説明

形状計測装置、及び形状計測装置の調整方法

【課題】正確に調整可能な形状計測装置を提供する。
【解決手段】第1の光を発する第1の発光部11、及び第2の光を発する第2の発光部12と、第1の光及び第2の光を受ける格子3と、平坦な基板が配置されるステージ14と、格子3を透過した第1の光を第1の入射角で基板表面に入射させ、格子3を透過した第2の光を第2の入射角で基板表面に入射させる投影光学系5と、第1の光による基板表面の格子3の第1の変形像、及び第2の光による基板表面の格子3の第2の変形像に基づき、基板表面の高さ方向の位置を算出する高さ算出部と、基板表面の高さ方向の位置が投影光学系5の焦点位置と一致するよう、ステージ14を移動させる移動装置15と、を備える、形状計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状計測技術に関し、特に形状計測装置、及び形状計測装置の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
格子パターン投影法又はモアレ法と、位相シフト法と、を組み合わせた高さ計測方法において、高さ方向の計測分解能を上げるためには、投影する格子のピッチを小さくする、あるいは被測定物体への光の入射角を大きくするなどの方法がとられる。しかし、高さ方向の計測分解能を上げると、位相と、高さと、の関係において、狭い高さの範囲で位相が折り返され、位相が不連続になる、いわゆる「位相とび」が生じる。従来、測定物表面の形状がなめらかで連続であるとの仮定の下、隣接する画素間での位相差が小さくなるように、位相に2πを加算又は減算して位相を接続するいわゆる「位相アンラップ」が行われている。しかし、大きな段差があるなど、測定物の表面がなめらかでない場合、誤った位相接続がなされる場合がある。
【0003】
これに対し、大きいピッチの格子と、小さいピッチの格子と、を測定物表面に投影し、位相が折り返されるまでの高さの範囲を拡げる方法が提案されている。例えば、特開平11−83454号公報(以下、「特許文献1」という。)は、ピッチが可変である液晶格子を用いた高さ計測方法を開示している。また、特開2004−361142号公報(以下、「特許文献2」という。)は、測定物に対してそれぞれ異なる角度を設けて配置された2つの投影光学系を用いて、等高線間隔の異なる2種類のモアレ縞画像を撮像する方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−83454号公報
【特許文献2】特開2004−361142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した高さ計測方法においては、測定物を投影光学系の焦点位置に配置することにより、計測精度が向上する。これに対し、測定物が、投影光学系の焦点位置からずれると、格子の投影像がぼけるため、計測精度が低下する。そこで本発明は、測定物を保持するステージの配置を正確に調整可能な形状計測装置及び形状計測装置の調整方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様によれば、(a)第1の光を発する第1の発光部、及び第2の光を発する第2の発光部と、(b)第1の光及び第2の光を受ける格子と、(c)平坦な基板が配置されるステージと、(d)格子を透過した第1の光を第1の入射角で基板表面に入射させ、格子を透過した第2の光を第2の入射角で基板表面に入射させる投影光学系と、(e)第1の光による基板表面の格子の第1の変形像、及び第2の光による基板表面の格子の第2の変形像に基づき、基板表面の高さ方向の位置を算出する高さ算出部と、(f)基板表面の高さ方向の位置が投影光学系の焦点位置と一致するよう、ステージを移動させる移動装置と、を備える、形状計測装置が提供される。
【0007】
本発明の他の態様によれば、(a)格子に対して、第1の発光部から第1の光を照射し、第2の発光部から第2の光を照射することと、(b)格子を透過した第1の光、及び格子を透過した第2の光を投影光学系に透過させて、第1の光を第1の入射角で平坦な基板表面に入射させ、第2の光を第2の入射角で基板表面に入射させることと、(c)第1の光による基板表面の格子の第1の変形像、及び第2の光による基板表面の格子の第2の変形像に基づき、基板表面の高さ方向の位置を算出することと、(d)基板表面の高さ方向の位置が投影光学系の焦点位置と一致するよう、基板が配置されたステージを移動させることと、を含む、形状計測装置の調整方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、正確に調整可能な形状計測装置及び形状計測装置の調整方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る形状計測装置の模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る格子の上面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る中央演算処理装置のブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る高さと、位相と、の関係を示すグラフである。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る高さと、位相差と、の関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る高さと、第1の補正された位相差と、の関係を示すグラフである。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る高さと、第2の補正された位相差と、の関係を示す第1のグラフである。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る第2の補正された位相差と、第1の光による位相と、の関係を示す第2のグラフである。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る第2の補正された位相差と、第1の光による位相と、の差を示すグラフである。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る高さと、位相接続された第1の光による位相と、の関係を示すグラフである。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る位相接続された第1の光による位相に含まれる計測誤差を示すグラフである。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る第1の補正された位相差に含まれる計測誤差を示すグラフである。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る形状計測方法を示す第1のフローチャートである。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る形状計測方法を示す第2のフローチャートである。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る形状計測装置の調整方法を示す第1のフローチャートである。
【図16】本発明の第1の実施の形態に係る形状計測装置の調整方法を示す第2のフローチャートである。
【図17】本発明の第2の実施の形態に係る形状計測装置の第1の模式図である。
【図18】本発明の第2の実施の形態に係る形状計測装置の第2の模式図である。
【図19】本発明の第3の実施の形態に係る形状計測装置の第1の模式図である。
【図20】本発明の第3の実施の形態に係る形状計測装置の第2の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0011】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る形状計測装置は、図1に示すように、第1の光を発する第1の発光部11、及び第2の光を発する第2の発光部12と、第1の光及び第2の光を受ける格子3と、測定物4が配置されるステージ14と、格子3を透過した第1の光、及び格子3を透過した第2の光の両方が透過する投影光学系5であって、第1の光を第1の入射角θAで測定物4表面に入射させ、第2の光を第2の入射角θBで測定物4表面に入射させる投影光学系5と、第1の光による測定物4表面の格子3の第1の変形像、及び第2の光による測定物4表面の格子3の第2の変形像を撮像するイメージセンサ6と、を備える。
【0012】
第1及び第2の発光部11、12は、例えば格子3と平行な面上に並んで配置される。そのため、第1の発光部11と格子3の間の光路長と、第2の発光部12と格子3の間の光路長と、は等しい。ただし、第1及び第2の発光部11、12は、格子3と平行でなくともよい。また、例えば第1の発光部11と、第2の発光部12と、は、少なくとも一方が後述する投影光学系5の光軸からずれて(Off−Axisで)配置されている。第1及び第2の発光部11、12のそれぞれは、例えば別個の光源であり、蛍光放電管、低圧水銀灯、キセノンランプ、半導体レーザ、及び発光ダイオード(LED)等が使用可能である。第1の発光部11が発する第1の光の波長と、第2の発光部12が発する第2の光の波長は、同じであっても、異なっていてもよい。第1の発光部11が第1の光を発する間、第2の発光部12は消灯される。また、第2の発光部12が第2の光を発する間、第1の発光部11は消灯される。なお、第1の発光部11及び第2の発光部12は、第1の光が第1の入射角θAで測定物4表面に入射し、第2の光が第2の入射角θBで測定物4表面に入射する限りにおいて、照明レンズ21の光軸に関して非対称に配置されていてもよい。
【0013】
第1の発光部11及び第2の発光部12から発せられた第1及び第2の光の進行方向には、照明レンズ21が配置されている。照明レンズ21は、第1の発光部11及び第2の発光部12のそれぞれの任意の1点から放射された光を平行光にする。例えば、第1の発光部11及び第2の発光部12は、照明レンズ21の光軸に関して対称に配置されている。そのため、第1の発光部11及び第2の発光部12から発せられた第1及び第2の光は、それぞれ照明レンズ21の主に外縁に入射して屈折される。よって、照明レンズ21を透過した第1及び第2の光のそれぞれは、照明レンズ21の光軸に対して斜めに進行する。
【0014】
格子3は、照明レンズ21を透過した第1及び第2の光の進行方向に配置されている。例えば、格子3は照明レンズ21の光軸に対して略垂直に配置される。なお「光軸に対して略垂直」とは、例えば光軸に対して90°から110°である。図2に示すように、格子3は、光を通す複数の透光部121a、121b、121c・・・及び光を遮る複数の遮光部122a、122b、122c・・・がピッチPdで周期的に設けられた2次元格子パターンを有する。格子3は、図1に示す照明レンズ21を透過して平面波となった光によって照明される。格子3には、駆動機構221が接続されている。駆動機構221は、照明レンズ21の光軸に対して格子3を略垂直方向に移動させる。
【0015】
格子3を透過した光の進行方向には、集光レンズ22が配置されている。集光レンズ22は、第1の発光部11から発せられ格子3を透過した第1の光と、第2の発光部12から発せられ格子3を透過した第2の光と、のそれぞれを集光する。集光レンズ22の後焦点面には、開口絞り23が配置されている。開口絞り23の位置は、第1及び第2の発光部11、12の位置と共役である。
【0016】
開口絞り23を透過した第1及び第2の光の進行方向には、投影レンズ24が配置されている。集光レンズ22、開口絞り23、及び投影レンズ24は、両側テレセントリックレンズを構成しており、第1の発光部11から発せられ格子3を透過した第1の光と、第2の発光部12から発せられ格子3を透過した第2の光と、のそれぞれを平行光にする。集光レンズ22、開口絞り23、及び投影レンズ24が構成する両側テレセントリックレンズの横倍率をMとすると、格子3の投影像のピッチPeは、格子3のピッチPdのM倍である。例えば以上説明した照明レンズ21、集光レンズ22、開口絞り23、及び投影レンズ24が、投影光学系5を構成している。
【0017】
ステージ14は、投影レンズ24を透過した第1及び第2の光の進行方向に配置されており、例えば格子3が配置される物体面に対して結像する位置に配置される。また、ステージ14は、投影レンズ24の光軸に対して斜めに配置されている。ステージ14には移動装置15が接続されている。移動装置15は、ステージ14を任意の方向に移動させる。照明レンズ21、集光レンズ22、開口絞り23、及び投影レンズ24はケーラー照明を用いた投影光学系を構成するため、ステージ14上の測定物4の表面は第1の光又は第2の光でムラ無く照射される。
【0018】
第1の発光部11から発せられた第1の光は、ステージ14上の測定物4の表面に第1の入射角θAで入射し、測定物4の表面で反射されて、第1の出射角−θAで出射する。集光レンズ22、開口絞り23、及び投影レンズ24が両側テレセントリックレンズを構成しているため、第1の入射角θA及び第1の出射角−θAは、測定物4の表面の位置によらず、ほぼ一定となる。
【0019】
また、第2の発光部12から発せられた第2の光は、ステージ14上の測定物4の表面に第1の入射角θAよりも小さい第2の入射角θBで入射し、測定物4の表面で反射されて、第2の出射角−θBで出射する。集光レンズ22、開口絞り23、及び投影レンズ24が両側テレセントリックレンズを構成しているため、第2の入射角θB及び第2の出射角−θBは、測定物4の表面の位置によらず、ほぼ一定となる。
【0020】
第1の発光部11が第1の光を発し、第2の発光部12が消灯された場合、測定物4の表面には、第1の入射角θAで入射した第1の光によって格子3の第1の像が投影される。投影された格子3の第1の像は、測定物4の表面の凹凸形状に応じて変形する。また、第2の発光部12が第2の光を発し、第1の発光部11が消灯された場合、測定物4の表面には、第2の入射角θBで入射した第2の光によって格子3の第2の像が投影される。投影された格子3の第2の像は、測定物4の表面の凹凸形状に応じて変形する。
【0021】
ステージ14上の測定物4で反射された第1及び第2の光の進行方向には、集光レンズ25が配置されている。投影レンズ24の光軸と、集光レンズ25の光軸と、は同一平面上に存在し、ステージ14上で交差する。投影レンズ24の光軸と、集光レンズ25の光軸と、は面対称である。集光レンズ25は、第1の発光部11から発せられ測定物4表面で反射された第1の光と、第2の発光部12から発せられ測定物4表面で反射された第2の光と、のそれぞれを集光する。集光レンズ25の後焦点面には、開口絞り26が配置されている。
【0022】
開口絞り26を透過した第1及び第2の光の進行方向には、撮像レンズ27が配置されている。撮像レンズ27は、第1の発光部11から発せられ測定物4表面で反射された第1の光と、第2の発光部12から発せられ測定物4表面で反射された第2の光と、のそれぞれを平行光にする。
【0023】
集光レンズ25、開口絞り26、及び撮像レンズ27は、両側テレセントリックレンズを構成している。イメージセンサ6は、集光レンズ25、開口絞り26、及び撮像レンズ27が構成する両側テレセントリックレンズの結像点に配置されている。イメージセンサ6は、測定物4の表面に形成された格子3の第1の変形像と、第2の変形像と、を撮像し、光電変換する。イメージセンサ6には電荷結合素子(CCD)カメラ等が使用可能である。
【0024】
イメージセンサ6には、図3に示す中央演算処理装置(CPU)300が接続されている。CPU300は、記録部301を備える。図1に示す第2の発光部12が第2の光を放射せず、第1の発光部11が第1の光を放射し、格子3が初期位置である第1の位置に配置されていた場合、図3に示す記録部301は、図1に示すイメージセンサ6で撮像された格子3の第1の変形像を、第1の光による第1の光強度分布I11(x,y)として記録する。
【0025】
また、駆動機構221で格子3を第1の位置から第2の位置までピッチPdの四分の一の距離を移動させて、測定物4表面の格子3の第1の変形像を移動させた場合、図3に示す記録部301は、図1に示すイメージセンサ6で撮像された格子3の第1の変形像を、第1の光による第2の光強度分布I12(x,y)として記録する。
【0026】
さらに格子3を第2の位置から第3の位置までピッチPdの四分の一の距離を移動させて、測定物4表面の格子3の第1の変形像を移動させた場合、図3に示す記録部301は、図1に示すイメージセンサ6で撮像された格子3の第1の変形像を、第1の光による第3の光強度分布I13(x,y)として記録する。
【0027】
またさらに格子3を第3の位置から第4の位置までピッチPdの四分の一の距離を移動させて、測定物4表面の格子3の第1の変形像を移動させた場合、図3に示す記録部301は、図1に示すイメージセンサ6で撮像された格子3の第1の変形像を、第1の光による第4の光強度分布I14(x,y)として記録する。
【0028】
第1の光による第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)のそれぞれは、x方向及びy方向に配置された複数の画素から構成される。複数の画素のそれぞれは、光強度のデータを有する。第1の光による第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)は、下記(1)〜(4)式で与えられる。
11(x,y)=A1×cos(2πx/Pe+φ1(x,y))+B1 ・・・(1)
12(x,y)=A1×cos(2πx/Pe+φ1(x,y)+π/2)+B1・・・(2)
13(x,y)=A1×cos(2πx/Pe+φ1(x,y)+π)+B1 ・・・(3)
14(x,y)
=A1×cos(2πx/Pe+φ1(x,y)+3×π/2)+B1・・・(4)
ここで、A1、B1は各画素における定数であり、A1は振幅を、B1はバイアス項を示す。Peは、格子3の第1の変形像のピッチである。A1の値は集光レンズ22、投影レンズ24、及び集光レンズ25等のレンズ特性、並びに第1及び第2の発光部11、12が発する第1及び第2の光の光強度、測定物4の表面の反射率、及びイメージセンサ6の感度によって定まる。B1の値は、レンズ特性、測定物4の表面の反射率、第1及び第2の発光部11、12が発する第1及び第2の光の光強度、及びイメージセンサ6の感度の他に、迷光等の要因によって定まる。φ1(x,y)は第1の光を用いて格子3を測定物4表面に投影した場合の測定物4表面の位相の分布を示す。
【0029】
次に、第1の発光部11が第1の光を放射せず、第2の発光部12が第2の光を放射し、格子3が初期位置である第1の位置に配置されていた場合、図3に示す記録部301は、図1に示すイメージセンサ6で撮像された格子3の第2の変形像を、第2の光による第1の光強度分布I21(x,y)として記録する。
【0030】
また、駆動機構221で格子3を第1の位置から第2の位置までピッチPdの四分の一の距離を移動させて、測定物4の表面の格子3の第2の変形像を移動させた場合、図3に示す記録部301は、図1に示すイメージセンサ6で撮像された格子3の第2の変形像を、第2の光による第2の光強度分布I22(x,y)として記録する。
【0031】
さらに格子3を第2の位置から第3の位置までピッチPdの四分の一の距離を移動させて、測定物4の表面の格子3の第2の変形像を移動させた場合、図3に示す記録部301は、図1に示すイメージセンサ6で撮像された格子3の第2の変形像を、第2の光による第3の光強度分布I23(x,y)として記録する。
【0032】
またさらに格子3を第3の位置から第4の位置までピッチPdの四分の一の距離を移動させて、測定物4の表面の格子3の第2の変形像を移動させた場合、図3に示す記録部301は、図1に示すイメージセンサ6で撮像された格子3の第2の変形像を、第2の光による第4の光強度分布I24(x,y)として記録する。
【0033】
第2の発光部12による第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)のそれぞれも、x方向及びy方向に配置された複数の画素から構成される。第2の光による第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)は、下記(5)〜(8)式で与えられる。
21(x,y)=A2×cos(2πx/Pe+φ2(x,y))+B2 ・・・(5)
22(x,y)=A2×cos(2πx/Pe+φ2(x,y)+π/2)+B2・・・(6)
23(x,y)=A2×cos(2πx/Pe+φ2(x,y)+π)+B2 ・・・(7)
24(x,y)
=A2×cos(2πx/Pe+φ2(x,y)+3×π/2)+B2・・・(8)
ここで、A2、B2は各画素における定数であり、A2は振幅を、B2はバイアス項を示す。Peは、格子3の第2の変形像のピッチであり、格子3の第1の変形像のピッチと同じである。φ2(x,y)は第2の光を用いて格子3を投影した場合の測定物4表面の位相の分布を示す。
【0034】
図3に示すCPU300は、位相算出部302をさらに備える。位相算出部302は、下記(9)式に従って、第1の光による第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)から、第1の光による位相の分布φ1(x,y)を算出する。
φ1(x,y)=arctan{(I14−I12)/(I11−I13)} ・・・(9)
ここで、第1の発光部11から第1の光を照射された測定物4表面の任意の座標において、第1の入射角θAで測定物4表面に入射した第1の光による位相φ1は、図4に示すように、測定物4の高さに対して不連続であり、−πからπで折り返される。位相φ1の1周期に相当する測定物4の高さ範囲Δh1は、下記(11)式で与えられる。
Δh1=Pe/2tanθA ・・・(10)
【0035】
また、図3に示すCPU300の位相算出部302は、下記(11)式に従って、第2の光による第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)から、第2の光による位相の分布φ2(x,y)を算出する。
φ2(x,y)=arctan{(I24−I22)/(I21−I23)} ・・・(11)
ここで、第2の発光部12から第2の光を照射された測定物4表面の任意の座標において、第2の入射角θBで測定物4表面に入射した第2の光による位相φ2は、図4に示すように、測定物4の高さに対して不連続であり、−πからπで折り返される。位相φ2の1周期に相当する測定物4の高さ範囲Δh2は、下記(12)式で与えられる。
Δh2=Pe/2tanθB ・・・(12)
第2の入射角θBは第1の入射角θAよりも小さいため、第2の光による位相φ2で生じる位相とびの回数は、第1の光による位相φ1で生じる位相とびの回数よりも少ない。
【0036】
さらに、図3に示す位相算出部302は、下記(13)式に示すように、第1の光による位相の分布φ1(x,y)と、第2の光による位相の分布φ2(x,y)と、から、位相差の分布φD(x,y)を算出する。図5に示すように、位相差φDも、測定物4の高さに対して不連続である。
φD(x,y)=φ1(x,y)−φ2(x,y) ・・・(13)
【0037】
図3に示すCPU300は、位相接続部303をさらに備える。位相接続部303は、位相差の分布φD(x,y)の−πより小さい位相差φDには、下記(14)式に示すように、2πを加算し、位相差の分布φD(x,y)のπより大きい位相差φDからは、下記(15)式に示すように、2πを減算して、第1の補正された位相差の分布φCD1(x,y)を算出する。
φD(x,y)<−πの場合、φCD1(x,y)=φD(x,y)+2π ・・・(14)
φD(x,y)>πの場合、φCD1(x,y)=φD(x,y)−2π ・・・(15)
図6に示すように、第1の補正された位相差φCD1は、下記(16)式で与えられる広い高さ範囲Δh12に対して連続である。
Δh12=Δh1Δh2/(Δh2−Δh1) ・・・(16)
【0038】
さらに図3に示す位相接続部303は、下記(17)式に示すように、第1の補正された位相差の分布φCD1(x,y)にΔh2を乗じた後、Δh2とΔh1との差で除し、第2の補正された位相差の分布φCD2(x,y)を算出する。
φCD2(x,y)=φCD1(x,y)×Δh2/(Δh2−Δh1) ・・・(17)
図7に示す例では、φCD2(x,y)の位相が、−4πから4πに広がっている。また図7に示すように、測定物4表面の任意の座標において、第2の補正された位相差φCD2は、上記(16)式で与えられる広い高さ範囲Δh12に対して連続である。さらに、図8に示すように、高さに対して第2の補正された位相差φCD2を与える関数の傾きは、高さに対して第1の光による位相φ1を与える関数の傾きに、連続な部分において近似する。換言すれば、高さに対する第2の補正された位相差φCD2の比は、高さに対する第1の光による位相φ1の比に近似する。
【0039】
さらに図3に示す位相接続部303は、図9に示すように、測定物4の表面の座標毎に、第2の補正された位相差φCD2と、第1の光による位相φ1と、の差を算出し、さらに、下記(18)式に示すように、算出された差を2πで除した値に最も近い整数nを算出する。
n≒(φCD2−φ1)/2π ・・・(18)
なお、上記(18)式の右辺が整数になる場合もあるが、計測誤差により整数でない実数となる場合がある。そのため、右辺が与える実数に最も近い整数nを求める。具体的には、右辺が与える実数を四捨五入して整数nを求めればよい。
【0040】
上記(18)式で算出される整数nが、2π毎の位相とびの位相次数となる。図3に示す位相接続部303は、下記(19)式に示すように、測定物4表面の総ての座標にわたって、位相次数nを用いて第1の光による位相φ1を位相接続する。
φ1C=φ1+2nπ ・・・(19)
位相接続された第1の光による位相φ1Cは、高さ計測分解能に関して位相接続される前の第1の光による位相φ1と同じ精度を有し、かつ図10に示すように、上記(16)式で与えられる広い高さ範囲Δh12に対して連続である。
【0041】
図3に示すCPU300に含まれる高さ算出部304は、位相接続された第1の光による位相の分布φ1C(x,y)の単位系を変換し、図1に示す測定物4の高さの分布H(x,y)を算出する。この場合、上記(10)式で与えられる高さ範囲Δh1が位相の範囲2πと等価であるので、図3に示す高さ算出部304は、位相接続された第1の光による位相の分布φ1C(x,y)を下記(20)式に代入し、測定物4の高さの分布H(x,y)を算出する。
H(x,y)=(φ1C(x,y)/2π)×Δh1 … (20)
【0042】
なお、高さ算出部304は、第1の補正された位相差の分布φCD1(x,y)に基づいて測定物4の高さの分布H(x,y)を算出してもよい。ただし、位相接続された第1の光による位相の分布φ1C(x,y)に基づいて測定物4の高さの分布H(x,y)を算出したほうが、測定誤差が低くなる。例えば、シミュレーションにより、第1の光による位相φ1と、第2の光による位相φ2と、のそれぞれに、±0.1rad範囲の計測誤差をランダムに与えた場合、図11に示すように、位相接続された第1の光による位相φ1Cに含まれる計測誤差は、第1の光による位相φ1に含まれる計測誤差と同程度である。しかし、図12に示すように、第1の補正された位相差φCD1に含まれる計測誤差は、位相接続された第1の光による位相φ1Cに含まれる計測誤差と比較して大きくなる。
【0043】
図3に示すCPU300は、図1に示す駆動機構221に指示信号を送り、格子3の配置を設定する制御部305をさらに備える。CPU300には、入力装置340、出力装置341、プログラム記憶装置330、及びデータ記憶装置331が接続されている。入力装置340としては、例えばキーボード、マウスやボイスデバイス等が使用可能である。出力装置341としては、プリンタ、液晶ディスプレイ(LCD)やCRTディスプレイ等が使用可能である。プログラム記憶装置330は、CPU300を制御するオペレーティングシステム等を保存する。データ記憶装置331は、CPU300による演算結果を逐次格納する。データ記憶装置331及びプログラム記憶装置330としては、例えば半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスクや磁気テープなどのプログラムを記録する記録媒体等が使用可能である。
【0044】
次に第1の実施の形態に係る形状計測方法を、図13及び図14のフローチャートを参照して説明する。なお、図3に示すCPU300による演算結果は、データ記憶装置331に逐次格納される。
(a)ステップS100で、図1に示す測定物4をステージ14上に配置する。次に測定物4の観察が好適に行われる場所までステージ14を移動させ、駆動機構221によって格子3のパターンを初期位置に配置する。ステップS101で図3に示す制御部305は、自然数をとる変数mに1を割り当てる。
【0045】
(b)ステップS102で図1に示す第1の発光部11から第1の光を発する。これにより、測定物4の表面に格子3の第1の変形像が形成される。ステップS103で、図3に示す記録部301は、撮像された格子3の第1の変形像を第1の光による第mの光強度分布I1m(x,y)として記録する。記録部301は、第mの光強度分布I1m(x,y)をデータ記憶装置331に保存する。ステップS104で制御部305は、変数mが4以上であるか否かを判断する。変数mが4未満である場合はステップS105に進み、変数mが4以上である場合はステップS201に進む。
【0046】
(c)ステップS105で制御部305は図1に示す駆動機構221に指示信号を送り、ピッチPdの四分の一の距離を移動するよう、格子3を移動させる。ステップS106で図3に示す制御部305は、変数mに1を加算し、ステップS102に戻る。ステップS102乃至ステップS106のループを繰り返すことにより、第1の光による第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)がデータ記憶装置331に保存される。
【0047】
(d)ステップS201で図3に示す制御部305は、自然数をとる変数kに1を割り当てる。また、格子パターンをステップS100と同じ初期位置に移動させる。ステップS202で図1に示す第2の発光部12から第2の光を発する。これにより、測定物4の表面に格子3の第2の変形像が形成される。
【0048】
(e)ステップS203で、図3に示す記録部301は、撮像された格子3の第2の変形像を第2の光による第kの光強度分布I2k(x,y)として記録する。記録部301は、第kの光強度分布I2k(x,y)をデータ記憶装置331に保存する。ステップS204で制御部305は、変数kが4以上であるか否かを判断する。変数kが4未満である場合はステップS205に進み、変数kが4以上である場合は図14のステップS301に進む。
【0049】
(f)ステップS205で制御部305は図1に示す駆動機構221に指示信号を送り、ピッチPdの四分の一の距離を移動するよう、格子3を移動させる。ステップS206で図3に示す制御部305は、変数kに1を加算し、ステップS202に戻る。ステップS202乃至ステップS206のループを繰り返すことにより、第2の光による第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)がデータ記憶装置331に保存される。
【0050】
(g)図14のステップS301で、図3に示す位相算出部302は、データ記憶装置331から第1の光による第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)を読み出す。次に位相算出部302は、上記(9)式に従って、第1の光による第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)から第1の光による位相の分布φ1(x,y)を算出する。
【0051】
(h)ステップS302で位相算出部302は、データ記憶装置331から第2の光による第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)を読み出す。次に位相算出部302は、上記(11)式に従って、第2の光による第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)から第2の光による位相の分布φ2(x,y)を算出する。
【0052】
(i)ステップS303で位相算出部302は、上記(13)式に従って、第1の光による位相の分布φ1(x,y)と、第2の光による位相の分布φ2(x,y)と、の位相差の分布φD(x,y)を算出する。位相算出部302は、算出した位相差の分布φD(x,y)をデータ記憶装置331に保存する。ステップS304で位相接続部303は、データ記憶装置331から位相差の分布φD(x,y)を読み出す。次に、位相接続部303は、位相差の分布φD(x,y)について、−πより小さい位相差φDには2πを加算し、πより大きい位相差φDからは2πを減算して、第1の補正された位相差の分布φCD1(x,y)を算出する。
【0053】
(j)ステップS305で位相接続部303は、上記(17)式に従って、第2の補正された位相差の分布φCD2(x,y)を算出する。高さに対する第2の補正された位相差φCD2の比は、高さに対する第1の光による位相φ1の比に近似する。ステップS306で位相接続部303は、上記(18)式に示すように、第2の補正された位相差φCD2と、第1の光による位相φ1と、の差に基づいて、位相次数nを算出する。
【0054】
(k)ステップS307で位相接続部303は、上記(19)式に示すように、測定物4表面の総ての座標にわたって、位相次数nを用いて第1の光による位相φ1を位相接続する。位相接続部303は、位相接続された第1の光による位相φ1をデータ記憶装置331に保存する。
【0055】
(l)ステップS308で高さ算出部304は、データ記憶装置331から位相接続された第1の光による位相φ1を読み出す。次に高さ算出部304は、上記(20)式を用いて、位相接続された第1の光による位相φ1の単位系を変換し、図1に示す測定物4の高さの分布H(x,y)を算出する。その後、出力装置341は高さの分布H(x,y)を出力し、第1の実施の形態に係る形状計測方法を終了する。
【0056】
以上示した第1の実施の形態に係る形状計測装置及び形状計測方法によれば、一つの投影光学系5のみを用いて、第1の光を第1の入射角θAで測定物4の表面に入射させ、第2の光を第2の入射角θBで測定物4の表面に入射させることが可能となる。そのため、投影光学系を複数設ける必要がなく、コストを低下させることが可能となる。また、一つの格子3のみを用いて、測定物4への入射角が異なる光による二つの変形格子像を測定物4の表面に形成することが可能となるため、高価な液晶格子を用いる必要がなく、コストを低下させることが可能となる。さらに、位相接続により、広い高さ範囲にわたって、測定物4の表面形状を計測することが可能となる。そのため、例えば、表面形状が段を有し滑らかに連続していない表面実装用半導体パッケージのリード端子の平坦度計測や検査を高い精度で行うことが可能となる。
【0057】
測定物4の高さ分布H(x,y)を計測する際には、測定物4は焦点位置にあるのが好ましく、上述したように、図13のステップS100で、測定物4の観察が好適に行われる場所までステージ14を移動させる。そこで、以下、図15及び図16のフローチャートを用いて、測定物4の観察が好適に行われる場所までステージ14を移動させるための第1の実施の形態に係る形状計測装置の調整方法について説明する。
【0058】
(a)ステップS110で、平坦な基板を、キャリブレーション用ワークとして、図1に示すステージ14に配置する。次に、格子3の投影像が目視においてぼけない程度に、移動装置15によって、ステージ14上の平坦な基板を、投影光学系5の概略焦点位置に移動させる。また、駆動機構221によって格子3のパターンを初期位置に配置する。ステップS111で図3に示す制御部305は、自然数をとる変数mに1を割り当てる。
【0059】
(b)ステップS112で図1に示す第1の発光部11から第1の光を発する。これにより、平坦な基板の表面に格子3の第1の変形像が形成される。ステップS113で、図3に示す記録部301は、撮像された格子3の第1の変形像を第1の光による第mの光強度分布I1m(x,y)として記録する。記録部301は、第mの光強度分布I1m(x,y)をデータ記憶装置331に保存する。ステップS114で制御部305は、変数mが4以上であるか否かを判断する。変数mが4未満である場合はステップS115に進み、変数mが4以上である場合はステップS211に進む。
【0060】
(c)ステップS115で制御部305は図1に示す駆動機構221に指示信号を送り、ピッチPdの四分の一の距離を移動するよう、格子3を移動させる。ステップS116で図3に示す制御部305は、変数mに1を加算し、ステップS112に戻る。ステップS112乃至ステップS116のループを繰り返すことにより、第1の光による平坦な基板上の第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)がデータ記憶装置331に保存される。
【0061】
(d)ステップS211で図3に示す制御部305は、自然数をとる変数kに1を割り当てる。また、格子パターンをステップS110と同じ初期位置に移動させる。ステップS212で図1に示す第2の発光部12から第2の光を発する。これにより、平坦な基板の表面に格子3の第2の変形像が形成される。
【0062】
(e)ステップS213で、図3に示す記録部301は、撮像された格子3の第2の変形像を第2の光による第kの光強度分布I2k(x,y)として記録する。記録部301は、第kの光強度分布I2k(x,y)をデータ記憶装置331に保存する。ステップS214で制御部305は、変数kが4以上であるか否かを判断する。変数kが4未満である場合はステップS215に進み、変数kが4以上である場合は図14のステップS311に進む。
【0063】
(f)ステップS215で制御部305は図1に示す駆動機構221に指示信号を送り、ピッチPdの四分の一の距離を移動するよう、格子3を移動させる。ステップS216で図3に示す制御部305は、変数kに1を加算し、ステップS212に戻る。ステップS212乃至ステップS216のループを繰り返すことにより、第2の光による平坦な基板上の第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)がデータ記憶装置331に保存される。
【0064】
(g)図16のステップS311で、図3に示す位相算出部302は、データ記憶装置331から第1の光による平坦な基板上の第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)を読み出す。次に位相算出部302は、上記(9)式に従って、第1の光による第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)から第1の光による平坦な基板上の位相の分布φ1(x,y)を算出する。
【0065】
(h)ステップS312で位相算出部302は、データ記憶装置331から第2の光による平坦な基板上の第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)を読み出す。次に位相算出部302は、上記(11)式に従って、第2の光による第1乃至第4の光強度分布I21(x,y)〜I24(x,y)から第2の光による平坦な基板上の位相の分布φ2(x,y)を算出する。
【0066】
(i)ステップS313で位相算出部302は、上記(13)式に従って、第1の光による位相の分布φ1(x,y)と、第2の光による位相の分布φ2(x,y)と、の位相差の分布φD(x,y)を算出する。ここで、ステージ14上の平坦な基板が、投影光学系5の焦点位置にある場合、第1の光による位相φ1と、第2の光による位相φ2(x,y)と、は等しくなる。位相差φDがゼロの場合、図3に示すCPU300に含まれる判定部306は、ステージ14上の平坦な基板が、投影光学系5の焦点位置にあると判定する。この場合、ステージ14の位置は適正であるため、第1の実施の形態に係る形状計測装置の調整方法を終了する。ステージ14上の平坦な基板が、投影光学系5の焦点位置にない場合は、位相算出部302は、算出した平坦な基板上の位相差の分布φD(x,y)をデータ記憶装置331に保存し、ステップS314に進む。
【0067】
(j)ステップS314で位相接続部303は、データ記憶装置331から平坦な基板上の位相差の分布φD(x,y)を読み出す。次に、位相接続部303は、平坦な基板上の位相差の分布φD(x,y)について、−πより小さい位相差φDには2πを加算し、πより大きい位相差φDからは2πを減算して、平坦な基板上の第1の補正された位相差の分布φCD1(x,y)を算出する。
【0068】
(k)ステップS315で位相接続部303は、上記(17)式に従って、平坦な基板上の第2の補正された位相差の分布φCD2(x,y)を算出する。高さに対する第2の補正された位相差φCD2の比は、高さに対する第1の光による位相φ1の比に近似する。ステップS316で位相接続部303は、上記(18)式に示すように、平坦な基板上の第2の補正された位相差φCD2と、平坦な基板上の第1の光による位相φ1と、の差に基づいて、位相次数nを算出する。
【0069】
(l)ステップS317で位相接続部303は、上記(19)式に示すように、平坦な基板表面の総ての座標にわたって、位相次数nを用いて第1の光による位相φ1を位相接続する。位相接続部303は、位相接続された第1の光による平坦な基板上の位相φ1をデータ記憶装置331に保存する。
【0070】
(m)ステップS318で高さ算出部304は、データ記憶装置331から位相接続された第1の光による平坦な基板上の位相φ1を読み出す。次に高さ算出部304は、上記(20)式を用いて、位相接続された第1の光による位相φ1の単位系を変換し、平坦な基板の高さHを算出する。ステップS319で、移動装置15は、平坦な基板の高さHの位置と、予め取得された投影光学系5の焦点位置と、の差に基づき、当該差がゼロになるよう、ステージ14を移動させ、第1の実施の形態に係る形状計測装置の調整方法を終了する。なお、再びステップS110乃至ステップS313を実施して、ステージ14上の平坦な基板が投影光学系5の焦点位置にあるか確認してもよい。
【0071】
従来においては、格子3の投影像のコントラストの強さのみに基づいて、ステージ14が適正な位置に配置されているか判定している。しかし、コントラストの強さは、投影光学系からの距離に対してなだらかに変化するため、焦点調整の精度は低い。また、コントラストの評価は、光量分布、被測定物の反射ムラ、及び外乱光の影響を受けやすい。さらに、高さに対するコントラストの強さは、偶関数であるため、ステージ14の移動方向が二通り考えられることになる。
【0072】
これに対し、基板表面の位相差は焦点からのずれに対して、線形に変化するため、位相差に基づく焦点調整は精度が高い。また、位相に基づく焦点調整は、光量分布、被測定物の反射ムラ、及び外乱光の影響を受けにくい。さらに、図10に示すように、高さに対する位相の関数は、偶関数ではないため、ステージ14の移動方向が二通り考えられるということも生じない。よって、第1の実施の形態に係る形状計測装置の調整方法によれば、高い精度でステージ14の配置を決定することが可能となる。
【0073】
なお、上述した例では、平坦な基板の高さHの位置と、予め取得された投影光学系5の焦点位置と、の差に基づき、当該差がゼロになるよう、ステージ14を移動させたが、ステップS313で位相差φDをモニタしながらステージ14を移動させ、位相差φDがゼロになった時点でステージ14の移動を止めてもよい。
【0074】
また、図13乃至図16を参照して上記説明した方法においては、第1の光による第1乃至第4の光強度分布を取得した後、第2の光による第1乃至第4の光強度分布を取得する例を示した。これに対し、第1の光による第1の光強度分布を取得した後、格子3を移動させずに、第1の光を消灯して第2の光を点灯し、第2の光による第1の光強度分布を取得してもよい。これにより、第1の光による第1の光強度分布を取得する際の格子3の位置と、第2の光による第1の光強度分布を取得する際の格子3の位置と、が、より正確に一致するようになる。
【0075】
この場合、第1の光による第1の光強度分布と、第2の光による第1の光強度分布と、を取得した後に、格子3をピッチPdの四分の一の距離を移動させ、第1の光を点灯し、第2の光を消灯して、第1の光による第2の光強度分布を取得し、格子3を移動させずに、第1の光を消灯して第2の光を点灯し、第2の光による第2の光強度分布を取得する。さらに、格子3をピッチPdの四分の一の距離を移動させ、第1の光を点灯し、第2の光を消灯して、第1の光による第3の光強度分布を取得し、格子3を移動させずに、第1の光を消灯して第2の光を点灯し、第2の光による第3の光強度分布を取得する。またさらに、格子3をピッチPdの四分の一の距離を移動させ、第1の光を点灯し、第2の光を消灯して、第1の光による第4の光強度分布を取得し、格子3を移動させずに、第1の光を消灯して第2の光を点灯し、第2の光による第4の光強度分布を取得する。
(第2の実施の形態)
図17及び図18に示す第2の実施の形態に係る形状計測装置においては、第1の発光部11と、第2の発光部12と、が同一の光源201に含まれている。また、第2の実施の形態に係る形状計測装置は、光源201の一部を覆う可動マスク211をさらに備える。
【0076】
図17に示すように、可動マスク211が光源201の第2の発光部12を覆うと、光源201の投影光学系5の光軸からずれた位置の第1の発光部11が第1の光を格子3に照射する。また、図18に示すように、可動マスク211が光源201の第1の発光部11を覆うと、光源201の投影光学系5の光軸からずれた位置の第2の発光部12が第2の光を格子3に照射する。第2の実施の形態の形状計測装置のその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様である。
【0077】
第2の実施の形態に係る形状計測装置においても、一つの投影光学系5のみを用いて、第1の光を第1の入射角θAで測定物4の表面に入射させ、第2の光を第2の入射角θBで測定物4の表面に入射させることが可能となる。第2の実施の形態に係る形状計測装置の調整方法は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0078】
(第3の実施の形態)
図19及び図20に示す第3の実施の形態に係る形状計測装置においては、第1の発光部11と、第2の発光部12と、が単一の面光源202に含まれている。また、第3の実施の形態に係る形状計測装置は、第1及び第2の発光部11、12と共役な位置に交換可能に配置される、図19に示す第1の絞り31と、図20に示す第2の絞り32と、をさらに備える。
【0079】
図19に示すように、第1及び第2の発光部11、12と共役な位置に配置された第1の絞り31は、第1の発光部11が発した第1の光を遮光し、投影光学系5の光軸からずれた位置の第2の発光部12が発した第2の光を透過させ、第2の光を第2の入射角θBで測定物4表面に入射させる。
【0080】
また、図20に示すように、第1及び第2の発光部11、12と共役な位置に配置された第2の絞り32は、第2の発光部12が発した第2の光を遮光し、投影光学系5の光軸からずれた位置の第1の発光部11が発した第1の光を透過させ、第1の光を第1の入射角θAで測定物4表面に入射させる。
【0081】
第3の実施の形態の形状計測装置のその他の構成要素は、第1の実施の形態と同様である。 第3の実施の形態に係る形状計測装置においても、一つの投影光学系5のみを用いて、第1の光を第1の入射角θAで測定物4の表面に入射させ、第2の光を第2の入射角θBで測定物4の表面に入射させることが可能となる。第3の実施の形態に係る形状計測装置の調整方法は、第1の実施の形態と同様であるので、説明は省略する。
【0082】
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、実施の形態では、第1乃至第4の光強度分布I11(x,y)〜I14(x,y)を用いて位相の分布φ1(x,y)を算出する例を示したが、理論上、3回以上位相シフトさせて得られた光強度分布を用いれば、位相の算出は可能である。
【0083】
また、実施の形態では、第1の入射角θAが第2の入射角θBよりも大きいと説明したが、第1の入射角θAが第2の入射角θBよりも小さくても、測定物4の高さの分布H(x,y)の算出は可能である。さらに、実施の形態では、格子パターン投影法により、変形格子像から位相を求め、高さを算出する例を示したが、本発明はモアレ法にも適応可能である。例えば、図1に示した光学系と同様の光学系を用い、図3に示したCPU300内部に参照格子像を表す関数を記録し、撮像された変形格子像と、参照格子像と、の積をとることにより、モアレ縞を生成することが可能となる。モアレ縞位相から高さを算出する方法は、実施の形態で説明した変形格子像から算出された位相から高さを算出する方法と同様である。
【0084】
この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。したがって、本発明はこの開示から妥当な特許請求の範囲の発明特定事項によってのみ限定されるものである。
【符号の説明】
【0085】
3 格子
4 測定物
5 投影光学系
6 イメージセンサ
11 第1の発光部
12 第2の発光部
14 ステージ
15 移動装置
21 照明レンズ
22、25 集光レンズ
24 投影レンズ
27 撮像レンズ
121a 透光部
122a 遮光部
201 光源
202 面光源
211 可動マスク
221 駆動機構
301 記録部
302 位相算出部
303 位相接続部
304 高さ算出部
305 制御部
306 判定部
330 プログラム記憶装置
331 データ記憶装置
340 入力装置
341 出力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を発する第1の発光部、及び第2の光を発する第2の発光部と、
前記第1の光及び前記第2の光を受ける格子と、
平坦な基板が配置されるステージと、
前記格子を透過した前記第1の光を第1の入射角で前記基板表面に入射させ、前記格子を透過した前記第2の光を第2の入射角で前記基板表面に入射させる投影光学系と、
前記第1の光による前記基板表面の前記格子の第1の変形像、及び前記第2の光による前記基板表面の前記格子の第2の変形像に基づき、前記基板表面の高さ方向の位置を算出する高さ算出部と、
前記基板表面の高さ方向の位置が前記投影光学系の焦点位置と一致するよう、前記ステージを移動させる移動装置と、
を備える、形状計測装置。
【請求項2】
前記格子の第1の変形像に基づき前記基板表面の第1の光による位相を算出し、前記格子の第2の変形像に基づき前記基板表面の第2の光による位相を算出し、前記第1の光による位相と、前記第2の光による位相と、の差である位相差を算出する位相算出部を更に備える、請求項1に記載の形状計測装置。
【請求項3】
前記位相差がない場合、前記基板表面の高さ方向の位置が前記投影光学系の焦点位置と一致していると判定する判定部を更に備える請求項2に記載の形状計測装置。
【請求項4】
前記位相差を位相接続して、第1の補正された位相差を算出し、前記第1の補正された位相差に、前記第2の光による位相の1周期に相当する第2の高さ範囲を乗じ、さらに前記第2の高さ範囲と、前記第1の光による位相の1周期に相当する第1の高さ範囲と、の差で除し、第2の補正された位相差を算出する位相接続部を更に備える、請求項2又は3に記載の形状計測装置。
【請求項5】
前記位相接続部が、前記第2の補正された位相差と、前記第1の光による位相と、の差に基づいて算出される位相次数を用いて、前記第1の光による位相を位相接続し、
前記高さ算出部が、前記位相接続された第1の光による位相から、前記高さ方向の位置を算出する、
請求項4に記載の形状計測装置。
【請求項6】
前記第1の発光部と、前記第2の発光部と、が別個の光源である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項7】
前記第1の発光部と、前記第2の発光部と、の少なくとも一方が、前記投影光学系の光軸からずれて配置されている、請求項6に記載の形状計測装置。
【請求項8】
前記第1の発光部と、前記第2の発光部と、が同一の光源に含まれ、
前記光源の一部を覆う可動マスクを更に備え、
前記可動マスクが前記第2の発光部を覆う際に、前記第1の発光部が前記第1の光を前記格子に照射し、前記可動マスクが前記第1の発光部を覆う際に、前記第2の発光部が前記第2の光を前記格子に照射する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項9】
前記第1の発光部と、前記第2の発光部と、の少なくとも一方が、前記投影光学系の光軸からずれて配置されている、請求項8に記載の形状計測装置。
【請求項10】
前記第1及び第2の発光部と共役な位置に交換可能に配置される第1及び第2の絞りを更に備え、
前記第1の絞りが配置された際に前記第1の光が遮光され、前記第2の光が前記第2の入射角で前記基板表面に入射し、前記第2の絞りが配置された際に前記第2の光が遮光され、前記第1の光が前記第1の入射角で前記基板表面に入射する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の形状計測装置。
【請求項11】
前記第1及び第2の発光部が単一の面光源に含まれる、請求項10に記載の形状計測装置。
【請求項12】
格子に対して、第1の発光部から第1の光を照射し、第2の発光部から第2の光を照射することと、
前記格子を透過した前記第1の光、及び前記格子を透過した前記第2の光を投影光学系に透過させて、前記第1の光を第1の入射角で平坦な基板表面に入射させ、前記第2の光を第2の入射角で前記基板表面に入射させることと、
前記第1の光による前記基板表面の前記格子の第1の変形像、及び前記第2の光による前記基板表面の前記格子の第2の変形像に基づき、前記基板表面の高さ方向の位置を算出することと、
前記基板表面の高さ方向の位置が前記投影光学系の焦点位置と一致するよう、前記基板が配置されたステージを移動させることと、
を含む、形状計測装置の調整方法。
【請求項13】
前記格子の第1の変形像に基づき前記基板表面の第1の光による位相を算出し、前記格子の第2の変形像に基づき前記基板表面の第2の光による位相を算出することと、
前記第1の光による位相と、前記第2の光による位相と、の差である位相差を算出することと、
を更に含む、請求項12に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項14】
前記位相差がない場合、前記基板表面の高さ方向の位置が前記投影光学系の焦点位置と一致していると判定することを更に含む、請求項13に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項15】
前記位相差を位相接続して、第1の補正された位相差を算出すること、
前記第1の補正された位相差に、前記第2の光による位相の1周期に相当する第2の高さ範囲を乗じ、さらに前記第2の光による高さ範囲と、前記第1の光による位相の1周期に相当する第1の高さ範囲と、の差で除し、第2の補正された位相差を算出することと、
を更に含む、請求項14に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項16】
前記第2の補正された位相差の分布と、前記第1の光による位相の分布と、の差に基づいて算出される位相次数を用いて、前記第1の光による位相を位相接続することを更に含み、
前記位相接続された第1の光による位相から、前記高さ方向の位置が算出される、
請求項15に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項17】
前記第1の補正された位相差に、前記第2の光による位相の1周期に相当する第2の高さ範囲を乗じ、さらに前記第2の高さ範囲と、前記第1の光による位相の1周期に相当する第1の高さ範囲と、の差で除して、前記第2の補正された位相差を算出する、請求項16に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項18】
前記第1の発光部と、前記第2の発光部と、が別個の光源である、請求項12乃至17のいずれか1項に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項19】
前記第1の発光部と、前記第2の発光部と、の少なくとも一方が、前記投影光学系の光軸からずれて配置されている、請求項18に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項20】
前記第1の発光部と、前記第2の発光部と、が同一の光源に含まれ、
前記光源の一部を可動マスクで覆うことを更に含み、
前記可動マスクが前記第2の発光部を覆う際に、前記第1の発光部が前記第1の光を前記格子に照射し、前記可動マスクが前記第1の発光部を覆う際に、前記第2の発光部が前記第2の光を前記格子に照射する、請求項12乃至17のいずれか1項に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項21】
前記第1の発光部と、前記第2の発光部と、の少なくとも一方が、前記投影光学系の光軸からずれて配置されている、請求項20に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項22】
前記第1及び第2の発光部と共役な位置に第1及び第2の絞りを順次配置することを更に含み、
前記第1の絞りが配置された際に前記第1の光が遮光され、前記第2の光が前記第2の入射角で前記基板表面に入射し、前記第2の絞りが配置された際に前記第2の光が遮光され、前記第1の光が前記第1の入射角で前記基板表面に入射する、請求項12乃至17のいずれか1項に記載の形状計測装置の調整方法。
【請求項23】
前記第1及び第2の発光部が単一の面光源に含まれる、請求項22に記載の形状計測装置の調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−83509(P2013−83509A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222799(P2011−222799)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000006666)アズビル株式会社 (1,808)
【Fターム(参考)】