説明

復調器及び通信装置

【課題】受信信号と局部発振信号とに位相差があっても復調できるようにする。
【解決手段】復調器1は、変調器2で送信された受信信号D3をアンテナ11で受信し、この受信した受信信号D3をVCO13に注入して、自走発振周波数を有する局部発振信号D6を発振する。この発振した局部発振信号D6を90度移相器で90度移相する(局部発振信号D7になる)。アンテナ11で受信した受信信号D3の位相と90度移相器で90度移相した局部発振信号D7の位相とを位相比較器15で比較して、局部発振信号D6の位相を調整するための位相調整信号Vctを生成する。この生成した位相調整信号Vctに基づいて、受信信号D3と局部発振信号D6とをVCO13で同期させ、該同期させたものである局部発振信号D8をミキサ17に入力する。注入同期後の局部発振信号D8と受信信号D3とをミキサ17で演算して当該受信信号D3を復調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復調器及びそれを用いた通信装置に関するものである。詳しくは、受信信号を注入して得られる局部発振信号を移相し、該移相した局部発振信号と受信信号とを比較して得られる位相調整信号によって、局部発振信号と受信信号とを同期させて復調するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の発達により、ミリ波帯等の高い周波数帯で高速に伝送された変調信号を復調する復調器が開発されている。このような復調器は、変調器から伝送された変調信号を確実に復調でき、コンパクトで消費電力の低いものが求められている。
【0003】
特許文献1には、ミリ波帯の無線信号波で無線通信を行う無線通信装置が開示されている。この無線通信装置は、変調器及び復調器で構成される。変調器は、局部発振信号の周波数と受信信号との周波数をオフセットして復調器に送信する。復調器は、周波数がオフセットされた局部発振信号及び受信信号を局部発振器で同期して復調する。
【0004】
図7は、従来例に係る復調器3の構成例を示すブロック図である。図7に示すように、復調器3は、アンテナ31、第1の増幅器(以下、増幅器32という)、局部発振器(以下、VCO33という)、ミキサ34、第2の増幅器(以下、増幅器35という)で構成される。
【0005】
アンテナ31は、図示しない変調器によって送信された受信信号D3を受信する。受信信号D3は、無変調又は所定の変調方式により変調された所定の搬送周波数を有するものである。増幅器32は、アンテナ31で受信した受信信号D3を所定の増幅率で増幅して、VCO33及びミキサ34に出力する。VCO33は、増幅器32で出力された受信信号D3が注入されて、自走発振周波数を有する局部発振信号D4を生成する。局部発振信号D4は、受信信号D3に周波数同期するものである。そして、VCO33は、生成した局部発振信号D4をミキサ34に出力する。ミキサ34は、増幅器32で増幅された受信信号D3とVCO33で生成された局部発振信号D4とを演算して、当該受信信号D3を復調したものである出力信号D5を生成する。この出力信号D5は、増幅器35によって所望の増幅率で増幅されて、出力端子OUTから外部装置等に出力される。
【0006】
このように、変調器によって送信された受信信号を復調器3が復調するが、復調器3を構成するVCO33及びミキサ34の出力特性によって受信信号が復調できない場合がある。
【0007】
図8は、縦軸をVCO33に注入される受信信号D3とVCO33が出力する局部発振信号D4との位相差θとし、横軸をVCO33に注入される受信信号D3の入力周波数fとしたとき、VCO33の位相差θと入力周波数fの特性例を示す説明図である。図8に示すように、受信信号D3の注入レベル(振幅)が小さい場合には、VCO33の位相差θと入力周波数fの特性は、直線200のように右肩下がりで傾きが大きくなる。また、受信信号D3の注入レベルが大きい場合には、VCO33の位相差θと入力周波数fの特性は、直線201のように右肩下がりで傾きが小さくなる。
【0008】
直線200,201において、位相差θが0度となる入力周波数fは、VCO33が有する自走発振周波数f0である。つまり、受信信号D3がVCO33の自走発振周波数f0であれば、位相差θは0度となる。一方、受信信号D3が自走発振周波数f0から大きく外れてしまうと、位相差θが大きくなってしまう。
【0009】
図9は、縦軸をミキサ34が発生する出力電圧Vとし、横軸をミキサ34に入力される受信信号D3とVCO33から出力された局部発振信号D4との位相差θとしたとき、ミキサ34の出力電圧Vと位相差θの特性例を示す説明図である。ミキサ34は、例えば、アナログ乗算器で構成される。図9に示すように、ミキサ34の出力電圧Vと位相差θの関係は、位相差θが0度のときに、ミキサ34の出力電圧Vが最大となり最大出力電圧Vmaxを示し、位相差θが90度のときに、ミキサ34の出力電圧Vが「0」となる曲線202のような余弦波となる。
【0010】
つまり、ミキサ34に入力される受信信号D3の周波数がVCO33の自走発振周波数f0である場合には、ミキサ34の出力電圧Vは最大出力電圧Vmaxになり、復調器3は、受信信号D3を復調できる。一方、ミキサ34に入力される受信信号D3の周波数がVCO33の自走発振周波数f0から大きく外れて、局部発振信号D4との位相差θが90度になる場合には、ミキサ34の出力電圧Vは「0」になってしまう。このため、復調器3は、受信信号D3を復調できなくなってしまう。
【0011】
次に、ミキサ34に入力される受信信号D3と局部発振信号D4との位相差θが90度の場合について説明する。図10Aは、アンテナ31で受信する受信信号D3の波形例を示すタイミングチャートである。図10Aに示すように、変調器によって送信された受信信号D3は、例えば、時間t0から時間t1までは、振幅がA1で、周波数が1/{4(t1−t0)}である。受信信号D3は、時間t1から時間t2までは、振幅がA2で、周波数が、1/{4(t2−t1)}である。受信信号D3は、時間t2から時間t3までは、振幅がA1で、周波数が1/{4(t3−t2)}である。受信信号D3は、時間t3から時間t4までは、振幅がA2で、周波数が1/{4(t4−t3)}である。
【0012】
図10Bは、VCO33が出力する局部発振信号D4の波形例を示すタイミングチャートである。図10Bに示すように、VCO33で生成される局部発振信号D4は、図10Aに示した受信信号D3に比べて、(t1−t0)/16だけ遅れている。つまり、受信信号D3と局部発振信号D4とは位相差θが90度となり、ミキサ34の出力電圧Vが「0」となる(図9参照)。
【0013】
図10Cは、ミキサ34が出力する出力信号D5の波形例を示すタイミングチャートである。図10Cに示すように、ミキサ34の出力電圧Vが「0」となるので、出力信号D5は、「0」となり、正しい出力信号が得られない。このように、ミキサ34に入力される受信信号D3と局部発振信号D4との位相差θが90度になってしまうと、復調器3は、受信信号D3を復調することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−295594号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ところで、特許文献1によれば、復調器が有する局部発振器によって周波数同期をとることで受信信号を復調することができる。しかしながら、変調器によって送信された受信信号の周波数と局部発振信号の周波数とはオフセットしているので、オフセット分の周波数を変換する回路構成が必要となり、回路規模が大きくなってしまう。その結果、復調器の消費電力が大きくなってしまう。
【0016】
また、従来例の復調器によれば、特許文献1のものより回路規模は小さくできるが、ミキサに入力される受信信号と局部発振信号との位相差があると、ミキサから出力される電圧が小さくなり、例えば、位相差が90度である場合には、復調することができなくなってしまう。
【0017】
本発明は、このような課題を解決したものであって、回路規模を小さくして消費電力を削減でき、ミキサに入力される受信信号と局部発振信号とに位相差があっても復調可能な検波効率が向上した復調器及びそれを用いた通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上述の課題を解決するために、本発明に係る復調器は、無変調又は所定の変調方式により変調された所定の搬送周波数を有する受信信号を受信する受信部と、受信部によって受信された受信信号を注入して自走発振周波数を有する局部発振信号を発振し、局部発振信号の位相を調整するための位相調整信号に基づいて受信信号と局部発振信号とを同期させる発振部と、発振部によって発振された局部発振信号を所定の量だけ移相する移相部と、受信部によって受信された受信信号の位相と移相部によって移相された局部発振信号の位相とを比較して、位相調整信号を生成する位相比較部と、発振部によって同期された局部発振信号と受信信号とを演算して当該受信信号を復調する復調部とを備えるものである。
【0019】
本発明に係る復調器では、無変調又は所定の変調方式により変調された所定の搬送周波数を有する受信信号を受信部で受信する。この受信した受信信号を発振部に注入して、自走発振周波数を有する局部発振信号を発振する。この発振した局部発振信号を移相部で所定の量だけ移相する。受信部で受信した受信信号の位相と移相部で移相した局部発振信号の位相とを位相比較手段で比較して、局部発振信号の位相を調整するための位相調整信号を生成する。この生成した位相調整信号に基づいて、受信信号と局部発振信号とを発振部で同期させる。この同期した局部発振信号と受信信号とを演算して当該受信信号を復調する。
【0020】
これにより、受信した受信信号と受信信号に発振した局部発振信号とに位相差があっても、位相調整信号によって局部発振信号の位相を調整するので、受信信号の位相と局部発振信号の位相とを同期させることができるようになる。
【0021】
また、本発明に係る通信装置は、無変調又は所定の変調方式により変調された所定の搬送周波数を有する受信信号を生成し、該生成した受信信号を送信する変調器と、変調器によって送信された受信信号を復調する復調器とで構成され、復調器は、変調器によって送信された受信信号を受信する受信部と、受信部によって受信された受信信号を注入して自走発振周波数を有する局部発振信号を発振し、局部発振信号の位相を調整するための位相調整信号に基づいて受信信号と局部発振信号とを同期させる発振部と、発振部によって発振された局部発振信号を所定の量だけ移相する移相部と、受信部によって受信された受信信号の位相と移相部によって移相された局部発振信号の位相とを比較して、位相調整信号を生成する位相比較部と、発振部によって同期された局部発振信号と受信信号とを演算して当該受信信号を復調する復調部と備えるものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る復調器及び通信装置によれば、受信信号の位相と局部発振信号の位相とを同期させることができるので、受信部で受信した受信信号と発振した局部発振信号とに位相差があっても復調できる。この結果、検波効率が向上できる復調器を提供することができる。
【0023】
更に、移相部や位相比較部のような簡単な構成で受信信号の位相と局部発振信号の位相とを同期させることができるので、回路規模をコンパクト化でき、消費電力を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1の実施の形態に係る通信装置100の構成例を示すブロック図である。
【図2】VCO13の構成例を示す回路図である。
【図3】Aは、入力端子INに入力される入力信号D1の波形例を示すタイミングチャートである。Bは、VCO22が出力する局部発振信号D2の波形例を示すタイミングチャートである。Cは、ミキサ23が出力する受信信号D3の波形例を示すタイミングチャートである。
【図4】Aは、アンテナ11で受信された受信信号D3の波形例を示すタイミングチャートである。Bは、VCO13が出力する局部発振信号D6の波形例を示すタイミングチャートである。Cは、90度移相器14が出力する局部発振信号D7の波形例を示すタイミングチャートである。Dは、VCO13が出力する局部発振信号D8の波形例を示すタイミングチャートである。Eは、ミキサ17が出力する出力信号D9の波形例を示すタイミングチャートである。
【図5】第2の実施の形態に係る復調器1Aの構成例を示すブロック図である。
【図6】4相発振器14Aの構成例を示す回路図である。
【図7】従来例に係る復調器3の構成例を示すブロック図である。
【図8】VCO33の位相差と入力周波数の特性例を示す説明図である。
【図9】ミキサ34の出力電圧と位相差の特性例を示す説明図である。
【図10】Aは、アンテナ31で受信する受信信号D3の波形例を示すタイミングチャートである。Bは、VCO33が出力する局部発振信号D4の波形例を示すタイミングチャートである。Cは、ミキサ34が出力する出力信号D5の波形例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序にて行う。
1.第1の実施の形態(復調器1:構成例)
2.第2の実施の形態(復調器1A:構成例)
【0026】
<第1の実施の形態>
[通信装置100の構成例]
図1は、第1の実施の形態に係るダイレクトコンバージョン型の通信装置100の構成例を示すブロック図である。図1に示すように、通信装置100は、変調器2と復調器1とを備えており、伝送する信号の周波数が30GHz〜300GHzのミリ波帯の信号を高速伝送するものである。
【0027】
[変調器2の構成例]
変調器2は、第1の増幅器(以下、増幅器21という)、局部発振器(以下、VCO22という)、ミキサ23、第2の増幅器(以下、増幅器24という)及びアンテナ25で構成される。
【0028】
入力端子INに入力された被変調信号である入力信号D1は、増幅器21によって所望の増幅率で増幅されてミキサ23に入力される。VCO22は、所定の周波数で発振して局部発振信号D2を生成してミキサ23に出力する。ミキサ23は、増幅器21で増幅された入力信号D1とVCO22で生成された局部発振信号D2とを演算して、当該入力信号D1を変調したものである受信信号D3を生成する。この受信信号D3は、増幅器24で所望の増幅率で増幅されて、アンテナ25によって復調器1に送信される。
【0029】
なお、受信信号D3は、上述の変調方式に限定されず、無変調又は所定の変調方式により変調された所定の搬送周波数を有するものであっても構わない。
【0030】
[復調器1の構成例]
復調器1は、受信部の一例であるアンテナ11、発振部の一例である局部発振器(以下、VCO13という)、移相部の一例である90度移相器14、位相比較部の一例である位相比較器15及び復調部の一例であるミキサ17で構成される。更に、復調器1は、第1の増幅器(以下、増幅器12という)、ローパスフィルタ(以下、LPF16という)及び第2の増幅器(以下、増幅器18という)を備える。この復調器1は、シリコン基板等の半導体基板に上述の構成部が形成されるものであるが、これに限定されるものではなく、ディスクリート部品等で形成されていても構わない。
【0031】
アンテナ11は、変調器2によって送信された受信信号D3を受信する。アンテナ11は、例えば、パッチアンテナ等で構成される。このパッチアンテナは、半導体基板上に金属層を形成し、この金属層を所定のパターンでエッチングすることで形成される。
【0032】
アンテナ11には増幅器12が接続される。増幅器12は、アンテナ11で受信された受信信号D3を所定の増幅率で増幅して、VCO13、位相比較器15及びミキサ17に出力する。増幅器12は、例えば、電界効果トランジスタとインダクタと共振回路とを接続することで構成される。増幅器12は、増幅回路の電流値等を変更することで、所望の増幅率を得ることができる。
【0033】
増幅器12にはVCO13、位相比較器15及びミキサ17が接続される。VCO13は、増幅器12によって増幅された受信信号D3を注入して、自走発振周波数を有する局部発振信号D6を発振する。また、VCO13は、局部発振信号D6の位相を調整するための位相調整信号Vctに基づいて受信信号D3と局部発振信号D6とを同期させる。そして、VCO13は、注入同期した局部発振信号D6を局部発振信号D8としてミキサ17に出力する。
【0034】
VCO13には90度移相器14が接続される。90度移相器14は、VCO13によって発振された局部発振信号D6を90度移相する。そして、90度移相器14は、90度移相した局部発振信号D6を局部発振信号D7として位相比較器15に出力する。90度移相器14は、例えば、ポリフェーズフィルタやローパスフィルタとハイパスフィルタとの組み合わせで構成され、半導体基板上に、増幅器12,18、VCO13、ミキサ17と同時に作製することができる。これにより、復調器1は、複雑な回路構成にする必要がなく、回路規模をコンパクト化でき、消費電力を削減できる。
【0035】
90度移相器14には位相比較器15が接続される。位相比較器15は、アンテナ11で受信され増幅器12で増幅された受信信号D3と90度移相器14によって90度移相された局部発振信号D7とを比較する。そして、位相比較器15は、受信信号D3及び局部発振信号D7から位相調整信号Vctを生成してLPF16を介してVCO13に出力する。
【0036】
位相比較器15は、例えば、アナログ乗算器で構成され、90度移相器14と同様に、半導体基板上に、増幅器12,18、VCO13、ミキサ17と同時に作製することができる。これにより、復調器1は、複雑な回路構成にする必要がなく、回路規模をコンパクト化でき、消費電力を削減できる。
【0037】
アナログ乗算器で構成された位相比較器15は、受信信号D3と局部発振信号D7とを乗算して得られる直流電圧である位相調整信号VctをVCO13に出力する。アナログ乗算器で構成された位相比較器15は、図9に示した特性を示す。つまり、図9の縦軸のミキサ34の出力電圧Vが位相比較器15の出力電圧に対応し、横軸のミキサ34に入力される受信信号D3と局部発振信号D4との位相差θが位相比較器15に入力される受信信号D3と局部発振信号D7との位相差に対応する。
【0038】
図9より、位相比較器15が出力する直流電圧は、受信信号D3と局部発振信号D7との位相差によって値が異なる。つまり、位相差が0度の場合、位相調整信号Vctが最大となり、位相差が90度の場合、位相調整信号Vctが「0」となる。
【0039】
例えば、受信信号D3とVCO13によって出力される局部発振信号D6との位相差が90度である場合には、受信信号D3と90度移相器14で90度移相された局部発振信号D7との位相差が0度になる。この場合、位相比較器15は、最大出力電圧Vmaxを有する位相調整信号Vctを出力する。
【0040】
また、例えば、受信信号D3と局部発振信号D6との位相差が−45度である場合には、受信信号D3と局部発振信号D7との位相差が45度になる。この場合、位相比較器15は、最大出力電圧Vmax×√2/2を有する位相調整信号Vctを出力する。
【0041】
一方、受信信号D3とVCO13によって出力される局部発振信号D6との位相差が0度である場合には、受信信号D3と90度移相器14で90度移相された局部発振信号D7との位相差が90度になる。この場合、位相比較器15は、位相調整信号Vctを出力しない。
【0042】
図1に戻って、位相比較器15にはLPF16が接続される。LPF16は、位相比較器15によって出力された位相調整信号Vctを受信して、直流電圧のみを抽出する。LPF16にはVCO13が接続され、当該LPF16によって直流電圧のみを抽出された位相調整信号VctがVCO13に出力される。
【0043】
VCO13にはミキサ17が接続される。ミキサ17は、アンテナ11で受信され増幅器12で増幅された受信信号D3と、位相調整信号Vctに基づいてVCO13によって位相が調整されて受信信号D3に同期した局部発振信号D8とを受信する。そして、ミキサ17は、局部発振信号D8で受信信号D3を復調して出力信号D9を生成する。
【0044】
例えば、ミキサ17は、位相比較器15と同様に、アナログ乗算器で構成される。アナログ乗算器で構成されたミキサ17は、受信信号D3と局部発振信号D8とを乗算して直流電圧を生成することで、受信信号D3を復調して出力信号D9を生成する。
【0045】
ミキサ17は、図9に示した特性を示す。つまり、図9の縦軸のミキサ34の出力電圧Vがミキサ17の出力信号D9のレベルに対応し、横軸のミキサ34に入力される受信信号D3と局部発振信号D4との位相差θがミキサ17に入力される受信信号D3と局部発振信号D8との位相差に対応する。
【0046】
図9より、ミキサ17が出力する出力信号D9のレベルは、受信信号D3と局部発振信号D8との位相差によって値が異なる。つまり、位相差が0度の場合、出力信号D9のレベルが最大となり、位相差が90度の場合、出力信号D9が常に「0」となる。本発明に係る復調器1は、VCO13、90度移相器14及び位相比較器15によってこの位相差が90度にならないように調整されるので、出力信号D9のレベルが常に「0」となり、異常な信号を出力することを防止できる。
【0047】
図1に戻って、ミキサ17には増幅器18が接続される。増幅器18は、ミキサ17で生成された出力信号D9を所定の増幅率で増幅して、出力端子OUTに出力する。増幅器18は、前述した増幅器12と同様に、例えば、電界効果トランジスタ等で形成されたオペアンプと抵抗とを接続して差動増幅回路を設けることで構成される。増幅器18は、差動増幅回路の抵抗値等を変更することで、所望の増幅率を得ることができる。
【0048】
[VCO13の構成例]
次に、VCO13について回路図を用いて説明する。図2は、VCO13の構成例を示す回路図である。図2に示すように、VCO13は、第1のインダクタ(以下、インダクタL1という)、第2のインダクタ(以下、インダクタL2)、第1の可変容量ダイオード(以下、可変容量ダイオードC1という)、第2の可変容量ダイオード(以下、可変容量ダイオードC2という)、第1のトランジスタ(以下、トランジスタQ1という)、第2のトランジスタ(以下、トランジスタQ2という)、第3のトランジスタ(以下、トランジスタQ3という)、第4のトランジスタ(以下、トランジスタQ4という)、第1の電流源(電流源I1という)及び第2の電流源(以下、電流源I2という)で構成される。
【0049】
なお、本実施の形態に係るVCO13のトランジスタQ1〜Q4は、nチャネルのMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)で説明するが、pチャネルのMOSFETでも良いし、バイポーラトランジスタでも良い。
【0050】
インダクタL1,L2は、その一端が電源Vccに接続される。可変容量ダイオードC1,C2は、カソードがLPF16に接続され、アノードがインダクタL1,L2の他端、90度移相器14及びミキサ17に共通に接続される。
【0051】
トランジスタQ1は、ゲートがインダクタL2の他端、可変容量ダイオードC2のアノード、90度移相器14及びミキサ17に共通に接続され、ドレインがインダクタL1の他端及び可変容量ダイオードC1のアノード、90度移相器14及びミキサ17に共通に接続され、ソースが電流源I1の一端に接続される。トランジスタQ2は、ゲートがトランジスタQ1のドレインに接続され、ドレインがトランジスタQ1のゲートに接続され、ソースが電流源I1の一端に接続される。
【0052】
トランジスタQ3は、ゲートが増幅器12に接続され、ドレインがトランジスタQ1のドレイン及びトランジスタQ2のゲートに共通に接続され、ソースが電流源I2の一端に接続される。トランジスタQ4は、ゲートが増幅器12に接続され、ドレインがトランジスタQ1のゲート及びトランジスタQ2のドレインに接続され、ソースが電流源I2の一端に接続される。電流源I1,I2は、その他端がグランドに接続される。
【0053】
このように構成されたVCO13は、トランジスタQ3,Q4のゲートに増幅器12で増幅された受信信号D3が注入されて、自走発振周波数を有する局部発振信号D6を発振する。局部発振信号D6は、可変容量ダイオードC1,C2のアノードから出力される。
【0054】
この自走発振周波数は、インダクタL1,L2のインダクタンス及び可変容量ダイオードC1,C2の容量によって決定される。また、VCO13が発振する自走発振周波数は調整可能であり、可変容量ダイオードC1,C2のカソードに接続されたLPF16を介して位相比較器15から出力された位相調整信号Vctによって調整される。
【0055】
例えば、VCO13は、位相調整信号Vctを受信しないとき、つまり、受信信号D3と局部発振信号D6との位相差が0度のときは、増幅器12によって増幅された受信信号D3で発振して、自走発振周波数を有する局部発振信号D8を可変容量ダイオードC1,C2のアノードからミキサ17に出力する。
【0056】
また、例えば、VCO13は、位相調整信号Vctを受信するとき、つまり、受信信号D3と局部発振信号D6との位相差が0度ではないときは、当該VCO13で発振した局部発振信号D6の周波数を位相比較器15から出力された所定の直流電圧値を有する位相調整信号Vctで調整する。この所定の直流電圧値は、前述で説明した図9に示したように、受信信号D3と局部発振信号D7との位相差によって定まるものである。そして、VCO13は、位相調整信号Vctに基づいて調整した局部発振信号D8を可変容量ダイオードC1,C2のアノードからミキサ17に出力する。
【0057】
[変調器2の入出力波形例]
次に、変調器2の入出力波形例について説明する。図3Aは、入力端子INに入力される入力信号D1の波形例を示すタイミングチャートである。図3Aに示すように、例えば、入力信号D1は、時間t0から時間t1まで、デジタル信号の「0」をとり、時間t1から時間t2まで、デジタル信号の「1」をとる。そして、入力信号D1は、時間t2から時間t3まで、デジタル信号の「0」をとり、時間t3から時間t4まで、デジタル信号の「1」をとる。つまり、入力信号D1は、「0、1、0、1」というデジタル値を有する。
【0058】
図3Bは、VCO22が出力する局部発振信号D2の波形例を示すタイミングチャートである。図3Bに示すように、VCO22が生成する局部発振信号D2は、所定の周波数(自走発振周波数)を有する。この周波数は、時間t0から時間t1までに4回振動するので、例えば、1/{4(t1−t0)}で表される。
【0059】
図3Cは、ミキサ23が出力する受信信号D3の波形例を示すタイミングチャートである。図3Cに示すように、ミキサ23で生成される受信信号D3は、入力信号D1を局部発振信号D2で変調したものである。受信信号D3は、時間t0から時間t1までは、局部発振信号D2と同じ波形、つまり、周波数が1/{4(t1−t0)}である。受信信号D3は、時間t1から時間t2までは、振幅がA2で、周波数が、1/{4(t2−t1)}である。受信信号D3は、時間t2から時間t3までは、振幅がA1で、周波数が1/{4(t3−t2)}である。受信信号D3は、時間t3から時間t4までは、振幅がA2で、周波数が1/{4(t4−t3)}である。このように、変調器2は、図3Aで示した入力信号D1を図3Bで示した局部発振信号D2で変調して図3Cで示した受信信号D3を生成する。
【0060】
[復調器1の入出力波形例]
次に、復調器1の入出力波形例について説明する。図4Aは、アンテナ11で受信された受信信号D3の波形例を示すタイミングチャートである。図4Aに示すように、変調器2によって送信された受信信号D3は、図3Cで示した受信信号D3と同じ波形である。
【0061】
図4Bは、VCO13が出力する局部発振信号D6の波形例を示すタイミングチャートである。図4Bに示すように、例えば、VCO13で発振される局部発振信号D6は、受信信号D3の周波数と同じ周波数である自走発振周波数を有する。局部発振信号D6は、図4Aに示した受信信号D3に比べて、(t1−t0)/16だけ遅れているものとする。つまり、受信信号D3と局部発振信号D6とは位相差θが90度となり、ミキサ17の出力電圧Vが「0」となる(図9参照)。
【0062】
図4Cは、90度移相器14が出力する局部発振信号D7の波形例を示すタイミングチャートである。図4Cに示すように、局部発振信号D7は、90度移相器14がVCO13で発振された局部発振信号D6を90度移相させて、(t1−t0)/16の遅れが調整される。位相比較器15は、この局部発振信号D7と受信信号D3とを乗算して、直流電圧成分を有する位相調整信号Vctを出力する。この位相調整信号Vctの出力電圧は、図9に示した特性を有するので、最大出力電圧Vmaxをとる。
【0063】
図4Dは、VCO13が出力する局部発振信号D8の波形例を示すタイミングチャートである。図4Dに示すように、VCO13は、位相比較器15から出力された位相調整信号Vctに基づいて局部発振信号D6の位相を調整する。例えば、VCO13は、位相調整信号Vctを受信して、局部発振信号D6の位相を90度位相して局部発振信号D8を生成する。局部発振信号D8は、受信信号D3に位相同期するものである。
【0064】
図4Eは、ミキサ17が出力する出力信号D9の波形例を示すタイミングチャートである。図4Eに示すように、出力信号D9は、図4Aで示した受信信号D3と図4Dで示した局部発振信号D8とをミキサ17が乗算することで生成される。出力信号D9は、図3Aに示した入力信号D1と同じ波形である。受信信号D3と発振した局部発振信号D6とがVCO13、90度移相器14及び位相比較器15によって同じ位相(位相差θが0度)に調整されるために、復調器1は、受信信号D3を復調することができる。
【0065】
なお、VCO13に注入される受信信号D3と、VCO13が出力する局部発振信号D6との位相差が0度の場合には、位相比較器15に入力される受信信号D3と、局部発振信号D6が90度移相した局部発振信号D7との位相差が90度となるので、位相比較器15は、位相調整信号Vctを出力しない。つまり、VCO13には位相調整信号Vctが入力されず、当該VCO13は、位相調整を実行していない局部発振信号D8をミキサ17に出力する。これにより、位相差が0度の場合でも、復調器1は、受信信号D3を復調することができる。
【0066】
このように、本実施の形態に係る通信装置100によれば、変調器2及び復調器1を備える。変調器2は、入力信号D1を局部発振信号D2により変調して受信信号D3を生成し、該生成した受信信号D3を送信する。
【0067】
復調器1は、変調器2によって送信された受信信号D3をアンテナ11で受信し、この受信した受信信号D3をVCO13に注入して、自走発振周波数を有する局部発振信号D6を発振する。この発振した局部発振信号D6を90度移相器で90度移相する(局部発振信号D7になる)。アンテナ11で受信した受信信号D3の位相と90度移相器で90度移相した局部発振信号D7の位相とを位相比較器15で比較して、局部発振信号D6の位相を調整するための位相調整信号Vctを生成する。この生成した位相調整信号Vctに基づいて、受信信号D3と局部発振信号D6とをVCO13で同期させ、該同期させたものである局部発振信号D8をミキサ17に入力する。注入同期後の局部発振信号D8と受信信号D3とをミキサ17で演算して当該受信信号D3を復調する。
【0068】
これにより、受信信号D3と局部発振信号D6とに位相差があっても、位相調整信号Vctによって局部発振信号D6の位相を調整するので、受信信号D3の移相と局部発振信号D6との位相とを同期させることができるようになる。
【0069】
この結果、アンテナ11で受信した受信信号D3とVCO13で発振した局部発振信号D6とに位相差があっても復調できる。そして、検波効率が向上できる復調器及び通信装置を提供することができる。
【0070】
更に、90度移相器14や位相比較器15のような簡単な回路構成で受信信号D3の位相と局部発振信号D6の位相とを同期させることができるので、回路規模をコンパクト化でき、消費電力を削減できる。
【0071】
なお、本実施の形態では、局部発振信号を90度位相する90度移相器について説明したが、これに限定されるものではなく、1度乃至180度移相する移相器を用いても良い。
【0072】
<第2の実施の形態>
[復調器1Aの構成例]
本実施の形態では、VCO13及び90度移相器14の代わりに4相発振器を備えた復調器1Aについて説明する。前述の実施の第1の形態と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0073】
図5は、第2の実施の形態に係る復調器1Aの構成例を示すブロック図である。図5に示すように、復調器1Aは、アンテナ11、4相発振器14A、位相比較器15及びミキサ17で構成される。更に、復調器1Aは、増幅器12、LPF16及び増幅器18を備える。この復調器1Aは、前述の復調器1と同様に、シリコン基板等の半導体基板に上述の構成部が形成されるものであるが、これに限定されるものではなく、ディスクリート部品等で形成されていても構わない。
【0074】
増幅器12には4相発振器14A、位相比較器15及びミキサ17が接続される。4相発振器14Aは、前述のVCO13及び90度移相器14の機能を有している。つまり、4相発振器14Aは、増幅器12から出力された受信信号D3を受信して、該受信した受信信号D3に周波数同期して4つの局部発振信号を発振する。この4つの局部発振信号は、基準の位相と、この基準の位相に対して、90度移相したものと、180度移相したものと、270度移送したものとに分類される。4相発振器14Aは、例えば、基準の位相に対して90度及び270度移相した局部発振信号D10を位相比較器15に出力するようになされる。
【0075】
4相発振器14Aには位相比較器15が接続される。位相比較器15は、4相発振器14Aから出力された局部発振信号D10と、増幅器12を介してアンテナ11から出力された受信信号D3を比較する。位相比較器15は、比較した受信信号D3及び局部発振信号D10から位相調整信号Vctを生成してLPF16を介して4相発振器14Aに出力する。
【0076】
4相発振器14Aは、前述のVCO13と同様に、位相比較器15から出力された位相調整信号Vctに基づいて局部発振信号D10の位相を調整する。そして、4相発振器14Aは、位相を調整した局部発振信号D11をミキサ17に出力する。
【0077】
4相発振器14Aにはミキサ17が接続される。ミキサ17は、増幅器12を介してアンテナ11から出力された受信信号D3と、位相調整信号Vctに基づいて4相発振器14Aによって位相が調整された局部発振信号D11とを受信する。そして、ミキサ17は、局部発振信号D11で受信信号D3を復調して出力信号D12を生成する。
【0078】
[4相発振器14Aの構成例]
次に、4相発振器14Aについて回路図を用いて説明する。図6は、4相発振器14Aの構成例を示す回路図である。図6に示すように、4相発振器14Aは、第1のインダクタ(以下、インダクタL11という)、第2のインダクタ(以下、インダクタL12という)、第3のインダクタ(以下、インダクタL13という)、第4のインダクタ(以下、インダクタL14という)、第1の可変容量ダイオード(以下、可変容量ダイオードC11という)、第2の可変容量ダイオード(以下、可変容量ダイオードC12という)、第3の可変容量ダイオード(以下、可変容量ダイオードC13という)、第4の可変容量ダイオード(以下、可変容量ダイオードC14という)、第1のトランジスタ(以下、トランジスタQ11という)、第2のトランジスタ(以下、トランジスタQ12という)、第3のトランジスタ(以下、トランジスタQ13という)、第4のトランジスタ(以下、トランジスタQ14という)、第5のトランジスタ(以下、トランジスタQ15という)、第6のトランジスタ(以下、トランジスタQ16という)、第7のトランジスタ(以下、トランジスタQ17という)、第8のトランジスタ(以下、トランジスタQ18という)、第1の電流源(電流源I1という)及び第2の電流源(以下、電流源I2という)で構成される。
【0079】
なお、本実施の形態に係るVCO13のトランジスタQ11〜Q18は、nチャネルのMOSFETで説明するが、pチャネルのMOSFETでも良いし、バイポーラトランジスタでも良い。
【0080】
インダクタL11,L12,L13,L14は、その一端が電源Vccに接続される。可変容量ダイオードC11,C12は、カソードがLPF16に接続され、アノードがインダクタL11,L12の他端及びミキサ17に共通に接続される。
【0081】
トランジスタQ11は、ゲートが増幅器12に接続され、ドレインがインダクタL11の他端、可変容量ダイオードC11のアノード及びミキサ17に共通に接続され、ソースが電流源I1の一端に接続される。トランジスタQ12は、ゲートがインダクタL12の他端、可変容量ダイオードC12のアノード及びミキサ17に共通に接続され、ドレインがトランジスタQ11のドレインに接続され、ソースが電流源I1の一端に接続される。
【0082】
トランジスタQ13は、ゲートがトランジスタQ11,Q12のドレインに接続され、ドレインがトランジスタQ12のゲートに接続され、ソースが電流源I1の一端に接続される。トランジスタQ14は、ゲートが増幅器12に接続され、ドレインがトランジスタQ12のゲート及びトランジスタQ13のドレインに共通に接続され、ソースが電流源I1の一端に接続される。
【0083】
インダクタL13,L14は、その一端が電源Vccに接続される。可変容量ダイオードC13,C14は、カソードがLPF16に接続され、アノードがインダクタL13,L14の他端及び位相比較器15に接続される。
【0084】
トランジスタQ15は、ゲートがトランジスタQ12のゲート、トランジスタQ13,Q14のドレインに共通に接続され、ドレインが増幅器12、インダクタL13の他端、可変容量ダイオードC13のアノード及び位相比較器15に共通に接続され、ソースが電流源I2の一端に接続される。トランジスタQ16は、ゲートが増幅器12、トランジスタQ14のゲートに共通に接続され、ドレインがトランジスタQ15のドレインに接続され、ソースが電流源I2の一端に接続される。
【0085】
トランジスタQ17は、ゲートがトランジスタQ15,Q16のドレインに接続され、ドレインがトランジスタQ14,Q16のゲートに接続され、ソースが電流源I2の一端に接続される。トランジスタQ18は、ゲートがトランジスタQ11,Q12のドレイン及びトランジスタQ13のゲートに共通に接続され、ドレインがトランジスタQ14,Q16のゲート及びトランジスタQ17のドレインに共通に接続され、ソースが電流源I2の一端に接続される。電流源I1,I2は、その他端がグランドに接続される。
【0086】
このように構成された4相発振器14Aは、トランジスタQ11,Q14,Q16,Q17のゲート及びトランジスタQ12,Q13,Q15,Q18のドレインに増幅器12で増幅された受信信号D3が注入されて、互いに90度の位相があり、自走発振周波数を有する4種類の局部発振信号D10を発振する。局部発振信号D10は、可変容量ダイオードC13,C14のアノードから出力される。
【0087】
この自走発振周波数は、インダクタL11,L12,L13,L14のインダクタンス及び可変容量ダイオードC11,C12,C13,C14の容量によって決定される。また、4相発振器14Aが発振する自走発振周波数は調整可能であり、可変容量ダイオードC11,C12,C13,C14のカソード一端に接続されたLPF16を介して位相比較器15から出力された位相調整信号Vctによって調整される。
【0088】
例えば、4相発振器14Aは、位相調整信号Vctを受信しないとき、つまり、受信信号D3と局部発振信号D11との位相差が0度のときは、増幅器12によって増幅された受信信号D3で発振して、自走発振周波数を有する局部発振信号D11を可変容量ダイオードC11,C12のアノードからミキサ17に出力する。
【0089】
また、例えば、4相発振器14Aは、位相調整信号Vctを受信するとき、つまり、受信信号D3と局部発振信号D11との位相差が0度ではないときは、当該4相発振器14Aで生成した局部発振信号D11の周波数を位相調整信号Vctの出力強度(例えば、図9に示す出力電圧)で調整する。そして、4相発振器14Aは、位相調整信号Vctに基づいて調整した局部発振信号D11を可変容量ダイオードC11,C12のアノードからミキサ17に出力する。
【0090】
このように、本実施の形態に係る復調器1Aによれば、VCO13及び90度移相器14の代わりに4相発振器14Aを備えるので、前述の第1の実施の形態と同様に、アンテナ11で受信した受信信号D3と4相発振器14Aで発振した局部発振信号とに位相差があっても、受信信号D3と4相発振器14Aによって移相された局部発振信号D10とを比較して得られる位相調整信号Vctによって局部発振信号の位相を調整するので、受信信号D3の移相と局部発振信号D10との位相とを同期させることができるようになる。
【0091】
この結果、アンテナ11で受信した受信信号D3と4相発振器14Aで生成した局部発振信号D10とに位相差があっても復調できる。そして、検波効率が向上できる復調器を提供することができる。
【0092】
更に、4相発振器14Aのような簡単な回路構成で受信信号D3の位相と局部発振信号D11の位相とを同期させることができるので、前述の復調器1より回路規模をコンパクト化でき、消費電力を削減できる。
【符号の説明】
【0093】
1,1A,3・・・復調器、2・・・変調器、11,25,31・・・アンテナ(受信部)、12,21,32・・・第1の増幅器、13,22,33・・・局部発振器(発振部)、14・・・90度移相器(移相部)、14A・・・4相発振器(発振部、移相部)、15・・・位相比較器(位相比較部)、16・・・ローパスフィルタ、17,23,34・・・ミキサ(復調部)、18,24,35・・・第2の増幅器、100・・・通信装置、D1・・・入力信号、D2,D4,D6,D7,D8,D10,D11・・・局部発振信号、D3・・・受信信号、D5,D9,D12・・・出力信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無変調又は所定の変調方式により変調された所定の搬送周波数を有する受信信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記受信信号を注入して自走発振周波数を有する局部発振信号を発振し、前記局部発振信号の位相を調整するための位相調整信号に基づいて前記受信信号と前記局部発振信号とを同期させる発振部と、
前記発振部によって発振された前記局部発振信号を所定の量だけ移相する移相部と、
前記受信部によって受信された前記受信信号の位相と前記移相部によって移相された前記局部発振信号の位相とを比較して、前記位相調整信号を生成する位相比較部と、
前記発振部によって同期された前記局部発振信号と前記受信信号とを演算して当該受信信号を復調する復調部とを備える復調器。
【請求項2】
前記移相部は、
前記局部発振信号を1度乃至180度移相する移相器で構成される請求項1に記載の復調器。
【請求項3】
前記発振部及び前記移相部は、
4相発振器で構成される請求項1に記載の復調器。
【請求項4】
前記位相比較部は、
前記受信部によって受信された前記受信信号と前記移相部によって移相された前記局部発振信号とを乗算して前記位相調整信号を生成する請求項1に記載の復調器。
【請求項5】
前記復調部は、
前記受信信号と前記位相調整信号に基づいて移相が調整された前記局部発振信号とを乗算して直流電圧を生成し、前記受信信号を復調する請求項1に記載の復調器。
【請求項6】
無変調又は所定の変調方式により変調された所定の搬送周波数を有する受信信号を生成し、該生成した前記受信信号を送信する変調器と、
前記変調器によって送信された前記受信信号を復調する復調器とで構成され、
前記復調器は、
前記変調器によって送信された前記受信信号を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記受信信号を注入して自走発振周波数を有する局部発振信号を発振し、前記局部発振信号の位相を調整するための位相調整信号に基づいて前記受信信号と前記局部発振信号とを同期させる発振部と、
前記発振部によって発振された前記局部発振信号を所定の量だけ移相する移相部と、
前記受信部によって受信された前記受信信号の位相と前記移相部によって移相された前記局部発振信号の位相とを比較して、前記位相調整信号を生成する位相比較部と、
前記発振部によって同期された前記局部発振信号と前記受信信号とを演算して当該受信信号を復調する復調部と備える通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−24025(P2011−24025A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168033(P2009−168033)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】