説明

成膜装置および半導体装置の製造方法

【課題】 成膜時の温度上昇を抑制しつつ、多元系膜の組成制御を精度よく行えるようにする。
【解決手段】 ターゲット2、静電チャック4および坩堝5を移動させることにより、ターゲット2、半導体ウェハWおよび蒸着源7の位置関係を調整した後、チャンバ1内の真空引きを行いながら、ヒータ6にて蒸着源7を加熱し、半導体ウェハWの成膜処理を蒸着にて行うとともに、スパッタガスG1および反応ガスG2をチャンバ1内にそれぞれ供給し、ターゲット2に高周波電圧を印加することにより、チャンバ1内にプラズマPZを発生させ、半導体ウェハWの成膜処理を蒸着にて行いながら、半導体ウェハWの成膜処理をスパッタにて行うことにより、半導体ウェハW上に多元系膜を成膜する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜装置および半導体装置の製造方法に関し、特に、多元系膜の成膜方法に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体装置では、金属膜や絶縁膜などの薄膜を半導体ウェハ上に形成するために、スパッタやMOCVDなどの方法が用いられている。
また、例えば、特許文献1には、原子層蒸着法にて膜密度が高くて優秀な化学量論的な薄膜を得られるようにするために、基板がローディングされたチャンバに第1反応物を注入して基板上に第1反応物を化学吸着させ、チャンバをパージしたりポンピングしたりして、化学吸着された第1反応物上に物理吸着された第1反応物を取り除き、チャンバに第1反応物を再び注入して基板上に第1反応物を稠密するように化学吸着させる方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−54134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、スパッタにて多元系膜を半導体ウェハ上に形成する方法では、スパッタ収量が元素ごとに異なるため、多元系膜の組成制御ができないという問題があった。例えば、不揮発性メモリの水素バリア膜や酸素バリア膜に用いられるTi−Al−N系膜を例に取ると、スパッタ収量がTiとAlで異なるため、Ti−Al−N系膜の組成制御ができない。また、TiとAlでは融点が大幅に異なるため均一な組成の合金ターゲットを得ることができない。この結果、スパッタではTi−Al−N系膜の組成を最適化することができないため、Ti−Al−N系膜の水素バリア性や酸素バリア性が劣化するという問題があった。
【0004】
一方、MOCVDにて多元系膜を半導体ウェハ上に形成する方法では、金属ソースガスを使用するので、CやOやHが多元系膜中に混入する可能性があり、多元系膜の膜質の劣化を招くという問題があった。
そこで、本発明の目的は、不純物の混入を抑制しつつ、多元系膜の組成制御を精度よく行うとともに、成膜効率を向上させることが可能な成膜装置および半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る成膜装置によれば、成膜対象を大気から隔離するチャンバと、前記チャンバ内に載置された成膜対象の成膜処理を蒸着にて行う蒸着手段と、前記蒸着手段による成膜処理中に前記成膜対象の成膜処理をスパッタにて行うスパッタ手段と、前記成膜対象、前記蒸着手段および前記スパッタ手段との間の位置関係を調整する移動手段とを備えることを特徴とする。
【0006】
これにより、金属ソースガスを用いることなく多元系膜を成膜することが可能となるとともに、蒸着条件およびスパッタ条件をそれぞれ個別に制御することで多元系膜の組成比を変化させることができる。また、成膜対象、蒸着手段およびスパッタ手段との間の位置関係を調整することで、蒸着物を成膜対象に効率よく付着させることができる。このため、CやOやHが多元系膜中に混入することを抑制しつつ、多元系膜の組成制御を精度よく行うことが可能となり、多元系膜の組成を最適化することが可能となるとともに、成膜効率を向上させることが可能となる。
【0007】
また、本発明の一態様に係る成膜装置によれば、成膜対象を大気から隔離するチャンバと、前記チャンバ内の真空引きを行う排気手段と、前記チャンバ内に蒸着源を保持する保持手段と、前記蒸着源の加熱を行うことにより前記蒸着源を蒸発させる加熱手段と、前記チャンバ内に設置されたターゲットと、前記チャンバ内にガスを供給する供給手段と、前記ガスを放電させることにより前記ターゲットをスパッタするスパッタ手段と、前記成膜対象、前記蒸着源および前記ターゲットとの間の位置関係を調整する移動手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
これにより、同一のチャンバ内で蒸着とスパッタを同時に行うことが可能となり、蒸着条件およびスパッタ条件をそれぞれ個別に制御することで多元系膜の組成比を変化させることが可能となるとともに、成膜対象、蒸着源およびターゲットとの間の位置関係を変化させることができる。このため、スパッタ収量が元素ごとに異なる場合においても、多元系膜の組成制御を精度よく行うことが可能となり、多元系膜の組成を最適化することが可能となるとともに、成膜効率を向上させることができる。
【0009】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法によれば、蒸着源およびターゲットが設置されたチャンバ内に半導体ウェハを載置する工程と、前記半導体ウェハに対する前記蒸着源および前記ターゲットの位置関係を調整する工程と、前記蒸着源を加熱することにより、前記半導体ウェハの成膜処理を蒸着にて行う工程と、前記蒸着による成膜処理中に前記ターゲットのスパッタを行うことにより、前記成膜対象の成膜処理をスパッタにて行う工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
これにより、同一のチャンバ内で蒸着とスパッタを同時に行うことが可能となり、蒸着条件およびスパッタ条件をそれぞれ個別に制御することで多元系膜の組成比を変化させることが可能となるとともに、成膜対象、蒸着源およびターゲットとの間の位置関係を変化させることができる。このため、スパッタ収量が元素ごとに異なる場合においても、多元系膜の組成制御を精度よく行うことが可能となり、多元系膜の組成を最適化することが可能となるとともに、成膜効率を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法によれば、前記半導体ウェハに対する前記蒸着源および前記ターゲットの位置関係を調整する工程は、前記蒸着源が前記半導体ウェハおよび前記ターゲットにて囲まれるように前記半導体ウェハおよび前記ターゲットを斜めに傾けることを特徴とする。
これにより、同一のチャンバ内で蒸着とスパッタを同時に行った場合においても、チャンバ壁面に回り込む蒸着物を低減することが可能となるとともに、ターゲットの表面に付着した堆積物をスパッタにて削り取ることができ、多元系膜の組成制御を精度よく行うことを可能としつつ、成膜効率を向上させることができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る半導体装置の製造方法によれば、前記半導体ウェハに素子分離絶縁膜を形成する工程と、前記素子分離絶縁膜にて素子分離されたアクティブ領域に電界効果型トランジスタを形成する工程と、前記電界効果型トランジスタ上に第1層間絶縁膜を形成する工程と、前記層間絶縁膜上に下部電極を形成する工程と、前記下部電極上に強誘電体膜を形成する工程と、前記強誘電体膜上に上部電極を形成する工程と、前記上部電極上に第2層間絶縁膜を形成する工程と、前記半導体ウェハに対する蒸着源およびターゲットの位置関係を調整する工程と、前記蒸着源の加熱による蒸着と前記ターゲットのスパッタを併用することにより、水素バリア性または酸素バリア性を持つ多元系膜を第2層間絶縁膜上に形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
これにより、同一のチャンバ内で蒸着とスパッタを同時に行うことが可能となり、蒸着条件およびスパッタ条件をそれぞれ個別に制御することで水素バリア性または酸素バリア性を持つ多元系膜の組成比を変化させることが可能となるとともに、成膜対象、蒸着源およびターゲットとの間の位置関係を変化させることができる。このため、スパッタ収量が元素ごとに異なる場合においても、水素バリア性または酸素バリア性を持つ多元系膜の組成制御を精度よく行うことが可能となり、強誘電体膜を用いた不揮発性メモリの水素バリア性または酸素バリア性を確保することが可能となるとともに、成膜効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係る成膜装置および半導体装置の製造方法について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図である。
図1(a)において、チャンバ1には、チャンバ1内を排気する排気管11が設けられるとともに、スパッタガスG1をチャンバ1内に供給する供給管12が設けられている。また、チャンバ1内には、半導体ウェハWを保持する静電チャック4が設けられている。また、チャンバ1内には、蒸着源7が入れられた坩堝5が設置されるとともに、蒸着源7を加熱するヒータ6が設けられている。さらに、チャンバ1内には、スパッタ用のターゲット2が配置されるとともに、ターゲット2には高周波電圧を印加する高周波電源3が接続されている。ここで、ターゲット2、半導体ウェハWおよび蒸着源7の位置関係が変えられるように、ターゲット2、静電チャック4および坩堝5を移動させる移動機構が設けられている。
【0015】
そして、半導体ウェハW上に多元系膜を成膜する場合、半導体ウェハWをチャンバ1に搬入し、静電チャック4を介して半導体ウェハWをチャンバ1内に固定する。そして、ターゲット2、静電チャック4および坩堝5を移動させることにより、ターゲット2、半導体ウェハWおよび蒸着源7の位置関係を調整する。なお、ターゲット2、半導体ウェハWおよび蒸着源7の位置関係を調整する場合、図1(b)に示すように、蒸着源7が半導体ウェハWおよびターゲット2にて囲まれるように半導体ウェハWおよびターゲット2を斜めに傾けることができる。そして、チャンバ1内の真空引きを行いながら、ヒータ6にて蒸着源7を加熱し、半導体ウェハWの成膜処理を蒸着にて行う。さらに、スパッタガスG1をチャンバ1内に供給する。なお、スパッタガスG1としては、例えば、アルゴンガスを用いることができる。そして、ターゲット2に高周波電圧を印加することにより、チャンバ1内にプラズマPZを発生させ、半導体ウェハWの成膜処理を蒸着にて行いながら、半導体ウェハWの成膜処理をスパッタにて行うことにより、半導体ウェハW上に多元系膜を成膜する。
【0016】
これにより、金属ソースガスを用いることなく多元系膜を成膜することが可能となるとともに、蒸着源7の加熱温度およびターゲット2への印加電力をそれぞれ個別に制御することで多元系膜の組成比を変化させることができる。また、ターゲット2、半導体ウェハWおよび蒸着源7の位置関係を調整することで、蒸着物を半導体ウェハWに効率よく付着させることができる。このため、CやOやHが多元系膜中に混入することを抑制しつつ、多元系膜の組成制御を精度よく行うことが可能となり、多元系膜の組成を最適化することが可能となるとともに、成膜効率を向上させることが可能となる。
【0017】
例えば、蒸着源7としてAl、ターゲット2としてTiNを用いることにより、TiとAlとNとの組成比を任意に制御しつつ、半導体ウェハW上にTi−Al−N膜を成膜することができ、水素バリア膜または酸素バリア膜としてTi−Al−N系膜を用いることができる。すなわち、坩堝5に入れられたAlを蒸発させながら、窒化チタンターゲットをスパッタすることにより、半導体ウェハW上にAl膜およびTiNx膜の成膜を同時に行う。ここで、半導体ウェハW上にAl膜およびTiNx膜の成膜を同時に行うと、TiNから解離したNの一部が蒸着されたAlと反応してAlNyとなる。このため、蒸着源7の加熱温度およびターゲット2への印加電力をそれぞれ個別に制御することで多元系膜の組成比を変化させることができる。
【0018】
また、蒸着源7が半導体ウェハWおよびターゲット2にて囲まれるように半導体ウェハWおよびターゲット2を斜めに傾けることにより、同一のチャンバ1内で蒸着とスパッタを同時に行った場合においても、チャンバ1の壁面に回り込む蒸着物を低減することが可能となるとともに、ターゲット2の表面に付着した堆積物をスパッタにて削り取ることができ、多元系膜の組成制御を精度よく行うことを可能としつつ、成膜効率を向上させることができる。
【0019】
なお、蒸着と併用するスパッタ方法としては、高周波スパッタの他、直流スパッタ、マグネトロンスパッタ、バイアススパッタなどを用いるようにしてもよい。
図2は、本発明の一実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の概略構成を示す断面図である。
図2において、半導体基板101には素子分離絶縁膜102が形成されている。そして、素子分離絶縁膜102にて素子分離されたアクティブ領域には、ゲート絶縁膜103を介してゲート電極104が形成されるとともに、ゲート電極104を挟み込むように配置されたソース層105aおよびドレイン層105bが半導体基板101に形成されている。
【0020】
そして、ゲート電極104上には層間絶縁膜106が形成され、層間絶縁膜106上には、強誘電体膜108の上下が上部電極109および下部電極107にて挟み込まれたキャパシタが形成されている。さらに、上部電極109上には層間絶縁膜110を介してバリア膜111が形成され、バリア膜111上には層間絶縁膜112が形成されている。そして、層間絶縁膜106、112にはドレイン層105bを露出させる開口部P1が形成されるとともに、層間絶縁膜110、112および強誘電体膜108には上部電極109の一端および他端をそれぞれ露出させる開口部P2、P3が形成されている。
【0021】
さらに、層間絶縁膜112上には配線層H1、H2が形成され、配線層H1は開口部P1を介してドレイン層105bに接続されるとともに、開口部P2を介して上部電極109の一端に接続されている。また、配線層H2は開口部P3を介して上部電極109の他端に接続されている。そして、配線層H1、H2上には層間絶縁膜113が形成され、層間絶縁膜113上にはバリア膜114が形成されている。
【0022】
ここで、バリア膜111、114としてはTi−Al−N系膜を用いることができ、水素バリア性または酸素バリア性をバリア膜111、114に持たせることができる。また、バリア膜111、114を形成する場合、蒸着条件およびスパッタ条件をそれぞれ個別に制御しながら同一のチャンバ内で蒸着とスパッタを同時に行うことにより、Ti−Al−N系膜の組成比を任意に変化させることができる。このため、スパッタ収量がTiとAlで異なる場合においても、Ti−Al−N系膜の組成制御を精度よく行うことが可能となり、強誘電体膜108を用いた不揮発性メモリの水素バリア性または酸素バリア性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る成膜装置の概略構成を示す断面図。
【図2】本発明の一実施形態に係る不揮発性半導体記憶装置の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0024】
1 チャンバ、2 ターゲット、3 高周波電源、4 静電チャック、5 坩堝、6 ヒータ、7 蒸着源、11 排気管、12 供給管、W 半導体ウェハ、101 半導体基板、102 素子分離絶縁膜、103 ゲート絶縁膜、104 ゲート電極、105a ソース層、105b ドレイン層、106、110、112、113 層間絶縁膜、107 下部電極、108 強誘電体膜、109 上部電極、111、114 バリア膜、H1、H2 配線層、P1、P2、P3 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜対象を大気から隔離するチャンバと、
前記チャンバ内に載置された成膜対象の成膜処理を蒸着にて行う蒸着手段と、
前記蒸着手段による成膜処理中に前記成膜対象の成膜処理をスパッタにて行うスパッタ手段と、
前記成膜対象、前記蒸着手段および前記スパッタ手段との間の位置関係を調整する移動手段とを備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
成膜対象を大気から隔離するチャンバと、
前記チャンバ内の真空引きを行う排気手段と、
前記チャンバ内に蒸着源を保持する保持手段と、
前記蒸着源の加熱を行うことにより前記蒸着源を蒸発させる加熱手段と、
前記チャンバ内に設置されたターゲットと、
前記チャンバ内にガスを供給する供給手段と、
前記ガスを放電させることにより前記ターゲットをスパッタするスパッタ手段と、
前記成膜対象、前記蒸着源および前記ターゲットとの間の位置関係を調整する移動手段とを備えることを特徴とする成膜装置。
【請求項3】
蒸着源およびターゲットが設置されたチャンバ内に半導体ウェハを載置する工程と、
前記半導体ウェハに対する前記蒸着源および前記ターゲットの位置関係を調整する工程と、
前記蒸着源を加熱することにより、前記半導体ウェハの成膜処理を蒸着にて行う工程と、
前記蒸着による成膜処理中に前記ターゲットのスパッタを行うことにより、前記成膜対象の成膜処理をスパッタにて行う工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記半導体ウェハに対する前記蒸着源および前記ターゲットの位置関係を調整する工程は、前記蒸着源が前記半導体ウェハおよび前記ターゲットにて囲まれるように前記半導体ウェハおよび前記ターゲットを斜めに傾けることを特徴とする請求項3記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記半導体ウェハに素子分離絶縁膜を形成する工程と、
前記素子分離絶縁膜にて素子分離されたアクティブ領域に電界効果型トランジスタを形成する工程と、
前記電界効果型トランジスタ上に第1層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜上に下部電極を形成する工程と、
前記下部電極上に強誘電体膜を形成する工程と、
前記強誘電体膜上に上部電極を形成する工程と、
前記上部電極上に第2層間絶縁膜を形成する工程と、
前記半導体ウェハに対する蒸着源およびターゲットの位置関係を調整する工程と、
前記蒸着源の加熱による蒸着と前記ターゲットのスパッタを併用することにより、水素バリア性または酸素バリア性を持つ多元系膜を第2層間絶縁膜上に形成する工程とを備えることを特徴とする半導体装置の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2007−67255(P2007−67255A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253129(P2005−253129)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】