説明

感光性材料のパターン形成方法

【課題】密着性を有する細線パターンを、短い露光時間で形成することができる感光性材料のパターン形成方法の提供。
【解決手段】本発明の感光性材料のパターン形成方法は、基体上に形成された感光性材料からなる感光層に対し、該感光層の前記基体と反対側の表面を基準として、該感光層の厚みの1倍〜3倍長さだけ前記基体側に露光光の焦点が位置するようにして露光光を照射することにより、前記基体上にパターンを形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性材料のパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、多機能化に伴って、現在プリント配線板は、より高密度化の方向に進んでいる。例えば、導体回路の細線化、高多層化、ブラインドホ−ル、バリードホール等のインタースティシャルバイアホールを含むスルーホールの小径化、小型チップ部品の表面実装による高密度実装等が挙げられる。
【0003】
プリント配線板用ソルダーレジストとしては、例えば、エポキシ樹脂、エポキシメラミン樹脂等の耐熱性熱硬化性樹脂にアミン、イミダゾール、酸無水物等の熱硬化触媒およびブチルセロソルブ、ブチルカルビトール等の有機溶剤を調合した熱硬化型ソルダーレジスト;アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の重合性モノマーに、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート等の架橋性ポリマー、並びにベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン等の光増感剤を配合してなる紫外線硬化型ソルダーレジスト;上記熱硬化型ソルダーレジストと紫外線硬化型ソルダーレジストに含まれる各成分を組み合わせたデユアルキュア型ソルダーレジスト等が挙げられる。
【0004】
ソルダーレジストの形成方法としては、例えば、前記ソルダーレジストが形成される銅張積層板等の基体上に、感光性材料からなる感光層を形成し、前記感光層に対して露光を行い、該露光後、前記感光層を現像して所定パターンを有するソルダーレジストとする方法が挙げられる。
【0005】
近年、高密度化が進み、配線密度が高くなったことから、微細パターンでの密着性の向上は、非常に重要な課題となっている。
【0006】
なお、従来の露光では、図1に示すように、照射される露光光12の焦点13が感光性材料からなる感光層10の基体11と反対側の表面10aに調節される(例えば、特許文献1)。
【0007】
基体11と感光層10を形成するレジストとの密着が不十分な場合、基体11上にソルダーレジストや、パターン形成用のレジストを形成する際に、パターン露光後の現像時に感光層10を形成するレジストが剥がれてしまうことがある。基体11と感光層10を形成するレジストとの密着性を向上するために、通常、露光光の露光量を上げている。
しかしながら、露光光の露光量を上げると、露光時間が長くなって生産タクトが落ちてしまうという問題や、露光の際に線幅が太ってしまうという問題があり、密着性を有する細線パターンを、短い露光時間で形成することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−148243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、密着性を有する細線パターンを、短い露光時間で形成することができる感光性材料のパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。即ち、
<1> 基体上に形成された感光性材料からなる感光層に対し、該感光層の前記基体と反対側の表面を基準として、該感光層の厚みの1倍〜3倍長さだけ前記基体側に露光光の焦点が位置するようにして露光光を照射することにより、前記基体上にパターンを形成することを特徴とする感光性材料のパターン形成方法である。
<2> 感光性材料は、γ値が3〜20(μ/mJ)である前記<1>に記載の感光性材料のパターン形成方法である。
<3> 感光性材料が、プリント配線板用のソルダーレジストである前記<1>から<2>のいずれかに記載の感光性材料のパターン形成方法である。
<4> 感光性材料が、液晶パネル用のカラーフィルターである前記<1>から<2>のいずれかに記載の感光性材料のパターン形成方法である。
<5> 露光が、350nm〜360nmの波長のレーザーを露光するレーザー露光、400nm〜410nmの波長のレーザーを露光するレーザー露光、及び水銀灯ランプを集光させて行うダイレクト露光のいずれかである前記<1>から<4>のいずれかに記載の感光性材料のパターン形成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、密着性を有する細線パターンを、短い露光時間で形成することができる感光性材料のパターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、従来の感光性材料のパターン形成方法を説明するための図である。
【図2】図2は、本発明の感光性材料のパターン形成方法を説明するための図である(その1)。
【図3】図3は、本発明の感光性材料のパターン形成方法を説明するための図である(その2)。
【図4】図4は、γの定義を説明するためのグラフである。
【図5】図5は、露光後の線幅を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(感光性材料のパターン形成方法)
本発明の感光性材料のパターン形成方法は、少なくとも露光工程、を含み、塗布工程、乾燥工程、転写工程、現像工程、硬化処理工程、さらに、必要に応じて適宜選択した、その他の工程を含む。
【0014】
<露光工程>
前記露光工程は、基体上に形成された感光性材料からなる感光層に対し、露光光を照射する(マスクレス露光する)工程である。
前記露光工程では、図2及び3に示すように、露光光12の焦点13は、感光層10の基体11と反対側の表面10aを基準として、感光層10の厚みtの1倍〜3倍、好ましくは、1.2倍〜2.8倍、より好ましくは、1.5倍〜2.5倍、特に好ましくは、1.8倍〜2.3倍、の長さだけ基体11側に位置する。即ち、露光光12の焦点13は、感光層10と基体11との界面10b、又は、該界面10bよりも基体11側の位置に調節される。
露光光12の焦点13が、基体11と反対側の表面10aを基準として、界面10bよりも感光層10側である(厚みtの1倍未満の長さだけ基体11側に位置する)と、密着が弱くなり、厚みtの3倍を超える長さだけ基体11側に位置すると、線幅が太くなる。
なお、前記露光光の焦点は、露光機に感光層10の厚みtを入力すれば、露光機のコンピューター自動制御によって調節される。
【0015】
−基体−
前記基体は、感光性材料からなる感光層が形成される被処理基体、又は感光性材料からなる感光層が転写される被転写体となるもので、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、表面平滑性の高いものから凸凹のある表面を持つものまで任意に選択できる。板状の基体が好ましく、いわゆる基板が使用される。具体的には、公知のプリント配線板製造用の基板(プリント基板)、ガラス板(ソーダガラス板など)、合成樹脂性のフィルム、紙、金属板などが挙げられる。
【0016】
−感光性材料−
前記感光性材料は、少なくとも、i)感光性基およびアルカリ現像性を付与するための酸基を導入した化合物(バインダー)、ii)重合性化合物、iii)光重合開始剤、を有してなり、iv)熱架橋剤、さらに必要に応じて、v)フィラーなどのその他の成分を含有してなる。
また、前記感光性材料は、γ値が3〜20であることが好ましい。γ値が3〜20である感光性材料としては、例えば、パターン形成用DFR(RY3315、日立化成製)、などが挙げられる。
なお、本願では、縦軸が「最大膜厚を1に規格化した値」であり、横軸が「Log(露光量mJ)」であるグラフにおける立ち上がり部分の直線(図4における直線A)の傾きをγ値と定義する。
【0017】
−−バインダー−−
前記バインダーとしては、感光性基およびアルカリ現像性を付与するための酸基を導入した化合物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂と不飽和(メタ)アクリル酸とを反応させた後、さらに多塩基酸無水物を反応させて得られる重合体;(メタ)アクリル酸エステルと不飽和基を含有し且つ少なくとも1個の酸基を有する化合物とから得られた共重合体の一部の酸基にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた変性共重合体;カルボキシル基含有(メタ)アクリル系共重合樹脂と脂環式エポキシ基含有不飽和化合物との反応により得られる重合体などが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、感光性材料をドライフィルム化して感光層とした際に、タック性が低いことから、(メタ)アクリル酸エステルと不飽和基を含有し且つ少なくとも1個の酸基を有する化合物とから得られた共重合体の一部の酸基にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させた変性共重合体が好ましい。
【0019】
前記バインダーの前記感光性材料固形分中の固形分含有量は、5〜80質量%が好ましく、30〜60質量%がより好ましい。該固形分含有量が5質量%以上であれば、現像性、露光感度が良好となり、80質量%以下であれば、感光層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0020】
−−重合性化合物−−
前記重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、エチレン性不飽和結合を1つ以上有する化合物が好ましい。
【0021】
前記エチレン性不飽和結合としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリルアミド基、スチリル基、ビニルエステルやビニルエーテル等のビニル基、アリルエーテルやアリルエステル等のアリル基、などが挙げられる。
【0022】
前記エチレン性不飽和結合を1つ以上有する化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、(メタ)アクリル基を有するモノマーから選択される少なくとも1種が好適に挙げられる。
【0023】
前記(メタ)アクリル基を有するモノマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能アクリレートや単官能メタクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンやグリセリン、ビスフェノール等の多官能アルコールに、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加反応した後で(メタ)アクリレート化したもの、特公昭48−41708号、特公昭50−6034号、特開昭51−37193号等の各公報に記載されているウレタンアクリレート類;特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号等の各公報に記載されているポリエステルアクリレート類;エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類等の多官能アクリレートやメタクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0024】
前記重合性化合物の前記感光性材料固形分中の固形分含有量は、5〜50質量%が好ましく、10〜40質量%がより好ましい。該固形分含有量が5質量%以上であれば、現像性、露光感度が良好となり、50質量%以下であれば、感光層の粘着性が強くなりすぎることを防止できる。
【0025】
−−光重合開始剤−−
前記光重合開始剤としては、前記重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、紫外線領域から可視の光線に対して感光性を有するものが好ましく、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成する活性剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるような開始剤であってもよい。
また、前記光重合開始剤は、波長約300nm〜800nmの範囲内に少なくとも約50の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが好ましい。前記波長は330nm〜500nmがより好ましい。
【0026】
前記光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの等)、ヘキサアリールビイミダゾール、オキシム誘導体、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、メタロセン類などが挙げられる。これらの中でも、感光層の感度、保存性、及び感光層とプリント配線板形成用基板との密着性等の観点から、トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素、オキシム誘導体、ケトン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール系化合物が好ましい。
【0027】
前記ヘキサアリールビイミダゾールとしては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−フロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(3−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラ(4−メトキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’−ビス(4−メトキシフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(2−トリフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、WO00/52529号公報に記載の化合物などが挙げられる。
【0028】
前記ビイミダゾール類は、例えば、Bull.Chem.Soc.Japan,33,565(1960)、及びJ.Org.Chem,36(16)2262(1971)に開示されている方法により容易に合成することができる。
【0029】
トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物等が挙げられる。
【0030】
前記若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物としては、例えば、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−クロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−トリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジクロルフェニル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−n−ノニル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、及び2−(α,α,β−トリクロルエチル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0031】
前記英国特許1388492号明細書記載の化合物としては、例えば、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メチルスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシスチリル)−4−アミノ−6−トリクロルメチル−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0032】
前記特開昭53−133428号公報記載の化合物としては、例えば、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−〔4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル〕−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,7−ジメトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジン、及び2−(アセナフト−5−イル)−4,6−ビス(トリクロルメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0033】
前記独国特許3337024号明細書記載の化合物としては、例えば、2−(4−スチリルフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−メトキシスチリル)フェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(1−ナフチルビニレンフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−クロロスチリルフェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−チオフェン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−チオフェン−3−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−フラン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、及び2−(4−ベンゾフラン−2−ビニレンフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0034】
前記F.C.Schaefer等によるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物としては、例えば、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−1,3,5−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリ(ブロモメチル)−1,3,5−トリアジン、及び2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロロメチル−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0035】
前記特開昭62−58241号公報記載の化合物としては、例えば、2−(4−フェニルエチニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−ナフチル−1−エチニルフェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−トリルエチニル)フェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−メトキシフェニル)エチニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−イソプロピルフェニルエチニル)フェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−(4−エチルフェニルエチニル)フェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0036】
前記特開平5−281728号公報記載の化合物としては、例えば、2−(4−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,6−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,6−ジブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが挙げられる。
【0037】
前記特開平5−34920号公報記載化合物としては、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−[4−(N,N−ジエトキシカルボニルメチルアミノ)−3−ブロモフェニル]−1,3,5−トリアジン、米国特許第4239850号明細書に記載されているトリハロメチル−s−トリアジン化合物、更に2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0038】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロモメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール等)などが挙げられる。
【0039】
本発明で好適に用いられるオキシム誘導体としては、例えば、下記一般式(1)で表される。
【0040】
【化1】

【0041】
ただし、上記一般式(1)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基のいずれかを表し、Rは、それぞれ独立に置換基を表す。mは、0〜4の整数を表し、2以上の場合は、互いに連結し環を形成してもよい。Aは、4、5、6、及び7員環のいずれかを表す。また、Aは、5及び6員環のいずれかであるのが好ましい。
【0042】
また、本発明で用いられるオキシム誘導体(オキシム化合物)としては、下記一般式(2)で表されるものがより好ましい。
【0043】
【化2】

【0044】
ただし、上記一般式(2)中、Rは、水素原子、置換基を有してもよいアシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、及びアリールスルホニル基のいずれかを表し、Rは、それぞれ独立に置換基を表す。mは、0〜4の整数を表し、2以上の場合は、互いに連結し環を形成してもよい。Xは、CH、O、及びSのいずれかを表す。Aは、5及び6員環のいずれかを表す。
【0045】
前記一般式(1)及び(2)中、Rで表されるアシル基としては、脂肪族、芳香族、及び複素環のいずれでもよく、更に置換基を有してもよい。
脂肪族基としては、アセチル基、プロパノイル基、ブタノイル基、ヘキサノイル基、デカノイル基、フェノキシアセチル基、クロロアセチル基、などが挙げられる。芳香族基としては、ベンゾイル基、ナフトイル基、メトキシベンゾイル基、ニトロベンゾイル基、などが挙げられる。複素環基としては、フラノイル基、チオフェノイル基、などが挙げられる。
置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、及びハロゲン原子のいずれかが好ましい。アシル基としては、総炭素数2〜30のものが好ましく、総炭素数2〜20のものがより好ましく、総炭素数2〜16のものが特に好ましい。このようなアシル基としては、例えば、アセチル基、プロパノイル基、メチルプロパノイル基、ブタノイル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ベンジルカルボニル基、フェノキシアセチル基、2−エチルヘキサノイル基、クロロアセチル基、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、2,5−ジブトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、ピリジルカルボニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、などが挙げられる。
【0046】
アルキルオキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、総炭素数が2〜30のアルコキシカルボニル基が好ましく、総炭素数2〜20のものがより好ましく、総炭素数2〜16のものが特に好ましい。このようなアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニルブトキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基、エトキシエトキシカルボニル基、が挙げられる。
【0047】
アリールオキシカルボニル基としては、置換基を有していてもよく、総炭素数7〜30のアルコキシカルボニル基が好ましく、総炭素数7〜20のものがより好ましく、総炭素数7〜16のものが特に好ましい。この様なアリールオキシカルボニル基としては、例えば、フェノキシカルボニル基、2−ナフトキシカルボニル基、パラメトキシフェノキシカルボニル基、2,5−ジエトキシフェノキシカルボニル基、パラクロロフェノキシカルボニル基、パラニトロフェノキシカルボニル基、パラシアノフェノキシカルボニル基、が挙げられる。
【0048】
アルキルスルホニル基としては、更に、置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、フェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ヘテロ環基、が好ましく挙げられる。アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、オクチルスルホニル基、デシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、ベンジルスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基、が特に好ましく挙げられる。
【0049】
アリールスルホニル基としては、更に、置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、フェニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、シアノ基、カルボン酸基、スルホン酸基、ヘテロ環基、が好ましく挙げられる。アリールスルホニル基としては、ベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニル基、クロロベンゼンスルホニル基、ブトキシベンゼンスルホニル基、2,5−ジブトキシベンゼンスルホニル基、パラニトロベンゼンスルホニル基、パーフルオロベンゼンスルホニル基、が特に好ましく挙げられる。
【0050】
前記一般式(1)及び(2)中、Rで示される置換基としては、脂肪族、芳香族、複素芳香族、ハロゲン原子、−OR、−SR、−NR、が挙げられる。R、及びRは、互いに連結して環を形成してもよい。また、R、及びRは、それぞれ独立に水素原子若しくは脂肪族基、芳香族基、複素芳香族基のいずれかを表す。mが2以上であり、互いに連結して環を形成する場合は、それぞれ独立したRどうしで環を形成してもよく、R及びRの少なくともいずれかを介して環を形成してもよい。
【0051】
前記置換基Rを介して環を形成する場合は下記構造が挙げられる。
【0052】
【化3】

【0053】
前記構造式中、Y及びZは、CH、−O−、−S−、及び−NR−のいずれかを表す。
【0054】
、R、及びRの脂肪族基、芳香族基、及び複素芳香族基の具体例としては、前記Rと同様のものが挙げられる。
【0055】
前記一般式(1)で表されるオキシム化合物の具体例としては、下記構造式(1)〜(51)で表される化合物が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
なお、本発明で用いられるオキシム化合物は、H−NMRスペクトル、UV−vis吸収スペクトルを測定して同定することができる。
【0059】
−−−オキシム化合物の製造方法−−−
前記オキシム化合物の製造方法としては、対応するオキシム化合物とアシル塩化物又は無水物との、塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン)存在下で、THF、DMF、アセトニトリル等の不活性溶媒中か、ピリジンのような塩基性溶媒中で反応させることにより容易に合成できる。前記反応温度としては、−10〜60℃が好ましい。
また、前記アシル塩化物として、クロロ蟻酸エステル、アルキルスルホニルクロライド、アリールスルホニルクロライドを用いることにより、対応する種々のオキシムエステル化合物が合成可能である。
【0060】
前記オキシム化合物製造時の出発材料として用いられるオキシム化合物の合成方法としては、標準的な化学の教科書(例えばJ.March,Advanced Organic Chemistry,4th Edition,Wiley Interscience,1992)、又は専門的なモノグラフ、例えば、S.R. Sandler & W. Karo, Organic functional group preparations,Vol.3,Academic Pressに記載された、様々な方法によって得ることができる。
【0061】
前記オキシム化合物の特に好ましい合成方法としては、例えば、アルデヒド又はケトンと、ヒドロキシルアミン、又はその塩とを、エタノール若しくはエタノール水のような極性溶媒中で反応させる方法が挙げられる。この場合、酢酸ナトリウム又はピリジンのような塩基を加えて、反応混合物のpHを制御する。反応速度がpH依存性であり、塩基は、開始時にか、又は反応の間連続的に加え得ることは周知である。ピリジンのような塩基性溶媒を、塩基及び/又は溶媒若しくは助溶剤として用いることもできる。前記反応温度としては、一般的には、混合物の還流温度、即ち、約60〜120℃が好ましい。
【0062】
前記オキシム化合物の他の異なる好ましい合成方法としては、亜硝酸又は亜硝酸アルキルによる「活性」メチレン基のニトロソ化による方法が挙げられる。例えば、Organic Syntheses coll.Vol.VI(J.Wiley&Sons,New York,1988),pp.199 and 840に記載されたような、アルカリ性条件と、例えば、Organic Synthesis coll.Vol.V,pp.32 and 373,coll.Vol.III,pp.191 and 513,coll.Vol.II,pp.202,204 and 363に記載されたような、酸性条件との双方が、本発明における出発材料として用いられるオキシム化合物の合成に好適である。
前記亜硝酸としては、通常、亜硝酸ナトリウムから生成される。
前記亜硝酸アルキルとしては、例えば、亜硝酸メチル、亜硝酸エチル、亜硝酸イソプロピル、亜硝酸ブチル又は亜硝酸イソアミル、が挙げられる。
【0063】
前記オキシムエステルの基としては、2種類の立体配置(Z)又は(E)で存在するものであってもよい。慣用の方法によって、異性体を分離してもよいし、異性体混合物を光開始用の種として、そのままで用いてもよい。従って、本発明のオキシム化合物は、前記構造式(1)〜(51)の化合物の立体配置上の異性体の混合物であってもよい。
【0064】
オキシム化合物は、保存安定性に優れ、高感度であることにより、重合性組成物に添加することで、保存時は重合を生じることなく保存安定性に優れ、エネルギー線、特に光の照射により活性ラジカルを発生して効率的に重合を開始し、該重合性化合物が短時間で効率的に重合し得る高感度な重合性組成物を得ることができる。
【0065】
また、上記以外の光重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニル)ヘプタン等)、N−フェニルグリシン等、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトン等)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5-19475号、特開平7-271028号、特開2002-363206号、特開2002-363207号、特開2002-363208号、特開2002-363209号公報等に記載のクマリン化合物など)、アミン類(例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸n−ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸フェネチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−フタルイミドエチル、4−ジメチルアミノ安息香酸2−メタクリロイルオキシエチル、ペンタメチレンビス(4−ジメチルアミノベンゾエート)、3−ジメチルアミノ安息香酸のフェネチル、ペンタメチレンエステル、4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、2−クロル−4−ジメチルアミノベンズアルデヒド、4−ジメチルアミノベンジルアルコール、エチル(4−ジメチルアミノベンゾイル)アセテート、4−ピペリジノアセトフェノン、4−ジメチルアミノベンゾイン、N,N−ジメチル−4−トルイジン、N,N−ジエチル−3−フェネチジン、トリベンジルアミン、ジベンジルフェニルアミン、N−メチル−N−フェニルベンジルアミン、4−ブロム−N,N−ジメチルアニリン、トリドデシルアミン、アミノフルオラン類(ODB,ODBII等)、クリスタルバイオレットラクトン、ロイコクリスタルバイオレット等)、アシルホスフィンオキシド類(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキシド、LucirinTPOなど)などが挙げられる。
【0066】
更に、米国特許第2367660号明細書に記載されているビシナルポリケタルドニル化合物、米国特許第2448828号明細書に記載されているアシロインエーテル化合物、米国特許第2722512号明細書に記載されているα−炭化水素で置換された芳香族アシロイン化合物、米国特許第3046127号明細書及び同第2951758号明細書に記載の多核キノン化合物、特開2002−229194号公報に記載の有機ホウ素化合物、ラジカル発生剤、トリアリールスルホニウム塩(例えば、ヘキサフロロアンチモンやヘキサフロロホスフェートとの塩)、ホスホニウム塩化合物(例えば、(フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウム塩等)(カチオン重合開始剤として有効)、WO01/71428号公報記載のオニウム塩化合物などが挙げられる。
【0067】
前記光重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。2種以上の組合せとしては、例えば、米国特許第3549367号明細書に記載のヘキサアリールビイミダゾールと4−アミノケトン類との組合せ、特公昭51−48516号公報に記載のベンゾチアゾール化合物とトリハロメチル−s−トリアジン化合物の組合せ、また、芳香族ケトン化合物(例えば、チオキサントン等)と水素供与体(例えば、ジアルキルアミノ含有化合物、フェノール化合物等)の組合せ、ヘキサアリールビイミダゾールとチタノセンとの組合せ、クマリン類とチタノセンとフェニルグリシン類との組合せなどが挙げられる。
前記光重合開始剤の特に好ましい例としては、後述する露光において、波長が405nmのレーザ光に対応可能である、前記ホスフィンオキサイド類、前記α−アミノアルキルケトン類、前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物と後述する増感剤としてのアミン化合物とを組合せた複合光開始剤、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、あるいは、チタノセンなどが挙げられる。
【0068】
前記光重合開始剤の前記感光性材料における含有量は、0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、0.5〜15質量%が特に好ましい。
【0069】
−−熱架橋剤−−
熱架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記感光層の硬化後の膜強度を改良するために、現像性等に悪影響を与えない範囲で、例えば、エポキシ化合物を含む化合物、(例えば、1分子内に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物)、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物を用いることができ、特開2007−47729号公報に記載されているようなオキシラン基を有するエポキシ化合物、β位にアルキル基を有するエポキシ化合物、オキセタニル基を有するオキセタン化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリイソシアネート及びその誘導体のイソシアネート基にブロック剤を反応させて得られる化合物などが挙げられる。
【0070】
また、前記熱架橋剤として、メラミン誘導体を用いることができる。該メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン(メチロール基を、メチル、エチル、ブチル等でエーテル化した化合物)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性が良好で、感光層の表面硬度あるいは硬化膜の膜強度自体の向上に有効である点で、アルキル化メチロールメラミンが好ましく、ヘキサメチル化メチロールメラミンが特に好ましい。
【0071】
前記熱架橋剤の前記感光性材料固形分中の固形分含有量は、1質量%〜50質量%が好ましく、3質量%〜30質量%がより好ましい。該固形分含有量が1質量%以上であれば、硬化膜の膜強度が向上され、50質量%以下であれば、現像性、露光感度が良好となる。
【0072】
前記エポキシ化合物としては、例えば、1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物などが挙げられる。
【0073】
前記1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ビキシレノール型もしくはビフェノール型エポキシ樹脂(「YX4000ジャパンエポキシレジン社製」等)又はこれらの混合物、イソシアヌレート骨格等を有する複素環式エポキシ樹脂(「TEPIC;日産化学工業(株)製」、「アラルダイトPT810;チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製」等)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾ−ルノボラック型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂(例えば低臭素化エポキシ樹脂、高ハロゲン化エポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラック型エポキシ樹脂など)、アリル基含有ビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリスフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジフェニルジメタノール型エポキシ樹脂、フェノールビフェニレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(「HP−7200,HP−7200H;大日本インキ化学工業(株)製」等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(ジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノール等)、グリジジルエステル型エポキシ樹脂(フタル酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル等)ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンジエポキシド、「GT−300、GT−400、ZEHPE3150;ダイセル化学工業製」等、)、イミド型脂環式エポキシ樹脂、トリヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェニロールエタン型エポキシ樹脂、グリシジルフタレート樹脂、テトラグリシジルキシレノイルエタン樹脂、ナフタレン基含有エポキシ樹脂(ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、4官能ナフタレン型エポキシ樹脂、市販品としては「ESN−190,ESN−360;新日鉄化学(株)製」、「HP−4032,EXA−4750,EXA−4700;大日本インキ化学工業(株)製」等)、フェノール化合物とジビニルベンゼンやジシクロペンタジエン等のジオレフィン化合物との付加反応によって得られるポリフェノール化合物と、エピクロルヒドリンとの反応物、4−ビニルシクロヘキセン−1−オキサイドの開環重合物を過酢酸等でエポキシ化したもの、線状含リン構造を有するエポキシ樹脂、環状含リン構造を有するエポキシ樹脂、α−メチルスチルベン型液晶エポキシ樹脂、ジベンゾイルオキシベンゼン型液晶エポキシ樹脂、アゾフェニル型液晶エポキシ樹脂、アゾメチンフェニル型液晶エポキシ樹脂、ビナフチル型液晶エポキシ樹脂、アジン型エポキシ樹脂、グリシジルメタアクリレート共重合系エポキシ樹脂(「CP−50S,CP−50M;日本油脂(株)製」等)、シクロヘキシルマレイミドとグリシジルメタアクリレートとの共重合エポキシ樹脂、ビス(グリシジルオキシフェニル)フルオレン型エポキシ樹脂、ビス(グリシジルオキシフェニル)アダマンタン型エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらのエポキシ樹脂は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0074】
また、1分子中に少なくとも2つのオキシラン基を有する前記エポキシ化合物以外に、β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも1分子中に2つ含むエポキシ化合物を用いることができ、β位がアルキル基で置換されたエポキシ基(より具体的には、β−アルキル置換グリシジル基など)を含む化合物が特に好ましい。
前記β位にアルキル基を有するエポキシ基を少なくとも含むエポキシ化合物は、1分子中に含まれる2個以上のエポキシ基のすべてがβ−アルキル置換グリシジル基であってもよく、少なくとも1個のエポキシ基がβ−アルキル置換グリシジル基であってもよい。
【0075】
前記オキセタン化合物としては、例えば、1分子内に少なくとも2つのオキセタニル基を有するオキセタン化合物が挙げられる。
具体的には、例えば、ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]エーテル、1,4−ビス[(3−メチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルアクリレート、(3−メチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート、(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレート又はこれらのオリゴマーあるいは共重合体等の多官能オキセタン類の他、オキセタン基を有する化合物と、ノボラック樹脂、ポリ(p−ヒドロキシスチレン)、カルド型ビスフェノール類、カリックスアレーン類、カリックスレゾルシンアレーン類、シルセスキオキサン等の水酸基を有する樹脂など、とのエーテル化合物が挙げられ、この他、オキセタン環を有する不飽和モノマーとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体なども挙げられる。
【0076】
また、前記ポリイソシアネート化合物としては、特開平5−9407号公報記載のポリイソシアネート化合物を用いることができ、該ポリイソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基を含む脂肪族、環式脂肪族又は芳香族基置換脂肪族化合物から誘導されていてもよい。具体的には、2官能イソシアネート(例えば、1,3−フェニレンジイソシアネートと1,4−フェニレンジイソシアネートとの混合物、2,4−及び2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−及び1,4−キシリレンジイソシアネート、ビス(4−イソシアネート−フェニル)メタン、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等)、該2官能イソシアネートと、トリメチロールプロパン、ペンタリスルトール、グリセリン等との多官能アルコール;該多官能アルコールのアルキレンオキサイド付加体と、前記2官能イソシアネートとの付加体;ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート及びその誘導体等の環式三量体;などが挙げられる。
【0077】
前記ポリイソシアネート化合物にブロック剤を反応させて得られる化合物、すなわちポリイソシアネート及びその誘導体のイソシアネート基にブロック剤を反応させて得られる化合物における、イソシアネート基ブロック剤としては、アルコール類(例えば、イソプロパノール、tert−ブタノール等)、ラクタム類(例えば、ε−カプロラクタム等)、フェノール類(例えば、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール、p−sec−ブチルフェノール、p−sec−アミルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール等)、複素環式ヒドロキシル化合物(例えば、3−ヒドロキシピリジン、8−ヒドロキシキノリン等)、活性メチレン化合物(例えば、ジアルキルマロネート、メチルエチルケトキシム、アセチルアセトン、アルキルアセトアセテートオキシム、アセトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等)などが挙げられる。これらの他、特開平6−295060号公報記載の分子内に少なくとも1つの重合可能な二重結合及び少なくとも1つのブロックイソシアネート基のいずれかを有する化合物などを用いることができる。
【0078】
前記メラミン誘導体としては、例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン(メチロール基を、メチル、エチル、ブチルなどでエーテル化した化合物)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、保存安定性が良好で、感光層の表面硬度あるいは硬化膜の膜強度自体の向上に有効である点で、アルキル化メチロールメラミンが好ましく、ヘキサメチル化メチロールメラミンが特に好ましい。
【0079】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィラー、熱硬化促進剤、増感剤、熱重合禁止剤、可塑剤、着色剤(着色顔料あるいは染料)などが挙げられ、更に基体表面への密着促進剤及びその他の助剤類(例えば、導電性粒子、充填剤、消泡剤、難燃剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、表面張力調整剤、連鎖移動剤など)を併用してもよい。
これらの成分を適宜含有させることにより、目的とする感光層の安定性、写真性、膜物性などの性質を調整することができる。
前記フィラーについては、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0098〕〜〔0099〕に詳細に記載されている。
前記熱硬化促進剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0093〕に詳細に記載されている。
前記増感剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0077〕に詳細に記載されている。
前記熱重合禁止剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0101〕〜〔0102〕に詳細に記載されている。
前記可塑剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0103〕〜〔0104〕に詳細に記載されている。
前記着色剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0105〕〜〔0106〕に詳細に記載されている。
前記密着促進剤については、例えば特開2008−250074号公報の段落〔0107〕〜〔0109〕に詳細に記載されている。
【0080】
−感光層−
前記感光層は、前記感光性材料からなる層であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記感光層の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、1〜100μmが好ましく、2〜50μmがより好ましく、4〜30μmが特に好ましい。
また、前記感光層の積層数としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
【0081】
−マスクレス露光−
前記マスクレス露光は、マスクを使用せずに、焦点を有する露光光を照射するものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、350nm〜360nmの波長のレーザーを露光するレーザー露光、400nm〜410nmの波長のレーザーを露光するレーザー露光、水銀灯ランプを集光させて行うダイレクト露光、などが好ましい。
【0082】
<塗布工程>
前記塗布工程は、前記感光性材料を含有する塗布液を基体に塗布する工程である。
前記塗布液を調製する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記感光性材料を水又は有機溶剤などの溶媒に溶解、乳化又は分散させる方法が挙げられる。また、公知の界面活性剤を添加してもよい。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油サフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤を挙げることができるが、これに限定されない。
前記塗布液の粘度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、5mPa・sから100mPa・sが好ましく、10mPa・sから50mPa・sがより好ましい。
前記塗布液の塗布方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スプレー法、スクリーン印刷などの各種の塗布方法が挙げられる。
【0083】
<乾燥工程>
前記乾燥工程は、前記塗布液を乾燥させて前記基体上に前記感光性材料からなる感光層を形成する工程である。
前記乾燥の条件としては、各成分、溶媒の種類、使用割合等によっても異なるが、通常60〜110℃の温度で30秒間〜15分間程度である。
【0084】
<転写工程>
【0085】
前記転写工程は、前記塗布工程、前記乾燥工程の代わりに前記基体の表面に前記感光性材料からなる感光層を有する感光性フィルムを加熱及び加圧の少なくともいずれかを行いながら転写する工程である。
【0086】
なお、前記感光性フィルムが前記保護フィルムを有する場合には、該保護フィルムを剥離し、前記基体に前記感光層が重なるようにして積層するのが好ましい。
前記加熱温度は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、15〜180℃が好ましく、60〜140℃がより好ましい。
前記加圧の圧力は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.1〜1.0MPaが好ましく、0.2〜0.8MPaがより好ましい。
【0087】
前記加熱の少なくともいずれかを行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラミネーター(例えば、大成ラミネータ社製 VP−II、ニチゴーモートン(株)製 VP130)などが好適に挙げられる。
【0088】
<現像工程>
前記現像としては、前記感光層の未露光部分を除去することにより行われる。
前記未硬化領域の除去方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、現像液を用いて除去する方法などが挙げられる。
【0089】
前記現像液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルカリ性水溶液、水系現像液、有機溶剤などが挙げられ、これらの中でも、弱アルカリ性の水溶液が好ましい。該弱アルカリ水溶液の塩基成分としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、硼砂などが挙げられる。
【0090】
前記弱アルカリ性の水溶液のpHは、例えば、約8〜12が好ましく、約9〜11がより好ましい。前記弱アルカリ性の水溶液としては、例えば、0.1〜5質量%の炭酸ナトリウム水溶液又は炭酸カリウム水溶液などが挙げられる。
前記現像液の温度は、前記感光層の現像性に合わせて適宜選択することができるが、例えば、約25〜40℃が好ましい。
【0091】
前記現像液は、界面活性剤、消泡剤、有機塩基(例えば、エチレンジアミン、エタノールアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ジエチレントリアミン、トリエチレンペンタミン、モルホリン、トリエタノールアミン等)や、現像を促進させるため有機溶剤(例えば、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、ラクトン類等)などと併用してもよい。また、前記現像液は、水又はアルカリ水溶液と有機溶剤を混合した水系現像液であってもよく、有機溶剤単独であってもよい。
【0092】
<硬化処理工程>
前記硬化処理工程は、前記現像工程が行われた後、形成されたパターンにおける感光層に対して硬化処理を行う工程である。
前記硬化処理工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、全面露光処理、全面加熱処理などが好適に挙げられる。
【0093】
前記全面露光処理の方法としては、例えば、前記現像後に、前記永久パターンが形成された前記積層体上の全面を露光する方法が挙げられる。該全面露光により、前記感光層を形成する感光性材料中の樹脂の硬化が促進され、前記永久パターンの表面が硬化される。
前記全面露光を行う装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、超高圧水銀灯などのUV露光機が好適に挙げられる。
【0094】
前記全面加熱処理の方法としては、前記現像の後に、前記永久パターンが形成された前記積層体上の全面を加熱する方法が挙げられる。該全面加熱により、前記永久パターンの表面の膜強度が高められる。
前記全面加熱における加熱温度は、120〜250℃が好ましく、120〜200℃がより好ましい。該加熱温度が120℃以上であれば、加熱処理によって膜強度が向上し、250℃以下であれば、前記感光性材料中の樹脂の分解が生じ、膜質が弱く脆くなることを防止できる。
前記全面加熱における加熱時間は、10〜120分が好ましく、15〜60分がより好ましい。
前記全面加熱を行う装置としては、特に制限はなく、公知の装置の中から、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドライオーブン、ホットプレート、IRヒーターなどが挙げられる。
【0095】
前記永久パターンの形成方法が、保護膜、層間絶縁膜、及びソルダーレジストパターンの少なくともいずれかを形成する永久パターン形成方法である場合には、プリント配線板上に前記永久パターン形成方法により、永久パターンを形成し、更に、以下のように半田付けを行うことができる。
即ち、前記現像により、前記永久パターンである硬化層が形成され、前記プリント配線板の表面に金属層が露出される。該プリント配線板の表面に露出した金属層の部位に対して金メッキを行った後、半田付けを行う。そして、半田付けを行った部位に、半導体や部品などを実装する。このとき、前記硬化層による永久パターンが、保護膜あるいは絶縁膜(層間絶縁膜)、ソルダーレジストとしての機能を発揮し、外部からの衝撃や隣同士の電極の導通が防止される。
【実施例】
【0096】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0097】
−バインダーの合成−
1,000mL三口フラスコに1−メトキシ−2−プロパノール159gを入れ、窒素気流下、85℃まで加熱した。これに、ベンジルメタクリレート63.4g、メタクリル酸72.3g、V−601(和光純薬製)3.0gの1−メトキシ−2−プロパノール159g溶液を、2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に5時間加熱して反応させた。次いで、加熱を止め、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸(30/70mol%比)の共重合体を得た。
次に、前記共重合体溶液の内、120.0gを300mL三口フラスコに移し、グリシジルメタクリレート16.6g、p−メトキシフェノール0.16gを加え、撹拌し溶解させた。溶解後、空気バブリングを行いながら、トリフェニルホスフィン3.0gを加え、100℃に加熱し、20分経過した後、グリシジルメタクリレートを加えて付加反応を行った。グリシジルメタクリレートが消失したことを、ガスクロマトグラフィーで確認し、加熱を止めた。1−メトキシ−2−プロパノールを加え、固形分45質量%の下記構造式Aで表されるバインダーの溶液を調製した。
得られたバインダーの質量平均分子量(Mw)をポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定した結果、30,000であった。また、水酸化ナトリウムを用いた滴定から、固形分あたりの酸価は、2.2meq/gであった。更に、ヨウ素価滴定により求めた固形分あたりのエチレン性不飽和結合の含有量(C=C価)は、2.1meq/gであった。
【0098】
【化6】

【0099】
(実施例1)
−感光性材料溶液の調製−
各成分を下記の量で配合して、感光性材料溶液(塗布液)を調製した。
〔感光性材料溶液の各成分量〕
・前記バインダー(前記1−メトキシ−2−プロパノール溶液中に固形分質量45質量%)・・・45.51質量部
・ペンタエリスリトールテトラアクリレート(重合性化合物)・・・11.03質量部
・構造式(26)で表される光重合開始剤・・・0.35質量部
・ジエチルチオキサントン・・・0.37質量部
・ビスF型エポキシ樹脂(熱架橋剤、東都化成(株)製、YDF−170)・・・4.57質量部
・熱硬化剤(ジシアンジアミド)・・・0.08質量部
・シリカSO−C2((株)アドマテックス社製)・・・7.11質量部
・着色顔料(BASF社製、HELIOGEN BLUE D7086)・・・0.17質量部
・メチルエチルケトン・・・16.74質量部
・酢酸ノルマルプロピル・・・13.96質量部
なお、感光性材料溶液の粘度は、40mPa・sであった。
【0100】
−積層体の製造−
得られた感光性材料溶液を、基体としての厚み200μmのプリント基板(MCL−E679、日立化成製)上に、塗布し、乾燥させて、膜厚30μmの感光層を形成した。
【0101】
−露光−
製造した積層体に、レーザー露光機(INPREX、富士フイルム製)を用いて、405nmの波長のレーザー光を、露光強度1mW/cm、露光時間30秒、でダイレクト露光した。ここで、レーザー光の焦点が、感光層とプリント基板との界面(感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmだけプリント基板側の位置、表1中には「−t」と表記した。)となるように調節した。なお、前記レーザー光の焦点の調節は、レーザー露光機(INPREX、富士フイルム製)のコンピュータ自動制御により行われた。
【0102】
−評価−
ダイレクト露光時におけるパターンデータの線幅を以下のように設定し、ダイレクト露光時の線幅太り及びダイレクト露光後の線幅を以下のように測定した。
【0103】
−−ダイレクト露光時におけるパターンデータの線幅−−
前記ダイレクト露光時におけるパターンデータの線幅は、所定値(10μm)以上で任意に設定できるものであり、設定されたパターンデータの線幅のパターンが形成される。
【0104】
−−ダイレクト露光時の線幅太り−−
前記ダイレクト露光時の線幅太りは、後述する露光後の線幅から前記ダイレクト露光時におけるパターンデータの線幅を差し引いた値を示す。
【0105】
−−ダイレクト露光後の線幅−−
前記ダイレクト露光後の線幅は、図5に示すように、パターン断面の上面の線幅Wを示し、レーザー顕微鏡(商品名:VK−9510、キーエンス製)により測定される。
パターンデータの線幅を変化させて露光した中で、現像後にプリント基板に密着している細線のうち、一番細い細線の線幅を表1に記載した。
【0106】
(実施例2)
実施例1において、レーザー光の焦点が、感光層とプリント基板との界面(感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmだけプリント基板側の位置、表1中には「−t」と表記した。)となるように調節する代わりに、レーザー光の焦点が、感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmの2倍長さ(60μm)だけプリント基板側の位置(表1中には「−2t」と表記した。)となるように調節した以外は、実施例1と同様にして、感光性材料の調製、積層体の製造、露光、及び評価を行った。
【0107】
(実施例3)
実施例1において、レーザー光の焦点が、感光層とプリント基板との界面(感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmだけプリント基板側の位置、表1中には「−t」と表記した。)となるように調節する代わりに、レーザー光の焦点が、感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmの3倍長さ(90μm)だけプリント基板側の位置(表1中には「−3t」と表記した。)となるように調節した以外は、実施例1と同様にして、感光性材料の調製、積層体の製造、露光、及び評価を行った。
【0108】
(比較例1)
実施例1において、レーザー光の焦点が、感光層とプリント基板との界面(感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmだけプリント基板側の位置、表1中には「−t」と表記した。)となるように調節する代わりに、レーザー光の焦点が、感光層のプリント基板と反対側の表面(表1中には「0」と表記した。)となるように調節した以外は、実施例1と同様にして、感光性材料の調製、積層体の製造、露光、及び評価を行った。
【0109】
(比較例2)
実施例1において、レーザー光の焦点が、感光層とプリント基板との界面(感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmだけプリント基板側の位置、表1中には「−t」と表記した。)となるように調節する代わりに、レーザー光の焦点が、感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmの4倍長さ(120μm)だけプリント基板側の位置(表1中には「−4t」と表記した。)となるように調節した以外は、実施例1と同様にして、感光性材料の調製、積層体の製造、露光、及び評価を行った。
【0110】
(比較例3)
比較例1において、露光光の照射時間を30秒とする代わりに、露光光の照射時間を46秒とした以外は、比較例1と同様にして、感光性材料の調製、積層体の製造、露光、及び評価を行った。
【0111】
【表1】

【0112】
表1より、露光光の焦点が、感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚みの1倍〜3倍長さだけプリント基板側に位置する実施例1〜3は、露光時間30秒で、33μm以下の線幅のパターンをプリント基板に密着することができることが分かった。
また、表1より、露光光の焦点が感光層のプリント基板と反対側の表面に調節されている場合、露光時間30秒では、37.5μmと太い線幅のパターンしかプリント基板に密着することができず(比較例1)、プリント基板に密着可能なパターンの線幅を35μmまで細線化するためには、露光時間を46秒と長くする必要があることが分かった(比較例3)。
さらに、表1より、露光光の焦点が、感光層のプリント基板と反対側の表面を基準として、感光層の厚み30μmの4倍長さ(120μm)だけプリント基板側の位置となるように調節されている場合、38μmと太い線幅のパターンしかプリント基板に密着することができないことが分かった(比較例2)。
なお、密着しているか否かの判断は、パターンの底面がプリント基板に密着しているか否かをもって判断し(パターンの上面における欠けとは関係ない)、一部が剥離していたり、剥離していないもののパターンがよれている場合などは、密着していないものとした。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の感光性材料のパターン形成方法によれば、密着性を有する細線パターンを、短い露光時間で形成することができる。したがって、電子材料分野における高精細な永久パターンの形成用、パターン形成用のレジストの形成用として広く用いることができ、特に、プリント基板の永久パターン形成用、液晶パネル用のカラーフィルター形成用に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
10 感光層
10a 表面
10b 界面
11 基体
12 露光光
13 焦点
t 厚み
A 直線
W 線幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に形成された感光性材料からなる感光層に対し、該感光層の前記基体と反対側の表面を基準として、該感光層の厚みの1倍〜3倍長さだけ前記基体側に露光光の焦点が位置するようにして露光光を照射することにより、前記基体上にパターンを形成することを特徴とする感光性材料のパターン形成方法。
【請求項2】
感光性材料は、γ値が3〜20(μ/mJ)である請求項1に記載の感光性材料のパターン形成方法。
【請求項3】
感光性材料が、プリント配線板用のソルダーレジストである請求項1から2のいずれかに記載の感光性材料のパターン形成方法。
【請求項4】
感光性材料が、液晶パネル用のカラーフィルターである請求項1から2のいずれかに記載の感光性材料のパターン形成方法。
【請求項5】
露光が、350nm〜360nmの波長のレーザーを露光するレーザー露光、400nm〜410nmの波長のレーザーを露光するレーザー露光、及び水銀灯ランプを集光させて行うダイレクト露光のいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の感光性材料のパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−224285(P2010−224285A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72190(P2009−72190)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】