説明

感光性樹脂組成物およびそれを用いて得られるカバー絶縁層を有するフレキシブルプリント配線回路基板

【課題】優れた難燃性および解像性や可撓性はもちろん、含有成分の析出が抑制され、製品の汚染等の発生を防止することのできる感光性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(E)を含有する感光性樹脂組成物である。そして、下記の(A)成分の含有量を、感光性樹脂組成物全体の5〜30重量%に設定してなる感光性樹脂組成物である。(A)特定構造の環状ホスファゼン化合物。(B)エチレン性不飽和化合物を付加重合させて得られるカルボキシル基含有線状重合体。(C)エポキシ樹脂。(D)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。(E)光重合開始剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物およびそれを用いて得られる、カバー絶縁層を有するフレキシブルプリント配線回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半田付けによって半導体素子等の電子部品を実装するフレキシブルプリント配線回路基板には、導体パターン上に、例えば、ソルダーレジストと呼ばれる耐熱性材料を用いてスクリーン印刷法や露光現像法により必要部分にカバー絶縁層を設けることが行われている。
【0003】
上記ソルダーレジストとして、例えば、カルボキシル基含有線状重合体、光重合性モノマー、難燃剤としての環状ホスファゼン化合物、顔料等を含有する感光性樹脂組成物が用いられている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−235371号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記ソルダーレジスト(感光性樹脂組成物)を用いて、カバー絶縁層を形成してなるフレキシブルプリント配線回路基板を、高温高湿下に放置すると、上記ソルダーレジストを構成する成分が析出し、製品そのものが汚染されるというおそれがあった。なかでも、難燃剤である上記環状ホスファゼン化合物が配線回路基板上に析出しやすい傾向にあり、良好な難燃性や可撓性および解像性に加えて、この点に関して改良が望まれている。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、優れた難燃性および解像性、フレキシブルプリント配線回路基板にて必要な低反り性や可撓性はもちろん、含有成分の析出が抑制され、製品の汚染等の発生を防止することのできる感光性樹脂組成物およびそれを用いて得られるカバー絶縁層を有するフレキシブルプリント配線回路基板の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(A)成分の含有量が、感光性樹脂組成物全体の5〜30重量%に設定されている感光性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)下記の一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物。
【化1】

(B)エチレン性不飽和化合物を付加重合させて得られるカルボキシル基含有線状重合体(以下「特定のカルボキシル基含有線状重合体」と略称する)。
(C)エポキシ樹脂。
(D)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。
(E)光重合開始剤。
【0007】
そして、導体回路パターン上に、上記第1の要旨の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層が形成され、これを所定のパターンに露光して現像することによりカバー絶縁層が形成されてなるフレキシブルプリント配線回路基板を第2の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明者らは、高温高湿下での配合成分の析出を抑制し、かつ良好な難燃性および解像性や可撓性を備えた感光性レジスト材料である感光性樹脂組成物を得るために一連の研究を重ねた。その結果、難燃剤成分として上記特定の構造を有する環状ホスファゼン化合物(A)を特定の割合で用い、これに特定のカルボキシル基含有線状重合体(B)とエポキシ樹脂(C)、さらにエチレン性不飽和基含有重合性化合物(D)を併用して用いると、優れた難燃性および解像性や可撓性はもちろん、高温高湿下において含有成分、特に上記環状ホスファゼン化合物の析出が抑制されることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0009】
このように、本発明は、前記特定のカルボキシル基含有線状重合体(B),エポキシ樹脂(C)およびエチレン性不飽和基含有重合性化合物(D)とともに、難燃剤成分として前記一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物(A)を用い、しかも上記環状ホスファゼン化合物(A)を特定の割合で含有してなる感光性樹脂組成物である。このため、従来と同等の難燃性および解像性や可撓性を備えるとともに、高温高湿下での保管や放置において、感光性樹脂組成物により形成された硬化被膜からの含有成分の析出を抑制することが可能となる。そして、本発明の感光性樹脂組成物を用いてカバー絶縁層が形成されたフレキシブルプリント配線回路基板に、電子部品を実装して実装基板とし、例えば、携帯電話等の小型機器等のフレキシブルプリント配線回路基板として用いられる。
【0010】
そして、上記エポキシ樹脂(C)として、前記一般式(4)で表されるフェニルホスフェート骨格を含むエポキシ樹脂を用いると、耐湿信頼性を損なわずに、上記環状ホスファゼン化合物(A)の有する難燃性を相乗的に向上させることが可能となる。
【0011】
また、上記エチレン性不飽和基含有重合性化合物(D)として、前記一般式(5)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含有するものを用いると、フレキシブルプリント配線回路基板におけるカバー絶縁層の形成に際して露光感度および現像性に優れたものが得られるようになる。
【0012】
さらに、上記特定のカルボキシル基含有線状重合体(B)として、前記一般式(3)で表される構造単位を含有するものを用いると、柔軟かつ低反り性を備えたフレキシブルプリント配線回路基板を得ることができるようになる。
【0013】
そして、上記特定のカルボキシル基含有線状重合体(B)の含有量を、感光性樹脂組成物全体の20〜60重量%に設定すると、アルカリ現像性および密着性に一層優れるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の感光性樹脂組成物は、特定の環状ホスファゼン化合物(A成分)と、特定のカルボキシル基含有線状重合体(B成分)と、エポキシ樹脂(C成分)と、エチレン性不飽和基含有重合性化合物(D成分)と、光重合開始剤(E成分)とを用いて得られるものである。
【0015】
上記特定の環状ホスファゼン化合物(A成分)は、下記の一般式(1)で表される構造を備えた化合物である。
【0016】
【化2】

【0017】
上記式(1)において、特に好ましくは、Rがいずれも上記一般式(2)で表されるウレタン(メタ)アクリレート構造を有する有機基の場合である。
【0018】
上記特定の環状ホスファゼン化合物(A成分)は、例えば、つぎのようにして作製することができる。すなわち、フェノキシ環状ホスファゼン化合物に、ヒドロキノンを加え、加熱し溶解する。ついで、これに、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートを加え、場合により、触媒を添加し反応させることにより作製することができる。
【0019】
上記A成分とともに用いられる特定のカルボキシル基含有線状重合体(B成分)としては、例えば、(メタ)アクリル酸と、その他のカルボキシル基を有するモノマーを共重合させて得られる重合物をいう。上記線状重合物は、原料モノマー種が豊富にあることに起因して、ガラス転移温度(Tg)等の物性設計が容易である。
【0020】
上記その他のカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、スチレン、α−スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0021】
上記特定のカルボキシル基含有線状重合体(B成分)の重量平均分子量は、3000〜50000の範囲であることが好ましく、より好ましくは4000〜40000、さらに好ましくは5000〜30000の範囲である。すなわち、重量平均分子量が3000未満では、半田耐熱性等が悪くなる傾向がみられ、50000を超えると、アルカリ現像性が悪くなる傾向がみられるからである。なお、上記重量平均分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算により測定される。
【0022】
また、上記特定のカルボキシル基含有線状重合体(B成分)の酸当量は、200〜900の範囲であることが好ましく、より好ましくは250〜850、さらに好ましくは300〜800の範囲である。すなわち、酸当量が200未満では、高温高湿下での銅の酸化を促進するため好ましいものではなく、900を超えると、アルカリ現像性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0023】
上記特定のカルボキシル基含有線状重合体(B成分)は、より具体的には、下記の一般式(3)で表される構造単位を有するものを用いることが好ましい。
【0024】
【化3】

【0025】
なお、上記一般式(3)において、x,y,zはランダム共重合における重量比を示し、xは0.1〜0.3、yは0〜0.9、zは0〜0.6である。
【0026】
上記一般式(3)で表される構造単位を有するカルボキシル基含有線状重合体は、例えば、上記一般式(3)で表される構造単位を主骨格に有するモノマーと、(メタ)アクリル酸と、前記その他のカルボキシル基を有するモノマーを共重合させることにより得られる。
【0027】
上記一般式(3)で表される構造単位を有するカルボキシル基含有線状重合体(B成分)全体の、感光性樹脂組成物全体に占める割合は、20〜60重量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜50重量%である。このように、一般式(3)で表される構造単位を有するカルボキシル基含有線状重合体(B成分)を感光性樹脂組成物全体の20〜60重量%の範囲とすることにより、現像性が良好となる。
【0028】
また、上記共重合成分である(メタ)アクリル酸の共重合量は、共重合成分の総量中、10〜30重量%に設定することが好ましく、より好ましくは15〜25重量%の範囲である。すなわち、共重合量が下限値未満では、現像時間が長くなり作業性が低下する傾向がみられ、上限値を超えると、高温高湿下での銅の酸化を促進する傾向がみられるからである。
【0029】
上記A成分およびB成分とともに用いられるエポキシ樹脂(C成分)は、特に限定するものではないが、特に、下記の一般式(4)で表されるフェニルホスフェート骨格を含むエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0030】
【化4】

【0031】
より具体的には、例えば、エポキシ樹脂としてノボラック型エポキシ樹脂を20重量%以上含有するエポキシ樹脂成分に、上記一般式(4)で表されるフェニルホスフェート骨格構造中のリンの含有率が、好適には1〜5重量%となるよう含まれるリン含有エポキシ樹脂があげられる。すなわち、上記リン含有率が上記範囲内であることにより、上記リン含有エポキシ樹脂の溶解性が確保されるとともに、前記特定の環状ホスファゼン化合物(A成分)と上記リン含有エポキシ樹脂との相乗効果により、より一層高い難燃性が得られるようになる。
【0032】
このようなリン含有エポキシ樹脂は、例えば、特許第3613724号や特許第3533973号にて、その製造方法が開示されている。
【0033】
上記エポキシ樹脂成分としては、硬化性を有するエポキシ樹脂であれば上記ノボラック型エポキシ樹脂に限定するものではなく、これ以外にビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリグリコール型エポキシ樹脂等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0034】
上記A〜C成分とともに用いられるエチレン性不飽和基含有重合性化合物(D成分)は、特に限定するものではないが、下記の一般式(5)で表されるビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物を用いることが、半田耐熱性、耐折性、アルカリ現像性等の特性バランスに優れる点から好ましい。
【0035】
【化5】

【0036】
上記式(5)中、炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基等があげられる。特にエチレン基であることが好ましい。
【0037】
上記イソプロピレン基は、−CH(CH3 )CH2 −で表される基であり、上記一般式(5)中の−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−において結合方向は、メチレン基が酸素と結合している場合とメチレン基が酸素に結合していない場合の2種類があり、1種類の結合方向でもよいし、2種類の結合方向が混在していてもよい。
【0038】
上記−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−の繰り返し単位がそれぞれ2以上のとき、2以上のY1 および2以上のY2 は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。そして、Y1 およびY2 が2種以上のアルキレン基で構成される場合、2種以上の−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−は、ランダムに存在してもよいし、ブロック的に存在してもよい。
【0039】
また、上記一般式(5)中の、2個のベンゼン環の置換可能な位置には、1個以上の置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それら置換基は互いに同じであっても異なっていてもよい。このような置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アリル基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基または複素環を含む基等があげられる。
【0040】
上記一般式(5)中の、繰り返し数p,qは、p+qが4〜40となるよう選ばれる正の整数であり、より好ましくはp+qが4〜15となるよう選ばれる正の整数であり、特に好ましくはp+qが5〜13となるよう選ばれる正の整数である。すなわち、p+qが4未満では、耐折性が低下する傾向がみられ、p+qが40を超えると、感光性樹脂組成物全体の系が親水性を示し、高温高湿下での絶縁信頼性に劣る傾向がみられるからである。
【0041】
上記一般式(5)で表されるビスフェノールA系ジ(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシトリエトキシオクタプロポキシフェニル〕プロパン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0042】
上記A〜D成分とともに用いられる光重合開始剤(E成分)としては、例えば、置換または非置換の多核キノン類(2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等)、α−ケタルドニルアルコール類(ベンゾイン、ピバロン等)、エーテル類、α−炭化水素置換芳香族アシロイン類(α−フェニル−ベンゾイン、α,α−ジエトキシアセトフェノン類等)、芳香族ケトン類(ベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等の4,4′−ビスジアルキルアミノベンゾフェノン等)、チオキサントン類(2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等)、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−モルホリノプロパン−1−オン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0043】
本発明の感光性樹脂組成物における、上記A〜E成分を用いる場合の各成分の含有量は、好適にはつぎのように設定される。まず、上記A成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の5〜30重量%の範囲に設定する必要がある。より好ましくは10〜20重量%である。すなわち、A成分の含有量が下限値未満では、充分な難燃性が得られず、しかも高温高湿下において含有成分が析出することとなる。また、上限値を超えると、最終的に得られるフレキシブルプリント配線回路基板に発生する反りが大きくなってしまう場合がある。
【0044】
上記B成分の含有量は、先に述べたように、感光性樹脂組成物全体の20〜60重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは30〜50重量%である。すなわち、下限値未満では、アルカリ現像性が不充分となる傾向があり、上限値を超えると密着性に劣る傾向がみられるからである。
【0045】
上記C成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の1〜40重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは10〜20重量%である。すなわち、C成分の含有量が下限値未満では、半田耐熱性が不充分となる傾向があり、上限値を超えると、アルカリ現像性が低下する傾向がみられるからである。
【0046】
上記D成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の5〜50重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは10〜30重量%である。すなわち、D成分の含有量が下限値未満では、感度が不充分となる傾向があり、上限値を超えると、解像性が低下する傾向がみられるからである。
【0047】
上記E成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の0.5〜10重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは2〜8重量%である。すなわち、E成分の含有量が下限値未満では、感度が不充分となる傾向があり、上限値を超えると、感光性樹脂組成物の物性が低下する傾向がみられるからである。
【0048】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記各成分以外に必要に応じて、他の添加剤、すなわち、フタロシアニングリーン,フタロシアニンブルー等の顔料、シリカ,硫酸バリウム,タルク等の充填剤、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、安定剤、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールや5−アミノ−1−H−テトラゾール等の密着性付与剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、エポキシ樹脂ブロックイソシアネート等の熱架橋剤等の他、エポキシ樹脂の硬化触媒、例えば、塩基性有機化合物等を適宜配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これら他の添加剤は、感光性樹脂組成物全体の0.01〜20重量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記各成分を所定の含有量となるように配合し混合することにより得られる。そして、必要に応じて有機溶剤と混合して感光性樹脂組成物溶液として使用に供される。上記有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリメチロールプロパントリアクリレート、ソルベントナフサ、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メシチレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤またはこれらの混合溶剤を用いることができる。
【0050】
上記有機溶剤を用いる場合の使用量は、特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物100重量部に対して0〜200重量部程度混合して用いることができる。
【0051】
本発明の感光性樹脂組成物は、例えば、フレキシブルプリント配線回路基板等の配線回路基板用のソルダーレジスト(カバー絶縁層形成材料)として有用である他、塗料、コーティング剤、接着剤等の用途としても使用することができる。
【0052】
本発明の感光性樹脂組成物を上記配線回路基板用のカバー絶縁層形成材料として用いる際には、例えば、つぎのようにして使用される。以下、フレキシブルプリント配線回路基板を例に順を追って説明する。
【0053】
まず、フレキシブルプリント配線回路基板の導体回路パターン形成面に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法等により、乾燥後の厚みが3〜50μmとなるように本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、50〜120℃で3〜60分間程度乾燥させた後、ネガ型またはポジ型パターンのマスクフィルムを塗膜に直接接触させ、あるいは接触させずに設置し、ついで活性光線を照射する。
【0054】
上記活性光線の光源としては、公知の各種光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線を有効に照射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に照射するものも用いられる。
【0055】
ついで、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、例えば、スプレー,揺動浸漬,ブラッシング,スクラッピング等の公知の方法により未露光部を除去して現像し、レジストパターンを製造する。
【0056】
上記現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等を用いることができる。
【0057】
また、現像後、半田耐熱性,耐薬品性等を向上させる目的で、必要に応じて高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことができる。この紫外線照射と加熱の順序はいずれが先であってもよいし、紫外線照射および加熱のいずれか一方のみの処理であってもよい。
【0058】
このようにして導体回路パターン上にカバー絶縁層が形成されたフレキシブルプリント配線回路基板が得られる。そして、このフレキシブルプリント配線回路基板は、その後、半田付け等によって、LSI、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ等の電子部品を実装して実装基板とし、例えば、携帯電話等の小型機器等に装着されることになる。
【実施例】
【0059】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0060】
まず、下記の合成例にしたがって、環状ホスファゼン化合物a1,a2、および、カルボキシル基含有線状重合体を合成した。
【0061】
〔環状ホスファゼン化合物a1の合成〕
フェノキシ環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPH−100)20.0gに、ヒドロキノン0.0050gを加え、90℃に加熱して溶解させた。つぎに、窒素気流下、これに2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート13.7gとジブチルスズラウリレート5%酢酸溶液0.54gを加え、10時間反応させた。反応終了後、FT−IR(NICOLET社製)にて構造を確認したところ、下記の構造式(a1)で表される環状ホスファゼン化合物が得られたことを確認した。
【0062】
【化6】

【0063】
〔環状ホスファゼン化合物a2の合成〕
フェノキシ環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPH−100)20.0gに、ヒドロキノン0.0050gを加え、90℃に加熱して溶解させた。つぎに、窒素気流下、これに2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート15.1gを加え、10時間反応させた。反応終了後、FT−IR(NICOLET社製)にて構造を確認したところ、下記の構造式(a2)で表される環状ホスファゼン化合物が得られたことを確認した。
【0064】
【化7】

【0065】
〔カルボキシル基含有線状重合体の合成〕
溶媒としてのエチレンジグリコールアセテート135.1gを窒素雰囲気下で500ミリリットルのセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら100℃に加温した。1時間保温した後、モノマーとしてフェノキシエチルアクリレート144.9g、メタクリル酸58.0g、メタクリル酸メチル86.9g、溶媒としてのエチレンジグリコールアセテート70.4g、触媒としてのアゾビスイソブチロニトリル4.6gを混合溶解した溶液を、3時間かけてセパラブルフラスコ内に滴下し反応させた。
【0066】
さらに、100℃で2時間攪拌した後、冷却し、溶液(固形分58.5重量%)を得た。得られた溶液におけるポリマー(カルボキシル基含有線状重合体)は、前記一般式(3)で表される構造単位を有するポリマー〔(式(3)中、繰り返し単位x,y,zの重量比は、x:y:z=20:31:49〕であり、その重量平均分子量(Mw)をGPC(ポリスチレン換算)により測定したところ、2.3×104 であった。
【0067】
つぎに、下記に示す各成分を準備した。
【0068】
〔環状ホスファゼン化合物a3〕
下記の構造式(a3)で表される環状ホスファゼン化合物(大塚化学社製、SPB−100)
【化8】

【0069】
〔エポキシ樹脂〕
リン含有エポキシ樹脂(東都化成社製、FX−305、リン含有率3重量%)の60重量%エチルジグリコールアセテート溶液
【0070】
〔エチレン性不飽和基含有重合性化合物〕
エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型メタクリレート〔前記式(5)中のp+q=10、BIS−A系アクリレート:新中村化学社製,BPE500〕
【0071】
〔光重合開始剤a〕
チバガイギー社製、Irgacure907
【0072】
〔光重合開始剤b〕
日本化薬社製、KAYACURE DETX−S
【0073】
〔顔料〕
フタロシアニンブルー(大日精化社製、UTCO−053)
【0074】
〔密着性付与剤〕
5−アミノ−1−H−テトラゾール(エチルジグリコールアセテート1.5gとN−メチル−2−ピロリドン1.5gに溶解させた後、配合した。なお、後記の表1〜表2中の数値は、これら溶媒に溶解前の数値である。)
【0075】
〔消泡剤〕
モダフロー(CBCマテリアルズ社製)
【0076】
〔多官能エチレン性不飽和基含有重合性化合物〕
トリメチロールプロパントリアクリレート
【0077】
〔実施例1〜5、比較例1〜3〕
後記の表1〜表2に示す各成分を同表に示す割合で配合し、混合することにより感光性樹脂組成物を作製した。
【0078】
このようにして得られた各感光性樹脂組成物を用いて、下記に示す方法にしたがって特性評価を行った。その結果を後記の表1〜表2に併せて示す。
【0079】
〔高温・高湿試験〕
厚み35μmの銅箔上に、アプリケーターを用いて上記感光性樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥(90℃×30分間)させた。つぎに、この上に厚み38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で500mJ/cm2 の露光量にて紫外線照射した。その後、上記PETフィルムを剥離し、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、ついで水道水にて30秒間洗浄した後、熱風循環乾燥機中にて150℃×30分間処理を行なうことによりテストピースを作製した。
【0080】
上記作製したテストピースを、60℃×95%RHにて1000時間放置し、感光性樹脂組成物の硬化被膜表面を顕微鏡にて目視観察して、下記の基準にて評価した。
○:析出物が確認されなかった。
×:析出物が確認された。
【0081】
〔難燃性試験〕
厚み12.5μmのポリイミドフィルム(カネカ社製、アピカル、12.5NPI)上に、アプリケーターを用いて上記感光性樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥(90℃×30分間)させた。つぎに、この上に厚み38μmのポリエチレンフィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で500mJ/cm2 の露光量にて紫外線照射した。その後、上記ポリエチレンフィルムを剥離し、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、ついで水道水にて30秒間洗浄した後、熱風循環乾燥機中にて150℃×30分間処理を行なうことによりテストピースを10本作製した。
【0082】
上記テストピースを難燃性試験規格UL94に準拠した装置(東洋精機製作所社製、No.1031、HVUL UL燃焼テストチャンバー)、方法(VTM法)に従って難燃性を評価し、下記の基準にて示した。
○:10本のテストピース全てがVTM−0であった。
×:少なくとも1本のテストピースが燃焼した。
【0083】
〔解像性評価〕
厚み35μmの銅箔上に、アプリケーターを用いて上記感光性樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥(90℃×30分間)させた。つぎに、この上に厚み38μmのポリエチレンフィルムを密着させ、解像性評価用露光マスクを介して250Wの超高圧水銀灯で500mJ/cm2 の露光量にて紫外線照射した。その後、上記ポリエチレンフィルムを剥離し、30℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、ついで水道水にて30秒間洗浄した。その結果、下記の基準に従って評価した。
【0084】
○:直径200μm、直径150μm、直径100μmの円径ビアパタン各100個が全て開孔している。
×:直径200μm、直径150μm、直径100μmの円径ビアパタン各100個の中に、開孔していないものがある。
【0085】
〔反り〕
厚み25μmのポリイミドフィルム(カネカ社製、25NPI)上に、上記難燃性試験と同様の方法にて、感光性樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥(90℃×30分間)させた。つぎに、これを、10cm角の大きさに切り出して、反りの高さを調べた。その結果、反りの高さが20mm以上、あるいはカールして筒状の形状になったものを×、反りの高さが20mm未満のものを○として評価した。
【0086】
【表1】

【0087】
【表2】

【0088】
上記結果から、実施例品は、難燃性試験および解像性評価、さらに反りの評価において優れた結果が得られた。さらに、高温・高湿試験においても、硬化被膜表面に何ら析出物が確認されず良好な結果が得られた。
【0089】
これに対して、特定の環状ホスファゼン化合物の含有量が特定範囲未満となる比較例1品は、解像性評価および反りの評価に関しては問題なかったが、高温・高湿試験において析出物が確認されるとともに難燃性に関しても劣る結果となった。また、特定の環状ホスファゼン化合物の含有量が特定範囲を超える比較例2品は、高温・高湿試験および難燃性に関しては良好な結果が得られたが、解像性評価および反りの評価に関して劣る結果が得られた。そして、従来品となる通常の環状ホスファゼン化合物を用いた比較例3品は、難燃性および解像性、さらに反りの評価に関しては良好な結果が得られたが、高温・高湿試験において析出物が確認される結果となった。
【0090】
つぎに、前述の方法に基づき、フレキシブルプリント配線回路基板用のカバー絶縁層形成材料として上記実施例品である感光性樹脂組成物を用いて、カバー絶縁層が形成されたフレキシブルプリント配線回路基板を作製した。この製造の際には、マスクフィルムを用いた解像性は良好であるとともに、可撓性に優れ、さらに上記と同様の高温・高湿条件下でも、析出物が生じず、さらに難燃性に関しても満足のいくフレキシブルプリント配線回路基板が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(E)を含有する感光性樹脂組成物であって、上記(A)成分の含有量が、感光性樹脂組成物全体の5〜30重量%に設定されていることを特徴とする感光性樹脂組成物。
(A)下記の一般式(1)で表される環状ホスファゼン化合物。
【化1】

(B)エチレン性不飽和化合物を付加重合させて得られるカルボキシル基含有線状重合体。
(C)エポキシ樹脂。
(D)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。
(E)光重合開始剤。
【請求項2】
上記エポキシ樹脂(C)が、下記の一般式(4)で表されるフェニルホスフェート骨格を含むエポキシ樹脂である請求項1記載の感光性樹脂組成物。
【化2】

【請求項3】
上記エチレン性不飽和基含有重合性化合物(D)が、下記の一般式(5)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を含有する請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。
【化3】

【請求項4】
上記エチレン性不飽和化合物を付加重合させて得られるカルボキシル基含有線状重合体(B)が、下記の一般式(3)で表される構造単位を含有するものである請求項1〜3のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【化4】

【請求項5】
上記エチレン性不飽和化合物を付加重合させて得られるカルボキシル基含有線状重合体(B)の含有量が、感光性樹脂組成物全体の20〜60重量%に設定されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
導体回路パターン上に、請求項1〜5のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層が形成され、これを所定のパターンに露光して現像することによりカバー絶縁層が形成されてなることを特徴とするフレキシブルプリント配線回路基板。

【公開番号】特開2009−98456(P2009−98456A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−270507(P2007−270507)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】