説明

成膜装置の排気系構造、成膜装置、および排ガスの処理方法

【課題】トラップ機構の回収物の処理を安全かつ迅速に行うことができる成膜装置の排気系構造を提供すること。
【解決手段】成膜装置の排気系構造は、処理容器11内の排ガスを排出する排気管51と、排気管51の処理容器11の近傍に設けられた自動圧力制御器52と、排気管51の自動圧力制御器52の下流側に設けられた真空ポンプ54と、排気管51の自動圧力制御器52の下流側位置に酸化剤を供給する酸化剤供給部57と、排気管51の酸化剤供給位置の下流側に設けられ、排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物が前記酸化剤と反応して生成された生成物を回収するトラップ機構53と、排気管51のトラップ機構53の下流側に設けられた除害装置55とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属原料を用いたCVDにより所定の膜を成膜する成膜装置の排気系構造、およびそのような排気系構造を備えた成膜装置、ならびに排ガスの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハに対して、成膜処理、改質処理、酸化拡散処理、エッチング処理等の各種の処理が行われる。
【0003】
この中で、成膜処理としては、半導体ウエハを収容したチャンバー内に所定の処理ガスを導入して化学反応により所定の膜を成膜するCVD(Chemical Vapor Deposition)法が多用されている。CVD法においては、被処理基板である半導体ウエハ上で処理ガスを反応させて成膜させるが、この際に処理ガスの全てが反応に寄与するわけではなく、成膜に寄与しなかった原料ガスや反応副生成物が発生する。特に有機金属原料を用いたCVD装置では、このような成膜に寄与しなかった原料ガスや反応副生成物が大量に発生する。
【0004】
これらの原料ガスや副生成物は、毒性や発火性等の危険性を有していることが多く、そのまま大気中に放出することができない。そこで、こうした原料ガスや副生成物の大半をトラップ機構によりトラップして回収するとともに、回収しきれなかったガス成分は除害装置で除害してから大気中に放出することが行われている(例えば特許文献1)。トラップ機構は、真空排気系に設置されており、内部に冷却フィンを設けて排ガス(原料ガス、副生成物)の接触を増やすとともに、排ガスの温度を下げて凝集させることにより回収している。
【0005】
しかしながら、トラップ機構内部で凝集させて回収された回収物は、単に物理吸着しただけであり、化学的には活性を有したままとなっている。このため、トラップ機構の処理には危険をともなうという問題点がある。例えば、トラップ機構を大気圧に戻して真空排気系から切り離す際に内部に大気が混入すると、酸素成分と吸着回収された排ガス成分とが急激に反応して極めて危険である。
【0006】
特に、有機金属原料を用いた場合には、トラップ機構で回収された回収物の活性が非常に高い場合が多く、例えば、半導体デバイスの分野においてCu配線の拡散防止バリア膜としてMnSi自己形成バリア膜が有望視されており、そのシード層であるCuMn膜を形成する際に有機Mn化合物原料が用いられるが、有機Mn化合物は酸素成分との間の反応が極めて激しく生じる。
【0007】
このため、有機金属原料を用いた場合のトラップ機構の回収物の処理は極めて慎重に行う必要があり、例えば、回収物を有機溶媒で溶かす等して徐々に失活させる方法が採られるが、極めて手間がかかり、また有機溶媒を使用するためその毒性や可燃性が懸念されるという問題点もある。
【特許文献1】特開平10−140357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、トラップ機構の回収物の処理を安全かつ迅速に行うことができる成膜装置の排気系構造、およびそのような排気系構造を有する成膜装置、および排ガスの処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、処理容器内に有機金属原料ガスを含むガスを供給して処理容器内に配置された基板上にCVDにより膜を形成する成膜装置の排気系構造であって、前記処理容器内の排ガスを排出する排気管と、前記排気管の前記処理容器の近傍に設けられた自動圧力制御器と、前記排気管の前記自動圧力制御器の下流側に設けられ、前記処理容器内を排気する真空ポンプと、前記排気管の前記自動圧力制御器の下流側位置に、排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物を酸化させるための酸化剤を供給する酸化剤供給部と、前記排気管の前記酸化剤供給位置の下流側に設けられ、前記排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物が前記酸化剤と反応して生成された生成物を回収するトラップ機構と、前記排気管の前記トラップ機構の下流側に設けられ、排ガスを無害化するための除害装置とを具備することを特徴とする、成膜装置の排気系構造を提供する。
【0010】
上記第1の観点において、前記真空ポンプは、前記排気管の前記トラップ機構の下流側かつ前記除害装置の上流側に設けられてもよい。また、 前記真空ポンプは、前記排気管の前記酸化剤供給位置の下流側かつ前記トラップ機構の上流側に設けられてもよい。さらに、前記真空ポンプは、前記排気管の前記酸化剤供給位置の上流側に設けられてもよい。
【0011】
上記第1の観点において、前記酸化剤供給部から供給される酸化剤としては水を好適に用いることができる。また、前記有機金属原料としては、有機Mn化合物原料を含むものを用いることができ、その場合に、前記膜はMnを含むものとなる。
【0012】
本発明の第2の観点では、基板が配置される処理容器と、基板が配置された処理容器内に有機金属原料ガスを含むガスを供給する原料ガス供給機構と、前記有機金属原料ガスにエネルギーを与えて基板上で成膜反応を生じさせる手段と、前記処理容器から排ガスを排出させ、排ガスを処理する排気系構造とを具備し、基板上に膜を形成する成膜装置であって、前記排気系構造は、前記処理容器内の排ガスを排出する排気管と、前記排気管の前記処理容器の近傍に設けられた自動圧力制御器と、前記排気管の前記自動圧力制御器の下流側に設けられ、前記処理容器内を排気する真空ポンプと、前記排気管の前記自動圧力制御器の下流側位置に、排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物を酸化させるための酸化剤を供給する酸化剤供給部と、前記排気管の前記酸化剤供給位置の下流側に設けられ、前記排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物が前記酸化剤と反応して生成された生成物を回収するトラップ機構と、前記排気管の前記トラップ機構の下流側に設けられ、排ガスを無害化するための除害装置とを具備することを特徴とする、成膜装置を提供する。
【0013】
上記第2の観点において、前記真空ポンプは、前記排気管の前記トラップ機構の下流側かつ前記除害装置の上流側に設けられてもよい。また、 前記真空ポンプは、前記排気管の前記酸化剤供給位置の下流側かつ前記トラップ機構の上流側に設けられてもよい。さらに、前記真空ポンプは、前記排気管の前記酸化剤供給位置の上流側に設けられてもよい。
【0014】
本発明の第3の観点では、処理容器内に有機金属原料ガスを含むガスを供給して処理容器内に配置された基板上にCVDにより膜を形成する成膜装置における排ガスの処理方法であって、前記処理容器に接続された排気管を介して真空ポンプにより処理容器内を排気し、前記排気管の自動圧力制御器の下流側で成膜処理の際の排ガスに酸化剤を供給して排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物を酸化させ、前記排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物が前記酸化剤と反応して生成された生成物をトラップ機構により回収し、生成物が回収された後の排ガスを除害装置により処理することを特徴とする、排ガスの処理方法を提供する。
【0015】
上記第3の観点において、前記酸化剤としては水を好適に用いることができる。また、前記有機金属原料としては、有機Mn化合物原料を含むものを用いることができ、その場合に、前記膜はMnを含むものとなる。
【0016】
本発明の第4の観点では、コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第3の観点の排ガスの処理方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置の排気系を制御させることを特徴とする記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、成膜装置の排気管における自動圧力制御器の下流側位置に、排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物を酸化させるための酸化剤を供給するための酸化剤供給部を設け、さらにその下流側に前記排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物が前記酸化剤と反応して生成された生成物を回収するトラップ機構を設けたので、排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物の酸化反応は配管内で緩やかに生じ、かつトラップ機構では失活された状態の酸化物が生成物として回収される。このため、回収物の処理のためトラップ機構を大気圧に戻しても急激な反応が生じず、トラップ機構の回収物の処理を安全かつ迅速に行うことができる。また、トラップ機構で回収された回収物は失活されているので、除害装置への負担が軽くなってその寿命が延び、メンテナンス工数および費用を低減することができる。特に、有機金属原料として有機Mn化合物原料を用いる場合には、酸化剤との反応性が極めて高いため、本発明が極めて有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
ここでは、被処理基板として半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)を用い、その表面にCVDにより、Cu配線の拡散防止バリア膜としてMnSi自己形成バリア膜のシード層として用いられるCuMn膜を成膜する場合を例にとって説明する。
【0019】
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る排気系構造を備えた成膜装置を示す模式図である。この成膜装置100は、成膜処理部200と、排気系300とに大別される。
【0020】
成膜処理部200は略円筒状の処理チャンバ11を有している。処理チャンバ11内の底部には、被処理基板であるウエハWを水平に載置するための載置台12が配置されている。載置台12にはヒータ14が埋め込まれており、このヒータ14は被処理基板であるウエハWを所定の温度に加熱する。処理チャンバ11の底壁には、排気口16が設けられている。また、処理チャンバ11の側壁にはゲートバルブにより開閉可能なウエハ搬入出口(図示せず)が設けられている。
【0021】
処理チャンバ11の上部には、ガス導入部であるシャワーヘッド20が設けられている。このシャワーヘッド20は円盤状をなし下部に多数のガス吐出孔が形成されている。
【0022】
上記シャワーヘッド20には、配管41を介して成膜のための原料ガスおよび還元ガス等を供給するガス供給部40が接続されている。
【0023】
ガス供給部40は、有機金属原料ガスである有機Cu化合物ガスおよび有機Mn化合物ガスと、還元ガスであるHガスをシャワーヘッド20へ供給する。Cu原料である有機Cu化合物およびMn原料である有機Mn化合物は液体状または固体状をなしており、固体状のものは溶媒に溶解した状態で用いられる。また、液体状のものはそのまま用いることもできるが、粘性を下げて気化性および取り扱い性を向上させる観点から、溶媒に溶解した状態で用いることが好ましい。このような液体状の原料を、気化器等の適宜の手段により気化してシャワーヘッド20に導入する。なお、シャワーヘッド20への配管は便宜上1本のみ描いているが、実際には原料ガスと還元ガスとが別個の配管でシャワーヘッド20へ導入される。シャワーヘッド20は、原料ガスと還元ガスとが別個の経路を通って吐出され、吐出後にこれらが混合される、いわゆるポストミックスタイプとなっている。
【0024】
一方、排気系300は、上記排気口16に接続された排気管51を有している。この排気管51には、上流側から順に、自動圧力制御器(APC)52、トラップ機構53、真空ポンプ54、除害装置55が設けられている。また、自動圧力制御器(APC)52とトラップ機構53との間には、配管56が接続されており、配管56の他端には酸化剤供給部57が接続されている。
【0025】
処理チャンバ11内は、真空ポンプ54により配管51を介して真空排気されるようになっており、その際の処理チャンバ11内の圧力は、自動圧力制御器(APC)52により制御される。自動圧力制御器(APC)52は、処理チャンバ11内の圧力を図示しない圧力計によりモニタし、その圧力が所定の値になるように、バルブの開度を調節して配管51の排気量を調整するものである。
【0026】
酸化剤供給部57は、酸化剤として例えばHOを供給するものであり、排気管51を流れている排ガスに配管56を介してHOが供給される。排ガスは、未反応の有機金属原料ガス成分および副生成物を含んでおり、これらが酸化剤であるHOと反応して酸化物系の生成物が生成される。HOの供給方式は、バブリング式、加熱蒸発式、液体気化式、液体霧化式、超音波式等、公知の気体供給方式を用いることができる。
【0027】
トラップ機構53は、排ガスに酸化剤が供給されて形成された酸化物系の生成物をトラップするもので、このような生成物は通常は粉体状であるので、トラップ機構53としては粉体回収トラップが用いられる。このような粉体回収トラップとしては、冷却トラップ、さえぎりトラップ、フィルタトラップ、サイクロントラップ、静電トラップ、重力トラップ、慣性トラップ等、従来公知のトラップ機構を用いることが可能である。
【0028】
真空ポンプ54としてはドライポンプを用いることができる。より高真空を要求される場合には、ドライポンプの他に、自動圧力制御器(APC)52の下流側であって、酸化剤を供給する配管56との合流点より上流側ににターボ分子ポンプ(TMP)を設置してもよい。
【0029】
除害装置55は、トラップ機構53で生成物をトラップした後の排ガス中の残余の有害成分を無害化するものであり、加熱触媒式、燃焼式、吸着式、プラズマ反応式等、従来公知の方式のものを採用することができる。
【0030】
なお、ガス供給部40の配管等はヒータ42より加熱され、処理チャンバ11およびシャワーヘッド20はヒータ18により加熱され、排気管51のトラップ機構53の直前までの部分、自動圧力制御器(APC)52、配管56は、ヒータ58で加熱されるようになっており、これらの加熱により、トラップ機構53に至るまでの有機金属原料ガスの凝集を防止するようになっている。
【0031】
成膜装置100の各構成部は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を備えたプロセスコントローラ110に接続されて制御される構成となっている。プロセスコントローラ110には、オペレータが成膜装置100を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、成膜装置100の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース111と、成膜装置100で実行される各種処理をプロセスコントローラ110の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じて成膜装置100の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわちレシピが格納された記憶部112が接続されている。レシピは記憶部112の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクのように固定的なものであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0032】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース111からの指示等にて任意のレシピを記憶部112から呼び出してプロセスコントローラ110に実行させることで、プロセスコントローラ110の制御下で、成膜装置100での所望の処理が行われる。
【0033】
特に、本実施形態では成膜装置100の排気系300における排気処理が記憶部112に記憶された排気処理レシピに基づいてプロセスコントローラ110により制御される。
【0034】
次に、以上のように構成された成膜装置100の処理動作について説明する。
まず、排気系300の真空ポンプ54を作動させて処理チャンバ11内を真空引きし、自動圧力制御器(APC)52により処理チャンバ11内を所定の圧力に保持しつつウエハWを真空雰囲気のままチャンバ11内に搬入し、サセプタ12上に載置する。
【0035】
この状態で、ガス供給部40から所定の流量で、有機金属原料である有機Cu化合物ガスおよび有機Mn化合物ガスをシャワーヘッド20を介して処理チャンバ11内に導入するとともに、還元ガスとしてHガスをシャワーヘッド20を介して処理チャンバ11内に導入して、ヒータ14により例えば100〜450℃の範囲の温度までウエハWを加熱する。これにより、ウエハW上で有機Cu化合物ガスおよび有機Mn化合物ガスと還元ガスであるHガスとが反応してウエハW上にCuMn膜が成膜される。
【0036】
この成膜処理の間、処理チャンバ11から排ガスが排気管51を通って排出されるが、このような有機金属原料ガスを用いた場合には、有機金属原料ガスの全てが反応に寄与するわけではなく、成膜に寄与しなかった有機金属原料ガスや反応副生成物が大量に発生する。これら有機金属原料ガスや反応副生成物は、活性が高い。特に、ここで用いている有機Mn化合物ガスは、極めて活性が高く、HOのような酸化剤により急激に反応するため、「禁水」扱いとされている。
【0037】
すなわち、有機金属原料ガス、特に有機Mn化合物ガスは、従来のようにトラップ機構に単に物理的に吸着させた場合には、極めて高い活性を保ったままであるため、トラップ機構を大気開放する際に急激に反応が生じるおそれがあるため、極めて危険であり、このような危険を回避するためには、トラップ機構の処理に極めて手間がかかってしまう。
【0038】
そこで、本実施形態では、排気管51の自動圧力制御器(APC)52の下流側に、酸化剤供給部57から配管56を介して酸化剤としてHOを供給する。これにより、上述したような大気開放した際に生じる酸化反応が排気管51内で緩やかに生じ、排気管51内で酸化物系の生成物が生成される。したがって、トラップ機構53にはこのような酸化物系の生成物がトラップされ回収される。このとき、酸化剤としてのHOが自動圧力制御器(APC)52の下流側であるため、成膜プロセスには影響を与えない。
【0039】
このようにして生成される酸化物系の生成物は失活した状態であるため、トラップ機構53を大気開放しても急激な反応は生じず安全であり、かつ、トラップ機構53の回収物の処理を迅速に行うことができる。また、トラップ機構53で回収された回収物は失活されているので、除害装置55への負担が軽くなってその寿命が延び、メンテナンス工数および費用を低減することができる。
【0040】
このような酸化剤としてのHOによる失活処理は、特にHOとの反応性の極めて高い有機Mn化合物に対して有効であるが、もちろん有機Cu化合物もHOと反応するので有機Mn化合物ほどではないがある程度の効果は得られる。
【0041】
本実施形態に好適な有機Mn化合物としては、(EtCp)Mn、(MeCp)Mn、(i−PrCp)Mn、CpMn、(MeCp)Mn(CO)等を挙げることができる。また、本実施形態に用いることができる有機Cu化合物としては、Cu(hfac)TMVS等を挙げることができる。
【0042】
有機Mn化合物とHOとの反応は、例えば、有機Mn化合物が
(EtCp)Mnの場合には、以下の(1)式に示すようなものであり、その中のMnが酸化されてMnOまたはMnOとなり、有機骨格部分であるEtCpは、Hと結合してEtCpHや(EtCpH)となって下流に流れて行き除害装置55において無害化される。
(EtCp)Mn+HO→2EtCpH+MnO……(1)
【0043】
次に、第2の実施形態について説明する。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る排気系構造を備えた成膜装置を示す模式図である。この第2の実施形態では真空ポンプ54の配置位置が第1の実施形態とは異なり、酸化剤であるHOの供給位置とトラップ機構53との間にある。このため、酸化剤供給部57から配管56を介して排気管51にHOが供給された後、真空ポンプ54を経てからトラップ機構53に達するので、排気ガスと酸化剤であるHOが真空ポンプ54でしっかり混ざって完全に反応した後にトラップ機構53に回収される。この点、上記第1の実施形態では、排気管51へのHO供給位置の圧力が低く、かつHOと排ガスが排気管51に合流してすぐにトラップ機構53にトラップされるため、排ガス成分とHOとの反応がやや進行しにくい。したがって、反応性の観点からは第2の実施形態のほうが好ましい。
【0044】
ただし、第2の実施形態では、排ガスがトラップ機構53に至る前に真空ポンプ54を通過するため、排ガス中の原料ガスの凝集を防止するための加熱を真空ポンプ54にも施す必要があり、図示するように、ヒータ58を真空ポンプ54にも設けなければならない。また、真空ポンプ54で排ガスとHOとを混合し酸化物系の生成物が生成されるので、真空ポンプ54の負担が重くなるという問題もある。これに対し、第1の実施形態では、真空ポンプ54への負担は軽く、加熱する必要もない。
【0045】
次に、第3の実施形態について説明する。
図3は、本発明の第3の実施形態に係る排気系構造を備えた成膜装置を示す模式図である。この第3の実施形態では真空ポンプ54の配置位置が第1および第2の実施形態とは異なり、自動圧力制御器(APC)52と酸化剤であるHOの供給位置との間にある。このため、真空ポンプ54を経てから排ガスにHOが供給されることとなるので、高圧にて排ガスとHOとの反応が生じることとなり、反応が進みやすくなる。また、HOは真空ポンプ54を通らないため、真空ポンプ54内で酸化物系の生成物が生じることはなく真空ポンプ54への負担は軽い。ただし、第2の実施形態と同様、排ガスがトラップ機構53に至る前に真空ポンプ54を通過するため、排ガス中の原料ガスの凝集を防止するための加熱を真空ポンプ54にも施す必要があり、図示するように、ヒータ58を真空ポンプ54にも設けなければならない。
【0046】
以上の第1〜第3の実施形態は、それぞれ一長一短があり、状況に応じて使い分けることが好ましい。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、酸化剤としてHOを用いた例を示したが、これに限定されることなく、O、O、H、NO、NOやアルコール類、有機溶媒、有機酸、空気等、その成分中に酸素が含まれるものであれば適用可能である。また酸化剤として酸素が含まれるもの以外に、Clなどのハロゲンが含まれるものも適用可能である。ただしCuMn膜を成膜する際に、還元ガスとしてHを用いる場合には、これと混合禁忌となる酸化剤は使用しないようにする。
【0048】
また、上記実施形態では、有機金属原料として有機Mn化合物および有機Cu化合物を、特に有機Mn化合物を例にとって説明したが、これに限らず、酸化剤と反応するものであれば適用可能であり、例えばAl,Ti,Fe,Co,Ni,Zn,Zr,Ru,Hf,Ta,W等の他の金属の有機化合物を適用することができる。
【0049】
また、上記実施形態では、被処理基板として半導体ウエハを例示したが、これに限らず、液晶表示装置(LCD)に代表されるフラットパネルディスプレー(FPD)用のガラス基板等、他の基板にも適用可能である。
【0050】
さらに、上記実施形態では、成膜装置として枚葉式のものを例にとって説明したが、これに限らず、多数の被処理基板を一度に処理するバッチ式のものであっても適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る排気系構造を備えた成膜装置を示す模式図。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る排気系構造を備えた成膜装置を示す模式図。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る排気系構造を備えた成膜装置を示す模式図。
【符号の説明】
【0052】
11;処理チャンバ
12;載置台
14;ヒータ
16;排気口
20;シャワーヘッド
40;ガス供給部
41;配管
51;排気管
52;自動圧力制御器(APC)
53;トラップ機構
54;真空ポンプ
55;除害装置
56;配管
57;酸化剤供給部
100;成膜装置
200;成膜処理部
300;排気系
W;半導体ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理容器内に有機金属原料ガスを含むガスを供給して処理容器内に配置された基板上にCVDにより膜を形成する成膜装置の排気系構造であって、
前記処理容器内の排ガスを排出する排気管と、
前記排気管の前記処理容器の近傍に設けられた自動圧力制御器と、
前記排気管の前記自動圧力制御器の下流側に設けられ、前記処理容器内を排気する真空ポンプと、
前記排気管の前記自動圧力制御器の下流側位置に、排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物を酸化させるための酸化剤を供給する酸化剤供給部と、
前記排気管の前記酸化剤供給位置の下流側に設けられ、前記排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物が前記酸化剤と反応して生成された生成物を回収するトラップ機構と、
前記排気管の前記トラップ機構の下流側に設けられ、排ガスを無害化するための除害装置と
を具備することを特徴とする、成膜装置の排気系構造。
【請求項2】
前記真空ポンプは、前記排気管の前記トラップ機構の下流側かつ前記除害装置の上流側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置の排気系構造。
【請求項3】
前記真空ポンプは、前記排気管の前記酸化剤供給位置の下流側かつ前記トラップ機構の上流側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置の排気系構造。
【請求項4】
前記真空ポンプは、前記排気管の前記酸化剤供給位置の上流側に設けられることを特徴とする請求項1に記載の成膜装置の排気系構造。
【請求項5】
前記酸化剤供給部から供給される酸化剤は水であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の成膜装置の排気系構造。
【請求項6】
前記有機金属原料は、有機Mn化合物原料を含み、前記膜はMnを含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の成膜装置の排気系構造。
【請求項7】
基板が配置される処理容器と、
基板が配置された処理容器内に有機金属原料ガスを含むガスを供給する原料ガス供給機構と、
前記有機金属原料ガスにエネルギーを与えて基板上で成膜反応を生じさせる手段と、
前記処理容器から排ガスを排出させ、排ガスを処理する排気系構造と
を具備し、
基板上に膜を形成する成膜装置であって、
前記排気系構造は、
前記処理容器内の排ガスを排出する排気管と、
前記排気管の前記処理容器の近傍に設けられた自動圧力制御器と、
前記排気管の前記自動圧力制御器の下流側に設けられ、前記処理容器内を排気する真空ポンプと、
前記排気管の前記自動圧力制御器の下流側位置に、排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物を酸化させるための酸化剤を供給する酸化剤供給部と、
前記排気管の前記酸化剤供給位置の下流側に設けられ、前記排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物が前記酸化剤と反応して生成された生成物を回収するトラップ機構と、
前記排気管の前記トラップ機構の下流側に設けられ、排ガスを無害化するための除害装置と
を具備することを特徴とする、成膜装置。
【請求項8】
前記真空ポンプは、前記排気管の前記トラップ機構の下流側かつ前記除害装置の上流側に設けられることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項9】
前記真空ポンプは、前記排気管の前記酸化剤供給位置の下流側かつ前記トラップ機構の上流側に設けられることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置。
【請求項10】
前記真空ポンプは、前記排気管の前記酸化剤供給位置の上流側に設けられることを特徴とする請求項7に記載の成膜装置の排気系構造。
【請求項11】
処理容器内に有機金属原料ガスを含むガスを供給して処理容器内に配置された基板上にCVDにより膜を形成する成膜装置における排ガスの処理方法であって、
前記処理容器に接続された排気管を介して真空ポンプにより処理容器内を排気し、
前記排気管の自動圧力制御器の下流側で成膜処理の際の排ガスに酸化剤を供給して排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物を酸化させ、
前記排ガス中の有機金属原料ガス成分および副生成物が前記酸化剤と反応して生成された生成物をトラップ機構により回収し、
生成物が回収された後の排ガスを除害装置により処理することを特徴とする、排ガスの処理方法。
【請求項12】
前記酸化剤は水であることを特徴とする請求項11に記載の、排ガスの処理方法。
【請求項13】
前記有機金属原料は、有機Mn化合物原料を含み、前記膜はMnを含むことを特徴とする請求項11または請求項12に記載の、排ガスの処理方法。
【請求項14】
コンピュータ上で動作し、成膜装置を制御するプログラムが記憶された記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、請求項11から請求項13のいずれかの排ガスの処理方法が行われるように、コンピュータに前記成膜装置の排気系を制御させることを特徴とする記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−62599(P2009−62599A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−233533(P2007−233533)
【出願日】平成19年9月10日(2007.9.10)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】