説明

成分送給機構、プラズマリアクタ、及び、半導体基板を処理する方法

【課題】基板表面で均一な処理を生成するために、処理チャンバの内部に成分を分配する成分送給機構を提供する。
【解決手段】前記成分は、処理チャンバ12内のワークピース18を処理するために使用される。前記成分送給機構75は、成分を処理チャンバの所望の領域に出力する複数の成分出力部を含む。前記成分送給機構は、更に、複数の成分出力部に結合された空間分配スイッチ40,56を含む。前記空間分配スイッチは、成分を複数の成分出力部の少なくとも一つへ振り向けるように構成される。前記成分送給機構は、更に、空間分配スイッチに接続された単一の成分供給源36を含む。前記単一の成分供給源は、成分を空間分配スイッチへ供給するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC製造に用いる半導体基板又はフラットパネルディスプレイとして用いるガラスパネル等の基板を処理する装置及び方法に関する。特に、本発明は、基板表面全体に亘り高度の処理均一性で基板を処理し得る改良型処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を基礎とした製品、例えば、フラットパネルディスプレイ又は集積回路の製造中には、トランジスタ、キャパシタ、レジスタ、相互接続、及びその他のデバイスを形成するために、基板の表面上で多数の蒸着及び/又はエッチング工程を利用することができる。蒸着中には、様々な材料の層が、基板の表面に次々に蒸着され、積層が形成される。例えば、絶縁体、伝導体、及び半導体の層を、基板の表面に形成することができる。逆に、基板、更に詳しくは積層の所定の領域から材料を選択的に取り除くために、エッチングを利用することができる。例えば、バイア、接点、又はトレンチといったエッチング特徴部を、基板の層内に形成することができる。
【0003】
エッチング及び蒸着プロセスと、それらのプロセスに関連するリアクタとは、以前から存在する。例えば、化学蒸着(CVD)、熱CVD、プラズマ化学蒸着(PECVD)、スパッタリング等の物理蒸着(PVD)、及びその他を含む蒸着プロセスと、ドライエッチング、プラズマエッチング、反応イオンエッチング(RIE)、磁気反応イオンエッチング(MERIE)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、及びその他に適合するものを含むエッチングプロセスとは、半導体基板及びディスプレイパネルを処理するために、様々な次元で導入及び利用されてきた。
【0004】
基板の処理において、エンジニアが改良を目指している最も重要なパラメータの一つは、処理均一性である。例えば、エッチング環境において、エッチング均一性は、均一なデバイス性能とデバイス歩留まりとの重要な決定要素であり、つまり、高レベルのエッチング均一性は、欠陥のない処理済み基板のパーセンテージを改善する傾向があり、これは製造コストの低下へと形を変えることになる。ここで使用される用語として、エッチング均一性とは、エッチング速度と、マイクロローディングと、マスク選択性と、下層選択性と、微少寸法制御と、側壁角度及び粗さのようなプロファイル特性とを含む、基板表面全体でのエッチング処理全体の均一性を指す。例えば、エッチングが非常に均一である場合、基板上の様々なポイントでのエッチング速度は、ほぼ等しくなる傾向がある。この場合、基板の一つのエリアが過度にオーバエッチングされ、他のエリアのエッチングが不十分になる可能性は低い。具体的には説明しないが、蒸着の均一性は、同じく均一なデバイス性能及びデバイス歩留まりの重要な決定要素である点において、エッチングの均一性に類似すると理解されたい。
【0005】
加えて、多くの応用において、こうした厳密な処理要件は、基板処理中の様々な段階では、矛盾する場合がある。これは、劇的に異なる処理要件で処理する必要がある多数の層が存在するためである場合が多い。例えば、電力、温度、圧力、ガスの化学的性質、及びガス流を含むエッチングレシピは、所望の処理性能を達成するために、単一の基板を処理する間に劇的に変化させなければならない場合がある。更に、プロセスの性質から、周囲の表面、つまりチャンバ壁に材料が堆積し、結果としてプロセスが変動する場合がある。
【0006】
処理均一性に加え、半導体産業に関する別の問題も存在する。製造業者にとって重要な問題の中には、処理ツールの所有コストがあり、これには例えば、システムを取得及び維持するコストと、許容できるレベルの処理性能を維持するために必要となるチャンバ洗浄の頻度と、システム構成要素の寿命と、その他とが含まれる。したがって、所望のプロセスとは、高品質のプロセスが低コストで生じるような形で、様々な所有コストと処理パラメータとの間で適切なバランスを取るものである場合が多い。更に、基板上の特徴部は小型化し、プロセスへの要求が厳しくなっているため(例えば、小さな微少寸法、高いアスペクト比、速いスループット、及びその他)、プロセスエンジニアは、高品質の処理結果を低コストで達成するための新しい方法及び装置を絶えず探求している。
上述したことに鑑みて、基板表面で均一な処理を生成する改良技術が望まれる。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一実施形態において、処理チャンバ内部で成分を分配する成分送給機構に関する。前記成分は、処理チャンバ内でワークピースを処理するために使用される。前記成分送給機構は、成分を処理チャンバの所望の領域に出力する複数の成分出力部を含む。前記成分送給機構は、更に、複数の成分出力部に結合された空間分配スイッチを含む。前記空間分配スイッチは、成分を複数の成分出力部の少なくとも一つに振り向けるように構成される。前記成分送給機構は、更に、空間分配スイッチに結合された単一の成分供給源を含む。前記単一の成分供給源は、成分を空間分配スイッチに供給するように構成される。
【0008】
本発明は、別の実施形態において、処理レシピの成分によりワークピースを処理する方法に関する。前記方法は、内部でワークピースが処理され、少なくとも第一の処理区域と第二の処理区域とを含む処理チャンバを提供するステップを含む。各区域は、処理されるワークピースの部分に対応する。前記方法は、更に、処理チャンバの第一の処理区域に成分を出力するステップを含む。前記方法は、追加的に、第一の処理区域から第二の処理区域に切り換えるステップを含む。前記方法は、更に、処理チャンバの第二の処理区域に成分を出力するステップを含む。
【0009】
本発明は、別の実施形態において、基板を処理する空間的に制御されたプラズマリアクタに関する。前記リアクタは、内部で処理のためにプラズマの発火及び維持の両方が行われる処理チャンバを含む。前記リアクタは、更に、単一の電源と、電力分配スイッチを通じて電源に結合された電極とを有する電力送給機構を含む。単一の電源は、プラズマの発火及び維持を行う十分な強さのエネルギを生成するためのものである。前記電極は、第一のコイルと第二のコイルとを含む。第一のコイルは、処理チャンバの第一の電力領域内で電場を生成するように構成され、第二のコイルは、処理チャンバの第二の電力領域内で電場を生成するように構成される。更に、前記電力分配スイッチは、内側か外側のコイルに電源のエネルギを振り向けるように構成される。前記リアクタは、追加的に、単一のガス供給源と、第一のガス注入ポートと、第二のガス注入ポートと、ガス分配スイッチとを有するガス送給機構を含む。
【0010】
単一のガス供給源は、プラズマの形成と基板の処理とに部分的に使用されるプロセスガスを生成するためのものである。第一のガス注入ポートは、ガス分配スイッチを通じてガス供給源に結合され、処理チャンバの第一のガス領域にプロセスガスを放出するように構成される。第二のガス注入ポートも、ガス分配スイッチを通じてガス供給源に結合され、処理チャンバの第二のガス領域にプロセスガスを放出するように構成される。更に、ガス分配スイッチは、内側及び外側ガス注入ポート間でガス供給源のプロセスガスを振り向けるように構成される。
【0011】
本発明は、別の実施形態において、処理チャンバ内部で成分を分配する成分送給機構に関する。前記成分は、処理チャンバ内でワークピースを処理するために使用される。前記成分送給機構は、成分を供給する単一の成分供給源を含む。前記成分送給機構は、更に、単一の成分供給源から成分を受領する成分入力部と、成分を分配する複数の成分出力部とを有する空間分配スイッチを含む。前記空間分配スイッチは、複数の成分出力部のうちの一つ以上に受領済み成分を振り向けるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による、プラズマリアクタを示す図である。
【図2A】本発明の第一の実施形態による、空間分配スイッチを示す図である。
【図2B】本発明の第一の実施形態による、空間分配スイッチを示す図である。
【図2C】本発明の一実施形態による、スイッチの動作を時間の関数として示す例示的な時間対方向の図である。
【図3】本発明の一実施形態による、図2の成分送給機構のスイッチに関連する動作を示す流れ図である。
【図4】本発明の一実施形態による、部分的レシピ設定を例示する表である。
【図5】本発明の一実施形態による、電力送給機構を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態による、電力送給機構を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態による、ガス送給機構を示す図である。
【図8】本発明の一実施形態による、図7のガス送給機構において使用し得るガス分配プレートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、基板を均一に処理する改良された方法及び装置に関する。本発明は、処理チャンバ内部で基板を処理する反応物を形成するのに使用される成分の分配に対する制御を促進することで、処理均一性を達成する。こうした成分は、一般に、処理レシピの一部であり、電力、ガス流、温度、及びその他を含むことができる。本発明は、基板の処理にイオンと中性物(反応物等)との両方が使用されるプラズマ処理システムにおいて、特に有益である。本発明の一態様は、処理チャンバ内の多数の独立した区域への成分の分配を空間的に分離することに関する。本発明の別の態様は、単一の供給源から供給される成分の分配を、独立した区域それぞれの間で切り換えること(或いは空間的に調節すること)に関する。本発明の別の態様は、成分及び/又は成分構成要素の量を、空間的区域それぞれの間で変化させることに関する。本発明の更に別の態様は、成分が独立した区域それぞれで費やす時間を変化させることに関する。
【0014】
本発明は、一実施形態おいて、処理チャンバ内部で成分を分配する成分送給機構に関する。前記システムは、電力、ガス流、温度、及びその他を含む広範な成分に適用することができる。前記成分は、基板を処理する反応物を形成するために使用可能であり、或いは、処理を促進する処理条件を制御するために使用できることは理解されよう。一実施例において、前記成分送給機構は、処理チャンバ内の様々な領域で形成される反応物の量を変更するように構成される。したがって、処理チャンバ内部の反応物の量を変更する結果として、処理の均一性を達成することができる。
【0015】
前記成分送給機構は、一般に、複数の独立した成分出力部と、単一の成分供給源と、空間分配スイッチと、コントローラとを含む。前記独立成分出力部は、処理チャンバの所望の領域に成分を出力するように構成される。例えば、独立成分出力部は、処理チャンバの内側領域及び外側領域に成分を出力するように構成することができる。理解されるように、内側領域及び外側領域は、それぞれ、基板の中央部及びエッジ部に対応させることができる。単一の成分供給源は、独立成分出力部に成分を供給するように構成される。単一の成分供給源とは、成分を出力する単一の出力部を有する成分供給源を意味する。成分自体は、単一でない場合があり、様々な構成要素で構成することができる。例えば、ガス送給機構の場合、前記成分は、事前に混合され、単一のガス供給源により送出される複数のガスで構成することができる。空間分配スイッチは、単一の成分供給源と独立成分出力部との間に配置され、複数の独立成分出力部の一つに成分を振り向ける多数の位置を有するように構成されている。例えば、前記スイッチの第一の位置は、第一の成分出力部に成分を振り向けることが可能であり、前記スイッチの第二の位置は、第二の成分出力部に成分を振り向けることができる。
【0016】
更に、コントローラは、空間スイッチと単一の成分供給源との両方と通信する状態にある。コントローラの一態様は、空間スイッチを多数の位置のそれぞれに選択的に動かすように構成される。選択的とは、コントローラがプロセス中にスイッチを特定の回数だけ動かして、所定の期間に亘ってスイッチを独立成分出力部の一つに留めることを意味する。例えば、ガス流の場合、前記ガス流は、第一の時間T1に第一の出力部へ流すこと、第二の時間T2に第二の出力部へ流すこと、及び/又は第二の出力部と比較して延長又は短縮した時間に亘って第一の出力部へ流すことが可能である。コントローラの別の態様は、成分の量と、成分の構成要素と、成分の構成要素の比率とを変化させるように構成される。例えば、ガス流の場合、放出ガスの流量と、合計流量に占めるガス及び構成要素の比率とは、制御されたスイッチそれぞれの間で調整することができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、処理中に、基板の中央部と比較して基板のエッジ部近くでの反応物又は流束の量を増加/減少させるために、成分の方向及び/又は一つ以上の前記のパラメータを変化させることで、処理均一性が促進される。本発明の別の態様によれば、処理中に、基板のエッジ部と比較して基板の中央部近くでの反応物の量を増加/減少させるために、成分の方向及び/又は一つ以上の前記のパラメータを変化させることで、処理均一性が促進される。こうした実施形態については、以下で更に詳細に説明する。
【0018】
一実施形態においては、複数の成分送給機構を有する空間送給システムを含むプラズマ処理システムが開示される。前記空間送給システムは、切換式均一性制御を提供するように構成される。一般に、プラズマは、処理チャンバにプロセスガスを流入させ、チャンバ内部に存在する少数の電子を加速して、プロセスガスのガス分子と衝突させる電場を生成することで形成される。こうした衝突により、イオン化が生じ、放電又はプラズマが発生する。当該技術では周知のように、プロセスガスの中性ガス分子は、こうした強力な電場に晒される時、電子を失い、正に荷電したイオンを残す。結果として、正に荷電したイオンと、負に荷電した電子と、中性ガス分子とが処理チャンバ内に閉じ込められる。これに応じて、イオンは、基板に向けて加速され、中性化学種と共同で、基板を処理する。代替方法では、電子の付加によって形成された負のイオンを使用して、基板を処理することもできる。例として、処理には、エッチング、蒸着、及びその他を含めることができる。
【0019】
基板処理システムにおいて周知の問題は、空間的に均一な処理の達成が困難なことであり、これは例えば、反応物注入ポイントと(基板を越えた)ポンプ開口部との間での反応物の枯渇によるものであり、或いは、基板の中央部よりもエッジ部に多くの影響を与えるチャンバ表面上での反応物及び生成物の吸収/脱離によるものである。本明細書で開示する空間送給システムでは、処理チャンバ内の処理条件を空間的に変化させることで、こうした本質的に不均一な影響を修正することを試みている。従来の技術には、多重電力及びガス注入区域のようなアプローチが含まれる。こうした設計では、非常にコストのかかる多数の供給源(発電機及びガス送給システム)を使用する。本明細書で開示する方法は、単一の供給源による単純な方法を使用するが、リアクタ内の多数の供給区域に割り当てられるタイムスライスを生成する時間多重化を利用する。
【0020】
前記空間送給システムは、チャンバ内のイオンと中性物との両方の供給源を空間的に分離するように構成される。イオンについて、空間的な分離は、処理チャンバ内の多数の独立した電力区域内で電場を生成する電力送給機構を使用することで達成できる。一実施形態において、前記電力送給機構は、単一の電源と、第一のコイルと、第二のコイルと、電力分配スイッチとを含む。電力分配スイッチは、第一及び第二のコイルの間で単一の電源のエネルギを選択的に振り向けるように構成される。これにより、イオンの生成は、二つのコイルの間で切り換えを行うことで、処理チャンバの所望の領域において制御することができる。一実施形態において、二つのコイルは、処理チャンバの内側領域及び外側領域に関連し、更に詳しくは、基板の中央部及びエッジ部に関連する。加えて、切り換えられた電力の大きさ及び期間といったパラメータは、二つの領域でのイオンの生成に作用するために、調整することが可能である。一般に、一定の量のガスに多くの電力が加えられると、イオン化も増大する。更に、一定の量の電力を一定の量のガスに加える時間を延長すると、一般にイオン化も増大する。
【0021】
中性物について、空間的な分離は、多数の独立したガス注入区域にプロセスガスを注入するガス送給機構を使用することで達成できる。一実施形態において、前記ガス送給機構は、単一のガス供給源と、第一のガス注入ポート又は第一のポートセットと、第二のガス注入ポート又は第二のポートセットと、ガス分配スイッチとを含む。ガス分配スイッチは、第一及び第二のガス注入ポートの間でガス供給源のガス流を選択的に振り向けるように構成される。これにより、中性物の量は、二つのポートの間で、適切なタイミングで交互に切り換え(時間多重化)を行うことで、処理チャンバの所望の領域において制御することができる。一実施形態において、二つのポートは、処理チャンバの内側領域及び外側領域に関連し、更に詳しくは、基板の中央部及びエッジ部に関連する。
【0022】
上記と同様に、切り換えの大きさ(流量等)及び期間といったパラメータにより、二つの領域でのガスの量に更に影響を与えることができる。一般に、流量が増加された領域及び/又は流入が特定の時間量(タイムスライス)に亘って延長された領域では、確認できる中性物の量が大きくなる。更に、ガスの場合、ガスの化学的性質は、それぞれの空間的区域又はタイムスライスの間で修正し、処理条件に更に影響を与えることができる。例えば、1/2のガスAと1/2のガスBとで構成されるプロセスガスを、1/3のガスAと、1/3のガスBと、1/3のガスCとで構成されるガスに変更することが可能であり、或いは、それぞれの比率を変更して、3/4のガスAと1/4のガスBとで構成されるガスにすることができる。化学的性質が異なると異なる処理結果が生じることは、当業者には理解されよう。つまり、化学的性質を変化させることにより、処理チャンバ内の活性反応物を更に増減することができる。
【0023】
本発明の実施形態については、以下で図1ないし図8を参照して説明する。しかしながら、こうした図に関する本明細書の詳細な説明は、例示的な目的でなされており、本発明がこうした限定的な実施形態の範囲を超えるものであることは、当業者には容易に理解されよう。
【0024】
図1は、本発明の一実施形態による、プラズマリアクタ10の説明図である。プラズマリアクタ10は、処理チャンバ12を含み、その一部はチャンバ壁14によって定められ、その内部では基板18を処理するためにプラズマ16が発火及び維持される。基板18は、処理されるワークピースを表し、これは例えば、エッチングその他の処理を施される半導体基板、或いはフラットパネルディスプレイへと処理されるガラスパネルを表すことができる。例示の実施形態において、処理チャンバ12は、ほぼ円筒の形状となるように構成され、チャンバ壁は、ほぼ垂直となるように構成される。しかしながら、本発明は、前記に限定されず、チャンバ壁を含め、様々な形状の処理チャンバを使用できると理解するべきである。
【0025】
ほとんどの実施形態において、基板18は、処理チャンバ12内に導入され、処理中に基板18を支持及び保持するように構成されたペデスタル20上に配置される。ペデスタル20は、一般に、底部電極22と、エッジリング24と、チャック26とを含む。一実施形態において、底部電極22には、高周波電源28により、整合回路網29を介して、バイアスが加えられる。高周波電源28は、底部電極22に高周波エネルギを供給するように構成される。ほとんどの場合では、電極/電源の配置は、チャック26と、エッジリング24と、基板18とを通じてエネルギを結合するのに十分な強さの電場を生成するように構成される。例として、底部電極22によって生成されるエネルギは、基板18の表面とプラズマ16との間に、プラズマ16のイオンを基板18に向けて加速するために使用されるシース電圧を形成するように構成することができる。更に、前記電極は、高周波電源に結合されるものとして図示及び説明されているが、他の構成を使用して、様々な処理チャンバに対応させること、或いはエネルギの結合を可能にするために必要な他の外的要素に適合させることができると理解されるべきである。例えば、一部の単一周波数プラズマリアクタでは、ペデスタルは、接地することができる。
【0026】
エッジリング24に関して、エッジリング24は、基板のエッジ部近くを処理する際の電気的及び機械的特性を改善し、底部電極22及びチャック26を反応物(つまり、イオン衝撃)から遮断するように構成される。そのため、エッジリング24は、基板18のエッジ部を囲むように構成され、底部電極22の上方、チャック26の周りに配置される。ほとんどの場合では、エッジリング24は、過度の摩耗後に交換される消耗成分として構成される。エッジリング24は、珪素、二酸化珪素、窒化珪素、炭化珪素、クオーツ(SiO2の形態等)、セラミック(Al23等)、及びその他といった適切な誘電体で形成することができる。
【0027】
チャック26に関して、チャック26は、底部電極22の上部表面に結合され、一般に、基板18が処理のためにペデスタル20上に置かれる時、基板18の裏面を受け入れるように構成される。例示する実施形態において、チャック26は、ESC(静電)チャックを表し、これは基板18を静電力によりチャックの表面に固定する。しかしながら、機械式チャックも使用できると理解されるべきである。一部の実施形態において、ヘリウム冷却ガスが、基板の裏面及び/又はエッジリングの裏面に更に送出され、処理中に基板及びエッジリングの温度を制御するのを助け、これにより、均一で再現可能な処理結果を確保する。
【0028】
加えて、ペデスタル20は、ほぼ円筒の形状で、処理チャンバと軸線方向が一致し、処理チャンバとペデスタルとが円筒対称となるように構成される。しかしながら、これは限定的なものではなく、ペデスタルの配置は、各プラズマ処理システムに特有の設計により変化させ得ることに留意されたい。ペデスタルは、基板18をローディング及びアンローディングする第一の位置(図示せず)と、基板18を処理する第二の位置(図示の通り)との間で移動するように構成することもできる。或いは、プッシュピンを使用して、ローディング及びアンローディングする第一の位置から、基板18を処理する第二の位置へ、基板18を移動させることができる。こうした型の搬送システムは、当該技術では周知であり、簡潔化のため、更なる詳細な説明は省略する。
【0029】
加えて、排気ポート30が、チャンバ壁14とペデスタルとの間に配置される。排気ポート30は、処理中に形成されたガスを排気するように構成され、一般に、処理チャンバ12の外部に位置するターボ分子ポンプ(図示せず)に結合される。ほとんどの実施形態において、ターボ分子ポンプは、処理チャンバ12内部で適切な圧力を維持するように構成される。更に、排気ポートはチャンバ壁とペデスタルとの間に配置された状態で図示されているが、排気ポートの実際の配置は、各プラズマ処理システムに特有の設計により変化させることができる。例えば、ガスの排気は、処理チャンバの壁に組み込んだポートにより達成することもできる。
【0030】
処理チャンバ12の外側、更に詳しくは、誘電窓32の外側には、処理チャンバ12内部でプラズマ16を発火及び維持するのに十分な強さのエネルギを分配する電力送給機構34が配置される。電力送給機構34は、単一の高周波電源36と、誘導電極38と、電力分配スイッチ40とを含む。高周波電源36は、誘導電極38に整合回路網37を介して高周波エネルギを供給するように構成され、誘導電極38は、処理チャンバ12内部に電場を生成するように構成される。一実施形態によれば、誘導電極38は、複数の別個である空間的に区別可能なコイルに分割される。例示する実施形態において、誘導電極38は、内側コイル38Aと外側コイル38Bとに分割される。内側コイル38Aは、処理チャンバ12の内側処理区域42内で電場を生成するように構成され、外側コイル38Bは、処理チャンバ12の外側処理区域44内で電場を生成するように構成される。理解されるように、内側処理区域42は、一般に、基板18の内側領域46(又は中央部)に対応し、外側処理区域44は、一般に、基板18の外側領域48(外側エッジ部)に対応する。したがって、内側コイル38Aは、一般に、基板18の内側領域46の上方でのイオン及び反応性中性物の形成を制御し、外側コイル38Bは、一般に、基板18の外側領域48の上方でのイオン及び反応性中性物の形成を制御する。
【0031】
それぞれのコイル38A及び38Bは、電力分配スイッチ40を通じて、高周波電源36と整合回路網37とに別個に結合される。電力分配スイッチ40は、エネルギを、高周波電源36から、内側コイル38Aと外側コイル38Bとの間で振り向けるように構成される。つまり、電力分配スイッチ40は、エネルギを内側コイル38Aへ振り向ける第一の位置と、エネルギを外側コイル38Bへ振り向ける第二の位置とを有するように構成される。したがって、電力分配スイッチ40の位置に応じて、内側コイル38A又は外側コイル38Bのいずれかが、高周波電源36に結合される。電力分配スイッチ40は、更に、信号接続線76を介してコントローラ75と通信する。一実施形態において、コントローラ75は、電力分配スイッチ40に対して、第一の位置から第二の位置へ(又はその逆へ)移動する時期、及び/又は、別の位置へ移動する前に位置に留まる長さを通知するように構成される。コントローラ75は、更に、電源に関連する様々な動作を制御するように構成され、これには、高周波電源36の強さ(ワット等)を制御することが非限定的に含まれる。図示のように、コントローラ75は、信号接続線77を介して、電源36に結合される。空間分配スイッチについては、図2及び図3で更に詳細に説明する。
【0032】
プラズマリアクタ10は、更に、処理チャンバ12内にプロセスガスを分配するガス注入機構50を含む。ガス注入機構50は、一般に、単一のガスボックス52と、ガス注入ポート54と、ガス分配スイッチ56とを含む。ガスボックス52は、気体原材料を(ガスライン58を介して)ガス注入ポート54に送給するように構成され、ガス注入ポート54は、気体原材料を処理チャンバ12に、更に詳しくは誘電窓32と基板18との間の高周波誘導プラズマ領域に、放出するように構成される。図示のように、ガス注入ポート54は、処理チャンバ12の内周の周りに、更に詳しくは誘電窓32(又はガス分配プレート)を通じて、配置される。代わりに、気体原材料は、処理チャンバ自体の壁に組み込まれたポートから放出すること、或いは、誘電窓に配置されたシャワーヘッドを通じて、放出することができる。更に、ガスボックス52は、通常、流量と、使用する気体原材料の種類と、気体原材料の比率とを制御するように構成されたガス流コントローラシステム(図1に図示せず)を含む。ガスボックス52は、一般に、複数の外部ガスライン60を介して、様々な気体原材料を供給するように構成された複数のガスボンベ(図示せず)に結合される。気体原材料については、当該技術では周知であり、ここでは詳細に説明しない。
【0033】
一実施形態によれば、ガス注入ポート54は、複数の別個である空間的に区別可能なポートに分割される。例示する実施形態において、ガス注入ポート54は、内側ポート54Aと外側ポート54Bとに分割される。内側ポート54Aは、処理チャンバ12の内側処理区域42内に気体原材料を放出するように構成され、外側ポート54Bは、処理チャンバ12の外側処理区域44内に気体原材料を放出するように構成される。前に述べたように、内側処理区域42は、一般に、基板18の内側領域46に対応し、外側処理区域44は、一般に、基板18の外側領域48に対応する。したがって、内側ポート54Aは、一般に、基板18の内側領域46の上方での中性物の量を制御し、外側ポート54Bは、一般に、基板18の外側領域48の上方での中性物の量を制御する。
【0034】
それぞれのポート54A及び54Bは、ガス分配スイッチ56を通じて、ガスボックス52に別個に接続される。ガス分配スイッチ56は、ガスボックス52から供給される気体原材料を、内側ポート54Aと外側ポート54Bとの間で振り向けるように構成される。つまり、ガス分配スイッチ56は、気体原材料を内側ポート54Aへ振り向ける第一の位置と、気体原材料を外側ポート54Bへ振り向ける第二の位置とを有するように構成される。したがって、ガス分配スイッチ56の位置に応じて、内側ポート54A又は外側ポート54Bのいずれかが、ガスボックス52に接続される。前記第二の分配スイッチ56は、更に、信号接続線78を介してコントローラ75と通信する。一実施形態において、コントローラ75は、ガス分配スイッチ56に対して、第一の位置から第二の位置へ(又はその逆へ)動く時期、及び/又は、別の位置へ動く前にその位置に留まる時間の長さを通知するように構成される。コントローラ75は、更に、信号接続線79を介して、ガスボックス52に接続される。コントローラ75は、ガスボックス52に関連する様々な動作を制御するように構成され、これには、気体原材料混合物のガスそれぞれの流量及びガス流比率を制御することが非限定的に含まれる。同様に、空間分配スイッチについては、図2及び図3で更に詳細に説明する。
【0035】
簡単に言えば、プラズマ16を作成するために、プロセスガス(例えば、単一の気体原材料又は気体原材料の混合物)は、一般に、少なくとも一つのガス注入ポート54を通じて処理チャンバ12内に導入される。次に、高周波電源36を使用して少なくとも一つの電極38に電力が供給され、大きな電場が、処理チャンバ12内部に生成される。この電場は、処理チャンバ12内部に存在する少数の電子を加速し、プロセスガスのガス分子に衝突させる。こうした衝突の結果、イオン化が生じ、プラズマ16が発生する。当該技術では周知のように、プロセスガスの中性ガス分子は、こうした強い電場に晒される時、電子を失い、正に荷電したイオンを残す。結果として、正に荷電されたイオンと、負に荷電されたイオンと、中性ガス分子とが、処理チャンバ12内部に閉じ込められる。
【0036】
プラズマ16の形成中には、処理チャンバ12内部の中性ガス分子も、基板の表面に向かう傾向にある。例として、基板での中性ガス分子の存在に寄与する機構の一つは、拡散である(つまり、チャンバ内部の分子のランダムな移動)。したがって、中性化学種(中性ガス分子等)の層は、通常、基板18の表面に沿って確認される可能性がある。これに対応して、底部電極22に電力が加えられる時、イオンは、基板18に向けて加速されるようになり、ここで中性化学種と共に、基板の処理、つまりエッチング又は蒸着を活性化させる。
【0037】
なお、図1に示す電力送給機構とガス送給機構は、いずれも、処理均一性を促進するために使用できることは理解されよう。例として、電力送給機構は、内側及び外側コイル間で切り換えを行うことで、処理チャンバ内部のイオン濃度を空間的に変更するために使用可能であり、ガス送給機構は、内側及び外側ガス注入ポート間で切り換えを行うことで、処理チャンバ内部の中性物濃度を空間的に変更するために使用できる。加えて、量と、切り換えまでの持続時間と、構成要素と、構成要素の比率とをタイムスライス間で変更し、イオン及び中性物の濃度を更に変化させることもできる。そこで、基板表面の処理均一性を促進することに関連するいくつかの例について説明する。
【0038】
本発明の一態様によれば、基板エッジ部近くのイオン濃度を増減して、基板の中央部及びエッジ部の間の処理均一性を改善する。これは、本発明の特徴を使用した様々な方法で達成できる。例として、基板エッジ部近くのイオンを増加させるアプローチの一つは、外側区域で電力を分配する時間量を、内側区域で電力を分配する時間量に比べて増加させることである。逆に、この時間量を減らして、基板エッジ部近くのイオンを減らすこともできる。しかしながら、内側区域で形成されたイオンが外側区域に向けて拡散する可能性があるために、外側区域で必要となる時間は、内側区域で必要となる時間量よりも小さくなる場合があることに留意されたい。基板エッジ部近くのイオンを増加させる別のアプローチは、外側区域で分配する電力量を、内側区域で分配する電力量に比べて増加させることである。逆に、この電力量を減らして、基板エッジ部近くのイオンを減らすこともできる。
【0039】
本発明の一態様によれば、基板中央部近くのイオン濃度を増減して、基板の中央部及びエッジ部の間の処理均一性を改善する。同様に、これは、本発明の特徴を使用した様々な方法で達成できる。例として、基板中央部近くのイオンを増加させるアプローチの一つは、内側区域で電力を分配する時間量を、外側区域で電力を分配する時間量に比べて、増加させることである。逆に、この時間量を減らして、基板中央部近くのイオンを減らすこともできる。しかしながら、内側区域で形成されたイオンが外側区域に向けて拡散する可能性があるため、外側区域で必要となる時間は、内側区域で必要となる時間量よりも小さくなる場合があることに留意されたい。基板中央部近くのイオンを増加させる別のアプローチは、内側区域で分配する電力量を、外側区域で分配する電力量に比べて増加させることである。逆に、この電力量を減らして、基板中央部近くのイオンを減らすこともできる。
【0040】
本発明の別の態様によれば、基板エッジ部近くの中性物濃度を増加又は低減して、基板の中央部及びエッジ部の間の処理均一性を改善する。これは、本発明の特徴を使用した様々な方法で達成できる。例として、基板エッジ部近くの中性物を増加させるアプローチの一つは、外側区域でガスを分配する時間量を、内側区域でガスを分配する時間量に比べて増加させることである。逆に、この時間量を減らして、基板エッジ部近くの中性物を減らすこともできる。しかしながら、内側区域で形成された中性物が外側区域に向けて拡散する可能性があるため、外側区域で必要となる時間は、内側区域で必要となる時間量よりも小さくなる場合があることに留意されたい。基板エッジ部近くの中性物を増加させる別のアプローチは、外側区域で分配するガスの流量を、内側区域で分配するガスの流量に比べて増加させることである。逆に、この流量を減らして、基板エッジ部近くの中性物を減らすこともできる。基板エッジ部近くの中性物を増加させる別のアプローチは、外側区域において、内側区域で分配するガスの化学的構成とは異なる化学的構成を有するガスを使用することである。これは、構成ガスのガス比率を変更すること、或いは構成ガスを追加/除去することで達成できる。
【0041】
本発明の別の態様によれば、基板中央部近くの中性物を増加又は低減して、処理均一性を改善する。同様に、これは、本発明の特徴を使用した様々な方法で達成できる。例として、基板中央部近くの中性物を増加させるアプローチの一つは、内側区域でガスを分配する時間量を、外側区域でガスを分配する時間量に比べて増加させることである。逆に、この時間量を減らして、基板中央部近くの中性物を減らすこともできる。基板中央部近くの中性物を増加させる別のアプローチは、内側区域で分配するガスの流量を、外側区域で分配するガスの流量に比べて増加させることである。逆に、この流量を減らして、基板中央部近くの中性物を減らすこともできる。基板中央部近くの中性物を増加させる別のアプローチは、内側区域において、外側区域で分配するガスの化学的構成とは異なる化学的構成を有するガスを使用することである。これは、構成ガスのガス比率を変更すること、或いは構成ガスを追加/除去することで達成できる。
【0042】
以上、本発明をいくつかの例に基づき説明してきたが、本発明の範囲に含まれる変形例、置換例、及び等価物が存在することに留意されたい。例えば、前記の例は、単一のパラメータ変更の状況で説明しているが、同時であろうと異なる時期であろうと、多数のパラメータ変更を実行し、処理均一性に更に影響を与え得ることに留意されたい。例として、成分の量と持続時間との両方を同時に変更することができる。更に、同時であろうと異なる時期であろうと、成分を重複させて、処理均一性に更に作用することが可能であることに留意されたい。例えば、ガスのステップ中に電力のステップを開始することが可能であり、逆に、電力のステップ中にガスのステップを開始することができる。電力のステップとガスのステップとは、同時に開始することもできる。
【0043】
図2は、電力送給機構40又はガス送給機構50において使用することが可能な空間分配スイッチ80の図である。例として、空間分配スイッチ80は、図1の電力分配スイッチ40又はガス分配スイッチ56にすることができる。一般に、空間分配スイッチ80は、成分供給源(図示せず)から供給成分83を受領する入力部82と、分配成分83’を放出する第一の出力部84及び第二の出力部86とを有する。図2に例示するように、空間分配スイッチ80は、供給成分83を、第一の出力部84又は第二の出力部86のいずれかに分配する能力を有する。第一の出力部84は、処理チャンバの第一の領域内に成分を出力する成分出力部に結合させることが可能であり、第二の成分出力部86は、処理チャンバの第二の領域に成分を出力する第二の成分出力部に結合させることができる。
【0044】
簡単に言えば、供給成分83は、単一の構成要素又は複数の構成要素で構成することができる。例えば、供給ガスの場合、この供給ガスは、単一のガス又は複数の混合ガスで構成することができる。供給成分83は、更に、その成分に関連した変化する特性を有することができる。例えば、供給エネルギの場合、この供給エネルギは、増大又は減少した出力を有することができる。供給ガスの場合、この供給ガスは、増大又は減少したガス流、混合ガスの異なる比率、又は完全に異なるガス混合物を有することができる。供給成分83は、好ましくは、単一の供給源(図示せず)を介して送給され、これはプロセス全体で供給成分に関連する特性及び構成要素を調整するように構成される。或いは、複数の供給源を使用し、スイッチ80の入力部82に(複数の)供給成分を供給することができる。例えば、第一の供給源を使用して、スイッチに第一の成分を供給し、第二の供給源を使用して、スイッチに第二の成分を供給することができる。しかしながら、多重供給源はコストが非常に高いため、通常は、一つの供給源が望ましいことに留意されたい。
【0045】
更に詳しく説明すると、空間分配スイッチ80は、本質的にはYスイッチであり、定義としては、一つの入力部と二つの出力部を有するスイッチである。成分の方向は、空間分配スイッチ80の状態に応じて変化する。空間分配スイッチ80が第一の状態(図2Aに図示)から第二の状態(図2Bに図示)へ変化すると、成分の方向は、第一の出力部84から第二の出力部86へ変化する。この仕組みは、正しく設計される時、成分の安定した分配を生み出して、過渡状態を最少化し、最初に(スイッチが状態Aである長さによって決まる)一定の期間に亘って一方向に分配され、次に(スイッチが状態Bである長さによって決まる)一定の期間に亘って逆方向に分配される。更に、スイッチ80は、基板を均一に処理するために、単一のプロセス全体に亘って、これらの状態間で継続的に調節される。
【0046】
一実施例において、空間分配スイッチ80は、一つの入力部と一つの出力部を有するバルブ又はスイッチのペアにより形成される。この特定の実施形態において、第一のバルブは、単一の供給源と第一の区域との間に結合され、第二のバルブは、単一の供給源と第二の区域との間に結合される。成分は、バルブの一方を閉じ(オフにし)、他方のバルブを開く(オンにする)ことで、所望の位置に分配される。例えば、成分を第一の区域に分配するには、第一のバルブを開き、第二のバルブを閉じる。逆に、成分を第二の区域に分配するには、第一のバルブを閉じ、第二のバルブを開く。
【0047】
スイッチについては、一つの入力部と二つの出力部とを有するものとして図示及び説明したが、これは制限ではなく、スイッチは、更に多くの出力部(又は更に多くの入力部)を扱うように構成できると理解されるべきである。例えば、一つの入力部と三つの出力部を有するスイッチを使用して、処理チャンバの三つのセクタ間で成分を分配することができる。この場合、三つのバルブを使用して、成分を適切なセクタに分配することができる。
【0048】
更に、前記スイッチは電力及びガス送給機構の状況で図示及び説明されているが、このコンセプトは、他の成分にも同様に適用できると考えるべきである。例えば、前記スイッチは、温度、バイアス出力、磁力、及びその他といった成分を利用する成分送給機構において使用することが可能である。理解されるように、各成分送給システムにより、レシピの制御が強化される。
【0049】
更に詳しく説明すると、図2Cは、本発明の一実施形態による、スイッチの動作を時間の関数として示す例示的な時間対方向の図100を表している。図示のように、図100は、時間軸Tと、方向軸Dとを含む。方向軸Dは、二種類の別個の方向102及び104に分割されている。例として、方向102及び104は、それぞれ、図2A及びBの第一の出力部84及び第二の出力部86に対応させることができる。更に、時間軸Tは、複数の別個の時間系列106A〜Fに分割されており、これらは様々な時間t0〜5に開始される。理解されるように、成分は、方向102及び104の間で空間的に調節されるだけでなく、時間t0〜5の間で時間的にも調節される。つまり、スイッチは、プロセス内の特定の時間に方向を変更する。時間系列106は、均等であっても、そうでなくてもよい。例えば、図2Cに示すように、時間系列106A、106B、106E、及び106Fは、同じ時間量だけ実行され、時間系列106C及び106Dは、異なる時間量で実行される。更に詳しくは、時間系列106Cは、短い時間に亘って実行され、時間系列106Dは、長い時間に亘って実行される。したがって、方向(102、104等)、タイミング(t0〜5等)、及び時間量(106等)をプロセス全体に亘って調整し、処理均一性を促進することができる。
【0050】
図3は、本発明の一実施形態によるスイッチ80の動作の流れ図である。説明を容易にするために、図3の流れ図は、一対の連続する切り換えの状況で表されている。しかしながら、これは制限的なものではなく、単一のプロセス内で複数の切り換えを行うことができると考えるべきである。切り換え動作200は、一般にステップ202で開始される。ステップ202において、スイッチ80の方向は、コントローラにより、ステップ1処理向けに設定される。つまり、ステップ202において、スイッチは、図2Aの第一の状態から図2Bの第二の状態(又はその逆)に変化し、これにより、成分の分配の方向を、第一の出力部区域から第二の出力部区域(又はその逆)にする。ステップ202で方向が設定された後、プロセスの流れは、ステップ204に進み、ここでステップ1処理が実行される。ステップ1処理は、一般に、成分送給機構が従う所定のレシピ(又は命令)を含む。例えば、電力に関しては、分配する電力の大きさと、分配時間とを、所定の値に設定することができる。ガス流に関しては、流量と、分配時間と、ガスの化学的性質と、ガスの比率とを、所定の値に設定することができる。こうした所定の値は、他の(複数の)区域で所定の値と比べ、高くすること、低くすること、又は同じにすることが可能である。一例において、前記所定の値は、経験的なプロセスにおいて、試行錯誤を通じて決定し、安定した均一なプロセスを作り出すことができる。
【0051】
ステップ1処理に続いて、プロセスの流れはステップ206に進み、ここでスイッチ80の方向は、コントローラにより、ステップ2処理向けに設定される。ステップ206において、スイッチ80は、図2Bの第二の状態から図2Aの第一の状態(又はその逆)に変化し、これにより、成分の分配の方向を、第二の出力部区域から第一の出力部区域(又はその逆)にする。ステップ206で方向が設定された後、プロセスの流れは、ステップ208に進み、ここでステップ2処理が実行される。ステップ1処理と同様に、ステップ2処理は、一般に、成分送給機構が従う所定のレシピ(又は命令)を含む。ステップ2処理に続いて、プロセスの流れは、ステップ210に進み、ここで処理を継続するか(yes)、或いは処理を終了するか(no)の判断が行われる。処理を続けると判断された場合、プロセスの流れは、ステップ202に戻る。処理を終了すると判断された場合、プロセスの流れは、ステップ212に進み、これはプロセスが終了したことを意味する。
【0052】
更に詳しく説明するために、次に本発明の例示的な応用について、図4により説明する。図4は、本発明の一実施形態による、アルミニウム被覆エッチングプロセスに関する部分的レシピ設定400を例示する表である。例として、前記レシピは、図1に関して上で説明したプラズマリアクタと同様のプラズマリアクタで使用することができる。部分的レシピ設定400は、一般に、複数のステップ402と、複数のパラメータ404とを含み、前記パラメータは、基板の中央部からエッジ部まで均一なエッチング結果を発生させるために、プロセス全体で調整すること、更に詳しくはそれぞれのステップ402で調整することが可能である。この例のパラメータには、時間406と、電極出力408と、コイル位置412と、第一のガス流量414と、第二のガス流量416と、第三のガス流量418と、ガス流入ポート位置420とが非限定的に含まれる。
【0053】
時間406は、ステップ402の1つのステップを開始する時間に関連し、これにより、各ステップの持続時間を制御する。電極出力408は、内側又は外側コイルに関係なく、上部電極に送給される電力(ワット等)に関連する。コイル位置412は、送給される電力の方向、つまり内側又は外側コイルに関連する。第一のガス流量414は、メインプロセスガスの一部である第一のガスの流量(sccm等)に関連する。第二のガス流量416は、メインプロセスガスの一部である第二のガスの流量に関連する。第三のガス流量418は、メインプロセスガスの一部である第三のガスの流量に関連する。例として、第一のガスは、CHF3にすることが可能であり、第二のガスは、BCl3にすることが可能であり、第三のガスは、Cl2にすることが可能である。ガス流入ポート位置420は、送給されるガスの方向、つまり内側又は外側ガス注入ポートに関連する。
【0054】
このプロセスはステップ1で開始され、ここでメインプロセスガスが、処理チャンバ内に導入される。図示のように、メインプロセスガスは、5/20/80のガス流比率を有し、内側ガス注入ポートに送給される。ステップ1の処理は、5秒間継続する(例えば、時間=0に開始され、時間=5に終了する)。ステップ1の後、プロセスはステップ2に進み、ここでは、上部電極の内側コイルに700ワットの電力が加えられ、メインプロセスガスは、同じガス比率5/20/80を有し、引き続き内側ガス注入ポートに流れる。ステップ2の処理は、10秒間継続する(例えば、時間=5に開始され、時間=15に終了する)。
【0055】
ステップ2の完了後、プロセスはステップ3に進み、ここでは、700ワットの電力が引き続き上部電極の内側コイルに加えられ、メインプロセスガスは、新しいガス比率10/20/0を有し、方向を変えて、外側ガス注入ポートへ送給され始める。ステップ3の処理は、5秒間継続する(例えば、時間=15に開始され、時間=20に終了する)。ステップ3に続いて、プロセスはステップ4に進み、ここでは、送給される電力が、新しい出力設定500ワットを有し、方向を変えて、上部電極の外側コイルに加えられ始める。更に、メインプロセスガスは、新しいガス比率5/20/80を有し、方向を変えて、内側ガス注入ポートへ送給され始める。ステップ4の処理は、5秒間継続する(例えば、時間=20に開始され、時間=25に終了する)。ステップ4の完了後、プロセスはステップ5に進み、ここでは、送給される電力が、新しい出力設定700ワットを有し、方向を変えて、上部電極の内側コイルに加えられ始める。更に、メインプロセスガスは、新しいガス比率10/20/0を有し、方向を変えて、外側ガス注入ポートに送給され始める。
【0056】
この例は、Alエッチング処理を目的とするが、レシピを変更して、他の金属を同じようにエッチング処理することができることは理解されたい。更に、レシピを変更して、誘電体を含む他の材料をエッチング処理することができる。したがって、メインプロセスガスは、別の種類のガス及び/又は別のガス流及び比率で構成することが可能であり、電力は、異なる出力レベルで調整することが可能である。加えて、前記プロセス中には電力及びガスの方向が変化したが、これらの成分の一方を同じ状態に維持し、他方を変化させることが可能であることに留意されたい。更に、時間は、各プロセスで変更可能であり、5又は10秒の増分は制限的なものではないことに留意されたい。更に、電気及びガス流の両方が、プロセス中の異なる時間に変化するように、異なるタイムスケールに従うことも可能である。加えて、部分的レシピ400において、部分的とは、このレシピがレシピ全体の一部に過ぎないことを示すことに留意されたい。同様に、五つのプロセスステップは制限的なものではなく、これより多いステップ又は少ないステップを実行し、基板を処理し得ることにも留意されたい。
【0057】
図5は、本発明の一実施形態による、電力送給機構500の図である。例として、電力送給機構500は、図1に例示する電力送給システム34にそれぞれ対応させることができる。電力送給機構500は、一般に、高周波電源(又は発電機)502と、電極504と、整合回路網506と、高出力高周波スイッチ508とを含む。電極504は、二つのコイルを含み、更に詳しくは、内側コイル510と外側コイル512とを含み、これらは高周波電源502に、高出力高周波スイッチ508を介して電気的に結合される。なお、これらのコイルは、二つの同心コイルとして非限定的に図示されている。プロセス中の時間の関数として、それぞれのコイルを高周波電源502に対して切り換え、これにより、高周波電力が接続される場所を空間的に変更することができる。一実施例において、高出力高周波スイッチは、プラズマが安定する時間と比べて高速となるように構成され、これは通常、数ミリ秒程度である。高速で切り換えを行うことにより、基板には、送給される電力のほぼ合成平均が影響するようになる。切り換え速度は、設計の仕様に応じて変化するが、0.1Hz〜100Hzの速度が一般的となる。電力分配スイッチは、kHzのタイムスケールでも動作するように構成される。更に、整合回路網506は、一般に、高出力高周波スイッチ508と高周波電源502との間に配置される。整合回路網506は、高周波電源502の出力とプラズマ負荷との間でインピーダンスを整合させるように構成される。
【0058】
ほとんどの場合では、システムがコイルを切り換えるとシステムのインピーダンスが変化する。つまり、内側コイルで生成されるインピーダンスは、一般に、外側コイルで生成されるインピーダンスとは異なる。したがって、整合回路網506は、迅速に調整を行える必要があり、或いは、全く調整を必要としないようにシステムを設計する必要がある。
【0059】
一実施形態において、整合回路網506は、固定整合回路網である。つまり、整合回路網は、電源とプラズマ負荷とが設定インピーダンスを有するように設計される。一実施例において、この固定整合回路網は、電源と内側コイルによって生成されたプラズマ負荷との間でインピーダンスを整合させるように構成される。この実施例では、外側コイルに送給される電力を増加させて、インピーダンスの不整合により外側コイルで生成される反射電力を補償する。別の実施例において、固定整合回路網は、電源と外側コイルによって生成されたプラズマ負荷との間でインピーダンスを整合させるように構成される。この実施例では、内側コイルに送給される電力を増加させて、インピーダンスの不整合により内側コイルで生成された反射電力を補償する。
【0060】
別の実施例において、固定整合回路網は、二種類の状態を有するように構成される。一方の状態は、電源と内側コイルによって生成されたプラズマ負荷との間でインピーダンスを整合させ、もう一つの状態は、電源と外側コイルによって生成されたプラズマ負荷との間でインピーダンスを整合させる。この実施例において、整合回路網は、別個のコイルそれぞれによって生成されたインピーダンスを整合させるために、インピーダンス間で切り換えを行うように構成される。更に別の実施例において、内側及び外側コイルはほぼ同じインピーダンスを有するように構成され、整合回路網が内側及び外側コイル間のインピーダンスを整合させるようになる。
【0061】
別の実施形態において、整合回路網506は、負荷インピーダンスが大幅に変化する条件下でインピーダンスを整合させるように構成された調整可能型整合回路網である。例えば、調整可能型整合回路網は、電力の方向と、電力の大きさと、電力の時間と、ガスの流量と、チャンバの圧力と、チャンバの温度と、その他とを非限定的に含む広範な変化パラメータに関するインピーダンスを整合させることができる。調整可能型整合回路網は、一般に、前進電力及び反射電力の両方を決定するように構成されたワット計(図示せず)を含む。当該技術では周知のように、反射電力は、発電機の出力インピーダンスとプラズマ負荷との間に不整合が存在する証拠である。したがって、ワット計は、システムのインピーダンスが変化したかどうかを判断するように構成される。変化が発生したと判断されると、調整可能型整合回路網は、変化したインピーダンスを整合させるために調整を行うことができる。
【0062】
図6は、本発明の一実施形態による、電力送給機構600の図である。例として、電力送給機構600は、図1に例示する電力送給機構34にそれぞれ対応させることができる。電力送給機構600は、一般に、プラズマ及びコイルのインピーダンスが大きく異なる場合に使用される。電力送給機構600は、一般に、高周波電源(又は発電機)602と、電極604と、第一の整合回路網606と、第二の整合回路網608と、高出力高周波スイッチ610とを含む。電極604は、二つのコイルを含み、更に詳しくは、内側コイル612と外側コイル614とを含み、これらは高周波電源602に、高出力高周波スイッチ610を介して電気的に接続される。なお、これらのコイルは、二つの同心コイルとして非限定的に図示されている。プロセス中の時間の関数として、それぞれのコイルを高周波電源602に対して切り換え、これにより、高周波電力が接続される場所を空間的に変更することができる。一実施例において、高出力高周波スイッチは、プラズマが安定する時間と比べて高速となるように構成される。高速で切り換えを行うことにより、基板には、送給される電力のほぼ合成平均が影響するようになる。更に、第一の整合回路網606は、一般に、外側コイル614と高出力高周波スイッチ610との間に配置され、第二の整合回路網608は、一般に、内側コイル612と高出力高周波スイッチ610との間に配置される。第一の整合回路網606に関して、第一の整合回路網606は、高周波電源602の出力と外側コイル614を使用することで形成されたプラズマ負荷との間のインピーダンスを整合させるように構成される。第二の整合回路網608に関して、第二の整合回路網608は、高周波電源602の出力と内側コイル612を使用することで形成されたプラズマ負荷との間のインピーダンスを整合させるように構成される。一実施形態において、第一及び第二の整合回路網は、固定整合回路網(前記と同様)である。
【0063】
図7は、本発明の一実施形態による、ガス送給機構700の図である。例として、ガス送給機構700は、図1に例示するガス送給機構50にそれぞれ対応させることができる。ガス送給機構700は、一般に、ガス供給源702(又はガスボックス)と、ガス分配プレート704と、ガス分配スイッチ706とを含む。ガス分配プレート704は、二つのガス注入ポートを含み、更に詳しくは内側ガス注入ポート708と外側ガス注入ポート710とを含み、これらはガスボックス702に、ガス分配スイッチ706を介して接続される。ガス供給源702は、第一のガスライン712を通じてガス分配スイッチ706にガスを供給し、このスイッチは、スイッチの状態に応じて第二のガスライン714又は第三のガスライン716のいずれかにガスを供給する。図示のように、第二のガスライン714は、内側ガス注入ポート708にガスを送給し、第三のガスライン716は、外側ガス注入ポート710にガスを送給する。プロセス中の時間の関数として、それぞれのポートをガス供給源702に対して切り換え、これにより、ガスが分配される場所を空間的に変更することができる。更に、図7には図示されていないが、ガス注入ポートは、両方とも、供給されたガスを放出する複数のアパーチャを含むことができる。一般に、それぞれのポートのアパーチャは、一つのポートにつき一本のガスラインのみが必要となるように相互接続される。ガス分配プレートは、従来型のものであり、一般に、当該技術では周知である。しかしながら、本発明の説明を容易にするために、ガス分配プレートについては、図8において更に詳細に説明する。
【0064】
ガスボックス702に関して、ガスボックス702は、一般に、個別のガス供給源(図示せず)に接続された複数のガス流入ライン716を有する高圧ガスマニホールドを含む。例として、このガス供給源は、ガス容器又はガスボンベにすることができる。四本のガス流入ラインのみが図示されているが、これは制限ではなく、これより多くのガス流入ライン又はこれより少ないガス流入ラインを使用できると理解するべきである。ガスの標準的な総数と、これに応じたガス流入ラインの標準的な総数とは、一般に8である。ガス流入ライン716は、一般に、質量流量コントローラ718に結合され、このコントローラは、ガスを分配することに関連するパラメータを制御及び調整するように構成され、こうしたパラメータには、ガスの流量と、ガスの混合と、ガスの比率と、圧力とが含まれるが限定的なものではない。各ガスは、独自の質量流量コントローラを有する。質量流量コントローラ718は、一般に、バルブ(図示せず)と、流量計(図示せず)とを含む。この流量計は、ガスがどのくらいの速度で流れるかを制御し、したがって圧力を制御するためのものであり、バルブは、低圧ガスを低圧マニホールド720に送出するためのものである。図示のように、低圧マニホールド720は、ガスが混合される配管を含む。理解されるように、それぞれの質量流量コントローラを制御することで、ガスの化学的性質と、ガスの比率と、混合ガスの流量とを調整できる。ガスの混合物は、その後、第一のガスライン712を介してガス分配スイッチ706に混合ガスを放出するバルブ722に供給される。
【0065】
スイッチ706に到達すると、ガス混合物は、二つのスイッチ状態の一方を介して、二つのガス注入ポート708,710の一方に向けられる。スイッチ606が第一の状態にある場合、ガス混合物は、第二のガスライン714を介して内側ガス注入ポート708へ流れる。スイッチ706が第二の状態にある場合、ガス混合物は、第三のガスライン716を介して外側ガス注入ポート710へ流れる。
【0066】
場合によっては、前記のそれぞれの状態間で切り換えを行うことで、切り換え過渡状態に遭遇する場合がある。つまり、切り換えによって、ガスの一定でない流れ又は間欠的な流れがガス注入ポートから放出される場合がある。こうした切り換え過渡状態は、プラズマの形成又は放電に悪影響を与え、ガスラインへのプラズマガスの逆流、或いはガスラインにおける特定の物質の蓄積につながる可能性がある。こうした影響を消し去る方法は、数多く存在する。例えば、一方法として、ガスラインを通じたガス流のコンダクタンスを低くすることができる。コンダクタンスを低くすることで、ガスがガスラインから排出される前に、切り換えを実行することが可能となり、これにより、ガス流の疑似安定状態を達成できる。例として、ガスラインのコンダクタンスを低くする一方法では、その長さを増やすことができる。
【0067】
図8は、例示的なガス分配プレート800を示している。例として、ガス分配プレート800は、図1に例示するガス分配プレート32にそれぞれ対応させることができる。ガス分配プレート800は、一般に、内側部分802と外側部分804とを含む。内側部分802は、一般に、処理チャンバの内側領域内にガスを放出する複数の内側アパーチャ806を含む。それぞれの内側アパーチャ806は、ガス分配プレート800内のチャネルを通じて、お互いに相互接続され、内側ガス注入ポート(図示せず)に結合される。同様に、外側部分804は、一般に、処理チャンバの外側領域内にガスを放出する複数の外側アパーチャ808を含む。それぞれの外側アパーチャ808は、ガス分配プレート800内のチャネルを通じて互いに相互接続され、外側ガス注入ポート(図示せず)に接続される。なお、アパーチャ806,808に関して特定の構造が図示されているが、他の構造を使用し得ることに留意されたい。例えば、内側及び外側部分の両方で、単一のアパーチャを使用することができる。ガス分配プレートは、当該技術では周知であり、簡潔にするため、更に詳細には説明しない。
【0068】
前記から理解できるように、本発明は、従来技術と比較して、多数の利点を提供する。様々な実施形態又は実施例は、以下の利点の一つ以上を有することができる。本発明の利点の一つは、処理の制御性の増加である。例として、本発明は、プラズマ処理チャンバ内部の様々な位置でのイオン及び中性物の濃度を制御するために使用することができる。プロセスの空間的制御性を大きくするために、本発明は、処理チャンバ内部の様々な位置の間での成分の分配を、プログラム可能な期間に亘って空間的に調節することを提供する。制御性が増加した結果として、均一な処理を、従来技術において可能なものよりも高い次元で達成することができる。本発明の別の利点は、システムのコスト及び複雑性の低減である。分配スイッチを設けることで、必要な成分供給源は一つのみとなるため、設計のコストが低減される。
【0069】
本発明について、いくつかの好適な実施形態の観点から説明したが、本発明の範囲に入る変更、置換、及び等価物が存在する。なお、本発明の方法及び装置を実施する多数の代替方法が存在することに留意されたい。例えば、成分送給機構について、半導体基板を処理するプラズマリアクタの観点から説明及び図示したが、なお、他のシステムでも、この成分送給機構の手法及び方法を応用することができることに留意されたい。例えば、この成分送給機構は、化学蒸着(CVD)、熱CVD、プラズマ化学蒸着(PECVD)、スパッタリング等の物理蒸着(PVD)、及びその他と、ドライエッチング、プラズマエッチング、反応イオンエッチング(RIE)、磁気反応イオンエッチング(MERIE)、電子サイクロトロン共鳴(ECR)、及びその他とを含む、ほとんどの半導体処理システムにおいて使用できると考えられる。更に、この成分送給機構は、半導体処理以外のシステムにも応用できると考えられる。例えば、磁気又は光記憶ディスクの製造等である。
【0070】
したがって、特許請求の範囲は、本発明の本来の趣旨及び範囲に入るこうしたすべての変形例、置換例、及び等価物を包含するものとして解釈されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理チャンバ内でワークピースを処理するために使用される成分を前記処理チャンバ内部に分配する成分送給機構であって、
前記成分を前記処理チャンバの所望の領域に出力する複数の成分出力部と、
前記複数の成分出力部に接続され、前記成分を前記複数の成分出力部のうちの少なくとも一つに振り向けるように構成された空間分配スイッチと、
前記空間分配スイッチに接続され、前記成分を前記空間分配スイッチに供給するように構成された単一の成分供給源と、
を備える成分送給機構。
【請求項2】
前記複数の成分出力部が少なくとも第一の成分出力部と第二の成分出力部とを含み、前記空間分配スイッチが、前記成分を前記第一の成分出力部へ振り向ける第一の状態と、前記成分を前記第二の成分出力部へ振り向ける第二の状態とを有する、請求項1に記載の成分送給機構。
【請求項3】
前記第一の成分出力部が、前記成分を前記処理チャンバの第一の領域に出力するように構成され、前記第二の成分出力部が、前記成分を前記処理チャンバの第二の領域に出力するように構成されている、請求項2に記載の成分送給機構。
【請求項4】
前記処理チャンバの前記第一の領域が前記ワークピースの中央部分に対応し、前記処理チャンバの前記第二の領域が前記ワークピースの外側部分に対応する、請求項3に記載の成分送給機構。
【請求項5】
前記空間分配スイッチが、処理中に前記処理チャンバ内部に前記成分を空間的に分配するために状態間の調節を行うように構成されている、請求項2に記載の成分送給機構。
【請求項6】
前記空間分配スイッチが、処理中に前記処理チャンバ内部での前記成分の濃度に作用するために所定の時間量に亘って一つの状態を維持するように構成されている、請求項2に記載の成分送給機構。
【請求項7】
前記成成分は気体原材料であり、前記単一の成分供給源は前記気体原材料を供給するガス供給ボックスであり、前記複数の成分出力部は前記処理チャンバ内に前記気体原材料を放出する複数のガス注入ポートである、請求項1に記載の成分送給機構。
【請求項8】
前記複数のガス注入ポートは少なくとも第一のガス注入ポートと第二のガス注入ポートとを含み、前記空間分配スイッチは、前記第一のガス注入ポートへ前記気体原材料を振り向ける第一の状態と、前記第二のガス注入ポートへ前記気体原材料を振り向ける第二の状態とを有する、請求項7に記載の成分送給機構。
【請求項9】
前記第一のガス注入ポートは前記処理チャンバの第一の領域内に前記気体原材料を放出するように構成され、前記第二のガス注入ポートは前記処理チャンバの第二の領域内に前記気体原材料を放出するように構成されている、請求項8に記載の成分送給機構。
【請求項10】
前記処理チャンバの前記第一の領域は前記ワークピースの中央部分に対応し、前記処理チャンバの前記第二の領域は前記ワークピースの外側部分に対応する、請求項9に記載の成分送給機構。
【請求項11】
前記空間分配スイッチは前記第一のガス注入ポートと前記第二のガス注入ポートとの間で前記気体原材料を空間的に分配するために状態間で調整を行い、これにより、処理中に前記処理チャンバの前記第一及び第二の領域での前記気体原材料の濃度に作用するように構成されている、請求項9に記載の成分送給機構。
【請求項12】
前記成分はエネルギであり、前記単一成分供給源はエネルギを供給する電源であり、前記複数の成分出力部は前記処理チャンバ内部で電場を生成する複数の電極コイルである、請求項1に記載の成分送給機構。
【請求項13】
前記複数の電極コイあ少なくとも第一のコイルと第二のコイルとを含み、前記空間分配スイッチは、前記第一のコイルへ前記エネルギを振り向ける第一の状態と、前記第二のコイルへ前記エネルギを振り向ける第二の状態とを有する、請求項12に記載の成分送給機構。
【請求項14】
前記第一のコイルは前記処理チャンバの第一の領域内に電場を生成するように構成され、前記第二のコイルは前記処理チャンバの第二の領域内に電場を生成するように構成されている、請求項13に記載の成分送給機構。
【請求項15】
前記処理チャンバの前記第一の領域は前記ワークピースの中央部分に対応し、前記処理チャンバの前記第二の領域は前記ワークピースの外側部分に対応する、請求項14に記載の成分送給機構。
【請求項16】
前記空間分配スイッチは前記第一のコイルと第二のコイルとの間でエネルギを空間的に分配するために状態間で調整を行い、これにより、処理中に前記処理チャンバの前記第一及び第二の領域で電場の大きさに作用するように構成されている、請求項14に記載の成分送給機構。
【請求項17】
前記ワークピースは半導体基板である、請求項1に記載の成分送給機構。
【請求項18】
前記成分送給機構は、プラズマリアクタにおいて使用され、前記ワークピースを均一に処理するように前記処理チャンバ内部のイオン及び中性物の量に作用する、請求項1に記載の成分送給機構。
【請求項19】
基板を処理するための空間的に制御されたプラズマリアクタであって、
処理のために内部でプラズマを発生させるとともに維持する処理チャンバと、
電力送給機構と、
ガス送給機構と、
を備え、
前記電力送給機構は、
前記プラズマを発生させるとともに維持するのに十分な強さのエネルギを発生させる単一の電源と、
前記電源に接続された電極であって、前記処理チャンバの第一の電力領域内で電場を生成するように構成された第一のコイルと、前記処理チャンバの第二の電力領域内で電場を生成するように構成された第二のコイルとを有する電極と、
前記電源と前記電極の前記内側コイル及び前記外側コイルとの間に配置され、前記電源のエネルギを前記内側コイルまたは前記外側コイルに振り向けるように構成された電力分配スイッチと、
を含み、
前記ガス送給機構は、
前記プラズマの形成と前記基板の処理とに一部使用されるプロセスガスを生成する単一のガス供給源と、
前記ガス供給源に接続され、前記処理チャンバの第一のガス領域内に前記プロセスガスを放出するように構成された第一のガス注入ポートと、
前記ガス供給源に結合され、前記処理チャンバの第二のガス領域内に前記プロセスガスを放出するように構成された第二のガス注入ポートと、
前記ガス供給源と前記内側ガス注入ポート及び前記外側ガス注入ポートとの間に配置され、前記ガス供給源の前記プロセスガスを前記内側ガス注入ポートまたは前記外側ガス注入ポートに振り向けるように構成されたガス分配スイッチと、
を含む、
プラズマリアクタ。
【請求項20】
処理チャンバ内でワークピースを処理するために使用される成分を前記処理チャンバ内部に分配する成分送給機構であって、
前記成分を供給する成分供給源と、
前記成分供給源から前記成分を受領する単一の入力部と、前記成分を放出する少なくとも第一の出力部及び第二の出力部と、を有する空間分配スイッチであって、前記第一の出力部を通じて前記成分を振り向ける第一の状態と、前記第二の出力部を通じて前記成分を振り向ける第二の状態とを少なくとも有する空間分配スイッチと、
少なくとも、前記空間分配スイッチの前記第一の出力部に接続されて前記処理チャンバの前記第一の領域内に前記成分を出力するように構成された第一の成分出力部、および、前記空間分配スイッチの前記第二の出力部に接続されて前記処理チャンバの前記第二の領域内に前記成分を出力するように構成された第二の成分出力部と、
前記空間分配スイッチを制御するコントローラであって、前記処理チャンバの第一及び第二の領域での前記成分の濃度に作用するために、少なくとも前記第一状態と前記第二の状態との間で前記空間分配スイッチを振り向けるように構成されたコントローラと、
を備える成分送給機構。
【請求項21】
処理レシピの成分によりワークピースを処理する方法であって、
前記ワークピースが内部で処理される処理チャンバであって、少なくとも第一の処理区域と第二の処理区域とを含み、各区域が、処理される前記ワークピースの一部に対応する処理チャンバを準備するステップと、
前記処理チャンバの前記第一の処理区域内に前記成分を出力するステップと、
前記第一の処理区域から前記第二の処理区域に切り換えるステップと、
前記処理チャンバの前記第二の処理区域内に前記成分を出力するステップと、
を備える方法。
【請求項22】
処理チャンバ内でワークピースを処理するために使用される成分を前記処理チャンバ内部に分配する成分送給機構であって、
前記成分を供給する単一の成分供給源と、
前記単一の成分供給源から前記成分を受領する成分入力部と、前記成分を分配する複数の成分出力部とを有し、受領した前記成分を前記複数の成分出力部のうちの一つ以上に振り向けるように構成された空間分配スイッチと、
を備える成分送給機構。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−169629(P2012−169629A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−29244(P2012−29244)
【出願日】平成24年2月14日(2012.2.14)
【分割の表示】特願2002−507401(P2002−507401)の分割
【原出願日】平成13年6月8日(2001.6.8)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】