説明

感熱性平版印刷版前駆体のためのポリマー

感熱性平版印刷版前駆体のためのポリマーが開示され、ここでポリマーはフェノール性モノマー単位のフェニル基のヒドロキシ基のH原子がN−イミド基を含んでなる基により置き換えられているフェノール性モノマー単位を含んでなり、且つここでポリマーの置換は印刷版前駆体のコーティングの化学的抵抗性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は感熱性平版印刷版前駆体のためのポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
平版印刷機は、印刷機の胴上に搭載される印刷版のようないわゆる印刷マスターを使用する。マスターはその表面上に平版印刷画像を保有しており、該画像にインキを適用し、次いでインキをマスターから典型的には紙である受容材料上に転写することによりプリントが得られる。通常のいわゆる「湿式」平版印刷の場合、インキならびに水性湿し液(aqueous fountain solution)(湿し液(dampening liquid)とも呼ばれる)が、親油性(又は疎水性、すなわちインキ−受容性、水−反発性)領域ならびに親水性(又は疎油性、すなわち水−受容性、インキ−反発性)領域から成る平版印刷画像に供給される。いわゆるドライオグラフィー印刷の場合、平版印刷画像はインキ−受容性及びインキ−不粘着性(ink−abhesive)(インキ−反発性)領域から成り、ドライオグラフィー印刷の間にはインキのみがマスターに供給される。
【0003】
印刷マスターは一般にいわゆるコンピューター−ツウ−フィルム法(computer−to−film method)により得られ、その方法では活字書体選択、走査、色分解、スクリーニング、トラッピング、レイアウト及び組付けのような種々のプリ−プレス段階がデジタル的に行われ、各色選択がイメージセッターを用いてグラフィックアートフィルムに転写される。処理の後、版前駆体と呼ばれる画像形成材料の露出のためのマスクとしてフィルムを用いることができ、版の処理の後、マスターとして用いることができる印刷版が得られる。
【0004】
コンピューター−ツウ−フィルム法のための典型的な印刷版前駆体は、親水性支持体ならびにUV−感受性ジアゾ化合物、二クロム酸塩−増感親水性コロイド及び多様な合成フォトポリマーを含む感光性ポリマー層の画像−記録層を含んでなる。特にジアゾ−増感系が広く用いられる。典型的にはUV接触枠中でフィルムマスクにより画像通りに露出されると、露出された画像領域は水性アルカリ性現像液中に不溶性となり、非露出領域は可溶性のまである。次いで現像液を用いて版を処理し、非露出領域中のジアゾニウム塩又はジアゾ樹脂を除去する。従って露出領域は印刷マスターの画像領域(印刷領域)を区画し、そのような印刷版前駆体は従って「ネガティブ−作用性」と呼ばれる。露出領域が非−印刷領域を区画するポジティブ−作用性材料、例えば露出された領域のみで現像液中に溶解するノボラック/ナフトキノン−ジアジドコーティングを有する版も既知である。
【0005】
上記の感光性材料の他に、感熱性印刷版前駆体も非常に普及してきた。そのような熱的材料は昼光−安定性の利点を与え、版前駆体が直接、すなわちフィルムマスクを用いずに露出されるいわゆるダイレクト刷版(computer−to−plate)法で特に用いられる。材料は熱又は赤外光に露出され、発生する熱が(物理−)化学的プロセス、例えば融蝕、重合、ポリマーの架橋による不溶化、熱−誘導可溶化、分解又は熱可塑性ポリマーラテックスの粒子凝析を開始させる。
【0006】
既知の感熱性印刷版前駆体は、典型的には親水性支持体ならびに露出された領域において(ポジティブ作用性材料)又は非−露出領域において(ネガティブ作用性材料)アルカリ−可溶性である親油性ポリマー及びIR−吸収化合物を含有するコーティングを含んでなる。そのような親油性ポリマーは典型的にはフェノール樹脂である。
【0007】
特許文献1は、基質上にポジティブ作用性レジストパターンを作製するための方法を記載しており、その方法ではコーティング組成物が官能基を有するポリマー性物質を含んでなり、官能基化されたポリマー性物質は、放射線の送達前にそれが現像液不溶性であり、その後現像液可溶性となるような性質を有する。適した官能基は水素結合に有利なことが知られ、アミノ、アミド、クロロ、フルオロ、カルボニル、スルフィニル及びスルホニル基を含むことができ、これらの基はフェノール性ヒドロキシ基とのエステル化反応によりポリマー性物質に結合して樹脂エステルを生成する。
【0008】
特許文献2は平版印刷版のための感光性組成物を記載しており、ここで組成物はフェノール性ヒドロキシル基を有するアルカリ−可溶性樹脂を含有し、且つアルカリ−可溶性樹脂のフェノール性ヒドロキシル基の少なくともいくつかはスルホン酸又はカルボン酸化合物によりエステル化されている。
【0009】
特許文献3は、水中又はアルカリ水溶液中における溶解度が光又は熱の影響により変わる組成物から作られる記録層を含んでなる画像形成材料を記載している。この記録層は、ヒドロキシ基及びアルコキシ基が芳香族炭化水素環に直接結合しているビニルフェノールのポリマー又はフェノール性ポリマーを含んでなる。アルコキシ基は20個もしくはそれ未満の炭素原子から成る。
【0010】
特許文献4は、結合剤が芳香族炭化水素環上において特定の官能基、例えばハロゲン原子、12個もしくはそれ未満の炭素原子を有するアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、シアノ基、ニトロ基又はトリフルオロメチル基で置換されているか、あるいはフェノール性ポリマーのヒドロキシ基の水素原子が特定の官能基、例えばアミド、チオアミド又はスルホンアミド基で置換されているフェノール性ポリマーである感光性樹脂組成物又は記録材料を記載している。結果として記録材料のコーティングは、レーザー露出の時点に光から熱への変換により得られる熱のフィルム内トランジスティビティ(intrafilm transistivity)を向上させるような高い密度を有する。コーティングの高い密度は、画像記録材料を湿度及び温度のような外部的影響にあまり敏感でなくする。結果として、画像記録材料の保存安定性を強化することもできる。
【0011】
特許文献5は、印刷回路板用途のための基質表面上に画像形成パターンを作るための直接法を記載している。方法はサーモ−レジスト(thermo−resist)組成物を用いており、それは組成物の融蝕に、又は特定の現像液中におけるその溶解度の向上又は低下に有効な熱的に誘導される化学的変換を経る。サーモ−レジスト組成物は、遊離のヒドロキシル基が保護されたフェノール性ポリマーを含んでなる。酸の存在下で加熱されると、これらの保護基が切断されて組成物の溶解度変化を生ずる。ポジティブサーモ−レジストにおいて、ヒドロキシル保護基はエーテル類、例えばアルキル−、ベンジル−、シクロアルキル−又はトリアルキルシリル−エーテル及びオキシ−カルボニル基であることができる。
【0012】
平版印刷プロセスの間に、インキ及び湿し液は平版印刷版に継続的に供給される。これらの液は印刷版のコーティングを攻撃し得、結局、下記で「化学的抵抗性」と呼ばれるこれらの液に対するコーティングの抵抗性が印刷ランレングスに影響し得る。これらのコーティング中で最も広く用いられるポリマーはフェノール樹脂であり、これらの樹脂及び上記の先行技術において記載されているようなフェノール基のヒドロキシル基上における化学的置換反応により改変されたフェノール樹脂は十分に化学的抵抗性を向上させないことが見出された。本発明において提案されるように改変されたフェノール樹脂は、コーティングの化学的抵抗性を向上させ、且つ版の印刷ランレングスを向上させることを可能にする。
【特許文献1】国際公開第99/01795号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第0934822号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1072432号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第0982123号明細書
【特許文献5】米国特許第5641608号明細書
【発明の開示】
【0013】
発明の概略
本発明の一側面は、フェノール性モノマー単位のヒドロキシ基のH原子が構造
【0014】
【化1】

【0015】
[式中、Lは連結基であり、kは0又は1であり、kが1の場合、LがポリマーのO原子に共有結合しているか、あるいはkが0の場合、N−イミド基のN原子がポリマーのO原子に共有結合しており、X又はYは独立してO又はSから選ばれ、そしてT及びTは末端基を示す]
を有するN−イミド基Qにより置き換えられているフェノール性モノマー単位を含んでなるポリマーを提供することである。
【0016】
印刷液及び印刷機化学品に対する感熱性コーティングの化学的抵抗性が向上した感熱性平版印刷版前駆体のために、請求項1で定義されたポリマーを提供することもまた本発明の一側面である。
【0017】
本発明の特定の態様は従属クレイムにおいて定義される。
発明の詳細な記述
向上した印刷ランレングスを有する感熱性平版印刷版を得るために、湿し液及びインキのような印刷液に対する、ならびに版、ブランケット及び印刷機ローラーのためのクリーニング液のような印刷機化学品に対する感熱性コーティングの化学的抵抗性を向上させることが重要である。これらの印刷性はコーティングの組成により影響され、ここでポリマーの型はこの性質のための最も重要な成分の1つである。
【0018】
本発明に従い、フェノール性モノマー単位のヒドロキシ基のH原子が構造
【0019】
【化2】

【0020】
[式中、Lは連結基であり、kは0又は1であり、ここでkが1の場合、LがポリマーのO原子に共有結合しているか、あるいはkが0の場合、N−イミド基のN原子がポリマーのO原子に共有結合しており、X又はYは独立してO又はSから選ばれ、そしてT及びTは末端基を示す]
を有するN−イミド基Qにより置き換えられているフェノール性モノマー単位を含んでなるポリマーを提供する。本明細書で言及される「N−イミド基」は、そのN原子が連結基又はフェノール性モノマー単位のO原子にカップリングしているイミド基を定義する。
【0021】
親水性表面を有する支持体ならびにこのポリマー及び赤外吸収剤を含む親油性コーティングを含んでなる感熱性平版印刷版前駆体を提供することもまた本発明の一側面である。
【0022】
このポリマーを含んでなる親油性コーティングが、上記で定義した構造を有するこの特定のN−イミド基Qによるポリマーの改変のために、向上した化学的抵抗性を有することも本発明の側面である。いくつかの試験によりこの化学的抵抗性を測定することができる。
【0023】
本発明の好ましい態様に従うと、末端基T及びTは場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれるか、あるいはT及びTはN−イミド基と一緒になって環状構造の形成に必要な原子を示すか、あるいはT及びTは以下の構造−L−R及び−L−Rを示し、ここで
及びLは独立して連結基を示し、
及びRは水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基、ハロゲン、−CN又は−NOから独立して選ばれるか、
あるいは各L、L、R及びRから選ばれる2個の基は一緒になって環状構造の形成に必要な原子を示す。
【0024】
本発明の他の好ましい態様に従うと、N−イミド基Qは次式
【0025】
【化3】

【0026】
[式中、G及びGはO、S、NR又はCRから独立して選ばれ、GがOの場合GはO又はSではなく且つGがNRの場合GはO又はSではないという制限を有し、
ここでR及びRは水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−Rから独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
及びRは水素あるいは場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれるか、
あるいは各R、R、R、R及びLから選ばれる2個の基は一緒になって環状構造の形成に必要な基を示す]
を有する。
【0027】
本発明の他の好ましい態様に従うと、N−イミド基Qは次式
【0028】
【化4】

【0029】
[式中、G〜GはO、S、NR又はCRから独立して選ばれ、G〜Gから選ばれる少なくとも1個の基はCRであり且つG〜Gから選ばれる2個の隣接基はOとSにより、OとNRにより、SとNRにより、又はOとOにより示されないという制限を有するか、
あるいはGは連結基であり、ここで
及びRは水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−R10から独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
及びR10は水素あるいは場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれるか、
あるいは各R、R、R、R10及びLから選ばれる2個の基は一緒になって環状構造の形成に必要な基を示す]
を有する。
【0030】
本発明の他の好ましい態様に従うと、N−イミド基Qは次式
【0031】
【化5】

【0032】
[式中、GはO、S、NR11又はCR1213から選ばれる基であり、
mは0又は1であり、ここで
12〜R15は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−R16から独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
11及びR16は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれるか、
あるいは各R11、R12、R13、R14、R15、R16及びLから選ばれる2個の基は一緒になって環状構造の形成に必要な原子を示す]
を有する。
【0033】
本発明の他の好ましい態様に従うと、N−イミド基Qは次式
【0034】
【化6】

【0035】
[式中、E及びEはO、S、NR17又はCR1819から独立して選ばれ、
p及びqは独立して0又は1であり、ここで
18〜R21は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−R22から独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
17及びR22は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれる]
を有する。
【0036】
本発明の他の好ましい態様に従うと、N−イミド基Qは次式:
【0037】
【化7】

【0038】
[式中、各R23〜R26は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基、ハロゲン、−SO−NH−R27、−NH−SO−R30、−CO−NR27−R28、−NR27−CO−R30、−NR27−CO−NR28−R29、−NR27−CS−NR28−R29、−NR27−CO−O−R28、−O−CO−NR27−R28、−O−CO−R30、−CO−O−R27、−CO−R27、−SO−R27、−O−SO−R30、−SO−R27、−SO−R30、−P(=O)(−O−R27)(−O−R28)、−O−P(=O)(−O−R27)(−O−R28)、−NR27−R28、−O−R27、−S−R27、−CN、−NO、−N(−CO−R27)(−CO−R28)、−N−フタルイミジル、−M−N−フタルイミジル又は−M−R27から独立して選ばれ、ここでMは1〜8個の炭素原子を含有する2価連結基を示し、ここで
27〜R29は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれ、
30は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から選ばれ、
a及びdは独立して0、1、2、3又は4であり、
b及びcは独立して0、1、2又は3であり、
はO、S、NR31又はCR3233から選ばれ、ここで
32及びR33は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−R34から独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
31及びR34は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれる]
の1つを有する。
【0039】
本発明の他の好ましい態様に従うと、N−イミド基Qは次式:
【0040】
【化8】

【0041】
[式中、各R35〜R44は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基、ハロゲン、−SO−NH−R45、−NH−SO−R48、−CO−NR45−R46、−NR45−CO−R48、−NR45−CO−NR46−R47、−NR45−CS−NR46−R47、−NR45−CO−O−R46、−O−CO−NR45−R46、−O−CO−R48、−CO−O−R45、−CO−R45、−SO−R45、−O−SO−R48、−SO−R45、−SO−R48、−P(=O)(−O−R45)(−O−R46)、−O−P(=O)(−O−R45)(−O−R46)、−NR45−R46、−O−R45、−S−R45、−CN、−N(−CO−R45)(−CO−R46)、−N−フタルイミジル、−M−N−フタルイミジル又は−M−R45から独立して選ばれ、ここでMは1〜8個の炭素原子を含有する2価連結基を示し、ここで
45〜R47は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれ、
48は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から選ばれる]
の1つを有する。
【0042】
本発明の他の好ましい態様に従うと、N−イミド基Qは次式:
【0043】
【化9】

【0044】
[式中、R49〜R56は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれ、そして
57及びR58は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれる]
の1つを有する。
【0045】
本発明の他の好ましい態様に従うと、N−イミド基Qは次式:
【0046】
【化10】

【0047】
の1つを有する。
【0048】
連結基の例は−CO−、−CO−O−、−CS−、−CO−NR−、−SO−、−SO−、−SO−、−SO−NH−、−(CR−、アルキレン、例えば−CH−、−CH−CH−、−CH−(CH−CH−、アリーレン、例えばフェニレン又はナフタレン、2価の複素環式基あるいはそれらの適した組み合わせから選ぶことができる。本明細書でn及びtは1〜8の整数を示し、R及びRは水素あるいは場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から選ばれる基を示す。
【0049】
本発明のポリマーはいくつかの経路を介して、例えばN−イミド基を含んでなる反応性化合物とフェノール性モノマー単位を含有するポリマーのヒドロキシ基との反応により得ることができる。N−イミド基を含んでなる反応性化合物とフェノール性モノマーのヒドロキシ基との反応、及び続くこの反応したモノマーの重合又は重縮合によって本発明のポリマーを得ることもできる。これらの予備−改変されたモノマーを他のモノマーと選択的に共重合又は共重縮合させることができる。
【0050】
本明細書で後に「置換試薬」とも呼ばれるそのような「N−イミド基を含んでなる反応性化合物」は、N−イミド基の他にフェノール単位のヒドロキシ基と反応できる官能基又はそのための前駆体を含んでなる化合物である。ヒドロキシ基へのこの置換反応に適した官能基又は前駆体の例は酸、酸無水物、酸ハロゲン化物、ハロゲン化物又はイソシアナートである。
【0051】
この置換反応に用いられ得る置換試薬の例は:
SR−01:N−(ブロモ−メチル)−フタルイミド
SR−02:N−(クロロ−メチル)−フタルイミド
【0052】
【化11】

【0053】
である。
【0054】
フェノール性モノマー単位を含有するポリマーは、異なるモノマーのランダム、交互、ブロックもしくはグラフトコポリマーであることができ、例えばビニルフェノールのポリマーもしくはコポリマー、ノボラック樹脂又はレゾール樹脂から選ぶことができる。ノボラック樹脂が好ましい。
【0055】
ノボラック樹脂又はレゾール樹脂は、酸触媒の存在下における芳香族炭化水素、例えばフェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2,5−キシレノール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、ピロガロール、ビスフェノール、ビスフェノール A、トリスフェノール、o−エチルフェノール、p−エチルフェノール、プロピルフェノール、n−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、1−ナフトール及び2−ナフトールから選ばれる少なくとも1種のメンバーとアルデヒド類、例えばホルムアルデヒド、グリオキサール、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド及びフルフラールならびにケトン類、例えばアセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトンから選ばれる少なくとも1種のアルデヒド又はケトンとの重縮合により製造することができる。ホルムアルデヒド及びアセトアルデヒドの代わりにそれぞれパラホルムアルデヒド及びパラアルデヒドを用いることができる。
【0056】
汎用キャリブレーション及びポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるノボラック樹脂の重量平均分子量は、好ましくは500〜150,000g/モル、より好ましくは1,500〜15,000g/モルである。
【0057】
ポリ(ビニルフェノール)樹脂は、1種もしくはそれより多いヒドロキシ−フェニル含有モノマー、例えばヒドロキシスチレン又はヒドロキシ−フェニル(メタ)アクリレートのポリマーであることもできる。そのようなヒドロキシスチレンの例はo−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−(o−ヒドロキシフェニル)プロピレン、2−(m−ヒドロキシフェニル)プロピレン及び2−(p−ヒドロキシフェニル)プロピレンである。そのようなヒドロキシスチレンは塩素、臭素、ヨウ素、フッ素又はC1−4アルキル基のような置換基をその芳香環上に有することができる。そのようなヒドロキシ−フェニル(メタ)アクリレートの例は2−ヒドロキシ−フェニルメタクリレートである。
【0058】
ポリ(ビニルフェノール)樹脂は通常、ラジカル開始剤又はカチオン性重合開始剤の存在下で1種もしくはそれより多いヒドロキシ−フェニル含有モノマーを重合させることにより製造することができる。1種もしくはそれより多いこれらのヒドロキシ−フェニル含有モノマーを他のモノマー化合物、例えばアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、アクリルアミドモノマー、メタクリルアミドモノマー、ビニルモノマー、芳香族ビニルモノマー又はジエンモノマーと共重合させることによってポリ(ビニルフェノール)樹脂を製造することもできる。
【0059】
汎用キャリブレーション及びポリスチレン標準を用いるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定されるポリ(ビニルフェノール)樹脂の重量平均分子量は、好ましくは1.000〜200,000g/モル、より好ましくは1,500〜50,000g/モルである。
【0060】
置換試薬を用いて改変され得るフェノール性モノマー単位を含有するポリマーの例は以下のとおりである:
POL−01:ALNOVOL SPN452は、CLARIANT GmbHから得られるDowanol PM中の40重量%のノボラック樹脂の溶液である。
【0061】
Dowanol PMは1−メトキシ−2−プロパノール(>99.5%)及び2−メトキシ−1−プロパノール(<0.5%)から成る。
POL−02:ALNOVOL SPN400は、CLARIANT GmbHから得られるDowanol PMA中の44重量%のノボラック樹脂の溶液である。
【0062】
Dowanol PMAは2−メトキシ−1−メチル−エチルアセテートから成る。
POL−03:ALNOVOL HPN100は、CLARIANT GmbHから得られるノボラック樹脂である。
POL−04:DURITE PD443は、BORDEN CHEM.INCから得られるノボラック樹脂である。
POL−05:DURITE SD423Aは、BORDEN CHEM.INCから得られるノボラック樹脂である。
POL−06:DURITE SD126Aは、BORDEN CHEM.INCから得られるノボラック樹脂である。
POL−07:BAKELITE 6866LB02は、MAKELITE AGから得られるノボラック樹脂である。
POL−08:BAKELITE 6866LB03は、MAKELITE AGから得られるノボラック樹脂である。
POL−09:KR 400/8は、KOYO CHEMICALS INCから得られるノボラック樹脂である。
POL−10:HRJ 1085は、SCHNECTADY INTERNATIONAL INCから得られるノボラック樹脂である。
POL−11:HRJ 2606は、SCHNECTADY INTERNATIONAL INCから得られるフェノールノボラック樹脂である。
POL−12:LYNCUR CMMは、SIBER HEGNERから得られる4−ヒドロキシ−スチレンとメチルメタクリレートのコポリマーである。
【0063】
本発明のポリマーは、1つより多くの型のN−イミド基を含有することができる。この状況において、それぞれの型のN−イミド基を連続的に導入することができるか、あるいは異なる置換試薬の混合物をポリマーと反応させることができる。ポリマー中に導入されるそれぞれの型のN−イミド基の好ましい量は0.5モル%〜80モル%、より好ましくは1モル%〜50モル%、最も好ましくは2モル%〜30モル%である。
【0064】
本発明の他の側面に従うと、上記のポリマーは平版印刷版前駆体のコーティング中で用いられる。1つの態様に従うと、印刷版前駆体はポジティブ−作用性であり、すなわち露出及び現像の後、親油性層の露出領域は支持体から除去されて親水性の非−画像(非−印刷)領域を区画し、非露出層は支持体から除去されず、親油性画像(印刷)領域を区画する。他の態様に従うと、印刷版前駆体はネガティブ−作用性であり、すなわち画像領域は露出領域に対応する。
【0065】
他のポリマー、例えば非改変フェノール樹脂又は本発明に記載される改変と別の改変を有するフェノール樹脂もコーティング組成物に加えることができる。本発明のポリマーは、好ましくはコーティング全体の5重量%〜98重量%、より好ましくは10重量%〜95重量%の濃度範囲においてコーティングに加えられる。
【0066】
感熱性コーティングが1つより多い層から成る場合、本発明のポリマーはこれらの層の少なくとも1つの中に、例えば最上層中に存在する。ポリマーはコーティングの1つより多い層中に、例えば最上層と中間層中に存在することもできる。
【0067】
支持体は親水性表面を有するか、又は親水性層が設けられる。支持体はシート−様材料、例えば版であることができるか、あるいはそれは印刷機の印刷胴の回りで滑らせることができるスリーブのような円筒状の要素であることができる。好ましくは、支持体はアルミニウム又はステンレススチールのような金属支持体である。
【0068】
特に好ましい平版支持体は、電気化学的に研磨され且つ陽極酸化されたアルミニウム支持体である。
【0069】
アルミニウム平版支持体の研磨及び陽極酸化は周知である。本発明の材料において用いられる研磨されたアルミニウム支持体は、好ましくは電気化学的に研磨された支持体である。研磨のために用いられる酸は、例えば硝酸であることができる。研磨のために用いられる酸は好ましくは塩化水素を含んでなる。例えば塩化水素と酢酸の混合物を用いることもできる。
【0070】
研磨され且つ陽極酸化されたアルミニウム支持体を後−処理してその表面の親水性を向上させることができる。例えばアルミニウム支持体を高められた温度、例えば95℃でケイ酸ナトリウム溶液を用いてその表面を処理することにより、ケイ酸塩化することができる。あるいはまた、リン酸塩処理を施すことができ、それは酸化アルミニウム表面をリン酸塩溶液で処理することを含み、リン酸塩溶液はさらに無機フッ化物を含有していることができる。さらに酸化アルミニウム表面を有機酸及び/又はその塩、例えばカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、スルホン酸又はホスホン酸あるいはそれらの塩、例えばコハク酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、硫酸塩及びスルホン酸塩で濯ぐことができる。クエン酸又はクエン酸塩溶液が好ましい。この処理は室温で行うことができるか、又は約30〜50℃のわずかに高められた温度で行うことができる。さらに別の後−処理は酸化アルミニウム表面を重炭酸塩溶液で濯ぐことを含む。さらに、酸化アルミニウム表面をポリビニルホスホン酸、ポリビニルメチルホスホン酸、ポリビニルアルコールのリン酸エステル、ポリビニルスルホン酸、ポリビニルベンゼンスルホン酸、ポリビニルアルコールの硫酸エステル及びスルホン化脂肪族アルデヒドとの反応により生成するポリビニルアルコールのアセタールを用いて処理することができる。これらの後−処理の1つ又はそれより多くを単独で、又は組み合わせて行うことができることはさらに明らかである。これらの処理のもっと詳細な記載は英国特許出願公開第1084070号明細書、独国特許出願公開4423140号明細書、独国特許出願公開4417907号明細書、欧州特許出願公開第659909号明細書、欧州特許出願公開第537633号明細書、独国特許出願公開第4001466号明細書、欧州特許出願公開第292801号明細書、欧州特許出願公開第291760号明細書及び米国特許第4458005号明細書に示されている。
【0071】
他の態様に従うと、支持体は下記で「ベース層」と呼ばれる親水性層が設けられた柔軟性支持体であることもできる。柔軟性支持体は例えば紙、プラスチックフィルム、薄いアルミニウム又はそれらの積層物である。プラスチックフィルムの好ましい例はポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルムなどである。プラスチックフィルム支持体は不透明又は透明であることができる。
【0072】
ベース層は好ましくはホルムアルデヒド、グリオキサール、ポリイソシアナート又は加水分解されたテトラ−アルキルオルトシリケートのような硬膜剤を用いて架橋された親水性結合剤から得られる架橋された親水性層である。後者が特に好ましい。親水性ベース層の厚さは0.2〜25μmの範囲内で変わることができ、好ましくは1〜10μmである。
【0073】
ベース層で用いるための親水性結合剤は例えば親水性(コ)ポリマー、例えばビニルアルコール、アクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマーあるいは無水マレイン酸/ビニルメチルエーテルコポリマーである。用いられる(コ)ポリマー又は(コ)ポリマー混合物の親水度は、好ましくは少なくとも60重量パーセント、好ましくは80重量パーセントの程度まで加水分解されたポリ酢酸ビニルの親水度と同じか又はそれより高い。
【0074】
硬膜剤、特にテトラアルキルオルトシリケートの量は、好ましくは親水性結合剤の重量部当たり少なくとも0.2重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、最も好ましくは1重量部〜3重量部である。
【0075】
親水性ベース層は、層の機械的強度及び多孔度を向上させる物質も含有することができる。この目的のためにコロイドシリカを用いることができる。用いられるコロイドシリカは例えば最高で40nm、例えば20nmの平均粒度を有するコロイドシリカのいずれの商業的に入手可能な水分散液の形態にあることもできる。さらにコロイドシリカより大きな寸法の不活性粒子、例えばJ.Colloid and Interface Sci.,Vol.26,1968,pages 62 to 69に記載されている通りStoeberに従って調製されるシリカあるいはアルミナ粒子あるいは二酸化チタン又は他の重金属酸化物の粒子である少なくとも100nmの平均直径を有する粒子を加えることができる。これらの粒子の導入により、親水性ベース層の表面に微視的丘と谷から成る均一な粗いきめが与えられ、それは背景領域における水のための保存場所として働く。
【0076】
本発明に従って用いるために適した親水性ベース層の特定の例は、欧州特許出願公開第601240号明細書、英国特許第1419512号明細書、仏国特許発明第2300354号明細書、米国特許第3971660号明細書及び米国特許第4284705号明細書に開示されている。
【0077】
支持層とも呼ばれる接着促進層が設けられたフィルム支持体を用いるのが特に好ましい。本発明に従う使用に特に適した接着促進層は、欧州特許出願公開第619524号明細書、欧州特許出願公開第620502号明細書及び欧州特許出願公開第619525号明細書に開示されているように、親水性結合剤及びコロイドシリカを含んでなる。好ましくは、接着促進層中のシリカの量は200mg/m〜750mg/mである。さらに、シリカ対親水性結合剤の比率は、好ましくは1より大きく、且つコロイドシリカの表面積は、好ましくは少なくとも300m/グラム、より好ましくは少なくとも500m/グラムである。
【0078】
支持体上に設けられるコーティングは感熱性であり、好ましくは通常の作業照明条件(昼光、蛍光灯)中で数時間扱うことができる。コーティングは好ましくは200nm〜400nmの波長領域内に吸収極大を有するUV−感受性化合物、例えばジアゾ化合物、フォトアシッド(photoacids)、光開始剤、キノンジアジド又は増感剤を含有しない。好ましくは、コーティングは400〜600nmの青及び緑可視光波長領域内に吸収極大を有する化合物も含有しない。
【0079】
コーティングは1つ又はそれより多い別の層を含むことができる。下記で議論される層の他に、コーティングは例えば支持体へのコーティングの接着を促進する「下塗り」層、汚染又は機械的損傷に対してコーティングを保護するカバー層及び/又は赤外光吸収化合物を含有する光から熱への変換層をさらに含むことができる。
【0080】
適したネガティブ−作用性アルカリ現像性印刷版は、フェノール樹脂及び加熱もしくはIR照射されると酸を与える潜在的Broensted酸を含んでなる。これらの酸は露出−後加熱段階におけるコーティングの架橋及びかくして露出領域の硬膜を触媒する。従って、非−露出領域を現像液により洗い流し、下の親水性基質を現すことができる。そのようなネガティブ−作用性印刷版前駆体のもっと詳細な記述に関し、我々は米国特許第6,255,042号明細書及び米国特許第6,063,544号明細書ならびにこれらの文書において引用されている参照文献を挙げる。そのようなネガティブ−作用性平版印刷版前駆体において、本発明のポリマーはコーティング組成物に加えられ、フェノール樹脂の少なくとも一部と置き換えられる。
【0081】
ポジティブ−作用性平版印刷版前駆体において、コーティングは熱−誘導可溶化が可能であり、すなわちコーティングは非−露出状態において現像液に抵抗性であり且つインキ−受容性であり、熱又は赤外光に露出されると、支持体の親水性表面がそれにより現れる程度まで現像液中で可溶性となる。
【0082】
本発明のポリマーの他に、コーティングは水性アルカリ性現像液中で可溶性の追加のポリマー性結合剤を含有することができる。好ましいポリマーはフェノール樹脂、例えばノボラック、レゾール、ポリビニルフェノール及びカルボキシ−置換ポリマーである。そのようなポリマーの典型的な例は独国特許出願公開第4007428号明細書、独国特許出願公開第4027301号明細書及び独国特許出願公開第4445820号明細書に記載されている。
【0083】
好ましいポジティブ−作用性平版印刷版前駆体において、コーティングは1種もしくはそれより多い溶解抑制剤も含有する。溶解抑制剤は、コーティングの非−露出領域において水性アルカリ性現像液中における疎水性ポリマーの溶解速度を低下させる化合物であり、且つここでこの溶解速度の低下は露出の間に発生する熱により破壊され、コーティングは露出領域において現像液中に容易に溶解する。溶解抑制剤は露出及び非−露出領域の間で溶解速度における実質的寛容度を示す。好ましくは(by preference)、コーティングのインキ−受容能が影響される程度まで非−露出領域が現像液により攻撃される前に、露出されたコーティング領域が現像液中に完全に溶解してしまう場合、溶解抑制剤は優れた溶解速度寛容度を有する。単数種もしくは複数種の溶解抑制剤を、上記で議論された疎水性ポリマーを含んでなる層に加えることができる。
【0084】
現像液中における非−露出コーティングの溶解速度は、好ましくは疎水性ポリマーと抑制剤の間の相互作用により、例えばこれらの化合物の間の水素結合により低下する。適した溶解抑制剤は、好ましくは少なくとも1個の芳香族基及び水素結合部位、例えばカルボニル基、スルホニル基又は窒素原子を含んでなる有機化合物であり、窒素原子は第4級化されていることができ、且つ複素環式環の一部であり得るか又は該有機化合物のアミノ置換基の一部であり得る。この型の適した溶解抑制剤は、例えば欧州特許出願公開第825927及び823327号明細書に開示されている。
【0085】
水−反発性ポリマーは、別の型の適した溶解抑制剤に相当する。そのようなポリマーは、水性現像液をコーティングから追い払うことにより、コーティングの現像液抵抗性を向上させると思われる。水−反発性ポリマーは、疎水性ポリマーを含んでなる層に加えられることができ、及び/又は疎水性ポリマーを有する層の上に設けられる別の層中に存在することができる。後者の態様の場合、水−反発性ポリマーは、コーティングを現像液から遮断する障壁層を形成し、例えば欧州特許出願公開第864420号明細書、欧州特許出願公開第950517号明細書及び国際公開第99/21725号パンフレットに記載されている通り、熱又は赤外光への露出により現像液中における障壁層の溶解性又は現像液による障壁層の浸透性を向上させることができる。水−反発性ポリマーの好ましい例は、シロキサン及び/又はペルフルオロアルキル単位を含んでなるポリマーである。1つの態様において、コーティングはそのような水−反発性ポリマーを0.5〜25mg/m、好ましくは0.5〜15mg/m、そして最も好ましくは0.5〜10mg/mの量で含有する。水−反発性ポリマーがインキ−反発性でもある場合、例えばポリシロキサンの場合、25mg/mより多い量は非−露出領域の劣ったインキ−受容性を生じ得る。他方、0.5mg/mより少ない量は不満足な現像抵抗性に導き得る。ポリシロキサンは線状、環状又は錯体架橋ポリマーもしくはコポリマーであることができる。ポリシロキサン化合物という用語は、1個より多いシロキサン基−Si(R,R’)−O−を含有し、式中、R及びR’は場合により置換されていることができるアルキル又はアリール基であるいずれの化合物をも含む。好ましいシロキサンはフェニルアルキルシロキサン及びジアルキルシロキサンである。(コ)ポリマー中のシロキサン基の数は少なくとも2、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも20である。それは100未満、好ましくは60未満であることができる。別の態様において、水−反発性ポリマーはポリ(アルキレンオキシド)ブロックとシロキサン及び/又はペルフルオロアルキル単位を含んでなるポリマーのブロックのブロック−コポリマー又はグラフト−コポリマーである。適したコポリマーは約15〜25個のシロキサン単位及び50〜70個のアルキレンオキシド基を含んでなる。好ましい例にはフェニルメチルシロキサン及び/又はジメチルシロキサンならびにエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドを含んでなるコポリマー、例えばすべてTego Chemie,Essen,Germanyから商業的に入手可能なTego Glide 410、Tego Wet 265、Tego Protect 5001又はSilikophen P50/Xが含まれる。そのようなコポリマーは界面活性剤として作用し、それはコーティングされるとその二官能基性構造の故に自分自身を自動的にコーティングと空気の間の界面に置き、それにより、単一のコーティング溶液からコーティング全体が適用されても、別の最上層を形成する。同時に、そのような界面活性剤はコーティングの質を向上させる展延剤として作用する。あるいはまた、水−反発性ポリマーを、疎水性ポリマーを含んでなる層の上にコーティングされる第2の溶液中において適用することができる。その態様の場合、コーティングの最上に非常に濃度の高い水−反発性相が得られるように、第1の層中に存在する成分を溶解できない溶媒を第2のコーティング溶液中で用いるのが有利であり得る。
【0086】
好ましくは、1種もしくはそれより多い現像促進剤、すなわち現像液中における非−露出コーティングの溶解速度を向上させることができる故に、溶解促進剤として働く化合物もコーティング中に含まれる。溶解抑制剤と促進剤の同時の適用は、コーティングの溶解挙動の正確な微調整を可能にする。適した溶解促進剤は環状酸無水物、フェノール類又は有機酸である。環状酸無水物の例には、米国特許第4,115,128号明細書に記載されているような無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、無水マレイン酸、クロロマレイン酸無水物、アルファ−フェニルマレイン酸無水物、無水コハク酸及びピロメリト酸無水物が含まれる。フェノール類の例にはビスフェノール A、p−ニトロフェノール、p−エトキシフェノール、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,3,4−トリヒドロキシ−ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、4,4’,4”−トリヒドロキシ−トリフェニルメタン及び4,4’,3”,4”−テトラヒドロキシ−3,5,3’,5’−テトラメチルトリフェニル−メタンなどが含まれる。有機酸の例には、例えば特公昭60−88,942号及び平2−96,755号公報に記載されているようなスルホン酸、スルフィン酸、アルキル硫酸、ホスホン酸、ホスフェート類及びカルボン酸が含まれる。これらの有機酸の特定の例にはp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルフィン酸、エチル硫酸、フェニルホスホン酸、フェニルホスフィン酸、フェニルホスフェート、ジフェニルホスフェート、安息香酸、イソフタル酸、アジピン酸、p−トルイル酸、3,4−ジメトキシ安息香酸、フタル酸、テレフタル酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エルカ酸、ラウリン酸、n−ウンデカン酸及びアスコルビン酸が含まれる。コーティング中に含有される環状酸無水物、フェノール又は有機酸の量は、好ましくは全体としてのコーティングに対して0.05〜20重量%の範囲内である。
【0087】
通常の感光性印刷版前駆体中で本発明のポリマーを用いることができ、ここで通常のフェノール性ポリマーの少なくとも一部が少なくとも1種の本発明のポリマーにより置き換えられる。
【0088】
より好ましい態様に従うと、本発明の材料は画像通りに赤外光に露出され、それは赤外光吸収剤により熱に変換され、赤外光吸収剤は赤外波長領域内に吸収極大を有する染料又は顔料であることができる。コーティング中の増感染料もしくは顔料の濃度は、全体としてのコーティングに対して典型的には0.25〜10.0重量%、より好ましくは0.5〜7.5重量%である。好ましいIR−吸収化合物は、シアニンもしくはメロシアニン染料のような染料又はカーボンブラックのような顔料である。適した化合物は以下の赤外染料である:
【0089】
【化12】

【0090】
コーティングはさらに、画像通りに露出され、続いて現像されると認知され得る画像が得られるように、可視光を吸収する有機染料を含有することができる。そのような染料は多くの場合、コントラスト染料又は指示薬染料(indicator dye)と呼ばれる。好ましくは、染料は青色及び600nm〜750nmの波長領域内の吸収極大を有する。染料は可視光を吸収するが、それは好ましくは印刷版前駆体を増感せず、すなわちコーティングは可視光に露出されても現像液中でより可溶性にならない。そのようなコントラスト染料の適した例は、第4級化トリアリールメタン染料である。他の適した化合物は以下の染料である:
【0091】
【化13】

【0092】
赤外光吸収化合物及びコントラスト染料は、疎水性ポリマーを含んでなる層及び/又は上記で議論された障壁層及び/又は場合による他の層中に存在することができる。非常に好ましい態様に従うと、赤外光吸収化合物は障壁層中又はその近く、例えば疎水性ポリマーを含んでなる層と障壁層の間の中間層中に濃縮される。
【0093】
本発明の印刷版前駆体は、LEDs又はレーザーを用いて赤外光に露出されることができる。好ましくは、約750〜約1500nmの領域内の波長を有する近赤外光を発するレーザー、例えば半導体レーザーダイオード、Nd:YAGもしくはNd:YLFレーザーが用いられる。必要なレーザー出力は、画像−記録層の感度、スポット直径(最大強度の1/eにおける近代的プレート−セッターの典型的な値:10〜25μm)により決定されるレーザービームの画素滞留時間、走査速度及び露出装置の解像度(すなわち多くの場合にインチ当たりのドット又はdpiで表される直線距離の単位当たりのアドレス可能な(addressable)画素の数;典型的な値:1000〜4000dpi)に依存する。
【0094】
2つの型のレーザー−露出装置:内部(ITD)及び外部ドラム(XTD)プレート−セッターが通常用いられる。熱的版のためのITDプレート−セッターは、典型的には最高で1500m/秒の非常に高い走査速度を特徴とし、数ワットのレーザー出力を必要とし得る。Agfa Galileo Tは、ITD−技術を用いるプレート−セッターの典型的な例である。XTDプレート−セッターは、典型的には0.1m/秒〜10m/秒のもっと低い走査速度で働き、20mWから500mWまでの典型的なビーム当たりのレーザー出力を有する。Creo Trendsetterプレートセッターの群及びAgfa Excaliburプレートセッターの群は、両方ともXTD−技術を利用している。
【0095】
既知のプレート−セッターをオフ−プレス露出装置として用いることができ、それはプレスダウン−時間(press down−time)の減少の利益を与える。XTDプレート−セッター配置をオン−プレス露出に用いることもでき、多色印刷機における直接の見当合わせの利益を与える。オン−プレス露出装置のさらなる技術的詳細は、例えば米国特許第5,174,205号明細書及び米国特許第5,163,368号明細書に記載されている。
【0096】
現像段階に、コーティングの非−画像領域を水性アルカリ性現像液中に浸漬することにより除去することができ、それを例えば回転ブラシによる機械的こすりと組み合わせることができる。現像液は、好ましくは10より高い、より好ましくは12より高いpHを有する。現像段階に濯ぎ段階、ゴム引き段階、乾燥段階及び/又は後−ベーキング段階が続くことができる。
【0097】
かくして得られる印刷版を通常のいわゆる湿式オフセット印刷のために用いることができ、その印刷ではインキ及び水性湿し液が版に供給される。他の適した印刷法は湿し液なしでいわゆる単−流体インキを用いる。単−流体インキは、疎水性もしくは親油性相とも呼ばれるインキ相ならびに通常の湿式オフセット印刷において用いられる水性湿し液にとって代わる極性相から成る。単−流体インキの適した例は、米国特許第4,045,232号明細書;米国特許第4,981,517号明細書及び米国特許第6,140,392号明細書に記載されている。最も好ましい態様の場合、国際公開第00/32705号パンフレットに記載されているように、単−流体インキはインキ相及びポリオール相を含んでなる。
【実施例】
【0098】
改変ポリマーの製造において用いられる置換試薬のリスト:
CSR−01:ベンジルブロミド
CSR−02:ベンゾイルクロリド
CSR−03:ジ−tert.−ブチルジカーボネート
CSR−04:アセチルクロリド。
ポリマーMP−01の製造:
−改変溶液:
4.32gのSR−01及び20mlのN,N−ジメチルアセトアミドの混合物を室温で、加えられる量のSR−01が溶解するまで攪拌した。
−フェノール性ポリマー溶液:
55gのPOL−01溶液(40重量%)及び120mlのN,N−ジメチルアセトアミドの混合物を室温で攪拌した。次いで1.0gのNaHを少しづつ加え、その後室温でさらに30分間攪拌を続けた。
【0099】
次いで絶えず攪拌しながら、上記で調製された改変溶液をフェノール性ポリマー溶液に1分以内に加えた。反応混合物を50℃まで加熱し、50℃で60分間さらに攪拌した。次いで絶えず攪拌しながら100mlのメタノール及び5mlの酢酸を反応混合物に加えた。得られる混合物を次いで2リットルの氷−水に、絶えず攪拌しながら15分間かけて加えた。ポリマーが水性媒体から沈殿し、それを濾過により単離した。300mlの水で3回洗浄し、続いて45℃で乾燥することにより、所望の生成物が最後に得られた。
ポリマーMP−02の製造:
9.0gのSR−01を30mlのN,N−ジメチルアセトアミド中に溶解すること、及びポリマーMP−01の製造において示した量の代わりに45.75gのPOL−01溶液(40重量%)、110mlのN,N−ジメチルアセトアミド及び1.95gのNaHを用いたことを除き、ポリマーMP−01の方法と同じ方法でポリマーMP−02の製造を行なった。
ポリマーMP−03の製造:
1.2gのSR−01を20mlのN,N−ジメチルアセトアミド中に溶解すること、及びポリマーMP−01の製造において示した量の代わりに61.25gのPOL−01溶液(40重量%)、150mlのN,N−ジメチルアセトアミド及び0.3gのNaHを用いたことを除き、ポリマーMP−01の方法と同じ方法でポリマーMP−03の製造を行なった。
ポリマーMP−04の製造:
−フェノール性ポリマー溶液:
24.5gのPOL−03及び120mlのN,N−ジメチルアセトアミドの混合物を35℃で、ポリマーが溶解するまで攪拌した。次いで2.4gのNaHを少しづつ加え、その後45℃でさらに30分間攪拌を続けた。
【0100】
次いで絶えず攪拌しながら、9.8gのSR−02及び0.1gのKIを上記で調製されたフェノール性ポリマー溶液に加えた。反応混合物を65℃まで加熱し、65℃で120分間さらに攪拌した。得られる混合物を次いで2リットルの氷−水及び5mlの酢酸の溶液に、絶えず攪拌しながら15分間かけて加えた。ポリマーが水性媒体から沈殿し、それを濾過により単離した。300mlの水で3回洗浄し、続いて45℃で乾燥することにより、所望の生成物が最後に得られた。
ポリマーMP−05の製造:
−フェノール性ポリマー溶液:
153gのPOL−01溶液(40重量%)及び400mlのアセトンの混合物を室温で、ポリマーが溶解するまで攪拌した。次いで0.2gの4−ジメチルアミノピリジンを加え、その後5分間攪拌を続けた。
【0101】
次いで絶えず攪拌しながら、10.9gのCSR−03を上記で調製されたフェノール性ポリマー溶液に少しづつ加え、反応混合物をさらに終夜攪拌した。得られる混合物を次いで2リットルの氷−水及び5mlの酢酸の溶液に、絶えず攪拌しながら30分間かけて加えた。ポリマーが水性媒体から沈殿し、それを濾過により単離した。300mlの水/メタノールの混合物(体積比:7/3)で3回洗浄し、続いて45℃で乾燥することにより、所望の生成物が最後に得られた。
ポリマーMP−06の製造:
ポリマーMP−05の製造において示した量の代わりに、0.1gの4−ジメチルアミノピリジン及び2.73gのCSR−03を用いる以外は、ポリマーMP−05の方法と同じ方法でポリマーMP−06の製造を行なった。
ポリマーMP−07の製造:
−フェノール性ポリマー溶液:
153gのPOL−01溶液(40重量%)及び500mlのN,N−ジメチルアセトアミドの混合物を室温で、ポリマーが溶解するまで攪拌した。次いで5mlの水中に溶解された6.0gのNaOHを加え、その後さらに15分間攪拌を続けた。
【0102】
次いで絶えず攪拌しながら、5.95gのCSR−01を上記で調製されたフェノール性ポリマー溶液に加えた。反応混合物を40℃まで加熱し、40℃で60分間さらに攪拌した。得られる混合物を次いで2.5リットルの氷−水及び10mlの酢酸の溶液に、絶えず攪拌しながら30分間かけて加えた。ポリマーが水性媒体から沈殿し、それを濾過により単離した。300mlの水で3回洗浄し、続いて45℃で乾燥することにより、所望の生成物が最後に得られた。
ポリマーMP−08の製造:
−フェノール性ポリマー溶液:
153gのPOL−01溶液(40重量%)及び400mlのアセトンの混合物を室温で、ポリマーが溶解するまで攪拌した。次いで7.0mlのトリエチルアミンを加え、その後さらに10分間攪拌を続けた。
【0103】
次いで絶えず攪拌しながら、7.0gのCSR−02を上記で調製されたフェノール性ポリマー溶液に10分以内に滴下した。反応混合物をさらに60分間攪拌した。得られる混合物を次いで2リットルの氷−水及び2mlの酢酸の溶液に、絶えず攪拌しながら60分間かけて加えた。ポリマーが水性媒体から沈殿し、それを濾過により単離した。300mlの水/メタノールの混合物(体積比:6/4)で3回洗浄し、続いて45℃で乾燥することにより、所望の生成物が最後に得られた。
ポリマーMP−09の製造:
−フェノール性ポリマー溶液:
55gのPOL−12、300mlのアセトン及び3.5mlのトリエチルアミンの混合物を室温で、ポリマーが溶解するまで攪拌した。
【0104】
次いで絶えず攪拌しながら、1.85gのCSR−04を上記で調製されたフェノール性ポリマー溶液に10分以内に滴下した。反応混合物をさらに30分間攪拌した。得られる混合物を次いで3リットルの氷−水に、絶えず攪拌しながら30分間かけて加えた。ポリマーが水性媒体から沈殿し、それを濾過により単離した。100mlの水で10回洗浄し、続いて45℃で乾燥することにより、所望の生成物が最後に得られた。
試験1:
コーティングの調製:
以下の成分を混合することにより、コーティング溶液を調製した:
−86.55gのDowanol PM
−464.64gのメチルエチルケトン
−101.28gの、Dowanol PM中の2重量%の濃度における赤外染料IR−1の溶液
−144.70gの、Dowanol PM中の1重量%の濃度におけるコントラスト染料CD−1の溶液
−159.14gの、Dowanol PM中の1重量%の濃度におけるTego Glide 410の溶液
−159.14gの、Dowanol PM中の40重量%の濃度における表1〜3に挙げられるフェノール性ポリマーの溶液
−3.18gの3,4,5−トリメトキシケイ皮酸。
【0105】
電気化学的に研磨され、且つ陽極酸化されたアルミニウム基質上に、20μmの湿潤厚さでコーティング溶液をコーティングした。コーティングを130℃で1分間乾燥した。
【0106】
化学的抵抗性の測定のために、2つの異なる溶液を選択した:
−試験溶液1:水中の50重量%の濃度におけるイソプロパノールの溶液、
−試験溶液2:ANCHORから商業的に入手可能なANCHOR AQUA AYDE。
【0107】
各試験溶液の40μlの滴をコーティングの異なる点上に接触させることにより、化学的抵抗性を調べた。3分後、綿パッドを用いて滴をコーティングから除去した。各試験溶液によるコーティング上における攻撃を、視覚検査により以下の通りに等級化した:
−0:攻撃なし、
−1:コーティングの表面の光沢の変化、
−2:コーティングの小さい攻撃(厚さが減少する)、
−3:コーティングの重度の攻撃
−4:完全に溶解したコーティング。
【0108】
等級が高い程、コーティングの化学的抵抗性が低い。各コーティングへの2種の試験溶液に関する結果を表1、2及び3にまとめる。ポリマーの各置換度、すなわち10モル%、25モル%及び2.5モル%に関し、結果を表1、2及び3にグループ分けした。表は、置換反応で用いられたフェノール性ポリマーの型、置換試薬の型及び置換度(モル%における)ならびに製造されたポリマーのMP−番号についての情報も含有する。
【0109】
【表1】

【0110】
【表2】

【0111】
【表3】

【0112】
各表は、非改変ポリマーと比較して、及び本発明に従うポリマーの製造に必要な置換試薬と別の置換試薬を用いて同程度に改変されたポリマーと比較して、本発明に従って改変されたポリマーがコーティングの化学的抵抗性の有意な向上を生ぜしめたことを示す。
試験2:
コーティングの調製:
以下の成分を混合することにより、コーティング溶液を調製した:
−313.45gのDowanol PM
−482.40gのメチルエチルケトン
−50.64gの、Dowanol PM中の2重量%の濃度における赤外染料IR−1の溶液
−72.35gの、Dowanol PM中の1重量%の濃度におけるコントラスト染料CD−1の溶液
−79.57gの、Dowanol PM中の40重量%の濃度における表4〜6に挙げられるフェノール性ポリマーの溶液
−1.59gの3,4,5−トリメトキシケイ皮酸。
【0113】
電気化学的に研磨され、且つ陽極酸化されたアルミニウム基質の表面の半分に、上記で調製された溶液を10μmの湿潤厚さでコーティングした。試料を130℃で1分間乾燥し、アルミニウムのコーティングされない部分を保護するために、AGFAから商業的に入手可能なOZASOL RC515を用いてゴム引きした。
印刷:
インキとしてBASFから商業的に入手可能な「K+E 800 Skinnex Black」及び湿し液としてANCHORから商業的に入手可能な「Emerald Premium MXEH」を用いる「ABDick 360」印刷機上に版を搭載した。印刷領域上の磨耗の有意な徴候なく印刷され得るプリントの最大数に基づいて、ランレングスを決定した。100000枚のコピーでランレングス試験を停止した。
【0114】
ランレングスを表4、5及び6にまとめる。ポリマーの各置換度、すなわち10モル%、25モル%及び2.5モル%に関し、結果を表4、5及び6にグループ分けした。表は、置換反応で用いられたフェノール性ポリマーの型、置換試薬の型及び置換度(モル%における)ならびに製造されたポリマーのMP−番号についての情報も含有する。
【0115】
【表4】

【0116】
【表5】

【0117】
【表6】

【0118】
各表は、非改変ポリマーと比較して、及び本発明に従うポリマーの製造に必要な置換試薬と別の置換試薬を用いて同程度に改変されたポリマーと比較して、本発明に従って改変されたポリマーがコーティングの印刷ランレングスの有意な向上を生ぜしめたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェノール性モノマー単位のヒドロキシ基のH原子が構造
【化1】

[式中、Lは連結基であり、
kは0又は1であり、
ここでkが1の場合、LはポリマーのO原子に共有結合しているか、あるいはkが0の場合、N−イミド基のN原子はポリマーのO原子に共有結合しており、
X又はYは独立してO又はSから選ばれ、そして
及びTは末端基を示す]
を有するN−イミド基Qにより置き換えられているフェノール性モノマー単位を含んでなるポリマー。
【請求項2】
末端基T及びTが場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれるか、あるいはT及びTがN−イミド基と一緒になって環状構造の形成に必要な原子を示すか、あるいはT及びTが以下の構造−L−R及び−L−Rを示し、ここで
及びLは独立して連結基を示し、
及びRは水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基、ハロゲン、−CN又は−NOから独立して選ばれるか、
あるいは各L、L、R及びRから選ばれる2個の基は一緒になって環状構造の形成に必要な原子を示す
請求項1に従うポリマー。
【請求項3】
N−イミド基Qが次式
【化2】

[式中、G及びGはO、S、NR又はCRから独立して選ばれ、GがOの場合GはO又はSではなく且つGがNRの場合GはO又はSではないという制限を有し、
及びRは水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−Rから独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
及びRは水素あるいは場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれるか、
あるいは各R、R、R、R及びLから選ばれる2個の基は一緒になって環状構造の形成に必要な基を示す]
を有する請求項1又は2に従うポリマー。
【請求項4】
N−イミド基Qが次式
【化3】

[式中、G〜GはO、S、NR又はCRから独立して選ばれ、G〜Gから選ばれる少なくとも1個の基はCRであり且つG〜Gから選ばれる2個の隣接基はOとSにより、OとNRにより、SとNRにより又はOとOにより示されないという制限を有するか、
あるいはGは連結基であり、
ここでR及びRは水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−R10から独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
及びR10は水素あるいは場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれるか、
あるいは各R、R、R、R10及びLから選ばれる2個の基は一緒になって環状構造の形成に必要な基を示す]
を有する請求項1又は2に従うポリマー。
【請求項5】
N−イミド基Qが次式
【化4】

[式中、GはO、S、NR11又はCR1213から選ばれる基であり、
mは0又は1であり、
12〜R15は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−R16から独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
11及びR16は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれるか、
あるいは各R11、R12、R13、R14、R15、R16及びLから選ばれる2個の基は一緒になって環状構造の形成に必要な原子を示す]
を有する請求項1又は2に従うポリマー。
【請求項6】
N−イミド基Qが次式
【化5】

[式中、E及びEはO、S、NR17又はCR1819から独立して選ばれ、
p及びqは独立して0又は1であり、
18〜R21は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−R22から独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
17及びR22は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれる]
を有する請求項1又は2に従うポリマー。
【請求項7】
N−イミド基Qが次式:
【化6】

[式中、各R23〜R26は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基、ハロゲン、−SO−NH−R27、−NH−SO−R30、−CO−NR27−R28、−NR27−CO−R30、−NR27−CO−NR28−R29、−NR27−CS−NR28−R29、−NR27−CO−O−R28、−O−CO−NR27−R28、−O−CO−R30、−CO−O−R27、−CO−R27、−SO−R27、−O−SO−R30、−SO−R27、−SO−R30、−P(=O)(−O−R27)(−O−R28)、−O−P(=O)(−O−R27)(−O−R28)、−NR27−R28、−O−R27、−S−R27、−CN、−NO、−N(−CO−R27)(−CO−R28)、−N−フタルイミジル、−M−N−フタルイミジル又は−M−R27から独立して選ばれ、ここでMは1〜8個の炭素原子を含有する2価の連結基を示し、ここで
27〜R29は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれ、
30は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から選ばれ、
a及びdは独立して0、1、2、3又は4であり、
b及びcは独立して0、1、2又は3であり、
はO、S、NR31又はCR3233から選ばれ、
32及びR33は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基あるいは−L−R34から独立して選ばれ、ここでLは連結基であり、
31及びR34は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれる]
の1つを有する請求項1又は2に従うポリマー。
【請求項8】
N−イミド基Qが次式:
【化7】

[式中、各R35〜R44は水素、場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基、ハロゲン、−SO−NH−R45、−NH−SO−R48、−CO−NR45−R46、−NR45−CO−R48、−NR45−CO−NR46−R47、−NR45−CS−NR46−R47、−NR45−CO−O−R46、−O−CO−NR45−R46、−O−CO−R48、−CO−O−R45、−CO−R45、−SO−R45、−O−SO−R48、−SO−R45、−SO−R48、−P(=O)(−O−R45)(−O−R46)、−O−P(=O)(−O−R45)(−O−R46)、−NR45−R46、−O−R45、−S−R45、−CN、−N(−CO−R45)(−CO−R46)、−N−フタルイミジル、−M−N−フタルイミジル又は−M−R45から独立して選ばれ、ここでMは1〜8個の炭素原子を含有する2価連結基を示し、ここで
45〜R47は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれ、
48は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から選ばれる]
の1つを有する請求項1又は2に従うポリマー。
【請求項9】
N−イミド基Qが次式:
【化8】

[式中、R49〜R56は水素又は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれ、そして
57及びR58は場合により置換されていることができるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、複素環式、アリール、ヘテロアリール、アラルキル又はヘテロアラルキル基から独立して選ばれる]
の1つを有する請求項1又は2に従うポリマー。
【請求項10】
N−イミド基Qが次式:
【化9】

の1つを有する請求項1又は2に従うポリマー。
【請求項11】
該フェノール性モノマー単位を含んでなるポリマーがノボラック、レゾール又はポリビニルフェノールである請求項1〜10のいずれかに従うポリマー。
【請求項12】
親水性表面を有する支持体及び親水性表面上に設けられる親油性コーティングを含んでなり、該コーティングが赤外光吸収剤及び請求項1〜11のいずれかに従うポリマーを含んでなる感熱性平版印刷版前駆体。
【請求項13】
該コーティングがさらに溶解抑制剤を含んでなり、且つ該前駆体がポジティブ作用性平版印刷版前駆体である請求項12に従う平版印刷版前駆体。
【請求項14】
該溶解抑制剤が
−少なくとも1個の芳香族基及び水素結合部位を含んでなる有機化合物及び/又は
−シロキサンもしくはペルフルオロアルキル単位を含んでなるポリマーもしくは界面活性剤
から選ばれる請求項13に従う平版印刷版前駆体。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれかに従うポリマーの、
−赤外吸収剤及び
−溶解抑制剤
をさらに含んでなるポジティブ作用性感熱性平版印刷版前駆体のコーティングにおける、印刷液及び印刷機化学品に対するコーティングの化学的抵抗性を向上させるための使用。
【請求項16】
該コーティングがさらに潜在的Broensted酸及び酸−架橋可能な化合物を含んでなり、且つ該前駆体がネガティブ作用性平版印刷版前駆体である請求項12に従う平版印刷版前駆体。
【請求項17】
請求項1〜11のいずれかに従うポリマーの、
−赤外吸収剤、
−潜在的Broensted酸及び
−酸−架橋可能な化合物
をさらに含んでなるネガティブ作用性感熱性平版印刷版前駆体のコーティングにおける、印刷液及び印刷機化学品に対するコーティングの化学的抵抗性を向上させるための使用。

【公表番号】特表2006−503143(P2006−503143A)
【公表日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544290(P2004−544290)
【出願日】平成15年9月18日(2003.9.18)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050633
【国際公開番号】WO2004/035686
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(504376795)アグフア−ゲヴエルト (24)
【Fターム(参考)】