感度可変型の電界測定機能を備えた物体検知装置
【課題】感度可変型の電界測定機能を備えた物体検知装置を提供する。
【解決手段】自動車の窓枠とウィンドガラスとのうちの少なくとも一方には、3つ以上の電極32,34が配置されている。電界測定部52は、これらの電極32,34のうちの任意の2電極間の静電容量を測定して、2電極間に存在する物体を検知する。制御回路60は、ウィンドガラスの移動に応じて2電極の組み合わせを変更することによって、電界測定部52の感度を変更する。
【解決手段】自動車の窓枠とウィンドガラスとのうちの少なくとも一方には、3つ以上の電極32,34が配置されている。電界測定部52は、これらの電極32,34のうちの任意の2電極間の静電容量を測定して、2電極間に存在する物体を検知する。制御回路60は、ウィンドガラスの移動に応じて2電極の組み合わせを変更することによって、電界測定部52の感度を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度可変型の電界測定機能を備えた物体検知装置、およびその装置を利用した挟み込み防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のパワーウィンド装置やビルの自動開閉扉には、手や頭などの人体の一部の挟み込みを防止する挟み込み防止装置が用いられている。例えば、パワーウィンド装置に搭載される挟み込み防止装置では、閉動作中のウィンドガラスと窓枠との間に異物すなわち物体が存在すると、ウィンドガラスの閉動作が停止されて、異物の挟み込みが防止される。近年、この挟み込み検知を静電容量の測定に基づいて行うことが提案されている。
【0003】
特許文献1は、静電容量検出部を備える従来の挟み込み防止装置を記載している。この挟み込み防止装置は、窓枠に設けられたセンサ電極とウィンドガラスとの間に形成される静電容量を測定して、その静電容量が基準静電容量を超えている場合に異物の挟み込みを検知する。しかしながら、この構成では、窓枠とウィンドガラスとの間に異物が挟み込まれたときに形成される静電容量が上記基準静電容量として設定されるため、異物が実際に挟み込まれた状態で検知される。つまり、特許文献1の装置は、異物がウィンドガラスに接触することを前提として挟み込み検知を行うため、挟み込み検知の精度が基準静電容量の値に大きく依存するものであった。このため、実際には挟み込みが生じているにもかかわらず、挟み込みを適切に検知できないことがあった。また、例えば異物のサイズが大きい場合、異物に大きな力が加わった後に挟み込みが検知されることがあった。
【0004】
特許文献2は、従来の挟み込み防止装置の他の例を記載している。特許文献2に記載された装置は、静電容量センサを用いて物体を非接触で検出する。静電容量センサでは、2つの電極間に異物(人体の一部など)が存在すると、静電容量が増大する。特許文献2の装置は、この静電容量センサの特性を利用して、静電容量の変化量が一定値を超えると、閉動作中の可動体(ウィンドガラスなど)に異物が接近していると判定して可動体を停止または開動作させる。この構成では、異物が挟み込まれる前に検出されるため、挟み込みを未然に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−32628号公報
【特許文献2】特開2010−1637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の装置では、可動体に近接する異物が必要以上に検知されることがあった。例えば、降雨時にウィンドガラスが閉動作しているときに静電容量センサが雨滴に過敏に反応し、挟み込み防止装置が雨滴を異物として検知する場合があった。その結果、ウインドガラスの不必要な停止や予期せぬ開動作が行われることがあった。このため、従来の挟み込み防止装置では、挟み込み検知の精度を好適に維持しつつ、可動体の不所望な動作を防止するという点において、未だ改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、可動体に近接する物体の検知精度を好適に維持しつつ、必要以上に物体を過敏に検知することを防止する物体検知装置およびそれを利用した挟み込み防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、フレームとフレームに対して移動する可動体との間に存在する物体を検知する物体検知装置である。3つ以上の第1の複数の電極が、フレームと可動体との少なくとも一方に配置されている。電界測定部は、第1の複数の電極に接続され、第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定して物体を検知する。制御回路は、電界測定部に接続され、可動体の移動に応じて第1の複数の電極間で2つの電極を切り替えて電界測定部の感度を変更する。
【0009】
本発明の別の態様は、フレームとフレームに対して移動する可動体との間の物体の挟み込みを防止する挟み込み防止装置である。駆動部は、フレームに対して可動体を相対移動させる。3つ以上の第1の複数の電極が、フレームと可動体との少なくとも一方に配置されている。電界測定部は、第1の複数の電極に接続され、第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定して物体を検知する。制御回路は、駆動部と電界測定部とに接続され、電界測定部により測定された静電容量に基づいて駆動部を制御する。制御回路は、可動体の移動に応じて第1の複数の電極間で2つの電極を切り替えて電界測定部の感度を変更する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の物体検知装置によれば、可動体に近接する物体の検知精度を維持しつつ、必要以上に物体を過敏に検知することを防止することができる。また、本発明の挟み込み防止装置によれば、挟み込み検知の精度を維持しつつ、可動体の不所望な動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動車の窓枠に設けられたウィンドガラスを示す概略的な側面図。
【図2】窓枠とウィンドガラスとの両方に電極を配置した場合の配置例を示す図1の部分拡大図。
【図3】ウィンドガラスのみに電極を配置した場合の配置例を示す図1の部分拡大図。
【図4】窓枠のみに電極を配置した場合の配置例を示す図1の部分拡大図。
【図5】窓内に規定された複数の検知ゾーンの一例を示す説明図。
【図6】一実施形態の物体検知装置(挟み込み防止装置)の概略的なブロック回路図。
【図7】一実施形態の挟み込み防止処理の概略的なフローチャート。
【図8】図7の初期化ステップを示す概略的なフローチャート。
【図9】図7の測定および解析ステップを示す概略的なフローチャート。
【図10】図7の引き込み制御ステップを示す概略的なフローチャート。
【図11】複数の電極を用いて生成される静電容量の分布パターンの例を示す説明図。
【図12】複数の電極を用いて生成される静電容量の分布パターンの例を示す説明図。
【図13】物体サイズの推定処理を示す概略的なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例えば自動車10のパワーウィンド装置に搭載される一実施形態の物体検知装置およびそれを備えた挟み込み防止装置を図1〜図13を参照して説明する。
図1に示すように、自動車10のドア12には、窓枠16(フレーム)で区画される窓14(空間)を開閉するためのウィンドガラス18(可動体)が設けられている。窓枠16はウィンドガラス18と当接する内周面20を有するとともに、ウィンドガラス18は窓枠16と当接する外周面22を有している。ウィンドガラス18の外周面22が窓枠16の内周面20と当接すると、窓14が全閉される。
【0013】
図2に示すように、ウィンドガラス18の外周面22には静電容量センサ(電界センサとも呼ばれる)用の第1の複数の電極32が配置されている。なお、図2は、3つの電極32a,32b,32cのみを示しているが、実際には、多数の電極32が配置されている。例えば、電極32は、ウィンドガラス18が窓枠16の内周面20と当接する範囲24(図1参照)において、ウィンドガラス18の外周面22に所定の間隔を隔てて配置される。同様に窓枠16の内周面20にも、静電容量センサ(電界センサ)用の第2の複数の電極34が配置されている。なお、図2は、3つの電極34a,34b,34cのみを示しているが、実際には、多数の電極34が配置されている。例えば、電極34は、上述した範囲24において、窓枠16の内周面20に所定の間隔を隔てて配置される。ウィンドガラス18の電極32と窓枠16の電極34とは、ウィンドガラス18が窓枠16に近接した状態で互いに実質的に対向するように位置付けられることが好ましい。
【0014】
図3および図4は、電極の別の配置例を示す。図3では、ウィンドガラス18の外周面22のみに電極32が配置され、図4では、窓枠16の内周面20のみに電極34が配置されている。このように、ウィンドガラス18と窓枠16との一方のみに電極を配置してもよいが、物体検知の精度すなわち挟み込み検知の精度をより向上するには、図2に示すようにウィンドガラス18と窓枠16との双方に電極を配置することが好ましい。なお、以下の説明では、ウィンドガラス18と窓枠16との双方に電極が配置されているものとする。
【0015】
電極32,34は、導電性の透明薄膜、例えばITO(酸化インジウムスズ)によって四角形状に形成されている。ただし、電極32,34の材料および形状によって本発明は限定されない。静電容量センサは、複数の電極32のうちのいずれか2つ、または複数の電極34のうちのいずれか2つ、あるいは対向するいずれか2つの電極32,34(例えば電極32aと電極34aなど)を選択して、その選択された2つの電極間に形成される静電容量を測定する。この場合、2つの電極のうちの一方が正極電極として機能し、他方が負極電極として機能する。
【0016】
ここで、使用電極に応じた4つの検知モードについて説明する。
第1の検知モードは「平行電極モード」である。平行電極モードでは、静電容量センサは、ウィンドガラス18と窓枠16との間で対向する何れか2つの電極32,34を選択して、その2つの電極32,34間に形成される静電容量を測定する。例えば、図2において電極32aと電極34aとが選択される場合、人体の一部などの物体が電極32a,34a間に存在すると、静電容量センサによって測定される静電容量が大きくなる。この静電容量の変化量が閾値を超えるとき、静電容量センサは、電極32a,34a間に物体が存在すると検知する。
【0017】
第2の検知モードは「水平電極モード」である。水平電極モードでは、ウィンドガラス18に設けられた複数の電極32のうちのいずれか2つか、または窓枠16に設けられた複数の電極34のうちのいずれか2つが使用される。例えば、図2において電極32aと電極32bとが選択される場合、静電容量センサは、電極32a,32b間に形成される静電容量を測定する。この静電容量の変化量が閾値を超えると、静電容量センサは、電極32a,32b間に物体が存在する、つまりウィンドガラス18の近傍に物体が存在すると検知する。また、図2において電極34aと電極34bとが選択される場合、静電容量センサは、電極34a,34b間に形成される静電容量を測定する。この静電容量の変化量が閾値を超えると、静電容量センサは、電極34a,324間に物体が存在する、つまり窓枠16の近傍に物体が存在すると検知する。この水平電極モードでは、使用される電極群において2電極間の距離は固定される。
【0018】
第3の検知モードは「感度可変水平電極モード」である。この感度可変水平電極モードは、使用される電極群において2電極の組み合わせ、すなわち2電極間の距離が変更されるという点を除いて、上記水平電極モード(第2の検知モード)と同じである。静電容量センサでは、電極間距離が2倍になると静電容量は1/2になる。従って、電極間距離が長くなると、静電容量センサの感度すなわち検知精度は下がる。一実施形態では、電極間距離(2電極の組み合わせ)は、ウィンドガラス18の上動に応じて短くなるように変更される。
【0019】
第4の検知モードは「単電極モード」である。単電極モードでは、電極32,34のうちのいずれか1つが単電極として選択される。この場合、検知対象物は、単電極と対をなす対向電極として働く。従って、選択された単電極の近傍に物体が存在しない場合、電界は形成されない。
【0020】
平行電極モード(第1の検知モード)では、対向する2つの電極間に電界が形成されるのに対して、水平電極モード(第2の検知モード)および感度可変水平電極モード(第3の検知モード)では、横方向に配置される2つの電極間に電界が形成される。このため、平行電極モードでは、水平電極モードおよび感度可変水平電極モードに比べて、電極間の距離を短くして、より高い感度を得ることができる。
【0021】
図5は、窓14内に規定された複数(例えば3つ)の検知ゾーンA,B,Cの例を示す説明図である。なお、検知ゾーンとは、窓14内でウィンドガラス18が位置するエリアを意味する。一実施形態では、この検知ゾーンがウィンドガラス18の閉動作中に判定され、判定された検知ゾーンに応じて上述した検知モードが選択される。
【0022】
第1の検知ゾーンCは、ウィンドガラス18が窓枠16に向かって最大離間位置(すなわち窓14の全開位置)から第1の接近位置40Cまで移動するときのエリアである。第1の検知ゾーンCでは、好ましくは、窓枠16に設けられた電極34を使用して感度可変水平電極モードが実行される。なお、2つの電極34間の距離、すなわち静電容量センサの感度は、第1の検知ゾーンC内で一定でもよいが、ウィンドガラス18が所定距離だけ上動するごとに、2つの電極34間の距離が短くなるように変更されるのが好ましい。
【0023】
ウィンドガラス18が第1の検知ゾーンC(特に全開位置またはその近傍位置)にあるときには、挟み込みが生じる可能性が小さいためそれほど高い感度は要求されない。従って、第1の検知ゾーンCでは、全ての検知ゾーンのうちで感度は最も低く設定される。これにより、第1の検知ゾーンCにおいて必要以上に物体が過敏に検知されることが防止される。また、窓枠16の電極34が使用されるため、例えば降雨時にウィンドガラス18に付着または接近する雨滴が異物として過敏に検知されることも抑制される。
【0024】
第2の検知ゾーンBは、ウィンドガラス18が窓枠16に向かって第1の接近位置40Cから第2の接近位置40Bまで移動するときのエリアである。第2の検知ゾーンBでは、好ましくは、ウィンドガラス18に設けられた電極32を使用して感度可変水平電極モードが実行される。なお、2つの電極32間の距離、すなわち静電容量センサの感度は、第2の検知ゾーンB内で一定でもよいが、ウィンドガラス18が所定距離だけ上動するごとに、2つの電極32間の距離が短くなるように変更されるのが好ましい。
【0025】
第2の検知ゾーンBでは、第1の検知ゾーンCよりも挟み込みが生じる可能性が大きいため、静電容量センサの感度は、第1の検知ゾーンCの場合よりも高く設定される。これにより、物体の検知精度を好適に維持しつつ、必要以上に物体が過敏に検知されることが防止される。また、第2の検知ゾーンBでは、ウィンドガラス18の電極32が使用されることから、静電容量センサはウィンドガラス18に近接する物体を検知する。従って、ウィンドガラス18の外周面22に手や指などの物体が近接している場合には、その検知を適切に行うことができる。
【0026】
第3の検知ゾーンAは、ウィンドガラス18が窓枠16に向かって第2の接近位置40Bから接触位置40A(すなわち窓14の全閉位置)まで移動するときのエリアである。第3の検知ゾーンAでは、好ましくは、平行電極モードが選択される。上記したように、平行電極モードでは、感度可変水平電極モードよりも高い感度が得られる。従って、第3の検知ゾーンAでは、ウィンドガラス18と窓枠16との間に存在する物体をより適切に検知することができる。
【0027】
図6は、一実施形態の物体検知装置50(挟み込み防止装置51)の概略的なブロック回路図である。
物体検知装置50は、電界測定部52、モータ駆動回路54、位置検出回路56、外部記憶装置58、およびそれらに接続された制御回路60を含む。制御回路60は、ユーザによってウィンドガラス18の開閉操作時に使用される開閉スイッチ62に接続されている。制御回路60は、CPU、ROMおよびRAMを含むマイクロコンピュータであって、ROMおよびRAMに記憶された制御プログラムおよびアプリケーションプログラムに従って、電界測定部52、モータ駆動回路54、位置検出回路56、および外部記憶装置58を統括制御する。一実施形態では、検知ゾーンA〜Cの各々で使用する検知モードや、各検知モードで使用する2つの電極の組み合わせのパターンは、ROMまたはRAMに記憶されている。
【0028】
制御回路60は、開閉スイッチ62からの開信号又は閉信号に応答してモータ駆動回路54を制御する。モータ駆動回路54は、ウィンドガラス18を駆動するアクチュエータとしての駆動モータ64に接続され、制御回路60からの駆動制御信号に基づいて、駆動モータ64を回転駆動する。一実施形態では、駆動モータ64が正回転すると、ウィンドガラス18が上動して窓14が閉まり、反対に駆動モータ64が逆回転すると、ウィンドガラス18が下動して窓14が開く。
【0029】
位置検出回路56は、ウィンドガラス18の位置を検出する位置センサとしてのロータリエンコーダ66に接続されている。位置検出回路56は、駆動モータ64に設けられたロータリエンコーダ66からの検出信号に基づいてウィンドガラス18の移動方向を求める。一実施形態では、ロータリエンコーダ66は、駆動モータ64が所定量回動するごとに、90度の位相差を有する2つの矩形波信号(検出信号)を生成する。位置検出回路56は、この2つの矩形波信号のレベルを比較することによって駆動モータ64が正転しているか逆転しているかを判定して、ウィンドガラス18の移動方向を示すデータを生成する。この移動方向データは、制御回路60に供給されるとともに、制御回路60を介して外部記憶装置58に一時的に記憶される。
【0030】
また、位置検出回路56は、図示しない加減算カウンタを含み、2つの矩形波信号のうちの一方を用いてカウント値を加減算することにより、ウィンドガラス18の位置を求める。例えば、加減算カウンタは、ウィンドガラス18の開動作中に矩形波信号を受信する毎にカウント値をインクリメントし、ウィンドガラス18の閉動作中に矩形波信号を受信する毎にカウント値をデクリメントする。そして、位置検出回路56は、加減算カウンタのその時々のカウント値を位置データとして生成する。この位置データは、制御回路60に供給されるとともに、制御回路60を介して外部記憶装置58に一時的に記憶される。
【0031】
電界測定部52は、ウィンドガラス18に設けられた電極32に接続されるとともに、窓枠16に設けられた電極34に接続されている。電界測定部52は、電極32,34のうちの任意の2電極と組み合わせて使用されることで1つの静電容量センサとして機能する。従って、物体検知装置50は、実質的に複数の静電容量センサを含む。
【0032】
電界測定部52は、発振回路70および静電容量検出部72を含む。発振回路70は、制御回路60からの選択制御信号に基づいて、全電極32,34の中から、上述した検知モードで使用される電極群(すなわち、複数組の2電極)を特定し、その複数組の2電極に所定の交流信号(ここでは、例えば正弦波信号)を供給する。静電容量検出部72は、各組の2電極間に形成される静電容量を、各電極に供給された正弦波信号の振幅の変化と位相の変化とに基づいて検出する。なお、静電容量は2電極間の距離と誘電率とに応じて変化する。
【0033】
一実施形態では、静電容量検出部72は、波形整形回路74および出力電圧検出回路76を含む。波形整形回路74は、全波整流回路およびローパスフィルタを含み、全波整流回路は、2電極間の静電容量に応じて変化する正弦波電圧を各組の2つの電極から受信して、その正弦波電圧を全波整流する。ローパスフィルタは、全波整流回路を介して正弦波電圧を受信し、その正弦波電圧を直流電圧に変換するとともに、直流電流のリップルを平滑化する。こうして、波形整形回路74は、静電容量の大きさに応じた直流電圧を生成する。
【0034】
出力電圧検出回路76は、A/D変換回路を含み、各組の2つの電極から波形整形回路74を通じて供給される直流電圧をデジタル値に変換する。このデジタル値は、静電容量データとして制御回路60に供給されるとともに、制御回路60を通じて外部記憶装置58に一時的に記憶される。
【0035】
制御回路60は、位置検出回路56によって生成された移動方向データと位置データとに基づいてウィンドガラス18の現在の移動方向における移動距離を算出する。そして、ウィンドガラス18の移動距離が予め定めた基準距離に達するごとに、制御回路60は、各組の2つの電極間に形成される静電容量(デジタル値)を静電容量検出部72から受信する。この静電容量は、制御回路60によって外部記憶装置58に一時的に記憶される。
【0036】
制御回路60は、ウィンドガラス18が閉動作中にあるとき、静電容量検出部72から受信した現在の静電容量Cnと外部記憶装置58に記憶された一つ前の静電容量Cn−1とを比較する。この比較は、制御回路60が静電容量検出部72から新たな静電容量Cnを受信する毎に行われる。従って、制御回路60は、閉動作中にウィンドガラス18の移動距離が予め定めた基準距離に達する毎に、物体(人体の一部など)がウィンドガラス18または窓枠16に近づいたかどうかを判定する。このとき、制御回路60は、現在の静電容量Cnから一つ前の静電容量Cn−1を減算することによって得られた値が所定の閾値よりも大きい場合に、ウィンドガラス18と窓枠16との間に人体の一部が存在していると判定する。なお、閾値は、好ましくは各検知モードで異なる値に設定され、より好ましくは検知ゾーンに応じて変更される。
【0037】
制御回路60は、人体の一部を検知すると、モータ駆動回路54に駆動モータ16を逆回転させるための駆動制御信号を供給する。モータ駆動回路54は、この駆動制御信号に応答して駆動モータ64を正転から直ちに逆回転させ、ウィンドガラス18を全開状態にすべく下動させる。その結果、人体の一部がウィンドガラス18と窓枠16との間に挟まれることが未然に防止される。
【0038】
次に、図7〜図10を参照して、制御回路60によって実行される挟み込み防止処理を説明する。一実施形態では、挟み込み防止処理は、自動車10の図示しないキースイッチがオンされると(制御回路60に電源が投入されると)開始される。
【0039】
図7に示すように、ステップ100において、制御回路60は、まず初期化を行う。図8は、この初期化ステップの詳細処理を示す。図8に示すように、ステップ102において、制御回路60は、ウィンドガラス18(可動体)の現在の位置を位置検出回路56により測定して記憶する。
【0040】
次にステップ104において、制御回路60は、ウィンドガラス18の現在の位置から検知ゾーンを判定する。つまり、制御回路60は、ウィンドガラス18が検知ゾーンA〜Cのうちのいずれに位置しているのかを判定する。
【0041】
次にステップ106において、制御回路60は、判定された検知ゾーンに基づいて検知モードを選択し、その検知モードで測定に用いる電極群を電極32,34の中から特定して2電極の全ての組み合わせ(複数組の2電極)を設定する。
【0042】
次にステップ108において、制御回路60は、2電極の全ての組み合わせについて、各組の2電極間の静電容量を電界測定部52により測定して記憶する。
初期化ステップが終了すると、次にステップ200(図7参照)において、制御回路60はウィンドガラス18の上動中に静電容量の測定および解析を逐次実行する。図9は、この測定および解析ステップの詳細処理を示す。
【0043】
図9に示すように、ステップ202において、制御回路60は、ウィンドガラス18(可動体)の現在の位置を位置検出回路56により測定して記憶する。一実施形態では、このステップ202は、ウインドガラス18の閉方向への移動距離が予め定めた基準距離に達するごとに行われる。
【0044】
次にステップ204において、制御回路60は、ウィンドガラス18の現在の位置から検知ゾーンを判定する。つまり、制御回路60は、ウィンドガラス18が検知ゾーンA〜Cのうちのいずれに位置しているのかを判定する。
【0045】
次にステップ206において、制御回路60は、判定された検知ゾーンに基づいて検知モードを選択し、その検知モードで測定に用いる電極群を電極32,34の中から特定して2電極の全ての組み合わせ(複数組の2電極)を設定する。
【0046】
次にステップ208において、制御回路60は、2電極の全ての組み合わせについて、各組の2電極間の静電容量を電界測定部52により測定して記憶する。さらに、制御回路60は、現在の静電容量Cnから直前の静電容量Cn−1を減算して減算値を得る。
【0047】
次にステップ300において、制御回路60は、上記ステップ208で得られた減算値に基づいて、ウィンドガラス18と窓枠16との間に物体(人体の一部など)が存在するか否かを判定する。
【0048】
具体的に、まずステップ302において、制御回路60は、減算値が所定の閾値を超えるか否かを判定する。なお、ROMには複数の閾値が予め記憶されており、制御回路60は、現在の検知モード(あるいは検知ゾーン)に対応する閾値を読み出してステップ302の判定処理を行う。
【0049】
減算値が閾値を超えるとき、制御回路60は、ウィンドガラス18と窓枠16との間に物体が存在すると判定する(ステップ304)。減算値が閾値を超えないとき、制御回路60は、ウィンドガラス18と窓枠16との間に物体が存在しないと判定する(ステップ306)。なお、物体が存在しない場合、処理は、ステップ202に戻る。そして、制御回路60は、ウインドガラス18が更に上記基準距離だけ上動するまで待機する。
【0050】
物体が存在する場合、ステップ400(図7参照)において、制御回路60はウィンドガラス18の引き込み制御を行う。図10は、この引き込み制御ステップの詳細を示す。図10に示すように、まずステップ402において、制御回路60は、ウィンドガラス18(可動体)が全開位置か否かを判定する。このステップ402の判定処理は、位置検出回路56の加減算カウンタのカウント値を確認することによって行われる。
【0051】
ウィンドガラス18が全開位置でない場合、ステップ404において、制御回路60はウィンドガラス18の引き込みを行う。すなわち、制御回路60は、ウィンドガラス18を全開状態にすべく下動させる。その結果、人体の一部がウィンドガラス18と窓枠16との間に挟まれることが未然に防止される。このとき、制御回路60は、ウィンドガラス18を単に停止させるだけとしてもよい。ウィンドガラス18が全開位置にある場合は、制御回路60は、処理を終了する。
【0052】
次に、図11〜図13を参照して、物体サイズの推定処理について説明する。
物体検知装置50は、検知対象物体のサイズ推定機能を有する。制御回路60は、このサイズ推定処理を任意の検知モードで実行することができる。具体的に、制御回路60は、各検知モードで使用される複数の電極に対応する物体検知範囲において静電容量の分布パターンを生成する。制御回路60は、この分布パターンをROMに予め記憶されている所定の基準パターンと照合し、その照合結果に基づいて、検知対象物体のサイズを推定する。図11および図12は、水平電極モードまたは感度可変水平電極モードでウィンドガラス18の複数の電極32(10個の電極32a〜32jのみを示す)を用いて形成された分布パターン82,84の例を示している。
【0053】
図13は、制御回路60によって実行されるサイズ推定処理500の概略的なフローチャートである。まずステップ502において、制御回路60は、各検知モードで予め設定されている2電極の組み合わせに従って、2電極間の静電容量を測定して記憶する。
【0054】
次にステップ504において、制御回路60は、2電極の全ての組み合わせについて、2電極間の静電容量を測定したか否かについて判定する。全ての組み合わせについて測定が完了している場合、ステップ506において、制御回路60は、得られた各静電容量に基づいて、静電容量の分布パターンを生成する(図11および図12参照)。
【0055】
次にステップ508において、制御回路60は、静電容量の分布パターンを所定の基準パターンと照合する。そして、ステップ510において、制御回路60は、その照合結果に基づいて検知対象物体のサイズを推定する。
【0056】
このサイズ推定処理によれば、制御回路60は、基準容量の分布パターンを例えば雨滴のサイズに対応する基準パターンと照合することによって、検知対象物体が雨滴であるか否かを判定することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・検知ゾーンは規定されなくてもよい。例えば、検知モードは、検知ゾーンに依存することなく、ウィンドガラス18の移動に応じて変更されてもよい。
【0058】
・検知ゾーンの数は2つまたは4つ以上でもよい。
・第1の検知ゾーンCで窓枠16の電極34を使用することに限定されない。例えば、ウィンドガラス18の電極32を使用した感度可変水平電極モードを第1の検知ゾーンCで実行してもよい。この場合、ウィンドガラス18に近づく物体を、ウィンドガラス18の移動に応じて動的に検知することができる。
【0059】
・窓枠16の電極34を用いた感度可変水平電極モードと、ウィンドガラス18の電極32を用いた感度可変水平電極モードとの両方を、第1の検知ゾーンCで実行してもよい。
【0060】
・第2の検知ゾーンBでウィンドガラス18の電極32を使用することに限定されない。例えば、窓枠16の電極34を使用した感度可変水平電極モードを第2の検知ゾーンBで実行してもよい。更には、窓枠16の電極34を用いた感度可変水平電極モードと、ウィンドガラス18の電極32を用いた感度可変水平電極モードとの両方を、第2の検知ゾーンBで実行してもよい。あるいは、第2の検知ゾーンBで平行電極モードを実行してもよい。
【0061】
・感度可変水平電極モードが全ての検知ゾーンA〜Cで実行されてもよい。この場合にも、好ましくは、2電極間の距離(2電極の組み合わせ)を変更することによって、検知ゾーンBが検知ゾーンCよりも高い感度に設定され、検知ゾーンAが検知ゾーンBよりも高い感度に設定される。
【0062】
・ウィンドガラス18が窓枠16に接近するとき、ウィンドガラス18の位置によらずに2電極間の距離が単に段階的に短くなるように2電極の組み合わせを切り替えてもよい。この場合、ウィンドガラス18の位置を検出する必要はない。
【0063】
・物体検知装置50(挟み込み防止装置51)は、パワーウィンド装置への適用だけでなく、ビルやエレベータの自動開閉扉に適用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
14:窓、16:窓枠(フレーム)、18:ウィンドガラス18(可動体)、32,34:電極、A〜C:検知ゾーン、50:物体検知装置、51:挟み込み防止装置、52:電界測定部、56:位置検出回路、60:制御回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、感度可変型の電界測定機能を備えた物体検知装置、およびその装置を利用した挟み込み防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のパワーウィンド装置やビルの自動開閉扉には、手や頭などの人体の一部の挟み込みを防止する挟み込み防止装置が用いられている。例えば、パワーウィンド装置に搭載される挟み込み防止装置では、閉動作中のウィンドガラスと窓枠との間に異物すなわち物体が存在すると、ウィンドガラスの閉動作が停止されて、異物の挟み込みが防止される。近年、この挟み込み検知を静電容量の測定に基づいて行うことが提案されている。
【0003】
特許文献1は、静電容量検出部を備える従来の挟み込み防止装置を記載している。この挟み込み防止装置は、窓枠に設けられたセンサ電極とウィンドガラスとの間に形成される静電容量を測定して、その静電容量が基準静電容量を超えている場合に異物の挟み込みを検知する。しかしながら、この構成では、窓枠とウィンドガラスとの間に異物が挟み込まれたときに形成される静電容量が上記基準静電容量として設定されるため、異物が実際に挟み込まれた状態で検知される。つまり、特許文献1の装置は、異物がウィンドガラスに接触することを前提として挟み込み検知を行うため、挟み込み検知の精度が基準静電容量の値に大きく依存するものであった。このため、実際には挟み込みが生じているにもかかわらず、挟み込みを適切に検知できないことがあった。また、例えば異物のサイズが大きい場合、異物に大きな力が加わった後に挟み込みが検知されることがあった。
【0004】
特許文献2は、従来の挟み込み防止装置の他の例を記載している。特許文献2に記載された装置は、静電容量センサを用いて物体を非接触で検出する。静電容量センサでは、2つの電極間に異物(人体の一部など)が存在すると、静電容量が増大する。特許文献2の装置は、この静電容量センサの特性を利用して、静電容量の変化量が一定値を超えると、閉動作中の可動体(ウィンドガラスなど)に異物が接近していると判定して可動体を停止または開動作させる。この構成では、異物が挟み込まれる前に検出されるため、挟み込みを未然に防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−32628号公報
【特許文献2】特開2010−1637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の装置では、可動体に近接する異物が必要以上に検知されることがあった。例えば、降雨時にウィンドガラスが閉動作しているときに静電容量センサが雨滴に過敏に反応し、挟み込み防止装置が雨滴を異物として検知する場合があった。その結果、ウインドガラスの不必要な停止や予期せぬ開動作が行われることがあった。このため、従来の挟み込み防止装置では、挟み込み検知の精度を好適に維持しつつ、可動体の不所望な動作を防止するという点において、未だ改善の余地が残されていた。
【0007】
本発明は、こうした問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、可動体に近接する物体の検知精度を好適に維持しつつ、必要以上に物体を過敏に検知することを防止する物体検知装置およびそれを利用した挟み込み防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、フレームとフレームに対して移動する可動体との間に存在する物体を検知する物体検知装置である。3つ以上の第1の複数の電極が、フレームと可動体との少なくとも一方に配置されている。電界測定部は、第1の複数の電極に接続され、第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定して物体を検知する。制御回路は、電界測定部に接続され、可動体の移動に応じて第1の複数の電極間で2つの電極を切り替えて電界測定部の感度を変更する。
【0009】
本発明の別の態様は、フレームとフレームに対して移動する可動体との間の物体の挟み込みを防止する挟み込み防止装置である。駆動部は、フレームに対して可動体を相対移動させる。3つ以上の第1の複数の電極が、フレームと可動体との少なくとも一方に配置されている。電界測定部は、第1の複数の電極に接続され、第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定して物体を検知する。制御回路は、駆動部と電界測定部とに接続され、電界測定部により測定された静電容量に基づいて駆動部を制御する。制御回路は、可動体の移動に応じて第1の複数の電極間で2つの電極を切り替えて電界測定部の感度を変更する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の物体検知装置によれば、可動体に近接する物体の検知精度を維持しつつ、必要以上に物体を過敏に検知することを防止することができる。また、本発明の挟み込み防止装置によれば、挟み込み検知の精度を維持しつつ、可動体の不所望な動作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】自動車の窓枠に設けられたウィンドガラスを示す概略的な側面図。
【図2】窓枠とウィンドガラスとの両方に電極を配置した場合の配置例を示す図1の部分拡大図。
【図3】ウィンドガラスのみに電極を配置した場合の配置例を示す図1の部分拡大図。
【図4】窓枠のみに電極を配置した場合の配置例を示す図1の部分拡大図。
【図5】窓内に規定された複数の検知ゾーンの一例を示す説明図。
【図6】一実施形態の物体検知装置(挟み込み防止装置)の概略的なブロック回路図。
【図7】一実施形態の挟み込み防止処理の概略的なフローチャート。
【図8】図7の初期化ステップを示す概略的なフローチャート。
【図9】図7の測定および解析ステップを示す概略的なフローチャート。
【図10】図7の引き込み制御ステップを示す概略的なフローチャート。
【図11】複数の電極を用いて生成される静電容量の分布パターンの例を示す説明図。
【図12】複数の電極を用いて生成される静電容量の分布パターンの例を示す説明図。
【図13】物体サイズの推定処理を示す概略的なフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、例えば自動車10のパワーウィンド装置に搭載される一実施形態の物体検知装置およびそれを備えた挟み込み防止装置を図1〜図13を参照して説明する。
図1に示すように、自動車10のドア12には、窓枠16(フレーム)で区画される窓14(空間)を開閉するためのウィンドガラス18(可動体)が設けられている。窓枠16はウィンドガラス18と当接する内周面20を有するとともに、ウィンドガラス18は窓枠16と当接する外周面22を有している。ウィンドガラス18の外周面22が窓枠16の内周面20と当接すると、窓14が全閉される。
【0013】
図2に示すように、ウィンドガラス18の外周面22には静電容量センサ(電界センサとも呼ばれる)用の第1の複数の電極32が配置されている。なお、図2は、3つの電極32a,32b,32cのみを示しているが、実際には、多数の電極32が配置されている。例えば、電極32は、ウィンドガラス18が窓枠16の内周面20と当接する範囲24(図1参照)において、ウィンドガラス18の外周面22に所定の間隔を隔てて配置される。同様に窓枠16の内周面20にも、静電容量センサ(電界センサ)用の第2の複数の電極34が配置されている。なお、図2は、3つの電極34a,34b,34cのみを示しているが、実際には、多数の電極34が配置されている。例えば、電極34は、上述した範囲24において、窓枠16の内周面20に所定の間隔を隔てて配置される。ウィンドガラス18の電極32と窓枠16の電極34とは、ウィンドガラス18が窓枠16に近接した状態で互いに実質的に対向するように位置付けられることが好ましい。
【0014】
図3および図4は、電極の別の配置例を示す。図3では、ウィンドガラス18の外周面22のみに電極32が配置され、図4では、窓枠16の内周面20のみに電極34が配置されている。このように、ウィンドガラス18と窓枠16との一方のみに電極を配置してもよいが、物体検知の精度すなわち挟み込み検知の精度をより向上するには、図2に示すようにウィンドガラス18と窓枠16との双方に電極を配置することが好ましい。なお、以下の説明では、ウィンドガラス18と窓枠16との双方に電極が配置されているものとする。
【0015】
電極32,34は、導電性の透明薄膜、例えばITO(酸化インジウムスズ)によって四角形状に形成されている。ただし、電極32,34の材料および形状によって本発明は限定されない。静電容量センサは、複数の電極32のうちのいずれか2つ、または複数の電極34のうちのいずれか2つ、あるいは対向するいずれか2つの電極32,34(例えば電極32aと電極34aなど)を選択して、その選択された2つの電極間に形成される静電容量を測定する。この場合、2つの電極のうちの一方が正極電極として機能し、他方が負極電極として機能する。
【0016】
ここで、使用電極に応じた4つの検知モードについて説明する。
第1の検知モードは「平行電極モード」である。平行電極モードでは、静電容量センサは、ウィンドガラス18と窓枠16との間で対向する何れか2つの電極32,34を選択して、その2つの電極32,34間に形成される静電容量を測定する。例えば、図2において電極32aと電極34aとが選択される場合、人体の一部などの物体が電極32a,34a間に存在すると、静電容量センサによって測定される静電容量が大きくなる。この静電容量の変化量が閾値を超えるとき、静電容量センサは、電極32a,34a間に物体が存在すると検知する。
【0017】
第2の検知モードは「水平電極モード」である。水平電極モードでは、ウィンドガラス18に設けられた複数の電極32のうちのいずれか2つか、または窓枠16に設けられた複数の電極34のうちのいずれか2つが使用される。例えば、図2において電極32aと電極32bとが選択される場合、静電容量センサは、電極32a,32b間に形成される静電容量を測定する。この静電容量の変化量が閾値を超えると、静電容量センサは、電極32a,32b間に物体が存在する、つまりウィンドガラス18の近傍に物体が存在すると検知する。また、図2において電極34aと電極34bとが選択される場合、静電容量センサは、電極34a,34b間に形成される静電容量を測定する。この静電容量の変化量が閾値を超えると、静電容量センサは、電極34a,324間に物体が存在する、つまり窓枠16の近傍に物体が存在すると検知する。この水平電極モードでは、使用される電極群において2電極間の距離は固定される。
【0018】
第3の検知モードは「感度可変水平電極モード」である。この感度可変水平電極モードは、使用される電極群において2電極の組み合わせ、すなわち2電極間の距離が変更されるという点を除いて、上記水平電極モード(第2の検知モード)と同じである。静電容量センサでは、電極間距離が2倍になると静電容量は1/2になる。従って、電極間距離が長くなると、静電容量センサの感度すなわち検知精度は下がる。一実施形態では、電極間距離(2電極の組み合わせ)は、ウィンドガラス18の上動に応じて短くなるように変更される。
【0019】
第4の検知モードは「単電極モード」である。単電極モードでは、電極32,34のうちのいずれか1つが単電極として選択される。この場合、検知対象物は、単電極と対をなす対向電極として働く。従って、選択された単電極の近傍に物体が存在しない場合、電界は形成されない。
【0020】
平行電極モード(第1の検知モード)では、対向する2つの電極間に電界が形成されるのに対して、水平電極モード(第2の検知モード)および感度可変水平電極モード(第3の検知モード)では、横方向に配置される2つの電極間に電界が形成される。このため、平行電極モードでは、水平電極モードおよび感度可変水平電極モードに比べて、電極間の距離を短くして、より高い感度を得ることができる。
【0021】
図5は、窓14内に規定された複数(例えば3つ)の検知ゾーンA,B,Cの例を示す説明図である。なお、検知ゾーンとは、窓14内でウィンドガラス18が位置するエリアを意味する。一実施形態では、この検知ゾーンがウィンドガラス18の閉動作中に判定され、判定された検知ゾーンに応じて上述した検知モードが選択される。
【0022】
第1の検知ゾーンCは、ウィンドガラス18が窓枠16に向かって最大離間位置(すなわち窓14の全開位置)から第1の接近位置40Cまで移動するときのエリアである。第1の検知ゾーンCでは、好ましくは、窓枠16に設けられた電極34を使用して感度可変水平電極モードが実行される。なお、2つの電極34間の距離、すなわち静電容量センサの感度は、第1の検知ゾーンC内で一定でもよいが、ウィンドガラス18が所定距離だけ上動するごとに、2つの電極34間の距離が短くなるように変更されるのが好ましい。
【0023】
ウィンドガラス18が第1の検知ゾーンC(特に全開位置またはその近傍位置)にあるときには、挟み込みが生じる可能性が小さいためそれほど高い感度は要求されない。従って、第1の検知ゾーンCでは、全ての検知ゾーンのうちで感度は最も低く設定される。これにより、第1の検知ゾーンCにおいて必要以上に物体が過敏に検知されることが防止される。また、窓枠16の電極34が使用されるため、例えば降雨時にウィンドガラス18に付着または接近する雨滴が異物として過敏に検知されることも抑制される。
【0024】
第2の検知ゾーンBは、ウィンドガラス18が窓枠16に向かって第1の接近位置40Cから第2の接近位置40Bまで移動するときのエリアである。第2の検知ゾーンBでは、好ましくは、ウィンドガラス18に設けられた電極32を使用して感度可変水平電極モードが実行される。なお、2つの電極32間の距離、すなわち静電容量センサの感度は、第2の検知ゾーンB内で一定でもよいが、ウィンドガラス18が所定距離だけ上動するごとに、2つの電極32間の距離が短くなるように変更されるのが好ましい。
【0025】
第2の検知ゾーンBでは、第1の検知ゾーンCよりも挟み込みが生じる可能性が大きいため、静電容量センサの感度は、第1の検知ゾーンCの場合よりも高く設定される。これにより、物体の検知精度を好適に維持しつつ、必要以上に物体が過敏に検知されることが防止される。また、第2の検知ゾーンBでは、ウィンドガラス18の電極32が使用されることから、静電容量センサはウィンドガラス18に近接する物体を検知する。従って、ウィンドガラス18の外周面22に手や指などの物体が近接している場合には、その検知を適切に行うことができる。
【0026】
第3の検知ゾーンAは、ウィンドガラス18が窓枠16に向かって第2の接近位置40Bから接触位置40A(すなわち窓14の全閉位置)まで移動するときのエリアである。第3の検知ゾーンAでは、好ましくは、平行電極モードが選択される。上記したように、平行電極モードでは、感度可変水平電極モードよりも高い感度が得られる。従って、第3の検知ゾーンAでは、ウィンドガラス18と窓枠16との間に存在する物体をより適切に検知することができる。
【0027】
図6は、一実施形態の物体検知装置50(挟み込み防止装置51)の概略的なブロック回路図である。
物体検知装置50は、電界測定部52、モータ駆動回路54、位置検出回路56、外部記憶装置58、およびそれらに接続された制御回路60を含む。制御回路60は、ユーザによってウィンドガラス18の開閉操作時に使用される開閉スイッチ62に接続されている。制御回路60は、CPU、ROMおよびRAMを含むマイクロコンピュータであって、ROMおよびRAMに記憶された制御プログラムおよびアプリケーションプログラムに従って、電界測定部52、モータ駆動回路54、位置検出回路56、および外部記憶装置58を統括制御する。一実施形態では、検知ゾーンA〜Cの各々で使用する検知モードや、各検知モードで使用する2つの電極の組み合わせのパターンは、ROMまたはRAMに記憶されている。
【0028】
制御回路60は、開閉スイッチ62からの開信号又は閉信号に応答してモータ駆動回路54を制御する。モータ駆動回路54は、ウィンドガラス18を駆動するアクチュエータとしての駆動モータ64に接続され、制御回路60からの駆動制御信号に基づいて、駆動モータ64を回転駆動する。一実施形態では、駆動モータ64が正回転すると、ウィンドガラス18が上動して窓14が閉まり、反対に駆動モータ64が逆回転すると、ウィンドガラス18が下動して窓14が開く。
【0029】
位置検出回路56は、ウィンドガラス18の位置を検出する位置センサとしてのロータリエンコーダ66に接続されている。位置検出回路56は、駆動モータ64に設けられたロータリエンコーダ66からの検出信号に基づいてウィンドガラス18の移動方向を求める。一実施形態では、ロータリエンコーダ66は、駆動モータ64が所定量回動するごとに、90度の位相差を有する2つの矩形波信号(検出信号)を生成する。位置検出回路56は、この2つの矩形波信号のレベルを比較することによって駆動モータ64が正転しているか逆転しているかを判定して、ウィンドガラス18の移動方向を示すデータを生成する。この移動方向データは、制御回路60に供給されるとともに、制御回路60を介して外部記憶装置58に一時的に記憶される。
【0030】
また、位置検出回路56は、図示しない加減算カウンタを含み、2つの矩形波信号のうちの一方を用いてカウント値を加減算することにより、ウィンドガラス18の位置を求める。例えば、加減算カウンタは、ウィンドガラス18の開動作中に矩形波信号を受信する毎にカウント値をインクリメントし、ウィンドガラス18の閉動作中に矩形波信号を受信する毎にカウント値をデクリメントする。そして、位置検出回路56は、加減算カウンタのその時々のカウント値を位置データとして生成する。この位置データは、制御回路60に供給されるとともに、制御回路60を介して外部記憶装置58に一時的に記憶される。
【0031】
電界測定部52は、ウィンドガラス18に設けられた電極32に接続されるとともに、窓枠16に設けられた電極34に接続されている。電界測定部52は、電極32,34のうちの任意の2電極と組み合わせて使用されることで1つの静電容量センサとして機能する。従って、物体検知装置50は、実質的に複数の静電容量センサを含む。
【0032】
電界測定部52は、発振回路70および静電容量検出部72を含む。発振回路70は、制御回路60からの選択制御信号に基づいて、全電極32,34の中から、上述した検知モードで使用される電極群(すなわち、複数組の2電極)を特定し、その複数組の2電極に所定の交流信号(ここでは、例えば正弦波信号)を供給する。静電容量検出部72は、各組の2電極間に形成される静電容量を、各電極に供給された正弦波信号の振幅の変化と位相の変化とに基づいて検出する。なお、静電容量は2電極間の距離と誘電率とに応じて変化する。
【0033】
一実施形態では、静電容量検出部72は、波形整形回路74および出力電圧検出回路76を含む。波形整形回路74は、全波整流回路およびローパスフィルタを含み、全波整流回路は、2電極間の静電容量に応じて変化する正弦波電圧を各組の2つの電極から受信して、その正弦波電圧を全波整流する。ローパスフィルタは、全波整流回路を介して正弦波電圧を受信し、その正弦波電圧を直流電圧に変換するとともに、直流電流のリップルを平滑化する。こうして、波形整形回路74は、静電容量の大きさに応じた直流電圧を生成する。
【0034】
出力電圧検出回路76は、A/D変換回路を含み、各組の2つの電極から波形整形回路74を通じて供給される直流電圧をデジタル値に変換する。このデジタル値は、静電容量データとして制御回路60に供給されるとともに、制御回路60を通じて外部記憶装置58に一時的に記憶される。
【0035】
制御回路60は、位置検出回路56によって生成された移動方向データと位置データとに基づいてウィンドガラス18の現在の移動方向における移動距離を算出する。そして、ウィンドガラス18の移動距離が予め定めた基準距離に達するごとに、制御回路60は、各組の2つの電極間に形成される静電容量(デジタル値)を静電容量検出部72から受信する。この静電容量は、制御回路60によって外部記憶装置58に一時的に記憶される。
【0036】
制御回路60は、ウィンドガラス18が閉動作中にあるとき、静電容量検出部72から受信した現在の静電容量Cnと外部記憶装置58に記憶された一つ前の静電容量Cn−1とを比較する。この比較は、制御回路60が静電容量検出部72から新たな静電容量Cnを受信する毎に行われる。従って、制御回路60は、閉動作中にウィンドガラス18の移動距離が予め定めた基準距離に達する毎に、物体(人体の一部など)がウィンドガラス18または窓枠16に近づいたかどうかを判定する。このとき、制御回路60は、現在の静電容量Cnから一つ前の静電容量Cn−1を減算することによって得られた値が所定の閾値よりも大きい場合に、ウィンドガラス18と窓枠16との間に人体の一部が存在していると判定する。なお、閾値は、好ましくは各検知モードで異なる値に設定され、より好ましくは検知ゾーンに応じて変更される。
【0037】
制御回路60は、人体の一部を検知すると、モータ駆動回路54に駆動モータ16を逆回転させるための駆動制御信号を供給する。モータ駆動回路54は、この駆動制御信号に応答して駆動モータ64を正転から直ちに逆回転させ、ウィンドガラス18を全開状態にすべく下動させる。その結果、人体の一部がウィンドガラス18と窓枠16との間に挟まれることが未然に防止される。
【0038】
次に、図7〜図10を参照して、制御回路60によって実行される挟み込み防止処理を説明する。一実施形態では、挟み込み防止処理は、自動車10の図示しないキースイッチがオンされると(制御回路60に電源が投入されると)開始される。
【0039】
図7に示すように、ステップ100において、制御回路60は、まず初期化を行う。図8は、この初期化ステップの詳細処理を示す。図8に示すように、ステップ102において、制御回路60は、ウィンドガラス18(可動体)の現在の位置を位置検出回路56により測定して記憶する。
【0040】
次にステップ104において、制御回路60は、ウィンドガラス18の現在の位置から検知ゾーンを判定する。つまり、制御回路60は、ウィンドガラス18が検知ゾーンA〜Cのうちのいずれに位置しているのかを判定する。
【0041】
次にステップ106において、制御回路60は、判定された検知ゾーンに基づいて検知モードを選択し、その検知モードで測定に用いる電極群を電極32,34の中から特定して2電極の全ての組み合わせ(複数組の2電極)を設定する。
【0042】
次にステップ108において、制御回路60は、2電極の全ての組み合わせについて、各組の2電極間の静電容量を電界測定部52により測定して記憶する。
初期化ステップが終了すると、次にステップ200(図7参照)において、制御回路60はウィンドガラス18の上動中に静電容量の測定および解析を逐次実行する。図9は、この測定および解析ステップの詳細処理を示す。
【0043】
図9に示すように、ステップ202において、制御回路60は、ウィンドガラス18(可動体)の現在の位置を位置検出回路56により測定して記憶する。一実施形態では、このステップ202は、ウインドガラス18の閉方向への移動距離が予め定めた基準距離に達するごとに行われる。
【0044】
次にステップ204において、制御回路60は、ウィンドガラス18の現在の位置から検知ゾーンを判定する。つまり、制御回路60は、ウィンドガラス18が検知ゾーンA〜Cのうちのいずれに位置しているのかを判定する。
【0045】
次にステップ206において、制御回路60は、判定された検知ゾーンに基づいて検知モードを選択し、その検知モードで測定に用いる電極群を電極32,34の中から特定して2電極の全ての組み合わせ(複数組の2電極)を設定する。
【0046】
次にステップ208において、制御回路60は、2電極の全ての組み合わせについて、各組の2電極間の静電容量を電界測定部52により測定して記憶する。さらに、制御回路60は、現在の静電容量Cnから直前の静電容量Cn−1を減算して減算値を得る。
【0047】
次にステップ300において、制御回路60は、上記ステップ208で得られた減算値に基づいて、ウィンドガラス18と窓枠16との間に物体(人体の一部など)が存在するか否かを判定する。
【0048】
具体的に、まずステップ302において、制御回路60は、減算値が所定の閾値を超えるか否かを判定する。なお、ROMには複数の閾値が予め記憶されており、制御回路60は、現在の検知モード(あるいは検知ゾーン)に対応する閾値を読み出してステップ302の判定処理を行う。
【0049】
減算値が閾値を超えるとき、制御回路60は、ウィンドガラス18と窓枠16との間に物体が存在すると判定する(ステップ304)。減算値が閾値を超えないとき、制御回路60は、ウィンドガラス18と窓枠16との間に物体が存在しないと判定する(ステップ306)。なお、物体が存在しない場合、処理は、ステップ202に戻る。そして、制御回路60は、ウインドガラス18が更に上記基準距離だけ上動するまで待機する。
【0050】
物体が存在する場合、ステップ400(図7参照)において、制御回路60はウィンドガラス18の引き込み制御を行う。図10は、この引き込み制御ステップの詳細を示す。図10に示すように、まずステップ402において、制御回路60は、ウィンドガラス18(可動体)が全開位置か否かを判定する。このステップ402の判定処理は、位置検出回路56の加減算カウンタのカウント値を確認することによって行われる。
【0051】
ウィンドガラス18が全開位置でない場合、ステップ404において、制御回路60はウィンドガラス18の引き込みを行う。すなわち、制御回路60は、ウィンドガラス18を全開状態にすべく下動させる。その結果、人体の一部がウィンドガラス18と窓枠16との間に挟まれることが未然に防止される。このとき、制御回路60は、ウィンドガラス18を単に停止させるだけとしてもよい。ウィンドガラス18が全開位置にある場合は、制御回路60は、処理を終了する。
【0052】
次に、図11〜図13を参照して、物体サイズの推定処理について説明する。
物体検知装置50は、検知対象物体のサイズ推定機能を有する。制御回路60は、このサイズ推定処理を任意の検知モードで実行することができる。具体的に、制御回路60は、各検知モードで使用される複数の電極に対応する物体検知範囲において静電容量の分布パターンを生成する。制御回路60は、この分布パターンをROMに予め記憶されている所定の基準パターンと照合し、その照合結果に基づいて、検知対象物体のサイズを推定する。図11および図12は、水平電極モードまたは感度可変水平電極モードでウィンドガラス18の複数の電極32(10個の電極32a〜32jのみを示す)を用いて形成された分布パターン82,84の例を示している。
【0053】
図13は、制御回路60によって実行されるサイズ推定処理500の概略的なフローチャートである。まずステップ502において、制御回路60は、各検知モードで予め設定されている2電極の組み合わせに従って、2電極間の静電容量を測定して記憶する。
【0054】
次にステップ504において、制御回路60は、2電極の全ての組み合わせについて、2電極間の静電容量を測定したか否かについて判定する。全ての組み合わせについて測定が完了している場合、ステップ506において、制御回路60は、得られた各静電容量に基づいて、静電容量の分布パターンを生成する(図11および図12参照)。
【0055】
次にステップ508において、制御回路60は、静電容量の分布パターンを所定の基準パターンと照合する。そして、ステップ510において、制御回路60は、その照合結果に基づいて検知対象物体のサイズを推定する。
【0056】
このサイズ推定処理によれば、制御回路60は、基準容量の分布パターンを例えば雨滴のサイズに対応する基準パターンと照合することによって、検知対象物体が雨滴であるか否かを判定することができる。
【0057】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・検知ゾーンは規定されなくてもよい。例えば、検知モードは、検知ゾーンに依存することなく、ウィンドガラス18の移動に応じて変更されてもよい。
【0058】
・検知ゾーンの数は2つまたは4つ以上でもよい。
・第1の検知ゾーンCで窓枠16の電極34を使用することに限定されない。例えば、ウィンドガラス18の電極32を使用した感度可変水平電極モードを第1の検知ゾーンCで実行してもよい。この場合、ウィンドガラス18に近づく物体を、ウィンドガラス18の移動に応じて動的に検知することができる。
【0059】
・窓枠16の電極34を用いた感度可変水平電極モードと、ウィンドガラス18の電極32を用いた感度可変水平電極モードとの両方を、第1の検知ゾーンCで実行してもよい。
【0060】
・第2の検知ゾーンBでウィンドガラス18の電極32を使用することに限定されない。例えば、窓枠16の電極34を使用した感度可変水平電極モードを第2の検知ゾーンBで実行してもよい。更には、窓枠16の電極34を用いた感度可変水平電極モードと、ウィンドガラス18の電極32を用いた感度可変水平電極モードとの両方を、第2の検知ゾーンBで実行してもよい。あるいは、第2の検知ゾーンBで平行電極モードを実行してもよい。
【0061】
・感度可変水平電極モードが全ての検知ゾーンA〜Cで実行されてもよい。この場合にも、好ましくは、2電極間の距離(2電極の組み合わせ)を変更することによって、検知ゾーンBが検知ゾーンCよりも高い感度に設定され、検知ゾーンAが検知ゾーンBよりも高い感度に設定される。
【0062】
・ウィンドガラス18が窓枠16に接近するとき、ウィンドガラス18の位置によらずに2電極間の距離が単に段階的に短くなるように2電極の組み合わせを切り替えてもよい。この場合、ウィンドガラス18の位置を検出する必要はない。
【0063】
・物体検知装置50(挟み込み防止装置51)は、パワーウィンド装置への適用だけでなく、ビルやエレベータの自動開閉扉に適用することもできる。
【符号の説明】
【0064】
14:窓、16:窓枠(フレーム)、18:ウィンドガラス18(可動体)、32,34:電極、A〜C:検知ゾーン、50:物体検知装置、51:挟み込み防止装置、52:電界測定部、56:位置検出回路、60:制御回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと前記フレームに対して移動する可動体との間に存在する物体を検知する物体検知装置であって、
前記フレームと前記可動体とのうち少なくとも一方に配置された3つ以上の第1の複数の電極と、
前記第1の複数の電極に接続され、前記第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定して前記物体を検知する電界測定部と、
前記電界測定部に接続され、前記可動体の移動に応じて前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えて前記電界測定部の感度を変更する制御回路と、
を備える物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記可動体が前記フレームに接近するほど前記2つの電極間の距離が短くなるように前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物体検知装置はさらに、
前記制御回路に接続され、前記可動体の位置を検出する位置検出回路を備え、
前記制御回路は、前記可動体の位置に応じて前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記可動体が位置する検知ゾーンを判定し、前記検知ゾーンに応じて前記2つの電極を前記第1の複数の電極間で切り替えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の物体検知装置において、
前記検知ゾーンは、前記可動体が可動する空間に設定された複数の検知ゾーンのうちの1つであり、前記複数の検知ゾーンは、
前記可動体が前記フレームに向かって最大離間位置から第1の接近位置まで移動するときに検出される第1の検知ゾーンと、
前記可動体が前記フレームに向かって前記第1の接近位置から第2の接近位置まで更に移動するときに検出される第2の検知ゾーンとを含み、
前記制御回路は、前記第1の検知ゾーンよりも前記第2の検知ゾーンにおいて前記電界測定部の感度を高く設定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の物体検知装置において、
前記第1の複数の電極は、前記可動体または前記フレームに配置されていることを特徴とする物体検知装置。
【請求項7】
請求項5に記載の物体検知装置において、
前記第1の複数の電極は、前記フレームに配置されており、
前記物体検知装置はさらに、前記可動体に配置され、かつ前記電界測定部に接続された3つ以上の第2の複数の電極を備え、
前記制御回路は、前記可動体が前記第1の検知ゾーン内にあるとき、前記電界測定部を用いて前記第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定し、前記可動体が前記第2の検知ゾーン内にあるとき、前記電界測定部を用いて前記第2の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項8】
請求項7に記載の物体検知装置において、
前記複数の検知ゾーンはさらに、
前記可動体が前記フレームに向かって前記第2の接近位置から接触位置まで更に移動するときに検出される第3の検知ゾーンを含み、
前記制御回路は、前記可動体が前記第3の検知ゾーン内にあるとき、前記電界測定部を用いて前記第1の複数の電極のうちの1つと前記第2の複数の電極のうちの1つとの間の静電容量を測定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項9】
請求項1に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記可動体が前記フレームに接近するとき、前記2つの電極間の距離が段階的に短くなるように前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項10】
請求項1に記載の物体検知装置において、
前記電界測定部はさらに、前記第1の複数の電極の各々と前記物体との間に形成される静電容量に基づいて前記物体を検知可能であることを特徴とする物体検知装置。
【請求項11】
請求項1乃至10に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記第1の複数の電極に対応する物体検知範囲で静電容量の分布パターンを生成し、当該生成された分布パターンを予め規定されたパターンと照合して前記物体のサイズを推定するように構成されていることを特徴とする物体検知装置。
【請求項12】
請求項11に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記照合に基づいて、前記物体が雨滴か否かを判定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の物体検知装置において、
前記フレームは、前記自動車のドアに設けられた窓枠であり、前記可動体は、前記窓枠内に移動可能に設けられたウィンドガラスであることを特徴とする物体検知装置。
【請求項14】
フレームと前記フレームに対して移動する可動体との間における物体の挟み込みを防止する挟み込み防止装置であって、
前記フレームに対して前記可動体を相対移動させる駆動部と、
前記フレームと前記可動体とのうち少なくとも一方に配置された3つ以上の第1の複数の電極と、
前記第1の複数の電極に接続され、前記第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定して前記物体を検知する電界測定部と、
前記駆動部と前記電界測定部とに接続され、前記電界測定部により測定された前記静電容量に基づいて前記駆動部を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記可動体の移動に応じて前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えて前記電界測定部の感度を変更することを特徴とする挟み込み防止装置。
【請求項15】
請求項14に記載の挟み込み防止装置において、
前記制御回路は、前記電界測定部により測定された前記静電容量に基づいて前記物体が雨滴か否かを判定し、前記物体が雨滴の場合、前記フレームへの接近方向への前記可動体の移動を継続させることを特徴とする挟み込み防止装置。
【請求項1】
フレームと前記フレームに対して移動する可動体との間に存在する物体を検知する物体検知装置であって、
前記フレームと前記可動体とのうち少なくとも一方に配置された3つ以上の第1の複数の電極と、
前記第1の複数の電極に接続され、前記第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定して前記物体を検知する電界測定部と、
前記電界測定部に接続され、前記可動体の移動に応じて前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えて前記電界測定部の感度を変更する制御回路と、
を備える物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記可動体が前記フレームに接近するほど前記2つの電極間の距離が短くなるように前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の物体検知装置はさらに、
前記制御回路に接続され、前記可動体の位置を検出する位置検出回路を備え、
前記制御回路は、前記可動体の位置に応じて前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項3に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記可動体が位置する検知ゾーンを判定し、前記検知ゾーンに応じて前記2つの電極を前記第1の複数の電極間で切り替えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
請求項4に記載の物体検知装置において、
前記検知ゾーンは、前記可動体が可動する空間に設定された複数の検知ゾーンのうちの1つであり、前記複数の検知ゾーンは、
前記可動体が前記フレームに向かって最大離間位置から第1の接近位置まで移動するときに検出される第1の検知ゾーンと、
前記可動体が前記フレームに向かって前記第1の接近位置から第2の接近位置まで更に移動するときに検出される第2の検知ゾーンとを含み、
前記制御回路は、前記第1の検知ゾーンよりも前記第2の検知ゾーンにおいて前記電界測定部の感度を高く設定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の物体検知装置において、
前記第1の複数の電極は、前記可動体または前記フレームに配置されていることを特徴とする物体検知装置。
【請求項7】
請求項5に記載の物体検知装置において、
前記第1の複数の電極は、前記フレームに配置されており、
前記物体検知装置はさらに、前記可動体に配置され、かつ前記電界測定部に接続された3つ以上の第2の複数の電極を備え、
前記制御回路は、前記可動体が前記第1の検知ゾーン内にあるとき、前記電界測定部を用いて前記第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定し、前記可動体が前記第2の検知ゾーン内にあるとき、前記電界測定部を用いて前記第2の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項8】
請求項7に記載の物体検知装置において、
前記複数の検知ゾーンはさらに、
前記可動体が前記フレームに向かって前記第2の接近位置から接触位置まで更に移動するときに検出される第3の検知ゾーンを含み、
前記制御回路は、前記可動体が前記第3の検知ゾーン内にあるとき、前記電界測定部を用いて前記第1の複数の電極のうちの1つと前記第2の複数の電極のうちの1つとの間の静電容量を測定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項9】
請求項1に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記可動体が前記フレームに接近するとき、前記2つの電極間の距離が段階的に短くなるように前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えることを特徴とする物体検知装置。
【請求項10】
請求項1に記載の物体検知装置において、
前記電界測定部はさらに、前記第1の複数の電極の各々と前記物体との間に形成される静電容量に基づいて前記物体を検知可能であることを特徴とする物体検知装置。
【請求項11】
請求項1乃至10に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記第1の複数の電極に対応する物体検知範囲で静電容量の分布パターンを生成し、当該生成された分布パターンを予め規定されたパターンと照合して前記物体のサイズを推定するように構成されていることを特徴とする物体検知装置。
【請求項12】
請求項11に記載の物体検知装置において、
前記制御回路は、前記照合に基づいて、前記物体が雨滴か否かを判定することを特徴とする物体検知装置。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の物体検知装置において、
前記フレームは、前記自動車のドアに設けられた窓枠であり、前記可動体は、前記窓枠内に移動可能に設けられたウィンドガラスであることを特徴とする物体検知装置。
【請求項14】
フレームと前記フレームに対して移動する可動体との間における物体の挟み込みを防止する挟み込み防止装置であって、
前記フレームに対して前記可動体を相対移動させる駆動部と、
前記フレームと前記可動体とのうち少なくとも一方に配置された3つ以上の第1の複数の電極と、
前記第1の複数の電極に接続され、前記第1の複数の電極のうちの任意の2つの電極間の静電容量を測定して前記物体を検知する電界測定部と、
前記駆動部と前記電界測定部とに接続され、前記電界測定部により測定された前記静電容量に基づいて前記駆動部を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記可動体の移動に応じて前記第1の複数の電極間で前記2つの電極を切り替えて前記電界測定部の感度を変更することを特徴とする挟み込み防止装置。
【請求項15】
請求項14に記載の挟み込み防止装置において、
前記制御回路は、前記電界測定部により測定された前記静電容量に基づいて前記物体が雨滴か否かを判定し、前記物体が雨滴の場合、前記フレームへの接近方向への前記可動体の移動を継続させることを特徴とする挟み込み防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−240775(P2011−240775A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113161(P2010−113161)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(504199127)フリースケール セミコンダクター インコーポレイテッド (806)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]