寸法が実寸法より長く、誤差が認められる場合)には、CCDカメラ5が中央位置1bにおいて測定誤差が生じるものとして判定されるので、この位置でのレンズ系、あるいは画像処理系を修正する等して、精度修正を行うことができる。
なお、本例では、画像断面図形13′の大きさに対し、基準治具10の位置及び方向などに応じて変換テーブル6fによる変換による補正が加えられるので、基準治具10の位置及び方向に応じて大きさ、あるいは形状が変わることがないので、正確に凹凸断面実図形13と対比できる。
本実施形態では、基準治具10をカメラ視野1内のX方向(横方向)に位置を変更して、左部,右部に位置決めして同様な作業を行うことで、カメラ視野1の全域でのカメラ精度の判定を行うことができる。
【0026】
なお、本実施形態では、図3に示すようにカメラ視野1を上下方向に3分割して小領域1p,1q,1rに区画し、基準治具10の上下長さを短く設定し、この基準治具10を凹凸部10jの撮像毎にY方向に位置を変更するようにしてもよい。13aは、基準治具10の凹凸断面実図形であり、モニタ7に画像断面図形13a′として表示される。基準治具10は、中央位置1b,上位置1a,下位置1cの順番で移動して撮像、表示されるので、各位置1a′,1b′,1c′での画像断面図形13a′を凹凸断面実図形13aと比較して観察することで、各位置1a,1b,1cでのカメラ精度を判定できる。この場合、図3に示すように基準治具10が、境界1tを跨ぐ位置に位置決めして凹凸断面実図形13bをカメラ撮像、画像判定を行うことで画像断面図形13b′により境界1tにおけるカメラ精度のチェックが可能となる。
【0027】
実施形態2
また、図3では、仮想として表示したカメラ視野1は、上下に3分割されたものであるが、図4に示すように、これを左右にも3分割して全体として9個の小領域R1〜R9に区画し、各小領域R1〜R9毎に基準治具10を位置決めして、凹凸断面実図形13cがモニタ7中のカメラ画像視野1′の小領域R1′〜R9′毎に画像断面図形13c′として2次元平面上に表示されるように構成し、各小領域R1〜R9全体を基準治具10が移動してカバーするようにしてもよい。
このような構成により、カメラ視野1の各小領域R1〜R9毎に、小領域R1′〜R9′に画像断面図形13c′を表示でき、この表示内容と基準治具10の凹凸断面実図形13cとの比較により、各小領域R1〜R9毎にカメラ精度を判定するようにしてもよい。
【0028】
実施形態3
また、図5に示すように、基準治具10は、X方向(横方向)に長手状に成形して、凹凸部10jが横方向に延長するものとして形成し、同方向に連続して形成された基準治具凹凸部10jを横向きのスリット光4で照射し、カメラ撮像して、モニタ7に横方向(X方向)に延長する画像よりなる画像断面図形13d′を表示させて判定するようにしてもよい。
【0029】
実施形態4
また、図6に示すように、CCDカメラ5は、左右に2台設置したデュアルタイプのものを用いてモニタ7に画像表示を行うようにしてもよい。
これによれば、実際に測定する測定対象が、CCDカメラ5Aからのみの撮像では形状測定において死角ができてしまう場合に、CCDカメラ5Bを設けて撮像することで死角をなくして形状測定ができるようになる。しかし、このようにCCDカメラ5AとCCDカメラ5Bを用いる場合には、互いの測定精度の関係を知る必要が生じる。
そこで、精度判別装置においても、CCDカメラ5AとCCDカメラ5Bにより凹凸部10jを撮像することで、互いの精度の違い、すなわち、CCDカメラ5AとCCDカメラ5Bとの相対精度を測定することができるようになる。また、それぞれのCCDカメラ5A,5Bによって撮像され、得られた画像断面図形と基準治具10の断面実図形の実寸法との比較を行えば、絶対精度を得ることができる。
具体的には、CCDカメラ5Aによって撮像された画像断面図形の頂点の距離と、CCDカメラ5Bによって撮像された画像断面図形の頂点の距離を互いに比較することにより、CCDカメラ5AとCCDカメラ5Bとの相対精度を測定することができる。
【0030】
実施形態5
また、図7(a)に示すように基準治具10に形成した凹凸部10jの断面形状は、台形状となってもよく、図7(b)に示すように凹部が鋸歯状で、凸部が台形状となった断面形状、図7(c)に示すように、凸部が鋸歯状であってもよく、要は、凹凸がスリット光4に沿って連続するように形成されていればよい。
【0031】
実施形態6
図8は、形状測定装置の精度判別装置の他の実施形態を示す装置構成図である。図9は、精度判別装置の表示手段の拡大図を示す。実施形態6は、図4に示す9分割タイプの小領域R1〜R9よりなるカメラ視野1を前後に3枚(視野20,21,22)並べ、基準治具10を自動で位置決めするように構成したもので、画像断面図形を3次元画面として表示するように構成した。
図8に示すように、3次元形状測定を行う形状測定装置の測定精度を確認するための精度判別装置は、測定精度を確認するための基準治具10と、基準治具10に線状光としてのスリット光4を照射する線状光発生手段としてのレーザー光発生器3と、レーザー光発生器3により照射された基準治具10の凹凸部10jを撮像する撮像手段としてのCCDカメラ5と、基準治具10をCCDカメラ5に対して前後,左右,上下(3次元方向)に移動させる治具駆動手段としてのXYZテーブル30と、XYZテーブル30により移動した基準治具10に線状光を照射するようにレーザー光発生器3を移動させる保持手段としてのXYテーブル40によって構成される。基準治具10の上下方向の長さは、各々小領域R1〜R9の上下範囲に収まる長さに設定されている。
【0032】
基準治具10は、矩形体の一端面に、鋸歯状の凹凸が連続するように凹凸部10jが形成される。凹凸部10jは、凹と凸との傾斜面が交互に三角形となるように精密に形成され、その凹凸断面実図形13fは、その各所寸法が既知となっている。鋸歯状の凹凸部10jは、凹と凸が交互に連続する鋸歯状の三角形状に形成され、その一例として、二等辺三角形又は正三角形となるように形成される。また、凹凸部10jの表面は、照射される線状光が乱反射しないように、例えば、“なし地”仕上げなどの表面処理がなされている。
【0033】
XYZテーブル30は、図中のX,Y,Z方向(3次元方向)に移動する3つのスライドステージからなる。3つのスライドステージは、XYZテーブル30のベースとなるXZベース31、XZベース31上をX方向にスライドするX方向ステージ32、X方向ステージ32上をZ方向にスライドするZ方向ステージ33、Z方向ステージ33上にはYベース35が固定され、Yベース35に沿ってY方向にスライドするY方向ステージ34により構成され、このY方向ステージ34に基準治具10が取り付けられる。したがって、基準治具10は、3次元方向に移動して位置決め可能となっている。
上記X方向ステージ32,Y方向ステージ34,Z方向ステージ33は、後述の位置決め手段17によって駆動が制御される。
【0034】
レーザー光発生器3は、基準治具10の照射面(凹凸部10j)に赤外線のスリット光4を照射する赤外線ラインレーザなどからなり、XYテーブル40に取り付けられる。
XYテーブル40は、レーザー光発生器3を図8に示すX方向及びY方向に移動させる移動手段を備え、基準治具10の凹凸部10jをY方向に縦断するようにスリット光4を照射するもので、後述の位置決め手段17により駆動が制御される。なお、本実施形態では、各視野毎の(視野20,21,22)精度判別をするときには、レーザー光発生器3を保持するXYテーブルは、固定された状態で基準治具10に対してスリット光4を照射する。
CCDカメラ5は、撮像した画像をデジタルデータとして記録する白黒CCDエリアカメラからなり、赤外線透過フィルタを備える。つまり、光が照射された基準治具10の凹凸部10jからの反射光を赤外線透過フィルタを通して撮像することにより、凹凸部10jの光が照射された部分だけが撮像され、この撮像された画像データがコンピュータ6からなる処理手段に出力される。
【0035】
コンピュータ6よりなる制御手段には、少なくとも表示手段としてのモニタ7と入力手段6mとしてのキーボードやマウスが接続され、CCDカメラ5によって撮像、出力された画像データを解析してモニタ7に画像断面図形13f′を表示し、入力手段6mから入力された所定の内容を表示し、入力手段10から入力されたコマンドに基づいて測定を実行するソフトウェアを有する。
また、位置決め手段17は、コンピュータ6から出力される信号に基づいてXYZテーブル30を駆動して基準治具10をカメラ視野1の所定の位置に移動させるとともに、XYテーブル40を駆動してレーザー光発生器3から照射されるスリット光4が基準治具10の凹凸部10jに照射されるようにXYテーブル40を駆動する。さらに、位置決め手段17は、焦点制御手段16に信号を出力して、焦点制御手段16が基準治具10の凹凸部10jに対してCCDカメラ5の焦点を合わせるように制御する。
【0036】
上記CCDカメラ5は、このカメラに最も近い位置の近視野20と、この近視野20より遠い位置の中視野21と、この中視野21よりさらに遠い位置の遠視野22に焦点合わせが行われるもので、これ等、近視野20,中視野21,遠視野22は、焦点制御手段16により設定される。なお、これ等各視野20,21,22は、仮想図であり、実際には表示されていない。また、遠視野22の後方に図外の衝立1mが位置されている。
【0037】
これ等3枚の各視野20,21,22に対応して、モニタ7には、3枚の近視野入力画面20aと中視野入力画面21aと遠視野入力画面22aとよりなる目標位置入力画面23と、後述の出力画面24とが並設して表示される。目標位置入力画面23は、前面から深行き方向に近視野入力画面20aと中視野入力画面21aと遠視野入力画面22aとが配列された画面となっているが、近視野入力画面20aは、後述の目標位置入力が完了するとモニタ7より消失し、後続の中視野入力画面21aが前面にせり出し、中視野入力画面21aへの目標位置入力が完了すると、後続の遠視野入力画面22aが前面にせり出すように構成されている。
【0038】
この場合、近視野20,中視野21,遠視野22は、図4で説明したように9分割して小領域R1〜R9に設定されており、近視野20,中視野21,遠視野22に対応して、近視野入力画面20aと中視野入力画面21aと遠視野入力画面22aも同様に9分割された小領域R1′〜R9′として設定されている。
【0039】
上記目標位置入力画面23は、基準治具10を3次元位置に設定可能とするもので、その詳細を説明すると、例えば、近視野入力画面20aの小領域R2′が入力手段6m又はカーソルなどあるいは、タッチパネル方式で選択、指定されると、XYZテーブル30が駆動され、図9に示すように、基準治具10にスリット光4が照射された状態のまま近視野20の小領域R2の中心部に位置合わせされる。このとき、焦点制御手段16によるカメラの焦点位置は、近視野20に合わせられる。
【0040】
このようにして、目標位置入力画面23の近視野入力画面20aを用いて目標位置の入力が全て完了すると、この近視野入力画面20aが消去されて、後続の中視野入力画面21aが前面に入れ替わり、この中視野入力画面21aの各小領域R1′〜R9′のいずれかが選択可能となる。例えば、中視野入力画面21aの小領域R1′が選択されると、XYZテーブル30が駆動されて基準治具10が図9に示すように中視野21の小領域R1の中心部に自動的に位置合わせされる。
【0041】
このようにして、目標位置入力画面23の中視野入力画面21aの必要箇所に目標位置が入力され、この目標位置に対応して、基準治具10が位置合わせされる。
同様に、目標位置入力画面23の遠視野入力画面22aの小領域R1′〜R9′のいずれか、又は、全部が選択されると、XYZテーブル30が駆動されて、基準治具10が遠視野目標位置入力画面22a内の選択された小領域R1′〜R9′のいずれかの目標位置に対応する位置に位置決めされる。
【0042】
上記モニタ7の画面右部には、目標位置入力画面23に並べて、画像断面図形13f′の出力画面24が表示される。この出力画面24は、図10に示すように画面の奥行き方向に配列した3枚重ねの近視野出力画面20bと中視野出力画面21bと遠視野出力画面22bとよりなる。すなわち画像断面図形13f′が近視野出力画面20b、中視野出力画面21b、遠視野出力画面22bよりなるモニタ表示の3次元画面上に表示されることになる。但し、近視野出力画面20b,中視野出力画面21b,遠視野出力画面22bに3次元表示される画像断面図形13f′を後述(図14に示す)するように2次元平面上に表示することも可能である。
【0043】
近視野出力画面20bは、図10に示すように、近視野入力画面20aに対応して、9分割の小領域R1′〜R9′に分割されて、各小領域R1′〜R9′には、近視野20の小領域R1〜R9のいずれか又は全部に位置設定された凹凸断面実図形13fの撮像画像が、画像断面図形13f′として表示され、図外の記憶手段で記憶され、保持される。
中視野出力画面21bは、図12に示すように、中視野入力画面21aに対応して、9分割の小領域R1′〜R9′に分割されて、各小領域R1′〜R9′には、中視野21の小領域R1〜R9のいずれか又は全部に位置設定された凹凸断面実図形13fの撮像画像が、画像断面図形13f′として表示され、図外の記憶手段で記憶され、保持される。
遠視野出力画面22bは、図13に示すように、遠視野入力画面22aに対応して、9分割の小領域R1′〜R9′に分割されて、各小領域R1′〜R9′には、遠視野22の小領域R1〜R9のいずれか又は全部に位置設定された凹凸断面実図形13fの撮像画像が、画像断面図形13f′として表示され、図外の記憶手段で記憶され、保持される。
この場合も、画像断面図形13f′には、基準治具10の撮像位置及び方向などに応じて大きさが変化しないように変換テーブル6fによる変換が加えられるので、画像断面図形13f′は常に一定の大きさに表示される。
なお、各視野内の精度判別を行うときには、レーザー光発生器3と基準治具10とCCDカメラ5との関係が変わらないように、レーザー光発生器3とCCDカメラ5は動かさず、基準治具10のスリット光4が照射される位置が変わらないように、基準治具10はスリット光4の照射方向、又はスリット光4の幅方向にのみ移動させて視野内を移動する。
【0044】
以上の構成において、以下に動作を説明する。
まず、オペレータが目標位置入力画面23の近視野入力画面20aの例えば小領域R1′を入力手段6m等より指定すると、位置決め手段17によりXYZテーブル30を駆動して基準治具10は、この目標位置としての小領域R1′に対応する近視野20の小領域R1に、レーザー光発生器3からのスリット光4が、基準治具10の中央位置が照射された状態で位置決めされる。
【0045】
また、CCDカメラ5の焦点は、焦点制御手段16により近視野20にピント合わせがなされる。CCDカメラ5による凹凸断面実図形13fの撮像が行われて画像断面図形13f′が得られ、このときの画像断面図形13f′は、図10に示すように、近視野出力画面20bの小領域R1′に表示される。同様な方法で、必要とする近視野入力画面20aの他の小領域が指定されると、基準治具10が目標位置に位置決めされ、CCDカメラ5による基準治具10の撮像が行われて、画像断面図形13f′が近視野出力画面20bの他の小領域に表示される。
【0046】
近視野出力画面20bの必要箇所への画像断面図形13f′の取り込みが完了すると、オペレータは、画像断面図形13f′のチェックを行う。このチェックは、図11に示すように、例えば、近視野出力画面20b内の小領域R1′の画像断面図形13f′を寸法A,B,Cとともにモニタ7中に拡大表示させ、表D中にデータ表示するなどの操作により、この画像断面図形13f′の内容と、基準治具10の凹凸断面実図形13fの実寸法との比較を行い、誤差出しが行われる。このチェックで、近視野出力画面20bに対応する小領域R1′、すなわち、近視野20の小領域R1に対するCCDカメラ5の精度誤差を評価できる。
【0047】
近視野20に対するCCDカメラ5の精度誤差の判定が終了すると、中視野入力画面21a,中視野出力画面21bをモニタ7の画面前面に読み出して、中視野入力画面21aの必要箇所に目標位置を入力して、中視野21の必要箇所に凹凸断面実図形13fを位置決めし、ついで、CCDカメラ5で撮像して、図12に示すように、中視野出力画面21bの必要箇所に画像断面図形13f′を表示して、画像断面図形13f′のチェックを行う。
【0048】
また、中視野21に対するCCDカメラ5の精度誤差の判定が終了すると、遠視野入力画面22a,遠視野出力画面22bをモニタ7の画面前面に読み出して、遠視野入力画面22aの必要箇所に目標位置を入力して、遠視野22の必要箇所に凹凸断面実図形を位置決めし、ついで、CCDカメラ5で撮像して、図13に示すように、遠視野出力画面22bの必要箇所に画像断面図形13f′を表示して、画像断面図形13f′のチェックを行う。
なお、近視野入力画面20a,中視野入力画面21a,遠視野入力画面22aに対応して基準治具10は所定の位置に位置決めされるが、CCDカメラ5に対する位置及び方向などが変化するので、画像断面図形13f′を表示するときに、変換テーブル6fによる変換,補正が行われて、同一の大きさに表示され、凹凸断面実図形13fと容易に比較できる。
【0049】
以上、説明したように、本実施形態によれば、カメラ視野1を小領域に区分して、それぞれの小領域に凹凸断面実図形を位置決め可能としたので、必要なカメラ視野1の全域に渡ってカメラの精度誤差を判定できるので高範囲の精度判定が可能となる。
しかも、カメラ視野1を近,中,遠と設定するようにしたので、カメラの各焦点位置に対応して精度判定が可能となる。この場合、カメラ視野1が近,中,遠あるいは左右,上下方向の位置に基準治具10が設定されても変換テーブル6fにより画像断面図形13f′の大きさは、凹凸断面実図形13fの大きさに合うように変換されるので、両者間の対比を正確に行うことができる。
【0050】
実施形態7
上記実施形態6で図8を用いて示した装置構成において、図14に示すように、レーザー光発生器3に対して基準治具10が対向状態に設定されている場合に、レーザー光発生器3を移動させる保持手段としてのXYテーブル40を固定して、基準治具10のみをY方向又はZ方向に移動させて形状測定装置の測定精度を確認する形態を示す。この場合、精度判別装置を次のように動作することで測定精度を確認できる。
まず、固定されたカメラ視野1を9分割にした9分割タイプの中間位置の小領域R1〜R9において、中心位置の小領域R5を基準位置として基準治具10を仮に位置決めし、この位置で基準治具10の凹凸部10jに対して、スリット光4を真正面から照射し、かつ、カメラ視野1のY方向全体をカバーするようにレーザー光発生器3を固定状態として、基準治具10をカメラ視野1内の図中のY方向及びZ方向に移動させる。なお、図14中の小領域R1〜R9は、中間位置の領域であり、小領域R10〜R12は、基準治具10をレーザー光発生器3の対面方向に近づけたときに、カメラ視野1の小領域R7〜R9と対応する近位置の領域である。また、小領域R13〜R15は、基準治具10をレーザー光発生器3の対面方向に遠ざけたときのカメラ視野1の小領域R1〜R3と対応する遠位置の領域である。
この場合、基準治具10のいずれの位置でもスリット光4が照射されるようにスリット光4は上下方向に長く設定されている。また、CCDカメラ5は、全位置の基準治具10をカバーするように広角撮像に設定される。
【0051】
具体的には、図14に示すように、カメラ視野1の小領域R5の位置から基準治具10をCCDカメラ5から距離が遠ざかるように小領域R14に基準治具10を移動させて凹凸断面実図形13fを撮像することで、カメラ画像視野1′の小領域R2′の位置に変換テーブル6fを介して実寸法に変換された画像断面図形13f′が出力される。この位置から、基準治具10を小領域R13に位置するように上方向に移動させて撮像することで、カメラ画像視野1′の小領域R1′の位置に変換テーブル6fを介して実寸法に変換された画像断面図形13f′が出力される。また、基準治具10を小領域R14から小領域R15に位置するように下方に移動させて撮像することで、カメラ画像視野1′の小領域R3′の位置に変換テーブル6fを介して実寸法に変換された画像断面図形13f′が出力される。
同様に、カメラ視野1の小領域R5の位置から基準治具10をZ方向のレーザー光発生器3の対面方向に距離が近づくように小領域R11に基準治具10を移動させて凹凸断面実図形13fを撮像することで、カメラ画像視野1′の小領域R8′の位置に変換テーブル6fを介して実寸法に変換された画像断面図形13f′が出力される。この位置から、基準治具10を小領域R10に位置するように上方向に移動させて撮像することで、カメラ画像視野1′の小領域R7′の位置に変換テーブル6fを介して実寸法に変換された画像断面図形13f′が出力される。また、基準治具10を小領域R11から小領域R12に位置するように下方に移動させて撮像することで、カメラ画像視野1′の小領域R9′の位置に変換テーブル6fを介して実寸法に変換された画像断面図形13f′が出力される。
つまり、2次元画面としてのカメラ画像視野1′の小領域R1′〜R3′と小領域R13〜R15とが対応し、カメラ画像視野1′の小領域R4′〜R6′とカメラ視野1の小領域R4〜R6とが対応し、カメラ画像視野1′の小領域R7′〜R9′と小領域R10〜R12とが対応している。
すなわち、画像断面図形13f′は、3次元方向の基準治具10の各位置に対して、2次元平面上にモニタ表示されるように構成される。
【0052】
このような構成によれば、レーザー光発生器3及びCCDカメラ5を特定位置に固定状態としたまま、カメラ視野1内の複数の小領域に基準治具10をスリット光4の照射範囲内の上下方向(Y方向)及び、基準治具10とレーザー光発生器3との対面方向の距離を近づけたり、遠ざけたりして移動させることで、基準治具10の凹凸部10jに照射されるスリット光4の位置が変わることなくカメラ視野1の全域に渡ってカメラの精度誤差を判定できるので、一つのCCDカメラ5の焦点に対するカメラ視野1内の精度判定をより高精度に行うことが可能となる。

なお、本例でも、画像断面図形13′の大きさに対し、基準治具10の撮像される位置に応じて変換テーブル6fによる変換が加えられるので、基準治具10の撮像される位置に応じて大きさが変わることがないので、正確に凹凸断面実図形13と対比できる。
【0053】
上記実施形態1から実施形態7によれば、例えば、モールド測定装置用のデュアルヘッドカメラの精度確認や初釜検査装置用のデュアルヘッドカメラの精度確認などをすることができる。
なお、以上の説明において、撮像手段をCCDカメラとして説明したが他のカメラであってもよく、撮像した画像がコンピュータなどによりデジタル的に処理できるような画像データを出力するカメラであればよい。また、線状光発生手段をレーザー光発生器として説明したが、被測定体に対して同じ幅のスリット光が照射できるものであってもよい。また、視野内の精度判別において、スリット光を基準治具の所定位置に固定したまま基準治具を移動させるとして説明したが、精度を必要としない場合には、基準治具とともに移動させてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 カメラ視野(仮想)、1′ カメラ画像視野、1a 上位置、1b 中央位置、
1c 下位置、1m 衝立、1p,1q,1r 小領域、1t 境界、2 被測定体、
3 レーザー光発生器、4 スリット光、5 CCDカメラ、6 コンピュータ、
6m 入力手段、7 モニタ、8,9 断面実図形、8′,9′ 画像断面図形、
9a 基準治具、10 基準治具、10j 凹凸部、
10f,10g 傾斜面、10f′,10g′ 傾斜面、11 前面、
13 凹凸断面実図形、13′ 画像断面図形、14 拡大表示部、15 カーソル、
16 焦点制御手段、17 位置決め手段、18 凹凸断面実図形表示部、
20 近視野、21 中視野、22 遠視野、
20a 近視野入力画面、21a 中視野入力画面、22a 遠視野入力画面、
20b 近視野出力画面、21b 中視野出力画面、22b 遠視野出力画面、
23 目標位置入力画面、24 出力画面、30 XYZテーブル、
40 XYテーブル、F 基部、R1〜R9 小領域、R1′〜R9′ 小領域、
a 縦寸法、b 奥行き寸法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の広さの視野内に位置される被測定体に線状光発生手段からの線状光を照射して、この線状光の反射光を撮像手段で受光して、上記被測定体を撮像し、この撮像画像を断面形状として表示手段でモニタ表示可能とした形状測定装置の精度判別方法において、
上記視野内の所定位置に位置されて、上記線状光が照射される基準治具を備え、上記基準治具の線状光が照射される照射面を線状光の延長方向に沿う連続した凹凸部として形成し、この凹凸部を上記撮像手段で撮像し、上記表示手段でモニタ表示して、この表示された画像断面図形と実際の凹凸図形を対比することで形状測定装置の精度誤差を判別可能としたことを特徴とする形状測定装置の精度判別方法。
【請求項2】
一定の広さの視野内に位置される被測定体に線状光発生手段からの線状光を照射して、この線状光の反射光を撮像手段で受光して、上記被測定体を撮像し、この撮像画像を断面形状として表示手段でモニタ表示可能とした形状測定装置の精度判別装置において、
上記視野内の所定位置に位置されて、上記線状光が照射される基準治具を備え、上記基準治具の線状光が照射される照射面を線状光の延長方向に沿う連続した凹凸部として形成し、この凹凸部を上記撮像手段で撮像し、上記表示手段でモニタ表示するように構成して、この表示された画像断面図形と実際の凹凸図形を対比することで形状測定装置の精度誤差を判別可能としたことを特徴とする形状測定装置の精度判別装置。
【請求項3】
上記基準治具を保持して上記視野内の目標位置まで駆動する治具駆動手段と、
上記基準治具の照射面に線状光を照射する上記線状光発生手段を保持する保持手段とを備え、上記視野内の複数の目標位置における基準治具を位置決めして、複数の目標位置での基準治具の画像断面図形をモニタ表示可能としたことを特徴とする請求項2に記載の形状測定装置の精度判別装置。
【請求項4】
上記一定の広さの視野を一定数に区画し、区画された視野の小領域ごとに、上記基準治具を治具駆動手段で位置決めするようにしたことを特徴とする請求項3に記載の形状測定装置の精度判別装置。
【請求項5】
上記画像断面図形をモニタ表示の2次元平面上に表示可能とし、又は上記画像断面図形をモニタ表示の3次元画面上に表示可能としたことを特徴とする請求項2乃至請求項4いずれかに記載の形状測定装置の精度判別装置。
【請求項6】
上記基準治具の凹凸部は、鋸歯状に設定されてなることを特徴とする請求項2乃至請求項5いずれかに記載の形状測定装置の精度判別装置。
【請求項7】
上記表示手段に上記視野毎に区画された小領域を表示する入力画面を表示するようにし、目標位置をこの小領域の指定により入力可能としたことを特徴とする請求項2乃至請求項6いずれかに記載の形状測定装置の精度判別装置。
【請求項8】
上記保持手段は、上記視野内の複数の目標位置に位置決めされた上記基準治具の照射面に線状光が照射されるように上記線状光発生手段を保持して駆動することを特徴とする請求項3乃至請求項7いずれかに記載の形状測定装置の精度判別装置。
【請求項9】
一定の広さの視野内に位置される被測定体に線状光発生手段からの線状光を照射して、この線状光の反射光を撮像手段で受光して、上記被測定体を撮像し、この撮像画像を断面形状として表示手段でモニタ表示可能とした形状測定装置の精度判別基準治具は、
上記形状測定装置の精度判別に用いられる基準治具であって、当該基準治具は、上記視野内の所定位置に位置されて、上記線状光が照射されるものであり、かつ、上記基準治具の線状光が照射される照射面を線状光の延長方向に沿う連続した凹凸部として形成し、
この凹凸部を上記撮像手段で撮像し、表示手段でモニタ表示して、この表示された画像断面図形と実際の凹凸図形に対する精度誤差を判別可能としたことを特徴とした形状測定装置の精度判別基準治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−276554(P2010−276554A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131505(P2009−131505)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】